2011年1月9日日曜日

【回路】V-I Converter

電圧・電流変換回路:V-I Converter
 V-Iコンバータは入力された電圧を電流に変換して出力する回路だ。例えば、1V→1mA、2V→2mA、3Vなら3mAと言うように出力電流は入力電圧に比例する。(・・ように設計してある)

 写真は回路の動作を実験的に確認している様子だ。まずはラフな回路で動作の仕組みを確認しており、取りあえず高精度は求めない。従って抵抗器の誤差やOP-Ampのオフセット電圧がV-I変換の誤差となるのは織り込み済みだ。それがどの程度影響するのかも観測対象である。

 この状態で変換誤差は〜2%程度、オフセットは入力電圧換算で数mV相当であった。 例によってOP-AmpにはJ-FET InputのTL074CNを使った。従って電流検出抵抗及び負荷抵抗は数100kΩあたりまでならバイアス電流は無視できる範囲にある。 汎用のJ-FET-Input OP-Amp.で問題になるのはやはり電圧オフセットにありそうだ。

I-Vコンバータの回路例
 V-Iコンバータの回路は幾つもあって左図はその一例だ。 以前のBlog『YIG Oscillators』で、YTOの主コイルのドライブに使ったのもV-Iコンバータであった。 但し、片方向の磁界のみ与えれば良かったので、電流も一方向であり少し異なった回路を使っていた。

 V-Iコンバータの特徴は何であろうか。 ここに電圧源があって抵抗器を繋げば抵抗器には電圧に比例した電流が流れる。これはV-I変換になる。いま1Vに1kΩなら1mAが流れる。

 しかしV-Iコンバータはその抵抗器が幾らであろうとも入力電圧で決まる電流を流そうとする。 1Vで1mAの関係なら負荷が1kΩでも2kΩでも1mAを流そうとする。従って2kΩなら両端の電圧は2Vになっている。 もちろん出力を短絡(ショート)しても流れるのは1mAだけだ。

 では負荷抵抗が1MΩでも正しく動作するのかと言えばそれはNOだ。1MΩに1mA流すには1,000V必要になるが、OP-Amp回路からそんな電圧は発生できない。 普通は±15V程度の電源電圧で動作させるから出力は±10V少々までと考えるべきだろう。 回路の電源電圧が決まれば動作範囲も自ずと決まってくるのだ。この出し得る上限電圧を電流源の「コンプライアンス電圧」とも言う。(もちろん電源電圧が±1,500VのOP-Amp回路だって困難はあっても不可能ではない・・・が、それでも負荷が10MΩになった途端に破綻する・笑)

「真のV-Iコンバータはもし負荷がオープンになったなら端子間で放電してでも一定電流を流そうとする恐ろしい回路だ」(^ ^;;

 このV-Iコンバータは両方向型である。 入力電圧が正のときには電流を出力し、入力が負電圧なら出力端子は電流を吸い込むように動作する。 即ち「負の電流」も出力できる。 従ってGNDレベルを中心とした正弦波(電圧)を入力すれば『正弦波状の電流出力波形』が得られる。 なお、上記ブレッドボードの試作例は信号源抵抗が変換精度に影響しないよう入力にバッファ・アンプを置いている。 他の部分は回路図と同じだ。写真は実験初期のもので反転型から試したので少しだけ結線を変えている。(注:回路図は非反転型)

三角波電圧→三角波電流
 ファンクション・ジェネレータ(FG)から三角波電圧を与え、V-Iコンバータ回路を通し、その出力には抵抗器を接続する。 抵抗器の端子間電圧Vは電流値Iに比例するから,このように再び電圧に変換されて観測される。

 たとえば、長いケーブルの先に信号を送りたいとする。 ノイズを防ぐため、ケーブルの受端にある負荷抵抗は比較的低めに選ぶべきだろう。しかしケーブルには抵抗があって、しかも周囲温度で変動する。 そのような時はV-Iコンバータで電圧信号を電流信号に変換して送れば良い。 振幅1Vの電圧信号→振幅10mAの電流信号に変換して送れば、負荷抵抗:100Ωの両端で再び振幅1Vの信号として取り出すことができる。もちろんケーブルの抵抗値が変動したとしても誤差にはならない。

 ほかにも電流信号に変換すると扱い易くなる例も多く、V-Iコンバータは有用なものだ。もう少し大きめの電流が取り出せるようにすればYTOのFMコイルをドライブするにも良さそうだ。

負荷はダイオード:1S1588
 負荷にダイオードを付けてみる。 ダイオードのV-I特性が観測される。 ダイオードの順方向電流対端子電圧は直線ではない。 写真の様になる。(注:三角波に+オフセットを掛けてほぼゼロV、即ち0mAの所からスタートするようにしてある)

 このように電圧・電流特性が直線的ではないデバイスのI-V特性を観測するにも役立つ。  三角波は時間対電圧が比例関係だから、電圧対電流特性を管面で観測していることになる。
 なお、オシロスコープをX-Yモードにし、X軸を入力三角波で振らせY軸をダイオードの両端電圧で振らせればより直接的にダイオードのI-V特性を描ける。

              * * * * *

 回路要素の実験は詰まらないだろう。その詰まらそうな回路も幾つか集まると面白そうな物が出来上がる。 これは年末に考えていて気になったテーマだった。まずは実験としてブレッドボードで荒削りに試してみた。 この先ではもっと大きなダイナミックレンジが必要とされるはずだ。 うまくOP-Amp.を選び各抵抗器の相対誤差を小さくすれば概ね行けそうに思う。アナログ回路ではこの「行けそう」と言う感触を得るのがとても重要だ。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2010年12月5日日曜日

【Audio】Repair a YAMAHA NS-05 Part 2

(YAMAHAの小型スピーカ・システム:NS-05の修理:Part 1は→ここ

Tweeter:25HP03の加工
 NS-05のTweeterと類似の形状と特性をもった代替品ではあるが、それ用に出来た物と言う訳ではない。 従って、多少の細工は必要になる。 この写真は25HP03の取り付け板の四隅をカットした(削った)様子だ。

 25HP03の取り付け板はオリジナルのJA05A2よりやや小さいが、角のRが小さいため縁に当たってしまう。 それで四隅を2mmくらい削る必要がある。だいたい写真の程度で良いようだ。 なお下側に見えるパッキンは削り量の目安のためにそのままにしておいた。装着時には同じ寸法にカットする。

25HP03:端子の引き出し
 25HP03の接続端子は小さなラグ端子になっている。 NS-05のデバイディング・ネットワークからツゥイータに来る配線は先端が5mm幅のファストン端子になっておりそのままでは接続に無理がある。

 ネットワークからの配線に付いているファストン端子(メス)をカットしてしまいツゥイータの端子に直接ハンダ付けする方法もあるが、ここではツゥイータ側に別の線を付けて5mm幅のファストン端子(オス)に変換した。ファストン端子はホームセンターのカー用品売り場で容易に入手できる。

 なおツゥイータの端子間隔は狭いのでこのように熱収縮チューブで処理しておくと安心だ。 オーディオは見えない所の見栄えや出来映えも大切だと思う。(笑)

 なお、写真にないがネットワークから来るファストン端子(メス)にも熱収縮チューブを被せてショート防止しておいた。

Tweeterの隙間を埋める
 大きなマグネットだった元のTweeterの穴が開いており、25HP03には大き過ぎるくらいだ。概ね取り付け板でカバーできるが中央部分のオーバーラップは少な過ぎる感じがする。 バスレフ型のエンクロージャではダクト以外の所で空気漏れがあっては旨くない。 隙間ができないよう幾らか穴を埋め戻しておく方が良さそうだ。

 三日月型に加工した木板を縁に接着しても良いが、ここではエポキシ・パテを使ってみた。硬化剤と主剤が「太い金太郎あめ」のような円柱状になっているものだ。 それを20mmくらいカットし、良く練り合わせ概略整形してから貼付ける。 硬化前は粘土状だから整形も自由自在だが混合から10分くらいで固化が始まり、30分もすれば刃物でも歯が立たぬほどの固さになる。必要な分量だけをとって混合し、始めたら手早く済ませねばならない。

 なお、Tweeterを付けてしまえばパテ埋め部分は見えないのでこのままでも良いかもしれない。しかし『オーディオは見えない所の見栄えや出来映えも大切』・・・なので黒くペイントして奇麗にお化粧しておいた。(^_^)

25HP03に換装完了
 あとは配線を接続しユニットをネジ止めすれば換装・修理も完了だ。

 NS-05はバスレフ型だが、内部には粗毛フェルトの吸音材が緩く詰めてある。たぶん定在波対策だろう。 吸音材はバスレフのポートと反対側、即ちツゥイータ側に寄せて詰めてあったようなので元の位置になるよう確認しておく。

 スピーカには極性がある。デバイディング・ネットワークから来た赤色の配線がツゥイータの赤色の端子に来るよう接続する。間違えるとウーファーからの輻射と位相が反転する周波数で打消しによるディップが発生する。

 取付けネジ穴は微妙にずれているのでドリルで下穴をあけておいた。エンクロージャは密度の高いパーティクルボード(ホモゲン)だからかなり固くて、穴の加工をしておかないと木ネジが入って行かない。なお、パーティクルボードはネジの絞め換えが利かないので注意を。 ネジの締め付けはパッキン材が多少潰れる程度で十分だ。 埋め戻したのでオーバーラップは十分にあってエアー漏れは防げる。 それにあまり強く絞めるとプラスチックス製の取付け板がタワんでしまう。 このあたりは機械的な強度に不満のあるツゥイータなのだが、安価なのでやむを得ないところだ。

オリジナルの周波数特性
 さっそく音を出してみた。試聴による確認でも十分なように思えたが、折角なので周波数特性を実測してみた。 但し、無響室や標準マイクロフォンがある訳ではないので、定量的な測定ではない。 要するに交換前後での特性比較と言うことになる。

 クロスオーバー周波数(3kHz)の上下で旨く繋がっているのかと、ウーファー側とツゥイータとの音圧レベルに大きな段差が無いかを比較により確認しておく。

 なるべく周辺環境からの反響が出ぬよう部屋の外まで持って行き、屋外へ向かって音を出してみた。 環境ノイズの影響が少ないよう音圧レベルを加減した結果、おおよそ1W程度のパワーを与えている。 測定中は不気味(?)なスイープ音でご近所には少々ご迷惑だったかもしれない。(スミマセン)

 マイクロフォンは一般的なエレクトレット型を使い、レベル管理とプリアンプを兼ねて電子電圧計(ミリバル)に接続した。 周波数特性の観測には低周波帯をカバーする方のネットワーク・アナライザを使ってみた。 今ではポピュラーになった『パソコン+オーデイオ測定用ソフト』でも十分だが、この際少しでもネットアナの稼働率を上げる目論みもある。(

 写真は正常なR側のユニットを測定した結果である。こちらがオリジナルの状態であり比較の基準だ。 周波数特性にディップやピークが複雑に見られ、平坦とは感じないだろう。 しかしスピーカ・シスユテムの周波数特性はおおよそこんなモノである。むしろ良い方と言うべきか? まあ、一応はHi-Fi用なので。

 なお、こちら側のユニットも測定の終了後に同じようにツゥイータ交換を行なった。

ツゥイータを交換したNS-05の特性
 こちらが故障したツゥイータを25HP03に交換した方である。 L側のユニットと言うことになる。

 上の測定と極力同じ条件になるように測定している。 中音域の繋がり具合やウーファーとのレベル差も感じられないのでオリジナルに近い性能が得られていると思う。 これは、このテストの前に実際の音出しの時すぐに感じたことである。

 周波数特性で気付いたのは15kHzあたりである。(写真:青の矢印部分) むろん相対的な比較測定なのだが、オリジナルよりも高域特性が伸びたようだ。 オリジナルのユニットは経年変化でハイ落ちになっていた可能性もある。長い間にドームの剛性が落ちればハイ落ちにもなりそうだ。 なお、データ整理していて気付いたのであるが15kHz以上で急速に落るのは使ったマイク+ウインド・スクリーンの特性である。 但し私の耳では良くは聞こえない範囲なので再測定はやめることにした。 新旧の相対比較なのでこれでも十分だろう。

 さらに交換したツゥイータにあった「すり鉢状」の部分に起因するらしいディップも見られる。この部分はホーンの一種と考えて概略計算するとその辺りにディップが発生しそうなことがわかった。

                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 オーディオ機器は多様な音をじっくり聞いて最終的な判断をすべきだろう。 しかし、ある程度までなら測定器の助けで見分けることも可能だ。 むしろ最低限おさえておくべき基本の部分は測定による判定が向いている。 試聴で判断すべきは基本特性の更に上にある感性にかかわる部分にあるのではないだろうか? アマチュアのレベルなら『交換しました。良い音がしました』・・で済むのかもしれないが、それではちょっと物足りない。

 NS-05のツゥイータが断線した時点で幾つか選択肢があった。 捨ててしまうのもその一つだが、それは最後だ。 口径が120mmと小さなウーファーなのでデバイディング・ネットワークをパスしてフルレンジとして使うのも良さそうに思えた。 或はオークションで片側がNGのNS-05を待つと言う手もある。半年も待てば出て来そうだ。 しかし、それも芸がない話しなので代替品でどこまで行けるかやってみた次第だ。たまたま旨くマッチしそうなドーム型ツゥイータが存在したのは幸いであった。

 試聴結果は主観的表現になるので省略しようと思ったが少しだけ書いておこう。 暫く聞いた感じでは中・低域はまったくオリジナルのままだだと思えた。 周波数特性が伸びた関係か高音域が僅か華やかになったようにも感じる。オリジナルのちょっと眠い感じより寝覚めた気分だろうか。しかし、それはやや誇張した言い方だろう。 全体的な雰囲気はオリジナルのNS-05を損なわず、むしろ「変わり映えを感じない」と言うべきか。 何らかの変化を求め「改造」を意図したのではないのだから修理としては大成功だろう。 もちろん左右両側ともに交換したが、新旧を混ぜても違和感はないくらいだった。

 またもや特殊なモノの話しで単なる備忘録になってしまったようだ。 もしもツゥイータの飛んだNS-05があるなら交換してみると良い。僅かの費用と手間でうまく復活させることができたようだ。 他のスピーカ・システムでも同じように旨く行くのかはわからないが、やって見るくらいの価値はありそうだ。エンクロージャのサイズ・形状に影響を受けにくいツゥイータの交換は旨く行く可能性が高い。  de JA9TTT/1

(おわり)

2010年12月1日水曜日

【Audio】Repair a YAMAHA NS-05 Part 1

YAMAHA NS-05 Speaker
 写真はヤマハのNS-05と言う2ウエースピーカシステムである。すでに20年くらい経過している。数年前にリサイクルショップで見つけ、その後暫く聞いていた。購入直後のチェックでは左右とも特に異常はなく、大切に使われていたらしく外観も奇麗であった。 その後部屋の整理の都合で仕舞われていた。

 コンパクトなシステムながらも拘りを持って作ったスピーカらしい。 コーン型・ウーファー(120mm)もドーム型ツゥイータ(30mm)も大型のアルニコ・マグネットを使ったユニットが使われている。2個で10kgを軽く越えるので大きさの割にズッシリと来る。価格(1988年当時)は左右一対で¥58,000-だったそうだ。
 
 もともと多目的スピーカとして購入したものであるが、すっかりBGM用に定着してしまった。 120mmウーファーでは本格的Hi-Fi用には少々物足りないのは確かだ。 しかしSpecやお値段ほか何の情報や先入観もなしに鳴らしてみたら思いのほか良かったのだ。

Tweeter
 購入直後の確認では左右どちらも大丈夫だった。 ところが暫く振りに音を出したらすぐ異常に気付いた。 左側スピーカは高音が出ていないのである。 古いこともあると思うが、安価だったので間欠的に不具合(=半断線)が起こっていたのかもしれない。

 ネットでサーチしてみると、ツゥイータがNGになったNS-05の話しには結構ヒットする。 音に拘ったツゥイータだったのだろうが、耐環境性能では劣っていたのかもしれない。 定格耐入力は40Wもあるから一般家庭のBGM程度でオーバードライブする可能性は低いだろう。自室で聞いていて平均パワーは1Wもないくらいだ。だからツゥイータを飛ばしてしまったとは考えにくい。 どうやらボイスコイルと引き出し線の接続部分で断線が起こり易いユニットのようだ。

 写真では左に交換用のツゥイータ:25HP03を置いてみた。オリジナルのドーム径は30mmである。交換用は25mmなのでやや小さい。 オリジナルのようにドームが突出した構造は指向特性で有利だ。しかし事故の危険があるので普通はバリアを設けるべきだろう。 もっともバリアによっては何がしか音響特性に影響があるかもしれない。それを嫌ってかNS-05ではむき出しである。 交換用の方はドーム部分を窪ませることで危険を減らす工夫をしたようだ。但し「すり鉢状」の部分で音響特性に何らかの影響があるかもしれない。

 並べて置いた感じでは、取付け板の寸法もあまり違わないので旨くフィットしそうだ。
 
マグネット比較
 裏面の写真である。 左はオリジナルのユニット:JA05A2である。右が交換に使う25HP03だ。 アルニコ・マグネットを使い防磁型になっているJA05A2は重くて如何にも良さそうだ。 それに比べ25HP03のマグネットはとても小さい。完全防磁構ではないらしいので簡易な磁気シールドなのだろう。 おまけに取付け板がプラスチックス製なので一層軽い。

 3kHz以上を受け持つユニットである。ボイスコイルの振幅も小さいから、十分な磁力を持つマグネットなら厚みは小さくても十分だろう。 実際に単体で音を出してみた感じからして効率も悪くなさそうだ。 案外ネオジム・マグネット使用と言うのは本当なのかもしれないと思えて来た。(笑)

【参考:NS-05のウーファー】
 この修理では関係ないが使われている120mmウーファーである。同じようにアルニコ・マグネットを使っており、防磁型なのでがっちりシールドされている。 低域〜中域の3kHzまでを受け持っている。エンクロージャと共に本機の音色の殆どを決めてしまう重要なユニットである。 コーン部分には高音カットの構造もないようで見た感じフルレンジに近い印象だ。再生帯域は案外広いのかもしれない。

 内部のマグネットサイズまで伺い知ることは出来ないが耐入力電力から見て振動系はロング・ボイスコイル型であろう。 振動系の質量は大きめになるはずだから磁気回路を強化して効率を上げていると思う。かなり大きめのマグネットなのではないだろうか。 コーン紙はポリプロピレン樹脂製で軽量かつ剛性に優れしかも大きめのロール型フリーエッジが付いている。ダンパーも大きな振幅に耐えられるブックシェルフ型SP用の構造・形状だ。

【参考:デバイディング・ネットワーク】
 たいして高級なスピーカ・システムではないので、デバイディング・ネットワークはそこそこである。 12dB/octのLC型になっており、クロスオーバー周波数は公称3kHzである。

 コイルはフェライト磁芯入りでコンデンサはノンポーラ型ケミコンのようだ。 本来は見えない部分なので部品や構造はそれなりであるが、接着剤でガッチリ固めてあるのは素人細工のユニットとは違う部分だ。 こうした部品や配線は強固に固定されていないと何処かの周波数で「鳴き」が出る。 音を鳴らすと異音のする困ったスピーカシステムになってしまう。 接着剤には硬化後も柔軟性を保つゴム系が使ってある模様。 自作スピーカ・システムでも見習いたい部分だ。

取付けの検討
 本題に帰って交換品を仮置きしてみた。 取り付け板の縦横がやや小さいが多少の細工で旨く収まりそうである。 元のユニット用に大きなマグネットの穴が開いているので少し埋めた方が良さそうだ。

 真っ黒なユニットなので、オリジナルのイメージとはだいぶ違ってしまう。 しかし使用時にはサランネットを被せてしまうので気にはならないだろう。もちろん前のように良い感じに鳴ってくれればの話しだ。

                 −・・・−

 この際修理なんかするよりも新しいのを買った方が良いのかもしれない。 しかし廃棄してしまうのも勿体ない話しだ。 考えてみたら昔っから各社のスピーカ・ユニットを組み合わせたマルチウエー・スピーカ・システムを自作するのは普通のことであった。 だから類似したユニットを揃えればそこそこ性能の再現はできるだろう。エンクロージャ(箱)の形状寸法はツゥイータにはあまり影響を与えない。それにソフトドーム型スピーカは思ったよりも没個性的なものだ。手頃なユニットも見つかったのでやってみることにした。 de JA9TTT/1

つづく)←続きへリンク

2010年11月14日日曜日

【Audio】Dome Tweeter 25HP03

【ドーム・ツゥイータ:25HP03】
 スピーカ修理の話しである。 写真はART Audioと言う聞いたことのないブランドのチープなDome型Tweeterである。Tweeterが高音域用スピーカなのはオーディオをやらなくても知っているだろう。

 後ほど登場するが、2-Wayスピーカの高音域を受け持つTweeterが片側断線してしまった。音域を広くするためかデリケートなユニットらしい。過大な入力とかではなくても(経年変化で?)故障するようだ。 しかも古いものなのでメーカーも面倒は見てくれない。やむをえないので市販ユニットに交換して修理を試みることにした。

 このTweeterはφ25mmのドーム型である。断線したのはもう少し大きなφ30mmである。どちらもソフト・ドームなので音色は類似しているはずだ。またクロスオーバー周波数も3kHz(12dB/oct)と高めにとってあるから再生域に心配はない。φ25mmのドーム型ツゥイータの再生下限は2kHzあたりにあるからクロスオーバーとの関係も丁度良い。(実は、この安物ツゥイータには何にも仕様書が付いていないのだ・笑)

 音色のほか気になるのはインピーダンスと音響効率であろう。 インピーダンスは公称6Ωだが周波数によって変化するものだ。従って公称値がほぼ同等なら支障はない。 むしろ音響効率の方が重要だ。低域側スピーカと違い過ぎるとクロスオーバー周波数でうまく繋がってくれない。効率は振動系の質量や磁気回路の性能でかなり違って来る。 Tweeterの方が高効率ならアッテネータで合わせる事は可能だ。それが逆だと厄介であるが普通はあるまい。

【25HP03のマグネット】
 フェライト・マグネットが使ってある。ネオジム・マグネットだそうだが、見た目は普通のフェライトなのでどうもウソっぽい。(笑) 通販品が届いたとき、余りにも軽いので心配になった。 φ25mmの高音用なので大きなマグネットは必要ないと言えばそれまでだろう。しかしスピーカの磁気回路は強力な方が効率が良いのも確か。

 これが振動系の質量が大きな低域用スピーカならダンピングにも関係するのでマグネットは大きい方が明らかに有利だ。コーン紙の口径ばかり大きくても、マグネットが貧弱ならそのスピーカは安物だろう。

 秋葉原で見かける無名スピーカ・ユニットにも時々良いものがある。コーン型SPならエッジ部分とマグネットに着目する。それでそのスピーカの性格(用途)がわかるくらいだ。 無線機に良いスピーカは不要と言う人がいるが、正しく音質レポートを返すためにもクセのない良いものが欲しい。 逆にCW専門なら妙な共振さえなければフィルタ的な周波数特性が良いのかもしれないが。 なお、これから修理するのは無線機用ではなくて一応はHi-Fi用だ。(笑)

 秋葉原に出掛ける暇がなかったのでコイズミ無線の通販を利用した。どんなTweeterなのか現物を見るまでは心配だったが単体テストしてみたら思ったよりも良さそうだ。表から見た感じも悪くない。(@¥1,450-) 交換したらあらためてレポートしてみたい。 de JA9TTT/1 

つづく)←続きへリンク


2010年11月9日火曜日

【書籍】The ARRL Handbook 88th ED

【ARRL Handbook 2011】
 2011年版ARRLハンドブックが届いた。先日Amazon.co.jpに注文しておいたものだ。円高の恩恵を受け、¥3,837(税込み)であった。ここで言う税金とは消費税のことである。送料は無料だ。

 現在、米ARRLのWebではボーナス・プライスの$49.95-でハードカバー版(通常$59.95-)が購入できる。もしハードカバーが欲しいなら直輸入も良いだろう。しかしソフトカバーで良いなら、送料いらずのAmazon.co.jpからの購入がお得だ。

 肝心の中身だが、前のHandbookを買ってから10年以上経過しているなら非常に目新しく感じるはずだ。 しかし昨年購入したのなら代わり映えしないのでガッカリするかもしれない。ARRL Handbookは2010年版から編集方針が大きく変化した。2011年版はその方針を継承している。おもに情報を追加したマイナーチェンジ版のイメージである。分厚い電話帳のようなボリュームの1,416ページだ。

 現在のアマハンは各章ごとにハンドブック(=便覧)らしくまとめられている。以前のような『製作記事』は少しになり『無線機製作読本』の性格は薄くなっている。(もちろん、非常に面白い製作記事も依然残ってはいるのだが・・・)


【Do-It-Yourself:Wireless Technology】
 Handbookとして力を入れている部分はどこか? 要するに便覧(ハンドブック)らしく自作や HAM局の運用に必要な幅広い情報が掲載されている部分だろう。 あたかもハンドブックを見ればHAMの大抵の事がわかることを目指しているような総合的な解説書の色合いが強くなった。

 回路理論の解説は勿論だし電子デバイスの基礎も網羅している。 そして新しい所では表面実装部品の扱い方も詳しい。それに合わせた基板ランドパターンの例なども載っている。温故知新な記事もない訳ではないが、新しい情報にも結構敏感なのだ。

 もちろん昔ながらの同軸コネクタの結線方法も健在だ。どこぞの国のようにM型コネクタさえマトモに組立てられないHAMの大量発生を防ぐ配慮であろうか。(笑)

 裏表紙:Do-It-Yourselfのフレーズはアマチュア無線を的確に表現していると思う。 電気通信が進歩した現代において、単に機器を入手し通信するだけならスマートフォンやi-Padの方が気が利いている。 では何がアマチュア無線の面白味かと言えばD-I-Yにある。たとえ無線機は購入したとしても、より良く通信するにはアンテナと言った部分にD-I-Yは不可欠だ。

 免許や法令の範囲内とは言え、電波形式、周波数、電力・・・そしてアンテナの素材・構造や通信機器の内部に至るまで、自身で幅広くチョイスできるのはアマチュア無線:Ham Radioだけである。 D-I-Yした無線機でオンエアなんてプロの通信士にも認められていない。 その部分を捨ててしまったのでは面白さも一緒に捨てたに等しいと言うことなのだろう。 de JA9TTT/1

(おわり)