【実用・水晶発振器・2】(その2:デジタルIC編)
Introduction
I tested a crystal oscillator using digital ICs. This is because many digital devices require a square-wave clock signal suitable for circuit operation. Let me state the conclusion. The best choice is a crystal oscillator circuit using HC-MOS. Be sure to use the unbuffered type. Also, if you want to reduce current consumption in particular, use standard C-MOS—also the unbuffered type. The era of using TTL ICs is already over. By selecting the appropriate oscillator device, you will be able to build efficient digital devices.(2026.07.14 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【デジタルICと水晶発振子】
前回のBlog(←リンク)ではトランジスタ(BJT)や電界効果トランジスタ(FET)といったディスクリート・デバイスを使った水晶発振回路を検討しました。
発振で得た信号の使い道として周波数コンバータ回路や通信機のマスター・オシレータと言ったアナログな用途が主な想定でした。しかし、デジタル回路のクロック・オシレータの用途もあって、そうした回路では矩形波のクロック信号が必要とされます。
初めからデジタル回路用のICを使って発振させると、波形整形といった手間いらずで矩形波が得られるので便利です。 今回は基本波水晶発振器のいちジャンルとしてデジタルICを使った水晶発振回路を扱います。
ところで、デジタルICはかなりの世代交代があって、過去のロジックICとして忘れ去られたものがたくさんあります。 このBlogがめざす「実用情報」としては、既に廃れたICは省略して良いのかも知れません。 しかしここは趣味のサイトでもあるので幾らか古(いにしえ)のデバイスについても紐解くことにして話を進めたいと思います。 古いデジタルICから順に扱って行きます。
◎ 忙しい人のためのまとめ(結論):
デジタルな発振回路にはアンバッファ・タイプのHC-MOSが最も適しています。 また低消費電流を優先するならスタンダードC-MOSを選択します。その場合もアンバッファ・タイプが良いです。すでにTTL-ICの時代ではありません。なお、各回路の具体的な内容は該当セクションの参照を。C-MOSの回路は後半の部分にあります。
☆
私がデジタルICで水晶発振する回路にお目にかかったのはマーカ・オシレータが初めてでした。 マーカ・オシレータそのものが既に死語のようなものですが簡単に言えばアナログな受信機のダイヤル読み取り精度を上げるための目印発生装置です。
このあと具体例があるのでマーカーOSCの詳細は省きますが、デジタルICと水晶発振子が出逢ったような回路でした。
このさき、すぐ使えるような機器の回路例はほとんど登場しませんが、もしデジタルな波形の(矩形波の)水晶発振器が必要になったら思い出してください。 そうは言っても電子工作などされないお方には将来にわたって無縁に違いないとは思うのですが・・・(笑)
【初期のデジタルIC・RTLを使う】
ノイマン型のコンピュータはクロックパルスに同期して処理が進む仕組みです。当然初期の頃からクロック・オシレータは存在したはずです。 想像ですが、初期のころそのオシレータはディスクリートなパーツで作られていたでしょう。
RTL-ICはシリコンのウエファ(薄板)上にトランジスタと抵抗器を同時に作成しそれらを直接配線でつないで作った初期のモノリシック型集積回路です。 もともとミサイルの誘導回路など軍用目的で作られ、その応用としてアポロ月探査計画では司令船や着陸船のガイド用コンピュータとして搭載されていたのは有名な話です。ちなみにクロックは2.048MHzの水晶発振で1/4分周して512kHzで動作していたそうです。
そんな高尚な用途とは違ってHAMのRTL-IC応用はもっぱらシンプルなマーカ・オシレータやエレクトリック・キーヤー(←リンク)でした。(笑)
左図の上段はRTL-ICで作った水晶発振回路です。 このICの時代の標準的なゲートICであるμL914を使っています。 μL914は2入力NORゲートが2つ集積された8ピンのICです。 ゲートあたりトランジスタ2石、抵抗器3本の構成で、それが2つ詰まったシンプルなICです。
下段は昔の雑誌(CQ HAM Radio誌)に掲載されていたマーカ・オシレータを書き直したものです。原著はもう残っていませんので記憶からです。 ご覧のように100kHzを発振する水晶発振回路とそれに続く2段のフリップ・フロップ回路で1/4分周して25kHzを得るようになっています。 これで100kHzおよび、25kHzおきの高調波が得られるので受信機(トランシーバ)のアナログ・ダイヤルが校正できるわけです。 水晶発振の100kHzは当時存在した5MHzや10MHzのJJY(高精度に管理されていた標準電波)とゼロビートをとって校正しました。
【RTL-ICで水晶発振は難しかった】
写真は設計しなおした100kHzの水晶発振回路です。
回路図下段のような回路で作った100kHz水晶発振回路は起動特性に問題があったのです。 たしかにVR11を加減して発振調整してやれば水晶発振してくれました。
しかし発振の確実性がなかったのです。周囲温度が変化すると発振が起動しないことしばしばで実用になりません。 八重洲無線のFT-400S型トランシーバの内蔵用に製作したのですが機内温度が大幅に変動する真空管機にはまったく不向きでした。 ガラエポ基板をエッチングした見かけカッコいいマーカ・オシレータ基板でしたが・・・肝心のとき発振しなくてはねえ!(笑)
出力側から負帰還バイアスが掛かるようにした上段の発振回路なら環境変化に強く良い状態に追従しますので発振の確実性があります。 もう一度作るとしたら100kHzの発振器は上段の回路で作りましょう。 1970年当時、国内にはμL914(米Fairchild社製)の少量の入手先が見つけられず秋葉原の共働電子で東京三洋電機のRTL-IC:LB-1001とLB-1021を入手して作りました。 いまとなってはちょっと苦い思い出です。(笑)
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1960年代〜1970年ころでRTL-ICの時代は終わります。 その後、DTL-ICの時代になったのですがHAMの用途としてはエレキーに使われた程度でした。わりとスムースに次代のロジックICであるTTLへと移行しました。DTL-ICの水晶発振器は省略してTTL-ICに進みましょう。
【標準TTL-ICで水晶発振・その1、2】
TTL-ICを使った水晶発振回路は過去の資料に当たると様々な例が見られます。
この事実を裏返して言えば、決め手の回路はなかったと言うことでしょう。その中から再現性の良かった2例を紹介しておきます。
(1)が4回路入りNANDゲート:SN7400Nを使う例です。(2)は6回路入インバータ:SN7404Nを使うものです。 出力側から負帰還バイアスをかけて回路の動作点がアンプの状態(アナログな増幅器の状態)になるようにしています。
その「アンプ」を2段カスケードにして正帰還ループを構成します。そのループ内に水晶発振子を挿入し水晶の直列共振周波数で発振するようにするわけです。
もともとデジタルな動作(スイッチング動作)をするよう考えられたICです。そのためアナログなアンプとして使うと性能が安定しません。(まあ、当たり前ですな・笑)
そのため、外付けの部品定数が適切でないと不安定な動作になることがあって、動作を確実で安定なものにする対策が必要です。 回路図のC4とC14はアンプの周波数特性を加減して(悪くして)異常発振を防ぐためのコンデンサです。
実際に発振波形を観測しながらカット&トライ式に決めねばなりません。 回路への接続箇所や容量値を変えながら旨く行くよう試行する必要がありました。
【1MHz発振器・容易そうで難しい】
そのような訳で、雑誌の記事に書いてある回路だからといって読者が信用して製作しても必ず旨く行くとは限らないのです。
久しぶりに製作しのですがやはり一筋縄では行きません。 測定ツールや積み重ねた経験や知識のおかげでなんとか正常に動作させることができましたが、やはり難しい回路と言えます。
もう一つの問題点はあまり周波数安定度が良くないことです。 そのため周波数カウンタのように周波数精度を要する用途では性能不足を感じるはずです。 温度補償も不可能ではありませんが設備がないと実現は容易でなく、むしろ他の発振回路を選択する方が苦労せずに済むはずです。
実際、周波数カウンタの製作ではゲートICの水晶発振回路はあきらめて、FET+BJTで1MHzの水晶発振回路を作り周波数基準としました。その方がずっと確実で周波数安定度も良好だったのです。1975年ころのことです。
【波形観測してハザード対策が必須】
左の写真はウマくない例とその対策後の状態を示しています。
TTL-ICは高速ですので、正弦波的なゆっくりした立ち上がりの信号が入ると出力がバタついて余分なヒゲがでるのです。 それを抑えるために回路の動作スピードを加減して安定させる必要があるのです。
ただし、相手は半導体回路ですからクリチカルな状態に調整してしまうと、温度など環境条件の変化でまたヒゲが見えてくるといった不具合もあって信頼性の点ではかなり疑問もあるのです。 まあ、今となって過去の製作を振り返ってみれば・・・という後付けのお話ですけれど。(笑)
【標準TTLでもコルピッツ型は容易?】
おなじTTL-ICを使った発振回路でもコルピッツ型を構成する方が有利なようです。
ゲート1段をアナログなアンプとして使います。
この回路では水晶発振子がインダクティブになる周波数で発振します。 TTL-ICに負帰還バイアスをかけたアンプなのは同じですが、一段アンプですからゲイン過剰ではなく動作はだいぶマイルドです。
ただしゲインは大きくないですから周波数に応じて外付けCRの細かな加減が必要です。 一つの回路定数のままでは発振可能な周波数範囲は狭いのですが、表のように選んでやればだいたい旨く行くでしょう。
もはや標準TTL-ICで水晶発振器を作ることはないとは思いますが、もし作るならこれが良さそうです。
【コルピッツで10MHzを発振させる】
写真は10MHzの発振回路例です。
たとえば1MHzといった低い周波数の発振もC1,C2の値を選んでやれば可能です。
しかし思った以上に大きめの容量が必要なので良いコンデンサを選ぶ苦労が発生します。 従ってやや高めの周波数を発振させるのに向いた発振回路だと思います。
だいたい5〜15MHzが適当な範囲でしょう。
【コルッピッツで10MHz】
写真は10MHzの発振波形です。
バイアス抵抗を加減してやるとDuty比を50%付近に持ってくることは可能です。
ただし発振周波数によっても変わりますしC1,C2の値も関係するので結局カット&トライ的になってしまうでしょう。一品料理なら問題ないのですけれど、量産向きではありませんね。(笑)
以上、標準TTL-ICを水晶発振回路に応用する3例を検討してきました。 すでに標準C-MOSでさえ消えようとする現在(2026年)ですから、標準TTLなんてナンセンスでしかありません。まあ、そんな時代もあったんだと言う記憶として書き留めておきました。
☆
標準TTL(N-TTLと略称)の時代は案外長く続いたのですが、デジタル回路の省電力化の要求もあって消費電流が1/5でスピードが同じと言うLS-TTLが登場するや急速に置き換わりました。 続いてLS-TTLを使った水晶発振回路を扱います。
【LS-TTLで水晶発振】
LS-TTLでもコルピッツ型発振回路は可能そうですが、アンプ2段形式の発振回路も良好でしたので紹介しておきます。
LS-TTLは様々なメーカーで製作されました。これには理由があるのですが専門的になりすぎるので省きます。 その結果、デバイスの「アナログ特性」にバラツキが大きくなってしまい、発振回路に使った場合の再現性には課題があったようです。
この例では本家のTI社(Texas Instruments社)のほか、日立と松下電器(現Panasonic)の3種類を使って比較してみました。
日立製がやや有利なようですが、周波数範囲を選んでやればオリジナルのTI社だけでなく他社のセカンドソースもかなり使えそうです。
なおハザード対策のC4は実験した範囲では不要でしたが、参照した資料によっては付加されていることがあります。波形を実測して大丈夫なら省略できそうです。 この回路はN-TTLを使うよりも確実そうな印象を持ちました。
【LS-TTLを使ってみる】
1MHzのHC-49/U型水晶発振子を使って発振回路を製作しています。
ゲートICの入出力間に負帰還抵抗を入れてアナログ動作させている回路で、標準TTL-ICの例と類似ですが、アンプ間の結合が抵抗器でDC的になっています。 この方が動作が安定しているように思いました。
ただしN-TTLで同じことをやっても上手く発振しないことがあって意外に難しいものです。(笑)
【LS-TTLは意外に悪くない】
上記実験回路の出力波形です。
ご覧のように余分なヒゲも出ず、Duty比も50%近くて良好な発振波形と言えるでしょう。
だいたい10MHzくらいまでの周波数で使うのであればまずまずの結果が得られると思って良さそうでした。
もちろん、何度も書いていますがN-TTLやLS-TTLは完全な時代遅れですから好きモノが好奇心から使ってみるといった可能性しかもうなさそうです。 いつの時代にも「趣味人」のようなお方は居られますから何かの機会に資料が役立ってくれたなら幸いです。(笑)
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RCA社はTTLのような高速デジタルICでは遅れをとったのでC-MOS 4000シリーズで超低消費電力の用途を目指したのかもしれません。 実際、民生用電子機器の多くは電池電源で動作することから動作電源電圧範囲が狭く消費電流の大きなTTL-ICは不向きでした。 低速ではあってもC-MOSロジックICが活躍することになります。 それは今も続いておりデジタルICを使った水晶発振回路にはC-MOS ICが最も適しています。 以下、C-MOS ICを使った水晶発振回路を詳しく扱います。
【低消費電流・C-MOSクロック発振器】
私がC-MOSを使った水晶発振回路に興味を持ったきっかけは腕時計用の超低消費電流発振回路にお目にかかったときです。
1.5V程度の電圧でμAオーダの電流で確実に発振する回路はなかなか驚異的だと感じたものです。 なお、1〜1.5Vといった低電圧で動作するC-MOSは腕時計用の専用品です。
左図は一般に入手可能な汎用C-MOSゲートを使った水晶発振回路です。 なかなか有用な発振器と言えますが残念ながら1.5Vでは動作しません。 4000シリーズC-MOSの耐圧は18Vであり、MOS-FETの製造プロセスが高い電圧向きになっているからです。 それでもVdd=3Vで動作させれば数μAで確実に発振してくれます。
Type-AはP-chとN-chのMOS-FETのソース電極と電源/GND端子間に100kΩの高抵抗でセルフバイアスを掛け動作電流を絞ることで超低消費電流を実現しています。その代償としてFETのgmが低下するのでゲインが低下してしまい、発振の起動特性がかなり悪くなるのはやむを得ないようです。 それでも確実な発振は可能ですから実用性は十分にあります。 単三乾電池2本で非常に長期間発振させることが可能です。
Type-BはC-MOSインバータ回路を素直にそのまま使う発振回路例です。 ただし、負荷となるコンデンサTC1やC1への充放電電流でロスが出ないよう考えてあり、時計用の32.768kHz水晶発振子も少ない負荷容量を考慮されたものになっているようです。
Type-Aよりもやや消費電流は大きいのですが、発振回路としての汎用性はずっと広くて数100kHzまでの低消費電流な水晶発振回路として実用性があります。セラミック発振子(手持ちの455kHzなどでテスト)でも発振可能でした。なお、発振周波数が高くなると消費電流が増加するのは当然です。
【タイプ・Aの試作例】
Type-Aの試作例と発振波形を示します。
MOS-FETの消費電流をおさえ、コンデンサへの充放電電流を絞っているのですから発振波形は正弦波的になっています。
腕時計のような超低速論理回路用としては支障ない波形なのでしょう。
ただし、このままHC-MOSなどに繋ぐとスルーレート不足で異常動作する可能性があるでしょう。 シュミット回路など挟むとよいです。 まあ、普通はそんな心配のない回路に使うべきなのだと思います。
使用している円筒型の水晶発振子は時計用の汎用品として安価に市販されています。内部は音叉型(おんさ型)の発振子でしょう。けっこう手持ちがあるので欲しいお方があれば差し上げます。 発振周波数の調整は意外に厄介でレシプロカルなユニバーサル・カウンタでないとたいへん時間が掛かると思います。
R2、R3(100kΩ)を150kΩに変更すればさらに消費電流を減らせます、ただし電源投入から安定した発振振幅が得られるまでの「起動時間」はかなり長くなります。 現状のR2=R3=100kΩでも、電源電圧:Vdd=2.7では約6秒必要でした。 150kΩでは20秒近くかかりました。
なお、アンプとして動作させるための負帰還抵抗;R1は15MΩくらいが適当です。 小さくすると消費電流が増え、アンプとしてのゲインも食われるので損です。最低でも10MΩは必要です。 逆に50MΩのように大きくするとハイインピーダンスになり過ぎてノイズの誘導に弱くなります。 これはType-Bでも同様です。
【タイプ・Bの試作例】
こちらはType-Bの試作例と発振波形です。
消費電流が大きい分だけスルーレートが大きく、従って発振波形も矩形波として綺麗になっています。
写真の試作では、C-MOS ICとして三菱電機製のM4007UBPを使っています。 ほかモトローラのMC14007APやRCAのCD4007AEでもテストしましたが概ね同等の結果でした。
まったくの余談ですが、この4007と言うC-MOSは面白いICです。 単独のP-chやN-chのMOS-FETとして使ったり、トランスミッション・ゲート(アナログ・スイッチ)を構成すると言った応用法もあってアイディア次第で様々に活かせるC-MOS ICです。
【タイプ・Bは汎用性がある】
Type-Bの発振回路は汎用性があって、32.768kHz以外の周波数でも使えます。
写真(左)は手元にあったロシア製のガラス管入り100kHz水晶発振子で発振させた例です。
写真(右)金石舎製の59.9kHzと言う大きな水晶発振子で発振させた様子です。
何に使っていた発振子かわかりませんが低い周波数の発振子は一般に大型になります。 左に見える時計用32.768kHzは音叉型に作って小型化しているのです。
ご覧のようにType-Bの発振回路は時計用のほか、数100kHzと言った周波数範囲まで良好に発振しますので低い周波数用の発振回路として有用性があります。 アナログな多重電話回線で使っていたと言う4kHz(!)の基準用水晶発振子でもうまく発振できました。 C1とTC1に温度特性の良いものを使ってやれば発振周波数の安定度もかなり優秀です。周波数安定度はほとんど水晶発振子の性能で決まるようでした。
【4069UBで水晶発振・5MHzまでが良い】
これは同じ4000シリーズの標準C-MOSを使った発振回路ですが、前項と違ってあまり低消費電流には拘らず、その代わりにより広い周波数で発振可能な回路です。
内部が単段のコンプリメンタリ・インバータ回路で構成されているアンバッファ型の標準C-MOS ICである4069UBを使います。
発振回路の形式はコルピッツ型です。 C1とC2の容量値および、位相調整とゲインを加減する抵抗器:R2を選ぶことで広い周波数範囲で水晶発振できます。
実験的には10MHz以上の発振も可能でしたが、高い周波数は次項で紹介するHC-MOSに任せるべきでしょう。 高い周波数になると発振波形がなまってきて正弦波的になり矩形波が目的の発振器としては好ましくありませんでした。
従って標準C-MOS 4069UBを使った発振回路としてはおおよそ5MHzまでと思えば動作は確実です。
【低周波水晶にも向いている】
時計用の32.768kHzでも使える回路です。 上記の4007で作ったType-Bと同等ですから当然でしょう。
32.768kHz専用とするのでしたら、負帰還抵抗:R1は1MΩよりずっと大きくします。 さらにC1(+TC1)とC2を小さく選んでやれば4007の回路と同じように低消費電流化できます。
4007が得られない時の代替向きでしょう。
もちろん、上記回路図のままで汎用の基本波水晶用発振器として5MHzあたりまで十分使えます。矩形波のクロック信号が必要なデジタル回路に最適な水晶発振回路です。
【32.768KHzの発振波形】
32.768kHzの発振は4007に任せるべきなのかもしれませんが、4069UBでも良好な発振波形が得られます。
100kHzや1MHzと言った水晶発振にも向いていますから、比較的低い周波数の矩形波クロック発振器が必要になったら迷わず思い出したいと思います。
通信機への応用としては、例えば455kHzでC-MOSアナログ・スイッチを使った変・復調回路のクロック発振器としても最適です。 消費電流も小さいことから、電源系のデカップリングが容易であり、クロックの回り込み防止にも有利でしょう。
C-MOSですから電源電圧範囲が広くてツェナ・ダイオードいっぱつで安定化したような電源で十分動作します。 デジタル回路専用と考えず幅広く活用したいものです。
☆
標準C-MOS 4000シリーズはあまり高速ではありません。 スピードの速いLS-TTLを置き換える目的でHC-MOSが登場しました。その名の通りハイスピードC-MOSなのですから、より高い周波数の水晶発振が可能なはずです。 以下、HC-MOSを使った水晶発振回路を詳しく扱います。 ごく低い周波数帯なら4000シリーズC-MOSも向いていますが、HC-MOSでも低い周波数は可能ですから一段と汎用性のあるデバイスです。
【HC-MOSを使った水晶発振回路】
初めに書いておきますが、HC-MOSの水晶発振器としてはType-3Aを使うべきで、特に事情がなければType-3Bはお薦めしません。
Type-3AはアンバッファタイプのインバータICを使う標準回路です。 Type-3Bはバッファ付きインバータICを使う特殊な回路例です。
またType-3Aの回路でも、できたら1MHz以上の高い周波数で使うべきです。 「アンプ」としての周波数特性が良すぎるため、低い周波数の発振子を使うとオーバートーン発振する可能性があるのです。
それさえ注意すればデジタルな水晶発振回路として大変良い回路だと思います。あまり失敗もなく水晶発振でき、綺麗な矩形波が得られるからです。
Type-3Bの意義を書いておきます。 比較表に見られるように消費電流が少なく済むと言う特徴があります。 これは内部回路の構成からくるものでトランジスタ・サイズが小さい初段のC-MOS段のみがA級動作するからです。 UBタイプではドライブ能力の関係で大きなサイズのC-MOSがA級動作になる関係で消費電流が大きいのです。 従って、高い周波数の発振器が必要で、なおかつ消費電流を抑えたいならType-3Bに有用性があるでしょう。
しかしながら、バッファタイプのインバータICは内部が3段構成のためゲイン過剰になりやすく異常発振の危険性が付きまといます。 使っていけないわけではありませんが使いこなしは幾らか難しいです。 どうしてもUBタイプHC-MOSが入手できない時には非常手段(?)となりえますが、発振波形の確認を励行するなど注意を払いながら使うことになるでしょう。
【HC-MOS水晶発振・1MHzでテストする】
Type-3Aの実験回路と発振波形です。74HCU04を使い、基本となる1MHzで発振させています。
R2は10kΩ程度が適当でした。より低い周波数ならもっと大きくしても発振します。 発振波形も良好で一般用途の矩形波信号としては十分なものでしょう。
もちろん厳密なDuty比=50%が要求されるなら、2倍もしくは4倍周波数で発振させたあとフリップ・フロップで分周して得る必要があります。
しかし多くの場合、このままでも問題ないでしょう。
【バッファ・タイプは少し難しい】
バッファ・タイプの74HC04を使った際の発振波形です。(Type-3Bの回路)
写真は不適切な発振状態です。 矩形波の後縁部分にバタツキによるヒゲを生じていますが、これではうまくありません。
対策はR12を大きくすることではありません。 C12は10pFではまったくダメで270pFとか330pFへと大きくする必要があります。 R2はむしろあまり大きくしない方が良くて、数kΩ〜数100Ωにとどめるのが異常発振対策には効果的でした。
いずれにしても発振波形の確認は必須で、HCUタイプを使うよりずっと難しさを感じます。 従って特別な事情がない限りバッファタイプは発振回路に使わぬ方が良いでしょう。
【アンバッファ型は30MHzまでイケる】
アンバッファ・タイプ(74HCU04)を使った発振回路の発振波形コレクションです。(Type-3Aの回路で観測)
5〜30MHzまでの発振波形を示しますが、いずれも良好でした。
さすがに30MHzは高速C-MOSとは言えどもかなり高い周波数であり発振波形になまりを感じますが悪いものではないと思います。 広帯域なオシロとプローブを使って観測していますからこれが実際の発振波形なのでしょう。
現実の世界では、絵に描いたような「きっちりした矩形波」が得られるのはせいぜい数MHzまでです。
【74HC4060を水晶発振で使う】
74HC4060を使う人はあまり多くないのかも知れません。発振回路付きの多段分周器は便利なのでよく使っています。 水晶発振の周波数を1/16384まで分周できます。
メーカーのデータシートを参照してそれなりに使ってきましたが、詳しく調べ使い易いように部品定数を標準化したいと思って実験しました。これは自家用の資料です。
データ・シートに明記はないようですが、どうやら発振回路の部分はアンバッファ・タイプのようです。 また、あまりゲイン過剰ではないようです。
そのため抵抗器:R2を大きくする必要はなくて、ナシで支障ない場合も多いようです。 案外ラフな外付け部品定数でも正常に動作しますから使いやすさを感じました。
このICは4000シリーズのスタンダードC-MOS ICが元になっています。 HC-MOSではない、そのオリジナルの4060も5MHz以下でしたら同じように使えそうです。 むしろ32kHzのように低い周波数ならスタンダードC-MOSの4060が向いており、消費電流も少なく済むので経済的でしょう。 あいにく拙宅の在庫はHC-MOSなので標準の4000シリーズはテストできませんでした。(スタンダードC-MOSではCD4060BEやMC14060BPなどがあります)
参考:74HC4060と同じように水晶発振の機能と分周器が集積された専用のC-MOSデバイスが各種登場しています。使い易いのでデジタル回路用のクロック発生器として重宝します。例えばNJU6311があってこのBlogでもテストしています。(該当Blogへ←リンク)
【74HC4060で発振テスト】
74HC4060の10番、11番ピンを使って構成する関係でだいたい写真のような部品レイアウトになるでしょう。
ピン11につながる配線はあまり延ばさぬ方が良く、ピン10の配線でしたら多少引き回しても大丈夫です。
Vddピン(16番)とGND間に最短距離でバイパスコンデンサ:0.1μF(積層セラコンを推奨)を挿入しておくと安定して動作します。 合わせて10μFのOSコンなどパラってやれば完璧です。
【HC4060の中身はアンバッファ型】
1MHzを発振させ、ピン9のモニタ端子で観測した波形です。 1MHzでは周波数も低いことから綺麗な矩形波が得られています。
多段分周器内臓のICですから、そもそもあまり高い周波数を発振させ、多段分周して低い周波数を得ると言った用法は考えにくいでしょう。
30MHzまで発振テストを行ないましたが、だいたい10MHz以下を発振させて使うケースが多いのではないでしょうか。 今回の実験で使い方はおおむね定型化できたと思います。 自家用の資料として役立てるつもりです。
【消費電流は結構小さい】
74HC4060を1MHzの水晶て使った場合の消費電流です。
水晶発振回路と14段の分周回路が1mA以下の電流で動作しますからかなり省電流です。 FETやトランジスタで発振させるだけでも1mAくらい必要ですから、はじめからデジタル回路で分周して使うつもりならこのICを使う方が有利です。
* 他の実験でも消費電流など詳しく調べるよう努めましたが、すでにデータ過剰気味ですから写真などは省きました。
☆
これはこのBlogの公開が遅くなった理由でもあるのですが、デジタルな水晶発振回路について、できるだけ網羅的に扱いたいと思って始めたところ分量がずいぶん大きくなってしまいました。 おそらく初めから読もうとしたら途中で眠くなってしまったかもしれません。 もともとストーリ性は求めていません。参照用の資料を目的としているからです。通しで読んでいただく必要はありません。 ざっと目を通して頂き、どんな内容があるか掴んでおいていただき、もし必要になったら部分的に詳しく参照していただけたらと思っています。 あまり前後と関連付かぬように記述していますので、部分的に読んでもわかって頂けることを期待しています。 それでも一気に全部ご覧になったお方もあったかもしれません。 長々とご覧いただき大変ありがとうございました。
☆
水晶発振器を扱うBlogシリーズとして今回はデジタルな発振回路を扱いました。 次回も水晶発振器が続く予定です。 内容如何ですが公開までに時間を要するかもしれません。基礎的な回路は応用機器を扱うよりもむしろ難しいと言った傾向があります。 時々ご覧になりながらお待ちいただければ幸いです。 ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogに関して何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックすると入力画面が現れます。
→ご要望など私で可能な範囲で対応いたします。
参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。
(つづく)fm



























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