【ヒューレット・パッカード:HP-401B】
昨日のBlogではDiode/二極管を話題にしたが、役立たない球(たま=真空管の意)と言う印象を与えてしまったかもしれない。(笑)
昨日のBlogではDiode/二極管を話題にしたが、役立たない球(たま=真空管の意)と言う印象を与えてしまったかもしれない。(笑)
実際、一般的な回路では検波ならゲルマニウムやショットキー・ダイオード、電源の整流ならシリコン・ダイオードで事足りてしまう。 従って、二極管が登場するシーンは限定されてしまうことになる。
測定器は、そのなかでも二極管が活躍できる数少ない場所の一つだろう。 図は、hp 410B型真空管電圧計である。 RF/AC電圧は左の方にある検波プローブを使って測定する。 ここに使ってあるのはEA53と言う、欧州系の専用二極管である。 検波プローブ専用に作られた球なので、構造も特殊であり破損すれば入手に窮することは疑いない。 しかし、非常に小さな入力容量で、しかも高い周波数まで使えるようにするにはこの種の球を使う以外に無かったようだ。
後継のhp 410Cは球石混合のハイブリッド回路になっているが、検波プローブの部分は同じである。 hp 410シリーズは、この種のVTVMとしては最高級の部類に入る。回路を見ればわかるが、定電圧放電管やバラスト・ランプを使い電源電圧変動の影響を受けないようになっている。それだけ大型で高価なのはうなずける。 まあ、今どき有り難がるほどの測定器ではないが用途・目的によっては役立つ可能性もあると思う。
【松下通信工業:PV-91A】
国産でもVTVM(Vacuum Tube Volt Meter:真空管電圧計:通称・バルボル=Valve Volt Meterの意)は作られたがこれは松下通信工業製のPV-91Aである。 回路は双三極管(12AU7)で差動増幅を構成したオーソドックスなもの。 AC電圧は6AL5を使って倍電圧検波している。 なお、電源の整流にも6AL5を使っている。この程度の小電流なら電源整流にも使えると言う訳だ。
国産でもVTVM(Vacuum Tube Volt Meter:真空管電圧計:通称・バルボル=Valve Volt Meterの意)は作られたがこれは松下通信工業製のPV-91Aである。 回路は双三極管(12AU7)で差動増幅を構成したオーソドックスなもの。 AC電圧は6AL5を使って倍電圧検波している。 なお、電源の整流にも6AL5を使っている。この程度の小電流なら電源整流にも使えると言う訳だ。
面白いと思ったのは中央部下にある同じ6AL5を使った初速電流打消し回路の部分だ。 カソードを加熱すると熱電子が飛び出すが、プレート電圧はゼロであっても飛び出した電子は勢いが付いておりプレートに到達して電流が流れる。 即ち、信号ゼロなのに僅かだが検波電流が流れることになる。 これを同じ球で打ち消す仕組みのようである。 先人の工夫の跡であろう。(笑)
6AL5の特性は、使っているうちに変化して行くので、同じ球を打消しに使えば経年変化にも効果的だと考えたのだろう。 もし6AL5を交換するなら理想を言えば2本とも同時が良いはず。
【菊水電子工業:PV-107】
HAMの間では菊水電子のPV-107がポピュラーなVTVMだった。上の松下通信製と類似の回路だが、多少簡略化されている。当然それだけ安価だった。 6AL5の初速電流打消しは、単純に電源電圧を分圧したバイアスを与えているだけだ。 たぶん、松下製のように凝った方法にしなくても十分な性能が得られたのであろう。
PV-107は本体だけでAC電圧の測定もできたが、高周波電圧測定用には『クリスタル・プローブ』と称するゲルマニウム・ダイオードを使った検波プローブ(オプション)を使うことになる。 温度特性などを考えると検波管の方が良いが、プローブが大型化するし構造も複雑になってしまう。周波数特性を延ばすには特殊な球も必要だ。 廉価に作るために半導体式の検波プローブにしたのであろう。
その昔、SSB送信機を製作しようと思えば、最低限こうしたVTVMが欲しくなり、菊水のPV-107は欲しいものリストの筆頭だったように思う。 本当はオシロスコープ(シンクロスコープは岩通製オシロスコープの一商品名)が欲しかったのだが、学生アマチュアには手が出なかった。40年も前の話しだ。(笑)
今どき双三極管の差動増幅器でもない。 この種の電子電圧計はFET入力のOP-Ampを使うと安定度に優れた高性能なものが簡単に作れてしまう。しかもコードレスにもできる。(以前自作したものが今でもあるが滅多に使っていない) RF電圧測定用の検波プローブもGe-Diでまずまずのものが作れるが、測定値の信頼のためには校正がとても大切だ。 しかし、今では広帯域なオシロスコープがかなり容易に入手できるし、スペアナさえもシャックに入った。 だから、ただRF電圧を読むだけしかできないVTVMなど今更な測定器かもしれない。これも時代であろう。 もちろん欲しいものリストから消えている。(使い道がないし、邪魔だからタダでもいらない・笑)
追記:
継続して「VTVM」や「バルボル」などのキーワードで検索からこのブログに飛んでくる人がたくさんある。恐らく、オークションや中古ショップの出物を物色中に調べているのであろう。
半世紀も前のノスタルジーを再現したい(体験したい)なら別だが、私なら今どき買わない。お金も時間も無駄だから、やめておくのが賢明だと思っている。高周波測定の経験も永いのでそれなりに熟練しているつもりだが、それでも何を(どんな信号を)計っているのか混乱しやすい測定器だ。測定対象が単純な正弦波なら良いが、教科書のように都合が良いのは現実の測定場面では稀だからである。
指針の振れをピークに調整したら、スプリアス(不要波)に合わせていたと言うようなケースは簡単に起こる。そのような誤った調整をされたトランシーバ(FTDX-401)の再調整に手を焼いた事があり、VTVMで調整する危うさを感じた。結局、VTVMの使いこなしは簡単そうで素人にはむしろ易しくない。まあ、使えば良くわかることなんだが・・・。何事も経験することは悪いことではないから止めはしないけれど。(2009年2月追記)
8 件のコメント:
無線始めた頃はバルボルの一台もそのうち買いなさい、とOMさんに言われましたがその機会も無いまま時代が過ぎてしまいました。
古い測定器も多い職場にいたこともありましたがVTVMはすでになく多chデジボルからでした。ベクターボルトメータがVTVMの影を残した存在だったかも。
PS。
昨日書き込み、tda1013"B"とのご教示ありがとうございます。データシートにようやくたどり着きました。4WもあるICと判りました。
JL1KRA 中島さん、おはようございます。
> バルボルの一台もそのうち買いなさい・・・
テスタの次は、GDMで、そのあと位がVTVMだったでしょうか? 自作記事も見かけましたが、校正がネックだったようですね。
> ベクターボルトメータがVTVMの影を・・・
多分、hp8405Aではないかと思います。(笑) サンプリング・ボルトメータでしたね。 ネットアナの祖先のような測定器ですね。
> 昨日書き込み、tda1013"B"との・・・
やはりそうでしたか。 電子ボリウム内蔵の面白いICですね。 何かの機会に保守用を1〜2個入手しておいて下さい。 もっとも、NGになっても対処方法は幾らでもあると思いますけれど。(笑) でも、オリジナルに拘るなら持っていた方が良いでしょう。
一時、HP 410Cを持っていました。
昔の製作記事にはバルボルで電圧をXXボルトにしなさいなど書かれていた影響でしょうか。
プローブが妙に大きいのと使っていて暖かくなるので開けてみたら球が入っていてびっくりしました。(笑)
結局ほとんど使わずオシロもあるので手放してしまいました。
JE6LVE 高橋さん、おはようございます。
コメント有難うございます。
> HP 410Cを持っていました。
図の410Bとは随分回路が違いますね。 CDS+ネオン管を使ったチョッパーアンプを使って増幅の安定を図っている凝った回路ですね。 回路的な面白さで、欲しくなります。(笑)
> 結局ほとんど使わず・・・
オシロなら、電圧がわかるだけでなく、波形から「信号の質」までわかります。 RF電圧の有無しかわからないVTVMでは、今どき満足できないでしょうね。(笑)
>RF電圧の有無しかわからないVTVMでは
410Cは耐電圧が300Vぐらいあったと思うので球回路にも使えましたが、アンリツ ML69Aになるとさらに使い道が・・
アダプタを付けるとQRPパワーメータにはなるのですが。(笑)
TTT/hiroOMおはようございます
菊水のPV-107は大学時代にアルバイトをして大阪の日本橋で展示品を安くしてもらい購入しました、高インピーダンスで測定でき飛躍的に自作や修理の幅が広がったのを覚えています、テスター以外に初めて大人びた測定器を手にしたと感動した思い出です。
中古で買いましたので回路図はありませんでした、解説ありがとうございます。
JE6LVE 高橋さん、こんにちは。
> ML69Aになるとさらに使い道が・・
ML69は、VTVMの一種ですが、RFミリバルと言われる種類で、mVオーダーのRF電圧が読めるのが特徴です。 検波プローブ型はそこまで高感度ではないので、優れた測定器なのですが・・・。(笑)
VTVMはみなさん憧れだったようで、購入される人があるようですが、手に入れてもそれっきりで遊休測定器になるのではないでしょうか。
JA6NHD 林さん、こんにちは。
コメント有難うございます。
> 展示品を安くしてもらい購入しました・・・
今のように、中古計測器も安価ではなかったので、入手するのも大変だったでしょう。 私は、Audioに傾倒していた時代だったので、同じ菊水でも164Dと言うミリバルを買いました。(笑)
P型バルボル(VTVM)は他の高周波測定器の台頭で全く影が薄くなったと思います。 いまでも使えるのですが、測定して得られる情報が少な過ぎるように感じてしまいます。(笑)
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