【ブレッドボードに136kHz送信機】
【全体を見る】
ブレッドボードで少々規模の大きな回路を試みるとして始めた製作もいよいよ最終回です。ブレッドボードの範囲はここまでになります。
ブレッドボードの製作は試作が目的です。状況を見ながら進めて来ました。載せられる回路にも限度があって高周波のパワーものはどちらかと言えば不適当でしょう。 この送信機の場合、ここまでをブレッドボードの範囲と考えています。この先は作り方を変えることになります。
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前回(←リンク)はヘテロダイン・ミキサまで載せたところまででした。その後、136kHzのバンドパス・フィルタ(←リンク)とフィルタの後に付けるポストアンプ(←リンク)を個別に扱いました。 それらの部分は過去に実績が無く新たに設計から検討する必要があったのです。 それぞれ旨く進んだので、再びブレッドボードに戻って先に進めます。 毎度書くのも気が引けますが個人のメモあるいは暇つぶし用コンテンツなのでそのおつもりでご覧ください。多分に過不足のある内容ですがご容赦を。技術的には書いてしかるべき内容でも誰が見るかわからないBlogには書けないこともあるのです。そのあたりがネットの限界です。
写真右の中段には既にお馴染みの中華DDSモジュールが載ってます。この部分も起動させる予定でした。マイコンは載りそうでも表示部は無理なのでここまでにしました。写真の中華DDSモジュールは搭載の125MHzクロックに問題があったので、外して外部より12.8MHzを供給します。 ブレッドボード左下の12.8MHz TCXOの所に74HCU04を使ったバッファ回路があります。そこから細い同軸でDDSまでクロックを引くつもりでした。本番でも同じ回路で行くことにします。
【136kHz BPFとポストアンプ】
前回はミキサーの試作まで進めました。写真はその後追加した部分のクローズアップです。
前回の簡易評価ではミキサの出力回路に簡単な同調回路を入れて様子を見ました。 その形式のまま同調回路を重ねる方法もありますが、しっかりしたバンドパス・フィルタができたので変更しました。
ミキサの両コレクタ負荷は約1kΩ程度になるよう最適化します。同時に回路の出力インピーダンスも600Ωにうまく整合するよう考えます。 これはバンドパス・フィルタの特性を生かすために重要です。 同じようにフィルタ後のアンプも入力インピーダンスが600Ωになるよう設計します。前々回の寄り道の通りです。
ミキサの出力回路については、幾つか候補がありました。シングルエンド形式で抵抗負荷で行く方法が一番簡単です。しかしダイナミックレンジを広くする為には抵抗負荷では不利です。 同調コイルに中点タップを設けるか非同調の整合トランスのL負荷が有利です。 ここでは後者の整合トランスを使う形式にしました。この部分での周波数選択性は無くなりますが135kHzのバンドパス・フィルタがしっかりしているので問題ないでしょう。
【ミキサ出力トランス】
ごく標準的なトリファイラ巻きのトランスです。製作に当たっては使用周波数に注意が必要です。135kHzは低周波ではありませんが、RFとしてはかなり低いからです。従ってトランスの各巻線は大きめのインダクタンスが必要です。要するにたくさん巻く必要があります。
後に続くフィルタを考えるとインピーダンス・マッチングは良くしたいと思います。従ってミキサの負荷インピーダンスは1.2kΩになります。 トランスの巻き線インピーダンスはその数倍以上が必要になります。 周波数を考えると大きなインダクタンスが要ります。
数mHでも行けるかと思って試作したらインピーダンス変換比が不正確で使い物になりませんでした。 結局、それぞれの巻線が13mHくらいになるよう再製作して概ね満足できました。 コアはTDKのH5A材のトロイダルです。巻線はφ0.15mmのUEW線を3本撚りにして53回巻きました。巻線長は約60cmです。 巻くのは大変そうに見えますが、巻線を用意してから15分もあれば作れます。むしろ十分注意すべきなのは結線の間違いでしょう。
探せば必要なインダクタンスを持った既成のトランスがあるかもしれません。しかし見つかったとしても納期と費用が掛かりそうなので自作しました。
【TDKのトロイダルコア】
米国アミドン社のコアの方がポピュラーですが国産ではTDKが各種作っています。 写真はTDKのH5A材のトロイダルコアです。 内径が5mm、外径が10mmで厚みが2.5mmです。(型番:H5A T5-10-2.5)
なるべく少ない巻き数で必要なインダクタンスが得られるように、コア材には透磁率:μが大きなものを選びます。たまたま手持ちがあったので使いました。しかし、このコアは特注品のようです。たぶん最少発注数量と納期の問題があるでしょう。 従って類似のトランスを作るにはアミドンのトロイダルコアから適当な物を選んで代替するのが良いでしょう。 H5A材は初透磁率μiac=3,300で500kHzあたりの周波数に適するフェライト材です。 アミドンなら#75材が適当そうです。FT-50-#75コアに60回×3本巻きすれば良いでしょう。
アミドンでは#43材がポピュラーですが、透磁率μiが800程度なので巻き数をかなり増やさないと必要なインダクタンスが得られません。もし#43材で行くならコアサイズをずっと大きくして対処します。
【修正版ミキサー回路】
前回既出のMC-1443を使ったミキサー回路ですが出力部分は上記のトランスに変更しました。 バンドパス・フィルタも含めて書き改めてあります。この部分のインピーダンスは600Ωです。
MC-1443に与えるDCバイアスはブレッドボード上の他所から貰っているので現況に合わせてあります。
レベルを変えながら試したら、局発としては少なくとも1Vpp程度欲しいことがわかりました。 それ以上大きくしても違いは僅かです。 1Vppよりレベルを下げると変換利得が急に下がりました。 また同じ歪みでみた最大出力レベルも下がるのでダイナミックレンジも抑制されます。従って局発は1Vppを基準にします。
【ポストアンプ部分】
前々回のBlogで寄り道したLM359N:ノートン・アンプを使った高周波増幅部です。 135kHzのフィルタを経た約60mVppの信号を3Vppまで増幅します。 ゲインは50倍(34dB)です。
ICを使ったので周辺部品も僅かで済みコンパクトに製作できました。 周波数特性、ノイズ特性ともに良好です。 ブレッドボードの製作は多少心配しましたが問題ありませんでした。 但し帰還抵抗に数pFがパラに入る関係で周波数特性は伸びていないでしょう。 もちろん136kHzの増幅には支障ありません。
【LM359Nのアンプ回路】
既出ですが、上記のアンプ部の回路図です。 実際の回路では多少省略を行ないましたが、本質は同じなので変化は感じませんでした。
フィルタに合わせ、600Ωの入力インピーダンスに設計しました。 性能がわかっている回路は安心感があります。
【出力波形】
入力に1kHzのシングルトーンを入れときの出力波形です。局発は115kHzなので周波数は136kHzです。 基準レベルは3Vppです。 写真では2.7Vpp程度ですが、もう少し大きい3Vppに合わせて各種の評価を行ないました。
オシロで見た範囲ではもっと大きな信号でもきれいな正弦波に見えます。もっと大きくても良さそうですが、スペクトラムを見ると3Vpp程度を上限にすれば信号の品質が維持できそうです。 飽和レベルはずっと大きくて6Vpp以上へ伸びています。
【BPFの効果確認】
まずは、136kHzバンドパス・フィルタの効果を検証します。 局発の115kHzの減衰と、変換逆側に発生するイメージ信号の減衰を見ましょう。
写真の様に115kHzの漏れは主信号に対して約-60dBでした。 スペアナで見てしまうと、すこし大きいように感じますが一般的には十分な減衰量です。 ミキサのバランス調整をすれば10dBくらい下げられます。ブレッドボードでの製作なのも不利なようです。
-40kHz離れた変換イメージ信号の方はノイズフロアに近いのでまったく問題ありません。 なお、局発に157kHzを与え「差のヘテロダイン」で136kHzを取り出してみました。むしろ良好なくらいで同じように使用できることがわかりました。
目的信号のやや上に見えるスプリアスはブレッドボード故に発生しているようです。ミキサの動作を止めても見える物で、GND系配線の引き回しを変えると状態が変化します。従って、20kHzのキャリヤを作る部分は良くシールドするなど対策が必要そうです。もちろん、写真のレベルなら何ら支障ありません。
【目的信号の近傍を見る】
気になるのはSSBフィルタの通過帯域幅で見えるノイズフロアの上昇でしょう。 もっと多段増幅している市販のRigではさらに目立つこともあるのでそれほど悪くも無いかもしれません。低周波入力端子をGNDにショートしても変化が無いので、初段アンプのノイズが大きめのようです。
主信号の2kHz下に逆サイドが見えるますがこれは先の評価の時と同じで、使用したSSBフィルタの特性によるものです。この程度であれば支障ありません。 ほか帯域外のスプリアスは上記のようにブレッドボードを使った製作に起因する模様でした。
【ノイズフロアを下げるには】
実用上の支障はないとは言ってももう少しノイズを低減したいところです。 入力部にあるアンプをパスしてバラモジに直行するようにしてテストしてみました。
見ての通り効果てきめんです。 ゲイン分だけノイズフロアが下がった感じもします。初段アンプを何とかした方が良さそうですね。 もっとノイズの少ないOPアンプに交代するとか、ローノイズTrやJ-FETを吟味してディスクリートで作れば良さそうです。 大した努力はせずに10dBくらい低減できるでしょう。
【DDS局発部はまだ】
制御用マイコンだけなら搭載可能ですがLCD表示器も一緒に載せるのは無理があります。 テストでは外部信号源に頼ることにしました。
最終的にはAD9850を使った中華DDSモジュールを使います。 信号純度に問題のあった125MHzクロック発振器は外しました。 この送信機に必要な周波数はせいぜい1MHzあたりなので12.8MHzのクロックでも十分すぎます。
12.8MHzのTCXOは周波数安定度も良くきれいな発振なので信号純度にも問題はないし、クロック周波数を低くするとDDS-ICの消費電流もかなり減ります。 この中華DDSモジュールに関しては右の「同じジャンルの話題を楽しむ」から「DDS」をクリックして関連Blogでご覧を。
発生周波数の刻みはクロック周波数を2^32で割った値なので12.8MHzにすれば周波数分解能もアップします。具体的には約0.0029802Hz刻みになります。例えば115kHzに対して近傍の周波数は約115000.000596Hzなので0.005ppmほどの誤差になる計算です。 まあ周波数分解能の心配よりもTCXOの周波数安定度の方が問題なると言うべきでしょうか。 WSJT-Xのように細かい周波数精度と安定度を必要とする超低速デジタルモードにも心配なく使える訳です。それ以上はTCXOではなくOCXOやRb-OSCの世界が待っています。
ところで、DDS発振器では連続的な発振周波数が得られないとして、クレームされたお方が居られました。確かに理屈はその通りですから否定はしません。しかし実用面で見たら0.003Hz以内の周波数の刻みで周波数設定できます。連続と比べて何らも違わないでしょう。(125MHzのクロックを使ったとしても約0.03Hz刻みです) バリコンのVFOなら完全な連続だと仰るかもしれませんが、ではDDSと同じ所まで細かくチューニングはできますか?・・・と言うことです。しかもその状態をずっと維持できますか?・・・と問われれば、無理ですと言う答えでしょう。DDS発振器は「連続でない」などとイチャモンの前に現実を良く見た方が良いです。実用性能で云々すべきでしょう。 理屈も必要ですがエレクトロニクスは実用の科学です。あとは理想と現実のギャップを掌握しておけば良いでしょう。(笑)
☆ ☆ ☆ ☆
大きなブレッドボードに規模の大きな回路を載せる試みで実験を始めました。 周波数が低い長波帯の送信機なのでトラブルにはならないでしょう。 そう思った通りなかなか旨く進みました。 いつまでもこの製作だけにブレッドボードを占有させる訳にも行かないので目標の範囲まで進捗して良かったです。 この先は基板化するなり、ユニバーサル基板に製作する必要がります。
ハンダ付けで製作する「本番」の様子が見えて来るまで比較用にもう少しブレッドボード版も残しておきましょう。 次の製作に使えないのは不便ですが仕方ないです。 もう一枚買えと言うことでしょうね。 実際、小型ブレッドボードをたくさん購入する人もいるそうで、一旦作ると分解するタイミングが難しいのでしょう。
実験的な要素が多く含まれる製作にブレッドボードは最適です。 概略の実験試作が済んだら次は基板CADでパターン化するのが今風かもしれません。 何枚も作らないとしても配線の手間やコンパクト化を狙うと基板化は不可避でしょうね。 ここで使ったあらかたのデバイスは面実装品が手に入ります。まあ、SSBフィルタとかBPFは外付けにでもしたら良さそうです。 恒久品に纏めるには別の努力が要るでしょうが、実験して遊ぶにはブレッドボード製作は手軽で面白いです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←「ブレッドボードでSSBを!」の初回へ
参考:Windows XP環境でブラウザがIE8の場合、掲載の写真・図面の色調が乱れることがあります。Firefoxなど他のブラザの使用を推奨します。
2014年3月20日木曜日
2014年3月10日月曜日
【回路】More Norton Amp.
【モア ノートン・アンプ:その活用事例から】
【Quad Norton Amp.】
前のBlogはLM359Nと言う高速ノートン・アンプの話しで寄り道しました。 寄り道ついでにポピュラーな(だった?)普通のノートン・アンプでもうちょっと寄り道して行きましょう。
またまたの寄り道なので、具体的な用途・目的は決まっていませんが、いつかどこかで使い道があるかもしれません。回路の素性を掴んでおけば持ち駒が増えたのと同じで、何かの時にきっと役立ってくれます。 ここではオーディオ・ピーク・フィルタ(CW用?)を題材にします。 電子回路の手作りに興味も持つ人には面白いしょう。お暇なら目を通されてはいかがですか?
写真はナショナル・セミコンダクタ社のLM3900Nとモトローラ社のMC3401Pです。引き出しの長期在庫品です。(笑)ここではどちらもまったく同じように使えます。LM2900NやMC3301Pでも良いでしょう。これらICの中身の話しは前のBlogに書いたので、そちらも参照して下さい。
LM3900Nは一時期かなりポピュラーなICでした。部品箱に眠っている確率は高そうです。持っている(いた?)人も多いでしょう。あまり着目もされない地味なデバイスですから、お店に残っていれば安価で手に入るでしょう。持ってなければ一つくらい仕入れておいたら調理法を考える楽しみが増えます。(調べてみたら若松やマルツにて@100円少々で買えます。他所でもまだ売っています)
【バンドパス・ノッチ・フィルタ】
唐突にフィルタを作ってみることにします。アクティブ・フィルタと言えばアナログ系ICの代表的なアプリケーションです。 LM3900系ノートン・アンプの周波数特性はあまり良くないのでオーディオ周波数帯が精一杯です。 従ってフィルタと言っても可聴域・低周波用です。
図の例では4回路入りのノートン・アンプを旨く使ってバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを構成しています。Biquad形式のアクティブ・フィルタです。(図はモトローラ社:MC2900/3900/3301/3401のデータシートより引用)
バンドパス・フィルタの仕様は、中心周波数:f0、選択度(バンド幅):Bw、そして中心周波数に於けるゲイン:G0です。 この簡単な単同調式のフィルタひとつでは高級な特性は無理ですが、設計はごく単純です。関数電卓がなくても、指数表示ができた方が便利ですが、四則演算ができる普通の電卓で設計できます。まあ、どのパソコンにも標準装備の仮想電卓があるのでまったく困りませんね。
まずは中心周波数:f0を決めましょう。続いてフィルタのQすなわち-3dBの帯域幅:Bwを決めます。Qの値は:Q=f0/Bwです。さらに中心周波数におけるゲイン:G0を決めたら計算スタートです。なお、フィルタにゲインを持たせるのは本質的ではないと思います。せいぜい数倍くらいにしておいた方が設計し易いです。このあたりはフィルタ作りのノウハウ部分でしょうか? また、コンデンサ:Cは事前に決めておいても良いのですが、周波数計算の式:f0=1/(2πCR)から仮に求めて、組み合わせる抵抗器:Rとの兼ね合いで決めるのが最善です。抵抗値が数kΩ〜1MΩ程度になるよう決めれば合理的です。E系列で得易い抵抗値に丸めると作り易いでしょう。
この例では組み合わせる抵抗器は62kΩで、4020pF±2%のスチコン(スチロール・コンデンサ)があったのでそれを使うことにします。*1 従って計算上の中心周波数は約639Hzになります。 抵抗器には金属皮膜型±1%を使いました。(*1:ここでは、なるべくオリジナルに近い数値でテストします)
CW用ピーク・フィルタとして検討したいなら3,600pFのコンデンサを使うと良いでしょう。中心周波数は約700Hzになります。また3,300pFで800Hz弱です。ピーク・フィルタとは言ってもQ=3くらいの設計が良いでしょう。
参考:図の回路はDCバイアスの掛け方がノートン・アンプ用になっているので、一般的なOPアンプでは正常に動作しません。注意して下さい。もちろんその部分を変更すれば一般化は可能です。具体的には各アンプの+In端子に電源電圧の中点電位(半分の電圧)を与えてバイアスします。
【ブレッドボードに製作】
簡単な回路なので、パーツボックスから部品をピックアップして1時間くらいで製作できるでしょう。 もちろん、配線接続に使うジャンパー線は各種用意しておきます。 このあたりの準備があればごく手軽な実験です。
スチコンはリード線が細くて何となく頼りないです。そのうえ図体も大きいので、ICのピンの所に直接持って行くと収まりが良くありません。 リード線を短めに詰めて近傍に実装してからジャンパー線でICまで持って行きます。 こうすると構造上安定するでしょう。 アナログ回路は外付けCR部品が多くなります。 ブレッドボードの面積を占有するのでゆとりを持ったサイズを使うと作り易いです。 余白には入出力端子を引き出します。
【波形観測・1】
まずは最適なバイアスポイントになっているか動作点を確かめる意味から波形観測しました。 もちろん信号を入れずにテスタで各部をあたりDCバイアスされていることは事前に確認しています。 なお、電源電圧12Vのとき回路電流は約7mAでした。(無信号・無負荷状態にて)
低周波発振器から中心周波数に相当する約638Hzを与えます。(638Hzで信号がピークになったので)画面の下段が入力で上段がバンドパス・フィルタの出力波形です。軽負荷なら最大で8Vppくらい取り出せました。 LM3900Nの出力段はドライブ能力が大きくないので、重い負荷(低い負荷抵抗)では振幅を抑える必要があります。
ゲインは0dB即ち,1倍の設計なので入力とほぼ同じ振幅です。但し位相は反転します。 取り出す箇所が反転アンプの後だからです。 きれいなサインウエーブを入力すると当然のように出力にもサインウエーブが現れます。
【波形観測・2】
上記と同じ周波数の信号を与えていいます。 但し、今度はサインウエーブではなく矩形波です。波形の上段がバンドパス・フィルタの出力です。
このようにバンドパス・フィルタの出力ではきれいなサインウエーブになります。 矩形波には基本波の他に奇数次の高調波が含まれます。 フィルタによってそれらが除去されたため、基本波成分だけが大きく残ります。 それほどQの高くないフィルタでも高調波を除去する効果があります。
【波形観測・3】
今度はノッチ・フィルタの出力を観測してみましょう。 ノッチ・フィルタとはある特定の周波数成分だけを除去するフィルタです。 この例ではバンドパス・フィルタと同じ638Hzの付近が除去されます。
上段の波形がノッチ・フィルタの出力です。 漏れが大きいように感じるかもしれませんが、上段と下段ではオシロスコープのレンジが異なっています。 実際には入力の2%以下の振幅です。 無調整なのでこの程度なのはやむを得ません。 回路図のAmp4、Pin11に接続された330kΩのうち入力側の2つのどちらを微調整することでノッチの深さ、即ち除去量が改善できます。
【波形観測・4】
矩形波を与えてノッチ・フィルタの出力を観測してみました。 上段の波形がフィルタの出力です。 基本波成分が除去された図のような波形が観測されます。
こうした機能を使って、ノッチ・フィルタは歪み率測定に使われます。その為には基本波の除去率が問題になるので入念に調整します。
【バンドパス・フィルタの周波数特性】
周波数特性を測定してみました。 フィルタ・アナリシスモードで観測しています。 それによれば、実測による中心周波数は636.7Hzです。(設計の計算値は638.6Hzなので誤差は-0.30%) またフィルタQは5.31です。(同じく計算値では5.32なので誤差は-0.19%) 部品精度を考えれば、おおむね設計通りでしょう。設計の再現性はなかなか良好です。
こうした単峰特性のフィルタはCWフィルタ用には少々使いにくいかも知れません。 もちろんお好みにもよりますが・・・。 ピークが鋭過ぎてすぐに相手局の信号が逃げてしまいます。 ある程度の通過帯域域を持ちながら、帯域外の減衰傾斜が急峻なフィルタが欲しくなるでしょう。 なおQが5程度なら過渡応答の影響はそれほどありません。比較的素直な応答を示します。
【ノッチ・フィルタの周波数特性】
ノッチ(谷)の部分の減衰が不十分なのは抵抗器に誤差があるからです。 先に書いたように、調整で改善することができます。 本格的なノッチフィルタとして使うならチューニングします。
このフィルタはAC結合なので、ごく低周波の部分ではダラ下がりの周波数特性です。 またアンプの周波数特性が効いて来るのでオーデイオ帯以上でも右肩下がりの周波数特性です。 単同調回路なので位相はフィルタの中心周波数で大きく回りますが、あとはだらだらと変化して行きます。
参考:測定しませんでしたたがAmp3の出力(Pin9)はローパス・フィルタ特性になっています。設計次第ですが、ユニバーサルなフィルタ・ブロックとして活用できます。
【まとめ】
ノートンアンプを使い、Biquad形式でバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを作ってみました。
この程度のフィルタならMFB形式のフィルタ回路ならOPアンプ一つで実現可能です。 ですからバンドパス・フィルタだけで3回路も使うのは何となく勿体なく感じます。 但し、中心周波数やフィルタのQは比較的単純な計算で設計できますし、再現性のよいフィルタ形式です。一段とHigh-Qなフィルタの実現ではたいへん有利です。 OPアンプの数を厭わないならとても良い回路です。 Biquad Filterはノートン・アンプ専用の回路ではありませんから小変更で普通のOPアンプでも同じように実現できます。
ブレッドボードで試作しましたが「フィルタ・ブロック」として有用性が感じられるので例の「ブレッドボード・パターン」のユニバーサル基板に移植して恒久化しておこうと思います。f0を決めるコンデンサとQを決める抵抗器はソケット式にしておいたら良いでしょう。
−・・・−
ノートン・アンプを使うと単電源で動作する回路が作り易いです。これはなかなかメリットです。 またLM3900(MC3401)の出力段はA級増幅なのでクロスオーバー歪みは発生しません。 マイクアンプのような小レベルの所から使える汎用増幅ICとして重宝でしょう。トランジスタ代わりに「ちょっとアンプを」と言うときに具合が良いです。 簡単な論理回路やタイミング回路にも向いているので、トランシーバの送受信コントロールとかVOX回路などにも向いています。守備範囲が広いICですね。
☆ ☆ ☆
実験していてノートン・アンプが登場したころを思い出しました。雑誌には新種のOPアンプとして(大々的に?)紹介されていました。 ただ、いま思うとそれは間違いだったようです。 事実、ナショセミ社のデータシートにはOPアンプと大書きされてはいません。 大々的にノートン「OPアンプ」と書いていたのはモトローラの方でした。これにはだいぶ惑わされた感じです。
ちょっと見るとOPアンプちっくに動作しますが+入力端子はどちらかと言えばバイアス設定用の端子です。(・・と考えるとわかり易い) バイアスさえ設定すれば、アンプは単なる反転型負帰還アンプです。 ノートン・アンプは非反転アンプではあまり使わないのです。(使いにくいから) ノートン・アンプをOPアンプ的に使う回路例はそれほど多くありません。
昔々、何となく使い難いと感じたのはそうした見極めができなかったからでしょう。ノートン・アンプをOPアンプの仲間だと思っているならいつまでも惑わされたに違いありません。これまで少々曖昧な理解だったノートン・アンプもだいぶスッキリしました。 扱うのはこれが最後と思いますが、わかって使えば意外に便利なアンプICです。ちょっと古臭いですが持ち駒の一つになってくれたようです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←136kHz送信機エキサイタ部の纏めにリンク
【Quad Norton Amp.】
前のBlogはLM359Nと言う高速ノートン・アンプの話しで寄り道しました。 寄り道ついでにポピュラーな(だった?)普通のノートン・アンプでもうちょっと寄り道して行きましょう。
またまたの寄り道なので、具体的な用途・目的は決まっていませんが、いつかどこかで使い道があるかもしれません。回路の素性を掴んでおけば持ち駒が増えたのと同じで、何かの時にきっと役立ってくれます。 ここではオーディオ・ピーク・フィルタ(CW用?)を題材にします。 電子回路の手作りに興味も持つ人には面白いしょう。お暇なら目を通されてはいかがですか?
写真はナショナル・セミコンダクタ社のLM3900Nとモトローラ社のMC3401Pです。引き出しの長期在庫品です。(笑)ここではどちらもまったく同じように使えます。LM2900NやMC3301Pでも良いでしょう。これらICの中身の話しは前のBlogに書いたので、そちらも参照して下さい。
LM3900Nは一時期かなりポピュラーなICでした。部品箱に眠っている確率は高そうです。持っている(いた?)人も多いでしょう。あまり着目もされない地味なデバイスですから、お店に残っていれば安価で手に入るでしょう。持ってなければ一つくらい仕入れておいたら調理法を考える楽しみが増えます。(調べてみたら若松やマルツにて@100円少々で買えます。他所でもまだ売っています)
【バンドパス・ノッチ・フィルタ】
唐突にフィルタを作ってみることにします。アクティブ・フィルタと言えばアナログ系ICの代表的なアプリケーションです。 LM3900系ノートン・アンプの周波数特性はあまり良くないのでオーディオ周波数帯が精一杯です。 従ってフィルタと言っても可聴域・低周波用です。
図の例では4回路入りのノートン・アンプを旨く使ってバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを構成しています。Biquad形式のアクティブ・フィルタです。(図はモトローラ社:MC2900/3900/3301/3401のデータシートより引用)
バンドパス・フィルタの仕様は、中心周波数:f0、選択度(バンド幅):Bw、そして中心周波数に於けるゲイン:G0です。 この簡単な単同調式のフィルタひとつでは高級な特性は無理ですが、設計はごく単純です。関数電卓がなくても、指数表示ができた方が便利ですが、四則演算ができる普通の電卓で設計できます。まあ、どのパソコンにも標準装備の仮想電卓があるのでまったく困りませんね。
まずは中心周波数:f0を決めましょう。続いてフィルタのQすなわち-3dBの帯域幅:Bwを決めます。Qの値は:Q=f0/Bwです。さらに中心周波数におけるゲイン:G0を決めたら計算スタートです。なお、フィルタにゲインを持たせるのは本質的ではないと思います。せいぜい数倍くらいにしておいた方が設計し易いです。このあたりはフィルタ作りのノウハウ部分でしょうか? また、コンデンサ:Cは事前に決めておいても良いのですが、周波数計算の式:f0=1/(2πCR)から仮に求めて、組み合わせる抵抗器:Rとの兼ね合いで決めるのが最善です。抵抗値が数kΩ〜1MΩ程度になるよう決めれば合理的です。E系列で得易い抵抗値に丸めると作り易いでしょう。
この例では組み合わせる抵抗器は62kΩで、4020pF±2%のスチコン(スチロール・コンデンサ)があったのでそれを使うことにします。*1 従って計算上の中心周波数は約639Hzになります。 抵抗器には金属皮膜型±1%を使いました。(*1:ここでは、なるべくオリジナルに近い数値でテストします)
CW用ピーク・フィルタとして検討したいなら3,600pFのコンデンサを使うと良いでしょう。中心周波数は約700Hzになります。また3,300pFで800Hz弱です。ピーク・フィルタとは言ってもQ=3くらいの設計が良いでしょう。
参考:図の回路はDCバイアスの掛け方がノートン・アンプ用になっているので、一般的なOPアンプでは正常に動作しません。注意して下さい。もちろんその部分を変更すれば一般化は可能です。具体的には各アンプの+In端子に電源電圧の中点電位(半分の電圧)を与えてバイアスします。
【ブレッドボードに製作】
簡単な回路なので、パーツボックスから部品をピックアップして1時間くらいで製作できるでしょう。 もちろん、配線接続に使うジャンパー線は各種用意しておきます。 このあたりの準備があればごく手軽な実験です。
スチコンはリード線が細くて何となく頼りないです。そのうえ図体も大きいので、ICのピンの所に直接持って行くと収まりが良くありません。 リード線を短めに詰めて近傍に実装してからジャンパー線でICまで持って行きます。 こうすると構造上安定するでしょう。 アナログ回路は外付けCR部品が多くなります。 ブレッドボードの面積を占有するのでゆとりを持ったサイズを使うと作り易いです。 余白には入出力端子を引き出します。
【波形観測・1】
まずは最適なバイアスポイントになっているか動作点を確かめる意味から波形観測しました。 もちろん信号を入れずにテスタで各部をあたりDCバイアスされていることは事前に確認しています。 なお、電源電圧12Vのとき回路電流は約7mAでした。(無信号・無負荷状態にて)
低周波発振器から中心周波数に相当する約638Hzを与えます。(638Hzで信号がピークになったので)画面の下段が入力で上段がバンドパス・フィルタの出力波形です。軽負荷なら最大で8Vppくらい取り出せました。 LM3900Nの出力段はドライブ能力が大きくないので、重い負荷(低い負荷抵抗)では振幅を抑える必要があります。
ゲインは0dB即ち,1倍の設計なので入力とほぼ同じ振幅です。但し位相は反転します。 取り出す箇所が反転アンプの後だからです。 きれいなサインウエーブを入力すると当然のように出力にもサインウエーブが現れます。
【波形観測・2】
上記と同じ周波数の信号を与えていいます。 但し、今度はサインウエーブではなく矩形波です。波形の上段がバンドパス・フィルタの出力です。
このようにバンドパス・フィルタの出力ではきれいなサインウエーブになります。 矩形波には基本波の他に奇数次の高調波が含まれます。 フィルタによってそれらが除去されたため、基本波成分だけが大きく残ります。 それほどQの高くないフィルタでも高調波を除去する効果があります。
【波形観測・3】
今度はノッチ・フィルタの出力を観測してみましょう。 ノッチ・フィルタとはある特定の周波数成分だけを除去するフィルタです。 この例ではバンドパス・フィルタと同じ638Hzの付近が除去されます。
上段の波形がノッチ・フィルタの出力です。 漏れが大きいように感じるかもしれませんが、上段と下段ではオシロスコープのレンジが異なっています。 実際には入力の2%以下の振幅です。 無調整なのでこの程度なのはやむを得ません。 回路図のAmp4、Pin11に接続された330kΩのうち入力側の2つのどちらを微調整することでノッチの深さ、即ち除去量が改善できます。
【波形観測・4】
矩形波を与えてノッチ・フィルタの出力を観測してみました。 上段の波形がフィルタの出力です。 基本波成分が除去された図のような波形が観測されます。
こうした機能を使って、ノッチ・フィルタは歪み率測定に使われます。その為には基本波の除去率が問題になるので入念に調整します。
【バンドパス・フィルタの周波数特性】
周波数特性を測定してみました。 フィルタ・アナリシスモードで観測しています。 それによれば、実測による中心周波数は636.7Hzです。(設計の計算値は638.6Hzなので誤差は-0.30%) またフィルタQは5.31です。(同じく計算値では5.32なので誤差は-0.19%) 部品精度を考えれば、おおむね設計通りでしょう。設計の再現性はなかなか良好です。
こうした単峰特性のフィルタはCWフィルタ用には少々使いにくいかも知れません。 もちろんお好みにもよりますが・・・。 ピークが鋭過ぎてすぐに相手局の信号が逃げてしまいます。 ある程度の通過帯域域を持ちながら、帯域外の減衰傾斜が急峻なフィルタが欲しくなるでしょう。 なおQが5程度なら過渡応答の影響はそれほどありません。比較的素直な応答を示します。
【ノッチ・フィルタの周波数特性】
ノッチ(谷)の部分の減衰が不十分なのは抵抗器に誤差があるからです。 先に書いたように、調整で改善することができます。 本格的なノッチフィルタとして使うならチューニングします。
このフィルタはAC結合なので、ごく低周波の部分ではダラ下がりの周波数特性です。 またアンプの周波数特性が効いて来るのでオーデイオ帯以上でも右肩下がりの周波数特性です。 単同調回路なので位相はフィルタの中心周波数で大きく回りますが、あとはだらだらと変化して行きます。
参考:測定しませんでしたたがAmp3の出力(Pin9)はローパス・フィルタ特性になっています。設計次第ですが、ユニバーサルなフィルタ・ブロックとして活用できます。
【まとめ】
ノートンアンプを使い、Biquad形式でバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを作ってみました。
この程度のフィルタならMFB形式のフィルタ回路ならOPアンプ一つで実現可能です。 ですからバンドパス・フィルタだけで3回路も使うのは何となく勿体なく感じます。 但し、中心周波数やフィルタのQは比較的単純な計算で設計できますし、再現性のよいフィルタ形式です。一段とHigh-Qなフィルタの実現ではたいへん有利です。 OPアンプの数を厭わないならとても良い回路です。 Biquad Filterはノートン・アンプ専用の回路ではありませんから小変更で普通のOPアンプでも同じように実現できます。
ブレッドボードで試作しましたが「フィルタ・ブロック」として有用性が感じられるので例の「ブレッドボード・パターン」のユニバーサル基板に移植して恒久化しておこうと思います。f0を決めるコンデンサとQを決める抵抗器はソケット式にしておいたら良いでしょう。
−・・・−
ノートン・アンプを使うと単電源で動作する回路が作り易いです。これはなかなかメリットです。 またLM3900(MC3401)の出力段はA級増幅なのでクロスオーバー歪みは発生しません。 マイクアンプのような小レベルの所から使える汎用増幅ICとして重宝でしょう。トランジスタ代わりに「ちょっとアンプを」と言うときに具合が良いです。 簡単な論理回路やタイミング回路にも向いているので、トランシーバの送受信コントロールとかVOX回路などにも向いています。守備範囲が広いICですね。
☆ ☆ ☆
実験していてノートン・アンプが登場したころを思い出しました。雑誌には新種のOPアンプとして(大々的に?)紹介されていました。 ただ、いま思うとそれは間違いだったようです。 事実、ナショセミ社のデータシートにはOPアンプと大書きされてはいません。 大々的にノートン「OPアンプ」と書いていたのはモトローラの方でした。これにはだいぶ惑わされた感じです。
ちょっと見るとOPアンプちっくに動作しますが+入力端子はどちらかと言えばバイアス設定用の端子です。(・・と考えるとわかり易い) バイアスさえ設定すれば、アンプは単なる反転型負帰還アンプです。 ノートン・アンプは非反転アンプではあまり使わないのです。(使いにくいから) ノートン・アンプをOPアンプ的に使う回路例はそれほど多くありません。
昔々、何となく使い難いと感じたのはそうした見極めができなかったからでしょう。ノートン・アンプをOPアンプの仲間だと思っているならいつまでも惑わされたに違いありません。これまで少々曖昧な理解だったノートン・アンプもだいぶスッキリしました。 扱うのはこれが最後と思いますが、わかって使えば意外に便利なアンプICです。ちょっと古臭いですが持ち駒の一つになってくれたようです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←136kHz送信機エキサイタ部の纏めにリンク
2014年3月1日土曜日
【部品】LM359N Norton Amp.
【LM359N型ノートン・アンプ】
136kHz帯送信機製作の途中でまた寄り道します。 もちろん無関係ではありません。 ヘテロダイン・ミキサ後のフィルタ通過で下がった信号レベルを取り戻す必要があります。 136kHzと言う周波数は低いようでも汎用OPアンプにはだいぶ高めです。 汎用OP-Ampより周波特性の良いアンプが欲しいので高速ノートン・アンプを検討しています。 これは多分に自身の部品事情を反映していますからノートン・アンプを推奨する意図はありません。またまた「レアな部品を使ってる!」等といったご批判はご勘弁を。(笑)
なお、近ごろアマ無線界では広帯域トランスを使ったノイズ・レス・フィードバック形式のRFアンプもノートン・アンプと呼びます。むしろそちらの方がポピュラーかも知れません。電流で負帰還する部分に類似性もありますが、ここで扱うICとは別ものです。
【ノートン・アンプの基本:まずはLM3900から】
ノートン・アンプとは何でしょうか? Wikipediaでも参照していただくと良いかもしれませんが、「単電源動作で±入力を持った電流差動型アンプ」のことです。
何のことか、ピンとこないとは思いますが、要するに左図のようなエミッタ接地型アンプ(Q2)の出力をエミッタ・フォロワ(Q1)で取り出す形式のアンプです。
ディスクリートでも良くある形式なので特に目新しくはありません。 Q1のエミッタからQ2のベース(反転入力端子:In-)へ負帰還を掛ければ帰還型の増幅器になりますが、もう一工夫して+入力端子(In+)を設け電流差動形式になるようにしたのがノートン・アンプです。 初めて市販されたのはLM3900シリーズでした。なお、このシリーズのノートン・アンプにはLM2900N/LM3900Nのほか、モトローラ製の互換品、MC3301P/MC3401Pがあります。いずれもピン接続を含め機能・性能は同等ですが保証温度範囲や最大電源電圧など幾つかの規格に差があるので使用時には確認しておきましょう。一時期は両社の互換品が他社からも登場しましたが今では殆ど姿を消しています。
【LM3900の等価回路】
長くなるので途中の設計経緯は省きます。 ICとして実用形式に纏めたものが左図のような等価回路で、ナショナル・セミコンダクタ社(現在はTI 社に吸収合併)から登場しました。(1972年頃か?)
GNDへ向いたダイオードとその右のQ6と言うトランジスタが+入力端子を設ける為に追加された部品です。 これによってIn(+)とIn(-)の電流差が増幅されます。 詳しい仕組みや動作解析についてはメーカー(TI社)のサイトに詳細な資料があります。活用を試みるならナショセミ時代のアプリケーション・ノート:AN-72とAN-278は必読でしょう。 ほかにはもう目ぼしい資料も無くなっています。 要するに20世紀に置いて来たテクノロジーなのでしょう。
もちろん、今でも有用性が失われた訳ではありません。しかし代わって扱い易い「電圧帰還型」のOPアンプが全盛になったので意味も薄れました。 低電圧でレール・トゥ・レール型のIn/OutをもったC-MOS OPアンプの登場で単電源動作に特化したICの必然性もだいぶ薄れたのです。 やや遅れて登場した片電源用OPアンプ:LM324Nも強力なライバルでした。
【ピン接続図】
私が思うに、この妙なピン配置も馴染めなかった理由の1つです。 4回路入りOPアンプの常識とは外れたピン配置です。
TTLなど多くの論理回路用ICでは半ば約束のようになっていたコーナーの14番ピンが+Vccで、7番ピンがGNDになるように配置したのでしょう。しかし合理的には見えませんでした。 Amp1の+入力端子がAmp2の側に出ているなど、4回路入りOPアンプの常識では考えられないのです。
但し、アプリケーションを良く吟味すると+入力端子を片端に寄せたのは深い意味があったことがわかります。応用面から考えれば近くに並んでいた方が合理的なのです。
結局、このLM3900(MC3401P)と言うQuadアンプはOPアンプではなく、片電源で使う汎用のアンプ・ブロックです。 OPアンプと類似だろうという先入観で扱うと不自然さばかり感じます。 そのように使うモノでは無いのです。
【LM3900NとMC3401P】
今や開発メーカーのナショセミ社もTI社になりましたし、モトローラ社もONセミ社になっています。 LM3900は表面実装タイプのみ供給が続いています。 MC3401Pは既にディスコンです。 何個か手持ちがあったので撮影しておきました。
なお、機能・性能はこの両者ともに同等ですが、MC3401Pは最大電源電圧がやや低いので要注意です。 LM3900Nが+32V、MC3401Pは+18Vが最大定格です。12Vで使うなら互換できます。
これから使うのはLM3900やMC3401ではありませんが、元祖ノートン・アンプと言うことで扱いました。 写真のこれも勿体ないので将来何かに使ってみたいです。 ただ、特に何か良いことがあるわけでもないので使う機会もなさそうです。
ノートン・アンプには特徴を活かした面白い各種の応用がありました。少し古い回路集にはノートン・アンプの応用例もかなり見うけられます。それらは他のOPアンプでは代替が効かないケースが殆どなので要注意です。再設計は面倒なことが多いのでそのまま作るに限ります。今でもLM3900Nの入手は難しくありません。なお、LM3900NでLM2900N、MC3301P、MC3401Pの代替ができます。
参考:続きとしてLM3900Nのような普通のノートン・アンプをアクティブ・フィルタに活用する話を追加しました。→こちら(リンク)
☆ ☆ ☆
【ノートンアンプの高速化】
LM3900は車載機器などの単電源回路の汎用アンプとして作られたICです。従ってあまり高速ではない用途が主目的だったはずです。周波数特性はせいぜいオーディオ帯域止まりです。
それに対し、大幅に高周波特性を改善したノートン・アンプがナショセミ社によって作られました。LM359Nがそれです。 出力電圧範囲を多少犠牲にして周波数特性が甚だ悪いラテラルPNPトランジスタを使わない設計に変更しています。 さらに、ミラー効果を低減し周波数特性を良くする為にエミッタ接地型のゲインステージがカスコードアンプになっています。
LM359Nが本来どんな目的で作られたのかわかりません。もはやカーエレクトロニクス用ではないでしょう。 単電源動作のビデオアンプには便利なのでそれが主目的だったのかもしれません。 入・出力段の動作電流をユーザーが自由に設定できるなど、汎用性を持たせて幅広い用途を目指したようです。
【LM359Nの等価回路】
左図は内部等価回路です。 比較的簡単です。LM359Nはアンプ2回路入りでバイアス回路は2つのアンプで共通です。
片方のアンプだけを使うときは8〜14番ピンに割り当てられたAmp-Bの方を使うと節電できます。 たぶん4番ピンのGND-AをオープンにしておけばAmp-Aの電流が節約でます。 特に高周波まで周波数特性を伸ばす目的で回路電流を多く流した際にはムダな電流を減らすテクニックになるでしょう。
【LM359Nのピン・アサイン】
自身の参照用が目的なので、利用する為の情報としてピン配置を載せておきます。 14ピンなので少々場所を食いますが今風に小型化したいときは面実装型があります。LM359は今でも供給されています。
メーカーは180度ひねって挿入しても壊れないピン配置になっていると言っています。 確かにNCピン(無接続ピン)が+電源になるだけなのでデバイスを壊す恐れはないでしょう。 ピンが余ったのでそうした配慮をしておいたのだと思います。
【LM359Nの外観】
特に変わったところもない普通の14ピンICです。
わざわざ購入したのではなく長期在庫品としてパーツボックスに眠っていました。 部品は死蔵ではなく活用することが目標なので引張り出してきました。
以前のテストではなかなか良い性能が得られていた印象があります。136kHz帯送信機のような中途半端に周波数が高い用途にはうってつけでしょう。
【LM359Nを使ったビデオアンプ】
デジタルTVの時代になってアナログ形式のビデオ信号を扱う機器は珍しくなりました いずれ「ビデオアンプ」という言葉も死語になるでしょう。
音楽などの音声信号に比べて、映像信号(ビデオ信号)は格段に周波数帯域が広かったのでそうした信号が扱えるアンプをビデオアンプと呼んでいました。
左図はそうしたアンプの回路例です。ビデオ信号系なので特性インピーダンスが75Ωの同軸ケーブルをドライブする前提になっています。 ゲインは10倍(20dB)で-3dB帯域幅は下2.5Hz/上25MHzです。 ディスクリート部品でも製作可能なアンプですが、IC化することで性能の均質化がはかれます。 ビデオアンプとしてではなく汎用の広帯域アンプとして使うのも良いでしょう。
【nVbeバイアス】
ビデオアンプは差動アンプの必要は無いので、片入力だけで十分です。 そのため+入力端子を構成していたダイオードとトランジスタからなるミラー回路を使用しない動作ができます。
出力端子の直流的な動作点を決めるのが図のRbと言う抵抗器です。 トランジスタのVbeをn倍した所にバイアスするのでnVbeバイアスと呼ぶのでしょう。 Vbeは温度変化するため直流的な動作点は温度変化してしまいます。 しかし出力をフルスイングしなければ少々の変動は支障ありません。 そのような想定に基づいたのが左図です。式の解釈についてはLM359Nのデータシート:SNOSBT4(Rev.C)を参照して下さい。(www.ti.com)
【nVbeバイアスのメリット】
必要のない電流源をOFFして使うので、電流性ノイズが少なくなります。 約6nV/√Hzと言う値は広帯域アンプとしては悪くない数字です。 ローノイズを謳うアンプでも似たような数字ですからnVbeバイアスにはメリットがあります。
すこし設計は面倒ですがローノイズはメリットなので積極的に使いたい回路です。 フルスイングさせなければ動作点変動は気になりません。
【動作電流の設定】
入力回路と出力段の動作点を用途に応じて変えられるのがLM359Nの特徴の1つですが、実際にはあえて設計しなくてはならない煩わしさがあります。
データーシートを見ると代表特性の殆どをIb=0.5mAで規定していることがわかります。それが標準的な動作なのでしょう。 電源電圧が12Vなら20kΩの抵抗器1つでこの標準的な動作になります。(左図)
特別な性能・用途に特化したい時は個々に検討すべきですが、ここは取りあえず標準動作でも支障無いのでIb=0.5mAで使うことにしました。 ピン1番と8番の間に抵抗器を入れれば良いのですが、レイアウト上はあまり芳しくないピン位置です。 入出力段の電流を独立別個に設定するのに便利なピン配置なのです。
【実際のアンプ回路】
2つあるフィルタの通過ロスを補い、次段を十分にドライブできる信号レベルまで増幅する必要があります。実測からゲインは50倍くらい必要です。 またアンプの入力インピーダンスは前段のフィルタ特性に影響があるので600Ωに整合させます。
左図はそのような意図で設計しました。 実際に製作して良い特性でした。136kHzの送信機には十分な性能が得られています。
2つ入ったうち未使用側のアンプは遊ばせます。上記に書いたようにAmp-Bの方を増幅に使い、Amp-Aは電流を消費しないよう休ませる設計の方が良かったかもしれません。 現状では無駄な回路電流が流れています。 取りあえずブレッドボード上のテストなので、恒久化する際には変更しましょう。
☆ ☆ ☆
ノートン型電流差動アンプは20世紀のテクノロジーかもしれません。 136kHzの増幅なら汎用トランジスタ数個のアンプで必要な性能が得られます。あえて使う意味は無いかもしれません。しかしICを使えば性能がわかった回路が僅かな部品で実現できる便利さがあります。試してみたら性能も良好なので無理して使ったと言うよりも、むしろ適材だったようです。
いまでも十分通用する性能があるので特徴を活かした使い方ができたら面白いです。 高周波性能が良くてノイズも少ないので貴重なICでしょう。 あえて買ってまで使う理由はありませんが、もう少し見直しても良いデバイスだと思いました。
読返して自身の参照用なら設計手順や手法など気付いた所をもっと書いておけば良かったと思います。 おいおい改訂して追記しましょう。 ナショセミの応用資料は良くできています。 わざわざ抜き書きする必要は無さそうですが毎回英文を読むのも面倒です。 自身が使いそうなポイントを纏めておけば便利でしょう。 まだ手持ちがあるので使う機会もありそうですし。de JA9TTT/1
(つづく・1)←136kHz送信機エキサイター部の纏め(最終回)へリンク
(つづく・2)←「もっとノートン・アンプの検討を」へリンク
136kHz帯送信機製作の途中でまた寄り道します。 もちろん無関係ではありません。 ヘテロダイン・ミキサ後のフィルタ通過で下がった信号レベルを取り戻す必要があります。 136kHzと言う周波数は低いようでも汎用OPアンプにはだいぶ高めです。 汎用OP-Ampより周波特性の良いアンプが欲しいので高速ノートン・アンプを検討しています。 これは多分に自身の部品事情を反映していますからノートン・アンプを推奨する意図はありません。またまた「レアな部品を使ってる!」等といったご批判はご勘弁を。(笑)
なお、近ごろアマ無線界では広帯域トランスを使ったノイズ・レス・フィードバック形式のRFアンプもノートン・アンプと呼びます。むしろそちらの方がポピュラーかも知れません。電流で負帰還する部分に類似性もありますが、ここで扱うICとは別ものです。
【ノートン・アンプの基本:まずはLM3900から】
ノートン・アンプとは何でしょうか? Wikipediaでも参照していただくと良いかもしれませんが、「単電源動作で±入力を持った電流差動型アンプ」のことです。
何のことか、ピンとこないとは思いますが、要するに左図のようなエミッタ接地型アンプ(Q2)の出力をエミッタ・フォロワ(Q1)で取り出す形式のアンプです。
ディスクリートでも良くある形式なので特に目新しくはありません。 Q1のエミッタからQ2のベース(反転入力端子:In-)へ負帰還を掛ければ帰還型の増幅器になりますが、もう一工夫して+入力端子(In+)を設け電流差動形式になるようにしたのがノートン・アンプです。 初めて市販されたのはLM3900シリーズでした。なお、このシリーズのノートン・アンプにはLM2900N/LM3900Nのほか、モトローラ製の互換品、MC3301P/MC3401Pがあります。いずれもピン接続を含め機能・性能は同等ですが保証温度範囲や最大電源電圧など幾つかの規格に差があるので使用時には確認しておきましょう。一時期は両社の互換品が他社からも登場しましたが今では殆ど姿を消しています。
【LM3900の等価回路】
長くなるので途中の設計経緯は省きます。 ICとして実用形式に纏めたものが左図のような等価回路で、ナショナル・セミコンダクタ社(現在はTI 社に吸収合併)から登場しました。(1972年頃か?)
GNDへ向いたダイオードとその右のQ6と言うトランジスタが+入力端子を設ける為に追加された部品です。 これによってIn(+)とIn(-)の電流差が増幅されます。 詳しい仕組みや動作解析についてはメーカー(TI社)のサイトに詳細な資料があります。活用を試みるならナショセミ時代のアプリケーション・ノート:AN-72とAN-278は必読でしょう。 ほかにはもう目ぼしい資料も無くなっています。 要するに20世紀に置いて来たテクノロジーなのでしょう。
もちろん、今でも有用性が失われた訳ではありません。しかし代わって扱い易い「電圧帰還型」のOPアンプが全盛になったので意味も薄れました。 低電圧でレール・トゥ・レール型のIn/OutをもったC-MOS OPアンプの登場で単電源動作に特化したICの必然性もだいぶ薄れたのです。 やや遅れて登場した片電源用OPアンプ:LM324Nも強力なライバルでした。
【ピン接続図】
私が思うに、この妙なピン配置も馴染めなかった理由の1つです。 4回路入りOPアンプの常識とは外れたピン配置です。
TTLなど多くの論理回路用ICでは半ば約束のようになっていたコーナーの14番ピンが+Vccで、7番ピンがGNDになるように配置したのでしょう。しかし合理的には見えませんでした。 Amp1の+入力端子がAmp2の側に出ているなど、4回路入りOPアンプの常識では考えられないのです。
但し、アプリケーションを良く吟味すると+入力端子を片端に寄せたのは深い意味があったことがわかります。応用面から考えれば近くに並んでいた方が合理的なのです。
結局、このLM3900(MC3401P)と言うQuadアンプはOPアンプではなく、片電源で使う汎用のアンプ・ブロックです。 OPアンプと類似だろうという先入観で扱うと不自然さばかり感じます。 そのように使うモノでは無いのです。
【LM3900NとMC3401P】
今や開発メーカーのナショセミ社もTI社になりましたし、モトローラ社もONセミ社になっています。 LM3900は表面実装タイプのみ供給が続いています。 MC3401Pは既にディスコンです。 何個か手持ちがあったので撮影しておきました。
なお、機能・性能はこの両者ともに同等ですが、MC3401Pは最大電源電圧がやや低いので要注意です。 LM3900Nが+32V、MC3401Pは+18Vが最大定格です。12Vで使うなら互換できます。
これから使うのはLM3900やMC3401ではありませんが、元祖ノートン・アンプと言うことで扱いました。 写真のこれも勿体ないので将来何かに使ってみたいです。 ただ、特に何か良いことがあるわけでもないので使う機会もなさそうです。
ノートン・アンプには特徴を活かした面白い各種の応用がありました。少し古い回路集にはノートン・アンプの応用例もかなり見うけられます。それらは他のOPアンプでは代替が効かないケースが殆どなので要注意です。再設計は面倒なことが多いのでそのまま作るに限ります。今でもLM3900Nの入手は難しくありません。なお、LM3900NでLM2900N、MC3301P、MC3401Pの代替ができます。
参考:続きとしてLM3900Nのような普通のノートン・アンプをアクティブ・フィルタに活用する話を追加しました。→こちら(リンク)
☆ ☆ ☆
【ノートンアンプの高速化】
LM3900は車載機器などの単電源回路の汎用アンプとして作られたICです。従ってあまり高速ではない用途が主目的だったはずです。周波数特性はせいぜいオーディオ帯域止まりです。
それに対し、大幅に高周波特性を改善したノートン・アンプがナショセミ社によって作られました。LM359Nがそれです。 出力電圧範囲を多少犠牲にして周波数特性が甚だ悪いラテラルPNPトランジスタを使わない設計に変更しています。 さらに、ミラー効果を低減し周波数特性を良くする為にエミッタ接地型のゲインステージがカスコードアンプになっています。
LM359Nが本来どんな目的で作られたのかわかりません。もはやカーエレクトロニクス用ではないでしょう。 単電源動作のビデオアンプには便利なのでそれが主目的だったのかもしれません。 入・出力段の動作電流をユーザーが自由に設定できるなど、汎用性を持たせて幅広い用途を目指したようです。
【LM359Nの等価回路】
左図は内部等価回路です。 比較的簡単です。LM359Nはアンプ2回路入りでバイアス回路は2つのアンプで共通です。
片方のアンプだけを使うときは8〜14番ピンに割り当てられたAmp-Bの方を使うと節電できます。 たぶん4番ピンのGND-AをオープンにしておけばAmp-Aの電流が節約でます。 特に高周波まで周波数特性を伸ばす目的で回路電流を多く流した際にはムダな電流を減らすテクニックになるでしょう。
【LM359Nのピン・アサイン】
自身の参照用が目的なので、利用する為の情報としてピン配置を載せておきます。 14ピンなので少々場所を食いますが今風に小型化したいときは面実装型があります。LM359は今でも供給されています。
メーカーは180度ひねって挿入しても壊れないピン配置になっていると言っています。 確かにNCピン(無接続ピン)が+電源になるだけなのでデバイスを壊す恐れはないでしょう。 ピンが余ったのでそうした配慮をしておいたのだと思います。
【LM359Nの外観】
特に変わったところもない普通の14ピンICです。
わざわざ購入したのではなく長期在庫品としてパーツボックスに眠っていました。 部品は死蔵ではなく活用することが目標なので引張り出してきました。
以前のテストではなかなか良い性能が得られていた印象があります。136kHz帯送信機のような中途半端に周波数が高い用途にはうってつけでしょう。
【LM359Nを使ったビデオアンプ】
デジタルTVの時代になってアナログ形式のビデオ信号を扱う機器は珍しくなりました いずれ「ビデオアンプ」という言葉も死語になるでしょう。
音楽などの音声信号に比べて、映像信号(ビデオ信号)は格段に周波数帯域が広かったのでそうした信号が扱えるアンプをビデオアンプと呼んでいました。
左図はそうしたアンプの回路例です。ビデオ信号系なので特性インピーダンスが75Ωの同軸ケーブルをドライブする前提になっています。 ゲインは10倍(20dB)で-3dB帯域幅は下2.5Hz/上25MHzです。 ディスクリート部品でも製作可能なアンプですが、IC化することで性能の均質化がはかれます。 ビデオアンプとしてではなく汎用の広帯域アンプとして使うのも良いでしょう。
【nVbeバイアス】
ビデオアンプは差動アンプの必要は無いので、片入力だけで十分です。 そのため+入力端子を構成していたダイオードとトランジスタからなるミラー回路を使用しない動作ができます。
出力端子の直流的な動作点を決めるのが図のRbと言う抵抗器です。 トランジスタのVbeをn倍した所にバイアスするのでnVbeバイアスと呼ぶのでしょう。 Vbeは温度変化するため直流的な動作点は温度変化してしまいます。 しかし出力をフルスイングしなければ少々の変動は支障ありません。 そのような想定に基づいたのが左図です。式の解釈についてはLM359Nのデータシート:SNOSBT4(Rev.C)を参照して下さい。(www.ti.com)
【nVbeバイアスのメリット】
必要のない電流源をOFFして使うので、電流性ノイズが少なくなります。 約6nV/√Hzと言う値は広帯域アンプとしては悪くない数字です。 ローノイズを謳うアンプでも似たような数字ですからnVbeバイアスにはメリットがあります。
すこし設計は面倒ですがローノイズはメリットなので積極的に使いたい回路です。 フルスイングさせなければ動作点変動は気になりません。
【動作電流の設定】
入力回路と出力段の動作点を用途に応じて変えられるのがLM359Nの特徴の1つですが、実際にはあえて設計しなくてはならない煩わしさがあります。
データーシートを見ると代表特性の殆どをIb=0.5mAで規定していることがわかります。それが標準的な動作なのでしょう。 電源電圧が12Vなら20kΩの抵抗器1つでこの標準的な動作になります。(左図)
特別な性能・用途に特化したい時は個々に検討すべきですが、ここは取りあえず標準動作でも支障無いのでIb=0.5mAで使うことにしました。 ピン1番と8番の間に抵抗器を入れれば良いのですが、レイアウト上はあまり芳しくないピン位置です。 入出力段の電流を独立別個に設定するのに便利なピン配置なのです。
【実際のアンプ回路】
2つあるフィルタの通過ロスを補い、次段を十分にドライブできる信号レベルまで増幅する必要があります。実測からゲインは50倍くらい必要です。 またアンプの入力インピーダンスは前段のフィルタ特性に影響があるので600Ωに整合させます。
左図はそのような意図で設計しました。 実際に製作して良い特性でした。136kHzの送信機には十分な性能が得られています。
2つ入ったうち未使用側のアンプは遊ばせます。上記に書いたようにAmp-Bの方を増幅に使い、Amp-Aは電流を消費しないよう休ませる設計の方が良かったかもしれません。 現状では無駄な回路電流が流れています。 取りあえずブレッドボード上のテストなので、恒久化する際には変更しましょう。
☆ ☆ ☆
ノートン型電流差動アンプは20世紀のテクノロジーかもしれません。 136kHzの増幅なら汎用トランジスタ数個のアンプで必要な性能が得られます。あえて使う意味は無いかもしれません。しかしICを使えば性能がわかった回路が僅かな部品で実現できる便利さがあります。試してみたら性能も良好なので無理して使ったと言うよりも、むしろ適材だったようです。
いまでも十分通用する性能があるので特徴を活かした使い方ができたら面白いです。 高周波性能が良くてノイズも少ないので貴重なICでしょう。 あえて買ってまで使う理由はありませんが、もう少し見直しても良いデバイスだと思いました。
読返して自身の参照用なら設計手順や手法など気付いた所をもっと書いておけば良かったと思います。 おいおい改訂して追記しましょう。 ナショセミの応用資料は良くできています。 わざわざ抜き書きする必要は無さそうですが毎回英文を読むのも面倒です。 自身が使いそうなポイントを纏めておけば便利でしょう。 まだ手持ちがあるので使う機会もありそうですし。de JA9TTT/1
(つづく・1)←136kHz送信機エキサイター部の纏め(最終回)へリンク
(つづく・2)←「もっとノートン・アンプの検討を」へリンク
2014年2月15日土曜日
【回路】136kHz Bandpass Filter Design
【136kHzのバンドパス・フィルタ デザイン】
【136kHz BPF】
これは136kHz帯の送信機を作る話し(←リンク)の一環です。 以下は特に変哲も無いバンドパス・フィルタの話しです。しかし、136kHz帯HAMバンド用送信機の電波の質に関わる重要な部分なので独立したBlogテーマにしました。例によって自家用のデザインメモですからそのおつもりで。
このフィルタの目的は、20kHz帯で作ったUSB(上側側帯波:例えば21kHz)をヘテロダイン周波数変換し、136kHz帯に持ち上げる際に発生する不要波を除去することです。 136kHz帯、すなわち135.7〜137.8kHzのハムバンドはそのまま通過させ、他の周波数成分は通過させない性能が必要です。特性が良くないと不要輻射の原因になります。
設計は4次のバターワース特性で行ないました。 このフィルタの特性としては:主信号(例:136kHz=115kHz+21kHz)に対して、(1)ヘテロダイン局発である115kHzは40dB以上の減衰が、また(2)ヘテロダインで逆側に発生する115-21=94kHzについては60dB以上減衰する特性が必要です。 115kHzの所が-40dBで良いのはミキサーがDBMなので局発の減衰を20dB以上見込むからです。 以上の要求仕様から4次以上のフィルタを選択する必要があります。 なお、-3dB帯域幅:Bwは10kHz、入出力インピーダンス:Zoは600Ωとします。
設計過程は、実際に製作することのないBlogウオッチャーには退屈なだけですから一切省略しました。 もちろんそんなに難しいものではありません。 興味でも湧いたら諸々はシャックの様子見がてらでもお立ち寄り頂ければと思います。 何か手作りをお持ちになると自作の話で盛り上がります。近隣・遠方は問わずお客さんは大歓迎します。(笑)
【フィルタ・シミュレーション】
さっそくシミュレーションを行ないました。 但し、コイルの一部はQが低くてLossがあるとして実行しています。従ってシミュレーション回路は上記と多少変えてあります。
図は検討過程の一例です。結果から見て必要とするフィルタ特性は十分得られそうです。 Lossのあるコイルを使うと肩部分のダレが増えるのと、通過損失の増加が見られるようになります。
ただ、今回は本当に必要な通過帯域幅が僅か:Bw=2.1kHzなので、少々頭の丸いフィルタになっても実用上の支障はないでしょう。(もちろん、最初からそのように見込んで設計しているのですが・笑)
【使用するコイル】
プロフェッショナルな設計の場合、フィルタの途中にインピーダンス変換を設けたり、コイルにタップを設けるなど行なって、作り易く性能も出し易いように変形します。
上記の設計の場合、L2とL4のインダクタンスがやたらと大きく、比べてL1、L3のインダクタンスはずいぶん小さな値です。 大きい方を数mHに、小さい方は少なくとも数100μHくらいになるようにした方が作り易いのですが設計は一段と煩雑になります。
ここでは、少々無理は承知でそのまま初期の設計通りに進めることにします。 その結果、特性は多少理想とずれてくるとは思いますが、使用帯域幅が狭いことと、Lossの増加は容易に補える周波数なので煩雑化は避けることにしました。(設計も面倒ですしw) 数100kHz帯では壷型フェライトコア(ポットコア)を使うと良いコイルが作れます。しかし入手難なので手持ちから使えそうな物をピックアップしました。要するに実用性能になればOKと言う訳です。 インダクタンスはなるべく実際に使用する周波数に近い所で測定しないと誤差が大きくなるので注意します。磁気コアが周波数特性を持っているからです。
【使用するコンデンサ】
コイルの方で譲歩したので、コンデンサの方はなるべく良い物を選んでLC共振器としての無負荷Q:Quが過度に小さくならないようにしました。
容量の大きなコンデンサは主にスチロール・コンデンサ(スチコン)を使います。 また小容量はQの高い温度補償系のセラミック・コンデンサ、もちろんNP0特性のものを使います。同じくディップド・マイカも適しています。 一部補助的にメタライズド・フィルムコン(ポリエステル)も使いましたが主たるコンデンサがHig-Qなのであまり支障ないでしょう。 いずれもLCRメータを使い使用周波数に近い100kHzで性能確認しました。 各コイルがインダクタンス可変型なのでコンデンサは1%程度まで合わせておけば十分です。 スチコンは在庫から調達しました。性能は良いですが大型なので近代的な回路には巨大過ぎて持て余し気味でした。この機会に有効活用できて良かったと思います。フィルタの用途にはうってつけのコンデンサです。
【フィルタの部品一式】
どのように組立てるかにもよりますが、実際には実装基板が必要です。 量産するならパターン化しても良いですが一品料理なのでユニバーサル基板で作ります。
さっそく組立てに・・・と行きたい所ですが、もう一つ大切な確認作業が残っています。 使用したコンデンサのうちスチコンのような巻回型のコンデンサは「巻きの内外」を確認しておく必要があります。 これは構造によって生じるものです。こうしたコンデンサは二枚の電極箔(アルミフォイル)の間に絶縁フィルム(誘電体フィルム)を挟んでのり巻き状にぐるぐる巻きにした構造です。 スチコンを見ると透けているので構造が良くわかるでしょう。 本来、フィルムコンデンサは無極性ですが外側に巻かれている方をインピーダンスの低い側に接続するのが正しい使い方です。 その為には巻きの内外がどちら側のリード線に出ているか知る必要があります。 以下はその調べ方です。
【Capacitor Outer Foil Test】
写真はスチコンの測定を始めた所です。結果から言うと、このスチコンでは赤い帯のある方が外側でした。要するにホット側ではなくてGND側です。(赤い線なのにねえ・・) しかし表示がないものや、逆側にマークが付いているケースもあるので実測すれば間違いありません
使用測定器はミリバルと呼ばれる「高感度電子電圧計」です。主にオーディオ周波数帯用で、交流電圧を1mV程度まで高感度に測定できる測定器です。入力インピーダンスは殆どが10MΩです。 このテストにはうってつけの道具です。
入力がハイインピーダンスなので、もし測定端子のホット側(黄色のクリップ)に接続されたリード線が外側に見えるフォイルに繋がっているのなら、誘導を受け易いのですぐにわかります。 逆にGND側に接続されているならシールドされる形になるので誘導は受け難いわけです。
【こちらが外側ね】
さっそくコンデンサの外側を指でつまんでみましょう。 人体に誘導している50Hz(関西なら60Hz)のハム成分が、このようにコンデンサの電極に誘導し電圧計の指針は大きく振れます。
確認の為に、リード線を入れ替えて比較すべきですがこれだけでも結果はほぼ間違いないでしょう。
実際に使う際も外側巻きの方をデリケートな側(一般にインピーダンスの高いところ)に接続してしまうと無用な誘導や、他の部品などと静電的な結合が発生して旨くありません。アンプなら発振するかも知れませんし、フィルタなら特性に乱れを生じます。 巻きの外側はGNDされる側に使うか、インピーダンスの低い側に使う方が有利と言うか常識的な使い方です。(え、知らなかった?)
【こっちが内側だ】
黄色のミノムシ・クリップが電圧計のホット側の端子です。 手指の誘導を受け難いと言うことは、外側のフォイルはGNDになっていて、逆に黄色のこちらが内側巻きと言うことになります。
なお、回路の中でGNDされるコンデンサは良いとして、両端のどちらもGNDされていないコンデンサはどう考えれば良いでしょうか?
このフィルタで言えば、直列共振の為のコイルが接続された側がホットな側になるので、そちらがフォイルの内側になるようにすべきです。 例えばC2とL2の接続点などがホット側です。 巻物のコンデンサだけでなく、積層セラコンにも表裏があるので場合によっては確認して使うと良い場合があります。GND側でシールド板の役割を持たせると言うような効果的な用法もあるわけです。
【組立て完了】
コイル巻きは少々面倒でしたが、簡単な回路なので組立は難しくありません。
赤い巻線のコイル(L2とL4)のうち一方(L4)が横倒しになっているのは、他方(L2)と磁気的な結合を避ける為です。 この赤い巻線のコイルは開磁型なので磁束は周囲に漏れています。 従ってこのような配慮をしないとフィルタのようなデリケートな回路では所定の特性が得られません。
なお、小さい方のコイルはコアが壷型の閉磁構造なので磁束漏れが少ない上、シールドもされているので平行に配置しても支障ありません。 もちろん、無理に密着させる必要はないので多少でもスペースを開ける方が賢明でしょう。
実際に使用する際は、フィルタ全体を何らかのシールドケースに入れるつもりです。 アンテナと言う強力な電磁界を作り出すものの根元で使う機械用です。裸のコイルに磁界の誘導が起こることは容易に想像できます。要は小さなバーアンテナと同じです。
【特性評価・1】
まずは帯域外の減衰特性を測定してみました。
肝心の115kHzのところ(中心から-20kHzのところ)が約-47dB、94kHzのところ(中心から-40kHzのところ)は約-70dBと減衰量は十分に得られており設計仕様を満しています。
測定には600Ωのインピーダンス・マッチング回路を外付けしました。 そのため、通過減衰量は直読測定出来ませんが(まあ、やれば出来るのですが面倒)別途測定することにしました。減衰量の測定は通過域の値との相対測定なので特に支障はありません。
上側の減衰域が多少なだらかなのは使用したコイルのQが低いからです。 下側はあまり影響を受けませんが上側で顕著になっています。 それでも上側も十分に件の「-40dB、-60dB減衰量」は得られているので、局発を上側にとったヘテロダインでも支障なく使えそうです。
【特性評価・2】
通過帯域内の特性です。 理想通りの部品ではないので、通過帯域がだいぶ丸くなっていますが、必要とする中央部分では0.2dB程度の偏差なのでまったく支障無いでしょう。 -3dB帯域幅は設計値の10kHzより狭い8kHz弱になっています。原因はコイルのQと調整法にあるようです。
Qの低いコイルを使うと通過域の肩部分がだれて丸くなる傾向があります。 また、このフィルタはLC共振器を4つ持っていて、それぞれの共振周波数は少しずつ周波数がずれた所定の所に合わせるべきです。通過帯域が丸いのは、なるべく通過Lossが少なくなるように調整したためで、それも関係しています。多少Lossの増加を許容すれば平坦域が広くなように調整をすることもできます。(やや根気が必要そう)
このHAMバンドはアンテナの帯域幅が極端に狭くなります。送信機から見た空中線インピーダンスはたった2.1kHzの間と言えども大きく変化するでしょう。 従って完全フラットな周波数特性の送信機をもってしても、結構大きな周波数特性が観測される筈です。 もしそうでないならQの低い飛ばないアンテナの可能性もありそうです。 まあフィルタはこの程度の周波数特性なら十二分であって、深追いは無用と言うことです。(笑)
【通過損失の観測】
通過損失の直接的な測定にはオーディオ発振器とミリバル(電子電圧計)を使います。 中心周波数にて測定された通過損失は5.5dBでした。これくらいならまったく支障ありません。並列共振回路を何段か重ねた形式では通過損失はずっと大きくなるのでこの形式で製作したのは正解でした。
Qのあまり高くない、即ちLossの多いコイルを使ったにしてはまずまずです。調整で最小Lossに合わせ込んだ関係もあるでしょう。 この程度なら簡単に増幅で補えるので実用十分的な特性に仕上がりました。良好な切れを追求すると幾分損失が多くなるのはやむを得ません。巨大なコイルで作れば数dBのロスを減らせますが、この場合はそれをするより増幅する方が簡単です。部分ごとの理想追求では無く、トータルとしての合理性を追求すべきでしょう。
この観測に限らず、例によってブレッドボードに載せて評価しました。写真に見える両端がミノムシ・クリップの黄色いリード線は底板のGND用です。 ブレッドボードの底板を浮かせたままにすると、そこを介した結合が起こってフィルタ特性に乱れが生じます。要注意です。なにしろ、IN/OUT間で90dB(電圧で言えば約3万分の一、電力で言えば十億分の一)の減衰量がある回路の測定です。周波数が低いと言っても侮れません。
☆
こうしたバンドパス・フィルタは周波数変換形式の送信機には不可欠なものです。 スプリアスの原因になっても困るので良いフィルタが欲しくなります。 しかしこの周波数帯のLCフィルタは面倒です。 大きな値のインダクタンスやコンデンサが必要で理想通りの部品が得難いからです。 常識的に言えばポットコア(壷型コア)を使ってなるべくHigh-Qなコイルを作ることになるでしょう。 しかし、コアの入手が問題で、おまけに沢山の回数を巻くのも大変です・・・と言うことで、手持ちの活用で済ませる作戦でスタートしました。 要するに実用性能のフィルタが出来れば良いのです。言うまでもなくエレクトロニクスは実用の科学です。机上でぐずぐずするより実用を目指すべきでしょう。
ずいぶん前に、セラロックを使った135kHz帯のVXOを作った事がありました。その時に使った「公称インダクタンス20mH」というコア入りコイルを巻き戻して使うことにしました。ずいぶん前の頂きものです。
何百回と細い線で巻線するのは大変ですが、解いて行く方ならずいぶん楽です。おまけにコア入りで調整もできるからおあつらえ向きのコイルに思えました。 ただ、残念なことに開磁型なので使い方に工夫を要します。 また、やってみたら中芯フェライト・コアの周波数特性が大きいようでした。使用周波数に近い所で所定のインダクタンスになるよう合わせ込む必要がありました。 最終的には一緒に使うコンデンサと組み合わせて共振周波数が所定の所に来るよう巻き数を微調整して完成させました。 なにも高級な測定器はいりません。 周波数が安定なDDS発振器などとオシロスコープくらいで十分行けるので後はやる気と根気の勝負です。 de JA9TTT/1
(注)トップバンドにオンエア予定で、実際におなじようなフィルタを作りたいお方にはLC部品供給の用意がありますので、詳細はコールサインを書いたメールをどうぞ。
(つづく)←136kHzの信号の増幅するアンプの検討にリンク
【136kHz BPF】
これは136kHz帯の送信機を作る話し(←リンク)の一環です。 以下は特に変哲も無いバンドパス・フィルタの話しです。しかし、136kHz帯HAMバンド用送信機の電波の質に関わる重要な部分なので独立したBlogテーマにしました。例によって自家用のデザインメモですからそのおつもりで。
このフィルタの目的は、20kHz帯で作ったUSB(上側側帯波:例えば21kHz)をヘテロダイン周波数変換し、136kHz帯に持ち上げる際に発生する不要波を除去することです。 136kHz帯、すなわち135.7〜137.8kHzのハムバンドはそのまま通過させ、他の周波数成分は通過させない性能が必要です。特性が良くないと不要輻射の原因になります。
設計は4次のバターワース特性で行ないました。 このフィルタの特性としては:主信号(例:136kHz=115kHz+21kHz)に対して、(1)ヘテロダイン局発である115kHzは40dB以上の減衰が、また(2)ヘテロダインで逆側に発生する115-21=94kHzについては60dB以上減衰する特性が必要です。 115kHzの所が-40dBで良いのはミキサーがDBMなので局発の減衰を20dB以上見込むからです。 以上の要求仕様から4次以上のフィルタを選択する必要があります。 なお、-3dB帯域幅:Bwは10kHz、入出力インピーダンス:Zoは600Ωとします。
設計過程は、実際に製作することのないBlogウオッチャーには退屈なだけですから一切省略しました。 もちろんそんなに難しいものではありません。 興味でも湧いたら諸々はシャックの様子見がてらでもお立ち寄り頂ければと思います。 何か手作りをお持ちになると自作の話で盛り上がります。近隣・遠方は問わずお客さんは大歓迎します。(笑)
【フィルタ・シミュレーション】
さっそくシミュレーションを行ないました。 但し、コイルの一部はQが低くてLossがあるとして実行しています。従ってシミュレーション回路は上記と多少変えてあります。
図は検討過程の一例です。結果から見て必要とするフィルタ特性は十分得られそうです。 Lossのあるコイルを使うと肩部分のダレが増えるのと、通過損失の増加が見られるようになります。
ただ、今回は本当に必要な通過帯域幅が僅か:Bw=2.1kHzなので、少々頭の丸いフィルタになっても実用上の支障はないでしょう。(もちろん、最初からそのように見込んで設計しているのですが・笑)
【使用するコイル】
プロフェッショナルな設計の場合、フィルタの途中にインピーダンス変換を設けたり、コイルにタップを設けるなど行なって、作り易く性能も出し易いように変形します。
上記の設計の場合、L2とL4のインダクタンスがやたらと大きく、比べてL1、L3のインダクタンスはずいぶん小さな値です。 大きい方を数mHに、小さい方は少なくとも数100μHくらいになるようにした方が作り易いのですが設計は一段と煩雑になります。
ここでは、少々無理は承知でそのまま初期の設計通りに進めることにします。 その結果、特性は多少理想とずれてくるとは思いますが、使用帯域幅が狭いことと、Lossの増加は容易に補える周波数なので煩雑化は避けることにしました。(設計も面倒ですしw) 数100kHz帯では壷型フェライトコア(ポットコア)を使うと良いコイルが作れます。しかし入手難なので手持ちから使えそうな物をピックアップしました。要するに実用性能になればOKと言う訳です。 インダクタンスはなるべく実際に使用する周波数に近い所で測定しないと誤差が大きくなるので注意します。磁気コアが周波数特性を持っているからです。
【使用するコンデンサ】
コイルの方で譲歩したので、コンデンサの方はなるべく良い物を選んでLC共振器としての無負荷Q:Quが過度に小さくならないようにしました。
容量の大きなコンデンサは主にスチロール・コンデンサ(スチコン)を使います。 また小容量はQの高い温度補償系のセラミック・コンデンサ、もちろんNP0特性のものを使います。同じくディップド・マイカも適しています。 一部補助的にメタライズド・フィルムコン(ポリエステル)も使いましたが主たるコンデンサがHig-Qなのであまり支障ないでしょう。 いずれもLCRメータを使い使用周波数に近い100kHzで性能確認しました。 各コイルがインダクタンス可変型なのでコンデンサは1%程度まで合わせておけば十分です。 スチコンは在庫から調達しました。性能は良いですが大型なので近代的な回路には巨大過ぎて持て余し気味でした。この機会に有効活用できて良かったと思います。フィルタの用途にはうってつけのコンデンサです。
【フィルタの部品一式】
どのように組立てるかにもよりますが、実際には実装基板が必要です。 量産するならパターン化しても良いですが一品料理なのでユニバーサル基板で作ります。
さっそく組立てに・・・と行きたい所ですが、もう一つ大切な確認作業が残っています。 使用したコンデンサのうちスチコンのような巻回型のコンデンサは「巻きの内外」を確認しておく必要があります。 これは構造によって生じるものです。こうしたコンデンサは二枚の電極箔(アルミフォイル)の間に絶縁フィルム(誘電体フィルム)を挟んでのり巻き状にぐるぐる巻きにした構造です。 スチコンを見ると透けているので構造が良くわかるでしょう。 本来、フィルムコンデンサは無極性ですが外側に巻かれている方をインピーダンスの低い側に接続するのが正しい使い方です。 その為には巻きの内外がどちら側のリード線に出ているか知る必要があります。 以下はその調べ方です。
【Capacitor Outer Foil Test】
写真はスチコンの測定を始めた所です。結果から言うと、このスチコンでは赤い帯のある方が外側でした。要するにホット側ではなくてGND側です。(赤い線なのにねえ・・) しかし表示がないものや、逆側にマークが付いているケースもあるので実測すれば間違いありません
使用測定器はミリバルと呼ばれる「高感度電子電圧計」です。主にオーディオ周波数帯用で、交流電圧を1mV程度まで高感度に測定できる測定器です。入力インピーダンスは殆どが10MΩです。 このテストにはうってつけの道具です。
入力がハイインピーダンスなので、もし測定端子のホット側(黄色のクリップ)に接続されたリード線が外側に見えるフォイルに繋がっているのなら、誘導を受け易いのですぐにわかります。 逆にGND側に接続されているならシールドされる形になるので誘導は受け難いわけです。
【こちらが外側ね】
さっそくコンデンサの外側を指でつまんでみましょう。 人体に誘導している50Hz(関西なら60Hz)のハム成分が、このようにコンデンサの電極に誘導し電圧計の指針は大きく振れます。
確認の為に、リード線を入れ替えて比較すべきですがこれだけでも結果はほぼ間違いないでしょう。
実際に使う際も外側巻きの方をデリケートな側(一般にインピーダンスの高いところ)に接続してしまうと無用な誘導や、他の部品などと静電的な結合が発生して旨くありません。アンプなら発振するかも知れませんし、フィルタなら特性に乱れを生じます。 巻きの外側はGNDされる側に使うか、インピーダンスの低い側に使う方が有利と言うか常識的な使い方です。(え、知らなかった?)
【こっちが内側だ】
黄色のミノムシ・クリップが電圧計のホット側の端子です。 手指の誘導を受け難いと言うことは、外側のフォイルはGNDになっていて、逆に黄色のこちらが内側巻きと言うことになります。
なお、回路の中でGNDされるコンデンサは良いとして、両端のどちらもGNDされていないコンデンサはどう考えれば良いでしょうか?
このフィルタで言えば、直列共振の為のコイルが接続された側がホットな側になるので、そちらがフォイルの内側になるようにすべきです。 例えばC2とL2の接続点などがホット側です。 巻物のコンデンサだけでなく、積層セラコンにも表裏があるので場合によっては確認して使うと良い場合があります。GND側でシールド板の役割を持たせると言うような効果的な用法もあるわけです。
【組立て完了】
コイル巻きは少々面倒でしたが、簡単な回路なので組立は難しくありません。
赤い巻線のコイル(L2とL4)のうち一方(L4)が横倒しになっているのは、他方(L2)と磁気的な結合を避ける為です。 この赤い巻線のコイルは開磁型なので磁束は周囲に漏れています。 従ってこのような配慮をしないとフィルタのようなデリケートな回路では所定の特性が得られません。
なお、小さい方のコイルはコアが壷型の閉磁構造なので磁束漏れが少ない上、シールドもされているので平行に配置しても支障ありません。 もちろん、無理に密着させる必要はないので多少でもスペースを開ける方が賢明でしょう。
実際に使用する際は、フィルタ全体を何らかのシールドケースに入れるつもりです。 アンテナと言う強力な電磁界を作り出すものの根元で使う機械用です。裸のコイルに磁界の誘導が起こることは容易に想像できます。要は小さなバーアンテナと同じです。
【特性評価・1】
まずは帯域外の減衰特性を測定してみました。
肝心の115kHzのところ(中心から-20kHzのところ)が約-47dB、94kHzのところ(中心から-40kHzのところ)は約-70dBと減衰量は十分に得られており設計仕様を満しています。
測定には600Ωのインピーダンス・マッチング回路を外付けしました。 そのため、通過減衰量は直読測定出来ませんが(まあ、やれば出来るのですが面倒)別途測定することにしました。減衰量の測定は通過域の値との相対測定なので特に支障はありません。
上側の減衰域が多少なだらかなのは使用したコイルのQが低いからです。 下側はあまり影響を受けませんが上側で顕著になっています。 それでも上側も十分に件の「-40dB、-60dB減衰量」は得られているので、局発を上側にとったヘテロダインでも支障なく使えそうです。
【特性評価・2】
通過帯域内の特性です。 理想通りの部品ではないので、通過帯域がだいぶ丸くなっていますが、必要とする中央部分では0.2dB程度の偏差なのでまったく支障無いでしょう。 -3dB帯域幅は設計値の10kHzより狭い8kHz弱になっています。原因はコイルのQと調整法にあるようです。
Qの低いコイルを使うと通過域の肩部分がだれて丸くなる傾向があります。 また、このフィルタはLC共振器を4つ持っていて、それぞれの共振周波数は少しずつ周波数がずれた所定の所に合わせるべきです。通過帯域が丸いのは、なるべく通過Lossが少なくなるように調整したためで、それも関係しています。多少Lossの増加を許容すれば平坦域が広くなように調整をすることもできます。(やや根気が必要そう)
このHAMバンドはアンテナの帯域幅が極端に狭くなります。送信機から見た空中線インピーダンスはたった2.1kHzの間と言えども大きく変化するでしょう。 従って完全フラットな周波数特性の送信機をもってしても、結構大きな周波数特性が観測される筈です。 もしそうでないならQの低い飛ばないアンテナの可能性もありそうです。 まあフィルタはこの程度の周波数特性なら十二分であって、深追いは無用と言うことです。(笑)
【通過損失の観測】
通過損失の直接的な測定にはオーディオ発振器とミリバル(電子電圧計)を使います。 中心周波数にて測定された通過損失は5.5dBでした。これくらいならまったく支障ありません。並列共振回路を何段か重ねた形式では通過損失はずっと大きくなるのでこの形式で製作したのは正解でした。
Qのあまり高くない、即ちLossの多いコイルを使ったにしてはまずまずです。調整で最小Lossに合わせ込んだ関係もあるでしょう。 この程度なら簡単に増幅で補えるので実用十分的な特性に仕上がりました。良好な切れを追求すると幾分損失が多くなるのはやむを得ません。巨大なコイルで作れば数dBのロスを減らせますが、この場合はそれをするより増幅する方が簡単です。部分ごとの理想追求では無く、トータルとしての合理性を追求すべきでしょう。
この観測に限らず、例によってブレッドボードに載せて評価しました。写真に見える両端がミノムシ・クリップの黄色いリード線は底板のGND用です。 ブレッドボードの底板を浮かせたままにすると、そこを介した結合が起こってフィルタ特性に乱れが生じます。要注意です。なにしろ、IN/OUT間で90dB(電圧で言えば約3万分の一、電力で言えば十億分の一)の減衰量がある回路の測定です。周波数が低いと言っても侮れません。
☆
こうしたバンドパス・フィルタは周波数変換形式の送信機には不可欠なものです。 スプリアスの原因になっても困るので良いフィルタが欲しくなります。 しかしこの周波数帯のLCフィルタは面倒です。 大きな値のインダクタンスやコンデンサが必要で理想通りの部品が得難いからです。 常識的に言えばポットコア(壷型コア)を使ってなるべくHigh-Qなコイルを作ることになるでしょう。 しかし、コアの入手が問題で、おまけに沢山の回数を巻くのも大変です・・・と言うことで、手持ちの活用で済ませる作戦でスタートしました。 要するに実用性能のフィルタが出来れば良いのです。言うまでもなくエレクトロニクスは実用の科学です。机上でぐずぐずするより実用を目指すべきでしょう。
ずいぶん前に、セラロックを使った135kHz帯のVXOを作った事がありました。その時に使った「公称インダクタンス20mH」というコア入りコイルを巻き戻して使うことにしました。ずいぶん前の頂きものです。
何百回と細い線で巻線するのは大変ですが、解いて行く方ならずいぶん楽です。おまけにコア入りで調整もできるからおあつらえ向きのコイルに思えました。 ただ、残念なことに開磁型なので使い方に工夫を要します。 また、やってみたら中芯フェライト・コアの周波数特性が大きいようでした。使用周波数に近い所で所定のインダクタンスになるよう合わせ込む必要がありました。 最終的には一緒に使うコンデンサと組み合わせて共振周波数が所定の所に来るよう巻き数を微調整して完成させました。 なにも高級な測定器はいりません。 周波数が安定なDDS発振器などとオシロスコープくらいで十分行けるので後はやる気と根気の勝負です。 de JA9TTT/1
(注)トップバンドにオンエア予定で、実際におなじようなフィルタを作りたいお方にはLC部品供給の用意がありますので、詳細はコールサインを書いたメールをどうぞ。
(つづく)←136kHzの信号の増幅するアンプの検討にリンク
2014年2月8日土曜日
【HAM】 End of the JARL ?!
【JARLは終わりか? or 終わりにするか?】
【不愉快な手紙】
JARLこと日本アマチュア無線連盟から不愉快な手紙が来た。 同様の手紙は全国の終身会員宛に届いていることだろう。
終身会員の制度とは言うまでもないとは思うが、その手続きに従って所定の金額を前納すれば以後会費は一切免除するという「契約」である。 JARLがしようとしていることは会員に何らかの落ち度でもあれば別だが、そうでもないのに一方的に契約を反古にすると言うのだ。
選挙で選ばれたとは言え、執行部は責任を棚に上げ、何らの責めも受けることなくこんな不愉快な手紙をよくも出せたものだ。膨大な積立金を失せてしまったのは犯罪に等しいと思うが如何お考えなのだろうか?
腹立たしいと言うよりも諦めの気分である。まあ現実には台所は火の車で終身会員から託されていたお金も間もなく使い果たそうとしているわけだ。 無い袖は振れないの通り,もはやどうにもならない状況であろう。JARLと言う組織はいずれ破産して終わるのではないだろうか。少なくともいまの会員が継続できず、予定の会費収入がなければ・・・。
アマ無線を続ける以上会員としても何とかならぬか考えてみよう。要するに会員である意義をここは冷静かつ合理的に判断しようと言うわけだ。 大きな意義があるなら是非とも継続して会員でありたいと思っている。
JARLの会員であって、何かメリットがあるかと言えば最大は「カードの転送」にあるだろう。何十年も会員だが、他にこれぞと言ったメリットを感じた試しはない。 だから上記文面にもある通り、是非とも「転送会員」だけでも良いので留まって欲しい・・・と言う意向がありありと見て取れる。 要するにそれが『えさ』なのだ。 どうしてもビューロー経由でカード交換したいと思うなら「会員にとどまる方がお得ですよ」と言うのだ。 これは一理ありそうに思う。
もちろん、この3,600円に疑問がない訳ではない。 そもそも半額取っただけで最大の赤字事業のカード転送が継続して維持できるのだろうか。 必要な経費を精査した上で受益者負担の考えも採り入れて、たくさん出す人からはたくさん取ると言う公平なシステムに変更すべきだ。経費に応じて必要ならもっと取ったら良い。
しかし上記のままで行くようなので、たくさん交信をされるお方には3,600円は超お安い費用と言えるのでは無いだろうか。 特に、ネットを使い慣れないOld-HAMが多く電子化が遅れているJA局を相手にするなら転送会員であることは絶対必要だろう。
だが私はそんなにたくさんカード交換はしていない。どうしてもと言うなら郵便でも良いと思っているし、その方が手っ取り早い。 だからカード交換が目当てでの会員継続はやめようと思っている。 世の中は日々進歩していて以下に触れるような合理的な仕組みが既にスタートしているのだし。
他に、会員であるメリットは何かあるだろうか。 HAMフェアの入場料割引くらいのように思うのは私だけではあるまい。 少なくともこれから7,200円も払い続ける意味は感じない。 読むような中身の無いJARL NEWSなど送ってもらわなくて結構だ。 各種HAM関係の催し物案内はネット経由で幾らでも手に入る。 年4回の薄い冊子に何の意味があろうと言うのだろうか。少なくとも3,600円も余分に支払う価値は無いと思う。
JARLが国内で唯一のHAM組織として、お役所との交渉窓口になってきた事実を否定するつもりはない。また日本を代表し海外のHAM組織との交流窓口であったことも事実だ。 こうした組織としての意義は認めるものの、だからと言ってそれで何か目立った成果があったのかは甚だ疑問である。 お役所との関係で言えば単に上意下達の受け皿でしかなかったのではないだろうか? HF帯のバンド幅が増えたのはIARUの功績だろう。お役所の意向が強過ぎるJARLはIARUの足を引っ張って来たとさえも言われている。
【電子QSLの時代】
既に利用している人も多いと思う。 交信証・QSLカードの交換ではこのeQSL(←リンク)が最も普及しているように思う。 特にDX局の半数以上が使っているように感じる。 QSLビューローの仕組みの無い国も多いので、そうした所を中心に今後増々使われるであろう。いくつかのデザインから図柄を選ぶ「規格カード」でも良ければ利用はまったく無料である。
なお、正規の免許局である旨の保証をしてもらうのが半ば必須になっていて局免許の写しを電子的に提出する必要がある。(Authenticity Guaranteed:AGと言うもの) それによって発行したQSLカードが各種のアワードにも効力を持つようになる。 それをしなくてもカード交換は可能だがぜひ認証を受けて欲しい。写しはスマホで撮ったような写真でも大丈夫なのでここはぜひ。
オリジナルデザインのカードも数ドルのドネーションを行なうことで可能だ。自分の好きな絵や写真がアップできる。 また、相手局から発行されたカードは画像データとして自分のPCに取込んで保管したり、印刷することも可能だ。奇麗なカードをシャックに飾りたいと言う昔スタイルのHAMのニーズにも対応できる。 今やフルカラーで高画質のプリンタは普通だし、用紙を選べば非常に奇麗なカードを得ることも可能だ。もちろん交信記録も印刷される。
私も既に利用していて、これからのQSLは全て電子的な交換をお願いしようと思っている。多くのJA局が使ってくれればJARLはやめても支障はなくなる。 手続きは無料だしごく簡単にできるのでアクティブ局は是非とも利用して欲しいものだ。たまにしかオンエアしないなら一層向いている。カードが溜まるまで発送を待つと言うような「調整」も無用だ。 なお、HAM Log利用者は、少しの手間でログデータを一括してアップすることができるので交信データを一つずつインプットする面倒はない。 便利なアプリを併用すれば交信毎にeQSLの自動発行も可能になる。デジタルモードでの運用では特に便利で、実際に私もそうして使っている。 もちろん幾らたくさん交信してもカード書きや印刷など無用になる。 それに、相手局がアップしてくれればすぐに照合されてカードが届くことになる。(eQSLからメールでQSLが到着している旨の連絡が来ることもある)
HAMが全員DXerと言う訳ではないので、次のLoTWは無理にお勧めしないがeQSLは少しでもオンエアする機会があるなら使って損は無いだろう。手続きは難しくないし、部分的に日本語化もされて来ている。
【DXerならLoTWが本命か?】
身も蓋もない言い方かも知れないが、DXingの目的はとどの詰まりDXCCのアワードが欲しいからに違いない。違いますかね?(笑)
もちろん、国際親善とか世界規模のラグチューとか楽しみ方は様々だろう。 ラグチューなら毎回のカード交換はしないし、カード交換だけが国際親善と言う訳でもない。なんなら動画付きのSkypeや写真付きメールで親交を深めることも出来る。 結局「交信証:QSLカード」はアワード(DXCC)の為と言うことになろう。
DXアワードの最高峰はDXCCである。発行者のARRL(米国のアマ無線連盟)は登録認証されたHAM局の電子ログでもってQSLカードに代わる仕組みを用意している。Logbook to the World:略称LoTW(←リンク)という仕組みだ。 要するに双方の局が証明した交信なら、昔のように紙カードの交換なんか要らず、もちろんARRL宛に送らなくても良いのだ。
局免許のコピーを郵送しなくてはならないとか、ちょっと面倒ではあるがそれさえすれば済むのでDXerには既に普通になっている。 さらにLoTWは必須にさえなって来ているようで、使っていないようではDXerとして馬鹿にされる雰囲気さえもある。 JA各局も時流に乗って利用して欲しいものだ。今のところDXCCとWAS程度のようだがいずれ国際的なアワードはLoTWに連携する可能性がありそうだ。
参考・1:LoTWの具体的な手続き方法はJA各局による解説が検索でたくさん見つかる。そちらを参照して頂きたい。 但し、最新バージョンでは手続きの途中で作成される「コールサイン.tq5」と言うファイルの扱いが変更になっている。手続きしているパソコンがネットに接続されているなら、デフォルトでは自動的にアップロードされる設定だ。従って別途アップロードする必要は無くなっている。 もしも自動アップロードを選択しなかった場合に限りパソコン上に「コールサイン.tq5」と言うファイルが作られるので、そのファイルをLoTWのWebからアップロードするか、指定アドレスにメール添付で送る必要がある。なるべくデフォルトのまま行く方が良いと思う。詳しくはCドライブ:Program Filesの中にあるTrusted QSLフォルダ内の「quick.txt」に書いてある。(Trusted QSLフォルダはインストール時に作成される) 事情は逐次変わっているようなので、できるだけ最新の情報を参照されたい。
もちろん JARLなんか一切関係ないからここでもJARL会員でいる必然性は失せている。 だいたいDX局のカードが届くまでに1年も待つようではこのスピード時代に不合理すぎる。 著名なDXぺディでもeQSLやLoTWなら一週間以内に交信証明されることが多くなっている。 要するにそう言う時代である。だから「カード転送会員」のエサで会員を引き止めたいと言うJARLの思惑など、まったく時代錯誤になっているのではないですか?・・・と言うお話である。そう言う発想しかできないJARLは本当に「終わっている」。 もうJARL会員は終わりにしようか? あなたは?
#それぞれのお立場により、異なった見解があって当然だ。電子QSLやLoTWにデータ消失の不安も感じるだろうし、JARLの有り様についても考えは様々だ。そうした意見も歓迎だ。皆さんがどう考えているのか知りたいところだ。
☆
このようなわけでJARL会員である必然性は殆ど無くなったように思っている。 一部の国内局はJARLでのカード交換しかしていないように思うが、それならNO-QSLでも結構だ。 どうしても必要なら「JP経由のダイレクト」にても交換はできる。 むしろ、ここは一つeQSLに登録してもらい郵便代の節約もお願いしたいものである。 消費税アップで切手も上がると言うから尚更だ。 これからの交信の決まり文句は「カードはJARLビューロー」ではなくて「カードはeQSLで」となって欲しい。 私は率先してそう言いたい。PSE UR QSL VIA EQSL ES LOTW. NOT VIA JARL. de JA9TTT/1
参考・2:昨年・2013年のQSQパーティのカードからそれ以降は全て交信記録をeQSLにアップしてある。(現在のeQSL発行状況は右のプロフィール欄に記載してあります) 移行期間として順次紙のQSLカードも発行はしているが、お急ぎのお方はeQSLの方もご確認を。 これから新規にeQSLを始めても記録が一致するなら過去の交信でもカードは届く。ご安心を。(貴局が交信データをアップした時に照合される)
参考・3:現状ではJA各局のe-QSL利用率が低いので更に一年以上JARL会員を継続します。紙のカードも継続して発行しますが、早めのe-QSLの利用もご検討を。取りあえず2015年(平成27年)4月6日まではJARL経由でカード交換できるようにしておいた。その後は今のところ未定である。==>その後、さらにQSLカード転送会員を継続している。現状では、2023年(令和5年)4月6日まで会員なので引き続きビューロー経由による紙のカードでのQSL交換も可能だ。(2022.04.12追記)
参考・4:2014年2月の理事会で決まったらしいが、6月30日までに7,200円払った人は12ヶ月にプラス3ヶ月して、15ヶ月間会員にしてくれるそうだ。さらにオリジナルQSLカードも100枚くれると言う。(詳細はJARLのサイトで確認を) これは想像なのだが予想以上に7,200円払ってくれる人が少なかったのかもしれない。 会費の本質はそう言う話しでは済まないように思うのだが、他に継続を促す良いアイディアはなかったのでしょう。
(おわり)
【不愉快な手紙】
JARLこと日本アマチュア無線連盟から不愉快な手紙が来た。 同様の手紙は全国の終身会員宛に届いていることだろう。
終身会員の制度とは言うまでもないとは思うが、その手続きに従って所定の金額を前納すれば以後会費は一切免除するという「契約」である。 JARLがしようとしていることは会員に何らかの落ち度でもあれば別だが、そうでもないのに一方的に契約を反古にすると言うのだ。
選挙で選ばれたとは言え、執行部は責任を棚に上げ、何らの責めも受けることなくこんな不愉快な手紙をよくも出せたものだ。膨大な積立金を失せてしまったのは犯罪に等しいと思うが如何お考えなのだろうか?
腹立たしいと言うよりも諦めの気分である。まあ現実には台所は火の車で終身会員から託されていたお金も間もなく使い果たそうとしているわけだ。 無い袖は振れないの通り,もはやどうにもならない状況であろう。JARLと言う組織はいずれ破産して終わるのではないだろうか。少なくともいまの会員が継続できず、予定の会費収入がなければ・・・。
アマ無線を続ける以上会員としても何とかならぬか考えてみよう。要するに会員である意義をここは冷静かつ合理的に判断しようと言うわけだ。 大きな意義があるなら是非とも継続して会員でありたいと思っている。
JARLの会員であって、何かメリットがあるかと言えば最大は「カードの転送」にあるだろう。何十年も会員だが、他にこれぞと言ったメリットを感じた試しはない。 だから上記文面にもある通り、是非とも「転送会員」だけでも良いので留まって欲しい・・・と言う意向がありありと見て取れる。 要するにそれが『えさ』なのだ。 どうしてもビューロー経由でカード交換したいと思うなら「会員にとどまる方がお得ですよ」と言うのだ。 これは一理ありそうに思う。
もちろん、この3,600円に疑問がない訳ではない。 そもそも半額取っただけで最大の赤字事業のカード転送が継続して維持できるのだろうか。 必要な経費を精査した上で受益者負担の考えも採り入れて、たくさん出す人からはたくさん取ると言う公平なシステムに変更すべきだ。経費に応じて必要ならもっと取ったら良い。
しかし上記のままで行くようなので、たくさん交信をされるお方には3,600円は超お安い費用と言えるのでは無いだろうか。 特に、ネットを使い慣れないOld-HAMが多く電子化が遅れているJA局を相手にするなら転送会員であることは絶対必要だろう。
だが私はそんなにたくさんカード交換はしていない。どうしてもと言うなら郵便でも良いと思っているし、その方が手っ取り早い。 だからカード交換が目当てでの会員継続はやめようと思っている。 世の中は日々進歩していて以下に触れるような合理的な仕組みが既にスタートしているのだし。
他に、会員であるメリットは何かあるだろうか。 HAMフェアの入場料割引くらいのように思うのは私だけではあるまい。 少なくともこれから7,200円も払い続ける意味は感じない。 読むような中身の無いJARL NEWSなど送ってもらわなくて結構だ。 各種HAM関係の催し物案内はネット経由で幾らでも手に入る。 年4回の薄い冊子に何の意味があろうと言うのだろうか。少なくとも3,600円も余分に支払う価値は無いと思う。
JARLが国内で唯一のHAM組織として、お役所との交渉窓口になってきた事実を否定するつもりはない。また日本を代表し海外のHAM組織との交流窓口であったことも事実だ。 こうした組織としての意義は認めるものの、だからと言ってそれで何か目立った成果があったのかは甚だ疑問である。 お役所との関係で言えば単に上意下達の受け皿でしかなかったのではないだろうか? HF帯のバンド幅が増えたのはIARUの功績だろう。お役所の意向が強過ぎるJARLはIARUの足を引っ張って来たとさえも言われている。
【電子QSLの時代】
既に利用している人も多いと思う。 交信証・QSLカードの交換ではこのeQSL(←リンク)が最も普及しているように思う。 特にDX局の半数以上が使っているように感じる。 QSLビューローの仕組みの無い国も多いので、そうした所を中心に今後増々使われるであろう。いくつかのデザインから図柄を選ぶ「規格カード」でも良ければ利用はまったく無料である。
なお、正規の免許局である旨の保証をしてもらうのが半ば必須になっていて局免許の写しを電子的に提出する必要がある。(Authenticity Guaranteed:AGと言うもの) それによって発行したQSLカードが各種のアワードにも効力を持つようになる。 それをしなくてもカード交換は可能だがぜひ認証を受けて欲しい。写しはスマホで撮ったような写真でも大丈夫なのでここはぜひ。
オリジナルデザインのカードも数ドルのドネーションを行なうことで可能だ。自分の好きな絵や写真がアップできる。 また、相手局から発行されたカードは画像データとして自分のPCに取込んで保管したり、印刷することも可能だ。奇麗なカードをシャックに飾りたいと言う昔スタイルのHAMのニーズにも対応できる。 今やフルカラーで高画質のプリンタは普通だし、用紙を選べば非常に奇麗なカードを得ることも可能だ。もちろん交信記録も印刷される。
私も既に利用していて、これからのQSLは全て電子的な交換をお願いしようと思っている。多くのJA局が使ってくれればJARLはやめても支障はなくなる。 手続きは無料だしごく簡単にできるのでアクティブ局は是非とも利用して欲しいものだ。たまにしかオンエアしないなら一層向いている。カードが溜まるまで発送を待つと言うような「調整」も無用だ。 なお、HAM Log利用者は、少しの手間でログデータを一括してアップすることができるので交信データを一つずつインプットする面倒はない。 便利なアプリを併用すれば交信毎にeQSLの自動発行も可能になる。デジタルモードでの運用では特に便利で、実際に私もそうして使っている。 もちろん幾らたくさん交信してもカード書きや印刷など無用になる。 それに、相手局がアップしてくれればすぐに照合されてカードが届くことになる。(eQSLからメールでQSLが到着している旨の連絡が来ることもある)
HAMが全員DXerと言う訳ではないので、次のLoTWは無理にお勧めしないがeQSLは少しでもオンエアする機会があるなら使って損は無いだろう。手続きは難しくないし、部分的に日本語化もされて来ている。
【DXerならLoTWが本命か?】
身も蓋もない言い方かも知れないが、DXingの目的はとどの詰まりDXCCのアワードが欲しいからに違いない。違いますかね?(笑)
もちろん、国際親善とか世界規模のラグチューとか楽しみ方は様々だろう。 ラグチューなら毎回のカード交換はしないし、カード交換だけが国際親善と言う訳でもない。なんなら動画付きのSkypeや写真付きメールで親交を深めることも出来る。 結局「交信証:QSLカード」はアワード(DXCC)の為と言うことになろう。
DXアワードの最高峰はDXCCである。発行者のARRL(米国のアマ無線連盟)は登録認証されたHAM局の電子ログでもってQSLカードに代わる仕組みを用意している。Logbook to the World:略称LoTW(←リンク)という仕組みだ。 要するに双方の局が証明した交信なら、昔のように紙カードの交換なんか要らず、もちろんARRL宛に送らなくても良いのだ。
局免許のコピーを郵送しなくてはならないとか、ちょっと面倒ではあるがそれさえすれば済むのでDXerには既に普通になっている。 さらにLoTWは必須にさえなって来ているようで、使っていないようではDXerとして馬鹿にされる雰囲気さえもある。 JA各局も時流に乗って利用して欲しいものだ。今のところDXCCとWAS程度のようだがいずれ国際的なアワードはLoTWに連携する可能性がありそうだ。
参考・1:LoTWの具体的な手続き方法はJA各局による解説が検索でたくさん見つかる。そちらを参照して頂きたい。 但し、最新バージョンでは手続きの途中で作成される「コールサイン.tq5」と言うファイルの扱いが変更になっている。手続きしているパソコンがネットに接続されているなら、デフォルトでは自動的にアップロードされる設定だ。従って別途アップロードする必要は無くなっている。 もしも自動アップロードを選択しなかった場合に限りパソコン上に「コールサイン.tq5」と言うファイルが作られるので、そのファイルをLoTWのWebからアップロードするか、指定アドレスにメール添付で送る必要がある。なるべくデフォルトのまま行く方が良いと思う。詳しくはCドライブ:Program Filesの中にあるTrusted QSLフォルダ内の「quick.txt」に書いてある。(Trusted QSLフォルダはインストール時に作成される) 事情は逐次変わっているようなので、できるだけ最新の情報を参照されたい。
もちろん JARLなんか一切関係ないからここでもJARL会員でいる必然性は失せている。 だいたいDX局のカードが届くまでに1年も待つようではこのスピード時代に不合理すぎる。 著名なDXぺディでもeQSLやLoTWなら一週間以内に交信証明されることが多くなっている。 要するにそう言う時代である。だから「カード転送会員」のエサで会員を引き止めたいと言うJARLの思惑など、まったく時代錯誤になっているのではないですか?・・・と言うお話である。そう言う発想しかできないJARLは本当に「終わっている」。 もうJARL会員は終わりにしようか? あなたは?
#それぞれのお立場により、異なった見解があって当然だ。電子QSLやLoTWにデータ消失の不安も感じるだろうし、JARLの有り様についても考えは様々だ。そうした意見も歓迎だ。皆さんがどう考えているのか知りたいところだ。
☆
このようなわけでJARL会員である必然性は殆ど無くなったように思っている。 一部の国内局はJARLでのカード交換しかしていないように思うが、それならNO-QSLでも結構だ。 どうしても必要なら「JP経由のダイレクト」にても交換はできる。 むしろ、ここは一つeQSLに登録してもらい郵便代の節約もお願いしたいものである。 消費税アップで切手も上がると言うから尚更だ。 これからの交信の決まり文句は「カードはJARLビューロー」ではなくて「カードはeQSLで」となって欲しい。 私は率先してそう言いたい。PSE UR QSL VIA EQSL ES LOTW. NOT VIA JARL. de JA9TTT/1
参考・2:昨年・2013年のQSQパーティのカードからそれ以降は全て交信記録をeQSLにアップしてある。(現在のeQSL発行状況は右のプロフィール欄に記載してあります) 移行期間として順次紙のQSLカードも発行はしているが、お急ぎのお方はeQSLの方もご確認を。 これから新規にeQSLを始めても記録が一致するなら過去の交信でもカードは届く。ご安心を。(貴局が交信データをアップした時に照合される)
参考・3:現状ではJA各局のe-QSL利用率が低いので更に一年以上JARL会員を継続します。紙のカードも継続して発行しますが、早めのe-QSLの利用もご検討を。取りあえず2015年(平成27年)4月6日まではJARL経由でカード交換できるようにしておいた。その後は今のところ未定である。==>その後、さらにQSLカード転送会員を継続している。現状では、2023年(令和5年)4月6日まで会員なので引き続きビューロー経由による紙のカードでのQSL交換も可能だ。(2022.04.12追記)
参考・4:2014年2月の理事会で決まったらしいが、6月30日までに7,200円払った人は12ヶ月にプラス3ヶ月して、15ヶ月間会員にしてくれるそうだ。さらにオリジナルQSLカードも100枚くれると言う。(詳細はJARLのサイトで確認を) これは想像なのだが予想以上に7,200円払ってくれる人が少なかったのかもしれない。 会費の本質はそう言う話しでは済まないように思うのだが、他に継続を促す良いアイディアはなかったのでしょう。
(おわり)
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