2008年12月27日土曜日

【書籍】NEC Data Book '62


NECの1962年版デバイスデータブック
 1962年(昭和37年)と言えば、真空管から半導体全盛への入り口にあたる時代でしょう。

 アマチュアのエレクトロニクスはもう少し後まで、真空管の時代が続きました。 しかし複雑化する多くのエレクトロニクス装置は急速に半導体化が進んで行ったのです。

 そんな時代の電子デバイスのデータブックをJA7HNV秋篠さんに頂きました。 これは毎年お得意さん向けに発行していた冊子のようです。さっそく拝見すると真空管は簡略に扱うだけで、主に半導体を扱いコンパクトな約450ページに納めてありました。

 真空管の資料は既に十分流布していると考えて割愛したのでしょう。 時代が新進の半導体へ向かっていたことを伺わせてくれます。(まだ各社からは分厚い真空管ハンドブックが出ていたころです)

半導体は詳しいデータが
 このデータブックでは、真空管は一品種一行の簡単なデータ一覧に纏められてしまっていますが、発展著しいトランジスタは詳しいデータが掲載されています。(写真は、VHF帯用トランジスタ2SA244と2SA245のページ)

 1960年代に入りトランジスタの品種も急増した頃でした。(1960年/昭和35年4月1日より、現在も続くJIS/EIAJ/JEITA式の統一半導体命名法が始まる)PNPのRF用2SA型、同じくPNPのAF用2SB型も既に300番台に近付いています。また、ゲルマニウム型で登場したNPNのRF用・2SC型も、一気にシリコン化が進み間もなく200番台と言う時代です。

 結晶内の電子速度が速いので、超高周波用はゲルマニウムに歩があるのではないかとも言われていたころでした。 いずれ今のSi-Geのヘテロジャンクション型超高周波デバイスでゲルマも復活を果たすのですが、このあと暫くはシリコン全盛の時代になりました。(笑)


例えば2SC32
 アマチュア無線の移動運用が認められたことで、ポータブルな無線機・・・トランシーバ・・・がブームになったのもこの頃でした。

 真空管式も試みられていましたが、電池の消耗が甚だしいので維持費がたいへんでした。 67.5Vや90Vと言った高価な積層乾電池が必要ですし、球数が多ければ、フィラメント用乾電池もあっという間に空になりました。 電池も今ほど性能は良くなかったから尚更だったのです。

 そうは言っても球数の少ないもの(例えば3A5シングルとか)は、実験は楽しいですがお世辞にも実用的とは言えないので、半導体が手に入るようになれば、当然「ソリッドステート」(何とも懐かしい響き・笑)の方向へ進んで行きました。

 この時代、アマチュアの自作トランシーバと言えばやはり6mAM機が定番です。 受信部は短波帯トランジスタ・ラジオにクリスタル・コンバータを付加したスタイルでした。
 送信部は水晶制御の2〜3ステージでファイナルは写真の2SC32かCB用でちょっと安い2SC38が多かったと思います。

参考:2SC32は通信工業用で本来高価なのですが、RF用以外の汎用にたくさん使われたためジャンクが多量に出回り一つ¥100-くらいから手に入りました。

 2SC32の簡略なデータはCQ出版のデータブックにあります。 しかし、「レトロな半導体の特性曲線まで掲載された資料」はある意味貴重なものかも知れません。 さっそくPDF化しておきました。データブックを書籍とすれば著作権が残ります。しかし単なる資料集と見ればコピーをお分けしても支障ないでしょう。(希望者への頒布は既に終了しています)

 後世、2SC32もメサ型からエピタキシアル・メサ型に改良され、大電流域のリニヤリティが大幅に改善されたようです。電流容量も大きくなりました。 このデータは旧型で性能が悪かった初期のものと言うことになります。

最後になりましたが、JA7HNV 秋篠さん、貴重な資料ありがとうございました。

(おわり)

(Bloggerの新仕様対応済み。2017.03.31)

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ご存知のようにHomeサーバーの停止は近日の予定だ。 よって、そこに置かれたWeb SiteやBBSからここへ飛ぶことはできなくなる。

このBlogは残って行く。 もしかしてこれからもお付き合い頂けるなら早めのブックマークを・・。


BBSの閑古鳥も鳴き疲れたそうだ。(爆)







こうして時代は過ぎて行く。

2008年12月25日木曜日

【部品】Point Contact

Point Contact Diode
 点接触型(Point contact type)ゲルマニウム・ダイオード(Ge-Di)はとても古くさい半導体です。 実際「ゲルダイ」は60年以上も変わらず作られて来たのですから、まさしく古いのですが・・・。(笑)

 写真は1K60です。 ほぼ同等品なので1N60として売られていることも有りえます。 実際に1N60だろうが、1K60だろうがポイント・コンタクト型のGe-Diはいずれも大差はなくて、型番にとらわれなくても大丈夫なくらいです。 不良品でもなければ混ぜても「バラモジ」のバランスくらい旨く取れるのが普通です。(笑) ゲルダイはいまも世界のどこかで製造されているのでしょう。 簡単な設備とローテクな手仕事で作れるので、これからも供給不安は無いだろうと思っています。

1N34で内部構造を観察
 写真は1N34の旧型です。  構造・性能は新型(1N34A)・・・と言ってもそれも既にデスコンですが・・と違いませんが、ガラス管の直径が2倍くらいあります。 お陰で写真のように中身がとても見易いのです。

 写真で下側から来た「ジュメット線」(Dumet wire)の 釘の頭状になった所にN型ゲルマニウムの小片が置かれています。 写真上方から尖らせた「タングステンの針」(Cat whisker:俗称「猫ヒゲ」)の先端を小片に当ててあります。 文字通り一点で接触する構造になっています。 組み立てた後で「フォーミング処理」をしないとダイオード特性を示しません。(その処理が済んだものが市販されています)


ゴールド・ボンド型
 一見、良く似た構造ですが、こればゴールド・ボンド型ゲルマニウム・ダイオードです。(写真の例は1S73Aと言うもの。当然ですが既に廃止品種です)

 こうしたボンド型は良く観察するとゲルマニウム片へ細線の当て方が違うのでわかります。 点接触ではなくて細い金線を圧接(Bond)してあります。 このダイオードでは金の細線ですが、他に銀線を使ったシルバー(銀)ボンド型と言うのもあります。

 FT-101など八重洲無線のRigでおなじみの1S1007(JRC製)も同じ構造です。 米国でごく一般的なGe-Diである1N270型も同じす。 ボンド型は上の点接触型よりも機械的・熱的な衝撃に強い安定した構造です。 しかも内部抵抗rdが小さくてスイッチング性能に優れています。従ってバラモジなどの用途にも向いています。(1N60等と比べ極端には違いませんけれど・・)

 ただし、この型は接合容量Cjがやや大きめで、順方向電圧Vfがいくらか高いので、ゲルマニウム・ラジオとかRF検波型プローブには向いていないようでした。 そうした用途には「ボンド型」よりも「点接触型」の1K60/1N60や1N34(A)の方が向いています。 もちろんボンド型も使えない訳ではないのですが・・・。 よく似たようでも微妙に特性は違いますから、Si-SBDも含め目的の用途への適否は自分で比べてみるべきでしょう。

                   ☆

 Siショットキー・バリヤ・ダイオード(Si-SBD)では旨くない用途もあって、安価なゲルマニウム・ダイオード:Ge-Diは永遠に不滅です。 ・・・と言うことで、大した役にも立たぬゲルマ三題ウンチク話のオシマイです。 このBlog、近ごろ読者増加傾向だからヨソで受け売ると元ネタはすぐバレます。どうぞご用心を。(爆) de JA9TTT/1

(おわり)

(2017.03.27:Blogger新仕様対策済み)

2008年12月21日日曜日

【書籍】Proceedings of the IRE / Dec. 1956

今のIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.:電気電子学会・米国)の前身、IRE(The Institute of Radio Engineers, Inc.)の古い論文集を頂戴した。

当時のSSB技術を集大成し、その後登場するあらゆる記事の原典のような論文集だ。フィルタ式PSN式第三の方式にしろ、SSBの原理を遡ると必ず行き着くのがこの1956年12月号だと思う。 本号はタイトルのように、もっぱらSSBを扱う特集号である。 論文集だから製作記事など皆無だがSSB発展史の原点を感じる解説がなされている。(第三の方式:WEAVER式と呼ばれることもある。WEAVERはたった3ページのごく短い論文の筆者である)

30年以上前になるが「第三の方法」をやった時、大学図書館にこもって目を通したのを思い出す。(もちろん、それは趣味でやっているのであって卒論や大学での研究とは無関係)その「第三の方式」の要(かなめ)、1500Hzの急峻なLPFはアクティブ・フィルタであり他部分も含めて全半導体で作った。第一BMは乗算器RC4200(NJM4200)、第二BMはDBMのLM1496Hで、1800Hzの第一キャリヤには国際電気の音叉型MFを発振に使った。そのSSB発生原理を原著に遡って確認した訳だ。(笑)

この論文集、部分コピーは持っていたがオリジナルが欲しかった。しかし、この号だけの入手は難しかった。 ところが、忘年会でさるOMさんと話題になり、思いがけずこのSSB Issueを頂戴することができた。感謝感激である。

# 大きな図書館や工科系大学なら蔵書されているはず。ご興味の向きは訪ねては如何?

2008年12月18日木曜日

【写真】マクロ撮影

写真は「ニッケル水素充電池用チャージャー」だが、特に意味は無い。手近の物を接写してみただけ。

かなり拡大してるから、被写界深度が浅くなっていて中央部だけしかピンがあってない?・・・アップのし過ぎか。(笑)

拡大して見ると面白いインクで印刷されているのがわかる。


すこし引き気味で撮影してみた。黒を背景に黒いパッケージとメッキで光る足を撮るのはちょっとしたコツが要る感じ。

これは。届いたTCA440を記念にパチリと・・・
(このTCA440はR-F-Tなる旧東独製の模様)



宅配便がたくさん来た日だった。 チープなデジカメがクロネコで、SDメモリカードとNi-MH電池(eneloop)がペリカンで、他にJPからも代引きで電子部品が届いた。 チープな路線なのでポケットマネーで何とかなる買い物ばかり。(悲)