2013年9月1日日曜日

【回路】Wien Bridge oscillator

【ウイーン・ブリッジ発振回路】

【教科書は曰く・・】
 左は前から気になっている回路の一つだ。 気になるものは他にも多々あるのだが、取りあえずこれをやってみた。 今やる理由は特にないのだが、やるなら思い付いた「今でしょう!」ということで。(笑)

 ウイーン・ブリッジ発振回路と言う正弦波の発振回路である。 ちなみにウイーンと言うのは人名であってオーストリアの首都にある橋とは関係ないようだ。ウイーン・ブリッジを使った発振器はターマン発振器とも呼ばれる。 また、いまはKeysight社になった、ちょっと前までのAgilent社、その昔の社名は測定器の老舗:ヒューレット・パッカード:hp社の初製品であるHP200A型はこの回路を使った発振器であった。(真空管式)

 左の教科書は、既に古典的な名著「OPアンプ回路の設計」(CQ出版社:岡村廸夫 著)からの1ページだ。 ウイーン・ブリッジ発振回路は様々なメーカーのOPアンプ・アプリケーションに必ず載っているような、たいへんポピュラーな回路である。 だから簡単で誰がやっても間違いないかと言えば、どうやらそうでもない。

 この本だが、軽妙な書き方で続きが読みたいかもしれない。「定本・OPアンプ回路の設計」として今も手に入る。 もし興味の向きにはお薦めしたいと思う。OPアンプ回路の基礎を求めネットを徘徊なんかするより遥かに濃い知識が得られる。 OPアンプの中身を見る目も養える。古い本だが「今風に翻訳」する術も身につければ一石二鳥だろう。(書籍へ→リンク)(訃報:筆者の岡村廸夫さんは、2014年4月ご逝去されました)

【ウイーン・ブリッジ発振回路:その一】
 教科書通りであまり工夫もないが、二連の可変抵抗器(VR)で周波数可変式にしてみた。電源のバイパス・コンデンサなども補って実用設計にしてある。この通りに作れば同じように働く。

 ポイントは回路図でB1とある電球だ。 なるべく電流が小さな電球が良いが、手持ちにそれほど良いものはなかった。 たぶん普通のOPアンプでは出力電流が不足だろう・・・と言うことで、一種のOPアンプの並列で電流を倍化してある。 この辺が元をアレンジした部分だ。

【4558型OPアンプ】
 使ったのは4558型OPアンプだ。このOPアンプ、オリジナルはRaytheon社の開発である。日本では新日本無線:JRC製が有名だ。 JRCがセカンドソースしたのは、両社は古くからレーダー技術などを通じた交流があったからのように思う。 良い設計だったからその後各社が追随した。写真のμPC258Cと言うのもNEC製の4558セカンドソースである。(358系ではない)

 4558を選んだのは、ポピュラーなOPアンプとしては性能が良いからだ。トランジスタで言えば2SC1815のようなもので、安くてありふれた存在だが性能は馬鹿にできない。 オーディオ帯をカバーするのには十分で、600Ω負荷を想定して出力電流も大きめなのも良い。 特殊で高価、しかも得難い部品ではなくごくポピュラーでありふれた素材で調理をしよう。

【ブレッドボードで試作】
 あるていど性能の目星が付くまでブレッドボード(BB)は重宝だ。 今回の試作もこれを使っている。

 旨く動作してくれたが、ブレッドボードでの製作はちょっと注意が要る。 下手をすると、そこら中で接触不良が起こる可能性があるのだ。 部屋の隅でホコリをかぶっていたようなBBはかなりあぶない。 回路動作に自信がある人なら接触不良も見分けられるだろう。 しかし多くの場合、試作回路の設計が悪いのか接触不良で動作しないのかの区別は付き難い。 だから意外にもBBは初心者向きではないと思う。 接続箇所が多くなる複雑なものの試作には向かないように思う。もちろん長期的に安定な動作は望めないので長く使うような機器の製作には不適当だ。(←その後の検証によればブレッドボード製作は意外に安定であり複雑なものでも再現性良く作れる) 幸い上の回路くらいの規模には問題はない。 接触不良を疑うにしても箇所は限られるし、オーソドックスで確実性の高い回路だから心配ない。

【1kHzの正弦波】
 発振波形の例として1kHzを載せておく。 他の周波数も撮影したのだが、はっきり言って面白くない。 歪率が0.1%を切った正弦波など、オシロではどれも同じにしか見えないのだ。 よって他の周波数は想像で補ってもらえば十分過ぎるだろう。(笑)

 上のブレッドボードの回路を実測している。 縦軸は5V/divなので20Vppと言う大きめの振幅で発振している。 発振振幅は可変抵抗器:VR1で加減できる。 但し振幅は発振の起動特性とも関係があって任意ではない。 フィラメントの発熱による自己制御で振幅の安定化を図っているので、発振起動には電球の発熱量と熱的な時定数が絡んでいる。 発振振幅の上限は電源電圧とOPアンプのドライブ能力で制限される。しかし、大きめな振幅で発振させた方が総合的に良かった。

【まめ電球】
 いつかこの回路を作ろうと思って(?)集めていた各種の豆電球である。まあこのためと言うのは少々の誇張なのだが。(笑)

 白色や電球色のLEDが登場するまでは、メーターやダイヤル等の照明には豆電球をよく使った。 また豆電球は消耗品なのでいずれ切れるから予備も常備していた。

 この発振回路に使う電球は電流が少ない物が適している。手前の赤いものは米軍ジャンクの28V用で電流が少なくて適している。写真中央のグレーのカラーに入ったものは12V用の中では電流が最も少なかった。 他はいずれも点灯時の電流が大きくてOPアンプで直接ドライブするには不適当であった。米軍の28V用は特殊すぎるから、以降は12V用の方を使うことにした。

【暗く点けてみる】
 この発振回路では電流を流して「光」を得るのが目的では無い。 電球の端子間に加わる電圧とフィラメント抵抗との非直線性を利用して発振振幅の安定化に使っている。 端子電圧が上昇すると抵抗値が上昇し、回路のゲインが下がって出力電圧の上昇を抑制するよう動作する。 写真は次項の端子電圧とその時のフィラメント抵抗値の関係を求めるため電球単体で測定している様子だ。

 当たり前だろうが消費電流が小さい電球はかなり暗く点灯する。 発振回路としてはこのような電球を必要とする。照明用とは求める方向はちがっている。少々特殊な電球と言って良いだろう。

 かつて小型電球は浜井電球工業:ROYAL製がポピュラーだった。資料が欲しくて調べたのだが、ニーズが無くなったらしく全部製造中止になっていた。 今も生産しているのはスタンレー電気くらいしかないようだ。 スタンレー製が通販されているのを見つけたので極力電流の少ない物を手に入れると良い。(参考→リンク) いずれ、近い将来には光らせるのが目的の電球はすべてLEDになってしまうだろう。
 
【電球の電圧vs抵抗特性】
 端子電圧と電流からその電圧におけるフィラメント抵抗の値を求めてみた。 タングステン線の抵抗温度係数がもろに現れた特性になる。もちろん普通の抵抗器では端子電圧で抵抗値の変化などないに等しい。 従って電球のようにはならず、このグラフに書けば横一直線となる。

 何故これほど変化があるのか? 光るためには、電球の大小に関係なくフィラメントの部分は2000℃にもなっている。 タングステン線の電気抵抗は温度係数が+0.53%/℃くらいだ。 点灯した時には2000℃にも上昇するのだからフィラメント抵抗は常温時の10倍にもなる。発振回路では、この端子電圧で抵抗値が変化する特性を利用する。フィラメント電球が点灯する際の突入電流が大きい理由でもある。 

 ちなみに、10μA流した状態で実測した抵抗値は:12V用が47Ω、28V用は83Ωだった。 測定電流10μAでも発熱はゼロではないが無視し得る程度だ。測定電力は4.7nWもしくは8.3nWである。(nW:ナノワット=1/1000,000,000ワット)概略の熱抵抗からの計算では大きく見積もっても温度上昇は0.01℃を越えない。47Ωや83Ωはそのまま室温の抵抗値と思って良い。 なお、一般的なテスターでは数mAも流して測ることになる。意外にもそれだけでフィラメントはかなり温度上昇する。(上記12Vの電球に5mAも流せば300℃を越えている)測定法を工夫しないと室温の抵抗値は求められない。

 室温の抵抗値と温度係数が既知なら、電圧を与えた時のフィラメント温度が計算できる。 但しだいぶ誤差がありそうだ。 主な誤差は引き出し線の付近の温度勾配によるものだろう。 従って平均化された大凡のフィラメント温度が計算されるはずである。 上記12Vの豆電球に0.5Vで280℃、1Vで420℃、2Vで640℃と計算された。 誤差はあるにしても、ごく低い端子電圧でもずいぶん高温になるものだ。 これは意外だった。

                  ☆ ☆ ☆

【ウイーン・ブリッジ発振回路:その二】
  電球の特性を実測してみて、ごく簡単な回路でも良いことがわかった。 OPアンプの並列動作は必要ない。 以下はその検討の過程だ。

 OPアンプの電源が±15Vでは出力電圧は25Vppくらいが限界だ。 実効値:RMSで言えば、8.8Vくらいになる。 但し電球側の経路は負荷として重いので、クリップ歪みに対するマージンを考えると6Vrms程度(17Vppくらい)が良いところだろう。

 その条件で回路を見直してみる。 6Vrmsとすれば、電球に掛かる電圧はその1/3の2Vrmsになる。(・・・と言う状態に落ち着くよう動作する) フィラメントの熱的な応答が発振の周期に追い付かない周波数ならRMSとDCとで概ね同じと思って良いだろう。 従ってDC2Vと考えて、その時の抵抗値は200Ωくらいだ。

 よって電流は10mArmsであり、ピーク値はその√2倍の14mAあたりとなる。14mAピークなら単独のOPアンプで供給可能だ。最初の回路例ようにアンプをパラにする必要は無いことになる。 このような検討から教科書通りの簡単な回路に戻った。 このあたりの判断は電球の特性如何なので特性を良く吟味しないと答えが出せない。

                   ☆

 安定な発振にはフィラメント抵抗の熱的な時定数も重要だ。その熱抵抗も一定ではないようで、加わる電圧によって変化が見られる。 低いフィラメント電圧では温度変化が・・即ち抵抗値の変化量が大きい傾向がある。 抵抗変化が大きくて鋭敏過ぎると発振振幅が振動し安定するまで時間を要するようになる。 場合によっては振動が収まらず持続する。(熱時定数による発振現象)
 教科書で電球に直列に入った抵抗は振動現象をダンプするのが目的のようだ。但し抵抗値は加減が必要で、条件次第ではあるが無い方が良いこともある。

【ブレッドボードでテスト】
 さっそく要らない部品を撤去して簡略化した。 悪さをしないように余った方のOPアンプはボルテージフォロワ接続にして入力はGNDしておく。

 発振周波数を決めるコンデンサは、0.01μFで、2連の可変抵抗器は50kΩである。 但し、可変抵抗器:VRを回し切って抵抗値が小さくなると、発振周波数はぐんぐんアップする。発振周波数:f=1/(2πCR)だからだ。 実際には2連VRの連動誤差が効いて来て不安定な発振状態になる。 それにゼロオームに近づくと非常にクリチカルになって使い物にならない。 抵抗器で周波数可変するよりもバリコンを使う方が安定性に優れるが、大きな容量が得られないので、抵抗値が非常に高くなる欠点がある。バリコン式の場合、OPアンプは4558ではだめでFET入力型を必要とする。

 適度な可変範囲になるよう50kΩのVRに4.7kΩを直列に入れ可変範囲を狭くした。 計算による発振範囲は291〜3386Hzになる。 実際にはCにプラスの誤差があったので範囲はやや低めであった。 それでも無線機の調整用発振器には丁度良い周波数範囲になった。

 コンデンサを切り替えると発振範囲を拡張できる。 しかし限界がある。下限周波数は電球の熱慣性(熱時定数)で制限される。 発振周波数が低くなると発振波形の周期に熱慣性がだんだん追い付いて来る。そうなると振幅歪みが出る。 100Hzでは1%近い歪みになるので、おおよそこれくらいが下限周波数だろう。 一方、周波数上限はOPアンプの周波数特性が関係する。 周波数対大振幅出力特性とスルーレートが効いてくる。 4558では10kHzくらいが良いところだった。 オーディオ帯をフルにカバーするにはもう少し高速なOPアンプが欲しいようだ。

【電球は殆ど光らない】
 暗くて解り難い写真だ。 発振状態では光っているのだろうか? 部屋を暗くして観察してみた。 写真中央付近にフィラメントがある。

 流石に2Vrmsくらいでは、ほとんど光らない。 もちろん、光らせるのが目的では無いからこれで支障はない。 良く光っていないなら、フィラメント温度も十分上がっていないのではないかと思った。温度が低ければ周囲温度の影響を受け易いだろう。

 しかし、ほんの僅かな端子電圧でもすぐ数100℃にアップする。 ごく暗い点灯状態で電球を触ってみても発振振幅に影響が感じられないのはそのためだ。 それよりも機械的な振動の影響の方が大きい。 フィラメントが揺れると発振振幅も振れてしまう。 振動を防ぐ実装方法をとるとともに、振動の多い環境では使えないようだ。

 電球で発振振幅を安定化するWien Bridge Oscillatorにおける豆電球の挙動がわかってきた。 電圧が変われば抵抗が変わるのだろう・・・と言う程度の認識だったが、もう少しダイナミックに反応する様子が見えてなかなか興味深かった。

【1kHzの歪み】
 歪み率は発振振幅の調整によって幾分影響を受ける。 それでも数100Hzから数kHzでは、0.01%前後の歪みなのでなかなか良好だ。

 なにしろ部品の少ない発振回路である。 クリチカルと思われる電球を交換して違いを見たが、同種の電球なら殆ど違いはないようだ。交換すると発振振幅は幾分変わるが同程度の発振振幅に調整すれば歪みも同じようになる。 従って同じ部品を使う限り再現性はなかなか良好だ。 発振振幅で3〜5Vrmsくらいに調整するのが良かった。 歪み率と発振起動特性、周波数を変えた際の振幅安定時間など総合的に見た判断だ。

【358型OPアンプは使えない】
 これまたポピュラーなLM358系のOPアンプだ。 セカンドソースも多く、どれも安価なので手軽なOPアンプとして、かなり様々な場所で使われている。 消費電流は少なめで、片電源でも使い易く出力電圧範囲が広いのも特徴だ。

 ところが、等価回路を見ると出力段に問題があることがわかる。 出力部はゼロバイアスのB級・・否、C級と言うべきかも知れない・・になっている。 オープンループゲインが十分高い低周波では、負帰還の作用で欠点は見え難いかもしれない。 しかし、それは数100Hzまでのようだ。 数kHzにもなると・・・。

 だから交流信号を扱うような回路には使わないことにしている。もちろん、発振回路だけではなく、たとえばマイクアンプとか低周波フィルタにも使ってはいけないと思っている。ピン接続は同じでも4558の代用にはならない。以下で明らかだろう。

【クロスオーバー歪み】
 エフェクタ好きのお方でもなければ、こうした歪みは歓迎しないはずだ。(笑) 写真は約3kHzを発振させた状態を見ている。 こうした用途には358系のOPアンプを使ってはいけないことが良くわかる。

 出力段がC級なので、上側のNPNと下側のPNPがの動作が切り替わるゼロボルト付近で不感帯のようなものが存在しうまく繋がらないのだ。 典型的なクロスオーバー歪みが発生している。

 もちろん、オーディオを意識した4558やそのほか多くのOPアンプは出力段がゼロバイアスなんてことは無い。 それでも消費電流をケチったようなOPアンプでは要注意だ。

【324型OPアンプも?】
 これは蛇足かもしれない。
 4回路入りのLM324系OPアンプも上記の358系と同じ等価回路なので同じくACアンプに使うべきでない。

 ポピュラーなOPアンプなので358同様に何にでも使えるような錯覚に陥りそうだ。 しかし、ダメなものはダメである。 使い方で工夫する手もない訳では無いが、外付け部品を増やすくらいなら、別のOPアンプを使う方が賢明だろう。 OPアンプはどれも同じでは無い。 特性を良く吟味して採用したいものだ。 結局あらかたの用途には4558あたりが使い易い。(TL072とか、FET入力型も好きだが・笑)

               ☆ ☆ ☆

 長年気になってきた回路をテストしてみた。ごくポピュラーで当たり前な回路なのに、興味深い現象が多かったように思う。 では実用的なのかということになろうか? こんな簡単な回路なのに十分に実用的だと思う。 発振振幅を調整するだけで歪みが0.1%以下の正弦波発振器が簡単に作れる。 Qの高いLC共振回路を使ってさえ、奇麗な正弦波の発振は難しい。歪み0.1%以下と言うのはスペクトラムで見たら-60dB以下の高調波である。 厄介なことナシに高調波は落ちないものである。ごく簡単なCR発振器で得られる正弦波としては良い方だと思う。 実用設計では4558はDual OPアンプなので余った片側を使ってバッファ・アンプにするのが良い。 発振段の出力とGND間に10〜50kΩくらいの可変抵抗を入れレベル調整用とする。そのあとに余った方をボルテージ・フォロワ形式のバッファにして入れる。 オーディオ用には600Ωを出力端子と直列に入れておくのも良い。

                 ☆

 回路は簡単で再現性も良い。しかし鍵はやはり電球にある。 12Vで20〜40mAくらいの「暗い電球」を入手すればこの目的に合致するだろう。 しかしどこでも売っているようなものではないようだ。 手持ちが幾つかあるので、もし作りたいならSASE対応で差し上げる。メールでご連絡を。 もちろん何時か使うかも知れないので「貰っておこう」なんて言う「部品死蔵型自作家」はご遠慮を(笑) しかし「製作意思は強固だ!」と自己暗示を掛けて(遠慮なく)お申し込みを。こうした発振器を一つ作っておくと無線機の調整だけでなく様々便利に使えるだろう。 de JA9TTT/1

(おわり)

2013年8月10日土曜日

【HAM】 A New life for FT-101ZD Part 6

【FT-101ZDにニューライフを:第6回】

【マイクコネクタの交換】
 暫く続いた『FT-101ZDでWARC Bandにオンエアしよう!』もいよいよ最終回だ。(前回:Part 5 は→こちら。初回:Part 1→こちら)

 オンエアに必要な一般的な整備は終わったので、最終回では幾つか改造などを扱う。 改造しなくても運用は可能だが、シャックの実情に合わせる目的から実施することにした。

 写真手前に置いたのは8 Pinのマイクコネクタだ。 いまでは多くのリグで採用されているがFT-101ZDの時代あたりまで4 Pinも良く使われていた。マイク配線に2ピン、スタンバイ系(PTT)に2ピンあれば足りたからだ。或はGNDを共通にすれば3ピンで済んだ。八重洲無線の4ピンマイクはそのようになっていた。 インピーダンスが600Ωで4 PInのマイクロフォンがあればうまくフィットする。(要ピン接続確認)

 4 Pinコネクタが付いたマイクはあいにくハイ・インピーダンス型しかなかった。 拙宅の低インピーダンス型マイクはどれも8 Pinコネクタ付きだ。 いずれもECM型であって電源をリグ側から貰うようになっている。 それらの8 Pinマイクが使えるようにFT-101ZDの方を改造することにした。

 8 Pinのマイクコネクタは各社のリグで使われているがメーカーごとに異なったピン配置になっいる。本機の場合は八重洲無線の8 Pin形式にするのが良いのかも知れない。 しかし拙宅の事情でTrio/Kenwood式の8 Pinマイク配線にすることにした。 これはマイク共用化のためである。

【マイクの接続】
 左図のように、マイクコネクタの結線はTrio/KenwoodのHF機で使われている形式を採用した。 周波数アップダウンなどの機能も付加可能だが必要ないので配線していない。 それにFT-101ZDにそんな機能はないし。hi hi


 従って、マイクのホット側およびGND側、PTTのホット側、電源DC8Vのプラス側、PTTとDC8VのGND側の配線を行なえば良い。(全部で5カ所) 他のピンはずべて遊ばせておく。

 マイク用の電源は数Vで数mAのDCがあれば良い。 なるべくリプルの乗っていない奇麗なDCが良いが、少々汚くても大丈夫なようにマイク側でも対策している。

参考:マイク配線がわかり易いように図面の入れ替えを行なった。自身の参照の便も考慮したため。 なお、もとの八重洲4ピンマイクの配線についてはこちら(←リンク)に参考図面が置いてある。(2013.08.10)

【DC8Vの引き出しポイント】
 FT-101ZDで奇麗そうな低圧DC電源と言えばこの8Vだろう。 この8Vは3端子レギュレータで作っている。 ただし、3端子レギュレータのアースの取り方が旨くないようだ。 シャシを共通GNDとするコモンモード結合で50/60Hzのハムが重畳していた。(同系統から電源供給を受ける全回路に影響は及んでいるので、根本的な対策をした方が良いが、それはいずれと言うことで)

 電源系を別途用意するほどのものでもないので、マイク側で対策してブーンと言うハム音の混入を防いでいる。 40dBくらい抑圧したので問題はないだろう。 なお、8V配線の途中、マイクコネクタの手前に200Ωの抵抗器が入れてある。引き出したDC8Vを万一ショートしても事故にならないような配慮だ。


【マイクコネクタの裏側】
 8 Pinに交換したあとのマイクコネクタ裏側だ、 作業そのものは難しくないが最初に4 Pinのコネクタを外すのが厄介だった。ネジロックで弛み止めしてあったからである。

 まずは配線を外してから4 Pinのコネクタを取り外す。 場所が狭くて8 Pinコネクタに直接配線を移すのは難しそうだ。あらかじめ5 cm程度の配線を8 Pinコネクタにハンダ付けしておくことにした。 その配線が付いた状態でコネクタをネジ止めした。

 元からあったマイクの信号線とスタンバイ系の配線、そしてGNDの配線を行なえば良い。 なおアースポイントを分ける関係で、マイクのリターンGNDとスタンバイのGNDはコネクタのところで分離しておいた。 写真に見えるオレンジ色の配線はDC8Vで、引き出しポイントまでの途中は束線バンドで他の配線と束ねてブラブラしないように固定しておく。

【交換完了】
 マイクコネクタの交換完了である。 これで他のリグと共通のマイクロフォンが使える。 様々なリグがあるHAM局にはマイクコネクタの共通化はメリットが大きい。

 メーカーも妙な意地を張らずに、共通化してくれたらどれだけ便利になるだろう。 もっとも、自社のリグ用に用意したやけに高額な・・・中身は大した事もなさそうな・・・オプション・マイクは売れなくなるだろう。 たぶん、あのオプション・マイクはメーカーや販売店にはとっても美味しい商品に違いない。

【完成】
 いつか見たことがあるシーンのようだが、このように完成した。 別のリグでモニタしながら音質やハムの誘導など総合的にチェックしてみた。

 フィルタの帯域幅が狭いのでそれなりではある。しかし低域がドロっとしたようなSSBではないので、スッキリした悪くない感じだった。 普通の交信には十分だと思う。

 なお、4Pinのマイクコネクタのままでも1 Pin余っているのでDC8Vを引き出すことができる。 少しの改造でパソコン用に売っているデスクトップマイクも利用可能だから、古いリグのレストアでマイクに困ったなら研究すると良い。 中には思いのほか音の良いマイクもあるようだ。 マイクはお値段が高ければ良い訳ではない模様。hi

                 ☆ ☆ ☆

【ダイヤルランプの交換】
 アナログ目盛はなくても実用上支障はないのだが、チューニングノブの上部に目盛板が付いている。 裏面から照明されていて夜間など外の照明を落とすと美しく見えるものだ。

 レストアしたFT-101ZDは目盛板の裏側の左右に2つあるランプのうち左の一つが断線していた。 デジタル表示があるので、アナログな周波数読取りは無くても支障がある訳ではない。しかし片方消えているのは何となくみっともなかった。

 簡単に交換できるならやりたいと思ったのだが、意外にも面倒なものであった。 VFOをパネル面に四隅で止めているネジを取ればできそうに見える。 しかしそれではVFO部を引き出せなかった。(簡単に外せるTrioのユニット式VFOとはえらい違いだ) 結局、写真のように裏側からカウンタ周りを取り外さないとダメそうだ。

【VFO/Fix-Ch LED基板の除去】
 まずは、VFOとFix-Chの選択状態を表示するLED基板から外した。 写真の赤いLEDが付いた細長い基板である。これを取らないと周波数のデジタル表示部も取れそうにない。

 周波数表示部は案外簡単に外すことができる。 パネル側の2本と、脇の方にあるネジ1本で簡単に外せた。 配線も特に外す必要はないので、各コネクタはそのままで良い。

 周波数表示部を移動したら、写真の様にダイヤルランプが見えてくる。もう一歩だ。

【ダイヤルランプの交換】
 正面から向かって左側のランプが断線していた。 ゴムのグロメットに挿入されているのでグロメットごと外し、交換用ランプに入れ替えてから元に戻せば終了だ。

 あいにくFT-101ZD用のダイヤル照明用ランプは手持ちがない。(まあ普通は持っているはずもないが) 同じようなサイズのリード線付きランプ(12V用)はあったのだが点灯時の明るさが問題である。 左右の明るさがアンバランスではみっともない。 生きていたランプと手持ちを比べたら明らかに後者の方が明るかった。

 そこで、手持ちを2個直列にして明るさの比較をしてみた。それで丁度良さそうである。 結局、手持ちを2つ使い左右とも交換することにした。 電球2個の配線は従来のパラはなくシリーズに変更する。 これで元と同じくらいの明るさで左右が揃った。 なるべく手持ちで済ます工夫だが、これから買うなら電球ではなくて電球色のLEDが良いのだろう。

【ダイヤル周り】
 このようになった。 ディーマーツマミで明るさは加減できるが、周波数表示のLEDとのバランスも良いようだ。

 このダイヤルランプはかなりディレーティングした使い方だったはずだ。 電球をDCで点灯するのは寿命の点で不利なのだが、それでもかなりのマージンを見込んだ設計なのだろう。 そのために、交換が容易ではない実装方法になっているのだと思う。(DCで点灯させると寿命は半減)

 どうやら左側はもとの品質が良くない電球だったために断線したようだ。 使い込まれて切れた電球なら内側がスパッタされて黒くなっているものだ。 しかし断線品を見ると特にガラスの汚れもないので、寿命と言うよりも品質問題だったようだ。 従って交換した電球がハズレ品でなければ、再び交換する機会はまず来ないだろう。

                 ☆ ☆ ☆

【28MHz帯の100W改造】
 FT-101ZDが販売されていたころ、28MHz帯は固定局でも50Wまでしか許可されなかった。 そのため100W機と言えども、このバンドは各社50Wしか出ないようになっていた。

 移動局として50W免許を貰うのなら、全バンド50Wにすれば良い。それには終段管を1本にするのが常套手段である。 しかし固定局にあってはこのバンドのためにだけ1本にする訳にも行かず、電気的に50Wに抑える工夫が必要であった。

 パワー低減の具体的な方法は28MHz帯だけ終段管6146Bのスクリーン・グリッド電圧を低下させている。 FT-101ZDの例で言えば、ほかのバンドでは210Vが掛かるようになっている。 28MHzでは電源基板の180V部分から2.2kΩを通して加わるように切り替わる。 実質的に150Vくらいのスクリーングリッド電圧で動作することになるのでパワーは50Wそこそこになる訳だ。

 現在では28MHz帯も100W免許が可能だ。従ってしかるべき申請を行なえばこのFT-101ZDでも100W免許は可能だ。 回路図のように×印の部分をカットした上で、赤色の配線を追加すれば全バンド100Wになる。 TSSへの申請の際はこの回路図のような改造を行なって100W化したむね図面をもって説明を行なえば許可されるはずである。 合理的な改造方法であり、他のバンドと同じ条件で終段管を動作させているだけなので許可されるだろう。 もちろんオペレーターライセンスが伴わなければ許可されないのは当然だ。

【具体的な改造状況】
 取りあえず実験的に行なってみた。 恒久的に行なうなら回路図の2.2kΩは除去してしまえば良い。 ここでは元に戻す前提で実施してみた。 そのため2.2kΩは撤去せず、他の部分に接触しないように仮に熱収縮チューブに包んで絶縁しておいた。

 210Vの追加配線は写真中央部のグレーの電線だ。 2.2kΩの片側をカットしてその部分に配線するのが簡単だ。 元に戻すのも簡単なので、どうしてもTSSと揉めるようならオリジナルに戻して28MHz/50Wで保証認定をもらえば良いだろう。 技術的なことも良くご研究されているようなのでたぶん認めてもらえると思う。
【絶縁材の追加】
 このシールド板はWARC Bandの送信禁止解除の際にも外したものだ。 この100W化改造でよく見たら、高い電圧が掛かった部分が接近し過ぎているように感じられた。

 大丈夫なのだとは思うが、念のために絶縁フィルムを貼っておく事にする。 ちょうどバンドスイッチのウエファDとEが来るあたりに貼っておいた。

 改造が済んだらシールド板を元に戻してから終端パワーメーターでテストしてみよう。 このFT-101ZDでは他のバンドとまったく変わらぬパワーが得られた。 28MHz帯の100W化は成功である。

 こうした情報は他では見ないようなので、扱う事にした。なにも難しくはないのだが誰にでもできる改造とも言えまい。 自信がなければ良くわかった人に頼むか、技術を持ったショップに依頼するのが良い。くれぐれもライセンスの問題もお忘れなく。 すでに50Wの制限は無いのだから違法改造と言う訳では無いが、この改造を推奨するつもりもない。

                 ☆ ☆ ☆

【まとめ】
 以上、長々とFT-101ZDをめぐるBlogを続けて来た。一連の作業で本来の目的は達成できたと思う。

 まずは真空管を使ったリグでWARC Bandにオンエアできるよう、うまく送信禁止を解除する事ができた。 パワーメーターで比較したら他のバンドと変わらぬパワーが出てくれたので改造は旨く行っている。

 CWフィルタの効果は抜群で混んだ7MHzの受信ですぐに確かめられた。 スイッチ一つで狭帯域に切換えできるのは快適である。 狭帯域フィルタに付きものの通過損失の増加も特に感じられないのはFBであった。

 全般的な調整と内外観の清掃で見違えるようになった。シャックの一員として十分なものだ。古いとは言ってもあまり汚いリグは並べたくないものだ。

 余興として28MHz帯の100W化も好結果が得られたのも面白かったと思う。

 以上レストア計画は概ね満足の行くものである。

【FT-101ZD Mark Ⅲと言うリグ】
 図面はFT-101ZD Mark Ⅲのフロントエンド部分である。 もちろん、この基板の外側にミュー同調形式のLC同調回路が付いている。

 RFアンプがデュアル・ゲート・MOS-FETなのでやや物足りなさも感じるが広帯域増幅ではなく選択度を持った同調回路形式になっている。いつも共振のピークを得るように調整しながら受信しているのでその点は有利であろう。

 ミキサーもQuad-SBDを使ったDi-DBMになっている。 Mark Ⅱまでの2SK19-pp形式よりやや有利なはずだ。 ミキサーロスはダイナミックレンジの大きなJ-FET、J310のGGアンプで補っており悪くない形式だ。 数値比較では流石に最近のリグに劣るものの、実際にアンテナを接続して運用してみると大した違いは感じないだろう。この程度のダイナミックレンジがあるなら実用上で支障が出る状況には滅多に遭遇しないものだ。旧型FT-101とはまるで違うと言えるほど混変調は少なくなっている。

 シングルコンバージョン化で退化したような印象があるかもしれない。 しかし受信性能を含め送信においても歪みの原因になり易いミキサーの数を減らしたのは大きな改善である。 6JS6A/CのようなTV球よりRF特性の良いファイナルになったのも良い事で、歪みはNFBで改善したのも技術的な進歩と言える。 登場した頃のさえない印象はどこへやら、最後の頃にはなかなか素敵な無線機に変身したのではあるまいか。

【59 Over】
 実際に ハムバンドをワッチした印象を書きたいと思う。
アンテナは1.9〜7MHzがインバーテッド・Vで、10MHzは傾斜型DPだ。 14MHz以上は各バンド4エレ相当の短縮八木ビームである。

 HF帯ローバンドは夏期なのでコンデイションは良くなかった。 それでも空電が減ってくる深夜〜早朝にかけてはEu方面が聞こえてくる。 現代的なリグと切り替えて比べても超強力な放送局による混変調は特に気にならなかった。

残念ながら10MHz帯はコンディションが悪くてあまり聞こえなかった。

 HF帯ハイバンドは日々変化があるが14MHzや18MHzは良い日もあって、ビームを向けるとEuの深い方まで良く聞こえてきた。 18MHzが良い時は隣接の短波放送バンド(直近としては16mバンド:17.480〜17.900MHzがある)も超強力に入感するようになる。 しかし混変調に悩まされることもなかった。 EuのHAMはアンテナがPoorな局も多いので非常に弱いことも多い。 比較受信ではごく弱い信号受信も悪くなかった。APFなど併用するとDSPフィルタのリグより意外にも良さそうなくらいである。

 残念ながら、ワッチした時には21、24MHzと28MHzはあまり開けてくれなかった。 SSGでの感度測定ではけして悪くないから後はコンディション次第であろう。

 あまり感心しないのはSメータである。 振れ始めが重く、振れだしたらあっという間にS9〜Overになる特性だ。 もちろん指示通りのSメータ調整を実施してある。 弱いEu局など、Sメータに従ったレポートで言えばSは少しも振れず了解度は5と言うケースも多い。 そのためだろうか、Sメータにはゼロと言うポジションは無く、最低でも519のレポートが送れるようになっている。(爆)

 VFOの周波数安定度はまずまずであった。 スイッチオンから10分もすれば殆ど動かなくなる。 わずかにマイナスの温度係数があるらしく、室温の変化を受けるようだ。 しかし極端では無いから交信中に再同調する必要はなさそう。 なお古いリグのVFOは当たり外れが大きいので、この結果がFT-101ZDを代表すると思うのは早計だろう。

                   ☆

【エピローグ】
 FT-101Zが登場したころの印象を何となく思い出した。まずはEの次にZとは何なのだ?と思った。そして内容に触れて、これはFT-101ではなく、不発の廉価版:FT-201の焼き直しだと直感したのであった。実際、登場したばかりのFT-101Zは安価と言う以外に魅力に乏しいリグだったと思う。内部の作りもFT-901の整然から、配線の入組んだ雑然へと退化したように見えたのである。しかし使ってみれば安価な割には実用性能は良好とあってやがてベストセラーになって行く。もう中身に拘るHAMも稀な時代になっていたのだろう。
 お陰で次々に改善とバージョンアップの機会に恵まれることになった。多くのグレードアップは同時生産していたFT-901で先行したように思うが、より合理化・最適化された形でFT-101Zに盛り込まれて行った。そして最終型のMark Ⅲになると、初期型とは明らかに違ったものになっていた。 新しいデバイスや回路の投入でRF信号系の性能が良くなったこと、アクセサリ機能が実用的に洗練されたこと・・・など、レストアを通じてずいぶん良いリグになったことを再発見した。
 30余年前のリグである。もはや現代に通じぬ所があって当然だが、良く整備し性能を維持すれば未だ実用的なことも実感できるはずだ。目立ち易いVFOの周波数変動は外付けのDDS-VFOで補えば本質的な欠点も解消できる。もちろんバンドを変える度にプリセレクタを回してピークをとり、プレートとロードバリコンの再調整を行なわねばオンエアできない。そうした行為を真空管機の楽しさと感じられぬようでは早晩嫌気がさすのも目に見えてはいるのだが・・・。

 長いレストアBlogに最後までお付合い頂いたお方に感謝したい。 なるべく詳しく、尚かつ実践的な内容にしたいと思ったら全6編にもなってしまった。 これでもまだ完全には程遠いがレストア作業の大筋でも疑似体験頂けたなら幸いである。 以上、作業の様子やその時々の感想などを気ままに書き綴ってみた。「ああせい、こうせい」とか書いたが、いずれにしても個人的なお話しに過ぎない。もし別なご見解をお持ちでも目くじらなど立てませんようお願いする。 もちろん、貴方に何か推奨や強制などをするつもりはないので勘違いされないように。要は単なるヒマ潰し用の読み物なのである。 ただ、もしも真似る人があるなら事故だけは起こさぬよう切に希望する。 レストアBlogはまた面白そうなテーマでもあれば・・・と思っている。 de JA9TTT/1

(おわり)→→初回へリンク。(もう一度最初から読んでみる)


ご注意:個人的な修理のご依頼、あるいはメールでの修理のご相談などはお受けしておりません。 現品を見ないと適切なアドバイスはできませんし、ご相談者の修理経験や回路の理解など未知数な部分が多くご対応は困難だからです。 相応の費用は掛かると思いますが、例えばTMTサービス:http://www.toyama-smenet.or.jp/~tmt/などのプロにご相談されて下さい。

2013年8月3日土曜日

【HAM】 A New life for FT-101ZD Part 5

【FT-101ZDにニューライフを:第5回】

【FT-101ZD】
 『FT-101ZDでWARC Bandにオンエアしよう!』の5回目だ。(前回:Part 4 は→こちら。初回:Part 1→こちら)

 内部の清掃から始めて、WARC Bandの送信禁止解除、そしてCWフィルタの装着を済ませた。 無事に電源も入ってならし運転も進んできたのでそろそろ調整に入ろう。

 調整を始めるのは、ざっと機能と性能を見てからが良い。 極端に性能低下していたり、特定の機能がまったく動作しないのはどこか故障があるからだ。 まずは故障箇所の補修を行なってからでないと完全な調整ができない。

 幸い、このFT-101Zは幾分残る接触不良を除けば大きな問題はないようだ。それも支障無い程度なので整備を始めることにしよう。

【バラモジの調整】
 SSB送信機の要(かなめ)、バランスド・モジュレータ・・・バラモジの調整からはじめよう。

 バラモジと関連のキャリヤ発振器は同じAFユニットに載っている。 基板はシャシの下面に搭載されている。 ちょうどマイクコネクタの後ろあたりだ。

 回路は左図の通りである。 このバラモジは送受兼用で、受信時には検波回路として動作する。 送信時にバランス調整を行なえば受信の調整も済むことになる。 検波回路としてもダイナミックレンジが広くて良い音がするものだ。

【バラモジとキャリヤ発振回路】
 キャリヤ発振は2SK19GRで行なっている。水晶の切換えはダイオードスイッチ式だ。 2SC1815Yを使ったエミッタフォロワを通って1S1007×4のバラモジに加えられる。

 バラモジは4ダイオード式で非同調負荷型のオーソドックな形式になっている。非同調負荷式は経年変化に強いので良い回路だと思う。 バラモジのダイオードはJRC製の1S1007型である。 この1S1007はゲルマニウムダイオードであるが、ゴールド・ボンド型と言うもので、1N60等のポイントコンタクト型より特性が安定している。 廃止品種なので1S1007の補修用は入手難だと思う。その時は1N60や1K60ではなくて1SS97等のショットキ・ダイオードで代替する方が良い。但しその時は4つとも交換しよう。

 受信時の低周波アンプには2SC1000GRが使われている。壊れる可能性は低いが代替するなら2SC2240GRあたりが良いだろう。但し手持ちがなければ2SC1815GRで十分だ。ローノイズと言う事で2SC1000GRを使ったのだろうが、2SC1815GRでも遜色ない性能が得られる。最近売っている2SC1815を詳細評価した経験から推奨できる。また2SC2458GRもパッケージ違いの2SC1815GR同等品なので同じように使える。(今どきの2SC1815は2SC1000に劣らずローノイズなのだ。既に2SC1000の存在意義は無くなっている)

 マイクアンプのTA7063Pは代替品がないので補修に困るが、なんなら周辺の部品を撤去してNE5532などのAudio用OP-Ampで代替回路を作れば良い。 いずれにしても、同等機能を実現すれば良いので交換部品がなければ他の部品で機能を実現すれば済む話しだ。 部品代替について書きだすとキリが無いので取りあえずこの辺でやめておこう。hi

【キャリヤ・バランス調整・1】
 バランスド・モジュレータはブリッジ回路なのでバランスさせるには振幅と位相の両方を調整しなくてはならない。 写真のトリマコンデンサ(TC)は位相調整である。振幅調整を行なうと位相も影響を受ける回路なので、次項の振幅調整と交互に行なって最良点に追い込む。

 なお、最良点は非常にデリケートなので長時間維持できないだろう。 しかしフィルタ・タイプのSSBならフィルタ部でもキャリヤの減衰があるので極端なキャリヤリークにはならないので心配無用だ。(但し、キャリヤポイントの調整が悪いとそうも行かない)

 トロイダル・コアに巻線されたものが出力トランスである。 その右に見える4つのダイオードが1S1007だ。
 
【キャリヤ・バランス調整・2】
 こちらが振幅調整の方で可変抵抗器(VR)になっている。 金属製のドライバを近づけるとストレー容量が微妙に変化するのでバランスの最良点を得るのが難しくなる。 非金属の、例えば写真のようなセラミックドライバを使うとやり易い。

 キャリヤ発振回路のセラコンは黒い頭のNP0特性が使ってある。 温度変化にも気を使った設計だ。このあたりのコンデンサは昔ならディップド・マイカを使ったと思う。 セラコンの性能が良くなったので採用したのであろう。

上にも書いたが、こちらの振幅と上記トリマコンデンサの位相を交互に調整して最良点へ追い込む。

【キャリヤバランスの観測点】
 後先になったが、キャリヤバランスの観測点についてである。 取説にある通り観測はアンテナ端子で行なう。

 まずは送信部が動作している必要がある。その上で、ダミーロードを接続し規定のパワーが出る様にPlateとLoadの調整を行なう。バンドはどこでも良いが、取説の指定周波数は14.250MHzだ。 パワーが出るように調整が済んだらマイクゲイン及びDriveツマミを反時計方向に回し切っておく。

 その状態で、一旦受信に戻しダミーロードを外してからアンテナ端子にRFプローブ付きのVTVMもしくは10:1プローブ付きのオシロスコープを接続する。テスタに簡易RFプローブでも十分役立つ。但しデジタル・テスタは不適当だ。指針式テスタが良い。 再び送信するとオシロでは写真のような波形が見えるだろう。 VTVMの場合は、幾らか指針が振れるはずだ。 その状態で、上記の位相と振幅でバランス調整を行なう。 オシロの場合はなるべく振幅が小さくなる点に合わせれば良い。 VTVMなら指針の指示が最少になるよう調整する。 オシロで見るとモヤモヤしたノイズ状に見えるのは、途中の信号漏れやアンプノイズがあるからだ。取りあえず全般を見ながら振幅最小に調整すれば良い。VRもTCもほんの僅かの調整で済むはず。ぐるぐる回さないように。

 文章で読むと面倒そうだが実際には難しくない。 キャリヤバランスが崩れたSSBはオンエアで目立つから、時々確認を兼ねて調整しておこう。

ポイント:マイクゲインやDriveツマミを絞るのを忘れずに。

【キャリヤポイントの調整】
 プロ用と違ってアマチュア無線機に使ってあるクリスタル・フィルタは安物なので特性のバラツキが大きい。 従って、キャリヤ周波数を一律の周波数に合わせて済ませる事はできない。 フィルタの特性に合わせて個々にキャリヤ周波数を加減する必要がある訳だ。従って、この調整に周波数カウンタはお呼びでない。 手順詳細は取説に書いてあるのでその通りに進める。

 調整に必要なのは1,000Hzと300Hzの正弦波が出せる低周波発振器とパワーメーターである。 低周波発振器は、1,000Hzと300Hzを切り替えた時に出力電圧に差が無いものが必要だ。信号の大きさは50mV(rms)もあれば十分で、普通は大き過ぎるはずだからアッテネータを付加して適度に絞っておくと扱い易い。 パワーメーターは終端型で60Wと15Wが正確に読めるものが良い。 どうしてもない場合は、50Ωのダミーロードと通過型電力計で代用するしかないだろう。ダミーロードの代用にアンテナを使うのはお薦めしない。 なお、パワーメーターの代わりにダミーロード両端のRF電圧をオシロスコープで読むと言う手もある。但しVTVMで読むのはやめた方が良い。VTVM付属のプローブを壊す危険性がある。オシロスコープで読む場合も10:1のプロープは必需だ。

 調整手順は簡単だ。アンテナ端子に終端型パワー計を接続する。まず、USBなりLSBの調整すべきSSBモードに切り替える。 マイク・コネクタから1,000Hzを与え、送信にしてマイクゲインを加減しながらPreselector、Plate、Loadの各ツマミでフルパワーになる様に調整する。

 続いてマイクゲインを加減して、パワーが60Wになるよう調整する。 更に続いて低周波発振器を300Hzにセットする。(注;低周波発振器の出力レベルを変えてはいけない) 恐らく、パワーがだいぶ下がると思う。 そのパワーが15Wになるよう、キャリヤ周波数を調整する。(写真のトリマ・コンデンサを調整する) 済んだらモードスイッチを反対側のサイドバンドに切り替えて同じ様にキャリヤ周波数を調整する。 なお、連続したシングルトーンの送信は終段管に負担が掛かる。こまめに受信状態に戻し休みながら、発生した熱を冷ましつつ、なるべく手短に行なう。

  以上で音声の300Hzが1000Hzに対して-6dBになるポイントにキャリヤ周波数を調整したことになる。 SSB送信機としては標準的なところだ。

                 −・・・−

 調整が済んだら受信状態にして、アンテナを接続してみる。どこかすいたバンドが良い。 サーっと言う外来ノイズが良く聞こえるようにプリセレクタつまみを調整したら、ややボリウムを上げてワッチする。モードスイッチをLSBとUSBに交互に切り替えてみよう。 出てくるサーと言うノイズの音色が極端に違わなければ調整は合格だ。

 なお、アマチュア用のSSBフィルタは中心周波数に対して上下の周波数特性が完全な左右対称ではないので、USBとLSBのノイズの音色が同じになる事はないかも知れない。 これはある程度やむを得ないだろう。 しかし極端な違いがあるなら調整不良だけでなく、フィルタの劣化も疑うべきだ。 疑われたらフィルタを外して単独で特性評価するのが手っ取り早い。(評価には道具とスキルが必要なので誰にでも可能ではないですが・・)古いリグにはフィルタ特性が崩れたものがけっこう見受けられる。

 音声の低域を出そうとして、キャリヤをフィルタの内側に持って行くのはやめた方が良い。シェープ・ファクタの良くないフィルタでは、キャリヤと逆サイドの漏れが酷くなってみっともないSSBになるだけだ。 標準調整に従うのが一番良い。 やや素っ気ない音になるが止むを得まい。

【マーカー発振器の周波数調整】
 デジタル表示が付いたモデルでは、あまり重要ではないかも知れない。 しかし、デジタル周波数表示とマーカー発振があまりにずれていると宜しくない。 周波数調整は写真の3200kHzとある水晶発振子の手前のトリマコンデンサ:TC1で行なう。

 直接3200kHzを読もうとすると測定器を接続した事の影響がでるので、25kHzの出力を周波数カウンタで読んで調整しようとした。 しかし、10秒ゲートを使っても4ppmの分解能でしか読めない。更にゲートタイムを伸ばせば調整は困難になるばかりだ。 発振器から10MHzを発生し、受信しながらゼロビートを取る方法が一番良かった。 30m BandでWWV/WWVH或はBPMのような標準電波を受信しながらでも良いだろう。 これで初期精度0.1ppmくらいに追い込むのは容易だ。(いずれズレて来るが、1ppm程度は十分維持できそう) 発振部にUJ特性のセラコンを使って温度補償するなど、周波数安定度に拘ったマーカー発振回路になっている。 HC-13/Uの100kHz水晶を使った昔のマーカ発振回路よりずっと安定している。

【クラリファイヤの調整】
 一番手っ取り早い方法は、VFOの発振周波数を周波数カウンタで読みながら、クラリファイヤのスイッチをON/OFFして周波数がずれないよう合わせる方法だ。

 それが面倒なら、マーカーを受信しながらON/OFFでビート音が一致する様に合わせれば良い。

写真に見える半固定抵抗器(VR)は安物なので、経年変化があるようだ。 もうすこし良いVRに交換してやると定期的な調整もいらなくなるだろう。 取りあえずそのままにしたが、次回ずれて来たらCopal のRJ-6Sにでも交換しておきたい。

                    ☆

 以上のほかに、各バンド用の水晶発振回路の調整を行なった。 各バンドともに300mV(rms)に合わせるよう指示がある。 オシロスコープを使ったので、約850mVppに調整した。 但し、どのバンドも甚だしいズレはなかったので点検して必要に応じて調整すれば良いだろう。 また、プリミックス後のBPFもズレを感じなかった。ここは必要のない限りいじらない方が良い。 それに、BPFはボード・エクステンダ(延長基板)がないと調整は困難だ。

 以上、おおまかな再調整の様子はこのようなものだ。今ではオシロスコープは高級測定器とは言えない時代なのでこれと言った高級な測定器は使っていない。 デジタル・テスタくらいは持っているだろうから、あとは100MHzくらいのオシロスコープと50Ωのダミーロードがぜひ欲しい道具だ。オシロは万能だから、それがあればバルボル(VTVM)は必要としない。 低周波発振器はパソコンのサウンド機能とフリーウエアでも発生可能だ。或は自作も難しくはない。あとはモニタ用に受信機(ジェネカバのリグ)でもあれば良いだろう。こんなところの道具をお持ちならチャレンジしてみてはいかが?

               ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

【FT-101ZD:外観の整備】
 調整も済んだので、外観の整備を行なう事にする。 対象範囲は、上下のキャビネット、フロントパネル、そしてツマミである。リアパネルはファンモーターを清掃した際に済ませておいた。 写真はツマミを外す前のもの。

 上下のキャビネットは、スピーカーと運搬用の取手を外してから洗剤を掛けて水洗いする。汚れが酷かったので、『マジックリン』と言うアルカリ系の強力な洗剤を使ったが、塗装やプラスチックを侵すことがあるので目立たぬ場所で事前確認しておく。

 錆が酷ければ、錆び止め処置を行なってから近似色で再塗装すれば見違える様になる。 今回は、清掃のみで十分奇麗になったので再塗装までは行なわなかった。 但し、微細な錆が認められたので『サビチェンジャー』と言う赤サビの転換剤で処理しておいた。

【ツマミの洗浄】
 汚れたリグでは、ツマミを洗ってやるとまるでイメージが変わることがある。 このFT-101ZDはまさしくそれであった。 特にツマミ根元の銀メッキ部分が輝きを取り戻したのでキラキラ輝いて見える。

 洗剤はツマミとメッキ部分を侵さないものを使う。弱めのものが良いかも知れない。クレンザーのような研磨剤入りは旨くない。 細かいローレット部分に入り込んでいる汚れは歯ブラシなどを使って丁寧に除去しておく。 写真は乾燥中の全ツマミである。メッキ部分がピカピカになった。(FT-101DZの銀色ツマミはプラスチックメッキ品・hi)

【パネル面の清掃】
 可能であれば、フロントの化粧パネルを外して丸洗いすると良い。 しかし、FT-101ZDの場合は厄介そうなのでそのまま清掃することにした。

 いっぺんに洗剤を掛けてしまうと収拾が付かなくなってしまう。 部分ごとに、ごく少量の洗剤を含ませた布でぬぐうように洗って行く。 その後よく絞ったウエスで水拭きしておく。 洗剤が残らぬよう、ウエスを良く濯いで2回以上拭いておこう。

 なお、有機溶剤を使うと文字落ちや塗装が溶ける危険があるのでお薦めしない。 どうしてもと言うのなら、イソプロピル・アルコール(IPA)を確認しながら使うのがよいと思う。 しかし家庭環境の汚れは洗剤と水拭きの方が奇麗になるように思う。

【スイッチ周り】
 レバースイッチとその周辺は清掃が面倒である。 うっかり洗剤を使い過ぎるとスイッチに浸透してしまう。 そうなると厄介だ。(スイッチ交換か分解清掃) 薄く洗剤を溶き、湿してからきつく絞ったウエスで拭き取ることにした。

 スイッチを上下しながら丁寧にやればこの程度にはなるので、まあ十分であろう。 エンブレムやスイッチ周りの窪みに入った汚れも丁寧に拭いておく。 これで見違える様になっただろう。


【バンドスイッチ部分:清掃後】
 パネル右下のあたりだ。 バンドスイッチの文字が白く浮き出てきた。ツマミも本来の輝きを取り戻したようだ。 2重ツマミの銀色部分にはポインター用の白線が入っているが、清掃前は良くわからなかった。銀地に白と言うよく見えないポンターも問題だが、汚れも酷かった訳だ。赤いラインにすれば見易くなるが、こんどは目立ち過ぎてみっともない。機能だけでなくデザイン性も考えるとなかなか難しいものだ。

 全体にくすんでいたこのFT-101ZDも清掃でずいぶん良くなった。 よほど汚かったので、清掃の効果たるや抜群である。もちろん、外観だけいくら奇麗でも中身がNGでは旨くないけれど・・・。(笑)


【レバー・スイッチ周り:清掃後】
 洗ったツマミを戻した状態だ。 スイッチ周りも手間を掛けたのでずいぶん奇麗にできた。 清掃中にスイッチの上下を繰り返し行なったためか、接触不良もだいぶ良くなったようだ。

 写真にないが,VFO下部に並ぶプッシュボタンの部分は少しやり難かった。奥の方までできなかったがまずまずだろうと思う。ボタンを抜くと言う方法もあると思う。 ヘッドフォン・ジャックの止めネジが少し錆びているので交換して奇麗にしたい感じだ。六角ネジタイプでは無く、ローレット仕上げのネジにすると品が良い。 あとで買って来て交換よう。 なお、マイクコネクタはこのあと8 Pinに交換する予定だ。

                  ☆ ☆ ☆


 アナログな機器は定期的な整備が大切で、これはどんな高級機でも同じである。 いやむしろ、高級機ほど定期的な整備を欲するものだ。軍用受信機のR-390A/URRなど2年も放っておくとがっくり感度が下がってしまう。常に最高性能で使うには半年ごとの整備が必要なほどだ。 ましてこのFT-101Zのように30年も経過すれば調整ズレが生じるのは当然で、何らかの再調整は必須だ。

 ただし、このFT-101ZDは見かけの程度とは違ってあまりズレていなかった。 これは部品性能がアップし製造技術も安定して来た時代の製品だからであろう。1950年代や60年代の機器とは随分違う。 従ってレストアに当たって無闇に調整してしまわぬようにした。 VRやトリマ・コンデンサのわずかな加減で済むはずであり、大きくずれるのは何らかの故障も考えられる。 様子がおかしければ、あちこちいじり回す前に故障診断を行なうべきだ。

 外観の清掃と性能は直接関係ない。 従って入念な清掃を実施する必要はないかも知れない。 しかし、あまりにも汚いものはシャックに置こうとは思わない。 奇麗になれば愛着も湧こうと言うもので、お薦めのレストアである。 もちろん性能や機能が不完全なままでは単なるシャックの飾りに成り下がってしまうだろうか。 しかし、いまどき年代物でオンエアする機会もないのなら、まずは見かけだけでも奇麗にしたら良いのかも。(笑) またまた長くなってしまった。次回はマイクコネクタの交換改造、ダイヤルランプの交換修理、そして28MHz帯の100W化改造を扱う予定でいる。 de JA9TTT/1

(つづく)←リンク・Part 6:最終回へ

2013年8月1日木曜日

【HAM】 A New life for FT-101ZD Part 4

【FT-101ZDにニューライフを:第4回】
【FT-101ZDのMode SW】
 『FT-101ZDでWARC Bandにオンエアしよう!』の4回目だ。(前回:Part3 は→こちら。初回:Part 1→こちら)

 WARCバンドもDXingには断然CWが有利なので、CWでのオンエアに備えておこう。(注:30m BandはCWオンリー。17mと12m BandはSSBもオンエアできる)

 FT-101ZDはSSBを中心に開発されたトランシーバだと思う。 しかし、HF帯で使う以上CWでの運用も重視していた筈だ。

 CWモードではワイドとナローにIFフィルタ切換えができる。ワイドはSSBフィルタを兼用する。ここではオプション扱いになっていたCW用の狭帯域幅フィルタを追加する作業を行なう。 追加するCWフィルタ:XF-8.9HCの帯域幅は公称600Hzである。更に狭い300Hzのオプション:XF-8.9HCNもあったと思うが入手難だろう。また300Hzの方は通過損失が一段と大きいようである。

 FT-101ZDの帯域幅可変機能はなかなか良くできている。 CWフィルタはなくともその機能を使って通過帯域幅を絞ることができる。 しかし通過帯域とキャリヤポイントとの関係が必ずしも適切とは言えず、操作も煩雑になっていた。 従ってCWで本格的にオンエアするつもりがあるならCWフィルタはあった方が良い。

                     ☆

 モードスイッチの部分を見るとAM・FMのポジションに気付くだろう。 FT-101ZではAMとFMの両方を同時に実装することはできない。どちらか一方のみオプションのボードを装着する。 今まで見たものはFMオプションを搭載した例が多かった。 28MHz帯の運用とVHF帯のトランスバータを装着するにはFMモードの方が良かったのだろうか。 一方、海外では(違法な)ハイパワーCB無線が横行しており、そうした用途にはAMオプションが必要だったのだろう。 10m Bandの局発クリスタルを交換し、27MHz帯にオンエアしていたようだ。 JAでもCB上がりのFT-101ZにはAMオプションが付いているのかも知れない。

【IF部は重層構造】
 写真で下側になっているフィルタの載った基板を取り出さなくてはならない。 それにはまず上にあるFMボードを外さねばならない。

 FMボードはいかにも後から付けました・・・と言った案配で、写真のような六角の支柱2本のみで装着されている。 要するに片持ち状態の基板であって、振動でぶらぶらする構造である。 基板からは多数の配線が出入りしているので適宜コネクタを抜き取らないと外すことができない。面倒ではあるが、慎重にやれば難しい作業ではない。

【IF基板のコネクタ】
 IF基板には3つの大きなコネクタがある。 これらは全て抜き取る必要がある。

 それぞれピン数は異なっており、ワイヤ・ハーネスを崩さなければ誤装着の可能性は少ない。 特に場所をマーキングしておく必要は無いと思う。 心配なら写真撮影でもしておけば完璧だ。 基板上の半固定抵抗器には触れないように丁寧に行なう。


【IF基板の脱着】
 IF基板は4隅のネジだけで固定されている。 FMボードを外したときに2本の六角スタッドボルトも抜いておけば後は2カ所のネジを取るだけだ。

 重量のあるクリスタルフィルタがたくさん装着された大きな基板がわずか4本のネジで固定されているとは少々心配だが実際には大丈夫だったのであろう。 このあたりが廉価版のFT-101ZとFT-901の違いの部分だ。 内部を比較してもらうとわかるが、明らかにFT-901の作りの方が上等である。 コストの掛け方が違うのだからやむを得まい。 しかし多くのHAMは中は見ずに買っただろうからスペックや外観上の違いがなければFT-101ZDの方を選んだのだろう。(笑)

【CWフィルタの装着方法】
 インストラクションには写真ようにするよう記載があった。フィルタ本体と基板の間に菊座金を入れ、基板ハンダ面の側は平ワッシャを挟んでネジ止めするようにとのこと。

 フィルタに方向性はない筈だが、逆向きに装着することはできない。 自然に取付けられる向きに装着すれば間違いない。 頂き物の中古フィルタを使ったので端子部分のハンダは良く取り除いておいた。 あまりハンダが残っていると装着に支障がある。


【ネジ止めとハンダ付け】
 基板に挿入したらまずはネジ止めを行なう。 ハンダ付けを先に行なうとネジを締める際に端子に無理な力が加わる可能性がある。 ネジを仮止めしたら部品面の側からも良く見て部品や配線がフィルタの下敷きになってないか確認を。 確実なネジ止めが済んでから端子のハンダ付けを行なう。

 写真に見える2本の緑色ワイヤは撤去しておく。 これは、CWフィルタが未装着のときにSSBフィルタで代用するための迂回配線である。 正規のCWフィルタを付けたなら2本のワイヤーは要らないから必ず除去する。

【CWフィルタの装着完了】
 装着が済んだら、IF基板を脱着したときと逆の手順で元に戻して行く。

 配線がかなり入り組んでいて基板の止め穴にネジを入れ難かった。 ネジを落としてしまうと厄介なことになるので、先端がマグネットになったドライバを使うとやり易い。

以上でCWフィルタの装着が終わり、WARC Bandの送信禁止も解除されているのでいよいよ通電テストである。 コネクタの装着漏れやネジの止め忘れがないかもう一度確認を!

                 ☆ ☆ ☆ ☆


【通電テスト】
 清掃から始まって、WARC Bandの改造工事、そしてCWフィルタの装着まで済ませて来たが、いまだ通電はしていなかった。

 このFT-101ZDは少なくとも10年以上通電していなかったはず。 従って、電解コンデンサの為には徐々に電圧を加えて行くのが安全だ。 急に全電圧を加えるとリーク電流の多い電解コンデンサの内圧が急上昇してパンクするかも知れない。

 スライド・トランス(スライダック)を使って、最初はAC電圧30Vからスタートした。 できればAC電源の一次側電流もモニタしておくと良い。ここでは特に気になる高電圧コンデンサの端子電圧などモニタしながら、30V→60V→100Vと順に各30分以上の時間を掛けて100Vまで持って行った。

 FT-101ZDの時代ともなれば、電解コンデンサの品質も相当良くなっていた。注意深くやれば事故が起こる可能性は低いと思う。一か八かで一気に加えても良いかも知れないが,正しくは徐々に加えるべきだと思う。通電後暫くは五感を存分に働かせて何か異常がないか入念な監視を!

【無負荷時のファイナル電圧】
 AC電圧を100Vまでアップさせた。 受信状態で無負荷に近い時には終段管:6146Bのプレート電圧は相当上昇している。 写真でテスタは1kVのレンジになっている。このような高電圧になっているから間違って触ったら命に関わる。

 以降のレストア作業にあたっては、時として通電しながら各部の状態をチェックしなくてはならないだろう。 このように高電圧が内在していることに常に留意しなくてはならない。

 無線機のレストアは楽しいかも知れないが、命を張ってまでやるほどのものではない。くれぐれも事故のない様に!

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 長い眠にあったこのFT-101ZDも無事に目覚めることができた。 まずは受信状態になった訳だが、随所のコンデンサが目覚めるときのノイズが聞こえてきた。 またスイッチや可変抵抗器の接触不良はかなり酷い。 摩耗故障していればまた別だが、単なる接触不良なら操作しているうちに回復して行くものである。 すぐに調整作業に入るのではなく,各部を丁寧かつ満遍なく操作しながら暫くエージングしておこう。 なお、無人での通電ができるほどの信頼性は無いと思うので、通電は在室時が良い。 数日間様子を見れば状態も安定してくるだろう。 もしも部品交換の必要があってもそのあとからにしよう。

  FT-101Zシリーズともなれば新しい方のRigのイメージがあった。しかし発売から30年以上も経過していると気付きある種驚きを感じた。それだけ年月が経過しているのだと・・・。 実働可能な機体はごく僅かだろうし、レストア向きの良好機も少数なのかも知れない。どうやらまったく一般性のないテーマだったようだ。コメントできるのはずっとオンエアしてこられたお方だろう。話題に乗れる人はごく限られそうだ。これが新しいと思うとは、私も歳をとったものだ。(笑)

 少々億劫だったCWフィルタの装着も済んだ。この後は性能確認と調整になる予定だ。さらに外観の化粧直しやマイク・コネクタの交換も予定する。そして28MHz帯の100W改造も実施したいと思っている。 今回も少々長くなって来たので、続きはまた次回と言うことで。de JA9TTT/1

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