2024年9月3日火曜日

【電子管】Using the Pentode as the Audio Amp. (4)

【五極管の低周波アンプ・その4】

INTRODUCTION
The 6R-R8 pentode tube is a Japanese-designed vacuum tube that was employed in NTT's telephone relay network. It is believed that the prototype was the Philips E180F pentode. This blog presents a comparison of the two pentodes as audio-frequency amplifiers. It can be concluded that the two tubes have very similar characteristics. Therefore, they can be used in the same way. However, the pin connections are completely different and cannot be swapped. I am going to use the E180F, which I have in abundance, to build an audio amplifier. The 6R-R8 is also excellent, but I am going to use the E180F. (2024.09.03 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【6R-R8届く】
五極管でオーディオ・アンプの第2回で「国産の6R-R8を試したい」って書きました。

 良く探したら怪しげな中古球・・・もっともこの球の新品は入手難だったはず・・・を1本だけ持っていたのですが、評価には不十分でした。それで「どなたか・・・」って書いたところさっそくOMさんに送って頂くことができました。 VY-TNX!!

 6R-R8はHigh-gmな五極管で、時々ジャンクで見かけたのですが如何せん使用例のまったく乏しい球でした。 正規品は特定ユーザ向けで高価だったらしくアマチュアの手に入るのは基本的にジャンク球です。入手性は悪く雑誌などの記事にしにくかったのかも知れません。それに似たような目的・用途に使える球なら幾らでもあるわけですから・・・。 真空管の型番ですが、JIS形式ですから6R-R8とRとRの間にーハイフンが入るのが正しいです。

 情報のない部品は使われないと言うセオリー通り使う人は珍しかったのです。 そんな訳でたとえ見かけたとしても積極的に手を出そうとしたことはありませんでした。手元に一本だけ見つかったのもおそらくたまたま何かの偶然で手に入ったのでしょう。(笑)

 情報によれば6R-R8はWestern Electric WE-404Aの同等管のようです。またE180F/6688と電気的な特性は同等とのこと。 どちらが原型の球なのかはわかりませんがいずれも広帯域増幅器を構成するための高性能管です。 6R-R8/WE-404Aは主としてNTTやAT&Tの電話回線網で同軸中継器に使われていました。ピン配置が特殊なのはその用途に特化した結果なのでしょう。
 E180F/6688のピン配置はもう少し一般的な用途を意識しているように感じます。 フレーム・グリッド管は1950年代末にフィリップス社が始めたようなのでE180Fが原型管のようにも思うのですが・・・ 足ピンの違いから6R-R8とE180Fの差し替え評価はできませんが比較してその性能と類似性を確かめてみたいと思います。

                   ☆

 レアで特殊な真空管どうしを比較すると言う話です。そのモノを持っていなければこの先を見たからといって何にも役立たないでしょう。 早々のお帰りがお薦めです。 残暑はまだまだ厳しいですが何か有意義なご趣味にでもあなたの大切なお時間をお使いください。 なかば習慣なのかもしれませんが、こんなBlogを眺めていてもしょうもないですよ。(爆)

【6R-R8とE180F/6688のテスト回路】
 レアものの真空管とは言っても「ごく普通の真空管」に違いありません。フレーム・グリッド構造でHigh-gmと言う特徴はありますが、それは民生用の球でも使われていた技術です。 従って評価回路も前2回のBlogと違いません。

 ちょっと前にテストしたE180F/6688と同じようにバッファ・アンプには6AU6(三結)を使っています。
 評価の基本は前回(←リンク)と同じですが、今回はプレートの負荷抵抗:Rpを変えて幾つかテストしています。 前回E180Fをテストしたときゲインが予想よりかなり小さいのはプレート電流:Ipが少なすぎてトランス・コンダクタンス:gmが伸びていないのではないかと考えられました。 そこで今回は4倍くらいIpを流した状態のテストを加えました。

 回路は同じですがプレート負荷抵抗:Rp、スクリーングリッド抵抗:Rc2、そしてセルフバイアス用抵抗:Rkを変えながらテストします。 結果は後ほど一覧にまとめてあります。 どのようなRp、Rc2、Rkを使ったのかはそれぞれ一覧表に記入してあります。

【バッファはいつもの6AU6で】
 6AU6を三極管接続(三結)で使う方法はすでに定番化しました。(笑)

 6R-R8はヒータ電圧が6.3V、電流は300mAです。これは6AU6と同じなので直列にして12.6Vを加え点灯しています。 E180F/6688も同じですので同様にしています。

 なお、6R-R8のピン配置は独特です。 間違っていると正常に動作しませんから手持ち複数の資料からピン配置図を探し出し、資料を相互に比較のうえ間違いはないか十分に確認しておきました。もちろん現品を良く観察するのも確認の念押しになります。

 特にヒータが3番と9番と言うのは異常にさえ感じますが恐らく使用していた機器の部品配置や配線構造に合わせて真空管のピン配置の方を最適化した結果なのでしょう。 汎用品ではなくまったくの「専用管」ですからそう言った特化が可能だったのです。

 差し替えてテストができないのは大きな欠点ですが、まあ仕方がありませんね。 本来用途以外に使う方がイレギュラーな訳なので文句は言えません。 やむなく大幅な配線替えを行なってテストしました。(笑)

【実測結果・一覧】
 6R-R8とE180Fの類似性は十分確認できたと思います。 足ピンの接続はまるで違いますが電気的には良く似ていました。

 完全に同じとは思えませんが良く似た特性です。 従って同じような使い方をすれば良い訳です。 そうなると残念なのはピン配置が全く違うことにあります。 差し替えて音を聞いて見ると言った比較にはまったく向きませんので・・・

 プレート電流を4倍に増やした結果はどうだったでしょうか? プレート負荷抵抗を240kΩから約1/4の62kΩにしました。 もしトランス・コンダクタンスが一定ならゲインは約1/4(=25%くらい)になるはずです。 結果は約80%でした。・・・逆に言えば20%減で済んだ訳です。 
 これはプレート電流:Ipが約4倍になってトランス・コンダクタンス:gmがずっと大きくなったためです。 概略の計算ですがgmは約3倍になっています。 プレート負荷抵抗を高くしてゲインを稼ごうとしても、この球の場合は効果があまりないことがわかります。

 負荷抵抗はあまり小さくせずプレート電流を多く流すようにし、さらに可能なら電源電圧もアップしてプレート電流をある程度以上確保すると言った用法が上手い活用法のようでした。 こうした使い方はプレート回路のインピーダンスを下げる効果もあって周波数特性を伸ばす意味からも好ましいものです。 真空管の特性にマッチしている訳です。 可聴域以上に伸ばしても意味はないのですが、負帰還(NFB)を掛ける際は位相の回りが少ない方が有利です。

 今回のテストでは6R-R8とE180F/6688の比較とともにプレート電流を大きくする効果を確かめることができました。

【活躍した真空管】
 テストに活躍した真空管です。

 主役は6R-R8とE180F/6688ですが、脇役の6AU6も安定した性能で安心感がありました。

 主役2つの構造の細部を拡大して見ると幾分違いはありますが、よく似ていると感じました。 まあ、同じような特性に作ったのでしょうから似ていて当然でしょうね。
 6R-R8は初期バージョン(末尾が無印)を使った装置でトラブルがあったそうです。 特定の条件で稀にしか発生しないトラブルのため原因究明は難航したそうです。 その結果は真空管:6R-R8の問題であることがわかったそうです。6R-R8Cはその対策品です。

 このテストのようなオーディオ帯での使用ならまったく違いはないでしょう。 ごく稀な事故の対策品なのですから、6R-R8も6R-R8Cも同等に使える筈です。

                   ☆

【6R-R8で再生受信機】
 そもそもこのBlogはラジオ(但し「ラジオ放送」や「ラジオ受信機」ではなくって無線通信の意味のRadioです・笑)がテーマでした。あなたがどちら派なのかわかりませんがラジオファンを邪険に扱うと後ろから何か飛んできそうです。ここらでちょいラジオねた。(笑)

 6R-R8を使った再生式受信機がモービル・ハム誌にあったので回路を紹介しておきます。 アームストロング型でスクリーン・グリッドから再生を掛ける珍しい形式ですがそれほど難しい回路ではありません。回路図があればあとは一般的な注意を払えば大丈夫です。製作は十分可能でしょう。
 なお回路図のL1〜L3とコイルの説明がずれています。回路図が正しいとして、L1が1回、L2が24回、L3が3回巻きでしょう。MH誌に多い校正モレですね。w 他はザッと見て大丈夫そうですが、この記事には肝心な6R-R8のピン接続図がありません。読者はよ〜くご存知なのか、或いは製作する読者なんていない・・・というのが前提なんでしょうかネ?(笑)

 筆者はJA7RKB十文字OMです。 B+電源はトランスレス形式でシンプルに済ませています。 さらにヒータはDC点灯で初段の球(検波管のほう)を重視して後段の球のヒータ抵抗を平滑回路に兼用する上手い手が使われています。 6R-R8の低周波アンプはハイゲインですからトランス結合にすることなく十分な感度が得られるのではないでしょうか。低周波アンプ部の部品定数はごく標準的なものです。色々いじってみたければBlogのテスト結果から良さげな定数にしてみるのも面白いかも。 イヤフォンはセラミックあるいはクリスタル型をお使ください。

 6R-R8だけでなく、これまで紹介してきたどの五極管でも200倍程度のゲインは楽々得らます。 短波ラジオですから6BA6のようなバリミュー管を使うのも良いでしょう。6BX6とか6CB6のようなTV球も十分イケます。検波管にはむしろ6AU6や6AK5が向いていたようにも思います。 6R-R8なんて持ってなくても作れるので、ちょっと気になった「ラジオファン」はお試しを。 AM/CW/SSBの受信が楽しめるとのこと。詳細な記事はいらないと思いますが、もし必要ならモービル・ハム誌1991年1月号をご覧になってください。

(このBlog内の参考リンク;再生式受信機の研究→ここ)

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 JA3のOMさんのおかげで懸案だった真空管の比較テストができました。どうもありがとうございました。 なお、6R-R8はピン配置が特殊で少々使いにくい球ですが上手な使用法がわかればジャンク球から蘇るかもしれません。 20世紀の産業遺産でもありますから捨てられしまうのではなくて電子部品として再活用の道が開かれたらFBだと思います。 もっとも価格急騰しても困りますけど。(まあ、ないでしょう・笑) 次回は再び双三極管にスポット・ライトを当てて活用を試みたいと思っています。ではまた。 de JA9TTT/1

(つづく)nm

2024年8月20日火曜日

【電子管】Using the Twin-Triode as the SRPP Audio Amp.

【SRPP回路を使ったオーディオアンプ】

introduction
I had never built an SRPP circuit with twin triodes before. So I gave it a quick try. I selected three types of twin triodes. It depends on the value of the gain constant μ and the transconductance gm. The measurement results of my prototype SRPP amplifier are listed in the table. The results show that most twin triodes can be used for the purpose of this SRPP amplifier. I have experimented with them and found their characteristics to be good. (2024.08.20 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【双三極管:6CG7】
三極管が2ユニット封入された・・・いわゆる双三極管でSRPP型のオーディオ・アンプ回路を試作します。

 写真は6CG7という真空管です。同じ特性の三極管二つが一個のガラス容器に封入・複合された真空管で一般に双三極管と言います。三極管二つの複合管には異なった特性のユニット2つを複合したものがあってそれらは複三極管と言います。わかりきったこと書くなって言われそうですけど真空管に馴染みの薄いお方もご覧ですので・・・。

 双三極管のルーツはGT管時代の6SN7あたりでしょう。メタル管の時代になって脚が8ピンのUSベース(オクタル・ベース)に統一されたのが切っ掛けでしょうね。ガラス封じのGT管はそのローコスト版です。8脚あれば三極管二つで6脚、ヒータの2脚でちょうど8脚になります。全く独立した三極管を2つ同じ真空容器に封入できることになります。作られた理由はやはり省スペースにあるでしょう。
 世の中には三極管を2つ以上使う回路はたくさんありますから省スペースには有難いことで、6SN7以外の双三極管も作られました。 その背景には真空管(電子管)がラジオ以外の分野に進出したこともあるでしょう。(UZ-30MCと言ったUZベース六脚で直熱型の双三極管もあったのですが軍用品で一般人は知らない特殊な球でした)

mt管(ミニチュア管)の時代になって、初めはすべて7ピン管でした。そのためカソードがある傍熱管の場合、どこかの電極を共有しない限り双三極管は作れません。戦前からあった6J6がそうした7ピンmt管の双三極管でした。2つの三極管のカソードを共通のピンにすることで7脚に2つの三極管を収めたわけです。 カソードを直接接地して使うなら支障はないものの、やはり完全に独立していないのは使い勝手の点ではイマイチなように思います。

 足ピンを2本増やした9ピンmtのNoval管が作られ、傍熱型の双三極管がマトモな形で作れるようになります。しかもオクタルより1ピン多いので、その使い方でバラエティが生まれました。 写真の6CG7のように余った1ピンを2つのユニット間のシールド(遮蔽)に割り当てる球ができました。これは高周波や信号レベルが極端に違う用途に使うとき問題だったユニット間の干渉を防ぐためです。 もっぱら低周波やON/OFFと言った直流的な動作の場合、シールドはなくてもマズマズ使えるので、余った1ピンをヒータの中点から引き出す球が作られます。 12AT7、12AU7、12AX7などが典型例です。6.3Vだけでなく12.6Vでも点灯できるのは便利でした。

 高周波系の双三極管ではシールドとして、低周波系の双三極管ではヒータの中点としたものが一般的になりました。双三極管を使う際は余ったピンの扱いに注意すべきでしょう。なお、ピン接続は1番から9番へ順に、P-G-K-H-H-P-G-K-HCTが一般的です。前の方のP-G-Kが第2ユニット、ヒータの後のP-G-Kが第1ユニットです。HCTはヒータの中点です。ただし稀に全く異なる物があるので要注意です。ヒータ中点を9番ピンに引き出さない球の場合、9番ピンは内部遮蔽:インターナル・シールド(IS)あるいは無接続:ノー・コネクション(NC)もありますのでどちらの場合も一応GND電位にしておけば良いでしょう。

                   ☆

 今回もラジオ趣味の人にはテンデ面白くないでしょうね。まあ、我慢してご覧いただく意味はありませんからヒマのない人はこの先はやめておくと宜しいです。以下、そんな程度の中身です。

参考:Elevamの真空管について:
エレバムは宮田製作所という真空管メーカのブランド名でした。ロシア革命の年、1917年に創業の老舗で東芝・マツダと違わぬ古い球メーカでした。自社ではラジオなどはほとんど作らず、もっぱら球を他社に供給するのが商売だったようです。交換用の需要も多かったのでしょう。マイナーと言うには有名すぎる球メーカだったと思います。雑誌の広告欄には各種真空管の価格表があったのですが一流品のマツダと比べて安価でした。なお、宮田製作所は現在する会社で特殊な放電管など理化学機器向けの電子管を製作しているようです。Elevamの球は古いラジオの補修用に使われて残っていることも多く珍しくもないのですが箱入り新品のmt管はちょっと珍しいかもしれません。同社の球は良くも悪くもない程度のごく平凡なものだったように思います。要するにフツーに使えます。w

【SRPPアンプ・テスト回路】
 図は今回のテスト回路です。典型的なSRPP型アンプになっています。
 三極管を2つ分使うオーソドックスな2段増幅アンプを真っ先にやるべきだったのですが、興味の赴くままにSRPPアンプを作りました。

 カソード接地型の増幅器をR-C結合で2段繋ぐアンプはあまりにオーソドックスなのでちょっと興味が湧かなかったのです。まあ、そっちはいつテストしてもいいや・・・と言った感じです。 球メーカー発表のR-C結合アンプの資料も多数存在するので後回しにしました。

 SRPPというのは、シャント・レギュレーテッド・プッシュ・プルの略です。上側の三極管がシャントレギュレータのような動作をするのでそう呼ばれるのでしょう。よく似た形のアンプにはミュー(μ)アンプというのがあります。そちらは単なる定電流源負荷のアンプで、出力の引き出し方が異なるので簡単に区別できます。

 このアンプは双三極管を使うと便利な回路です。ある程度のゲインをもたせつつ、出力インピーダンスも低くできるのがメリットです。測定結果はのちほど纏めますが、カソードフォロワと違ってゲインがあるのがメリットです。もっとも三極管を二つ使うのですから・・・

 カソード抵抗、Rk1とRK2は目的によって変更すべきです。この実験のように一定値(1kΩ)では、球によっては必ずしも最適ではない可能性があります。さらに同じ球を使う場合でも、想定される負荷インピーダンスが違えば設計は変わります。 しかし、ある程度おおきなインピーダンスの負荷なら最適設計でなくとも支障はないようでした。 電源利用率もまずまずで、十分大きな出力が得られるので単純な抵抗結合のアンプより有利です。 パワー管のドライブアンプにも適している筈です。実際そうしたアンプの製作例もかなり見掛けます。

 なお、球のヒータとカソード間の耐電圧:HK耐圧に気をつける必要がある回路です。まったく無視しているかのような回路も見かけるのですが・・・。危ないでしょう。

【SRPPをテストした真空管】
 写真にSRPPアンプをテストした真空管を示します。
 選択の基準は増幅定数:ミュー(μ)の大きさの違いです。トランスコンダクタンス:gmも考慮しています。

 測定の基本として中ミューの6AQ8、同じく中ミューですがHigh-gmな6DJ8、そして低ミューの6FQ7を選びました。
 なお、実際には9AQ8、7DJ8、そして8FQ7/12FQ7と言ったTV用トランスレス管を使っています。もちろんトランス付き回路用の球でもOKです。

 6AQ8は12AT7でも良かったのですが、ほぼ同等なので間に合わせました。また6DJ8はオーディオで使われる例が多くなっているので試してみます。6FQ7は6CG7と同特性の球でユニット間のシールドを省いた廉価版の球です。 GT管の6SN7と全くの同特性ということになります。低ミュー管の代表でしょうね。この目的には12AU7でも良かった筈です。(参考:低ミューの定義はμ≦10を言う場合もあります)

 なるべく新品でテストしていますが、良さそうな中古品も使いました。チューブチェッカの判定では新品に近いので支障は感じませんでした。ただしそれぞれバラツキはあります。
 厳密には多数測定して統計的処理を行なった方が良いのですが、そこまでするのは大変なのでやめました。単なる遊びですからネ。単体測定ですが傾向を見る程度でしたら役立つでしょう。

 今回はポピュラーな12BH7Aと12AX7のテストが抜けてしまいました。こちらは機会をあたらめて行ないたいと思っています。結果はだいたい予想できると思いますが・・・。

【SRPPアンプの測定結果】
 各部の実測電圧や得られたゲインを一覧表に纏めました。 真空管選択と使い方の検討に役立てるつもりです。

 出力電圧(rms)は、入力として1V(rms)を加えた場合の実測値です。従ってそのままゲイン(V/V)倍を表します。 負荷インピーダンスによってゲインが変わるのは内部インピーダンスが存在するためです。 ただし比較的低い値ですから、負荷が軽ければゲインもアップし出力はフルスイングすると思っても良いでしょう。 テスト回路のままでも50kΩ以上の負荷なら十分すぎる性能でした。 回路の趣旨にあった結果が得られていると思います。

 真空管の選択について考えます。 いま、SRPPアンプを採用する目的が低い内部インピーダンスと大きめなゲインであるなら、増幅定数:μ(ミュー)が大きくトランス・コンダクタンス:gmの大きな球がこの回路には向いています。μの大きな球はゲインが大きく、gmが大きいと内部インピーダンスが小さくなります。
 例えば、12AX7のようにμ=100と大きな球はゲインはありますが、gmはあまり大きくないので内部インピーダンスが大きいため負荷インピーダンスも高く選ぶ必要があります。 大きなゲインは要らないがドライブ能力を重視なら電流が流せてgmの大きい5687のような馬力のある球が良いことになります。(5687のピン接続は変則的なので注意!)

 また、プレート電流もある程度流した方がドライブ能力がアップするのは当然です。どんな球を使うか・・・という球の選択も大切ですが、その球をどう活かして使うのか、使用方法も検討すべきです。使い方が悪ければ潜在的な能力はあっても発揮してくれません。

 代表的な真空管3例のデータを示しますが、極端な違いはないのでSRPPは様々な球で構成できると思って良いようです。HAMの世界ではほとんど見ないので、使った経験はなかったのですがだいぶ感触がつかめたと思います。
 蛇足ながらSRPPはパワー管で構成されることもあり、OTLアンプとして使われることがあります。ただし原理は同じでも電圧増幅器とパワー・アンプでは設計法がだいぶ異なります。

【SRPPアンプ実験の意味】
 SRPP回路についてはオーディオ関係の書籍に詳しい解説があります。現在ではWeb上にもたくさんの解説記事を見かけました。

 たいへん詳しくて理にかなったわかり易い解説も多くて、あらためて勉強させていただけました。

 数式を駆使して解析した結果はまったくその通りなのですが、では実際に作ってみる価値はないのでしょうか? 私はそうは思いませんでした。

 このグラフは12AT7の特性がプレート電流、プレート電圧でどのように変化するかを示しています。中ミュー三極管の典型例として示します。 見ていただくとわかるのですが、決まった「定数」のはずの増幅定数:ミューでさえ、プレート電流で変化します。もちろんトランス・コンダクタンス:gmも然りです。

 真空管の3定数の2つが変わるのですから、もう一つのプレート抵抗:rpも変動します。 要するにどのような動作をさせるかにより現実の回路の様子は結構変わるのです。結果として内部インピーダンスもゲインも変化します。

 各定数の変化を加味したシミュレーションでも行なえば、任意の動作点における諸特性を求めることも可能なはずです。 しかしこんなことは単純ですから実験して傾向を掴んでおけば十分役立ちます。それにいくらシミュレーションしたってアンプは鳴りませんし。 

 そして真空管自体もかなりバラつくのですからいくら精密にやったところで現実と完全に一致することはないのでしょう。 このあたりに「理解するため実地でテストする意義がある」ように感じるのです。それで傾向がつかめたら十分役立つわけです。球の選択とか、その球に電流をどう流すのか・・・とか、etc。 まあ、考え方ですけどね。(笑)

                   ☆

 オーソドックス過ぎると興味を持ちにくいものです。 今回は双三極管をカスケードに接続するSRPPアンプを試してみました。 部品定数を変えながらさらに追求すべきだったと思うのですが、まずは概要を掴めたら良いとして一旦おしまいにしました。 多少ゲインなど変わりますが、様々な球で構成できる便利な回路です。アレがないから作れないとか、きっとあっちの球が良いに違いない・・・などと迷うこともなく、大差ない結果がその辺にあるような球で十分得られそうですね。 わかってやればウワサや怪しげな記事に惑わされることもありません。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

(つづく)←リンクfm

2024年8月4日日曜日

【電子管】Using the Triode - Pentode as the Audio Amp.

【三極五極管を使ったオーディオ・アンプ】

introduction
I have a lot of Triode-Pentode composite tubes in my junk box. They are all junk tubes from old TV sets. If I can make good use of them, I will be able to build an audio amplifier. I immediately tested them. The test results were very good. The test results are listed in the table below. I will be able to enjoy handmade audio without buying new vacuum tubes. I am a little happy. (2024.08.04 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【三極五極管:6U8A】
 三極管と五極管が複合された真空管で試作したオーディオ・アンプ(=低周波増幅器)をテストします。

 写真は6U8Aという真空管です。3極管と5極管が一個のガラス容器(Glass Envelope)に封入・複合された真空管で、一般にこうした球を複合管といいます。複合管には他にも様々なものがあってこれはその一つです。

 複合管が作られた背景はやはり省スペースにあるでしょう。 AMラジオのように3〜5本程度の真空管で作れるなら無理に複合管を多用しなくても支障ありませんでした。それと真空管の信頼性が低かったころ複合管は不経済だったはずです。片ユニットが生きていても、もう片方が死んだら丸々一本交換しなくてはなりませんから。 一般に複合管は安くありませんし。

しかしTV受像機ではモノクロ型でも20本近い真空管が必要です。必要な機能は削れませんから複合管を使って物理的な本数を少しでも減らしたくなるわけです。その結果がこうした複合管です。 生産技術の進歩で真空管自体の信頼性が十分高くなったことも複合管が発展した理由でしょう。

 実は有名な5球スーパにも複合管が使われています。検波・低周波増幅の6AV6がそれです。High-μな3極管と2つの2極管が複合されていました。しかしそれ以上の複合はあまり合理的ではなかったので複合管は使われなかったのでしょう。 それと電気に詳しくない一般の人は真空管の本数を数えて高級品と安物を区別します。機能は同等以上であっても複合管を使って3球にまとめたら安物にされかねなかったのです。だから5球スーパはそのまま5本だったんでしょう。(笑)

 いま試作しているオーディオ・アンプの場合、複合管を使うと有利です。5極管の部分で十分なゲインを稼ぎ、3極管のカソード・フォロワを設ける形式のアンプに使います。 こうした複合管なら1本で構成できるので積極的に使いたくなります。

 オーディオ用としてポピュラーな三極・五極複合管には6AN8があります。過去のアンプ製作記事では定番的な存在でした。またやや遅れて登場した欧州系の6BL8もポピュラーな球です。さまざまなオーディオ・アンプで使われる例を見ます。 しかし残念ながらTVではまず見かけなかったのです。 ですから6AN8や6BL8なんて私のジャンクな球箱にはありませんでした。

 では似たようなTV用の複合管はオーディオへの適性はないのだろうか? なんで使わないの?? ・・・という疑問から検討が始まったような訳です。
 TV用の球をオーディオに使ったらハム・レベルとかマイクロフォニックが気になるかもしれません。 でもはなから諦めず試す価値はあるでしょう。ハムはDC点灯で解決すれば良いし・・・。(腕力式解決法・爆)

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 ラジオにしか興味のない人にはてんで面白くないハナシでしょうね。まあ、我慢して見る価値なんてありませんからヒマでも無ければやめておく方が宜しいです。以下、そんな程度の中身でしょう。

【テストに使うアンプ回路】
 前回までの5極管のテストに使った回路と同じです。ハイゲインな五極管アンプ+三極管のカソード・フォロワの構成です。

 電源電圧:Ebbやプレート負荷抵抗:Rbは同じ値です。さらに5極管のカソード抵抗:Rkは2kΩに固定しています。
 従ってスクリーン・グリッド抵抗:Rc2だけを加減して適当な動作状態を得るようにしました。

 テストに使った真空管の間で意外に違いは無かったので条件を固定してしまってもだいたい良い結果か得られています。
 後ほど結果の一覧表があって、それにまとめておきましたので比較してみてください。

 確かに一部の球はカソード抵抗:Rkも変えて最適化したい気がしました。そうすれば高性能化できそうではありましたが、あんがい一定の回路定数のままでも「何とかなるものだ」というのが感想です。
コラム:6BL8系を使おう
オーディオ・アンプでポピュラーな6AN8はテストしませんでした。一つは持ってないことがありますが、他とピン配置が全く違うのでわざわざ購入して試す意義を感じなかったからです。6AN8と同じピン配置の三極五極複合管は他に殆ど見ないので差し替えたテストには不向きな球です。一説によれば6BL8系より6AN8の方がピン配置的にオーディオ向きという話も聞きます。しかし実際は大差ないようで6BL8系もオーディオに多用されています。互換可能な球種が多い6BL8系(EIA 9AE)を使いましょう。

【テストする三極五極管】
 真空管の写真を見せたからと言ってあまり意味はないのですが・・・このテストで使った球を集めてみました。これらの真空管は足ピンの接続がどれも同じです。

 いずれもTV用の球です。 ホントはヒータが6.3Vの球を使いたいのですが、手持ちの大半はこうしたトランスレス用の球ばかりなのです。

 ヒータが5V系の球は600mAシリーズのトランスレス用の球でしょう。どれもたいへんポピュラーなのでTVではたくさん使われていたのです。

 TVでの用途も様々ですが、もとはVHFチューナ回路の局発(OSC)と混合(Mixer)用に開発された球だそうです。他の回路に使っても便利なことから徐々に汎用の球になったのです。オーディオに使うのもその転用の一つだった訳ですね。

 9A8という球は、実はヒータ電圧違いの6BL8と同等の球です。 従って6BL8と同じ回路定数で正常に動作するのは当たり前と言えるでしょう。9A8をオーディオ系で使う際の注意はやはりヒータ・ハムだと思います。

 他の球もヒータの面倒さえ見てやれば6BL8や6AN8と同じような使い方で活用できるのではないかと思っています。見た感じも悪くはないですし。(笑)

注:ヒータは5R-HR1のみEh=5.4V・600mA。また9A8と9JW8はEh=9.0V・300mA。他はEh=4.7V・600mAです。

【テストの様子】
 ブレッド・ボードに組み立ててテストしています。 真空管1本で構成できますからコンパクトに組めます。

 ブレッドボードでの注意ですが、ヒータ電流が大きいので、なるべく変換基板の直近から配線を引き出します。回路のアース系に大きな電流は流さぬようにするのがコツと言えばコツです。(笑)

 複合管は入・出力の配線が交錯する可能性があって、発振はしないまでも周波数特性に影響が及ぶ場合があります。なるべく入力から出力までがストレートに並ぶように工夫すべきでしょう。 交流的にGNDレベルになるバイパス・コンデンサの系統で囲むと言った対策も効果的です。

 ヒータ回路を除けば回路電流は数mA以下です。1/4Wと言った小型の抵抗器で済むのでコンパクトに作っても問題ありません。 電源電圧が高いので注意は必要ですが、半導体回路と同じ感覚でテストして何も問題はありません。 真空管回路も思ったより手軽に遊べますね。

【アンプの測定結果】
 各部の実測電圧や得られたゲインを一覧表に纏めました。 動作点の検討と調整に役立てるつもりです。

 一部に中古品の真空管を使っているのでバラツキが大きくなっている可能性があります。(それほどではないとは思ってますが・笑)

 どの真空管でも200倍以上のゲインは楽々得られています。やはりトランス・コンダクタンス:gmの大きな球はゲインが大きくなっています。ゲインが欲しい時は6U8や6AN8と言った古い球より新しい6GH8Aのような球を使うと有利です。

 単独の真空管を2本、例えば6AU6と6C4と言った構成で作るのも良いものですが、複合管でも同じような性能が得られますので少ない球数でスッキリ作りたいときには最適でしょう。 回路を検討する際の選択肢の一つとして覚えておこうと思います。
コラム:球の常識:ピン配図の書き方
真空管の足ピン番号は足の側(下側)から見た図を書きます。ピン番号は時計回りに順番に振ります。 上面図を書く集積回路(IC)とは常識が逆なので注意を。 個人の自由ですから球のピン配を上面図で書いても結構ですが常識外れの書き方では他の人には伝わりにくいでしょう。間違いのモトにもなります。

                   ☆

 3極5極複合管には準パワー管の6AW8Aのような球もあってバラエティに富んでいます。 今回はプリアンプやコントロールアンプなどを目的に純粋な小信号増幅器における複合管活用を検討してみました。 TV用に作られた多くの三極五極複合管が工夫次第でオーディオ回路で充分有効に使えそうという感触が得られたと思っています。

 小信号用の複合管には双三極管があることを忘れてはいけません。 次回は各種の双三極管にスポットを当てて活用を試みたいと思っています。ではまた。 de JA9TTT/1

(つづく)←リンクnm

2024年7月21日日曜日

【部品】7mm SQ Coils

【部品:7mm角のコイル】

[introduction:]
Many electronic devices these days are coil-less. However, it will be difficult to completely eliminate coils. Coils are indispensable electronic components, especially for us HAMs who build our own radios. This Blog explains in detail how to make use of 7mm square shielded coils that were obtained as surplus. In addition, there is a distribution guide for the coils. The free distribution is limited to residents of Japan. However, the information for making coils can be referred to from all over the world. Please make use of it.(2024.07.21 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【コイルはもう稀少部品かも?】

某月某日:群馬県にお住いのOMさんからお手紙が届きました。

 曰く「7mm角のコイルが沢山あるが貰ってくれる人を探しています」とのことです。
私も自身で使う分くらいのストックはありますから、これ以上もっと増やしても生きてるうちに使いきれるものではありません。(笑) それでお断りしようかとも思ったのですが・・・

 ところが、ネットの掲示板やSNSの書込みなどを拝見しているとコイルに困っている人がまだ結構おられることがわかります。

 一つはコイルを作る(巻く)ための詳しい情報を探している人がおられます。おそらくただちに役立つような具体的な作り方の情報はあまりないのが問題なのでしょう。

 もう一つは、コイルを作るための材料の問題です。 電子機器の製造が海外へ移転し、さらにコイルレスな電子機器が多くなったため、コイル・メーカも国内ではほとんど生産していません。したがってRF用コイル作りの部材も入手難になっているのでしょう。

 これらの2つには密接な関係があります。具体的な作り方(巻き方)を説明するためには「現実に手に入るような部品」を使った作り方を説明しなくてはならないからです。 ですからご厚意に甘えて余剰品らしいコイルを頂戴し、それらを欲しいお方に「情報とともに配布すれば幾らかでも自作の応援ができる」のではないかと思ったのです。

 要するに「素材」と「情報」がコイル作りの決め手ということです。

 あとはちょっとしたコイル巻きのスキルも必要そうですが、これはそれほど難しくはないので実際に巻いてみて実地で習得していただくのが近道でしょうか。(笑)

 コイルがさっそく届きました。(写真) かなり大量です。有り難うございます。

                   ☆

 すでに自作HAMを卒業なさったお方はこの先ご覧になっても意味はないBlogです。ご覧になるのは自由ですが役に立たなくてもご勘弁を。二度と来ない今日という一日、あなたのお時間はもっと有意義なことに・・・

 もし、FCZコイルやそれに類似のコイルを探しているのでしたらぜひご覧ください。 まずはどんなコイルなのか紹介したあと、FCZコイルと類似の「ほぼFCZコイル」を自作するための具体的な情報を公開します。製作のヒントやノウハウも余さず情報提供しましょう。 さらに希望されるお方に「現品を(無料で)配布」しますのでBlog末尾の配布案内をご覧のうえ、申し込んでください。(配布は終了しています) 良かったら自作好きのお友達にも教えてあげてください。

◎ まずは配布するコイルはどんなものなのか知っていただけたらと思います。


【7mm角コイルの外観】
 コイルは3種類あります。いずれも7mm角のシールドケース入りのコイルで、既に巻線されており、同調用のコンデンサも内蔵されています。

 有名な東光製のコイルに「7K型」というものがあります。このコイルの外形寸法は7Kと同じですが内部構造は異なっています。7K型は段型の巻溝があるボビン構造になっていますが、このコイルはぜんぜん異なっています。詳しくはこの後の写真をご覧ください。

 おおよその共振周波数は3つとも5.6MHzくらいになっています。巻き換えることなくそのまま使えるとたいへん便利なのですが、活用できる可能性はあまりないように思います。 一応、コンデンサを外付け(追加)して3.5MHz帯のコイルとして使うことは可能です。 巻き数の関係さえ問題なければそのまま使うのも良いだろうと思います。 例えば5MHz帯のI-Fアンプの段間コイルに使うと言った方法があるでしょう。

 私は巻き替えもいとわない方なので、そのまま使うアイディアはあまり思い浮かびませんでした。 しかし次項で詳細な巻線とインダクタンスの情報を提供していますので「そのまま使う」方法もぜひご検討されてください。 うまい使い方を見つけたらぜひ教えてください! 皆さんと情報共有しましょう。

【7mm角コイルの仕様・概略】
 連続した型番になっていますから、何か特定の機器のために製作されたコイルなのでしょう。

 何に使ったコイルなのか、具体的な機器は想像できませんでしたが約5.6MHz付近の高周波回路で使う目的で製作されたようです。

 私が数個を実測して得た情報を左図に示します。 これは実測で得たものであって本来のコイルの仕様書とは異なっている可能性があります。一応、念のため。 さらにインダクタンスや同調容量にはかなり「ばらつき」があって左図は実測で得た概略値・平均値です。 もちろん、可動式ネジ・コアがあって調整できるのでばらつきは吸収できるようになっているのでしょう。

 何か特定の機器の固有の回路のために設計されたコイルです。FCZコイルのような汎用品(はんようひん・幅広く使える品)とは異なるので、そのまま使う場合は共振周波数だけでなく、同調側と2次側の巻数比にも気を配ってください。
 2次側は次段との結合用のリンクコイルとしては巻き数が多すぎると思います。またT2(黄色コア)には2次巻線が巻いてありません。

 なお、こうした7mm角コイルのピン間隔は2.50mmです。穴が2.54mmピッチのユニバーサル基板(ジャノメ基板)にギリギリ挿入できます。ジャノメ基板で使えるのは便利です。

                   ☆

 そのまま使えれば有難いのですが、たぶん使いにくい筈です。 以下に分解方法を示しますので巻き替えて自身の目的にマッチしたコイルに作り変えることを考えましょう。FCZコイルの同等品を作るのもいいです。 短波ラジオや通信型受信機のほか、HAM局の送信機などへも幅広い目的で使うことが可能になります。

◎参考:その後の考察によると、この3つのコイルは「ラティス型クリスタル・フィルタ」を構成するためのコイルではないかと思われます。市販水晶フィルタの中身は数枚の水晶振動子と幾つかのコイルで構成されています。

【コイルの分解方法は?】
 外側を覆っている「シールド缶」を外すのが分解の最初の作業です。

 上側の調整穴に見えるコアにドライバの先端を当てて叩いて押し出すという方法があります。締め付けが弱いので大した力も要らずシールドが外せます。

 ほかに、写真の方法があります。 調整用のコアを反時計方向に回して行くと、すぐシールド缶の上端に突き当たります。 さらに少し力を入れながら回して行くと写真・中央のようにシールド缶が台座部分から浮いてきます。 2mmくらい浮いて来たらあとは台座の側を引っ張れば、引き抜くことができます。 わりあい簡単にシールド缶を外せますので「改造の第一歩」と思って試してください。

 すぐに要領がつかめて、簡単に外せるようになります。 なお、再組み立てはコアを時計回りにねじ込んで、そのあと分解前の状態になるよう組み立てます。

 コアの有効な回転範囲ですが、2回転と1/4くらいです。 時計回りに押し込んでゆくと突き当たります。そこから反時計方向にもどして、約2回転と1/4くらいの有効範囲があるわけです。 突き当たってから1回転くらい戻したあたりがコアの中心位置と考えられます。このあとインダクタンスのグラフがありますが、コアがこの中心位置にあるときの値を測定しました。


【7mmコイルの内部構造は?】
 写真に内部構造を示します。
 台座の部分にメスネジが切ってあります。 そのネジに調整用のコアを押し込む構造になっています。 そのメスネジの部分が台座から「そびえて」いるので巻線するための「ツヅミ型コア」へ線を巻くのは少々厄介です。 しかし困難というほどでもありません。

 既に巻いてある巻線はφ0.08mmくらいの細い巻線です。巻いたあと柔らかなパラフィンのような樹脂で防湿処理されています。 巻線は容易に解くことができるので心配はいりません。 巻線を取り除く際に防湿材は取れるので事前除去は不要です。 巻線をほどいて行くと一緒に取れてしまいます。(巻き直し後の防湿材の再塗布は必要に応じてすれば良いです。アマチュア的には不要でしょう)

 足ピンが3本出ている側を一次側とします。ピン番号で言えば1〜3番です。 ピンが2本出ている側が2次側で、ピン番号は4〜6ですが、一般的にこうしたコイルでは5番ピンは欠けている場合が多いようです。


【内蔵コンデンサが不要なら】
 巻き直しせずにそのまま使う場合、内蔵されているコンデンサが邪魔になるかも知れません。

 入念に作業すれば足ピンにハンダ付けされているコンデンサだけを取り除くことも不可能ではありません。
 しかしコンデンサを再利用するつもりがなければ「破壊」してしまうのがもっとも手っ取り早くてうまいやり方です。

 このコンデンサは円筒型セラミックスに電極を付けた構造で「チタコン」と呼ばれるものです。 その円筒は薄く割れやすいため簡単に潰して除去することができます。 なまじはんだコテでコンデンサだけを外そうと思うと苦労しますのでお薦めしません。 コンデンサが不要なら壊してしまうのがベストでしょう。 ドライバの先端などで押し潰してしまい、割れた破片をよく取り除いておきます。 コンデンサ両端の引出線の部分は残ったままでも支障はありません。

 なお、巻線と一緒にコンデンサも除去するのは比較的容易です。 はんだコテと先の尖ったピンセットを使って丁寧に作業すれば巻線とコンデンサを除去できます。上手にやればコンデンサの再利用も十分可能です。 完全に作り換えるのでしたら巻線とコンデンサをすべて除去することになります。


【T2はバイファイラ巻きになっている】
 上の方で説明していますが、黄色コアのT2だけは1次側がバイファイラ巻きになっています。

 1次側がバランスしたコイルが必要ならそのまま使うと良いです。 ただしこのコイルは2次側の巻線はありません。

 リンク結合で次段と結合したい場合は巻線を追加します。 一般にリンクは2〜5回も巻けば充分なはずですから簡単に追加可能でしょう。

 シールド缶を外したら調整用ネジコアを外し、φ0.16mm程度の巻線で2次リンクコイルを既に巻いてある巻線の上に巻きます。 ピン4とピン6へ配線を引き出してリンク付きコイルへの改造が完了です。 必要に応じで改造してみてください。 平衡度もマズマズのようなのでDiode-DBM回路の入・出力トランスに使うと言った活用法が考えられます。この応用ではコンデンサを除去します。もともとDBM用ではないためインダクタンスが少なめです。コアを一番下まで押し込んだ状態でインダクタンスを大きくして使います。

 もちろん巻線をすべて除去し、新たな巻線で任意の巻き数のバイファイラ巻きコイルを作ることもできます。

◎ コイル巻きに関してはこちらのBlog(←このBlog内の記事へリンク)も参考にどうぞ。


【巻数 vs インダクタンス】
 巻き数とインダクタンスの関係を示したグラフです。測定にはLCRメータ:DE-5000およびQメータ:hp4342Aを使いました。

 このコイルはコアの出し入れでインダクタンスが可変できるので可変範囲も記入してあります。コアの可変範囲は2回転と1/4くらいあります。 巻き数が増えると可変範囲も広くなる傾向があって、コアの出し入れでずいぶん変化できることがわかります。

 巻線は直径:φ=0.16mmのポリウレタン電線(UEW線:ウレメット線とも言う)を使いました。 もう少し細い、例えば直径:φ=0.1mmを使えばもっとたくさん巻くことができますが、実際には「構造的な巻きにくさ」があるので作るのが大変になって来ます。 苦労せずに巻ける範囲として巻きやすい範囲でグラフを作成しておきました。

 整然と綺麗に揃えて巻く必要はありません。いわゆる「ガラ巻き」で問題ないです。綺麗に巻いても苦労に見合ったほどの違いはありません。もう一度言います「ガラ巻き」でいいんですよ。(笑)

 参考までに巻き線の太さを変えた場合の情報です。φ0.16mmより細い線・・・例えばφ0.1mmを使って巻くとインダクタンスがやや大きくなります。だいたい5〜10%くらい多くなるようです。 切れやすいので推奨はしませんがインダクタンスの大きなコイルが必要なら細い線を使うとたくさん巻けます。 逆にφ0.16mmより太い線は巻き芯の径が細いので巻きにくくなります。せいぜいφ0.2mmまでが良いでしょう。太いとたくさん巻けません。 コアの出し入れでインダクタンスが加減できるので巻線の太さは製作例と多少違っても大丈夫です。

 コアとしては、USF 08 T1(黒)のものを使いましたが、同じように巻いて比較したらT1〜T3のどれもほぼ同じでした。コアの塗装色は3種類ありますが、透磁率μには違いがありません。従って巻き替えるならどの色のコアを使ってもこのグラフと同じようになります。

 中間周波トランスのような2次側(リンクコイル)の巻線が必要な場合、2次側は目安として1次側の1/10くらい巻けば良いはずです。選択度を重視するなら2次側は少なめに巻くのが良いコイルのコツ(ノウハウ)です。 特にアンテナコイルのように50Ωのところに接続するなら、リンクは1〜3回とごく少なくする必要があります。

 空芯コイルと違ってフェライトコアを使ったコイルは、1次側と2次側の結合が密になります。2次側をかなり少なく巻いても十分な結合が得られますから少なめが良いのです。

 このグラフを参照すれば、自身が必要とするRF用のコイルを設計・製作できます。 たとえばこのBlogにある「短波ラジオ」(←リンク)の実験で必要なANTコイルやOSCコイルが作れます。もしコイル材料の入手難から諦めていたなら、これで短波ラジオが製作できるでしょう。
 ちなみに、リンク先の短波ラジオ用コイルをこのコイルで巻く場合:ANTコイルは1次側23回巻きで途中の4回目にタップ、2次側は4回です。OSCコイルは1次側が21回巻きで途中の3回目にタップ、2次側は7回巻きです。 ぜひお試しを。

 まったくのオリジナル設計は難しいと感じるかも知れません。 最初はFCZコイルの互換品を製作してみるのも良いでしょう。


【ほぼFCZができる】
 FCZコイルとほぼ同等のコイルを作るための巻き数一覧表です。FCZコイルを使うよう設計された回路にそのまま使えるはずです。

 コア材のフェライトの特性からあまり高い周波数のコイルには向かないため21MHz用の「FCZ-07S-21」までの範囲で一覧にしました。 21MHz以上でも使えないわけではありませんが、Qが下がって性能低下するのと、巻き数に対してインダクタンスが多くなりすぎるので使いにくく(作りにくく)なります。従って21MHzあたりまでと思って使うのが良さそうです。

 それでもHF帯の多数のバンドで使えるコイルが作れますので無線機や短波ラジオの製作に幅広く活用できます。

 なお、FCZコイルはもともと送信機の段間コイルとして考えられているようです。そのため電力をロスなく伝送するのが最優先で、選択度はあまり重視していないようです。従って2次側(リンクコイル)の巻き数がかなり多めになっています。

 ですから受信機のアンテナコイルやIFT(中間周波トランス)の用途には負荷Q:QLが低くなりすぎて選択度が不足します。 もし受信機に使うなら、その対策として2次側の巻き数(ピン4とピン6番の間の巻き数)を表の値よりもずっと少なくします。半分もしくは1/3くらいが適当でしょう。具体的には1回巻き〜3回巻きで十分です。

 この巻き数の少ない方の・・・2次側:リンク・コイルですが、先に巻くのか後から巻くのかという疑問があるでしょう。結論としてどちらでも大丈夫です。 結合度を重視してメーカーは先に巻くようですが比較して大差はないようでした。従って後から巻くのでも良いです。その方が後から巻き数の加減ができるので有利なように思います。

(参考:あまりたくさん巻けないのでこのコイルを使って455kHz用のIFTの自作は困難でしょう。短波帯向きです。)

 FCZコイルはバイファイラ巻きと言って、一次側(同調側)が2本の巻線をよじったものを使って巻いてあります。厳密な中点タップが必要ならバイファイラ巻きにすべきですが、おおよそ中点で良いならバイファイラ巻きにする必要はありません。
 たとえば20回巻きの中点タップ付きコイルが必要だとします。その場合、まず1番ピンから10回巻いて2番ピンに接続します。さらに3番ピンに向かってもう10回巻けば良い訳です。

 むしろ中点を外れたような位置にタップがあった方が良い場合も多くて、バイファイラ巻きにこだわらず製作される方が回路が最適化される場合も多いものです。 回路設計の話になってしまうので詳細は別の機会にしますが無理してバイファイラ巻きする必要はないことを明記したいと思います。

 もちろんプッシュ・プル回路のように完全な中点タップを理想とする場合はやはりバイファイラ巻きが良いでしょう。ニーズに応じて巻き方を工夫してください。


【参考:FCZコイルの仕様一覧】
 FCZ誌からホンモノのFCZコイルの一覧を転載しておきます。ほぼFCZコイルを自作される際の目安にしてください。 同じ巻き数を巻くと言う意味ではなくて製作時には一次側と二次側の巻き数比に着目します。
 一次側の巻き数は共振周波数、同調容量、インダクタンスから決めます。インダクタンスと巻き数の関係は上のグラフを参照すればわかります。「ほぼFCZコイル」はそうやって設計しました。

 FCZコイルは長いあいだJAの自作HAMを支えてくれました。 シールド付きで使いやすいため広く普及し、自作品の再現性向上にたいへん役立ってくれました。

 「自作の普及には既製品の良いコイルが必須だ」と言う、JH1FCZ大久保OM(故人)の先見の明あったので多くの自作HAMが助けられたのだと思います。 いまさらながら、ありがとうございました。


【欲しくなったら】
 以下、配布のご案内です。このBlogで紹介してきた7mm角のコイルをどなたにでも無償(タダと言う意味・笑)で配布いたします。(終了しました)

◎ 三種類のコイル各5個ずつ合計で15個送ります。

 郵送で送りますので、もちろん匿名のお方にはお届けできません。

 郵送先の情報は発送後すぐに消去します。それに年なので誰に送ったかなんてすぐ忘れちゃいます。身バレとかお気にされずに。(笑)


 このサービスは日本国内にお住いのお方に限定です。
(This service is available only to residents of Japan.)

配布をご希望されるお方は必ず;

「郵便番号」
「住所」
「氏名(様)」 お名前には「様」を付けていただけると手間が減ってありがたいです。

・・・の3行をわかりやすく書いたeメールを送ってください。メールのタイトルは「コイル希望」としてください。

メルアドはこのBlogの右の欄にあります。なお、このBlogのコメント欄にご住所を書くと危険なのでおやめください。見つけたらスグ消去します。必ずeメールで。

 お送りいただいたメールからその3行分を抽出して宛名ラベルを作り定形外郵便で発送する予定です。今月('24年7月)末に一旦締め切って、その後1〜2週間くらいで届くようにしたいと思っています。余っている場合はその後も2週間に1回程度の頻度でころあいを見て発送します。慌てなくてもだいじょうぶかも?? 残ってるうちは対応します。

 なお、発送用の封筒等はこちらで用意します。無駄な手数と経費の発生を防ぐ意味から送料をお送りいただく必要はございません。 お送りする数量は説明した三種類のコイルを各5個ずつ、合計で15個です。 もしそれでは足りないお方はご理由など教えていただければ追加して送ります。 そのまま転売する人はいないとは思いますけどやめてくださいね! あなたの使用目的・用途は問いませんのでご自由に活用されてください。

 ジャンクなコイルその物にはさほどの価値はないのかもしれません。しかし十分な情報さえあれば自作にすぐ活かせるのです。ジャンクに新たな価値が生まれるわけです。ぜひ使ってみてください。 足りなくなったら「おかわり」でもどうぞ。

◎ 先着の数名さんにはちょっとオマケ付けます!

追記:(2024.08.03)
◎ コイル配布を終了しました。 開始から約1,200個を配布して残りはホンのわずかになりました。 もっと余るかと思ってましたが「無償」の威力か(笑)、早々に終了しました。 コイル製作のスキルをほとんどお持ちでないお方も申し込まれたようですが、あとは実際に手を動かしながら上手になってください。 コイルは巻くだけでなくその確認も大切です。インダクタンスや共振を確認しておきましょう。高級な道具はなくても可能なので工夫されますように。 あとは皆さんの活用を期待して。 頑張って使ってください!! (このBlogは配布終了後も残しておきます。必要の際は参照してコイル巻きを楽しんでください)

                   ☆

 真空管の話から突然あらぬ方向に飛んでしまいました。このコイルはQRP懇親会に持ち込んでの頒布も考えていたのですが、出席されるお方はかなり限定的です。 それに自作のベテランなのでコイルには困っておられないお方が多いように拝察いたしております。(笑)
 もちろん懇親会の常連さんもご希望なら遠慮なくどうぞ!! できるだけ広く使っていただけたらFBだと思い、地方のお方にも公平になるよう公開配布とさせていただきました。 最後になりますが、群馬のKさん、コイルのご提供どうもありがとうございました。たくさんの自作ファンに配布することができました。

 2回休みかと思ってましたが何とか所用が片付いたので1回休みで済みました。 また、このCoilの話はたぶん今回限りのテーマです。 次回のBlogは真空管の話に戻ろうと思っています。お楽しみに。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm


◎ このBlogの公開(2024.7.21)からだいぶ時間が経ってからご覧になったお方へ:
読んでいるうちにコイルが欲しくなったらあきらめずにお問い合わせを。たくさんあるのでまだ残っている可能性があります。 残っているうちは対応できます。 
→ 予定より早く終了です。早々になくなりました。乗り遅れたお方に少量でしたら残った端数(わたしがテストに使った分+α=約60個)からお分けします。メールでどうぞ。

2024年6月22日土曜日

【電子管】Using the Pentode as the Audio Amp. (3)

【AFアンプで五極管を・第3回】

introduction
I have many pentodes for RF. This blog is a continuation of the previous one. This time I will build an audio amplifier with pentodes for RF with 7-pin mt tubes. Hopefully I can expand the use of those pentodes. I tested three types of pentodes: 6CB6, 6AK5, and 19M-R10. The 19M-R10 is an original Japanese tube made for NTT's telephone relay network. All of the tubes can be used in audio amplifiers. (2024.06.22 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【再び五極管をテストする】
 前回Blog(←リンク)の続きです。 前回は9ピンmt管(Novel管とも言う)のRF用五極管を試してみました。

 既にテストした6BX6、6EJ7、そして6688/E180Fのいずれも、わかって使えばそれなりに「使えそう」と言う結果でした。 電圧増幅用の五極管はまだまだたくさんの種類があります。今回は手持ちの中から7ピンmt管を選んでみました。 これらもうまく使えるなら活用につながります。さっそくうまい使い方を発掘してみましょう。一般的に9ピンmt管よりも7ピンmt管タイプの五極管の方がポピュラーかもしれません。

 前回と同じように、ごく基本的なアンプをブレッド・ボード(BB)上に製作しました。 五極管の単管アンプではなく、同じようにバッファ・アンプを設けてあります。前回同様バッファ・アンプは五極管を三極管接続(三結)にしたカソード・フォロワです。

 検討対象の球が6.3V管の場合にはバッファ・アンプに6AU6を使います。これは前回と同じです。 対象の球が19M-R10の場合はバッファも同じ19M-R10にしました。これはヒータ回路の都合です。 なお、三結のカソード・フォロワとして使うのでしたら6AU6と19M-R10ではたいした違いはありません。

 写真・右側が検討対象の五極管です。この写真では19M-R10が刺さっています。 左側はバッファ・アンプの19M-R10で三極管接続のカソード・フォロワです。 回路図は前回のBlog(←リンク)に掲載しているのでそちらを参照してください。

                    ☆

 なんだかんだの前にさっさと実験を継続しましょう。今回も無線関係(ラジオ)のハナシはほとんど登場しないので「ラジオ作り」をご期待されていると面白くないです。早々のおかえりが宜しいかもです。 もちろんコメントでラジオのお話をされても一向に構いません。いつものようにコメント歓迎です!!

【五極管:6CB6の場合】
 さっそく始めましょう。簡単に6CB6の話です。
6CB6は米国系のTV球です。欧州名はありません。 初期のTV(モノクロ)はトランス付きだった関係でヒータ電圧が6.3Vの6CB6が使ってありました。その後、TVのトランスレス化が進むようになって600mAヒータの3CB6が主流になりました。 6CB6は稀にオーディオ・アンプに使われることもありましたが、流石に3CB6はTV専用でオーディオに使う例は見ませんね。

 6CB6や3CB6はTV受像機のI-Fアンプ用(映像中間周波増幅用)として多用されました。松下電器のTVを除き多くのメーカ製TVで使われたので、解体すると大量に得られた真空管です。

以下は検討して得られた6CB6の使い方です:
Ebb=150Vにおいて、Rb=240kΩ、Rc2=750kΩ、Rk=2.2kΩです。
この状態で、カソード・フォロワ:6AU6のEkt=55V前後になるでしょう。大きく外れる可能性は低いですが、その場合はスクリーン抵抗:Rc2を加減します。Rc2を大きく変えた場合、カソード電圧:Ekp≧0.8Vを確認しておきます。ゲインは約220倍(≒47dB)得られました。(Vo=10Vrms、1kHzにて測定) 6BCB6は6AU6よりもトランスコンダクタンス:gmが高いのでやや大きなゲインが得られます。

 上に書きましたが、6CB6はオーデイオ・アンプに使われることがあって、RCA社のデータ・ブックにはR-C結合アンプの定数表が掲載されています。 参考までに紹介しておくと以下のようになっていました。(RC-22,pp498参照)
Ebb=180Vにおいて、Rb=220kΩ、Rc2=620kΩ、Rk=1800Ωです。ゲインは208倍(46.4dB)となっています。 データ・ブックには他の動作条件のデータも掲載されていますので必要に応じて真空管データブック:RC-22を直接参照されてください。 RCAのRC-22(1963年版)はInternet archive org.にて誰でも無償で参照できます。

 私が実験的に得たデータと幾らか違いはありますが概ね類似しています。 RCAのデータで多少ゲインが低いのはRbが220kΩなのと、次段が直結のカソード・フォロワではなくて負荷抵抗Rcf:470kΩになっているからです。また、カソード抵抗:Rkが1.8kΩなのはプレート電圧の選び方の違いによると思います。しかしどちらでも大差はないはずです。

 6CB6は高周波の汎用品でした。gmが高いことから水晶発振にはもってこいで、私も何度もお世話になった球です。 (高周波の)ミキサー回路の適性もあって受信機・送信機に幅広く使われました。
 シールド付きソケットを使う必要があることに注意します。6AU6や6BX6と違って管内シールドはありません。プレートは剥き出しなので外から良く見えます。管内シールドを省いているのは出力容量の低減が目的のようです。しかし実用上シールド付きソケットが必須なのですからかえって不便に感じられます。

 オーディオ・アンプに使うときも扱う信号が微小な場合はシールド付きソケットを使うべきです。メイン・アンプのように大きめの信号しか扱わなければ普通の7ピンソケットでも大丈夫でしょう。 もちろん高周波回路に使うのならどんな場合もシールド付きソケットが無難です。同じ7ピンでピン配置も類似なので6AU6,6BA6,etcと差替えて試すことも可能です。 ソケットのところでピン2と7を結んでおくと良いです。


【五極管:6AK5の場合】
 6AK5はミニチュア管の五極管として戦前からあった球です。同等の数字管には5654があります。欧州名はEF95です。
 もともと電話中継網(AT&T)の広帯域増幅用でウエスタン・エレクトリック社のWE-408Aあるいは類似管が原型のようです。(但し408Aのヒータは20V 0.1A)
 しかしVHF帯の通信機やレーダー受信機などへの適性があったことから戦争遂行を目的に製造技術が移転されて非常に多くの米国メーカで生産されました。6AK5として登録された際にヒータ電圧も一般的な6.3Vに変更されています。

 6AK5については戦後VHFマンとしてご活躍されたJA1FC藤室OM(故人)に伺ったことがあります。日本で戦前・戦後に愛用されたVHF管は954(エーコン管)が有名でしたが、お話しによれば月とスッポンだったそうです。言うまでも無いでしょうが6AK5が優ってます。(笑)

以下は検討して得られた6AK5の使い方です:
Ebb=150Vにおいて、Rb=240kΩ、Rc2=820kΩ、Rk=2.7kΩです。
この状態で、カソード・フォロワ:6AU6のEkt=60V前後になるでしょう。大きく外れる可能性は低いですが、その場合はスクリーン抵抗:Rc2を加減します。Rc2を大きく変えた場合、念のためカソード電圧:Ekp≧0.8Vを確認しておきます。ゲインは約210倍(≒46dB)得られました。(Vo=10Vrms、1kHzにて測定) 6AK5は6AU6とトランスコンダクタンス:gmが同じくらいなので同じようなゲインが得られます。

 めったに見かけないと思いますが6AK5(ただし同等管:5840)のR-C結合アンプ定数表を見つけました。参考までに紹介しておくと以下のようになっていました。
Ebb=150Vにおいて、Rb=240kΩ、Rc2=700kΩ、Rk=1800Ωです。ゲインは140倍(43dB)となっています。だいぶゲインが低いのは次段がカソード・フォロワではなくて負荷抵抗Rcf:510kΩになっているためです。交流負荷抵抗を求めて補正計算すると概ね差のないゲインであることがわかります。

 それから、こうしたR-C結合増幅器では問題になりませんが6AK5はプレートやスクリーンの耐電圧がだいぶが低いです。耐圧は180Vしかありません。間違っても大きなパワーを出そうと思って高い電圧を掛けてはいけません。電極間で放電することがあってダメにしてしまいます。w

 6AK5は純粋にRF用(高周波用)の球だと思っていましたが、近年ではオーディオ・アンプに使う人も現れて驚いています。 もちろん単なる五極管ですから低周波増幅に使って何も悪いことはないわけです。オーディオ・アンプ系への適性はあります。

 過去にオーディオ系に使わなかったのは6AU6のように安価で優秀な五極管があったからです。 6AK5は純粋に通信用の球なので見かけによらず高価です。 前に登場した松下電器の価格表(1960年代)によれば6AU6が570円なのに対して6AK5は1,500円なのです。 我々HAMにとって6AK5はジャンクで100円もしない安球でしたが正規にはそうではありません。それで民生機器には使われなかったのでしょう。市販ラジオやTVで見かけない理由でしょうね。(参考:たいへん初期のTV受像機でRFアンプに使われていたそうです)

 HAMの世界では50MHz用クリコン(クリスタル・コンバータ)の定番の球でした。RFアンプに使えば十分なゲインが得られNF値も良好でした。ミキサー回路への適性もあるのでクリコン製作のために買い求めたものです。 私が子供のころ米軍ジャンクとおぼしき6AK5は未だに出回っており総じて安価だったのです。しかし地元のラジオ屋さんでは手に入らなくて秋葉原のジャンク屋を巡った記憶が蘇ります。(笑)
 こんにちでも6AK5で作ったクリコンはまずまず実用になるでしょう。あまり混変調特性は芳しくないかも知れませんが・・。 ノスタルジーの追求にはもってこいですがやめておきます。 オーディオ・アンプでの適性もあるのでそちらで活躍してもらおうと思っています。小ぶりでかわいいので好きですねえ。w

【五極管:19M-R10の場合】
 19M-R10は特殊な球です。もっぱら旧・電電公社の電話中継網で使われました。 もちろん高価ですし、間違っても民生機器には使いません。ですから本来なら手に入り難いはずなのですが・・・。

 特殊な球でありながらよほど多量に使われていたのでしょう。保守で交換したらしい球の一部が廃棄を免れて出回っていたのです。
 保守作業では良否に関わらず使用開始から一定時間で交換していたはずです。ですからエージング済みの優良品(笑)がたくさん混じって出回ったのです。ミニチュア管ではありますが、ちょうどWE-310Aのような通信用のスペシャルな五極管です。ちなみに目標MTBFは10万時間だそうです。(注:用途・目的は同じでもWE-310Aと同じ特性という意味ではありません)

 19M-R10は民生用の6CB6と類似特性と言われています。 しかし見た目はまるで違っていて、がっちりした管内シールドがあって電極の保持構造も見るからに強固です。 従ってマイクロフォニックが少なくて小信号増幅にはマッチしているように思えます。写真はNEC日本電気製ですがTEN神戸工業製も見かけます。 旧・電電公社の通信研究所で開発し各社が生産した特注品でしょう。 欧州名がないのは当然として米国名もありません。付与された型番はJIS形式です。(型番の途中にハイフォンが入っている)

 なお、こうした19V管のヒータはDCで点灯していました。電話局には大容量の蓄電池があってフローティング充電しながら使っていました。 ちなみにヒータ用の電源は22V/10,000AHと言ったような超大容量の蓄電池です。調整器で19Vに落として与えていました。プレート回路の方も130V/800AHと言った蓄電池だったそうです。(すごい)

 このような事情からヒータ・ハムの対策はあまり行なわれていない可能性があります。AC19Vでの点灯は不向きではないでしょうか。19Vと電圧は高い反面、電流は0.1Aと少ないことからDC点灯で使いましょう。
 データシートによると19V管は頻繁なヒータのON/OFFは好ましくないそうです。ヒータ線が細いので突入電流で切れやすいのでしょうか。 局では一度電源を投入したら入れっぱなしですから支障なかったんでしょうね。(起動時の突入電流対策を行なったそうです)

前置きが長くなりました。以下、検討して得られた19M-R10の使い方です:
Ebb=150Vにおいて、Rb=240kΩ、Rc2=1MΩ、Rk=2.7kΩです。
この状態で、カソード・フォロワ:19M-R10のEkt=60V前後になるでしょう。大きく外れる可能性は低いですが、その場合はスクリーン抵抗:Rc2を加減します。Rc2を大きく変えた場合、念のためカソード電圧:Ekp≧0.8Vを確認しておきます。
 ゲインは約220倍(≒47dB)得られました。(Vo=10Vrms、1kHzにて測定) 19M-R10は6CB6とトランスコンダクタンス:gmがほぼ同じなので同じようなゲインが得られています。6CB6と同等の電気的特性というのは本当のようです。

特殊な環境・使用条件で使われていた球ですがオーディオ・アンプ用として有望そうです。
良好なシールド構造、強固な耐震構造などが持ち味の球なのでオーディオのプリ・アンプに適しているかも知れません。 ゆっくり起動して突入電流が緩和できるような19V電源を作れば安全に電源のON/OFFができる筈です。 ゲインも過剰ではないので扱いやすそうです。 組合わせてプリ・アンプを作るには19V管の19R-LL1、19R-P11が揃っていて不自由はありません。 もっとも、これらの球でオーディオが良い音で鳴るのかどうかはわかりませんけど。(爆)

                    ☆


【アルテック型パワー・アンプ】
 回路図がないのも寂しいのでアルテック型パワー・アンプの回路を貼っておきます。

 アンプ初段が五極管になっており、P-K分割型ドライバ(三極管)との間は直結になっています。 Hi-Fiアンプには有名な回路がたくさんあって優劣を競う状況にありますが、アルテック型は構成がシンプルなので人気の回路です。メーカのパワー・アンプにもよく見られた形式です。

 事実、比較的感度の高い近代的な出力管ならこうしたシンプルな構成でもドライブ不足にはなりません。 初段が五極管なら十分なオープンループ・ゲインが得られますからNFBを掛けるには十分でしょう。 構成がシンプルなのは負帰還を掛けるとき有利に働きます。 C-R一つずつで位相補償できるのも増幅段数が少ないシンプルさゆえです。

 ここで五極管のテストに使ったのもそのまま活用できる可能性を考えたからです。 P-K分割の部分は殆どゲインはないのでアンプ全体のゲインは初段でだいたい決まってしまいます。初段が三極管ではゲイン不足を感じるでしょうね。

 実験してきた近代的な五極管を使うと左図の6SJ7よりも大きめのゲインが得られる筈です。 従ってクローズド・ループ・ゲインの減少をあまり心配せずに十分なNFBを掛けることができます。 ぜひお試しになってください。

【バリミュー管は瑞々しいのか?】
 テストしてきた五極管はすべてシャープ・カットオフ特性の球でした。 電圧増幅用五極管にはリモート・カットオフ特性の球もたくさんあります。 そうした球は使えないのでしょうか?  mt管では6BA6や6BD6、そして写真の6EH7などが代表的です。

 結論から言うと十分使えます。 測定器での評価ではシャープ・カットオフ管より不利です。 特にアンプ全体のゲインを抑えて大きめの入力信号がその五極管に加わるような設計だと歪み特性が悪くなります。

 そもそも入出力の関係が非直線な特性になるよう特別に作られた球です。ラジオやTV受像機の高周波回路に使う目的の球です。 前提として小さめの信号・・・せいぜい数10mVppくらいでしょうか・・を想定している筈です。 そのような信号ならバイアス電圧を変えて増幅度を可変すると言った自動利得調整(AGC)の目的に最適だからです。 それと想定のI-Fアンプ(中間周波増幅器)は狭帯域特性ですから非直線性による二次歪みが少々あっても帯域外になって顕著には現れません。

 バリミュー管/可変増幅率真空管(リモート・カットオフ管)をオーディオ帯でテストしてみたら意外に使えそうでした。思っていたよりも良さそうな感触を得ました。 少し歪みが多くなって2次高調波が含まれます。その方が瑞々しく聞こえるというお方もいるのだそうです。 そのようなわけでシャープ・カットオフ管と類似特性のリモート・カットオフ管が差替えできるようにしておくと面白いかもしれません。 そんな組み合わせとして、6AU6には6BA6が、6CB6には6BZ6が、そして6EJ7なら6EH7があります。いずれも後者がリモート・カットオフ管です。

 測定数値を重視されるなら向いていないと思いますが自分の耳で聞いて自身にピッタリな音を探したいと言うお方には楽しめるのではないでしょうか。 バリミュー管/可変増幅率真空管はオーディオの対象外と考えず、遊びと思って試したら面白いです。 使用にあたってはいくらか定数を変えた方が良いです。 特性上、Ipが流れやすい傾向がありRkをやや大きくする必要があります。プレート電圧を見ながら両立できそうな回路定数を見つけ差し替えてみるのが良さそうです。

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 ところで、真空管にはそれぞれ背景となる歴史や物語が埋もれているように思います。 トランジスタにはあまり無いバックグラウンドかもしれません。 それぞれの真空管には目的の機器・回路があり、それに向かって開発された球には生まれてきたストーリーがあるのでしょう。 それがみなさんが真空管に特別の感慨を抱かれる理由(わけ)ではないでしょうか。 たかが電子デバイスとは言ってもそこには何か「物語」があって欲しいのです。それは懐かしいあのときが蘇る「わたしだけのストーリー」でも良いのでしょうね。

 なんだか五極管テストの話がノスタルジックな方向になってしまいました。 いろいろ書きましたが得られるゲインに違いはあってもどれも同じようにオーディオ・アンプに使えそうです。 著名な球が手持ちにあるならそれを使うべきでしょう。あえて変な球を買い求めるのはナンセンスです。 しかしオーディオでポピュラーな球が手元になくても代替になりそうな真空管は結構ゴロゴロしています。 あらたに買い求めることもなく私の遊びの目的には十分そうです。色々試しながら楽しい時間を過ごしたいものですね。

 五極管活用をテーマに3回続けました。私には「手持ちの活用」という目的があるので良いとして見てるだけの人はこんなのはどうでもいいんでしょうね? 面白いですか?(笑) 次回は更に他の手持ち真空管をどう活かすべきか考えます。複合管などが対象です。 そちらも目的はオーディオで、と言うことになります。 このあと事情があって1〜2回お休みを頂くかも知れません。 お待たせ致しますが良かったらそれまでにお手元の五極管をテストされてみたら如何でしょう? 少しは面白くなるかも? 実際、手にしたご感想など教えてください。 ではまた。 de JA9TTT/1


(つづく)←リンクfm