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2014年12月1日月曜日

【測定】Rubidium atomic clock

【測定:ルビジウム原子クロック/10MHz周波数基準器】

仮設から脱却
 ルビジウム原子周波数基準器:LPRO-101をきちんとしたケースに収めた。 従来のテスト運転・・・言わば仮設状態からやっと脱却して本格的に使える状態になった。

 周波数基準器は恐ろしく精度の良い10MHz得るために使う物だが、同種の基準としてはGPS周波数基準が稼働中なので必要度は高くなかった。 しかし測定器の置き場が2ヶ所に分散したことから別途周波数基準が欲しくなった。 GPS基準器の分配を増やしても良いのだが、配線を長く延ばす必要があるので少々面倒である。 そこで10MHz:ルビジウム原子周波数基準器:Rb-OSCの活用で行くことにした。

 Rb-OSCユニットを収納したケースはハム用の100Wくらいの外付けリニヤアンプ用だと思う。 もう10年以上前にローカルのOMさんに頂いた物である。 構造から他への応用には使いにくいのでそのままになっていた。 Rb-OSCの本格稼働を目的に適当なヒートシンクを探していてこれが見つかった。 ユニットの取り付け方法を工夫することでうまく収納できた。

 ケース内部に4分配用のアンプも収納した。 出力はパネル面に1つ、背面に3つである。各出力ともGND側および信号側共にアーソレーション(絶縁分離)される形式になっている。 接続する機器間のシャシ電位差や各装置のグラウンド引き回しの影響を受けない。

 電源は24Vで、 起動直後5分間くらいが約1.6A、平常運転時が約0.6Aの容量を必要とする。 AC電源も内蔵すると使い勝手は良くなる。しかし磁気フラックスが漏れる電源トランスや、大きなノイズ源になり得るスイッチング電源が同居していたら信号純度の点で不利になる。 大きな箱に入れ厳重にシールドすれば対策可能かもしれないが、あっさり別置きにして解決した。電源部は本体と並べずに1mくらい離しておけば良い。 稼働には写真にない外付けの電源を要する。

仮評価
 数年前になるが、仮設状態で評価した際に入念に周波数調整を行なってあった。

 写真は10MHzを10秒ゲートで測定している状態だ。桁数の関係で最上桁の「1」が表示オーバーフローしている。 最小桁は100ミリHzで、これでは10ppb(1億分の1=0.01ppm)の精度までしか測定できていないが取りあえず製作直後の動作チェックとしては問題なさそうだ。

 このあと、十分な連続運転を行なって安定してきたところでGPS周波数基準器と周波数合わせを行なうことにする。

 この10MHz-Rb-OSCは1ppb(10億分の1、10E-9、絶対値で10ミリHz)の精度まで普通に得られるが小さな温度係数があるようで10ppt(1兆分の10、10×10E-12、絶対値で10マイクロHz)オーダーの僅かな漂動が認められる。 通常まったく問題にはならないのだが完全に静止した不動の基準ではない。 また経年変化もある模様で数年に1度くらいの周波数合わせは必要ではないかと思っている。もちろん、校正頻度は要求精度にもよるが。 要するにRb-OSCは校正しながら使うべき『2次基準器』なのである。(参考:放電セルのガス・クリーンナップ現象による圧力変化に伴う周波数シフト量の経年変化のようだ) GPS衛星にもRb-OSCが搭載されているが、あれは地上局から常に監視され、随時補正されて高い絶対精度が維持されている。 非常にゆっくりした変化なので監視して補正を続ければGPSナビゲーションに必要な精度を維持することができるわけだ。

きれいな10MHz
 もう一つ気になるのは得られる10MHz信号の奇麗さであろう。 写真は横軸:10MHz中心に10kHz幅にとって信号近傍のスペクトラムを詳細に見ている状態だ。 LPRO-101のあとに分配用アンプを付加した状態の信号を見ている。実際の出力信号と言うことになる。

  50Ω負荷に信号レベルは8.54dBmである。 信号純度は良くできた水晶発振器と同じレベルにある。ジッターはもちろんサイドバンド・ノイズも特に認められない。良い信号が得られている。

 LPRO-101内部には20MHzのVCXO(電圧可変型水晶発振器)があり、その周波数をRb放電管セルの光吸収スペクトルが起こる励起周波数:6,834,682,612.8Hz*1にロックしている。回路としては周波数ロック・ループ:FLL方式である。

参考*1:原子時計・発振器にも幾つかの方式があり、直接周波数を取り出す形式・・メーザー形式の物もある。ここで使ったRb-OSCでは実現の容易さからガスセル式の吸収スペクトルを利用する間接的な方式を採用している。NIST(米国国立標準技術研究所)によるRb原子時計の理論的な周波数は6,834,682,612.8Hzであるが、LPRO-101では6,834,687,500Hzとなっている。この周波数差+4887.2HzはRb放電セルに混合された緩衝ガスによるシフトだ。端数の少ない奇麗な周波数になっていて、LPRO-101はそのように設計されたRb-OSCであると言うこともできる。これは緩衝ガスによる周波数シフトを逆手に取った上手いやり方であり方式特許として出願されている。もちろん2次標準器だからこそ可能な方法だ。

 その20MHzを1/2分周して得ている10MHzの本質は水晶発振器のそれである。Rb発振器とは言ってもこの間接方式の場合「Rb放電管の発振周波数」のような直接得られる「何か特別」の周波数がある訳ではない。得られる10MHzのモトは水晶発振器である。こうして見ると内蔵の20MHz発振器もまずまずなようだ。

 この10MHz発振器を元に携帯電話の中継網を構成していたのだから信号の品質は言うまでもない。 基準信号が汚ければ中継機からの信号もすべて汚れてしまう。 周波数の絶対精度および安定度は勿論だが純度の良い信号を必要としていたはずだ。

#この製作では電源を外付けにし、10MHz分配用アンプをローノイズに作ったのも意味があったように思う。高速OPアンプを使うと製作は容易だが、ノイズフロアの上昇は面白くない。ディスクリートで作った。

 このくらいの基準信号ならV/U/SHF帯の通信用周波数基準としても十分だろう。 マイクロ波帯のPLLや多段の周波数逓倍にも耐えられる筈だ。 測定器の周波数基準やオーディオ再生装置のマスター・クロックのみならず利用範囲の広い周波数基準器になる。 起動から高精度までの待ち時間が短くGPS周波数基準のようにヒモ付きでないのも便利だ。

#もちろん、いくら良い周波数基準があってもその後が劣ればそれなりになる。Rb-OSCさえ繋げば・・・と妄信したら間違いだろう。

                   ☆

 12月のBlogは更新しないはずだったが、それも寂しいので近況報告した。 内部写真は撮り忘れた。 簡単な製作なので詳細な製作情報は省いたが、もしもニーズでもあればいずれ機会を見てと思っている。 これで今年はおしまい。どうぞ良いお年をお迎えください。de JA9TTT/1

(おわり)

参考:ルビジウム発振器関連の過去Blogなどの情報
(1)Rb-OSC今が旬か? (2009年2月1日)→ここ
(2)あなたも今日から高精度病 (2010年9月5日)→ここ
(3)GPS周波数基準器の製作(2016年1月10日)については→ここ
(4)肝心のRb-OSCだが、LPRO-101は旬を過ぎており代わって現在はFE-5680Aと言うユニットが出回っている。おおよそ、$200〜$300でe-Bayに登場している。→該当へリンク

重要:オークションの出品物は基本的にジャンクであり、性能・品質は保証されていないものです。実際に非常に酷い出品もあります。 Blogの記述は購入の助言にはあらず、ましてや推奨する意図など一切ありません。もしも入手されるとしても各自自身の判断と責任において行なって下さい。どのような結果にもこのBlog筆者は一切関知しません。

2014年11月15日土曜日

【HAM】 A New life for FT-101 Part 2

【八重洲 FT-101にニューライフを】
FT-101のシリアルナンバー
 Part 1(←リンク)の続きだ。 FT-101は世界のベストセラーだったから詳しく調べられている。 その情報もネット上にたくさん存在する。 (参考:ここではFT-101無印〜FT-101Eまでを扱う。FT-101ZDシリーズについてはこちらのBlog(←リンク)で)

 Part2では、まずはこれから再整備したのちWARCバンド改造を行なう本機の素性を明らかにしておきたいと思う。 八重洲のこのシリーズについては、NW2M のサイト(←リンク)が詳しいようなので参照させてもらった。

 それによれば、この無印FT-101は、1972年3月の製造ということになる。 FT-101としての生産は12ラン目(12th Lot)で製造番号は2103号機ということになるようだ。  FT-101/B/Eの最終累計では80,000台くらい作られたそうなので、連番で2103号機と言うのは少なすぎるようだしロット内番号としては大きすぎる感じもする。
 CQ出版の「FT-101メンテナンスガイド」(ISBN4-7898-1015-1)の記述とは違う解釈のようだ。書籍によれば山梨工場(=1番工場)の22ロット目、ロット内番号103号機という解釈もできるが、その記述からも完全に判別できない部分もあるように感じる。正しくはどんな番号なのだろうか。 それにしても、生産開始して2年にも満たずに12th Lot/22nd Lot(後者)に達していたというのは趣味用の高額な機械としては例外的な大ヒットを物語っている。取りあえずここでは22103号機と呼ぶことにしよう。

 1972年当時の138,000円と言えば2014年現在の50万円以上に相当する筈だ。 米国では$500〜$550で売られた模様だが、彼らにしても当時そのお値段はそうそう手軽なものではなかったそうである。ニクソンショックで変動相場制に移行していたが、その直後だからまだ$1=¥300-くらいだった頃の話だ。 この売り上げは八重洲無線の急成長に多大に貢献したのは間違いない。

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 この先、40年モノの古い無線機の「他愛ないお話し」になる。 特別な興味でもお持ちならともかく、お付き合いいただいても無駄な時を費やすだけだろう。何か有用な「情報」があるわけでも無し。 お暇の無い向きにはお薦めしないので、ここらで早めにお帰りを。 たっぷり時間があるようならお代など頂戴しないのでごゆっくりと。 例によって異論・反論がございましてもマジになりませんように。 何せ「他愛ないお話し」なんですから。(笑)

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初期型の色濃く・1
 さて、22103号機は最初期型の設計がまだ色濃く残っている機体である。 例えば、このVFOの上にあるのは固定チャネル用の水晶発振基板だ。 後のモデルでは本格的なノイズ・ブランカやスピーチ・プロセッサが載っている。

 無印FT-101にもノイズ・ブランカは搭載されているが、ごく簡単な形式のものがIF基板に同居している。 従って、効果があるのはイグニッション・ノイズくらいのもので、他のノイズにはあまり効かなかった。 それでもJAのアマチュア機にノイズ・ブランカが搭載されたのはこのFT-101が最初だったのでCQ HAM Radio誌で特集が組まれるほど話題になった。ちなみにTRIO/KenwoodではTS-511DNで初採用された。

初期型の色濃く・2
 RF基板はPB1077Bで、BバージョンではRF-Amp.は3SK22GR×2のカスコード形式をやめてDual-Gate MOS-FETの3SK39Qになっている。FETのドレインを切り離すために小型リレーが搭載されているのが特長だ。ここは後にダイオード・スイッチ形式に変更される。 

 この基板に同居するミキサは送受信ともにバイポーラ・トランジスタ(BJT)が使われている。 受信第1ミキサが2SC372Y、送信の第2ミキサは2SC373である。これでは混変調特性が宜しく無かったのもうなずけると言うものだ。 BCL用受信機ではあるまい、BJTではHAM用通信機には不十分なのである。

 受信第1ミキサはまもなくFET:2SK19GRを使ったものに置き換えられかなりの改善を見ることになる。 蛇足ながら、別基板上の受信第2ミキサも2SC372Yから3SK39Qへと変更された。2つの送信ミキサは最後までBJTのままであったが使用デバイスは何回か変更がある。

 もしも、今からFT-101の入手を試みるなら間違いなくFT-101B以降のモデルにすべきだと思う。このように無印101とB付き以降では大きな違いがあるのだ。

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FT-101の終段管のお話し
 終段電力増幅管の話しである。 FT-101Eなど、後期のモデルでは写真の6JS6Cが2本パラで使われている。(100Wモデルの場合) 写真の6JS6CはNEC:日本電気製であるが、これは東芝が電子管の製造をやめてからFT-101(E)に採用されるようになった。

 6JS6Aは言うまでもなかろうが、ブラウン管式カラーTV用の水平偏向出力管であある。 FT-101に於いて初期には6JS6Aが使われたが、TVに使う球が順次アップグレードして行ったため自動的に6JS6Cへとバージョンアップして行った。 東芝製の6JS6Cはプレートの外側に補助翼が・・もちろんガラス管の内部だが・・付けてあり放熱の改善を試みているがNEC製には付いていない。 しかしトランシーバの場合、主な放熱は輻射ではなくファンによる空冷だからあまり影響ないと考えられる。基本的に6JS6Aでも6JS6Cでも大丈夫だ。一度しか見たことはないが6JS6Bでも。

31JS6Aで代替
 ヒータ電圧が異なるので、6JS6AをトランスレスTV用の31JS6Aで代替するのは少し面倒だ。 幸い、背面の11ピン・アクセサリ・ソケットに終段管のヒーター配線が出ているのでそこに供給すれば良いことに気づく。 ただし、ヒーターは2管直列になっているのでそのままでは63V掛けねばならない。

 しかし、そのような配慮をしてやればトランスレスTV用に作られた6JS6系の球・・・例えば、23JS6A(600mA系)や31JS6A(450mA系)がそのまま代用できる。 現在、ヒーターが6.3Vの6JS6A〜6JS6Cはほぼ完全に枯渇してしまっている。 Audio系の球と違って新規製造の可能性は低いだろう。 そのため終段管の補給に困るケースも見られるようになっている。 しかし工夫すれば代替可能なので覚えておくと助かることもある。

参考:正確には31JS6Aのヒータ電圧/電流は31.5V/450mA、また23JS6Aは23.6V/600mAである。それぞれ±5%以内のヒータ電圧を与えれば良い。なお6JS6A〜Cは6.3V/2.25Aである。一般に受信管のヒータ電圧許容範囲は±10%であるが、パワー管では±5%程度に収めるべきだ。特に低い方は厳しいので-5%までと考えている。言うまでもないがヒーター電圧は真空管のピンの所で測った値である。ヒータートランスの巻線電圧ではない。ヒーター配線による電圧降下が思いのほか大きいこともあるので注意を。

ヒータ配線の変更
 このように配線変更してしまうと互換性がなくなってしまうので好ましくないかもしれない。

 しかし、手持ちのヒーター用トランスの関係などから63V/450mAを供給するのは大変なので、FT-101のヒーター配線を2管直列から2管並列に変更している。 よって31.5V/900mAを供給すれば良いようになっている。

 なお、きっちり31.5Vでなくても大丈夫で30〜33Vくらいなら支障はない。この機体は中古の不動品をレストアしたものであるが、元来付いていた6JS6Aは完全なエミ減(エミッション減退=カソードの電子輻射能力減退によりIpが十分流れなくなる。原因は酷使による消耗)になっていた。そのため新品の31JS6Aに交換の上、外にヒーター用トランスを設けて本体背面のACCソケット経由で点灯して試用していた。 そこまでして使っていたのは、ヒータが6.3Vの6JS6系の球が払底してしまったからだ。 上記の31JS6Aなら安価な頃に入手しておいたものが幾つか残っていた。 (まあ、お金さえ出せば手に入る。しかし1本1万円も出して買うような球とは思えないので・笑)

 写真で左右の真空管ソケットの色が異なるのは、経年劣化により右側のソケットが不良になったので交換したため。珍しい故障なので原因究明に時間を要した。それだけ酷使された機体だったようだ。どうも27MHzの違法CB(AMで)で使っていた模様だ。 不良マイカ・コンデンサの幾つかと、そのショート故障の道連れになった電圧降下用抵抗器の交換も行なっている。

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6JM6で代替検討
 6JM6というのは、6JS6Aよりも小ぶりの水平出力管である。 たしか画面サイズの大きなモノクロTVに使われていた筈だ。 日本ではあまり使わなかったらしく、ジャンクのTV受像器で見た覚えはない。

 日本のモノクロTVでは独自の水平出力管が使われていた関係でコンパクトロン管はあまり使わなかったのだろう。

 幸いなことに、6JM6は6JS6Aとほとんど同じピン配置になっている。 配線変更を行なうにしてもほんのわずかで済む。 有力な代替候補と言って良いが、これも既に枯渇気味に違いない。 もしも手持ちにあれば試すと言った程度の話なのかもしれない。わざわざ購入するするほどの物ではないだろう。

パワーは半減か?
 こうやって6JS6Cと並べると、だいぶ小振りなことがわかる。 肝心の許容プレート損失は28Wから17.5Wへと4割近くの減少だ。 スクリーン損失も5.5Wから3.5Wへと同じく約4割減だ。

 従って、2管並列でも100Wアウトプットは無謀である。 良いところ、半分少々と思って使えれば上等と言えそうだ。 実際、FT-101の前身であるFTDX-100/150では2管使って50W出力としていたのでそれにならった使い方が適当そうだ。 FTDX-100よりプレート電圧は高いがIpをセーブして使えば事故にはなるまい。

6JS6は6DQ5系の球
 別の代替の可能性も考えてみた。 外観の違いが大きいので、そうとは気づかないかもしれないが、6JS6A系のルーツは初期のカラーTV用水平出力管6DQ5である。 プレートの大きさや形状を比較してもらうと類似性が良くわかると思う。

 もし、6DQ5系の球を沢山持っているなら十分代替できる筈である。 ベース(ソケット部分)はGT管と同じ8ピン・オクタル型なので交換が必要だ。 また背丈も高いので収まりきれない可能性はあるが電気的には代替できる性能を持っている。 6DQ5といえば、その昔の自作HAM達のSSB送信機にはパワーが出ると言って重宝がられていた。(写真:左は25DQ5、右は31JS6Aで、どちらもトランスレス・カラーTV用)

6JM6は6DQ6系の球
 6DQ6の在庫があった筈だが見つけられなかった。写真左は6G-B6という国産管で、正しくは6BQ6系の球である。 6DQ6は6BQ6のプレートを大きくしてパワーアップした球なので、プレート損失を除けば6G-B6もよく似た特性だ。パワーダウンを許容するならこれらの球による代替も可能だ。6JM6は6DQ6直系の球なのだから6G-B6も親戚筋に当たる。

 一説によれば、6DQ5系、即ち上記の6JS6AなどよりIMD特性が優れていると言われる。 事実、ローカル局のテストによれば軽く使うと3次IMDが-50dBくらい行くと言うから大したものだ。5次は幾らか見えるもののそれ以上の高次IMDは見えない程とも伝え聞く。 終段が半導体のRigでは3次が-30dBでさえ厳しいのだから並々ならぬ努力をしなくては実現困難な数字と言える。 もちろん、6JM6×2でも出せるだけパワーを出し、50Wで-50dBなどという筈もなく、せいぜい2管でPEP30W程度が宜しい模様だ。 このあたり、ご興味あれば「アマチュア無線の新技術」JA1ACB著:誠文堂新光社(絶版だから図書館で)でもご覧になると面白い。

 6JS6Aを6JM6に交換すると、パワー半減で何も良いことはないと感じるかもしれないが低IMDというオマケが付くなら良いかもしれない。 外付けヒータートランスも不要になるから配線を元に戻して6JM6に換装しようかと思い始めている。 入力容量がだいぶ違うので、ドライブ側同調の関係から補正容量を追加した方が良いだろう。 出力容量の方はバリコンの可変範囲が十分あるから支障あるまい。 あとはうまく中和が取れるかだが問題は無いと思う。このあたり経験から。(笑)

(参考)このFT-101で送信時に良好なIMD特性が得られるかどうかは微妙なところだ。 送信ミキサは2つあって、そのいずれもバイポーラ・トランジスタ(BJT)を使っている。デバイスの選定のみならず回路設計も影響するが、一般にBJTを使うミキサが歪みに対して不利なのは確かだ。改善にはバイアス・ポイントや注入レベルの最適化のような全般的なチューニングが必要で、その為にもツールから揃える必要がある。例えば先のBlogの低歪ツートーン・ジェネレータなど欲しいところ。

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 真空管談義のようになってしまったが、概ね整備の済んでいる機体なのでPart 2は雑談を交えてみた。 再整備とWARCバンド改造にあたっては終段管の換装も考えている。 追加整備の過程で面白い話でもあれば採り上げたい。

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プリセレクタとバンドスイッチ
 無印のFT-101であるから、写真のようにWARC Bandどころか160m Bandさえも付いていない。 まだこの当時のRigには160m Bandは標準的ではなかった。

 160m Bandの搭載はメーカー機では米国Drake社の4Cのラインに搭載されたのが最初ではなかろうか。 国産機ではこのFT-101が最初で、そろそろFT-101Bが登場しようかという時分のことになる。その後は各社標準装備になった。

 160m Bandに出られるメーカー製のRigが存在しなかったころは本当に面白かったというお話も聞く。 確かに様々な自作機のオンパレードだった筈で、QSOも楽しかったに違いない。 残念ながら私が160mにオンジエアした頃にはメーカー機が幅を利かすようになっていて自作機は少数派になっていた。 ライセンスはあったのだからもっと早くオンジエアすればと後悔したものだった。 それでもローカル局のUY-807Sのハムが乗った波が思い出されて懐かしい。 自身は受信機:JR-599で水晶制御:2SC931シングル・ファイナルの約5Wで1st-QSOしたのを思い出してしまった。アンテナは7MHz/IVのフィーダー込みロングワイヤだった

 なるべく改造しない方針なので、特定のバンドを潰したりすることはせずに行く。 従って、WARCバンドの分はどこかのポジションを共用する形式になる。 160m Bandの追加はかなり困難なので望まないことにしょう。 160mは古のようにダウンバータなど付加してオンジエアすると「懐かしい」という声が飛んでくるかも?? 160m Handbookでも読み返してみようか。hi hi

FT-101の底面
 今になって思うと、よくコレだけ詰め込んだものだと思う。 もちろん昨今の半導体機と比べたらずいぶん大きなトランシーバだ。 しかし、当時の部品事情と回路構成を考えると感心するくらいぎっしり詰め込んである。

 マイクと電鍵、あとは何もいらないというオールインワン設計のコンパクト機だからベストセラーになったのも当然だろう。 しかもDC-DCコンバータ付きの機体なら直ちに車載運用もOKだった。 出力回路はアンテナ・インピーダンスの変化にもある程度対応できるパイ・マッチ形式なのでATU内蔵とも言える訳だ。

RF部分
 検討対象になるPB1077B:RF部分の裏側を見て少々考え込んでしまった。 上に書いたように詰め込んである無線機だ。 何かを追加するにはスペースを確保しなくてはならないが難しそうなのだ。 何かを犠牲にするというのはやりたくないし・・・。

 なるべく簡単に済む方法を考えて最小の追加で済ませるよう工夫する必要がありそうだ。 回路の検討は進んでも、どのように実装するのかはかなりの検討を要すると思われる。旨いアイディアが出ないとここで進捗が止まる危険がある。ww

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 さっぱり具体的な話に進まなかったがWARC Band追加だけが目的ではない。 まずは再整備を行ないコンデションを整えねばならない。 不調な機体に改造を加えたら手に負えなくなる可能性大だ。 下手をすればそのままお釈迦の運命もありうる。 まずは納得できる範囲まで整備を進めたいと思う。 パワーはあまり欲張らないので綺麗な波を目指せたらと思う。終段管の交換も合わせて検討してみたい。

 いま傍でリハビリ中の22103号機に7MHzのラグチューが快調に入感している。 初めてFT-101を見たのは1969年12月発売のCQ HAM Radio誌(1970年1月号)だった。 作られた尤もらしい広告写真ではあったが、恒温槽に入ってテストを受けるカラーのFT-101が印象的だった。 発売前ゆえ型番は伏せられていたから、どんなリグなのか想像するしかなかった。カドの取れたFT-200ライクの筐体なのでその新型だろうと思ったものだ。 やがて詳細が明らかになりそのインパクトたるや大変なものであった。 世にKWM-2というお手本はあったにせよFT-101は日本人が産み出した傑作トランシーバだろう。いまも褪せてはいない。小気味好いSの振れに目をやりながら様々な思いが浮かんでくる。de JA9TTT/1

(つづく)←たぶん(笑)

お知らせ:この先師走の繁忙につき年内のBlog更新は無いかも。

2014年11月1日土曜日

【HAM】 A New life for FT-101 Part 1

【FT-101にニューライフを】
 写真は無印・初期型のFT-101である。 ただし1970年5月発売の最初期型ではない。 最初期型は結構珍しくて、なかなかお目にかかれない。受信のRF-Ampが3SK22GRを2つ使ったカスコードアンプになっているのが特徴だろう。他もかなり違っている。もちろん性能が良くないから改良された訳なので有り難がるような代物ではない。FT-101Eなどの後期型の方が優れているのは勿論だ。

 写真の機体はFT-101無印のかなり初期型のようだ。最初期型ではないものの、FT-101Bの登場に近いころのものとはだいぶ違う部分がある。詳細は後に記述したいと思っている。もちろん160m Bandは搭載されていない。 全般的な様子から見て1970年後半から1971年初め頃のものではないか。いずれ製造番号から調査を試みたい。 全般的な性能は後のFT-101Eにはやや劣るように感じるものの概ね実用性能は有していると思う。 混変調特性などこのFT-101シリーズが持つ本質的な弱点はやむを得ないとして、よく整備すれば今でも実用に成り得る性能は保っている。(改訂:2014.10.9)

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 閑話休題、ニューライフとは例によってWARC Band追加のことだ。(参考:FT-101ZDのWARC Band改造記事は→こちら) FT-101の無印でWARC Bandなど大改造が必要と思われるかもしれない。 しかし、種々調査した結果、それほど困難なくオンジエアできそうなのだ。 まずは既にポジションが用意されているWWV/JJYのところを30m Bandに使うのが手始めだろうか。この101のWWV/JJYは10MHz帯なので改造は容易な筈だ。

 FT-101Zシリーズと違い、こちらのオリジナル101シリーズはダブルコンバージョン形式になっている。 2回の周波数変換があるので、とても厄介そうに見えるかもしれない。ところが意外にもこちらの方がWARC Bandを追加し易すそうなのだ。 WARC Band対応なしのFT-101Zシリーズに追加するより容易かもしれない。 バンドスイッチのWWV/JJYの所に30m(10MHz) Band、AUX の所に17m(18MHz) Band、普通のHAMには用のない11m(27MHz)の所に12m (24MHz) Bandを追加実装するというのが定番の改造だろうか。

 ここでは、別体の『WARC Bandコントローラ』を置くことで本体内部の改造は必要最小限で済ませようと考えている。 本来なら各WARC Band用に特注の水晶発振子が必要となるが、ここでは例の中華DDSを採用する方向で行く。 従ってバンド追加の水晶を特注する費用は掛からないし納期待ちのじれったさもまったく無しだ。 他にも私オリジナルのちょっとした面白アイデアもあるのだがパクられて先に実現されてもしゃくなので今はまだ書かずにおこう。(笑)

 この機体にはCWフィルタは実装されていないが、どうしても必要そうなら他所から・・例えばFR-101とか・・から借用しよう。 30m BandはCWバンドだし、17m BandもDXingにはCWでのオンジエアが有利だ。 CWフィルタはぜひ欲しい感じである。今更中古を買うのも何なので、余剰手持ちがあったらなら良かったのだが・・・。 何ならオージオCWフィルタという手もある。

【まずは再整備から】
 40年越えの年代モノになるが綺麗そうに見えると思う。しかし整備してから10年以上にもなるので各部の接触不良がだいぶ再発している。改めてエージングと再調整が必要そうだ。改造はもちろんマトモな状態になってからになる。正常でもないものを改造したら手に負えなくなるだけ。hi hi

 少し通電しておいてからバンドスイッチを数回転したらとりあえず受信できるようになった。 さっきから7MHzのラグチューをウオッチしているが周波数安定度もまずまずな感じだ。 全般的な点検と軽微な補修を行なうことでまともな状態に復帰できそうに思う。 いつもながら年代モノのRigは世話がやけるが、きちっと聞こえて飛ぶようになればそれはそれで充実感も感ぜられるものだ。

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 DDSを搭載するということは、もちろん専用のコントローラを要する。マイコンを使うことになる。 基本的に周波数設定ができれば良いだけなので難しくもないが、幾つかアイディアを盛り込むにはそこそこ複雑になって行く。 そのあたり、どうするかも含めてまずは簡単な所から攻めて順次バージョンアップして行く作戦でいる。

 簡単そうに思えても例によって誰にでも可能なものではないだろう。 その他大勢にとって読み物でしかない可能性も高い。 ただ、同じような試みをされたいお方があるようなら詳しく扱おうと思っている。その辺りのことご意見・ご要望とか頂けたらと思う。お気軽に何でもどうぞ。

                 ⭐︎

 FT-101やTS-520と言った年代物のSSBトランシーバはそれほど複雑ではなく部品サイズも程々に大きいので整備はしやすい。(もちろん、修理技術ナシではそうそう簡単な筈もないが。修理とは石・球の交換と思ってる輩は幸運のみが頼りだろう・笑) 半導体式なので発熱量が少なかった関係から状態の良い機体も見かけるように感じる。 そのため、レストア素材として楽しまれるお方も多いのだろう。 青春真っ只中の思い出として着手するお方もあるのではないだろうか。 もちろんレストアして「完了」も良いかもしれない。 しかしレストア後のテスト・オンエアもあらかた済んで、ちょっと飽きてきたらWARCバンド改造にチャレンジなど如何だろう? うまく行けば貴方のHAMライフに新たなシーンが加わるに違いない。de JA9TTT/1

(つづく)←リンク

2014年10月15日水曜日

【部品】DBM Chip vintage, TA7310P

【年代物のDBM-IC:TA7310Pの試用】
【TA7310Pとは】
TA7310Pは簡単な発振回路とRFアンプ、そして主役のダブル・バランス型ミキサを集積したICである。 かなりの年代物なのだが、今でも比較的入手し易いように思う。 時折オークションにも登場するので未だかなりの市場在庫(引出し在庫?)が存在するのだろう。 新旧があって比較的遅くまで生産されていた様子がうかがえる。 本来とは別の新たな用途が生まれていたのかも知れない。

本来の用途・目的はPLL型周波数シンセサイザのミキサ回路用である。 1970年代のはじめ米国でCBトランシーバが爆発的なブームになった。その殆どは日本からの輸出品だったのである。 27MHz帯の出力4WのAM機(のちにSSBも)で車載用の多チャンネル型(23chなど)であった。 当初は各チャネル分の水晶発振子を並べた単純な形式であった。 しかし水晶発振子が各チャネルあたり送受で2個ずつ必要とあってはコスト高であり、水晶を減らす研究開発が精力的に進められた。その答えがPLL周波数シンセサイザであった。

PLL周波数シンセサイザは古くからある技術だが本格的な専用IC化が進むまでは一般化しなかった。 ECL-ICあるいはTTL-ICと言った汎用ロジックICを並べたのでは数10個を必要とした。それではまったくコスト低減にならなかった。
しかしC-MOSでカバーできる回路部分を極力LSI化してやることでCBトランシーバのPLL化が進められた。 生産台数が膨大であったゆえに専用ICの開発もできたのであろう。

TA7310Pの使用例
 TA7310Pは当時のC-MOSでは扱えなかった20〜40MHzと言った高い周波数を2MHz以下の扱える周波数へと周波数変換する目的に使われた。
 トランジスタを使ったシンプルなミキサ回路ではスプリアスの除去が困難であったため二重平衡型ミキサを採用して回路の簡略化を図っているのも特徴だ。(左図は東芝の技術資料より引用)

 本来はPLL回路用であったがDBM+OSC+RF AmpというアナログなICであるため、受信機のミキサ回路やSSB/CW検波回路にも使うことができた。 あまり活用例は見ないが、SSB送信のバラモジ回路にも使えたと思う。

CB機の輸出ブームも一瞬のバブルであった。 ブームも去り余剰部品が秋葉原へ流出するようになったころ買い求めたTA7310Pや頂き物が長いこと引出し在庫されている。 ここは 試用して感触を掴んで在庫を消費したいものだ。 例によってこのBlogは自分用の実験メモである。 以下、もしお暇なようならお付き合いを。 ご自身で使用計画でもあればコメントをどうぞ。

                    −・・・−

【評価する回路】
TA7310Pのメインは二重平衡型ミキサ(以下、DBMと略)であるが、発振回路部分を使わないと使えない設計になっている。 発振回路とDBMの間が内部でC結合されているのだ。 RFアンプ部分は独立しているので別途検討するとして、主役のDBM(+発振回路)の活用を検討してみよう。

単純な周波数変換に使えるのは勿論だが、シビアな性能が要求されるSSB送信機のバラモジ(バランスド・モジュレータ:平衡変調器)はどうだろう。 旨く使えるなら用途も広がる。 内部回路の考察では、HF帯用にできているように見えるが低い周波数、例えば455kHzでも使えるなら面白い。 そのような考えで、455kHzのバラモジで検討してみた。 なお、発振回路はセラミック発振子(村田製作所の商品名;セラロック)を使ってみた。 定数を選んでやれば水晶発振子でなくても発振できる。 工夫すればVXO回路とかもOKだ。

参考:村田製作所はセラロックの型番付与方法を変更している。旧CSB455Eは図のような長い型番になっている。この回路にはもちろん従来のCSB455Eも使える。

【試作風景】
例によってブレッドボードで試作だ。 周波数が低いこともあり特に問題は起こらなかったが、このブレッドボードは底面に金属板(正確に言えば片面プリント基板)が貼ってある。 銅箔面をアース電位にすることで高周波用の適性を高めてある。

左のオレンジ色の角形部品が455kHzのセラミック発振子(セラロック)である。 簡略実験のため、周波数調整用のトリマコンデンサ(C3)は固定コンデンサで代用している。 実際に作る際にはSSBフィルタに合わせたキャリアポイントの調整が必要なのでトリマ・コンデンサを使う。 455kHzの水晶発振子と違って455kHzのセラロックの周波数調整範囲は広いので容易に加減できる。
バラモジの出力に付けたコイルはトランジスタ・ラジオ用のIFTである。 ここでは白いコアの段間用を使ったが455kHz用なら何でも良いだろう。 DBM側はインピーダンスが低めなのでタップ付きが望ましい。

【DSB信号】
低周波入力端子J1-J2(AF Input)に約1kHzの正弦波を与えて測定している。1kHzは570mV(pp)を与えた。 出力は約3Vppで、まずまずなDSB波形と思う。

キャリヤ・バランス調整(VR1)は必須である。 無調整ではキャリヤ・サプレッション(搬送波抑圧比)は30dBもとれないくらいだ。 ミキサ回路なら良いのかもしれないが、バラモジには不十分だ。 かならずバランス調整を設ける必要がある。 ややクリチカルなのでR2(10kΩ)はもっと大きくした方が調整し易い。22kか33kΩが適当なところか。

【DSB信号:飽和】
過大入力で飽和してしまった状態。 こうなるずっと手前からIMDは悪化している。 もっと低い出力範囲で使うべきだ。 上図のように3Vppくらいまでが適当かと思われる。

なお、ここで3Vppと言うのは、使っているIFTのインピーダンスや巻き数比も関係するから普遍的な数字ではない。 部品が違えば値も異なってくる。 実際にオシロやスペアナで観測しながら最大信号レベルを見極めて使いたい。

内部回路から見て 455kHzではどうなのかと思っていた。 しかし思ったよりも良さそうなのは収穫であった。 この程度ならシビアでない用途には十分使える。

                    −・・・−


【内部等価回路】
なぜ内部等価回路を参照するのかと言えば、使う上で少々気になる部分があるからだ。 左側で発振部と中央のDBM部分の間をC1と言うコンデンサが繋いでいるのがわかるだろう。

このコンデンサはおそらく数pFしかない。大きく見積もっても10pFほどだろう。 従って、低い周波数で使うには小さすぎるのである。 流石に数10kHzと言ったキャリヤ周波数で使おうとは思わないが、せめて下は455kHzあたりまで使いたいものだ。 そのような意図で上記のテストをしている。 このC1の部分で455kHzの減衰が起こっている筈だが、DBMの動作に支障はない程度のようなので旨く使えることがわかった。 数個交換してみたが同じようなのでバラツキがあっても旨く使えるだろうと思う。 周波数の高い方は50MHzあたりまでが無難なところと言った感じか。


【セラミック発振子のトランジスタ発振回路】
セラミック発振子を使った発振回路と言えば、C-MOSインバータを使うものがほとんどだ。 しかしトランジスタでも発振回路は作れる筈だ。

TA7310Pを使うにあたってもう一つ検討しておきたいと思ったのは455kHzのセラミック発振子(セラロック)で発振するかと言うことだ。 セラミック発振子メーカの資料で左図のような発振回路を見つけた。さっそくTA7310Pの発振回路部分に適用してみた。 これは非常に旨く発振してくれて周波数調整も十分可能なので455kHzの標準用法にしておきたい。なお、この回路は簡易な受信機に付加するBFOにも良い。LC発振のBFOよりも周波数はずっと安定だ。少なくとも10倍は良いはず。(水晶発振にはかなわないが)

【発振波形】
水晶発振を含めて、こうした回路の発振波形はあまり奇麗なものではない。写真はPin3のモニタ端子を観測したものだ。4Vpp以上の発振振幅がある。

正帰還量を加減すれば正弦波に近付けることもできるが、今度は発振スタートしにくくなってくる。 従ってこの種の無調整発振回路では確実な発振起動を優先し発振波形の歪みはある程度やむを得ないと考えるべきだろう。

ただし波形歪みとIC内部のC1の容量小さい言うことは考慮すべきである。 C1のリアクタンスは周波数の上昇とともに小さくなり、ロスも減ってくる。 従って455kHzあたりで使うとミキサ部にはその高調波がかなり加わると考えるべきだ。 これはスプリアスの原因になるのでDBMから出て行かぬようきちんとしたフィルタを設けねばなるまい。

バラモジの後がSSB用の 狭帯域フィルタならたいてい支障ないのでフィルタ式のSSBジェネレータなら神経質にならずとも良い。 しかしPSN式の場合はそうは行かないので十分注意したい。 TA7310Pはもっと高い周波数(数MHz以上)で使う方が有利なのである。

                    ☆

TA7310Pはバラモジにはやや使いにくいので敬遠され気味かも知れない。 姉妹品のTA7320Pの方が使い易いのは確かだ。 しかし実際に確認しておけばどの程度までカバーできるか判断も可能になる。 これからの活用も有利になるわけだ。 意外に広範囲まで使えそうな感触が得られたのは収穫である。 昨今は使い易い DBM-ICも限られてきた。手持ちのTA7310Pも自作に動員したいものだ。

                   ☆ ☆

TA7310Pを使って感じたのはやはり数世代も前のDBMと言うことだ。 電源電圧は標準の7V以上は確実に掛けたい。できたら規格いっぱいの10Vが良い。低い電源電圧には向かないのだ。 また消費電流が大きいのも欠点と言える。この部分だけで30mAも消費するのはあまり頂けない。言わば電池の機械には向いていないICだ。
持っているなら死蔵ではなく活用すべきだが、あえて探して(買って)使うほどの価値は無さそうだ。 これからDBM-ICを買うのならNXPセミコンダクタ(旧フィリップス社)のSA612Aあたりをお薦めしたいと思う。もちろん現行品だ。 de JA9TTT/1

(おわり)

2014年10月5日日曜日

【Antenna】 Preparation of typhoon

【アンテナの台風準備】
北関東を強力な台風が直撃することは滅多にないが、今回の台風はだいぶ強力そうだ。しかも6日の朝には関東平野をかすめそうな進路予測なのでアンテナの荒天準備を行なった。

本当は地面まで全部降ろしてしまうのが一番なのだが、屋根と干渉するのでこの程度まで降ろすだけでやむを得ない。アンテナエレベータをこの位置でパークできるようストッパーを取り付けてある。

以前の台風のときの様子では20m近くと10m以下ではずいぶん風当たりは違うようだった。 それなりの効果は期待できるので、『備えあれば憂いなし』と言うことで降ろしておいた。

台風はこれから九州に近づく位置にあるが、今朝は前線が刺激されて雨が降り始めており、合羽を着ての作業になった。早めに始めたのでまだ小雨なので助かった。昼現在、かなりの雨脚になっている。あとは無事に過ぎてくれるのを祈るのみ。 de JA9TTT/1

                  ☆ ☆ ☆

【復帰】
 2014年10月6日、台風18号は九州の南で北東に進路を変えて本州沿いに進むようになった。午前8時過ぎに浜松市に上陸した。955hPaで風速も35m/s以上と強力である。

 その後は65km/hにスピードアップし足早に神奈川〜茨城を通り再び太平洋に抜けた。雨はかなり降ったが、北関東は進行左側に入ったので思ったよりも風は強くならなかった。 昼過ぎには晴れ間が覗くようになり、徐々に吹き返しの風も弱まった。

 夕方になりアンテナも復帰することができた。 再架設中にワイヤーアンテナの接続部分が緩んでしまった。ハンダ付けで補強する必要が生じたが、ごく短時間の地上作業だけで済んだ。 de JA9TTT/1(追記:2014.10.06)

(おわり)

2014年10月1日水曜日

【部品】p-ch MOS-FET

【p-chのMOS-FETを使う】
最近のパワーデバイスはMOS型が圧倒的になってきて、バイポーラのパワートランジスタは廃品種ばかりになった。 スイッチング用にはMOSの方が向くので何ら支障ないが、増幅素子としては困るケースも見られる。 特に、Audio系の石(BJT)はその傾向が強く、かつて銘石と言われたようなパワトラにはプレミアムが付くご時世だ。あまり型番に囚われずに現行品の採用で行く方が好ましいのだが。

無線の用途でも使える品種は限られてきたが、幸いにしてRF用のPower-MOSも登場しているので支障はなくなっている。 しかし昔の回路図のままを置き換える訳にも行かないのは悩ましい所だ。 無条件にMOS化で対処できる訳でもないし・・・。
バイポーラ・トランジスタにしろMOS-FETにしろ、HF帯(〜50MHz)なら特にRF用と書いてなくても使える物は多い。本来の目的を超えて活用できるデバイスがたくさん存在している。

表題から外れてしまったが、p-ch MOS-FETの話を進めよう。  型番で言うと2SJxxxと言うタイプのFETのことだ。 バイポーラ・トランジスタで言うところの2SAや2SBと言ったPNP相当のMOS-FETだ。 だから何だと言われそうだが、要するにp-chなんて無線家には馴染みもないし、PNPトランジスタと同様であまり好まれないのが普通だ。 ただ、そう言う石でも使えるものはある訳で、他のHAMが使っていないようなデバイスでオンエアしたいなら悪くない選択かも知れない。

p-ch MOSはハイサイド・スイッチとしての用途があるため思っていたよりも多品種が登場している。ただし増幅を目的にしたモノは殆ど見かけない。 多くは数A〜数10A以上と言った大電流スイッチ用だが比較的小さな1〜3Aのものもある。 そうした小電流のスイッチ用にはRFのパワーアンプに適した特性を持つものがあって、試してみる価値がある。 もちろん普通はn-chのFET、即ち2SKxxxを好む人が多いので、以下は物好きな実験であろう。

写真は2SJ178(NEC)で、すぐに使う当てもなく纏め買いしたものだ。 もちろんハイサイド・スイッチに使おうと考えたはずだ。 図のようにハイサイド・スイッチと言うのは例えば電源の+側のライン(要するにGND側ではない方)をON/OFFするような形式のスイッチを言う。例えばトランシーバの受信系と送信系のB+ラインを切り替える等の用途に使うものだ。なおPNP-Trでも可能だがp-ch FETを使うと電圧降下が少なくて済む利点がある。
概略の規格は:Vds=-30V、Vgs=±20V、Id=-1A、Pch=750mW、gm=400m℧、Ciss=210pF、Coss=130pF、そしてCrss=3pFである。 小さいけれど結構パワフルだ。それに帰還容量:Crssが小さいからRFに向きそうに見える。(残念なことに2SJ178はディスコンの模様)

テストしてみる
なるべく簡単な回路でQRP送信機のファイナル・アンプに使えるかテストしてみよう。 Cissが200pFほどあるので、入力は容量性である。 本式に使うなら整合して使うと良いが、実験なので50Ωで直接ドライブする。

負荷側(出力側)の方はRFCのみで整合回路は設けない。 電源電圧:Vcc=12Vなので出力電力:Po=1W程度と考えて負荷抵抗:RL=約50Ωでマッチングする。

  なんら放熱をしていないので規格のId(max)=1Aではあっても、そんなに流したら過熱で壊れる。せいぜい200mA位が良い所だ。入力2Wと考えても170mA程度となる。まずは7MHzでやってみることにする。

Biasを与えてAB級で使う
バイポーラ・トランジスタと違い、エンハンスメント・モードのFETはゲートに順方向のDCバイアスを掛けないとドライブが掛かりにくい。 約-2V程度のDCバイアスを掛けて使うことになる。B級もしくはAB級で動作させる訳だ。 十分なドライブが確保できるならゼロバイアスのC級で使い、かなりオーバードライブしてやるとドレイン効率はアップする。

FET個々にばらつくから、B級もしくはAB級になるバイアスは何ボルトと言う表現は適切でない。 正しくは、Idを測定しながらVgsを調整することになる。 具体的には下の回路図で言う所の、VR1を調整して無信号時にId=-10mAになるよう合わせる。

「バイアス電圧を調整する」と書くと、で は何Vなのか具体的に教えてくれと言う質問がくるだろうが、それにはお答えができないのだ。 質問者が使ったFETの特性が全く同じでないかぎり、所定のドレイン電流が流れるバイアス電圧は個々に違う。 だから電圧を聞き出してそれに合わせても駄目なのである。

最初はVR1をVgs=0の所にセットしておく。ドレイン電流:Idを観測しながらそろそろ回して行き、Id=-10mA内外のところに合わせれば良い。(まあ、-5〜-15mAくらいの適当で良い) その時のVgsは-2ボルト前後でしょう・・と言う訳だ。 これはp-chのFETに限らず、n-chでも同じことなのでMOS-FET(エンハンスメント型に限るが)をB級なりAB級で使ううえでの常識のようなもの。 

【テスト回路】
何しろ単純なので書くまでもないような回路だ。 p-chのFETなのでプラス接地の方がスッキリするが 、他の回路と組み合わせ易いようにマイナス接地で書いておいた。 ドレイン側はRFCだけで、Cで切って50Ωを直接負荷する。 RFCは100μHくらいでも良いが、いずれにしてもDC抵抗が数Ω以下のものを使うこと。普通のテスタで測ればすぐにわかる。 出力電力:Po=(Vcc)^2/(2*RL)から約1W+である。VccはRFCのDC抵抗やFETのON抵抗があって降下するので実質的に10V程度と考える訳だ。 なお、実際にアンテナを繋ぐにはLPFが必須だ。

出力部分はバイファイラ(Fig.1)あるいはトリファイラ巻き(Fig.2)のトランスを置くことで、FETから見た負荷インピーダンスを下げてパワーアップすることができる。

   2SJ178は小さなパッケージのFETだ。 効率の良い動作をさせても、まったく放熱しないと厳しいのでパワーを欲張らない方が良い。 負荷インピーダンスを下げると同じ比率でゲインも下がるのでドライブしにくくなる。 十分なゲインが期待できる低い周波数を除き、図のままのPo=1W程度で考えるのが良さそうだ。 なお、入力側は50Ω直結ではドライブしにくいからFig.3のような昇圧トランスを置くと楽になる。 ドライブパワーはあまり要らないが、それなりのドライブ電圧は必要だ。

【7MHzで】
7MHzで負荷の両端電圧を読んでみた。 AB級のシングル動作なので整流したような波形になる。 当然高調波が含まれているので、2次高調波以上の除去に効果的なLPF(ローパスフィルタ)を設けねばならない。

電源電圧が12Vなので。写真の状態が概ね飽和状態である。 正しくは高調波を除去してから測定しなくてはならないが、おおよそ1W程度のパワーが出ている。

【3.5MHzで】
同じく、3.5MHzにて負荷の端子電圧を読んでいる。 これでだいたい飽和状態である。 7MHzと同じく約1Wのパワーだ。 LPFの付加は必須で、その通過後のパワーは0.8W程度だろうからQRPとしてはまずまずだと思う。 ドライブにゆとりがあるなら、2SJ178を4パラにし、インピーダンス比=1:4(バイファイラ巻き:Fig.1参照)のトランスを使うと2〜3Wは期待できるのでそのようなパワーアップ方法もある。上記回路図を参考に。 3.5MHzではゲインがアップして7MHzの約半分の電圧でドライブできる。 ゲインはだいたい-6dB/octの傾斜になる。


p-chではなく、オーソドックスにn-ch MOS FETで行くなら2N7000あたりが良いだろう。 もちろん電源極性は逆になるが類似の結果が得られる。 p-ch MOSはn-chより周波数特性は落ちるように思う。それでも小型の石ならHF帯の低い方で十分行けそうだった。ちょっと変わったデバイスでオンエアしたい向きにはお勧めできそう。(笑)

                    ☆

10月になろうと言うのに適当なBlogテーマがない。やむなく片付けていて目に入ったデバイスをネタにした。 実験するまでもない。特性表から見たら使えて当たり前じゃないか・・・と言う声も聞こえる。 しかしそう言う人に限って実際に試してはいないものだ。 特性表には現れない固有のクセがあったりするので実地検証は必須と言える。 試すどころか、昨今はコテも暖めず・・・ブレッドボードでさえも面倒で・・・BlogやWebネタの疑似体験で満足してしまう人の多いのは残念だ。それでご意見を頂いても・・・。

たぶん多くのBlogやWebに書いてある話は実験のすべてではない。むしろ都合の良い部分だけだったりするものだ。 情報の出し惜しみなのではなくて、感触のような細部まで伝えるのはなかなか難しいからだろう。 だから画面を眺めて納得したつもりでも、本当はてんでわかっちゃいない可能性だってある。自分の実験のごとく吹聴したら赤恥をかくかも知れないから注意せねば。(笑)

以上、暇つぶしになったようなら今月のBlogは目的達成だ。de JA9TTT/1

(おわり)

2014年9月1日月曜日

【HAM】 HAM Fair 2014

【ハム・フェア 2014より】

【今年のハム・フェア】
8月の末はハム・フェアである。 今年も有明ビックサイトで開催された。 22日が準備で、23・24両日が一般公開日である。 土曜日23日に出掛けた。 例年、この時期は残暑が厳しいのが通例であった。 Getした重たいジャンク品を汗だくで運んだことなど思い出される。 ことしは雨模様もあって幾分過ごしやすかった。それでも蒸し暑くて、帰宅したら真っ先にシャワーを浴びずにはいられない。にぎやかな懇親会で時を過ごし、24時前に帰宅した。

ハム・フェアと言えば無線機メーカーの新製品発表が恒例だが、HF帯の旗艦機は既に出そろった状況なので、今年はこれぞと言う目玉は無いようだった。 アルインコのデジタル機は大幅なデジタル化とかで興味があったが、どうもチープな路線のようでパッとしなかったのは残念だ。あとは某社50周年記念の金ピカモデルとか、これもちょっと趣味が合わない感じだった。中身もいじってあるようだが金ぴかにする必要はあるまい。渋い燻し銀にするとか、よほど高級に思うのだが金色は大阪人の趣味だろうか。hi hi

もう一つ、「ハム・フェアと言えばジャンク市だろう!」と言うお方も多いと思うがネットオークション全盛の昨今にあってはどうもパッとしない。 リグ系、測定器系、部品系、アンテナ系のいずれも大したものが見つけられない。 記念になりそうな軽量小型でお値打ちの品などないだろうかと思ってぐるぐる回って探したが見つけられなかった。 遊ぶための素材もだいたいは揃ってるのだから食指が動かないのも無理からぬとも思う。私が欲しくないだけで、一般的に見てそれなりに良さそうなものは結構出ていたように感じた。

結局、私は買うものに困ってZilogのロゴも鮮やかな往年の銘CPU:Z-80の10個入り1レールをお土産にした。1992年第46週製造の終末期のZ-80ではないだろうか。(写真) まあ、使うことは99.9%ないとは思うが本家ZilogのZ-80はいずれ希少品になるかも?? i8008じゃあるまいお宝に化けはしないだろうねえ。(笑)

流石に超ポピュラーだったCPUだけあって、今でも作って楽しんでいるお方もあってネット検索でたくさんヒットする。 面白いなあと思ったのは、AVRマイコンとZ-80のコラボで昔懐かしいCP/Mを動かすプロジェクト。(→リンク)流石にフロッピーディスクの時代じゃないのでソフトはSDカードに移して読ませている。MBASICほか各種の高級言語が豊富に存在していたので何も無いほかのCPUより遥かに遊び甲斐がありそう。まだ読めるかどうかわからないが拙宅にもFortranとかCobolなんかのFDもあったはず。工夫すればまだまだ楽しめる素材のようだ。本家本元のZ-80でやったら乙かも知れない。

【24MHzの水晶発振器】
もう少し実用的なものもと言うことで、24MHzの水晶発振モジュールを購入した。 すぐに必要ともしていないが新品25個入りが500円だったので何かの時にでも・・と思って買っておいた。 たぶん使い切れずに死蔵品になりそうな予感がする。(笑)

ちなみに、DDS:AD9850のクロックに使うと消費電流を大幅に削減可能だ。クロックそのものが喰わないのとAD9850の消費もかなり減って、だいたい50mA以上少なくて済む。 もちろん、実用的な上限周波数はせいぜい8MHzになってしまう。ごく低い周波数の発生で済むなら十分使える。 125MHzクロックで消費電流過多で困ったなら使える手だ。 信号のきれいなクロック発振器だった。

                   ☆

ハム・フェアと言えば、やっぱりジャンクでしょ!・・・と言う声も聞くのでお土産をご披露してみた。 しかし、本当のお土産は皆さんとのアイボールにある。 クラブの会員さんがたくさんお見えになったので久しぶりのラグチューを楽しむとか、お元気な姿を拝見するだけでも良かった。 来場者と話し込んでいたらJH1FCZ大久保さんに声をかけて頂いた。会場に出てくるのもだんだん大変になったと言うお話だったが、お元気そうで何よりだった。

#写真はロシア製真空管6H7C(米 6N7GT相当):新橋で開催のQRP懇親会場にて石川さんに頂いたもの。B級pp用の面白い球。TKS ! JG1SMD

冷静に考えてみれば、すでに「モノ」は整理する段階にあるのだからそうそう目ぼしいものが見つかるはずも無い。 出来心から始末に困りそうな大きくて重たいガラクタジャンクを買い込まなくて良かったというオチにもなりそうだ。 楽しい思い出なら有って困ることも無し。 de JA9TTT/1

(おわり)

2014年8月15日金曜日

【回路】Sine wave oscillator : Part 1

【低ひずみ正弦波発振:Part 1】

低ひずみをめざす
低周波発振器の話である。 去年の9月ころ、ウイーン・ブリッジ発振回路(←リンク)というBlogを書いた。 発振回路にはウイーン・ブリッジ型を使い、発振振幅の自動制御には「まめ電球」の加熱による抵抗変化特性を利用した。

うまく発振してくれて、そこそこ良い性能が得られたから振幅の安定に「まめ電球」式もなかなか良いと感じた。 まあ、教科書通りと言うことかもしれない。 ただし、ひずみ率は0.01〜0.02%程度なので昨今のオーディオアンプの性能評価には物足りなかった。 真空管式のパワーアンプの評価用信号源としてならまあまあ使えるレベルと言った感じだろうか。

やはりもう一桁くらい低ひずみの発振回路が欲しい。 ウイーン・ブリッジ回路と電球による振幅制限では限界がありそうなので、別の方法でやってみることにした。 この手の低歪低周波発振回路は色々あってそれぞれポピュラーなのだが、ここでは状態変数型:State-Variable型でやってみた。(参考:Bi-Quad型のフィルタ回路も類似であり、発振回路を構成することが可能だ) バンドパス・フィルタに正帰還を掛ける形式だ。 写真はその試作風景である。 中身の詳しくはPart-2ででもと思うので、とりあえずここまでにしておく。

0.0014%くらい
途中経過だが、ひずみ率は0.0014%くらいが得られるようだ。(上のブレッドボード) 目標性能なので、まずまずと言ったところか。 これ以上改善するには全体的な見直しが必要な感じである。

いや、その前に測定環境を改善しないとだんだん測るのが難しいレベルに来ているのも事実である。 50Hzのハムの誘導やラジオ電波の飛び込みはカットしているのだが、例えばLED電球や電球型蛍光灯などのインバータ機器によるノイズほか、電気的なノイズは身の回りにあふれている。 ガラス入りダイオードをレベル検波に使うと照明の明滅周期でノイズが乗るとか・・笑えないことも起こる。(SBDで起き易い傾向あり)

-100dBあたりのひずみ波を扱うことになる。 発振振幅は数Vpp程度だが、ひずみの成分はマイクロ・ボルトのオーダーなのだから容易に環境ノイズの影響を受ける。 このあたりも考えて評価しないと何をやっているんだか・・・の世界になってしまう。(笑)

                ☆ ☆ ☆

イントロ編ということでサワリだけになってしまった。 諸事が重なってしまい、Blogネタに窮してしまったので先般実験した途中経過の話をちょっとだけ報告しておいた。

最終的には低ひずみ発振回路の製作にあるのだが、実はその回路に使う振幅制御素子の検討から始めている。 低ひずみを狙って今度は「まめ電球」ではなく、電圧可変抵抗素子を使うことにした。 そのような素子は種々あるのだが、FETでやってみようと思い何種類か交換しながら結構たくさんのデータを採取した。

巷ではレトロな2SK30Aを使う例が多いように思う。 古い回路の引用だから仕方ないと言う理由もあろうが、回路は引用していても更に良いFETがあるのなら交換しているはずだ。 いつまでも未来のない製造中止のFETに頼るのも如何なものかと思うし・・・。 使い続けるからには、きっと何かノウハウのような理由(ワケ)があるに違いないと思いつつ専用の測定回路まで作っていろいろFET単体のデータを採ってみた。 そのあたりのこともさらっとやろうかと思うが、どうも浮気タネばかり多くてなかなか進みそうにない。(笑) de JA9TTT/1

つづく)←一応、このつづきのBlogへリンクします。

2014年8月1日金曜日

【測定】TRIO LPF LF-30 : Part 3

【TRIOのLow Pass Filter : LF-30 その3】

改造検討した回路
 トリオ(現Kenwood社)製・30MHzのローパス・フィルタを75Ωから50Ωに改造して活用しようと言う話の最終回である。この話しもそろそそ片付けることにする。(前回:Part2は→こちら

 オリジナル回路の検討と実測した部品定数でシミュレーションを行なった。 最近のリグやアンテナは基本的にインピーダンスは50Ωになっているのでマッチするように改造することにした。 オリジナルのLF-30は昔のHAM局の実情に合わせて75Ωの設計になっていた。なお、昔のHAM局が75Ω系だったのはアンテナがダイポール系が主だったからだ。

 実測評価していて75Ω用と言う根拠には疑問があることがわかった。 部品定数など総合的に考えると、このフィルタが最適な動作をするインピーダンスは44.2Ωではないかと考えられた。従って75Ωよりもむしろ50Ωの方に適していると言える。 しかし設計遮断周波数が少々高めであって、30MHz用としてはやや最適ではないように見えた。 そこで、実験の意味もあり全般に見直した上で改造することにした。

 改造指針として:(1)遮断周波数は約33MHzくらい。(2)IN/OUTのインピーダンスは50Ωとする。(3)改造はなるべく既存の部品を活かすようにする。(4)最大電力は100W程度あれば良い・・・・とする。 以上の指針で決めたのが上図の上から3番目の回路である。 結局、33pFのコンデンサ(但し耐圧は高いこと)を8個付加するだけの改造で様子を見ることになる。

改造したLF-30
 基本的にコイルはそのままにした。 銅の円盤とテフロンシートで作ってあるコンデンサもそのまま使う。

 従って既存コンデンサの各部分に33pFのセラミックコンデンサを2つずつ追加する方式となる。

 33pFの取付け方としては、極力リード線を短くすべきだ。その言う意味で、写真の方法は最適とは言い難い。 銅円盤のコンデンサのところに極力リード線をつめで最短でハンダつけする方が良い。 33pFとリード線のインダクタンスで共振が現れるからだ。

そのあたり、実際に評価してみて問題がありそうならやり直そうと思う。


特性シミュレーション・1
 改造に先立って特性シミュレーションを行なっている。 これは既出であるが、あらためて掲載した。

赤色のトレースがオリジナルの定数によるもの。実測値に基づいた部品定数になっている。 IN/OUTのインピーダンスは仕様の75Ωである。

グリーンのトレースは、部品定数はオリジナルのままだが、IN/OUTのインピーダンスを44.2Ωにしている。 子細に見てもらうとわかるが、通過域の平坦度がよくなっている。 これは反射による影響がなくなるからで、この形式のフィルタ本来の特性と言える。

青のトレースは仮にC=180pF、IN/OUT=50Ωとして設計したときの特性だ。

紫色のトレースはC=186pFの特性だ。180pFににするには標準的な値のコンデンサでは済まないので実際には実測値+33pF+33pFの約186pFでやってみることにする。 一応、33pFのコンデンサも実測しておき、偏りが生じないようにしておく。

特性シミュレーション・2
 通過帯域の上端付近の特性を拡大表示している。

 オリジナルの状態で最適なIN/OUTになっているグリーンのトレースの通過域が一番平坦な特性になっているのがわかるだろう。

 青色と紫色のトレースは思い切って遮断周波数:fcを下げたため、通過域の凹みがやや大きくなっている。 そのためパワーロスが大きく見えるHAMバンドが発生することになる。 それを嫌ってオリジナルではかなり高めの遮断周波数に作ってあったようだ。 ここでは、少々ロスが増えても良いので検討した図(3)の回路定数で行くことにした。

実測特性・1
 改造後の実測特性である。 部品定数は回路図(3)の値になっている。 見たところまずまずの特性になったようだ。

 通過域にやや凹みが見られるのはシミュレーション通りだが、あまり支障無さそうなのでこれで行こうと思う。 減衰域の切れ味はたいへん良好である。 このあたりは、オリジナルと同じ段数なので、傾斜に変化は見られない。 シールドも悪くないらしく、十分な減衰量が得られていると思う。

実測特性・2
 通過域の詳細を見るために、縦軸の1目盛りを10dB→2dBに変更して表示している。

 通過域の凹みが2dB弱あるのでいま一つかもしれないが、実際の使用ではあまり影響はないだろと考えている。 測定器用のフィルタなら不合格かもしれないが、無線機の外付け高調波抑止用フィルタであるから少々の凸凹は問題ではない。むしろなかなか良好な特性であると言える。(参考:この凸凹は損失の発生と言うよりもインピーダンス変換が行われた結果の電圧変化と捉える方が合理的なようだ)

実測特性・3
 減数域の様子を見るために縦軸の一目盛りを20dBにしている。 また周波数範囲も上限500MHzにアップした。

 33pFのリードインダクタンスとの共振と思われるピークが2箇所見られる。 但し、ピークとは言っても60dB以上減衰しており、支障はなさそうだ。 問題があれば33pFの実装方法を再検討しようと思っていたが、概ね大丈夫そうである。 そもままで行くことにした。

 以上、TRIOの古いローパス・フィルタ:LF-30の解析と50Ω化改造の経緯である。 外装が汚くなっているので、塗り直しを行なってやり新しいラベルでも貼ってやれば完璧だろう。 オリジナルの仕様を見ると75Ω用なので何となく気持ち悪かったのであるが、改造して特性の確認も済んだので、これで気持ちよく使えるようになった。

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フィルタの特性評価と実際の使われ方
 ここでは改造したフィルタを題材にして、LPFが実際に使われる際の特性について考察してみる。

 このLF-30の仕様書はPart 1に掲載してある。他社のLPFも恐らく同じだと思うが、仕様書に掲載されている周波数特性図は言わば『まやかし』なのである。 ウソではないのだが、測定方法と現実の使われ方の間には大きな違いがあるからだ。

 カタログの周波数特性は、この図の(A)のような方法で採取している。 上の写真も同様で、信号源インピ−ダンスが50Ωの発振器と、入力インピーダンスが50Ωのレベル測定系の途中にフィルタを挿入して実測している訳だ。 もちろん、測定方法やその測定結果に誤りがある訳ではない。 問題はLPFが実際に使われる状態とは異なる測定方法なのが原因である。

 上図(B)のように、アンテナ系が、如何なる周波数で見ても50Ωである・・・と言うようなことは殆どあり得ない。 もし本当にそうなら、どこで送信しようとVSWR=1である。 良くできたダミーロードならいざ知らず、そんなアンテナなどあるまい。 アンテナの設計周波数で、尚かつ良く調整されていればそこは50Ωかもしれないが、それ以外の周波数では50Ωなどと言うことはあり得ないのである。

 このように考えると、いくら50Ωの測定系で良い特性が得られたとしても、それを外れるインピーダンスのところでは、思っている周波数特性とはずいぶん違うのではないかと言う疑問が生じて当然だ。 フィルタが効いたり効かなかったりするのはそれが原因ではないだろうかと・・・。

高い負荷インピーダンスのケース
 アンテナ系を負荷にした実測でやるのもある程度可能だが、バンド外の電波輻射は旨くないし、個別ケースの話しにしかならないので、ここはシミュレーションで行くことにする。負荷を変えて傾向から判断するのが目的だ。

 ここでは30MHz以下の通過帯域の特性は無視する。高調波の減衰を見るのが目的だからだ。 まずはアンテナ系のインピーダンスが50Ωよりも高い時の特性である。 100Ω、1kΩ、10kΩそして100kΩとした場合の減衰特性である。 アンテナ系が数kΩになることは十分考えられるが100kΩ以上になるケースは考えにくいのでインピーダンスが高い方へ外れた場合の特性がこれで予測できた訳だ。

 もちろん、良くおわかりのお方ならアンテナ系が「純抵抗」になるなど「有りえん!」と怒るに違いない。 もちろんそう思って容量性(C性)や誘導性(L性)を付加したシミュレーションもやってみた。 たしかに、フィルタ内部の最終部分にあるコイルやコンデンサとの共振が見られるようになって、この図のような奇麗な遮断特性ではなくなる。 しかし、わずかなピークが通過帯域のやや上側に現れる程度であって、その部分を除けば図の特性と大差は無いのである。 従ってこの図で代表させてもらった。

 要するに、この形式のLPFは負荷側のインピーダンスが高い方へ大きく外れても十分良く効く特性を持っていると言うことである。 50Ω系で測定した結果その物と完全に同じではないが高調波抑止に十分な効果があることは実証できたと思う。

低い負荷インピーダンスのケース
 上記と同様に、今度はアンテナ系のインピーダンスが低くなった場合のシミュレーションを行なってみた。

 インピーダンスは25Ω、10Ω、1Ω、0.1Ωである。 この場合も通過域の特性は無視する。 0.1Ωと言うのは負荷がほぼショートのような状態になった想定である。 高周波系であるから、完全なショート状態と言うのはまず有り得ず、むしろ完全なショート状態の実現には技術を要する。 従って、これでおおよむね低い方へミスマッチした状態におけるフィルタ特性の評価になっているだろう。

 もちろん、C性やL性の負荷も想定したシミュレーションも行なったが、結果はグラフで示した純抵抗負荷の場合と類似であって、低い方はこのシミュレーションで十分推定は可能であった。

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 従来、こうしたHAM局のアンテナ系に挿入して使うローパス・フィルタの特性と実際の高調波除去効果には疑問を持ってきた。 アンテナ系があらゆる周波数で50Ω(75Ω)であるなど考えられないから、下手をすれば入れない方がマシのフィルタにさえなっているのではないかと疑いを持ってきた。 しかし、それは杞憂であって効果的に高調波の抑止に役立つていることがわかったのである。

 もちろん、運が悪いこともないとは言えず、高調波がジャスト受信されるインターフェアのケースにあってはハイパワーだとそこでは効果も限定的だろう。-100dB以上の減衰量が有っても駄目かもしれない。 或は基本波により対象機器の内部で自ら高調波を作り出しているようなケースにはまったくの無力である。 何が原因でインターフェアが起こっているのかを見極めないと効果的でない対策に走る可能性も未だ大なのである。

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出力インピーダンスが低く負荷側が高いケース
 以下の考察は、上記以上に様々な議論を呼びそうなケースである。 貴方のお考えをどうこうしようと言うつもりは毛頭なないので、予めそのおつもりでご覧願いたい。

 上記のように、アンテナ系のインピーダンスがフィルタの減衰域で必ずしも(否、必然的に!)50Ωではないとしても十分に効果的であることがわかった。 ところが、それだけではない。

 実のところ無線機の出力インピーダンスは50Ωではないのである。 スペアナやネットアナでは測定系の信号源インピーダンスはすべて50Ωになっている。これは仕様書にも書いてあることだからウソではない。その50Ωの精度まで規定しているのが普通だ。

 では、実際のHAM局ではどうか? まさかIC-XXXやTS-YYY、さらにFT-ZZZの出力インピーダンスは50Ωなどではあるまい。 いや、「50Ωだって書いてあるヨ!」と仰るかもしれない。 たしかに、「Output Impedance : 50〜75Ω」なんて書いてある例も見る。 しかし、それはそのRigが想定している負荷インピーダンス(アンテアナ)が50Ω系なのであって、トランシーバ(送信機)の内部インピーダンス;Rgは50Ωではないはずだ。 もしも本当にそのRigの内部インピーダンスが50Ωだとしたら送信電力をどこかでロスしていることになる。まあ、そんなバカなことはあるまい。
 たぶん、現実には数Ω以下の内部インピーダンスなのである。 特にNFBが掛かった半導体式のパワーアンプなら一段と内部インピーダンスは低い理屈だ。 定電圧源に近い特性になっている。 (注:NFBの掛かっていないビーム管ファイナルの送信機の内部インピーダンスは逆に50Ωよりも高い.誇張的に言えば定電流源に近い特性だ)

 そのような想定で、送信機側の内部インピーダンス;Rgを1Ωとし、また負荷側のインピーダンスが高い方へ外れるケースでシミュレーションしてみた。 このようなケースでもLPFは良く効いてくれると言う結論で良いだろう。(上図)

出力インピーダンスが低く負荷側も低いケース
 同様に、負荷が低い方へ外れたケースもシミュレーションしてみた。

 上の方にも書いたが、純抵抗負荷ではなくC性やL性の負荷ではどうかと言う検討も行なったが、代表してこのグラフを掲載しておく。 要するに、そうしたケースでも良く効く特性であることがわかっている。

 ごく単純なπ型やT型のローパス・フィルタも十分な段数を重ねた構成を採れば高調波の抑止効果は充分得られることがわかった。 これは、IN/OUTが50Ωと言った『理想的な』測定系の話しだけではなく、実際のアンテナ系に挿入してもその効果は十分期待できるわけだ。長年の疑問も解消したのでこれで安心して眠れる。(笑)

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 地デジ化でTV全般がUHF帯に移行してくれたのは非常に有難いことであった。それだけでインターフェアは40dBくらい効果的なはずで、しかもEMC(電磁的な不干渉性)対策がまったく不十分だった古い機器の駆逐にもたいへんな効果があった。

 しかし、高感度な機器も多くなった結果、わずかな高調波でも支障の出るケースもあり、LPFの出番がなくなった訳ではない。 旧型のLPFでも特性を良く吟味し実用になることを確認しておけば有効活用のチャンスもあるだろう。

 アンテナ系の使用周波数外のインピーダンス変化についての認識はあまりされていないように思う。 また理想系で測定した周波数特性で云々しているケースも良く目にするのでずっと気になっていた。 HAMの用途にあっては測定数値の精度を云々するより、十分効果的であるか否かを見ておく方が意味があるだろう。 そのような視点で見直してみたのがこのBlogの締くくりである。de JA9TTT/1

(おわり)