【超再生式受信機・その3 実験編(2)】
Introduction
I am continuing my experiments with super-regenerative receivers. This time, I am testing a super-regenerative receiver using silicon transistors. The fundamental principle of a super-regenerative detector is that quench oscillation must occur reliably. For this reason, I conducted experiments on a quench oscillator. I built a blocking oscillator using a single transistor. I believe I have now grasped the conditions required for it to oscillate. Incidentally, what sort of transistor is suitable for a super-regenerative detector? Transistors with a high transition frequency (fT) and low collector current are ideal. Whilst there are many suitable transistors available in Japan, the internationally renowned high-frequency transistor, the SS9018H, would also be a good choice. (2026.10.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【超再生受信機:NPN-Type No.02A】
前回のBlog(←リンク)ではトランジスタ(BJT)を使った超再生検波回路を試作して検討しました。超再生検波器としての動作は正常そうですが目的のFM放送はうまく受信できませんでした。 今回はその続きです。
ゲルマニウム・トランジスタ(ゲルトラ):2SA341を使った検波器はマズマズなようですが、より高性能なシリコン・トランジスタを使った試作は特に芳しくないようでした。
実は、トランジスタを使った超再生検波器(受信機)では、使うトランジスタに「向き不向き」があると言われていました。 回路形式を含めて様々な説が存在したようなのです。 昔の話ですから基本的にゲルトラ間の比較でした。 どうやら接合部面積の小さいトランジスタが向いていると言うのが結論のようでした。 トランジスタ規格表で見て電流容量がごく小さなトランジスタが良いと言うのです。Ic(max)=-2mAとか-5mAというような石です。(簡単に壊れそうな石・笑)
デバイス特性の考察から言えるのは、接合部の面積が小さければ電流密度が高くなることから少ない電流でもトランジション周波数:fTが良く伸びるでしょう。しかも接合部の静電容量・・・CobやCbeといった電極間の容量も小さくて高周波的な性能は良くなるわけです。 超再生検波器はその動作から考えて高周波の発振器そのものです。 ですから受信対象のVHF帯において少ないコレクタ電流でも容易に発振できるような「石」が適しているということでしょう。 その一方で、いきなり強い発振に陥るような(強力な)トランジスタは発振器としては優れていても検波特性は良くないことが多く、その辺りが向き不向きを決めているようです。
使っている2SC2668YはIc=100μAと言った小電流でもfT≧150MHzであり、電極間容量も小さいことからこの用途には向いていると考えられます。 しかしあまり芳しくないのは周辺部品の問題と動作点の取り方に課題があるのではないかと疑われます。 或いはゲルトラと比べればかなり強力な石ですから、超再生検波器には意外に旨くないのかもしれません。
☆
回路定数を変えながら良さそうなところを探ってゆくことにしました。写真はそこそこ旨く受信できるようになった2石の超再生受信機です。 以下に回路図を示します。
【回路図:NPN-Type No.02A】
2SC2668Yで超再生検波を行ない、2SC372Yで低周波増幅する2石のFM受信機です。
50MHzの受信機でも良かったのですが、田舎のハムバンドではAM局もFM局もほとんど聞こえません。これでは受信テストにもならないことから初めからFMのラジオ放送を受信対象にしました。
1m程度のビニル線をアンテナ端子に接続してやると、埼玉県のFM局:NAC5(ナックファイブ)と前橋のFM群馬が聞こえてきました。
受信操作はやや面倒です。 初めに、超再生を調整するボリウムを加減して、シャーっという超再生ノイズが聞こえてくる状態にします。 その状態でチューニングのバリコンをゆっくり回して放送をキャッチするのです。
FM波はスロープ検波になることから、明瞭な音声が得られるような更なる同調操作が必須です。超再生状態を微妙に加減するのも効果的です。 また、音質優良なFM放送でありながら良い音とは言えないようですが、これは低周波トランス:ST-30の周波数特性とセラミックイヤフォンの癖のある音色に負うところが多いようです。
超再生はFM変調波も聞こえますが本質的にはAM変調波の受信向きなのでしょう。
回路はトランジスタ(BJT)を使ったオーソドックスな超再生検波回路になっています。 VR1のところにある10μFのコンデンサ:C12はなくても動作しますが、ボリウムの摺動雑音が耳障りなので入れてみました。
アンテナはエミッタ側に付ける形式でテストを始めました。 それで聞こえますが、コレクタ側に接続する方が感度が良い傾向があります。 ただしボディ・エフェクトが大きくなります。リンクコイル形式は同調コイルとの結合度調整が厄介です。単純なC結合が無難でした。
ここまで読んで良く聞こえるように思ったかもしれません。 実際はかなり小さな音でしか聞こえません。 「蚊が鳴くような」とは言いませんが、小さな音量がやっとでした。 AMではないので信号強度をアップしても音が大きくなるわけではありません。アンテナを良くしても大きな音が出るわけではないのです。もちろん信号が強ければS/Nは良くなります。 2石の構成では全体的にゲイン不足なんでしょうねえ・・・。
【検波波形:NPN-Type No.02A】
クェンチ波形です。 回路図のTP1で観測しています。
周波数はベース側の部品定数でおおよそが決まります。 具体的に上記の回路図で言えばR1、R5、C2、C3、C4です。 250kHzはクェンチ周波数としてやや高すぎるように思います。 だいたい100kHz前後が最大感度が得られるとのこと。
それぞれの部品定数が相互に効いていて、思ったような周波数を得るのは難しいのです。 下手をするとクェンチ発振さえしなくなります。そうなると単なる再生検波になって感度が上がりません。(難しい・笑)
【回路電流:NPN-Type No.02A】
回路電流は再生状態の調整によってかなり変わってきます。
また、検波トランジスタ:Q1のhFEによって変化します。 他の高周波用トランジスタでも超再生検波がうまくできるものはありますが、回路電流は異なります。
なお、低周波アンプの2SC372Yの電流も含むので、4.6mAすべてが検波回路の電流ではありません。
☆
2石で実験してきましたが、どう考えてもゲイン不足は否めないようです。 感度の良い圧電型イヤフォン(セラミックイヤフォン)でも音が小さいのはゲインが足りないのでしょう。 もう1石増やして3石構成でゲインをアップしようと思います。 低周波アンプに2SC372Yを追加する方法もありますがシンプルなICを使うことにしました。(ICの代替回路が後半にあります)
【超再生受信機:NPN-Type No.02B】
1石+1-ICの超再生式ラジオです。
ICを使った効用で抵抗器の数が減らせています。 ただし外付けのコンデンサは意外に多いのでそれほどスッキリする訳でもありません。
μA741クラスでも良いので、OP-Amp.を使う方が周辺部品を減らすことができてFBです。 あるいは低周波Amp.としてポピュラーなLM386Nなど最適でしょう。 旨く作ればスピーカを鳴らすことも可能です。 低周波アンプが簡単に作れそうなICがあったので使いましたが、もっと近代的なチップを使うと性能確実です。 持っているならNECのMC4080のような(超古い・笑)プリアンプ用ICも使う機会と言えるでしょう。
この状態は、超再生検波回路はそのままに、ゲインの大きなアンプを足しただけです。
【回路図:NPN-Type No.02B】
アンテナはコレクタ側に入っている同調回路から引き出すようにしました。 これはエミッタ側から引き出しても良くて、極端な違いはありません。 両方試してみて具合の良い方にしてください。
低周波アンプの部分はICの中身も含めて書いてあります。 外付けの抵抗器は1本で済むわけです。 しかしこんな変なIC(LA3020)など使うよりもOP-Amp.でも使った方がマシな回路になると思うので、実験されるなら変更をお勧めします。
この状態で低周波アンプは前述の低周波アンプ1石の回路よりも10倍以上大きなゲイン(約500倍に)なるので、ずっと大きな音がします。
超再生検波回路じたいはまったく同じなのですから感度など高周波的な性能が良くなることはありません。 単に大きな音が出るようになるだけです。(笑) しかしかなり効果的なのはトータルのゲインが明らかに不足していたからです。
受信できるFM放送局の数に違いはありませんが、ずっと良く聞こえるので「耳を凝らす」というような必要はなくなっています。 その代わり音量調整のボリウムを追加したい感じです。 超再生状態を加減する可変抵抗:VR1には音量調整の機能はほとんどないからです。
【検波波形:NPN-Type No.02B】
超再生検波回路は同一ですからクェンチ波形も類似になるはずです。
少し発振周波数が違うのは再生状態の加減を行なうとクェンチ周波数も動くからです。 またラジオの受信状態に引っ張られる傾向もあって、一定不変な周波数ではありません。
クェンチ波形を見て良し悪しが言えるほどの知見はありませんが、あまりおかしな波形(曖昧な表現ですが)だと検波状態も思わしくないのは実際のようです。 1石の(自励式)超再生検波回路のクェンチ波形はだいたいこんな感じと思えば良いです。
【アンテナ結合:NPN-Type No.02B】
アンテナとの結合回路はかなりバラエティがあります。
コレクタ側の同調回路に数pFの小容量で結合する方法と、エミッタ側へ結合する方法の二つが多いようでした。 この二つに大きな違いはなくて、エミッタ側の方が好成績なこともあります。
27MHzのトイ・トランシーバではアンテナをリンク結合するものが多いようです。 おそらく送信時の発振が有利なのでリンク結合形式にするのでしょう。発振停止を回避するのが目的ではないでしょうか。 同調コイルをコア入りボビンに巻くならリンク形式も検討すべきです。 写真はコレクタ側から引き出している様子です。
☆
色々いじっていて、少なくともクェンチ発振ができなくては、超再生検波器にはならないことがわかってきます。 クェンチ発振が起こるにはどんな条件が必要なのか確かめる必要を感じました。 以下、100kHz付近のクェンチ発振器だけの実験です。
【クェンチ発振器の実験】
結局のところ(自励式の)超再生検波回路とは100kHz付近の周波数でブロックング発振を行なう回路と、その発振周期のうちトランジスタが活性な範囲(アンプ状態)にある瞬間ごとにVHF帯の発振(受信周波数になる)を行わせる複合機能を持った回路ということです。
VHF帯の発振回路部分はぜんぶ取ってしまい、クェンチ発振だけを行なうような回路を作ってみました。
この実験によって確実なクェンチ発振が起こる条件としては何が必要なのか、何が重要なのか追求してみようと思います。 写真において、トランジスタは実際に使う2SC2668Yが写っていますが、いくつか類似の高周波用トランジスタに交換してテストしました。 低周波並みの周波数ですからこの実験だけなら2SC372や2SC1815でも可能です。
【クェンチ発振器:実験回路】
テスト回路はいたってシンプルです。
ベース回路の部分の時定数で発振周期が決まるブロッキング発振器の一種のようです。
どんどん部品を取ってしまい、ブロッキング発振が起こる最低限の部品になっています。 重要なのはR1、R3、C1、C2です。 R2、C3、C4の部分は検波出力を影響なく引き出すためのもので、クェンチ発振とは本質的に無関係です。 また、VR1の部分はトランジスタの動作点を加減するための回路で、ちょど良い発振振幅のクェンチ発振が得られるよう加減するものです。
別の方法として回路への印加電圧を変えるのではなく、ベースバイアス抵抗:R1を増減して発振状態を調整する方法もあります。ただしこの方法はベース部分の時定数も変わるためクエンチ周波数も大きく変わるので、C1の加減が必要になるケースがあります。トランジスタのhFEの影響も大きくて少々厄介な方法です。
また部品は少し増えますが、RFC1とC1のGNDを一緒に浮かし、その接続部分とGND間に可変抵抗器を入れて調整する方法があります。結構使われているようです。 ベース側の時定数とは直接関係ないのでクェンチ周波数への影響が少ない方法です。
どの方法がベストなのか一概に言えず、回路設計者や製作者の好みを反映する部分です。 それで色々な超再生検波回路が「発生する」のでしょう。(笑)
なお、C2:(図では2200pF)は単にコレクタ側のバイパス・コンデンサではなく、クェンチ周波数を決め、さらにC1との関連で正帰還の大きさを決めていますので、むやみに大きくすれば良いわけではありません。 またR3(470Ω)はブロッキング発振を司る重要なコレクタ負荷抵抗器です。 選択範囲は広くて100Ωから数kΩまでかなり任意ですが、クェンチ発振の状態は当然影響を受けるので調子が悪ければ換えてみるのも効果的です。 なお、R3の代わりに低周波トランス(低周波チョークコイル:AFCでも良い)を使う方法があります。 エミッタ側のRFCの必要条件については後ほど説明します。
確実に発振し滑らかにクェンチ発振の大きさが加減できる回路定数を見つけ、VHF帯の発振に必要な部品を追加して超再生検波回路を再構成してみました。 結果から言いますと、そこそこ旨く動作しますが、最高感度にはできませんでした。 クェンチ発振の周期のどの瞬間にVHF帯の発振が起こるのが良いのか別の回路要素もあるのでしょう。 このようになかなか一筋縄には行きませんが、なんとなく方向性は掴めたように思っています。
【クェンチ発振波形】
回路定数の選び方次第で発振周波数(周期)だけでなく、発振波形も振幅も変化します。
この例では200kHz付近で発振していますが、C1の加減で100kHz付近にすることもできます。VR1で発振振幅が加減できます。 これでおおよその超再生検波の加減はできるわけですが、受信している信号の影響も受けるのでなかなか複雑でした。
ともかくクェンチ発振が起こらなくては話にならず、発振に必要な条件をかなり絞り込めたことは有意義な実験でした。 なお、VHF帯の発振用部品は付けていないのに弱い発振が見られます。 分布容量などが効いているようですがこの形式のベース接地回路はRF発振させやすい回路なのでしょう。コルピッツ型VFOとしてもよく使われています。もちろんVFOならクェンチ発振はさせません。
【ふたたびRFCについて】
エミッタ回路に入っているRFCに必要な条件もだいぶわかってきました。
影響が大きいのはRFCの直流的な抵抗値(DCR)の大きさです。 条件にもよりますが、数10Ω以下でなくてはクェンチ発振が起こりません。できたら10Ω以下が良いです。RFCの直流抵抗はテスタを使った抵抗測定ですぐわかります。 その条件が満たされればインダクタンスはかなり幅広い範囲で許容できるようです。
50MHzのHAMバンド用やFM放送のVHF受信機としてインダクタンスは10〜20μHもあれば十分そうですから、小型で直流抵抗の小さいRFCを使うと旨く行きます。
写真には4.5μHの自作品のほか、既成品の10μH〜100μHのRFCが写っていますが、どれでも旨く動作しました。 むやみに大きなインダクタンスにする意味もないようですので10〜22μHのRFCがグッドチョイスでしょう。 自己共振周波数が受信周波数から大きく離れている必要があります。
☆
以下はオマケです。 ICアンプの代用となる3石の低周波アンプです。
【LA3020の代替アンプ】
このBlogでは再生式受信機の特集(←リンク)で既出ですが、あらためて低周波アンプの代替回路を紹介しておきます。
十分な低周波ゲインがあってノイズ性能も優秀です。 調整も簡単ですから汎用の低周波アンプとして推奨できます。
トランジスタにはhFEが200〜400の小信号用シリコン・トラジスタなら何でも使えます。2SC1815GRだけでなく代替品は星の数ほど(?)存在するでしょう。 もう少し詳しい情報はリンク先で確認してください。
【代替アンプ:回路図】
上記の3石低周波アンプの回路図です。 これも既出です。
ICアンプよりすこし部品は増えますが性能はむしろ優れています。 よく見かけるような汎用トランジスタで作れますから、けっこう幅広く活用できます。
コストも掛からず便利に使える汎用低周波アンプ回路です。 私の定番として使っています。 たまにはディスクリート部品のアンプはいかが?
☆
立派な受信機が出来上がった訳ではないのですが、普通のトランジスタ(BJT)を使った超再生検波回路の検討として一旦まとめます。 なかなかアナログな要素が多くて、十分と言えるほどの評価はできていませんがまだ先があるのでここまでにしました。
長さ1mくらいのビニル線をアンテナとして垂らしてやればローカルのFM放送局が2〜3局は受信できます。まあまあと言った所でしょうか。 GND側にカウンターポイズを付けるのも良好な受信には効果的です。ボディ・エフェクトも軽減できます。
ちゃんと作るのでしたらブレッドボードではなく、ナマ基板の上に構築する組み立て方法が推奨できると思います。 もしプリント基板化するのでしたらなるべくGND面積を広く取りなおかつ分布容量が少なくなるような設計をしてください。
☆
次回は電界効果トランジスタ:FETを使った超再生検波回路を扱おうと思っています。 最近発表さている超再生式受信機はFETの採用が多いようです。 バイポーラ・トランジスタ、すなわち従来からあるPNP型やNPN型のトランジスタ(BJT)より何か良いところがあるのかもしれません。 その辺りを探ってみたいと思っています。 ここまでのBJTでの実験が比較の意味で役立つでしょう。 HAMバンドの受信機だけでなく、ご近所のFM局を聴いてみると言った簡単ラジオとして検討しましょう。 特集として3回続けてきましたが超再生はかなり厄介なので少々疲れてしまいました。 しばらくお休みするかもしれませんが、時々ご訪問ください。突然Blogが更新されているかもしれませんので。hi ではまた。 de JA9TTT/1
*このBlogに関して何かご質問とかご要望などあったらコメント欄でお願いします。
この下にある「コメント」の文字をクリックすると入力画面が現れます。
→ご要望などは私で可能な範囲で対応いたします。
参考:公開から2週間を過ぎたBlogに頂いたコメントはすぐには反映されません。(SPAM対策のためです) 確認しだい公開いたしますので少々お待ちを。遠慮なくどうぞ。
(つづく)nm














0 件のコメント:
コメントを投稿