昨日のシミュレーションの続きである。
GIC型フィルタ回路で実際にシミュレーションしてみた。 昨日よりもだいぶ複雑な図のようなOP-Ampを10個使った回路である。周波数は100ポイントで解析するようセットした。
開始から右下のグラフが現れるまでに要した時間は2秒くらいであった。このくらいで可能なら十分実用的なスピードだと思われる。(B2Spice2のSimulation Optionsメニューから、noopiter をtrueにセットしないとエラーが出るようだ。それさえすればOK) なお、Berkeley Spice 3 FormatでNetlistがアウトプットできるらしいので、やってみたい人はメールでも。
GIC型と書いたが、ここではGIC(Generalized Immittance converter)と言う回路を使ったフィルタの意味で使っている。フィルタの形式としては7次のElliptic Function(楕円関数)型LPFであってLCフィルタから出発する。遮断周波数及び終端インピーダンスを決定してやってから計算すると具体的なLやCの値が求まる。(形式:C07/20/θ=50deg)
しかしLC型のままやるには大きなインダクタンスの低周波用コイルが必要になる。その製作は極めて厄介である。物理的に大型になるうえ巻線(銅線)の抵抗分によるLossが大きく効いて理想とは違うコイルができる。当然設計とは違った特性のフィルタになってしまう。現実に得られる部品に合わせて部品定数を補正する設計も可能だが、増々複雑化する一方だ。 そのために厄介なコイルを使わず同等の動作をするようGIC回路を使って実現したのが図の回路である。GIC型にも弱点はあって、OP-Ampのゲイン・周波数特性(GB積)が十分に大きくないと通過帯域のエッジがだれるなどの劣化が見られる。高速High-GainなOP-Ampの登場で、守備範囲はずいぶん広がっている。フィルタの設計周波数にマッチしたOP-Ampを選択することが大切だ。
回路図に見えるOP-Ampが2個ずつぶら下がった縦の4つのブランチがGICを使った『Dエレメント』と言うもの。あまり古い参考書では駄目だが、最近のアクティブ・フィルタ関係の本なら見てもらえばGIC型フィルタの設計手法についても詳しく書いてある。OP-Ampの数は厭わないから可能になった近代的な回路だが、それも今ではデジタル・フィルタ化が進んでいる。(笑)
このシミュレーション例は第三の方式SSBジェネレータ用に作ったLPFの実例である。実回路ではfc=1,500Hzと周波数が低いことから、OP-Ampには一般的なTL-074CNを使った。精密に部品定数を合わせた二組を製作した。 フィルタ通過帯域内の位相特性(位相特性の一致度)が音声帯域内に発生する不要な逆サイドバンド成分の打消し度合いを決める。また、帯域の外側に発生するスプリアス成分の減衰はこのフィルタの減衰特性で決まる。実測でもグラフのように急峻であり、2つのフィルタの位相特性の一致度の点でも十分な特性が得られた。
このくらいの回路を作るなら設計の確実性を検証してからにしたいものだ。 部品を集め精密に選別したり合わせ込んで作ることになる。 それだけの労力を掛けるのだから確実性が是非とも必要だ。 もしも旨くなかったら何が問題か確認しなくてはならない。 そのとき、回路設計まで戻りたくはない。 設計に問題ないことが検証されていれば誤配線と部品破損を疑えば済む。原因の発見もずっと早くなる。
# シミュレータの有用性が旨く説明できたようなら幸いである。
6 件のコメント:
加藤さん,こんばんは
> 最近のアクティブ・フィルタ関係の本を見てもらえば...
最近のでなくとも,先日お求めになったBrutonの本(1980)に大変詳しく出ています(笑)
#何といってもFDNRを発明したご本人ですから
OPアンプの周波数特性(GB積)がどう影響するかも書いてあるのですが,残念ながらその結果の式は間違っています.
#多分組版時の誤植であって,著者の責任ではないと思いますが.
=
年末からやっている"All 2SA1015"トランシーバですが,DC受信部のゲインが不足だったので,低周波段を一段追加しました.
でも利得が上がった分だけ位相余裕がなくなったので,発振しやすくなりました.位相補償をかけて一応は止まっています(^^;
あとは中国国際放送の日本語放送の通り抜けがどのくらいあるかをチェックすれば,評価はだいたい終わりそうです.
こんばんは。
GICフィルタとは懐かしいですね。昔のデジタルオーディオでは必須の回路で、モジュール化されたものも売られていました。(いくつか死蔵しています。Hi.)
今でも需要はあるのでしょうが、おっしゃるとおり、オーディオの分野でも「デジタルフィルタ化」が進んで久しく、「切れ」のいいフィルタを外付けする必要がなくなりました。ちなみに、現用のオーディオD/Aコンバータ(これでMJ自作品コンテストに出場)は10年以上前の設計ですが、フィルタはCR1段で横着しています。Hi.
回路シミュレータは使い方によって強力なツールになり得ることは理解しているつもりですが、敷居が高く感じ、今なお手が出せません。Hi Hi. まだPC98が全盛の頃だったと思いますが、雑誌か何かの付録として入手したものの、結局使わず「お蔵入り」になったような気がします。
p.s:
「業務連絡」の件、メールを出しましたのでよろしくお願いします。お手数をお掛けしてすみません。
JH5ESM Cosy/武藤さん、こんばんは。
さっそくコメント有難うございます。
> Brutonの本(1980)に大変詳しく出ています・・
はいはい、良く承知しております。(笑)上の記述は、Brutonの本は一般的でないと思ったのでそれを前提にしてます。和訳本でもあれば宜しいのですが。(笑)
> その結果の式は間違っています.
OP-AmpのGB積の部分ですか。 あとで眺めてみましょう。
> 中国国際放送の日本語放送の通り抜け・・・
HAMの電波より60dBくらい強力ですから大変ですよね。 旨く行くことをお祈りします。
JG6DFK DFE Tech/児玉さん、こんばんは。
コメント有難うございます。
まず業務連絡の件ですが、先ほど処理しました。(^^)
> 昔のデジタルオーディオでは必須の回路で・・・
CDプレーヤのD/Aの後ろに、簡単なGICフィルタが付いていましたね。 周波数が高いので良いOP-Ampで作らないと色づけされたのではないかと思われます。(笑)
いまは、帯域外の非常に高い周波数のノイズをカットするだけの目的ですからCR一段でも十分なのでしょう。
> 敷居が高く感じ、今なお手が出せません。
それほど難しいツールではないのですが、回路やデバイスのパラメータの意味がわからないとチンプンカンプンでしょうね。 児玉さんはデバイスも詳しいし回路設計もされますから簡単に使えると思います。 リニヤ・テクノロジ社のサイトにある無料のものが良いと聞きますよ。(使用経験なし)
おはようございます。
GIC型フィルターは検索するとちょっと前のCDデッキ関連でヒットしますね。
OP-AMPをLの代わりに使うのは秋月のLメータキットの校正方法でも指示されていました。
回路シミュレータはフィルターを計算させると
特性がそのままプロットされるのでわかりやすいですね。
>GIG型と書いたが、ここではGIC・・
ここ違ってます?。^^
JE6LVE 高橋さん、おはよう御座います。
コメント有難う御座います。
> >GIG型と書いたが、ここではGIC・・
気付きませんでした。(笑)もちろん、GICが正しいですね。打ち間違えていました。どうもありがとう御座います。
> OP-AMPをLの代わりに使うのは秋月の・・
シミュレーテッド・インダクタと言う回路ですね。 上の回路では、等価的なLを作るのではありませんが、Lを除くための目的は同じですね。 低周波用のLは大きくなるうえ、磁束が誘導しやすい、自身で歪みが発生するなど、理想とは程遠い性能の悪い部品なのでオーディオ回路には使いたくないものの一つです。それでGIC型フィルタで実現しているのですね。
コメントを投稿