2024年2月24日土曜日

【Antenna】Making a 30m-Band Whip Antenna

30mバンドのホイップ・アンテナを作る

abstract
The 30m band is a new HAM band in Japan; it has been authorised since 1 April 1982. Only HAMs with an advanced licence can on-air in the 30 m band. Therefore, few HAM stations on the air are available, so existing antennas are limited. High performance 30m band antennas for mobile use are unlikely. If not, it is best to build your own. I build high efficiency 30m band antennas. (2024.02.24 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

30m Bandとは
 30mバンドは10.100MHz〜10.150MHzの50kHz幅を持ったHAMバンドです。WARCバンドの一つで日本では1982年4月1日から割り当てられた比較的新しいHAMバンドです。かつてはSSBもオンエアできたのですが現在は狭帯域の電波モードしか許可されていません。 具体的にはCW(無線電信)やF1D(FT-8やJT-65などのデジタルモード)が代表的です。

 7MHz(40m Band)と14MHz(20m Band)の中間にあって海外へもよく飛ぶ周波数ですが2アマ以上の資格が必要なHAMバンドです。 そのためニッチなHAMバンドの扱いであり市販のアンテナは限られているようです。 他のバンドとの抱き合わせ製品はあっても10MHz用のホイップアンテナのようなバンド専用品はほとんど選択肢がありません。

 ニーズがない以上、既製品が少ないのはやむを得ないとして欲しくなるようなメーカー製品がないなら自分で作るしかありません。 どんなアンテナが欲しいかと言えば輻射効率に優れるアンテナです。 モバイル局は50Wに制限されています。そんなモバイル局ではあっても、できるだけ良い(強力な)電波が飛ばせるようなアンテナが欲しいものです。 いくらスマートで体裁が良くても飛ばないものはアンテナにあらず、ダミーロードなんてねえ・・・。(考え方は各局それぞれです・笑)

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 よく飛ぶアンテナは誰しも欲しいでしょう。しかし車載アンテナは走行中の安全を考えて機械的な強度や構造を考えねばなりません。従って自ずから寸法・形状や構造に制限が生じます。それにいくら良く飛ぶとは言っても見た目が大げさで手軽さがなければ商品性はありません。メーカー品は「売れてなんぼ」のものなのでお客さんの購買意欲を誘うような方向へ向かいます。

 CWやデジタルモードを走行しながら運用することはありません。危険なので試みない方が賢明です。 半固定での運用に限定すれば輻射効率を追求する方向のアンテナが作れるかも知れません。 材料や手加工の限界で理想通りは難しいとしても可能な範囲で良いアンテナを目指したいと思います。 望むものが無ければ「自分で作る」ということです。

なせ30m Band(10MHz)なのか?
HF帯のメジャーバンドは7MHz帯や14MHz帯です。それに対して10MHz帯はマイナー・バンドなので空いています。従って弱い局でも拾ってもらいやすいです。これが「なぜ」の答えです。 実際に各局運用の様子を見ると昼間は国内が、また早朝や夕刻にはDX局もよく入ってきます。 国内、海外と満遍なく楽しむには向いたバンドと考えてモバイルからHF帯オンジエア最初のバンドに選びました。

ローディング・コイルが命
 ジャンク箱の奥深くからエアー・ダックス・コイルを発掘しました。 然るべきボビンに銅線を巻いて「良いコイル」を自作しようと思っているのです。 そのためにはどんな仕様の(インダクタンスの)コイルが必要か知る必要があります。

 まずは既製品のコイルで様子を見ることにしました。 そのためにエアー・ダックス・コイルを使って実測によって必要なインダクタンスを求めたいと思います。

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 初めはそう思っていたのですが、エアー・ダックス・コイルを評価したところ思っていたよりもQが高く高性能だとわかりました。 最終的にはそのままローディング・コイルとして使うことにしました。 ただし機械的な強度に乏し構造なので実装方法に工夫を要します。

 このコイルはNo.401016という型番です。 直径が40mmで、太さ(線径)が1.0mmの錫メッキ線を巻線のピッチが1.6mm(=線と線の隙間が0.6mmのスペース巻き)になるように巻けば同等品が作れます。
 30m Bandの短縮型ホイップアンテナを全長が約150cmのセンター・ローディング形式で作る場合、ローディング・コイルのインダクタンスは20μH前後になります。もちろん輻射エレメントの寸法・構造によって幾分かは違ってきますが、大幅に違うことはなくてほぼ近似のインダクタンス値になるはずです。

 エアー・ダックスがなければ同等のインダクタンスが得られるコイルを巻けば良い訳です。 短縮アンテナはコイルが命ですから可能な限りHigh-Qが得られるよう巻きます。 上手に巻くとこのエアー・ダックスよりずっと良いコイルが作れます。

インダクタンスを求める
 後ほどの話で出てきますが必要なコイルのインダクタンスは計算することもできます。輻射エレメントの形状寸法などが決まればかなり精度よく求まります。

 初めに計算すれば良かったのですが、いきなり実測でインダクタンスを求めてしまいました。そのような方法でも良いわけです。写真がその様子です。 実験ですのでコイルは裸の状態です。サポートも単にハンダで止めただけなので機械的な強度はまったくありません。

 まずはじめにコイルより下部と上部の輻射エレメントを製作します。 上下ともに最終形状に仕上げるのがポイントです。 上下のアンテナ・エレメントができたら中間にエアー・ダックス・コイルを仮止めして調整開始です。できるだけ最終に近い状態になるようコイルを取り付けておくと仕上げの調整が容易になります。

 共振が確認でき、巻き数が確定できたらコイルのサポート構造を考えることになります。 最初の写真のようにコイル全体をプラ製の容器に収める方法を採用しました。

 コイルは容器のふた部分に接着剤を使って固定しました。 アンテナを付けたまま高速走行できるほどの強度は見込めませんが着脱の繰り返しや少々の風圧くらいで壊れることはないでしょう。 走行しながら使うことは想定していませんが車載アンテナは「しなる」ことを考慮して接合部分に柔軟性を持たせる構造にします。

タップを変え共振追求
 タップの位置を変えながら共振周波数が目的の10.125MHzあたりに来るように追い込みます。

 コイルはタップが取り出しやすいように一回おきに凹ませておきます。 順次タップをクリップで掴みながら共振周波数を測定します。(nanoVNAを使いました)

 これでコイル何回分が必要なのか実地でわかります。 No.401016の場合、29回巻きで良いようでした。(注:これは他の要素によって幾らか違ってきます) 今回、コイルはそのまま使ってしまうのでインダクタンス値は知らなくても問題ありません。しかし知っておけば後々役立つので実測しておきました。19.57μHありました。Qu=255でした。後ほど出てきますが、計算で求めたインダクタンス:20.23μHと実測値との誤差は-3%とわずかです。

 オンジエアする前の微調整は上部エレメントの伸縮によって行ないます。 上部のエレメントは6段のロッド・アンテナ(テレスコーピック・アンテナ)を使っています。 コイルを調整して共振点を求める際は完全に伸ばさずに上部エレメント1段の半分相当分だけ縮めておきます。 あらかじめ伸縮両方向の「調整しろ」を確保しておきます。もちろん全部伸ばしておきバンドの低端に合わせると言った方法もアリです。

インピーダンス・マッチング
 短縮型アンテナの給電点インピーダンスは50Ωにはなりません。効率の良い短縮アンテナなら必ず低くなるはずです。 このアンテナの場合、おおよそ17Ωくらいが見込まれます。

インピーダンス・マッチングにはいくつかの方法があります。
(1)マッチングトランスを使う方法:透磁率の大きなフェライトコアを使いオート・トランス形式のマッチングトランスを作ります。広帯域な特性が得られるため、オート・アンテナチューナがRigに内臓される以前はよく使われました。
(2)インピーダンスマッチング回路を設ける方法:アンテナチューナと同じ考えですが、コンデンサ:Cとインダクタ:Lを使ったタイプはインダクタをローディングコイルの一部に含める方法で簡略化できます。単に給電点にコンデンサを付けるだけで済みます。(写真の方法)
(3)何もつけない方法:Rigに内臓のオート・アンテナチューナに頼るか、外付けの直下型チューナを使います。 ただしRig内蔵のチューナはリアクティブな負荷に対する整合範囲が狭くてうまく行かないことがあるようです。

 ここでは(2)の方法を採用しました。 Blogに計算式を書くと嫌がられるので省きますがアンテナ関係の書籍に計算方法が出ています。 追加になるインダクタンスは約0.4μHですからローディング・コイル(約20μH)に含めることは容易です。根元に入れるマッチング用コンデンサは計算では433pFですが近似値の470pFにします。耐圧500Vのディップド・マイカ・コンデンサを使いました。コンデンサは給電点に直接ハンダ付けします。(最終的には自己融着テープで覆って防水対策しました)

トップ・エレメント
 ローディング・コイルから上部のエレメントはロッド・アンテナを使っています。6段の伸縮式で完全に伸ばすと101.5cm(ネジ部含む)あります。ずいぶん前のHAMフェアで調達したものです。拙宅の長期在庫品(不良在庫品とも言う)だった物を使いました。

 先端には金属製の「コマ」が付いています。短縮アンテナの場合、良いコイルを使いしかも接地抵抗が低いと非常にHigh-Qなアンテナになります。
 そのようなアンテナでは10W程度でも先端部が非常に高電位になり尖っているとコロナ放電することがあります。「コマ」が付いていれば大丈夫な場合も多いのですが更に容量冠も付けると放電対策には効果的です。(放電が始まるとSWRが悪くなります)

 大型の容量冠はアンテナ短縮にも効果があって好都合です。円環を数本のスポークで保持する構造が一般的です。この製作例では構造を簡単にする目的で8の字型の容量冠を設けました。 手持ちのテフロン被覆銀メッキ線:φ1.0mmを使いました。被覆を剥いで要所をハンダ付けして固定しました。 できたらバネ性のある材料の方が好ましくて、燐青銅の細線にメッキしたものが手に入れば理想的です。

 写真の部分がロッド・アンテナの1段分に相当します。この部分の伸縮で共振周波数は約470kHz上下できました。(10MHz付近で)

10MHz Whip AntennaのSWR特性
 写真は10MHz ホイップ・アンテナのSWR特性です。(黄色のトレース)

 10.0MHzを中心に上下500kHz幅で観測しています。 10.110MHzがSWRのボトムでSWR=1.3程度になりました。
 インピーダンス・マッチング回路をもう少し追い込むと更にSWRを下げられるでしょう。しかしまずまずと言ったところでしょうか。

 このアンテナは全長1.5mの超短縮型で・・・短縮率は80%でフルサイズの20%の長さしかありません。 原理上このようなアンテナが狭帯域な特性になるのはやむを得ません。

 10MHz帯のバンド幅はたったの50kHzですが微調整なしではフルにカバーできません。 従ってオンジエアする際は先端を伸縮させ共振周波数を微調整します。 CWあるいはデジタルモードに合わせ先端をわずかに伸縮すれば常にベストな状態でオンジエアできます。 先端部に目印を付けておいたので素早くセットできます。

アンテナは飛ばなくては・笑
 送信に使うアンテナは良く飛ばなくては価値がありません。聞こえるだけではダメです。

 さっそく近所の空き地へ移動してテスト目的にオンジエアしてみました。
 写真は自局電波の飛びがわかるPSKRと言うサイトの画面キャプチャです。これは10.136MHzのFT-8モードでCQを出した際の反応です。時刻は日没の30分ほど前で、トランシーバの送信パワーは50Wです。

 こんな超短縮アンテナですが北米、オセアニアそして東欧方面にも届いているようです。 もちろんコンディションにも助けられていますがあまりにも輻射効率が悪いとちらほらしかレポートが上がってきません。 全長わずか1.5mのアンテナですがそこそこの飛びが期待できそうです。  これくらい飛んでくれればよく飛ぶアンテナとして満足できます。

 今さらですが、このアンテナは「接地」が重要です。もし給電点の直近で良好なボディーアースができていないなら「磁石アース板」(←参照リンク)を併用します。 このオンジエアでも磁石アース板:800pFの物を2枚使いました。

先に計算すべきでした
 センターローディング形式の短縮アンテナを計算するPCソフトを使っています。 アンテナ関係の書籍など参考にして目的とするアンテナの計算に特化したものです。 電卓での計算を補助する程度のもので元はプログラム電卓用でした。

 計算の主目的はローディング・コイルのインダクタンス値を求めることにあります。 簡易なソフトですが計算で得られたインダクタンス値は実際とよく合うのでアンテナ作りに重宝しています。 25年ほどまえモバイルからHF帯にオンジエアしようと思ったときアンテナ製作にかなり苦労しました。問題はローディング・コイルに皆目見当がつかないことでした。それでインダクタンス値を算出するソフトを作りました。 今回の製作でも先に計算しておけば試行回数をいくらか減らせたはずでした。

 ほかにコイル計算のソフトも使います。形状寸法・巻数からインダクタンスを計算するものと、逆に必要なインダクタンスに対する最適寸法と巻数を決めるものです。短縮アンテナにはコイルが付きものなのでこうしたソフトが役立ちます。 コイルの関係はネット上にも計算してくれるサイトがあって利用すると便利です。

 車載用に限らず短縮アンテナの製作は手探りになりがちですが可能な計算は行なってなるべく根拠に基づいて作りたいと思っています。もちろん最後の詰めはカット&トライになりますけど。hi hi

30m Bandホイップ・アンテナのまとめ
 各部をバラバラに説明したので分かり難かったと思います。まとめのために手書きのイラストを載せます。どんな形状のアンテナを作ったのかわかり易く伝われば幸いです。なお、上部が94cmとなっているのはやや縮めて使うことを想定しています。

 モバイル用のアンテナを手作りするHAMがいなくなったためかHAM雑誌では製作記事を見かけなくなったようです。
 適当な材料さえあれば手作りでメーカー製より輻射効率の良い・・・良く飛ぶアンテナが作れます。 自分の手を動かして飛びを楽しむHAMがもうちょっと増えてほしいものです。

 このアンテナの寸法・形状はおもに手持ちの部材に合わせて決まったものです。拙宅の物置を探してたまたま見つけた材料で作りました。手持ちのジャンクも活用しました。 従って寸分違わずまったく同じように製作されることをお勧めするものではありません。

 寸法を示すことでおおよそどんなものを作れば30mバンドのアンテナとして機能するか明確にできたらこのBlogの目的は達成できたと思います。

 ぜひご自身の部品事情に合わせたアレンジでVY-FBなアンテナを製作されて下さい。さらに工夫することで、より良く飛ぶアンテナが作れるでしょう。

 アンテナの手作りには苦労や悩みも付きものですが、良く飛ぶアンテナが出来上がったときの満足感はなかなか大きいものです。  アンテナは無線通信の核心に迫る技術分野ですからなかなか面白い世界です。奥深い領域でもあります。 そして好き勝手な形式のアンテナを次々試して遊べるなんてアマ無線局だけの特権です。(左はアンテナ取り付けのイメージ図) 次回Blogでは40m Band / 7MHz用のホイップ・アンテナを作ります。  ではまた。de JA9TTT/1

つづくfm

2024年2月10日土曜日

【Antenna】Tuning a 6m-Band Whip Antenna

怪しげな6mのアンテナ

abstract
I got a whip antenna for the 6m band at a junk market. However, the resonant frequency of this antenna seems to be much lower than the desired frequency. I first measured the initial value before cutting. Then I cut about 2 inches and observed the change. After the fourth fine-tuning, I had a usable antenna. (2024.02.10 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

6mはモバイルバンドだった
 中身がないので昔々の雑談です。(笑) アマ無線を始めたころ、モバイル(ボービル)局のメインは6mバンドでした。 バンパーのスプリング基台から立ち上がったフルサイズ・ホイップはずいぶん長く感じました。

 430MHz帯が主流の今となっては6mモバイルが流行るなんて考えにくいのですが技術的・経済的な合理性から当時は6m Bandが現実的だったのでしょう。60MHz帯にあったタクシー無線のジャンクが出回った事情もありそうです。 1960年代の半ばと言えば、中学・高校生で6m AMがブームになるずっと前でしたから技術を持った自作HAMのバンドでした。
やっとTRIOのトラ千(左・回路図は後期型です)が登場するころです。VHF帯の6m Bandは50.0〜54.0MHzの4MHz幅があります。

 6m Bandは思い入れのあるバンドでした。ローカルの先輩局が自作機でアクティブだったので私も手作りRigで仲間に入りたかったのです。 まだ真空管の全盛期でしたがトランジスタでクリコンやミニパワー送信機を作ってました。

 丁度リグ作りで四苦八苦していたころ近所のOMさんと知り合いになりました。 そのOMさんに福山電機のFM-50AというFMトランシーバを研究用(?)に貸してもらったのです。
FM-50Aは車載用で床置きの大きな筺体にスケルチや音量と言った小型操作部が別体になったカー・トランシーバです。 受信は半導体式ですが送信ファイナルは真空管式(6360pp)なのでDC/DCコンバータ搭載です。電流容量のある12V電源が必要でした。
 開局当時の私には大電流のDC電源を自作する技術はありません。それにゲルマニウム・トランジスタの時代ですから10A以上のDC電源はかなり難しいと言う現実がありました。 そこで近所の自動車解体屋にて中古のカーバッテリーを調達しフローティング充電しながらFM-50Aに灯を入れたのです。
 しかし51MHz丁度のワン・チャンネルしかなくてテスト交信できた記憶はほとんどありません。アンテナが軒先ダイポールでは入感なくても当然でしょうか。

以来、6m Bandは自作を楽しむバンドと決めて様々に実験・製作を試みています。近ごろはメーカー製品愛好家に成り下がっちゃいまいましたけれど。(笑)

                     ☆

 いちばん上の写真は物置で見つけた6m用ホイップ・アンテナを先ごろ購入したK416と言うアンテナ基台(2回前のBlogを参照)に取付けた様子です。 波長6mですから1/4・λのフルサイズ・アンテナなら約1.5m長になります。このアンテナの正体は不明ですが途中にローディング・コイルが入った短縮型です。車高のあるクルマの高い位置に取付けて走るには1.5mは長過ぎますから短縮型は好ましいでしょう。 もっとも半固定でオンジエアなら長くても構わないんですけれど。

 これからこのアンテナを調整します。 このアンテナは給電点のアースが良くないとダメそうですから調整を始める前に磁石アース板を製作しました。(←前回のBlog参照) アンテナ基台の部分で直接アースできればベストですが塗装面を破ってネジ止めするとサビが出ます。 基台はゴム片を挟んで浮いた状態で付いているのでアースは不完全です。 これこそ磁石アース板活躍の場面です。

 謎の6m用のホイップ・アンテナを切り詰めて共振周波数がHAM Bandに入るように調整すると言った話です。 たいして面白くないのでここでやめて頂くのが宜しいのかも。 このBlogは何をやってどうなったかと言う自身の備忘が目的です。  もしご覧になって何か思うことでもあったら遠慮せずにチャチャでも入れてください。(笑)

磁石アース板が活躍
 基台+アンテナだけならスッキリして良いのですがアース不完全では良く飛んでくれません。 それに引き込みケーブルの車内での取り回し状態によってアンテナの共振状態が変わってしまいます。当然ですがSWRも安定しないので調整になりません。

 アンテナを調整していてこのような現象を感じたらアースの不完全を疑う必要があります。 さっそく磁石アース板を付けたら不安定さは簡単に解消しました。 これでやっとアンテナ調整を進められます。

補足】磁石アース板の着脱:
 M型コネクタ(受口)をアンテナ基台に固定するとき配線の付いた大きなワッシャを共じめします。ワッシャにはギボシ端子が付いた配線が数本出してあります。こののギボシ端子の先に磁石アース板から来る配線を繋ぎます。
 磁石アース板をほぼ恒久的に付けておくのでしたら接続端子(ギボシ端子)は不要です。私の運用形態は半固定運用です。移動地に到着したらその都度アンテナとアース板を取付けて運用するので着脱式にしてあります。

怪しげな説明書
 このアンテナはローカルのHAMフェスが何かで手に入れた記憶があります。 新品ですがジャンク扱いなので格安でした。アンテナ作りの材料に使っても損はないと思って手にしたようです。 最近になって物置で見つけたのですが写真のように簡素な(怪しげな?)説明書が巻き付けてありました。(年数の経過で紙ボロボロ・笑)

 この説明書を見ると共振周波数は50MHz帯にはなっていないようです。 だいぶ低いらしいのですが現状が何MHzなのかわかりませんし必要な調整量も明確ではありません。 ただ、少なくとも20cm以上カットする必要はありそうです。 下から2/3位の位置にローディング・コイル(?)があってその上側ではなく下側のエレメントの加減が必要らしいのです。

 けっこうしっかりしたアンテナで全体的にガッチリ作られています。それ自体は好ましいのですが下側のステンレス製エレメントは太くてカットするのは大変そうです。 ロクな道具しか持ってない当局には厄介な調整になそうです。

何回もエレメントをカット
 結局4回もカットする羽目になりました。 もちろんカットを始める前に初期状態の共振周波数を測定しました。 初期値は46MHz辺りにありました。6m用に作ったとは思えないほど低いです。

 上の怪しげな説明書曰く「下側のエレメントをカットして調整しろ」って書いてあります。 しかし、もしも上側のエレメントで加減できるならその方が楽そうに感じました。 ものは試しですから上側エレメントを一旦取ってしまい切断し易い銅線に交換し切断しながら共振点の変化を確認しました。 しかし説明書の通りで、上側の加減だけでは6mバンドに入って来ません。 共振は遥かに下でした。

 下側エレメントをカットします。ではどれくらい短くすべきでしょうか? まずは写真にある①の5cm程度カットして共振周波数の変化を観測しました。(nanoVNAを使用) 共振周波数の変化量から比例計算で予測される最終的な切断量を推定します。

 たぶん切断量と共振周波数の変化量は単純な比例関係ではありません。 しかし50MHzの辺りで数MHzでしたら概ね比例的に変化するはずです。(・・・と思う) もちろん計算通り一気に切ってもし行き過ぎたら目も当てられません。 それで控え目に②の分を切断しました。 しかし思い切りが足りなかったようです。(心配性ですからねえ・・)

 結局、③を切断したところでおおよそ50MHzの下端に到達しました。 最終的に④を切って50.2MHz辺りに合わせました。 共振点はもう少し高くても良いかも知れませんが、CWやデジタルモードで運用するケースを優先すればこれくらいで良いでしょう。 もし51MHz以上のFMでのオンジエアが目的ならさらに5cmくらいカットすべきです。

 しかし太さ3mmのステンレス棒は切断がとても大変でした。専用工具があればいとも容易いのでしょうが持っていません。 どうしてもダメなら近所の鉄工所にお願いして・・・とも思ったのですが、カットアンドトライしながら少しずつ切り詰めて行くという訳にも・・・。 ある程度切れ目を入れたあと折り取ると言った半ばチカラワザで切断したようなわけです。(もうやりたくありません・笑)

6m Band Whip ANTのSWR特性
 写真のようになりました。 だいたい50.0〜50.6MHzあたりまでが使用範囲でしょうか。 FMのメインチャネル:51MHzはSWR>2なのであまりうまくありません。

 CW/SSB/FT-8でオンジエアするならマズマズではないかと思っています。 短縮なしの1/4・λのホイップ・アンテナならもっと広いバンド幅が得られる思います。 短縮すると車載には有利ですがバンド幅やアンテナの輻射効率ではだいぶ損をしますね。

 きちんと調整してやれば正体不明のジャンク品も活きて来ます。 想像ですがこのアンテナはHAMの6m Band用ではなくて何か別の用途・目的用だったのではないでしょうか。もしホントに50MHz用に作ったのなら40cmものカットが必要なのは異常でしょう。 あるいはそれが理由の作り損ないアンテナだったのでジャンクに流れたとか・・・真相は謎のままです。 あなたの想像はどんなものでしょうか?

6m Band Whip ANTが完成
 40cm以上カットしたのでだいぶ短くなってしまいました。 最初の写真のようなスマートさがなくなったように感じます。 しかし共振していないのでは使い物になりません。

 少々短くて迫力のないアンテナになりましたが、これで6mにオンジエアできます。 流石にメーカー製です。しっかり出来ているため走行中の運用も可能そう。 強力タイプの磁石アース板なら剥がれて飛んで行くこともありません。これは使えます。

◎休日ともなると6m Bandは各地の移動局でとても賑やかです。私も移動運用の仲間入りができそうです。 次回はさらに下のHAMバンドを目指します。 ではまた。 de JA9TTT/1


つづくnm

2024年1月26日金曜日

【Antenna】Making Magnet Earth ground Plates

磁石アース板の製作】 

abstract
The "Magnet Earth ground Plate" is made of a thin rubber plate magnet and a thin metal plate. It has the effect of improving the radiation efficiency of the mobile radio station's on-board antenna. It can be made from inexpensive materials available at $1- stores. (2024.01.26 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

クルマの貼り薬?
 付けたとき最初に思ったのは「クルマのサロンパスみたい」でした。サロンパスはトクホンって言い換えても良いです。(笑)
 今回はモバイル・ステーションの飛びに良く効く「クルマのサロンパス」の話です。

 まだ正式名称は確定していないかも知れませんがここでは『磁石アース板・Magnet Earth ground Plate』って呼ぶことにします。やはり「クルマのサロンパス」じゃまずいですから。 商品名をつけるとしたら「Mag-GND」とでもしましょうか。w
 構造は単純そのもの。 よく見かける板状のゴム磁石に金属の薄板を貼り付け、その金属板から導線を引き出してあるだけ。 「な〜んだ。そんなものが効くんかい?」と疑われそうですがとても良く効きます。もちろん条件にもよりますが。

                     ☆

 今回のBlogではその「磁石アース板」の効用をざっと説明したあと、私が試した作り方と評価結果などを纏めます。 そもそもモバイルからオンジエアされないのならこの先を見ても意味がありませんし、作ったところで役立つこともないでしょう。 例によって早々のお帰りがオススメです。お時間を浪費させては申し訳ないですから。

接地型アンテナの構造
 図は模式的に書いた接地型アンテナの構造です。 左側は固定局が架設するときの様子です。 垂直のエレメントと必要に応じてローディング・コイルや容量冠(キャパシティ・ハット)などが付いた構造です。 そうした輻射エレメントの構造も重要ではありますが、こうした接地型アンテナでは「大地アース」がたいへん重要であることはご存知の通りです。

 電波の飛びにはアンテナの打ち上げ角の影響もありますが、輻射効率が何よりも重要だと思っています。 例えば1/4・λ(=波長の1/4)の垂直アンテナの場合、アース抵抗がゼロと考えれば給電点のインピーダンスは約36Ωになります。ただし、現実にはアースの抵抗はゼロでないためもっと高くなるのが普通です。アース抵抗が10Ω(これはかなり優秀なアースと言える)なら給電点のインピーダンスは46Ωになるでしょう。そして輻射効率は36/46≒0.78となります。約22%のパワーは大地を温めることになる訳です。 接地抵抗がとても重要であることがわかります。仮に接地抵抗が30Ω(良くある値)なら輻射効率は55%になるんですから!

 また、今回は触れませんがローディング・コイルのQの値も輻射効率を大きく左右します。詳しいことは短縮アンテナの話のときに致しましょう。

                     ☆

 さて、車載アンテナの話です。まさか大地アースを引きずって走ることはできませんから、アンテナの接地側はクルマのボディーになる訳です。(図の右側) クルマのボディーは地球ほどのサイズはありませんのでアースとして大して機能しないように感じるかも知れません。 しかし実際にはかなり大きな金属製の物体であって意外に良好なアースとして働きます。(もちろん車体と大地の間の静電容量も効いてきますが。停車してる場所の影響も受けます)

 オンジエアする周波数とも関係しますが輻射エレメントを出た電気力線の終端面積として車のボディーはあんがい大きいと言えます。 経験的な話ですが、アンテナ系の実測からセダンタイプの乗用車で等価的に10Ω前後の接地抵抗を得ました。 さらに大きなボディーの車ならもっと低いアース抵抗として働いてくれるようです。もちろん車のどの場所に接地するかによっても違いはあります。それでも車のボディーが良好なアースになるのは間違いありません。

 ですから、アンテナのアース側をどのように接地するか(接続するのか)によっても輻射効率は大きく変わります。理想はアンテナを車体中央に載せ給電点直近のボディーに太い電線でガッチリ接地することです。 しかし通信が目的の軍用車両ならいざ知らずアンテナ基台の直近で愛車の塗装を剥がして太い電線を直接つなぐなどと言った思い切ったことはなかなか出来ないでしょう。(笑)

 磁石アース板はアンテナの接地側に取付けてクルマのボディーとの間を静電的に結合させ良好なボディーアースと同等の効果を実現するためのものです。 ですから既に良好なアースができている車載アンテナには効果はありません。 しかし、そうではないアンテナでしたら「たいへん良く」効きます。 電波の飛びだけでなく、リグにRFが回り込んでマイクが痺れるとか何となく動作が不安定だと言った現象にも効果があります。

 このような考察から、磁石アース板とボディー間の静電容量は大きいほど有利と言えます。 それには面積を増やすか金属薄板とボディーとの間隔を狭くするしかありません。 必要な静電容量は周波数が低いほど大きくなります。HF帯でも1.9MHzや3.5MHzなら0.01μFくらいあったらFBです。50MHzのように高い周波数なら1000pFもあればマズマズでしょう。 この辺りの感覚は回路屋さんがバイパス・コンデンサの大きさ(容量値)を周波数に応じて使い分けるのと同じです。

市販の磁石アース板
 今は便利な時代ですから市販品があります。写真のものはその一例で、商品ですから体裁よく綺麗に作られています。

 ただ、それだけに相応のお値段になっています。これは商品である以上やむを得ませんね。 それでもこうした磁石アース板が車載アンテナの飛びを改善することが体験として感じられるらしく使ってみたらFBだったと言うレポートもかなり見かけました。 逆に効いているのか良くわからないと言うレポートもあって、おそらく既にボディーアースが良く効いていたのではないかと思います。

 ひょっとしたらいかなる場合にも効果的だと勘違いされそうです。 書いたように既に給電点の直近で最短距離という良好なボディー・アースになっているなら効果はありません。 またノンラジアル・タイプと称するアンテナでは理屈上効果は限定的なはずです。ノンラジアル型はV/UHF帯のアンテナに多くて、そうしたものに磁石アース板は必要ないでしょう。

 磁石アース板の効果が期待できるのはHF帯から50MHzあたりまでのHAM Bandに接地型アンテナでオンエアするモバイル局です。しかも給電点の直近で車のボディーに十分なアースができていないならかなり効果的ということになります。 以下は製作例ですが面倒なら市販品を付けてみては如何ですか?? 効果が予想できるなら試す価値があります。

事前に試したいなら
クッキング用アルミ・フォイルをボディーに仮止めし基台アース側に仮配線して試せます。

部材集め
 既に構造の説明でわかるように、ごく単純なものですから部品も限られます。 以下のような材料を集めます。
(1)ゴム磁石の薄板
(2)薄い金属板
(3)引き出し用の導線
(4)接続コネクタ・オス・メス
(5)補助材料:防錆用の塗料、ハンダ、熱収縮チューブなど

 簡単に説明します。(1)のゴム磁石板ですが、おもて面が粘着シートになったものが売られています。そうした物を選べば(2)の薄板をカットしてそのまま貼り付けられるので便利です。もし、そういうものが無ければ両面テープなどで薄い金属板を貼り付けます。写真のように¥100均ショップのセリアで大きさの違う2種類が売られていました。A4サイズの大きなものと、磁力が強いというA4の半分くらいのサイズのものがありました。 どちらも100円です。
 実際に使っているのは強力磁石タイプの方で2枚作って使っています。 A4サイズの方を半分に切って2つ作っても良いでしょう。 2枚に分けるのはクルマに貼る際に大きいままの1枚よりも扱いやすいからです。 なお、強力磁石の方(小さい方)を1枚だけでは静電容量的にやや不足するので2枚作ります。

 (2)の薄い金属板はホームセンタで0.1mm厚の銅板を購入しました。銅製品が高騰している影響かだいぶ高価でした。 電気が良く通る金属板ならなんでも良いのでアルミ板も候補です。ただしハンダ付けが難しいので電線の引き出しが厄介かも知れません。 真鍮の薄板もFBですが、チープに行くならブリキやトタン板でも使えるので各自のフトコロしだいです。(笑) 金属板で手を切らないよう気をつけます。

 (3)の引き出し線は太めで柔軟性のある電線ならなんでも良いでしょう。わたしは不要になった古い同軸ケーブルの網線側を使いました。

 (4)の接続コネクタは着脱式に作る場合に必要です。好みのものを使えば良いでしょう。わたしはカー用品のギボシ端子を使いました。

 (5)補助材料は必要に応じて用意します。 銅板を使った場合、少ししたら10円玉のように錆びるでしょう。それでも機能的には支障ないので表面の塗装は不要かも知れません。

 これでなくてはいけないと言った部材はゴム磁石の薄板くらいのものです。これはほかの¥100均にもたくさん置いてあったので容易に見つけられます。あとの部材は各自の好み次第ですし手持ちがあれば十分活用できると思います。

銅の輝きをいつまでも・笑
 クリヤー・ラッカーが余っていたので使い切るために吹き付けておきました。 こうしておけば銅板が綺麗なまま使えます。

 別にクリヤーでなくても良いのですが、クリヤーラッカーは金属板への密着性が良く剥離しにくいためFBだと思います。 クルマのボディーカラーに塗装するのもFBだと思いますが、一度薄くクリヤーを吹いてから好きな色に塗装するとカラーペイントが剥がれにくくなります。

引き出し線は太く短く
 引き出し線です。 太く短くが理想ですが、あまり短いと扱いにくいので適当な長さが必要です。 アンテナ基台の設置場所によっても違ってきます。 不要になった同軸ケーブルの網線側を剥いて使いました。

 ギボシ端子を片端にハンダ付けしました。 網線には熱収縮チューブを被せておきます。

 磁石アース板の側は直接ハンダ付けします。 表面のラッカー塗料を必要なだけ剥がしてやればハンダが良く乗ってくれます。

磁石アース板が完成
 薄い銅板がやや高価だったので¥3k-くらい掛かりましたが、メーカー製の実売価格もそれくらいです。 ただし1枚ですから追加でもう一枚買えば倍になります。 十分な容量を持った磁石アース板ができましたから自作にメリットがあったと思いました。

 HAMのコダワリ(笑)で銅板にしましたが、アルミとか真鍮板で間に合わせればずっと安く上がります。 安く作っても効果は違わないはずですから各自工夫するとコスパが良くなるでしょう。

静電容量はどれくらいか?
 写真は強力磁石タイプで作った小型版の方をLCRメータで測定している様子です。 マグネットを鉄板に貼り付けて測定しました。

 約800pFありました。 実際に使ってみますと、6m Bandなら1枚でも十分そうです。 7MHz〜14MHzともなると不足するようですから2枚使うことにしました。

 A4サイズの磁石アース板の静電容量は約5,000pFあります。 これは磁力がやや弱い代わりにゴム磁石が薄いため有利なのでしょう。電極間隔が狭くなる訳です。 A4版を半分に切って2,500pFなら1枚でもかなり効くはずです。 ただし磁力はだいぶ弱くなるので付けたままの走行は風圧で剥がれる可能性があります。 半固定局で着脱しながらの運用なら悪くないと思います。


全部貼っても・・
 ある程度以上の静電容量(キャパシタンス)があれば十分なのでたくさん貼っても効果は比例しません。(笑)

 いくつかの実験によれば、7MHzあたりまでなら800pFの磁石アース板を2枚使えば十分なようでした。

 このように3枚目を追加してもわずかな違いしか認められません。 最初の写真のように2枚使えば十分ということになります。 この先のアンテナ実験では強力磁石のアース板(小型の方)を2枚だけ使うことにしました。 電気的な性能から考えると板厚の薄いA4版の方を半切りにしたアース板1枚でも十分かもしれませんが・・・。

                     ☆

 磁石アース板なんて言うつまらん物の製作話は固定局でオンエアするHAMには興味はなかったでしょう。 しかしモバイルからのオンジエアならかなり重要なアイテムです。 

 今回は輻射効率の良いアンテナを実現するために欠かせないアースの対策を考えました。 モバイルからのオンジエアでは他にも考えておくべきテーマがいくつかあります。

例えば:
(1)アンテナ取付:目的に合ったアンテナ基台の設置場所を探し取り付け方法を検討する必要がある。(前回Blog
(2)アンテナ本体:電波の出入り口はアンテナ。輻射効率が良く扱いやすくて振動で壊れない堅牢さも必要になる。
(3)ケーブル引込:アンテナの付いた場所から無線機へどのようにケーブルを引込み接続するのか?
(4)電源供給方法:無線機を動作させるには必ず電源が必要。どう供給するのか? 電池ならどう補給するのか?
(5)無線機の設置:移動中もオンエアするのか、半固定で運用するのか。機器の設置場所や方法も変わってくる。
(6)オンエア環境:快適な移動運用の用意。事前情報、食料、飲料水、冷暖房、虫除け、日除け,etc
  ・・・など。

                   ☆ ☆ ☆

 移動運用のヒントを一つ。近くに車体があれば良好なアースになります。カウンタ・ポイズを引回す前にボディ・アースを試してみてはいかが? またこれは非常通信に限られると思いますが、路肩のガードレールに貼付けてアース代用とすることも可能です。 製作した磁石アース板も使い方次第で新たな効果を発揮できます。

 昔の話になりますが、3.5MHzのモバイルでオンエアしていたころ、アンテナのアース側は車のボディーに(もちろん見えない所に)直接ハンダ付けしてました。だから磁石アース板なんて不要でした。
 これはアンテナが長大なので牽引フックの先を延長したリア・バンパーのあたりに給電点があったからです。そこから太い網線でボディーへガッチリアースしていたのでした。 あっ、つまんない昔話でしたね。え!kwskやれって?(またいつかね・笑) 次回はアースじゃなくってアンテナの話にしましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

つづくfm

2024年1月11日木曜日

【Antenna】Automobile Radio and Antennas

自動車無線と車載アンテナの話

abstract
Modern vehicles are more aerodynamic in character. It has become more difficult to mount HAM antennas in such vehicles. This Blog explains how to find and mount the antenna where it can be installed. Modern cars can also be used to enjoy amateur radio. (2024.01.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

アンテナが付くクルマ
 『今どきのクルマにアンテナなんて付かないよ』アキバのHAMショップで店員に冷たくそう言われてしまいました。
 最近の車に向いた(付けられる)アンテナ基台にどんなものがあるのか知りたかっただけなのですが・・・。しかし「そんなものなんて無い」ってあっさり言われてしまいました。車種やどんなアンテナを付けたいのか聞くでもなしに・・・。
 『無線やりたい人は始めにクルマを選ぶんですよ』とも言われました。 まあ「そうかも知れないな」とは思ったものの、何とかする術(すべ)はないものかここは一旦引き下がって考えてみることにしたのです。

                   ☆

 左の写真を見てしまったら『な〜んだ、もうちゃんと付いてるじゃん』と思うでしょう。 そうなんです、結果として問題なく付けられたのです。ただ、取付場所は限られるしアンテナ基台も選ばないと付けられません。 HAMショップの店員さんにはその辺りの情報が欲しかったのですが、たぶんご自身で付けたことがなければ無理な話だったのかも知れませんね。(今どきの店員さんの不勉強とも言えますけど・・・)

 もちろん車種にかなり依存しますから一般性のある話は難しいでしょう。しかし「今ふうのクルマにもアンテナは付く」のです。旨く付けられそうな場所さえ見つかればあとは選択と工夫でカバーできます。

 以下、今ふうの自動車にアンテナ基台を取り付けてテスト・オンエアすると言った単純なお話です。モバイルでのアマ無線の運用に興味がなければつまらないでしょう。ここらでお帰りになることをお薦めします。

古いアンテナ基台
 まず始めに取付可能な方法を検討したいと思ったのです。それには何か見本になるアンテナ基台があったほうが検討し易いでしょう。 それで物置を探していたら以前の車で使っていたアンテナとその基台が出てきました。

 25年くらい前はセダン型乗用車(いすゞ・ジェミニ)に乗ってました。V/UHF帯のアンテナをトランクリッド(トランクの蓋部分)に付けていたのです。そのときのアンテナ基台とV/Uアンテナは車を替えた時に取り外したまま残してありました。

 写真は取り付けを検討するために整備を済ませたアンテナ基台とケーブルです。物置で見つけた時はかなりひどい状態に見えました。取り付けたまま何年も屋外に晒していたのでサビが出ていて樹脂製パーツもずいぶん劣化していました。ただ、劣化は致命的ではなかったため一般的な部品(ボルト類など)に交換して整備できたのです。

 この基台は小型・軽量なアンテナを目的としたものでしょう。コンパクトですから狭い隙間でも取り付けられます。 それで現用車で付けられそうな場所を探したところリア・ハッチのコーナー部分が良さそうでした。コーナーの部分は強度が持たせてありペコペコする感じもありません。意外にリジットな(強固な)構造になっているようでした。重いハッチを支えているヒンジ部分に隣接する場所だからでしょう。

細芯同軸を交換
 ケーブルを隙間から引き込み易くする目的で基台を出た部分は細い同軸ケーブルになっています。その細い同軸をドアなどのパッキン材のゴム帯(ウェザーストリップ)の隙間から強引に(笑)車内へ引き込む訳です。

 ただ、どうしても同軸が潰れ気味になります。この基台に付いていた同軸も潰れていました。導通はありましたがインピーダンス不整合や切れかかりでロスが出たら面白くありません。この際、新しいケーブルに交換しておきました。

 写真は太いケーブルとの接続部分です。両面プリント基板を使った簡素な構造になっていました。まあ430MHzくらいまでならコンパクトに繋げばそれほどロスにもならないのでしょう。新しい細芯同軸ケーブルに交換して補修しておきました。(茶色のケーブルが交換した新しいもの)写真のように簡易な耐水のために高周波ワニスを塗っておきました。アンテナ・コートなどを塗っておくのも良さそうです。

                   ☆

 なるべく手持ち機材を活用する方針でやっています。買ってしまえば手っ取り早いですが、手持ちの「保存品」はいずれゴミになってしまうでしょう。このさき車載アンテナはなるべく手持ちの部材で検討し工夫でカバーできないときだけは購入する方針で進めます。

リア・ハッチのコーナーに取付
 写真のように取り付けてみました。 台座をクランプするためにはある程度面積のある平坦部分が必要です。 最近の車は曲面が基調でそうした場所がほとんどないので基台を(アンテナを)付けにくいのでしょう。

 車種は2023年2月に納車されたトヨタ・シエンタです。 リアのドアはスライド式ですからルーフサイドにマウントするのは難しそうです。 また今どきの乗用車には「雨どい」のように台座を固定できる構造物はありません。セダンのようなトランクもありませんからあとはエンジンフードのエッジくらいしか付けられそうな場所はなさそうだと思いました。(もちろんルーフキャリヤを付けてそこにと言った手段もありますがアンテナのためだけにキャリヤを付けたくはないのです)

 もう一度よく観察したところ、リア・ハッチのエッジ部分なら開閉時にもボディーと干渉せずにアンテナの取り付けが可能そうです。 台座をクランプするために必要な平坦部分もある程度得られそうでした。台座金具を挟み込む隙間もそこそこあります。 裏側に細い同軸ケーブルを通せるだけのスペースもありました。 さっそく台座を仮止めしたところケーブルの車内引き込みも可能そうです。

 探し出した古い基台でもアンテナ取付の検討には十分役立ってくれました。

ボディーと干渉せず
 アンテナを付けたことでリア・ハッチの開閉に支障が出ると不便になってしまいます。 うまいことにリア・ハッチを跳ね上げると基台を付けたエッジ部分がもち上がります。

 そのため取り付けたアンテナがボディーと干渉することもありませんでした。 この場所はなかなか都合の良い位置だったようです。

クランプとケーブル引き込み
 やや見にくい写真ですが、台座をクランプしている様子です。 取り付け部分の塗装面に傷をつけないようクランプ部分は板ゴムとアルミ板で挟み込む構造になっています。最近のアンテナ基台ならほぼすべてがそうなっているでしょう。

 ケーブルの車内引き込みについて簡単に説明します。 閉めたときリア・ハッチが当たるボディー側の部分にはゴム製のウェザーストリップが巡らせてあります。 ゴム製のウェザーストリップには十分な厚みがあって細い同軸ケーブルを挟んでも問題なさそうです。 しか単に挟み込んだのではどうしても隙間ができます。雨水の侵入を完全に防ぐことはできないかも知れません。

 そこではめ込まれているウェザーストリップを浮かせその下を通すことにしました。 ウェザーストリップ下のボディー部分の鉄板端部を少しだけ削ります。細い同軸ケーブルを通すためです。 幅5mm、深さ7mmくらいのU字型のくぼみを設けました。 鉄板は薄いため丸ヤスリでごく簡単に加工できます。
 そのU字の部分を通してあまり無理せずに同軸ケーブルを引き込めました。 ウェザーストリップの下を通過する部分の同軸ケーブルには自己融着テープを数回厚めに巻きその上からアセテート布テープを巻いてケーブルの潰れと隙間からの雨水浸透を防ぐように対策しておきました。 なお鉄板をヤスリで削った部分(U字断面)にはエナメル塗料を塗って簡単に防錆しておきました。

アンテナにはnanoVNAが重宝する
 写真は少し前から流行っているnanoVNAというハンディな測定器でアンテナのSWR特性を観測している様子です。 黄色のトレースがSWRを示しており145MHzを中心に上下25MHzの幅で観測しています。最下端の罫線がSWR=1のラインで縦目盛り1つが「1」です。

 このように145MHzを中心にまずまずのSWR値を示しており、物置からサルベージした古いアンテナとアンテナ基台(ケーブル付き)が十分役立つことがわかりました。 もっともケーブルの方は潰れていた細芯同軸ケーブルを交換してありますけれど・・・。

 nanoVNAの効用はいまさら言うまでもないかも知れません。 この写真のようにアンテナの共振状態がビジュアルに観測できます。 きちんと設置できているのか、あるいは幾らか長さの調整が必要なのか画面から一目瞭然です。

 もう昔のようにハンディ・トランシーバとSWR計を使い周波数を変えながら様子を見るといった手間はありません。 こうした「便利なツール」が数千円で手に入るのですから有効活用しなかったら何だか損した気分になりそうですね。

 nanoVNAの使い方は様々な雑誌で幾度となくしつこいほど(笑)特集されています。そちらをご覧ください。 アンテナ製作で必要な最低限の使い方については、そのつどBlogでも扱うつもりです。 流行りだからと言って意味もわからずに買うのは馬鹿げていますが、もしアンテナをやるなら持っていて損のない道具です。 一般的なHAM局の場合、nanoVNAはアンテナの調整や確認以外の用途はありません。ハヤリに流されませんように!

V/UHFは高さに勝るものなし
 自宅の駐車場でテストしていても「飛び具合」はよくわかりませんでした。 近所の小高い丘へ移動してテストしてみました。

 ここは小高く見晴らしが良いのでずいぶん良く聞こえます。ちょっとレポートをもらってみたのですがホイップ・アンテナとしては普通に飛んでいるように感じました。

 たぶん車からV/UHF帯にオンジエアすることは稀です。 誰かと出掛ける時にはあった方が便利かもしれませんが走りながらオンジエアするつもりはあまりないのです。
 どこか見晴らしの良いロケーションで半固定してオンジエアすると面白そうだなあ・・と。 車で寄れる見晴らしの良い所はたくさんありますので・・・。

テストに使ったRig
 IC-9700を使いました。電源はクルマのDC12Vを供給しても良かったのですが、テストを兼ねて新車購入時にオプションで付けておいたAC100V/1,500Wの車載電源を試してみます。

 まず電圧を実測したら荷室側アウトレットの所で102.5Vあって周波数はほぼ正確に50Hzでした。(簡易測定ですが49.98Hzでした) このAC100VからDC12Vを作るためにはスイッチング電源ユニットを使います。ここで使ったSW電源ユニットの電流容量は25Aくらいありますから最大50Wのリグには十分でしょう。

 ここで気になるのは車載AC100V電源から出るインバータ・ノイズです。 私が使ったTDK製のスイッチング電源は固定シャックで使ってもノイズが問題になったことはありません。従ってクルマ(トヨタ・シエンタHV)に搭載のAC100V電源(たぶん擬似正弦波のDC/ACインバータ)のノイズはどうなのかと言うことになります。

 結論から言うとノイズはまったく気になりませんでした。まあV/UHF帯までインバータ・ノイズの高調波が及んでいることもないのでしょう。 かなり静かな場所でワッチしても大丈夫そうです。 むしろ周辺環境から受ける正体不明のノイズが気になったくらいでした。

 聞くところによれば、最近のハイブリッド車ではハイブリッドシステムの遮蔽(シールド)はかなり厳重なのだそうです。自身がノイズを出さないばかりか、外部からの強電界でも誤動作しないよう十分なシールドが施されているようです。車載のAC100V電源もそのシステムの一部な訳です。昨今はEMIの発生やEMCの耐性が問題になっており車とは言えども他の電子機器と同様の電磁波対策が行われているのでしょう。 むしろ誤動作は人命に関わるだけにより一段と厳しいのかもしれません。

                   ☆ ☆ ☆


左側用の基台
 V/UHF帯のモービル運用が最終目標ではないのです。 もちろんあったら便利ですから右側後方に付けた144MHz/430MHzのアンテナと基台はそのままにしておきましょう。

 このテストで付けたアンテナ基台はTNC型という同軸コネクタが使われていました。それとセットになるアンテナもあったので好都合だったのですが、昨今の市販アンテナではTNCコネクタはほとんど見かけません。 市販のモービル・ホイップ・アンテナはM型コネクタが多いようですし、小ぶりのアンテナではBNC型あるいはSMA型も多くなっています。

 この先、いくつか車載アンテナを実験したいと思っています。そのために左側にもアンテナ基台を付けましょう。 物置から50MHz用らしい未調整のホイップ・アンテナも出てきました。これはM型コネクタです。先々を考えてM型コネクタが付けられるようなアンテナ基台を購入することにしました。 これから実験するアンテナはM型コネクタで統一すれば良い訳です。 

 今度はどんなサイズと構造のアンテナ基台なら支障なく取り付けられるのか目星が付いています。メーカーのサイトを見てK416型というトランク・ハッチバック用と称するアンテナ基台を発注しました。 これは問題なく取り付け可能でした。 ケーブルの引き込みも右側と同じようにやれば良い訳ですから迷いもありません。 なるべく手持ちを活用する方針ですが無いものは潔くスパッと購入します。(笑) 必要となるM型の座が付いたケーブルセットは手持ちに新品がありました。

 次回は違うHAMバンドのアンテナにチャレンジしたいと思います。 まだその前に幾つかやるべき課題もあったかな??  ではまた。 de JA9TTT/1

つづくnm

2023年12月27日水曜日

2023

2024年も楽しい一年になりますように.