2025年2月12日水曜日

【電子管】Testing the Converter Tube : 1R5/1R5-SF

【コンバータ管:1R5/1R5-SFを試す】

introduction
I returned to the 1R5 on the battery tube to evaluate the converter tube again. This was because I had a few 1R5s on hand and was interested in the differences between 1AB6/DK96 and 1R5. The comparison was done in the same way as in the previous Blog. The results obtained were without difference. Converter tubes are not only suitable for frequency conversion purposes, but also for product detection. I believe that my comparison tests will be useful for the construction of communications receivers.(2025.02.12 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【七極管:1R5-SFと1R5】(電池管)
 乾電池を電源とする真空管、すなわち電池管で受信機(ラジオ)を目指す第3回目です。 予定を変更して再びコンバータ管をテストします。対象は:1R5/1R5-SFで電池管のコンバータ管としてポピュラーな球です。 前回のI-F Amp.(←リンク)から一旦コンバータ回路に戻ります。

 mt電池管のコンバータ管は1R5が原型です。 評価済みの1AB6/DK96や、その対抗管である1R5-SFはいずれも1R5が元になっています。 1R5系の手持ちが4本ありました。 受信機(ラジオ)の製作には1AB6/DK96だけでも足りそうですが、場合によっては1R5を使う可能性もあります。 周波数変換(コンバータ)の用途だけでなくプロダクト検波器への適性もあるはずです。 すべて中古の球なので良否の判定を兼ねてテストしておきました。 1AB6/DK96との違いにも興味があります。

 ポータブルラジオでは1AB6/DK96よりも広く使われた1R5/1R5-SFです。 写真は左が1R5-SF(東芝・マツダ)、右はマーキングが消えてますが米国製(RCA or GE?)の1R5です。この1R5はたくさん放出されていた朝鮮戦争のトランシーバ:RT-66/67/68などの軍用無線機で働いていたものかもしれません。無線関係のOMさんが放出した中古の球です。

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 真空管、ましてや電池管に興味がなければ退屈なだけ。 以下はお薦めしませんので楽しいサイトへジャンプされて下さい。 もし昔のポータブルラジオの残骸が残っていて、もう一度蘇らせて楽しみたいのでしたら幾らか参考になるかもしれません。その程度の話です。

【七極管:1R5の評価回路】(実測データ一覧)
 1R5/1R5-SFのテスト回路です。 同じ5グリッドの七極管を使ったコンバータ回路ですから、ちょっと見では既出の1AB6/DK96(←第1回にリンク)と同じようです。

 良く回路図を比較したらわかるのですがグリッドの扱いが異なっています。 これは後発の1AB6/DK96が単なる省エネ管ではなくて短波帯での問題点を改善する目的も持っていたからのようです。

 中波帯(BCバンド)のラジオなら1R5で問題ありません。しかし2バンドラジオでは短波帯で局発が強い信号に引き込まれて受信しにくいことがあるそうです。(引き込み:Pull-in現象、または連動:Interloking現象ともいう)

 短波(SW帯)でも数MHzまでなら大丈夫ではないかと思いますが、10MHz以上ともなると厳しいのかもしれません。この辺りは短波ラジオを作るなら検討を要するでしょう。

 ここでは中波のコンバータとしてごく基本的な性能を確認しておきました。 1AB6/DK96と同じように局発コイルがキーパーツです。 同じ仕様の局発コイルが使えるか、興味があったのでそのまま使いました。

 結論から言うと支障なく使えます。 非力な1AB6/DK96で発振できたのですから1R5の方がむしろ有利なはず。さらにフィラメント電流が半分で1R5よりも不利な筈の1R5-SFでも大丈夫でした。1R5-SFも意外に頑張ります。(笑)

 なお、1R5-SFの最低動作電圧も確認しておきました。 局発の発振停止電圧はEp=11.7Vでした。(但しEf=1.4V、fo=1000kHz) これは1AB6/DK96とほぼ同じです。 もちろんこの電圧までラジオとして使用可能と言う意味ではありません。

 図中に実測特性一覧があります。 内容については後の説明も参照してください。

【コンバータ+I-F Amp.で試作】(電池管スーパ)
 I-F Amp.まで組んであります。 そのため、だいぶ雑然としています。(笑)

 データを取っている途中、うっかりI-F Amp.が付いていることを忘れてしまいました。 測定データに影響が出て、あらためてやり直すと言ったミスがありました。独立したテストをやった方が楽だったかもしれません。

 左が評価対象のコンバータ管:1R5です。 1R5が3本、1R5-SFが1本あったので差し替えてデータを採りました。 結果は1R5と1R5-SFで大差はなく意外にも1R5-SFが頑張る印象です。 従って1R5-SFの方がフィラメント電流が半分で済むのでお得です。残念ながら一本しかありませんが・・・。

 第2グリッドの電流がコンバータ回路の全電流の7割近くあって大半を占めることは1AB6/DK96と同じでした。 発振停止がコンバータ管の機能停止につながる訳ですから要点は同じと言うことです。 回路図中の表・1に実測データがまとめてあります。1AB6/DK96との比較では大差ありませんでした。同じように使えます。

 I-F Amp.も合わせて評価していたところ、稀にI-F Amp.が発振することがありました。 1AJ4/DF96や1T4/1T4-SFは意外にCpgが大きい(6BA6の3倍ある)ので負荷インピーダンスによっては発振の可能性があるようです。 I-F Amp.なので同調をずらせて逃げる訳にも行きません。 幾らか負荷インピーダンスを下げる対策をします。 対策は選択度にあまり影響の及ばない検波器側が良いでしょう。IFTに高抵抗を並列に入れシャントする方法にします。 ゲインと選択度を少し損しますが止むを得ません。 I-F Amp.の発振は配線方法や部品の配置にもよるので作り方次第で問題ないかも知れません。 I-F Amp.の件は一応参考まで。

【七極管:1R5のグリッド電流】(=発振強度)
 1AB6/DK96の動作状態は発振電圧・・・第1グリッドのRF電圧で規定されていました。

 それに対して1R5/1R5-SFでは第1グリッドの電流で動作が規定されています。 そのためこの評価ではグリッド電流:Ig1も測定しました。 Ig1の大きさが発振の強さを示します。 もちろん最適な範囲があります。

 測定はマイクロ・アンメータがあれば簡単にできます。 グリッド・リーク抵抗:回路図ではR1のGND側を切ってそこへ電流計を挿入します。メータの極性はGND側が+です。

 その際、必ずバイパスコンデンサを入れ、電流計にRF成分が流れないようにします。 バイパス・コンデンサは0.01μFで良いでしょう。 DC電流計にはRFを流してはいけないのですが、知らぬ人も多くて既に常識ではなくなっているかも知れません。(笑)

 電流計にはアナログ・テスタ(回路計)の電流レンジが使えます。 写真では専用の電流計(YEW製)を使いました。 デジタル・マルチメータでもOKです。測定点にバイパス・コンデンサが必須なのはアナ・デジ共通です。

 ここは初歩のラジオ教室ではないので余計なお世話でしたかね。(笑)

【七極管の動作説明】(RC-14より)
 RCAのチューブ・マニュアルを眺めていると、コンバータ管の動作はTube Applicationの項を参照しろとあります。

 左図はRCAの真空管データブック:RC-14からの引用です。 RC-14はスキャン・コピー版がネット上に出回っているので入手は容易です。 RC-14は1R5の登場当時の版ですが、1940年版と古いためもっと新しい版が良いかも知れません。 ネット上に幾つかの版があって必要に応じDLしておくと真空管の扱いについて有用な情報が見つかります。

 内容はごく一般的な話があるだけでした。 おそらく5グリッド・コンバータ管にあまり馴染みがないユーザ向けの説明なのでしょう。 一言で言えばスーパ・ヘテロダインの周波数変換に必要な機能を一つの真空管にまとめたのがこうしたコンバータ管だとしています。

 左図の回路は6A8・・原型は2A7と言う旧式の5グリッド管の説明になっています。 1R5は6SA7や6BE6と同じ次世代の5グリッド管です。 そのためグリッドの働きが異なっています。少し1R5のことを考察してみましょう。

 まず、第1グリッドと第2グリッド・・ここはプレートとして働く・・とカソードで構成された三極管で局部発振器(Lo-OSC)を構成します。 この第2グリッドと第4グリッドは管内で結ばれています。第4グリッドは電子加速用のグリッドとして働きます。
 じつは、ここに問題があるようです。 本来、発振部と分離されるべき第3グリッドが第2、第4グリッドに挟まれた形になるため、静電容量的に結合(C結合)して局発の引き込み現象が現れるのでしょう。このように1R5を自励発振のコンバータとして短波帯で使うと不利なのです。

 では同じ構造の6SA7や6BE6で引き込み現象があまり問題にならないのは何故でしょうか? これは局発回路の形式が異なるからです。 それらは1R5のようなプレート帰還・グリッド同調の反結合形式ではなくてハートレー型の発振回路なので影響がほとんどないのです。第2・第4グリッドは高周波的にバイパスされGNDレベルなので純粋に加速とシールドの働きをしているためです。
 !R5を短波帯で使うと局発の引き込み現象が目立ってくるのは回路形式が原因です。なお、1R5をハートレー回路で発振させることも不可能ではありません。対策できるはずです。

(残った第5グリッドは普通のサプレッサ・グリッドとして働き、フィラメントのマイナス側に結ばれています)

 ちょっと脱線して引き込みの原因追及になってしまいましたが、1R5の問題点を考える切っ掛けになってくれました。 1AB6/DK96、1L6、1U6が構造を変えて引き込み対策したことがわかります。

【七極管:1R5の標準動作】
 1R5のコンバータ回路の特性を示すグラフです。Tung-Sol社の資料を利用しました。RCAの資料にも同一のグラフがありましたがこちらの方が鮮明なので利用しています。

 プレートと第2グリッドの電圧を幾つか変えて変換コンダクタンス(コンバージョン・コンダクタンス)をグラフ化してあります。 変換コンダクタンスとIFTの共振インピーダンスから、コンバータ回路のゲインが計算できます。(下記参照)

 1R5の変換コンダクタンスはIg1が100〜200μAでピークとなります。 それを目標に動作させますが、電源電圧、第2グリッド電圧、そして局発コイルの巻き数比と一次・2次の結合度、さらに発振周波数などちょっと考えただけでも様々なパラメータがあります。

 従ってあらゆる条件下での最適化は無理があります。 多少変動しても支障はないようですから確実な局発の発振が起こるようにすれば良いでしょう。 なお、Ig1のミニマムは20μAなので、悪条件が重なってもこれを下回らぬよう検討すべきです。 今回のテストではIg1が少なめでした。これはプレートと第2グリッドの電圧が低いためです。ただし十分実用の範囲にあると感じます。 実際にAMラジオを受信すると良く聞こえます。

IFTの共振インピーダンスとゲインについて
 前回のBlogでも検討したようにLC共振回路の共振インピーダンス;ZはZ=ω・L・Qです。(Z=(1/(ω・C))・Qでも同じ) 言うまでもないですがω=2・π・fです。  IFTの場合、2次側の共振回路も同じ特性で臨界結合状態(k・Q=1)であるとすれれば真空管から見た負荷インピーダンス:Ztは、共振インピーダンス:Zの半分になります。 すなわち、Zt=(1/2)・Zです。

参考:kは結合係数で、2つのコイル間の相互インダクタンスをMとすれば、k=M/(√(L1・L2))です。Q=100とすれば、k=0.01のとき臨界結合状態となります。なお、k>0.01ではIFTは双峰特性となります。一般にAMラジオ用のIFTはk・Q≦1に設計してあります。 なお、相互インダクタンス:Mはインダクタンスメータ(LCRメータ等)があれば比較的精度よく実測から求められます。単層ソレノイドでは計算で概略求めることもできます。

 いま、IFTは複同調形式で、Qが100、共振コンデンサが100pF、周波数は455kHzとしましょう。k・Q=1とします。 共振インピーダンス:ZはZ=(1/(ω・C))・Qですから、Z=(1/(2・π・455E10^3・100E10^-12))・100です。計算しますとZ≒350kΩになります。 従ってコンバータ管の負荷インピーダンス:Ztはその半分の約175kΩです。

 このIFTを変換コンダクタンス:gcがgc=250μ℧の1R5で使うと変換ゲイン:GはG=175E10^3・250E10^-6≒44(倍)が得られる計算です。
 実際にはストレー容量の影響など諸々の原因によるロスなどがあってだいぶ下回るかも知れませんが、20〜30倍の変換ゲインなら得られそうです。(デシベルで言えば:26〜30dB)
 中間周波増幅一段の標準的な電池管スーパのばあい、I-F Amp.で30〜40dBのゲインがあります。 ほかにもアンテナコイルの昇圧利得が20dB(10倍)くらいあります。 従って合計で検波段までに76〜90dBのゲインになる計算です。(概算で6,300〜31,000倍)

 計算を含むと「見る気がしない」お方が続出でしょうか? こうしたコンバータ回路の変換ゲインはどの程度なのか?・・・といった興味を満たすために簡単な計算を最低限で行ないました。 つらいものを辛抱してご覧いただきたいへんお疲れさまでした。(笑)

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 以上、コンバータ管:1R5と1R5-SFに関連した話はおしまいです。 先に評価した1AB6/DK96との違いはあまり無いようでした。 差し替え可能という意味ではありませんが、少なくとも中波帯で使う上では機能は同等と考えて良いでしょう。さらに使う場所を考えてやれば高性能なラジオやもう少し高級な通信型受信機にもうまく使えると思います。 以下は、テスト中に気付いたことなど雑談です。

【275pFのポリバリコン】
 写真は私の定番バリコンです。コンバータ回路の設計で使いました。

 これはジャンクなお店でまとめ購入したものです。 AM/SW用:(max)275pFの等容量2連とFM用:(max)22.5pFの2連が一体になった4連バリコンです。 ほかTVチューニング用:100KΩの可変抵抗器が連動します。 背面に(max)9.5pFのトリマコンデンサが4つ付いてます。(日本製)

 良い買い物でしたが残りを使い切れないので、いずれ頒布アイテムにするつもりです。

【足ピン矯正器:ピン・ストレートナー】
 中古品のmt管は足ピンが曲がっていることが多いです。 そのままソケットへ刺すと感触が悪くてしっくりきません。

 そこで写真のピン矯正器の登場です。これで足ピンを整えてやると挿入がずっとスムースになります。

 TV-7/Uなど真空管試験機には矯正器が付属していて、テスト用ソケットの保護の意味からも矯正器の使用が推奨されていたと思います。

 国内のショップやオークションで探すと高額です。 米国のお店や中華モノを探すか、eBayも良いかも知れません。使ってみたら有難さがわかります。mt管をたくさんお持ちのお方にお薦めです。(これは頒布の対象ではありません・Sorry)

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 電池管の整理を兼ねて在庫確認していたら、1R5系のコンバータ管が意外にありました。 -SF管ならともかく、普通の1R5はフィラメント電流が大きいので積極的に使いたいとも思いません。 しかし乾電池の電源に拘らなければ支障にはなりません。 この機会に評価して活用に備えておくことにしました。 1AB6/DK96、1R5/-SFなどコンバータ管ばかり使い道がない感じですがI-F Amp.にも使えます。 シグナル・グリッド:g3 はリモートカットオフ特性なので工夫で活きます。 もう買い足すつもりはないのであとは工夫あるのみ。w

 いずれ真空管ジャンクは処分される運命なので、それまでに少しでも通電して遊んでみるのが目標です。次回はAFアンプに続く予定です。 用途が限られ性能も芳しくない電池管ですが、徐々に用法が掴めて活用の目処がたつことで幾らか魅力的(?)に感じ始めています。 ではまた。 de JA9TTT/1

*何かご質問とかあればコメント欄を使ってください。
→わかっている範囲で対応いたします。

*突発的案件発生のため更新の間があくと思います。次回・気長にお待ちを!

(つづく)fm