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2014年10月1日水曜日

【部品】p-ch MOS-FET

【p-chのMOS-FETを使う】
最近のパワーデバイスはMOS型が圧倒的になってきて、バイポーラのパワートランジスタは廃品種ばかりになった。 スイッチング用にはMOSの方が向くので何ら支障ないが、増幅素子としては困るケースも見られる。 特に、Audio系の石(BJT)はその傾向が強く、かつて銘石と言われたようなパワトラにはプレミアムが付くご時世だ。あまり型番に囚われずに現行品の採用で行く方が好ましいのだが。

無線の用途でも使える品種は限られてきたが、幸いにしてRF用のPower-MOSも登場しているので支障はなくなっている。 しかし昔の回路図のままを置き換える訳にも行かないのは悩ましい所だ。 無条件にMOS化で対処できる訳でもないし・・・。
バイポーラ・トランジスタにしろMOS-FETにしろ、HF帯(〜50MHz)なら特にRF用と書いてなくても使える物は多い。本来の目的を超えて活用できるデバイスがたくさん存在している。

表題から外れてしまったが、p-ch MOS-FETの話を進めよう。  型番で言うと2SJxxxと言うタイプのFETのことだ。 バイポーラ・トランジスタで言うところの2SAや2SBと言ったPNP相当のMOS-FETだ。 だから何だと言われそうだが、要するにp-chなんて無線家には馴染みもないし、PNPトランジスタと同様であまり好まれないのが普通だ。 ただ、そう言う石でも使えるものはある訳で、他のHAMが使っていないようなデバイスでオンエアしたいなら悪くない選択かも知れない。

p-ch MOSはハイサイド・スイッチとしての用途があるため思っていたよりも多品種が登場している。ただし増幅を目的にしたモノは殆ど見かけない。 多くは数A〜数10A以上と言った大電流スイッチ用だが比較的小さな1〜3Aのものもある。 そうした小電流のスイッチ用にはRFのパワーアンプに適した特性を持つものがあって、試してみる価値がある。 もちろん普通はn-chのFET、即ち2SKxxxを好む人が多いので、以下は物好きな実験であろう。

写真は2SJ178(NEC)で、すぐに使う当てもなく纏め買いしたものだ。 もちろんハイサイド・スイッチに使おうと考えたはずだ。 図のようにハイサイド・スイッチと言うのは例えば電源の+側のライン(要するにGND側ではない方)をON/OFFするような形式のスイッチを言う。例えばトランシーバの受信系と送信系のB+ラインを切り替える等の用途に使うものだ。なおPNP-Trでも可能だがp-ch FETを使うと電圧降下が少なくて済む利点がある。
概略の規格は:Vds=-30V、Vgs=±20V、Id=-1A、Pch=750mW、gm=400m℧、Ciss=210pF、Coss=130pF、そしてCrss=3pFである。 小さいけれど結構パワフルだ。それに帰還容量:Crssが小さいからRFに向きそうに見える。(残念なことに2SJ178はディスコンの模様)

テストしてみる
なるべく簡単な回路でQRP送信機のファイナル・アンプに使えるかテストしてみよう。 Cissが200pFほどあるので、入力は容量性である。 本式に使うなら整合して使うと良いが、実験なので50Ωで直接ドライブする。

負荷側(出力側)の方はRFCのみで整合回路は設けない。 電源電圧:Vcc=12Vなので出力電力:Po=1W程度と考えて負荷抵抗:RL=約50Ωでマッチングする。

  なんら放熱をしていないので規格のId(max)=1Aではあっても、そんなに流したら過熱で壊れる。せいぜい200mA位が良い所だ。入力2Wと考えても170mA程度となる。まずは7MHzでやってみることにする。

Biasを与えてAB級で使う
バイポーラ・トランジスタと違い、エンハンスメント・モードのFETはゲートに順方向のDCバイアスを掛けないとドライブが掛かりにくい。 約-2V程度のDCバイアスを掛けて使うことになる。B級もしくはAB級で動作させる訳だ。 十分なドライブが確保できるならゼロバイアスのC級で使い、かなりオーバードライブしてやるとドレイン効率はアップする。

FET個々にばらつくから、B級もしくはAB級になるバイアスは何ボルトと言う表現は適切でない。 正しくは、Idを測定しながらVgsを調整することになる。 具体的には下の回路図で言う所の、VR1を調整して無信号時にId=-10mAになるよう合わせる。

「バイアス電圧を調整する」と書くと、で は何Vなのか具体的に教えてくれと言う質問がくるだろうが、それにはお答えができないのだ。 質問者が使ったFETの特性が全く同じでないかぎり、所定のドレイン電流が流れるバイアス電圧は個々に違う。 だから電圧を聞き出してそれに合わせても駄目なのである。

最初はVR1をVgs=0の所にセットしておく。ドレイン電流:Idを観測しながらそろそろ回して行き、Id=-10mA内外のところに合わせれば良い。(まあ、-5〜-15mAくらいの適当で良い) その時のVgsは-2ボルト前後でしょう・・と言う訳だ。 これはp-chのFETに限らず、n-chでも同じことなのでMOS-FET(エンハンスメント型に限るが)をB級なりAB級で使ううえでの常識のようなもの。 

【テスト回路】
何しろ単純なので書くまでもないような回路だ。 p-chのFETなのでプラス接地の方がスッキリするが 、他の回路と組み合わせ易いようにマイナス接地で書いておいた。 ドレイン側はRFCだけで、Cで切って50Ωを直接負荷する。 RFCは100μHくらいでも良いが、いずれにしてもDC抵抗が数Ω以下のものを使うこと。普通のテスタで測ればすぐにわかる。 出力電力:Po=(Vcc)^2/(2*RL)から約1W+である。VccはRFCのDC抵抗やFETのON抵抗があって降下するので実質的に10V程度と考える訳だ。 なお、実際にアンテナを繋ぐにはLPFが必須だ。

出力部分はバイファイラ(Fig.1)あるいはトリファイラ巻き(Fig.2)のトランスを置くことで、FETから見た負荷インピーダンスを下げてパワーアップすることができる。

   2SJ178は小さなパッケージのFETだ。 効率の良い動作をさせても、まったく放熱しないと厳しいのでパワーを欲張らない方が良い。 負荷インピーダンスを下げると同じ比率でゲインも下がるのでドライブしにくくなる。 十分なゲインが期待できる低い周波数を除き、図のままのPo=1W程度で考えるのが良さそうだ。 なお、入力側は50Ω直結ではドライブしにくいからFig.3のような昇圧トランスを置くと楽になる。 ドライブパワーはあまり要らないが、それなりのドライブ電圧は必要だ。

【7MHzで】
7MHzで負荷の両端電圧を読んでみた。 AB級のシングル動作なので整流したような波形になる。 当然高調波が含まれているので、2次高調波以上の除去に効果的なLPF(ローパスフィルタ)を設けねばならない。

電源電圧が12Vなので。写真の状態が概ね飽和状態である。 正しくは高調波を除去してから測定しなくてはならないが、おおよそ1W程度のパワーが出ている。

【3.5MHzで】
同じく、3.5MHzにて負荷の端子電圧を読んでいる。 これでだいたい飽和状態である。 7MHzと同じく約1Wのパワーだ。 LPFの付加は必須で、その通過後のパワーは0.8W程度だろうからQRPとしてはまずまずだと思う。 ドライブにゆとりがあるなら、2SJ178を4パラにし、インピーダンス比=1:4(バイファイラ巻き:Fig.1参照)のトランスを使うと2〜3Wは期待できるのでそのようなパワーアップ方法もある。上記回路図を参考に。 3.5MHzではゲインがアップして7MHzの約半分の電圧でドライブできる。 ゲインはだいたい-6dB/octの傾斜になる。


p-chではなく、オーソドックスにn-ch MOS FETで行くなら2N7000あたりが良いだろう。 もちろん電源極性は逆になるが類似の結果が得られる。 p-ch MOSはn-chより周波数特性は落ちるように思う。それでも小型の石ならHF帯の低い方で十分行けそうだった。ちょっと変わったデバイスでオンエアしたい向きにはお勧めできそう。(笑)

                    ☆

10月になろうと言うのに適当なBlogテーマがない。やむなく片付けていて目に入ったデバイスをネタにした。 実験するまでもない。特性表から見たら使えて当たり前じゃないか・・・と言う声も聞こえる。 しかしそう言う人に限って実際に試してはいないものだ。 特性表には現れない固有のクセがあったりするので実地検証は必須と言える。 試すどころか、昨今はコテも暖めず・・・ブレッドボードでさえも面倒で・・・BlogやWebネタの疑似体験で満足してしまう人の多いのは残念だ。それでご意見を頂いても・・・。

たぶん多くのBlogやWebに書いてある話は実験のすべてではない。むしろ都合の良い部分だけだったりするものだ。 情報の出し惜しみなのではなくて、感触のような細部まで伝えるのはなかなか難しいからだろう。 だから画面を眺めて納得したつもりでも、本当はてんでわかっちゃいない可能性だってある。自分の実験のごとく吹聴したら赤恥をかくかも知れないから注意せねば。(笑)

以上、暇つぶしになったようなら今月のBlogは目的達成だ。de JA9TTT/1

(おわり)

4 件のコメント:

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さんこんにちは。
もう10月になってしまいました。

PNPのTrやp-chのFETはコンプリであまり使わないRF回路ではなじみが薄いですね。

自分で購入したp-chのMOS FETはたぶん一つもパーツボックスに入っていないと思います。Hi

普通に作るとプラス接地になってしまうところも取っつきにくい所でしょうか。

2N7000やBS170などを小型FETやTrをパラにしてファイナルにしている海外製QRP送信機のキットはおおいですね。

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/3 高橋さん、こんばんは。 すっかり涼しくなって秋らしくなりましたねえ。 今年ももう10月ですね。 そのうち年賀状が発売され、除夜の鐘が・・・もうすぐになってしまいました。

早速のコメント有り難うございます。
> RF回路ではなじみが薄いですね。
ほとんどの用途がn-chで間に合ってしまいますので大半の回路でp-ch使う必然性がないのでしょうね。hi

> プラス接地になってしまうところも・・・
ゲルトラが全盛のころはプラス接地の回路も普通だったのですが今じゃマイナス接地以外はまず見かけないです。

> 小型FETやTrをパラにしてファイナルに・・・
大型のPower-MOSは入力容量が大きいとか、RFでは案外使いにくいからでしょうね。 QRPなパワーでしたら小さな石のパラで行けますから皆さん使うのでしょう。試してみると安くて良い石が結構見つかります。

次回はもう少し使えそうなテーマで行きたいものです。何が良いかなぁ・・。今から悩んでます。(笑)

本田/JK1LSE さんのコメント...

おはようございます。
もう10月で今年も何もしないうちに終わってしまいそうです。
P-chのハイサドスイッチは私もマイコン制御のDSPラジオで使いました。ソフトスイッチを実現しようとするとポートが2つ必要なんですよね。何とかポートの入出力方向を切り替えて1つでできないかと考えたのですが、うまくいきませんでした。

RFアンプへの応用は興味のあるところです。SW用の石でも結構うまくいくのですね。海外のネットで2N7000をSW動作で使っているのを見たことがあります。A級やAB級以外でSW動作のアンプもおもしろそうですね。

私は、興味の方向が色々と発散して、まとまったことができませんhi

ps
毎月1と15日がblogの更新日かと、読者?は勝ってに思い込んでおりました。更新がなかったので、??っと思ってました(大きなお世話でスミマセン)

TTT/hiro さんのコメント...

JK1LSE 本田さん、お早うございます。 光陰矢の如し、時の経つのは本当に早いですね。 歳を取ってからは加速が付いたように速く過ぎて行きます。(笑)

コメント有り難うございます。
> マイコン制御のDSPラジオで使いました。
マイコンのポートから電源ラインとか信号ラインを操作するにはハイサイド・スイッチが必要なことも多いですね。 信号系ならアナログ・マルチプレクサと言う手もありますが、電流が流れる系にはp-chのSWが良いです。

> SW用の石でも結構うまくいくのですね。
外国のPower-MOS、特にIR社のHEX-MOSには良い物が多いようで、結構ハイパワーのRFアンプが作れますね。 日本の各社のSW用MOSはどうも周波数特性の点で今ひとつです。 Low-Bandには使えますが・・。

> 毎月1と15日がblogの更新日かと・・・
月2回が努力目標です。hi ここは誰でも見れる関係から差し障りのないネタが切れると欠号になることも。ホントはそう言う話の方が面白いんですけどネ。hi hi まあ年間12回更新は死守したい最低線です。

不定期刊行物ですが、これからも宜しくお願いします。