2012年10月28日日曜日

Do Androids Dream of Electric Apple? , part 1

アンドロイドは電気林檎の夢を見るのか?

iPad mini
 7インチが出そろってタブレットPCが賑やかだ。
Book Readerとしてはamazon.comのkindleが数年先行しており、拙Blogでも3年ほど前に扱ったことがあった。(→リンク) ただ、それはあくまでもBook Readerであって、タブレットPCではなかった。

 「つかえる」タブレットPCとしては、AppleのiPadまで待つ必要があったようだ。

 ユーザーインターフェースが洗練され、マルチタッチ式パネルの採用で、指先で簡単に画面のスクロールやズーミングができるなんて、タブレットPCにうってつけの仕組みだ。 それまで誰も本格的に採用していなかったのだからAppleのユーザーインターフェースに対する意気込みを感じる。 そして先日iPad miniが登場し、大き過ぎて高価すぎるタブレットPCもより身近になってきた。 いよいよこれを買おうか?


Nexus 7
  android OSは無償で使える汎用OSとして、googleが開発している。それを採用したタブレットがついにgoogle自身から登場した。本家・本元のandroid Tabletと言う訳だ。

 iPadはAppleのiOSを採用している。しかし、それは自社製のタブレット或は自社のスマホ:iPhone専用である。
 それに対してandroid OSは誰でも使えるので、すでに様々な情報端末に採用されてきた。 そして、今ではタブレットPCに必要な機能が標準的に搭載されている。
満を持して、google自身が作ったのがNexus 7である。 販売はgoogleが行なうが、製造元はASUS TeK Computer Incだという。 なかなか本気そうなスペックである。

まっとうな考えなら、上の iPad miniを買うか、このNexus 7が良いだろう。 他にやっと日本にも登場したamazonのkindle Fire HDも良さそうなのだがBook Reader以外の使い方には制限がありそうだった。 amazon.jpにべったりな使い方なら良さそうなんだが・・汎用タブレットとしてはiPadかNexus 7が良さそうだ。

                ☆ ☆ ☆

中華Pad
 DDSモジュールでもそうだったが、「中華もの」はいま一つ信頼に欠けるところがある。 しかし、非常に安価であって、こうしたタブレットPCの世界でもそれは同じだ。

 OSは無償のandroid OSが採用されている。 少なくともOS費用は不要なのでその分だけ安い筈だ。 それでも、この破格のお値段には興味を感じざるを得ない。

 機能・仕様はNexus 7と比べてほぼ同等かむしろ優れた部分さえもある。 直接比較できるNexus 7の半値以下とあっては「ダメもと」で試して見る価値は大いにありそうだ。 それで、さっそく買ってみた。 他に32GBのmicro SDHCメモリカードも同時購入しておいた。本体に装着して本体8GBにプラス32GBの容量拡張ができる。

momo9
 「中華Pad」と言われるandroid Tabletは非常に沢山の製品が売られている。 比較サイトができている位で素人には選択に困るほどだ。

 その中から、上記のmomo9と言う製品を選んでみた。 情報が多く総合して自身である程度までなら対処可能そうに思えたからだ。 要するにリスクは自身でとる覚悟で安価な「中華もの」に手を出す訳だ。(笑)

 簡単な梱包で届いたのはこんな箱に入ったandroid Tabletだった。 おそらく、7インチタブレット用に標準で売っている箱に詰めているのだろう。 箱にはブランド名も型番も書いてない。

momo9:出してみる
 箱を開ける。
半透明で薄い保護袋に包まれた本体が現れる。 外観形状も他社パクリ品を含めて規格統一なのだろうからハコも標準化できる訳だろう。

 本体には表・裏ともに保護フィルムが貼られた状態で送られてくる。 あまり上等とは言えない保護フィルムだが、取りあえずそのまま使うのに支障はないようだ。 剥がさずに使うことにしよう。 なお安い保護フィルムは貼ったままにすると剥がしたとき糊が移ることがある。

momo9:これで全部
 箱に入っていたもの全部である。

写真で本体下のドキュメントは、簡単な説明書だけが日本語である。 英語の小冊子はandroid Tablet用の汎用品らしい。

ほか、右のケーブル類が入っている。


 
付属の説明書
 小冊子は汎用品らしい。

このバージョン(4.0.3)のアンドロイド・タブレット共通に使える内容になっている。 取りあえず、必要そうなことは書いてあるようだった。

 これの翻訳版はWebに上がっているが、使いながら理解してしまえる程度のざっとした内容だ。

付属品
 付属品はこれだけ付いている。安い割には立派なものだ。

AC100V用5V2Aの充電器・ACアダプタ、USBケーブル、TVに繋ぐHDMIケーブル、OTGケーブル、それにステレオ・イヤフォンである。
 この充電器は軽量なスイッチング.タイプである。PCからUSB経由で充電すると非常に時間が掛かるので実用的でない。

 それぞれビニル袋に入っていたが、出して並べてみた。 OTGケーブルと言うのは、android TabletにUSBメモリを読み込ませるときに利用する。 ケーブルが標準で付いているのは有り難いと思う。 購入したものはUSBマウスが使えるのはもちろん、USBメモリもそのまま読むことができた。

説明書と注意書き
 和文の注意書きは、この商品の性質が説明されている。 簡単に言えば、初期不良には交換に応じるがあとは知らないと言ったところだろうか。

 出荷前に簡単なテストはしているようだが、一般に中華Padの不良率はかなり高いらしい。 本気でマトモなメーカーなみの保証をしていたら商売にはならないだろう。

 ハズレを引いた場合は騒いでもしょうがないので、素直に諦めるのが精神衛生上は宜しいようだ。何せ破格に安いのだからやむを得ない。(笑)

起動させる
 正確に言うと、購入した状態では完全Power OFFの状態になっている。

 本体を横長に持って、右上にあるパワーボタンを長押しすると、起動が始まって暫く起動画面が流れる。 その後、左のような画面が現れる。(最初、時刻は合っていないかも知れない・簡単に直せる)

 これ、重要なことなんだが、こうしたタブレットPCは、使い終わったらレジューム状態(一種の待機状態)にしておくのが普通らしい。 完全にパワーオフしてしまうパソコンとは使い方が違うのだ。 レジューム中の待機電力もわずかで済むようにできている(らしい)。 従って次の起動ではほんの数秒で使用可能な状態に立ち上がる。これはたいへん便利な使い方だ。 OSの起動を待つなんてナンセンスにさえ感じてしまう。

 レジューム状態にするには本体右上のボタンを短く押す。 次の再起動も同じように、右上のボタンを短く押せば良い。

ロック解除
 起動したら、鍵のマークの部分に指先を当てて右にあるロック解除のマークのところまでスライドする。 これでOKだ。

 良く説明を読めば良いものを、最初は何も読まずにやってたらこんなつまらん部分でつまずいた。 ロックが解除できなくて次の画面に進めなかった。(笑)

デスクトップ
 パソコンで言うところの、デスクトップ画面だ。 デスクトップの壁紙は幾つかお仕着せのものがあって、それから選択できるほか、自分の写真も使える。 なので、各人で背景の写真は異なるだろう。これはお仕着せで入っていた物から選んだもの。

 また、デスクトップにおくアイコン・・・正確にはwindowsで言うところのショーカットアイコン、Macで言ばエイリアスに相当する物が並べてある。 これはこのあと出てくるアプリの一覧から常用したい物だけをディスクトップに並べておく。(これは好みで) ここに表示されたアイコンをタップするとすぐ起動できるから便利だ。

アプリ一覧を見に行く
 デスクトップ画面の右上に、6つの四角いドットが見える。

 この部分を指でタップすると、アプリの一覧を表示する画面が現れる。(次の写真)



アプリ一覧・1
 このタブレットは元々中国市場向けなので、最初から入っているアプリは中華アプリだったらしい。

 しかし、輸入したお店の方で日本語化した際に、日本のユーザーで一般的と思われるアプリをインストールしておいてくれる。意味不明な中華アプリも削除済みになっている。

 その状態で手元に届く訳だ。 写真には幾つか自分でインストールした物も含まれているが大半は買った時に入っていた物である。 なかなか良さそうなアプリが入っていた。 おまけにroot化してあり、super user化もしてある。 初心者には危険かも知れないが、それらはいずれ必要なことだ。 この画面でアイコンをタップすれば各アプリが起動する。

アプリ一覧・2
 指先でスルスルッと画面を左スクロールすると続きが見られる。前のアプリ一覧写真でわかるが、google playストアやPlayブックから購入できるように「フルマーケット化」されているので日本で使うのに支障ないよう考慮されている。

 なお、google play storeには有料・無料あわせて60万種類以上のアプリがあると言う。 多くはandroid携帯用らしいが、かなりのものがタブレットでも使える。 もっとも、Appleと違って審査はゆるゆるだから玉石混淆であり、個人情報を抜くのが目的のようなアプリもあるので要注意だ。無料ゲームの類いやユーティリティ系が危ないそうだ。良く確認してインストールしたい。

 もしも、中国に行った時、現地で購入すると当然のことながら日本語フォントすら入っていないのでまずは日本語化やフルマーケット化など設定替えをしないと使い物にはならない。相応の知識は必要だ。そう言う意味で日本の業者から買う意味はあると思う。それに例のAliexpressでも調べて見たが、中国直接でもそれほど安くはなかった。

 ほか問題があるとすれば、Wi-FiやBluetoothと言った無線関係が日本の技適を取得していないことだ。 これを大っぴらに使うと電波法違反になる・・・と言う訳で、表向き私は有線LANで使うことにしておく。(爆) 2.4GHz帯の標準的な物なので実害はないとは思うのだが・・。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 タイトルの『Do Androids Dream of Electric Apple?』と言うのは、Philip・K・Dickの有名なSF小説『Do Androids Dream of Electric Sheep?:邦題・アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?』から頂いたものだ。映画「ブレードランナー」の原作と言った方がお馴染みだろうか。 しかし、Blogとストーリーとの関連はまったく無いので悪しからず。 なお、小説ではタイレル社が作った最新アンドロイド(=レプリカント)はNexus 6型である。そしてGoogleが作ったandroid TabletがNexus 7型と言うのは、もちろんそれを意識したネーミングに違いない。

 では、安価なアンドロイド・タブレットはAppleの電気林檎:iPadの夢を見ることができたのだろうか? 続編ではそのあたり、実際に使った感触などを交えたいと思う。

                  ☆

 数年前に米amazon.comのBook Reader『kindle 2』を購入したことがあった。電子書籍は未だ日本進出前ではあったが、PDF化したドキュメントが読める、起動が素早い、長時間バッテリ動作ができる、コンパクトで軽量である・・などの特徴から使い始めた訳だ。(その顛末は→こちら

 そこには早々に日本のamazon.jpがkindleに対応し、正式に日本語化がなされ日本の書籍も買えるだろうと言う期待もあったのだった。 しかし、何年も待たされ、やっと先日になってアナウンスされた。 しかも年月の経過でハードウエア/プラットホームは大きく様変わりしてしまい、実現した時には古い機種のサポートは切り捨てられてしまった。(大きな被害は無いがちょっと残念)

 当時の情報プラットホームすなわちkindle 2の性能は未だ中途半端な物であった。少なくとも日本で使うには満足できない部分があった。モノクロで反応の遅いe-Inkを使った電子ペーパー・ディスプレーだからネットへのアクセスはほとんど実用性が無かった。 最近になって、仕様を見ていたらandroid Tabletならそれを越えられるように感じた。 もちろんAppleのiPadなら間違いないだろう。 しかしお値段のことは別としても排他的なiPad miniの仕様・仕組みには少なからず気になる部分があった。 そこで目的に対して十分そうなら安価な中華タブレットも良かろう、試す価値は十分ありそうだと踏んだのである。 de JA9TTT/1

つづく)←リンク

2012年10月8日月曜日

【部品】Russian Transistor ГТ905А

 【Russian Transistor ГТ905А
 またまたロシア製のトランジスタГТ905А(GT905A)だ。 
前の、GT329B(=1T329B)と同じように、元々はソ連時代のトランジスタではないかと思う。

 ロシア製ゲルトラ(=ゲルマニウム・トランジスタ)の話しをしていて、ではパワー物はどうか?・・と言うことになって調べていたらコレが見つかった。 高周波にも使えたのはまったくの偶然である。

 だいぶ特殊な形状をしていて色あいと良いロシアの雰囲気は十分だ。 これ、最初は低周波専用かと思ったら必ずしもそうでも無いようだ。 規格を見るとfTは60MHzとなっている。 だからHF帯の低い方なら十分行けそうに思えた。

 【概略の規格;コメント付き
 ネットサーチで見つけたГТ905А(GT905A)の概略規格である。 オレンジ色の文字は、私が実測して確認した内容ほか、その規格に関するコメントだ。 ロシア語の規格は見つかるが、良くは読めないので未知な部分の多いトランジスタなのである。
 
 Vcboは75V、Vceでも60Vくらいある。 またピークコレクタ電流は7Aもある。(連続定格ではIc(max)=3A) 要するに一般的に言えばゲルマのパワトラそのものである。 AFパワーアンプにPush-Pullで使うと10Wくらいは行けそうに思う。

 ただ、fTの項目を見て驚いた。60MHzもあるのだ。これで例の「ゲルマ色の波」がもっとハイパワーで行けそうに思えたのだった。

 【実測評価試験
 手元に届いたので、実測評価することにした。

 いくらパワートランジスタとは言っても、何も放熱しないと測定中に熱暴走してしまう。ゲルマTrは高温が嫌いだ。 大きめのヒートシンクに熱伝導シートを貼付けて、その上に仮固定して測定することにする。(ネジ止めはめんどう・笑)

 ГТ905Аの金属フランジ部分はコレクタになっていて、そこを直接放熱してやるとかなり効率よく冷やせた。 測定中にに大きめの電流を流すこともあったが、安全な範囲の温度上昇にとどめることができた。 実際に使うときも、この程度のヒートシンクは必要そうだ。 なお、ヒートシンクのサイズは80×40×25(mm)である。

ГТ905Аの静特性
 実際に使いそうな範囲のコレクタ電流:Icとコレクタ電圧:Vceで測定してみた。 hFEは50程度のようだ。  Vbe逆耐電圧を測って見ると1Vもない位だった。 ベース拡散に濃度勾配を持たせて加速電界を作っている証拠だろう。 だからfTが高いのだ。 コレクタが底面のフランジに接続と言うこともあり、構造はメサ系ではないだろうか。 hFEのリニヤリティは良好である。

 パワートランジスタではあるが、RF用としては未知数なので、限度いっぱいまで使うのは冒険だろう。 手始めに電源電圧:Vcc=12Vで、コレクタ電流:Ic=300mA程度で使ってみたらどうだろうか? 入力:Pi=3.6Wと言う訳だ。 確かゲルトラのASOはシリコンに比べてだいぶ小さかったと思うので控え目の動作が間違いないところだ。

 そして出力パワー:Po=3W程度を目指すには、コレクタ飽和電圧:Vce(sat)=2V程度見込みIc=500mAくらい流す必要があるだろう。 まだまだ安全な範囲にあると思うので、実用的なQRP送信機にも成り得る。 但し、200pFもあるCoをどうするのか・・・と言う課題はある。 実測してみて220pF(at Vcb=12V)くらいあるのがわかった。 同様にCiもかなり大きいのでドライバ段もだいぶ苦しそうだ。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 このトランジスタ、高速スイッチングが主な用途なのだろう。 使いにくさから見てRFのパワー用には今一歩かも知れない。 しかし国産の市販ゲルトラでW(ワット)オーダーのRFパワーが出せるものは見なかった。だから使いにくくても貴重な存在と言える。 こうした仕様のトランジスタは西側世界では早々に熱的に有利なシリコン製に移行してしまったからだ。なのでJAのゲルトラでは存在しないジャンルの石なのである。

 すぐに作るアテはなくても、構想を練るのは楽しいものだ。 前よりももっと強力な「ゲルマ色の波」が出せたら楽しい。 オールゲルマに拘ると難易度は数段アップしてしまうかもしれないがそれが面白いのだろう。 ただ、シリコンにしか無いようなデバイスもあるからオールゲルマの設計はかなり苦しいのですよね。 例えば、ツェナーDiやFETなんてゲルマにゃありませんから。

 土曜日(2012年9月6日)の秋葉原QRP懇親会では、このГТ905Аを含めすべてロシア製のゲルトラを使ったトランシーバを拝見する機会があった。JH9JBI/1山本さんの力作だ。 ГТ905Аの特性から苦労されたようだが、たいへんうまく纏められていて感心した。VFO式で自作ギヤダイヤル付きの7MHz CW機である。 周波数は安定でキーイングでもチャープは感じられない。素晴らしい出来映えだった。 さて、私も頑張らなくては。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

参考追記:このГТ906Аの本来の用途・目的だが(白黒)TV用の水平出力トランジスタだったようだ。 そのため、低周波増幅用よりも高速動作できるようになっているのだ。 それでも水平発振周波数(ソ連の方式では15.625kHz)は可聴周波数の上限程度なので入・出力容量が大きくてもあまり支障はなかったのだ。(2012.11.22)

2012年9月23日日曜日

【部品】TOKO HAM Band Mono-Coils

HAM Band モノコイル
 すっかり懐かしい部品になってしまったが、モノコイルがテーマだ。

 正しくは、「ハムバンド・モノコイル」と言うらしいが、自作HAMの間では(東光の)モノコイルで通っていた。

 FCZコイル以前の時代に幅を利かせていたトランジスタ回路用の既製コイルであった。

 3.5MHz、7MHz、14MHz、21MHz、28MHz、そして50MHz用の6種類が販売されていた。他のバンドの物は発売されなかったと思う。 160mバンド用のニーズは少なかったのと、この構造では作りにくかっただろう。 またWARCバンドは未だ許可されていなかった。 144MHzには構造上向いていないのだろう。 50MHz用でさえ無負荷Q:Quの低下が見られるからVHF帯には適さないようだ。 なお、VHF帯には別の「RF-Coil」(←参考リンク)と言う専用品が販売されていた。

 モノコイルはいずれも巻線部分のボビン外径がφ8mmで、5本のピンが付いた台座が一体になった構造だ。材質はベークライトだ。 オリジナルの物では巻線ボビン部分にスリットが入っていて、ねじ付きコアを挟んでおさえる構造になっている。(次の写真参照) この写真の自作例では、スリットなしの緩いボビンなので、ねじコアとボビンの隙間にゴム紐の弛み止めが入れてある。

 残念ながらオリジナルは見つからなかったので、写真は7MHz用:SCN-5948Aのレプリカである。7MHz QRP送信機の製作に使った写真の再掲載だ。(写真上の立っているものがホンモノの構造に近い)

 【モノコイルのカタログ
 今でもモノコイルを探す人がいるのでどんな物だったか仕様書を貼っておく。 これは、1970年代中頃に東光が無料で配っていた「市販品カタログ」の1ページである。 広告であって、雑誌記事ではないので公開しても支障はないと思う。

 インダクタンス、巻き数、同調容量、無負荷Qが載っており、タップ位置もわかるので同等品を作るためは極めて有用なデーターだ。(ファイルサイズを大きくして細部まで見えるようになっている)

          ☆ ☆ ☆

 自作する際には、巻き始めの位置や巻き方向をオリジナルと同じよう揃えておくと何かと都合が良い。 同調側の巻線、すなわち1番ピンと3番ピン間の巻線を台座に近い側に巻く。 4番ピンと6番ピン間のリンクはその上側に巻くことになる。 これはコアを調整して抜いて行った時でも結合度が下がらないようにする為だ。 自作する際も同じように巻くべきだ。 なお、5番ピンは一般に欠ピンである。

 オリジナルでは絹巻線が使ってあるが入手しにくいと思う。 そこでポリウレタン電線を巻くことにする。 太さはφ0.2mm〜0.4mm程度が良いようだ。私はφ0.32mmをよく使っている。 自作品を実測してみて無負荷Qの値などオリジナルと比べ顕著な性能差はないように感じる。 従って同等に使える筈だ。

参考)このコイルを作っていた東光(株)は(株)村田製作所の子会社になっている。

 【自作代替品の材料に
 自分でモノコイルの代替品を作るためには材料が必要である。 写真は「モノコイル」ではなく、どれも秋葉原のお店で見つけたジャンク品だ。 これらは用途不明で安価に売っていた。ジャンク詰め合わせ袋に入っていた物もある。

 そのままで旨く使えることもあるが、自分で巻き換えてしまえば良い。コイル巻きの材料として使う訳だ。コイルを巻くボビン部分の外径は同じくφ8mmである。 東光モノコイルの仕様はわかっているから自分で巻けば同じ物が作れる。

 ボビンや台座はともかくとして、入っているコアの種類・材質は気になるだろう。コア材には何種類かあるようで、厳密に言えば周波数帯ごとに最適な材質がある筈だ。 しかし写真の様に数回〜10回程度の巻線がしてあるものはどれも同じような特性だった。

 試してみると、モノコイルの巻き数と同じで良いか、せいぜい1〜2割くらい加減すれば良い程度だった。どれもHF帯には十分使える。 ボビンだけの品より、このような巻線のある物の方が何となく用途がわかるので好都合だ。 上左の物を除きどれもTV用かFMラジオ用、すなわち比較的高い周波数向きであろう。

 【巻線構造
 巻線をどのように足ピンにハンダ付けしているのかは見た通りだ。 他に、台座を貫通したピンの上部にハンダ付けするタイプもある。(どちらかと言えば古い形式)

 巻線の固定には、熱で溶ける「マジックハンダ」と言う物が使ってある。 昔は少量の入手は難しかったが、いまではサトー電気で売っている。 私もJH1FCZ大久保さんに頂いて以来長年愛用している。 更に巻線したあとには「高周波ワニス」を塗っておくとなお良い。サンハヤトから小瓶入りが出ている。(残念ながら高周波ワニスは販売終了のようです)

 「マジックハンダ」、「高周波ワニス」ともにたくさん使う物ではない。無くても巻線はできるし、他の物で代用しても良い。しかし、すこしあれば重宝するのでコイル巻きにはぜひ揃えておきたい補助材料だ。

 さらに調整後のコアが動かぬよう止めるためのパラフィン・ワックス(蜜蝋のようなもの)もあると良い。ゴム紐の弛み止めだけでは不足である。車載用や移動用のリグなど振動を伴うポータブルなリグでは調整後のコアの固定は絶対に必要である。

 【SWバンド用局発コイル
 写真の様に巻き数の多い物も見かける。 ジャンクで用途がはっきりわかる物は珍しいのだが、これは短波付きトランジスタ・ラジオの局発コイル(短波バンド用)である。

 巻線構造を見ると、同調側にエミッタもしくはベースにフィードバックするためのタップが設けてあるのですぐわかる。

 このような短波ラジオ用局発コイルに使ってあるコアは、どちらかと言えば透磁率μが大きめである。 またVHF帯には向かないことが多いので注意を。 HF帯の低い方で使うにはむしろ都合が良いことも多い。 一応、参考まで。


シールド・ケース
 FCZコイルが隆盛になった理由の一つに、シールド付きだったことがあげられるだろう。 モノコイルは、ネジコアしか入っておらず、開磁構造なので磁束はモレモレだから2つのコイルを密着して並べれば磁気結合してしまう。

 FCZコイル或は10Kコイルのように壷型コアとネジコアの構造のように閉磁構造(に近い)ものとはかなり違う。 コイルの配置には十分な注意が必要だ。 不用意にアンプの入・出力コイルを接近させると発振の原因になる。 発振しないまでも共振特性が変化してしまうので要注意だ。

 写真は「マルチ・ケース」と言う名前のシールド・ケースである。モノコイルのシールドに使える物だ。 もともと15mm角のFMマルチプレックス・コイルのシールドだった物をケースだけ市販していた。 他にこれよりやや大きめのモノコイル用として「ビデオ・ケース」と言う名前の専用シールドケースも市販されていた。 シールドしたい時にはぜひとも欲しいが、入手は望めないと思う。 構造は単純だから工夫で乗り切る必要がありそうだ。 コイルの間にシールド板を立てるだけでも効果的なことも多い。

 もちろん、開磁構造なのはディメリットばかりではない。 閉磁型よりもコアは磁気飽和しにくいので、ずっと大きなパワーを扱える。 周波数にもよるが数Wまで大丈夫なのでQRP機ならファイナル・アンプ部にも使うことができる。 ちなみにFCZコイルでは0.5Wでさえやめた方が良い。せいぜい0.1Wであろう。 モノコイルにもメリットはあるから適材適所で行きたいものだ。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 FCZコイルも無くなってしまい、時おり懐かしい東光のモノコイルを求める声が聞こえてくるようになった。 或は、近ごろのCQ誌の記事にRF物の製作なんか稀だから、やむなく自作HAMは大昔の製作記事を紐解いているのかも知れない。 そんな懐かしい記事にはモノコイルが使ってあるのだろうか。(笑) モノコイルはもう市販されることも無いだろう。ならば自作で行くしかない。材料はまだ何とかなるようなので、自作用の資料をアップしておくことにした。

 暑い暑いと言っているうちに、もうお彼岸になった。 「暑さ寒さも彼岸まで」とは良く言ったもので、秋分を過ぎたら急に涼しくなった。 あれほど喧しかった蝉の声も何処へやら・・・。 墓参のお寺に静けさが戻ってきたようだ。

 このままでは9月のBlogが無くなってしまいそうだ。 10MHzのQRP送信機に手をつけ始めたので、そのコイル巻きに関連したお題でご勘弁を。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月16日木曜日

【書籍】Wireless-mic making book

ワイヤレスマイク製作読本
 8月16日は送り盆の日,懐かしい本の話しでもしようか。初孫と言って可愛がってくれた祖父母が健在だった頃の・・・。

 半年も前になろうか、ネット古書店で昔々読んだ本を見つけた。 懐かしさのあまり入手してみたのであった。

 ワイヤレスマイクを扱う本は幾つも出版されていたがこれが印象深く感じる。 製作を主体にした内容だが、初歩的な理論も載っており電波を出してみたいと言う欲求に様々応える内容だったと思う。 半導体と真空管の混じる過渡期だったので面白かったのかも知れない。

 当たり前のように色々なワイヤレスマイクが載っている。 ただ、今どき何かの役に立つのかと言われれば、それも無いのだが・・・送られて来た懐かしい本の表紙を開いた。(初版:昭和38年/1963年・・私が読んだのは1967年頃と思う)

 【サブミニ管を使った50MHzトランシーバ
 記憶にあったのはこのトランシーバの製作記事であった。

 リード線タイプのサブミニチュア真空管:5672と5676を使っている。 サブミニ管を使う・・・と言う部分に興味を覚えたのかも知れない。 左写真の回路図を見ればわかるが、この種のトランシーバは3A5と言う双三極管を使った物がポピュラーだろう。

 入手のことを考えたら3A5が有利だった。サブミニ管を使ったからと言って一段と小型になった訳でもない。 ただ、通販では3A5もサブミニ管も普通に入手できた時代だった筈だ。 サブミニ管は町の電気屋には売っていなかったし家電品にも使われていなかったから物珍しさはあったと思う。

#他の部品はともかく、遠の昔に廃れた筈のサブミニ管が入手できるのだから今は凄い。

もう一度読んで記事は面白かったが流石に超再生のトランシーバを作る酔狂も感じなかった。hi hi

TRIO TRH-1
 TRIO(=いまのKenwood社)のトランシーバ、TRH-1は愛称:スカイドリームと言って当時は珍しいHF帯(80mと40mバンド)のCWとAMのトランシーバであった。 ワイヤレスマイクと言いつつ、かなり本格的なキットの解説もあった訳だ。(実体配線図付き)

  受信部は標準的な5球スーパーにBFOが付いた程度の代物である。 送信部は6AR5の水晶発振にUY-807の電力増幅が付いた構成であった。 まあ、80mと40mなら実用範囲の構成だと思う。

TRH-1の回路図
 あまりのシンプルさに初心者にさえ馬鹿にされそうな構成ではあるが、今になって思えば意外に実用性があったのかも知れない。 アルミ弁当箱シャシにアルミパネルと言う自作送受信機が全盛の時代にあって、オールインワンで持ち運べるコンパクトさはメーカー製キットならではの物だったろう。何しろ発売は1963年頃なのだから。(回路図がないと寂しいのでコメント付きで追加:2012.08.19)

 混んでいるバンドでは選択度を何とかする必要はあるが、CWならかなりQSOできそうだ。 ファイナルは10Wも出るUY-807だし、けしてワイヤレスマイクの範疇にはなく、立派な送信機なのだから。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 時々ワイヤレスマイクが欲しくなることがある。 身近な音源をラジオに飛ばしたいからだ。 それにはFMステレオが良い。「高度な」ワイヤレスマイクもワンチップで簡単に作れる時代になった。安価な市販品だってある。 そんな時代だからワイヤレスマイクも電子入門者の興味対象ではなくなってしまった。 作ってみたいなどと言い出すのは恐らく「昔のラジオ少年」くらいのものであろう。 スマホで友達と簡単に「交信」できるのだから若者にとって目新しさなど何処にもない。今はワイヤレス時代なのである。(だからヒモ付きのHF-PLCなど既に時代遅れだと言うのに・・・)

 TRH-1のコンセプトは今でも面白そうだ。 5球スーパーのまんまでも良いかも知れないが、受信部は少し強化してLA1600にBFOを付けて・・・もちろん世羅多フィルタも付けてやろうよ。 送信部は真空管かな? やっぱりUY-807・・だろうか? え?VFOも付けてDDSで行けって? 板金が億劫だから何処かに良さそうな中古でも落ちていないかなあ。(爆)


 お盆も過ぎれば8月も後半、読経の後ろの蝉時雨に少年の頃を思い出す。 残した宿題に手を焼いた苦い思い出も蘇るのだが・・・。 こうして大人の夏休みも終わって行く。 この本を手にした頃、何時かは何でも纏めて試してやろうと思ったものだった。 今からでもそれは遅くないと思いたい。 de JA9TTT/1

(おわり)

2012年8月11日土曜日

【回路】CAUTION:Noisy Again !

 【3番目の中華DDSモジュール
 既にお馴染み、中華DDSモジュールである。 最近になって、またもや違うタイプが登場したと言う。 一番右のように、透明なLEDが載ったモジュールだ。

 このモジュールにはNTKと言うブランド名と125MHz、3.3Vと印刷文字のあるクロック発振器が載っている。

 少し前に大阪のJE6LVE/3高橋さんが購入された物が同じような特徴を持ったモジュールだったそうだ。 さらに、このBlog読者のお方が最近になって購入された物がこれだそうで、評価用にお送り頂いたのでお願いして1枚赤色LEDのものと交換して頂いた。 もちろん、詳しい評価のためだ。

 【問題のあるクロック発振器
 実は、このモジュールに搭載のクロック発振器には2つの問題点がある。

写真の様に、まずは書いてある仕様が問題なのだ。
DDS-ICのAD9850を125MHzクロックで使うためには5Vで動作させなくてはならない。3.3Vでは125MHzを保証していないのだ。クロック発振器を無理を承知で5Vで使うことになる。

 逆にAD9850を3.3Vで使うことは支障ないのだが、今度は125MHzクロックでの動作が保証されない。仕様書の保証範囲は3.3Vでは110MHzまでだ。 結局どちらかの定格を無視して使わざるを得ないのだ。 安全サイドは3.3Vで使うことだが、125MHzでも取りあえず動くかもしれないが、暑くなったり寒くなると誤動作するかも知れないので好ましいとは言えまい。

 もう一つの問題点は次の写真である。

 【ノイジーなクロックに戻ってしまった
 残念ながらノイジーなクロック発振器に戻ってしまったようだ。 以前のBlogで評価したときのように-55dBc程度のサイドバンドノイズがあって、基本的に通信機用途には「使えない」のである。

 最近になって、写真と同じ125MHzクロック発振器が搭載されていて、基板上のLEDはクリヤーで青色に点灯するDDSモジュールを入手されたお方はお気の毒だがNG品を掴まされた模様である。

 対処方法は奇麗なクロック発振器に交換することだが、それについては前のBlogに書いた通りだ。 一番のお薦めは100円で買える64MHzクロックへの載せ換えだろう。 DDS出力周波数で見て上限20MHzくらいで済む用途へなら消費電流も少なくなるのでベストだと思う。

備考:頒布中のDDSコントロール用マイコンも64MHz対応するのでその旨お書きを。

               ☆ ☆ ☆

 【180MHzのクロック発振器
 おなじ中華DDSの話題なのであるが、こちらはAD9851を使う方のやや高価なモジュールに関する話しである。

 以前中国からの通販で共同購入したAD9851を使うDDSモジュールには30MHzのクロックオシレータが搭載されていた。(青色基板のモジュール。aitendoの物・・最近は黒い基板らしいが・・と見た所は同じだがAD9851が載っている)

 AD9851にはクロックを6遞倍する機能があって、内部は180MHzで動作できた。 当然発生可能な周波数もアップするから例えば50MHzで使いたい・・・となれば、AD9851が断然有利であろう。

 しかし、30MHzクロックを内部で6逓倍すると、どうもジッター(=周波数あるいは周期の揺らぎ)が大きいのではないかと言う話しもあって、それなら内部逓倍などせずに最初から(奇麗な)180MHzクロックを与えたらどうだろうかと言う提案をしておいた。

ただし面実装型で180MHzのクロック発振器は得難いと思っていた。少なくとも安価には。

 ところが、それがあったのだそうで、違う環境での相互確認のためにサンプルをお送り頂いた。LVE高橋さん、VY-TKS!  お話によればどうやらハズレを掴まされた感じがするとのこと。 それで拙宅でも確認の運びと相成った。

 【やっぱり・・・
 写真は、180MHz中心に全体で10MHz幅を観測している様子だ。 高分解能スペアナの守備範囲を越えているので、上限周波数の高い別のスペアナでスペクトラムを観測している。

 上の写真の125MHzクロック発振器とはまた違ったスペクトラムであって、以前評価したことのある「プログラマブル・オシレータ」とそっくりであった。 案外、同じ仕組みのオシレータ回路が面実装パッケージに入っているのかもしれない。

 それにしてもたいへんノイジー・・・と言うよりジッターが酷くて、最初はスペアナが不調なのかと疑ったほどだ。 機器が不調では相互確認にならない。それで念のため校正用CAL信号を観測して正常なのを確認する始末であった。 それでやっと観測結果に自信が持てたと言った案配なのである。(笑)

だめ押しだが・・
 一応,2MHz幅でも観測してみた。 上の写真もそうだが、信号は絶え間なく激しく揺らいでおり、平均化処理をしないと旨くスペウトラムを観測できないほどなのである。(相当酷い状態)

 ひょっとしたらスペクトラム拡散式のオシレータなのじゃないかと疑ったくらいだ。 それにしても中心スペクトラムは大きく存在するからそれもちょっと違う感じなのだ。 要するに,何かデジタル処理機器用のクロックなのであろう。 高速クロックでさえあれば良いような用途に使うモノなのだろう。言うまでもないが通信機の用途には不適である。

 意外に安く売っていたとかで、お互い大いに期待していたのだが残念でしたと言う結末であった。 結局、安価で奇麗なクロック発振器と言うのは得難いのだ。 表示周波数を見ただけでは適否の判断はできないから、良く吟味しないととんでもないモノを使ってしまうことになりそうだ。

             ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 自作の高次オーバートーン発振器も一旦は無用になってしまったと感じていた。 しかし、奇麗で間違いのないクロック発振器は得難いとなれば選択肢の一つとして再浮上しそうだ。 最近になって感じているのだが、奇麗と称する125MHzクロック発振器はあまりにも消費電流が大き過ぎるように思う。 パッケージが触れないようではちょっと発熱が過ぎる。 定格電圧は書いてないがひょっとしたら3.3V用じゃないのかと言う話しさえもあった。試みに3.3Vで動作させると常識的な消費電流に落ち着くようなのだが・・・。

 どうも中華品質に翻弄され気味だが、64MHzのクロック発振器で使えばスペクトラムの心配は無く電気も喰わないので「欲張らないのが」ということらしい。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)