EX

2015年12月25日金曜日

【回路】X-tal CW Filter Design

回路:音の良いCW用クリスタルフィルタ
 【クリスタルフィルタの自作
 同じ周波数の水晶発振子(水晶振動子、水晶共振子)を複数並べることで、ある通過帯域幅をもった帯域フィルタ(BPF)を作ることができる。それがラダー型(クリスタル)フィルタである。 HAMの自作では、SSB用の帯域幅2〜3kHzのものと、CW用の帯域幅が数100Hzのものが主な製作対象になる。


 ラダー型フィルタと言えばSSB用を作る例が多いように思うが、既製品の手持ちがあったので必要性はそれほど感じなかった。 それに、既製品を超えるフィルタが作れなくてはいま一つ張り合いがない。 幸い、普通に手に入る水晶発振子で優れた特性のSSBフィルタも目処がついてきたので次のテーマと言ったところだろうか。  これまでラダー型フィルタの製作ではSSB用よりもCWフィルタの方に興味を持っていた。単なるCWフィルタではなく「音の良い・・・・」である。

 昔の無線機ではCW用フィルタは オプション設定になっていた。あまり選択肢は無くて、せいぜい2〜3種類の帯域幅が選べるくらいだった。昨今のようにDSP化されるまではメーカーが設定した範囲で選択するしかなかった。
 HF帯Low-Bandの混信を考えると、できるだけ狭帯域の方が良さそうに感じる。 しかし500Hz幅のフィルタでは混信するからと言って200Hz幅にすれば済む訳でもない。 確かに選択度の向上は感じられるが、受信していて肝心の了解度が思ったほど改善しないことに気付く。 またバックグラウンドのノイズを含む音色が癖を持つようになり聞いていて疲れを感じるようにもなった。 特に帯域幅が狭いフィルタになると顕著になってくる。 狭いほど良い訳ではないのだ。

 このBlogの過去記事(←リンク)で低周波帯のCWフィルタを扱ったことがある。 特徴は切れの良い狭帯域だけではなかった。 ごく狭い帯域幅であっても信号の過渡応答性を重視したものが製作でき、実際に使ってみると音の良さが感じられる。 もしも、これと同じような「音の良いCWフィルタ」が受信機用のクリスタルフィルタで可能なら、CW用受信機のフィーリングも一変するのではないかと思った。

                   ☆

 何かの記事を読んでいたとき、誰かがPhase系のX-tal Filterを自作して受信機に使ったら「フィーリングはExcellentだ!」と言う一文が目に止まった。 そのフィルタはEquiripple Error n°と言う特性らしかった。そんなのを誰もが作れる訳はない。だから地味な記事だったが画期的な意味があった。 波形忠実性に優れたリニヤ位相系のフィルタがHF帯のクリスタルフィルタでも可能なことを示していたのだから。詳細不明でも「そう言うものが作れた」と言うのは極めて重要な情報なのである。方向さえ間違わなければ可能なことが約束されたわけだ。(注:ここで作ったフィルタもリニヤ位相系のフィルタであって親戚にあたる) 低周波と高周波と言う周波数の違いだから、理屈上はHF帯でも製作可能だろう。ではどうすれば作れるのかは見当がつかなかった。

                  ☆ ☆

 それから暫く時が過ぎた。CWフィルタのことばかり考えていた訳ではないが機会があれば情報や資料を集めてきた。 DJ6EVとG3JIRによる『Dishal(論文の著者)の論文に基づくフィルタ設計ソフト』は期待していたが必ずしも解決策ではなかった。 しかしアウトプットを解析して行く過程で大きなヒントが得られたと思う。設計したフィルタで起こる現象を理解することは「音の良いCW用フィルタ」を実現するための道筋を照らしてくれた。

 何かしてみて「まったくの無駄骨」だった等と言うのも稀である。何でもやってみるべきだ。起こった現象を振り返って何故そうなるのかを考えることから次の一歩が始まる。何時か見た景色も螺旋階段をもう一回り登れば見え方も違ってくる。

 このように個人的な興味と目標が発端であった。そして、何とか目的の「音の良いCWフィルタ」が完成できた記念としてこのBlogを綴ることにする。 ごめんなさい、設計・製作法は分量過大なので機会を改めます。

写真説明:手前の大きなクリスタルを使ったフィルタがここで扱った「音の良いCW用クリスタルフィルタ」だ。 奥にある小さい方が一つ前のBlogで扱った12.8MHzのSSB用フィルタである。

 【使用した水晶発振子
 以前の水晶定数を測定するBlogに登場した3579.545kHzのアナログ時代のカラーTV用の水晶発振子を使った。 理由は無負荷Q:Quが高かったからだ。 これから作ろうとするフィルタは、きちんとした特性を出すためにQの高い水晶振動子が必須だ。

 Qが高いものを6個選んだが、それでも足りないので「事前特性補正型」の設計を行なうことにした。「事前特性補正型」と言うのは私の意訳である。 Predistorted Design・・・事前歪ませ設計・・と言うものだが、「歪み」と書くと信号が歪むのかと誤解されそうなので「事前特性補正型」にした。他所では通用しないだろう。 無理に日本語化せずに「プリディストーテッド・フィルタ・デザイン」としておくのが良いかも知れない。 ネットサーチしたが良い日本語表現はないように思った。JAではあまり紹介されない設計なのかも知れない。もちろん専門家は良くご存知のはず。

 水晶振動子のQuが理想よりも小さいことによって通過帯域特性がダレるとか、エッジが丸くなることを見込んで設計する。 ダレるのを見越して通過帯域の外に向かって持ち上がるような特性に設計する訳だ。 この設計を行なうためには水晶定数のうち無負荷Q:Quも揃っている必要がある。 個々の水晶の大きなバラツキまで補正するのは容易でない。 だからQuが極端にばらついた水晶振動子は旨くない。 なお、出来上がったフィルタの頂部が丸いのはここで言う特性の補正とは意味が異なるので勘違いなきように。もともとリニヤ位相系フィルタの通過帯域は蒲鉾型なのである。フィルタの形式と通過帯域の形状については以下のリンクを参照。→700HzのBPF
 
 【半自動設計
 手計算でも設計は不可能でない。最初のころは殆ど手計算(=電卓)で算出していた。 しかし計算間違いが起こり易い。 途中の間違いはシミュレーションで気付くこともできるが、そもそも発生しにくいように機械的な計算はパソコン(=プログラム)に任せる方が良い。

 仕様と水晶定数をインプットしてやれば全て計算してくれるような全自動ソフトではない。しかし幾つかのパラメータを個々に入力すればあとは計算結果が出るようなプログラムを書いた。計算させるまでの準備に少し手間は掛かるが設計の自由度は高い。 単純な四則演算の繰り返しと、細かい刻みで値を追い込むような試行錯誤型ルーチンも存在する簡易なものだが、得られる数字は十分に実用的だ。 設計ソフトと言うよりも、設計支援のちょっとしたツールと言った感じだろうか。

 振り返ってみれば、こうした設計法(設計・製作手順)が確立できるまでにずいぶん過ぎてしまった。 設計・計算・製作のヒントは案外身近に転がっていて、それに気付かなかっただけのように思う。資料も集めただけではダメだ。良く読んで理解しないとその価値になかなか気付けない。断片的な情報も多いので様々を纏めて考えを導く必要もあった。 そのあたり、早く気付けば4〜5年前に確立できたかも知れないので反省している。(でも、できて良かった・笑)

 【CWフィルタ基本設計】
 プログラムで得られた数値を回路図に書き込んでみた。 前に設計したSSB用の6-poleフィルタと基本的には同じであるが、目標のCWフィルタを実現するために少し違いがある。

 この設計では、中心線から見て左右対称な数値になっていない。 従って左から5番目の水晶振動子(図ではX-No.03のところ)にも直列コンデンサ:CS5が必要だ。 また、非対称回路なので入力側:Rinと出力側:Routのインピーダンスが異なる。なお、インピーダンスは異なるが信号経路は可逆性がある。 この設計で良いのか様々な検討を行なった。回路シミュレータも活躍した。 出来上がったフィルタの通過帯域幅:Bw(-3dB)にやや誤差を生じる傾向は残るが概ね確立できたと思う。製作の方も同様だ。

)図は特定の水晶発振子を使うことが前提の設計だ。同じ周波数の水晶でも、他のものには適用できない。数値そのままで作りませんように。

 【シミュレーション
 周波数特性のシミュレーションを行なっている。 これもLT-Spiceを使っており、水晶定数は上図の左下にある数値をインプットした。設計帯域幅:Bw(-3dB)は200Hzである。

 水晶振動子間の「結合容量:Cjk」は設計プログラムで求めた値をそのまま使った。 より結合容量が小さな・・・例えば高い周波数で帯域幅が広いフィルタでは配線のストレー容量と水晶振動子のホルダと端子間のキャパシタンスを補正する(差し引く)必要がある。
 シミュレータに分布容量は存在しないので設計通りの値でシミュレーションする。 実際に作る際は目に見えない容量を考慮してコンデンサの値を加減する。この例のように3.58MHzのCW用では各容量が大きいので分布容量の影響は顕著でない。

 【実測特性
 実際のフィルタはこのようになった。 横軸全体で3kHz、従って一目盛りは300Hzである。 縦軸は一目盛りが10dBで、全体で100dBの範囲で見ている。

 帯域外の裾の部分がなだらかになっているが、これは測定器と測定方法の限界だ。 完璧な入出力間のアイソレーションは不可能なので現実的なところに落ち着く。

 とても良く切れるフィルタだと思う。 6-poleだが、中心軸から見てほぼ左右対称なのは狭帯域フィルタだからだ。 (参考;3.58MHzでSSB用を作ると非常に非対称が目立つ。これはBw(-3dB)との比較でfsとfpの間隔が狭いため)

 通過帯域幅は-3dBのところで見て225Hzとなった。 少し広めなのは水晶振動子にパラの15.5pFを省略したためである。 設計次第では省略できないが、ここでは様子を見て支障が無ければ 省こうと思っていた。 結果はこのように満足の行くものであり、省部品を優先してC1〜C6は取り付けなかった。(省略を見越して設計したと言えなくもない)

 中心のピークから6dB下がったところで傾斜が変化して折れ曲がっている。 この-6dBから上の部分がGaussian特性(Besselと類似)である。こうした特性は、入力信号の形状が時間軸で見た時に良く保たれるのである。 その外側の裾野の部分はButterworth特性になっておりいくらか急峻になっている。 このように、Bessel特性よりも急峻でありながら入力信号の形状が良く保たれるのがこの形式のフィルタ:Transitional Gaussian Responce to 6dB型の特徴だ。 ほぼ設計通りの通過帯域特性になっていることが確認できた。

過渡応答特性
 写真は受信されたCW(無線電信)の短点に相当する信号がフィルタから出てきたところだ。シミュレーションではなく実測である。 これで約200Hz幅と言う狭帯域フィルタの通過後なのだから、なかなか素晴らしい。

 立ち上がりもスムースであり、オーバーシュートもほんのわずかだ。 また、余韻(残響)も少しだ。 一般的な狭帯域のCW用クリスタルフィルタでこの特性が実現できるものは無いだろうと思う。 過去に種々測定した経験ではお目にかかったことは無かった。

 このフィルタの帯域幅Bw(-3dB)は225Hzで、中心周波数foは3577.800kHzである。いわゆるフィルタQ:QfはQf=3577800/225=15,901もある。 Qが1万をかなり超えたフィルタで、これほど良好な過渡応答特性が得られるとは信じ難いほどだ。

 まだ出来上がったばかりだ。実際の受信機で試していないが大いに期待できると思う。このフィルタでワッチするのが楽しみである。

                  ☆

 SSB受信機以上にCW用の受信機は難しいように感じてきた。単に音が自然であるとか、そう言う話しではなく、狭いフィルタで快適な受信フィーリングが課題である。 空いているバンドなら、過度に狭くないフィルタの方が心地よい。しかし、混んだバンドともなると耳フィルタを鍛えた熟練者でもなければ帯域を狭めるしかなかった。

 低周波処理のCWフィルタは受信機用としては本格的なものにはなり得ない。 しかし、実験してみて良い音色とフィーリングが実現できることに感心した。 その特性をそのままに受信機のIFフィルタが製作できたなら・・・その答えがいまここにある。

 DSP処理のフィルタでも同じことはできる筈だ。いずれどのトランシーバにも波形再現性に優れたリニヤ位相系のCWフィルタが 内蔵されるであろう。 その時こそ時間軸上の特性に目覚めるときだ。 通過帯域がフラットなものがベストでないことも理解してもらえるだろう。

 完全DSP処理のトランシーバも登場したが、完全アナログ処理の受信機にも良さがあると思う。こうしたCWフィルタが活躍する受信機もまだまだ現役だろう。 CW専用のように書いたが、データ通信系のモードにも最適だ。

 何年も掛かってやっと彼我のレベルに追付いただけ(注1)とも言えるが、まずは目標達成でこのテーマを終えることができる。市販品で得られぬものが作れるのは意義がある。次は活用の段階だ。

# いつか受信フィーリングを報告したい。
# 最後のBlogである。ご愛読感謝。 良いお年をお迎え下さい。de JA9TTT/1

つづく)←11MHz帯の高性能SSB用フィルタの開発にリンク。 

(注1)「彼我のレベルに追付いただけ」かも知れないが、彼我の話し(記事)の中ではどんな物が出来たか具体的に示されてはいない。だからフィルタの特性や時間軸上の波形再現性の実測データなど目にしたことはなかった。今のところ具体的に実測例を示しているのはこのBlogだけではないか。この例に続く製作の登場を期待している。

2015年12月11日金曜日

【回路】8-pole X-tal Ladder Filter +1

【回路:8素子ラダー型クリスタルフィルタ+1】

12.8MHz 8-pole SSB Filter
 前のBlog(←リンク)では実際に新しい方法で作ったラダー型フィルタの製作例を示してその設計法も簡単に説明した。 6素子の例で示したが、8素子ラダー型フィルタも基本的に同じである。

 左図は「Dishalの論文に基づく簡易設計ソフト」(以降は簡易設計ソフトと略)を走らせた状態だ。
使用した水晶発振子は表示周波数が12.8MHzのもので形状はHC-49/Uである。 たくさん測定した中から無負荷Q:Quが高い物を8個選んだ。 水晶定数はそれら選んだ物8個の平均値で与える。

 具体的には以下の通りだ。
・Lm=7.989mH
・fs=12794.857kHz
・Cp=3.49pF
・・・である。

 右側の特性図を見ると、中心周波数の上下を見た場合の対称性が6素子よりずいぶん良くなっている。また、おなじ0.1dB−Chebychev型でも一段と急峻になった。追加の2素子はずいぶん効果的だ。 6素子のSSBフィルタでも実用にはなるが、できればこのくらいの特性が望ましい。

初期設計から実用設計へ
 この図は前回の再掲載である。 上記の設計で得られた値を書き込んだのが(A)である。 数値に端数が付き過ぎているのと、平均値計算なのでそのまま作るのには適さない。

(B)は、実際に使用う水晶発振子をどの位置に何番を使うのか具体的に選んで「格子周波数の同調」・・・Mesh Tuneを行なった。 「簡易設計ソフト」の上部メニューバーから「Xtal」をクリックするとチューニング用小プログラムが現れる。 使い方はソフト付属HELPファイル:eDishalHelp.pdfのAppendixにある"Xtal Tuning"の項に詳しく書いてあるので参照を。

 さらに(C)は数値を丸めて製作し易くした。 どこまで丸めてしまって良いのだろう。 各コンデンサの値をばらつかせて特性がどの様に変化するのかを検証した資料を見ると±5%程度ではほとんど影響はない。 従って、計算値から5%以内の誤差になるように選んでやれば十分そうだ。 心配なら最終値でシミュレーションしてみる。(実際、それをしてみたらいろいろなことがわかったのだが・・・)

LT-Spiceでシミュレーション
 すでに設計ソフトのところでシミュレーションしたフィルタ特性がグラフで表示されている。あらためてシミュレーションする意味はあるのだろうか?

 「簡易設計ソフト」のシミュレーションでは不完全なのである。 それは以下の結果から良くわかる。

 ここで使ったLT-Spiceは非常に有名である。半導体メーカーのリニア・テクノロージー社が無償提供している回路シミュレータだ。無償とは言え非常に高機能かつ高性能である。それまで世の中にあった有償の回路シミュレータが淘汰されてしまったくらいのインパクトがあった。更新が継続されているのも素晴らしい。 同社のサイトからダウンロード(←該当ページへリンク)して使うべきだろう。

 ネットをサーチすれば使い方も何となくわかると思うので、あえて参考書籍のお薦めは書かない。 情報提供しても「高いものを買わされた」などと反感を持たれたらアホらしい。倹約は美徳かも知れないが吝嗇は進歩に結びつかず。投資したなら、その分じゃぶり尽くそう。(笑)

 この画面コピーは上記の8素子ラダー型フィルタをシミュレーション用に書いてみたものだ。 水晶振動子そのものを書くのではなく、Lm、Cm、Ch、(Rm)に分けて回路図を作成する。 あとはRunボタンを押してから、観測プローブを出力端子に当ててやればグラフィカルに特性が表示される。

参考:私が作ったシミュレータ用ファイルをここ(←リンク)に置いておく。なお、再配布はしないでください。(注意:LT-Spiceがないと意味は無いのでクリックしませんように)

Dishalのシミュレーションを再確認
「簡易設計ソフト」の右側に表示されるグラフと同じものが得られるのか最初に確認しておく。 左図はLT-Spiceによる同条件での結果である。

 各Lm、Cmは設計に使用したのと同じく平均値をインプットする。 またRmはシミュレータのデフォルト値・・・確か10ミリΩだったはず・・・をそのまま使う。 Dishalの設計ソフトと同じく、Quは非常に大きい状態でのシミュレーションと言うことになる。

 同じような結果が得られている。 LT-Spiceでもきちんとしたシミュレーションができている。 まあ、ちゃんとできて当たり前なのだが、これで以降の結果も信用してもらえると良いが。

現実的な水晶でやってみる
 何が「現実的」なのかと言えば、損失抵抗:Rmの値を実際の値としてインプットしている。平均のRm=4.07Ωである。 Quで言えばQu=約158,000と言うことになる。 このQuの数字自体悪いものではない。むしろごく普通の水晶発振子としては優秀な方である。

 さっそく通過帯域の特性に注目しよう。 遮断域に向かう角(カド)の部分が丸くなり、通過帯域は平坦でなく山形で、なおかつ凸凹している。それに、すこし右下がり気味の特性だ。

 「簡易設計ソフト」は水晶発振子は無損失であると想定した結果だ。 現実はなかなか厳しい。 最初の特性グラフを見て「しめしめ、これでフィルタのエキスパート」なんて思ったら残念でしたということに。(爆)

それどころか、さらに現実は厳しいことが次の結果を見れば明らかに。

使用する水晶の実態とは
 これも再掲載だが、念のためにもう一度アップしておこう。 この後で登場する実際の製作に使用した現実の水晶そのものの特性である。 念のため書いておくが、この表の水晶振動子はそもそも選別品であって良く揃ったものを集めてある。無造作に・・まったくランダムに・・・選んだ水晶発振子ではないことを特筆しておく。要するに良いものを選んであるわけだ。

 次のシミュレーションで使った数字もこの表からピックアップした。 従って、これから作ろうとするフィルタの「実態に即した特性」がシミュレーションできるわけだ。水晶を良く選んで作ったんだから、当然良い結果を期待したい。

作ったらこうなるに違いない!
 これは予め書いておくが、シミュレーションよりも現実の方が良くなるのは稀なので、この状態では製作しなかった。 それにシミュレーションを行なう意味は、明らかな失敗作を回避するのも目的の一つだ。

 通過帯域の様子を見れば一目瞭然だろう。 ずいぶん凸凹があって、ずいぶん右肩下がりの特性だ。 最初に見たDishalの設計とかなり違っている。

 入念に水晶を選んでから、(A)〜(C)の手順を踏んで製作してもこのような結果になることがあるのだ。 「きちんと」やったんですが、旨く行かないのは何故なのでしょうね?・・・の、答えがここにある。(C)のところまでやってハンダ鏝を握ったらこうなっただろう。 何が問題なのか?・・・本質的には水晶振動子のバラツキである。

参考:(製作する方への助言)
 Dishalの論文に基づく簡易設計ソフトで設計・製作する場合、水晶振動子(発振子、共振子)のバラツキを抑えるのがもっとも重要です。 これは、直列共振周波数:fsだけでなく各水晶定数についても言えます。 合わせて、なるべく無負荷Q:Quの大きな水晶を使うことにあります。 そのようにして製作すれば旧来の設計では得られなかったような素晴らしいラダー型フィルタが作れます。これは、原理的に正しいことなので確実に行なえば誰でも再現できます。そうならなかったら何かが不十分と言う意味です。



私の試作例
 試作品はこんな感じに出来上がった。 写真から何となく実感が湧くかも知れない。

 8素子用の基板に組み立てた状態である。 流石に専用基板だけあってうまく纏めることができた。 基板設計の段階ではすこし窮屈な印象もあったが製作に支障はなかった。 コンパクトに纏まっているので使い易いユニット部品になった。

 以下の特性はシミュレーションではなく、このフィルタを測定器で評価した結果である。 今のところ試作品レベルだが、忘れてしまう前に途中経過を測定しておく。 当然ながら対策は行なっており、上記のシミュレーションのまま作った訳ではない。 対策の効果を検証するのが以下の測定の目的だ。

参考8素子用基板はまだ幾らか残っているので頒布は可能。 ←品切れです。ご希望があるようなら再製作します。(2015/12/11現在)

概要評価
 横軸のひと目盛りは1kHzである。全体では10kHzと言うことだ。 また縦軸はひと目盛りが10dBになっている。100dBの範囲で観測している。

 通過損失は測定用のマッチング回路のロスが含まれている。マッチング回路のロスを除いた正味の通過損失は10dB以内であった。 通過帯域から約80dB下がったところに少し盛り上がりはあるが、十分な帯域外減衰量だと思う。 中心軸から見た左右の特性は概ね対称になっている。 これは8素子にしたのが効果的だった訳だが、12.8MHzと周波数が高くなったのも有利だ。周波数に比例して水晶発振子のfsとfpの間隔が広くなるためだ。

 但し、周波数が高いのは良いことばかりではない。 中心周波数と帯域幅で考える「フィルタQ」が大きくなることから、High-Qな水晶振動子が不可欠になる。 現実にはQuが不十分な水晶で作ることになるから通過帯域が弓なりになりエッジが丸くなってしまう。改善は可能だが一段と高級な設計・製作になる。

製作者への助言:Dishalの論文に基づく簡易設計ソフトウエアによる設計でもここまで行ける。もしこのように行かないなら、それは本質的に水晶振動子(発振子)のバラツキによるものだ。 まずは使う水晶を精度よく測定することと水晶定数の「バラツキを抑える」ことがフィルタ作りの原点である。良い水晶を選別することで誰でも設計ソフトを頼ってこの特性に至ることは可能だ。

-6dB帯域幅
 中心部分から見て、-6dBの帯域幅を測定してみた。 設計値では2.76kHzだったが、2.55kHzに減少している。 約7.6%の減少なので、違いはそれほど大きくもないが幾らか広めに設計した方が良かったようだ。6素子でも同様の減少傾向があった。

 使用した水晶振動子の無負荷Q:Quがやや小さかったことによる「帯域幅減少」だろう。肩の部分の丸味も同じ理由だ。もちろんQuの問題が原因の全てではない。 通過帯域はフラットとは言えないけれどずまずかも知れない。 

-60dB帯域幅
 上の-6dB帯域幅と。この-60dB帯域幅でシェープ・ファクタ(形状比)を計算してみよう。

 -6dBが、2.55kHzで、-60dBが4.312kHzであった。 従ってシェープ・ファクタ:k=Bw(-60)/Bw(-6)=4.312/2.55=1.691である。 理想はk=1であるが、2以下であれば一般的なSSB用クリスタル・フィルタとしては合格点だと思う。

 SSB送信機において逆サイドの漏れは気にならないだろう。 受信機に使っても切れの甘さを感じることも無いだろう。

キャリヤ周波数は
 実際に使うときに必要なキャリヤ周波数を測定しておこう。 幾らか不満はあっても、いきなりジャンクにはせず、SSBジェネレータにでも使ってみたい。

 USB側が:f(USB)=12,795.075kHz
 LSB側が:f(LSB)=12,797.962kHz
 ・・・となった。

 どちらのキャリヤも発生させ易い周波数だ。 参考までに、両キャリヤポイントの中心をフィルタの中心周波数とすれば、fc=12,796.520kHz(概略)となる。 送受信機の設計では、フィルタの中心周波数はこの周波数で行けば良い。

あらためて、通過域の特性を見る
 「試作品」と言うのは、この特性に少々不満があるからだ。 画面のマーカーはピークから3dB下がったところ。 一応、急峻な部分にはあるのだが・・・。

 横軸はひと目盛りが500Hz、縦軸はひと目盛りが1dBの拡大目盛りになっている。 だから、通過帯域の平坦度が誇張されて蒲鉾型に見えているのではあるが・・・。 もちろん、「ちゃんと」やっているので右肩下がりもほぼ解消している。

 これで現実のRm=4.07Ωを考慮した状態でシミュレーションした結果と等価と言ったところだ。 注目すべきはDishalの論文準拠の(簡易)設計ソフトでもここまでは行けるということ。もちろん、それ以上は設計を変えないと無理だが・・・。

本当の0.1dB Chebychev型はこんなに丸くないのだ。(笑)

帯域外減衰を見る
 通過帯域外の減衰状態を見ておく。 横軸は全体で100kHzである。 縦軸は全体で100dBだ。

 通過域を画面の上端に合わせて見ている。 従って、フロアの部分は約-90dBと言うことになる。 多少左右で異なるが、まずまず支障のない性能だと思って良い。

 基板設計が悪いとこのように良好な性能が得られない。 無用な信号の結合が起こらないようにコンデンサと水晶の配置を入念に調整して頂いたのでその効果があったようだ。この性能から専用基板の出来がわかる。 コンパクトに纏めた構造を考慮して優秀な方だと思う。 あとは回路への実装に気をつけて、特性が劣化しないようにしたい。

                   ☆

 「Dishalの論文に基づく簡易設計ソフト」だけで見ていたのでは完全な設計にはならないことがご理解頂ければBlogの意味があったことになる。 特定の状態を前提にした設計では、得られた結果が予想外になったとしても不思議ではない。まったくバラツキのない水晶発振子など無いのだから。 もちろん、旨くないなら手だてはある。見た通り、手だてを行なえばかなりまで行けるのだから有用性がないわけではない。だからもう過去の設計に戻る必要はないのである。

 検討を進める過程で、きちんとした製作にはある程度マトモな道具が必要なこともわかってきた。 (シンセサイザ式の)SSGとRF電圧計(=RFミリバル)くらいでも、何とかなるが効率は低いだろう。それさえ用意できないと「闇夜で手探り」になってしまう。 できたらTG付きのスペアナやネットアナがあると良い。それら測定器も物を選ぶ必要がある。 製作のハードルは高くなってしまうが現実である以上、甘言を退けて正直に書いておく方が良さそうだ。 道具とそれを使いこなす技術は欠くことができない。

 それと水晶定数はLmとCmだけでは不十分だ。損失抵抗:Rmの値も掴んでおかないと確認のシミュレーションができない。必ずシミュレーションしてから作る方が良い。 LmやCmは発振周波数シフト法で良い。Rmの方は「W1FB's Design Notebook」にある様な測定治具が欲しい。
 高性能なフィルタ作りともなればイージーにとは行かないのは当たり前かもしれない。80%くらい確立できたと思っているが、もう一度整理し直そうと思っている。さらに幾つかフィルタを作ってみる必要があるだろう。今も検証は進んでいる。de JA9TTT/1

つづく)←音の良いCWクリスタルフィルタにリンク。

2015年11月26日木曜日

【測定】Quartz Crystal Test Fixture

【測定:水晶発振子のテスト治具】
テスト治具の回路図
 水晶発振子or水晶振動子のテストには標準のテスト治具があって、ごく一般的に使用されている。 50Ωの入出力インピーダンスを12.5Ωに変換して、その12.5Ωのところに水晶発振子/振動子を装着して測定する。 従って、水晶は12.5+12.5=25(Ω)の負荷インピーダンスで測定されることになる。これはIECの標準測定回路だったはず。

 図の回路は、E24系列の抵抗器を使って測定治具を実現している一例である。おそらくメーカーでは専用の抵抗器を特注しているに違いない。しかし手作りで数台作るにはとてもそこまでできないので市販の抵抗器の組み合わせで間に合わせる必要がある。

 抵抗器は理想を言えばノンカット型のRF用がベストであるが、用途をHF帯(〜30MHz)に限るとすればごく普通の表面実装用のチップ型を使えば十分だ。誤差はできたら1%が良いが5%のものを多数購入して実測のうえ選別するのが現実的だろう。 あまりパワーは入れないので1608サイズで良いと思う。もちろん2012サイズでも3216サイズでも大丈夫だ。

部品表
(1)抵抗器:2.2Ω、4.7Ω、12Ω、39Ω、62Ω、120Ω・・・各2本
(2)コネクタ:BNC型、あるいはSMA型・・・2個
(3)プリント基板:FR4材両面生基板・・・適宜寸法(t=1mmなど)
(4)ソケット:HC-49/U型水晶発振子に適合するもの。要耐久性。・・・1個

 本格的にやるなら、プリント基板を起こしてラインインピーダンスを合わせてやれば良いのだが、簡単な回路だから手貼りでパターンを直接描いても良さそうだ。 配線は短かめに、なおかつストレー容量が大きくならないように考慮する。 水晶を挿入するソケットが一番の問題かもしれない。あまり安っぽいものを使うと耐久性が無くて困ることになる。

参考:この12.5Ω 測定治具を実際に製作しクリスタル・インピーダンス・メータ(CIメータ)で使用した経緯を纏めた別のBlogがあります。→続編へリンク

                   ☆

 まったくの自家用メモである。ラダー型クリスタル・フィルタの製作には直接的な関係はない。治具として製作すべき物と言う訳ではない。 こうした製作情報はあまりネット上に無いのでメモとして書いておいた。プロはメーカー製の専用治具を購入してしまうので、自作などしないからだろう。アマチュアでもお金持ちは購入すれば良かろう。 特に製作をお奨めするような内容ではないので、水晶の測定に興味がなければささっと素通りされるのが良い。入出力インピーダンスが50ΩのTG付きスペアナやVNA等が前提の治具だ。de JA9TTT/1

(おわり)

2015年11月12日木曜日

【部品】8-Pole X-tal Filter Board

8素子クリスタルフィルタ用基板
 【8素子用基板ができた
 8素子クリスタル・フィルタ用プリント基板が完成した。 何とか6素子の基板と同じサイズになるように纏めてもらった。 入出力端子も6素子の基板と同じになるようにできたので互換性がある。

 もしもご希望があればだが、必要なお方に3枚ずつ頒布したいと思っている。 頒布要領は前回の6素子と同じなので、そちら(←リンク)をご覧頂ければと思う。

 なお。パターン作成上の制限で、水晶振動子を基板に密着して実装すると旨くない。6素子用基板の時と同じ様に浮かせてハンダ付けする。水晶振動子のケースも必ずGNDに接続しておく。(参考:水晶振動子を載せるのに、これ(←リンク)を使うと便利そう)

 【想定回路はこれ】
 8素子クリスタル・フィルタ用基板が想定しているラダー型クリスタル・フィルタの回路は左図のようになっている。

 図は私の製作例である。ただし、これと同じ周波数の水晶振動子を使ったからと言って同じ設計値(部品定数)にはならないので注意を! (即ち、ご自身の水晶に合わせた再設計を要する)

(A):設計ソフトで設計したままの状態。
(B):個々の水晶振動子のバラツキを考慮してチューニングした計算結果。
(C):実際に製作するために数値を丸めたもの。
 ・・・だいたい、こんなプロセスで設計を進めて行くことになる。 必要に応じて回路シミュレータなども動員して確認しておけばなお宜しいと思う。

実践でフィルタに
 図上設計のままでは絵に描いた餅である。 図をいくら眺めていても現物のフィルタにはならないので実際の製作に進まなくてはならない。(写真は製作中の様子)

 クリスタル・フィルタは水晶振動子の実測値に基づいた設計を行なっている。 特にこのタイプのラダー型クリスタル・フィルタの場合、各振動子のバラツキに応じて個々のチューニングを行なっている。従って所定の順番・位置に取付けなくてはならず、もし間違えると悲惨だ。 振動子にはわかり易いように予め番号を振っておき、基板への実装も十分確認しながら行なうこと。
 コンデンサもできれば実測しておき、場所を間違えないように組み立てることが肝要である。 基板の方もシルク印刷付きなのでかなりわかり易くなっている。(言うまでもないと思うが、シルク印刷のある面に部品を実装するように)

                 ☆ ☆ ☆

  Dishalの論文準拠の(簡易)設計プログラムのお陰で、高度のクリスタル・フィルタ設計がとても容易になった。 もはや旧来のCohn minimum loss型には戻れないに違いない。 それだけ優秀なクリスタル・フィルタが設計・製作できるからだ。 ちょうど製作の助けとして8素子用専用基板があったらFBだと思っていたら再びJR2FKN/1 鶴田さんから基板設計の話しが来た。 「6素子と同じサイズの基板に」と言う無理っぽいお願いにも工夫で対応して頂いた。組立は窮屈かもしれないがその分コンパクトに纏まっていて完成後は使い易い。 沢山は作らなかったのだが、自家用には十分すぎる。 前回とおなじくらい頒布可能なので、ご希望があればメールでお問い合わせを。お一人様あたりフィルタ3つ分ずつ頒布します。 回路パターンは上記の「想定回路」の通りになっている。

 新しいラダー型フィルタの設計・製作を扱って以来、ずいぶん沢山のお方が製作を試みたと聞いている。 旨く行った例も多いようだが、どうも思い通りにならなかったと言うお話しを漏れ聞いている。 「Dshalのプログラム」(注1)を使い、Mesh Tuneも指示通りにきちんとやったのだがどうしてなんでしょう?・・・と言う声も聞こえる。 このあたり、やはり実践をふまえた作業手順を細かく伝えないと不十分なのではないかと感じている。 それに、プログラムは予め想定に従った定型の設計なので必ずしも再現性が良くないことも確認している。入念にやったからと言って旨くないこともあるのだ。 良くできた設計プログラムだとは言え、そんなものなのである。 ツール(道具)は使い様と言ったところだろうか。いずれそんな話題も扱わなくてはならないようだ。 de JA9TTT/1

(おわり)

コラム・Dishalのプログラム:(注1)
「Dshalのプログラム」と言う認識がそもそもずれているのかもしれない。 Dishalはラダー型フィルタの合理的(現実的)な設計方法に関する論文の執筆者である。 その論文に基づき条件を端折って簡易型の計算・設計プログラムに纏めたのがDJ6EVで、さらにそれを英語化したのがG3JIRである。だから「Dishalの論文に基づく(簡易)設計プログラム」と呼ぶのが適切であり、そもそもDishalは設計プログラムには関係していないのである。
 この簡易設計プログラムは完璧そうに見えるが、必ずしも思い通りに行かないのは条件を端折っているからだ。もちろん、厳密な設計パラメータをインプットするよう、ユーザに求めたなら使いこなせるのはごく限られた人だけになっただろう。だから簡易型に纏めた意義は十分あると思う。言うまでもあるまいが、その設計プログラムが「簡易型」なのはDishalに責任がある訳ではない。
 Dishalの論文は種々のフィルタ形式について適用できるため「Dishalフィルタの音」などと言う表現は正しくないことになる。その設計法を使って、どんな形式のフィルタを設計したのかによる。例えばButterworthとChebyshevの違いは有りえるが、どちらもDishalの設計法で製作できる。だから「Dishalのフィルタ」とくくってしまうのは正しくない訳だ。 せっかく興味を持ったのだから正しい知識を持ちたいものだと思っている。

2015年10月27日火曜日

【測定】GPS-RX NEO-6M

GPS受信モジュール:u-blox NEO-6M
NEO-6Mをテスト
 あらゆる製品やサービスがinternet接続される時代にあって、その対象になるモノの正確な位置情報を知る必要があるのだろう。 様々なGPS受信モジュールが登場している。(SNSに何でもかんでも情報アップしてると貴方の行動は筒抜けである・笑)

 写真もそのGPS受信モジュールの一つである。 u-blox社製のモジュール:NEO-6Mを基板に実装しアンテナを付属したセットが販売されている。 ホビーストの実験・研究用を狙ったものと思われる。(→コレ

 GPS受信モジュールのみでは扱いにくいが、基板実装済みなので使い易い。 付属のアンテナはオマケ程度のものとも言えるが、この状態で手軽にテストができるのは便利だ。

 このモジュールの特徴は「高感度」と、ある程度任意に設定できる「パルス出力」にあると思う。(参考:無改造ではパルスで緑LEDが点滅するのみ)

 インターフェースはシリアルで、TTLレベルである。  レベル変換を行えば、RS-232Cインターフェースで接続することもできる。 この写真では、左のケーブルの先にUSB-シリアル変換基板があって、パソコンとはUSBで接続している。 電源はUSB経由で供給可能だ。

 蛇足であろうが、USB-シリアル変換器にはTTLレベルのシリアル出力をもったモジュールが必要だ。そう言うものは例のarduino 等で使うためだろうか安価に多数登場している。(→コレとか) かつてのようにMAX-232等を使ってRS-232Cレベルに信号変換する必要も無くなっている。 それに、RS-232Cのようなレトロなインターフェースを持ったパソコンなどシーラカンスのようなものだ。 なお、TXDとRXDはクロス接続すること。

専用アプリがある
 従来は汎用のアプリを使ってGPSの受信状態を把握していた。 取りあえずそれでも十分役立つのであるが、このモジュールには専用のアプリが用意されている。「u-center」というアプリ。
 上記リンクで直接ページが開かない場合は:「評価キット・ツール」→「サポート」→「評価ソフト」の順にページを辿るとダウンロードが見つかる。あるいは、米ダウンロードサイトのURL(←直接リンク)

 その専用アプリを通して、モジュールの機能を再設定することができる。 例えば、パルス出力は購入初期のデフォルト状態では1pps(=1Hz)であるが、異なった周期に変更することが可能だ。 もちろん、このパルス出力はGPSからの1ppsに同期しているから、平均化処理などを行なって電波伝搬に起因する揺らぎの除去を徹底的に行なえばGPS衛星搭載のRb-OSC(ルビジウム原子時計)と同等の周期精度(周波数精度)を得ることも不可能ではない。GPS周波数基準器の製作については「トランジスタ技術誌2016年2月号」P99〜P125の参照を。(2016.1.10)

参考:NEO-6MとGPS周波数基準器のBlog内関連情報はこちら(←リンク)から。

                    ☆

 かつて、ロックウエル製のTU30-D140と言うGPS受信基板が流行ったことがあった。元々が何かの機器からの「外しジャンク品」だったらしく、やがて枯渇とともに忘れ去られた。
 このu-blox製NEO-6Mを載せた基板はジャンク品ではない。 ごく普通に販売されている商品だ。 ヤフオク出品物のような価格不定品ではない。 機能を考えた価格もリーズナブルな範囲と言える。 活用はユーザにゆだねられてはいるが、面白い応用も可能だと思っている。

 何よりも進歩していると感じるのはその「受信感度」であろう。 最初の写真のように窓際に置いただけで、この画面コピーのように全天の沢山の衛星を簡単に捉えてくれる。だから連続動作中に衛星をLostする心配もなくなる。 de JA9TTT/1

(おわり)

2015年10月13日火曜日

【回路】Simple HAM Band Receiver 1968

【簡単なHAMバンド用受信機:1968スタイル】
1968年式シンプル受信機
 ちょっとネタ切れなので、JARLアマチュア無線ハンドブックの第2版:1970年版から簡単な受信機回路をピックアップして題材にする。1970年版だが実際には1968年2月の印刷物である。1968年式と言った方が適切か?

 この受信機は米国はARRLハンドブックに毎年掲載される球数のごく少ないシンプルな受信機をお手本にしたものであるが、日本人らしく細部で高性能化が試みられている。 日本のHAMは大半が高級指向であり、そのニーズに応えたと言えるだろう。 しかし、そもそもの良さである「シンプルさ」がかなり損なわれたように感じる。 高性能を目指すのであれば、無理に球数を絞らず高1中2形式に土台を置いた方が総合性能は良くなったのではあるまいか。製作に要する費用も手間もさして違うまい。いや、むしろ複合管の多用は配線が難しくなるだけではないだろうか。各段を別個の球に分けて最適な配置にした方が製作は容易になるはずだ。図の回路は見かけの球数が少なくても製作はかなり難しくなっている。真似て作るならそのあたりを考慮した方が良い。

                    ☆

 1968年と言えば、もうすぐ50年になるが著作権は残っているので残念ながら記事の全文は紹介できない。しかし、ざっと説明はするのでわかる人には十分な情報だろうと思う。

 受信周波数帯は3.5MHzと7MHzに絞っている。ダイヤル機構に扇形のダイヤル面を持ったフリクション減速型を用いるからだ。あまり減速比が取れないからジェネカバのような受信範囲にしてしまうと実用的なHAM用受信機にならない。 既成のコイル・・・例えばトリオのSシリーズコイルなど・・は使わず、エアダックスコイルを使って2バンドカバーにしている。 アンテナ同調回路はボトムカップリングのBPF形式で、イメージ比を良くすることを目的とした回路だ。同調バリコンに松下電器産業製(現パナソニック)のECV-2DX18と言う最大容量198pFの2連周波数直線型・・いわゆるF直バリコン・・・を使って短波受信機として最適化してある。 局発(同調)バリコンとは連動しないので別のツマミでプリセレクタ形式の操作となる。

 局発コイルもエアダックスである。カバー範囲が狭いので小容量の2連VC・・ECV-2RW20を使っている。これは通信機用で容量直線型max17.5pFの2連型だ。もちろん、ポリバリコンではなくて、エアーバリコンである。 バンド切換えは局発コイルのタップ切換えのみであり、アンテナ同調回路は切り替えない。 バンドを移るにはアンテナ同調のツマミを大きく回す必要がある。

 いきなり同調回路の話しに入ってしまったが、改めて回路の話しをしよう。真空管4本を使ったシングルスーパである。中間周波は定番の455kHzである。 この受信機のコンセプトは最少の球数で実用性能を持った受信機を作ることにあったはず。 整流管は使っていないから球数だけで言えば家庭用スーパと同じだ。 しかし、複合管や半導体を積極的に使って8〜9球分の高性能化を図っている。

 まずはミキサーと局発である。6GJ7と言うTVのチューナ回路用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管を使っている。家庭用スーパでおなじみの6BE6よりゲインとS/Nを改善している。 局発回路はハートレーではなくて、周波数安定度に優れたVackar回路を採用している。 ミキサは第1グリッド注入型だ。 6GJ7のHigh-gmと相まって、低NFとハイゲインの両立を図っているフロントエンドだ。

 中間周波増幅(IF-Amp)はセミリモートカットオフ管の6EH7である。これもTV用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管である。 ハイゲイン故に自己発振の懸念はあるが、1段増増幅なので何とかなるのであろう。 IFフィルタがロスの大きめな国際電気のメカフィルなのでゲイン不足の対策として6EH7を採用したものと思う。 なお、検波回路との関係もあってAGCは掛かっていない。カソード抵抗を可変する手動ゲイン調整が付いている。 受信中は結構頻繁に操作する必要がある筈だ。

 検波回路は6BL8の5極管部分を使ったグリッド検波型である。SSB/CWの受信時には同じ6BL8の3極部でBFOを発振させて注入する。 但し、管内容量によるBFO注入のようで意図的な注入はしていない。 ここにゲインのあるグリッド検波を使ったのは、ステージ数が少ないことによるゲイン不足を補うためだ。ダイオード検波だとゲインはマイナスになるが、グリッド検波ならプラスのゲインが稼げる。 BFOは安定度の良いプレート同調型発振回路を採用している。

 低周波増幅は6AB8の3極部と5極部の2段構成である。低周波ゲインのボリウムのあとすぐにダイオードを使ったクリッパ回路が入っているのはAGCが無いための対策である。 プレート電圧が低いこともあって1.4Wとあまりパワーは出ないが、受信音をスピーカの近傍で聞くHAM局には十分な電力だ。入力部のクリッパが無いと突然強い局が出て来たとき耳をつんざく大音響の危険がある。

 なお、カソードが共通になっていて使いにくい6AB8を使うメリットは少なさそうに思う。6AW8のような球にした方が良いのではないだろうか。パワートランスのヒータ電流に余裕が無いことによる窮余の策なのかもしれない。
 電源回路はシリコンダイオード2個を使った両波整流である。 大食いの低周波出力管をケチったので僅か50mAの容量で間に合わせている。 電源部が小さいと発熱も少なくなるので悪くない手法だと思うが、外付けのアクセサリ類に供給する余力がないのが気になる。

 感度としてS/N=10dBで0dBμ(=1μV)の感度があると言うから、家庭用の5球スーパとは一線を画す性能が得られている。 3.5MHzや7MHzと言ったローバンドには十分な受信感度である。 ハイバンドにはクリスタルコンバータ(クリコン)の付加で対応すれば良い。

 非常な拘りを持って設計製作された受信機だが、やはりAGCが無いのは欠陥だと思うので、ぜひとも付加すべきだ。そうすればAGC電圧を読む形式で、Sメータも付加することができるので一段と通信型受信機の体裁が整う。AGCは研究課題である。

コイル
 アンテナコイルにはエアダックスコイル:200509を使用している。 図の左はコイルの仕様である。もし持っていればカットして作る。 200509は直径20mmで、巻線の線径は0.5mm、巻きピッチ0.9mmである。アンテナコイル(34回巻き)のインダクタンスは10.2μHである。 局発コイルの方は200816を使う。 同じく直径20mm、巻線の線径は0.8mm、巻きピッチは1.6mmである。 局発コイルのインダクタンスは3.5MHzの時(42回)が10μHで7MHz(24回)が5.3μHとなっている。
 各エアーダックスコイルの入手はかなり難しいので、今となってはアンテナコイルはトロイダルコアで作るのが良い。 

 局発コイルは周波数安定度が問題になるので良い物を使うべきだ。 ボビンに巻線して自作する方法があるので何とかするしかない。

 左図にはないL4であるが、0.1μHのインダクタを使う。この受信機が設計された当時なら、TV用パーツとして市販品がたくさんあった。 いまならμ(ミュー)の小さなトロイダルコアに巻くか、空芯コイルを巻けば良い。同調コイルとの関係で最適値が変わるので2つのコイルがクリチカル・カップリング〜ややアンダーカップリングになるようインダクタンスを調整する。インダクタンスを大きくし過ぎると双峰特性になってしまうので旨くない。少なければ選択度は良くなるが通過損失が増える。

 他のコイルであるが、選択度はメカフィルで決まってしまうので、IFTは何でも良いだろう。High-C気味のIFTの方が自己発振を回避し易い。どうしても発振する時は抵抗器をかませてQダンプするしかない。 BFOコイルはIFTの改造で何とかなりそうだ。 アウトプット・トランス、電源トランス、平滑チョークコイルは今でも市販品があるので支障はない。

製作へのヒント
 まず、真空管だが初段の6GJ7に多少問題はありそうだが、他の球は支障なく手に入るだろう。ソケットを購入するのを忘れずに。全て9ピンのノーバー管用(9Pin−mt管用)で良い。周波数から見て、ステアタイトの必要は無くベークモールド型でも十分だ。

 後で触れるがDDS化などで局発は別途用意するつもりなら、初段は6EJ7の採用をお薦めする。 低周波アンプの6AB8は6AW8Aがお奨めだ。同等管もたくさん存在する。 検波の6BL8も同等に使える類似管がたくさんあって、6GH8系や6U8系でも良いからあまり支障はないだろう。IFアンプの6EH7は6BZ6や6GM6などで代替する手があるほか、ポピュラーな6BA6でも極端な違いは無いと思う。電源整流のシリコンDiはあまた存在するのでお好みで。1N4007などが手頃だ。

 選択度を決めるメカフィルの入手に困る可能性が高い。中古品は劣化している危険性が高い。代替案として、いま手に入るCollins製にマッチングトランスを付加して使う方法がある。もっと安価に行きたいなら、5素子の世羅多フィルタでも十分良い選択度が得られる。メカフィルにひけを取らないからお薦めの一案だ。

 アンテナバリコンは指定品の周波数直線型は入手困難を極めるだろう。 しかし、ここは等容量2連型の(ポリ)バリコンでも何とかなると思うので試してみる価値は十分ある。 局発回路のバリコンは何とか類似の市販品が手に入るようなので頑張って探すしか無いだろう。指定の型番に囚われないで、FMラジオ用の2連バリコンを入手すれば代替可能だ。最大容量20〜30pFの物が多かったはず。もちろん、エアーバリコンがベストだ。

 一番厄介なのはダイヤル機構の部分だろう。 丸形のバーニヤダイヤルを工夫して代替する方法がある。 あとは糸掛けダイヤルくらいしか思いつかない。 ジャンク品やオークションの出物は運が良ければ手に入るが、確実性が無いのが難点だ。

 いっそのこと、局発は思い切って近代化を図ってしまってはどうだろうか? DDSオシレータ+ロータリエンコーダ+デジタル周波数表示にすれば、ダイヤルの読み取り、操作性、周波数安定度のすべてが一挙に解決できる。ミキサー管のグリッドに4Vpp程度の局発を与えれば良いので簡単な回路で大丈夫だ。 DDS化はシャシ上の回路レイアウトにも自由度が生まれ製作しやすくなる。 DDSを使ってはいてもれっきとした真空管受信機である。(笑)

                ☆ ☆ ☆

 FBな市販品が溢れているし、中古品の無線機でさえ紹介した回路よりもずっと高級だったりする。 受信することだけが最終目的なら購入してしまうのが一番手っ取り早い。 しかし、手作り受信機で自分だけのオリジナルな無線局を構成したいなら再び注目しても良いのかもしれない。 ダイヤルメカなど入手性に問題のある部分は近代的な技術でカバーしてしまえば、メインの部分に真空管を残したまま高性能で実用的な管球式通信型受信機を自作することは十分に可能である。 いろいろ構想を膨らませながらお昼のひと時の息抜きになったなら幸いである。de JA9TTT/1

(おわり)

2015年9月28日月曜日

【測定】Crystal Motional Parameters , Plus

測定:水晶の等価定数の比較測定
 【周波数シフト法による水晶定数測定
 水晶の等価回路:Lm、Cm、Rmよりなる直列共振器と直列に容量:C1を入れると共振周波数が変化する。各記号の意味などは前回のブログ(←リンク)を参照。

fo=1/(2*π*√(Lm*Cm))が、
CmがC'=Cm*C1/(Cm+C1)になることから、
fo'=1/(2*π*√(Lm*C'))と変化する。

 C1は既知であり、foもfo’も実測で求まるから、Cmが計算できることになる。 Cmの値を算出できたら、さらに直列共振周波数:foから計算することでLmを求めることができる。 なお、実際には電極間容量及び、ホルダ容量も影響するのでそれらの合計容量である:Chも実測によって求めておく。

C1が直列になった時の発振周波数をf1とし、C1をショートした時の発振周波数をfoとすれば、Cmは以下の計算式で求めることが出来る。

Cm=(2*(C1+Ch))*(f1-fo))/fo・・・・・(1)
なお、コンデンサ:C1、Ch、Cmの単位はファラド、周波数:fo、f1の単位はHzである。

また、Lmは、Cmとfoから計算できる。
Lm=1/((2*π*fo)^2*Cm)・・・・・・・(2)
Lmの単位はヘンリである。Cmはファラド、foはHzの単位で計算する。

 必要な測定器は周波数カウンタと数pFが精度良く測定できる容量計(Cメータあるいは、LCRメータなど)があれば良い。 周波数カウンタも測定値の安定さ・・・すなわち、基準がふらつかなければ十分であって絶対精度はそれほど必要としない。 少しウオームアップしてから使用すれば十分だ。 むしろ、1Hzの桁まで読み取れる測定分解能が必須である。 一般的な周波数カウンタであれば殆どのものが条件を満たすだろう。 従って、ごく普通の周波数カウンタと小容量が測れるCメータがあれば水晶定数を求めることができる。

 発振部はオリジナルのG3UURのものと同じである。 続くバッファ・アンプは単なるエミッタフォロワよりも、図の回路の方が良い。 少々感度の悪い周波数カウンタでも十分な信号を与えることが出来、測定が安定する。 発振用トランジスタ:Q1には2SC2668Yを使ったが、これは2SC1923Yが同等品だ。 2SC9452SC1815も使用可能である。hFEランクは何でも大丈夫である。 バッファ・アンプのトランジスタ:Q2は2SK544Eを使っている。これは、2SK241Yでも良く2SK439E(ピン配置に注意)でも良い。 9VのZennerダイオードで電源を安定化しているが、大元の電源に安定化電源を使用すれば省略可能だ。 回路図のスイッチ:SW1の部分は、実際にはスイッチではなくジャンパ・ピンの抜き差しで代用する。その方が無用のストレー容量が増えず好ましい。(次項以降の写真参照)

 【重要:C1の値は実測値を使うこと
 この例では、C1=22pFを使っている。 しかし、Cmの計算式でC1=22pFとすれば、誤差が大きくてダメである。

 かならず、C1を測定回路に実装した状態で実測する。 数回計測して、平均値を用いている。この例では、C1=25.75pFであった。

 もちろん、コンデンサの誤差やブレッドボードの分布容量が効いてくるので、22pFのコンデンサを使ったからと言って同じ値にはならないので、各自が実測しなくてはならない。 ひいてはCmやLmの精度にも多大な影響があるから入念な測定が求められる。

 ここでは、LCRメータ:DE-5000(←参考リンク)と専用の「SMDパーツ用プローブ」を組み合わせて使い、ショート・オープン校正を行なってから測定している。LCRメータの測定周波数は100kHzを選ぶと分解能が高くなる。 

foの測定
 最初はC1を短絡(ショート)した状態で発振させる。 そのときの周波数をfoとして記録する。

 ブレッドボードに作った測定回路は不安定ではないかと懸念するかもしれない。 もちろんこれから長く使おうと思うならプリント基板にハンダ付けで作ることをお奨めする。
その際は、測定するクリスタルを挿入するソケットにはスムースで接触の良い物を使うべきだ。 普通のICソケットでは、たくさんの抜き差しには耐えられずヘタってしまうだろう。 その点、ブレッドボードは抜き差しが容易であり、接触もまずまず安定しているので良い。 実際に作ってみると、発振周波数の不安定も見られないから、心配は要らないと思う。測定再現性もまずまずである。

 なお、このブレッドボードは底面にプリント基板を使ったGND板が貼付けてある。 GND板は回路のGNDラインと結んである。このあたりの配慮が安定測定のためのノウハウの一つだ。

 【f1の測定
 クリスタルにC1が直列に入った時の周波数を測定する。

 C1を短絡(ショート)していたピンを抜き去れば良い。 C1が直列に入ると、発振周波数の上昇が見られるだろう。

 なお、「発振周波数が安定しない」、「予定の周波数から大幅に外れている」、「周波数のふらつきが大きい」などは、測定している水晶発振子の不良が考えられる。 実際に、秋葉原で入手した水晶発振子では発振しない物や、発振はしても数値がばらついて不安定な物が見られた。 そのような水晶発振子は水晶発振器に使えないのはもちろんだが、よりシビアな性能が要求されるフィルタ用にはまったく使い物にならない。×印でも付けて除外しておこう。


 【12800kHzの測定例:VNAを使ったもの
 比較の基準には、ネットワーク・アナライザ(VNA)を使って測定した水晶定数を使用することにする。

 図は、12.8MHz・HC-49/U水晶発振子についてネットワーク・アナライザを使って-3dB法でLm、Cm、Rmを求めた結果である。 以下、いずれの測定でもネットワーク・アナライザを使った物を取りあえずの基準としている。

 いずれも平均値であるが、Lm=7.965(mH)、Cm=19.428(fF)である。

 【12800kHzの測定例;発振周波数変化法
 上記と同じ水晶発振子を、発振周波数変化法で測定してみた。 直列容量C1は25.75pFで計算している。

 実測から計算された平均値は:Lm=8.0709(mH)、Cm=19.174(fF)である。

 上記のVNAによる測定値を基準とすれば、周波数変化法で求めたLmは+1.33%であり、Cmは-1.31%の違いとなった。 それぞれの標準偏差を比較しても大きな違いが無いことがわかる。


 【9000kHzの測定例(1):VNAを使ったもの
 この水晶発振子は、aitendoで10個150円で売られているものだ。形状はHC-49/USである。 期間を置いて20個ずつ過去2回購入している。 まずは、最近購入した20個についてネットワーク・アナライザで測定した例を示しておく。

 いずれも平均値であるが、Lm=39.9492(mH)、Cm=7.8352(fF)であった。

 この水晶発振子は、周波数:foのバラツキはまずまず少ないものの、損失抵抗:Rmのバラツキが大きかった。 それに伴い、無負荷Q:Quの値も大きくバラついている。 σが186000もあるのは発振用としても支障がありそうだ。実際に、次項のように発振周波数法では発振できないものがあった。 非常に良い水晶も混じっているので、フィルタで使用するにはピックアップすべきだ。玉石混淆と言った水晶発振子である。

9000kHzの測定例(1);発振周波数変化法
 上記と同じ水晶発振子を、発振周波数変化法で測定してみた。 直列容量C1は再測定しても同じであったため、25.75pFで計算している。

 実測から計算された平均値は:Lm=40.299(mH)、Cm=7.767(fF)であった。

 同様にVNAによる測定結果を基準とすれば、発振周波数変化法によって求めた、Lmは+0.88%、Cmは-0.87%の違いである。


9000kHzの測定例(2):VNAを使ったもの
 上記と同じ9MHzの水晶発振子である。 購入したのも同じaitendoで、形状も同じHC-49/USである。 但し、購入時期が異なっており、数ヶ月間を置いている。 数ヶ月では在庫品が回転していない可能性もあるので、個体に刻印されていたロットを示すと思われる記号をしらべてみた。(左欄外に記載) 共通したロット番号もあったが、異なるものも含まれたので先の20個とは混ぜずに測定してみた。 もちろん大きな差が見られなければフィルタに使う際には混合してしまうつもりである。

 いずれも平均値であるが、Lm=40.477(mH)、Cm=7.735(fF)であった。

 こちらのグループもRmに大きなバラツキがあり、従って無負荷Q:Quも大きくバラついている。 σでみても163000であるから、上記のグループと似たようなものと言えそうだ。 直列共振周波数:foで比較しても平均値では僅か3Hzしか違わないので同じグループとして扱っても支障なさそうである。 いずれにしても、選別して使えば良いフィルタも可能だろう。

 【9000kHzの測定例(2);発振周波数変化法
 同じように、発振周波数変化法で測定してみた。 既に2例を見ているので、同じような結果が得られると推測できるが結果はどうであったろうか?

いずれも平均値であるが、Lm=40.930(mH)、Cm=7.651(fF)であった。

 同様にVNAによる測定結果を基準とすれば、発振周波数変化法によって求めた、Lmは+1.12%、Cmは-1.09%の違いである。 予想通り同じような結果になった。



測定法による水晶定数の違い
 以上、ネットワーク・アナライザを使って水晶定数を求める方法と、直列容量の有無による発振周波数変化から水晶定数を求める方法の比較を行なってみた。

 ネットアナによる方法は、直列共振周波数:foにおいてLmとCmが打ち消し合って、Rmが求められることを原理とする。Rmの値と測定治具における共振特性からLmの値を求めて行く方法だ。 一方、後者の直列に容量を付加する方法は、付加した容量による共振周波数の変化からCmの値を求める方法である。 このように、測定原理は異なっている。

 それぞれの方法で求めてみて、原理の異なる測定法から得られたLmとCmが2%以内の違いで求められることがわかった。 このことから、簡略な方法でありながら周波数変化法で求めたLmやCmも十分信頼できる精度が得られていると推測できる。 標準偏差の比較でも大きな違いは見られなかった。

 ここでは示さなかったが、3周波数法や、±45度法など他の方法と比較しても概ね1〜2%程度の違いしかないから、いずれの測定法でもまずまずの精度でLmやCmが求まることがわかった。 これは得られた数値に基づくフィルタ特性のシミュレーションや、製作したフィルタそのものの実測特性からも得られた数値の正しさが実証できていると思う。  わずか2%程度の違いではフィルタ設計の結果に何ら差異は認められない。従って目的に対して十分な測定精度である。

 もちろん、直列容量:C1の値を実測から精度良く求めるほか、個々の水晶発振子の並列容量:Chも実測で求めるなど相応の注意は必須である。 それでも自作好きのHAMならたいてい持っていそうな測定器・・・周波数カウンタとCメータだけでLmやCmが良い精度で求められることは嬉しい結果だ。

                  ☆ ☆ ☆

おまけ:G3UUR法によるRmの測定
 上記の比較検討は既に紹介したARRLの出版物:「QRP POWER」(←参考リンク)に囲み記事があった「G3UURによる水晶定数の求め方」に基づいている。 十分良い精度でモーショナル・インダクタンス:Lm、及びモーショナル・キャパシタンス:Cmが求められることがわかった。 

 しかし、残念ながら動的な損失抵抗;Rmを求めることが出来なかった。そのため、無負荷Q:Quの値も計算できない。Dishalのフィルタ設計ソフト(←参考リンク)を使う上でRmの値は必要としないが、RmやQuは水晶の良し悪しに関わるので気になる人も多いだろう。 ちなみに、Rmがわかれば、無負荷QはQu=ωo*Lm/Rmで計算することが出来る。ωo=2*π*foなのは言うまでもないだろう。

 Rmが求められない不都合に対応する解決法を見掛けたので要約して説明しておく。 これはG3UUR自身の記事であり、QRP-ARCI(QRP Amateur Radio Club International)の季刊誌、The QRP Quarterlyの2010年10月号に掲載されたものである。 なお、図の回路で発振とバッファ・アンプに使うトランジスタはオリジナルではBC108あるいはBC182となっている。いずれもfT=200MHzくらいの小信号用汎用品なので、2N3904や2SC1815のような代替品で大丈夫だ。ダイオードD1とD2は筆者はOA47と言うMullard製のゲルダイを使っているが、代替として1N60や1K60などのゲルマニウム点接触型を使えばよい。 またVR2は無くても良いようである。コンデンサの単位;1nFと言うのは1000pF(=0.001μF)のことである。

以下、G3UURの発振回路でRmを求める手順を箇条書きに纏めてみた。 測定は1個の水晶発振子ではなく、複数個のグループについて行なうことを前提としている。

(1)準備:
検波ダイオードの先にあるMとGと言う端子間にデジタル・マルチ・メータ:DMMを接続して電圧が読めるようにしておく。また、O/P端子とGの間に周波数カウンタを接続する。

(2)foとVoscの測定:
水晶発振子を挿入する。スイッチS1とS2を閉じて発振周波数:foの測定を行なう。 そのときに、foと共にDMMに表示される電圧Vosc;(発振電圧の相対値)を記録しておく。Voscの測定で周波数カウンタ接続の影響が見られるなら一時的に接続を外すこと。

(3)f1の測定:
スイッチS1を開き、S2を閉じたままで発振周波数:f1を測定する。
測定したfo、f1からLmとCmを算出しておく。(これは、上で行なった方法と同じ)

(4)水晶ペアの作成:
測定した水晶発振子のグループから、DMMで読み取った発振電圧:Voscが近くて(5%以内)、なおかつ周波数;foがなるべく近い(100Hz以内)ものを2つ選ぶ。 もしもそのグループ内でDMMで読み取った電圧:Voscが大きくばらついているようなら、Vosc電圧が大きいもの2個のペアと、小さいもの2個のペアの2種類を作るのが良い。

(5)測定:
作ったをペアをハンダ付けして並列にしたものを発振回路に入れる。スイッチ1、2ともに閉じた状態でDMMの電圧;Voscを読み取る。

水晶が単独だった時よりもDMMの電圧;Voscは大きくなるだろう。

(6)発振電圧の調整;
S2を開いて、VR1=100Ωを加減して水晶発振子が単独だった時の発振電圧:Voscと同じになるように調整する。 ペアにした2個で個々のVosc電圧が異なるなら平均値を用いる。

(7)Rxの測定:
水晶発振子を取り除いてから、TP1とTP2の間にDMMを抵抗計に切り替えて接続し、R1(100Ωの可変抵抗器)の抵抗値;Rxを読み取る。

その抵抗値:Rxの2倍がRmの値である。(ペアにした2個のRmの平均値)

発振電圧が大きいペアと、小さいペアの2種類について上記の測定を行なえば、そのロットのRmについて、大きなものと小さながわかることになる。他はその間にあるだろう。 全体の平均値はその中間あたりだろうか? 誤差±10%くらいの測定精度があるそうだが、これは十分設計に役立つデータになる。

☆上記の方法以外にも、例えばARRL発行のハンドブック:2010年版 ARRL Handbook のCrystal Filter section (11.6)にも簡易ながらもう少し良い精度で求める方法が掲載されている。上記とはまた異なった方法で面白い。お持ちなら参照を。 以上、【おまけ】の項は資料に基づいた解説である。理屈の上では旨く行きそうに思うが、やってみたわけではないのであとは各自で実験されたい。

                  ☆ ☆ ☆

【エピローグ】
 誰しも良い測定器や良い環境があればと望むものだ。 もちろん、それが可能ならベストに違いないが、時として本末転倒になってしまうことがある。 FBなメーカー製Rigが何台も買えるほど投資した挙げ句、出来上がったモノと言えばまったくの初心者レベルだった・・・では笑話しにしかならない。 ならばなるべく少ない出費で楽しむのが賢明と言うものだ。それに何でも高級な方法が格段に優れるわけでもない。(以上、自戒を込めて・笑)

 しかし、簡単な方法には不安があるのも常である。何となく高級な道具を使った方が良さげに見えるものだ。 だから誰かが比較して有効性の検証をしておけば簡単な方法も安心できるだろう。これで簡易な方法も自信を持ってお奨めできると思う。de JA9TTT/1

(おわり)

追記
比較用にデータ付きクリスタルを無償頒布する・・・と言う話しは一旦ペンディングにさせてもらう。周波数変化法で良い精度の測定ができることがわかったので、比較用のクリスタルは必要ないだろうと思う。それに希望されるお方も少ないようだ。(2015.09.28)

2015年9月13日日曜日

【部品】Crystal Motional Parameters

【部品:水晶の等価定数と評価】
 「はじめに水晶定数ありき」である。新しいラダー型クリスタル・フィルタの設計(←リンク)には水晶の等価定数を知る必要がある。そして設計ソフトに与える定数の精度でフィルタ設計が決まってしまう。 水晶振動子(発振子、共振子)は水晶板の機械振動であるが、外部から電気的な特性を眺めるとLC共振器と等価な「回路」として見ることができる。

 等価回路は、LCRが直列になった「直列共振回路」とそれに並列に容量Chが入った回路としてみることができる。 LCRが直列になった部分が水晶板が機械振動しているそのものであり、このLCRをモーショナル(動的)定数と言う。 それぞれ添字を付けて、Lm、Cm、Rmと言う。並列に入ったコンデンサは、主に水晶板を挟む電極板によるキャパシタンスと、水晶板を保持し保護するための外周器によるストレー容量である。ホルダー(容器:Holder)容量の意味で、添字としてhを付けてChと呼ばれることが多いようだ。或はパラレルの意味で、Cpとする例も良く見掛ける。

 このBlogの読者であればラダー型クリスタル・フィルタの話しの中で、何度となく登場している記号なので周知のことと思う。纏める意味であらためて書いておいた。 常識はずれの添字を付けてしまうと話しが混乱し易くなるので、なるべく従った方が良いと思っている。

参考:International Electrotechnical Commission Standard : IEC STDによれば、水晶振動子の等価モーショナル定数はC1、L1、R1とし、並列容量をC0としている。また、直列共振周波数(resonance frequency)をfr、並列共振周波数を反共振周波数(anti-resonance)と呼びfaで示すのを標準としている。論文など執筆のお方はこれに従うのが良いだろう。このBlogも従った方が良いのかもしれないが、全部の書き換えは容易でないのでそのままで行くことにする。w

                    ☆

 以下は自家用メモとして纏めておいたものである。 多少は参考になる可能性もあるが、個々の数値そのものはあまり役には立たないと思ってもらった方が良い。あえて役立つとすれば、一般に手に入る可能性がある水晶の良し悪しが統計的に判断できることくらいだろう。 もしも、この先もご覧ならそのような意味で眺めて頂ければと思う。

(参考)だれでも「標準水晶」のような「水晶定数がわかっている物」が容易に手に入れば良いのだが難しいだろう。そう言う物があれば、自身の測定の確かさの検証がきるのだが・・・。 もし私の測定結果で良ければ「チェック用の水晶」として・・・もちろん基準などと言うつもりはなくて単なる目安だが・・・頒布(無償)も考えている。 ご興味の有無でもコメントしてもらえたらと思っている。



 【aitendoの15円水晶:8MHz
 秋葉原のaitendoで現在でも販売されている8MHzの水晶発振子である。 通販でも買い求めることが出来る。 10個単位で売られており、2015年7月ころ150円で購入して来たもの。 2袋購入し、20個について水晶定数を求めた。 安物水晶の典型と言えそうだが、お手軽なのは有難い。
 【aitendo 8MHz水晶の特性一覧
 直列共振周波数:foのバラツキは標準偏差でみて、75Hzほどである。 悪くない数字だと思う。
 無負荷Qの価;Quを水晶振動子の良さと考えると、平均で128,000くらいあるので、悪くない数字だ。 但し、Quのバラツキはかなり大きい。 標準偏差で24,000もあるので、Quが低い物をフィルタに使うと思うような特性が出ないかもしれない。 従って、良いラダー型フィルタを作るためには、必ず実測してQuの小さい物を除く必要があるだろう。 そのほか、ロットの混合が原因と見られるLmのばらつきも見られるので、Lmをなるべく揃えると言った選別も行なうべきだ。 それでも、20個も購入すれば、特性良好なSSB用フィルタが作れるのは間違いないようだ。



 【NDK製NTSCクロマ発振用;3579.545kHz
 HC-6/Uと同じサイズで溶接で組立られたタイプである。HC-48/Uと言う形状らしい。 リード線も細くて長いハンダ付けタイプである。 3579.545kHzと言うのは、TVがアナログだった時代のカラー復調用サブキャリヤの周波数である。

 NTSC方式なら、どんなカラーTVにも必ず一つは入っていたものだ。同様にVHSやβマックス方式のVTRでも使われていた。(4倍の14.318MHzを使う例も多い)
 この水晶発振子はずいぶん前にIさんに頂いた物だったと思う。 大きくて使いにくいのでやや持て余し気味であったが、実測してみたらなかなか良い物だった。 Quが大きいのだ。

 【NDK 3549.545kHz水晶の特性一覧
 他に使った記憶は無いので、全部で14個頂いたようだ。 但し、測定していて2個は不良品だった。 1個は電極間の絶縁抵抗が低下していた。 もう1個は水晶板がケースに接触しているらしく機械的損失:Rmが異常に大きかった。 そのため、これらの2個は除外して表に纏めておいた。

 この水晶発振子の特徴は無負荷Q:Quが高いことにある。 平均で20万を超えており、低いものを除去すれば平均25万くらいになるので、かなり良い特性のフィルタが作れる。但しSSB用のような帯域幅の広いフィルタでは、中心周波数から見た上下の非対称性が目立つため不向きではないかと思われる。対策としてfpを移動させる方法で対称化を図る方法もありそうに思う。 CW用の狭帯域フィルタには最適そうだ。高いQuを必要とする100〜250Hz幅くらいのTransitional gaussian to 6dB型で設計してみたいと思っている。良い音のCW受信機になるだろう。



 【Toyocom製ボーレート用:11059.2kHz
 ボーレート・ジェネレータ用のクリスタルであろう。コンピュータ時代らしい周波数の水晶発振子である。 同一ロットで無開封の袋入りが非常に安価に売られていたので纏めて購入したものである。
 日本のメーカー名が入っているので、そこそこ良好ではないかと思って購入した覚えがある。 たしかに、中華クリスタルのように100個に3個も不良が混じっていると言うようなことは無かった。

Toyocom 11059.2kHz水晶の特性一覧
 流石に日本メーカの水晶発振子と言いたい所だが、直列共振周波数のバラツキは思ったよりも大きかった。 8MHzの水晶よりもバラツキの絶対値は大きくなるのは当然だが、それを考慮しても大きいようだ。

 ただ、無負荷Q:Quの価はバラツキが少なかった。 残念なのは、そのQuの平均値が小さいことにある。 平均で10万少々と言うのは、発振用には支障ないがフィルタ用としては少々物足りない。  無損失の水晶振動子を前提としたDishalの設計ツールでは現実との乖離が大ききなる傾向が出そうだ。 なるべく、Quが大きいものを選別して使用すると幾らかでも有利だろう。



NDK製時計用水晶:4194.304kHz
 HC-49/U型のこの水晶発振子は2^22Hzの水晶である。22段のバイナリ・カウンタ(2進カウンタ)で分周すれば1Hzが得られるので、おそらく置き時計などの用途に使っていたのであろう。

 周波数はやや低めだが、SSB用フィルタは十分可能だ。 まだ評価の途中なのであるが、無負荷Q:Quは20万近くありそうなので有望だと思っている。 HC-49/USよりも水晶板が大きいのも有利な筈で、あとはバラツキが少なければフィルタ用として最適だろう。 以前はたくさん流通していたので持っている人は多いと思うが?

一例であるが:
fo=4193.174kHz
Rm=16.7Ω
Lm=125.5mH
Cm=11.48fF
Qu=198,000



朝日電波製12.8MHz:その1
 12.8MHz=2^7×100kHzの汎用水晶発振子と思われる。 最近はより小型の20MHzあたりが標準的な汎用水晶発振子のようだが、以前は12.8MHzが多かった。
 そのまま発振回路に使われるケースが殆どだと思うが、TCXOに組み込まれたものもあるだろう。但し、TCXO用と一般発振用は温度特性の決め方には違いがあると思う。 この水晶発振子がどちらなのかはわからない。 次項の12.8MHzの方を先に評価したので、こちらは後回しになっている。一応、概略の価を書いておくに留める。 形状はHC-49/Uを一回り小さくしたものである。

fo=12.797744MHz
Rm=12.2Ω
Lm=19.4mH
Cm=7.97fF
Qu=128,000

 なお、念のために書いておくがfFというのは、フェムト・ファラドのことである。 フェムトとは10^-15で、1ピコ(p)は1^-12であるから、1fFは0.001pFのことである。 mHは1/1000ヘンリーなのは言うまでもない。Quは単位無しの無名数である。



朝日電波製12.8MHz:その2
 同じ12.8MHzの汎用水晶発振子だが、ユーザー名が印刷された専用品である。 形状はHC-49/Uのようだが、何となくケースに厚みがあるように感じる。すこし違うのかもしれない。

 数年前であるが、オークションに大量に登場したことがあって、数名のお方と一緒に分けて頂いたことがあった。その後もオークションに登場しているそうで、これは別途落札したものだそうだ。 前から有った手持ちと比較したら、ロット番号が違っているようである。 その他は同じようだ。 ICOMと書いてあるが、無線機でおなじみのICOMなのかどうかは不明だ。どんな場所に使っていたのだろうか? また、なぜ大量にオークションに登場するのだろうか? 朝日電波と言う会社は既に存在しない(?)ようなので、整理されたとき流出したのだろうか?

ASAHI 12.8MHz水晶の特性一覧
 偶々なのかもしれないが、無負荷Q:Quが高くて、周波数:foのバラツキも小さいのが特徴だ。 Quは平均で15万を超える。標準偏差も1万以下なので良く揃っていると思って良いだろう。 もちろん、選別すれば安心だ。 次項に示した表は選別の一例を示している。


ASAHI 12.8MHz水晶の選別例
 8素子のラダー型フィルタを目的に選別してみた。 まずは、Quの大きさで並び替えを行なった。 その後、周波数順に並び替えを行なったあとで、周波数差が一番小さい8個の組を選んでいる。 このように並べ替えた物を使って設計することになる。

 これらの一覧表はMS-Excelで作成しているので並べ替えはお手のものである。 もちろん、水晶定数も必要項目だけをインプットすればあとは自動的に求まる。平均値や標準偏差の計算も同様である。たくさん計算しなくてはならないから、いちいち電卓をたたいていたのでは日が暮れてしまう。(笑)

 Dishalの設計ソフトには平均値を入れてやれば良い。 この水晶はQuが大きいので肩部分のダレも少なくて良いフィルタになるだろう。 どんな物が作れるのか、気になるお方は表の数値を設計ソフトにインプットして遊んでみてはいかが?



【水晶定数の測定について
 水晶定数の測定は幾つかの方法で試している。 結論から言うと、どの方法で測定しても大差はないようである。 写真では、ネットアナを使っている様子だ。 おなじネットアナを使う方法でも、-3dB法と±45度法がある。スペアナ+TGでやるなら-3dB法と言うことになる。

 さらに、まったく別の方法として発振させ直列容量の有無による周波数シフト量から求める方法もある。 まだ他にも方法があって、同じ水晶発振子についてそれぞれに基づき測定し計算してみた。 その結果、測定方法の間でせいぜい1〜2%くらいの違いしか見られずかなり良く一致した。

 そのような結果から、特別高級な測定器を用いなくても十分良い精度で水晶定数が得られることが確認できた。 従って、もっとも手軽な発振周波数のシフト量を測定する方法・・・G3UURの方法・・・がアマチュア向きである。 安価な手段で実現できなくてはフィルタを製作する意味も薄れるので、これはたいへん良い結果だ。

 注意すべきは、直列に挿入する容量値を発振回路に実装した状態で実測から求め、その数字に基づいて計算することである。例えば30pFのコンデンサを使ったからと言って、30pFで計算するのではなく回路に入れた状態で実測した数値を使用する。測定にはLCRメータDE-5000(←リンク)とSMD部品用測定プローブを使うと容易だった。
 それさえ行なえば良い精度で水晶定数の算出ができるだろう。 周波数シフト法ではRmが求められないが、Dishalのソフトを使った設計ではRmの数値は必要としないので殆どの製作者にとって欠点にはならないだろう。 もちろん、それ以上を目指すならW1FBの測定治具などを検討すべきだが・・・。 G3UURの方法についての比較と考察などは別のBlog(←リンク)で扱っている。

                    ☆

 自家用情報なので、殆どの人は役立たなかっただろう。 それに、外観形状を見ただけでは良否の判定は出来ないから写真と似ていると言って、類似の性能が保証されるものではない。フィルタへの適否は測定によらねば判断できないのだ。

 参考までだが、SSB用フィルタを作る際の判断はQu>100,000と考えている。Qu>150,000ならなかなか良い水晶だ。もちろんQu<100,000でもSSBフィルタは作れるが設計通りに行かないのはやむを得ないだろう。

 発振用に作られた水晶発振子をクリスタル・フィルタ用として使うのはリスクがあるのではないかと思う人もありそうだ。 しかし実測値で示したように、良く吟味すれば非常に良い水晶振動子が安価に手に入るのだから、クリスタル・フィルタはやっぱり「自作するもの」と言えるのではないだろうか。de JA9TTT/1

(おわり)