【AD8307Aを使った対数圧縮型パワーメータ】
【QRP-Power Meter】
暫く前からAD8307Aと言うICが売られています。 入力信号の大きさに対して出力の大きさは対数的に変化する、一種のLogアンプのICです。 入力信号は高周波(RF)電圧が想定されています。直流の電流や電圧が対象ではありません。 従って昔からあるようなトランジスタのベース電流:Ibとベース・エミッタ間電圧:Vbeの指数特性を利用した対数アンプとは異なるものです。
出力は入力されたRF電圧の大きさに対数で(Logで)比例した直流電圧として得られます。 簡単に言えば、出力端子には入力された高周波電圧に従った直流電圧が得られる訳です。その直流電圧は、RF電圧の大きさに比例するのではなく、対数で比例します。
活用法の一例としてAD8307Aを上手に使ってパワー計を作ると:(1)ごく小さなパワーが高感度で測定できる。(2)大きなパワーでも振り切れにくい。・・・と言った特徴を持ったRF電力の測定器が作れます。
写真の左側は私がAD8307ANを使って製作したパワーメータです。80dBフルスケールのほか10dB、25dB、50dBフルスケールで測定でき、さらに任意の電力レベルでオフセットが掛けられその部分を細かく読めるようになっています。
また、右のコンパクトなものはJR1ING菊川さん(2008年6月 Silent Key)がAD8307ARを使って製作されたものです。 コンパクトなワンレンジで製作され小型ながら拘りを持った作品です。これは故人の形見として頂いた宝物です。
☆
AD8307Aを使った製作は一時期かなり流行りましたが最近は見ないようです。ICチップが比較的高価なのと、製作したRFパワー計なりRF電圧計がLog目盛り(デジベル単位)では直感的ではなくて使いにくいからではないでしょうか? しかし、RFや電子回路のベテランでしたらdBの扱いには精通しているでしょうから、直接dBで数値が得られるのはかえってFBだとも言えます。
最近になって大陸方面から面実装タイプのAD8307A(R)が安価に手に入ったとのことで、テストのご要望がありました。 そこで以前製作した自作品に装着して試してみました。 結論から言いますと「正常に使える」ようです。 かなり安価だったそうですが、FBではないでしょうか。用途は限定されそうですが有効活用されることを期待しています。
【自作品の中身】
自作測定器の基板を見たからと言ってさして役立つとは思えませんが、このようになっています。(笑) 基板外にレンジスイッチやオフセットのポテンショメータ、指示メータなどが付いています。
肝心のAD8307Aは基板の左端に実装しています。 500MHzまで性能を発揮させるのでしたら、ICソケットなど使わず直接最短距離で入力コネクタに直結すべきです。 ここではそこまでの周波数特性は追求せず100MHzあたりが目標です。 金メッキされた小型コネクタの裏面にチップ型の終端用抵抗器などが最短距離で実装され周波数特性の劣化を最小限に抑えるようにしています。 AD8307Aを出た信号は単なるDC電圧ですから高周波の配慮は必要ありません。
【参考回路図】
まったく回路図がないと寂しいので、便宜的に載せましたが詳細は掲載誌の記事をご覧になって下さい。
部品定数はもちろんですが、調整方法についても順を追って説明されています。回路図だけがあっても作れるものではないので部品定数は省いています。
但しこれ単独で製作をお奨めするようなものではありません。 もともと、RF発振器とセットで使い水晶振動子の精密な周波数特性や、(自作)クリスタル・フィルタの特性を観察するために製作したものです。
スイープ・オシレータやオシロスコープなどとセットで使いますと、縦軸dB目盛りで管面に周波数特性を描かせることができます。 詳細は雑誌記事でご参照下さい。 雑誌のバックナンバーは、古書、図書館、JARL資料室、出版社のコピーサービスを使うなどの購読方法があります。(掲載誌:CQ Hamradio 2006年4月号pp124〜129)
【AD8307AN】
AD8307ANの部分を拡大してみました。 拡大して見たからと言って特に意味はありませんが、次の写真を説明する都合で掲載しています。
AD8307Aは周波数の上昇とともに感度誤差が大きくなって行きますが、カタログスペックによればおおよそ500MHzまで実用になります。
本格的に性能を発揮させるためには、ICソケットなど使用せず専用基板を起こして50Ωに設計されたストリップラインのパターンに50Ωの終端抵抗とともに直付けすべきでしょう。 そのようにして初めてカタログの性能が実現できます。
【AD8307AR】
写真はテストを依頼されたAD8307ARです。これは表面実装タイプです。
通販で中国から安価に手に入ったのだそうです。 最近はそのようにして電子部品を調達するお方が増えてきました。 しかし、まがい物(フェイク)も多いらしく、高周波用のパワートランジスタではほぼ全滅だったと言うようなお話も聞きました。
このAD8307Aもかなり安価だったそうです。それだけに「印刷だけの偽物」の可能性も否定できません。 誰かテストして欲しいと言うご要望はごもっともでしょう。
ここでは、容易に比較テストを行なう目的で変換基板に載せています。 対象物の中身が間違いなくAD8307Aであることを確認できれば良いのでこのようにしました。 10MHzあたりで比較テストを行なうつもりですが、その周波数なら変換基板に実装してもまず問題はないと思います。ICチップの真偽くらいなら正しく判定できるでしょう。
【10MHz・0dBmでテスト】
自作のLog Power-MeterにRF信号発生器・レベルジェネレータから0dBm(50Ω)の高周波電力を加えてみました。 周波数は取りあえず10MHzです。 周波数特性を追求しても変換基板への実装ではあまり好結果は望めません。従って周波数特性の追求は程々にしておきます。
ソケットからAD8307ANを取外し、AD8307AR(被検査品)に載せ換えてメータを読んでみました。 写真のように少しのズレもなく0dBmピッタリを示しました。
これだけでは不安なので、10dB刻みに信号を変化させてメーターの読みを確認しました。 ローレベルの領域で正しく測定するためには、チップ個々のバラツキを補正するためのオフセット調整が必要です。 従って単純に交換しただけの未調整のままでは誤差が大きくなりました。 しかし、-50dBmくらいまでなら目盛りと良く一致していましたので評価対象のチップは正常に動作していると思って良いでしょう。 それ以下のローレベルでは個別チップごとに調整が必要なので、精度が悪くなっても異常ではありません。
☆
QRPPerでもせいぜい1mWまででしょうから、このパワー計の単独では高感度すぎます。 QRPerが精密にLow-Powerを測定するには悪くないパワー計かも知れません。但し、そのためには10dBの固定減衰器(アッテネータ)を何個か用意しておく必要があると思います。他に-20dBカプラもあったら便利です。-20dBカプラは容易に自作できます。 校正次第ではありますが、良いアッテネータを手に入れておけば良い精度でQRPppなパワーでオンエアする際の助けになるでしょう。 他にはIF-Ampの出力部に置き、AD8307Aの出力をAGC電圧として取出しIF-Ampの出力がLogで比例するように制御を行なう・・などの考えもありそうです。 まあ、そんな所が思いつく用途ではないかと思います。ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)fm
2017年2月26日日曜日
【回路】Akizuki DDS-OSC
【DDS:Akizuki DDSモジュールの挽歌】
【秋月のDDS発振器】
これは有名な秋月電子通商の「DDS発振器」です。多くの自作好きのお方と同じように過去に何台も製作しています。
一見して周波数設定の部分をジャンパ・プラグ式で製作したので、DIP-SW式と違うように見えるかもしれません。 他にも少し変更した箇所があって、あとで説明があります。
もう既に「中華DDSモジュール」でさえ盛りを過ぎた今頃になって何で「秋月DDS」なのだろうか? 疑問を持たれたかも知れませんね。
ここに来て製作した理由は2つあります。
(1)理由の一つは、このまま活用しないと勿体ないと思ったからです。このキットは最近買ったものではありません。かなり前に買ったまま死蔵していたのです。活用しなければいずれゴミになります。
(2)二つめの理由は検討している目的にマッチしていそうだからです。今となっては高性能ではありませんが発生周波数を半固定で使うには便利そうなのです。 アキュムレータのビット数も適当です。
☆
以下、思い付きのニーズからリバイバルさせてみたものです。 既に高性能なDDSモジュールがたくさん登場しています。これを今どき使う必然性はあまりないでしょう。 しかし、この秋月DDSが登場したころを懐かしく思い出しながら、味わいつつ製作したいと思います。 今回は単にキットを組み立てるだけでオシマイです。懐かしさは感じられても何かの役に立つとも思えません。単なる製作記録なのです。(笑)
【自分で作る必要があった】
秋月のキットには有料の製作サービスが有ったと思います。 しかしDDS発振器が必要なら殆どの人は自分自身で製作したはずです。
これ単体でも最低限の使い方ができるように考えられています。 基板の端面に並んだDIP-SWで発振周波数のセットができたからです。(実際にはマイコンで制御しないと実用性はあまりないのですが・笑)
DIP-SWで周波数セットするのは手間が掛かります。 欲しい周波数を決めたら、クロックの周波数とアキュムレータのビット数からセットすべき数値を求めます。 しかもその数値を純2進数でDIP-SWにセットする必要があります。 関数電卓を駆使してセットすべきビット列を求めなくてはならないのでした。
それでもマイコンのプログラムなしに単独でテストできるのは大きなメリットかも知れません。作ってすぐにテストできるからです。 今回、リバイバルさせてみようと思ったのもそんな特徴からです。 周波数を半固定して組み込み用に使います。そのような時には外付けマイコンなしで済むのは便利です。
キットではハンダ付けの難しい部品は予め実装済みです。 DDS-ICとR-2R式のDAコンバータ用抵抗アレーは基板にハンダ付けされていました。
初期のバージョンではクロック発振器が16.777216MHzになっていた記憶があります。あるいは16MHz丁度の発振器だったかも知れません。 その後、高い周波数が発生できるように67.108864MHzに変更されました。 現在でも後継のキットが発売されていますが(*注)、クロック発振器が写真とは異なるタイプに変更されています。プリント基板もそれに合わせたニューバージョンに更新されています。
(*注:当初の6,400円が5,400円に値下げされたあと、暫く販売されていましたが現在はすべて販売終了したもようです。その役割も終わったと言う事でしょうね。2017.05.14)
【部品はそれほど多くない】
写真に写っている部品がすべてです。 大した部品数ではないので容易に製作できます。
購入時には周波数設定用のDIP-SWが3つ付属していたような気がします。 しかし何かの製作に流用したらしく欠品していました。
基本的に付属してきた部品をそのまま使って製作します。 但しキットのままではローパス・フィルタ(LPF)の遮断周波数が低すぎました。 フィルタ部分のみ手持ち部品に置き換えることにします。 また、テストが済んだらクロックの67.108864MHzは外部から与えます。テスト時のみ付属の発振器を使います。
【DDSの心臓部:Wellpine-DDS】
心臓部のDDS-ICです。 Wellpine社というのは設計会社だったように思います。 製造はどこかの半導体メーカーのはずです。型番から何となく東芝製のようにも見えますが・・・。
中身はゲートアレーなのではないでしょうか? DDSの論理回路を汎用のゲートアレー上に実現したものと想像しています。
ピン数が多くハンダ付けが難しいので、写真のように予め右隣のD/A変換用R-2Rラダー抵抗器と一緒に実装済みになっています。 従って残りは普通のリード線型の電子部品をハンダ付けするだけですから作るのは容易です。
【旧キットはきれいなクロック】
これはキット付属のクロック発振器です。 消費電流が大きい、周波数の微調整ができない・・・などの欠点はありますが、出力信号そのものは奇麗だったのでDDS発振器の基準クロックとしては支障のないものでした。
暫く前のBlog(←リンク)に書きましたが、いま手に入る「秋月DDSキット」にこの写真のタイプは付属しません。 写真の物が調達できなくなってから「プログラマブル・水晶発振器」を使ったクロックが付属するようになりました。 特に信号の奇麗さを要求されない用途なら新しいプログラマブル・水晶発振器でも支障はないかも知れません。
しかしHAM用の送・受信機に使うなら写真の旧クロック発振器の方が遥かに望ましいのです。 そうは言っても手に入らないのですから仕方ありません。もし最近購入したキットを製作するなら、クロックは前回のBlog(←リンク)のような発振器を作って与えたいところです。
【組立完成】
写真は秋月DDSモジュールの完成状態です。
一部に付属にはない部品を使っています。そのため多少見た目が違うかも知れません。
周波数設定用のジャンパ・プラグは未挿入です。 このあと必要な周波数に合わせて所定の位置に装着します。
様々に周波数を変化させたいなら外付けマイコンでシリアル・コントロールする方が良いでしょう。 しかし、なかば恒久的に同じ周波数を発生させるのが目的ならジャンパ・プラグのセットで周波数を「プログラミング」する方法が手っ取り早いです。このあたり、どの様に使うのか目的次第でこのキットの扱い方も変わってくるところでしょう。
【LPFは部品定数変更】
DDSに必須のローパス・フィルタですがキットのままでは約8MHzの遮断周波数になっていました。
クロック周波数が低い時にはそれが適当ですが、67.108864MHzのクロックで使うには遮断周波数が低すぎて最適とは言えません。
ここでは遮断周波数:fcが約15MHzになるように変更しています。 具体的にはL1〜L3に0.47μHを使います。C12とC15は220pF、C13とC14は440pF(=220pFのパラで実現)にしました。 これで15MHzあたりまで使えるようになります。
【クロックは着脱式】
付属してきたクロック発振器は完成後の基板テストの時だけ使用します。 ハンダ付けしてしまうと取り外すのは厄介です。ここでは「ピンソケット」という部品を使って着脱式にしました。
テスト時には写真のクロック発振器を装着し動作確認が済んだらクロックを外部から与えるようにします。 なお、外部クロックで動作させる際に追加を要する抵抗器:R20(=100kΩ)は基板の裏面に実装しておきました。この抵抗器は付けたままで支障ありません。外部クロックの与え方次第ですが、この抵抗はなくても良いことが多いはずです。
☆
ありふれたキットを当たり前のように組み立てただけです。 他のDDS発振器が登場している今となっては少々色あせて見えるかも知れません。 しかし、1990年代の末にこのキットが登場した時のインパクトたるや強烈でした。 PLL発振器では困難だった1Hzや10Hzといった細かいステップで周波数変化が可能な発振器がいとも容易に可能になったからです。 PLLのような自動制御に付きものだった過渡応答のようなものはありません。PLLで細かい周波数ステップを実現するには多大な努力が必要でした。その殆どすべてが一発で解消されたのですから・・・。
DDS(ダイレクト・デジタル・シンセサイザ)はそれ以前から存在していた技術です。しかし、それはたくさんのICを並べたとても高級な製作でした。 それがキット化されコンパクトで扱い易い形状で発売されたのです。 無銭家にとって6,400円はお手軽とは言えませんが「高度な技術を買う」と考えれば十分納得できるものでした。 だからこそ死蔵せずに活躍の機会を与えてやりたいと思うのです。
それで、きちんと動作したかって? ずいぶん長い間、眠り続けてきたキットでしたが大丈夫でした。 付属してきたクロック発振器の状態でちょうど10MHzが出るようにセットしてみました。 出力は正弦波で、0.7Vppくらい得られました。 肝心の周波数を測定した結果は3.7Hzくらい低くなりました。これは0.4ppmくらいのマイナス誤差です。 クロックの周波数精度は±5ppm程度でしょう。0.4ppmの誤差なら十分スペックに入っています。 これで製作したDDS発振器の動作は正常だと確認できました。 ではまた。 de JA9TTT/1
【秋月のDDS発振器】
これは有名な秋月電子通商の「DDS発振器」です。多くの自作好きのお方と同じように過去に何台も製作しています。
一見して周波数設定の部分をジャンパ・プラグ式で製作したので、DIP-SW式と違うように見えるかもしれません。 他にも少し変更した箇所があって、あとで説明があります。
もう既に「中華DDSモジュール」でさえ盛りを過ぎた今頃になって何で「秋月DDS」なのだろうか? 疑問を持たれたかも知れませんね。
ここに来て製作した理由は2つあります。
(1)理由の一つは、このまま活用しないと勿体ないと思ったからです。このキットは最近買ったものではありません。かなり前に買ったまま死蔵していたのです。活用しなければいずれゴミになります。
(2)二つめの理由は検討している目的にマッチしていそうだからです。今となっては高性能ではありませんが発生周波数を半固定で使うには便利そうなのです。 アキュムレータのビット数も適当です。
☆
以下、思い付きのニーズからリバイバルさせてみたものです。 既に高性能なDDSモジュールがたくさん登場しています。これを今どき使う必然性はあまりないでしょう。 しかし、この秋月DDSが登場したころを懐かしく思い出しながら、味わいつつ製作したいと思います。 今回は単にキットを組み立てるだけでオシマイです。懐かしさは感じられても何かの役に立つとも思えません。単なる製作記録なのです。(笑)
【自分で作る必要があった】
秋月のキットには有料の製作サービスが有ったと思います。 しかしDDS発振器が必要なら殆どの人は自分自身で製作したはずです。
これ単体でも最低限の使い方ができるように考えられています。 基板の端面に並んだDIP-SWで発振周波数のセットができたからです。(実際にはマイコンで制御しないと実用性はあまりないのですが・笑)
DIP-SWで周波数セットするのは手間が掛かります。 欲しい周波数を決めたら、クロックの周波数とアキュムレータのビット数からセットすべき数値を求めます。 しかもその数値を純2進数でDIP-SWにセットする必要があります。 関数電卓を駆使してセットすべきビット列を求めなくてはならないのでした。
それでもマイコンのプログラムなしに単独でテストできるのは大きなメリットかも知れません。作ってすぐにテストできるからです。 今回、リバイバルさせてみようと思ったのもそんな特徴からです。 周波数を半固定して組み込み用に使います。そのような時には外付けマイコンなしで済むのは便利です。
キットではハンダ付けの難しい部品は予め実装済みです。 DDS-ICとR-2R式のDAコンバータ用抵抗アレーは基板にハンダ付けされていました。
初期のバージョンではクロック発振器が16.777216MHzになっていた記憶があります。あるいは16MHz丁度の発振器だったかも知れません。 その後、高い周波数が発生できるように67.108864MHzに変更されました。 現在でも後継のキットが発売されていますが(*注)、クロック発振器が写真とは異なるタイプに変更されています。プリント基板もそれに合わせたニューバージョンに更新されています。
(*注:当初の6,400円が5,400円に値下げされたあと、暫く販売されていましたが現在はすべて販売終了したもようです。その役割も終わったと言う事でしょうね。2017.05.14)
【部品はそれほど多くない】
写真に写っている部品がすべてです。 大した部品数ではないので容易に製作できます。
購入時には周波数設定用のDIP-SWが3つ付属していたような気がします。 しかし何かの製作に流用したらしく欠品していました。
基本的に付属してきた部品をそのまま使って製作します。 但しキットのままではローパス・フィルタ(LPF)の遮断周波数が低すぎました。 フィルタ部分のみ手持ち部品に置き換えることにします。 また、テストが済んだらクロックの67.108864MHzは外部から与えます。テスト時のみ付属の発振器を使います。
【DDSの心臓部:Wellpine-DDS】
心臓部のDDS-ICです。 Wellpine社というのは設計会社だったように思います。 製造はどこかの半導体メーカーのはずです。型番から何となく東芝製のようにも見えますが・・・。
中身はゲートアレーなのではないでしょうか? DDSの論理回路を汎用のゲートアレー上に実現したものと想像しています。
ピン数が多くハンダ付けが難しいので、写真のように予め右隣のD/A変換用R-2Rラダー抵抗器と一緒に実装済みになっています。 従って残りは普通のリード線型の電子部品をハンダ付けするだけですから作るのは容易です。
【旧キットはきれいなクロック】
これはキット付属のクロック発振器です。 消費電流が大きい、周波数の微調整ができない・・・などの欠点はありますが、出力信号そのものは奇麗だったのでDDS発振器の基準クロックとしては支障のないものでした。
暫く前のBlog(←リンク)に書きましたが、いま手に入る「秋月DDSキット」にこの写真のタイプは付属しません。 写真の物が調達できなくなってから「プログラマブル・水晶発振器」を使ったクロックが付属するようになりました。 特に信号の奇麗さを要求されない用途なら新しいプログラマブル・水晶発振器でも支障はないかも知れません。
しかしHAM用の送・受信機に使うなら写真の旧クロック発振器の方が遥かに望ましいのです。 そうは言っても手に入らないのですから仕方ありません。もし最近購入したキットを製作するなら、クロックは前回のBlog(←リンク)のような発振器を作って与えたいところです。
【組立完成】
写真は秋月DDSモジュールの完成状態です。
一部に付属にはない部品を使っています。そのため多少見た目が違うかも知れません。
周波数設定用のジャンパ・プラグは未挿入です。 このあと必要な周波数に合わせて所定の位置に装着します。
様々に周波数を変化させたいなら外付けマイコンでシリアル・コントロールする方が良いでしょう。 しかし、なかば恒久的に同じ周波数を発生させるのが目的ならジャンパ・プラグのセットで周波数を「プログラミング」する方法が手っ取り早いです。このあたり、どの様に使うのか目的次第でこのキットの扱い方も変わってくるところでしょう。
【LPFは部品定数変更】
DDSに必須のローパス・フィルタですがキットのままでは約8MHzの遮断周波数になっていました。
クロック周波数が低い時にはそれが適当ですが、67.108864MHzのクロックで使うには遮断周波数が低すぎて最適とは言えません。
ここでは遮断周波数:fcが約15MHzになるように変更しています。 具体的にはL1〜L3に0.47μHを使います。C12とC15は220pF、C13とC14は440pF(=220pFのパラで実現)にしました。 これで15MHzあたりまで使えるようになります。
【クロックは着脱式】
付属してきたクロック発振器は完成後の基板テストの時だけ使用します。 ハンダ付けしてしまうと取り外すのは厄介です。ここでは「ピンソケット」という部品を使って着脱式にしました。
テスト時には写真のクロック発振器を装着し動作確認が済んだらクロックを外部から与えるようにします。 なお、外部クロックで動作させる際に追加を要する抵抗器:R20(=100kΩ)は基板の裏面に実装しておきました。この抵抗器は付けたままで支障ありません。外部クロックの与え方次第ですが、この抵抗はなくても良いことが多いはずです。
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ありふれたキットを当たり前のように組み立てただけです。 他のDDS発振器が登場している今となっては少々色あせて見えるかも知れません。 しかし、1990年代の末にこのキットが登場した時のインパクトたるや強烈でした。 PLL発振器では困難だった1Hzや10Hzといった細かいステップで周波数変化が可能な発振器がいとも容易に可能になったからです。 PLLのような自動制御に付きものだった過渡応答のようなものはありません。PLLで細かい周波数ステップを実現するには多大な努力が必要でした。その殆どすべてが一発で解消されたのですから・・・。
DDS(ダイレクト・デジタル・シンセサイザ)はそれ以前から存在していた技術です。しかし、それはたくさんのICを並べたとても高級な製作でした。 それがキット化されコンパクトで扱い易い形状で発売されたのです。 無銭家にとって6,400円はお手軽とは言えませんが「高度な技術を買う」と考えれば十分納得できるものでした。 だからこそ死蔵せずに活躍の機会を与えてやりたいと思うのです。
それで、きちんと動作したかって? ずいぶん長い間、眠り続けてきたキットでしたが大丈夫でした。 付属してきたクロック発振器の状態でちょうど10MHzが出るようにセットしてみました。 出力は正弦波で、0.7Vppくらい得られました。 肝心の周波数を測定した結果は3.7Hzくらい低くなりました。これは0.4ppmくらいのマイナス誤差です。 クロックの周波数精度は±5ppm程度でしょう。0.4ppmの誤差なら十分スペックに入っています。 これで製作したDDS発振器の動作は正常だと確認できました。 ではまた。 de JA9TTT/1
【コラム:はんだコテ】(おわり)nm
製作には2回前のBlogで紹介した「温調式ハンダこて」(←リンク)を使ってみました。細かいパターン部分の作業に付属していたコテ先チップはやや大きめでしたが、概ね支障なくハンダ付けできました。 温度設定は300℃で使いました。焼け過ぎることもなくハンダの乗りも良好です。 但しベタGNDの部分では長めにコテを当てる必要がありました。なかなか快適に作業できましたが、もう少し高めの温度設定でも良さそうです。
2017年2月11日土曜日
【回路】67.108864MHz OSC, Adjustable.
【回路設計:周波数調整できる67.108864MHzの発振器】
【ブレッドボードで試作】
あまり手が進まなかったので小ネタの紹介です。今回のテーマは67.108864MHzの水晶発振器・水晶発振回路です。
☆
DDSで精度の高い発振周波数を得たいと言うテーマでクロック発振器を模索しています。 この発振器はその目的のために設計した特殊なものです。作ってみたい人は稀ではないでしょうか? 自家用メモの域を出ない内容ですし地味なテーマなので覗き見ても退屈でしょう。 こんなところで時間を浪費しないでもっと楽しいサイトへジャンプをお奨めします。ジャンプしたらもう帰ってこなくていいんですよ。(笑)
☆ ☆
67108864と言う数字は2を26乗した値です。 では、なぜこんな周波数が欲しいのかと言えば、DDS発振器の基準クロックに使うと正確な1Hz刻みの発振周波数を得るのが容易になるからです。
例えば、DDS-ICにAD9834を使うとします。 AD9834のアキュームレータは28ビット長なので、発生できる周波数の刻みはクロック周波数の2の28乗分の1になります。 従って67.108864MHzのクロックを与えると得られる周波数の刻みは0.25Hzになります。クロックさえ正確なら、この0.25Hzに小数点二位以下の端数はまったくありません。 例えば40,000,000倍で10MHzちょうどが得られる訳です。そしてこの10MHzに周波数の端数は付きません。(40,000,000は2進数表記では、0010 0110 0010 0101 1010 0000 0000となる)
ほとんどの用途では必要周波数に対して1Hz以下の誤差で設定できれば支障はありません。 受信機や送信機で必要とされる周波数精度は厳しく見積もっても誤差±数Hzでしょう。それにSSBでは相手局にゼロインしているのかが問題になるのであって、周波数の絶対精度は問題ではありません。あるいはCWなら各自が好みの音調でダイヤルしているので完全なゼロインなど要求されません。 従って、必ずしもこうした特定の周波数で与える必要はありません。 マイコンのプログラム処理によって容易に誤差1Hz以内の周波数に設定できるからです。あとはその周波数でずっと安定していれば良いのです。
しかし非常に精密な測定のような用途では設定誤差がまったく含まれない正確な周波数が欲しくなることがあります。 その為にはDDS-ICに与えるクロック周波数は任意の周波数ではダメです。プログラム処理ではごく僅かな誤差が残存してしまい取り除けないからです。 従ってクロックは2のN乗の周波数であって、しかも調整によって必要とする周波数へ合わせ込めなくてはなりません。このようなことから周波数調整が可能な2のN乗周波数の発振器が欲しくなるのです。
DDS-ICに与える基準クロックなので、2のN乗周波数でもなるべく高い周波数が有利です。AD9834を例にとれば、2^25=33554432あるいは2^26=67108864が適当でしょう。 具体的な周波数としては33.554432MHzまたは67.108864MHzになります。 用途次第ですが、高周波の発生が目的なら2^24=16777216(→16.77216MHz)ではやや低すぎます。そうかと言って、2^27=134217728(→134.217728MHz)ではAD9834が受け付けてくれません。(クロック上限周波数が高いAD9850やAD9851なら大丈夫です)
【67.108864MHzの発振器】
図は67.108864MHzに調整可能な水晶発振回路です。 水晶発振器ですから大きく周波数を変えることはできません。もちろん目的の67.108864MHzに調整で合わせることはできます。
ただし、それがずっと維持できるだけの安定度はありません。 一番下の桁は4で40Hzを意味しますが、それは67MHzに対して約0.6ppmにあたります。 いくら調整しても長時間維持することは不可能です。どうしても維持したいなら、恒温槽(オーブン)に入れるなどの対策が不可欠でしょう。
もしDDSで得る周波数の精度が1ppm程度で良いなら、この67MHzの方も絶対精度は1ppmで良いので幾らか楽になります。 ±67Hz以内の周波数安定度が維持できれば済みます。 まあしかし水晶発振器とは言えども無補償で1ppmの周波数安定度を維持し続けるのは困難と言えます。従って1ppmの精度を求めるなら時々校正しながら使うのが現実的です。
発振回路、及び逓倍器のいずれにも中華製のRF用トランジスタ:S9018Hを使いました。 国産のトランジスタでも支障ありません。 67MHzは大して高い周波数ではありませんが一応VHF帯です。 ここで使うトランジスタはft=300MHz以上の小信号用なら何でも大丈夫です。 しかし2SC1815のような汎用トランジスタは不適当です。 S9018Hは「秋葉原価格@¥10-」くらいのチープなRF用トランジスタです。でも、ft>800MHzですから、このくらいの周波数ならとても快適に動作してくれます。(中華トランジスタ:S9018HのShopping Report ←リンク) 写真のブレッドボード試作例では発振部のQ1に2SC2668Yを使っていますが、S9018Hでまったく支障ありません。足ピンの並びが異なるので気をつけます。
2逓倍回路はPush-Push形式にしました。トランジスタ1石の逓倍回路でも周波数の2逓倍は可能ですが基本波の通り抜けが多いのが欠点です。 従って1石式でやるなら後続のフィルタはしっかりしたものが必要です。 Push-Push形式は基本波の通り抜けがずっと少ないので後続のフィルタが簡単になります。 安価なトランジスタを1つ追加するだけで、スプリアスの除去にたいへん効果があります。 なお、回路図のようにダイナミック・バランスがとれるようにして一段と不要成分の漏洩を低減するようにしました。
【出力周波数】
出力周波数です。 この例ではユニバーサル・カウンタで測定しています。もちろん普通の周波数カウンタでOKです。 トリマ・コンデンサ:C6で周波数調整します。 但し、発振トランジスタ:Q1のコレクタ側の同調状態によっても幾らか発振周波数が変化します。 もしC6だけでうまく合わせ込めない時にはC4も微調整してみます。
この状態で暫く様子を見ていましたが、10Hzの桁あたりが漂動しているようでした。 従って常に67.108864MHzちょうどが維持できる訳ではありません。 何の温度補償もしていない水晶発振器としてはごく普通の周波数安定度でしょう。(こんな多桁で見るから変動が多いように感じるのですが)
【ダイナミック・バランスの調整前】
2逓倍器のダイナミック・バランス調整の効果を見てみましょう。 写真は調整前の状態です。 出力端子で観測しています。
写真のように一つおきに波形の振幅が変化しています。 これは、逓倍回路のトランジスタ、Q2とQ3の特性が完全に一致していなかったり、トランジスタのベースに信号を与えるトランス:T1の2次側巻線の2つが良く揃っていない・・・などの影響があるからです。
ゼロ・バイアスのC級増幅なので、Q2とQ3は交互に動作しており各々のコレクタ出力は合成されて出力に現れます。 各トランジスタのドライブ状態や増幅度に違いがあって一つおきに山の高さが異なっているのです。 このままの状態では基本波の通り抜けや、高調波成分は多くなっています。
【ブレッドボードで試作】
あまり手が進まなかったので小ネタの紹介です。今回のテーマは67.108864MHzの水晶発振器・水晶発振回路です。
☆
DDSで精度の高い発振周波数を得たいと言うテーマでクロック発振器を模索しています。 この発振器はその目的のために設計した特殊なものです。作ってみたい人は稀ではないでしょうか? 自家用メモの域を出ない内容ですし地味なテーマなので覗き見ても退屈でしょう。 こんなところで時間を浪費しないでもっと楽しいサイトへジャンプをお奨めします。ジャンプしたらもう帰ってこなくていいんですよ。(笑)
☆ ☆
67108864と言う数字は2を26乗した値です。 では、なぜこんな周波数が欲しいのかと言えば、DDS発振器の基準クロックに使うと正確な1Hz刻みの発振周波数を得るのが容易になるからです。
例えば、DDS-ICにAD9834を使うとします。 AD9834のアキュームレータは28ビット長なので、発生できる周波数の刻みはクロック周波数の2の28乗分の1になります。 従って67.108864MHzのクロックを与えると得られる周波数の刻みは0.25Hzになります。クロックさえ正確なら、この0.25Hzに小数点二位以下の端数はまったくありません。 例えば40,000,000倍で10MHzちょうどが得られる訳です。そしてこの10MHzに周波数の端数は付きません。(40,000,000は2進数表記では、0010 0110 0010 0101 1010 0000 0000となる)
ほとんどの用途では必要周波数に対して1Hz以下の誤差で設定できれば支障はありません。 受信機や送信機で必要とされる周波数精度は厳しく見積もっても誤差±数Hzでしょう。それにSSBでは相手局にゼロインしているのかが問題になるのであって、周波数の絶対精度は問題ではありません。あるいはCWなら各自が好みの音調でダイヤルしているので完全なゼロインなど要求されません。 従って、必ずしもこうした特定の周波数で与える必要はありません。 マイコンのプログラム処理によって容易に誤差1Hz以内の周波数に設定できるからです。あとはその周波数でずっと安定していれば良いのです。
しかし非常に精密な測定のような用途では設定誤差がまったく含まれない正確な周波数が欲しくなることがあります。 その為にはDDS-ICに与えるクロック周波数は任意の周波数ではダメです。プログラム処理ではごく僅かな誤差が残存してしまい取り除けないからです。 従ってクロックは2のN乗の周波数であって、しかも調整によって必要とする周波数へ合わせ込めなくてはなりません。このようなことから周波数調整が可能な2のN乗周波数の発振器が欲しくなるのです。
DDS-ICに与える基準クロックなので、2のN乗周波数でもなるべく高い周波数が有利です。AD9834を例にとれば、2^25=33554432あるいは2^26=67108864が適当でしょう。 具体的な周波数としては33.554432MHzまたは67.108864MHzになります。 用途次第ですが、高周波の発生が目的なら2^24=16777216(→16.77216MHz)ではやや低すぎます。そうかと言って、2^27=134217728(→134.217728MHz)ではAD9834が受け付けてくれません。(クロック上限周波数が高いAD9850やAD9851なら大丈夫です)
【67.108864MHzの発振器】
図は67.108864MHzに調整可能な水晶発振回路です。 水晶発振器ですから大きく周波数を変えることはできません。もちろん目的の67.108864MHzに調整で合わせることはできます。
ただし、それがずっと維持できるだけの安定度はありません。 一番下の桁は4で40Hzを意味しますが、それは67MHzに対して約0.6ppmにあたります。 いくら調整しても長時間維持することは不可能です。どうしても維持したいなら、恒温槽(オーブン)に入れるなどの対策が不可欠でしょう。
もしDDSで得る周波数の精度が1ppm程度で良いなら、この67MHzの方も絶対精度は1ppmで良いので幾らか楽になります。 ±67Hz以内の周波数安定度が維持できれば済みます。 まあしかし水晶発振器とは言えども無補償で1ppmの周波数安定度を維持し続けるのは困難と言えます。従って1ppmの精度を求めるなら時々校正しながら使うのが現実的です。
発振回路、及び逓倍器のいずれにも中華製のRF用トランジスタ:S9018Hを使いました。 国産のトランジスタでも支障ありません。 67MHzは大して高い周波数ではありませんが一応VHF帯です。 ここで使うトランジスタはft=300MHz以上の小信号用なら何でも大丈夫です。 しかし2SC1815のような汎用トランジスタは不適当です。 S9018Hは「秋葉原価格@¥10-」くらいのチープなRF用トランジスタです。でも、ft>800MHzですから、このくらいの周波数ならとても快適に動作してくれます。(中華トランジスタ:S9018HのShopping Report ←リンク) 写真のブレッドボード試作例では発振部のQ1に2SC2668Yを使っていますが、S9018Hでまったく支障ありません。足ピンの並びが異なるので気をつけます。
2逓倍回路はPush-Push形式にしました。トランジスタ1石の逓倍回路でも周波数の2逓倍は可能ですが基本波の通り抜けが多いのが欠点です。 従って1石式でやるなら後続のフィルタはしっかりしたものが必要です。 Push-Push形式は基本波の通り抜けがずっと少ないので後続のフィルタが簡単になります。 安価なトランジスタを1つ追加するだけで、スプリアスの除去にたいへん効果があります。 なお、回路図のようにダイナミック・バランスがとれるようにして一段と不要成分の漏洩を低減するようにしました。
【出力周波数】
出力周波数です。 この例ではユニバーサル・カウンタで測定しています。もちろん普通の周波数カウンタでOKです。 トリマ・コンデンサ:C6で周波数調整します。 但し、発振トランジスタ:Q1のコレクタ側の同調状態によっても幾らか発振周波数が変化します。 もしC6だけでうまく合わせ込めない時にはC4も微調整してみます。
この状態で暫く様子を見ていましたが、10Hzの桁あたりが漂動しているようでした。 従って常に67.108864MHzちょうどが維持できる訳ではありません。 何の温度補償もしていない水晶発振器としてはごく普通の周波数安定度でしょう。(こんな多桁で見るから変動が多いように感じるのですが)
【ダイナミック・バランスの調整前】
2逓倍器のダイナミック・バランス調整の効果を見てみましょう。 写真は調整前の状態です。 出力端子で観測しています。
写真のように一つおきに波形の振幅が変化しています。 これは、逓倍回路のトランジスタ、Q2とQ3の特性が完全に一致していなかったり、トランジスタのベースに信号を与えるトランス:T1の2次側巻線の2つが良く揃っていない・・・などの影響があるからです。
ゼロ・バイアスのC級増幅なので、Q2とQ3は交互に動作しており各々のコレクタ出力は合成されて出力に現れます。 各トランジスタのドライブ状態や増幅度に違いがあって一つおきに山の高さが異なっているのです。 このままの状態では基本波の通り抜けや、高調波成分は多くなっています。
【ダイナミック・バランス調整後】
Q2とQ3のエミッタ間に入っている可変抵抗器:VR1を調整すると図のように山の高さが揃ったきれいな波形になります。 観測場所は同じく出力端子です。
よく見るとまだ完全に同じにはなっていませんが、上記の状態よりも明らかに改善されたことがわかります。 この程度ならDDSのクロック用として支障ありません。 用途によっては、よりピュアな信号が欲しくなるかもしれません。それにはもう1段同調回路を加えます。
Push-Push形式の2逓倍器は入力側のトランス製作が少し面倒ですが、それ以外は特に厄介な部分はありません。 スプリアスを抑えつつ、効率良く周波数の2逓倍が可能なので以前から好んで使っています。 逓倍器としてパワーゲインも大きいので、逓倍を重ねるような用途にも適しています。 なお、奇数次の逓倍、例えば3逓倍・・・したいときはPush-Pull型式にすると偶数次の高調波を抑制できるため有利です。ご参考まで。
☆ ☆ ☆
複雑なシステムもシンプルな回路の組み合わせです。 ごく基本的な要素回路ですが、テストしてデータをメモっておけば応用するときの安心感はずっと違います。 それぞれの回路にはクセのような物があって、それを知らないと後で問題になることがあります。 この発振+逓倍回路にも幾らかクセがありましたが試作したことで要点は掴めました。 安心感を持ってこの先の活用に進めます。
以前、秋月電子通商で販売されていた67.108864MHzの発振器をDDS-ICのクロックに使ったことがありました。 電源を与えれば目的周波数の信号が得られるのは便利でしたが、周波数の微調整ができないのが欠点でした。少々精密な用途になるとそれが支障になったのです。 モジュールに加える電源電圧を変えると幾らか発振周波数が変化します。 その性質を利用して「周波数の微調整」を行なう例も見掛けました。 ほかに適当な代替パーツもなかったので、やむなく周波数誤差はソフトウエア的に補正する方向へ進みました。 しかしそのようなソフト処理では済まないことがあります。 そんな時は普通の方法で周波数調整できる発振器にニーズがあります。 さらに消費電流の削減は主目的ではありませんが既成の発振器よりも電源電流が少ないのも一つのメリットになりそうです。 では、また。 de JA9TTT/1
(おわり)fm
2017年1月28日土曜日
【その他】Shopping Report 2017, part 1
【2017買い物レポート:Low price Soldering kit】
【安価なハンダ付けキット】
中国製はんだ付けキットの購入レポートです。
最近のamazonを見ていると、安価な中華製グッズが多数販売されています。 品目は従来からあったようなIT機器や家電品に限らず、半導体やCRのような電子パーツまで、さらに工作用ツールなど非常に幅広くなってきました。
かなり怪しそうな商品を販売する業者もあって、悪い評価が重なるとアカウントを閉じて新たに別の名で商売を始めていると言ったウワサも耳にします。
amazonですから変な商品に引っ掛かっても最終的にお金は取り戻せるのかも知れませんが掛かった手間や時間は取り返せないので慎重さも必要でしょう。 しかし非常に安価なら「ダメもと」で試してみるのもスリルがあって楽しいものです。 もし使い物にならなかったら深追いはせず半ば「あきらめる」つもりで怪しげなお買い物を楽しんでいます。(笑)
写真は1,599円で販売されていた「ハンダ付けキット」です。 これに限らずACコード途中にスイッチが付いたタイプや、付属品の種類や数が違うキットなどたくさんの出品があります。 ただし良く見るとはんだコテ本体はどれも類似なので、あとは付属品やお値段で選んでみるのも良いでしょう。
この1,599円のキットは(1)温度調節付きはんだコテ本体、(2)交換用コテ先チップ5個、(3)やに入りハンダ少量、(4)簡易こて台・・・・がセットになっています。 この(3)のヤニ入りハンダは錫60%-鉛40%なので「鉛フリー」ではありません。 しかし一般の電子工作にはその方が好都合だと思います。 メーカーは規制があるのでやむなく使っていますが鉛フリーは確実なはんだ付けが難しいため趣味の電子工作には不適当です。なお(3)の「はんだ」はお試し用ですし(4)のコテ台は昔の蚊取り線香立てのような構造の完全なオマケの品なので期待しない方が良いです。要するにはんだコテと交換用コテ先チップのセット販売なのです。w
はんだコテだけでもきちんとした日本メーカー製なら5,000円以上する筈です。 それが色々付いて1,599円なのですから本当に使い物になるのか怪しそうです。 以下、評価結果を交えてご紹介したいと思います。 最初からBlogの「ネタ」の為に買ってみたのではありませんが、はんだコテに困ってもいないので半分は「ネタ」みたいなものです。 以下、もし良かったらご覧下さい。
【温度調節付き】
分解してみれば仕組みもわかるので、調子でも悪くなったらバラしてみましょう。 しかし、評価前に分解するのも何ですから、そのままテストしてみましょう。
ダイヤルは200℃〜450℃の目盛りがあります。 ツマミを回してみますと単なるVRではないようです。 感触からステップ状に設定できるようです。
温度調節できると言うのがこのはんだコテのポイントでしょう。 従来型の無制御のはんだコテは連続して作業している時は良いのですが暫く手を休めて放置すると過熱してしまいました。 そのため焼け過ぎてこて先チップの酸化が進んで付きが悪くなる、更には細いコテ先なら熱で曲がってくるなどの問題があったのです。 そうかと言ってワット数の小さなコテでは少し熱容量の大きな部品にハンダ付けしようとすれば温度が下がってハンダが溶けてくれませんでした。 その点、温度調節付きのコテなら焼け過ぎが防げるほか、大きな部品のハンダ付けで温度が下がれば加熱量が増えてコテ先の温度を維持しようとするため使い勝手は優れています。
#安価なコレは本当に広範囲の温度調節ができるのでしょうか?
【予備のコテ先チップ】
元から付いているコテ先チップは、鉄メッキされた耐腐食型の耐久コテ先です。 従って、大昔のように付きが悪くなったらヤスリで表面を削って磨く・・・と言うような作業は必要ありません。 むしろヤスリ掛けなどしたらコテ先を一発でダメにしてしまいます。 はんだコテ用の濡れたスポンジなどきちんとしたコテ先クリーナを使ってきれいに保てば常に快適なハンダ付けが続けられます。
しかし、しばらく使っていると少しずつ酸化してハンダの乗りが悪くなってきます。減りにくいとは言え幾らか摩耗もあるのでいずれ交換が必要になります。 良くハンダ付け作業をするのなら予備のコテ先チップは用意しておきたいものです。
このキットには5種類の交換用チップが付いていました。 このうち、普通の電子回路のハンダ付けで使えそうなコテ先形状は2〜3種類のように思います。 それでも予備があるのは良いことで、はんだの溶けが悪くなった時に慌てずに済みます。
amazonで売っているハンダ付けキットには交換用コテ先チップが10個も付いてたものまであって様々です。 使い易いコテ先形状の替えが1〜2個あれば十分なので沢山はいらないと思います。 良さそうな形状の交換用コテ先が数個付いていれば十分でしょう。
交換は簡単に出来ます。 冷えている時にヒーター部分を覆っている金属スリーブ部分の手元側にあるリングを回すとコテ先が外れます。内部のセラミックヒータを損傷しないように気をつけてコテ先チップを交換します。 なお、このキットには付属しませんが交換用ヒータも安価に売っていました。 しかしヒータが切れるほど使えば丸ごと新品を買った方が良いかも知れません。
【コテ先温度の実測特性】
怪しいと思っているだけでは非科学的ですから、実際に測定してみましょう。 コテ先に温度センサの「熱電対(ねつでんつい)」を取り付けて温度を測定してみました。 左図はその実測結果です。 横軸が時間で縦軸が温度になっていて、こて本体のダイヤルで温度設定してから安定するまでの時間を追った経過がわかるようになっています。
できるだけ小型の熱電対ということでSUS保護管入りでφ1.4mmのK型熱電対(=クロメル-アルメル:CA型)を使いました。 コテの先端部分に錫メッキ銅線を数回巻いて固定しています。 幾らか誤差はありそうですが熱容量はそれほど変化しません。極端に温度がずれることもないでしょう。 温度表示器にはadvantest製のデジタルマルチメータ:R6341Bを使いました。
200℃の設定から実験を始めました。 通電から約2分で200℃を超えるのでそろそろハンダ付け可能になります。 その後もゆっくり上昇して10分ほどで安定状態になりました。 コテ先温度は80℃くらい設定よりも高くなりました。 誤差が大きすぎますが、実際のところコテ先が200℃ではハンダ付け作業には低すぎます。 はんだが溶けないようでは困るので意図的に高くなるようにしてあるのかも知れません。
さらに300℃に設定してみました。設定よりも30℃くらい高くなりましたが、200℃の時よりも誤差は少なくなっています。 その後250℃に設定温度を下げてみました。 まだ20℃程度高いところで安定しますが、まあまあと言った感じでしょうか? 再び200℃の設定にしてみましたが最初の設定のように約270℃あたりで安定しました。取りあえず温度設定の再現性はあるようです。
参考:温度の「自動制御」は行なっていない可能性があります。 要するにダイヤルで通電電流の加減が出来るだけで、コテの温度をフィードバックする温度の自動制御などしてはいない可能性があるのです。 安価ですから単なる「可変電力型のはんだコテ」なのかも知れません。(その可能性は否定できません・笑)
==>自身で検証はしていませんが、他の評価者によれば温度が収束するに伴い消費電流が減少する特性を示すそうです。そうであれば温度の自動制御が働いていることになるでしょう。(温度が高くなるとセラミックヒータの抵抗値が大きくなるので、そのように見えているだけかも・・・)
左のグラフにはありませんが、450℃に設定したところ448℃前後で安定しました。設定温度が高い方で誤差が小さくなる傾向にありました。(注1) 逆に、200℃と言うのは目盛りに数字はあっても設定はできないようでした。 だいたい250℃以上でないと温度設定は効かないようです。
以上、時間対温度の関係を見ると、どこかの温度に収束するのでコテ先の温度は制御されているように見えます。 少々誤差の大きな温度制御ですが、それなりに機能しているような感じです。 まずは「温度調節機能付き」のはんだコテと言えるでしょう。
注1:450℃の設定で使うのはお奨めできません。 測定の為のごく短時間でさえ何となくコゲ臭くなってきました。 そのまま通電しているとゴムや樹脂の部分が変形しそうです。どうやら300℃以下の設定で使う方が良さそうでした。
☆
はんだが溶けなければクレームにもなるでしょう。 しかし温度を測ってみる人はまずいません。 ですから製品個々に温度調整などしていないでしょうし簡単な検査さえも省いているかも知れません。 何しろ通電した痕跡さえもありませんから・・・。
正常な品でもコテ先の温度には個体差(ばらつき)がずいぶんありそうです。 ここで示したグラフは私が購入した品の特性です。購入したどれもが同じになるとは限りません。取りあえず参考程度に見ておいてください。
他の購入者のコメントによれば熱でプラスチック部分が変形したとか、中から火花が散ったと言うような物騒な事例までありました。逆に200℃の設定では温度が低くてはんだが溶けないと言うレポートもあります。 ただ、そうした異常さえなければ実用性は十分あります。耐久性などは未知数ですが「アマチュア用」として使えそうです。
安心感を求めたり高級な性能を望むなら国産品に相応の費用を払うべきでしょうね。 チープな1,599円ハンダ付けキットを同列に並べてダメ出しをしても意味はありません。 初めから満足できそうもないならこうしたヤスモノに手は出さないことです。 しかし価格からみたらコレはこれで十分使えます。私は250℃の所にダイヤルをセットして使おうと思います。 下手な温調ナシのはんだコテよりずっとマシですからね。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)nm
ご注意:このBlogはアフェリエイトBlogではありません。電子工作を楽しむための情報を提供していますが特定の商品やショップをお奨めする意図はありません。公開している商品情報は単なる参考です。お買い物は貴方ご自身の判断と責任でお願いします。
【安価なハンダ付けキット】
中国製はんだ付けキットの購入レポートです。
最近のamazonを見ていると、安価な中華製グッズが多数販売されています。 品目は従来からあったようなIT機器や家電品に限らず、半導体やCRのような電子パーツまで、さらに工作用ツールなど非常に幅広くなってきました。
かなり怪しそうな商品を販売する業者もあって、悪い評価が重なるとアカウントを閉じて新たに別の名で商売を始めていると言ったウワサも耳にします。
amazonですから変な商品に引っ掛かっても最終的にお金は取り戻せるのかも知れませんが掛かった手間や時間は取り返せないので慎重さも必要でしょう。 しかし非常に安価なら「ダメもと」で試してみるのもスリルがあって楽しいものです。 もし使い物にならなかったら深追いはせず半ば「あきらめる」つもりで怪しげなお買い物を楽しんでいます。(笑)
写真は1,599円で販売されていた「ハンダ付けキット」です。 これに限らずACコード途中にスイッチが付いたタイプや、付属品の種類や数が違うキットなどたくさんの出品があります。 ただし良く見るとはんだコテ本体はどれも類似なので、あとは付属品やお値段で選んでみるのも良いでしょう。
この1,599円のキットは(1)温度調節付きはんだコテ本体、(2)交換用コテ先チップ5個、(3)やに入りハンダ少量、(4)簡易こて台・・・・がセットになっています。 この(3)のヤニ入りハンダは錫60%-鉛40%なので「鉛フリー」ではありません。 しかし一般の電子工作にはその方が好都合だと思います。 メーカーは規制があるのでやむなく使っていますが鉛フリーは確実なはんだ付けが難しいため趣味の電子工作には不適当です。なお(3)の「はんだ」はお試し用ですし(4)のコテ台は昔の蚊取り線香立てのような構造の完全なオマケの品なので期待しない方が良いです。要するにはんだコテと交換用コテ先チップのセット販売なのです。w
はんだコテだけでもきちんとした日本メーカー製なら5,000円以上する筈です。 それが色々付いて1,599円なのですから本当に使い物になるのか怪しそうです。 以下、評価結果を交えてご紹介したいと思います。 最初からBlogの「ネタ」の為に買ってみたのではありませんが、はんだコテに困ってもいないので半分は「ネタ」みたいなものです。 以下、もし良かったらご覧下さい。
【温度調節付き】
分解してみれば仕組みもわかるので、調子でも悪くなったらバラしてみましょう。 しかし、評価前に分解するのも何ですから、そのままテストしてみましょう。
ダイヤルは200℃〜450℃の目盛りがあります。 ツマミを回してみますと単なるVRではないようです。 感触からステップ状に設定できるようです。
温度調節できると言うのがこのはんだコテのポイントでしょう。 従来型の無制御のはんだコテは連続して作業している時は良いのですが暫く手を休めて放置すると過熱してしまいました。 そのため焼け過ぎてこて先チップの酸化が進んで付きが悪くなる、更には細いコテ先なら熱で曲がってくるなどの問題があったのです。 そうかと言ってワット数の小さなコテでは少し熱容量の大きな部品にハンダ付けしようとすれば温度が下がってハンダが溶けてくれませんでした。 その点、温度調節付きのコテなら焼け過ぎが防げるほか、大きな部品のハンダ付けで温度が下がれば加熱量が増えてコテ先の温度を維持しようとするため使い勝手は優れています。
#安価なコレは本当に広範囲の温度調節ができるのでしょうか?
【予備のコテ先チップ】
元から付いているコテ先チップは、鉄メッキされた耐腐食型の耐久コテ先です。 従って、大昔のように付きが悪くなったらヤスリで表面を削って磨く・・・と言うような作業は必要ありません。 むしろヤスリ掛けなどしたらコテ先を一発でダメにしてしまいます。 はんだコテ用の濡れたスポンジなどきちんとしたコテ先クリーナを使ってきれいに保てば常に快適なハンダ付けが続けられます。
しかし、しばらく使っていると少しずつ酸化してハンダの乗りが悪くなってきます。減りにくいとは言え幾らか摩耗もあるのでいずれ交換が必要になります。 良くハンダ付け作業をするのなら予備のコテ先チップは用意しておきたいものです。
このキットには5種類の交換用チップが付いていました。 このうち、普通の電子回路のハンダ付けで使えそうなコテ先形状は2〜3種類のように思います。 それでも予備があるのは良いことで、はんだの溶けが悪くなった時に慌てずに済みます。
amazonで売っているハンダ付けキットには交換用コテ先チップが10個も付いてたものまであって様々です。 使い易いコテ先形状の替えが1〜2個あれば十分なので沢山はいらないと思います。 良さそうな形状の交換用コテ先が数個付いていれば十分でしょう。
交換は簡単に出来ます。 冷えている時にヒーター部分を覆っている金属スリーブ部分の手元側にあるリングを回すとコテ先が外れます。内部のセラミックヒータを損傷しないように気をつけてコテ先チップを交換します。 なお、このキットには付属しませんが交換用ヒータも安価に売っていました。 しかしヒータが切れるほど使えば丸ごと新品を買った方が良いかも知れません。
【コテ先温度の実測特性】
怪しいと思っているだけでは非科学的ですから、実際に測定してみましょう。 コテ先に温度センサの「熱電対(ねつでんつい)」を取り付けて温度を測定してみました。 左図はその実測結果です。 横軸が時間で縦軸が温度になっていて、こて本体のダイヤルで温度設定してから安定するまでの時間を追った経過がわかるようになっています。
できるだけ小型の熱電対ということでSUS保護管入りでφ1.4mmのK型熱電対(=クロメル-アルメル:CA型)を使いました。 コテの先端部分に錫メッキ銅線を数回巻いて固定しています。 幾らか誤差はありそうですが熱容量はそれほど変化しません。極端に温度がずれることもないでしょう。 温度表示器にはadvantest製のデジタルマルチメータ:R6341Bを使いました。
200℃の設定から実験を始めました。 通電から約2分で200℃を超えるのでそろそろハンダ付け可能になります。 その後もゆっくり上昇して10分ほどで安定状態になりました。 コテ先温度は80℃くらい設定よりも高くなりました。 誤差が大きすぎますが、実際のところコテ先が200℃ではハンダ付け作業には低すぎます。 はんだが溶けないようでは困るので意図的に高くなるようにしてあるのかも知れません。
さらに300℃に設定してみました。設定よりも30℃くらい高くなりましたが、200℃の時よりも誤差は少なくなっています。 その後250℃に設定温度を下げてみました。 まだ20℃程度高いところで安定しますが、まあまあと言った感じでしょうか? 再び200℃の設定にしてみましたが最初の設定のように約270℃あたりで安定しました。取りあえず温度設定の再現性はあるようです。
参考:温度の「自動制御」は行なっていない可能性があります。 要するにダイヤルで通電電流の加減が出来るだけで、コテの温度をフィードバックする温度の自動制御などしてはいない可能性があるのです。 安価ですから単なる「可変電力型のはんだコテ」なのかも知れません。(その可能性は否定できません・笑)
==>自身で検証はしていませんが、他の評価者によれば温度が収束するに伴い消費電流が減少する特性を示すそうです。そうであれば温度の自動制御が働いていることになるでしょう。(温度が高くなるとセラミックヒータの抵抗値が大きくなるので、そのように見えているだけかも・・・)
左のグラフにはありませんが、450℃に設定したところ448℃前後で安定しました。設定温度が高い方で誤差が小さくなる傾向にありました。(注1) 逆に、200℃と言うのは目盛りに数字はあっても設定はできないようでした。 だいたい250℃以上でないと温度設定は効かないようです。
以上、時間対温度の関係を見ると、どこかの温度に収束するのでコテ先の温度は制御されているように見えます。 少々誤差の大きな温度制御ですが、それなりに機能しているような感じです。 まずは「温度調節機能付き」のはんだコテと言えるでしょう。
注1:450℃の設定で使うのはお奨めできません。 測定の為のごく短時間でさえ何となくコゲ臭くなってきました。 そのまま通電しているとゴムや樹脂の部分が変形しそうです。どうやら300℃以下の設定で使う方が良さそうでした。
☆
はんだが溶けなければクレームにもなるでしょう。 しかし温度を測ってみる人はまずいません。 ですから製品個々に温度調整などしていないでしょうし簡単な検査さえも省いているかも知れません。 何しろ通電した痕跡さえもありませんから・・・。
正常な品でもコテ先の温度には個体差(ばらつき)がずいぶんありそうです。 ここで示したグラフは私が購入した品の特性です。購入したどれもが同じになるとは限りません。取りあえず参考程度に見ておいてください。
他の購入者のコメントによれば熱でプラスチック部分が変形したとか、中から火花が散ったと言うような物騒な事例までありました。逆に200℃の設定では温度が低くてはんだが溶けないと言うレポートもあります。 ただ、そうした異常さえなければ実用性は十分あります。耐久性などは未知数ですが「アマチュア用」として使えそうです。
安心感を求めたり高級な性能を望むなら国産品に相応の費用を払うべきでしょうね。 チープな1,599円ハンダ付けキットを同列に並べてダメ出しをしても意味はありません。 初めから満足できそうもないならこうしたヤスモノに手は出さないことです。 しかし価格からみたらコレはこれで十分使えます。私は250℃の所にダイヤルをセットして使おうと思います。 下手な温調ナシのはんだコテよりずっとマシですからね。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)nm
ご注意:このBlogはアフェリエイトBlogではありません。電子工作を楽しむための情報を提供していますが特定の商品やショップをお奨めする意図はありません。公開している商品情報は単なる参考です。お買い物は貴方ご自身の判断と責任でお願いします。
2017年1月12日木曜日
【回路】An OP-Amp Electronic Keyer
【回路:OP-Ampを使ったキーヤー】
【年末はここまでで】
2017年も明けて、もう10日以上が過ぎてしまいました。そろそろお正月気分も抜けて何時もの毎日が帰ってきました。
年末はいつもと違う行事も多く、じっくり落ち着いて何かに取り組むことも出来ません。 何となく気ぜわしくて暮れに手がけたものは途中まででオシマイになりました。 見ていた回路図がわかり難くて手が進まなくなったことも停滞の原因です。
12月始めにはDTL-ICを使ったキーヤー(=エレキー)のリベンジも果たせたし、古い古いロジックICを蘇らせることもできました。 私はキーヤー・マニアではないのですが、前々から気になっていたテストを進めて行き、残すテーマは僅かになってきました。
同じく気になっていたキーヤーの一つにOP-Ampを使ったものがあります。 JA-CQ誌で見掛けたはずです。 ロジックICではない所に面白みを感じたのでしょう、妙に印象に残りました。 今回はアナログICを使う珍しいキーヤーを扱うことにします。
☆ 写真はブレッドボードと、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れ、それとジャンパー線セットです。 写真の他にフレキシブル・ワイヤのジャンパー線セットがあって、効率的なブレッドボード試作に役立っています。思い立ったらすぐに実験開始できます。
☆
記憶を辿って行くと様々なことが思い浮かんでくるものです。 前回Blogのキーヤー繋がりで、前々から気になっていたOP-Amp Keyerをテストします。 キーヤーとして特にこれと言ったメリットはないのですがもしも興味を感じたようならお付合いください。 それらしく動作することに新鮮さを感じるかもしれません。(テスト動画付き)
【OP-Ampでキーヤーを】
このキーヤーを知ったのはJA-CQ誌の『技術展望』だったと思います。 インターネット以前の時代にあって『技術展望』はHAMにまつわる海外情報の貴重な情報源でした。 但し簡単なコラム記事なので要約と一部の回路図のみが載っているだけでした。
珍しいキーヤーなので興味を覚えたものの、要約から詳細はわからずそのままになりました。 その記事の切り抜きを保管していた筈ですが、この機会に探してみたのですが見付けることが出来ませんでした。
暫く後に古いQST誌のコピーが手に入って詳細を知ることが出来ました。 DTL-ICのキーヤーも済んだことから、この際気になっていたOP-Ampを使うキーヤーにも着手してみました。
キーヤーと言えば論理回路で実現するのが当たり前のようになっています。 そう考えればTTLやC-MOSと言ったデジタルICを使うのが自然です。 マイコンもデジタルICの一種ですし。
OP-Ampを使うこの記事(QST誌1972年10月号pp40~44)にはコスト的なメリットが謳われています。 デジタルICは既に登場していましたが、アマチュアにとって案外高価だったのかも知れません。 OP-Ampだってまだそんなに安価だったとも思えません。 しかしMC1437Lと言うモトローラ製のDual OP-Amp一つで作れます。 意外にお手軽だったのかもしれません。 そんな時代を感じさせる記事です。 なお、筆者はオーストラリアの人(VK5NO)なのでVKの事情を反映していたのでしょうか。
【OAKEYのオリジナル回路図】
主要部分の回路図です。 JA-CQ誌に掲載されていた回路もこれと同じだったように思うのですが、切り抜いて保存しておいた筈の『技術展望』の記事は見付けられませんでした。
簡単な説明です。 図左側のOP-AmpでDuty比が50%の矩形波発振を行ないます。 その出力を取出すことで短点が連続します。 パドルによる制御回路があって複雑ですが、回路その物はOP-Ampを使った弛張発振回路です。
長点を発生させるには、その短点出力で図右側のOP-Ampで構成された双安定回路・・・Flip-Flop回路をトリガします。RS Flip-Flopと等価で、CRによる微分回路でトリガを掛けます。 この長点用の双安定回路は短点の二倍の長さの矩形波を出力します。 その二倍の長さの出力と短点一つ分をダイオードを使った出力部のORゲート回路で合成することで長点を生成します。長点はちょうど短点3つ分の長さになる訳です。 同時に短点と同じ長さのスペースもできます。
OP-Ampは論理回路専用の素子ではありません。 そのため双安定回路の実現には苦心の跡が見られます。 またこの図のままでは、キーイング出力としては不完全なのでリレードライバなどの出力回路を付加する必要があります。
【OP-Ampキーヤーの製作回路図】
キーヤーとして完全な回路になるよう出力のリレードライバまで含めて書いてあります。記事にある回路例よりもこちらの方が確実だと思います。 また、上記の回路図では負論理出力でしたが、ドライバ回路の都合から正論理の出力になるようにしています。 回路の動作そのものは上記の回路図と同じです。
記事にあるMC1437Lと言うOP-Ampはポピュラーではありません。今どき入手は困難でしょうから迷わず置き換えを行ないます。 黎明期のOP-Ampと言えばFairchild社が開発した709型がたいへん有名です。 MC1437Lはその709型を2個集積したものと等価です。 従って、709型のOP-Ampを2個使えばまったく同じです。 ここではTI社のSN72709Nと言う709型の互換品(セカンドソース)を使いました。
709型OP-AmpにはCanおよびDIPパッケージ品があって何れも8ピンが普通です。 14ピン型は未使用ピンが多くて合理的とは言えませんが、今さら709型OP-Ampなど購入したくもないので手持ちを活用しました。 8ピン型を使うなら回路図のピン番号を振り替える必要があります。まあ、真似て作る人などいないとは思いますが。w
リレードライバは2SC1815GRのようなNPN型の汎用トランジスタを使います。 ダイオードはシリコンの小信号用なら何でも良いです。例えば1S2076Aのほか1S1588や1N4148などがあります。 リレーは前のBlogのようなリードリレーでも良いしPhoto-MOS Relayなどお好みで。 ドライバのトランジスタでリグを直接キーイングすることも出来ます。
参考:709型OP-Ampは現在でも入手可能です。同等品やセカンドソースもたくさん存在しました。但し生産中止から時間が経過したため珍しい存在になりつつあって価格は上昇しています。 従って他の形式のキーヤーの製作をお奨めします。
【歴史に残る"709型"OP-Amp】
既に709型OP-Ampの現物など見たこともない人が多いでしょう。 まして14ピン型など・・・。 この14ピンのパッケージにOP-Amp回路がたった一つだけ入っています。
デート・コードを見ると1970年11月製のようですから非常に古いものでした。 その当時購入した訳ではなく、ずっと後に何かのジャンク部品と一緒に手に入れたものでしょう。 2017年の今から数えて46年も前のOP-Ampが正常に動作するのか少々怪しく思いましたが杞憂だったようです。 工業用の標準的なパーツとして確立していたのですから、その当時から十分な信頼性を有していたのでしょう。 劣化も見られずきちんと働いてくれました。
【OP-Amp keyerの全景】
最初の写真とは異なる部品配置になっています。 回路図を書き直した関係もあり、わかり易いように部品配置を整理してみました。 解体して最初から組み立て直しています。
以前、RTL-ICを使ったMicro TO-Keyer(←リンク)を作りました。 そのとき、マイクロではないオリジナルのTO-Keyerの動作についてに触れたことがありました。 このOP-Amp KeyerはそのTO-Keyerの動作に類似しています。
真空管回路ではありませんから回路形式はまるで違いますが、動作の様子には類似性があります。 半導体版のTO-KeyerとしてはRTL-ICを使ったものよりも、こちらの方がMicro TO-Keyerを名乗るのに相応しいように感じます。
【短点&スペース生成回路】
こちらが短点とスペースを発生させる弛張発振回路の部分です。この部分で短点発生とクロックを兼ねるので、クロック発振回路は必要ありません。
Duty比=ほぼ50%の矩形波を発生します。 50%が崩れると長短点とスペースの比が奇麗な1:1や1:3になった符号の発生ができなくなります。
出力を正帰還してヒステリシスを持たせ矩形波を発振する回路です。 OP-Ampを使ってはいますが、増幅回路ではなくてコンパレータ回路(電圧比較器)として使います。 709型OP-Ampは位相補償を内蔵しないので図のようなコンパレータとして使うと結構高速です。 奇麗な矩形波が得られています。 もっとも、数10Hzの矩形波ではどんなOP-Ampでも同じようかもしれませんけれど。
【長点発生フリップ・フロップ】
長点を作るためには短点の二倍の周期の矩形波を作る必要があります。 そのため、OP-Ampを使った双安定回路(Flip-Flop)を構成し、短点信号で旨く交互にトリガが掛かるようにして二分周器を実現しています。
この『旨くトリガを掛ける』という部分に苦労があったようです。 普通のOP-Ampには/Q出力(反転出力)はありません。 709型OP-Ampの出力側位相補償端子から正規の出力端子と反対の『反転出力』が取出せることを利用して旨くトリガを掛けているのです。 従って、このOP-Amp Keyerは709型もしくは等価な回路構成になったOP-Ampでないと旨く行きません。 幾らか回路を追加すれば他のOP-Ampでも可能そうですがもう時間切れです。 今さら真剣に置き換えを検討するほどの価値もないでしょう。
【電源回路例】
片電源動作にすることもできます。 しかし、小さな電源トランスと左図のような整流平滑回路を作って済ませるのが良いでしょう。電源電圧は安定化しなくても大丈夫です。
乾電池でも良いのですが、リレーを使うと006P型乾電池では動作時間が短くて不経済です。 ちなみに、±8Vで動作させた場合の回路電流は以下の通りです。 +8V側が待機時に約6.9mA、キーイング時が約7.8mAです。 -8V側は待機時が約16.5mA、キーイング時では少し減って約14.5mAでした。
Relayは動作させていませんので、動作させた時はその分だけ+8V側の電流が増えます。 乾電池では動作時間が短いので6〜9V程度の小型電源トランスを入手し図のような電源を組み込んで使います。
電源回路はオマケとして追記しておきました。おそらくこんなKeyerを作る人もいないでしょう。 それに興味から製作してみるようなお方なら電源の手当くらい百も承知でしょう。いささか蛇足だったかもしれませんね。hi
☆
続き:もう一つあったOP-Amp Keyerへ(←リンク)
(おわり)fm
【年末はここまでで】
2017年も明けて、もう10日以上が過ぎてしまいました。そろそろお正月気分も抜けて何時もの毎日が帰ってきました。
年末はいつもと違う行事も多く、じっくり落ち着いて何かに取り組むことも出来ません。 何となく気ぜわしくて暮れに手がけたものは途中まででオシマイになりました。 見ていた回路図がわかり難くて手が進まなくなったことも停滞の原因です。
12月始めにはDTL-ICを使ったキーヤー(=エレキー)のリベンジも果たせたし、古い古いロジックICを蘇らせることもできました。 私はキーヤー・マニアではないのですが、前々から気になっていたテストを進めて行き、残すテーマは僅かになってきました。
同じく気になっていたキーヤーの一つにOP-Ampを使ったものがあります。 JA-CQ誌で見掛けたはずです。 ロジックICではない所に面白みを感じたのでしょう、妙に印象に残りました。 今回はアナログICを使う珍しいキーヤーを扱うことにします。
☆ 写真はブレッドボードと、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れ、それとジャンパー線セットです。 写真の他にフレキシブル・ワイヤのジャンパー線セットがあって、効率的なブレッドボード試作に役立っています。思い立ったらすぐに実験開始できます。
☆
記憶を辿って行くと様々なことが思い浮かんでくるものです。 前回Blogのキーヤー繋がりで、前々から気になっていたOP-Amp Keyerをテストします。 キーヤーとして特にこれと言ったメリットはないのですがもしも興味を感じたようならお付合いください。 それらしく動作することに新鮮さを感じるかもしれません。(テスト動画付き)
【OP-Ampでキーヤーを】
このキーヤーを知ったのはJA-CQ誌の『技術展望』だったと思います。 インターネット以前の時代にあって『技術展望』はHAMにまつわる海外情報の貴重な情報源でした。 但し簡単なコラム記事なので要約と一部の回路図のみが載っているだけでした。
珍しいキーヤーなので興味を覚えたものの、要約から詳細はわからずそのままになりました。 その記事の切り抜きを保管していた筈ですが、この機会に探してみたのですが見付けることが出来ませんでした。
暫く後に古いQST誌のコピーが手に入って詳細を知ることが出来ました。 DTL-ICのキーヤーも済んだことから、この際気になっていたOP-Ampを使うキーヤーにも着手してみました。
キーヤーと言えば論理回路で実現するのが当たり前のようになっています。 そう考えればTTLやC-MOSと言ったデジタルICを使うのが自然です。 マイコンもデジタルICの一種ですし。
OP-Ampを使うこの記事(QST誌1972年10月号pp40~44)にはコスト的なメリットが謳われています。 デジタルICは既に登場していましたが、アマチュアにとって案外高価だったのかも知れません。 OP-Ampだってまだそんなに安価だったとも思えません。 しかしMC1437Lと言うモトローラ製のDual OP-Amp一つで作れます。 意外にお手軽だったのかもしれません。 そんな時代を感じさせる記事です。 なお、筆者はオーストラリアの人(VK5NO)なのでVKの事情を反映していたのでしょうか。
コラム: 『米国におけるICのお値段』
同時期・1972年頃のQST誌によればTTL-ICのSN7400が$0.21-、709型OP-Ampは$0.39-でセールスされています。 どのICも米国ではもう十分こなれた価格になっていたようです。 実際にはOP-AmpでKeyerを作っても価格的な優位性はなかったでしょう。 追試記事が存在しないのもこれと言ったメリットがなかったからかもしれません。その頃は$1-=¥360-とあって、当時のJAではICはまだ高価でした。国産のICは出回り始めたばかりでした。
【OAKEYのオリジナル回路図】
主要部分の回路図です。 JA-CQ誌に掲載されていた回路もこれと同じだったように思うのですが、切り抜いて保存しておいた筈の『技術展望』の記事は見付けられませんでした。
簡単な説明です。 図左側のOP-AmpでDuty比が50%の矩形波発振を行ないます。 その出力を取出すことで短点が連続します。 パドルによる制御回路があって複雑ですが、回路その物はOP-Ampを使った弛張発振回路です。
長点を発生させるには、その短点出力で図右側のOP-Ampで構成された双安定回路・・・Flip-Flop回路をトリガします。RS Flip-Flopと等価で、CRによる微分回路でトリガを掛けます。 この長点用の双安定回路は短点の二倍の長さの矩形波を出力します。 その二倍の長さの出力と短点一つ分をダイオードを使った出力部のORゲート回路で合成することで長点を生成します。長点はちょうど短点3つ分の長さになる訳です。 同時に短点と同じ長さのスペースもできます。
OP-Ampは論理回路専用の素子ではありません。 そのため双安定回路の実現には苦心の跡が見られます。 またこの図のままでは、キーイング出力としては不完全なのでリレードライバなどの出力回路を付加する必要があります。
【OP-Ampキーヤーの製作回路図】
キーヤーとして完全な回路になるよう出力のリレードライバまで含めて書いてあります。記事にある回路例よりもこちらの方が確実だと思います。 また、上記の回路図では負論理出力でしたが、ドライバ回路の都合から正論理の出力になるようにしています。 回路の動作そのものは上記の回路図と同じです。
記事にあるMC1437Lと言うOP-Ampはポピュラーではありません。今どき入手は困難でしょうから迷わず置き換えを行ないます。 黎明期のOP-Ampと言えばFairchild社が開発した709型がたいへん有名です。 MC1437Lはその709型を2個集積したものと等価です。 従って、709型のOP-Ampを2個使えばまったく同じです。 ここではTI社のSN72709Nと言う709型の互換品(セカンドソース)を使いました。
709型OP-AmpにはCanおよびDIPパッケージ品があって何れも8ピンが普通です。 14ピン型は未使用ピンが多くて合理的とは言えませんが、今さら709型OP-Ampなど購入したくもないので手持ちを活用しました。 8ピン型を使うなら回路図のピン番号を振り替える必要があります。まあ、真似て作る人などいないとは思いますが。w
リレードライバは2SC1815GRのようなNPN型の汎用トランジスタを使います。 ダイオードはシリコンの小信号用なら何でも良いです。例えば1S2076Aのほか1S1588や1N4148などがあります。 リレーは前のBlogのようなリードリレーでも良いしPhoto-MOS Relayなどお好みで。 ドライバのトランジスタでリグを直接キーイングすることも出来ます。
参考:709型OP-Ampは現在でも入手可能です。同等品やセカンドソースもたくさん存在しました。但し生産中止から時間が経過したため珍しい存在になりつつあって価格は上昇しています。 従って他の形式のキーヤーの製作をお奨めします。
【歴史に残る"709型"OP-Amp】
既に709型OP-Ampの現物など見たこともない人が多いでしょう。 まして14ピン型など・・・。 この14ピンのパッケージにOP-Amp回路がたった一つだけ入っています。
デート・コードを見ると1970年11月製のようですから非常に古いものでした。 その当時購入した訳ではなく、ずっと後に何かのジャンク部品と一緒に手に入れたものでしょう。 2017年の今から数えて46年も前のOP-Ampが正常に動作するのか少々怪しく思いましたが杞憂だったようです。 工業用の標準的なパーツとして確立していたのですから、その当時から十分な信頼性を有していたのでしょう。 劣化も見られずきちんと働いてくれました。
【OP-Amp keyerの全景】
最初の写真とは異なる部品配置になっています。 回路図を書き直した関係もあり、わかり易いように部品配置を整理してみました。 解体して最初から組み立て直しています。
以前、RTL-ICを使ったMicro TO-Keyer(←リンク)を作りました。 そのとき、マイクロではないオリジナルのTO-Keyerの動作についてに触れたことがありました。 このOP-Amp KeyerはそのTO-Keyerの動作に類似しています。
真空管回路ではありませんから回路形式はまるで違いますが、動作の様子には類似性があります。 半導体版のTO-KeyerとしてはRTL-ICを使ったものよりも、こちらの方がMicro TO-Keyerを名乗るのに相応しいように感じます。
【短点&スペース生成回路】
こちらが短点とスペースを発生させる弛張発振回路の部分です。この部分で短点発生とクロックを兼ねるので、クロック発振回路は必要ありません。
Duty比=ほぼ50%の矩形波を発生します。 50%が崩れると長短点とスペースの比が奇麗な1:1や1:3になった符号の発生ができなくなります。
出力を正帰還してヒステリシスを持たせ矩形波を発振する回路です。 OP-Ampを使ってはいますが、増幅回路ではなくてコンパレータ回路(電圧比較器)として使います。 709型OP-Ampは位相補償を内蔵しないので図のようなコンパレータとして使うと結構高速です。 奇麗な矩形波が得られています。 もっとも、数10Hzの矩形波ではどんなOP-Ampでも同じようかもしれませんけれど。
【長点発生フリップ・フロップ】
長点を作るためには短点の二倍の周期の矩形波を作る必要があります。 そのため、OP-Ampを使った双安定回路(Flip-Flop)を構成し、短点信号で旨く交互にトリガが掛かるようにして二分周器を実現しています。
この『旨くトリガを掛ける』という部分に苦労があったようです。 普通のOP-Ampには/Q出力(反転出力)はありません。 709型OP-Ampの出力側位相補償端子から正規の出力端子と反対の『反転出力』が取出せることを利用して旨くトリガを掛けているのです。 従って、このOP-Amp Keyerは709型もしくは等価な回路構成になったOP-Ampでないと旨く行きません。 幾らか回路を追加すれば他のOP-Ampでも可能そうですがもう時間切れです。 今さら真剣に置き換えを検討するほどの価値もないでしょう。
【電源回路例】
片電源動作にすることもできます。 しかし、小さな電源トランスと左図のような整流平滑回路を作って済ませるのが良いでしょう。電源電圧は安定化しなくても大丈夫です。
乾電池でも良いのですが、リレーを使うと006P型乾電池では動作時間が短くて不経済です。 ちなみに、±8Vで動作させた場合の回路電流は以下の通りです。 +8V側が待機時に約6.9mA、キーイング時が約7.8mAです。 -8V側は待機時が約16.5mA、キーイング時では少し減って約14.5mAでした。
Relayは動作させていませんので、動作させた時はその分だけ+8V側の電流が増えます。 乾電池では動作時間が短いので6〜9V程度の小型電源トランスを入手し図のような電源を組み込んで使います。
電源回路はオマケとして追記しておきました。おそらくこんなKeyerを作る人もいないでしょう。 それに興味から製作してみるようなお方なら電源の手当くらい百も承知でしょう。いささか蛇足だったかもしれませんね。hi
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【OP-Amp Keyerのテストムービー】
(注意:音が出ます)
キーヤー恒例のムービーです。(笑) 今回は圧電ブザーのキーイングではなく、実際にRigでキーイングしてみました。 キーヤー側とリグ側のGNDが分離されなくても良ければ、リレーなどを使わなくてもキーイングできます。
最近のRigのキーイング端子は電圧+10V程度で数mAの電流をON/OFFできれば良いように出来ています。 そのような場合はリレードライバのトランジスタで直接キーイングできます。 ドライバ・トランジスタを『オープン・コレクタ出力』にして取出しておけばOKです。 またブロッキング・バイアス・キーイングの場合はコレクタ耐圧:Vceが-100VくらいあるPNPトランジスタを使う方法があります。 但しそのようなニーズがあるのは非常に古いトランシーバ・・・例えばTS-510/511やTS-530/830あたりとFTDX-400/401やFT-101〜101Eのような真空管が使ってあるような年代もの・・・くらいでしょうね。(調べてみたら意外に多い)
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この所ずっと以前から興味があったキーヤー回路を試しています。 古いものばかりですが、面白い例が多かったように思います。今のように『定番』が確立する以前の時代だったからでしょう。 OP-Ampを使うKeyerなど「ゲテモノ」かも知れませんが回路動作そのものを見ればKeyerの基本に則った動きになっていることがわかります。 回路形式や部品に物珍しさを感じますが、エレクロニック・キーヤーの動きそのものは十分に確立されていたと考えて良いでしょう。 あとはその実現手段の違いだったに過ぎないのです。
昔々から目についた回路をメモったり、記事をスクラップしてきました。 いずれも何となく気になる回路ばかりですが試す機会もないまま深く埋もれています。 『部品の発掘』と同じように少しずつでも発掘して試してみたいものです。 では。 de JA9TTT/1
備考:日本語の「エレキー」は現在ではElectric Keyerの省略形と考えられます。 但し原典のOAKEY記事ではElectronic Keyerとなっており、(当時は)その呼び方が普通であったようです。それに伴い、この回のBlogに限ってElectronic Keyer / エレクトロニック・キーヤーと呼ぶことにしました。エレクトリックあるいはエレクトロニックのどちらも使われており、いずれでも誤りではないようです。以上は私見であって普遍的なものではありません。
(おわり)fm
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