【実用・水晶発振器・3】(その3:ピアースG-DとG-S)
Introduction
I am testing Pierce crystal oscillators using field-effect transistors (FETs). Pierce oscillator circuits come in two types: gate-drain (G-D) and gate-source (G-S). The Pierce G-S oscillator performs well at the fundamental frequency of the crystal. However, the Pierce G-D-type oscillator proved to be more advantageous at the overtone frequencies of the crystal. Both types include an LC tuned circuit on the drain side. Therefore, the coil is a critical component. This blog features instructions for winding coils suitable for LC tuned circuits ranging from 1 MHz to 100 MHz.(2026.08.13 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【7mm角のRFコイル】
実用的な水晶発振器を検討しています。前回のBlog(←リンク)ではデジタルICを使った発振回路でしたが、今回は再びディスクリート・デバイス、FET(電界効果トランジスタ)を使います。
ただし回路にLC同調回路を持つ形式です。 発振波形がきれいで発振そのものも容易ですが、LC回路という周波数特性を持つデバイスが新たに加わることになります。 そのためLC回路の特性が重要になってきます。
LC同調回路では特にインダクタ(コイル:L)が重要です。市販の既製品が乏しいので自身で製作する必要があるからです。今回はコイルがキーポイントになるでしょう。
まずは発振回路とそのテスト結果をまとめたあと、実際に使ったコイル(写真)について製作情報をまとめました。これは自身が発振器を製作するための基礎的なデータです。もし類似の回路を作ろうと思うなら参考事例の一つとされてください。
◎忙しい人のためのまとめ:
ピアースG-D型、ピアースG-S型のいずれの水晶発振回路も良好に発振します。傾向として低い周波数の基本波発振ではG-S型がやや有利です。またオーバートーン発振にはG-D型が向いています。いずれも同調コイルの調整がキーポイントです。そのコイル製作も肝心で、1MHz〜100MHzの発振器に使えるコイルの製作事例が後半にあります。
☆
前回のデジタルICによる発振器はともかくとして「無調整型発振器」で良い発振波形・・・きれいな正弦波を得るのは難しいものです。 無調整型は周波数選択性を持たない広帯域アンプを使うため、調整のわずらしさがない反面、発生してしまった不要波はそのままそっくり出力されます。
調整の煩わしさはあっても「信号のきれいさ」を求めるとLC同調回路を持った回路にメリットがあります。特に通信機ではスプリアスが少なくローノイズな発振器が高性能の決め手です。できるだけ良い発振器が求められます。 以下、いくつか例を示して検討して行きます。
ー・・・ー
発振回路にしぼった話題なんてあんまり興味を持てないでしょうか? それに発振モジュールの時代ですから既に発振器そのものが馴染みのない回路になっているのかもしれません。 水晶発振器はシンプルな無線機だけでなく高性能な通信機の決め手となる重要な回路です。 幸い、肝心の水晶発振子は高性能な既製品が安価で大量に出回っています。 そうした水晶発振子を活かして発振器が上手に作れれば他と一味違う自作機が実現できるだろうと思っています。 それに優秀な電子部品(水晶発振子)をみすみす見逃してしまっては勿体ないですからね。
【ピアースG-D型水晶発振器】
水晶発振子がFET(電界効果トランジスタ)のゲート:Gとドレイン:Dの間に入っている発振回路です。発振回路としてはコルピッツ型と等価なものです。
この回路は発振させやすくて失敗が少ないのがメリットでしょう。 ただし、周波数が低く、LC同調回路の共振インピーダンスが高くなりがちな低い周波数では、FETアンプのゲインが過剰になりやすい傾向があります。
今回のテストでも5MHz以下では水晶発振子の副共振と思われる周波数で発振してしまうといった異常発振が認められました。 対処方法としてはLC同調回路のインダクタンスを小さくして、コンデンサの容量を大きくすると効果的です。 High-C、Low-Lな共振回路、すなわち共振インピーダンスを意識的に下げるわけです。
そのような注意はありますが、水晶発振子の基本波による発振だけでなくオーバートーン発振も容易に可能です。 ドレイン側のLC同調回路を水晶発振子の奇数次高調波の周波数・・・3倍、5倍、7倍とかに合わせるだけでオーバートーン発振のモードになります。(それだけに、うっかりするとオーバートーン発振になってしまう危険もある訳ですが・・・)
ほとんどの水晶発振子で3次のオーバートーン発振が可能で、半数近くは5次でも発振します。高次のオーバートーン発振が可能か否かは主に発振子の性能に依存します。もちろんゲインの大きなFET・・・トランスコンダクタンス:gmが大きなFETが有利です。
左図の下段は1〜30MHzの基本波水晶の発振データと、15〜90MHzまでのオーバートーン発振のデータをまとめた一覧です。
それぞれ回路定数、使用したコイル、得られた発振の大きさ、消費電流がまとめてあります。 また、発振の起動が可能な最低電源電圧が求めてありますが、これは電源電圧9V以下で使う際の参考用です。 なお、使用コイルについては後ほど別項を設けてまとめてあります。
【ピアースG-Dを試作する】
写真は基本波周波数が30MHzの水晶発振子を使って30MHzを発振させている様子です。
このテストでは標準・基準となる増幅素子として2SK241GRを使いました。 高周波用のトランジスタ(RF-BJT)よりも扱いやすく周辺部品の数が少ないからです。そのためコンパクトに組めます。コンパクトさは高周波回路において有利にはたらきます。
ドレインに入っているLC同調回路の調整が必須です。 コイルのコアの調整で発振状態を最適化します。 ピアースG-D型はコルピッツ型発振器と等価ですから、ゲート側、ドレイン側ともにキャパシティブなとき発振が起こります。
この製作例ではコイルのインダクタンスを加減する形式です。
LC同調回路の共振周波数が高くなる方向に(インダクタンスが減る方向に)コアを調整して行き、LCの共振周波数が水晶の直列共振点:fsより高くなると発振が始まります。 逆に、コアを低い共振周波数の方向へ(インダクタンスが増える方向へ)回して行くとfsを下回った周波数で発振が急停止します。
実際に作ってコアを加減してみると発振開始と停止の感触が体感できます。 調整はかならず変化が急峻ではない側にて終了します。(のちほど図を使った説明があります)
【ピアースG-Dの発振波形】
上記テスト回路の発振状態を観測しています。 観測点は負荷抵抗:10kΩの両端です。
LC同調回路を持つことから、きれいな発振波形が得られています。 現在は製作可能な水晶の基本波周波数が高くなっており、HF帯のコンバータ回路などには有利です。
以前は20MHz以上が必要なら低い周波数で発振させてから逓倍で得ていました。今では一発で高い周波数が得られますから回路が簡単になり、スプリアスの点でも有利です。 それ以上の周波数ではオーバートーン発振を検討してみる必要があります。
なお、水晶メーカーの弁によれば200MHz以上の基本波水晶発振子も製作可能だそうです。しかし今のところ30MHzあたりまでが我々アマチュアには入手容易な範囲と思います。その上限あたりまでテストしておきました。
【ピアースG-Dの消費電流】
消費電流を観測しています。
ドレイン側LC同調回路の調整によって発振状態に変化があるので、伴って消費電流も変動します。
発振振幅が大きくなるとゲート側のダイオードによって整流されて(検波されて)発生する負のバイアス電圧が大きくなります。
その結果、FETのゲートに負のバイアス電圧が掛かってドレイン電流を抑止する方向に働きます。
ドレイン電流の状態を監視することで発振状態のモニタになります。ドレイン電流を観測する意味があるわけです。
☆
上記のピアースG-D型水晶発振器は幅広い周波数で活躍が可能です。 もし万能であるなら、以下のピアースG-S型水晶発振回路の実験は必要ありませんでした。 しかし低い周波数での発振状態にやや疑問を(難しさを)感じたので追加で別の回路をテストしました。
【ピアースG-S型水晶発振器】
水晶発振子がFET(電界効果トランジスタ)のゲート:Gとソース:Sの間に入っている発振回路です。発振回路としてはハートレー型と等価なものです。
ゲート:Gとドレイン:Dの間には適度な帰還容量(キャパシタンス)が必要です。回路図のC1がそのコンデンサです。
特に2SK241のようにCrssが小さなFETではC1がないと低い周波数では発振できません。 2SK19のようにCrssが大きいFETではなくてもたいてい発振します。もちろん発振の確実性のためには数pF入れておく意味があります。
また、発振状態のコントロールにはソース・GND間のセルフ・バイアス抵抗とその抵抗器と並列になるコンデンサ:C3の存在が重要でした。 多少回路は複雑になりますが、ピアースG-D型の問題を解決する意味からこの回路では部品を追加して実験しています。
オーバートーン発振においてはピアースG-D型の方が発振容易で確実そうでしたので、このピアースG-S型は主に基本波発振でテストしています。
低い周波数帯では発振状態が安定している印象があるので採用する意味があります。 部品定数を選べば30MHzまで発振は可能ですから一般的な基本波水晶発振回路として使うのも良いと思います。オススメの回路です。
【ピアースG-Sを試作する】
このテストでも標準・基準の増幅素子として2SK241GRを使いました。 また主に基本波発振でテストしました。
ただし、それ以外の可能性を確かめておく必要から、別の増幅素子(FET)やオーバートン発振についてもテストしています。
写真はその一例で、FETにはモトローラの3N201を使い、5.12MHz(基本波)の水晶発振子で3rdオーバートン発振させ15.36MHzを得ています。
もちろん基本波発振で十分な性能が得られていますが、オーバートーン発振の適性もあるわけです。 ピアースG-Dで行き詰った時はテストすべき回路だと思います。
この発振回路でもドレインに入っている同調回路の調整は必須です。 コイルのコアの調整で発振状態を最適化します。 ピアースG-S型はハートレー型発振器と等価ですからドレイン側はインダクティブなときに発振が起こります。
写真の製作例もコイルのインダクタンスを加減する形式です。
LC同調回路の共振周波数が低くなる方向に(インダクタンスが増える方向に)コアを調整して行き、LCの共振周波数が水晶の直列共振点:fsより低くなると発振が始まります。
逆に、コアを高い共振周波数の方向へ(インダクタンスが減る方向へ)回して行くと発振はピークを迎え、その後fsを上回った周波数で発振振幅が低下し続いて発振は急停止します。 要するにピアースG-D型とはコアの動きに対して真逆の変化が起こるわけです。
同じく実際に作ってコアを加減してみると発振開始と停止の感触が体感できます。 調整はかならず変化が急峻ではない側にて終了するようにします。(のちほど図を使った説明があります)
【ピアースG-Sの発振波形】
テストに使ったモトローラのFET:3N201はデュアル・ゲートMOS-FETです。そのG1とG2を結んでシングルゲートのように使うとgmが低めになります。
この例のようにやや不利なデバイスでも十分な発振が可能なので、幅広いデバイス(FET)で共通に使える回路です。
やはり最初にテストしたピアースG-Dの方が悪条件でも発振容易な傾向にありますが、選択肢の一つとしてピアースG-S型も覚えておくと良さそうです。 数MHzと言った低い周波数の発振では扱いやすさ(発振状態)に安心感のようなものがあって、悪くない発振回路だと思います。
☆
続いて再びピアースG-D型水晶発振器に戻って、ただしオーバートーン発振器に特化して増幅素子:FETの違いについて比較テストします。
【ピアース・オーバートーンでFET比較】
発振回路としては最初の実験回路:ピアースG-D回路とまったくおなじですから目新しさはありません。
同じ回路定数のまま、FETのみ交換してテストします。 もちろん、FETによってゲート・ドレイン間の帰還容量やドレイン・ソース間などの電極間容量には違いがあります。
従ってFETを単に差し替えただけでは発振が起動しなかったり最適な発振状態にはならないことがあります。必ずドレイン側のLC同調回路を調整しなくてはなりません。
そのような調整を行なって概ね最適な発振状態になったときの発振振幅:Voscと消費電流:Iddをまとめて一覧表にしてあります。
一覧の左側は基本波周波数が27MHzの水晶発振子をオーバートン発振させて81MHzを得るテストの結果です。81MHzはブレッドボードでの製作では上限周波数に近いため発振は難しくなる傾向があります。 しかしRF(高周波)用のFETでしたらいずれでも発振可能でした。
ブレッドボードでの限界を極めるのも悪くないものの、もう少し実用的な周波数である60MHzでもテストしました。20MHzのHC-49/USを使い3rdオーバートーン発振で60MHzを得ます。 このテストでもほとんどのRF用FETで発振可能でした。
トランスコンダクタンス:gmが小さいFETでは発振が弱く、また内部カスコード型のJ-FETやMOS-FETでもIdssが小さなランク品では発振は弱い傾向にあります。 かなずしも強い発振をすれば良いわけではなく、発振の強さは必要とする目的にマッチしていれば十分です。 従ってかなり幅広いFETでオーバートーン発振は可能ですから、あとは適材適所で使えば良いでしょう。
60MHzで発振できなかった2SK125-5ですがIdssが特に大きなデバイスです。 60MHzで良くなかったのは電源投入時にゼロバイアスのためガバッと電流が流れR2で大きく電圧降下してしまうためでしょう。水晶発振子のアクティビティなどの関係もあって60MHzでは発振起動できなかったものと思われます。
FETの特性と回路がマッチしていないのが原因です。対策として、ソースとGND間に抵抗を入れセルフバイアスを掛け起動時の電流を抑えてやれば良いはずです。
他のFETとの比較の意味であえて回路変更はしませんでしたが、回路側の対応で発振可能になります。2SK125はgmが大きくて優秀なFETですから使い方の最適化で十分使えるわけです。
【17種類のFET】
テストしたFETを並べてみました。 上段の左から右方向へ始めて、そのあと下段の左端から右方向へテストしています。
こんな説明に意味はありませんでしたね。要するに手持ちから適当にRF用FETを手当たり次第試したわけです。(笑)
面実装品のテストは回路の作り替えになってしまうので別の機会に譲りました。 TO-92パッケージ型のデバイスを主体にテストしています。
拙宅の在庫事情を反映したチョイスですので貴方の手持ちとは合わないかもしれません。 回路はシンプルです。簡単に試せるので手持ちのFETが一覧に無いようでしたら是非ご自身でもテストしてみてください。思わぬデバイス(FET)が好成績を示すことがあって用途の幅が広がります。
【このBlogでよく使うFETのピン配置】
項目タイトルの通り、このBlogによく登場する小信号用RF-FETのピン接続です。 ほかにオーディオ系の小信号用FETが多数存在しますが省略しています。
つまらない図ですが意外に便利です。(個人の感想です・笑)
注:同じピン配置のFETを並べているだけなので互換性があるわけではありません。足の並びが同じというだけです。性能や特性は違うので注意してください。
【ピアースG-Dオーバートーンで81MHzを発振】
ピアースG-D型オーバートーン水晶発振回路をテストしている様子です。
基本波の周波数が27MHzのHC-49/U型水晶発振子を使って3rdオーバートーン発振させています。
ドレイン側の同調回路は777M-No.0というコイルを使っています。このコイルについては後ほど構造の詳細説明があります。
テストしたどのFETでも良く発振しましたが、ドレインのLC同調回路は個々に調整が必要です。 調整方法はFETが異なってもまったく同じで、既述の通りです。
周波数が高いので、ゲート:GとGND間の容量:C1は省いています。 ブレッドボードには3pF程度の分布容量が存在することに留意します。 もし回路を基板化するなら小容量を追加する必要があります。容量不足だと発振が弱くなる傾向があります。言うまでもないことですが控えめの容量が好ましくて、大きすぎてもダメです。
【ピアースG-Dオーバートーンの81MHz発振波形】
基本となる2SK241GRで発振させている時の観測波形です。負荷抵抗:RL=10kΩの両端で観測しています。
同じ回路定数、特に同じコイルを使っていてもFETが異なれば得られる発振出力には違いが見られます。
必要とする出力電圧に応じてFETを変えるもの手ですが、コイルの1次:2次の巻き数比を変更する方法もあります。
手持ちのFETで間に合わせるならコイルの検討も必要になります。 検討のための基礎データとして実測結果を役立てるつもりです。
【ピアースG-Dオーバートーンで60MHzを発振】
引き続きピアースG-D型オーバートーン水晶発振回路をテストします。
基本波の周波数が20MHzのHC-49/US型水晶発振子を使って3rdオーバートーン発振させています。
ドレイン側の同調回路は777M-No.6というコイルを使っています。周波数が低くなるのでNo.0コイルよりもインダクタンスが大きいコイルです。このコイルについても後ほど構造の詳細説明があります。
テストしたどのFETでも良く発振しましたが、ドレインのLC同調回路は個々に調整が必要です。 調整方法はFETが異なってもまったく同じで、既述の通りです。 2SK125が60MHzで旨くなかった理由は既述しました。
ゲート:GとGND間の容量:C1を省いています。 ブレッドボードには3pF程度の分布容量が存在しますから実質3pF程度が入っていることになります。なお、60MHzの発振では実質3pFの容量ではやや少ないようです。5〜8pFが適当です。
【ピアースG-Dオーバートーンの60MHz発振波形】
まずは2SK241GRで発振させている時の観測波形です。負荷抵抗:RL=10kΩの両端で観測しています。
60MHzと周波数が低くなることから「発振しやすさ」と言った回路実現の容易さは向上していると思います。
体感的には81MHzとの差は感じませんでしたが、無造作に作っても成功しやすくなっているはずです。
60MHzという周波数はDDS発振器のクロック発振として使えるほか、例えば50MHzのクリスタル・コンバータなどの用途もありそうです。
ここで使った20MHz(HC-49/US)の発振子は一時期デジタル機器共通のクロック周波数のようになっていました。 従って今でも20MHzの水晶発振子は入手容易でしょう。
3次オーバートーンで60MHzが、5次オーバートーンで100MHzが得られます。
注:3次はどれでも大丈夫ですが、5次以上のオーバートーン発振が可能か否かは水晶発振子個々の特性に依存します。 できるだけ3次オーバートーンで済ませるのが賢明です。 高次OTが上手く行かないときは発振子を交換すると簡単に解決することもあります。
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今回の水晶発振回路はLC同調回路を持っている関係で、コイルは重要部品です。 コイルは必要なものが簡単に既製品で得られる訳でもないため自作しなくてはなりませんでした。 コイル巻きは好まれませんが仕方ありません。 以下にこの実験のために製作したコイルの製作方法とその仕様をまとめておきました。
【7mm角のRFコイル群】
コイルを巻くためには素材が必要です。 今回は2種類の素材を使いました。
Aグループで使ったコイルは、自作アマチュアではおなじみの溝付き7mm角のコイル・ボビンです。巻き易いので製作に便利ですが、たくさん巻けないので大きなインダクタンスが必要なコイルには向いていません。従って高い周波数で使うコイルの製作に使いました。現在は入手性があまり良くないかも知れませんが、過去にずいぶん出回ったので手に入る可能性は高いでしょう。
もう一つはBグループで使ったコイルで、これはOMさんにいただいたものです。2024年7月ころこのBlogを通じて配布した残りを使いました。同年のHAMフェアでも配布があったので入手された人もあるでしょう。詳細はそれ専用のBlog(←リンク)をご覧頂くとして簡単に説明します。
コア材の透磁率μが大きくて、少ない巻き数で大きめのインダクタンスが得られます。従って低い周波数に向いたコイルが作り易いです。今回は自身でたくさん作ってみたのでこのコイル素材の有用性が検証できました。なかなか良い素材だと思います。(なお、コア材の周波数特性が延びていないため高い周波数には向きません)
このように使い分けることで実験に必要な1MHz〜100MHzの範囲で使えるコイル群を製作しています。全部で14個になりました。ブレッドボード装着用の変換基板はJR2FNK鶴田さん製作のものを使わせて頂きました。ありがとうございます。
なお、ここで使ったようなコイル素材の入手が困難なようでしたら、AMIDONのトロイダル・コアとトリマ・コンデンサの組み合わせでLC同調回路を実現してください。Blog内の参考リンクは→こちら。
【RFコイルの製作情報】
左表はコイルの巻き方と、巻いたコイルの電気的な特性の実測結果をまとめたものです。
何も名前がないと使う際に間違い易いので便宜的に「FCZ7-XX」と言った型番を付けたものがあります。これらはFCZコイルと類似ですが、2次巻線の回数が大幅に少なくしてあります。同型番の(本物の)FCZコイルの互換品ではないので注意してください。
本物のFCZコイルも発振回路に使えるのはもちろんですが、2次側巻線の巻数が異なるので出力電圧も大きく異なります。
No.8の「Original(Y)」と称するコイルは、Bグループの素材の一つをそのまま活かしたものです。USF 08 T2と捺印のある黄色コアのバイファイラ巻きコイルの1次側をそのまま使い、初めから存在しなかった2次側巻線を3回巻きで追加しました。
No.9とNo.10は同じものです。 これはUSF 08 T3と捺印のある紫色コアのコイルを改造したものです。1次側の巻線(合計25回巻いてある)はそのまま使います。ただし、2次側の巻線は21回も巻いてあります。これでは多すぎるので除去してしまい、新たに3回巻きを追加します。元々の2次巻線は外側に巻いてあったので除去するには好都合でした。
なお、Bグループのコイルには元々同調用のコンデンサが内蔵されれいます。これはこの実験では不要なので必ず除去しておきます。そのコンデンサを残す方法もありますができあがったコイルの汎用性がなくなるので今回の実験には不適当でしょう。
No.1の777M-No.00というのは「777」と捺印されていたジャンクのコイルをそのまま使ったものです。1次側が3回、2次側が1回巻いてありました。100MHzくらいの周波数ならそのまま使えそうなので利用しました。777M-No.01〜777M-No.06は元の巻線を全て除去して巻き直します。なお、 Aグループのコイルには同調用コンデンサは内蔵されていません。
各コイルの周波数ごとの使い分けは発振回路のテストのところに書いてあります。テスト結果一覧表を参照してください。
参考:Aグループのコイルは調整用コアを右・時計回りに回して行くとインダクタンスは減少します。Bグループのコイルは逆にインダクタンスは増加します。これはそれぞれのグループのインダクタンス可変構造の違いによるものです。
内部構造など細かい部分は以下の写真も参考にどうぞ。
【7mm角ミゾ付きコイルの構造】
Aグループの777M-No.00〜777M-No.06は5段のミゾ付きボビンになっています。 写真は777M-No.01の完成状態です。
昔の話になりますが「東光の7K型コイル」というものがありました。 同じように7mm角のシールド付きで巻きミゾ付きボビンのコイルでした。
構造は類似ですがこのコイルとの互換性は未確認です。 代用される場合は事前に各自で確認されますようお願いします。
東光の7Kでも極端に巻き数が違うことはなく中心のコアでインダクタンスが可変できるので類似に巻けば十分使えるはずです。
【7mm角ツヅミ型コア・コイルの構造】
Bグループの7つのコイルは元々写真のような内部構造になっています。(既出の写真を再利用しています)
一部は元々の巻線を活かして作りましたが、他は巻いてある巻線をすべて除去してから巻きなおします。
コアのペイントは黒・黄・紫の3色ありますが、すべて巻き替えるならどの色を使っても同じように作れます。
構造上巻線しにくいことから、なるべく元のまま活かせるよう考えましたが限界があるようでした。
検討の結果、5MHz以上で使うためには完全な巻き換えが必要でした。 作り直しは少し面倒ですがそれほど巻き数は多くありません。 ちょっと頑張って巻線しました。(笑)
【内部コンデンサは取除く】
この写真説明も既出ですが参考にどうぞ。
Bグループの製作に使うコイルには底面に同調用のコンデンサが内蔵されています。
残念ながら内蔵のコンデンサは容量値が適当でないので使えないため除去する必要があります。 除去するには「破壊」する方法が簡単です。 内部コンデンサが再利用できる可能性はあまりありません。苦労するのでハンダを除去して外すことは考えない方が良さそうです。
コンデンサはドライバの先端など尖ったもので潰してしまい、破片をよく取り除いておけば十分です。 これが一番容易です。
忘れずに除去する必要があるので、真っ先に取り除いておくことをお奨めします。(忘れてしまい原因不明のトラブルに遭遇しました。しかも変換基板に実装してから発覚・笑)
【コイルを性能評価する】
製作したコイルは念のためインダクタンスと無負荷Q:Quを調べておきました。
コアを回して動かすとインダクタンスが変化するとともにQuも変化します。
インダクタンスの可変範囲なども調べておきましたが、煩雑になるので上表では省いてあります。 いすれも十分な可変範囲があったので実験に使う範囲に於いて支障はないです。
コイルを自作したらできるだけ事前に測定しておきたくなるかもしれません。 しかしコイル専門メーカーではありませんから、Qメータの動員までは必要なく、簡単に端子間の導通チェックでもしておけば十分ではないでしょうか? 素材が同じならコイルの再現性は良好です。
ここで詳しく測定しているのは「情報の収集と公開」が目的です。自身の参照用あるいは興味の範疇という意味もありますけれど。w
【発振状態とコアの位置】
発振状態とコアの移動の関係を図で示しておきました。
既述のようにピアースG-D回路とピアースG-S回路では、インダクタンスの変化と発振状態の関係は逆方向です。 ただし、変化方向は逆でも同じような傾向を辿るのは違いません。 製作したらコアを回して変化の感触を実際に確認してください。
要点は簡単です。 発振電圧のピーク点に調整するのではなく、変化が緩やかな側で、出力が少し下がったところに調整しておくことにあります。
その理由は明確です。 何か温度のような周囲条件などの変化でインダクタンスが変動しても発振が停止する側に陥らないようにするためです。 そうしないと何かの加減で発振しなくなってしまい、機能停止に至ることがあります。
メーカー製のトランシーバで発振のピークに局発コイルを調整したものに遭遇したことがあります。水晶が発振せず送受信できないバンドが発生していました。生半可な知識で調整を行なった素人修理の典型といった感じの機械でした。何でもかんでも最大点に調整すれば良い訳じゃありません。(笑)
【参考:FT-101Zの局発基板】
一点だけメーカー機の水晶発振回路の例をあげておしまいにしたいと思います。
写真は八重洲無線の名機:FT-101Zのプリミクス回路用局発基板です。 部品数は増えても機能実現に合理性を求めた設計になっています。 多バンド化に対応しつつ、バンド切り替えスイッチの接点数を減らすのが目的でしょう。
発振回路を一つにして、スイッチで水晶発振子を切り替える形式をやめて、バンド数だけ発振回路を並べる設計です。おそらく姉妹機のFT-901と部品共通化も目的になっているのでしょう。FT-901はPLLでFT-101Zは水晶発振です。機能的に同じように構成できるよう考えたのではないでしょうか。
多数の発振回路が並べてあります。周波数が違う発振回路の出力電圧を揃える工夫が見られて興味深いです。
【参考:FT-101Zの局発基板・回路図】
これがその回路です。 発振回路には安価なトランジスタ(BJT)を使っています。 ピアースB-C型発振回路になっています。 各トランジスタは2mA少々のコレクタ電流を流す設計になっています。
面白いのはトランジスタのコレクタと同調回路の間に100Ω〜560Ωの抵抗器が入っていることです。 この抵抗器により発振強度を加減するとともに、寄生発振など不要な発振が起こらぬよう対策しています。 こうした工夫は自作機でも真似る意味があります
なお、調整マニュアルによると、再調整の際はダイオードスイッチを通った後の出力端子で300mV±50mV(Vppではなくて実効値)になるよう、各発振回路のコアを調整するよう指示があります。(オシロスコープで調整するなら、0.85Vpp±0.15Vppでよいでしょう)
故障修理のためにコイルを丸々交換したなら別ですが、普通のメンテナンスでしたらわずかなコアの再調整で済むはずです。 既に生産工場でコイルは変化がなだらかな側に調整してあったはずです。 ごくわずかに動かして発振出力を再調整する程度なら特別な注意は必要ない訳です。 間違ってコアをたくさん回してしまうとそうは行かないかも知れません。 そんな時は発振回路の調整法を思い出して正しい方向に調整すれば大丈夫です。回路を読み取ることも無線機レストアの一つでしょう。
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今回の実験では何と言ってもコイルがキーポイントでした。 コイルの性能云々はもちろんですが、たくさん製作する必要があって、始めるにあたって一念発起(大げさ・笑)が必要でした。 回路の実験以前にコイルという「部品の製作」から必要になって、時間がかかる原因の一つになりました。 また、資料もそれだけ多くなりまとめにも時間を要してしまいました。分量もずいぶん多くなりました。 今回も初めから読もうとしたら途中で眠くなってしまったかもしれません。 必要の都度、部分的に読み返していただけたらと思っています。 それでも一気に全部ご覧になったお方もあったでしょうか。ご覧いただきどうもありがとうございました。
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水晶発振器を扱うBlogシリーズとして今回で終わりにしたいと思います。 まだ高次のオーバートーン発振器など触れるべきテーマもあります。 一旦終わりにして、余裕ができたら改めて続編を追加したいと思います。 自作HAM仲間では「アンプを作ると発振し、オシレータを作ると発振しない」という笑えないジョークが語り継がれています。せめてオシレータが確実に発振してくれたらと願いつつ本特集をまとめました。 次回はどんなテーマにしましょうか。一息つけるようなるべく軽い話題が良いと思っています。 ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogに関して何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
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→ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。
参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。
(おわり)nm























