2013年10月1日火曜日

【回路】Simple Function Generator

【簡単なファンクション・ジェネレータを作る】

ファンクション・ジェネレータとは?
 Blogでファンクション・ジェネレータ用のICを扱ったことがあった。(→リンク)しかし、ファンクション・ジェネレータ(以下、FGと略)その物についてはあまり扱っていない。アマチュア無線の世界ではポピュラーではないし、用途もあまり無いと思うからだ。(実際そうだろう)

 FGは一種の発振器である。まずはメーカー製のパネル面を眺めてもらえば何となく機能もわかる。 左の大きなツマミと、その右上に横に7つ並んだレンジボタンで周波数を決める。ほか、各ボタンの機能は絵入りでも書いてあるから難しくないと思う。かなり旧式のアナログ式FGだが、基本的な機能は最新型も同じである。

 発振周波数は下限が1Hz以下の超低周波から上限は数MHz程度が一般的だ。 一つのレンジで10倍以上の可変幅を持つものが多い。 この例では約1000倍である。 また、上下限の周波数を決めてその間を連続的に自動で可変することができる。周波数スイープと言う機能だ。これは被測定系の周波数特性を観測するのに役立つ。

 FGは様々な波形が得られるのが一番の特徴だろう。矩形波、三角波、サイン波のほか、それらをある程度加工変形した波形も可能である。 各波形は振幅が細かく加減できるほか、直流的なオフセット電圧を加えることもできるようになっている。

 これらの機能が詰まった「発振器」がFGと言う訳だ。 他に外部から各機能を制御できるほか、高級機では任意波形の発生機能を持つものも多い。ただし任意波形の用途は限定的だ。自動制御系に与える疑似信号を作るには有用であろう。

 以上のように、広い周波数で色々な波形を発生でき、時間変化を伴う波形も発生できるなど便利な発振器と言える。 しかしアマチュア無線機器の開発では殆ど使うことはない。 私は回路の実験に使っているがそれも時々だ。 従ってお薦めするような測定器とは言い難い。やはり出力信号が正弦波のごく普通の発振器の方を一番頻繁に使っている。

 そんな訳で無線家には縁遠いと思うから、何となくFGが欲しくなって来たらまずは簡単なものの自作をしてみるのがお薦めだ。いきなり市販品に手を出しても使わない(使えない)のでは勿体ない。何か他に投資した方が良い。 そのあたりがこのBlogの目的である。 なお作ってみればすぐ感じるだろうがオシロスコープは必要だ。もし持っていなければそこから揃えなくてはなるまい。

                     ☆

FG用のIC
 FGは機能が複雑なので、汎用の部品を寄せ集めて作ろうとすれば面倒なものである。 そこで古くから専用のICが開発されてきた。

 FG用ICの発展史でも書きたい所だが、実は最初に登場したインターシル社が開発したICL8038(写真で一番上)の完成度があまりに高かったため、その後はその焼き直し程度しか登場しなかった。(グレードアップ版にはMAXIM社のMAX-038がある) 唯一独自の開発がなされたのはEXAR社のXR2206くらいであろう。ICL8038にはなかった振幅変調(AM変調)機能が付加されている。 サイン・シェーパも独自形式になっている。

 もし本格的なFGを自作するのなら、これらのICを使うのが最も良いと思う。但し、ICL8038は既にディスコン(廃番部品)であり流通在庫品は有るもののかなり高騰しているのでお勧めしない。 数年前から秋月電子通商が売り始めたXR2206の方をお勧めしたい。 なお、秋月にはマイコン式のキットもあるが少し性格の違うFGのように思う。良く確認して購入されると良い。(参考:XR2206は秋月電子通商でも品切れになった。再開の見込みはないだろうと思う。現在はIC8038の中国版セカンドソースが安価に流通しています。トラ技Jr誌No.35など参照を)

(参考)ICL8038を使った製作記事:歴史の長いICなので過去に幾多の製作記事が存在する。お薦めを一つ挙げるとすれば「トラ技ORIGINAL」誌・No.3の記事が良いと思う。松井邦彦さんのわかり易い解説と詳しい製作・評価記事がある。(P57〜90)絶版と思うが出版社のコピーサービスで入手可能なはず。(→出版社へリンク
XR2206を使う製作記事:JE1UCI冨川さんがアイコム社提供のサイト・BEACONのエレクトロニクス工作室に公開された記事が丁寧でわかり易い。秋月電子のFGキットをアレンジして製作されている。(→リンク

FGのブロック図】(ICL8038の例)
 FGは正弦波発振器とはずいぶん異なった原理で波形を作っている。 コンデンサに電流を流すと電荷が溜まって端子電圧が上昇して行く。 その端子電圧を監視し、ある上限値を越えたところで、溜まった電荷を今度は放電して行く。 下限電圧も監視していて、コンデンサの端子電圧が下限に達したら今度は最初のように充電して行く。 この動作を繰り返すことで波形を発生する。

 コンデンサには一定した電流を流すようにするので、その端子電圧は直線的に上昇する。 放電も一定した電流で行なうので同じように直線的に下降する。 このコンデンサ両端の電圧を取り出すと奇麗な三角波が得られる。 また、端子電圧を監視している電圧比較器の出力はデジタル的に上下するから、この変化を取り出せば矩形波となる。

 正弦波は三角波から作る。 折れ線で近似する方法で振幅が正弦波状に変化するように加工する。 従って最初から歪みのない正弦波を発生させる発振器とは違い、どうしても歪み率は悪くなってしまう。(折れ線の段数にも限度があるので)

 こうして作られた、三角波、矩形波、正弦波は一定の振幅なので振幅を変えるには外付けのアンプやアッテネータが必要だ。 8038には発振周波数を外から電気的に制御する機能もあるのでスイープ発振器にすることも可能だが、それ用の外付けが必要だ。 しかしファンクションジェネレータの発振機能をワンチップに集積しているのでFGの製作はずいぶん容易になる。

参考:ICL8038では充放電を繰り返すのでは無く、充電は継続したまま充電の2倍の電流をを放電することで等価的に上記説明と同じ動作を繰り返している。

ICL8038の等価回路
 上記の発振原理をこれだけの回路で実現する。 開発されたのは1970年代も初頭だった筈で、こんな簡単そうな回路でも当時としては集積度の高いICだったように思う。モノリシックICの特性を活かし、非常に旨く考えられた回路である。 すべてバイポーラ・トランジスタで実現しているのも時代を物語っている。(参考:ICL8038の登場は1973年の夏ごろ。当時の単価は2,500円であった)

 こうした等価回路をディスクリート部品で構成しても良い性能はまず得られない。 アナログ集積回路の設計はそこに使ってあるトランジスタは限りなく相似になることを前提にしているからだ。 VbeやhFEが一致するのは当然で、たくさん並んだ部品は全て同じように動くことを前提にしている。 これはIC化したDBM、例えばMC1496などが周囲温度は変わっても良好なキャリヤ・サプレッションが維持できる理由にもなっている。

 ICL8038はレアパーツになってきたが、まさか2SC1815や2SA1015を並べる人もいないだろう。それをするくらいなら別の手を考えた方が建設的だ。無くなったICを個別Trで模しても労多くして・・・のクチになるだけだろう。これからは、マイコン+高性能D/Aコンバータで作るのが主流になって行くはず。

                   ☆ ☆

 ICL8038やXR2206を持っているなら、それを使うのが良い。 しかし8038は既に高騰しているし、XR2206も何時まで供給されるか安心はできない。

そこで、どこでも売っていそうなICで原始的なFGを作って遊ぶのは如何だろうか? 部品代は1,000円以下、組込むための箱も100均で調達すればちょうど良い。

74HCU04でFGを?!
 写真はごくありきたりの74HCシリーズのC-MOSロジックICだ。 HCUと言うのは内部のコンプリメンタリFETのアンプが1段だけのインバータだ。(HCとHCUの詳しいことはC-MOSの解説書など参照を)

 この50円にも満たない安価でポピュラーなIC一つでFGが作れるのだと言う。 古いトランジスタ技術誌を整理していて目に止まったので実験してみた。 1999年8月号のトランジスタ技術:225ページである。黒田 徹さんの執筆記事だ。 もしお手元にあればぜひご覧を。

74HCU04を使ったFG
 基本的にトラ技に掲載されていた回路そのままである。 多少実用的にしてみたつもりだが本格的に実用にするならサイン波と三角波の出力にはバッファアンプを付けたい。

 いまは性能の良い高速OPアンプが手に入るので、そうした物を使うのが一番確実だろう。 10倍くらい増幅して10Vpp以上得られるようにしておくと便利が良い。 DCオフセットを掛ける必要性は殆ど無いから、AC結合のままで良いだろう。

 振幅はAカーブのVRを使うと幅広く可変し易い。 本格的にはアッテネータとVRの組み合わせにしても良い。 但し本格的なFGなら、やはり専用のICを使う方が良いのでなるべく簡易な線で行くのがこの場合は適当だろう。

部品実装状況
 例によってブレッドボードで試作している。 これくらいの部品数の試作には適している。

 高くても数100kHz止まりなので、レイアウトや配線はあまりクリチカルでない。 信号の流れを考えつつスムースに行くようレイアウトすれば誰でも成功する。

 サイン波の波形調整はVR2で行なうが、ここは一旦調整すれば再調整の必要は無いので半固定VRを使う。 周波数可変のVRはCカーブが手に入ればベストだが、Bカーブでも使い物になる。その時は直列抵抗を1kΩ→10kΩにしてレンジ分けを細かくすると使い易くなる。Aカーブを逆向きに使うと言う手もある。

 サイン・シェーパの入口にあるコンデンサ:C2は無極性型の電解コンデンサだ。手に入らない時は倍容量のコンデンサを逆向き直列にしたものでも間に合う。 但しこの方法を製品に使うのは感心しないので、アマチュアの実験用と思った方が良い。 ちゃんとした製品には無極性型(両極性型)電解コンデンサの採用を。

矩形波
 市販のFGで発生する矩形波は、ゼロボルトを挟んでプラス・マイナスに上下する波形になっている。 このFGでは、0〜5Vの矩形波である。 ロジック回路に供給するならこの方が便利なのでそのまま加工しなくて良いと思う。 3V系のロジックで使うには電源電圧をそのまま3Vまで下げるだけで良かった。

 なお、ちょっと見ただけでDuty比が50%でないことがわかる。これは使った74HCU04の特性に起因するようだ。 トラ技の記事の試作例ではもっと50%に近い。 記事では東芝製の74HCU04を使っているので交換してみたら面白いと思う。 アナログな回路に使っている関係で、内部デバイスの微妙な違いが性能に現れる可能性がある。

三角波
 三角波は別名ランプ波とも言う。 直線性も良く、なかなか奇麗な三角波なのだがDutyが50%でないため、上りの傾斜と下りの傾斜が少々異なっている。

 この原因は、74HCU04の中点電圧(ロジック的に言えば閾値)が電源電圧のジャスト半分になっていないためのようである。 これは内部デバイスの特性で決まってしまうから如何ともし難い。複雑な回路の外付けもしたくはないし・・。

 74HCU04のバラツキかと思い、交換してみたが同じメーカーの同じロット品では顕著な差は見られなかった。 上にも書いたように記事と同じ東芝製でもやってみたい感じだ。

正弦波
 あまり奇麗とは言えない正弦波だが、ダイオードの順方向特性で一段の折れ線近似をしただけなのでやむを得ないだろう。 これでも5〜6%くらいの歪み率には収まっているから大したものである。(笑)

 はなから正弦波を目的とするなら、先のBlog(←リンク)のようにウイーン・ブリッジ発振器を作った方が良い。遥かに低歪みな正弦波が苦労なしに得られる。 このFGの正弦波はオマケだと思って使うのならまずまずだろう。 なお矩形波のDutyが50%になれば三角波の波形も良くなり、正弦波の二次高調波も減って2〜3%の歪率にできそうだ。

                ☆ ☆ ☆

 以上、簡単に実験してみた。部品さえ間違いなければ誰がやっても旨く行くだろう。 特殊な部品は一切ないので入手に困ることは無いと思う。 きちんとした基板にハンダ付けで組立て、箱にも入れてやればけっこう重宝するのではないだろうか。 消費電流も僅かなので、006P乾電池を使い三端子レギュレータで5Vを供給する。 超簡易型と言うことで、外付けアンプも省略で良いかも知れない。 週末の工作にでも如何だろうか?


ほかのインバータではどうか?
 74HCU04は入手し難いICではないが、誰でも手持ちがある訳でもないだろう。 より一般的な74HC04で行けるなら一層有難い。
 もちろん内部構造がまるで違うのでTTLの7404や74LS04ではぜんぜんダメである。念のため。

 そう思って手持ちにあった同じピン配置の各種C-MOSで実験してみた。 メーカーはバラバラで一貫性がない。(笑) TC40H004Pはやや珍しいかも知れないが、他はごく一般的なC-MOS ICである。さて如何なものであろうか?

74HC04の三角波
 内部が三段バッファ・タイプのインバータはゲイン過剰のために高い周波数の発振を伴って旨くなかった。それらしい動作はしていても、これでは使い物にならない。

 そのほか4069UBなら良さそうに思ったのだが、矩形波の過渡部分でインバータの閾値が跳躍する現象があって三角波と正弦波は旨くなかった。矩形波だけなら良さそうであった。

 試した中では40H004Pが多少マシだったが、やはり74HCU04がベストと言うのが結論である。 同じ74HCU04でもメーカーによる違いがありそうなので何社か試してみるとさらに面白そうだ。ほかにMM74C04と言うナショセミだけが作ったC-MOSファミリがあってこの用途に適しているそうだが入手は困難だろう。手持ちが有れば別だが、無理に探すほどの価値は無いはず。もしお持ちならお試しを。

                ー・・・ー

 発振器繋がりで、ウイーンブリッジ発振器の次はファンクション・ジェネレータを試してみた。 こちらも費用が掛からず手軽にできる発振器だが、性能は程々のようだ。しかし、目的・用途によっては意外に役立つこともあるので、何かの時には急場しのぎで製作してみると助かるだろう。 正弦波はオマケではあるが矩形波をそのまま使うよりもきれいな音がするので可変周波数の発振器として十分使い物になる。 ロジック回路のテストには矩形波出力は便利で、それを主に使う目的でインバータのパラで電流容量を倍化してあるようだ。この発振器はこのあたりに主目的があるのかも知れない。

                  ☆

 ファンクション・ジェネレータをテーマにしたのにはちょっとした訳がある。 暫く前になるが、最初の写真に登場したメーカー製:岩通FG-350が故障したからだ。しかも二台とも。 連携して使うケースがあるので同じFGを2台持っていた。それが時を経ずしてまったく同じように故障した。発振しないと言う現象であった。 同一症状なので片方を直せば両方直ったも同然だと思い修理を始めたのである。 しかしどうやっても故障箇所の切り分けができない。暫くつついて半ば諦めてしまった。 だが、有ったものが急に無くなると不便なもので、これは新しく買わなくてはと思った次第。

 しかし、誰しも欲が出るもので機能に目移りすると結構高額であった。 頻繁に使うものでもないので勿体ない。 いよいよの時には自作もやむなしか?と思い実験してみたのである。 まあ急場しのぎなら結構使えるのでは無いかと言うのがここでの結論だ。 ICL8038やXR2206も良いと思うが、これを使い始めるといささか本格化してしまうので簡易型とは行かない危険がある。何時までも完成しなくなるに違いないからだ。(笑)

 FGの修理記を書いても一般性はないから中身を書くのはやめておこう。結果として故障した2台とも同じように修理できた。 原因分離をしていたとき奇妙な現象に気付いていた。 湯船につかっていたとき思い返して、連想でアイディアが浮かんだのだ。「現象から推測し部分的に分離する実験」を試みたら旨く息を吹返したのである。 回路図どころかブロック図さえも無いので、本質的な不具合箇所の特定には至っていない。 しかし症状的に見て迂回できそうな患部をパスして辻褄が合うよう部分改造を施して復活させた。要するに普通の修理では無い。キツネにつままれたような話しで何が何だかわからないとは思うが一件落着して古いFGに舞い戻ってしまった。お風呂のアイディアで直ったのだ。 古い物でも十分とは言え、この際もっと新しいのが欲しかったよなあ。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2013年9月14日土曜日

【HAM】Repair the FRDX-400 Receiver

【FRDX-400型・受信機の整備】

八重洲無線:FRDX-400
 写真は八重洲無線のFRDX-400通信型受信機である。 数年前に、ご不要とのことでJO1LZX河内さんにお譲り頂いたものだ。 その後お蔵入りしていたが最近になって少々気になる事があったので引張り出してみた。 この機会にどんな受信機だったのか詳しく探ってみよう。

 写真は整備済みであるが、お譲り頂いた時点でかなり整備されていたから見た目は殆どそのままである。 河内さんがレストアをお楽しみになった後ではなかっただろうか。

 1967年に登場した受信機:FRDX-400と送信機:FLDX-400で構成される八重洲F-400ラインと言えば昔の憧れであったように思う。 八重洲からは既に先代のF-100Bラインが出ていたが、400ラインの垢抜けしたデザインには魅了された覚えがある。 しかしSSB受信機の性能を満たしたデラックス・グレードは高価であって学生の身分では遠い存在だった。 いま思えば基本構造は同等だからオプション無しの一番安いスタンダード・モデルを徐々にグレードアップして行く手もあったように思う。それでも高額ではあったのだが・・・。

参考:FRDX-400をはじめ、八重洲無線の旧型機の取扱説明書(回路図含む)はメーカーのサイト(←リンク)から無償でダウンロードできる。八重洲無線の取説は良くできており十分メンテナンスに活用できる。以下もメーカーの資料を参照して行なった。

FRDX-400の内部
 基本的に真空管式の受信機である。VFO部とマーカーオシレータ部を除けばあとはすべて真空管だ。 真空管は全部で9球である。オプションのFMユニット装着でもう1本増える。従ってオプション付き本機は10球だ。 チャチなシングルスーパーの9R59/Dでさえ8〜9球なのだから、意外に少ない球数である。中身を見ればわかるが、切り詰めた設計と複合管の採用でうまく実現している。

 回路構成は典型的なコリンズタイプ・ダブルスーパー・ヘテロダインである。 第1中間周波は5,955〜5,355kHz、第2中間周波は455kHzだ。 選択度を決めるフィルタは第2中間周波に入っており、全てメカニカル・フィルタである。
 対象とする電波形式はAM、SSB、CW、そしてオプション装着でFMが受信できる。 FMはFMラジオとは違うNBFM(狭帯域FM)である。

受信周波数は、1.9(160m)、3.5(80m)、7(40m)、14(20m)、21(15m)、28MHz(10m)の各HAMバンドのほか、WWV/JJYとして10MHz帯(30m)が、さらにCBとして27MHz帯(11m)がある。(一部はオプション) このように現在許可されているWARCバンドはない。(図はブロックダイヤグラム。赤字はオプションを示す)

 バンドスイッチに遊びのポジションはないから追加することもできない。 但し、10MHz帯だけはWWV/JJYのバンドで受信できる。 従って18MHz帯(17m)や24MHz帯(12m)を受信するにはどこかのバンドを犠牲にするか、外付けのコンバーターで対応する必要がある。 まあ、そこまでしてこの受信機を使うこともないだろうが・・・。 もしやるとすれば、あまり利用価値のないCBと10Dのポジションだろうか。

参考:オプションで6mと2mバンドのクリスタル・コンバータ(クリコン)が装着できる。10mバンドに周波数変換されるのでVHF帯はトリプル・スーパーとなる。
 
FRDX-400の内部:底面
 一部を除いて、ラグ板とワイヤ・ハーネスを使った、昔ながらの真空管機器の手法で作られている。
 オプションのFMユニットはプリント基板化されている。追加の容易さを考えたのであろう。この時代であるから基板はベークライトで片面だ。

 プリント配線を見慣れた目には配線の追跡し難くさを感じる。 部品番号も最低限シャシ表面に刻印されているだけだ。従って真空管のピン番号から追うしかない。 このあたりの感覚はすっかり忘れていた。こうした配線を見るのはCollinsのS-Line以来、ずいぶん久しぶりのように思う。

FRDX-400:RF部分
 受信信号は写真上方のマーカー基板裏あたりにあるM型接栓から入ってくる。 写真中央の6BZ6で高周波増幅される。 続いてその右下側、6U8の3極部で1回目の周波数変換が行なわれる。ここは三極管のカソード注入ミキサでローノイズを狙ったのであろう。 第1局発は同じ6U8の5極部を使った変形ピアース水晶発振回路である。プレートの同調回路を切り替えて、基本波を使う周波数と高調波を使う場合とがある。

 アンテナ・コイルとRFコイルは幾つかのバンドで共用が見られる。まず、160mと80mバンドはそれぞれ専用である。 40m、20m、WWVが共用、そして15m、10m、CBが共用だ。 従ってコイルは全部で4組あることになる。 写真の様にバリコンは、FM4連(max21pF)・AM2連(max330pF)を使っている。 そのうちAMセクションは160m、80m、40mのローバンドでのみ使用する。他のバンドはFMセクションだけを使う。

 このようにコイルを共用して多バンドをカバーすると周波数によって共振インピーダンスの変化が大きくなる。 共振インピーダンスが下がる下側のバンドではゲイン低下が起こって不利になる訳だ。 従って15mバンドの感度がやや低いのはやむを得ない。 40mも20mに比べたら不利なのだがゲインの余裕が十分あるようで感度低下は感じられない。

FRDX-400:IF部
 第1中間周波:5,955〜5,355kHzでは増幅を行なわない。 古いCollinsタイプでは第1中間周波で増幅する例も見られた。しかし選択性を持たない所でたくさん増幅すると多信号特性が劣化する。 従って必要なければ増幅などしない方が良い。

 FRDX-400の第1ミキサーは6U8の3極部なのでS/Nは良いが変換ゲインはあまりとれない。 しかしRFアンプ:6BZ6で十分増幅されており、ミキサーにもそれなりのゲインはあるので増幅段を省いたのであろう。第1中間周波の同調回路がVFOバリコンと連動するのもだいぶ有利だ。 VFOは2SC372を使った変形コルピッツ型で、5.5〜4.9MHzを発振する。続いて2SC372のエミッタ・フォロワでバッファされたあと、更に6BZ6でアンプされてから第2ミキサーに供給される。また、VFOはFLDX-400とトランシーブするために6BZ6のアンプから外部出力されている。

第2ミキサーはペンタ・グリッド管、即ち7極管の6BE6である。 6BE6はノイズが大きいとか、さんざんな言われ方だが、それは必ずしも正しくない。 6BE6に入る信号がすでに十分大きければ殆ど影響は無い。 むしろこの部分が6BE6なのは混変調特性の点でだいぶ有利だ。 ここに5極管や3極管のグリッド・インジェクション型ミキサを使うのは賢明でない。それらを第2ミキサーに使うと混変調の温床になってしまう。(左図面は本機・初期型で八重洲無線のサイトからはダウンロードできないもの。高解像度版は「コールサインと氏名」(必須)を明記の上でリクエストを。大人の常識を欠く失礼なメールには返信しません)

 このあたり、7360など適当かと思うが実は6BE6でもけっこう行ける。これはやって見ればわかる。 6BE6の混変調特性は悪くないし、第2ミキサーに使うのならS/Nでも有意差は見られない。IF周波数は離れているので、平衡型ミキサーである必要もない。 7360幻想を抱かれているお方には申し訳ないが実際はそんな所なのである。各メーカーがあえて高価な7360を受信部に使わなかった理由が良くわかる。プロの『良い設計』とはそう言うものなのであろう。 既にFT-50(HF帯のSSBトランシーバ)のころから7360を扱ってきた八重洲無線が受信部への活用を知らぬ筈もなく決定的な違いがあったなら当然採用していたと思う。もちろん幾つもの使用例が示すごとく送信用バラモジには有利なデバイスだった。だからと言って今どきそこだけ真空管と言う訳にも行かぬが・・・(笑)

 第2中間周波増幅では、まず初めにメカニカル・フィルタ(メカフィル)で帯域制限される。フィルタはオプションが多いが、CW用600Hz、SSB用2.4kHz、AM用4kHz、FM用が24kHzの各帯域幅である。(写真ではCW用は未装着) AM用は東光製の簡易型メカフィル2個なのでトリオ9R59D並の選択度である。但しもっと良いAMフィルタに交換し得る。 フィルタを出た後,12AT7(半分)のカソード・フォロワを通り、同じ12AT7の半分を使ったTノッチ(次項参照)を通ってから6BA6で2段増幅される。

 その後、各検波回路へ導かれる。 FMの場合はさらに6U8の5極部でリミッタされフォスターシーリー回路(変形)で検波される。SSBとCWの検波は1S1007を4つ使ったリング検波、AMは普通のゲルダイによる検波である。各復調信号はSi-Diを使ったANLを通ったあと6BM8で低周波増幅されスピーカー(外付け)を鳴らす。 なおSメーターは中間周波増幅の2段目:6BA6のプレート電流変化をブリッジで読む形式である。 AGCはRFアンプと2段の中間周波増幅に掛かっている。

 写真のようにCWフィルタは未装着であるが、中心周波数が455kHzの狭帯域フィルタ装着には問題がある。それを付けてしまうと約1.5kHzのビート音でCW受信することになってしまう。 BFOの発振周波数をCW用に切り替えられないのだ。 このあたりの欠陥があるのでSSBフィルタのままリジェクション・チューニングを駆使しながらCW受信すべきなのかも知れない。オーディオ帯のピークフィルタを付加するのも効果的だ。 もちろん、BFOを改造してCW用水晶を追加すると言う手はある。もっと単純にはCWの時だけBFOクリスタルを差換えてしまえばよい。キャビネットの上蓋を開ければ簡単に交換できる。追加クリスタル用の穴もあいているから、はなから改造を考慮していたようだ。

リジェクション・チューニング
 Tノッチとも言われるもので、鋭いディップ特性で、不要な混信を除去する働きをする。 主にCWの近接混信除去かAMのビート混信軽減用だろう。

 単純なTノッチではQが低くて主信号にも影響が及ぶので、12AT7(片側)を使って正帰還を掛けた一種のQマルチになっている。同様の回路はCollinsのHAM用受信機:75S-3にも採用されていたから、それを意識したのであろう。

 いま、CWを受信していて、少し離れた所に耳障りな混信があるとする。 パネル面のRejection Tuningと言うツマミを慎重に回して行くと、その混信を消去できるところがあるはずだ。 この機能は混信除去としてはなかなか優秀であり、後世の受信機にも採用例がある。

 なお一種のブリッジ回路を使ったアナログな装置なのでバランス調整がとても大切だ。 最良の除去性能を発揮させるためには写真のVRとコイルを良く調整しておく必要がある。 暫く使うとややずれて来るので、時おり再調整が必要だ。 うまく調整しておけば常に60dB以上のリジェクションが得られるだろう。かなり有効な機能なので使わない手は無い。 なおこの機能をOFFする方法は面白い。 OFFのポジションでバリコンの羽根どうしがショートするようになっている。 コイルの両端が短絡される形になってTノッチをパスすることができる。(このあたりも75S-3の真似っぽい)

【マーカー発振器】
 アナログダイヤルの受信機にとって、マーカー発振器は必需品だ。 頻繁に近傍の校正ポイントでダイヤルをキャリブレーションしないと周波数読取り精度が上がらない。 

 大きなクリスタルは100kHz:HC-13/U型である。 100kHzを発振させたあと自走マルチバイブレータに同期を掛け25kHzマーカーとしても機能するようになっている。 自走周波数が25kHzからずれるとうまく同期しなくなるので、その時は基板中央のVRを加減する。 なおWWVと校正するときは25kHzの状態でやると良い。 100kHzでやると25kHzに切り替えた時に少し周波数がずれるからだ。 従って25kHzの状態で良く合わせておくべきだと思う。

 マーカー発振器はトランジスタ化されている。2SC367と言う非常に古い東芝製のシリコン・トランジスタであり足は金メッキまでされている。hFEのランク分けも頭にカラードット表示である。 もしもこれらのトランジスタがダメになったら2SC1815等の汎用品で問題なく代替できる。

AGC時定数のコンデンサ
 ここから先は少しばかり修理と改造の話しになる。

 写真の大きな緑のコンデンサはAGC時定数用コンデンサである。 受信していてAGCのSlowがおかしかった。AGCの動きがSlowにならぬばかりか復調歪みも感じた。 Slowの時には1μFが追加され、放電時定数が長くなるようになっている。ごく単純な回路なのである。たぶんそのコンデンサが悪いのだ。AGC回路で電流リークがあればAGCの効きが悪くなってIFアンプで歪んでくるだろう・・・。

 1μFには小型の電解コンデンサが使ってあったがリークしているらしい。古いから絶縁低下もやむを得まい。 そこで今度は劣化し難いフィルムコンデンサに交換しておいた。 まあ良質な電解コンデンサでも十分なのだが、間違いない所と言うことで。ちょっと図体がデカイが。(笑) これでAGCのSlowも正常な動きになった。復調歪みも改善された。

 なお、FRDX-400のAGC回路は本格的に改造すべきだと思っている。 これは過去のFR-100B改造の経験からだ。 外観はともかくFRDX-400とFR-100Bの回路は瓜二つであり、当然AGC回路も似通っている。 FR-100Bでは増幅型AGCに改造し十分チューニングしたところまるで別の受信機のようになった。 FRDX-400も同じように改造すれば非常に良くなると思うので、いずれ実行したい。(なお両機の比較では、半導体化されたVFO部は明らかにFRDX-400の方が良い。それを除けば似たようなものだ)

BFOのリプル対策
 CWの受信音が何となく『ブザーチック』である。澄んでいなくて、オーバーに言えばブザー音のように聞こえる。

 どこかの発振部がハムっているのが原因だろう。取りあえず、疑わしい455kHzのBFOにフィルタ・コンデンサを追加してみた。 電源からのリプルを軽減する目的である。 これはけっこう効果があって、だいぶマシな感じになった。

 ここだけでは片手落ちかもしれないので、第1局発やVFOも見直した方が良さそうだ。そうすれば更に良くなるだろう。もちろんSSBの受信音にもかなり影響する。 何となくスッキリしないのはそのせいかも知れない。 このFRDX-400は初期型なので、VFOの安定化電源もツェナーDiオンリーの簡易型なのでそれも何とかすべきだ。

                 ☆ ☆ ☆

調整以上、補修などして各部が正常なことを確認してから全般的な調整に移った。 FRDX-400のようにHAM用として必要最少限の回路構成でできた受信機では調整が極めて重要だ。 同じ短波ラジオでもBCL用のごとく強力な放送局が相手ではないからだ。 時に空間ノイズぎりぎりの信号のお相手をすることにもなる。 受信機の各部が最良の感度で働かないとHAMの使い物にはならない。 僅か数dBが勝負になるので、きちんとした調整を行ないたい。
 しかも各コイルのコアやトリマコンデンサは過度の調整頻度には耐えられないから、適切な状態に最低限の調整回数で追い込む必要がある。 過剰な調整でコアやネジが「ゆるゆる」になってしまえば、今度は機械的に安定な動作が損なわれてしまう。(振動や環境変化で容易に調整が崩れる受信機になる) だから手順を良く読んで内容を理解するとともに適切な道具と環境を揃えてから調整を始めよう。

 調整は取扱説明書の手順がよい。 低周波段、すなわち後ろの方から始めて、RFアンプの方へ遡る方法だ。 検波及びIFアンプ部分は殆どずれていなかったので、僅かな再調整で済ませることができた。 しかしRFアンプ部のトラッキングは幾分ずれが大きかった。 コイルのコアを調整するバンドとトリマコンデンサの方を調整するバンドがあるので,順序に従わないとうまく調整を完了できない。 きちんと調整が済むとプリセレクタの効きがシビアになったのがわかるだろう。常に感度のピークになるようプリセレクタつまみを操作し最高感度で受信する。余分なゲインのない受信機では非常に重要な受信操作だ。

 ちなみに14MHz/CWでは0dBμ(SSGのEMFなので受信機入力では0.5μV)で十分なS/Nが得られ-20dBμまで実用的な感度があった。-30dBμあたりでセットノイズに埋もれてくるようである。 空間ノイズを考えればHF帯の受信機として感度は十分だと考えて良い。 ただしゲインに余裕がないからごく弱い信号を聞くにはAFのボリウムを上げてやる必要がある。このあたりは後世の機械のようにゲイン過剰でAGCがいつも深く掛かるようになっている受信機(受信部)とは違うところだ。 40dBμ(EMF)でS-9になるが、S目盛一つが6dBと言うのはこの受信機に限らず多分にマユツバだと思う。hi

Your 59-Over!
 今どきの黒っぽい受信機やトランシーバばかり見慣れていると、FRDX-400はずいぶん新鮮だ。レトロと言うよりモダンを感じるくらいである。

 このFRDX-400はかなり初期型らしくダイヤルの1回転は50kHzである。昔のダイヤルはこんなものだったのだ。それでも100kHzダイヤルの軍用受信機:R-390A等よりも扱い易い。 AMならまったく問題ない減速比で、むしろクイックで使い易いほどだ。 他の部分も初期型の特徴があって最初のオーナーは発売から間もない1967〜8年ころ購入したのではないか。 作られて40年をゆうに過ぎている。いやむしろ50年に近い。 だからこれは昭和モダンと言うべきか。(笑)

 十分減速されたダイヤルに慣らされた指先に、SSBはちょっとチューニングがつらい。 しかし昔のようにゆっくり慎重なダイヤル操作できちんと音になる。 そんな感触を思い出しながら操作を楽しむことができた。 周波数が細かく読めないのは何ともフラストレーションを感じるが、それとてじきに慣れてしまった。子供のころこんな受信機があったら楽しかっただろうなあ・・・と思いながら。“ やっぱ9R-59Dよりいいよなあ! ”(←あたりまえ・笑)

 いずれのRigも発売はわかっても生産終了の時期を知るのは難しいものだ。F-400ラインも同じである。 学生HAMが多く手狭なシャックが多かったJAではトランシーバが好まれた。だからF-400ラインが爆発的に売れた形跡はない。しかし、少ないながらもセパレート機には根強い人気があった。 実際に参照した最後期らしいF-400ラインの保証書には1972年6月の日付がある。ボールドライブ減速の100kHzダイヤルの最終型だ。発売から5年以上経過している。 確かなのはF-101ライン登場の1973年末頃までのようで7年に及ぶ息の長い製品だった。或はFTDX-401と同じように東芝の受信管製造が終了する1976年ころまで作られていた可能性もある。

                   ☆

 現在の視点で見たら様々な不満を感じるだろう。しかし本質的な部分は押さえてあるのできちんと整備すれば取りあえず実用範囲にある。 ただし便利機能満載の現代的RXがシャックに溢れている状況であえてこれを使うのかと言えば、やはり「ノー!」ではないか。 それでも良く調整したお陰だろうか、14MHzや21MHzあたりもなかなかFBに聞こえて来た。DXingのお供ができそうなのは、流石にコリンズタイプ・ダブルスーパーの威力と言えそうだ。周波数安定度も高一中二のような際どさは感じられない。

 僅か10本の球と数個のTr+Diで実用にしているのだから、今のリグって幾つ能動デバイスを使っているのだろうと考え込んでしまう。ICの中身まで考えたら気が遠くなるほどだ。 もちろんコストの問題もあるが、発熱するので無闇に球数は増やせなかったのだろう。少ない能動素子を活かせば通信型受信機くらい立派に作れますよと言う見本のようなものだ。もちろん、電気的な助けを多くは期待できないので機械的に実現している部分も多々あるのだが・・・。真空管機は『Boatanchoer』などと揶揄されもするが、FRDX-400はコンパクトだしアンカーにしては少々重さが足りない。取り回しは楽々だった。(笑)

 今どき真空管式の受信機なんて・・・と言う声も聞こえてきそうだ。回路屋なりの解釈なので、どこぞの雑誌記事とは色合いの違った解釈になったかも知れない。例によって、これは娯楽用の読み物Blogであって、何の役にも立たぬものだ。単なる個人の戯れ言なので、異論や反論は馴染みませぬ。どうぞ、そのおつもりで。 しかし昼休みのお暇を十分につぶせたのではありませんか? こんなお話でよかったらまた何時か。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2013年9月1日日曜日

【回路】Wien Bridge oscillator

【ウイーン・ブリッジ発振回路】

教科書は曰く・・
 左は前から気になっている回路の一つだ。 気になるものは他にも多々あるのだが、取りあえずこれをやってみた。 今やる理由は特にないのだが、やるなら思い付いた「今でしょう!」ということで。(笑)

 ウイーン・ブリッジ発振回路と言う正弦波の発振回路である。 ちなみにウイーンと言うのは人名であってオーストリアの首都にある橋とは関係ないようだ。ウイーン・ブリッジを使った発振器はターマン発振器とも呼ばれる。 また、いまはKeysight社になった、ちょっと前までのAgilent社、その昔の社名は測定器の老舗:ヒューレット・パッカード:hp社の初製品であるHP200A型はこの回路を使った発振器であった。(真空管式)

 左の教科書は、既に古典的な名著「OPアンプ回路の設計」(CQ出版社:岡村廸夫 著)からの1ページだ。 ウイーン・ブリッジ発振回路は様々なメーカーのOPアンプ・アプリケーションに必ず載っているような、たいへんポピュラーな回路である。 だから簡単で誰がやっても間違いないかと言えば、どうやらそうでもない。

 この本だが、軽妙な書き方で続きが読みたいかもしれない。「定本・OPアンプ回路の設計」として今も手に入る。 もし興味の向きにはお薦めしたいと思う。OPアンプ回路の基礎を求めネットを徘徊なんかするより遥かに濃い知識が得られる。 OPアンプの中身を見る目も養える。古い本だが「今風に翻訳」する術も身につければ一石二鳥だろう。(書籍へ→リンク)(訃報:筆者の岡村廸夫さんは、2014年4月ご逝去されました)

ウイーン・ブリッジ発振回路:その一
 教科書通りであまり工夫もないが、二連の可変抵抗器(VR)で周波数可変式にしてみた。電源のバイパス・コンデンサなども補って実用設計にしてある。この通りに作れば同じように働く。

 ポイントは回路図でB1とある電球だ。 なるべく電流が小さな電球が良いが、手持ちにそれほど良いものはなかった。 たぶん普通のOPアンプでは出力電流が不足だろう・・・と言うことで、一種のOPアンプの並列で電流を倍化してある。 この辺が元をアレンジした部分だ。

4558型OPアンプ
 使ったのは4558型OPアンプだ。このOPアンプ、オリジナルはRaytheon社の開発である。日本では新日本無線:JRC製が有名だ。 JRCがセカンドソースしたのは、両社は古くからレーダー技術などを通じた交流があったからのように思う。 良い設計だったからその後各社が追随した。写真のμPC258Cと言うのもNEC製の4558セカンドソースである。(358系ではない)

 4558を選んだのは、ポピュラーなOPアンプとしては性能が良いからだ。トランジスタで言えば2SC1815のようなもので、安くてありふれた存在だが性能は馬鹿にできない。 オーディオ帯をカバーするのには十分で、600Ω負荷を想定して出力電流も大きめなのも良い。 特殊で高価、しかも得難い部品ではなくごくポピュラーでありふれた素材で調理をしよう。

ブレッドボードで試作
 あるていど性能の目星が付くまでブレッドボード(BB)は重宝だ。 今回の試作もこれを使っている。

 旨く動作してくれたが、ブレッドボードでの製作はちょっと注意が要る。 下手をすると、そこら中で接触不良が起こる可能性があるのだ。 部屋の隅でホコリをかぶっていたようなBBはかなりあぶない。 回路動作に自信がある人なら接触不良も見分けられるだろう。 しかし多くの場合、試作回路の設計が悪いのか接触不良で動作しないのかの区別は付き難い。 だから意外にもBBは初心者向きではないと思う。 接続箇所が多くなる複雑なものの試作には向かないように思う。もちろん長期的に安定な動作は望めないので長く使うような機器の製作には不適当だ。(←その後の検証によればブレッドボード製作は意外に安定であり複雑なものでも再現性良く作れる) 幸い上の回路くらいの規模には問題はない。 接触不良を疑うにしても箇所は限られるし、オーソドックスで確実性の高い回路だから心配ない。

1kHzの正弦波
 発振波形の例として1kHzを載せておく。 他の周波数も撮影したのだが、はっきり言って面白くない。 歪率が0.1%を切った正弦波など、オシロではどれも同じにしか見えないのだ。 よって他の周波数は想像で補ってもらえば十分過ぎるだろう。(笑)

 上のブレッドボードの回路を実測している。 縦軸は5V/divなので20Vppと言う大きめの振幅で発振している。 発振振幅は可変抵抗器:VR1で加減できる。 但し振幅は発振の起動特性とも関係があって任意ではない。 フィラメントの発熱による自己制御で振幅の安定化を図っているので、発振起動には電球の発熱量と熱的な時定数が絡んでいる。 発振振幅の上限は電源電圧とOPアンプのドライブ能力で制限される。しかし、大きめな振幅で発振させた方が総合的に良かった。

まめ電球
 いつかこの回路を作ろうと思って(?)集めていた各種の豆電球である。まあこのためと言うのは少々の誇張なのだが。(笑)

 白色や電球色のLEDが登場するまでは、メーターやダイヤル等の照明には豆電球をよく使った。 また豆電球は消耗品なのでいずれ切れるから予備も常備していた。

 この発振回路に使う電球は電流が少ない物が適している。手前の赤いものは米軍ジャンクの28V用で電流が少なくて適している。写真中央のグレーのカラーに入ったものは12V用の中では電流が最も少なかった。 他はいずれも点灯時の電流が大きくてOPアンプで直接ドライブするには不適当であった。米軍の28V用は特殊すぎるから、以降は12V用の方を使うことにした。

暗く点けてみる
 この発振回路では電流を流して「光」を得るのが目的では無い。 電球の端子間に加わる電圧とフィラメント抵抗との非直線性を利用して発振振幅の安定化に使っている。 端子電圧が上昇すると抵抗値が上昇し、回路のゲインが下がって出力電圧の上昇を抑制するよう動作する。 写真は次項の端子電圧とその時のフィラメント抵抗値の関係を求めるため電球単体で測定している様子だ。

 当たり前だろうが消費電流が小さい電球はかなり暗く点灯する。 発振回路としてはこのような電球を必要とする。照明用とは求める方向はちがっている。少々特殊な電球と言って良いだろう。

 かつて小型電球は浜井電球工業:ROYAL製がポピュラーだった。資料が欲しくて調べたのだが、ニーズが無くなったらしく全部製造中止になっていた。 今も生産しているのはスタンレー電気くらいしかないようだ。 スタンレー製が通販されているのを見つけたので極力電流の少ない物を手に入れると良い。(参考→リンク) いずれ、近い将来には光らせるのが目的の電球はすべてLEDになってしまうだろう。
 
電球の電圧vs抵抗特性
 端子電圧と電流からその電圧におけるフィラメント抵抗の値を求めてみた。 タングステン線の抵抗温度係数がもろに現れた特性になる。もちろん普通の抵抗器では端子電圧で抵抗値の変化などないに等しい。 従って電球のようにはならず、このグラフに書けば横一直線となる。

 何故これほど変化があるのか? 光るためには、電球の大小に関係なくフィラメントの部分は2000℃にもなっている。 タングステン線の電気抵抗は温度係数が+0.53%/℃くらいだ。 点灯した時には2000℃にも上昇するのだからフィラメント抵抗は常温時の10倍にもなる。発振回路では、この端子電圧で抵抗値が変化する特性を利用する。フィラメント電球が点灯する際の突入電流が大きい理由でもある。 

 ちなみに、10μA流した状態で実測した抵抗値は:12V用が47Ω、28V用は83Ωだった。 測定電流10μAでも発熱はゼロではないが無視し得る程度だ。測定電力は4.7nWもしくは8.3nWである。(nW:ナノワット=1/1000,000,000ワット)概略の熱抵抗からの計算では大きく見積もっても温度上昇は0.01℃を越えない。47Ωや83Ωはそのまま室温の抵抗値と思って良い。 なお、一般的なテスターでは数mAも流して測ることになる。意外にもそれだけでフィラメントはかなり温度上昇する。(上記12Vの電球に5mAも流せば300℃を越えている)測定法を工夫しないと室温の抵抗値は求められない。

 室温の抵抗値と温度係数が既知なら、電圧を与えた時のフィラメント温度が計算できる。 但しだいぶ誤差がありそうだ。 主な誤差は引き出し線の付近の温度勾配によるものだろう。 従って平均化された大凡のフィラメント温度が計算されるはずである。 上記12Vの豆電球に0.5Vで280℃、1Vで420℃、2Vで640℃と計算された。 誤差はあるにしても、ごく低い端子電圧でもずいぶん高温になるものだ。 これは意外だった。

                  ☆ ☆ ☆

ウイーン・ブリッジ発振回路:その二
  電球の特性を実測してみて、ごく簡単な回路でも良いことがわかった。 OPアンプの並列動作は必要ない。 以下はその検討の過程だ。

 OPアンプの電源が±15Vでは出力電圧は25Vppくらいが限界だ。 実効値:RMSで言えば、8.8Vくらいになる。 但し電球側の経路は負荷として重いので、クリップ歪みに対するマージンを考えると6Vrms程度(17Vppくらい)が良いところだろう。

 その条件で回路を見直してみる。 6Vrmsとすれば、電球に掛かる電圧はその1/3の2Vrmsになる。(・・・と言う状態に落ち着くよう動作する) フィラメントの熱的な応答が発振の周期に追い付かない周波数ならRMSとDCとで概ね同じと思って良いだろう。 従ってDC2Vと考えて、その時の抵抗値は200Ωくらいだ。

 よって電流は10mArmsであり、ピーク値はその√2倍の14mAあたりとなる。14mAピークなら単独のOPアンプで供給可能だ。最初の回路例ようにアンプをパラにする必要は無いことになる。 このような検討から教科書通りの簡単な回路に戻った。 このあたりの判断は電球の特性如何なので特性を良く吟味しないと答えが出せない。

                   ☆

 安定な発振にはフィラメント抵抗の熱的な時定数も重要だ。その熱抵抗も一定ではないようで、加わる電圧によって変化が見られる。 低いフィラメント電圧では温度変化が・・即ち抵抗値の変化量が大きい傾向がある。 抵抗変化が大きくて鋭敏過ぎると発振振幅が振動し安定するまで時間を要するようになる。 場合によっては振動が収まらず持続する。(熱時定数による発振現象)
 教科書で電球に直列に入った抵抗は振動現象をダンプするのが目的のようだ。但し抵抗値は加減が必要で、条件次第ではあるが無い方が良いこともある。

ブレッドボードでテスト
 さっそく要らない部品を撤去して簡略化した。 悪さをしないように余った方のOPアンプはボルテージフォロワ接続にして入力はGNDしておく。

 発振周波数を決めるコンデンサは、0.01μFで、2連の可変抵抗器は50kΩである。 但し、可変抵抗器:VRを回し切って抵抗値が小さくなると、発振周波数はぐんぐんアップする。発振周波数:f=1/(2πCR)だからだ。 実際には2連VRの連動誤差が効いて来て不安定な発振状態になる。 それにゼロオームに近づくと非常にクリチカルになって使い物にならない。 抵抗器で周波数可変するよりもバリコンを使う方が安定性に優れるが、大きな容量が得られないので、抵抗値が非常に高くなる欠点がある。バリコン式の場合、OPアンプは4558ではだめでFET入力型を必要とする。

 適度な可変範囲になるよう50kΩのVRに4.7kΩを直列に入れ可変範囲を狭くした。 計算による発振範囲は291〜3386Hzになる。 実際にはCにプラスの誤差があったので範囲はやや低めであった。 それでも無線機の調整用発振器には丁度良い周波数範囲になった。

 コンデンサを切り替えると発振範囲を拡張できる。 しかし限界がある。下限周波数は電球の熱慣性(熱時定数)で制限される。 発振周波数が低くなると発振波形の周期に熱慣性がだんだん追い付いて来る。そうなると振幅歪みが出る。 100Hzでは1%近い歪みになるので、おおよそこれくらいが下限周波数だろう。 一方、周波数上限はOPアンプの周波数特性が関係する。 周波数対大振幅出力特性とスルーレートが効いてくる。 4558では10kHzくらいが良いところだった。 オーディオ帯をフルにカバーするにはもう少し高速なOPアンプが欲しいようだ。

電球は殆ど光らない
 暗くて解り難い写真だ。 発振状態では光っているのだろうか? 部屋を暗くして観察してみた。 写真中央付近にフィラメントがある。

 流石に2Vrmsくらいでは、ほとんど光らない。 もちろん、光らせるのが目的では無いからこれで支障はない。 良く光っていないなら、フィラメント温度も十分上がっていないのではないかと思った。温度が低ければ周囲温度の影響を受け易いだろう。

 しかし、ほんの僅かな端子電圧でもすぐ数100℃にアップする。 ごく暗い点灯状態で電球を触ってみても発振振幅に影響が感じられないのはそのためだ。 それよりも機械的な振動の影響の方が大きい。 フィラメントが揺れると発振振幅も振れてしまう。 振動を防ぐ実装方法をとるとともに、振動の多い環境では使えないようだ。

 電球で発振振幅を安定化するWien Bridge Oscillatorにおける豆電球の挙動がわかってきた。 電圧が変われば抵抗が変わるのだろう・・・と言う程度の認識だったが、もう少しダイナミックに反応する様子が見えてなかなか興味深かった。

1kHzの歪み
 歪み率は発振振幅の調整によって幾分影響を受ける。 それでも数100Hzから数kHzでは、0.01%前後の歪みなのでなかなか良好だ。

 なにしろ部品の少ない発振回路である。 クリチカルと思われる電球を交換して違いを見たが、同種の電球なら殆ど違いはないようだ。交換すると発振振幅は幾分変わるが同程度の発振振幅に調整すれば歪みも同じようになる。 従って同じ部品を使う限り再現性はなかなか良好だ。 発振振幅で3〜5Vrmsくらいに調整するのが良かった。 歪み率と発振起動特性、周波数を変えた際の振幅安定時間など総合的に見た判断だ。

358型OPアンプは使えない
 これまたポピュラーなLM358系のOPアンプだ。 セカンドソースも多く、どれも安価なので手軽なOPアンプとして、かなり様々な場所で使われている。 消費電流は少なめで、片電源でも使い易く出力電圧範囲が広いのも特徴だ。

 ところが、等価回路を見ると出力段に問題があることがわかる。 出力部はゼロバイアスのB級・・否、C級と言うべきかも知れない・・になっている。 オープンループゲインが十分高い低周波では、負帰還の作用で欠点は見え難いかもしれない。 しかし、それは数100Hzまでのようだ。 数kHzにもなると・・・。

 だから交流信号を扱うような回路には使わないことにしている。もちろん、発振回路だけではなく、たとえばマイクアンプとか低周波フィルタにも使ってはいけないと思っている。ピン接続は同じでも4558の代用にはならない。以下で明らかだろう。

クロスオーバー歪み
 エフェクタ好きのお方でもなければ、こうした歪みは歓迎しないはずだ。(笑) 写真は約3kHzを発振させた状態を見ている。 こうした用途には358系のOPアンプを使ってはいけないことが良くわかる。

 出力段がC級なので、上側のNPNと下側のPNPがの動作が切り替わるゼロボルト付近で不感帯のようなものが存在しうまく繋がらないのだ。 典型的なクロスオーバー歪みが発生している。

 もちろん、オーディオを意識した4558やそのほか多くのOPアンプは出力段がゼロバイアスなんてことは無い。 それでも消費電流をケチったようなOPアンプでは要注意だ。

324型OPアンプも?
 これは蛇足かもしれない。
 4回路入りのLM324系OPアンプも上記の358系と同じ等価回路なので同じくACアンプに使うべきでない。

 ポピュラーなOPアンプなので358同様に何にでも使えるような錯覚に陥りそうだ。 しかし、ダメなものはダメである。 使い方で工夫する手もない訳では無いが、外付け部品を増やすくらいなら、別のOPアンプを使う方が賢明だろう。 OPアンプはどれも同じでは無い。 特性を良く吟味して採用したいものだ。 結局あらかたの用途には4558あたりが使い易い。(TL072とか、FET入力型も好きだが・笑)

               ☆ ☆ ☆

 長年気になってきた回路をテストしてみた。ごくポピュラーで当たり前な回路なのに、興味深い現象が多かったように思う。 では実用的なのかということになろうか? こんな簡単な回路なのに十分に実用的だと思う。 発振振幅を調整するだけで歪みが0.1%以下の正弦波発振器が簡単に作れる。 Qの高いLC共振回路を使ってさえ、奇麗な正弦波の発振は難しい。歪み0.1%以下と言うのはスペクトラムで見たら-60dB以下の高調波である。 厄介なことナシに高調波は落ちないものである。ごく簡単なCR発振器で得られる正弦波としては良い方だと思う。 実用設計では4558はDual OPアンプなので余った片側を使ってバッファ・アンプにするのが良い。 発振段の出力とGND間に10〜50kΩくらいの可変抵抗を入れレベル調整用とする。そのあとに余った方をボルテージ・フォロワ形式のバッファにして入れる。 オーディオ用には600Ωを出力端子と直列に入れておくのも良い。

                 ☆

 回路は簡単で再現性も良い。しかし鍵はやはり電球にある。 12Vで20〜40mAくらいの「暗い電球」を入手すればこの目的に合致するだろう。 しかしどこでも売っているようなものではないようだ。 手持ちが幾つかあるので、もし作りたいならSASE対応で差し上げる。メールでご連絡を。 もちろん何時か使うかも知れないので「貰っておこう」なんて言う「部品死蔵型自作家」はご遠慮を(笑) しかし「製作意思は強固だ!」と自己暗示を掛けて(遠慮なく)お申し込みを。こうした発振器を一つ作っておくと無線機の調整だけでなく様々便利に使えるだろう。 de JA9TTT/1

(おわり)

2013年8月10日土曜日

【HAM】 A New life for FT-101ZD Part 6

FT-101ZDにニューライフを:第6回】

マイクコネクタの交換
 暫く続いた『FT-101ZDでWARC Bandにオンエアしよう!』もいよいよ最終回だ。(前回:Part 5 は→こちら。初回:Part 1→こちら

 オンエアに必要な一般的な整備は終わったので、最終回では幾つか改造などを扱う。 改造しなくても運用は可能だが、シャックの実情に合わせる目的から実施することにした。

 写真手前に置いたのは8 Pinのマイクコネクタだ。 いまでは多くのリグで採用されているがFT-101ZDの時代あたりまで4 Pinも良く使われていた。マイク配線に2ピン、スタンバイ系(PTT)に2ピンあれば足りたからだ。或はGNDを共通にすれば3ピンで済んだ。八重洲無線の4ピンマイクはそのようになっていた。 インピーダンスが600Ωで4 PInのマイクロフォンがあればうまくフィットする。(要ピン接続確認)

 4 Pinコネクタが付いたマイクはあいにくハイ・インピーダンス型しかなかった。 拙宅の低インピーダンス型マイクはどれも8 Pinコネクタ付きだ。 いずれもECM型であって電源をリグ側から貰うようになっている。 それらの8 Pinマイクが使えるようにFT-101ZDの方を改造することにした。

 8 Pinのマイクコネクタは各社のリグで使われているがメーカーごとに異なったピン配置になっいる。本機の場合は八重洲無線の8 Pin形式にするのが良いのかも知れない。 しかし拙宅の事情でTrio/Kenwood式の8 Pinマイク配線にすることにした。 これはマイク共用化のためである。

マイクの接続
 左図のように、マイクコネクタの結線はTrio/KenwoodのHF機で使われている形式を採用した。 周波数アップダウンなどの機能も付加可能だが必要ないので配線していない。 それにFT-101ZDにそんな機能はないし。hi hi


 従って、マイクのホット側およびGND側、PTTのホット側、電源DC8Vのプラス側、PTTとDC8VのGND側の配線を行なえば良い。(全部で5カ所) 他のピンはずべて遊ばせておく。

 マイク用の電源は数Vで数mAのDCがあれば良い。 なるべくリプルの乗っていない奇麗なDCが良いが、少々汚くても大丈夫なようにマイク側でも対策している。

参考:マイク配線がわかり易いように図面の入れ替えを行なった。自身の参照の便も考慮したため。 なお、もとの八重洲4ピンマイクの配線についてはこちら(←リンク)に参考図面が置いてある。(2013.08.10)

DC8Vの引き出しポイント
 FT-101ZDで奇麗そうな低圧DC電源と言えばこの8Vだろう。 この8Vは3端子レギュレータで作っている。 ただし、3端子レギュレータのアースの取り方が旨くないようだ。 シャシを共通GNDとするコモンモード結合で50/60Hzのハムが重畳していた。(同系統から電源供給を受ける全回路に影響は及んでいるので、根本的な対策をした方が良いが、それはいずれと言うことで)

 電源系を別途用意するほどのものでもないので、マイク側で対策してブーンと言うハム音の混入を防いでいる。 40dBくらい抑圧したので問題はないだろう。 なお、8V配線の途中、マイクコネクタの手前に200Ωの抵抗器が入れてある。引き出したDC8Vを万一ショートしても事故にならないような配慮だ。


マイクコネクタの裏側
 8 Pinに交換したあとのマイクコネクタ裏側だ、 作業そのものは難しくないが最初に4 Pinのコネクタを外すのが厄介だった。ネジロックで弛み止めしてあったからである。

 まずは配線を外してから4 Pinのコネクタを取り外す。 場所が狭くて8 Pinコネクタに直接配線を移すのは難しそうだ。あらかじめ5 cm程度の配線を8 Pinコネクタにハンダ付けしておくことにした。 その配線が付いた状態でコネクタをネジ止めした。

 元からあったマイクの信号線とスタンバイ系の配線、そしてGNDの配線を行なえば良い。 なおアースポイントを分ける関係で、マイクのリターンGNDとスタンバイのGNDはコネクタのところで分離しておいた。 写真に見えるオレンジ色の配線はDC8Vで、引き出しポイントまでの途中は束線バンドで他の配線と束ねてブラブラしないように固定しておく。

交換完了
 マイクコネクタの交換完了である。 これで他のリグと共通のマイクロフォンが使える。 様々なリグがあるHAM局にはマイクコネクタの共通化はメリットが大きい。

 メーカーも妙な意地を張らずに、共通化してくれたらどれだけ便利になるだろう。 もっとも、自社のリグ用に用意したやけに高額な・・・中身は大した事もなさそうな・・・オプション・マイクは売れなくなるだろう。 たぶん、あのオプション・マイクはメーカーや販売店にはとっても美味しい商品に違いない。

完成
 いつか見たことがあるシーンのようだが、このように完成した。 別のリグでモニタしながら音質やハムの誘導など総合的にチェックしてみた。

 フィルタの帯域幅が狭いのでそれなりではある。しかし低域がドロっとしたようなSSBではないので、スッキリした悪くない感じだった。 普通の交信には十分だと思う。

 なお、4Pinのマイクコネクタのままでも1 Pin余っているのでDC8Vを引き出すことができる。 少しの改造でパソコン用に売っているデスクトップマイクも利用可能だから、古いリグのレストアでマイクに困ったなら研究すると良い。 中には思いのほか音の良いマイクもあるようだ。 マイクはお値段が高ければ良い訳ではない模様。hi

                 ☆ ☆ ☆

ダイヤルランプの交換
 アナログ目盛はなくても実用上支障はないのだが、チューニングノブの上部に目盛板が付いている。 裏面から照明されていて夜間など外の照明を落とすと美しく見えるものだ。

 レストアしたFT-101ZDは目盛板の裏側の左右に2つあるランプのうち左の一つが断線していた。 デジタル表示があるので、アナログな周波数読取りは無くても支障がある訳ではない。しかし片方消えているのは何となくみっともなかった。

 簡単に交換できるならやりたいと思ったのだが、意外にも面倒なものであった。 VFOをパネル面に四隅で止めているネジを取ればできそうに見える。 しかしそれではVFO部を引き出せなかった。(簡単に外せるTrioのユニット式VFOとはえらい違いだ) 結局、写真のように裏側からカウンタ周りを取り外さないとダメそうだ。

VFO/Fix-Ch LED基板の除去
 まずは、VFOとFix-Chの選択状態を表示するLED基板から外した。 写真の赤いLEDが付いた細長い基板である。これを取らないと周波数のデジタル表示部も取れそうにない。

 周波数表示部は案外簡単に外すことができる。 パネル側の2本と、脇の方にあるネジ1本で簡単に外せた。 配線も特に外す必要はないので、各コネクタはそのままで良い。

 周波数表示部を移動したら、写真の様にダイヤルランプが見えてくる。もう一歩だ。

ダイヤルランプの交換
 正面から向かって左側のランプが断線していた。 ゴムのグロメットに挿入されているのでグロメットごと外し、交換用ランプに入れ替えてから元に戻せば終了だ。

 あいにくFT-101ZD用のダイヤル照明用ランプは手持ちがない。(まあ普通は持っているはずもないが) 同じようなサイズのリード線付きランプ(12V用)はあったのだが点灯時の明るさが問題である。 左右の明るさがアンバランスではみっともない。 生きていたランプと手持ちを比べたら明らかに後者の方が明るかった。

 そこで、手持ちを2個直列にして明るさの比較をしてみた。それで丁度良さそうである。 結局、手持ちを2つ使い左右とも交換することにした。 電球2個の配線は従来のパラはなくシリーズに変更する。 これで元と同じくらいの明るさで左右が揃った。 なるべく手持ちで済ます工夫だが、これから買うなら電球ではなくて電球色のLEDが良いのだろう。

ダイヤル周り
 このようになった。 ディーマーツマミで明るさは加減できるが、周波数表示のLEDとのバランスも良いようだ。

 このダイヤルランプはかなりディレーティングした使い方だったはずだ。 電球をDCで点灯するのは寿命の点で不利なのだが、それでもかなりのマージンを見込んだ設計なのだろう。 そのために、交換が容易ではない実装方法になっているのだと思う。(DCで点灯させると寿命は半減)

 どうやら左側はもとの品質が良くない電球だったために断線したようだ。 使い込まれて切れた電球なら内側がスパッタされて黒くなっているものだ。 しかし断線品を見ると特にガラスの汚れもないので、寿命と言うよりも品質問題だったようだ。 従って交換した電球がハズレ品でなければ、再び交換する機会はまず来ないだろう。

                 ☆ ☆ ☆

28MHz帯の100W改造
 FT-101ZDが販売されていたころ、28MHz帯は固定局でも50Wまでしか許可されなかった。 そのため100W機と言えども、このバンドは各社50Wしか出ないようになっていた。

 移動局として50W免許を貰うのなら、全バンド50Wにすれば良い。それには終段管を1本にするのが常套手段である。 しかし固定局にあってはこのバンドのためにだけ1本にする訳にも行かず、電気的に50Wに抑える工夫が必要であった。

 パワー低減の具体的な方法は28MHz帯だけ終段管6146Bのスクリーン・グリッド電圧を低下させている。 FT-101ZDの例で言えば、ほかのバンドでは210Vが掛かるようになっている。 28MHzでは電源基板の180V部分から2.2kΩを通して加わるように切り替わる。 実質的に150Vくらいのスクリーングリッド電圧で動作することになるのでパワーは50Wそこそこになる訳だ。

 現在では28MHz帯も100W免許が可能だ。従ってしかるべき申請を行なえばこのFT-101ZDでも100W免許は可能だ。 回路図のように×印の部分をカットした上で、赤色の配線を追加すれば全バンド100Wになる。 TSSへの申請の際はこの回路図のような改造を行なって100W化したむね図面をもって説明を行なえば許可されるはずである。 合理的な改造方法であり、他のバンドと同じ条件で終段管を動作させているだけなので許可されるだろう。 もちろんオペレーターライセンスが伴わなければ許可されないのは当然だ。

具体的な改造状況
 取りあえず実験的に行なってみた。 恒久的に行なうなら回路図の2.2kΩは除去してしまえば良い。 ここでは元に戻す前提で実施してみた。 そのため2.2kΩは撤去せず、他の部分に接触しないように仮に熱収縮チューブに包んで絶縁しておいた。

 210Vの追加配線は写真中央部のグレーの電線だ。 2.2kΩの片側をカットしてその部分に配線するのが簡単だ。 元に戻すのも簡単なので、どうしてもTSSと揉めるようならオリジナルに戻して28MHz/50Wで保証認定をもらえば良いだろう。 技術的なことも良くご研究されているようなのでたぶん認めてもらえると思う。
絶縁材の追加
 このシールド板はWARC Bandの送信禁止解除の際にも外したものだ。 この100W化改造でよく見たら、高い電圧が掛かった部分が接近し過ぎているように感じられた。

 大丈夫なのだとは思うが、念のために絶縁フィルムを貼っておく事にする。 ちょうどバンドスイッチのウエファDとEが来るあたりに貼っておいた。

 改造が済んだらシールド板を元に戻してから終端パワーメーターでテストしてみよう。 このFT-101ZDでは他のバンドとまったく変わらぬパワーが得られた。 28MHz帯の100W化は成功である。

 こうした情報は他では見ないようなので、扱う事にした。なにも難しくはないのだが誰にでもできる改造とも言えまい。 自信がなければ良くわかった人に頼むか、技術を持ったショップに依頼するのが良い。くれぐれもライセンスの問題もお忘れなく。 すでに50Wの制限は無いのだから違法改造と言う訳では無いが、この改造を推奨するつもりもない。

                 ☆ ☆ ☆

まとめ
 以上、長々とFT-101ZDをめぐるBlogを続けて来た。一連の作業で本来の目的は達成できたと思う。

 まずは真空管を使ったリグでWARC Bandにオンエアできるよう、うまく送信禁止を解除する事ができた。 パワーメーターで比較したら他のバンドと変わらぬパワーが出てくれたので改造は旨く行っている。

 CWフィルタの効果は抜群で混んだ7MHzの受信ですぐに確かめられた。 スイッチ一つで狭帯域に切換えできるのは快適である。 狭帯域フィルタに付きものの通過損失の増加も特に感じられないのはFBであった。

 全般的な調整と内外観の清掃で見違えるようになった。シャックの一員として十分なものだ。古いとは言ってもあまり汚いリグは並べたくないものだ。

 余興として28MHz帯の100W化も好結果が得られたのも面白かったと思う。

 以上レストア計画は概ね満足の行くものである。

FT-101ZD Mark Ⅲと言うリグ
 図面はFT-101ZD Mark Ⅲのフロントエンド部分である。 もちろん、この基板の外側にミュー同調形式のLC同調回路が付いている。

 RFアンプがデュアル・ゲート・MOS-FETなのでやや物足りなさも感じるが広帯域増幅ではなく選択度を持った同調回路形式になっている。いつも共振のピークを得るように調整しながら受信しているのでその点は有利であろう。

 ミキサーもQuad-SBDを使ったDi-DBMになっている。 Mark Ⅱまでの2SK19-pp形式よりやや有利なはずだ。 ミキサーロスはダイナミックレンジの大きなJ-FET、J310のGGアンプで補っており悪くない形式だ。 数値比較では流石に最近のリグに劣るものの、実際にアンテナを接続して運用してみると大した違いは感じないだろう。この程度のダイナミックレンジがあるなら実用上で支障が出る状況には滅多に遭遇しないものだ。旧型FT-101とはまるで違うと言えるほど混変調は少なくなっている。

 シングルコンバージョン化で退化したような印象があるかもしれない。 しかし受信性能を含め送信においても歪みの原因になり易いミキサーの数を減らしたのは大きな改善である。 6JS6A/CのようなTV球よりRF特性の良いファイナルになったのも良い事で、歪みはNFBで改善したのも技術的な進歩と言える。 登場した頃のさえない印象はどこへやら、最後の頃にはなかなか素敵な無線機に変身したのではあるまいか。

59 Over
 実際に ハムバンドをワッチした印象を書きたいと思う。
アンテナは1.9〜7MHzがインバーテッド・Vで、10MHzは傾斜型DPだ。 14MHz以上は各バンド4エレ相当の短縮八木ビームである。

 HF帯ローバンドは夏期なのでコンデイションは良くなかった。 それでも空電が減ってくる深夜〜早朝にかけてはEu方面が聞こえてくる。 現代的なリグと切り替えて比べても超強力な放送局による混変調は特に気にならなかった。

残念ながら10MHz帯はコンディションが悪くてあまり聞こえなかった。

 HF帯ハイバンドは日々変化があるが14MHzや18MHzは良い日もあって、ビームを向けるとEuの深い方まで良く聞こえてきた。 18MHzが良い時は隣接の短波放送バンド(直近としては16mバンド:17.480〜17.900MHzがある)も超強力に入感するようになる。 しかし混変調に悩まされることもなかった。 EuのHAMはアンテナがPoorな局も多いので非常に弱いことも多い。 比較受信ではごく弱い信号受信も悪くなかった。APFなど併用するとDSPフィルタのリグより意外にも良さそうなくらいである。

 残念ながら、ワッチした時には21、24MHzと28MHzはあまり開けてくれなかった。 SSGでの感度測定ではけして悪くないから後はコンディション次第であろう。

 あまり感心しないのはSメータである。 振れ始めが重く、振れだしたらあっという間にS9〜Overになる特性だ。 もちろん指示通りのSメータ調整を実施してある。 弱いEu局など、Sメータに従ったレポートで言えばSは少しも振れず了解度は5と言うケースも多い。 そのためだろうか、Sメータにはゼロと言うポジションは無く、最低でも519のレポートが送れるようになっている。(爆)

 VFOの周波数安定度はまずまずであった。 スイッチオンから10分もすれば殆ど動かなくなる。 わずかにマイナスの温度係数があるらしく、室温の変化を受けるようだ。 しかし極端では無いから交信中に再同調する必要はなさそう。 なお古いリグのVFOは当たり外れが大きいので、この結果がFT-101ZDを代表すると思うのは早計だろう。

                   ☆

エピローグ
 FT-101Zが登場したころの印象を何となく思い出した。まずはEの次にZとは何なのだ?と思った。そして内容に触れて、これはFT-101ではなく、不発の廉価版:FT-201の焼き直しだと直感したのであった。実際、登場したばかりのFT-101Zは安価と言う以外に魅力に乏しいリグだったと思う。内部の作りもFT-901の整然から、配線の入組んだ雑然へと退化したように見えたのである。しかし使ってみれば安価な割には実用性能は良好とあってやがてベストセラーになって行く。もう中身に拘るHAMも稀な時代になっていたのだろう。
 お陰で次々に改善とバージョンアップの機会に恵まれることになった。多くのグレードアップは同時生産していたFT-901で先行したように思うが、より合理化・最適化された形でFT-101Zに盛り込まれて行った。そして最終型のMark Ⅲになると、初期型とは明らかに違ったものになっていた。 新しいデバイスや回路の投入でRF信号系の性能が良くなったこと、アクセサリ機能が実用的に洗練されたこと・・・など、レストアを通じてずいぶん良いリグになったことを再発見した。
 30余年前のリグである。もはや現代に通じぬ所があって当然だが、良く整備し性能を維持すれば未だ実用的なことも実感できるはずだ。目立ち易いVFOの周波数変動は外付けのDDS-VFOで補えば本質的な欠点も解消できる。もちろんバンドを変える度にプリセレクタを回してピークをとり、プレートとロードバリコンの再調整を行なわねばオンエアできない。そうした行為を真空管機の楽しさと感じられぬようでは早晩嫌気がさすのも目に見えてはいるのだが・・・。

 長いレストアBlogに最後までお付合い頂いたお方に感謝したい。 なるべく詳しく、尚かつ実践的な内容にしたいと思ったら全6編にもなってしまった。 これでもまだ完全には程遠いがレストア作業の大筋でも疑似体験頂けたなら幸いである。 以上、作業の様子やその時々の感想などを気ままに書き綴ってみた。「ああせい、こうせい」とか書いたが、いずれにしても個人的なお話しに過ぎない。もし別なご見解をお持ちでも目くじらなど立てませんようお願いする。 もちろん、貴方に何か推奨や強制などをするつもりはないので勘違いされないように。要は単なるヒマ潰し用の読み物なのである。 ただ、もしも真似る人があるなら事故だけは起こさぬよう切に希望する。 レストアBlogはまた面白そうなテーマでもあれば・・・と思っている。 de JA9TTT/1

(おわり)→→初回へリンク。(もう一度最初から読んでみる)


ご注意:個人的な修理のご依頼、あるいはメールでの修理のご相談などはお受けしておりません。 現品を見ないと適切なアドバイスはできませんし、ご相談者の修理経験や回路の理解など未知数な部分が多くご対応は困難だからです。 相応の費用は掛かると思いますが、例えばTMTサービス:http://www.toyama-smenet.or.jp/~tmt/などのプロにご相談されて下さい。