【中国から安価なDDSモジュール】
あきらかに中国製と思われるDDSモジュールが秋葉原の中華系のお店に登場している。それ以来、中国通販のサイトを時々ウオッチしていた。面白そうなグッズが様々に登場しているからだ。もっと安く買うには中国から直接調達だ!!(笑)
写真はそうして見つけた一つだ。 まずはお値段を見て欲しい。USドルで$36.05-のDDSモジュールだ。約3000円では少しも安く無いではないかと思うだろう。しかし更に良く見て欲しい。1ユニットは5個単位なのである。要するに5個で$36.05-なのだ。日本へ送料は$2.13-となっているので、合計$38.18になる。為替レートを約80円として、約3,054円である。単価は610円と言うことになる。
秋月のDDS基板を6,400円で(もちろん1枚で)買っていたころを思えばまさしく価格破壊だ。少々リスキーでもこれを見過ごすのは惜しい。さっそく友人を誘って4ユニット輸入してみた。しかも最初に4ユニット注文した当時はキャンペーン中で送料も無料だった。
【中国から届く】
うっかり住所をキーインミスしていたので危うく荷物は行方知れず=返送されそうになった。幸いEMSをトラッキングしていたので無事に入手できた。それ以外トラブルはなかった。カード支払いも最近の確認方式を採用しているのは安心できる。注文から到着までおおよそ10日であった。
梱包はお世辞にも上手とは言えず、未だに商品と言う意識は薄いように思われた。但し荷痛みしないような配慮は十分感じられたので厳しいことを言うのはやめておこう。Made in Japanだって昔はこんなものだった筈だ。ただ、こうした電子回路が剥き出しの基板で静電気対策に配慮が無いのは気になるところなのだが・・・。
届いた20枚の動作確認をしてみた。すべて問題なかったので、さっそく共同購入の仲間に分配して安価なDDSモジュールの入手作戦は終了した。 各自それぞれに評価してもらったところ「これは良さそう」との好評価で、その後6ユニット(30枚)の追加発注を行なった。そちらも既に無事到着している。他のお方も同じサイトで買物しているが中国からの通販ではあってもトラブルにはなっていない。もちろん、これからを保証するものではないのだが・・・。(利用するお方は自己責任で)
【DDSコントロールは順調だったのだが】
テストプログラムではOKだったので、次にDDSコントロールのプログラム開発を進めていた。出力信号は周波数精度と安定度くらいしか見ていなかった。DDS-VFOが目的なので、周波数可変の滑らかさなど機能的なところをトランシーバでモニタしながら進めていた。
前にも書いたように同じDDSのAD9834用プログラムで十分検討済みであった。従って特に問題も無くスムースな動作確認ができた。 機能の変更はわずかにRITの可変範囲を広げた程度である。DDS-ICへのデータ転送部分はシーケンスが違うのでAD9834用とは異なっている。しかしそれは内部的な処理であって、表から見た操作には現れてこない。実際、DDSチップは違っても使用感に違いは感じられない。機能を統一したのだから当たり前だろう。
プログラムの開発もひと段落してきたところでふと気が付いた。信号をウオッチしていてどうもトーンの濁りを感じることがあるのだ。最初は他の信号との干渉とか外来ノイズの影響かもしれないと思ったのだが・・・
【信号純度が?!】
7MHz近辺と10MHzでDDS出力の精度・安定度を見ていた。 信号の「綺麗さ」が気になって来たのでスプリアスを見ることにした。
まずは7MHzで見たのだが少々気にはなるがそれほどでも無いように思えた。発生周波数が高くなるほど近傍雑音は不利になるから15MHzにアップして様子を見ることにした。
写真はその状況だ。主信号に対して-70dBより大きなスプリアスは無いので、極端に酷いわけではない。しかし明らかな「お子様連れ」の信号である。しかも子だくさんだ!(笑) 他の周波数でも見たが、どうも旨くないようだった。 AD9850と言えば二世代前で旧式の感もあるDDS-ICなのでこんな物かと思いつつも、それにしても良くないなあ・・・と言うのが率直な感想であった。
【基(もと)が悪けりゃダメなはず】
基準のクロック発振器は見たところ普通の缶入りオシレータのようだ。まさか以前評価したプログラマブル・クリスタル・オシレータでもあるまい。そうした先入観があった。
一応念のためと言うことでクロック発振器そのもののスペクトラムを見たらご覧のような有様だった。 観測中心周波数は125MHzでスパンは5MHzに取っている。 主信号の上下に広がる裾野はノイズサイドバンドだ。ジッターも伴っているように見える。
流石に基準となるクロックがコレでは綺麗な信号が出てこないのも道理であろう。 スペクトラムを仔細に見ると(できの良くない)PLLで125MHzを作っているらしいことがわかる。(以前扱ったプログラマブル・クロック・オシレータとは異なるPLL方式だと思う) PLLの比較周波数は100kHzあたりのようだ。リファレンス・フィードスルーも見える。またループフィルタのカットオフもかなり高いようだ。恐らく確実なロック(だけ)を優先したPLLであって信号純度は気にしていないのだろう。
この程度のクロック発振器でも支障ない用途もあると思うがDDSの基準にはいただけない。高次オーバートーン発振器や最新の水晶発振子製造技術を使ったVHF帯クロック発振器はコスト的に使えないのであろう。そこで安価に出回っていたPLL式発振器に頼ったのではないだろうか。ヤスモノの悲哀を感じてしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【やっぱりこれは中華品質だ】
今や生活の隅々にまで中国製品が氾濫している。こうしてDDSモジュールさえも中国に頼ろうとする現実に愕然とする思いだ。
しかし、流石に中華品質の安物モジュールだった。これでは用途が限定されてしまう。特注水晶の代替として有望な手段を提供してくれると大いに期待していただけにがっかりな結果だ。
とても無線のオンエアには使えない。送信機に使えば「お子様連れ」でローカルさんの顰蹙(ひんしゅく)を買うに決まっている。受信機の局発にしても妙なスプリアス受信やトーン&音声に濁りを感じてしまいそうだ。 アンテナ・ブリッジのような簡易測定器の信号源くらいしか適当な用途は思い浮かばない。
結局のところ「ヤスモノ買いの・・・・」になってしまった。
う〜ん、残念だなあ。 de JA9TTT/1
(おしまい)
10 件のコメント:
michi/ja8czxです。
こんにちは、面白いですねー 続編期待!
おはようございます。
結果が芳しくなかったようで残念でした。ただ、加藤さんのことですから問題をうまく解決されるのだろうと思います。いくらなんでもこの価格では部品代にもならないでしょうから、作ったのはいいがどこからも使ってもらえず、やむなく投げ売りされているのではないかと思います。
ご紹介のサイトを運営している会社は以前から知っていましたが、B to B ばかりだと思っていたら B to C のビジネスもやり始めたようですね。
最近の中国はDDSのみならず、無線などの分野にも進出してきているようで、よほどの売り文句でもなければアマチュア相手のモノづくりビジネスもやりづらくなったのではないかと思います。その一方で、中国のへの依存度が以前にもまして高くなっているのは確かです。
電子部品の製造拠点としてもそうですが、身近な例ではプリント基板のカスタム製造がその最たるものでしょう。製造上の制約はありますが、それさえ容認できれば超小ロットでも(それ以前に比べれば)タダ同然の価格で製造できるのですから隔世の感があります。
そのおかげで受益者側の小ロット生産者は(売り先の開拓はともかく)かなり助かっているわけですが、もはや「価格破壊」の域を超えているので、中国を除いた国内外のプリント基板製造業者には相当の脅威に違いありません。
ただ、流通を含めた品質はまだまだのようです。1週間前に香港から発送されたはずのプリント基板は今なお行方が追跡できず、ロストしたのではないかと不安になっています。郵政公社でもこんな具合です。
JA8CZX 矢北さん、こんばんは。
さっそくのコメント有難うございます。
> 続編期待!
どうぞお楽しみに!
JG6DFK 児玉さん、こんばんは。
コメント有難うございます。
> 使ってもらえず、やむなく投げ売りされているのでは・・
そうかと思ったのですが、2回目の注文では予定の納期に間に合わないとのことで、数日待って下さいと言う連絡がありました。 安価なこともあって、他からも注文が入っている模様ですね。 今後もこの安値で継続できるのかは不明ですが・・・。(笑)
> B to C のビジネスもやり始めたようですね。
サイトを見ますと日用雑貨を中心に個人向け通販に力を入れている印象を受けました。
> 相当の脅威に違いありません。
中国も人件費の上昇が続いているのでいつまで優位を保てるかは未知ですが、今のところは脅威ですね。
> ロストしたのではないかと不安になっています。
EMSのトラッキングは、日本国内に入ってからでないと旨く行かないようです。 中華圏は旧正月もあって遅れているのでしょう。 そのうち届くと思いますよ。
加藤先輩、ご無沙汰しております。本年最初の海外出張で来週からラ王じゃなくてラオスというとこに1ヶ月ほど行ってきます。さすがにR390とかはないと思いますけど。10年ほど前に行ったことがありますが、電化率30%程度で、都市部を離れると雨水で風呂に入り、夜はまっくろけで星がこんなにあったのかとうなとこでした。今はどんなになったのか一寸楽しみですけど。DDSとはまったく関係のない個人的なネタで申し訳ありません。
加藤さん、こんばんは。
私には缶入りの水晶は『大丈夫!』と勝手な思い込みがありました。
缶入りでもPLL式の発振器が有るのですね。
勉強になりました。(笑)
続編を楽しみにしております。
開缶してループフィルタの定数を変更するのでしょうか?
JA9MCH 和田さん、こんばんは。 ご無沙汰でした。
ラオスですか! アジアの秘境の一つとも言われますよねえ。(笑) 一度は行ってみたい気もしますが、観光じゃなくて仕事とあってはご苦労も多いと思います。 どうぞ健康に十分気をつけてご無事でお帰りを。
JR8LJS/1 豊川さん、こんばんは。
コメント有難うございます。
> 缶入りの水晶は『大丈夫!』と勝手な思い込みが・・
私もそう思っていたのですが、この無名の発振器にはみごと裏切られましたね。(笑)
> 開缶してループフィルタの定数を変更・・・
それも考えたのですが、中身はクロック逓倍専用のICではないかと思います。 差し上げますので改良にチャレンジしませんか?(笑)
こんばんは。
まさかこの形状でPLLとはやられましたね(笑)
しかし600円は安いですから何とか活用したいですね
JE6LVE/3 高橋さん、おはようございます。
コメント有難うございます。
> この形状でPLLとはやられましたね(笑)
まったくです。 無名の品なので何となく怪しいオシレーターだとは感じたのですが、まさかPLLとは。(笑)
>何とか活用したいですね
纏めて買いましたから、何とかする必要がありますね。捨ててしまうのではチープな中国製とは言え勿体ないです。hi hi
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