2011年1月30日日曜日

【AVR】AVR Keyer Part 2

AVR Electric Keyer Ver.2】部品面
 AVRマイコンを使ったエレキーのVer.2だ。機能的には前のBlog、Part_1(←リンク)で紹介した、Ver.1で概ね満足していたので、ソフトウエアの変更はわずかだ。 サイドトーンの音程可変機能の追加と好みでスピード調整範囲の小変更したくらいだ。改造前のオリジナルはJN3XBY岩永さんのBlog(←リンク)を参照。

 回路(ハードウエア)の違いはパドル接続部分へRFI対策+静電気保護を追加したこと、及びキーイングをデジタル・トランジスタからPhoto-MOS Relayに変更した部分だ。 Ver.1の基板を流用・改造したので必ずしも最適な部品配置ではないが写真のようになっている。

AVR Electric Keyer Ver.2】配線面
 例によってあまりお見せするような物ではないが配線面の様子だ。部品を追加したが、もともと簡単な回路なので配線は簡単なものだ。

 プログラムの検討にも使ったので、ISPコネクタは残してある。キーヤーとしては不要なので、機器に組込んだり付加装置として使う場合には不要だ。

 部品を揃えてから配線に要する時間は2時間程度だろう。

AVR Electric Keyer Ver.2.1.2】回路図
 Ver.2の回路図だ。 サイドトーンの音程を可変するための可変抵抗(VR3)が追加になった。もちろん、内蔵プログラムもそれ用に変更している。 無段階ではなく少しステップ状の音程変化だが概ね好みの音に調整できる。 このVR3はパネルに出す必要はないと思うので基板上に半固定抵抗を付けておいた。

 自家用なら最初から好みの音程にプログラミングしてしまえば済む。 一般的には変えられた方が便利だと思い可変型にしてみた。 サイドトーンの音量を変えるための可変抵抗(VR2)も追加してある。 もちろんサイドトーンが不要ならいずれの部品も省略できる。 その場合マイコンのPin_19(PA1)はGNDに接続しておく。出力端子Pin_4(PB3)には何も接続しない。

 ダイオード:D1は発光ダイオード(赤色LED)。D2〜D5は1S1588のようなごく一般的なスイッチング用ダイオード。D6は1W型のツェナーダイオード(Vz=6.2Vのもの)で過電圧保護用である。RD6.2FはNEC製だが他のメーカー製でも良い。秋葉原なら鈴商にあるようだ。

 回路図の表記で、1nFとあるコンデンサ(C4,C5)は1,000pFあるいは、0.001μFのことである。(nFとはナノ・ファラドのこと) 耐圧表記のないコンデンサは全て25V以上の耐圧があれば良い。極性の書いてないコンデンサはセラミック型(積層セラコン)、極性表示のあるものはのアルミ電解コンデンサを使う。

 各抵抗器は誤差5%で1/8〜1/4W型のものを。カーボン型あるいは金属皮膜型のどちらでも良い。 サイドトーン用スピーカーは圧電型を使う。 パドル端子やリレー出力端子は各自の好みで選ぶ。回路基板はなるべくなら金属製の箱に収納すべきだ。

 電源は乾電池を推奨するが、実測の出力電圧が2.7〜5.5Vの範囲内のACアダプタでも良い。マイコンの定格電圧をオーバーしてしまうので、5.5Vを越えてはいけない。ACアダプタ専用にするなら5VのレギュレータICを入れると良い。

 回路図で、青色で配線された部分はプログラム書込み用である。頒布(後方参照)の書込み済みマイコンから作り始めるなら必要ないのでISPコネクタと合わせて省略できる。

 パドル接続部分とキーイング・アウトプット部分の強化については、以下写真と説明を参照。

パドル接続部分
 RFの回り込み対策と静電気で壊れない対策を追加した。

 ダイオードと抵抗で静電気対策を行なった。地域にもよるが冬期の太平洋岸は乾燥注意報が連日出ており電子機器の静電気対策は必須なようだ。

 エレキーのパドル接続部分は半導体ICの端子が外まで引き出されている。無防備では静電気の「パチッ」でICが壊れる危険がある。 AVRマイコンのポートは内部でPull-UPしてあっても数10kΩのインピーダンスになっている。 また半導体内部のPull-UP抵抗は微細なものなので、大きな放電エネルギーには耐えられそうにない。 外付け抵抗でPull-UPしダイオードで過電圧をバイパスしておけば当地の様な『静電気発生地帯』でもかなり安心できる。

 また、HAM局によってはオンエアする時に強力なRF電界におかれるだろう。RFI対策をしないと誤動作することがある。予めパドル入力部分で対策しておこう。 直列抵抗とコンデンサの付加でRFIにかなり強くなる。 同調フィーダーやロングワイヤー系のアンテナを使うとシャックのRF電界はかなり高くなることがある。 そんな時はパドルの配線部分にフェライト・ビーズとコモンモード・チョークの追加も必要そうだ。 逆に数WのQRP局なら何もしなくても大丈夫だ。


キーイング出力の対策
 出力回路にはフォトカプラの一種、フォト・モス・リレー(Photo-MOS Relay)を使った。

 無線機内部へ組込み用ならVer.1のような「デジトラ」のキーイングで十分だ。 しかし別の箱に組込んで、独立したエレキーとして作るならキーイング接点のところはマイコン部分と絶縁される形式がベストだ。 実際に様々なリグに使う可能性があるので昔は高速リレーを使っていた。 機械的なリレー接点はチャタリングと寿命の問題があって、今ならそうした欠点のない半導体リレーが良い。

 Photo-MOS Relayは機械的なリレー接点と同じく無極性だから便利だ。 接点OFF時の耐電圧も高く真空管リグの『ブロッキング・バイアス・キーイング』にも安心して使える。 無極性だからプラス接地でもマイナス接地でも支障ない。 しかし欠点もあって定格を越えた過負荷には案外脆い。 その対策に過電圧保護のサージアブソーバー/バリスタ(ZNR/TNR)と過電流保護の自己復帰型ヒューズ(Polyswitch)を入れて保護しておく。

 おおむねこうした対策をしておけば、いざと言うとき故障で使えない事態を防ぐことができる。

Photo-MOS Relay
 フォト・モス・リレーは:発光ダイオード、光電池、MOS-FETを複合したデバイスである。 最近盛んに使われるようになった。
 ドライブ側(1次側)のLEDに数〜10mA程度の電流を流すと光が出る。(もちろん、内部で) その光が空隙を越えて2次側の光電池(太陽電池)に当たる。光電池に光が当たると電圧が発生する。その起電圧でMOS-FETのゲートをONにドライブする。その結果、2次側出力回路のMOS-FETがONすることになる。 また、1次側のLEDを消灯すればMOS-FETもOFFする。

 このように、1次側の電流ON/OFFで、2次側出力のMOS-FETをON/OFFすることができる。 1次側と2次側のON/OFF伝達は「光」によっており電気的な接続は無いので絶縁が保たれる。1次・2次間の絶縁耐圧は数kVあるのが普通だ。

 出力側には2つのMOS-FETが内蔵されていて、その接続方法により極性のあるDC専用、或は無極性でAC/DC両用の接点として使うことができる。 このFETの耐電圧が接点OFF状態の耐圧になる。数10V〜数100Vのものが市販されている。 FETの電流容量が最大接点電流に相当し、数10mA〜数100mAの物が多い。もっと大きな電流の開閉にはPower-MOS FETなどを外付けする。 なお、Photo-MOS Relayは他のフォト・カプラに比べ動作速度がやや遅い、値段が高いなどの欠点がある。(遅いとは言ってもエレキーにはまったく問題ない)

 写真はPanasonic製とFairchild製のPhoto-MOS Relayである。手前の6ピンのものは互換できる。Fairchild製のHSR312は秋月電子通商で、Panasonic製のAQV224NはRSコンポーネンツで入手できる。そのほかPanasonic製の各種が秋葉原の千石電商でも入手できるようだ。

追記:フォト・モス・リレー:HSR312は秋月の販売が終了したようだ。一時的な販売だった模様だ。これから買うなら代替としてパナソニック電工のAQY214EHが安価で入手性も良さそうだ。但し、外形は4ピンの小型タイプになってるのでカタログを参考に配線を。保護の仕方など、使い方はまったく同じで良い。入手先には、秋葉原の千石電商ほか日本橋のマルツパーツなどがあり、いずれも単価300円程度だ。通販でも購入できる。(2013.05.01)

過電圧・過電流保護素子
 写真はバリスタ(ZNR/TNR)とポリスイッチ(Polyswitch)である。 良く似た形状をしているが、目的・用途も動作メカニズムも異なっている。

 バリスタは、双方向特性を持ったツェナーダイオードのようなデバイスである。 端子間の電圧がブレークダウン電圧を越えると導通しその電圧以上にならぬように働き回路を保護する。写真のものは270Vで動作する。 ブレークダウン電圧は数10Vから1kV以上まで各種の市販品がある。大きさは耐エネルギー量で決まっているので目的により選定する。秋葉原では多くのお店で見かけるが、秋月電子通商に幾つかあるようだ。(←220Vのものを調達する)

 右のポリスイッチは自己復帰型のヒューズのような素子だ。通常は低抵抗だが規格の保護電流を越えると急に高抵抗を示し電流を遮断(制限)する。 自己発熱による特性を利用してるので、素子が冷却すればまた低抵抗の状態に復帰する。 従って普通のヒューズのように交換の手間が無い。 但し、完全な遮断ではなく漏れ電流があり、また遮断時の耐電圧も決まっているので回路によりどの素子を使うべきか選定が必要だ。写真のものは秋月電子通商で購入した100mAのもの。

 エレキーの接点(Photo-MOS Relay)にはどのような回路が接続されるかわからないので、壊れないように過電圧と過電流の保護を設けておくと安全・安心だ。 アマチュアの自作品なのだから自己責任で省略しても良いが、「うっかり」に備えておくと結局は自分が助かることになる。

               * * * * *


AVRエレキー頒布要領
 マイコンにあまり興味はないが『エレキーが・・』と言うお方に書込み済みAVRマイコンを頒布します。

 頒布はATtiny26L-8PU(プログラムは最新バージョン)+20pin ICソケット+Photo-MOS Relay(Panasonic製:AQV224N)がセットだ。 他の部品は手持ちがありそうだし秋葉原や通販で入手容易なものばかりだ。なお、AQV224Nは手持ちがあるうち含めるが、無くなったら自己調達を。HSR312と概ね互換できる。

頒布は以下(1)または(2)のどちらかの方法で:
 (1)1セットあたり「SASE+物々交換品」と交換にお送りする。SASEとは、返信用封筒に切手(定形外の120円分)を貼り返信用宛先を書いたもの。
 (2)商売ではないので物々交換が基本だが、適当なブツがなければ1セットあたり「SASE+500円」でも受け付ける。(切手代用は不可。定額小為替や銀行口座振込など)

 自作する人にはタダで差し上げたいくらいだが、無償だと取りあえず貰っておいて死蔵するだけの人が現れるそうなのでこのようにさせてもらっている。 メールは「ttt.hiroアットマークgmailドットcom」(カタカナ部分は半角の文字記号に)で届く。

 手持ちのATtiny26Lが無くなるまで対応の予定。 ATtiny26Lはまだ入手できるが生産は終了しているらしい。 互換の代替品はATtiny261A_461A_861Aなので検討確認が済めばそちらに切り替えるかもしれない。なお、前のBlogにあるHEXデータはATtiny26またはATtiny26L用のものでATtiny261A_461A_861Aには使えないと思うので注意を。

追記:Sleep機能の追加(2011.02.10)
乾電池電源向きの『Sleep機能』を追加したので頒布を再開します。これから頒布するものはすべて新バージョン(Ver.3)です。 互換性を維持したので、このページに掲載の回路でも動作するが、別のBlogに掲載の回路を推奨。 前バージョン(Ver.2)の機能を含むので今後はすべて新バージョン(Ver.3)を頒布する。 新バージョンの詳細は別のBlog(←リンク)で確認を。 前バージョンでの頒布数は僅だったが、もしご希望があれば書き換えてVer.3にバージョン・アップします。お手数ですが書き換えのATtiny26Lと返送用SASEを同封してお申し込みを。

               ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 無線電信(CW)で交信する際の負担軽減と、奇麗な信号を目的としてエレキー:Electric Keyerは、真空管時代から研究され製作されてきた。 JA-HAM局に占めるCW人口は少ないが、ベテランを中心に長く楽しむ人が多いようだ。  総HAM局数は減少していてもCW局は減っていないように感じられる。HF帯ではいつも賑やかなCWが聞こえてくる。

 クラッシックな縦振れ電鍵派、メカニックなバグキー派、スマートなエレキー派に別れるようだが、オンエアはエレキーが一番楽なように思う。 没個性的と言われつつも交信の負担が少ないのは確かで、殆どエレキーでオンエアしている。

 コンテスターにはメッセージメモリ機能が欲しいのかもしれない。私はバンドやコンディションによってCQの出し方を変えるのでメッセージメモリ機能はなくても支障ない。長・短点メモリの機能があれば十分快適だと感じる。このAVRキーヤーは「使える」エレキーだと思う。 de JA9TTT/1

(おわり)

==>続編あり:more AVR Keyer(←リンク)

2011年1月29日土曜日

【AVR】AVR Keyer Part 1

AVR Electric Keyer】AVRマイコンを使ったエレキー
 エレキーはマイコン工作の定番の一つだろう。エレキーはもともと簡単な「論理回路」で実現されていたからワンチップ・マイコン向きなのである。マイコン式のエレキーはTTLとかC-MOSで作るキーヤーの後で扱うつもりだったが、必要があって製作したのでBlogネタにした。

 写真はAVRマイコン、ATtiny26Lを使ったエレキー基板だ。マイコン:1個、トランジスタ:1個、発光ダイオード(LED):1本、抵抗器:2本、基板の外付けで可変抵抗器:1個、コンデンサ:3本、ISPコネクタ、ICソケット、基板、端子などで構成された簡単なハードウエアである。マイコンを使わずに製作すればICはずいぶん多くなるし、伴って配線もずっと複雑になる。 たったこれだけで立派にエレキーが作れるのは流石にワンチップ・マイコン式だ。

【AVR Electric Keyer】配線面
 部品総数が少ないのだから、配線も非常に簡単である。主に端子へ引き出すための配線であり、部品相互を繋ぐものはわずかだ。 マイコンさえあればごく短時間で製作できる。

 この例ではプログラムを作成し、書込んでテストする機能を持たせているのでエレキーとしては不要な部品を含んでいる。 使うためだけの製作なら不要な部品、不要な配線もあるのでそれらを省けば一層簡単に作ることができる。

 例によって配線はお見せするような物でもないが製作の参考になるかもしれないので。

AVR Keyer Ver.1.0.1】開発用回路
 キーイング・スピードの加減は可変抵抗:VRで行なう。よりマイコンらしくパドル操作でスピードの加減をする方法もあるが、使い勝手を考えるとVR式の方が優れるように感じる。(これは好み)
 プログラムはオンボード書込み・・・要するにこの基板にマイコンチップ(ATtiny26L)を載せたままで書き換えをするのでそのためのコネクタが付いている。 図の左上あたりにあるISPコネクタはキーヤーとしては不要な部分だ。なお、ISPコネクタには7ピン一列式を使っているが各自の開発環境に合わせる。

 消費電流はわずかなので電源は乾電池が良い。電源電圧を安定化する必要は無くて実験では下限2.5Vくらいまで動作した。電源電圧の上限は5.5Vなので注意を。マンガン型単3乾電池3本で連続1,000時間以上動作する計算だ。乾電池の終止電圧は1本あたり0.9Vなので、3本直列で使うと電池がカラになるまできっちり動作してくれる。或は小型化するならリチウム乾電池(1個)も向いている。

AVR Keyer Ver.1.0.1D】製作版回路
 上記回路図からISPコネクタを除去しただけの回路図。 書込み済みのマイコンからスタートするならこの回路で良い。

 一層の省部品で試すなら、C2:0.1μF、C3:10μF/16Vが省ける。またReset端子のPull-up抵抗(R1:10kΩ)はなくても動作する。LEDとその直列抵抗(R2:2200Ω)もエレキーとしては必要ない部分だ。テストをするだけなら省いても良いだろう。
 このように非常に少ない外付け部品でも動作する。もちろん、そうした部品はまったく不要と言う訳ではない。より安定で確実な動作をさせるにはあった方が良いのは勿論である。LEDも動作の確認に役立つものだ。

 サイドトーン付きである。圧電スピーカは必要に応じて追加し不要なら端子を遊ばせておくだけで良い。 なお、普通のスピーカ(ダイナミック・スピーカ)も使えなくはないが、1kΩ:8Ω程度のマッチング・トランスを間に入れるべきだ。 サイドトーンは矩形波なのでブザーチックな音がする。 多くのRigはサイドトーン・オシレータを内蔵している。不要なことも多いからON/OFFできるようSWを付けた方が良い。 


デジタル・トランジスタ】DTC114YA
 HAMには馴染みの無い部品かもしれない。この型番に拘る必要はなく、ほかにも使える『デジトラ』はたくさんある。 増幅ではなくスイッチ的な回路に使うには数個の抵抗器が省略できて便利なトランジスタだ。 上記のエレキー回路ではキーイング・トランジスタに使用している。

 もちろん、2SC1815(Y,GR,BL)のような汎用(はんよう)トランジスタと抵抗器2本で代替しても良い。 手持ちにDTC114YA(ROHM製)があったので使ったまで。 デジトラは増幅系には向かないので持て余し気味で、こうしたマイコン回路に率先して使わないと出番はない。

プログラムの話し
 マイコンと言えばプログラムの話しが大半を占めることになる。何から何までプログラムで処理しているからこそ回路が簡単になっている。プログラミングの話しが主役になるのは当然だろう。 ここでは、JN3XBY岩永さんの解説記事(←リンク)を参照させて頂くことにしてプログラムの話しは省略させてもらった。 ステップ・バイ・ステップで実験しながら進める丁寧な解説記事があってBASCOM-AVRで作るマイコン式エレキーの開発過程が詳しくわかる。

 AVRマイコンのプログラム開発用ツール:BASCOM-AVRの愛用者なら解説を読みながら自身で容易にできるだろう。 最終回のソースリストからコピぺでいきなり作ることもできる。 AVRマイコンの鬼門(?)の一つ、ヒューズビットの書き換えはしなくて良い。購入したままで良いから初心者でも安心だ。(注:内部の1MHzクロックで動作している)

 しかしBASCOM-AVRの開発環境が無いと少々面倒かもしれない。 以下のリストは処理済みのHEXリストである。ここからスタートすれば、BASCOM-AVRは必要としない。 以下のリストをそっくりコピーして、「メモ帳」か「ワードパッド」のようなテキストエディタに貼付け、たとえば『keyer.hex』のような拡張子が.hexの(任意の)名前でセーブする。

 プログラムライタはAVRマイコンに書込みできる物なら、例えばHIDaspxでもUSBaspでも何でも良い。 それを使いGUI環境かコマンド・プロンプト(DOS窓)からセーブしておいた.hexファイルを書込めば出来上がる。
 ライターにHIDaspxを使い書込みソフトはhidspxを使うとすれば『hidspx keyer.hex』のコマンド一発で書込める。非常に簡単だ。keyer.hexはhidspxと同じディレクトリに置いておくこと。 BASCOM-AVRの環境がなくてもエレキー用マイコンが作れる訳だ。試してはいないが、Macintoshの環境でもできるはず。

 長短点メモリ付き、スクイーズ機能も付いている。マイコン学習用のお遊び習作品ではなくて、オンエアの実戦に使える本格機能を持ったエレキーである。もし良いエレキーが欲しいと思っているなら是非お薦めできる製作だ。

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以上、先頭が:で始まる行をそっくりそのままコピペして『keyer.hex』ファイルを作成する。プログラムのソースはJN3XBY岩永さんの物と基本的に同じだ。好みで少しだけパラメータを変えてみたが本質は違わない。ソース・プログラムをいじってみたいならオリジナルの記事を参照されたい。なお上記hexファイルを個人の用途以外で使いたいなら連絡を。

 上記は実際に動作しているものなので大丈夫なはずだ。もしも旨く行かない時はまずはご自身で考えて自己解決の努力も。(ご質問も可)

:上記プロフラムはPart 2で紹介のVer.2。サイドトーン周波数の可変機能あり。オートスリープ機能はナシ。対象のMPUはATyiny26Lである。 オートスリープ機能付きはVer.3以降なので、別のBlogを参照。

 プログラム済みのエレキーチップが欲しいだけならこれさえ面倒かもしれない。 この際AVRマイコンで遊んでもらいたいと思うが、マイコンに興味はなくてエレキーが必要なだけのお方に書き込み済みの頒布も計画したい。(詳しくは続きで)

次回は本格的な外付けキーヤとしてもう一歩話しを進めてみよう。de JA9TTT/1

つづく)←リンク


2011年1月9日日曜日

【回路】V-I Converter

電圧・電流変換回路:V-I Converter
 V-Iコンバータは入力された電圧を電流に変換して出力する回路だ。例えば、1V→1mA、2V→2mA、3Vなら3mAと言うように出力電流は入力電圧に比例する。(・・ように設計してある)

 写真は回路の動作を実験的に確認している様子だ。まずはラフな回路で動作の仕組みを確認しており、取りあえず高精度は求めない。従って抵抗器の誤差やOP-Ampのオフセット電圧がV-I変換の誤差となるのは織り込み済みだ。それがどの程度影響するのかも観測対象である。

 この状態で変換誤差は〜2%程度、オフセットは入力電圧換算で数mV相当であった。 例によってOP-AmpにはJ-FET InputのTL074CNを使った。従って電流検出抵抗及び負荷抵抗は数100kΩあたりまでならバイアス電流は無視できる範囲にある。 汎用のJ-FET-Input OP-Amp.で問題になるのはやはり電圧オフセットにありそうだ。

I-Vコンバータの回路例
 V-Iコンバータの回路は幾つもあって左図はその一例だ。 以前のBlog『YIG Oscillators』で、YTOの主コイルのドライブに使ったのもV-Iコンバータであった。 但し、片方向の磁界のみ与えれば良かったので、電流も一方向であり少し異なった回路を使っていた。

 V-Iコンバータの特徴は何であろうか。 ここに電圧源があって抵抗器を繋げば抵抗器には電圧に比例した電流が流れる。これはV-I変換になる。いま1Vに1kΩなら1mAが流れる。

 しかしV-Iコンバータはその抵抗器が幾らであろうとも入力電圧で決まる電流を流そうとする。 1Vで1mAの関係なら負荷が1kΩでも2kΩでも1mAを流そうとする。従って2kΩなら両端の電圧は2Vになっている。 もちろん出力を短絡(ショート)しても流れるのは1mAだけだ。

 では負荷抵抗が1MΩでも正しく動作するのかと言えばそれはNOだ。1MΩに1mA流すには1,000V必要になるが、OP-Amp回路からそんな電圧は発生できない。 普通は±15V程度の電源電圧で動作させるから出力は±10V少々までと考えるべきだろう。 回路の電源電圧が決まれば動作範囲も自ずと決まってくるのだ。この出し得る上限電圧を電流源の「コンプライアンス電圧」とも言う。(もちろん電源電圧が±1,500VのOP-Amp回路だって困難はあっても不可能ではない・・・が、それでも負荷が10MΩになった途端に破綻する・笑)

「真のV-Iコンバータはもし負荷がオープンになったなら端子間で放電してでも一定電流を流そうとする恐ろしい回路だ」(^ ^;;

 このV-Iコンバータは両方向型である。 入力電圧が正のときには電流を出力し、入力が負電圧なら出力端子は電流を吸い込むように動作する。 即ち「負の電流」も出力できる。 従ってGNDレベルを中心とした正弦波(電圧)を入力すれば『正弦波状の電流出力波形』が得られる。 なお、上記ブレッドボードの試作例は信号源抵抗が変換精度に影響しないよう入力にバッファ・アンプを置いている。 他の部分は回路図と同じだ。写真は実験初期のもので反転型から試したので少しだけ結線を変えている。(注:回路図は非反転型)

三角波電圧→三角波電流
 ファンクション・ジェネレータ(FG)から三角波電圧を与え、V-Iコンバータ回路を通し、その出力には抵抗器を接続する。 抵抗器の端子間電圧Vは電流値Iに比例するから,このように再び電圧に変換されて観測される。

 たとえば、長いケーブルの先に信号を送りたいとする。 ノイズを防ぐため、ケーブルの受端にある負荷抵抗は比較的低めに選ぶべきだろう。しかしケーブルには抵抗があって、しかも周囲温度で変動する。 そのような時はV-Iコンバータで電圧信号を電流信号に変換して送れば良い。 振幅1Vの電圧信号→振幅10mAの電流信号に変換して送れば、負荷抵抗:100Ωの両端で再び振幅1Vの信号として取り出すことができる。もちろんケーブルの抵抗値が変動したとしても誤差にはならない。

 ほかにも電流信号に変換すると扱い易くなる例も多く、V-Iコンバータは有用なものだ。もう少し大きめの電流が取り出せるようにすればYTOのFMコイルをドライブするにも良さそうだ。

負荷はダイオード:1S1588
 負荷にダイオードを付けてみる。 ダイオードのV-I特性が観測される。 ダイオードの順方向電流対端子電圧は直線ではない。 写真の様になる。(注:三角波に+オフセットを掛けてほぼゼロV、即ち0mAの所からスタートするようにしてある)

 このように電圧・電流特性が直線的ではないデバイスのI-V特性を観測するにも役立つ。  三角波は時間対電圧が比例関係だから、電圧対電流特性を管面で観測していることになる。
 なお、オシロスコープをX-Yモードにし、X軸を入力三角波で振らせY軸をダイオードの両端電圧で振らせればより直接的にダイオードのI-V特性を描ける。

              * * * * *

 回路要素の実験は詰まらないだろう。その詰まらそうな回路も幾つか集まると面白そうな物が出来上がる。 これは年末に考えていて気になったテーマだった。まずは実験としてブレッドボードで荒削りに試してみた。 この先ではもっと大きなダイナミックレンジが必要とされるはずだ。 うまくOP-Amp.を選び各抵抗器の相対誤差を小さくすれば概ね行けそうに思う。アナログ回路ではこの「行けそう」と言う感触を得るのがとても重要だ。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2010年12月5日日曜日

【Audio】Repair a YAMAHA NS-05 Part 2

(YAMAHAの小型スピーカ・システム:NS-05の修理:Part 1は→ここ

Tweeter:25HP03の加工
 NS-05のTweeterと類似の形状と特性をもった代替品ではあるが、それ用に出来た物と言う訳ではない。 従って、多少の細工は必要になる。 この写真は25HP03の取り付け板の四隅をカットした(削った)様子だ。

 25HP03の取り付け板はオリジナルのJA05A2よりやや小さいが、角のRが小さいため縁に当たってしまう。 それで四隅を2mmくらい削る必要がある。だいたい写真の程度で良いようだ。 なお下側に見えるパッキンは削り量の目安のためにそのままにしておいた。装着時には同じ寸法にカットする。

25HP03:端子の引き出し
 25HP03の接続端子は小さなラグ端子になっている。 NS-05のデバイディング・ネットワークからツゥイータに来る配線は先端が5mm幅のファストン端子になっておりそのままでは接続に無理がある。

 ネットワークからの配線に付いているファストン端子(メス)をカットしてしまいツゥイータの端子に直接ハンダ付けする方法もあるが、ここではツゥイータ側に別の線を付けて5mm幅のファストン端子(オス)に変換した。ファストン端子はホームセンターのカー用品売り場で容易に入手できる。

 なおツゥイータの端子間隔は狭いのでこのように熱収縮チューブで処理しておくと安心だ。 オーディオは見えない所の見栄えや出来映えも大切だと思う。(笑)

 なお、写真にないがネットワークから来るファストン端子(メス)にも熱収縮チューブを被せてショート防止しておいた。

Tweeterの隙間を埋める
 大きなマグネットだった元のTweeterの穴が開いており、25HP03には大き過ぎるくらいだ。概ね取り付け板でカバーできるが中央部分のオーバーラップは少な過ぎる感じがする。 バスレフ型のエンクロージャではダクト以外の所で空気漏れがあっては旨くない。 隙間ができないよう幾らか穴を埋め戻しておく方が良さそうだ。

 三日月型に加工した木板を縁に接着しても良いが、ここではエポキシ・パテを使ってみた。硬化剤と主剤が「太い金太郎あめ」のような円柱状になっているものだ。 それを20mmくらいカットし、良く練り合わせ概略整形してから貼付ける。 硬化前は粘土状だから整形も自由自在だが混合から10分くらいで固化が始まり、30分もすれば刃物でも歯が立たぬほどの固さになる。必要な分量だけをとって混合し、始めたら手早く済ませねばならない。

 なお、Tweeterを付けてしまえばパテ埋め部分は見えないのでこのままでも良いかもしれない。しかし『オーディオは見えない所の見栄えや出来映えも大切』・・・なので黒くペイントして奇麗にお化粧しておいた。(^_^)

25HP03に換装完了
 あとは配線を接続しユニットをネジ止めすれば換装・修理も完了だ。

 NS-05はバスレフ型だが、内部には粗毛フェルトの吸音材が緩く詰めてある。たぶん定在波対策だろう。 吸音材はバスレフのポートと反対側、即ちツゥイータ側に寄せて詰めてあったようなので元の位置になるよう確認しておく。

 スピーカには極性がある。デバイディング・ネットワークから来た赤色の配線がツゥイータの赤色の端子に来るよう接続する。間違えるとウーファーからの輻射と位相が反転する周波数で打消しによるディップが発生する。

 取付けネジ穴は微妙にずれているのでドリルで下穴をあけておいた。エンクロージャは密度の高いパーティクルボード(ホモゲン)だからかなり固くて、穴の加工をしておかないと木ネジが入って行かない。なお、パーティクルボードはネジの絞め換えが利かないので注意を。 ネジの締め付けはパッキン材が多少潰れる程度で十分だ。 埋め戻したのでオーバーラップは十分にあってエアー漏れは防げる。 それにあまり強く絞めるとプラスチックス製の取付け板がタワんでしまう。 このあたりは機械的な強度に不満のあるツゥイータなのだが、安価なのでやむを得ないところだ。

オリジナルの周波数特性
 さっそく音を出してみた。試聴による確認でも十分なように思えたが、折角なので周波数特性を実測してみた。 但し、無響室や標準マイクロフォンがある訳ではないので、定量的な測定ではない。 要するに交換前後での特性比較と言うことになる。

 クロスオーバー周波数(3kHz)の上下で旨く繋がっているのかと、ウーファー側とツゥイータとの音圧レベルに大きな段差が無いかを比較により確認しておく。

 なるべく周辺環境からの反響が出ぬよう部屋の外まで持って行き、屋外へ向かって音を出してみた。 環境ノイズの影響が少ないよう音圧レベルを加減した結果、おおよそ1W程度のパワーを与えている。 測定中は不気味(?)なスイープ音でご近所には少々ご迷惑だったかもしれない。(スミマセン)

 マイクロフォンは一般的なエレクトレット型を使い、レベル管理とプリアンプを兼ねて電子電圧計(ミリバル)に接続した。 周波数特性の観測には低周波帯をカバーする方のネットワーク・アナライザを使ってみた。 今ではポピュラーになった『パソコン+オーデイオ測定用ソフト』でも十分だが、この際少しでもネットアナの稼働率を上げる目論みもある。(

 写真は正常なR側のユニットを測定した結果である。こちらがオリジナルの状態であり比較の基準だ。 周波数特性にディップやピークが複雑に見られ、平坦とは感じないだろう。 しかしスピーカ・シスユテムの周波数特性はおおよそこんなモノである。むしろ良い方と言うべきか? まあ、一応はHi-Fi用なので。

 なお、こちら側のユニットも測定の終了後に同じようにツゥイータ交換を行なった。

ツゥイータを交換したNS-05の特性
 こちらが故障したツゥイータを25HP03に交換した方である。 L側のユニットと言うことになる。

 上の測定と極力同じ条件になるように測定している。 中音域の繋がり具合やウーファーとのレベル差も感じられないのでオリジナルに近い性能が得られていると思う。 これは、このテストの前に実際の音出しの時すぐに感じたことである。

 周波数特性で気付いたのは15kHzあたりである。(写真:青の矢印部分) むろん相対的な比較測定なのだが、オリジナルよりも高域特性が伸びたようだ。 オリジナルのユニットは経年変化でハイ落ちになっていた可能性もある。長い間にドームの剛性が落ちればハイ落ちにもなりそうだ。 なお、データ整理していて気付いたのであるが15kHz以上で急速に落るのは使ったマイク+ウインド・スクリーンの特性である。 但し私の耳では良くは聞こえない範囲なので再測定はやめることにした。 新旧の相対比較なのでこれでも十分だろう。

 さらに交換したツゥイータにあった「すり鉢状」の部分に起因するらしいディップも見られる。この部分はホーンの一種と考えて概略計算するとその辺りにディップが発生しそうなことがわかった。

                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 オーディオ機器は多様な音をじっくり聞いて最終的な判断をすべきだろう。 しかし、ある程度までなら測定器の助けで見分けることも可能だ。 むしろ最低限おさえておくべき基本の部分は測定による判定が向いている。 試聴で判断すべきは基本特性の更に上にある感性にかかわる部分にあるのではないだろうか? アマチュアのレベルなら『交換しました。良い音がしました』・・で済むのかもしれないが、それではちょっと物足りない。

 NS-05のツゥイータが断線した時点で幾つか選択肢があった。 捨ててしまうのもその一つだが、それは最後だ。 口径が120mmと小さなウーファーなのでデバイディング・ネットワークをパスしてフルレンジとして使うのも良さそうに思えた。 或はオークションで片側がNGのNS-05を待つと言う手もある。半年も待てば出て来そうだ。 しかし、それも芸がない話しなので代替品でどこまで行けるかやってみた次第だ。たまたま旨くマッチしそうなドーム型ツゥイータが存在したのは幸いであった。

 試聴結果は主観的表現になるので省略しようと思ったが少しだけ書いておこう。 暫く聞いた感じでは中・低域はまったくオリジナルのままだだと思えた。 周波数特性が伸びた関係か高音域が僅か華やかになったようにも感じる。オリジナルのちょっと眠い感じより寝覚めた気分だろうか。しかし、それはやや誇張した言い方だろう。 全体的な雰囲気はオリジナルのNS-05を損なわず、むしろ「変わり映えを感じない」と言うべきか。 何らかの変化を求め「改造」を意図したのではないのだから修理としては大成功だろう。 もちろん左右両側ともに交換したが、新旧を混ぜても違和感はないくらいだった。

 またもや特殊なモノの話しで単なる備忘録になってしまったようだ。 もしもツゥイータの飛んだNS-05があるなら交換してみると良い。僅かの費用と手間でうまく復活させることができたようだ。 他のスピーカ・システムでも同じように旨く行くのかはわからないが、やって見るくらいの価値はありそうだ。エンクロージャのサイズ・形状に影響を受けにくいツゥイータの交換は旨く行く可能性が高い。  de JA9TTT/1

(おわり)

2010年12月1日水曜日

【Audio】Repair a YAMAHA NS-05 Part 1

YAMAHA NS-05 Speaker
 写真はヤマハのNS-05と言う2ウエースピーカシステムである。すでに20年くらい経過している。数年前にリサイクルショップで見つけ、その後暫く聞いていた。購入直後のチェックでは左右とも特に異常はなく、大切に使われていたらしく外観も奇麗であった。 その後部屋の整理の都合で仕舞われていた。

 コンパクトなシステムながらも拘りを持って作ったスピーカらしい。 コーン型・ウーファー(120mm)もドーム型ツゥイータ(30mm)も大型のアルニコ・マグネットを使ったユニットが使われている。2個で10kgを軽く越えるので大きさの割にズッシリと来る。価格(1988年当時)は左右一対で¥58,000-だったそうだ。
 
 もともと多目的スピーカとして購入したものであるが、すっかりBGM用に定着してしまった。 120mmウーファーでは本格的Hi-Fi用には少々物足りないのは確かだ。 しかしSpecやお値段ほか何の情報や先入観もなしに鳴らしてみたら思いのほか良かったのだ。

Tweeter
 購入直後の確認では左右どちらも大丈夫だった。 ところが暫く振りに音を出したらすぐ異常に気付いた。 左側スピーカは高音が出ていないのである。 古いこともあると思うが、安価だったので間欠的に不具合(=半断線)が起こっていたのかもしれない。

 ネットでサーチしてみると、ツゥイータがNGになったNS-05の話しには結構ヒットする。 音に拘ったツゥイータだったのだろうが、耐環境性能では劣っていたのかもしれない。 定格耐入力は40Wもあるから一般家庭のBGM程度でオーバードライブする可能性は低いだろう。自室で聞いていて平均パワーは1Wもないくらいだ。だからツゥイータを飛ばしてしまったとは考えにくい。 どうやらボイスコイルと引き出し線の接続部分で断線が起こり易いユニットのようだ。

 写真では左に交換用のツゥイータ:25HP03を置いてみた。オリジナルのドーム径は30mmである。交換用は25mmなのでやや小さい。 オリジナルのようにドームが突出した構造は指向特性で有利だ。しかし事故の危険があるので普通はバリアを設けるべきだろう。 もっともバリアによっては何がしか音響特性に影響があるかもしれない。それを嫌ってかNS-05ではむき出しである。 交換用の方はドーム部分を窪ませることで危険を減らす工夫をしたようだ。但し「すり鉢状」の部分で音響特性に何らかの影響があるかもしれない。

 並べて置いた感じでは、取付け板の寸法もあまり違わないので旨くフィットしそうだ。
 
マグネット比較
 裏面の写真である。 左はオリジナルのユニット:JA05A2である。右が交換に使う25HP03だ。 アルニコ・マグネットを使い防磁型になっているJA05A2は重くて如何にも良さそうだ。 それに比べ25HP03のマグネットはとても小さい。完全防磁構ではないらしいので簡易な磁気シールドなのだろう。 おまけに取付け板がプラスチックス製なので一層軽い。

 3kHz以上を受け持つユニットである。ボイスコイルの振幅も小さいから、十分な磁力を持つマグネットなら厚みは小さくても十分だろう。 実際に単体で音を出してみた感じからして効率も悪くなさそうだ。 案外ネオジム・マグネット使用と言うのは本当なのかもしれないと思えて来た。(笑)

【参考:NS-05のウーファー】
 この修理では関係ないが使われている120mmウーファーである。同じようにアルニコ・マグネットを使っており、防磁型なのでがっちりシールドされている。 低域〜中域の3kHzまでを受け持っている。エンクロージャと共に本機の音色の殆どを決めてしまう重要なユニットである。 コーン部分には高音カットの構造もないようで見た感じフルレンジに近い印象だ。再生帯域は案外広いのかもしれない。

 内部のマグネットサイズまで伺い知ることは出来ないが耐入力電力から見て振動系はロング・ボイスコイル型であろう。 振動系の質量は大きめになるはずだから磁気回路を強化して効率を上げていると思う。かなり大きめのマグネットなのではないだろうか。 コーン紙はポリプロピレン樹脂製で軽量かつ剛性に優れしかも大きめのロール型フリーエッジが付いている。ダンパーも大きな振幅に耐えられるブックシェルフ型SP用の構造・形状だ。

【参考:デバイディング・ネットワーク】
 たいして高級なスピーカ・システムではないので、デバイディング・ネットワークはそこそこである。 12dB/octのLC型になっており、クロスオーバー周波数は公称3kHzである。

 コイルはフェライト磁芯入りでコンデンサはノンポーラ型ケミコンのようだ。 本来は見えない部分なので部品や構造はそれなりであるが、接着剤でガッチリ固めてあるのは素人細工のユニットとは違う部分だ。 こうした部品や配線は強固に固定されていないと何処かの周波数で「鳴き」が出る。 音を鳴らすと異音のする困ったスピーカシステムになってしまう。 接着剤には硬化後も柔軟性を保つゴム系が使ってある模様。 自作スピーカ・システムでも見習いたい部分だ。

取付けの検討
 本題に帰って交換品を仮置きしてみた。 取り付け板の縦横がやや小さいが多少の細工で旨く収まりそうである。 元のユニット用に大きなマグネットの穴が開いているので少し埋めた方が良さそうだ。

 真っ黒なユニットなので、オリジナルのイメージとはだいぶ違ってしまう。 しかし使用時にはサランネットを被せてしまうので気にはならないだろう。もちろん前のように良い感じに鳴ってくれればの話しだ。

                 −・・・−

 この際修理なんかするよりも新しいのを買った方が良いのかもしれない。 しかし廃棄してしまうのも勿体ない話しだ。 考えてみたら昔っから各社のスピーカ・ユニットを組み合わせたマルチウエー・スピーカ・システムを自作するのは普通のことであった。 だから類似したユニットを揃えればそこそこ性能の再現はできるだろう。エンクロージャ(箱)の形状寸法はツゥイータにはあまり影響を与えない。それにソフトドーム型スピーカは思ったよりも没個性的なものだ。手頃なユニットも見つかったのでやってみることにした。 de JA9TTT/1

つづく)←続きへリンク