2013年1月6日日曜日

【HAM】 TRIO 59C Line

TRIO 59Cラインとは
 今のKenwood社が1961年ころに発売したHAM用送信機:TX-88A型と全波受信機:9R-59型で構成されるラインであった。他にSP-5型スピーカーとCC-6型50MHz帯用クリスタルコンバータがあった。144MHz帯用のCC-2型も後で追加されたように思う。 後継の9R-59Dラインが登場するに及び、オンエアの際、シャック紹介でわかり易くするために59Cラインなどと呼ばれたことを思い出す。59Cラインと言うのはHAM仲間のお空での愛称であったようだ。またメーカーがキット版の9R-59を区別するために社内的にそう呼んだ名称でもあるそうだ。広告等の公式では9R-59Cと言う名称は登場していない。ちなみに9R59Dの「D」と言うのはデラックスと言う意味であり、Cの次のDと言う意味ではないだろう。

写真は拙宅の書棚の上で長年眠っている「59C」ラインである。 送信機:TX-88Aと受信機:9R-59は異なった経緯で中古品を譲って頂いたのでツマミと塗色が異なっている。 いずれも無改造と言って良い。 従ってTX-88Aのファイナルは後で示す回路図どおりのUY-807のままだ。いずれ復活することを夢見ている。

 TX-88AはAMとCWの10W出力送信機である。3.5〜50MHz帯の6バンド(80m〜6mバンド)をカバーするが、807のままでは6mバンドの効率が悪い。従って 6mバンドがメインの局は取説にも書いてあるように終段管をVHF帯向きの2E26に交換していた。 そろそろ手に入り易くなって来た6146Aへの交換も多かった。 また安価なTV用水平出力管も流通して来たころなので、6G-B3A、6BQ6や6DQ5のような球に交換している局もあった。整流管5U4G(B)をやめてシリコンDiにすればプレート電圧(B+電圧)も一段と高くできる。 そうなれば10Wをかなり越えるので初級局ではオーバーパワーだ。 もちろん変調器のパワーは不足気味になるから、AM局ではあまり快適ではなかっただろう。しかしCW専門ならB+電圧アップと水平出力管への交換で、50Wくらい楽に出たのでかなり効果的だった。

59Cラインのシャック
 近ごろはネット上にOMさんたちの懐かしいシャック写真が散見されるので、こうした感じのシャックを目にすることも多い。 ただ、これほどスッキリしたシャックは珍しかったように思う。

 当時のHAM局は何がしかの自作品があるのが普通であった。特にVFOは写真のVFO-1の周波数安定度がイマイチだったこともあって、自作品を良く見かけた。 バーニヤダイヤル付きでコイルとバリコンがLCボックスに入っていたアレだ。 発振回路はクラップ型の人気が高かったように思う。 VFO-1のような電源自蔵は熱的に不利なので別体にしている人も多かった。(注:写真のVFO-1は試作型の模様)

 また写真は宣伝広告なので、9R-59の左に6mバンドのクリコン(クリスタル・コンバータのこと):CC-6型が並んでいるが、クリコンくらいは自作していたHAMが大半だったと思う。またスピーカーも純正のSP-5型は音が良くないから大口径の箱入りを使っていたものだった。 9R-59にしても、T-11型通信機用IFTくらいでは選択度不足であり、またBFO兼用のQマルチも何かと不都合で不安定なため、国際電気のメカフィルに置き換える改造が流行っていた。MF-455-10CKとか-15CKメカフィルを入れていた。 9R-59はあまりSSB向きではなかったのではあるが、プロダクト検波付きなど大改造を試みる人も少なくなかった。そうした改造記事は雑誌に頻繁に登場したから、暫くその話題でラグチューも盛り上がったものだった。 だからいま残っている9R-59でまったく無傷(?)の物は稀ではないだろうか。hi hi

TX-88Aの回路図
 回路図くらいないと寂しいのでTX-88Aの回路をアップしておく。 6BQ5ppの変調器を含め、電源内蔵で(当時としては)コンパクトに纏まったオールバンド送信機として一世を風靡した。3ステージのCW/AM送信機の完成形だった。

 実際、受信機と送信機ではだいぶ部品が違っていて、高耐圧のコンデンサや耐電圧の高いステアタイト絶縁のバリコンのように特殊な部品が多い。 地方のHAMにとっては町のラジオ屋さんでは手に入らない部品も多かった。 それで送信機キットの人気が高かったのだろう。部品やジャンクの通販もあったが今ほど便利なものではなかったので、秋葉原や日本橋から遠いHAMは苦労が多かったものだ。

 発振と逓倍段に5極管の6AR5を使っている。UY-807を含め当時入手し易い真空管ばかりで構成されていた。 ただ、6AR5は高い周波数の逓倍効率が幾分悪くなるので大半の人が6AQ5(有名なビーム管:6V6のmt管バージョン)に差換えていた。 TX-88Dのように12BY7Aあたりの方が良いのだが、ともかく当時はラジオ球の6AR5は入手容易で安かった。

               ☆ ☆ ☆

 メーカー製の送信機でオンエアしたのはTX-88Aが最初だった。だから思い出深い。πマッチの調整方法が未熟で良く理解できておらず、ロードバリコンを抜きすぎてIpオーバーになって807をエミ減にしたことなど様々思い出される。(笑)

 戦後すぐに再開されたOMさんにとってAM(A3)時代は長かったと思うが、私の時代は既にAMも末期であった。 本格的オンエアを始めた頃にはSSB化もだいぶ進んでいた。 しかもHAMバンドは混雑が極まっており、占有帯域幅が広くてビートの元凶になるキャリヤ付きのAMなど迷惑そのものでさえあった。バンドの利用効率を上げる為に、率先したSSB化が叫ばれていたのである。 今になってAMがリバイバルしているのは7MHz帯のバンド幅が拡張されたことと、HAM局そのものが激減しバンドが空いてきたからにほかなるまい。 一見良いことのようにも感じるが、HAMと言う趣味そのものの衰退を象徴しているのかもしれない。もはやあまり先のない、棺桶に半分足を突っ込んだ趣味と言えそうだ。hi

 いつかTX-88Aをリバイバルしてオンエアしたいと思ってきた。 但しAMでのオンエアは目指していなかった。 なかばCW専用機と化してしまい、安定度に優れたDDS-VFOと組んで実用性をアップしたいと思っていた。 しかし、昨今AMでのオンエアも聞こえるようになって来たようなので、それでもオンエアできるようにはしておこうと思う。ことしの目標にでもしておこうか。de JA9TTT/1

(おわり)

10 件のコメント:

T.Takahashi JE6LVE/JP3AEL さんのコメント...

加藤さん、こんにちは。

9R-59とTX88のラインはHF AM時代のスタンダードだったようですね。

僕は実物を見たのは最近OMさんのシャックにお邪魔して見せていただいたぐらいで、ネットや書籍でしか見たこと無いリグなので
TX88などはどうやって使うのかすらわかりません(笑)
なぜかVFO-1だけ持っていたのでそのOMさんにお譲り(押しつけ^^;)しました。

トリオの4バンドコイルパックを入手しているので9R59のコピー高一中二を作ろうと思いつもう数年経ってしまいました。
今年の目標にしましょうかね。HiHi

TTT/hiro さんのコメント...

JE6LVE/3 高橋さん、こんにちは。 北関東は寒いです。

早速のコメント有難うございます。
> HF AM時代のスタンダードだったようですね。
自作機もかなり多かったように思いますが、メーカー製もあまりない時代でしたから必然的にスタンダードでしたね。hi

> どうやって使うのかすらわかりません(笑)
実際、今のRigに比べたらかなり使い難いですよ。 逓倍回段やドライバ段の同調、終段のプレート調整もやらねばならず、手慣れないとすぐにはオンエアできません。(笑)

> OMさんにお譲り(押しつけ^^;)しました。
そうでしたか。それは残念。 ジャンクで良いから箱だけでも欲しいと思っていました。 もちろん、DDS-VFOを組込むためです。hi hi

> 今年の目標にしましょうかね。HiHi
コイルパック付属の回路のままではBCL用ラジオになってしまうと思いますが、作るのは楽しいと思います。 頑張って下さいね。

je1uci 冨川 さんのコメント...

加藤さん、こんにちは。
というより、おめでとうございます。
でした。(笑)

CQ誌を読んで、TCA440でも使った7MHzのAMトランシーバでも・・
と考えていたところです。
DDSも良いのですが、ちょっと大袈裟かなとも思います。

59Dラインはクラブで使った事があります.
59は触った程度です。
今となっては巨大過ぎ、重過ぎで、使うどころか保管する場所もありません。
ん、ふと思い出すと、どこかに壊れた88Dが眠っているような気もします・・?

ボチボチやってますので、今年もよろしくお願いします。

TTT/hiro さんのコメント...

JE1UCI 冨川さん、新年お目出度うございます。 どうぞ今年も宜しくお願い致します。

コメント有難うございます。
> TCA440でも使った7MHzのAMトランシーバでも・・
面白そうですね。 たぶん、全部半導体で作るのだろうと思いますが、何Wくらいのパワーがあれば7MHzで実用になるのでしょう? 半導体で10Wなら何とかなりそうですが、それ以上だとかなり大変でしょうね。やはりQRPの範囲でしょうか?hi hi

> 59は触った程度です。
横行ダイヤルが印象的なのですが、9R-59Dの方がダイヤルの読取り精度は良いように思います。 Qマルチは再生式ラジオと同じなので調整が厄介でした。 やはりAM時代のリグを感じさせますね。

> どこかに壊れた88Dが眠っているような気も・・・
巨大で大変だと思いますが、AMがリバイバルだそうですから整備されてみては如何でしょう???

こちらもボチボチやってます。どうぞ今年も宜しく。

JA6IRK@岩永 さんのコメント...

加藤さん、各局さん、こんにちは。
9R-59、88Aといえば、開局当時の憧れの機種でした。ちょっと古いOMさんは、9R-42Jを使っている局もまだありました。
当局は、デリカのCS7に自作の807S、6BQ5PPで主に3.5MHzでした。当時7MHzはSSBが始まっており確か7030あたりがSSB用だったと記憶しております。
まもなく、59Dラインが出てきて各局さん一斉のそちらに変わっていかれたように思います。
未改造のセットだそうで貴重ですね! きっちりビニルの袋をかぶせて保管してあるところが、加藤さんらしいです。
今年は、その封印が解かれるんです!
質問になってしまいますが、こうしたリグの高調波規制はどうなるのでしょうか? TSSは許可を出すのでしょうか?追加のフィルタなどでさらにデータ要求などあるのでしょうかね?!
アマチュアにはもっと。自由にいろいろ実験させてもいいと思うのですが...

TTT/hiro さんのコメント...

JN3XBY 岩永さん、こんばんは。 京都のお正月は如何でしたか? 今年もお忙しいのでしょうね。 どうぞ無理をされず頑張られて下さい。

コメント有難うございます。
> 9R-42Jを使っている局もまだありました。
私が学生のときクラブ局のは9R-42JとTX-88Aでした。 まあ、見かけはともかく9R-59も同じような物ですからね。 59Dほどの違いはなかったです。hi hi

> デリカのCS7に自作の807S、6BQ5PPで・・・
岩永さんのデリカ+自作品のラインナップの方がFBなように感じられます。 その頃のRigはまだお持ちでしょうか?

> 今年は、その封印が解かれるんです!
ホコリだらけになるので掃除の手間を考え包んであるのですよ。 封印というほどの物でも・・・。(爆)

> 高調波規制はどうなるのでしょうか? 
保証認定申請の際、参考にメーカー型式は書くつもりですが、基本的に自作機の扱いですので認定を受けるためには高調波フィルタの付加が必須のはずです。(ブロックダイヤグラムに高調波フィルタがあることを記載する)

過去の例から見てフィルタの実測特性までは求められないでしょう。(特性図を付けても文句は言われないとは思いますけれど・・・)

本当は包括免許制にしてもらい、Rigの審査は無くしてもらえたら一番だと思うのですが、現行電波法の元では難しそうですね。 憲法改正なんかよりもそちらを先にやってもらいたい。(HAMの勝手なお願い・笑)

ja8czx/yakita さんのコメント...

ja8czx/michi

加藤さん皆さんおはようございます。
相変わらず遅れた書き込みで失礼します。

札幌近郊と言いますか、北海道全体が冷凍庫状態で特に朝の通勤が辛いです。

88A/59ラインと聞いて、古いことは良く覚えている私で、思わず各局さんのコメントを見入ってしまいました。

私も初めてさわったメーカー製リグはコレでした。
高校に入ったばかりで買えるわけもなく、黄金持ちの先輩から長期間借りて運用しておりました。
それまでの中学時代は自作の高「0」中「1」(5球スーパーですよね)と水平偏向管の自作で
40m,80m(モチロンAM)に出ておりました。
変調トランスなる「特殊部品」は手に入らず、ハイシング変調やキャリアコントロール変調など
いろいろ試しておりましたが、深い変調が得られず、苦労しましたが楽しめた時代でした。
そうそう、終段タンク回路もリンク、πなどをプラグインコイルボビンに巻いて試行錯誤しており、
ファイナルダブラーで40mに出たつもりが20mで送信しているのに気付かず、気付いた大OMさんに大目玉を食らった記憶があり、
今思いだしても冷や汗三斗です(表現が古くて分からん?ごもっとも 汗)
そういえば岩永さんのように高調波規制など考えも及ばなかったです(コレも汗)

TTT/hiro さんのコメント...

JA8CZX 矢北さん、おはようございます。 北海道の冷え込みは一段と厳しいようですね。 北関東もかなり寒い朝でした。

コメント有難うございます。
> 思わず各局さんのコメントを見入ってしまい・・・
59Dラインですら、相当古いのにその前のRigですから良く覚えているのはご年配のお方に限られるでしょう。(笑)

> (5球スーパーですよね)と水平偏向管の自作で・・・
当時の入門スタイルだったように思います。メーカー製のKitは高いので中高生が簡単に買ってもらえるような代物ではなかったですからね。それ以前に親の目には趣味の道具に大金を・・という感じでしたっけ。

> 変調トランスなる「特殊部品」は手に入らず・・・
送信機用の部品は特殊なものが多くて苦労しましたね。タイト・バリコン一つでさえも入手に苦労したものです。それで並四バリコンで無理やり代用するとか・・。(笑) ハイシング変調は古い白黒TVの電源から取ったAFチョークでやりました。hi hi

> 苦労しましたが楽しめた時代でした。
何もなかったので、工夫する楽しみはイッパイありました。 なので、今でも何か工夫がないと楽しくないんですよ。hi hi

> 40mに出たつもりが20mで送信している・・・
私は3.5MHzのクリスタルを間違って3遞倍してオンエアしたことがあります。もちろん応答はなかったと思うのですが、しばらく冷や汗の日々が続きました。(爆)

あの時代、皆さんそれぞれに色々な思い出がありますね。 古き良き時代とでも言いましょうか・・・。

JI1TWW/Handa さんのコメント...

松も取れてから何ですが新年おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

新年早々レトロ感たっぷりの記事で感激しております。と言っても私の開局当時、すでに
520/101全盛の時代でしたのでさらに前のAM時代はリアルでは良く知りません。でも近所
のOM宅へ行くとラックの上のほうにアイデアルのSM-10Jなる送信機ケースに組み立てた
88Aと同等(と思われる)マシンが鎮座しておりました。ご丁寧にもAM→CWにモードチェンジすると変調段のヒーターまで切れるという
徹底ぶりに笑いが止まりませんでした。
「Ip=60mA、Ig=2.5mA、コレが807の設計動作条件だ!」とか自慢げに話していた姿
が思い出されます。
でもこのあたりのマシンですとCQの最新号にありました、スプリアス規定をパスできるのか
ちょっと気にはなります。

TTT/hiro さんのコメント...

JI1TWW 半田さん、こんばんは。 こちらこそ本年も宜しくお願いします。

コメント有難うございます。
> 前のAM時代はリアルでは良く知りません。
AM全盛は1960年代の半ばでしたので、私がSWLをやっていた頃です。AMですから家庭ラジオでもSWLは十分できました。 自身でのAMオンエアはかなり短かったですね。 SSB化は1968年頃から一気に進んだ感じでした。

> アイデアルのSM-10Jなる送信機ケースに・・・
アイデアルから色々な自作用ケースが出ていましたね。でも自分で部品を集めると高くついたようでTRIOのキットが売れていたようでした。自作用ケースは既に部品をお持ちのOMさんに人気があったのでしょう。

> p=60mA、Ig=2.5mA、コレが807の設計動作条件・・
この、Ig=2〜3mAと言うのがハイバンドでは難しくて正しい動作にはなっていなかったです。 ドライブ不足な訳で、マイナス変調の原因にもなっていました。 もっとも、そうしたAM局はかなり多かったと思います。

マイナス変調とか言われても、若いお方にはわからんでしょうなあ・・。(笑)

> スプリアス規定をパスできるのか・・・
この話しは、拙Blogでも何回か扱っていますが、バンド毎のBPFを入れないとダメかも知れません。

できればLPF程度で済ませたいですが、全段C級増幅の送信機ともなるとかなり厳しいと思います。まあ、やってみるしかないですね。hi