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2石再生式受信機:0-T-1】
0-T-1(ゼロ・ティー・ワン)とは、高周波増幅ナシ(ゼロ)、トランジスタで検波(T)、そして低周波増幅1段と言う、受信機の形式を示しています。
たったの2石でも上手に作ればかなり良く聞こえる短波受信機になります。 もちろん、最低限の構成なので0-T-2にしてスピーカを鳴らすとか、高周波増幅を追加して1-T-2にするなど、発展も楽しめるでしょう。
中波帯の入門ラジオではレフレックス方式にして2石でスピーカを鳴らす形式も多いのですが、こうした再生式受信機とはまた異なるものでしょう。 HAM用再生式受信機では常に再生度を調整しながら受信します。 発振寸前の状態でAMを受信し、軽い発振状態まで再生を強めればCWのビートが聞こえます。 再生作用による選択度と利得の上昇が体感できる受信機なのです。
受信にあたって、再生度の加減は言うまでもありませんが、アンテナとの結合具合の加減もとても大切です。 良好に受信するためには操作に感性やスキルが必要なので相応の訓練を要します。 簡単な回路なので、お子様向きのように見えますが、良く聞こえる所まで常に加減しつつ受信するのは難しいものです。 製作にあたっても回路図の裏まで見透かせないと本領を発揮し得ないですから、何とも「おとな」のRadioなのです。 尤も今どきの子供はラジオなんかに興味は示さないでしょうけれど。 ラジオなんか弄ってみたいのは大昔ラジオ少年だった爺さんだけでしょう。(笑)
この「再生気味」、「発振気味」と言うのはアナログ回路をいじる者にはとても役立つ感性だと思います。 一度は体験して感性を磨いておくと大いに役立つのですが・・・アナログ回路そのものが衰退してしまいましたね。
回路はJA1FG梶井OM(故人)によるものです。 作り易いよう原典に注釈などを加えておきました。 1960年代の設計ですからゲルマニウム・トランジスタが使われています。 もちろん現代的にシリコン・トランジスタ化しても良いのですがバイアス抵抗の加減を要するかもしれません。 ゲルトラを溜め込んでいるお方もあるようですから、こんな受信機でノスタルジックな製作を楽しまれては如何でしょうか?
参考:回路定数を検討してみましたが、そのままシリコンTrに置き換えても概ね大丈夫なようです。 Q1,Q2ともに少々古典的ですが2SA495や汎用品の2SA1015Yあたりでも良いかもしれません。もう少し高周波(RF)向きのトランジスタを探すのも面白いと思います。 あるいは電源とC7,C8,C10の極性を変更してSi-NPN-Trに置き換えるのも良いでしょう。Q1には2SC1923Yや2SC2668Yがお勧めです。Q2は2SC1815Yや2SC2458Yが良いでしょう。ゲルマニウム・トランジスタに比べてバラツキが少ないので製作の再現性は向上します。
受信周波数範囲ですが、回路図通りのコイル(L=約3.8μH)で概略4.5MHz〜13MHzがカバーできます。 HAMバンドとしては7MHz帯と10MHz帯の受信が可能です。 BCL用としては6MHz帯、9MHz帯、11MHz帯の各放送バンドが受信できます。 もし受信範囲が広過ぎるようでしたら主バリコンをもっと小容量にし、固定コンデンサと組み合わせ受信範囲を狭めて下さい。
短波帯の受信機にはバーニヤ・ダイヤルや糸掛け式のような減速ダイヤルメカが是非とも必要です。 そのうえで小容量のスプレッド・バリコンも設けます。 減速ダイヤルなしでは同調がシビア過ぎて、マトモな受信はできないでしょう。 回路は良く似ていても中波帯のラジオとは大きく異なる部分です。(どんな短波帯受信機でもダイヤル機構の部分には十分な手間を掛けるべきです。それがオモチャか実用品かの分かれ目になります)
どちらも短波帯に使える代表的なゲルマニウム・トランジスタです。 再生検波のQ1のところに使うものですが、他にも同様に使えるものはたくさん存在します。
トランジスタ規格表のfαbまたはftの項目を見て30MHz以上あれば十分使える可能性があると思って良いでしょう。 少々低いと思っても試してみる価値はあります。 古いトランジスタは同じ型番でもバラツキが大きいからです。
もちろん、もっと高い周波数まで使えるトランジスタでも良いのですが、再生検波には向き・不向きがあるので差し替えてみると面白いでしょう。 最大コレクタ電流が小さくコレクタ損失も小さめのもの・・即ち、トランジスタ・チップのサイズが小さいものが良好と言う傾向があります。 良いものは再生の掛かり方がスムースです。 向かないものは、いきなり強い発振状態に移行してしまい再生の加減がしにくいのです。
写真の2SA70は4本足です。これはメタル缶をGNDにアースするための「シールド」の引き出し線があるからです。 通常は回路のアースに接続して使用します。 多くのメタル缶入り高周波用トランジスタがシールド付きでした。 但しメタル缶トランジスタの「缶」は個別の引き出し線があるもののほかに、コレクタ、ベース、エミッタの何れかのリード線に接続されたもの、或はまったく無接続のものなど様々なので注意を要します。 シリコン・トランジスタに比べてゲルマニウム・トランジスタは電気的にも熱的にも遥かに脆弱ですから、製作時の扱いには注意を要します。
いまならAmidonのトロイダルコアでも使う方が良いかも知れません。 オリジナルの回路では200816と言うエヤーダックス・コイルが使われていました。
直径が20mmで、巻線径は0.8mm、そしてピッチが1.6mmと言うものです。 拙宅にも幾つか昔買ったものが残っていましたが、残念ながらオリジナルで指定のものはありませんでした。 ボビンに巻いたコイルでも十分なので、20mmの樹脂製のパイプに巻き線すれば代替できます。
HAM用品の販売店:トヨムラが生産委託し永い間販売していたのですが、1970年代の終わりに生産中止になりました。 製造委託先は個人の会社だったそうで、ご高齢のために仕事をやめたと言うように聞いています。 エヤーダックス・コイルは真空管時代のコイルでした。大きくてトランジスタ時代にはマッチしなかったので需要も暫減していたのでしょう。 しかし生産中止はアンテナ関係やリニヤアンプの自作家にとってはかなり痛手でした。過去の多くの製作記事がそれを使う前提で書かれていたのですから。
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Scout Regen Receiver】
海外では再生(Regeneration)式の受信機が(今でも)入門用として推奨されています。 写真はJG1EAD仙波さんが最近
キットを輸入されたものです。(今年の忘年会@新宿で撮影:TNX! JG1EAD)
コイル・ボビンはステアタイト製のように見えますが樹脂製だそうです。 フィードバック・コイルとの結合度の関係から、トロイダルコアよりも空芯コイルの方が向いているようです。 再生度の加減はVCによる方法です。 きちんとしたアンテナを付けるとHAMバンドも結構聞こえるそうです。
ところで、標題の「Gennyちゃん」ですが、再生式受信機の愛称だそうです。 再生式受信機は米国でも古くからポピュラーで「ジェニーちゃん」の愛称で親しまれていたとか。 なお超再生受信機は「スーパー・ リゼ」と言います。「スーパー・ジェニーちゃん」じゃないのですね。hi hi (再生式、超再生式を区別せずにRegennyとかGenny Receiverと言うようです)
# もう少し高級だが案外作り易い4石式再生式受信機のBlogは:=>
こちらから。
# 再生式受信機の特集があります。第一回のBlogは:=>
こちらから。
(おわり)
(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)