【TRIOのLow Pass Filter : LF-30 その3】
【改造検討した回路】
トリオ(現Kenwood社)製・30MHzのローパス・フィルタを75Ωから50Ωに改造して活用しようと言う話の最終回です。この話しもそろそそ片付けることにします。(前回:Part2は→こちら)
オリジナル回路の検討と実測した部品定数でシミュレーションを行ないました。 最近のリグやアンテナは基本的にインピーダンスは50Ωになってますのでマッチするように改造します。 オリジナルのLF-30は昔のHAM局の実情に合わせて75Ωの設計になっていました。なお、昔のHAM局が75Ω系だったのはダイポール系のアンテナが主だったからです。
実測評価していて75Ω用と言う根拠には疑問があることがわかりました。 部品定数など総合的に考えると、このフィルタが最適な動作をするインピーダンスは44.2Ωではないかと考えられました。従って75Ωよりもむしろ50Ωの方に適していると言えます。 しかし設計遮断周波数が少々高めで、30MHz用としてはやや最適ではないようでした。 そこで、実験の意味もあり全般に見直した上で改造します。
改造指針として:(1)遮断周波数は約33MHzくらい。(2)IN/OUTのインピーダンスは50Ωにする。(3)改造はなるべく既存の部品を活かす。(4)最大電力は100W程度あれば良い・・・・とします。 以上の指針で決めたのが上図の上から3番目の回路です。 結局、33pFのコンデンサ(但し耐圧は高いこと)を8個付加するだけの改造で様子を見ます。
【改造したLF-30】
基本的にコイルはそのままにします。 銅の円盤とテフロンシートで作ってあるコンデンサもそのまま使います。
従って既存コンデンサの各部分に33pFのセラミックコンデンサを2つずつ追加しました。
33pFの取付けは極力リード線を短くすべきです。その言う意味で、写真の方法は最適ではありません。 銅円盤のコンデンサのところに極力リード線をつめで最短でハンダつけする方が良いでしょう。 33pFとリード線インダクタンスで共振が現れます。
そのあたり、実際に評価してみて問題がありそうならやり直しましょう。
【特性シミュレーション・1】
改造に先立って特性シミュレーションを行ないました。 これは既出ですが、あらためて掲載します。
赤色のトレースがオリジナルの定数によるもの。実測値に基づいた部品定数になっています。 IN/OUTのインピーダンスは仕様の75Ωです。
グリーンのトレースは、部品定数はオリジナルのままですが、IN/OUTのインピーダンスを44.2Ωにしています。 良く見てもらうとわかりますが、通過域の平坦度がよくなっています。 これは反射による影響がなくなるからで、フィルタ本来の特性と言えます。
青のトレースは仮にC=180pF、IN/OUT=50Ωとして設計したときの特性です。
紫色のトレースはC=186pFの特性です。180pFは標準的な値のコンデンサでは済まないので実際には実測値+33pF+33pFの約186pFでやってみます。 一応、33pFのコンデンサも実測して、偏りが生じないようにしておきます。
【特性シミュレーション・2】
通過帯域の上端付近の特性を拡大表示しています。
オリジナルの状態で最適なIN/OUTになっているグリーンのトレースの通過域が一番平坦な特性になっているのがわかります。
青色と紫色のトレースは思い切って遮断周波数:fcを下げたため、通過域の凹みがやや大きくなっています。 そのためパワーロスが大きく見えるHAMバンドが出現します。 それを嫌ってオリジナルではかなり高めの遮断周波数に作ってあったようでした。 ここでは、少々ロスが増えても良いので検討した図(3)の回路定数で行くことにします。
【実測特性・1】
改造後の実測特性です。 部品定数は回路図(3)の値です。 見たところまずまずの特性になりました。
通過域にやや凹みが見られるのはシミュレーション通りですが、あまり支障無さそうなのでこれで行きましょう。 減衰域の切れ味はたいへん良好です。 このあたりは、オリジナルと同じ段数なので、傾斜に変化は見られません。 シールドも悪くないらしく、十分な減衰量が得られています。
【実測特性・2】
通過域の詳細を見るために、縦軸の1目盛りを10dB→2dBに変更して表示しました。
通過域の凹みが2dB弱あるのでいま一つかもしれませんが、実際の使用ではあまり影響はないだろと思います。 測定器用のフィルタなら不合格かもしれませんが、無線機の外付け高調波抑止用フィルタですから少々の凸凹は問題ではありません。むしろなかなか良好な特性です。(参考:この凸凹は損失の発生と言うよりもインピーダンス変換が行われた結果の電圧変化と捉える方が合理的なようです)
【実測特性・3】
減数域の様子を見るために縦軸の一目盛りを20dBにしています。 また周波数範囲も上限500MHzにアップしました。
33pFのリードインダクタンスとの共振と思われるピークが2箇所見られます。 但し、ピークとは言っても60dB以上減衰しているので支障はなさそうです。 問題があれば33pFの実装方法を再検討しようと思っていましたが、概ね大丈夫そうです。 そもままで行くことにします。
以上、TRIOの古いローパス・フィルタ:LF-30の解析と50Ω化改造の経緯です。 外装が汚くなっているので、塗り直して新しいラベルを貼れば完璧でしょう。 オリジナルの仕様は50Ω用なので何となく気持ち悪かったのですが、改造して特性の確認も済んだので、これで気持ちよく使えるようになりました。
☆ ☆ ☆
【フィルタの特性評価と実際の使われ方】
ここでは改造したフィルタを題材にして、LPFが実際に使われる際の特性について考察してみましょう。
このLF-30の仕様書はPart 1に掲載してあります。他社のLPFも恐らく同じだと思いますが、仕様書に掲載されている周波数特性図は言わば『まやかし』なのです。 ウソではないのですが、測定方法と現実の使われ方の間には大きな違いがあるからです。
カタログの周波数特性は、この図の(A)のような方法で採取しています。 上の写真も同様で、信号源インピ−ダンスが50Ωの発振器と、入力インピーダンスが50Ωのレベル測定系の途中にフィルタを挿入して実測している訳です。 もちろん、測定方法やその測定結果に誤りがある訳ではありません。 問題はLPFが実際に使われる状態とは異なる測定方法なのが原因です。
上図(B)のように、アンテナ系が、如何なる周波数で見ても50Ωである・・・と言うようなことは殆どあり得ません。 もし本当にそうなら、どこで送信しようとVSWR=1です。 良くできたダミーロードならいざ知らず、そんなアンテナなどないでしょう。 アンテナの設計周波数で、尚かつ良く調整されていればそこは50Ωかもしれませんが、それ以外の周波数では50Ωなどと言うことはあり得ないのです。
このように考えると、いくら50Ωの測定系で良い特性が得られたとしても、それを外れるインピーダンスのところでは、思っている周波数特性とはずいぶん違うのではないかと言う疑問が生じてきます。 フィルタが効いたり効かなかったりするのはそれが原因ではないだろうかと・・・。
【高い負荷インピーダンスのケース】
アンテナ系を負荷にした実測もある程度可能ですが、バンド外の電波輻射は旨くないし、個別ケースの話しにしかなりませんから、ここはシミュレーションで行くことにします。負荷を変えて傾向から判断するのが目的です。
ここでは30MHz以下の通過帯域の特性は無視します。高調波の減衰を見るのが目的ですから。 まずはアンテナ系のインピーダンスが50Ωよりも高い時の特性です。 100Ω、1kΩ、10kΩそして100kΩとした場合の減衰特性です。 アンテナ系が数kΩになることは十分考えられますが100kΩ以上になるケースは考えにくいのでインピーダンスが高い方へ外れた場合の特性がこれで予測できる訳です。
もちろん、良くおわかりのお方ならアンテナ系が「純抵抗」になるなど「有りえん!」と怒られるかもしれません。 そう思って容量性(C性)や誘導性(L性)を付加したシミュレーションもやってみました。 たしかに、フィルタ内部の最終部分にあるコイルやコンデンサとの共振が見られるようになって、この図のような奇麗な遮断特性ではなくなります。 しかし、わずかなピークが通過帯域のやや上側に現れる程度であって、その部分を除けば図の特性と大差は無いのです。 従ってこの図で代表させてもらいました。
要するに、この形式のLPFは負荷側のインピーダンスが高い方へ大きく外れても十分良く効く特性を持っていると言うことです。 50Ω系で測定した結果その物と完全に同じではありませんが高調波抑止に十分な効果があることは実証できたと思います。
【低い負荷インピーダンスのケース】
上記と同様に、今度はアンテナ系のインピーダンスが低くなった場合のシミュレーションを行なってみます。
インピーダンスは25Ω、10Ω、1Ω、0.1Ωです。 この場合も通過域の特性は無視します。 0.1Ωと言うのは負荷がほぼショートのような状態になった想定です。 高周波系ですから、完全なショート状態と言うのはまず有り得なくて、むしろ完全なショート状態の実現には技術を要します。 従って、これでおおよむね低い方へミスマッチした状態におけるフィルタ特性の評価になっているでしょう。
もちろん、C性やL性の負荷も想定したシミュレーションも行ないましたが、結果はグラフで示した純抵抗負荷の場合と類似であって、低い方はこのシミュレーションで十分推定は可能でした。
☆
従来、こうしたHAM局のアンテナ系に挿入して使うローパス・フィルタの特性と実際の高調波除去効果には疑問を持ってきました。 アンテナ系があらゆる周波数で50Ω(75Ω)であるなど考えられませんから、下手をすれば入れない方がマシのフィルタにさえなっているのではないかと疑ってきました。 しかし、それは杞憂であって効果的に高調波の抑止に役立つていることがわかったのです。
もちろん、運が悪いこともないとは言えず、高調波がジャスト受信されるインターフェアのケースにあってはハイパワーだとそこでは効果も限定的でしょう。-100dB以上の減衰量が有っても駄目かもしれません。 或は基本波により対象機器の内部で自ら高調波を作り出しているようなケースでは効果はまったく期待できません。 何が原因でインターフェアが起こっているのかを見極めないと効果的でない対策に走る可能性もあるのです。
☆ ☆ ☆
【出力インピーダンスが低く負荷側が高いケース】
以下の考察は、上記以上に様々な議論を呼びそうです。 貴方のお考えをどうこうしようと言うつもりは毛頭ありませんから、予めそのおつもりでご覧ください。
上記のように、アンテナ系のインピーダンスがフィルタの減衰域で必ずしも(否、必然的に!)50Ωではないとしても十分に効果的であることはわかりました。 ところが、それだけではありません。
実のところ無線機の出力インピーダンスは50Ωではないのです。 スペアナやネットアナでは測定系の信号源インピーダンスはすべて50Ωになっています。これは仕様書にも書いてあってウソでありません。その50Ωの精度まで規定しているのが普通です。
では、実際のHAM局ではどうでしょうか? まさかIC-XXXやTS-YYY、さらにFT-ZZZの出力インピーダンスは50Ωではないでしょう。 いや、「50Ωだって書いてあるヨ!」と仰るかもしれません。 たしかに、「Output Impedance : 50〜75Ω」なんて書いてある例も見ます。 しかし、それはそのRigが想定している負荷インピーダンス(アンテアナ)が50Ω系なのであって、トランシーバ(送信機)の内部インピーダンス;Rgは50Ωではないはずです。 もしも本当にそのRigの内部インピーダンスが50Ωだとしたら送信電力をどこかでロスしています。まあ、そんなバカなことはないでしょう。
たぶん、現実には数Ω以下の内部インピーダンスなのです。 特にNFBが掛かった半導体式のパワーアンプなら一段と内部インピーダンスは低いでしょう。 定電圧源に近い特性になっています。 (注:NFBの掛かっていないビーム管ファイナルの送信機の内部インピーダンスは逆に50Ωよりも高くて、誇張的に言えば定電流源に近いです)
そのような想定で、送信機側の内部インピーダンス;Rgを1Ωとし、また負荷側のインピーダンスが高い方へ外れるケースでシミュレーションしてみました。 このようなケースでもLPFは良く効いてくれると言う結論で良いでしょう。(上図)
【出力インピーダンスが低く負荷側も低いケース】
同様に、負荷が低い方へ外れたケースもシミュレーションしてみました。
上の方にも書きましたが、純抵抗負荷ではなくC性やL性の負荷ではどうかと言う検討もしましたが、代表してこのグラフを掲載します。 要するに、そうしたケースでも良く効く特性であることがわかっています。
ごく単純なπ型やT型のローパス・フィルタも十分な段数を重ねた構成を採れば高調波の抑止効果は充分得られることがわかりました。 これは、IN/OUTが50Ωと言った『理想的な』測定系の話しだけではなく、実際のアンテナ系に挿入してもその効果は十分期待できます。長年の疑問も解消したのでこれで安心して眠ることができます。(笑)
☆ ☆ ☆
地デジ化でTV全般がUHF帯に移行してくれたのは非常に有難いことでした。それだけでインターフェアは40dBくらい効果的なはずで、しかもEMC(電磁的な不干渉性)対策がまったく不十分だった古い家電品の駆逐にもたいへんな効果があったのです。
しかし、高感度な機器も多くなった結果、わずかな高調波でも支障の出るケースもあって、LPFの出番がなくなった訳ではありません。 旧型のLPFでも特性を良く吟味し実用になることを確認しておけば有効活用のチャンスもあるでしょう。
アンテナ系の使用周波数外のインピーダンス変化についての認識はあまりされていないように思います。 また理想系で測定した周波数特性で云々しているケースも良く目にしますのでずっと気になっていました。 HAMの用途にあっては測定数値の精度を云々するより、十分効果的であるか否かを見ておく方が意味があるでしょう。 そのような視点で見直してみたのがこのBlogの締くくりです。de JA9TTT/1
(おわり)
2014年8月1日金曜日
2014年7月10日木曜日
【書籍】And I love the radio !
【ラジオが好きなんです!】
【トラ技2014年8月号に】
紹介するのも、いささか手前味噌、我田引水のようで気が引けるのですが、10日発売のトランジスタ技術誌8月号に記事を書かせていただきました。
このブログ・タイトルのように「ラジオが好き!」なお方に楽しんで頂けるなら嬉しいので、紹介しておくことにします。(まあ、誰も紹介なんかしてくれないでしょうから自分でPRでも・・・笑)
メイン特集は「トランジスタ工房」と言う記事でこちらもなかなか面白い内容が詰まっていますから、そちら目的にお求めも損ではないと思います。(私の担当じゃありません)
【ラジオ好きに特集】
←いささか各章のタイトルの付け方がハッタリっぽい気もしなくもありませんが編者お好みで付けている部分もあるので勘弁してやって下さい。m(_ _)m
活字離れ・書籍離れが進んだ昨今では、本は読んでもらってナンボのものなので目次から本文の方へしっかり誘導できなくちゃ駄目なんでしょうね。(笑)
技術誌なんだし中身はタイトルから少々割り引いてもらって丁度良いと思いますが、そんなに外れちゃいないとも言えるので例によって「ウソっぽい」なんて目くじらを立てないようお願いしておきます。
全9章で見開きの2ページで一つのパートになるよう考えたのですが図面や写真を豊富に入れると意味ある内容は無理でした。実際は章立てに変更され、およそ倍くらいのボリュームになっています。ごくサワリだけの紹介記事ではなくて本気の内容を心がけたつもりです。もちろん至らぬところも多々あるとは思いますが・・・。 なお、どの章からつまみ食いしてもわかるようになっています。興味のある部分からお読み下さい。
【中身みほん?】
最初の方の章はラジオのごく基本的なことが書いてあります。但し「ラジオの技術」を詳細に網羅するには幾らページがあっても無理と言うもので、ラジオ理解のためのほんの入り口程度になっています。
本命は第4章のデバイス・ガイド以降であって特に第5章からの製作編です。 写真の第9章はその最終章でDSPラジオICを扱っています。 DSPラジオのモジュールについては過去に幾つか記事も見かけましたが、ICチップレベルで扱うのはあまり無かったと思います。
詳しくは長くなってしまうので、読んでのお楽しみにしますが、実際出来上がったDSPラジオは実用的な性能なので興味本位で作った物が実用品にもなるので、聞く方の「ラジオ好き!」にもお奨めできそうです。
☆
【楽屋裏】
「ラジオ製作の素(もと)」と言うテーマで打診があったのは4月の初めでした。 ラジオの歴史はいささか長いので原理・原則の部分は過去の良書が幾らでも存在します。今さら私ごときが気負ってみところで「ラジオの本質」など簡単に何とかなるような話しではありません。 それに締め切りは僅か2ヶ月後の5月末とあっては、とても手に負えないのは目に見えていました。
そもそも「素(もと)」とは何でしょうか? いろいろ考えて、具体的に「鳴るラジオ」が作れるための「要素」のことだろうと結論付けました。
その「要素」には何があるのだろうか? 部品レベルから集めてラジオを作るには何が必要なのだろうか? 結局、2014年の「いま」手に入るラジオ部品にはどんな物があり、それらをどの様に料理すれば聞こえるラジオが作れるのかと言う「具体的な情報」こそが「ラジオ製作の素」になるのでしょう。
・・・と言う訳で、学問めいたものは無くて実用情報ばかりです。 それではトラ技誌の品位を貶めないか、いささか気にはなりましたが、ここはプラクティカルな内容で纏めることにしました。ですから自前で評価した結果とか、お値段なんかの実用情報も盛込んであります。
☆
そのあたりずっと気になっていたので「トラ技」の意向を伺ってみました。 端的に言えば、いまのトラ技誌にとって「個人読者」が一番大切と言うお話しです。 かつては企業の現場向け情報誌だったこともありました。 いまでもその傾向がない訳ではありませんがそれが決定的に重要とも言えない状況にあるようです。 むしろ個人で電子の世界を楽しむ人たちに有用な情報を提供する雑誌でありたいと言うのが昨今だそうです。 それならばラジオ好きが喜びそうな企画もわるくありません。ちょっとだけホッとすることができました。
読んだらいろいろご批判もあだろうと思いますが、ここはお手やわらかで。もちろん前向きな提案や要望など後々積極的に反映したいと考えています。
昨今のトラ技誌に目をやるとかしこまった記事ばかりではなく、カジュアルな「楽しめる」記事も数多くなっているようです。 頭の痛くなるテーマばかりではありませんから一度ご覧になることをお勧めします。 de JA9TTT/1
(おわり)
【追記:訂正】
トラ技2014年8月号の回路図の一部に修正があります。
P170 図3で、IC1:Si4825-A10の配線にミスがありました。 9番ピンからR1を通る配線は、ピン14番のラインに接続されるのが正しいです。 16番ピンからのラインではありません。
左図の×印の部分をカットし、その下のラインの赤丸の部分に接続します。 なお、間違えて配線してあってもICが破損することはありません。 修正すれば大丈夫です。 入稿した際の図面も確認しましたがトレースで発生したミスを見落としたようです。 修正の上、お詫びいたします。
以上です。(2014.11.4)
【トラ技2014年8月号に】
紹介するのも、いささか手前味噌、我田引水のようで気が引けるのですが、10日発売のトランジスタ技術誌8月号に記事を書かせていただきました。
このブログ・タイトルのように「ラジオが好き!」なお方に楽しんで頂けるなら嬉しいので、紹介しておくことにします。(まあ、誰も紹介なんかしてくれないでしょうから自分でPRでも・・・笑)
メイン特集は「トランジスタ工房」と言う記事でこちらもなかなか面白い内容が詰まっていますから、そちら目的にお求めも損ではないと思います。(私の担当じゃありません)
【ラジオ好きに特集】
←いささか各章のタイトルの付け方がハッタリっぽい気もしなくもありませんが編者お好みで付けている部分もあるので勘弁してやって下さい。m(_ _)m
活字離れ・書籍離れが進んだ昨今では、本は読んでもらってナンボのものなので目次から本文の方へしっかり誘導できなくちゃ駄目なんでしょうね。(笑)
技術誌なんだし中身はタイトルから少々割り引いてもらって丁度良いと思いますが、そんなに外れちゃいないとも言えるので例によって「ウソっぽい」なんて目くじらを立てないようお願いしておきます。
全9章で見開きの2ページで一つのパートになるよう考えたのですが図面や写真を豊富に入れると意味ある内容は無理でした。実際は章立てに変更され、およそ倍くらいのボリュームになっています。ごくサワリだけの紹介記事ではなくて本気の内容を心がけたつもりです。もちろん至らぬところも多々あるとは思いますが・・・。 なお、どの章からつまみ食いしてもわかるようになっています。興味のある部分からお読み下さい。
【中身みほん?】
最初の方の章はラジオのごく基本的なことが書いてあります。但し「ラジオの技術」を詳細に網羅するには幾らページがあっても無理と言うもので、ラジオ理解のためのほんの入り口程度になっています。
本命は第4章のデバイス・ガイド以降であって特に第5章からの製作編です。 写真の第9章はその最終章でDSPラジオICを扱っています。 DSPラジオのモジュールについては過去に幾つか記事も見かけましたが、ICチップレベルで扱うのはあまり無かったと思います。
詳しくは長くなってしまうので、読んでのお楽しみにしますが、実際出来上がったDSPラジオは実用的な性能なので興味本位で作った物が実用品にもなるので、聞く方の「ラジオ好き!」にもお奨めできそうです。
☆
【楽屋裏】
「ラジオ製作の素(もと)」と言うテーマで打診があったのは4月の初めでした。 ラジオの歴史はいささか長いので原理・原則の部分は過去の良書が幾らでも存在します。今さら私ごときが気負ってみところで「ラジオの本質」など簡単に何とかなるような話しではありません。 それに締め切りは僅か2ヶ月後の5月末とあっては、とても手に負えないのは目に見えていました。
そもそも「素(もと)」とは何でしょうか? いろいろ考えて、具体的に「鳴るラジオ」が作れるための「要素」のことだろうと結論付けました。
その「要素」には何があるのだろうか? 部品レベルから集めてラジオを作るには何が必要なのだろうか? 結局、2014年の「いま」手に入るラジオ部品にはどんな物があり、それらをどの様に料理すれば聞こえるラジオが作れるのかと言う「具体的な情報」こそが「ラジオ製作の素」になるのでしょう。
・・・と言う訳で、学問めいたものは無くて実用情報ばかりです。 それではトラ技誌の品位を貶めないか、いささか気にはなりましたが、ここはプラクティカルな内容で纏めることにしました。ですから自前で評価した結果とか、お値段なんかの実用情報も盛込んであります。
☆
そのあたりずっと気になっていたので「トラ技」の意向を伺ってみました。 端的に言えば、いまのトラ技誌にとって「個人読者」が一番大切と言うお話しです。 かつては企業の現場向け情報誌だったこともありました。 いまでもその傾向がない訳ではありませんがそれが決定的に重要とも言えない状況にあるようです。 むしろ個人で電子の世界を楽しむ人たちに有用な情報を提供する雑誌でありたいと言うのが昨今だそうです。 それならばラジオ好きが喜びそうな企画もわるくありません。ちょっとだけホッとすることができました。
読んだらいろいろご批判もあだろうと思いますが、ここはお手やわらかで。もちろん前向きな提案や要望など後々積極的に反映したいと考えています。
昨今のトラ技誌に目をやるとかしこまった記事ばかりではなく、カジュアルな「楽しめる」記事も数多くなっているようです。 頭の痛くなるテーマばかりではありませんから一度ご覧になることをお勧めします。 de JA9TTT/1
(おわり)
【追記:訂正】
トラ技2014年8月号の回路図の一部に修正があります。
P170 図3で、IC1:Si4825-A10の配線にミスがありました。 9番ピンからR1を通る配線は、ピン14番のラインに接続されるのが正しいです。 16番ピンからのラインではありません。
左図の×印の部分をカットし、その下のラインの赤丸の部分に接続します。 なお、間違えて配線してあってもICが破損することはありません。 修正すれば大丈夫です。 入稿した際の図面も確認しましたがトレースで発生したミスを見落としたようです。 修正の上、お詫びいたします。
以上です。(2014.11.4)
2014年7月1日火曜日
【電子管】Electron tubes popular in QRPers
【電子管・写真集】QRPerにポピュラーな真空管
【QRP用真空管】
もっぱらQRP用に作られた送信管がある訳ではありません。 巷の受信管を工夫するのもその方法の一つです。 それでも幾つかポピュラーなQRP向き真空管がありました。
但しポピュラーとは言っても1970年代の話しですから、どれほどいまに通用するのかはわかりません。
単に真空管写真を並べただけでは「真空管コレクター」に成り下がりますが、見たことも無い物のリストを掲載しただけではイメージできないでしょう。ここでは紹介の意味を込めて写真集で綴ります。
もちろん、いまどき真空管など実用的なテーマではなくて単に眺めて楽しむもの、あるいは新たなコレクションの切っ掛けくらいかも知れません。 しかし何時かはその波が大空へ飛び立つことを夢見ながら構想(妄想?)するのもまた楽し。 まぁ、いつものようにお暇ならどうぞ。まったくの暇つぶし用ですからネ。(笑)
☆
【国際的なQRP用真空管一覧】
おそらく、QST誌あたりがオリジナルだったかも知れませんが、そんな一覧があったことを思い出します。昔の手書きメモが残っていました。
それに幾つかデータを足して一覧にしました。 それにしても古い球が多いです。 どれほどポピュラーだったのかはわかりませんが確かにQRPな球が並んでいます。 本質的にハイパワーが難しい「電池管」が多いのは必然でしょうか? 以下,手元に有った現物を簡単なコメント付きで紹介します。 もしも興味が湧いてきたら左の写真をクリックして大きな絵でじっくり堪能してください。 登場はこの表の順になっています。
【6J6W / 6101】NEC製
6J6はVHF用の双三極管です。 カソードが共通になっていて少し使いにくい球です。
電子走行時間を短くするためカソードとプレートの距離を縮めています。プレート・グリッド間容量:Cpgを少なくし、しかも放熱してプレート損失を十分確保するために変わった電極構造になっています。
Push-Pull形式の水晶発振器で3W程度のパワーを目指すのに相応しいのですが、JAでは発振管=終段管は認められません。(注:保証認定の場合) 発振段を別に設けてPush-Pullのアンプで使うのが適当でしょう。
6J6W/6101と言うのは6J6と電気的特性は同じで高信頼度・耐振構造のもです。
【955】RCA製
おなじみエーコン管(どんぐり管)です。 小さな電極の三極管が一つ封入されています。(acorn tube←リンク)
955と言えばスーパーリゼと言うくらいVHF帯の黎明期には定番だったそうです。戦前からあった真空管でした。
ごく少ないパワーでも混信が少なく見通し距離の通信で済むVHF帯なら送信にも使えます。 スーパーリゼのバイアスを変えて自励発振させて使うトランシーバ向きと言うことかも知れません。レッヘル線を使った同調回路で144MHz帯以上も可能ですがHAMバンドの広い50MHzあたりが良いのでしょうねえ。
写真後方は955用のソケットですが、すこぶる装着しにくく事故になり易いので十分に注意してください。
【3A5】RCA製
50MHzのポータブル・トランシーバと言えば3A5と言うくらい1960年代に流行った双三極球です。 まだ高周波用トランジスタが高価で庶民には縁遠かったころ、こうした電池管がポータブル無線機の電子デバイスでした。 フィラメントを乾電池で点灯し、プレート電圧:B+には積層電池を使いました。67.5V等の高い電圧の電池が市販されていました。
受信時には超再生検波(スーパーリゼ)を行ない、送信時には自励もしくは水晶発振させます。 残り片側は低周波増幅に使います。受信時にはイヤフォンを鳴らし、送信では変調管にします。マイクにはカーボン型を使いました。 そうした形式のトランシーバはもちろん保証認定など通りませんからごく短距離用の無免許トランシーバでお遊び程度にしか使えません。もしも「大っぴら」にオンエアすれば無線設備基準に抵触するはずです。(周波数不安定もあるが主にスプリアス輻射が問題)
Push-Pullのアンプで使うのが良いです。 プレート・グリッド間容量:Cpgが大きいですからHF帯と言えどもタスキがけ式の中和が必要です。2ステージの送信機の終段にしてきちんと使えばもちろん正式のQRP送信機にもなりえます。
【6HA5】Westinghouse製
VHF帯用の高周波増幅用三極管です。 上のリストにはありませんが、「6F4」の手持ちが無かったのでピンチヒッターとして登場してもらいました。 6F4は955とおなじエーコン管で、6HA5とは形が違います。
V/UHF用の受信管は電極が小さくできていて、外形そのものもミニチュアです。 排気チップまで含めたガラス部の高さは1.5インチしかありません。mt管としても最小サイズでしょう。
6HA5はフレームグリッド構造の高性能管でいま見ても素晴らしい性能です。6m帯クリコンのTopに使ったらLow-Noiseでしょう。 スーパーリゼに使う例は目にしませんが良好だろうと想像されます。 送信用としては出力0.5〜1Wが安全な範囲です。 入力容量が小さく、gmも大きいのでVXO回路にも向いています。
【12AU7】松下電子工業製
Low-μな三極管として代表的な双三極管です。 汎用管であってQRPな送信機にも使えます。
但し、三極管なので中和が必要です。 どうしても中和は面倒ならGG-Ampの手もありますがいま一つパッとしない感じです。 できたらPush-Pull形式でタスキがけ式の中和をとって使いたいものです。
非常にポピュラーな真空管なので、ごくありふれていますがオーディオでも使っている関係で価格はだいぶ高騰しています。 そのかわりお金さえ出せば容易に新品が買えます。欧州系ではECC-82が同等。数字管は5814Aが同等ですがヒーター電流は幾分多くなります。 写真はもちろんタダの中古品です。(笑)
【6C4】United製
写真後方に見える12AU7の片割れです。 従って電気的な特性はまったく同じです。 三極管が一つしか封入されていないのでプレート損失の点では幾分有利なはずですが規格上は同じ値のようです。
オーディオ関係では12AU7の方を使うことが殆どですが、高周波関係では6C4も結構使われています。 これは受信機の保守用に準備してたもので、ミキサー回路に使っていた筈です。 現用品もまず劣化しないので交換するチャンスは無いでしょう。
ブランドのUnitedと言うのはたぶん商社だと思います。製造したメーカーはわかりませんが作りから見て古臭いので東欧製かもしれません。一応、Made in U.S.Aとはなっています。NOSな球を再印刷したのかも知れません。hi
【3A4】Tung-Sol製
ある程度パワーが出る送信機用に作られた電池管です。 五極管であって第二次大戦〜朝鮮戦争あたりの米陸軍用無線機に使われていました。(TVドラマ「コンバット」に良く登場した有名なBC1000トランシーバなど)
もちろん、低周波増幅にも使えますがフィラメント電流が大きいので電池が電源のアンプには向いていません。 また電池管は安易に低周波回路に使うとマイクロフォニックノイズが出るので要注意です。
3A4は周波数上限が低い関係でどちらかと言えばHF帯向きでしょう。 50MHzでも使えないことはありません効率が悪くても仕方ありませんね。 VHF帯にはあとで出て来る3B4の方が良いです。
電池管は直熱なので数秒で起動しますので受信時に送信機はフィラメントOFFでも行けます。意外に省電力と言えるかも知れません。 但し、フィラメントをON/OFFしながらのブレークイン交信は無理なので連続点灯しなくてはなりません。
【3D6 / 1299】メーカー不詳
3D6も電池管です。 ロクタル管の直熱ビーム管です。 ソケットが珍しいので良くわかるように撮影してみました。 ピンは8脚ですが特殊なロックイン・ソケットと言うものを使います。 センターキーの部分でソケットにロックされ抜けにくいのでスパイ用トランシーバには案配が良さそうです。(笑)
ロクタル管はどれも大きさが揃えてあります。 QRPな送信管ですが普通のロクタル管のサイズです。 後ろに並んでいる6AK5と比べて結構大きな球ですがそれほどパワーは出ません。
上の一覧表にあっても現物を見たことはありませんでした。 数年前のHAMフェアで朽ち果てそうなホール紙の箱に入ったコレが売られていて初めて現物を見ました。 特別魅力的な球ではありませんが気になっていました。 確かラジコン送信機に使った回路例を見たことがあったと思います。
銀色に光って格好良いので2本で送信機を作ってみたくなってきます。
【3B4】日立製
非常に有名なPRC-6(←リンク)と言う米軍用6m帯トランシーバのファイナル管です。 PRC-6は(だいぶ大型ですが)一応ハンディタイプのFMトランシーバです。
3B4はVHF帯まで使える直熱のビーム管です。 もちろん、日立が米軍のPRC-6用に供給した訳では無く、戦後国産化された無線機用(自衛隊のJPRC-6とか?)に製造したものでしょう。
HF帯〜VHF帯までQRPな送信機には向いています。 但し、他の電池管と違ってフィラメント電圧が低いので要注意です。
一般的な電池管がEf=1.4Vなのに対して,3B4はEf=1.26Vです。 そのまま1.5Vを掛けてしまうと寿命に影響があるので直列抵抗で幾分ドロップさせて使います。
【6AK6】GE製
6AK6はれっきとした電力増幅用5極管です。だからソレなりのパワーが出ます。 そのため送信機に使う例があっても不思議ではありません。
6BA6や6BD6と同じサイズのmt管なのでコンパクトな送信機が作れます。 しかもヒーターの消費電力の少なさは特筆ものです。 6BA6のような小信号用受信管の僅か半分、6.3Vで150mAしか喰いません。 しかもそこそこのパワーが出るのだから大したものです。 カソードの性能が良いのでしょう。
国産品は殆ど無かったらしく、昔は秋葉原でも見かけませんでした。米国には大量にあるらしく最近は輸入品を良く見かけます。 フィラメントが細いので切れ易い印象があります。ヒーター断による故障が見られるようです。(受信機で事例有り)
【12AT7WC】Sylvania製
中μの双三極管です。 12AU7よりも電流を流しにくいのでパワーもやや出しにくいです。
歪みが幾らか大きいのと、μの値が中途半端なのでオーディオではあまり人気がありません。 無線用にはまったく支障なくて、低周波だけでなく検波や発振にも使える万能な球です。
コレと言った特徴はありませんが、12AU7や12AX7よりも無線ぽい印象があります。オーバートーン発振とミキサに使うクリコン回路を良く見かけました。
12AT7WCの添字のWCと言うのは耐震構造の高信頼度管でそのCバージョンと言う意味の改良型です。数字管では6201が同等です。もちろん、普通の12AT7と同じように使って支障ありません。欧州系ではECC-81が同等です。
【12BH7A】松下電子製
TV受像機ではポピュラーな双三極管です。 12AU7などの12A○7シリーズの2倍のヒーターパワーです。 従って馬力があるので大きめのパワーが出せます。
その昔はポンコツのTVを分解すれば幾らでも手に入ったものですが、昨今は三極管と言うだけでオーディオの世界でもてはやされてずいぶん価格アップしています。
HAMの応用も可能なので手持ちがあれば使ってみると良いでしょう。 やはり三極管ですからGG-Ampで行くか中和付きのアンプに仕立てることになります。欧州系ではECC-99が同等管ですが見たことはありません。
【6AK5】東芝製
VHF帯用の5極管で、エーコン管の954に替わるものとして広く使われました。 VHFマンだったJA1FC藤室OM(故人)曰くその性能差たるや歴然でまったく6AK5に軍配が上がると仰います。 第二次大戦時中にレーダーの広帯域IFアンプ用として多用されました。 そのほか高周波用の高性能管として幅広く使われました。
オリジナルはWE社製で電話中継機用でしたが製造ノウハウが公開され各社が兵器用に量産しました。 なお東芝など日本メーカーは終戦後に技術導入してやっと製造できるようになりました。数字管では5654が同等です。
コンパクトな五極管の代表で好きな球です。 一番最初の写真の様に発振+終段の2ステージQRP送信機(CO-PA)のファイナルに使って見たいです。 オーディオでは人気がないので、お店にあれば安価だと思います。 プレート耐圧が低く無理をすると壊れ易いのでいたわって使いましょう。頑張っても2Wがやっとでしょう。
パワーの小さな受信管なら、どれもQRP用の真空管になりえます。 まだまだ幾らでもあるのでリストの他にもチャレンジしてみると面白いです。 もちろん、mt管だけでなく、GT管やST管にもQRPに適した球があります。 日本固有の6Z-P1などQRP向きだと思いますが国際性はまったく無いのでもっぱらJA局相手でしょうか。(笑) あまり拘らずに、安価な受信管で楽しめるのがQRP送信機の良い所です。 電源も100V:100Vの絶縁トランスを使い倍電圧整流すると丁度良い電圧が得られます。 電池管なら倍電圧整流しなくても良いでしょう。全般に部品費用も掛からないので手軽に「真空管」を楽しめます。
☆ ☆ ☆
【QRP送信機の構想】
小さめの真空管を並べてやれば良いので、QRP送信機は種々の形式が考えられます。 どんな球を並べても良いので、型番にあまり捕われずにチャレンジされたら良いです。
しかし、交信の際にリグのラインナップを紹介するならファイナル管はなるべくポピュラーなものが良いです。
ここでリストアップした球はかつて真空管式の手作りリグが盛んだったころには誰でも知っていてポピュラーだったのかも知れません、しかしいまではおそらく年配者を除けば知る人も僅かでしょう。 代表的なものと言うことで写真紹介しておきました。 そんな球を使っている局と交信できた時には思い出してもらえたらと思います。
自身も真空管以外に必要なパーツはあらかた揃えてあって、例によってあとは「やる気+根気」でオンエアももうすぐそこにあると思います。 ライセンスの問題も考慮済みです。
特報!:おりしもJL1KRA中島さんの「新QRPプラザ」(←リンク)にて『夏のクリスタル祭り』が開催されています。(2014年7月1日現在) シンプルな真空管式送信機にとってジャストQRP周波数のクリスタル(水晶発振子)はとても嬉しいものです。 だんだん水晶の特注も難しくなって来ました。もし計画をお持ちなら7003kHzとか手に入れておくと構想も一段と現実味をおびてくるに違いありません。 同時にすこし周波数が高めのクリスタルも手に入れておき真空管式VXOにチャレンジするのも興味深いです。 これは一般論ですが、真空管式VXOはFET式ほどたくさん引張れませんから程々に高い周波数でやると成功し易いです。==>注文殺到のため品切れで、残念ながらセール終了だそうです。またのセールが楽しみだなあ。(2014/7/5)
☆
真空管の時代も遠くなってしまい見たことも無い世代が社会の大半になってきました。 ガラス細工は眺めていても楽しいかも知れませんが、実際にそれで作って波が出れば一段と興味深いでしょう。 電信用送信機なら部品もごく僅かで済みます。 配線も簡単ですから一台作っては如何でしょうか? de JA9TTT/1
(おわり)
【QRP用真空管】
もっぱらQRP用に作られた送信管がある訳ではありません。 巷の受信管を工夫するのもその方法の一つです。 それでも幾つかポピュラーなQRP向き真空管がありました。
但しポピュラーとは言っても1970年代の話しですから、どれほどいまに通用するのかはわかりません。
単に真空管写真を並べただけでは「真空管コレクター」に成り下がりますが、見たことも無い物のリストを掲載しただけではイメージできないでしょう。ここでは紹介の意味を込めて写真集で綴ります。
もちろん、いまどき真空管など実用的なテーマではなくて単に眺めて楽しむもの、あるいは新たなコレクションの切っ掛けくらいかも知れません。 しかし何時かはその波が大空へ飛び立つことを夢見ながら構想(妄想?)するのもまた楽し。 まぁ、いつものようにお暇ならどうぞ。まったくの暇つぶし用ですからネ。(笑)
☆
【国際的なQRP用真空管一覧】
おそらく、QST誌あたりがオリジナルだったかも知れませんが、そんな一覧があったことを思い出します。昔の手書きメモが残っていました。
それに幾つかデータを足して一覧にしました。 それにしても古い球が多いです。 どれほどポピュラーだったのかはわかりませんが確かにQRPな球が並んでいます。 本質的にハイパワーが難しい「電池管」が多いのは必然でしょうか? 以下,手元に有った現物を簡単なコメント付きで紹介します。 もしも興味が湧いてきたら左の写真をクリックして大きな絵でじっくり堪能してください。 登場はこの表の順になっています。
【6J6W / 6101】NEC製
6J6はVHF用の双三極管です。 カソードが共通になっていて少し使いにくい球です。
電子走行時間を短くするためカソードとプレートの距離を縮めています。プレート・グリッド間容量:Cpgを少なくし、しかも放熱してプレート損失を十分確保するために変わった電極構造になっています。
Push-Pull形式の水晶発振器で3W程度のパワーを目指すのに相応しいのですが、JAでは発振管=終段管は認められません。(注:保証認定の場合) 発振段を別に設けてPush-Pullのアンプで使うのが適当でしょう。
6J6W/6101と言うのは6J6と電気的特性は同じで高信頼度・耐振構造のもです。
【955】RCA製
おなじみエーコン管(どんぐり管)です。 小さな電極の三極管が一つ封入されています。(acorn tube←リンク)
955と言えばスーパーリゼと言うくらいVHF帯の黎明期には定番だったそうです。戦前からあった真空管でした。
ごく少ないパワーでも混信が少なく見通し距離の通信で済むVHF帯なら送信にも使えます。 スーパーリゼのバイアスを変えて自励発振させて使うトランシーバ向きと言うことかも知れません。レッヘル線を使った同調回路で144MHz帯以上も可能ですがHAMバンドの広い50MHzあたりが良いのでしょうねえ。
写真後方は955用のソケットですが、すこぶる装着しにくく事故になり易いので十分に注意してください。
【3A5】RCA製
50MHzのポータブル・トランシーバと言えば3A5と言うくらい1960年代に流行った双三極球です。 まだ高周波用トランジスタが高価で庶民には縁遠かったころ、こうした電池管がポータブル無線機の電子デバイスでした。 フィラメントを乾電池で点灯し、プレート電圧:B+には積層電池を使いました。67.5V等の高い電圧の電池が市販されていました。
受信時には超再生検波(スーパーリゼ)を行ない、送信時には自励もしくは水晶発振させます。 残り片側は低周波増幅に使います。受信時にはイヤフォンを鳴らし、送信では変調管にします。マイクにはカーボン型を使いました。 そうした形式のトランシーバはもちろん保証認定など通りませんからごく短距離用の無免許トランシーバでお遊び程度にしか使えません。もしも「大っぴら」にオンエアすれば無線設備基準に抵触するはずです。(周波数不安定もあるが主にスプリアス輻射が問題)
Push-Pullのアンプで使うのが良いです。 プレート・グリッド間容量:Cpgが大きいですからHF帯と言えどもタスキがけ式の中和が必要です。2ステージの送信機の終段にしてきちんと使えばもちろん正式のQRP送信機にもなりえます。
【6HA5】Westinghouse製
VHF帯用の高周波増幅用三極管です。 上のリストにはありませんが、「6F4」の手持ちが無かったのでピンチヒッターとして登場してもらいました。 6F4は955とおなじエーコン管で、6HA5とは形が違います。
V/UHF用の受信管は電極が小さくできていて、外形そのものもミニチュアです。 排気チップまで含めたガラス部の高さは1.5インチしかありません。mt管としても最小サイズでしょう。
6HA5はフレームグリッド構造の高性能管でいま見ても素晴らしい性能です。6m帯クリコンのTopに使ったらLow-Noiseでしょう。 スーパーリゼに使う例は目にしませんが良好だろうと想像されます。 送信用としては出力0.5〜1Wが安全な範囲です。 入力容量が小さく、gmも大きいのでVXO回路にも向いています。
【12AU7】松下電子工業製
Low-μな三極管として代表的な双三極管です。 汎用管であってQRPな送信機にも使えます。
但し、三極管なので中和が必要です。 どうしても中和は面倒ならGG-Ampの手もありますがいま一つパッとしない感じです。 できたらPush-Pull形式でタスキがけ式の中和をとって使いたいものです。
非常にポピュラーな真空管なので、ごくありふれていますがオーディオでも使っている関係で価格はだいぶ高騰しています。 そのかわりお金さえ出せば容易に新品が買えます。欧州系ではECC-82が同等。数字管は5814Aが同等ですがヒーター電流は幾分多くなります。 写真はもちろんタダの中古品です。(笑)
【6C4】United製
写真後方に見える12AU7の片割れです。 従って電気的な特性はまったく同じです。 三極管が一つしか封入されていないのでプレート損失の点では幾分有利なはずですが規格上は同じ値のようです。
オーディオ関係では12AU7の方を使うことが殆どですが、高周波関係では6C4も結構使われています。 これは受信機の保守用に準備してたもので、ミキサー回路に使っていた筈です。 現用品もまず劣化しないので交換するチャンスは無いでしょう。
ブランドのUnitedと言うのはたぶん商社だと思います。製造したメーカーはわかりませんが作りから見て古臭いので東欧製かもしれません。一応、Made in U.S.Aとはなっています。NOSな球を再印刷したのかも知れません。hi
【3A4】Tung-Sol製
ある程度パワーが出る送信機用に作られた電池管です。 五極管であって第二次大戦〜朝鮮戦争あたりの米陸軍用無線機に使われていました。(TVドラマ「コンバット」に良く登場した有名なBC1000トランシーバなど)
もちろん、低周波増幅にも使えますがフィラメント電流が大きいので電池が電源のアンプには向いていません。 また電池管は安易に低周波回路に使うとマイクロフォニックノイズが出るので要注意です。
3A4は周波数上限が低い関係でどちらかと言えばHF帯向きでしょう。 50MHzでも使えないことはありません効率が悪くても仕方ありませんね。 VHF帯にはあとで出て来る3B4の方が良いです。
電池管は直熱なので数秒で起動しますので受信時に送信機はフィラメントOFFでも行けます。意外に省電力と言えるかも知れません。 但し、フィラメントをON/OFFしながらのブレークイン交信は無理なので連続点灯しなくてはなりません。
【3D6 / 1299】メーカー不詳
3D6も電池管です。 ロクタル管の直熱ビーム管です。 ソケットが珍しいので良くわかるように撮影してみました。 ピンは8脚ですが特殊なロックイン・ソケットと言うものを使います。 センターキーの部分でソケットにロックされ抜けにくいのでスパイ用トランシーバには案配が良さそうです。(笑)
ロクタル管はどれも大きさが揃えてあります。 QRPな送信管ですが普通のロクタル管のサイズです。 後ろに並んでいる6AK5と比べて結構大きな球ですがそれほどパワーは出ません。
上の一覧表にあっても現物を見たことはありませんでした。 数年前のHAMフェアで朽ち果てそうなホール紙の箱に入ったコレが売られていて初めて現物を見ました。 特別魅力的な球ではありませんが気になっていました。 確かラジコン送信機に使った回路例を見たことがあったと思います。
銀色に光って格好良いので2本で送信機を作ってみたくなってきます。
【3B4】日立製
非常に有名なPRC-6(←リンク)と言う米軍用6m帯トランシーバのファイナル管です。 PRC-6は(だいぶ大型ですが)一応ハンディタイプのFMトランシーバです。
3B4はVHF帯まで使える直熱のビーム管です。 もちろん、日立が米軍のPRC-6用に供給した訳では無く、戦後国産化された無線機用(自衛隊のJPRC-6とか?)に製造したものでしょう。
HF帯〜VHF帯までQRPな送信機には向いています。 但し、他の電池管と違ってフィラメント電圧が低いので要注意です。
一般的な電池管がEf=1.4Vなのに対して,3B4はEf=1.26Vです。 そのまま1.5Vを掛けてしまうと寿命に影響があるので直列抵抗で幾分ドロップさせて使います。
【6AK6】GE製
6AK6はれっきとした電力増幅用5極管です。だからソレなりのパワーが出ます。 そのため送信機に使う例があっても不思議ではありません。
6BA6や6BD6と同じサイズのmt管なのでコンパクトな送信機が作れます。 しかもヒーターの消費電力の少なさは特筆ものです。 6BA6のような小信号用受信管の僅か半分、6.3Vで150mAしか喰いません。 しかもそこそこのパワーが出るのだから大したものです。 カソードの性能が良いのでしょう。
国産品は殆ど無かったらしく、昔は秋葉原でも見かけませんでした。米国には大量にあるらしく最近は輸入品を良く見かけます。 フィラメントが細いので切れ易い印象があります。ヒーター断による故障が見られるようです。(受信機で事例有り)
【12AT7WC】Sylvania製
中μの双三極管です。 12AU7よりも電流を流しにくいのでパワーもやや出しにくいです。
歪みが幾らか大きいのと、μの値が中途半端なのでオーディオではあまり人気がありません。 無線用にはまったく支障なくて、低周波だけでなく検波や発振にも使える万能な球です。
コレと言った特徴はありませんが、12AU7や12AX7よりも無線ぽい印象があります。オーバートーン発振とミキサに使うクリコン回路を良く見かけました。
12AT7WCの添字のWCと言うのは耐震構造の高信頼度管でそのCバージョンと言う意味の改良型です。数字管では6201が同等です。もちろん、普通の12AT7と同じように使って支障ありません。欧州系ではECC-81が同等です。
【12BH7A】松下電子製
TV受像機ではポピュラーな双三極管です。 12AU7などの12A○7シリーズの2倍のヒーターパワーです。 従って馬力があるので大きめのパワーが出せます。
その昔はポンコツのTVを分解すれば幾らでも手に入ったものですが、昨今は三極管と言うだけでオーディオの世界でもてはやされてずいぶん価格アップしています。
HAMの応用も可能なので手持ちがあれば使ってみると良いでしょう。 やはり三極管ですからGG-Ampで行くか中和付きのアンプに仕立てることになります。欧州系ではECC-99が同等管ですが見たことはありません。
【6AK5】東芝製
VHF帯用の5極管で、エーコン管の954に替わるものとして広く使われました。 VHFマンだったJA1FC藤室OM(故人)曰くその性能差たるや歴然でまったく6AK5に軍配が上がると仰います。 第二次大戦時中にレーダーの広帯域IFアンプ用として多用されました。 そのほか高周波用の高性能管として幅広く使われました。
オリジナルはWE社製で電話中継機用でしたが製造ノウハウが公開され各社が兵器用に量産しました。 なお東芝など日本メーカーは終戦後に技術導入してやっと製造できるようになりました。数字管では5654が同等です。
コンパクトな五極管の代表で好きな球です。 一番最初の写真の様に発振+終段の2ステージQRP送信機(CO-PA)のファイナルに使って見たいです。 オーディオでは人気がないので、お店にあれば安価だと思います。 プレート耐圧が低く無理をすると壊れ易いのでいたわって使いましょう。頑張っても2Wがやっとでしょう。
パワーの小さな受信管なら、どれもQRP用の真空管になりえます。 まだまだ幾らでもあるのでリストの他にもチャレンジしてみると面白いです。 もちろん、mt管だけでなく、GT管やST管にもQRPに適した球があります。 日本固有の6Z-P1などQRP向きだと思いますが国際性はまったく無いのでもっぱらJA局相手でしょうか。(笑) あまり拘らずに、安価な受信管で楽しめるのがQRP送信機の良い所です。 電源も100V:100Vの絶縁トランスを使い倍電圧整流すると丁度良い電圧が得られます。 電池管なら倍電圧整流しなくても良いでしょう。全般に部品費用も掛からないので手軽に「真空管」を楽しめます。
☆ ☆ ☆
【QRP送信機の構想】
小さめの真空管を並べてやれば良いので、QRP送信機は種々の形式が考えられます。 どんな球を並べても良いので、型番にあまり捕われずにチャレンジされたら良いです。
しかし、交信の際にリグのラインナップを紹介するならファイナル管はなるべくポピュラーなものが良いです。
ここでリストアップした球はかつて真空管式の手作りリグが盛んだったころには誰でも知っていてポピュラーだったのかも知れません、しかしいまではおそらく年配者を除けば知る人も僅かでしょう。 代表的なものと言うことで写真紹介しておきました。 そんな球を使っている局と交信できた時には思い出してもらえたらと思います。
自身も真空管以外に必要なパーツはあらかた揃えてあって、例によってあとは「やる気+根気」でオンエアももうすぐそこにあると思います。 ライセンスの問題も考慮済みです。
☆
真空管の時代も遠くなってしまい見たことも無い世代が社会の大半になってきました。 ガラス細工は眺めていても楽しいかも知れませんが、実際にそれで作って波が出れば一段と興味深いでしょう。 電信用送信機なら部品もごく僅かで済みます。 配線も簡単ですから一台作っては如何でしょうか? de JA9TTT/1
(おわり)
2014年6月15日日曜日
【その他】 Quite useful tools (1)
【なかなか便利なツール】
【コテ先クリーナ】
これは従来型のコテ先クリーナです。
最近のものは少しだけバージョンアップしています。 真ん中に仕切りがあり、スポンジは2つに別れています。
汚れて来たら裏返して4回奇麗に使えるとか、まあ幾らか改良も見られますけれどウン10年も前からあんまり変わっていないよナア・・・。
ハンダ付けを始めるにあたってコテ先をコレに「ジュジュッ」とやるのは儀式のようなもので、やらないと何となく始まった気がしない?(笑)
今さらですが奇麗なハンダ付けにはコテ先の管理は必須です。温度を適切に保つのはもとより付着している酸化したハンダやフラックスの「コゲ」などを奇麗にぬぐってから始めなくてはなりません。 ハンダ付けした箇所も重要な「接続部品」の一つであり、しかも機器全体では沢山ありますからその出来具合が機器の信頼性を左右します。 「イモ」や「天ぷら」があるようではいつまでたっても初心者の域を脱することはできません。
【新種のコテ先クリーナ】
こちらは新種のコテ先クリーナです。
製品の包装箱にも書いてあるように、「水がいらない」のが最大の特徴です。
この種のコテ先クリーナはずいぶん前からあったと思いますが、優れモノだと感じたことはなありませんでした。 コテ先が何となく・・・満足行くほどには奇麗にならなかったからです。
少し前に「なかなか使い良い」と言うSNSの口コミがあったので買ってみることにしました。 右の黒いシリコーンゴム製(?)のホルダーに入ったのが使用状態で、左の包装箱の前にあるものは交換用スペアです。 金色のタワシはスペアとして単体でも売っています。最初にホルダー付きを買うと予備が一つ付いて来ます。秋葉原の工具店で630円でした。
【使ってみる】
では、さっそく使ってみましょう。
ぬぐうように擦り付けてはいけないと取説には書いてあります。 溶けて熱いハンダがタワシの弾力で弾けて飛散する可能性があるからです。 タワシ部分は弾力のある金属泊片のようなものでできています。
余分なハンダやフラックスのかすがついた先端を写真の様にストレートに突き刺してみます。 そのまま抜き出すと、それだけでピカピカの先端になってくれました。 これは便利そうです。
このようなコテ先クリーナが重宝される背景には「鉛フリーハンダ」が一般化したことにあるようです。 濡れスポンジでコテ先温度を下げてしまわぬためだそうです。 確かに、コテ先温度は共晶ハンダ(錫63%の一般のハンダ:融点180℃くらい)に比べ、鉛フリーハンダには更に60℃くらい高温が必要です。 水を含んだスポンジでぬぐったのでは温度はなかなか回復しないでしょう。 そのようなニーズから普及し改善された製品です。 共晶はんだでの作業でも便利なので☆4つくらいのお薦め品だと思いました。 なお、RoHS対応の作業現場ではコテ先クリーナと言えども共晶ハンダ用とは別に鉛フリーハンダ専用を用意しなくてはなりません。
【汚れて来たら】
ハンダが溜まって汚れて来たらこのように取り出してお掃除します。
もちろん、溶けた熱いハンダが残っていないのを確認してからでないと火傷します。 その点は十分注意を!
使っていてだんだん潰れて復帰しなくなったら交換時期です。 いまのところ使い始めなので快適その物ですが、そのうち様子もわかって来るでしょう。
なかなかなコテ先クリーナだとは思いますが、濡れたスポンジ式のクリーナも有った方が良さそうです。 使い勝手はそれぞれなので、コテ先の状態に応じて使い分けるのが最も良さそうだと言う結論になりました。
☆ ☆ ☆ ☆
【電線被覆剥がしゲージ】
Wire Stripping Gaugeと言うツールを頂きました。 この6月に発売されたばかりの新製品だそうで、これは嬉しいプレゼントです。(TNX! LVE)
写真を見ただけでは何にどう使うのか皆目わからないかも知れません。
これはブレッドボードで回路を製作する際にたくさん必要になる「ジャンパーワイヤ」を作るときに切断と曲げのために使うゲージ治具です。
「ああ、そんなものか」と思うのは、ブレッドボードを使った製作経験がないか、ごく簡単なものしか作っていないお方です。 定型寸法のジャンパー線を効率的に作成するために使います。 有難さは使った人でないとわからないと思いますが、ともかくかなり便利です。いつもジャンパー線作りは面倒だと思っていた人は買って損は無いと思います。(通販参考価格:$12-)
【セッティング】
ワイヤストリッパにこのようにセットします。
この例ではIDEAL社のT-7シリーズ45-417と言うワイヤーストリッパに装着しました。 他の物でももちろん良いですが、材料に使う線材に合わせた線径のストリッパが必要なのは言うまでもありません。
ゲージその物は樹脂製で軽いため作業性を損ないません。 使い方はリンク先(→ここ)のビデオでも見て頂くのが一番だと思いますが、道具一般に言えるように使って慣れるのが一番です。 最初は勝手が掴めず、ギクシャクして使いにくいモノに感じましたがそれもほんの束の間、非常に便利なことがわかりました。 これも☆4つくらいのお薦め品だと思います。
■参考までに私の作業手順ですが:
START→
(1)片側を所定の剥き代で被覆を剥がす.→
(2)剥がした部分を穴に差し込んで曲げ加工する.→
(3)曲げた部分をゲージ目盛に合わせて切断する.→
(4)いま切断した側の被覆を剥き代で剥がす.→
(5)いま剥がした部分を曲げ加工する.→完成.
・・・と言う手順がやり易いようです。
たくさん作る時は(3)まで行なった物を溜めておき、溜まったところで(4)以降を纏めて行なうのも悪くありませんでした。 各自が良い方法を見つけるべきでしょう。
【ジャンパーワイヤ】
写真はツールを使って製作したジャンパーワイヤです。
写真ではオレンジ色が2列飛ばし(4列間接続用)、黄色が3列飛ばし(5列間)、緑が4列飛ばし(6列間)のジャンパー線で、長さごとに色分けを統一しています。 何色を使っても良いですが、長さごとに色分けしておくと使い易いようです。
もともとは秋月電子通商で売っているジャンパー線セットの色分けを踏襲した配色です。一応、長さ順にカラーコードになっていますね。
こうした寸法精度が良い定寸のジャンパー線が正確かつ迅速に作れるメリットは大きいです。 始めたら面白くなってしまい一気にたくさん作ってしまいました。(笑)
まあ、道具の評価はそれぞれの使用感なので、便利に感じなくても責任は持てません。 私のブレッドボード製作に於いては作業効率にずいぶん差が出るように思います。
【ジャンパー線はこんな感じに】
既にお馴染みと思いますが、ジャンパー線はこんな感じに使います。
短いオレンジ色と黄色、そしてここでは使っていませんが赤の1列飛ばしのジャンパー線を一番たくさん使うので、既製のジャンパー線セットを買ってもすぐ不足してしまうでしょう。
もちろん、回路のテストが終われば解体してリサイクルしますからある程度あれば十分かも知れません。 しかし、作ってすぐに分解してしまうのは稀で、そのまま暫く様子を見ることも多いのです。 予備のブレッドボードと、ジャンバー線はいつも十分な量を用意しておくと試作が捗るように思っています。
(写真は余興で作ったスーパーリゼ)
☆ ☆ ☆ ☆
梅雨の季節、表で遊べないからコテ遊びやブレッドボードで電子工作はいかが? 道具ばかり揃えても、それだけで満足しては何の進歩もありません。 けれど、ちょっとした工夫や道具で効率アップすれば面白さや興味も続くでしょう。 ちょっと便利な小物を紹介してみました。 この種の小物が有効か否かは各自の作業内容次第なのでよく考えてから導入されて下さい。 作業に合わなければてんで使い物にならないのは勿論です。
TRIOのLPF、LF-30の改造も済んでいたのですが興味を持つのはごく僅かでしょう。 軽い話題と言うことで身近なツルールを話題にしてみました。 de JA9TTT/1
(おわり)
御注意:このBlogはアフィリエイトBlogではないので、特定商品をお薦めする意図はありません。自身のニーズを良く考え、無駄使いのないように。使うアテのないものにお金を使うのは勿体ないです。 以上全ての内容は単にこのBlogオーナーの個人的な感想です。
【コテ先クリーナ】
これは従来型のコテ先クリーナです。
最近のものは少しだけバージョンアップしています。 真ん中に仕切りがあり、スポンジは2つに別れています。
汚れて来たら裏返して4回奇麗に使えるとか、まあ幾らか改良も見られますけれどウン10年も前からあんまり変わっていないよナア・・・。
ハンダ付けを始めるにあたってコテ先をコレに「ジュジュッ」とやるのは儀式のようなもので、やらないと何となく始まった気がしない?(笑)
今さらですが奇麗なハンダ付けにはコテ先の管理は必須です。温度を適切に保つのはもとより付着している酸化したハンダやフラックスの「コゲ」などを奇麗にぬぐってから始めなくてはなりません。 ハンダ付けした箇所も重要な「接続部品」の一つであり、しかも機器全体では沢山ありますからその出来具合が機器の信頼性を左右します。 「イモ」や「天ぷら」があるようではいつまでたっても初心者の域を脱することはできません。
【新種のコテ先クリーナ】
こちらは新種のコテ先クリーナです。
製品の包装箱にも書いてあるように、「水がいらない」のが最大の特徴です。
この種のコテ先クリーナはずいぶん前からあったと思いますが、優れモノだと感じたことはなありませんでした。 コテ先が何となく・・・満足行くほどには奇麗にならなかったからです。
少し前に「なかなか使い良い」と言うSNSの口コミがあったので買ってみることにしました。 右の黒いシリコーンゴム製(?)のホルダーに入ったのが使用状態で、左の包装箱の前にあるものは交換用スペアです。 金色のタワシはスペアとして単体でも売っています。最初にホルダー付きを買うと予備が一つ付いて来ます。秋葉原の工具店で630円でした。
【使ってみる】
では、さっそく使ってみましょう。
ぬぐうように擦り付けてはいけないと取説には書いてあります。 溶けて熱いハンダがタワシの弾力で弾けて飛散する可能性があるからです。 タワシ部分は弾力のある金属泊片のようなものでできています。
余分なハンダやフラックスのかすがついた先端を写真の様にストレートに突き刺してみます。 そのまま抜き出すと、それだけでピカピカの先端になってくれました。 これは便利そうです。
このようなコテ先クリーナが重宝される背景には「鉛フリーハンダ」が一般化したことにあるようです。 濡れスポンジでコテ先温度を下げてしまわぬためだそうです。 確かに、コテ先温度は共晶ハンダ(錫63%の一般のハンダ:融点180℃くらい)に比べ、鉛フリーハンダには更に60℃くらい高温が必要です。 水を含んだスポンジでぬぐったのでは温度はなかなか回復しないでしょう。 そのようなニーズから普及し改善された製品です。 共晶はんだでの作業でも便利なので☆4つくらいのお薦め品だと思いました。 なお、RoHS対応の作業現場ではコテ先クリーナと言えども共晶ハンダ用とは別に鉛フリーハンダ専用を用意しなくてはなりません。
【汚れて来たら】
ハンダが溜まって汚れて来たらこのように取り出してお掃除します。
もちろん、溶けた熱いハンダが残っていないのを確認してからでないと火傷します。 その点は十分注意を!
使っていてだんだん潰れて復帰しなくなったら交換時期です。 いまのところ使い始めなので快適その物ですが、そのうち様子もわかって来るでしょう。
なかなかなコテ先クリーナだとは思いますが、濡れたスポンジ式のクリーナも有った方が良さそうです。 使い勝手はそれぞれなので、コテ先の状態に応じて使い分けるのが最も良さそうだと言う結論になりました。
☆ ☆ ☆ ☆
【電線被覆剥がしゲージ】
Wire Stripping Gaugeと言うツールを頂きました。 この6月に発売されたばかりの新製品だそうで、これは嬉しいプレゼントです。(TNX! LVE)
写真を見ただけでは何にどう使うのか皆目わからないかも知れません。
これはブレッドボードで回路を製作する際にたくさん必要になる「ジャンパーワイヤ」を作るときに切断と曲げのために使うゲージ治具です。
「ああ、そんなものか」と思うのは、ブレッドボードを使った製作経験がないか、ごく簡単なものしか作っていないお方です。 定型寸法のジャンパー線を効率的に作成するために使います。 有難さは使った人でないとわからないと思いますが、ともかくかなり便利です。いつもジャンパー線作りは面倒だと思っていた人は買って損は無いと思います。(通販参考価格:$12-)
【セッティング】
ワイヤストリッパにこのようにセットします。
この例ではIDEAL社のT-7シリーズ45-417と言うワイヤーストリッパに装着しました。 他の物でももちろん良いですが、材料に使う線材に合わせた線径のストリッパが必要なのは言うまでもありません。
ゲージその物は樹脂製で軽いため作業性を損ないません。 使い方はリンク先(→ここ)のビデオでも見て頂くのが一番だと思いますが、道具一般に言えるように使って慣れるのが一番です。 最初は勝手が掴めず、ギクシャクして使いにくいモノに感じましたがそれもほんの束の間、非常に便利なことがわかりました。 これも☆4つくらいのお薦め品だと思います。
■参考までに私の作業手順ですが:
START→
(1)片側を所定の剥き代で被覆を剥がす.→
(2)剥がした部分を穴に差し込んで曲げ加工する.→
(3)曲げた部分をゲージ目盛に合わせて切断する.→
(4)いま切断した側の被覆を剥き代で剥がす.→
(5)いま剥がした部分を曲げ加工する.→完成.
・・・と言う手順がやり易いようです。
たくさん作る時は(3)まで行なった物を溜めておき、溜まったところで(4)以降を纏めて行なうのも悪くありませんでした。 各自が良い方法を見つけるべきでしょう。
【ジャンパーワイヤ】
写真はツールを使って製作したジャンパーワイヤです。
写真ではオレンジ色が2列飛ばし(4列間接続用)、黄色が3列飛ばし(5列間)、緑が4列飛ばし(6列間)のジャンパー線で、長さごとに色分けを統一しています。 何色を使っても良いですが、長さごとに色分けしておくと使い易いようです。
もともとは秋月電子通商で売っているジャンパー線セットの色分けを踏襲した配色です。一応、長さ順にカラーコードになっていますね。
こうした寸法精度が良い定寸のジャンパー線が正確かつ迅速に作れるメリットは大きいです。 始めたら面白くなってしまい一気にたくさん作ってしまいました。(笑)
まあ、道具の評価はそれぞれの使用感なので、便利に感じなくても責任は持てません。 私のブレッドボード製作に於いては作業効率にずいぶん差が出るように思います。
【ジャンパー線はこんな感じに】
既にお馴染みと思いますが、ジャンパー線はこんな感じに使います。
短いオレンジ色と黄色、そしてここでは使っていませんが赤の1列飛ばしのジャンパー線を一番たくさん使うので、既製のジャンパー線セットを買ってもすぐ不足してしまうでしょう。
もちろん、回路のテストが終われば解体してリサイクルしますからある程度あれば十分かも知れません。 しかし、作ってすぐに分解してしまうのは稀で、そのまま暫く様子を見ることも多いのです。 予備のブレッドボードと、ジャンバー線はいつも十分な量を用意しておくと試作が捗るように思っています。
(写真は余興で作ったスーパーリゼ)
☆ ☆ ☆ ☆
梅雨の季節、表で遊べないからコテ遊びやブレッドボードで電子工作はいかが? 道具ばかり揃えても、それだけで満足しては何の進歩もありません。 けれど、ちょっとした工夫や道具で効率アップすれば面白さや興味も続くでしょう。 ちょっと便利な小物を紹介してみました。 この種の小物が有効か否かは各自の作業内容次第なのでよく考えてから導入されて下さい。 作業に合わなければてんで使い物にならないのは勿論です。
TRIOのLPF、LF-30の改造も済んでいたのですが興味を持つのはごく僅かでしょう。 軽い話題と言うことで身近なツルールを話題にしてみました。 de JA9TTT/1
(おわり)
御注意:このBlogはアフィリエイトBlogではないので、特定商品をお薦めする意図はありません。自身のニーズを良く考え、無駄使いのないように。使うアテのないものにお金を使うのは勿体ないです。 以上全ての内容は単にこのBlogオーナーの個人的な感想です。
2014年6月1日日曜日
【測定】TRIO LPF LF-30 : Part 2
【TRIOのLow Pass Filter:LF-30 その2】
【LF-30を解析する】
TRIO/現KenwoodのTVI対策用ローパスフィルタの第2回です。前回(←リンク)はLF-30の電気的な特性を確かめ、更に開封して中身を眺めたところまででした。
写真は少しだけお掃除をした状態です。 ずいぶん長く眠っていたのでホコリだらけでした。 どこかにガムテープで貼付けて使っていたらしくテープの糊が残っていました。 その糊も粘着性をまったく失っており、除去するのは少々厄介した。 有機溶剤を幾つか試して除去に成功しましたが、塗装も幾分やられた感じです。 まあ、ある程度やむを得ません。
この先は、内部のコイルとコンデンサの値を調べ、シミュレーションと実測による特性の比較を行ないます。 解析してレプリカを作りたい訳ではありません。いずれ改造するにしても現況がどうなっているのかわからなくては方針も立てにくいからです。ここは一通りの調査をしておきます。 なお例によって自家用の記録なので記述の過不足は悪しからず。(笑)
【LF-30のLとC】
LF-30の電気的な構造は単純です。 写真のような数回巻きのコイル:Lと、右の方に見えるネジと銅の円盤、そして薄い樹脂製フィルムとで構成されたコンデンサ:Cからなっています。
コンデンサ部分は円盤の中心部に貫通穴があって、そこをネジが突き抜けており、両側からナットで円盤を締め付けています。 フィルムの厚みと円盤の面積でキャパシタンスの値が決まります。
見た所、コイルは両端のコネクタに繋がる2つが同じで、他に比べて巻き数は少ないです。途中の3つのコイルは両端よりも巻き数が多くなっています。 コンデンサ部分は円盤のサイズが同じなのでフィルム厚が同じならすべて同じ容量でしょう。
構造からT型のLPFを重ねたLPFの形式です。 そう考えると途中3つのコイルは同じインダクタンス、両端の2つはその半分のインダクタンスでしょう。 また途中のコンデンサはどれも同一の容量だと推測できます。
【コンデンサの測定】
各容量の測定は一旦分解しないとできません。 なるべく変形させないようにコイルのハンダ付けを外しました。 コンデンサはいずれもGND間に入っています。
測定には「小容量計」を使いました。 ここは例によってLCRメータのDE-5000でも良いです。 それほど微小な静電容量ではないし、テフロンを誘電体に使ったコンデンサは絶縁抵抗が高くHigh-Qです。従って測り易い対象です。 フィルムの耐熱性を確認したらほぼテフロンに間違いないようでした。
余談ですがテフロン・フィルムを誘電体に使った山七商店の「テフコン」と言うポリバリコンに良く似たバリコンがあったのを思い出します。 あれは安くて耐圧もあってなかなか良い物でしたが流行りませんでした。 商品としてやや詰めの甘い部分があったのが原因かも知れません。
【Cの値は良く揃っていた】
測定結果は後で出て来る回路図に記載しました。図中の(1)の回路の定数が実測値そのものです。 多少のばらつきは見られましたがコンデンサはどれも120pFを目標に設計しているようです。 4つの平均値は122.75pFでした。
なお、測定にあたっては接続線のストレー容量をキャンセルしています。 のちほど改めてDE-5000で測定し、比較しましたが測定値は良く合っています。
こうした構造のコンデンサも円盤面積を良く管理すれば数%以内の精度が保てるのでしょう。テフロン・フィルムの入手に問題はありますが、高耐圧のコンデンサが自分できそうです。
【久しぶりにGDM登場】
コンデンサとちがって小さなインダクタンスの測定にDE-5000はあまり向きません。測定周波数が100kHzまでなので精度が出ないのです。
ここは昔ながらのGDMで行くことにしました。 容量が確かなコンデンサと抱き合わせて共振周波数を測定し、インダクタンスは周波数とコンデンサの値から計算で求めます。
GDMの周波数測定精度はせいぜい頑張って3桁くらいでしょう。下手をすれば2桁ですが、その程度で支障ありません。無極のLPFではLCの値にシビアさは必要なかったと思います。
1968年ころ購入したGDMで、しかも暫く通電していなかったので、徐々に電源電圧を加えて支障ないことを確認してから使いました。 周波数カウンタがなかった時代には精度の良いデリカのGDMは重宝でした。 今回、あらためて目盛をチェックしたらまずまず合っています。流石にDELICAと言うべきでしょうか。hi
【一般的にはこれで良いが】
コイルの測定ですがこのように測定すれば良いです。
真空管式ですから、10分程度ウオームアップします。最初に発振強度の調整(注)をしたら、まずはコイルを近づけて高い周波数から下げて行き、良くディップする周波数を見つけます。
(注:発振強度の調整:DELICAのGDMではメーターの指針が中央部青く塗られたゾーン内またはそこまで振れぬ場合は最大まで振れる位置に発振強度調整のVRを加減します)
その後はGDMのコイルと被測定共振回路の結合がなるべく疎になるようにGDMを遠ざけて行きます。 慎重に周波数ダイヤルを回すと浅いディップが現れるので、その点が正しい共振周波数です。 ディップが浅くなり過ぎてわかりにくいようならGDMをやや近づけます。この写真の状態はコイルがまだまだ近過ぎます。
ディップがわかる範囲で、なるべく結合を疎にすると言うのが大切なポイントです。 このあたり、今ごろになって「憧れの」ディップメータを手に入れるお方もあるようですが、てんで使い方がなってないので書いておきました。 だれも教えてくれないので仕方ないのですが、道具はちゃんと使えなくては持ち腐れです。
【箱の中で測定】
上の方法でも良いとは思いましたが、箱に入れた状態で測定してみました。 金属の箱に入れるとインダクタンスは幾分変化(減少)します。
シールドされることまで気にしなくても良いのかも知れません。しかし気になります。 発泡スチロール片でLCを浮かせ所定の位置に近い所で測定してみました。LCは箱に触れないよう浮かせます。
共振周波数に多少の違いが見られたので、こちら測定値を採用することにします。 なおコイルに抱かせたコンデンサは100pFちょうどのマイカ・コンデンサです。あまり精度の良くない測定とは言ってもラフにやると訳が解らなくなります。
【回路検討してみる】
回路は3つ書いてあります。
一番上の回路(1)が、実測によるLCの値を記入したものです。 Cの値は120pFで設計してあるようです。 メーカーの設計値はわかりませんが現物はこのようになっていました。
(2)はL、Cともに50Ω用に設計変更したものです。 カットオフ周波数を30MHzにし終端インピーダンスも50Ωに変更します。当然LもCも全部変更しなくてはならないので結構面倒です。
(3)はコイルには手をつけずに、コンデンサにみ変更する(追加する)方法です。こうするとカットオフ周波数はかなり下がりますが(2)よりも手間は掛かりません。
どの方法を採用するかは思案どころですが、まずは(3)でやってみようと思います。
【そしてシミュレーション】
(1)(2)(3)ともう一つの4条件でシミュレーションしてみました。
緑色のカーブが実測から求めたオリジナルの定数で、75Ω終端の特性です。上図(1)の結果です。 前回(←リンク)の実測特性と良く合っています。
赤色のカーブは、実測結果から、計算上最適と思われる終端インピーダンスでシミュレーションした結果です。部品定数は(1)のままですが、終端インピーダンスを変えています。 実測のLC値から計算してみると最適インピーダンスは44.2Ωなのです。 75Ωよりもむしろ50Ωに向いていると言う結果は予想外でした。(だから50Ωで実測してもかなり良い特性だったのでしょう・笑)
青色のカーブは上図(2)のものです。 LCともに変更して50Ωに最適化した回路定数になっています。
紫色のカーブが上図の(3)によるものです。コイルに手をつけなかった関係で(2)よりもカットオフ周波数は下がっています。 ぎりぎり30MHzくらいなので10mバンドには適さない可能性があります。しかし改造はコンデンサを足すだけだからシンプルです。
☆ ☆ ☆
結局(3)で様子を見る方針です。 支障がありそうならコイルも加減すれば良いでしょう。 あるいは25MHzバンドまでと割り切って使うのも良いかも知れません。 このあたりは目的や用途も考えあわせて自由に決めれば良いわけです。
☆
かつて、こうしたフィルタと言えば素人には手が出せないブラックボックスでした。 しかし、「いまの素人」にとっては何でもない単純なLC回路です。 ハイパワー向きの構造と言ったノウハウは必要かも知れませんが、まったく手が出せない代物ではなくなっています。 次回は実際に改造し周波数特性を確認します。de JA9TTT/1
(つづく)←続きにリンク
【LF-30を解析する】
TRIO/現KenwoodのTVI対策用ローパスフィルタの第2回です。前回(←リンク)はLF-30の電気的な特性を確かめ、更に開封して中身を眺めたところまででした。
写真は少しだけお掃除をした状態です。 ずいぶん長く眠っていたのでホコリだらけでした。 どこかにガムテープで貼付けて使っていたらしくテープの糊が残っていました。 その糊も粘着性をまったく失っており、除去するのは少々厄介した。 有機溶剤を幾つか試して除去に成功しましたが、塗装も幾分やられた感じです。 まあ、ある程度やむを得ません。
この先は、内部のコイルとコンデンサの値を調べ、シミュレーションと実測による特性の比較を行ないます。 解析してレプリカを作りたい訳ではありません。いずれ改造するにしても現況がどうなっているのかわからなくては方針も立てにくいからです。ここは一通りの調査をしておきます。 なお例によって自家用の記録なので記述の過不足は悪しからず。(笑)
【LF-30のLとC】
LF-30の電気的な構造は単純です。 写真のような数回巻きのコイル:Lと、右の方に見えるネジと銅の円盤、そして薄い樹脂製フィルムとで構成されたコンデンサ:Cからなっています。
コンデンサ部分は円盤の中心部に貫通穴があって、そこをネジが突き抜けており、両側からナットで円盤を締め付けています。 フィルムの厚みと円盤の面積でキャパシタンスの値が決まります。
見た所、コイルは両端のコネクタに繋がる2つが同じで、他に比べて巻き数は少ないです。途中の3つのコイルは両端よりも巻き数が多くなっています。 コンデンサ部分は円盤のサイズが同じなのでフィルム厚が同じならすべて同じ容量でしょう。
構造からT型のLPFを重ねたLPFの形式です。 そう考えると途中3つのコイルは同じインダクタンス、両端の2つはその半分のインダクタンスでしょう。 また途中のコンデンサはどれも同一の容量だと推測できます。
【コンデンサの測定】
各容量の測定は一旦分解しないとできません。 なるべく変形させないようにコイルのハンダ付けを外しました。 コンデンサはいずれもGND間に入っています。
測定には「小容量計」を使いました。 ここは例によってLCRメータのDE-5000でも良いです。 それほど微小な静電容量ではないし、テフロンを誘電体に使ったコンデンサは絶縁抵抗が高くHigh-Qです。従って測り易い対象です。 フィルムの耐熱性を確認したらほぼテフロンに間違いないようでした。
余談ですがテフロン・フィルムを誘電体に使った山七商店の「テフコン」と言うポリバリコンに良く似たバリコンがあったのを思い出します。 あれは安くて耐圧もあってなかなか良い物でしたが流行りませんでした。 商品としてやや詰めの甘い部分があったのが原因かも知れません。
【Cの値は良く揃っていた】
測定結果は後で出て来る回路図に記載しました。図中の(1)の回路の定数が実測値そのものです。 多少のばらつきは見られましたがコンデンサはどれも120pFを目標に設計しているようです。 4つの平均値は122.75pFでした。
なお、測定にあたっては接続線のストレー容量をキャンセルしています。 のちほど改めてDE-5000で測定し、比較しましたが測定値は良く合っています。
こうした構造のコンデンサも円盤面積を良く管理すれば数%以内の精度が保てるのでしょう。テフロン・フィルムの入手に問題はありますが、高耐圧のコンデンサが自分できそうです。
【久しぶりにGDM登場】
コンデンサとちがって小さなインダクタンスの測定にDE-5000はあまり向きません。測定周波数が100kHzまでなので精度が出ないのです。
ここは昔ながらのGDMで行くことにしました。 容量が確かなコンデンサと抱き合わせて共振周波数を測定し、インダクタンスは周波数とコンデンサの値から計算で求めます。
GDMの周波数測定精度はせいぜい頑張って3桁くらいでしょう。下手をすれば2桁ですが、その程度で支障ありません。無極のLPFではLCの値にシビアさは必要なかったと思います。
1968年ころ購入したGDMで、しかも暫く通電していなかったので、徐々に電源電圧を加えて支障ないことを確認してから使いました。 周波数カウンタがなかった時代には精度の良いデリカのGDMは重宝でした。 今回、あらためて目盛をチェックしたらまずまず合っています。流石にDELICAと言うべきでしょうか。hi
【一般的にはこれで良いが】
コイルの測定ですがこのように測定すれば良いです。
真空管式ですから、10分程度ウオームアップします。最初に発振強度の調整(注)をしたら、まずはコイルを近づけて高い周波数から下げて行き、良くディップする周波数を見つけます。
(注:発振強度の調整:DELICAのGDMではメーターの指針が中央部青く塗られたゾーン内またはそこまで振れぬ場合は最大まで振れる位置に発振強度調整のVRを加減します)
その後はGDMのコイルと被測定共振回路の結合がなるべく疎になるようにGDMを遠ざけて行きます。 慎重に周波数ダイヤルを回すと浅いディップが現れるので、その点が正しい共振周波数です。 ディップが浅くなり過ぎてわかりにくいようならGDMをやや近づけます。この写真の状態はコイルがまだまだ近過ぎます。
ディップがわかる範囲で、なるべく結合を疎にすると言うのが大切なポイントです。 このあたり、今ごろになって「憧れの」ディップメータを手に入れるお方もあるようですが、てんで使い方がなってないので書いておきました。 だれも教えてくれないので仕方ないのですが、道具はちゃんと使えなくては持ち腐れです。
【箱の中で測定】
上の方法でも良いとは思いましたが、箱に入れた状態で測定してみました。 金属の箱に入れるとインダクタンスは幾分変化(減少)します。
シールドされることまで気にしなくても良いのかも知れません。しかし気になります。 発泡スチロール片でLCを浮かせ所定の位置に近い所で測定してみました。LCは箱に触れないよう浮かせます。
共振周波数に多少の違いが見られたので、こちら測定値を採用することにします。 なおコイルに抱かせたコンデンサは100pFちょうどのマイカ・コンデンサです。あまり精度の良くない測定とは言ってもラフにやると訳が解らなくなります。
【回路検討してみる】
回路は3つ書いてあります。
一番上の回路(1)が、実測によるLCの値を記入したものです。 Cの値は120pFで設計してあるようです。 メーカーの設計値はわかりませんが現物はこのようになっていました。
(2)はL、Cともに50Ω用に設計変更したものです。 カットオフ周波数を30MHzにし終端インピーダンスも50Ωに変更します。当然LもCも全部変更しなくてはならないので結構面倒です。
(3)はコイルには手をつけずに、コンデンサにみ変更する(追加する)方法です。こうするとカットオフ周波数はかなり下がりますが(2)よりも手間は掛かりません。
どの方法を採用するかは思案どころですが、まずは(3)でやってみようと思います。
【そしてシミュレーション】
(1)(2)(3)ともう一つの4条件でシミュレーションしてみました。
緑色のカーブが実測から求めたオリジナルの定数で、75Ω終端の特性です。上図(1)の結果です。 前回(←リンク)の実測特性と良く合っています。
赤色のカーブは、実測結果から、計算上最適と思われる終端インピーダンスでシミュレーションした結果です。部品定数は(1)のままですが、終端インピーダンスを変えています。 実測のLC値から計算してみると最適インピーダンスは44.2Ωなのです。 75Ωよりもむしろ50Ωに向いていると言う結果は予想外でした。(だから50Ωで実測してもかなり良い特性だったのでしょう・笑)
青色のカーブは上図(2)のものです。 LCともに変更して50Ωに最適化した回路定数になっています。
紫色のカーブが上図の(3)によるものです。コイルに手をつけなかった関係で(2)よりもカットオフ周波数は下がっています。 ぎりぎり30MHzくらいなので10mバンドには適さない可能性があります。しかし改造はコンデンサを足すだけだからシンプルです。
☆ ☆ ☆
結局(3)で様子を見る方針です。 支障がありそうならコイルも加減すれば良いでしょう。 あるいは25MHzバンドまでと割り切って使うのも良いかも知れません。 このあたりは目的や用途も考えあわせて自由に決めれば良いわけです。
☆
かつて、こうしたフィルタと言えば素人には手が出せないブラックボックスでした。 しかし、「いまの素人」にとっては何でもない単純なLC回路です。 ハイパワー向きの構造と言ったノウハウは必要かも知れませんが、まったく手が出せない代物ではなくなっています。 次回は実際に改造し周波数特性を確認します。de JA9TTT/1
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