2020年9月17日木曜日

【その他】ebay shopping

 ebayでお買い物は?
ebayって?
コロナ禍であまり出掛けられません。 まあ、大して気にしなければ良いんでしょうが、気持ちは若いつもりでも若くはありませんからね。 感染は気になります。 それで、通販を楽しむことになるんですが少し幅を広げたいと思います。

 最近の電子工作は、国内の通販だけでなく中華通販を含めて部品調達の範囲は幅広くなっています。今まで見つけられなかったようなアイテムが簡単に手に入ったり、思いがけずお買い得なことも珍しくありません。 ご存知の通り、信用に関しては国内通販に比べてイマイチな部分もあります。しかし、それなりの注意を払えばなんとかなるものです。

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 最近になってebay(イーベイ)を本格的に使い始めたので様子を書いてみたいと思います。すでに利用中の人も多いとは思いますが、もしまだでしたら如何でしょうか? 少し注意は必要そうですが、難しくはないので少額から試しましょう。 今回はネタに困った挙句なので、興味がなければ早々にお帰りがオススメなり。(笑)


Heath kitでサーチ
 ちょっと乱暴かも知れませんが、ebayはヤフオクと楽天市場を合わせたようなものでしょうか。

 オークションの機能があるので、最高額の入札者でなくては手に入らないものもたくさんあります。 しかし少々高めのお値段にはなるのですが即決価格(Buy it Now)が設定されたものもたくさんあります。 こうした物なら売り切れさえなければ確実に手に入れることも可能です。 頻繁にウオッチして素早く購入すれば良いでしょう。

 写真は「Heath Kit」(ヒースキット)で検索した例です。 Heath kitは世界的に有名ですから非常にたくさんのアイテムが引っ掛かりました。 写真の上2つは入札アイテムですから、ヤフオクと同じように入札が必要です。 ここでは発送先を「日本」の設定にしたので全ての価格は日本円で表示されています。それで端数の付いた金額なのでしょう。 その次の3つ目のアイテムは「Buy it Now」が設定されているので即決で買うこともできます。

 ショップが出品しているようなものでは大半が即決価格になっているようです。電子部品のような一般的なアイテムは多くが即決のようです。もちろん、稀少性があるような「お宝部品」は入札させて高く売ろうという魂胆もあるようなんですが・・・。(笑)  この辺りは既にヤフオクなどご利用なら常識的な範囲でしょうね。 入札でお宝狙いも良いですが、買い物感覚で「即決」狙いでも楽しめるようです。

PayPalは必要?
 今のebayは支払い方法が様々選べるようになりました。 なので、直接クレジット・カード決済で行くことも可能です。 例えばVISAやMASTERなどのクレジット・カードでの直接支払いができます。

 しかし、できたらPayPal(ペイパル)を介したいと思います。(これは好みですが・笑) そうすれば毎回購入するごとにクレジット・カードの番号をインプットする必要はなくなるため幾らかでも安心感がアップするように感じます。 10年以上前にPay Palのアカウント情報が漏れたというようなニュースもあったようですが、今は対策がとられてまずまず安心なように思われます。(注:Pay Palは以前からある送金サービスの一種で楽天のペイペイとは関係ありません)

 どんな風に使うのかというと、購入して支払いに進むと支払い方法について幾つかの選択肢が示されます。その時に「Pay Pal」を選べば良いだけです。何も難しくないです。 なお、Pay Palを利用した支払い(海外送金になる)は支払う側は料金無料です。Pay Palの利用を始めるとオススメのメールなどが頻繁に届くようになって少々煩わしいですが無料なので我慢しましょう。(笑)

 Pay Palで支払うためにはPay Palのアカウントが必要になります。 ebayを始める前にアカウントを取得しておくとお買い物はスムースに進むでしょう。 Pay Palで支払いが可能なようにするには、銀行口座あるいは支払い決済ができるクレジット・カードが必要です。 これだけはあらかじめ準備しておかなくてはなりません。 しかし、すでに通販を楽しんでいるようでしたらカード決済はお馴染みでしょう。 要するに「メールアドレス」とVISAやMASTER、AMEX、JCBなどの「クレジット・カード」があればPay Palのアカウントは簡単に設定できます。審査時間もほとんど掛かりません。

 Pay Palのアカウントが用意できたら、さっそくebayのアカウントを作りましょう。こちらもメルアドがあれば簡単に作れます。 なお、その際に購入した物品の発送先となる住所も必要になります。海外からの荷物が確実に届くような住所を(ローマ字表記で)用意しておきましょう。国際的に通用するような住所表記に自信がなければ最寄りの郵便局に相談するのも良いと思います。荷物が迷子にならずに済みます。 ebayのアカウントができたら、さっそくログインすればお買い物が始められます。(先にebayのアカウントを作っておいて、後からからPay Palを設定することもできます。詳しくはネット上のHow toなど参考に。難しくはないです)


基本はクレジット・カード決済
 Pay Palとは言っても結局はVISAなどのカード決済にするのが普通でしょう。  従って、もしなければこうしたクレジット・カードを持つ必要があります。(Pay Palはこうしたクレジット・カードを介さずに直接銀行の預金口座からの支払いも選べるようですが)

 過去に借金が焦げ付いたなどのヤバい経歴がなければ普通はスムースにクレジット・カードが手に入るはずです。ネット経由あるいは銀行の窓口などで申し込みます。詳しくは利用している金融機関のサイトや窓口で「クレジット・カード」を作りたいと言えば説明してくれます。 ただし申し込んでから届くまでに1週間くらい掛かるのが普通です。 なお、こうしたカードは年会費が必要なものがほとんどですが無料のものもあるようです。 今ではクレジット・カードを使うのが内外を問わず通販の基本と言えるのではないでしょうか。まさかとは思いますが、持っていないと時代に乗り遅れかねません。(笑)

買い物を探そう
 何か欲しい物があったらまずは検索するのがオススメです。 ebayに入ったら検索窓に目的物の単語をインプットしてみましょう。 ここは国際的なのですから日本語ではなく英語が良いと思います。
 基本は英語ですが、わかっていれば例えばスペイン語とかドイツ語のような現地語で探すとさらにバラエティに溢れた検索結果が得られます。綴りがあやふやな時はGoogle翻訳などで単語を翻訳してからインプット。 あとは「習うよりも慣れろ」でしょうね。

 何回か覗いて「ウインドウ・ショッピング」を楽しんでいると、閲覧履歴が保存されオススメに表示されるようになります。(写真) 買う気が起きたら購入するも良し、お好みが反映されるようになりますからだんだん使いやすく(?)なります・・・ね。

 まずは高額な品や重量がかさむ物は避けるのが基本でしょう。  送料が示されている場合も多いので、品物の値段と送料を合わせて考えます。 国際通販になる関係でどうしても送料は割高です。私は安価な物しか手を出さないので、品物よりも送料の方が高いと言ったこともしばしばです。w しかし、手軽に外国まで買いにも行けないので割り切るしかないでしょう。hi 中華通販のような送料では済まないのが普通です。(無料とか非常に低額な中華通販の送料の方が異常なんです・笑)

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 ネタ切れだったのでしょうもないテーマになってしまいました。 既にebayとかお使いのお方には今さらだったでしょう。 心理的にアキバも遠くなった感じもあって、通販を楽しむことが多い昨今です。 国内の通販でも様々な物品が手に入りますし大抵のものは間に合ってしまうでしょう。 しかし、ebayのように国際的なショッピングなら非常にバラエティがあります。まさかこんな物がと言うものまであって驚かされることも度々です。割高な送料を払っても価値のある品も数々見つかっています。 様子見に覗いてみるだけでも楽しい(興味深い)ですから、まずはebay(←リンク)へ行ってみてはいかがでしょう? ebayのアカウントはなくても見るだけなら誰でもできます。 ではまた。 de JA9TTT/1


:言うまでもないとは思いますが、ebayやPay Palなどから何かもらっている訳ではありません。また、国際通販はリスクも大きいですから各自のご判断で利用をお願いします。もちろんその結果についてはすべてご自身の責任です。トラブルについて私に泣きつかれても解決にはなりません(笑)

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追記:ebayで試したら
 ウクライナから旧ソ連時代のトランジスタを買ってみました。

 2020年7月26日にebayで購入したところ、28日には発送してもらえました。 ウクライナの通関を通ったのは7月30日だったようです。その後は国際郵便で日本への旅路に就いたようです。

 途中の経路はわかりませんが、9月8日に日本の国際交換局(川崎東郵便局)に到着しました。 直ちに通関手続きが行なわれ、その翌日の8日には自宅へ配達されました。 1ヶ月少々掛かったことになります。 コロナ禍のおり、旧東欧からの航空便はかなり限られた筈です。意外に早く着いたと思うべきでしょう。 おそらくコロナ禍がなければ二週間程度だったのではないかと思うので、今はじっくり待つしかないようです。 このように少々時間は掛かりましたがトラブルも無く購入することができました。まずは実績を追記しておきます。

(おわり)nm

2020年9月2日水曜日

【回路】Using the TBA120U as an SSB detector

回路:TBA120Uと言うICをSSB検波に使う
abstract
TBA120U is for PAL-TV  system, but you can use it for FM radio receivers
First, I used FM IF-Amplifier to check the IC I got. After that, I tried SSB detector, but the crystal oscillator circuit with the IF amplifier part needs to be examined.
After some trial and error, I had good results.  I think the resulting SSB detector has a good performance. (2020.09.02 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

 【TBA120Uを手に入れる
 TBA120Uと言うTV受像機用に作られたICを手に入れました。TV受像機とは言っても現在のようなデジタルTVではなくてアナログ時代のTV用です。欧州系のデバイスですからPAL方式のTV用でしょう。
 TBA120Uは音声信号の増幅・復調用のICです。PAL方式の場合、音声信号は搬送波周波数が5.5MHzのFM変調形式です。従ってデータシートの各項目は5.5MHzのTV用音声信号を前提に示されています。 ただし、NTSC(日米)形式のTVにおける4.5MHzのFM復調やFM放送用受信機の標準的な中間周波である10.7MHzに使うこともできます。
 ここではこのFM波の中間周波増幅(IFアンプ)とFMの復調を目的としたTBA120Uと言うICをSSB波の復調用に使ってみることにします。結果から先に言うとなかなかうまく働いてくれました。通販で容易に手に入るのでHAMが活用するには有望なデバイスだと思います。 TBA120UはアナログTV時代のICですからいずれ消え去るでしょう。しかし今のところ潤沢な在庫が残っているようです。入手は容易です。

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 SSBの復調(検波)といえば今ではSA612AのようなIC-DBMがポピュラーです。古くはこのBlogでも採り上げているMC1496G/HSN16913P、SN76514Nなどの専用IC-DBMがありました。従ってあえて別目的のICを使う意味は少ないのかも知れませんが、実験しておけば回路検討の時の持ち駒として役立つでしょう。
 ここでは中華通販で容易に手に入ったので実験してみました。強くお勧めするようなICとも言い難いのですが、本来目的のFM受信機の中間周波増幅と復調に使っても扱いやすいと感じましたので幾つか部品箱に入れておいたら楽しめそうです。以下、自家用の設計情報を纏めたものです。幾らか興味でも湧いてきたようでしたらご覧ください。もちろん何の製作もされないお方が漫然と眺めてみても意味はありません。

 【TBA120Uの標準的な応用法
 届いたTBA120Uの初期チェックを目的にオーソドックスな・・・本来の典型的な・・・用途であるFMの中間周波増幅回路&復調回路を作ってみました。

 上述のようにPAL形式のTV用ICですが、本来の用途の5.5MHzではなく10.7MHzでテストしました。 このような10.7MHzでの使用例が無い訳ではなくこのICを10.7MHzで使ったFMラジオやFMチューナの製作例は幾つも見かけます。 蛇足ながら、なぜ10.7MHzなのかと言えば、FMラジオを含めFM放送用受信機の標準的な中間周波だからです。従って10.7MHzなら専用のセラミック・フィルタやIFTなど部品が入手しやすいのです。AMラジオを455kHzの中間周波で作るのと同じ理由ですね。

 左図の回路ではFMチューナでの活用を想定し、TBA120Uの前にプリアンプを付けておきました。信号発生器(SSG)を使ったテスト結果から見てTBA120Uの単独ではややゲイン不足のようでした。TBA120Uだけでは少々感度の悪いラジオ又はFMチューナになってしまいます。 そこで20dB程度のアンプを追加してやればまずまずの感度になります。
 更に工夫することでアマチュア無線の狭帯域FM用(NB-FM用)に使うこともできそうでしたが、TBA120Uはその目的に対しては最適ではないでしょう。NB-FM用にはモトローラのMC3357やMC3361のような専用ICの方が向いています。これは参考まで。

  ICの内部回路についてはのちほど触れますが、簡単に言えば8段くらいの差動型IFアンプとクオドラチャ検波形式のFM復調回路を集積したものとなっています。さらに簡単な電子ボリウムの機能が内蔵されています。残念ながらスケルチ機能はありませんので外付けで対応する必要があります。ノイズをミュートするには電子ボリウムの部分をうまく制御すれば良いでしょう。

 FMラジオ/FMチューナを作るのでしたら、このIFアンプの前にFMフロントエンドを置きます。TBA120Uの検波出力は十分大きいのでそのままステレオ・マルチプレックス復調用のICに直結できます。さらに簡単な低周波アンプを付ければ良い性能のFMラジオになります。あるいは簡単なラインアンプを付加すればFMチューナにもできます。

 【10.7MHz FMで試してみる
 基本的な性能確認のため、まずはTBA120Uの部分のみ試作しました。周波数は10.7MHzです。これはTVの音声復調回路を作っても意味がないためで、FMラジオなどへの応用を睨んだテストと言えます。

 このICのデータシートにも載っているようなごく標準的なアプリケーションです。 キーポイントとなるのはFM復調器の所に使う「共振器」です。ここでは既製品の10.7MHz用IFTを使いました。無負荷Qが70程度とやや低めで同調容量が約50pFのIFTです。アキバのジャンク品なので型番や仕様はわかりません。ややHigh-LでLow-Cなため必ずしも最適なコイルではなかったようでした。

 実験した感触からいうと、もう少し同調容量が大きな10.7MHz用IFTを使うか自分で巻線する方が良いでしょう。 なお、IFTと書きましたが、2次側の巻線は不要なので単なるLC共振器で良い訳です。

 必要なコイルは10KボビンやAmidonのトロイダルコアに巻いて自作するのも容易です。その場合、同調容量は100pF程度へ大き目にする方がよいです。これはTBA120Uに内蔵された位相器のCが結構大きく効いてくるからです。あらかじめ同調容量を大きめにしておくことで丁度よくなります。

 標準的なFM放送は最大周波数偏移が±75kHzと大きいため、復調回路用コイルのQが大きすぎるとピークで歪むことがあります。 その場合、Qダンプするなどの対策を行ないます。但し復調感度は幾らか犠牲になります。 具体的には同調回路と並列に抵抗器を入れれば良いでしょう。この部分は復調感度と歪み率の兼ね合いがポイントです。

 【綺麗に復調できる
 搬送波周波数10.7MHzで、変調周波数1kHz、デビエーションが±50kHzの信号を与えたときの復調信号です。

 十分大きくて、きれいな正弦波が得られました。FM用のICなのですから、復調波形は歪が小さいのは当たり前とも言えそうですね。 TBA120UはTVの音声復調用のICですがHi-FiなFMラジオ/FMチューナ用としても十分通用する性能でしょう。

 FMのクオドラチャ検波はあまりHi-Fiには向かないという話を読んだこともあります。しかし実際にテストしてみるとけして悪くはありません。むしろ調整が容易なので調整不十分なFM復調回路よりも良い性能が得られ易いように感じます。 いずれHi-FiなFMラジオでも作ってみたいですね。 なお、FMラジオに不可欠なAFC回路に必要なバリキャップ用のチューニング電圧も容易に取り出せます。

TBA120Uの入手と留意点
 TBA120はかなり長い歴史を持ったチップのようです。そのため同じ「TBA120」でも様々なバージョンが存在します。上記のようなFMのIFアンプや復調にはもちろんですが、このあと紹介するSSB検波器にも大抵のバージョンが使えます。 但しTBA120Tだけは想定された回路以外への活用は難しいでしょう。手に入れない方が良いです。 現状ではTBA120Uが中華通販で販売量も多く無難な選択です。
 どれも14pinのパッケージで機能は同等ですし基本的なピン配置も類似です。しかし様々な改良バージョンでは追加機能の部分が独特のピン配置になっています。手に入ったもので代替する際には必ず該当品の資料にあたる必要があります。
 ここでは中華通販で手に入れましたが、eBayにもたくさんの出品があります。単価も一つ数十円から1,000円超まで様々です。販売者の信用状況や送料なども考えつつ良さそうなものを選びます。 参考までに私が購入したものは5個セットで$2.97-でした。送料が$0.53-なので合計で$3.50-(約400円くらい)でした。ちょっと実験してみる素材として手軽なのは有難いです。 ここで手に入ったTBA120UはPhilips製でした。




 【TBA120/Aを使ったDSB変調器
 左図はこれからテストするSSB復調回路のヒントになった回路です。 これは復調器ではなくTBA120/Aを使ったバランスド・モジュレータ回路(バラモジ回路)です。 自作HAMのみなさんがお好きなIC-DBMであるSA612Aのような機能を持っています。 ここではこの回路を参考にSSBの復調に使うプロダクト検波器として使ってみたいと思います。

 なお、ここで手に入れたTBA120Uですが左図のTAB120/Aとは内部回路に少し違いがあります。そのためバランスド・モジュレータにはあまり適していないようでした。もちろん復調回路の方には問題なく使えます。もしもバラモジとして使いたいようでしたら、TBA120UではなくTBA120あるいはTBA120Aを手に入れるのが良さそうです。 この図のバラモジ回路はRSGBの機関誌:RadComのテクニカル・トピックスを参照しました。

TBA120Uを使ったSSB復調器
 さっそくTBA120UでSSB復調器を設計してみました。TBA120UはFM波用のIFアンプとその検波器で構成されたICです。当然ですがSSB検波に必要なキャリヤ発振回路は内蔵されていません。

 うまくIFアンプの部分を使って水晶発振させてTBA120U単体でSSB検波器を構成するのがこの回路のミソです。 はじめは上のDSB変調器のような発振回路で試したのですが確実な発振が得られませんでした。 そこで内部等価回路を見直して左図のようにしたところ良い結果が得られました。周波数調整もきちんとできます。なお、IFアンプ部分を発振器に転用せず、外部の発振器からキャリヤを注入する方法も可能です。
 IFアンプ部を発振回路に使うと自動的に検波回路にキャリヤ(搬送波)が注入されるようになります。 そして元々クオドラチャ検波用コイルを接続するための端子のところに復調したいSSB波を加えればうまくSSB波の復調(検波)ができます。

 この図では電子ボリウムの部分をバイパスする使い方になっています。 先ほどのFM IFアンプと同じように活かすことも可能です。 ピン4番とピン5番の直結をやめ、抵抗器とボリウムなどを適宜追加すれば機能を生かすことができます。

 【TBA120Sの内部等価回路
 残念ながらTBA120Uの詳細な等価回路は公表されていません。 電子ボリウムの部分は少し違うようですが、他は同等と思われるTBA120Sの等価回路を参照しました。

 FM用のICをSSB検波に使うと言うと、何となく異常な用法のように思えるかもしれません。 しかし内部の等価回路を見ると案外真っ当な使い方であることがわかります。

 よく見ますとTBA120に内蔵のクオドラチャ検波部はギルバートセル型のIC-DBMそのものです。また全体として平衡な回路になっていて、IFアンプからの信号は下段の差動回路にバランスして加わるようになっています。 従ってこのIFアンプ部分を水晶発振回路に転用するのは意外に理にかなっているとも言えるでしょう。 その様にして使えばSSB検波器として旨く機能します。

 【TBA120UのSSB検波器
 SSB検波器の実験風景です。作ってみるとTBA120Uのピン配置はこうした応用には今ひとつなことがわかります。本来の目的外の応用なのでこれは仕方ありませんね。w

 IFアンプの部分を水晶発振器として使うわけですが、入出力のピンがだいぶ離れていて最適化しにくい感じでした。 まあ、それでも部品配置をやりくりしてまずは安定な水晶発振が可能な状態に持ち込むことに成功しました。 発振周波数の調整もたいへんスムースにできます。

 IFアンプ部はそもそもFM用の多段アンプなのでゲインは十分過ぎるほどありますが、信号の遅延あるいは位相の回転は大きいようです。 そのため、水晶発振が可能な周波数範囲には上限があるようでした。 この例では5.12MHzですが上記回路図と同じ部品定数では8MHzあたりが上限でした。それ以上の周波数で発振させるにはR5:10kΩを2〜3kΩへと減らす必要がありました。

 R5は有り余ったゲインを減らすといった意味もありますので無闇に小さくもできません。 この辺りの限界もあってIFアンプ部分を発振回路に転用できるのはおおよそ15MHzくらいまでではないでしょうか。もしそれ以上の周波数でやりたいのでしたら、別途発振器を用意してIFアンプの入力へ注入する方法で旨く行きます。

 【発振波形は?
 発振回路に使うのは、もともとがFM用のIFアンプですから発振出力の波形はこのようにクリップされた(振幅がリミットされた)発振波形になります。

 SSB復調器に与えるキャリヤ信号としてはこれで何も支障はありません。 ピン6番のテストポイントで観測して150mVppくらいの発振々幅がありました。 これはほぼ決まった振幅にしかなりません。より大きく、あるいはもう少し絞ると言った加減はほとんど不可能でしょう。 しかし150mVppならSSB検波器に対して概ね適当な振幅だと思います。 きちんとした発振さえすれば自動的にこのような振幅になりますから、かえって手間要らずとも言えますね。hi

 【発振周波数は安定
 周波数安定度も確認しておきました。 結論から言うと、一般的な水晶発振器と同等と言えます。 周波数安定度の心配はなさそうでした。

 ここでは5120kHzの水晶発振子を使いましたが、回路図に示した部品定数が適当でした。 8MHzや12.8MHzでも試しましたが、上述のようにR5:10kΩを幾らか減ずるほか、周波数調整用のトリマコンデンサ C9:max50pFやC10:22pFも少し減らす必要がありました。そのようにすればちょうど良い周波数調整範囲が得られます。

 【TBA120U:SSB検波器の入出力特性
 SSBの復調特性を示したグラフです。 回路図のように5120kHzで水晶発振させ、外部の信号発生器から5121kHzを与えて検波回路の入出力特性を測定しました。 周波数差のちょうど1kHzが低周波信号として取り出されるわけです。
 キャリヤ発振に相当する5120kHzの方は先に書いたように発振振幅の加減はできません。そのまま発振させただけの状態です。 この検波器の入力信号に相当するのは5121kHzの方で、これの大きさを変化させて出力の変化を測定します。

  グラフは横軸に入力信号に相当する5121kHzの大きさをとっています。縦軸は検波器で復調された出力信号・・・すなわち1kHzの大きさを示します。 入力信号:5121kHzは-90dBm/50Ωから徐々に大きくして行きました。 入力信号が小さい部分では少しノイズ(Hum)の誘導があるようでグラフは幾らか直線から外れているように見えます。 しかし全般的に見て良好な直線性が得られているのではないでしょうか?
 SA612ASN16913Pのような専用のIC-DBMで作ったSSB検波器と比べても遜色のない性能のように思います。 やや復調感度は低めですがその分だけ大きめの信号まで歪みなく扱えます。TBA120Uとしては想定外な使い方にはなるのですが、得られた性能から見て実用性は十分にあります。

 【SSB検波器の復調波形
 復調された1kHzの波形です。 -17dBmよりも大きな入力では波形の下側から歪んできます。 そこまでは非常にきれいな復調波形が得られました。

 もともと低歪が特徴のFM用復調回路なのですから回路の動作点が最適化されているのでしょう。 SSB検波器としても十分なダイナミックレンジが得られているのだと思います。

 ピン4番と5番の部分を使うと電子ボリウムの機能が得られます。 ただし絞る方法だけの加減が可能なだけなのであまり意味はなさそうでした。この波形は両ピンの間を直結して電子ボリウムの機能をバイパスした状態で観測したものです。 HAM用の機器にSSB検波器として使うのならそのような使い方で十分なように思います。 もちろん、電子ボリウムのメリットもあるのでその機能を生かした設計もあるとは思いますが・・・。 あとは各自の工夫でしょう。

AMの同期検波の可能性
 TBA120を旨く使うとAMの同期検波器ができるのだそうです。 これは未だ実験していませんが、左図のような構成で行けるようです。

基本的にSSBの復調器と同じですが、キャリヤ発振器は必要ありませんので受信機のIF出力をこの回路へ導くだけで済みます。(但し入力レベルの最適化を行なう必要があります) AMの同期検波は混信の抑制や検波歪みの低減といった効果が期待できるため高性能なBCLラジオには有用な機能でしょう。 いずれ必要が生じた際にでも追試したいと思っています。 通信形態から見て、おそらくHAM用の通信型受信機にはあまり必要のない機能ではないでしょうか。

                   ☆

 TBA120を使ったSSBの変・復調回路を見かけたのはずいぶん前になります。面白そうだと思ったのですが、デバイスそのものの入手は困難でした。最近になって古い資料を整理していてあらためて目に留まったのす。そこでさっそく中華通販やeBayで確かめてみました。 その結果、ちょっと遊んでみるにはお手軽な価格でたくさん出品されていました。 ただしTBA120には数種類のバージョンが存在しているようでした。そこでもう一度調べ直す必要がありました。現在もっとも流通しているらしいTBA120Uも活用できそうだとわかったところで発注してみました。 海外通販は配達遅延が続出ですが運良く1ヶ月くらいで到着しました。

 本来の目的とは異なる用途に使うため多少の使い難くさはやむを得ないでしょう。それでもまずまず確実に使いこなせそうな回路に纏めることが出来ました。 あえてこうしたICを転用しなくてもSSBの復調には専用のIC-DBMが手に入ります。従って活用の機会は多くないかもしれません。ここでは回路設計のアイディアの一つとして纏めておくことしました。

 TBA120Uはその本来の目的であるFMのIFアンプと復調器に使うと優秀そうでした。FMのIFアンプと復調器を実験していて感じたことです。 FMラジオやチューナがごく少ないデバイスで自作できるかも知れません。 しばらく前から各地でFMの補完放送(90〜95MHz帯)が始まっていますから自作のFMラジオでチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。 フロントエンド部分をどうするのかと言った課題はありますが、シンセサイザ発振器もお手軽な時代ですから自作FMラジオも昔よりもずっと作り易くなっています。十分検討にあたいするでしょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2020年8月19日水曜日

【測定】Prescaler Kit for Agilent 53132A Counter

測定器:Agilent 53132Aにプリスケーラ追加
<abstract>
I built a prescaler kit. This kit is for the Agilent Universal Counter Model 53132A.It is distributed by AKC, a group of Japanese amateur kit developers. This kit includes all components as well as a dedicated printed circuit board. It is designed to achieve high performance with fewer parts and is easy to assemble.  The 53132A with the kit was able to count up to the frequency over 4GHz. I am very satisfied with it. (2020.08.19  de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

Agilent 53132A
  少し前の機種ですが、このAgilent 53132A型ユニバーサルカウンタには満足しています。高精度な測定が短時間で可能だからです。もちろん「高精度」を実現するためには外部から十分な精度を持った基準を供給する必要があります。 上限周波数は225MHz(公称)ですが、私が必要とする周波数測定はほとんどがそれ以下ですから支障はありませんでした。

 しかし、稀にVHF/UHF帯の周波数を測りたいこともあって、上限周波数に物足りなさを感じていたのも事実です。 オプションには3GHzまでのプリスケーラがあって、それを追加すれば上限を伸ばすことが可能です。 オプションの動作原理は単純そうですから、比較的容易に作れそうです。どうしても必要なら手作りでも・・・と思っていました。

以下、キット開発者グループ(AKC)会員のJR1KDA岩崎さんが開発されたプリスケーラキットを53132Aに付加する話です。 わたし的にはかなり満足できました。

 【Chinese Option 030
 5年ほど前に必要に迫られて53132Aを購入しました。 中古品を購入したのですが何もオプションの付いていないものでした。 中途半端な精度の周波数基準は内蔵されていなくても支障はありません。 外部から高精度を供給すれば良いのですから。 ただ、第3チャネル(Ch3)のプリスケーラはあれば良かったと思いました。

 ある時、中華通販を見ていたらアジレント製測定器のオプションが様々売られていることに気づきました。 調べてみたら53132A用のプリスケーラ・オプションもあったのです。 その当時も7千円弱だった筈ですから案外安いとも言えますが、使用頻度を考えると直ちに必要とも言えないためそのまま先送りになっていたのです。  いずれ中華モノを購入するか、1.2GHzくらいまで測定可能な物を自作しようと思っていました。

 【Option 030 Kit
 Facebookから時々案内のメールが来ることがあります。

 少し前ですが、誰か知り合いのお誕生日とかで案内のメールが来たのでした。 それで久しぶりにアクセスしてみたら、偶然にJR1KDA岩崎さんの投稿が目に入りました。

 Agilentの53181A用のプリスケーラをキット化したというアナウンスでした。 確か、53181Aと53132Aは共通のオプションが使えたはずです。 そこで、さっそく頒布希望を表明しておいたのでした。 その後すぐ、詳しい案内があって頒布も始まりました。

 さっそく入手したのがこのプリスケーラ・キットです。 カウンタに組み込むためのすべてのパーツが揃っています。面実装部品が殆どのため、紛れないように個々に包装してあるなどとても丁寧なキットだと思いました。 岩崎さんのサイトから資料をダウンロードして組み立て開始です。

 【Kit Schematic
 回路は合理的なものです。 上の方の中華通販で購入できるものは、おそらくAgilentオリジナルのコピー品でしょう。写真を見るとかなりたくさんの部品が載っています。

 しかし頒布のキットも機能は同じです。 少ない部品で済むのは恐らく開発された時代が違うからでしょう。 今では数GHzで動作する広帯域アンプやプリスケーラのチップは非常にポピュラーになりました。 移動体通信関係の進歩も貢献しています。 信号系にはわずか2つのICが使われているだけです。 広帯域アンプと1/64分周できるECLプリスケーラです。 あとは定電圧電源のICが一つだけという簡潔なものです。 ほとんどの部品が面実装型ですが製作はそれほど困難ではないでしょう。

 【Mount CR Parts
 手順に従ってチップコンデンサとチップ抵抗をハンダ付けしました。 少々ハンダの盛り過ぎの感じもしますが、確実に付いているようなので良しとしました。

 あいにくφ0.5mmのハンダしか無かったのでどうしても多めにハンダが付いてしまうのです。 もしハンダを購入するならφ0.3mmの細いものを使うとよいでしょう。 あるいはクリームハンダを塗布し、面実装部品を全部載せてから基板全体を加熱して一気にハンダ付けするという方法もあります。 しかし、部品数は少しですから手載せ・手ハンダでも困難はないです。

 【Mount μPB1507GV
 おそらく、プリスケーラのチップ:μPB1507GVの搭載が一番難しいでしょう。 組み立て説明書にも書いてあります。 足ピッチが狭くピン数も多いからです。

 慣れは必要でしょうが非常に先が細いハンダ鏝と細いハンダを使えば1ピンずつハンダ付けして行くことも可能です。 私の方法は1ピンずつではなく纏めてハンダ付けする方法です。 やや先の太いハンダ鏝と太めのハンダしかないので、1ピンずつのハンダ付けは難しいのです。 慎重にやってもどこかでハンダブリッジが発生します。 そこで、ハンダブリッジは気にせず、確実なハンダの回りを重視します。 後からハンダ吸い取りリボンを使って余分を除去すればうまく行きます。 写真はそのようにしてハンダ付けした様子です。 ここが製作最大のポイントなので入念に確認しておきます。

 【SMA Connector
 SMA型コネクタ(オス)に細い同軸ケーブルをハンダ付けします。 BNCコネクタの組み立てに慣れていれば何と言うことはありません。 しかしHAMの多くはM型(UHFタイプとも言う)がお馴染みですから、だいぶ違うこれは迷うかも知れませんね。

 写真のような順にパーツを挿入します。シールドの網を広げて長さを切り揃えたら先端のピンをハンダ付けします。 その後、ハウジング(外側の金具)に挿入してケーブル側の押さえを十分に締め付ければ完成です。 但し、どうしてもスッポ抜け易いのでケーブルを強く引っ張るのはやめたほうが良いでしょう。 圧着で組み立てられたコネクタつきのケーブルを買ってくると面倒がないんでしょうが、まあコネクタくらい自分で組み立てましょうね。hi 

All Units
 両端に角形のコネクタがついているフラット・ケーブルは完成品が付属しています。 SMAコネクタが付いたケーブルの他端は芯線とシールド網を分けて短めに切ってハンダ上げしておきます。 それをパネル面用のBNCコネクタの端子にハンダ付けしておきます。
 このBNCコネクタはインピーダンス不整合型ですが、周波数カウンタなので大丈夫でしょう。心配なら別のものを使えば良いですが実際に支障はなかったです。

 プリント基板は部品の未装着はないか確認します。 さらに電源のラインほか信号ラインもGNDパターンなどへ短絡していないか拡大鏡で十分な目視をしておきます。 私は仮配線で5Vの3端子レギュレータの動作や消費電流を確認するなどカウンタ本体への装着前に可能な確認はなるべくやっておきました。 従って、何の心配もなく装着することができました。

 【Prescaler
 写真のようにカウンタ内部に装着します。 カウンタのフレーム金具にはオプション装着を想定した穴加工がされています。 従って、プリスケーラ基板の取り付けのための穴加工などは必要ありません。

  いまでは特殊な工具では無いかもしれませんが、カウンタ本体からケースを外すためにトルクスネジ用のレンチあるいはドライバが必要です。 ケースは背面のパネルの左右両端と、背面下側のネジ1本の計3本のトルクスネジで止まっています。

 基板を浮かせるスタッド・ボルトをフレーム金具にナット止めし、写真のような位置に基板をビス止めすれば基板の装着は完了です。ネジ止めの部分には必ずスプリング・ワッシャも入れておくことをお勧めします。もしあればネジロック(商品名)を少量塗布すれば完璧でしょう。 あとはフラット・ケーブルと同軸ケーブルを取り付ければ装着は完了となります。

 部品の確認から始め、基板の組み立てやカウンタへの装着などおおよそ4時間くらいでした。 初心者の場合、もっと入念な確認を行ないながら組み立てる方が良いかも知れません。しかし休日を1日も使えば十分完成できるはずです。

Maximum Count Frequency
 最後に最高カウント周波数や感度などの測定を行なっておきました。 写真のように約4.1GHzくらいまで測定可能でした。 3GHz以上を目標としたキットのようですが、信号の大きさなど測定条件が良ければ4GHzくらいまで計測可能になるようです。

 少し注意が必要なのは、何も信号は入力せず・・・要するにCh3はオープンのまま・・・だと自己発振のような、ランダムな周波数表示になることです。 これはプリアンプなどと合わせて、ECLプリスケーラが高感度なためのようです。 個体差はあると思いますが、私の製作例では2.6GHzくらいでランダムな表示をします。 もちろん、規定の大きさの信号を与えてやればきちんと測定できるので心配はいらないでしょう。 このような現象は以前作ったECLプリスケーラでも同じように起こったのでこうしたプリスケーラでは固有の現象のようです。

 1GHzの測定例ですが、最小で-30dBm、最大で-5dBmあたりまでが適当な範囲です。 これ以上大きな信号を与えると2倍あるいは3倍の周波数を表示します。 おそらくプリアンプもしくはECLが飽和してしまい、自身で発生する高調波をカウントするようになるのでしょう。 十分な感度があるので、必要に応じてアッテネータを付加するなど使い方を工夫したいと思います。  これで430MHz、1.2GHz、2.4GHzの機器など製作するとき周波数の確認ができるようになりました。

                   ☆

 最近はあまり見に行かなくなったFacebookですが、たまたま覗いてみてよかったと思います。 せっかくのKit頒布を見逃したら残念だったでしょうからね。hi hi

 だからと言ってFacebookを頻繁にアクセスするつもりはありません。たぶん時々覗くくらいでしょう。 全部と言う訳ではないんですが、あそこは何となくリア充の自慢合戦の場のような雰囲気があって私にはチョッと場違いに感じるのです。(爆) 文字数制限はありますが構造的にtwitterの方が幾分マシな感じなので時々覗くことがあります。 まあ、そちらもあまりアクティブではないんですけれどネ。SNSは色々あってどれが合うのか人それぞれですしお好みもあるんでしょう。(笑)

 何だか最後は変な方向へ行ってしまいました。(SRI) このプリスケーラ・キットはHAMフェアのようなイベントでの頒布もお考えだったのかも知れません。しかしコロナの現状ではイベント開催も難しそうです。 せっかくのキットが埋れてしまうのは勿体ないと思っています。 ご紹介したプリスケーラ・キットには満足しています。作りやすく、しかも十分な性能を持っていると思います。 JR1KDA岩崎さんFBなキットありがとうございました。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2020年8月4日火曜日

【Antenna】160m Band Antenna , Fixed

アンテナ:160mバンドアンテナを最終調整
 <abstract>
This article is a continuation of the low band antenna modification. I've been experimenting with this antenna for two months now with a temporary response. As the result was good, I completed the modification. I soldered the extension of the antenna element. As a result, the operation was very stable. It seems that a proper response is still necessary.   (2020.08.04 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

恒久化完了
 160m Band用アンテナを改造する話の続きです。 前のBlog(←リンク)では様子見の意味もあって、仮の対応で1.8MHz帯に出られるようにしました。 仮設の意味は、バンドの拡張分をミノムシ・クリップで挟んだ電線で応急的に対処していたからです。
 さすがにいつ迄もそのままという訳には行きません。 ミノムシ・クリップはやめてきちんとハンダ付けすることにしました。

                   ☆

 拡張された1.8MHz帯に約2ヶ月ほどオンエアしてみました。 なにぶん既に初夏ですからこのバンドは旬ではありません。 それでも物珍しさもあってか意外にオンエア局も多いようでした。 まあ多いとは言ってもメジャーなバンドじゃありませんから、オンエアしている局数は限られます。 昨今ではみんな交信済みになってだいぶ飽和してきた感じです。 FT-8モードの交信がまったく飽和てしまったら今度はCWにオンエアしようと思案しているところです。

 このアンテナ、オンエアしていて国内局相手ならマズマズ飛ぶ感じなので「ミノムシ・クリップで挟んだ電線」から脱却して恒久化することにしました。 今回のBlogは自身の作業メモなので役立つお方はまずないでしょう。 おヒマじゃなければとりあえずスルーしてください。(爆)

 【170m用になる?
 従来の1.9MHz帯は160mバンドと呼ばれてきました。 確かに、1910kHz±2.5kHzの波長は157mくらいですから、まあ160mバンドで良いんでしょう。(笑)

 今回はエレメントを延長して1.8MHz帯のアンテナに改造します。 中心周波数は1837.5kHzで、波長は163mです。そのまま160mでも良いのかもしれませんが、1800kHzでは167mになります。 何となく170mのイメージに近くなってきました。 170mバンドと言うのはここだけの冗談としても、だいぶ低い方へシフトした感じです。(笑)

 ざっと考えて72.5kHzほど共振周波数を下げることになります。 前回の仮設工事では約65cmの被覆電線を追加して1940kHzあたりに共振するようにしたのです。 でも、みの虫クリップで挟んだだけではどうしても不安定さが残るように感じていました。 一応、共振はするようですがアンテナ・チューナの挙動を観察すると何となくぎこちなくて怪しげです。(笑)
 そろそろ潮時と考えて仮設を脱却することにしました。 銅線を用意しハンダ付けするだけの簡単な作業です。  始めてみると仮設とは言え自己融着テープで防水処理しておいたので雨水の侵入もなく初期状態に近い良い状態でした。 しかしミノムシ・クリップでは点接触のようなもので、どうしても不安定ですから今度はがっちりハンダ付けしておきます。

 【小刻みに追い込む
 足りなくて何回も追加するのは面倒ですから長めに追加しました。 追加する電線は古いアンテナの残骸からリサイクルで調達しました。 実測で128cmの電線を2本用意し、端部を5cmほど磨いてハンダ付け部分にします。 従って有効な延長量は123cmとなります。(123cmずつ左右エレメントの両端にそれぞれ追加)

 123cm追加した状態で共振周波数を測定したら1800kHzちょうどでした。 これではだいぶ低すぎますから共振点がバンドの中央付近(=1837.5kHz)に来るようカットして追い込んで行きます。次項のように測定画面で観察しながらカットして行きました。

 初めはやや大胆に15cmとか20cmずつカットします。 だんだん良いところに近付いたら5cmずつ小刻みに調整して行きました。 最終的に、追加した長さが65.5cmになる所まで切り詰めてほぼ目標のところに来ました。 不足を警戒した最初の123cmはだいぶ長すぎたようです。切れ端がたくさんできてしまいました。(笑)

 【最終特性は?
 左は調整を追い込んだところです。 1837kHzでSWR=1.2くらいになっています。 バンドの下端と上端ではSWR>3になりますが、あまりバンドエッジにはオンエアしませんから支障はないでしょう。

 もう暫くのあいだオンエアのメインはFT-8だと思うので良く使うのは1840kHzあたりでしょう。 また、交信の合間にオンエアしているWSPRなら1836.6kHzです。 この先オンエアする予定のCWは1815kHz辺りかと思うのですが、国内局相手がメインになりそうな当局はもう少し上の方に出る方が良いでしょうか?   そんなことを考えながら概ねバンドの中心付近でSWRが一番下がるように調整して終了しました。 なお、この観測は下記のTEST-2のパターンでやりました。(厳しい方になります)

 画面の右の所に1910kHz±2.5kHzの位置を記入しておいたのですが、 流石にSWRが高すぎて使い物にはなりません。 どうしても戻りたくなったら足した分を切断するしかないようです。 延長コイルの逆で、短縮コンデンサを入れるって言う手があったように思うのですが、あらかじめそれなりの構造を考えておかなくてはダメなようです。将来の研究課題にしておきましょう。hi

参考・1:160mバンドのバンドプラン
1800kHzから1830kHzがCW、1830kHzから1845kHzがCWと狭帯域データ(例:FT-8など)。1845kHzから1875kHzが狭帯域の全電波形式。なお、1907.5kHzから1912.5kHzは従来通りCWと狭帯域データのみ。(2020年8月:JARLサイトによる)

参考 ・2:2020年8月19日(水)にSSB(J3E・旧A3J)などの電話モードでのオンエアが特別な申請なしに可能になりました。このバンドの免許があれば事後報告的に(遅滞なく)電話モードでのオンエアに関して届け出れば良いのだそうです。なお、詳細は必ず官報など参照されてからオンエアしてください。(2020.08.19:追記)

 【全バンドの評価・1
 左は前回のBlogの評価と同じ方法で観測した4バンド逆VアンテナのSWR特性です。

 概ね同じように調整を追い込んだだけですから、160mバンド以外の特性に変化はないようです。 まあ、そうでなくては困るのですが。(笑)  今回は30mバンドの特性も見えるように測定しました。 30mバンドは無短縮ですから帯域幅も広く取れています。 SWRのボトムはややバンドの上の方に外れているようですが、バンド内のSWRは1.5以下なので支障はないでしょう。実際に飛びも悪くありません。コンデイションさえ良ければ南米とかEuと交信できています。

 80mと40mのSWRボトムはやや低すぎる感じもしますが、デジタルモードやCWでのオンエアがメインなのでまあまあでしょうか? SSBに出るならもう少し高い方へ調整すると良さそうです。 ただし40mバンドは200kHzに広がったのでフルカバーするのはそれなりに大変です。 80mバンドも上の方の「飛び地」にオンエアするのは難しいですね。 従って各バンドとも主にオンエアするモードに従い共振点を合わせて妥協するしかありません。

全バンドの評価・2
 上の測定と何が違うのかと言うと、測定系の途中に入っている物が違うのです。 実際の運用では上のような状態になっています。 こちらの方は途中に入っているダミーロードとSWR計を兼ねた機器をパスしているのです。

 どちらかと言えばこの状態の方が実際なのかもしれません。 アンテナ系としては余分な機器がないのでシビアに特性が現れているようです。 個々の周波数の共振特性を見ると綺麗なようですし特性もわかり易いように感じました。 それで160m Bandの調整もこちらで行なってみたわけです。 ただしバンド内に限れば極端な違いはありません。

 きちんとハンダ付けしてエレメントを延長した結果、ATUのチューニングの挙動も安定したように感じます。 アンテナは屋外にある関係で、季節や気象条件などによって微妙に変化が現れるものです。 しかし仮設と比べてその時々の変動は少なくなったように思います。

                   ☆

 私が開局した当時、OMさんから「無線局はアンテナだよ」と言われたものです。 そのころはよくわかっていなかったこともあって「無線局はヤッパリ無線機」だろうと思ったものでした。(笑) しかし、いくら高性能な無線機があってもアンテナがPoorなら性能は活きてきません。 リニヤアンプを付けたところで輻射効率が悪ければせっかくのハイパワーも熱に化けるだけです。 無線局にとってアンテナが大切なことはOMが言われた通りです。 その上で高性能なリグを揃えればベストなんでしょうね。 狭い敷地に何とか工夫して上げたようなアンテナばかりの当局には夢のようなお話なんですけれどネ。(笑)

 仮設の状態でもテストにはなったので十分意味はありました。 しかし何となく不安定さが感じられ気になってきたのです。 ローバンドが本格化する秋まで待っても良いかと思っていたのですが、暑さと蚊の来襲を我慢し作業して良かったと思います。 短縮+折り曲げエレメントなので160m Bandはあまり飛ばないのですが、何とか国内くらいならカバーできそうです。 電波が届いておりましたら是非コールしてください。 なお、アンテナや無線局にまつわる逸話でもあればお気軽にコメントをどうぞ。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2020年7月21日火曜日

【回路】Making an AM-Radio with MC3340P

MC3340Pを使ったAM Radioの試作
 <Abstract>
I built a prototype AM radio using Motorola's IC: MC3340P in the AGC circuit. The purpose of this is to test if the MC3340P electronic attenuator can be used for radio and wireless communication devices.
The MC3340P is a low-frequency device. As a result of my trial, I found out that it can be used for high frequency circuits as well.
 I think it is possible to make a receiver with good AGC characteristics by applying it well.  (2020.07.21  de JA9TTT/1  Takahiro Kato)

AM-Radio 機能試作・1
 二つ前のBlog(←リンク)でモトローラ/ONセミ製のMC3340Pと言う電子ボリウムを扱いました。 MC3340Pは低周波用のデバイスですが、周波数特性が伸びていることから、低周波のAGCアンプだけでなくラジオのIFアンプへの応用も示唆されたのです。
 そこで、さっそくMC3340Pを使ったAMラジオを試作しました。 まずは中間周波増幅器(IFアンプ)として思ったように動作するのか、ごく基本的な実験から始めました。 優秀なAGC特性・・・端的に言えば広いAGC範囲と低歪みな特性・・・を持ったIFアンプの製作はなかなか難しいものです。MC3340Pを使うことでそれが可能になるか確かめました。結果はかなりFBなようです。

                   ☆

 シンプルにAMラジオで試してみましょう。もちろん単なるAMラジオを作るのが目的ではないので専用のラジオ用ICチップは使いません。ラジオは作りますが、今回は「ラジオ作り」そのものが目的ではありませんので。
 ここでは電子ボリウム用のMC3340Pがラジオや通信機のAGC回路にうまく使えるのか実際にテストしてみます。 まずはAMラジオで様子を見ますが、より本格的な通信機に使えるかどうかも検討したいと思っています。
 MC3340Pの可能性が確かめられれば良いのでなるべく手間を省いて実験します。便利なICを多用することにしました。実験回路はそのままラジオとして使うことも十分可能ですが、実用品にするならもう少し改良したら良くなる所もありそうです。今回はありきたりのラジオ製作がゴールではありませんのでそのつもりでどうぞ。
 
AM-Radio 3340 Schematic
 さっそく実験回路です。中間周波が455kHzのスーパー・ヘテロダイン形式のAMラジオです。 6石ラジオの途中にMC3340Pを付け加えたような回路でも良いのですが、遊びの意味もあって新規のラインナップで考えました。

 周波数変換(コンバータ)はデュアルゲート・MOS-FET:BF998を使った自励式コンバータです。 DG-MOS-FETをこうしたAMラジオのコンバータ回路に使う例は見ませんでしたが旨く動作してくれるようです。感度もまずまずですからもっと使われても良いのではないでしょうか。

 コンバータに続くIFフィルタ(中間周波フィルタ)は中心周波数が455kHzで通過帯域幅が15kHzのセラミック・フィルタを使いました。ここでラジオの選択度が決まります。使ったフィルタは選択度が良い(特にスカート特性が良い)ため混信もなく、また十分な通過帯域幅があってAMラジオながら再生音域も広く得られます。市販のラジオが3kHzくらいまでしか再生できないのに対して7kHz以上の再生音域が得られそれだけHi-Fi(ハイファイ)になります。もしアマチュア無線用(AM波対象)なら帯域幅6kHzくらいのフィルタが適当ですが、AMラジオの受信にはずっと広い方が良いでしょう。混信さえなければ20kHzくらいでも良いくらいです。(但し夜間は9kHzのビート音の可能性があってノッチなどで対処が必要)

 セラミック・フィルタの次はMC3340Pです。ここにAGCを掛けます。AGC回路はFETを併用する方式にしました。  検波出力が小さめなので、AGCの効きを良くする目的でカットオフ電圧が小さい2SK544Fを使います。通信機なら増幅型AGCも考えるのですが、単なるAMラジオなのでシンプルに済ませました。 MC3340Pの後はLA1221と言う差動アンプ形式のIF-Amp.用ICを2つ使って十分なゲインを得ています。LA1221はCanパッケージのトランジスタのような形をした4ピンのコンパクトなICです。 MC3340Pを含めたIFアンプ全体で50dBくらいのゲインがあります。 検波回路はゲルマニウム・ダイオード:1N34Aを使った標準的なものです。検波した電圧を平滑してAGC電圧としています。

 初めはIFアンプ+検波器だけで実験していました。 セラミック・イヤフォンで聞いていたのですが、使い物になりそうだったので低周波アンプを追加しました。 低周波アンプは定番のLM386タイプです。 LM386にも少々飽きてきたので別のICでも・・・と思ったのですが、あえて凝る意味もないのであっさり定番で済ませました。(笑)

 全体の消費電流はICを多用したため少し大きめです。無信号状態で約27mAでした。上手に作った6石ラジオなら10mA程度で済むのですが、MC3340Pを試すのが目的ですから省エネ方向の追求はしませんでした。各部が安定して動作してくれたらテストには十分だと思います。

 【Converter : BF998
 コンバータには少し前のBlog(←リンク)でテストしたBF998型デュアル・ゲートMOS-FETを使いました。 また、別のBlogではDG-MOS-FETで自励コンバータ形式(←リンク)のクリスタル・コンバータを試したのですがなかなか旨く働いてくれました。 これらの実験結果に基づき、今回は水晶発振ではなく変形ハートレー型のLC発振回路を使った自励式コンバータを構成してみました。これはとても旨く動作しています。

 BF998はヨーロッパ系のDG-MOS-FETですが秋葉原や通販で安価に手に入ります。 国産品で代替するなら3SK35ほかディプレッション型のデュアル・ゲートMOS-FETならほとんどのものが使えます。(例:3SK35、2SK41、3SK45、3SK51、3SK59、3SK65、3SK73など候補はたくさんあります)

 アンテナコイルには、フェライト・バーアンテナを使いました。試作品では長さ120mm、直径10mmのものを使いました。このバーアンテナだけで十分な感度があります。 基本的に外部アンテナは不要でしょう。 外部アンテナは遠距離受信に効果がありますが、このラジオはローカルの放送局を良い音で聴くのが仕様です。

  市販のAMラジオ用局発コイルが使えると自分で巻いて作る手間が省けます。 性能など検討の結果、市販の既製品も支障なく使えましたが、後ほど局発コイルとIFTを手作りするための図面・資料があります。詳しくはそちらで。

 【OSC Level : at BF998 Source
 DG-MOS-FETの第1ゲート部分を使った変形ハートレー型の局部発振回路です。 ゲート部分に入れたダイオード(Si-Di)の整流作用で自動的にバイアスが掛かって発振振幅が安定します。 D1:1N914は重要な役割があるので省略しないでください。1N914の代替には一般的な小信号用シリコン・ダイオードなら大抵のものが使えます。1N4148、1S2076A、1S1588、1SS53、1SS178などなど。

 受信周波数範囲は520〜1620kHzなので、局発の発振周波数は+455kHzの975〜2075kHzです。 その範囲で発振振幅は概ね一定に保たれています。 写真では1Vppですが、もう少し小さめに調整しても良いようでした。 組み立てが済んでからVR1:10kΩで発振レベルあるいは変換ゲインを見て加減します。

(注:写真は未調整の段階で撮影したため上記の周波数範囲をやや外れています。ただし範囲調整後も発振振幅に変化はありませんでした)

 【AMR-3340 : Making Coils
 局発コイル(T2)と検波回路部分のIFT(中間周波トランス:T3)の作り方です。 aitendoで売っている「IFTきっと」を使って製作しました。 巻線はφ0.08mmのポリウレタン被覆電線(UEW電線)を用意します。 ここでは最大容量が275pFの等容量型2連バリコン(ポリバリコン)を使う前提で局発コイルを設計しました。 この図のコイルの足ピンの番号はすべてコイルを底面(足ピンのある側)から見た時のものです。

 しかし、市販品の局発コイルやIFTも十分使えます。 バーアンテナ・コイルなどと一緒にバリコンも合わせて購入すればコイル製作の手間は掛かりません。 AMラジオ用のコイル類は秋葉原あるいはラジオ部品の通販サイトで購入できます。 もちろん「IFTきっと」を使って自分で巻けば非常に経済的です。手間か費用かの選択と言うことですね。

 なお、一般的に市販されているAMラジオ用のポリバリコンはアンテナ同調側が約140pF、局発側が約82pFのトラッキングレス型が多いようです。 従って局発コイルもそれにあったものを購入します。局発コイルとしてはインダクタンスが約360μHくらいのものが良いはずです。(SLV-C01と言う型番の市販品がある)なお、こうした市販の局発コイルを使うときには回路図のC5:330pFは不要なので除去(取り除き短絡)します。 またバーアンテナ(T1)の方はインダクタンスが550μHくらいあるものを選ぶことになります。入手しやすい市販品として例えばSL-55X(あさひ通信)などが良いでしょう。バーアンテナはフェライトコアが大きなものが高感度です。(一般的にはコアが大きい方が良いが、コアの材質・種類にもよる)

参考:コロナのクラスタ発生もあり秋葉原には行きにくい状況にありますが、「東京ラジオデパート」のシオヤ無線電機商会あたりに行けばこのラジオの製作に必要なコイルとバリコンが一式揃うはずです。(残念ながら、シオヤ無線電機商会さんは、2023年8月31日に閉店しました。もう手に入らないコイル類は手作りする必要があります) KBF-455R15Aと類似特性のセラミックフィルタは秋月電子通商で手に入ります。

IF-Filter and IF-Amp
 選択度を決めるIFフィルタには「セラミック・フィルタ」を使いました。 写真・左側に見えるブルーの箱型がIFフィルタです。 京セラ製のKBF-455R15Aを使っています。これは製造中止品のようですから手に入ったもので代替すれば良いでしょう。村田製作所の製品が入手しやすいようです。 使用するフィルタの終端インピーダンスに合わせてR5とR6を変更します。(回路図では1.5kΩ) 一般的に終端インピーダンスは1〜2kΩのものが多いです。手に入ったフィルタのインピーダンスがわからないときは回路図のまま作っても良いでしょう。 このラジオの場合、セラミック・フィルタがないからと言ってIFTで代替すると選択度不足になるのでお勧めできません。

 AGC回路に使うMC3340Pの詳細は前のBlog(←リンク)を参照してください。ここでは455kHzの中間周波増幅回路のところに使っていますが考え方は低周波の場合と同じです。 但し、周波数特性を伸ばすためPin.6はオープン状態で使います。
 MC3340Pだけではゲインが足りません。LA1221と言うIFアンプ用のICを2つ使ってさらに2段増幅しました。 LA1221はちょっとしたRF/IFアンプには便利なのですが、かなり旧式なのでおそらく入手は困難です。 IFアンプ部分で40〜60dBのゲインが得られればどんな方法でも良いです。 手に入った部品で代替すれば十分です。トランジスタやFETでも良いですが、いまでしたら高速OP-Amp.の採用も有りでしょう。拙宅ではLM359NもIFアンプの候補でした。

 LA1221はもともとFM受信機用のICです。そのため、あまり大きな信号を扱うとリミッタ特性が現れてうまくありません。しかしこの例のように2段増幅ならリニアに増幅する範囲内でした。従ってAMやSSBのような振幅変調系のIFアンプに使っても支障はありません。同じ回路で試したいお方に差し上げますのでお問い合わせを。
 
 【Detector
 検波回路はゲルマニウム・ダイオード:1N34Aを使ったオーソドックスなものです。  IFT(=中間周波トランス)を使わぬ形式も可能ですが普通のトランジスタ・ラジオと同じ回路にしました。検波ダイオードは1N60や1K60も使えます。1SS97などのRF用ショットキ・バリヤ・ダイオード(SBD)でも大丈夫です。 ここで使用したIFTは自作品ですが、市販で見かけるSLV-C04(コアは黒色)が同じように使えます。

 IF信号を検波することで得られる直流(DC)電圧の成分は概ね信号の大きさに比例します。 図の回路では負のDC電圧が得られますのでその電圧を平均化してからAGC制御用のFET:2SK544Fのゲートに与えます。 AMラジオでは常識的な平均値型のAGC回路になっています。 なお、2SK544Fの代替として2SK241GRと2SK439F(ピン配置要注意)がありますが、この用途の場合2SK19GRや2SK192AGRもほぼ同じように使えます。

 【Audio Amp.
 初めの頃はセラミック・イヤフォンで実験していました。 しかし、イヤフォンは鬱陶しいのでスピーカを鳴らすことにしました。 100mWくらいのパワーがあれば実験には十分です。 アンプ回路は何でも良かったのですが、オーソドックスに「386型IC」を使いました。

 回路はメーカーの資料に「ラジオ用」として紹介されているものを参照しました。入力部のLPFや出力部のRFCで高周波の回り込みを防ぐ工夫がされています。

 写真のものはJRC製のNJM386BDですが、一般的なLM386Nでも支障ありません。 BlogではJRC製が頻繁に登場していますが単に手持ち在庫の都合に過ぎません。

 もちろん、他の低周波アンプ用のICでも良いのですが、電源電圧=9Vに適当な物となると意外に選択肢は少ないように思います。 ディスクリートで作っても良いのですが、今回はあえて部品数を増やす意味を感じなかったので定番の「386」で済ませました。 386なら秋葉原や通販で容易に手に入るのも良いところです。

AM-Radio 3340 EVX-2
 以上で全てです。 MC3340PのIF-AGC回路への適性を見極めるのが目的です。 IFアンプ部分だけを作って測定器による評価だけでも良かったのかも知れません。

 しかし、なるべく具体的な応用例があった方が実感が湧きやすいものです。そう思ってAMラジオの形に纏めてみました。 試作したラジオが非常に優秀だとは思いませんが、良くAGCが効いているのは実感できました。 感度的にもマズマズなので実用品として使うことも十分可能でしょう。 何れにしてもMC3340Pが受信機のIFアンプ回路に旨く使えるかの確認になりました。 AGC特性については下記の参考・3に概略の評価結果を追記しました。

                 ☆  ☆

参考・1このラジオの調整について
このラジオはスーパーヘテロダイン型なので、トラッキング調整が必要です。
◎次のような道具を用意します: 周波数カウンタ、テストオシレータ、DMM、調整用ドライバ、ジェネカバ・受信機(=周波数カウンタの代わり) 、直流安定化電源

☆以下の手順で調整します。
(1)製作の確認:電源を与える前に部品の付け忘れや誤配線がないか入念に確認します。
(2)消費電流の確認:DMMを使います。まず電源電圧を9Vにセットし、電源から流れる電流が測れる状態に配線します。電源を加えたら素早く電流値を読み取ります。回路図に書かれた値と大幅に違う場合(±50%以上)は誤配線やショート、配線もれなどが考えられるので一旦電源を切って再確認します。
(3)IFTの調整:テストオシレータを使います。アンテナ端子から変調をかけた455kHzの信号を与えます。周波数は正確である必要があります。60dBμ以上加える必要があるかもしれませんが、信号が聞こえたらIFT:T3を調整して一番大きな音が聞こえる様にします。最大のところがわかりにくい時はテストオシレータの出力を適宜加減します。
(4)受信範囲の調整:周波数カウンタを使います。Q1:BF998のソース電極:S端子の部分に周波数カウンタを接続します。 (A)バリコンを最大容量の位置(一番低い周波数側)にします。発振周波数が975kHzになるように局発コイル:T2のコアを調整します。 (B)次にバリコンを最小容量の位置(一番高い周波数のところ)にします。発振周波数が2075kHzになるように、半固定コンデンサ:C4を調整します。 上記の(A)と(B)を交互に繰り返します。両端で概ね5kHz以内まで合って来たら最後に(B)を行なって終了します。これで520kHz〜1620kHzが受信できるようになります。 なお、周波数カウンタは測定可能な範囲でなるべく小容量で結合させると精度良く調整できます。 ジェネカバ受信機を使って調整しても良いです。その場合、受信機からのアンテナ線を作ったラジオのコンバータ部:BF998のあたりに近付けます。SSBモードで受信すると発振の存在がわかり易いです。上と同じ手順で(A)975kHzと(B)2075kHzの周波数でビート音が聞こえるよう局発コイルと半固定コンデンサを調整します。
(5) アンテナ回路の調整:テストオシレータを使います。テストオシレータの出力はワンターンコイルでバーアンテナに結合すると良いです。 (C)まず変調した600kHzをアンテナ端子へ加えます。バリコンを回してテスト信号を受信します。その状態でバーアンテナ上の同調コイルをフェライトコア上でスライドさせ一番よく聞こえる位置に仮固定します。テスト信号が強すぎるとわかりにくいのでテストオシレータの出力を適宜加減します。 (D)テストオシレータの周波数を1400kHzにします。バリコンを回しその信号が受信できたら更によく聞こえるようにトリマコンデンサ:C3を調整します。 これら(C)とD)を交互に繰り返します。どちらでもよく聞こえるようになったら最終的に(D)の調整で終了します。 パラフィンなどでバーアンテナの同調コイルを固定して完了です。

# なお、テストオシレータが用意できない場合、(3)のIFT調整は後回しにします。(5)のアンテナ回路の調整は実際にラジオ局を受信しながら行なうこともできます。その場合、低い方は500〜600kHz、高い方は1200〜1500kHzのローカル放送局を2つ選んで調整します。例えば関東の場合はNHK第1(594kHz)とニッポン放送(1242kHz)などが良いでしょう。高い方はRFラジオ・日本(1422kHz)が良いのですが地域によっては受信困難です。 (3)を飛ばしたとき、IFTの調整は受信できるラジオのうち、弱めの局を聴きながらよく聞こえるように合わせておきます。

 このラジオはアンテナコイル(バーアンテナ)への負荷効果が小さいため、アンテナ同調回路における選択度はかなり良好です。同様に感度的にも有利です。これはDG-MOS-FETを使った効果です。 ただし完全な調整を行なわないと本来の感度が得られません。手順に従い入念に調整します。

参考・2Sメータの付け方(簡易版)
 同調点表示器と言ったほうが良いかも知れませんが、簡単にSメータが付けられます。FET:Q2 2SK544FのソースとGND間に入っている抵抗:R10(820Ω)のGND側を切ってGNDとの間にラジケータを挿入します。ラジケータの極性はR10側がプラス、GND側がマイナスです。 ラジケータの内部抵抗がわかればその分だけR10を減らすとなお良いです。 このSメータは逆振れ型で500μA程度のラジケータがよく振れます。 無信号のとき振り切れる場合はラジケータとパラに抵抗を入れて一杯に振れるよう加減します。ごく簡易なものですがメータがあるとラジオもサマになります。(笑)


参考・3:AGC特性(追記:2020.07.25)
測定器を使ったAGC特性の評価結果です。入力として変調信号が400Hzで変調度30%の1000kHz・AM信号で評価してみました。 強さを変えて採った代表的な特性ですが、AGCの有効範囲は約60dB程度でした。 60dB(1000倍)の入力変化で検波出力の変化は12.8dB(約4.4倍)に収まります。6石スーパと比べはるかに優秀です。 なお、IFアンプ自体はさらに大きな入力信号を扱えるのですがコンバータ段が先に飽和しました。しかし大電力放送局の至近でもなければ心配ないでしょう。コンバータ段は感度か大入力特性優先なのかを考えてバイアス調整すると効果的でした。 アンテナがバーアンテナなので測定には「テストループ」を使うべきですが、今回は使用せず簡易評価です。従って絶対感度は求めていません。現状で強弱の違いはありますが関東一円の民放局が受信できます。 これは当たり前ですが、MC3340Pの特性をフルに発揮させるには受信機全体のレベル配分がとても重要です。さらに高性能化するための指針としては、IFアンプのゲインをもう10dB程度アップするかDCアンプを付加して増幅型のAGCにしたいところです。ラジオではなく通信型受信機なら間違いなくそうすべきでしょう。

                   ☆

 もともとMC3340Pを使ってみるのが目的です。 AMラジオではあまり見たことのないようなデバイスを多用した「変わったラジオ」になりました。 前から研究テーマの一つだったDG-MOS-FETを使った自励式コンバータも実験できました。この自励式コンバータは短波帯でも十分使えそうです。  あえて珍しいようなデバイスを使ってAMラジオを作る意味はないかもしれませんが気分転換にはなりましたね。(笑) MC3340Pを試して受信機のAGC回路への適性があることもわかったのは収穫です。 今回は455kHzでテストしましたが、もう少し高い周波数でもかなり使えそうです。
 さらに使い方を工夫してちょっと高級な受信機でも試用してみたいと思っています。 既に良好なAGC特性を持ったIFアンプとしてはAD603を使ったものをテスト済みです。一方、MC3340Pの特徴はその扱い易さにあります。特に低い周波数のIFアンプには有利でしょう。それ自体は低ゲインですから発振しやすいと言ったトラブルもありませんから。

 AMラジオは何回も作ったので、ありきたりのデバイスで作っても面白くありません。 あまり定番にとらわれず手持ちの部品を積極的に使ってみました。従って実験した回路は必ずしも理想的ではない部分もありますが、少し変わった部品でラジオを作ってみたいなら面白いかも知れません。定番の部品を使ったラジオを卒業したら試してみてはいかがですか? ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm