abstract
I am repairing a Yaesu Musen FC-700 antenna tuner. I have been using this antenna tuner for a long time. It seems that the contacts of the switch have oxidized due to years of use. It will be possible to repair it by cleaning the contacts of the switch.
And I will use this repair opportunity to study the inside of the FC-700. I have also considered several antenna tuners.(2024.05.08 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【FC-700:Antenna Tuner】
FC-700は八重洲無線のアンテナ・チューナです。FT-77、FT-707といった1980年代のトランシーバのアクセサリでした。 今では上位機種でなくてもオート・アンテナ・チューナ(ATU)の内蔵が普通になっています。しか30数年前はまだ外付けの手動式アンテナ・チューナが一般的だったのです。
このFC-700はもともとモバイル用に購入したものです。 固定局のアンテナはインピーダンスが50Ω付近になるよう作っていたのでチューナーは特に必要としていませんでした。 しかし整合が難しい車載用アンテナで使おうと思って購入した経緯があります。(1990.11.21:3.5MHz Mobaileに初OA)
ところがバリコンで同調する形式のチューナは振動でズレれしまい車載では使えないことがわかりました。 すぐに引退したのですがシャックにあってもあまり使う機会はありませんでした。 それに最近のトランシーバはATU内蔵が普通になったので50Ωから大幅に外れていなければ内蔵ATUで支障なく整合可能です。 それと、オートに慣れると手動は不便に感じますね。(笑)
走行中に使うのでなければ支障はありません。 移動運用先の半固定でアンテナ整合の補助として使うのなら十分役立ちます。 最近復活した移動運用にあらためて使うことにしました。 ところがずいぶん古いため接触不良が目立っていたのです。 外観はまずまず綺麗でしたが内部のスイッチ接点は酸化・硫化が進んだのでしょう。整備することにしました。
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こんな古いアンテナ・チューナを整備する人は稀でしょう。あまり役立たないとは思いますが自身の整備記録としてBlogにまとめます。 また、せっかくの機会ですからよく観察してメーカー製アンテナ・チューナを研究することにしました。 もしも興味があればこの先もどうぞ。 アンテナ・チューナの自作は意外に挑戦者が多いので幾らか役立つかもしれません。
【FC-700:内部構造】
後ほど回路図も出てきますが、アンテナ・チューナは単純な装置です。従って見たところもシンプルです。 部品配置がわかるように取扱説明書からコピーしました。
写真で、左上の入力コネクタにトランシーバ(送信機)を接続します。 アンテナは右上の出力コネクタに接続します。 単線式のワイヤーアンテナも使えますが、その場合は必ずアース側の配線も必要です。 右の出力コネクタ寄りにアース用のターミナルがあります。
入力コネクタから入ってすぐにSWR検出回路があります。C-Mカプラ式のオーソドックスなものです。そのあと心臓部の整合回路になります。
このアンテナ・チューナはいわゆるπ-C型(パイ・シーがた)と称する形式です。 後ほど詳しく触れますが市販のアンテナ・チューナではT型と共に良く使われる形式です。 最近の内蔵型オート・アンテナ・チューナでも良く見られる形式です。 特別変わったものではありません。 八重洲無線のアンテナ・チューナにはπ-C型、T型のいずれも存在しますのでどちらかが特に有利と言うこともなかったようです。
【接点の清掃】
さっそく整備を始めましょう。 メーカー製だけあってFC-700はなかなかうまく出来ていると感じました。
専用に作らせたスイッチが使われていて電流容量が必要な部分はダブル接点になっており、また耐圧が必要な部分はステア・タイト絶縁になっています。インピーダンスの低い部分はベークライト絶縁で済ませています。 この辺りが自作ではなかなか真似のできない部分です。
接点板と接触子は銀メッキのようです。 そのため長い年月の経過で硫化が進んだようでした。 観察すると黒ずんでいたのでそれで接触が悪くなったのでしょう。 サビと汚れを上手に清掃すれば復活できるはずです。(写真は清掃後のもの)
【接点復活剤:コンタクト・スプレー】
接点復活剤(コンタクト・スプレー)と称するケミカル製品は様々なものが売られています。 電子機器用と称するものでしたら大抵のものが使えると思います。
ここではホーザンの製品を使いましたがだいぶ古くなったので腐ってる(?)かもしれません。 でも取りあえずまだ効果はあるので使ってます。w
こうしたスプレーにはストローのような噴射チューブが付属しています。 そうしたもので直接噴射しても良いのかもしれませんが、それには接点以外の余計な場所に付着した分を洗い流す必要があります。洗い流すには専用の洗浄剤が必要です。
それも大変なので、私は綿棒の先に付けて要所のみ清掃することにしています。 少々手間ではありますがスプレーの残渣だらけでベトベトになってしまうと後々埃が付着し固着するのでかえって厄介なことになります。機器の寿命を縮めることにも繋がります。
残渣が残らない無水アルコールなどで清掃する方法もあります。 しかし汚れを落とす能力はこうしたスプレーの方が優っているようです.使い過ぎると旨くありませんが要所に上手に使えばかなり効果的です。
【汚れが・・・】
綿棒の先には汚れがいっぱい付いてきました。w
ひどい汚れが除去できたら綺麗な綿棒に交換して仕上げの清掃をしておきます。 アンテナ・チューナのロータリー・スイッチは接点がたくさんあります。 丁寧にやろうとすればかなり時間が掛かるでしょう。
はじめ、上蓋だけを外して雑に作業していました。 それである程度良くなったのですがまだ不完全でした。 それに綿棒を押し込んだ結果、少々無理な清掃をしてしまいました。そのため接点の一部を曲げてしまい致命的な接触不良を作ってしまったのです。orz
それで止む無く底蓋も外し丁寧にやり直すことにしました。 曲げてしまった奥のほうの接点もピンセットで慎重かつ丁寧に元の形に戻しました。 特にデリケートさを感じたのはコイルのタップを切り替える接点で難しさを感じました。 何とか接点による不安定さは改善できました。 清掃によって全般に接点が綺麗になったためか接触不良も感じなくなりました。 アンテナ・チューナは機器としては単純なものです。 デリケートな部分もあって初心者向けとは言えないかもしれませんが、目視でわかる不具合も多いので良く観察して作業すればうまく直せるのではないでしょうか。
再整備としてはSWR計の反射調整とパワー計に切替えた際のメーター再校正などが残っています。 外付けのダミーロードで確認した範囲ではこれらに問題はなかったので今回は手をつけませんでした。 もしSWRの表示やパワー計の指示ズレが目立つようならきちんとした終端電力計や50Ωダミーロードなどを併用して再調整を要します。
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【FC-700の回路図】
蓋を開けたのでせっかくですからFC-700を研究してみました。
取扱説明書からコピーした回路図です。 メーカーのサイトで取扱説明書がダウンロードできるので正式な図面はそちらを参照してください。 左の図はBlogの説明用です。
スイッチがたくさんあるので複雑そうですがアンテナ・チューナの回廊としてはπ-C型の単純なものです。 後ほど単純化した図面があります。
書籍などアンテナ・チューナ関係の資料を参照するとスイッチで切り替えている:C1〜C13というコンデンサがバリコンになっているものがありました。 FC-700ではトランシーバの出力インピーダンスは50Ωであるとの前提で、バリコンではなくバンドごとの固定コンデンサに置き換えたものでしょう。 バリコンにすると操作部が増える上、コストもかさみますから固定コンデンサの切り替えですませる方法は現実的です。
コイルはL01とL02の2つに分けられています。 各コイルとも使わないタップは間をショートするようにしています。 複数のタップ間を細かくショートしてショート部分で無用な共振などが起こらぬように特別に構成されたスイッチが使われています。 芸がこまかいと言うか、こうしないと旨くないのでしょう。
入力コネクタから入ってすぐにSWR検出回路があります。C-Mカプラ式のオーソドックスなものです。 バイファイラ巻きのトロイダル・コイルを使ったカレント・トランス式なので基本的に周波数特性は平坦です。
50Ωのダミーロードが内蔵されています。 ただし切り替えにリレーを使っている関係で外部からDC電源(+8V)を供給しないと機能しないのは残念です。
ダミーロードはシャックの必需品です。 メーカー機ばかり使っていると必要は感じないかもしれませんがRigの修理や自作送信機のテストには是非とも欲しいものです。
近頃はオンエア前にPlateとLoadバリコンを調整するようなトランシーバ(FT-901やTS-820,etc)は見なくなっていますが、もしこのアンテナ・チューナを併用するなら内蔵のダミーロードは重宝します。 まずダミーロードに切り替えてトランシーバのPlateとLoadを加減し所定のパワーが出るよう調整します。続いてチューナに切り替えて整合調整を始めることになります。
整合調整はまず目的のバンドに切り替えます。SWR計を反射波側にセットし適度なパワーに絞ったのち送信をはじめます。チューナのTuneとLoadのバリコンを交互にゆっくり回しSWR計の「反射」が最低になるよう調整します。 慣れると勘が働くようになってバリコンを「予測」で余分に回せるようになり素早く整合できるようになります。(勘の悪い人は手間取ります・笑)
このようにSWR計はアンテナ・チューナに不可欠です。 使用時には「必ず」メータを見ながら反射電力が最小になるようにTuneとLoadのバリコンを「入念に」調整する必要があリます。 また、このC-Mカプラ式の内蔵SWR計は簡易なパワー計としても機能するので重宝です。 ただしメーターは小さいですし多分周波数特性も完全なフラットではないでしょう。パワー計としての精度はあまり良く無いと思いますが無いよりもずっとマシなのは間違いありません。
このチューナが接続してあればスイッチがスルー状態でも常にSWR計としてアンテナ系を監視できます。 また通過型のパワー計としても便利に使えます。 パワー計の目盛は15Wと150Wフルスケールの2レンジあります。
ところで、こうしたアンテナ・チューナは便利なものですが、必ず「通過損失」が存在します。 これは50Ωの終端電力計をつないでスルー状態とチューナを入れた状態を比較すればすぐにわかります。 だいたい5〜10%くらい損すると思えば良いでしょう。チューナを通すと10Wが9Wになってしまうのです。 しかも50Ωを大きく外れるような負荷(SWRがとても高いアンテナ)の場合はさらに大きな通過損失がチューナ内部で発生すると思って間違いありません。 ですから、なるべくアンテナそのものが50Ω付近になるよう製作(調整)してアンテナ・チューナなど必要としないようにすべきなのです。
【コイルに注目】
このアンテナ・チューナで私が注目したのはコイルの部分です。 従来のアンテナ・チューナでは決まって空芯型の大型コイルが使われていたからです。 そうしたQの高い空芯コイルを使うのが「アンテナ・チューナの常識」だと思っていました。
トロイダル・コイルが使えるというのは目から鱗と感じるほどだったのです。 もちろん空芯のHigh-Qなコイルを使う方がロスは少ないでしょう。 しかしFC-700のように薄型でコンパクトに作ることはできません。 これは他社のアンテナ・チューナの内部を見れば良くわかることです。トロイダル・コイルとは、ちょっと思い切った方法なのでびっくりしたものでした。
3.5MHz〜14MHzと言ったローバンドではトロイダル・コアに巻いたコイルは省スペースになってFBです。 しかしハイバンドになるとトロイダル・コアのロスが増えるのと、うまくタップが取り出せないことから空芯コイルの2つに分けたものと思います。
【2つのバリコンは・・】
バリコンは2つ使われています。 いずれもギャップは狭くてあまり耐圧は高くないでしょう。 せいぜい1kVではないでしょうか。
仕様上の整合可能なインピーダンス範囲を狭くとっているため1kV程度でも何とかなるのでしょう。
それでも10Ω〜250Ωとなっているので最近のRigに内臓のATUよりも整合可能な範囲はずっと広いです。この辺りがテキトーに張ったワイヤ・アンテナでも意外にうまく整合できる理由なのでしょう。 まあ、そう言った”アンテナ”は整合はできても飛びは別の問題なんですけれども。(笑)
注意としては1/2λに近いワイヤーのようにインピーダンスが高くなりそうなアンテナはやめた方が良さそうです。 QRPならともかく100Wではバリコンの耐圧が問題になってきます。
【入力側コンデンサ】
写真はπ回路の入力側コンデンサです。 既に書いたようにRig側のインピーダンスは50Ωであると想定しているので、容量が固定されたコンデンサで済んでいるのでしょう。 各バンドともXc=25Ωになるような設計で整合範囲を広く取るのが目的でしょう。
コンデンサはすべてディップド・マイカ(シルバード・マイカ)です。 E12系列を基本とし一部にはE24系列の市販品から容量を選び、それでも適切な容量が無い場合は2個並列で必要な容量を合成しています。 従って、使用できるHAMバンドはWARCバンドを含む3.5MHz〜28MHzの8つですがコンデンサは13個あります。
アンテナ・チューナを自作する場合もこうした手法は参考にできるでしょう。 単一のバンド用チューナなら切り替えスイッチも要らず容易に作れます。
【SWR・パワー計検出部】
C-M型のSWR・パワー検出回路になっています。 原理的に周波数特性はフラットなのでバンドによって感度の変化はありません。(そうは言っても完全なフラットではないでしょうけれど・・・しかし実用上の支障はないはずです)
SWR計はアンテナ・チューナには必須の機能です。もし内蔵されていなければ外付けする必要があります。
アンテナ・チューナに必要なことは整合状態の検出です。 整合しているかがわかれば良いのであってSWR値は読めなくても支障はありません。 従ってSWR測定回路ではなくて、インピーダンス・ブリッジ形式の整合検出回路を内蔵するアンテナ・チューナも存在します。 しかしせっかくですからSWR計になっている方がFBでしょう。 オンジエアしながらSWRが監視できますし通過型のパワー計にもなって便利です。
検証はしていませんが検出部に使ってあるトロイダル・コアはT-37-#1のように見えます。 #1材はあまりポピュラーではありませんがカーボニル・コアのTシリーズでは最も透磁率が大きいマテリアルです。 フェライト・コアのFTシリーズで自作する例が多いのですが、カーボニルの#1材の方が何か良い点があるのかも知れません。(これは要確認です・笑)
【内蔵ダミーロード】
50Ω/100Wのダミーロード部分です。
抵抗器は1kΩ/5Wのごく普通のものが20本並列で使われています。抵抗器は小型で耐熱性に優れる酸化金属皮膜型です。周波数特性を補償する目的で10pF/1kVのマイカ・コンデンサが並列に入っています。
5Wが20本ですから計算上は100Wですが連続的にそれだけの電力を消費できるわけではありません。 FC-700の仕様書には30秒と書いてあります。 抵抗器が密集していますし中の方は熱放散が悪いでしょう。連続ではとても持たないわけです。
昔、似た方法でダミーロードを作ったことがあります。 周波数特性もHF帯なら問題なくうまく動作します。 課題は冷却で、強制空冷するとか何か効率的に放熱して冷却する方法を考えておかないとすぐに過熱するのが問題でした。hi
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以上、FC-700の各部を眺めてみました。 流石にメーカー製だけあって構造や部品配置が工夫されており各部は最短距離で配線されていてます。 スイッチなど特殊品なのでそのままそっくり真似はできないと思いますが工夫された部分は学びたいものです。
このあとはちょっとしたアンテナ・チューナ回路の雑談です。
【アンテナ・カプラの基本回路】
今では送信機(トランシーバ)とアンテナを整合する装置は「アンテナ・チューナ」の呼称が定着しています。
私が若かった時分は「アンテナ・カプラ」と呼ばれていました。
同軸ケーブルでの給電が常識になる以前は「ハシゴ・フィーダ」と言った平衡給電が行なわれていました。 たいてい同調フィーダとして使いますからフィーダ上に定在波が立つのは常識でした。そのためアンテナ・カプラはシャックの必需品だったのです。
その後、不平衡型のケーブル・・同軸ケーブル・・で給電する時代になってもアンテナ・カプラは良く使われました。(左図は古い形式の例です)
もちろん今でも有効に使える回路ですが、この形式で厄介なのはコイルの1次側と2次側の結合度を可変する必要があることでしょう。コイルを機械的に動かして結合度を可変するケースが多いのですが、代わりに1次側(送信機側)のリンク・コイルにも直列にバリコンを入れる形式もあります。バリコン形式にするときにはリンクは2倍くらい多く巻きます。
もし作るのでしたら(b)の中間型にしようと思います。 端子板を使って配線換えで(a)や(c)に変えられるように作っても良いのですが煩雑になってしまいます。 しかしうまく作るとバリコン一つで済みますから経済的で悪くない回路だと思っています。 固定局のようにアンテナの形状がだいたい決まってしまうと一度調整すれば良いわけですからコイルの結合調整も煩わしいと言うほどではありません。
コイルとバリコンで運用周波数に共振させることになります。 共振させるためのコイル(インダクタンス)とバリコン(キャパシタンス)の組み合わせは無数にあるわけですがアンテナ・カプラとしてはHigh-C、Low-Lの組み合わせが適しています。
部品数の少ないアンテナ・カプラです。 コンパクトに作って移動運用にも重宝する「小型アンテナ・システム」になりそうです。 何の変哲もない「同調回路」ですが眺めていてそう思いました。
古よりシャックで使うアンテナ・カプラといえば太い線を巻いた立派な(巨大な)コイルとギャップの広い大型エアー・バリコンと相場は決まっています。 しかしそれでは移動運用には大げさです。パワーに見合った部品を使うと言ったちょっとした発想の転換も必要そうです。
【L-Zマッチのアンテナ・チューナはいかが?】
上記の古いアンテナ・カプラを眺めていて「Zマッチ」を使ったらどうだろうかと思いました。
Zマッチというのは2連バリコンを使いコイル一つで広い周波数可変範囲を持った共振器を構成する方法です。
左図の左側の囲みのようにLとCを並列共振と直列共振に組み合わせた回路です。 作り方次第ではHF帯を一つのコイルと一つの2連バリコンでカバーできます。 上記のアンテナ・カプラのLC共振器をこの回路に置き換えれば少ないパーツでオールバンド・アンテナ・チューナorカプラが作れそう。
実はそう思ったHAMはたくさんいたようです。 ネットで探すと似た発想のアンテナ・チューナが幾つもヒットします。
図はARRLのAntenna Compendium Volume3という書籍にあった回路です。(Page:191〜、W6JJZの執筆) 記事には2つ回路があって左図はそのうちの簡略版の方です。いくらか制約はあるようですが回路はシンプルです。 うまく使えればマルチバンド対応の移動用アンテナシステムがコンパクトに構成できるかもしれません。 基礎的な実験からでも初めてみたいと思っています。
なお、先人のテスト結果もネット上にいくつか見られました。 それによればZマッチを使ったチューナは回路自体の通過損失がかなり大きくなって効率的でないケースがあるそうです。 さらなる検証は必要そうですが、ある程度のディメリットはあってもシンプルさと言った特徴が発揮できそうなら採用する意味はあるかもしれません。
実験していませんから推測にすぎませんがZマッチを構成するコイルのインダクタンスとバリコンの容量によってもかなりの違いはありそうです。 さらにLow BandとHigh Bandではたとえ共振はしていても共振インピーダンスに大きな違いがあるはずです。 アンテナ・チューナ回路として負荷をかけた状態(=アンテナをつけた状態)であまりにもHigh-Qになる(例えばQL>30)ようでは損失が激増するのも当然です。
従ってLとCの組み合わせの上手いところを探す必要があるのでしょう。 それにしても可能性がありそうなチューナ回路だと思いました。
【FC-700の解析】
回路図の最後はFC-700の解析結果です。
取説の回路図に書かれていて部品定数がわかるパーツは実際に内部を見ただけでもおおよそ理解できるものです。 しかし問題のコイルだけは現物を見てもどんな部品定数なっているか、にわかにはかわかりにくいのです。
幸いトロイダル・コイルはコア材がわかりました。 T-157-#2に間違いないためAL値は簡単に判明します。 数えれば巻き数もわかりますから計算でインダクタンスも求まるでしょう。 空芯コイルの部分も寸法と巻き数がわかったのでかなり精度よく計算できました。
ただし、見落としてはいけないことがあります。 多バンド型アンテナ・チューナ特有の構成のためインダクタンスには不確かさがありそうなのです。
全巻線を使わないほとんどのバンドでは途中タップを使って小刻みに巻線をショートしているからです。そのショートされた部分は影響しないのでしょうか? そのため実効的なインダクタンスは計算される大きさとは異なっているかも知れません。
まあ、まったくの同等品を作りたいのであれば同じ材料で同じ形状・構造に作れば実現できるるわけで、そういう意味での再現性は十分にあるでしょう。 しかし図に参考として書いてあるインダクタンス値は確かではない可能性が残っています。
この図は独自の研究によって推定して得たものですからメーカーの設計意図を正しく反映していない可能性があリます。 従ってこの図をもってメーカーにご質問などされることはおやめください。 ご迷惑をかけるだけです。
どうしても確かめたいのなら材料はわかっているのですから自ら同じように作ってみたら良いわけです。 確証が得たいなら是非そうされてください。 私からのお願いです。
【アンテナ・チューナの参考書】
アンテナ・チューナの関連で蔵書を漁っていたらこのような書籍を見つけました。 買ったことを忘れていたくらいなので中身の記憶はぜんぜんありませんでした。
書名が「アンテナ・チューナ」とはなっていませんからチューナの製作記事を期待してはいけないのかも知れません。 おもにチューナのオートチューニング技術を扱った内容と言ったら良いでしょうか。
しかしアンテナとRigの間のチューニングのお話としては面白い研究内容です。 こうした分野にご興味があったら一読をお薦めしたいと思います。 絶版と思われますので図書館の利用がよろしいでしょう。 また、私見ですが無理してまで手に入れるほどの内容はないと思います。
☆
不調になったアンテナ・チューナをリペアすると言った単純な話のつもりでした。 色々眺めて散策しているうちにだいぶ道中が長くなってしまいました。 このBlogに欠けているのは数式によるアンテナ・チューナの解析です。 この辺りはπ型の変形インピーダンス整合回路として専門誌では詳しい扱いがなされていました。
もちろん数値による解析は重要な手がかりを与えてくれます。 みずから設計するには避けられないはずですが、ここは娯楽のBlogなのであえて数式には触れぬことにしておきました。 興味の向きは是非ともご研究を! アンテナに限らず整合回路の奥深さが楽しめるでしょう。 ではまた。 de JA9TTT/1 T.Kato
(おわり)
8 件のコメント:
加藤さん、おはようございます。
FC700は1990年頃に在庫が多量に投げ売りされていたので所有している方も多いと思われるので、今回のBlogに興味がある人も多いのでは無いでしょうか。
僕も当時東京出張の時に秋葉原T-ZONEだったかで新品が@10k円で山積みされていたので購入しましたが、ほとんど使わず保存しているので同様に端子が接触不良を起こしているかもしれません(笑
アンテナチューナーの自作はQRP用だと楽なのですが、100W以上になるとパーツ(特にバリコン)の入手が大変になってきますね。
10Wぐらいでも無理にマッチングを取ろうとするとスパークしたり、高周波やけどしたりと痛い目を見ます(笑
JE6LVE/JP3AEL 高橋さん、おはようございます。 先ほどから薄日がさしてきました。 涼しいです。
さっそくのコメントありがとうございます。
> 在庫が多量に投げ売りされていたので・・・
たしかそれを買ったんだと思います。 バリコンとコイルを買って自作するよりずっと安上がりだったので思わず買って済ませたのだと思います。 マニュアル式は敬遠されたんでしょうかね?(笑)
> ほとんど使わず保存しているので同様に端子が・・・
高橋さんはほとんど未使用で包装したまま保管しているのではありませんか? それなら接点も大丈夫だと思います。 私はリグの上に積んで時々使っていたので外気に触れてだんだん接点が劣化したんでしょう。
> 100W以上になるとパーツ(特にバリコン)の入手が大変に・・・
そうなんです。 コイル、バリコンそしてスイッチも耐圧あって損失が少ないものが必要なので・・・自作にはとても費用がかかるんです。 昔はジャンクのバリコンとか安価に出てたのですけど・・・どの部品も入手そのものが難しくなりましたね。
> 高周波やけどしたりと痛い目を見ます(笑
10Wと言って舐めると痛い目にあいますね。 それと電圧だけでなくインピーダンスが低ければ高周波電流が大きくなるので要注意です。 以前検討していて、ポリバリは構造がチャッチで電流容量が取れないのも欠点だと思いました。 まあラジオの同調用ですからね。hi hi
加藤さん、
私も、持ってます。恐らく、皆さんと同様安売り(投げ売り?)で購入したんでしょう。
まだ、現役で活躍しています。
と、いってもアンテナ・チューナ部分ではなく、SWRメータ、パワーメータとダミーロードの部分です。アンテナ・チューナ内臓されていると非常に便利です。
ただ、外部から8ボルトDCを追加しないといけないのが、難点ですね。
JI1HVI 仲野さん、こんばんは。 北関東ではまた雨降ってきました。
いつもコメント頂きありがとうございます。
> 私も、持ってます。
あ、持ってましたか。(笑)
> まだ、現役で活躍しています。
マニュアルのチューナは壊れるところもないので長く使えますね。
> 外部から8ボルトDCを追加しないといけないのが・・・
Rigからもらうか小さなACアダプタが良いです。6V位でも大丈夫みたい。w
アンテナ自作され本格的に活用されてください。=>「アンテナ・チューナ」
私もここ数年、ちょっとづつ、π-C型チューナーの研究と試作をしてきて、仕様パラメーター、設計手順と必要な計算がわかりました。しかし、ひとつわからないのが、π-C型という名称です。だれが命名したのでしょうか。また、最初に考案された人はわかるのでしょうか。Drake MN-6なのか、Kenwood AT-200なのか、八重洲、ダイワ、ミズホ、その他なのか、判然としません。各メーカーの取説やサービスマニュアルにも、π-Cないしpi-Cという説明は出てこないようです。回路の動作を理解するにも、設計手順的にも、π型にCを足したという見かたは不適切で、L型を重ねたと考えるのがいちばん合理的なのですが。AB1WX鈴木
AB1WX 鈴木さん、はじめまして。
コメント有難うございます。
調べたのですが、π-Cなる呼称の由来はわかりませんでした。 1980年代になってHAM関係の雑誌,etc.にこの回路は登場するようになったようです。 DAIWAからこの回路形式のオートチューナが登場したたからでしょうか?
その後、バリ-Lを使わずにアンテナ・チューナが作れるのでこの回路がHAMの間に広まったようです。 八重洲のFC-700もこの時代に登場します。 なお、取説には「π-C」という記述は見られませんね。 初期の雑誌記事でもπ-Cとは呼んでいません。 活字としてπ-Cなる呼称を目にしたのは1980年代半ばの雑誌記事だったように思います。(MH誌?)
私なりの見解ですが、π-L回路は真空管の時代からあったので、それとの関連で見た目から「π-C」なる呼称を付けたのではないかと思いました。
さらに何かわかったらこのBlogに追記したいと思います。
調べていただいてありがとうございます。こちらも調査継続中です。
米国の雑誌やドレークユーザー間では、"modified pi network"というのが一般的なようですが、これもドレークの説明書や製品説明には出てこないようです。
メーカーで唯一π-Cという呼称を用いていたのが、ミズホです。キットなどの説明書にもそう書いてありました。1980年代半ばといえば、ピコシリーズが出揃って全盛だった頃のように思います。よくわかりませんが、ミズホのπ-Cチューナーが出たのも、あの頃ではないでしょうか。今でも同じものがコメットから出ているようです。(私が小学4年で電話級を取得したのが1984年でしたが、小学生の小遣いではピコシリーズでも高すぎ、開局するのに親を説得する方法として色々苦心しました。欲しかった無線機のひとつです。)また、あの頃高田さんは初歩のラジオやCQ誌などに精力的に執筆されていましたから、もしかしたら高田さんが作った、あるいは普及させた呼称なのかも知れません。
こちらで質問を出しているのですが、反応がありません。
https://ham.stackexchange.com/questions/23116/whats-the-origin-of-π-c-or-drake-modified-pi-network-for-impedance-matching
この質問中、私が調べているときに見つけたπ-Cマッチのチューナーを列挙しておきました。
このタイプのチューナーをイチから設計して自作しましたが(まだ空中廃線バラックの状態で、VNAで色々測定しています)、たしかにLを細かく可変する必要はないのですが、バンド毎にインダクターを二つ(あるいはLとCをひとつづつ)切り替える必要があり、モノバンドや2バンドなら楽ですがWARCも含めてオールバンド対応するとなると、二連ロータリースイッチとインダクターまわりの配線だけで一苦労です。自作するならT型の方が安くて楽です。しかし、πCには挿入損失がだいたい一定で、アンテナインピーダンスや周波数によって極端に損失が増えるということが無いのがメリットのひとつです。ただし、設計時に整合できる最悪SWR値を決めておかねばならず、運用中にちょっと今日だけ酷い整合もなんとか、ということが出来ません。私は最初からアンテナとシステムで考えるので、それで都合がよいのです。
Youtubeには自作されている方もおられるようですが、見た目からして、ミズホのキットないし記事を元にしているようです。それ以外にもπ-C型の製作記事とかあったのでしょうかね。気になります。
AB1WX 鈴木さん、了解です。 再度のコメント有難うございます。
CQ誌でチューナの自作記事を見かけた時期があります。 ミズホ通信はアマチュア寄りなので、自作向けに部品をキット化すると売れると考えたのかも知れません。 真相わかりませんが(笑)
いまどきRF電力が扱える部品は手に入りません。 QRPなら作れそうですが、メーカー製のメンテナンスを行なうか小改造がせいぜいでしょう。
それとHFトランシーバはATU内蔵が常識化しています。もう作る必要はありません。 チューナはごく少数の人しか興味を持たないでしょう。
色々ご研究されて新たな情報が得られましたらまた教えてください。 面白いお話どうもありがとうございました。
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