オーディオ系Blogじゃないので、30年モノの古チューナをただ調整しただけ(前回)では許してもらえそうにありません。「Experimentationが足りない!」と言われそうですからさっそく改造してみることにします。(笑)
過去のAMラジオ記事(特にHi-Fiを標榜するもの)をみると、ずいぶん広いIF帯域で作る例が見られました。 FMの本放送開始以前、AM放送華やかなりし頃の記事です。(当然のように管球式です・笑) 可変帯域型IFTを使い「狭・中・広」に切り替えます。 それぞれ通過帯域幅は6kHz/10kHz/20kHz程度にとっていました。 ですから大雑把に言えば復調後の音声再生域は半分の3kHz/5kHz/10kHzになります。そのまま再生域の高音側と考えても良いでしょう。
CT-Z1でそのようにするには「フィルタ切替式」になって、だいぶ大掛かりになってしまいます。 まずはIF広帯域化の実用性を見極める実験ですから通過帯域幅(-6dB)=15kHzのフィルタで試しました。 同じフィルタは過去にAM Radioチップ:TCA440のテストでも好結果を得ているものです。
付いていた簡易型セラミック・フィルタは恐らく2エレ程度でしょう。 それでもIFT単独より格段にスカート特性は良くなっているはずです。 いくら広帯域にすべしとは言っても、IFTだけ、しかも1つだけしか使わないのでは選択度がブロード過ぎて実用になりません。(NHK第1=594kHzと第2=693kHzが同時に聞けてしまうでしょう)
付いていたセラフィルはインピーダンス・マッチング・トランス内蔵型でミキサーのコレクタ負荷回路になっていました。 しかも廉価版のCT-Z1はCT-1010よりも簡略化されていて、自励コンバータ回路になっており局発コイルのフィードバック巻線も同じ経路になっています。 従ってトランスを取ってしまって抵抗に置き換える・・・と言うような強引な方法はとれません。455kHzのIFTは残しておく必要があるのです。
白いコアがその代替のIFTです。手持ちから7mm角のトランジスタ用IFTを使いました。 使用したIFTは1次側タップの位置からミキサーに対する負荷インピーダンスが高くなりゲインはアップしそうでした。 いま使うのはエレメント数の多いセラミック・フィルタなので通過損失が多少増えるから多少のゲインアップは丁度良いでしょう。
青い箱形の物は-6dB帯域幅が±7.5 kHz以上と言うセラミック・フィルタです。 6エレで通過損失はやや大きいのですが、その分スカート特性も良好です。 -60dB帯域幅は±15kHz以下ですからシェープ・ファクタは2以下と言う事になります。 付いていたセラフィルより遥かに良い特性です。
これは京セラ製ですが既に廃止品種のようでした。村田製作所のセカンドソースのようですから類似品は村田のカタログから探すのも良いでしょう。 本来の用途はページャーのようなNBFM用でしょう。 入出力インピーダンスは2kΩです。残念ながらこうした広い帯域幅のフィルタは「世羅多フィルタ」で作るには適しません。世羅多フィルタは狭帯域の方に向いているからです。帯域の広いフィルタは市販品を購入することになります。
基板裏面の広いアースパターンの部分に両面粘着テープで固定してみました。 右の青いセラミック・コンデンサは必ずしも必要としません。インピーダンス整合の検討を行った際、補正抵抗のDCカット用に付けた物でです。 色々調整してみましたが顕著な変化が見られないので補正抵抗は不要そうでした。従ってこのコンデンサもなくても良いです。 左上のコンデンサは臨時に付けた調整・測定用です。右下の細い線も調整・測定用なので後で除去しました。
交換してIF部の調整・・・具体的にはIFTの調整をします。 通過帯域がなるべく平坦になるよう調整するのです。 単峰特性でないフィルタの調整には出来たら「スイープ・ジェネレータ+オシロスコープ」が欲しい所で、SSG+テスタでは難しいかもしれません。(ここではスペアナ+TGを使用しました) 予定通りIF帯域幅は広くなっていますが、オーバーオールで見ると低周波部の周波数特性にうねりがあるようでした。このあと現物から回路を追って回路定数を検討するつもりなので詳細特性はその後になります。
まだ暫定的ですが聴いた感じはかなりの変化があります。 「NHK深夜ラジオ便」は深夜01:00を過ぎるとFMでも同じプログラムが流れます。 IFの帯域幅を広くしたのでAMの再生音域もずっと豊かになり、FMと比較してもそれほど遜色ない感じになっっています。ほぼ類似の音色になっているように思います。元々悪くはなかったのですが、もはやチープな『ラジオチックな音』ではありません。
実のところFMを比較として聞いてしまうとそのS/Nの良さに魅了されてしまいます。(笑) スピーチでは気になりませんが、アナウンスと楽曲の間にある無音部のノイズが気になるのです。FMはほぼ無音になるのですが・・・。 もちろんヘッドフォンで微細に聞いているからでしょう。 AMでもFMでも原稿をさわる乾いたノイズが聞こえ、スタジオの臨場感も感じられるから良い線にあるのは間違いありません。 S/Nがあまり気にならぬ程度の「AMラジオ」で楽しむのが程良いと言うことなのでしょうか? それでも簡単な改造でAMチューナもかなり良い線に行きます。 交換したフィルタはずっと性能が良いから夜間でも混信に悩まされたりしません。
その昔、ナマ番組のタイムキーピングには手元に置いた(機械式の)ストップウオッチを使っていたようでした。まだデジタル時計が普及する以前の話しです。 FMナマ番組でヘッドフォンを掛けて耳を凝らすと「運針音」が聞こえることがありました。そのS/Nの良さには舌を巻いたものです。de JA9TTT/1
(おわり)
(Bloggerの新仕様対応済み。2017.04.01)
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4 件のコメント:
おはようございます。
AORのAR5000はすべての電波形式でIFフィルターの帯域を0.5KHzから220KHzまで数段階に設定できますが、AFのLPFを12KHzに設定したときにIF帯域が30KHz以上になると高域のノイズが耳に付きます。
受信機なので専用チューナーのような音を求めるのは無理があるのでしょうがFMの音質の良さがわかりますね。
JE6LVE 高橋さん、こんにちは。
さっそくのコメント有難うございます。
> 帯域を0.5KHzから220KHzまで数段階に・・・
Hi-Fiかどうかは別にしても、あらゆる電波形式のラジオ放送に対応できるようになっているようで便利な受信機ですね。
> FMの音質の良さがわかりますね。
今の技術で圧縮とか行なえば別ですが、そのまま送るなら帯域幅が広い電波ほど有利なのは仕方が無いですね。デジタルで圧縮形式ですが短波帯のデジタルラジオも面白そうだと思っています。
中波AM放送には「音を求める」よりも手軽さや防災用途を考えた方が合理的なのでしょうね。他の方式と比べ受信機(ラジオ)の自作も手軽ですし。(笑)
JR2ATU 澤村です。
やっぱりやっていただきましたね。そうこなくちゃ。(笑)
次はそのFMAM兼用のICをやめて検波直後から分岐して専用のラインアンプでもつけますか。
当方は久しぶりに天気がよさそうなのでジャンクで入手した受信機の塗装をやるつまりです。
JR2ATU 澤村さん、こんにちは。
コメント有難うございます。
> 検波直後から分岐して専用のラインアンプでも・・
それが一番簡単で良いと思われます。 現在の回路構成ではAMの信号レベルは高過ぎるようで、高抵抗を使って減衰させています。この点も不利なので独立したアンプ系にしたら良さそうです。ただ、それだけのことをする価値があるか・・・全体的に見て微妙な所です、(笑)
> ジャンクで入手した受信機の塗装をやるつまり・・・
晴天で温度も程よい今頃は塗装に向いていますね。 旨く行きますように。 再塗装すると見違えるようになりますね。
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