2012年8月16日木曜日

【書籍】Wireless-mic making book

ワイヤレスマイク製作読本
 8月16日は送り盆の日,懐かしい本の話しでもしようか。初孫と言って可愛がってくれた祖父母が健在だった頃の・・・。

 半年も前になろうか、ネット古書店で昔々読んだ本を見つけた。 懐かしさのあまり入手してみたのであった。

 ワイヤレスマイクを扱う本は幾つも出版されていたがこれが印象深く感じる。 製作を主体にした内容だが、初歩的な理論も載っており電波を出してみたいと言う欲求に様々応える内容だったと思う。 半導体と真空管の混じる過渡期だったので面白かったのかも知れない。

 当たり前のように色々なワイヤレスマイクが載っている。 ただ、今どき何かの役に立つのかと言われれば、それも無いのだが・・・送られて来た懐かしい本の表紙を開いた。(初版:昭和38年/1963年・・私が読んだのは1967年頃と思う)

 【サブミニ管を使った50MHzトランシーバ
 記憶にあったのはこのトランシーバの製作記事であった。

 リード線タイプのサブミニチュア真空管:5672と5676を使っている。 サブミニ管を使う・・・と言う部分に興味を覚えたのかも知れない。 左写真の回路図を見ればわかるが、この種のトランシーバは3A5と言う双三極管を使った物がポピュラーだろう。

 入手のことを考えたら3A5が有利だった。サブミニ管を使ったからと言って一段と小型になった訳でもない。 ただ、通販では3A5もサブミニ管も普通に入手できた時代だった筈だ。 サブミニ管は町の電気屋には売っていなかったし家電品にも使われていなかったから物珍しさはあったと思う。

#他の部品はともかく、遠の昔に廃れた筈のサブミニ管が入手できるのだから今は凄い。

もう一度読んで記事は面白かったが流石に超再生のトランシーバを作る酔狂も感じなかった。hi hi

TRIO TRH-1
 TRIO(=いまのKenwood社)のトランシーバ、TRH-1は愛称:スカイドリームと言って当時は珍しいHF帯(80mと40mバンド)のCWとAMのトランシーバであった。 ワイヤレスマイクと言いつつ、かなり本格的なキットの解説もあった訳だ。(実体配線図付き)

  受信部は標準的な5球スーパーにBFOが付いた程度の代物である。 送信部は6AR5の水晶発振にUY-807の電力増幅が付いた構成であった。 まあ、80mと40mなら実用範囲の構成だと思う。

TRH-1の回路図
 あまりのシンプルさに初心者にさえ馬鹿にされそうな構成ではあるが、今になって思えば意外に実用性があったのかも知れない。 アルミ弁当箱シャシにアルミパネルと言う自作送受信機が全盛の時代にあって、オールインワンで持ち運べるコンパクトさはメーカー製キットならではの物だったろう。何しろ発売は1963年頃なのだから。(回路図がないと寂しいのでコメント付きで追加:2012.08.19)

 混んでいるバンドでは選択度を何とかする必要はあるが、CWならかなりQSOできそうだ。 ファイナルは10Wも出るUY-807だし、けしてワイヤレスマイクの範疇にはなく、立派な送信機なのだから。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 時々ワイヤレスマイクが欲しくなることがある。 身近な音源をラジオに飛ばしたいからだ。 それにはFMステレオが良い。「高度な」ワイヤレスマイクもワンチップで簡単に作れる時代になった。安価な市販品だってある。 そんな時代だからワイヤレスマイクも電子入門者の興味対象ではなくなってしまった。 作ってみたいなどと言い出すのは恐らく「昔のラジオ少年」くらいのものであろう。 スマホで友達と簡単に「交信」できるのだから若者にとって目新しさなど何処にもない。今はワイヤレス時代なのである。(だからヒモ付きのHF-PLCなど既に時代遅れだと言うのに・・・)

 TRH-1のコンセプトは今でも面白そうだ。 5球スーパーのまんまでも良いかも知れないが、受信部は少し強化してLA1600にBFOを付けて・・・もちろん世羅多フィルタも付けてやろうよ。 送信部は真空管かな? やっぱりUY-807・・だろうか? え?VFOも付けてDDSで行けって? 板金が億劫だから何処かに良さそうな中古でも落ちていないかなあ。(爆)


 お盆も過ぎれば8月も後半、読経の後ろの蝉時雨に少年の頃を思い出す。 残した宿題に手を焼いた苦い思い出も蘇るのだが・・・。 こうして大人の夏休みも終わって行く。 この本を手にした頃、何時かは何でも纏めて試してやろうと思ったものだった。 今からでもそれは遅くないと思いたい。 de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月11日土曜日

【回路】CAUTION:Noisy Again !

 【3番目の中華DDSモジュール
 既にお馴染み、中華DDSモジュールである。 最近になって、またもや違うタイプが登場したと言う。 一番右のように、透明なLEDが載ったモジュールだ。

 このモジュールにはNTKと言うブランド名と125MHz、3.3Vと印刷文字のあるクロック発振器が載っている。

 少し前に大阪のJE6LVE/3高橋さんが購入された物が同じような特徴を持ったモジュールだったそうだ。 さらに、このBlog読者のお方が最近になって購入された物がこれだそうで、評価用にお送り頂いたのでお願いして1枚赤色LEDのものと交換して頂いた。 もちろん、詳しい評価のためだ。

 【問題のあるクロック発振器
 実は、このモジュールに搭載のクロック発振器には2つの問題点がある。

写真の様に、まずは書いてある仕様が問題なのだ。
DDS-ICのAD9850を125MHzクロックで使うためには5Vで動作させなくてはならない。3.3Vでは125MHzを保証していないのだ。クロック発振器を無理を承知で5Vで使うことになる。

 逆にAD9850を3.3Vで使うことは支障ないのだが、今度は125MHzクロックでの動作が保証されない。仕様書の保証範囲は3.3Vでは110MHzまでだ。 結局どちらかの定格を無視して使わざるを得ないのだ。 安全サイドは3.3Vで使うことだが、125MHzでも取りあえず動くかもしれないが、暑くなったり寒くなると誤動作するかも知れないので好ましいとは言えまい。

 もう一つの問題点は次の写真である。

 【ノイジーなクロックに戻ってしまった
 残念ながらノイジーなクロック発振器に戻ってしまったようだ。 以前のBlogで評価したときのように-55dBc程度のサイドバンドノイズがあって、基本的に通信機用途には「使えない」のである。

 最近になって、写真と同じ125MHzクロック発振器が搭載されていて、基板上のLEDはクリヤーで青色に点灯するDDSモジュールを入手されたお方はお気の毒だがNG品を掴まされた模様である。

 対処方法は奇麗なクロック発振器に交換することだが、それについては前のBlogに書いた通りだ。 一番のお薦めは100円で買える64MHzクロックへの載せ換えだろう。 DDS出力周波数で見て上限20MHzくらいで済む用途へなら消費電流も少なくなるのでベストだと思う。

備考:頒布中のDDSコントロール用マイコンも64MHz対応するのでその旨お書きを。

               ☆ ☆ ☆

 【180MHzのクロック発振器
 おなじ中華DDSの話題なのであるが、こちらはAD9851を使う方のやや高価なモジュールに関する話しである。

 以前中国からの通販で共同購入したAD9851を使うDDSモジュールには30MHzのクロックオシレータが搭載されていた。(青色基板のモジュール。aitendoの物・・最近は黒い基板らしいが・・と見た所は同じだがAD9851が載っている)

 AD9851にはクロックを6遞倍する機能があって、内部は180MHzで動作できた。 当然発生可能な周波数もアップするから例えば50MHzで使いたい・・・となれば、AD9851が断然有利であろう。

 しかし、30MHzクロックを内部で6逓倍すると、どうもジッター(=周波数あるいは周期の揺らぎ)が大きいのではないかと言う話しもあって、それなら内部逓倍などせずに最初から(奇麗な)180MHzクロックを与えたらどうだろうかと言う提案をしておいた。

ただし面実装型で180MHzのクロック発振器は得難いと思っていた。少なくとも安価には。

 ところが、それがあったのだそうで、違う環境での相互確認のためにサンプルをお送り頂いた。LVE高橋さん、VY-TKS!  お話によればどうやらハズレを掴まされた感じがするとのこと。 それで拙宅でも確認の運びと相成った。

 【やっぱり・・・
 写真は、180MHz中心に全体で10MHz幅を観測している様子だ。 高分解能スペアナの守備範囲を越えているので、上限周波数の高い別のスペアナでスペクトラムを観測している。

 上の写真の125MHzクロック発振器とはまた違ったスペクトラムであって、以前評価したことのある「プログラマブル・オシレータ」とそっくりであった。 案外、同じ仕組みのオシレータ回路が面実装パッケージに入っているのかもしれない。

 それにしてもたいへんノイジー・・・と言うよりジッターが酷くて、最初はスペアナが不調なのかと疑ったほどだ。 機器が不調では相互確認にならない。それで念のため校正用CAL信号を観測して正常なのを確認する始末であった。 それでやっと観測結果に自信が持てたと言った案配なのである。(笑)

だめ押しだが・・
 一応,2MHz幅でも観測してみた。 上の写真もそうだが、信号は絶え間なく激しく揺らいでおり、平均化処理をしないと旨くスペウトラムを観測できないほどなのである。(相当酷い状態)

 ひょっとしたらスペクトラム拡散式のオシレータなのじゃないかと疑ったくらいだ。 それにしても中心スペクトラムは大きく存在するからそれもちょっと違う感じなのだ。 要するに,何かデジタル処理機器用のクロックなのであろう。 高速クロックでさえあれば良いような用途に使うモノなのだろう。言うまでもないが通信機の用途には不適である。

 意外に安く売っていたとかで、お互い大いに期待していたのだが残念でしたと言う結末であった。 結局、安価で奇麗なクロック発振器と言うのは得難いのだ。 表示周波数を見ただけでは適否の判断はできないから、良く吟味しないととんでもないモノを使ってしまうことになりそうだ。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 自作の高次オーバートーン発振器も一旦は無用になってしまったと感じていた。 しかし、奇麗で間違いのないクロック発振器は得難いとなれば選択肢の一つとして再浮上しそうだ。 最近になって感じているのだが、奇麗と称する125MHzクロック発振器はあまりにも消費電流が大き過ぎるように思う。 パッケージが触れないようではちょっと発熱が過ぎる。 定格電圧は書いてないがひょっとしたら3.3V用じゃないのかと言う話しさえもあった。試みに3.3Vで動作させると常識的な消費電流に落ち着くようなのだが・・・。

 どうも中華品質に翻弄され気味だが、64MHzのクロック発振器で使えばスペクトラムの心配は無く電気も喰わないので「欲張らないのが」ということらしい。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月5日日曜日

【HAM】Some Hints for DDS Controller

 【DDSコントローラ:活用のヒント】
 便利そうなものでも使い方が旨く伝わらないと活用されることもないだろう。また説明はあっても具体例が何もなければちょっとイメージしにくい。 自家用作品は自分さえわかっていれば済むのだが少々忘れっぽいので備忘に残しておこう。   

TRIOの3395kHzフィルタ
 TRIOの3395kHzのフィルタと言えば、TS-510に始まって、TS-511、TS-311、TS-520ほかTS-801や50MHzSSBトランシーバ・キットのQS-500など、幅広く使われた。

 写真のYG-3395SはTS-511のものであるが、他にYF-3395Sなどがあった。 6素子もしくは8素子のハーフラティス3または4段の標準的なSSBフィルタである。

 たくさん使われていたので今でもオークションに登場する機会も多い。 『TRIOの音』を築いたフィルタとしてなかなか人気があるようだ。


 【キャリヤ発振基板
 SSBを発生させるには、まずは搬送波(キャリヤ)を発生させる必要がある。 写真左は、TRIOの3395kHzフィルタとともに使われていたキャリヤ発振基板だ。 昔々ジャンクに登場した新品の基板で、おそらくTS-510用であろう。

 USB/LSB/CW用のクリスタルが載っており、さらにCW用ナローのフィルタを追加した時を考えてCW送信用のクリスタルが追加できるようになっている。 合計で4つのクリスタルを搭載し4つの周波を発生する。

 クリスタルフィルタとともに、こうしたキャリヤ発振基板が入手できればフィルタの活用も楽なのだが、何故かフィルタに比べて発振基板やクリスタルは入手しにくいことが多い。 基板ではなくても、せめてUSB/LSBのクリスタルだけでもあれば有難いのだが・・・。

 右はDDSを使ったキャリヤ発振基板だ。 例のチャネル式DDSコントローラ・マイコンを使っている。 もしキャリヤ発振基板もクリスタルもなければこれを活用することになる。 大きさも似たような物だから大げさにならず組み込みも容易だ。

 【YG-3395Sのキャリヤポイント
 YG-3395Sの公称キャリヤポイント(SSB発生の為のキャリヤ周波数)は、USBが3393.5kHz、LSBが3396.5kHzである。

 しかし、個々のフィルタによって最適周波数はばらついており、実際には個々に加減しないと最適ポイントに持って来れない。 写真はフィルタの実測特性であるが、一般に平坦域からみて-10〜-20dB低下したあたりにキャリヤを置くのが良い。(遮断域に向かうスロープ特性にもよる)

 -20dBの所とすれば、この例ではUSBが3393.6kHzあたりが良く、LSBは公称値の3396.5kHzでも良さそうだ。 実際に、キャリヤポイントの周波数調整はフィルタの公称値にあわせるだけではだめで、個々の機械に搭載されている個々のフィルタ特性に合わせた調整が必要である。

 例えばTS-511の取説のキャリヤ周波数の調整に関する記述では『マーカーを受信しS9になるようDRIVEツマミを調整し、さらにゼロビートのポイントでS2に以下になるよう(周波数数調整の)トリマコンデンサを調整し・・・云々』とある。 とりもなおさず、通過域から-20dB以下の十分に落ちたポイントに合わせるよう指示している訳だ。

 DDS発振器でキャリヤ周波数を発生させるにしても、公称周波数が発生できるだけではダメである。USBなりLSBなり、必ず上下に周波数微調整ができるようしておく必要がある。(これ,たいへん重要なこと)

 【キャリヤ発振に適したDDS式発振器
 図は、SSBジェネレータのキャリヤ発振に特化するためのDDSモジュールとそのコントローラの使い方を示している。(回路図はマウスの左クリックで開いてから右クリックで保存を選び、別途開くと細かく見ることができる。windowsの場合)

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。(もちろん、付けられるようにしておいても良い) 従って上の写真のように基板の小型化が可能だ。

 写真の例ではコントローラ・マイコン(ATmega328P)はDDSモジュールの下に配置してコンパクトにまとめた。 ダイオードマトリクスと各モードごとの周波数調整VRは別基板に置くようにしている。 またDDSからの信号は小さいので、フィルタを兼ねた狭帯域アンプで増幅する必要がある。

 図の様にダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えている。このように個々に周波数微調整できるようにしておく。 ちょうど、正規の「キャリヤ発振基板」に搭載さえれているトリマコンデンサの役割を持つている。 もちろん取説の説明と同じようなキャリヤ周波数調整ができるわけだ。

                ☆ ☆ ☆


 【TRIOの8830kHzフィルタの例
 中心周波数:8830kHzのクリスタルフィルタはTRIOのTS-820/180/120と言った、PLLを使ったシングルコンバーション形式になった時代のフィルタだ。

 HF帯をシングルコンバージョンでフルにカバーするには3MHz帯では低過ぎる。 そのために8.8MHzを選んだのであろう。 この周波数の近く9MHzには、八重洲無線のFT-200ほかフロンティア・エレクトリックのトランシーバや海外製Rigも多数存在し、シングルコンバージョン形式には適している周波数なのだ。

 写真手前YG-88SWはR-820から、奥のYK-88SはTS-180の物である。 中心周波数は同じであるが、YG-88SWの方が帯域幅はやや広いようだ。

YK-88Sのキャリヤポイント
 緑色のラベルのYK-88Sはやや小型のフィルタである。 特性的にはYG-88SWの方が良好ではないかと思っていた。 しかし、このようになかなか良好な特性であった。

 YK-88Sの公称キャリヤポイント(SSB発生の為のキャリヤ周波数)は、USBが8828.5kHz、LSBが8831.5kHzである。

 しかし、実際の最適キャリヤポイントは写真のようになるだろう。 もちろん、この周波数に対応するチャネルは用意されているので、DDS式キャリヤ発振器で最適対応できる。


YG-88SWのキャリヤポイント
 YG-88SWは8830kHzの標準的なフィルタ、YG-88Sよりも少し広めのフィルタのようだ。 特性的には上の写真YK-88Sよりもやや良好ではないかと思っていたが大差はない模様だ。

 やや広めの帯域幅特性のようである。公称キャリヤポイントは不明であるが、おそらくUSBが8828.5kHz、LSBは8831.5kHzのままではないかと思われる。

 もちろん、個々のフィルタに対する最適値はあるはずで、写真の例ではUSBガ8828.4kHz、LSBが8831.45kHzあたりのようである。 同じようにDDS式キャリヤ発振器なら最適対応できる。



キャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、8830kHzのフィルタを使ったSSBジェネレータに適したキャリヤ発振器に適したDDS発振器だ。 専用コントローラ・マイコンを使いそのまま作れば良いよう設計しておいた。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。 従って上の写真のように小型化が可能だ。

 8830kHzだからと言って、特別なことはないがフィルタとアンプ部分はそれに合わせた設計になっている。 FCZコイルと書いてあるが、トロイダルコアに巻いた「自作FCZコイル」も最適だ。

 ダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えて、個々に周波数微調整できるようにしてある。 もちろん、最適なキャリヤポイントに追い込むことが可能である。 8830kHzのクリスタルフィルタもオークションほかで良く見かけるからこのDDSオシレータで最適化して十分な活用が可能だろう。

                ☆ ☆ ☆



YAESUの3180kHzフィルタ
 中心周波数:3180kHzのクリスタルフィルタは八重洲無線のFT-101/B/Eのほか、FR-101/FL-101と言った、ダブルコンバーション形式だった時代のフィルタだ。

 FT-101シリーズ(Zは除く)は非常にたくさん生産されたため、本体は既にお釈迦になっていてもIF基板やフィルタだけがジャンクに出回っている。

 写真はFT-101(無印)のIF基板に実装されたXF-30Aの様子である。 このフィルタを使ったSSBジェネレータはやや固い音色のように感じる。 帯域幅は上のYK-88Sと同じような物なので、音色の違いは単なる帯域幅の違いではないようだ。 好みもあるのだろう、こちらの方がお好きな人もいる。

 なお、このフィルタは未だFT-101に組込まれたままなので、特性の実測は行なっていない。特性図は省略させてもらった。



キャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、八重洲の3180kHzのフィルタに対応するためのキャリヤ発振器である。 SSBジェネレータに適した各キャリヤ発振器に適したDDSモジュール+コントローラ回路になっている。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に表示する必要はないのでLCD表示器は要らないだろう。

 3180kHzだからと言って、特別なことはないがフィルタとアンプ部分はそれに合わせた設計になっている。 TRIOの3395kHzフィルタと近いので類似のアンプやフィルタで良いと思う。 すこし周波数が低いので、もし調整しきれなければ同調コンデンサを追加するなど行なえば良い。

 ダイオードマトリクスで、USB/LSBあるいはCW用の周波数に切り替えるとともに、それぞれ周波数微調整用の可変抵抗器VRを切り替えて、個々に調整できるようにしてある。 公称キャリヤポイントは、USBが3178.5kHz、LSBが3181.5kHzであるが、もちろん個々のフィルタに適した最適なキャリヤポイントに追い込むことができる。

☆☆  回路の初期調整方法を書いておく。(どの周波数の回路も方法は同じ) まずは、LSB、CWあるいはUSBのどれでも良いので所定のチャネルにスイッチをセットする。 そのチャネルの周波数加減用の可変抵抗器(LSB ADJ、CW ADJまたはUSB ADJと言う名称のVR)を中央の位置に合わせる。 正確な中央位置に合わせるには、電源電圧(+5V)を正確に測って、その1/2の電圧がVRから出力されるようにすればベストだ。 電圧測定はなるべく内部抵抗の高い電圧計を使うべきだ。指針式テスタではなくDVMが良い。

 その状態でDDS出力に周波数カウンタを接続し、スイッチで設定した所定の発振周波数になるようにClock ADJの可変抵抗器(VR2)を調整する。 このようにすれば、良い周波数精度でキャリヤ発生ができる。 なお通電後10分以上経過しクロック発振器の周波数が安定して来てから調整する。 その後はClock ADJ(VR2)には触れないこと。 以後、各モードの周波数微調整はUSB ADJ、CW ADJあるいはLSB ADJのVRで行なうこと。

                ☆ ☆ ☆




455kHzのメカニカルフィルタにも
 中心周波数が455kHzのメカニカルフィルタはフィルタタイプSSB送信機の黎明期にはたいへんポピュラーな存在であった。 CollinsのSラインやKWM-2/Aトランシーバなどに使われたほか、国産機では八重洲無線のFR/FL-100Bライン、FR/FLDX-400ラインでも使われていた。 その後のシンセサイザ時代になってもCollins insideと称してCollinsのメカフィルを内蔵するリグも現存する。

 自作やメーカー製の所謂『高一中二受信機』の選択度改善にも使われたため、いまでも中古品が手に入る。新世代のCollinsメカフィルも入手容易だ。

 写真奥の円筒型と水色のものはCollins製である。 また右の黄色いラベルと、手前のグレーの物は国際電気製である。 他にも455kHz帯のメカフィルは色々あって入手したことのある自作HAMも多いのではないだろうか。 他に多少特性は劣るが、SSB用のセラフィルも村田製作所から出ている。


Collins 526-9939-010の特性
 写真では水色のメカニカルフィルタの特性である。 これはキャリヤ周波数を455kHz丁度としたLSB用に作られたフィルタだ。

 シチズンバンド(CB)のSSBトランシーバ用に作られたらしいが、図の様に遮断特性の対称性は悪くないのでしかるべきキャリヤポイントのクリスタルを用意してやればLSBだけでなく、USBの発生にも支障無く使える。

 その場合USB発生用には451.95kHzが良いようだ。 もちろん、個々のバラツキもあると思うので、フィルタ特性を良く見た上で適した水晶発振子を特注・・・となるのが従来であった。
 

国際電気 MF-455-10GZの特性
 写真では黄色いラベルのメカニカルフィルタである。 これは中心周波数が455kHzの標準的なSSB用メカニカルフィルタである。

 本来の用途はわからないが、一般的な通信機用に作られたものではないだろうか。 通過帯域はやや狭い感じもするが、HF帯のように混んだバンドには適当であろう。

 USB発生用には453.6kHzが良く、LSBには456.35kHzで良いようだ。 もちろん個々のバラツキもあるだろう。



Collins 526-9939-010を使ったSSBジェネレータ
 水色のメカニカルフィルタを使ったSSBジェネレータである。 バラモジは1SS86を4本使ったDBMだ。 DBMのIN/OUTに使ったトロイダルコアはTDK製である。μの高いH-5A材なので少ない巻き数で十分であった。 Amidonの#43材ではもう少し多く巻く方が良い。

 キャリヤは別基板から与える。もちろんDDS式キャリヤ発振器が最適であろう。 CB用と称する安価なメカニカルフィルタを試したくて作ったのであるが、作った当時はキャリヤ発振のクリスタルに困った。 LSB用の455kHzは既製品があったので良いとして、USB用452kHzは既製品が無いのでSSGから与えてテストをしていた。 もちろん今ならDDS式キャリヤ発振器があるからまったく困らない。



455kHzキャリヤ発振に適したDDS発振器
 図は、各種の455kHzフィルタに対応するDDS式キャリヤ発振器である。 SSBジェネレータに適した各キャリヤが発生できるからSSBフィルタの実験が促進されるであろう。もちろんSSBジェネレータ用のみならず、通信型受信機に必須のBFOにも周波数の安定なDDS式のBFOは最も適している。

 周波数調整は初期に行なうだけで良く、常に監視する必要はないのでLCD表示器は要らないと思う。

 従来、455kHzのSSBフィルタを使うにあたっては特性にマッチしたキャリヤ用水晶発振子の特注が必須であった。 しかも、最適キャリヤポイントにドンピシャの周波数を発注しないと厄介なことになる。 HF帯の水晶発振回路とは違って、調整用トリマコンデンサを付けても僅かな周波数調整しかできない。 455kHzと周波数の絶対値が低いため、トリマコンデンサで加減できる可変範囲はたいへん狭いのだ。100Hz動かすのでも大変なくらいである。

 DDS式キャリヤ発振器は、どの周波数でも±1.2kHz以上調整できるようになっている。また、VXOやセラロックのような不安定さとは無縁で水晶発振器の安定度そのままだから安心だ。 455kHzのメカフィルだけでなく、暫く前に流行った搬送電話用128kHzメカフィルや、驚異的特性のURG-1の100kHzフィルタなど様々に活用できる。

                  ☆

 周波数一覧のように様々なSSBフィルタにも対応済みだ。 もちろん7.8MHz、9MHz、11.2735MHz、或は10.695MHzと言うようなポピュラーなSSBフィルタに適したキャリヤ周波数を盛り込んだ。いずれも上記使用例と同じようにすれば良いだろう。 なお、どうしても特殊なキャリヤ周波数をと言うご要望にも対応するので相談を。 ←(特注は管理困難なため休止中) 以下にPDFファイル化した一覧表をリンクしておく。興味のある向きはダウンロードして参照を。

参考1:DDSコントローラ・マイコンで可能な周波数一覧表(Ver.1.0.3)は:ここ(←リンク)

参考2:DDSコントローラ・マイコンで可能な周波数一覧表(Ver.6.4.1)は;ここ(←リンク)
注・このバージョンはDDSクロックを64MHzとし、ATmega168とATmega328を共通化したもの。発生周波数は379chとなり、HAM専用化してある。HAMバンドは18 MHz帯まで対応。なお、21MHz及び28MHzは7MHz帯を3又は4遞倍すれば良い。(上記のリンクは更新済み。なお、ATmega168は在庫切れのためすべてATmega328版となります。:2017.12.13)

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 写真と図面で実例を多用したら、長ったらしいBlogになってしまった。 具体的で後々まで参照できそうな内容を心がけた。 手持ちの各種SSBフィルタに活用できたらFBだ。 水晶発振子メーカーの廃業続きでキャリヤ発振用水晶発振子の特注は難しくなってしまった。 中華DDSモジュールとAVRマイコンのお陰で有用な開発ができるのは有難い。

 まもなく、有明のビックサイトで『2012・HAMフェア』が開催される。 例年ジャンクを見ていると、様々なSSBフィルタやフィルタ付き基板ユニットが販売されている。 フィルタがあってもキャリヤ用水晶に困るから変な周波数のフィルタには手を出さぬようにしていた。 しかし、もうその心配はない。 安価な中華DDSの応用で自由自在にキャリヤ発振器が作れる。どんなフィルタでもドンと来いと言った感じだ。(笑) de JA9TTT/1


(おわり)

参考;ここで使ったDDSコントローラ・マイコンは、前のBlog(←リンク)で頒布中。

2012年8月2日木曜日

【HAM】Overhaul a EMOTATOR 1105MX

 【エモテーターのオーバーホール
 写真はかつての江本アンテナ、今の(株)エモテーターのアンテナローテーター:1105MX型である。 只いま当局は秋に向けてアンテナの整備中なのだ。 先日はローカルのYさんと、Sさんにお願いして古いアンテナの撤去から開始した。(YさんとSさんに感謝!) 

 HF帯14MHz〜VHF帯は1200MHzまでのアンテナをリニューアルしている。 その一環としてアンテナローテーターの整備も行なうことにした。 これは降ろして来たばかりの写真である。だいぶ汚いが、これでも少しは掃除してあるのだ。(笑)

 この1105MX型は今から27年も前の1985年に購入した年代物である。 当時、なるべく大きなアンテナが回わせて安価な物を購入した記憶がある。 だからコントローラを含めて全般に簡素なものではあるが、目立った故障も起きず長年タワーの上でアンテナを回し、支え続けてきてくれた。

 コネクタ部分には自己融着テープが入念に巻いてあったので奇麗な状態であって、雨水の浸入はなさそうであった。 テストしてみたら一応回転はするのであるが、流石にグリースの固着など考えられるし、幾らかのダメージもありそうだ。なので、この先の使用には心配がある。新品に交換するかオーバーホールは必要そうであった。

 そこでエモテーターに電話をしたら『古くても』定額でオーバーホールしてくれるとのこと。 費用を聞いたら新しく購入するよりも経済的な感じだし、メーカーのオーバーホールならこの先も安心だろうと思った。 さっそく依頼することにした。 納期は繁忙状態にもよるそうだが、空いていれば1週間程度とのことであった。

オーバーホール完了
 送ってから約1週間、オーバーホールは無事に済んだ。 追加費用は掛かっても交換可能なネジ類はなるべく新しくしてもらうことにした。 やはりこの先また10年以上は使いそうなので、錆などを考えると可能なことはやっておきたい。

 購入した時にユニバーサルカップラーを追加してあったので そのままメンテナンスに出した。 その部分のネジなども含めて交換されてきた。

 エモテーターに到着したころ、すぐに電話があって状態の説明があった。 案の定、グリースなどが固着しており、だいぶ酷い状態だそうである。 それもそのはず、ほんらい数年ごとにオーバーホールすべきなのをずっとさぼって来たのだから、もしも自身で開けたなら『見ない方が良かった・・・』と言う惨状だったに違いない。

 過回転防止用のリミットスイッチも寿命に近い状態になっていたそうである。 内部を清掃しグリースアップして再組み立てしてくれるとのこと。 流石に、自分でやるにしても道具や手間、そして油脂類の手配や洗油の処理なども考えれば面倒なことは明らかだ。 これはあっさりお願いして良かったと感じた次第。 写真の様に奇麗になって戻って来た。 コントローラの箱も天部に少し凹みがあったのだが交換してくれたようである。VY-TNX!

 【交換したネジ類
 Uボルトは勿体ないとかで、交換しないかもしれないと言う話しであったが、やはり交換したようだ。 再利用するにはあまり状態が良くなかったのかもしれない。

 それにしても、細かいネジ類まで色々交換してくれたものだ。 ここまでやってもらったと言うことは、相当奥深くまで分解整備したことになるだろう。

 もちろん、再組み立てのトラブルだって無い訳ではないだろうが、素人のメンテナンスじゃあるまい『おや?ネジが余った・・・』と言うようなこともないだろう。 もちろん安心できる。(笑)

意外に安価なオーバーホール
 定額料金は15,000円だそうである。 そのほか、リミットスイッチと取付け板などが交換されていた。 モーターや減速ギヤなど主要部品がNGだともっと掛かるかもしれない。 他の部分は特に支障はなかった模様だ。 DXerではない当局はあまり酷使していないからグリース固着はともかく、全体の状態は悪くなかったのかもしれない。

 ほか、返送料と代引きで送ってくる関係でその手数料が発生している。 合計で¥21,525-であった。 他にこちらから送った際の送料が¥1,270-ほど掛かっている。

 昨今、ハム用品は大変な売れ行き不振とかで、ショップではローテーターもかなりのディスカウントになっているらしい。 だから思った以上にに安価に買えることもあるようだ。 しかし整備すればリッパに使えるものを捨ててしまうのは勿体ない。メンテナンスして使う方がエコであろう。 それに新品を買うよりもチョッピリお財布に優しいと思う。 27年で無線機は飛躍的に変化したが、ローテーターはそれほど違わないように感じる。 妙な電子回路の入っていないこのローテータの方が信頼性は高いだろう。この先も愛用することにした。

 これで秋口に予定しているアンテナ工事の準備がまた一つ整ったことになる。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ずいぶん前のことになるが、屋根上のルーフタワーでマストベアリングを分解していたことがあった。 間違って、パチンコ球のようなベアリングをこぼしてしまって焦った。

 拾い集めても元々何個あったのかがわからない。 すかざす江本アンテナに電話して、球数を教えてもらった。 足りない分を注文したいと言ったら、頼む前に届いでビックリしたことがあった。コールブックでQTHを調べて送ってくれたのであろう。

 クラブで使っていたかなり旧式のローテータのメンテナンスを依頼したら非常に丁寧な作業をしてもらえた経験もあって、以来ずっとエモテーターの愛用者である。 de JA9TTT/1

(おわり)

2012年7月16日月曜日

【回路】Bye bye HAM-Band Crystals !

チャネル式DDS発振器:部品面
 DDS モジュールの活用編である。 先月の予告編で紹介したDDSを使ったスイッチ式の発振器が概ね完成した。

 あとで回路図をご覧頂くとわかるが、部品は少ないので伴って配線もわずかだ。 従ってハードウエア的にはごく簡単な製作と言える。

 特にクログラム書込み済みチップを使い、外部の5V電源で動作させれば写真よりずっと簡略化できる。 選択可能な周波数(チャネル数)は873あるが、全部を必要とするケースは稀だろう。 特定の数波だけで良ければ、DIPスイッチも省略し数個のスイッチで十分で、一層簡略化される。 そうしたケースではLCD表示器も不要なはずだ。

チャネル式DDS発振器:配線面
 開発用の基板なので、全チャネルの選択が可能でLCD表示器とプログラム書込み用のISPコネクタも設けてある。 そうした配線の分量があるので、多少複雑そうに見えるが、部品が揃えば半日も掛からずに完成できるだろう。

 配線にはφ0.32mm/UEW線とAWG32のテフロンワイヤを用いている。 UEW線を使った配線は頼りなさそうに見えるが、被覆も丈夫で鋭利な刃物のような物で傷を付けなければショートするようなことはない。

 細いので引き回しは楽である。予備半田の際に半田コテ先で被覆が簡単に除去できるので作業性はたいへん良い。最近はよく使っているが、後からのチェックが厄介なので配線は間違えないように。

マイコンはLCDの下
 この基板1枚で完結させたかったので、部品の配置が多少窮屈であった。 実際に使う際においてLCD表示器は必須ではない。しかしプログラムの開発中は無いと捗らないから不可欠である。 マイコンをまたぐように搭載した。

 スイッチを読取るためのポート数から、28pinのATmegaX8シリーズを使うことでプログラム開発を始めた。 なるべくたくさんのピンがあった方が有利なので、クロック発振は内蔵8MHzを使い外付けクロックに割り当てられるピンもポートB6、7として活用した。 既に余剰のピンは無いので機能拡張は難しいが、その前にプログラムメモリの問題も発生している。(次項参照)

ATmega328P-PUを使う
  DDS式VFOと同じく、最初はATmega168-20PI(次の写真)を使って開発を進めたが、メモリをたくさん積んでいるマイコンチップの方が有利なので、途中から写真のATmega328P-PUに交代した。 同じ回路のまま差し換えできるしプログラムの互換性も高いから同じATmegaX8シリーズでの乗換は極めて容易である。

 ATmega328P-PUは32kバイトの(フラッシュ)メモリを内蔵している。 現状に於けるメモリ使用率は99%となっており、何か機能追加するには周波数データの数を削減する以外に方法は無いのである。記憶する1つの周波数あたり4バイト(32bit)分ずつメモリを消費するので周波数データだけでもかなりの量になっている。 おまけに高級言語コンパイラを使った開発なのでメモリ喰いなのはある程度やむを得ないと思う。見かけプログラムは巨大であるが、実行速度が落ちない方法を考えた。従って各動作はスムースである。

 【ATmega168-20PIでも動く
 前のようにBASCOM-AVRコンパイラのバグ問題が発生している訳ではないので、プログラムメモリが16kバイトの ATmega168-20PIでももちろん快適に働いてくれる。

 但し、収容可能なチャネル数はおおよそ40%程度の379になってしまう。 多くの場合、それでも十分なので自家用としては支障無く使える。用途次第とは思うが、自身はこれを積極的に使うつもりだ。

なお末尾で案内する『頒布用』には汎用性を考えて、上のATmega328Pの方を使うことにした。

 【動作ささせてみる
 外付けが必要なのは、10kΩBカーブの可変抵抗器だけである。 これは、各チャネルの上下、約1.2kHzの範囲を10Hz刻みの周波数可変ができるからだ。 VRはその可変の為に使う。しっかりしたVRにきちんとしたツマミを付けると扱い易い。

 もし、周波数可変は初期調整のみ、即ち半固定でも良ければ半固定VRを使っても良い。 或はマイコンに行く端子に電源電圧Vccの半分、即ち1/2Vccを与えてやればチャネルの中心周波数に固定されるのでそのように使っても良いだろう。

 【チャネル切換えスイッチ
 左の2つが2ビット分のスライド・スイッチである。 この2つのスイッチで0〜3の4つのバンクの切換えを行なう。(SW-3)

 2つあるロータリースイッチの左側が16あるセグメントを切り替えるスイッチである。(SW-2) その右のスイッチで各セグメント内の16のチャネル(予めセットしてある周波数)を切り替える。(SW-1)

 合計では4×16×16=1024チャネルとなる筈であったが、マイコンのメモリ量の制限でATmega328Pで873、ATmega168では379チャネルの内蔵となった。 これだけのチャネル数があると、かなりの汎用性を持った発振器になる。マズマズ満足なものと思う。

 【クロック周波数の誤差補正
 各チャネルの周波数精度は、DDS基板に搭載されているクロック発振器(写真右下の銀色の四角いハコ)の周波数精度と安定性で決まってしまう。初期誤差は下記の回路図・1〜3ではF-ADJと書いてあるVRで合わせ込むことができる。なお、常時調整するような物ではないので半固定抵抗器で十分だ。

 一般に、こうしたクロック発振器の初期周波数精度はあまり良くないので、何らかの補正を行なわないとジャストな周波数発生はできない。

 ここでは、DDS-VFOで採用したのと同じように、内部のプログラム処理により数値的にクロック周波数の誤差を補正する方法を採用している。 残念ながら中華DDSモジュールに搭載のクロックは誤差が大きいため、このVRだけでは補正できない場合があって個々に補正値を焼き込む方法も併用している。互換性が問題になるがやむを得ないだろう。 動作中の周波数安定度は一般的な水晶発振なみと言った感じで、まずまずである。

追記(参考):10MHzが出るチャネル「0DF」でウオームアップ後に10,000,000Hzジャストに合わせ込んで様子を見ている。1Hzの桁が少し動く程度であって、室温があまり変化しなければ1ppmには十分入る程度の周波数安定度のようだ。(ATmaga168版では「1FX」または「2XX」)

 【チャネルの上下に周波数可変でできる
 発生可能な周波数は873あるいは379チャネルであるが、どのチャネルもそこを中心に±1.2kHzだけ周波数可変できる。下記の回路図・1〜3に±TUNEと書いてあるVRで周波数可変する。常時周波数操作したいなら写真のような可変抵抗を使いパネル面に出しておく。滅多にいじらないなら半固定抵抗でも良い。

 VRの中央位置でチャネルの設定周波数になる。 単純な固定周波数発振器ではなく、多少なりとも周波数を上下できるようになっているので、ゼロインすると言った使い方も可能である。 なおVRの周波数分解能は10Hz刻みである。

 後ほど周波数一覧表を見てもらうとわかるが、HF帯のハムバンドのかなりを1kHzもしくは2kHzおきのチャネルでカバーしている。 従って、このVRを併用することで事実上、ハムバンド内が(10Hz刻みに)連続してカバーできることになる。

 【周波数表示
 積極的に周波数可変の機能を使うなら、LCD表示器があった方が良いだろう。 表示上段には実際の発生周波数が表示されている。 表示下段には周波数移動量が表示される。

 写真の表示例では、チャネルの周波数は7005kHzであり、それを上の写真で示したVRの調整で0.4kHzだけ下に移動している様子を示している。 VFOほど任意ではないが、完全なチャネル式のようにまったく融通が利かないわけではなく、かなり「任意」に動くことも可能だ。

 【デジスイッチ
 使用したものは写真左上の物である。 こうしたロータリー型の場合は必ず負論理型のスイッチを使う必要がある。 要するにポジションが「0」の時に、コモン端子と全部の端子が繋がり、ポジション「F」の位置で全部の端子がオープンになる形式の物を使うこと。

 これはマイコンのポートを内部でPull-UPしているからだ。もしも正論理のスイッチの場合はPull-Downしなくてはならないが、マイコン内部でそれはできない。 従って外付けの部品(抵抗器)が8個も増えてしまう。 もちろん、プログラム的に論理を反転しても良いのだが、今度は負論理のスイッチは使えなくなるので結局同じことだ。

 左下の青い物は秋月で売っている物で、ノブが付属しているので使い易そうだ。こうしたスイッチは正論理と負論理の両方が売られているので型番を良く見て購入する必要がある。(:写真は正論理の方なのでノブの部分が赤色の負論理の物を購入すること!)

 写真右側のスライドスイッチ形式の物はそうした注意は特に要らないだろう。 但し、ON/OFFの関係でツマミの位置が上でONの時にゼロ、下のOFFで1になるから直感的でないがやむを得ないだろう。(まあ、ノブが下でONになるよう、スイッチを上下逆さまに付ければ良い訳なのだが・笑)

回路図・1
 DDSモジュールの出力にLPFも付加した満載バージョンである。 実際には、写真の基板に全部品を載せるのは無理があって、次のLPF省略型にした。

 使用周波数が決まっているなら、周波数にマッチしたLPFを載せるか、同調形式の狭帯域アンプなどを付加すべきだろう。左図回路例では20MHzのLPFになっている。他の周波数にするには、こちらのリンクの参照を。 DDSオシレータの原理上、スプリアスはかなり有るので用途が決まっているなら外付けは広帯域アンプでない方が良いと思う。 なお、負荷は50Ωとしている。 この回路を含め下記のいずれの回路でもDDSモジュール基板上のR5(200Ω)は除去して使用する必要がある。 マイコン(MPU)はATmega8と書いてあるが、ATmega168あるいはATmega328も同じピン接続である。

注:モニタLEDはDDSモジュールへデータ転送が行なわれている瞬間のみ点灯する。なにも変化の無い状態では消灯が正常である。
  
回路図・2
 取りあえず、DDS基板上のLPFに依存し、出力には200Ωを50Ωに変換する為のRFトランスを付加してある。

 実用に際して、信号レベルは低いから別途増幅するとともに、スプリアスを除去するために適宜フィルタも付加する必要がある。 LCD表示器は無くても良いが、周波数調整のツマミを設けるならあった方が使い易い。 逆に固定した数波を得たいだけなら、最初に周波数を合わせるだけなので、LCD表示器は無くても実用になる。マイコン(MPU)はATmega8と書いてあるが、ATmega168あるいはATmega328も同じピン接続である。


 【回路図・3
 最も簡略的に使用する例である。 LCD表示器は設けず、電源も外部からの5Vに依存する。 もちろん、プログラムの書込みも別の基板で行なうので、書込み用のISPコネクタも付いていない。マイコン(MPU)はATmega168と書いてあるが、ATmega328も同じピン接続である。

本来、ごく簡単な用途に使いたいだけならこのくらい簡略に使う方が良いかもしれない。 マイコンのポートに付いているスイッチも、必要なビットの部分だけにしてしまい、あとはGNDするかOpenにしたままで良い。 SSBジェネレータのキャリヤ発生用ならせいぜい2〜3ビット切り替えるだけで良い筈である。 水晶発振器の代替として使うなら簡単な物ほど良い。

周波数一覧表
 使うためには周波数表がなくてはならない。 左図は、そのごく一部である。周波数はHz単位で書いてある。(例:7MHz=7000000)(下記リンク更新済み:2017.12.13)

頒布済み品の一覧表(Ver.1.0.2)は:ここ(←リンク)
次回予定品の一覧表(Ver.1.0.3)は:ここ(←リンク)

 上記の一覧表はPDF形式のファイルで、印刷すればA4用紙で8ページになる。自作ラジオのファンや自作HAMが欲しくなりそうな周波数が目いっぱい詰め込んでみた。どうしてもダウンロードできないときはメールでも。メール添付でお送りする。たった1個のマイコンとわずかな部品,そしてDDSモジュールで800個以上の水晶発振子が手に入るわけだ。(笑)

 見てもらうとわかるが、左端に縦に並んだ「バンク0」は主に一般のラジオ工作に向いたテストオシレータ用である。 BC帯が9kHzおきにフルカバーされている。 短波帯もかなり細かく発生できるので、多バンドラジオの調整などにも使えると思う。 なお、バンク0の「セグメント0」には低周波も含まれるが、上の回路例のようなRFトランス結合では旨くないので、ここを使いたい場合はOP-Ampなどを使ったバッファアンプに変更する必要がある。その場合、DDSモジュール:9番ピンのSINA端子から信号を取り出すと良い。

 中央の2列、バンク1とバンク2はまずは135kHz帯のHAMバンドに始まって、HF帯の各HAMバンドをかなり細かくカバーしている。 特に各バンドのCWバンドは1kHzもしくは2kHzおきになっているので、即ちこれでハムバンド用クリスタルとはBye byeできるのだ。(笑)

 一番右の列、バンク3は、28MHzを粗くカバーするほか、セグメント2には著名なQRP用周波数をインプットしておいた。またポピュラーなSSB/CWフィルタに適したキャリヤ発振器にできるよう周波数を入れてある。7.8MHzや9MHzと言った市販のフィルタのほか、往年のFT-101やTS-520、TS-820などのフィルタに合ったキャリヤ発振ができる。 ほかUser-A〜Fという場所があって、頒布する際に幾らかでも希望者のリクエストにお応えする部分である。ご希望の周波数があれば個々に書込んでお送りするつもりだ。(次回以降の頒布は、Ver.1.0.3で11.2735MHzや10.695MHzのフィルタにも対応したバージョンになる。2012.07.29)

 周波数リストは確定的なものではない。 これだけは外せないと言うような周波数でもあれば、コメント欄あるいはメールなどでお知らせ頂ければぜひ盛り込みたいと思う。 「Blogの視聴者参加(笑)」の部分なので遠慮せず希望周波数のお知らせを。   ←現在は個々の希望周波数は受け付けていない。(管理がたいへんなため。頒布は上記一覧表のもののみ。2013.04.15)

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 自身で使うなら「回路図・3」で使うのではないかと思う。 なにしろ、部品が少ないので、ごく単純な発振器としては扱い易いだろう。 大抵の場合、+5V電源も用意されているので、放熱の苦しいオンボードレギュレータよりも有利だろう。

 逆に、スイッチやLCDもフルに実装して、簡易な調整用発振器として使うのも悪くないだろう。 AMラジオの調整には変調が掛かっている方が良いが、簡単な方法で可能そうなので後ほど報告したいと思う。 AMバンド全域をカバーするのでワイヤレスマイクのような用途もありそうだ。

 DDS-VFOのような可変型の発振器とともに、固定周波数型の発振器のニーズも高いので、こうした形式の発振器も用意しておく必要があると思う。 HAMバンドをカバーするチャネルは、シンプルな送信機の実験や、ダイレクトコンバージョン式の受信機実験にも便利そうだ。 昔懐かしい逓倍形式のCW/AM送信機のVFO代わりにもなるだろう。 ふらつくVFOでオンエアするよりもずっと安心だと思う。 いずれ、TX-88AやTX-88Dで遊んでみたいと思うので、その時にはVFO-1の代わりに、言わばFT-243型ハムバンド水晶の代用品として使ってみたい。 de JA9TTT/1

参考:このDDSコントローラの「活用のヒント」(←リンク)を纏めたページを追加。(2012.08.05)

頒布案内
 近ごろミニブームなので「中華DDSモジュール」を買ってはみたが、持て余し気味だろうか。 そうしたお方には朗報になるかもしれない。 AD9850を使った中華DDS 基板を制御するための「プログラム済みマイコン」をお分けする。あくまでも自家用の目的だが、だからこそ安易に妥協などせず動作は十分吟味したものだ。 ATmaga328P-PUバージョンで、上記回路図の1〜3のいずれでも動作するもの。制御対象のDDSモジュールは写真の物だけでなくaitendoの青色DDS基板でも可。(DDSクロックは125MHzあるいは64MHzのいずれか。希望を明記のこと。あとから修正は不可)

 商売ではないので頒布は相当の物品との物々交換で行なう。思い付かなければ金千円でも可。手間を省くため¥120分の切手を貼って宛名を書いた返信用封筒(SASE)もお送り願う。既に「おまけ」DDSモジュールは完了。マイコン+28pinソケットのみ頒布中。ATmega328Pは当分市販されると思うので頒布は継続できそう。「プログラム済みマイコン」の希望はメールで。メールは「ttt.hiroアットマークgmailドットcom」で届く。カタカナ部分は英数小文字に直すこと。

*SASE到着済みのお申し込みに対しては、すべて発送済み。(2013年4月14日)

(参考:プログラムおよびリストの公開予定はありません)

(おわり)