【年末はここまでで】
2017年も明けて、もう10日以上が過ぎてしまいました。そろそろお正月気分も抜けて何時もの毎日が帰ってきました。
年末はいつもと違う行事も多く、じっくり落ち着いて何かに取り組むことも出来ません。 何となく気ぜわしくて暮れに手がけたものは途中まででオシマイになりました。 見ていた回路図がわかり難くて手が進まなくなったことも停滞の原因です。
12月始めにはDTL-ICを使ったキーヤー(=エレキー)のリベンジも果たせたし、古い古いロジックICを蘇らせることもできました。 私はキーヤー・マニアではないのですが、前々から気になっていたテストを進めて行き、残すテーマは僅かになってきました。
同じく気になっていたキーヤーの一つにOP-Ampを使ったものがあります。 JA-CQ誌で見掛けたはずです。 ロジックICではない所に面白みを感じたのでしょう、妙に印象に残りました。 今回はアナログICを使う珍しいキーヤーを扱うことにします。
☆ 写真はブレッドボードと、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れ、それとジャンパー線セットです。 写真の他にフレキシブル・ワイヤのジャンパー線セットがあって、効率的なブレッドボード試作に役立っています。思い立ったらすぐに実験開始できます。
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記憶を辿って行くと様々なことが思い浮かんでくるものです。 前回Blogのキーヤー繋がりで、前々から気になっていたOP-Amp Keyerをテストします。 キーヤーとして特にこれと言ったメリットはないのですがもしも興味を感じたようならお付合いください。 それらしく動作することに新鮮さを感じるかもしれません。(テスト動画付き)
【OP-Ampでキーヤーを】
このキーヤーを知ったのはJA-CQ誌の『技術展望』だったと思います。 インターネット以前の時代にあって『技術展望』はHAMにまつわる海外情報の貴重な情報源でした。 但し簡単なコラム記事なので要約と一部の回路図のみが載っているだけでした。
珍しいキーヤーなので興味を覚えたものの、要約から詳細はわからずそのままになりました。 その記事の切り抜きを保管していた筈ですが、この機会に探してみたのですが見付けることが出来ませんでした。
暫く後に古いQST誌のコピーが手に入って詳細を知ることが出来ました。 DTL-ICのキーヤーも済んだことから、この際気になっていたOP-Ampを使うキーヤーにも着手してみました。
キーヤーと言えば論理回路で実現するのが当たり前のようになっています。 そう考えればTTLやC-MOSと言ったデジタルICを使うのが自然です。 マイコンもデジタルICの一種ですし。
OP-Ampを使うこの記事(QST誌1972年10月号pp40~44)にはコスト的なメリットが謳われています。 デジタルICは既に登場していましたが、アマチュアにとって案外高価だったのかも知れません。 OP-Ampだってまだそんなに安価だったとも思えません。 しかしMC1437Lと言うモトローラ製のDual OP-Amp一つで作れます。 意外にお手軽だったのかもしれません。 そんな時代を感じさせる記事です。 なお、筆者はオーストラリアの人(VK5NO)なのでVKの事情を反映していたのでしょうか。
コラム: 『米国におけるICのお値段』
同時期・1972年頃のQST誌によればTTL-ICのSN7400が$0.21-、709型OP-Ampは$0.39-でセールスされています。 どのICも米国ではもう十分こなれた価格になっていたようです。 実際にはOP-AmpでKeyerを作っても価格的な優位性はなかったでしょう。 追試記事が存在しないのもこれと言ったメリットがなかったからかもしれません。その頃は$1-=¥360-とあって、当時のJAではICはまだ高価でした。国産のICは出回り始めたばかりでした。
【OAKEYのオリジナル回路図】
主要部分の回路図です。 JA-CQ誌に掲載されていた回路もこれと同じだったように思うのですが、切り抜いて保存しておいた筈の『技術展望』の記事は見付けられませんでした。
簡単な説明です。 図左側のOP-AmpでDuty比が50%の矩形波発振を行ないます。 その出力を取出すことで短点が連続します。 パドルによる制御回路があって複雑ですが、回路その物はOP-Ampを使った弛張発振回路です。
長点を発生させるには、その短点出力で図右側のOP-Ampで構成された双安定回路・・・Flip-Flop回路をトリガします。RS Flip-Flopと等価で、CRによる微分回路でトリガを掛けます。 この長点用の双安定回路は短点の二倍の長さの矩形波を出力します。 その二倍の長さの出力と短点一つ分をダイオードを使った出力部のORゲート回路で合成することで長点を生成します。長点はちょうど短点3つ分の長さになる訳です。 同時に短点と同じ長さのスペースもできます。
OP-Ampは論理回路専用の素子ではありません。 そのため双安定回路の実現には苦心の跡が見られます。 またこの図のままでは、キーイング出力としては不完全なのでリレードライバなどの出力回路を付加する必要があります。
【OP-Ampキーヤーの製作回路図】
キーヤーとして完全な回路になるよう出力のリレードライバまで含めて書いてあります。記事にある回路例よりもこちらの方が確実だと思います。 また、上記の回路図では負論理出力でしたが、ドライバ回路の都合から正論理の出力になるようにしています。 回路の動作そのものは上記の回路図と同じです。
記事にあるMC1437Lと言うOP-Ampはポピュラーではありません。今どき入手は困難でしょうから迷わず置き換えを行ないます。 黎明期のOP-Ampと言えばFairchild社が開発した709型がたいへん有名です。 MC1437Lはその709型を2個集積したものと等価です。 従って、709型のOP-Ampを2個使えばまったく同じです。 ここではTI社のSN72709Nと言う709型の互換品(セカンドソース)を使いました。
709型OP-AmpにはCanおよびDIPパッケージ品があって何れも8ピンが普通です。 14ピン型は未使用ピンが多くて合理的とは言えませんが、今さら709型OP-Ampなど購入したくもないので手持ちを活用しました。 8ピン型を使うなら回路図のピン番号を振り替える必要があります。まあ、真似て作る人などいないとは思いますが。w
リレードライバは2SC1815GRのようなNPN型の汎用トランジスタを使います。 ダイオードはシリコンの小信号用なら何でも良いです。例えば1S2076Aのほか1S1588や1N4148などがあります。 リレーは前のBlogのようなリードリレーでも良いしPhoto-MOS Relayなどお好みで。 ドライバのトランジスタでリグを直接キーイングすることも出来ます。
参考:709型OP-Ampは現在でも入手可能です。同等品やセカンドソースもたくさん存在しました。但し生産中止から時間が経過したため珍しい存在になりつつあって価格は上昇しています。 従って他の形式のキーヤーの製作をお奨めします。
【歴史に残る"709型"OP-Amp】
既に709型OP-Ampの現物など見たこともない人が多いでしょう。 まして14ピン型など・・・。 この14ピンのパッケージにOP-Amp回路がたった一つだけ入っています。
デート・コードを見ると1970年11月製のようですから非常に古いものでした。 その当時購入した訳ではなく、ずっと後に何かのジャンク部品と一緒に手に入れたものでしょう。 2017年の今から数えて46年も前のOP-Ampが正常に動作するのか少々怪しく思いましたが杞憂だったようです。 工業用の標準的なパーツとして確立していたのですから、その当時から十分な信頼性を有していたのでしょう。 劣化も見られずきちんと働いてくれました。
【OP-Amp keyerの全景】
最初の写真とは異なる部品配置になっています。 回路図を書き直した関係もあり、わかり易いように部品配置を整理してみました。 解体して最初から組み立て直しています。
以前、RTL-ICを使ったMicro TO-Keyer(←リンク)を作りました。 そのとき、マイクロではないオリジナルのTO-Keyerの動作についてに触れたことがありました。 このOP-Amp KeyerはそのTO-Keyerの動作に類似しています。
真空管回路ではありませんから回路形式はまるで違いますが、動作の様子には類似性があります。 半導体版のTO-KeyerとしてはRTL-ICを使ったものよりも、こちらの方がMicro TO-Keyerを名乗るのに相応しいように感じます。
【短点&スペース生成回路】
こちらが短点とスペースを発生させる弛張発振回路の部分です。この部分で短点発生とクロックを兼ねるので、クロック発振回路は必要ありません。
Duty比=ほぼ50%の矩形波を発生します。 50%が崩れると長短点とスペースの比が奇麗な1:1や1:3になった符号の発生ができなくなります。
出力を正帰還してヒステリシスを持たせ矩形波を発振する回路です。 OP-Ampを使ってはいますが、増幅回路ではなくてコンパレータ回路(電圧比較器)として使います。 709型OP-Ampは位相補償を内蔵しないので図のようなコンパレータとして使うと結構高速です。 奇麗な矩形波が得られています。 もっとも、数10Hzの矩形波ではどんなOP-Ampでも同じようかもしれませんけれど。
【長点発生フリップ・フロップ】
長点を作るためには短点の二倍の周期の矩形波を作る必要があります。 そのため、OP-Ampを使った双安定回路(Flip-Flop)を構成し、短点信号で旨く交互にトリガが掛かるようにして二分周器を実現しています。
この『旨くトリガを掛ける』という部分に苦労があったようです。 普通のOP-Ampには/Q出力(反転出力)はありません。 709型OP-Ampの出力側位相補償端子から正規の出力端子と反対の『反転出力』が取出せることを利用して旨くトリガを掛けているのです。 従って、このOP-Amp Keyerは709型もしくは等価な回路構成になったOP-Ampでないと旨く行きません。 幾らか回路を追加すれば他のOP-Ampでも可能そうですがもう時間切れです。 今さら真剣に置き換えを検討するほどの価値もないでしょう。
【電源回路例】
片電源動作にすることもできます。 しかし、小さな電源トランスと左図のような整流平滑回路を作って済ませるのが良いでしょう。電源電圧は安定化しなくても大丈夫です。
乾電池でも良いのですが、リレーを使うと006P型乾電池では動作時間が短くて不経済です。 ちなみに、±8Vで動作させた場合の回路電流は以下の通りです。 +8V側が待機時に約6.9mA、キーイング時が約7.8mAです。 -8V側は待機時が約16.5mA、キーイング時では少し減って約14.5mAでした。
Relayは動作させていませんので、動作させた時はその分だけ+8V側の電流が増えます。 乾電池では動作時間が短いので6〜9V程度の小型電源トランスを入手し図のような電源を組み込んで使います。
電源回路はオマケとして追記しておきました。おそらくこんなKeyerを作る人もいないでしょう。 それに興味から製作してみるようなお方なら電源の手当くらい百も承知でしょう。いささか蛇足だったかもしれませんね。hi
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【OP-Amp Keyerのテストムービー】
(注意:音が出ます)
キーヤー恒例のムービーです。(笑) 今回は圧電ブザーのキーイングではなく、実際にRigでキーイングしてみました。 キーヤー側とリグ側のGNDが分離されなくても良ければ、リレーなどを使わなくてもキーイングできます。
最近のRigのキーイング端子は電圧+10V程度で数mAの電流をON/OFFできれば良いように出来ています。 そのような場合はリレードライバのトランジスタで直接キーイングできます。 ドライバ・トランジスタを『オープン・コレクタ出力』にして取出しておけばOKです。 またブロッキング・バイアス・キーイングの場合はコレクタ耐圧:Vceが-100VくらいあるPNPトランジスタを使う方法があります。 但しそのようなニーズがあるのは非常に古いトランシーバ・・・例えばTS-510/511やTS-530/830あたりとFTDX-400/401やFT-101〜101Eのような真空管が使ってあるような年代もの・・・くらいでしょうね。(調べてみたら意外に多い)
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この所ずっと以前から興味があったキーヤー回路を試しています。 古いものばかりですが、面白い例が多かったように思います。今のように『定番』が確立する以前の時代だったからでしょう。 OP-Ampを使うKeyerなど「ゲテモノ」かも知れませんが回路動作そのものを見ればKeyerの基本に則った動きになっていることがわかります。 回路形式や部品に物珍しさを感じますが、エレクロニック・キーヤーの動きそのものは十分に確立されていたと考えて良いでしょう。 あとはその実現手段の違いだったに過ぎないのです。
昔々から目についた回路をメモったり、記事をスクラップしてきました。 いずれも何となく気になる回路ばかりですが試す機会もないまま深く埋もれています。 『部品の発掘』と同じように少しずつでも発掘して試してみたいものです。 では。 de JA9TTT/1
備考:日本語の「エレキー」は現在ではElectric Keyerの省略形と考えられます。 但し原典のOAKEY記事ではElectronic Keyerとなっており、(当時は)その呼び方が普通であったようです。それに伴い、この回のBlogに限ってElectronic Keyer / エレクトロニック・キーヤーと呼ぶことにしました。エレクトリックあるいはエレクトロニックのどちらも使われており、いずれでも誤りではないようです。以上は私見であって普遍的なものではありません。
(おわり)fm




































