2022年5月1日日曜日
Intermediate Frequency Amplifiers (1)
【中間周波増幅なんて簡単?】
受信機の構成要素を味わいながら進めている「私だけの受信機設計」も回を重ね第5回になりました。今回は中間周波増幅器(IF-Amp.)を特集しその関連で少しだけAGC回路(自動利得制御回路)にも触れます。(参考:前回は(リンク→)プロダクト検波を扱いました)
かつての真空管時代にあって中間周波増幅器は意外に画一的だったように思うのです。もちろん増幅段数の違いや増幅系統を分けると言った工夫も高級受信機では試みられていました。
しかし電子デバイスを見ると「可変増幅率真空管」一本やりのように感じるのです。あまりバラエティがありません。それだけ優れた特性の球だったのですね。写真に「可変増幅率真空管:バリミュー管」を集めてみました。バリミュー管自体は古くからありましたがスーパ・ヘテロダイン形式のラジオが標準になると中間周波増幅器に使うのが常識化したようです。これは家庭用ラジオを扱い易すくするためにはAGC/AVCが必要だったからです。
6D6と6BD6はラジオ受信機の定番球でした。6AB7/1853と6EH7は受像機の映像中間周波増幅のために作られた一段と高性能なバリミュー管です。
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通信型受信機にあって中間周波増幅器はゲインの多くを受け持ちます。おおよそ半分くらいはここで稼いでいるでしょう。これは真空管式に限らず半導体式でも同じ傾向にあります。 しかしながら真空管と半導体では動作電圧が違いますし回路インピーダンスも異なっています。従って徐々に独特の回路へと進化して行きます。ここではそうした変遷について回路の特徴を見つめながら追いかけたいと思います。
例によって自家製受信機の製作にいたる単なる雑談ですから「アナログな受信機」にぜんぜん興味のないお方はスルーでよろしく。(笑)
◎ 受信機にまつわる感想とか思い出はコメントでどうぞ。
【中間周波増幅器は感度の源泉】
図はシングルスーパのブロック図です。登場は3度目ですね。
今回は中間周波増幅器:IF-Amp.を扱います。 図ではIFT三つと2球あるいはIFT二つと単球の構成でサラリと書いてあります。 言うまでもなくこのような球式受信機の感度(増幅度)と選択度を決める重要部分です。
AM/CW時代の球式受信機は平均値AGCであっさりと済まされています。AM受信はAGC/AVCで受信し、CWでは手動でスムースにゲイン調整できるならAGCなしでも済むからです。バリミュー管の特性はAVCにも手動ゲイン調整にも最適でした。 やがてSSBが登場します。SSBでは勿論ですがCWに於いてもバッチリAGCを効かせるのが常識的になって大きく変わったのはAGC回路でしょう。そこは左のブロック図にはありませんけれど・・・。
【高1中2・通信型受信機】
左図はトリオが1970年代まで販売していた通信型受信機製作用のコイルパック:KR-42Cの取扱説明書から引用しました。
回路としては同社の通信型受信機:9R42Jに類似でしょう。 ご覧の回路のように真空管の全盛期においてIF-Amp.部分はかなり定型化していました。
IF-Amp.用に作られたバリミュー管の性能が素晴らしかったのでそれに全面的に依存してしまったからかも知れません。特に6D6、6SK7、6BD6のリモートカットオフ特性は素晴らしいものです。 SSB以前のAM時代の受信機としては単純なAGC回路(AVC回路)でもスムースな利得制御特性が得られたからです。そしてCWの受信ではAVC=OFFとして手動ゲインコントロールで受信するのが一般的でした。回路を見ればわかりますが、BFOをONしたらBFOによってAGCが掛かって感度が抑圧されてしまいますからね。 必然的に手動ゲインコントロールになる訳です。 この時代の受信機では最初の写真のような真空管が主役となって活躍しました。
#残念かも知れませんが真空管式受信機はさしあたってのテーマではありません。将来はわかりませんがとりあえず程々でやめておきましょう。もしも未練があるなら自身で研究されてください。趣味の世界ですからどんなデバイスを使おうと不合理と言うものはありません。自由・気ままに楽しむに限ります。
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【中間周波増幅器のトランジスタ】
写真は中間周波増幅に(にも)使うトランジスタです。
ゲルマニウム・トランジスタの時代にはIF-Amp.用のトランジスタがたくさん存在しました。高周波全般に使えるような周波数特性の良いトランジスタを作るのは難しかったからです。
低周波用より幾らかトランジション周波数:fTが高いだけのIF-Amp.用にも存在意義がありました。このころのIF周波数と言えば455kHzが常識でした。 今ではゲルトラは趣味人のデバイスと化しています。使えない訳じゃありませんが具体的な回路の検討は省略しました。しかしシリコンのTrと大差なく使えるはずです。(ゲルトラは機会があればまたいつか)
シリコンの時代になってからもIF-Amp.用のトランジスタは僅かに存在します。 ただ、実際に使ってみても汎用トランジスタとの違いは感じられませんね。従って汎用のシリコントランジスタ(汎用・はんよう=特に用途は定めず様々な回路に使えるトランジスタ)で十分なわけです。写真の2SC183や2SC372はそうした初期の汎用トランジスタです。今でも手軽に使っている2SC1815は代表的な汎用のトランジスタです。
そのシリコン・トランジスタ(Si-Tr)にあって特徴的なのはフォワードAGC用のトランジスタでしょう。写真の2SC1855はその一つです。主にTV受像機の高周波及び映像中間周波増幅に使われたトランジスタです。 強力な信号の受信時に強いAGCを掛けてゲインを絞ると増幅器の性能が低下することがあります。 人間の目は耳以上にシビアに違いがわかってしまうためTV受像機では送信アンテナに近い強電界地域における画質劣化が問題になったのです。詳しくは後ほど触れますが対策用の増幅素子として登場した特殊な特性のトランジスタです。(参考:そのかわり普通の増幅回路には向きません)
デュアルゲートMOS-FET(DG-MOS-FET)は5極管と良く似た特性を持っています。 以前のBlog「2ゲートMOS-FET RFアンプ」(←リンク)で高周波増幅での基本的な使い方を紹介しました。写真の3SK51はそのFETの一つです。 入力インピーダンスが高いと言った特性から真空管時代の回路技術を生かしやすい特徴がありました。 ただしシャープカットオフ特性ですからAGCの効きかたはバリミュー管のようには行きません。HAM用の無線機でも真空管から半導体への過渡期によく使われた半導体デバイスです。そして真空管のことなどよくは知らなくても、高周波用デバイスとして使いやすいため現在でも使われ続けています。
【6石スーパのIF-Amp】
トランジスタ式受信機の原点といえば6石スーパです。トランジスタを6つ使った実用的なトランジスタラジオでした。
真空管式のラジオでいえば5球スーパに相当します。5球スーパではIF-Amp.は1段だけの増幅でした。トランジスタの場合、1段増幅では必要十分なゲインが得難いことと入出力インピーダンスの関係から必要とされる選択度も得られません。そのため図のような2段増幅回路がトランジスタラジオの標準回路になりました。
図の回路は「シリコントランジスタ活用辞典」(CQ出版社1969年:時田元明 著)から引用しました。 減電圧対策のためにバリスタダイオードを使って工夫された回路になっています。乾電池の消耗に備えた工夫です。それ以外はごく標準的なラジオの中間周波増幅器です。2段増幅で50〜60dBのゲインを得ています。 ごく一般的な平均値型のリバースAGC回路になっており、残念ながらあまり良くは効きません。 しかしAMラジオは近隣の放送局を受信して楽しむものです。信号強度が大幅に異なる放送局を聞くことは殆ど無いはずですから程々のAGCでも実用になるのです。 夜間になって聞こえてくる遠距離局の受信が難しいのは止むを得ないでしょう。
60dBくらいのゲインがあれば通信型受信機にもまずまず使えます。但しAGC特性は物足りません。ダイオード検波したあとDCアンプなど補えばマシにはなりますがHAM用の受信機には不満が残るでしょう。 こうしたラジオの定番回路は平凡すぎるかもしれませんが動作は確実で安定しているため自作受信機でも十分参考になります。半導体を使った基本的な回路として真っ先に採り上げました。
【BJTだって意外に使えます】
自作HAMにはおなじみのJA1AYO丹羽さんは初心者向けから高級な記事まで幅広く執筆されています。図は「模型とラジオ誌('84年廃刊)」に連載された製作記事からの引用です。(1979年12月号)
どのようなコンセプトの連載記事だったのかは調べていませんが、雑誌の性格からオーソドックスな回路と入手容易な部品を使った初心者向けの通信型受信機製作記事なのでしょう。2SC372と言った当時入手容易で安価な普通のトランジスタ(BJT)だけで構成されています。今でしたら2SC1815や2SC2458が相当品です。
左図の回路での注意点ですが、段間に使っている東光製の簡易型メカフィル:MFH-50Kはずいぶん前に廃番になっています。古いメカフィルは劣化が心配なので中古品も敬遠した方が良さそうです。
MFH-50Kの代替品として秋月電子通商が売り始めた中華セラフィルとIFTの組み合わせが良いです。もっとも選択度の良いLTM-455IWを使うと9R-59D並みの選択度になります。SSB/CW用としては選択度不足ですが、まずまず使い物になります。なお、中間周波フィルタについては改めて扱うつもりです。
トランジスタを使ったAM検波器とそれに兼ねた増幅型AGC回路になっています。珍しい回路ですが上記の6石ラジオよりも効きの良いAGCが実現されていると想像できます。AGCの時定数切り換えも付いてます。SメータはAGCで制御されるIF初段トランジスタのエミッタ電圧の変化を読みます。無信号時にゼロ点のバランスをとっておき、信号が強くなるとAGCが掛かってエミッタ電圧が下がり指針が振れます。メーターは100〜200μAフルスケールの感度の良いものが適当でしょう。たぶんON/OFF的なメータの振れ方だと思います。
あまりAGCの効き方に拘らず安価に実用品をまとめるには良い回路のように感じました。 受信機なんて必要十分に聞こえさえすれば良いのであって安くて手軽なデバイスで実現可能ならそれで十分という考えもアリですね。
【珍しいAGCのIFアンプ】
図はFETとシリコントランジスタを使って本格的な通信型受信機を製作すると言う記事から引用しました。「トランジスタ活用ハンドブック」からで、こちらもJA1AYO丹羽さんの執筆です。
既にお気づきかもしれませんが、IF-Amp.とAGC(自動利得制御)は不可分です。決まっただけ増幅するだけの回路(固定ゲインのアンプ)なら簡単ですが、増幅度が変化する(変化できる)可変利得の機能を持たせると課題が増えるのです。
図の回路は増幅器のエミッタ抵抗のバイパスコンデンサの効きかたを変えて可変利得を実現しようとするものです。 各トランジスタのエミッタに入った抵抗器(2kΩ)のバイパスコンデンサを取ってしまうと電流負帰還が掛かります。その結果アンプのゲインは大幅に低下します。このバイパスコンデンサの効き方を加減してやれば可変利得が実現できます。その加減にはダイオードの等価抵抗が順方向電流によって変化する特性を利用しています。
原理は教科書にも載っていますから奇妙な回路というわけではありません。しかし、原理図ならともかく実際に採用したIF-Amp.回路はこれ以外に見たことがなく、初めて見たときは半信半疑で眺めたことを思い出します。これで十分なAGCの機能・性能が得られるのか疑問に感じたわけです。 執筆時期が古いらしく、結果を示すグラフはAM波が対象なので効果(性能)が判りにくいです。それが懐疑的に見えた理由かもしれません。ただ、こうした方法で必要なだけのゲインが得られコントロールも可能なら再評価してみたいと思いました。
ー・・・ー
以上見てきたように、ごく普通のトランジスタを使ったIF-Amp.はAGCを考慮すると性能的に苦しいと思います。ゲインコントロールの範囲を広くするために増幅段数を増やすといったAGCに対応した設計が必要です。 しかし使うトランジスタはあまり増やしたくはないし・・・。ならば別のデバイスを使えば良いわけですが、入手容易な部品だけで実現できる回路には何となく魅力を感じてしまうのです。hi
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【フォワードAGCのIF-Amp・1】
図はCQ出版社:HAM Journal誌No.46からの引用(JF1DMQ、JH1XTG、JH1GNUの3名のOM共著記事でpp93〜pp103)です。 高性能受信機の開発というより、それ以前の実験が目的かもしれませんがたいへん力のこもった記事でした。 なお、以下の説明は私自身の記述であり記事の要約ではないことに注意してください。
普通のトランジスタの場合、コレクタ電流を下げて(小さくして)行くと利得(ゲイン)は下がります。6石ラジオのIF-Amp.でAGC回路に使われる方法です。結果として入力信号が大きくなるとコレクタ電流は減少する方向になるのでリーバース(逆方向)AGCと呼ばれます。 真空管のIF-Amp.でも同様です。グリッド電圧を下げ、プレート電流を絞りgmを下げてゲインを低下させるわけです。同じくリバースAGCです。
トランジスタ回路の場合、リバースAGC形式でゲインを絞るとそのアンプはとても飽和しやすくなります。FETを使ったとしても同じです。 これは当たり前で、ロクに電流も与えない(流さない)状態の回路が大きな信号を歪みなく扱えるはずはありません。真空管と違い電源電圧が低いのもたいへん不利です。そのためIF-Amp.は入力信号が大きくなってAGCが掛かるほど歪み易くなってしまいます。(こうした方法でゲイン制御してはいけないことは近代設計の受信機では常識ですがここでは踏み込みません)
トランジスタのコレクタ電流とゲインの関係を調べると、コレクタ電流を大きくする方向でも利得の低下が起こります。これはコレクタ電流が大きくなるとhFEが下がる特性があるためです。同時にトランジション周波数:fTも減少傾向になります。しかし普通のトランジスタの場合、壊れるくらいたくさんの電流を流さないと利得は目立った低下をしてくれません。近代的なトランジスタはそのような(優れた)特性になるよう作っているのですから当たり前の話です。
フォワードAGC用トランジスタは、壊れるほどコレクタ電流を流さなくても十分に利得が低下するように作られた特殊なトランジスタです。普通のトランジスタでは欠点となるような特性を持たせてあります。コレクタ電流を増やすとすぐにhFEが低下するような特性です。同時にトランジション周波数:fTも激減するのは特徴的です。そのためコレクタ電流がある大きさを超えると劇的なゲイン低下が起こります。実際にフォワードAGC用トランジスタ:2SC1855のfTを実測して評価したことがあるのでリンク(→トランジスタのfTを実測する)を辿ってください。 グラフをみるとIc=5mAではfT>450MHzだったのにIc=20mAでは1MHzを割るほどの激減です。それでIcがちょっと増えただけで物凄く高周波の増幅性能が悪くなるのです。 普通のトランジスタではこんなことはあり得ないことです。 そしてAGCとしては大きな信号の時にコレクタ電流を増やす方向なのでむしろ歪みにくくなって有利な訳です。
フォワードAGC用トランジスタの「ゲイン対コレクタ電流の特性」に着目して設計したのが図のIF-Amp.です。コレクタ電流を直接制御することに拘った設計のように感じます。各トランジスタ(2SC1855)のエミッタ側に可変型の電流源回路を構成しています。その電流源を電圧制御して広範囲なAGC特性を得ようと目論んでいます。 回路図の引用程度では説明し切れませんから詳細は原著をご覧になるのをお薦めします。HJ誌は雑誌ですから一定期間で処分されてしまうためローカルな図書館にはないかも知れません。出版社のコピーサービスが利用できるでしょう。大塚駅前のJARL資料室にもアーカイブがあったと思います。
図の回路ですが、凄く考えられた入念な設計になってます。ですが複雑すぎて私には手に余まりそうです。試すほどの気力が湧かないのも残念です。できたらもっとシンプルな設計で済ませたいなあ・・・と思うのです。(笑)
【フォワードAGCのIF-Amp・2】
これもHJ誌からの引用(1989年 No.59:pp25〜pp45:佐藤洋 著)です。同じ2SC1855を使っていますが、ずっとシンプルな回路になっています。
通信型受信機の製作記事ではありません。スペアナの製作記事なのですが、IF-Amp.としての機能は類似しています。記事ではスペアナにLog表示させるためにフォワードAGC用トランジスタの特性を利用しています。 しかし目的は違っても受信機のIF-Amp.の要件にマッチしていますので十分参考になります。 もちろんAGCの効かせ方は受信機とスペアナではかなり違うため設計を変えなくてはなりません。主に時定数の持たせ方を変えれば良いのであって、IF-Amp.の利得制御の機能はそのままで良いと思います。
同じ2SC1855を使った回路でもずいぶん簡潔です。これくらいなら製作意欲も湧きそうです。私向きかもしれません。(笑) 得られた性能を見ても十分すぎるくらいです。何しろ測定器に使おうというくらいなのですから。 どうやら複雑な回路でなくても実用的なIF-Amp.は実現できると思って良いでしょう。 フォワードAGC形式のIF-Amp.に挑戦するのには向いていると感じました。
フォワードAGCでやれば強入力でも歪みにくい高性能なIF-Amp.が完成しそうですが弱点を忘れてはいけません。コレクタ電流の増加でhFEやトランジション周波数:fTが急減するという特性を利用してゲインを制御しています。従ってIF-Amp.の周波数はある程度高くないと旨く行きません。
具体的には数MHz(5MHzくらい?)以上の「ハイフレIF」で使うべきです。455kHzでは低すぎてトランジスタの特徴を活かすには適当でないでしょう。フォワードAGC用トランジスタと言えども危ないくらい電流を流さないと十分に利得は下がってきません。トランジスタひとつあたり最大で30mAくらい流す必要があって、これはIF-Amp.としては明らかにやりすぎです。コレクタ電圧を下げなければ許容Pcをオーバーしそうです。やってみるのは自由でしょうが、合理性を欠いた無茶な使い方はちょっと恥ずかしいかも知れませんね。 せっかくチャレンジするなら数MHzのIF-Amp.に採用してみたいと思います。
◎ 参考までに、米軍野戦用トランシーバ:PRC-74BにはAGC機能はついていませんがフォワードAGC用トランジスタを使ってスムースで広範囲な(手動による)ゲインの可変を実現しています。IF周波数=1.75MHzです。このくらいの周波数でもなかなかうまく動作しています。簡単な内容ですが興味があればリンク先(→ハイレベルDi-DBM・Part 1)に紹介があります。
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【DG-MOS FETのIF-Amp】
デュアル・ゲートMOS-FET(DG-MOS-FET)を使ったIF-Amp.を見ておきます。これはCQ誌1980年11月号pp287:JA1AYO丹羽さんの記事から引用した回路です。
熊本Cityスタンダード(←参考リンク)からの影響でしょうか?アマチュアの自作品では2ゲートMOSを使ったIF-Ampもポピュラーでした。もっとも、TRIO/KENWOODのトランシーバでは主役として使われていましたので、その当時のスタンダードデバイスだった感があります。
この回路は、後ほど触れるICを使ったIF-Amp.の代用として提案されたものです。ICを使ったIF-Amp.は「そのIC」がディスコン(Discontinue:継続しないの意で製造中止を意味する)になったらもう作れません。
本来ならIF-Amp.専用のICを使った方が高性能ですが無い袖は振れないので代替で対策されたようです。機能は類似にできますが残念ながらICを使ったIF-Amp.のようなAGCの性能は望めません
これはこれで部品の入手が容易なのが取り柄であり普遍性があって悪くない回路だと思っています。今は以前にも増して部品事情は悪くなっていますからね。
この回路で作ってみるなら上の参考リンク先で紹介している「BF998」と言うヨーロッパ系のDG-MOS-FETを使うのが良いです。3SK59と同等以上の性能が得られるうえ通販で安価に入手できます。
【MIZUHO SG-9】
上の回路ではミズホ通信機のSB-21を参考にされたとあります。SB-21の回路図は見つからなかったのですがSG-9の回路図を見つけました。
少々複雑ですがSG-9はSSBの送受信ユニットですから送信の回路も含まれています。IF-Amp.について見るとDG-MOS-FETを使った回路になっています。JA1AYOの回路と比べるとAGCの掛け方に違いがあります。前項の回路では第2ゲートのバイアス電圧を制御してAGCを掛けています。しかもトランジスタを使った増幅型AGCになっています。 SG-9の回路はIF-Amp.が3段構成であり第1ゲートの方にAGCを掛けています。第1ゲートに掛けた方がAGCの効きが良いため単純な回路になっているのでしょう。アンプは3段ですからゲインも十分です。
SSBの復調と送信時の変調兼用でDBM-ICのSN76514Nを使っています。SSB復調器にもゲインがあって全体的にかなりハイゲインな設計のようです。シングルスーパ構成でトランシーバを構成しようとするとゲイン不足に陥ることがあります。そうした懸念がないようタップリ増幅する設計のようですね。JA1AMH高田さん(故人)のポリシーがあるのだと思います。
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【IF-Ampに使われたIC】
IC(集積回路)を使う目的な何でしょうか? 民生品用として開発された初期の説明では「小型化」が最重要視されていたように記憶します。例えば補聴器や超小型マイクロラジオのようなアプリケーションでした。
しかしICがごく普通に使われ始めると主な目的はそこではなかったことが明らかになります。本質は「回路の再現性確保」にあったと思うのです。 ICの採用は誰が作っても同じ性能が得られる回路の実現に効果的だったからです。
あまりIF-Amp.と関係のない話になってしまいました。話を戻しましょう。
見てきたようにIF-Amp.はディスクリート(個別の)半導体でも構成は可能です。しかしICを使うと均質な性能が実現しやすいのも事実です。そのため徐々にICを使ったIF-Amp.も増えて行きました。 自作を扱う雑誌記事では均質な性能の実現は常に存在するテーマです。いくら魅力的な能書きが並んでいても筆者と同じ性能や機能が得られなければ記事の意義が問われてしまいますからね。ですからIC化で一定水準の性能が得られ易いならとても有り難いお話しです。
これはメーカー機の量産でも同じ事情でしょう。ICを採用したRigも少しずつ登場しました。 写真はIF-Amp.に使われるICのほんの一例です。 ここでは触れませんがAD603ARは特にIF-Amp.に向いた高性能なICです。その素性についてはBlogで投稿済みです。少々使うのは難しいのですが、興味があればリンク(→ここ)で辿ってください。
【八重洲FR-101のIF-Amp.】
日本のアマチュア無線機器で逸早くICが使われたのはFT-101だったと思います。 いや、Frontier ElectricのSuper 600GTBだよって仰るお方もあるかも知れません。まあどちらも大差ない時期に登場したRigでした。使われていたのは中間周波増幅器(IF-Amp.)と低周波部です。
FT-101の場合、ICを使う意義はそれほど大きくはなかったように感じます。幾らか小型化には寄与したかも知れませんが他の部分がそのままでは大きな効果はなかったでしょう。コマーシャル的な意味だったのかも知れません。 しかし同じ回路はアマチュアに真似られてけっこう流行ったように思います。
CA3053/CA3028A/TA7045Mはトランジスタ3つ抵抗器3本のシンプルな中身のICです。これら3種のICは同等品です。上の写真にあるLM3028Hもナショセミ製のセカンドソースです。 差動増幅回路が基本ですが、カスコード接続のアンプとしても使えます。FT-101では後者のような回路で使われておりAGCが掛けやすかったのが特徴でしょう。HF帯のIF-Amp.の場合、出力側からの帰還があるとAGCの制御範囲が狭くなってしまいます。カスコードアンプなら帰還は少ないため好都合です。もちろん「中和」など必要ありません。しかもICですから再現性が良く回路そのものをコンパクトに作れるのも有利です。
FT-101ではCA3053を一つだけ使っていて不足分のゲインはトランジスタのアンプで補っていました。高級通信型受信機のFR-101はIF回路のプリント基板にゆとりがあったので2つ使ったのではないでしょうか。もちろん掛けられる部品コストにも余裕があったのでしょう。 お陰でゲインに余裕ができAGCの効きも良くなっています。 ICのCA3053,etcが入手容易なら今でも有望なIF-Amp.かも知れませんが全てディスコンです。代替法は他にあるのですから拘って入手しても意味はないかも知れませんね。
【AGC付きIF-AmpのICは?】
再びJA1AYO丹羽さんのIF-Amp.が登場です。 図は「ハムのトランジスタ活用」(1980年CQ出版社:JA1AYO丹羽一夫 著:pp123)通称「ハム活」から引用しました。たぶん、入手性の関係だと思いますが丹羽さんは東芝のデバイスがお好きだったように感じます。TA7124Pは東芝のICです。
TA7124Pはシングルインライン(足が一列に並んだタイプ)のICで、TV受像機の映像増幅用に作られたICです。初めから歪みの少ない利得制御が可能な回路になっています。リバースでもフォワードでもないAGC回路になっていて、あえて言うなら「分流型AGC」でしょうか。AGCが掛かると増幅している信号成分の一部をバイパスして逃すように動作するのです。そのため、単純にコレクタ電流を絞るといった動作ではないため大きな信号でも歪みにくいのです。消費電流もむやみに大きくなったりしません。
TA7124P一つで得られるゲインは最大50dBくらいです。高性能な通信型受信機用のIF-Amp.としては不足なので2つ使う必要があります。AGC範囲は一つで60dB得られます。2つ使ったからと言って120dBにはなりませんが80dBくらいなら容易です。 内部回路は差動アンプ形式になっています。実験によれば出力回路にバランスした負荷の形式を使うと性能の向上が図れるようでした。バイファイラ巻きになっているFCZコイルなら好都合です。
残念ですがTA7124Pの入手は余り望みがありません。下記のMC1350Pの方が有望ですが、これもディスコンから時間が経過しており入手は難しくなっています。
【MC1350Pがルーツなんですが】
ある時期TA7124Pの入手は容易だったのでしょう。しかしそれはわりあい短かい期間だったのかも知れません。もともとTVの映像増幅用のICでした。TV用のICは高集積化がどんどん進んだので、IF-Amp.は他の回路とともに規模の大きなICに取り込まれてしまいました。もう個別の映像増幅用ICなど存在意義がなくなったのです。
受信機のIF-Amp.用として有用な存在だったのですが、アマチュアの都合で再生産してくれることはないでしょう。この記事の筆者のJA1AYO丹羽さんも過去の記事の製作が継承できるようご尽力されたようです。各社の類似機能のICを試されたようですが、どれも同じ事情にあってデスコンばかりです。結局、意外にも残っていたモトローラ社のMC1350Pにたどり着かれたのでしょう。 東芝のTA7124Pは外観形状こそ違いますが、中身はMC1350Pのセカンドソース(互換品)と言えるものでした。 MC1350Pがオリジナルなのですから同じように使えて当然ですし性能の違いも殆ど無かったでしょう。 しかしMC1350Pも既に書いたように生産終了の状況にあり残念な限りです。(参考:だいぶ価格が上昇していますが何とか手に入るようです)
ICは便利な存在ですが、それがなくなると一発アウトの憂き目です。(笑)
全くの与太話ですが個人でも昔のICを再生産してもらえそうです。たぶんウン十万円で可能でしょう。 お話を伺ったことがあるのですが意外に安そうな印象でした。 米国の会社なので東芝のTA7124Pは難しそうですがモトローラのMC1350Pなら間違いなく可能そうです。MC1490PかMC1590Gでも良いでしょう。どれも内部のシリコンチップは同じの同等品ですから。 お金が余って困ってるOMサンが発注していただけると自作HAMに感謝されるかも知れません。(爆) →→ Lansdale Semiconductor社へどうぞ。
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◎おしまいにIF-Amp.に求められる要件をまとめておきましょう。
まずはAGCが掛かる以前にどれくらいのゲインがあるかです。フルゲインで何dBかということです。他の部分との関連もありますが、通信型受信機として最低でも60dBは必要です。AGCとも関係しますが、歪みなく深いAGCが掛けられるのであれば80dBくらいあっても良いでしょう。
次に、IF-Amp.の帯域幅ですが昔の真空管式受信機ではIF-Amp.の全段で必要な選択度を得る設計でした。半導体の受信機の場合、球と類似の設計では苦しいので選択度は専門の「フィルタ」で得るべきです。IF-Amp.で選択度の追求はしませんが、広帯域なノイズを低減するためにIF-Amp.の帯域は絞った方が有利です。
重要なAGCですが、どの辺りの入力から効き始めてどれくらいの入力範囲で一定した出力電圧が維持できるかがテーマになります。さらに、過渡応答のような時間的な要素があるのでかなり厄介です。その受信機の実使用時の操作フィーリングが決まる部分なだけに十分検討をしたいところです。AGCについては機会があったら改めて考察したいと思っています。
IF-Amp.の要件の最後は出力の大きさです。大きさがわかれば検波・復調器とのインターフェース設計が可能になるでしょう。出力インピーダンスと合わせて知っておきたい項目です。
高級な話としては、AGCの掛かり具合に応じたIF-Amp.自身のIMD特性の傾向把握があります。IF-Amp.はハイ・ゲインなので測定しにくい面もありますができたら知りたい特性でしょう。特にSSBの復調音にはかなり影響があるはずだからです。
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少々経験不足のお方を惑わせたり、物知り顔の受け売り者を増長させるのは本意ではありません。ですから難しい話もそこそこが宜しいのかも知れません。それでもIFフィルタを含むIF-Amp.とAGCまわりは通信型受信機の心臓部にあたります。ですから少々踏み込まずには済まされないのです。 次回はIF-Amp.の実践編を予定します。 Simple is the Best.を信奉している(大笑)ので凝った回路はご期待されませんように。 ではまた。de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→いまここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
2022年4月17日日曜日
2022年4月1日金曜日
Product Detectors (2)
【SSB/CW De-modulator:SSB/CW復調器】
通信型受信機の構成要素を探りながら造る『私だけの受信機設計』シリーズ・第4回です。
前回はSSB/CWの復調に向いた検波回路(←リンク)を振り返ってみました。 今回は実際に製作します。
プロダクト検波器としてはリング・デモジュレータを採用することにしました。 ダイオード4個をリング状に配線した検波・復調器です。 既に多くのメーカー機や自作受信機にも採用されているたいへんポピュラーな復調回路です。
もっと奇抜なあるいは珍しいデバイスを使った回路の登場を期待されていたとすれば申し訳なかったかも知れません。 何かの必要性がない限り、あるいは特に趣味性を強調するつもりでもなければオーソドックスで平凡な回路や部品を好んで使っています。 これは性能が安定しているだけでなく、調整が容易で作り易かったり、使用デバイスも特殊でなくて済むからです。もちろん性能が劣っていたのでは意味はないですけれど。 詳しくは回路図のところにて。
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この受信機設計シリーズですが、ほぼBlogの公開順に進めています。以前から懸案事項のあったBFOから始めました。これが順調に行ったことからSSB/CWの検波・復調ユニットへと進みました。これが前回と今回のお話になります。
その後はIFアンプの方向へ進めています。 Blogに投稿するには設計・部分試作・製作・データ採取、そして公開向きに纏める作業を伴います。今どきビジュアル化も大切ですから適宜、写真撮影や編集も必要です。 これくらい時間のゆとりを持たないと継続できません。遅々としているように感じるかも知れませんが・・・。
多分に拙宅の部品事情や個人の興味を反映した自家用設計です。 そんな個人的なものに「興味なんてないよ」と思うのでしたらこの先も面白くないです。 擬似体験のつもりでご覧になっても意味はないでしょう。 しかし類似のRXを構想中なら何か役立つ情報があるかもしれません?(笑) 続けてご覧を。
【SSB/CW De-mod. BFO Sch:回路図】
SSBとCWを復調するユニットの全回路です。このユニットにBFOは不可分なので含めて書いてあります。
回路は大まかに4つの部分で成り立っています。
まず、(1)Q1が発振、Q2がバッファアンプのBFO部ですが、これは既に前回Blogで済んでいます。(2)リング復調器の前にポストIFアンプ:Q3があります。(3)心臓部はD1〜D4で構成された4ダイオード型のリング復調器です。(4)復調された低周波信号を増幅する低周波アンプ:Q4があります。以下、各部の詳しくは個別写真のところで説明しています。
部品はすべて入手容易なものです。FETはジャンクション型とMOS型を使い分けています。BFOの発振にはJ-FETが適当です。あるいは前のBlog(←リンク)を参照してPNP-Trで作っても良いでしょう。 バッファアンプとして緩衝作用を重視する部分にはドレイン・ゲート間の帰還容量(Crss)が特に小さな「内部カスコード構造」のFETを使います。 低周波アンプは2SC1815Yで、ありきたりなトランジスタですがローノイズで十分なゲインが得られています。 リング検波器にはゲルマニウムDiの1N34Aを使いました。ここは他のゲルダイでもOKです。一般的な1N60や1K60で良いでしょう。ショットキ・バリア・ダイオード(SBD)も良い選択です。 BFO部分の半導体は前のBlogも参照を。
あえて特殊部品と言えそうなのがBFO発振のコイルとリング復調器のところのIFTでしょうか? この2つは同じものを使っています。これも特別なIFTではありません。トランジスタ・ラジオの段間用IFTで、同調容量が180pFの455kHz用です。 一次側のタップ位置ですが、ピン1と2の間が全巻数の約14%になっています。またピン4と6間の巻数は1次側巻数の約13%です。 具体的な巻数はIFTにより異なるため示しませんが、おおよそ似寄りの「巻数比」になったIFTなら問題なく使えます。あるいはaitendoで売っている「IFTきっと」で自作することもできます。(参考リンク→8石ラジオを作る)
【IF Post Amp.:IFの後段アンプ】
このユニットへの入力信号は受信機のIFアンプ(中間周波増幅器)の最終段から取出します。周波数が455kHz付近であれば大抵のIFアンプに接続できます。
入力端子から入ったIF信号はバッファアンプで軽く増幅されます。このアンプはゲインを稼ぐと言うよりもBFO成分がIFアンプへ戻るのを防ぐ意味合いが強いものです。そのため増幅素子には帰還容量(Crss)が特に小さいFET(2SK544E or F)を使いました。なお、完全な中和調整を行なえば一般的なトランジスタやJ-FETも使用できます。2SK544Eは2SK241Yあるいは2SK439Eでも良いです。(2SK439は足の並びに注意を)
BFOの発振がIFアンプ部分に戻ると、AGC(自動利得調整)の動作に支障が出るだけでなく信号がノイズっぽくなることがあります。 このバッファアンプにAGCは掛かっていませんが、入力信号は十分にAGCが効いたIFアンプの終段部分から取り出されます。既に十分なレベル管理がなされているわけです。固定ゲインのアンプで支障ありません。
【Ring DET+ AF-Amp:リング復調器とAFアンプ】
心臓部のリング復調器です。 復調はダイオード4個の標準的なリング復調器で行ないます。その後トランジスタを使った低周波アンプで軽く増幅しています。
初めは万全を期すためにバランス調整を設けていました。 実際にはその必要がなかったので固定抵抗に置き換えてしまいました。それで支障ありません。 そもそもバランス型の復調器なのでIFアンプ方向へのBFOの漏れは少ないうえ、前段に帰還の少ないバッファンプを置いた効果もあります。無調整型にしてしまいました。これでBFOの漏れは感じられません。 復調器のダイオードはゲルマDiを使いました。SBDとの比較で大した違いがないためそのままゲルマDi(1N34A)にしています。もちろん初めからSBDでも構いません。
2SC1815Yを使った低周波アンプは約5.7倍のゲインです。初めはもっと大きなゲインを持たせていましたが、検波出力が意外に大きいため低周波アンプが先に飽和してしまいました。現在は回路図のようにエミッタ抵抗(R15:300Ω)を挿入し電流負帰還を掛けて適当なゲインに抑えています。 従って現状では復調器の方が先に飽和します。 これに続く低周波パワーアンプのゲイン次第で違ってきますが、過剰に低周波増幅する必要はありません。 なおコレクタ・ベース間のコンデンサ:C20を大きくすると高音域のノイズが低減できます。通信機用としてS/Nの改善に効果的です。数100pF〜1000pFくらいで適当に好みによって決めます。 低周波アンプに使うトランジスタはhFEが200前後のSi-NPN型なら何でも良いでしょう。
【AF Power Amp.:低周波パワーアンプ】
あらかじめ書いておきますが低周波のパワーアンプについては改めて扱うつもりです。 写真はここで暫定的に使ったものを示しています。
テストにおいて低周波アンプはLM380Nを使いました。電源電圧の+9VはLM380Nには下限値です。従ってあまりパワーは出ませんがシャックで聞くには支障のない音量です。8Ωのスピーカで250mWくらいは出ているようです。使うスピーカにもよりますが250mWと言うのはうるさいほどの大音量です。 LM380Nはゲイン50倍(電圧利得)のシンプルなパワーアンプですが実験目的には十分すぎるほどでした。むしろそのまま実用でも良いくらい。 オーディオ用ではなく通信機用のアンプですから無闇に低域を延ばす意味はありません。スピーカとの結合コンデンサは220〜330μFと小さめにします。
低周波増幅の部分についてはCW用Audioフィルタ(参考リンク→良い音のCWフィルタ)の採用も考えているところです。 そうなると回路規模が大きくなるため写真のようにユニットの片隅に搭載できません。 CW用Audioフィルタが省略方向になれば別ですが、変更の可能性を考えて上記回路図には含めませんでした。 なお、LM380NはこのBlogではお馴染みになっているLM386Nでも良いです。もちろん、ディスクリートで作っても構いません。いずれも35dBくらい(約50倍)のゲインを持つように設計します。
【BFO:BFO回路】
BFOの詳細は前回のBlogに投稿済みです。同じようなアングルからの写真ですが再掲載しておきます。
BFOの周波数がIF信号に引っ張られるのは、IF信号の一部がBFOに届いて干渉するためです。 信号入力、BFO入力、そして出力の各ポート(端子)がバランスした復調・検波器を使うことで相互の干渉は抑えられます。さらにBFOのバッファアンプには帰還容量(Crss)の少ないFETを使いました。
これでBFOへ入力信号が混入・干渉することはなくなっています。課題であったBFO周波数の引っ張り現象も解消されたわけです。バッファアンプの効果については前回のBlogに書いても良かったのですが、検波器との関係も大きいことからここで説明しました。
あらためてBFOの周波数安定度を見ていますが、CW用としては十分な安定度です。SSBの復調にも支障はないのですが、長期的にみるとキャリヤ周波数の再現性には幾らか課題があるように思いました。当該の受信機がSSB用の良い性能のフィルタを使っているのであれば周波数の再現性が良いBFOが適当です。その場合フィルタの通過帯域特性が明確になっており、伴ってSSBの復調に最適なキャリヤポイントの周波数もはっきりしている必要があります。
その実現には水晶発振器が安直な方法ですが多くの場合、水晶発振子は特注になるでしょう。現在可能で経済的な方法はDDSあるいはPLLを使ったBFOです。 SSBの受信をメインに考えているのでしたらそのような「固定した」周波数のBFOが適当です。 ここでは目的の違いから現状のLC発振形式のBFOで進めます。CW用としては何ら性能的な不満もありませんので。
【SSB/CW Unit:SSB/CW復調ユニット全景】
BFO回路を含むSSB/CW復調ユニットの全体を撮影しました。
とりあえずの仮設ですが低周波パワーアンプも含めたので、これで独立したユニットとして機能します。右下に茶色のリードが出ていますが、これは低周波ゲインの調整用ボリウムが付いています。
受信機全体のゲインの配分はRFやIF部とも関係しますが、低周波アンプとして必要なゲインは十分確保されています。フルボリウムの状態で低周波部は50dB弱のゲインを得ています。
参考までに7MHzの受信テストではかなり絞って聞くことになりました。残留ノイズが小さくて静かな検波・復調ユニットです。あとはIFアンプまでがローノイズに仕上がると静かな受信機になるでしょう。いまからそれを書くのはチト早いかもしれませんが。(笑)
【SSB/CW Unit In-Out:復調ユニットの入出力特性】
製作したユニットの入出力特性です。
このカーブから検波・復調ユニットとして最適なIF信号の大きさがわかります。 青色のカーブがIF信号の入力端子の電圧と低周波アンプの出力電圧の関係を示します。 赤色のラインは検波・復調された直後の電圧を示しています。これは参考的なものです。
なお測定は復調された低周波信号が800HzになるようにBFOの周波数を設定して行ないました。(参考:IF信号が455kHzでBFOは455.8kHzまたは454.2kHzとなります) 入力端子は50Ωで終端しています。AF出力電圧は10kΩの抵抗負荷を付けてそこで測定しました。
グラフから入力としておおよそ100dBμ(100dBμは100mVですがEMFなので負荷端では50mVrms)を超えぬようにすればリニアな範囲になります。 まだ変更する可能性もありますが、このユニットの標準出力は500mVrmsであるとして全体的な設計をしています。(この時のIF入力端子の電圧は34.5mV(rms)となる)
グラフで左下の部分に曲がりが見られます。この部分は復調されたAF信号が小さ過ぎて測定環境のノイズ,etcと区別がつかない部分です。 グラフでは直線的に下がって行きませんが実際の使用に於いて支障はありません。きちんとシールドを施してノイズの誘導を防ぎ精密に測定するとこの先もずっと直線的であることがわかります。(微小電圧の測定は低周波スペアナや選択レベル計が好ましいです。定性的でよければ人の耳でも可でしょう・笑)
【SSB/CW復調ユニットの試用法】
以上、SSB/CWを復調するためのユニットができました。ただしこのユニット単独では有用な機能はありません。ここでは仮に短波ラジオに接続して試用する方法を考えてみました。
図は既に投稿済みの短波ラジオの製作(←リンク)から引用したものです。ごくシンプルな短波ラジオですからこのユニットには不釣り合いですが、さしあたってのテストには十分使えると思います。それにシンプルな短波ラジオとは言ってもHAMバンドが受信できるだけの感度は十分にあります。
完成した復調ユニットを左図の短波ラジオの中間周波出力(IF-Out)端子に接続します。さらに、この復調ユニットの低周波出力(AF-Out)を短波ラジオの「低周波増幅入力端子」(LM386N手前のところへ音量調整用VRを経由して接続)に戻してやれは復調ユニット側のパワーアンプ:LM380Nは省けます。 図の短波ラジオは電源電圧が+6VなのでSSB/CW復調ユニットと合いません。別個に電源を与えるかラジオの方も+9Vで動作させると言った検討を行ないます。この復調ユニットを+6Vで使うのは適当でありません。安定した+9Vを与えて使います。
図のようなラジオは簡単なものですからAGCの働きが貧弱であり検波の所のレベル管理は十分ではありません。従って検波・復調ユニットが入力オーバーになる可能性があります。この辺は受信に使うアンテナ次第とも言えましょう。 まずは左図の短波ラジオのIF出力ボリウム:VR2を中位にセットすれば良いと思います。もしピークで歪むようならさらに絞ってやります。VR2を最大に上げると大きな音になって感度が良くなったように感じるかもしれません。それでは強い信号で歪むので正しい使い方ではありません。大きな音がすれば良いわけではなく、強い信号でも歪みなく良い音で復調できなくてはいけません。
短波ラジオのIFフィルタがIFT(=中間周波トランス)のみでは選択度が足りません。だいぶ混信します。しかし手元の短波ラジオでテストしたら賑やかに受信できました。使ったのがHAM局用の効率の良いアンテナですからそれも効果的なのでしょう。 しばらくこの状態でテストしていますが楽しそうな各局のQSOがFBに聞こえてきました。
同じような短波ラジオがあればテストに使えます。検波回路の部分を小改造してIF信号を引き出してやります。 真空管の短波ラジオでもテストは可能ですがIF信号が非常に大きいことがあります。入力が過大にならぬよう絞ってやれば良い音で復調できるはずです。 やはりちゃんとしたBFOとプロダクト検波器はSSB/CWの受信に効果的でした。
☆
たいへん古い話で恐縮ですが、JARL会長も勤められたJA1FG梶井OM(故人)の名著『通信型受信機の解説と実際』(CQ出版社1966年)によれば、受信機の設計は検波回路を基準に据えれば良いとあります。すなわち検波部が必要とする入力電圧がわかり、また復調出力がわかってしまえばあとはその前後の回路に必要なゲインも明確になると云うのです。 真空管時代の書籍ですから今ふうの設計には必ずしもマッチしませんが、受信機を自分で作ってみたい人にとっては一読に値すると思います。ご興味でもあれば図書館を利用されてください。このころはHAMが受信機を自作する時代だったことがわかります。
梶井OMの提言は実際に受信機を企画してみれば実感できます。一般に通信型受信機が必要とするゲインは140dB程度(1000万倍)であると言われます。ではどこを基準に設計するのが合理的なのかと言う話になるわけです。 入力や出力の大きさを基準とする考えもあるでしょう。しかし実際は各部のゲインに自由度があり過ぎるため明確には決めにくいのです。それに受信機は常にフルゲインで動作しているのではありません。AGCの関係もあって漫然とアンプ段を重ねただけではどこかの段で破綻してしまいます。 検波器・復調回路は受信機の中央部分にあってRF段とAF段の境界です。ここの信号レベルがわかれば前後のゲインの割り振りもかなり明確になるでしょう。
なんとなく唐突にBFOやSSB/CWの検波・復調ユニットから作り始めたように感じられたと思います。後付けの言訳になるかも知れませんがSSB/CWの復調部分から始めたのはそれなりの合理性もあったわけです。
この検波・復調ユニットの場合、後続する低周波部のゲインは40dBもあれば十分なようですから容易に実現できます。続いて中間周波増幅器(IFアンプ)と、それと不可分のAGC回路について検討を始めているところです。 IFフィルタ以前でゲインを稼ぐとS/Nには有利ですが大入力特性が劣化します。電波が輻輳する現代においては必然的にIFアンプであらかたのゲインを稼ぐ設計になるでしょう。近代的な受信機に於いてはすべての受信モードで良く効くAGCも必須であります。
この辺りをどのように構成するのか、なかなか悩ましい課題もありそうです。逆に面白みを感じる部分とも言えるでしょう。そう感じるのは私だけかも知れませんけれども・・・。 ではまた。de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→いまここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
2022年3月18日金曜日
2022年3月3日木曜日
Product Detectors (1)
【プロダクト検波の探求】
通信型受信機の構成要素を探る『私だけの受信機設計』シリーズ・第3回です。
スーパヘテロダイン型受信機でCW(無線電信)を聞くにはBFO付き検波器が必要です。 ですから戦前のスーパ受信機にもBFOは付いていました。
ただしプロダクト検波器ではありませんでした。 AM用の検波器(エンベロープ検波器)にBFOを注入するだけでも良く聞こえたからです。従ってプロダクト検波のような「特別の検波器」は必要とされなかったのです。
CWの受信だけが目的なら必ずしもプロダクト検波は必要ないかもしれません。しかし、SSBがきちんと受信できるなら、もちろんCWも快適な受信が可能です。 従ってCWだけでなくSSBもFBに聞こえる検波回路を目指したいと思います。今回はプロダクト検波がテーマです。
近代的な通信型受信機ではCWだけでなくSSB(単側帯波)も聞こえなくてはなりません。当座はCWが目的ですがSSBやデジタルモードが必要とされることもあるでしょう。 さらにSSBが受信可能と言うだけでなく、自然な良い音質で検波(復調と言う方が適切)できたら最高です。 そのSSBの復調にはプロダクト検波器が優れるため回路の研究と共に専用デバイスも様々登場しました。 写真はそうしたSSBの復調・検波に用いられる電子デバイスを集めてみたものです。
☆
プロダクト(Product)とは「積」と言う意味で、2つの値をかけ算することを意味します。その2つとは受信信号とBFOです。 プロダクト検波器の出力には2つの信号の積で生じた新たな信号成分が得られます。その成分の一つが復調された低周波(音声)信号になるわけです。
三角関数で解析すればどんな成分が得られるかは明白ですが省略しておきます。 ここを見てるお方は「算数」より「回路&珍しデバイス」の方がお好きでしょ。ワタシもです。w
もちろん積検波の理屈はとても大切ですからもし暇でもあれば通信工学の教科書を紐解いておくのも良いでしょうね。 これはプロダクト検波回路の理解だけでなく、後ほど扱うことになる受信機のミキサー回路の理解にも通ずるものです。(両者は原理的に同じものな訳なので・笑)
参考:sin αを受信信号、sin βをBFO信号とします。プロダクト検波器で検波するとこれらの「積」が出力に現れます。
シンプルに解析すれば、これは三角関数の積和公式で計算され:
sin α sin β = -1/2 {cos(α+β) - cos(α-β)}・・・・のようになります。
先頭の-1/2というのは位相が反転し振幅(波の大きさ)が半分になるという意味です。大カッコ内のcos(α+β)は、上側へヘテロダイン(周波数変換)される成分で、その周波数はα+βになります。 ここで肝心の成分は検波出力に相当する- cos(α-β)の方です。 周波数はαとβの差になります。
例えば、sin αが455kHz、sin βが454.2kHzとすれば、出力は455kHz-454.2kHz=0.8kHzとなるわけです。800Hzのビートが聞こえます。
前回はBFO(←リンク)を作りました。SSBやCWが快適に復調できる検波回路にはどんな物があるのか探ってみたいと思います。私の定番検波回路はもうとっくに決まってるよ・・・と言うのでしたらこの先をご覧になる意味はないでしょうね。 時間を有意義に使ってください。 尤もSNSで時間つぶすよりちっとはマシな話をしてるつもり。(笑) この先かなり長いです。
☆
【通信型受信機の検波回路】
左図はシンプルな通信型受信機のブロック図です。 前々回のBFOの検討でも登場しました。 今回は「DET」と書かれた部分を検討します。
ちなみに、DETというのは「Detector:検波器」の意味です。 CWの場合は「検波」でも良いのでしょうがSSBの場合は「Demodulator:復調器」の方が適切かも知れません。
ここでは検波と復調をあまり区別せず混用しますのでどちらも同じモノとご理解を。 なおSSBは復調するものでCWは検波するものと暗黙で考えているところです。(笑)
☆
◎ まずは真空管式のプロダクト検波から探ってみます。
【Triple Triode Product Det.:三極管3つのプロ検】
HAMの世界でSSBが始まったのは真空管時代でした。 最初は二極管検波器にBFOを与えるCWと同じ方法で復調していました。しかしこの方法ではSSBが復調しにくかったのです。
SSBの復調に向いた回路として考えられたのが左の回路です。IF信号とBFOはカソード抵抗を共通としたカソードフォロワで混合されたあと、プレート検波として動作する第三の三極管のカソードに加わります。ここで検波されて音声信号が取り出される訳です。動作原理を簡単に言えば三極管を自乗特性となるように動作させそこへBFOとIF信号を加えると積検波されると言うものです。
ほぼこのままの回路で使われたほか、三極管2つで済むよう簡略化された回路がHAMには好まれました。三極管2つで済めば12AU7や12AT7と言った双三極管1本で済みます。
【6BE6:七極管のプロ検】
七極管(5グリッド管)のプロダクト検波は三極管3つのプロ検と並んでアマチュア無線局のSSB受信用付加装置ではよく使われました。こうした用途に向いた専用管なので扱いが容易だからでしょう。
自励発振のBFOを兼ねることも可能ですが、幾らか周波数の引っ張り(Pull-in)があります。水晶発振でやれば解決しますが手軽な付加装置の扱いでしたからLC発振で使うことが多かったです。本格的には図のように別に設けた水晶発振式のBFOから注入する方法が良いでしょう。
使用する真空管:6BE6あるいは6SA7はスーパーヘテロダインのコンバータ管です。プロダクト検波器とコンバータ回路の何が違うのかと言えば入力された信号が中間周波に変換されるか低周波に変換されるかの違いであって本質的に同じものな訳です。だからプロダクト検波にコンバータ管が使われるのです。要するにプロダクト検波器は受信機のミキサ回路と働きとしては同じなんですから。hi hi
IF入力を思い切って絞る・・・かなり小さくする・・・のがこの回路をうまく動作させるコツです。要するに受信ミキサ回路でIMD歪が大きくならぬように動作させるのと等価ですからね。局発に対して信号の方はかなり小さくする必要があるんです。 そうするとS/Nはやや悪くなるのですが復調歪との兼ね合いになります。BFOは強めである必要があります。
【6BN6:ゲーテッド・ビーム管のプロ検】
ゲーテッド・ビーム管:6BN6を使ったプロダクト検波器は良い特性が得られると言われたことがあります。使ったことはないので実際のところはわかりません。しかし原理的に見て優れる可能性はありそうです。この回路は乗算型ではなくスイッチング型の復調回路として動作します。
回路記号を見ると6BN6は普通の五極管のように描かれています。しかし構造はかなり違います。カソードを出た電子は第一グリッドで制御されたあとビーム状に絞られ、クアドラチャ・グリッド(制御電極の一種)・・・ここにBFOを与えます・・・によってON/OFF動作します。IF信号がBFOでON/OFFスイッチングされるわけですね。これで等価的に積検波の働きになります。
あまり流行らなかったのは6BN6という球が特殊だったからでしょう。TV受像機のクアドラチャ検波器(FM音声の検波器)の為に開発された球ですが構造が精緻で作るのが難しかったそうです。すぐに6BN6を使わぬ方法が考案されたので早々に製造中止になってしまいました。
SSB検波器として他と比べて画期的に優れる・・・と言う程でもなかったからでしょうか? 一度は試してみたい回路ですけれども・・・。
6BN6の検波器は感度が高く出力も大きいため、左図の回路ではAM検波の方に低周波増幅を追加して大きさを揃えています。この回路の場合も6BN6に加えるIF信号を控え目にするのがコツのように思います。せいぜい100mVpp程度が良い筈で、逆にBFOの方は10Vpp以上加えます。
【7360:シートビーム管のプロ検】
簡単に言えば上記の6BN6の検波器を差動形式にしたのが7360のプロダクト検波器です。
もちろん厳密に見れば6BN6の制御電極と7360のビーム偏向電極では動作はぜんぜん異なります。しかし結果的には同じようなものと言えるでしょう。
左図では第1グリッドにBFOを加え、IF信号はビーム偏向電極に与えています。これを逆にする方法もあって受信機のミキサー/コンバータでは第1グリッドに信号を加える回路にします。こうした方が変換コンダクタンス:gcが大きくて感度的に有利だからです。
7360の構造は複雑ですが電子の流れを見れば意外に単純です。ビーム偏向電極に電流は流れませんから、実質的に電子流が通過するグリッドは二つです。従ってグリッドが5つもある6BE6等のコンバータ管と比べて分配雑音はそれだけ少ないのでローノイズなのは嬉しいこところです。 ただし「ひずみ」を考えれば左図のようにした方が優れます。受信機のトップと違って検波器の場合、IFアンプの出力は既に十分に大きくなっていますから「ひずみ」を優先する方が有利なんですね。
7360のようなビーム偏向管を使ったSSB復調器は圧倒的に良い性能を示すと言われています。しかし使うには高い電源電圧が必要ですし、匹敵する性能の半導体回路も存在するのですから昔の「都市伝説」にあまり惑わされぬ方が良いのかも知れません。それに7360はだいぶ高価ですし。 そろそろ単側波帯教の御神体として恭しくお祀り致すのが宜しいのかも。 しかし持っているのなら祭壇ではなく受信機の中で輝やかせたいものです。(笑)
☆
◎続いてダイオードやFETと言った個別半導体のプロダクト検波器を眺めてみましょう。
【よく見るプロダクト検波回路(半導体)】
左図はARRLの出版物:Electronics data bookからコピーしました。典型的なSSB/CW検波回路でしょう。
(A)は単なるAM検波器なのですが、これにBFOを結合させてSSB/CWの検波も不可能ではありません。BFOは検波ダイオードのアノードの所へC結合で加えます。CW受信には2Vppくらいが適当でしょうか。
しかしCWならともかくSSBを良い音で復調するにはIF信号をかなり絞らねばなりません。その結果としてSSBの復調音量はかなり小さくなってしまいます。歪みなく復調するには必要な操作ですが、受信機としてはちょっと扱いにくくなるのでこうしたSSB受信方法は好まれないのでしょう。
(B)は2ダイオード式の検波器ですが、これはバランス型ではないためBFOがIFアンプの方向へも漏れてしまいます。従ってAGC回路をどう構成するかが課題になります。簡単な回路で済ますには復調した低周波信号を使ってオーディオAGCを掛ける方法になりそうです。実験によると左側ダイオードはリーク電流が流れるような特殊な物が必要とのこと。良く考えるとBFOが整流され発生するであろうDC成分のリターン経路が無いなどちょっと怪しい回路です。よってお勧めはしません。
(C)は同じ2ダイオード式ですがバランス型になっています。IFアンプ方向へのBFO漏れはかなり防げるのでAGC回路の構成にも有利でしょう。ただしこの回路は4ダイオード式の簡略版であり、検波ロスがやや大きいのが不利です。ダイオードより抵抗器の方が安価なのでメーカ製Rigでコストダウン目的に使われることがあります。どうせなら4ダイオード式にすべきですから受信機を自分で作るような我々には推奨されません。
(D)は4ダイオード式のオーソドックスな回路です。リング検波器とも呼ばれますがプロダクト検波器の一種に違いありません。入力トランスはトリファイラ巻きのものが使われています。良い成績が得られますが(C)のような同調型IFTで行くことも可能です。BFOの注入はトランスのセンタータップでなく抵抗分割でも十分です。後ほど簡略化した実例が出てきます。
いずれの回路も10VppのBFO電圧が必要なように書いてあります。(B)の回路では比較的大きめのBFO電圧がないとうまく検波しません。実際に10Vppくらい欲しいでしょう。
(C)と(D)の回路では1N914のようなスイッチング用ダイオードを使っていますが、それでも10Vppは必要ないでしょう。さらに順方向電圧が小さなショットキ・バリア・ダイオード(SBD)あるいはゲルマニウム・ダイオード(Ge-Di)を使えばBFOは1〜2Vppもあれば十分です。IFアンプにBFOが漏れるのを防くために電圧は小さいほうが有利です。
【クワッド・ダイオード型】
これも4ダイオード型ですがIF入力だけでなくBFO入力もトランスを経由しバランスさせています。相互の干渉が少ないのは理想的です。
ひずみが少なく良い成績が得られる回路ですが、IF入力、BFO入力、さらに理想を言うと復調出力もインピーダンス整合させて使うべきです。自作HAMはその辺りに面倒くささを感じるのかも知れません。
しかし復調出力は低周波ですから図のように不整合でもあまり支障はないでしょう。大きめ容量のコンデンサで和成分などの高周波分はバイパスされてしまいます。
最初の写真にあるR&K社のDBMのような既製品もこの回路に最適です。このBlogでもWSPR用のダイレクト・コンバージョン受信機(DC受信機)の検波器に既製品のDi-DBM:ADE-1を使った例 (←リンク)があってなかなかの好成績が得られています。
最近売っている既製品のDi-DBMは意外に高価なようです。費用倹約のために自作で行くならトリファイラ巻きトランスの製作・結線に十分注意します。ダイオードはゲルマの1N60,etcも使えますがばらつきが少ないSBDの方が良いでしょう。ゲルマと違って選別なしで使えます。専用のQuad Diodeもあって便利です。(最初の写真:ND487C1-3R)
この形式のダイオードDBMを使ったプロダクト検波は少々大きめの信号でも歪み感がソフトなのが良いところです。よほど酷くなければ耳に付きません。BFOは3dBmくらいでもとりあえず使いものになりますが7〜10dBmは与えましょう。(=50Ω負荷に2Vppくらい与える)
【DG-MOS FETを使ったプロ検】
デュアル・ゲートMOS-FETを使ったプロダクト検波もなかなか良い性能です。 図の回路は第2ゲートをソースの電位(Vg2s=0V)で使っていますが比較したところG2にも適当なバイアスを掛けた方が良好でした。
動作点の確認が必要で場合により調整が要るのでアマチュア向きでないのかも知れません。感度も高く復調音も良いため私は好きな回路です。 デュアル・ゲートMOS-FETの特徴が活かせる代表的な回路です。
大抵のデュアル・ゲートMOS-FETが使えます。図の40673はRCA社のFETで米国では定番でした。国産では3SK35とか幾らでも使えるものがあります。(除く3SK22) 実測した詳しいデータもあるので機会を改めて紹介しようと思っています。 取りあえず結果だけ大雑把に言えば図の回路ではソースの560Ωを加減してドレイン電流が1〜2mAのところで使うと良いです。 また第2ゲートには3〜6Vppと言った大きめのBFOを与えます。ここが小さいとゲインが低くなり、しかも小さな入力信号しか扱えません。
図では入力がANT入力となっています。これはダイレクト・コンバージョン(DC式)受信機に使う想定で書かれています。当然ですがスーパヘテロダインの第2検波(=プロダクト検波)に使っても良いわけです。
【J-FET2個のプロ検:アンバランス型】
双三極管を使ったプロダクト検波器をFETに置き換えたような回路です。 少々クラッシックですが悪くない検波回路です。
ソースに入っているRsと書かれた共通抵抗を加減してやるとうまく働きます。耳で聞きながらでもできますがオシロスコープを使うと容易です。大きめのIF信号を与えて歪みが少ないところを求めます。 バランス型ではありませんから幾らかIFアンプへのBFO漏れがあります。
FETは大抵のジャンクション型FETが使えます。国産でしたら2SK192Aなどが適当ですが加減さえすればほとんどのFETが使えます。455kHzやHF帯でしたら2SK30Aのような低周波用も十分使えます。あまり型番にこだわらなくても良いくらいです。
なお、電源電圧は22.5Vも必要なくて9〜12Vで十分でしょう。ただしドレインの負荷抵抗を2〜5kΩに減らします。
【J-FET2個のプロ検:バランス型】
こちらも双三極管を使ったプロダクト検波器にあったような回路です。 J-FET2つなのは上記回路と同じですがBFOがバランスしているのでこちらの回路が優れます。入力トランスのバランスさえ良ければBFOのIFへの漏れもわずかです。
上記と同じようにJ-FETは大抵のものが使えます。 MPF102というのはモトローラ製のVHF用で米国では定番のJ-FETでした。国産の2SK19や2SK192Aに相当するJ-FETですからそのまま代替できます。今ではBF256Bなどが入手しやすいのかも知れません。問題なく使えるはずです。
この回路で気になるのは出力側の低周波トランスでしょうか。山水のST-21などで代替できますが低周波トランスはできれば省きたい感じです。 工夫で省けますがトランスを使うと回路が簡単に済むので何となく魅力的なのでしょう。(笑)
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◎続いてICを使ったプロダクト検波器を眺めてみましょう。
【MC1496Gのプロ検】
DBM-ICといえばMC1496は外せませんね。このBlogでも扱ったっことがありますがプロダクト検波ではなくて変調器として(←リンク)でした。 プロダクト検波に使っても良い性能が得られます。
使い方のコツは入力信号とBFOのレベル管理にあります。 左図では300mVrmsとなっています。BFOはこれくらいで支障ないですが、復調ひずみを考えると入力信号は300mVpp(=約100mVrms)が良いところでしょう。そうすれば良い音の復調ができます。
プロダクト検波器(復調器)として使うならバランスド・モジュレータほどの平衡度は要求されないため簡潔な外付け回路で済みます。普通はバランス調整も必要ありません。 復調ゲインが得られるので後続の低周波アンプは簡単にできます。(注:元の回路図に抵抗器の記載漏れがあったので加筆・修正しておきました。20250917)
プロダクト検波に使えるDBM-ICの代表としてMC1496を取り上げました。 やがて周辺の部品を取り込んで使いやすく改良された後継チップが登場しました。 このBlogでは、SN16913P、K174ΠC1/S042P、TA7358P、SA612Aなどを取り上げています。←それぞれリンクしますので詳しくはそちらで。 変調器やミキサー回路として使っている例もありますがどれもプロダクト検波器に使えます。
【CA3102Eのプロ検】
専用のDBM-ICばかりが着目されているようなので少し違うものを紹介しておきます。 CA3102Eは高周波増幅用の差動アンプが2回路入ったICです。図のようにそれら2回路を上手く接続してやることでMC1496のようなDBM回路が構成できます。
各入出力ともにトランス結合で使っていますが、これはMC1496と同様にCR結合で行けるでしょう。負荷がトランス式だと出力のダイナミックレンジが広くとれます。悪くない方法ですがトランスのコストが掛かります。
CA3102EはRCA社が健在の頃なら入手容易だったでしょう。RCAは既になくその後ハリス社など経ていますから現状の生産状況はわかりません。しかし調べてみたらAliexpressではまだ売られていました。 MC1496ならJRC製のセカンドソースが@¥100ーくらいで簡単に手に入りますからあえて探すほどの価値はないのかも知れませんね。 もしもあなたが珍しもん好きならぜひお試しを。
(参考:各種ICでおなじみの新日本無線:New-JRC社は日清紡マイクロデバイスに社名変更したそうです。NMD社って言うんでしょうかね?)
【CA3046のプロ検】
CA3046もRCAのICです。こちらは差動回路が1回路しか入っていないため、MC1496のようなDBMは構成できず、SBMになります。その代わり他に独立したトランジスタが3つ手に入ります。一つは差動増幅のエミッタ側の電流源に使っていますが、余りの2つは低周波増幅を構成するなど様々な活用が可能です。
最初の写真にあるCA3046は比較的たくさん出回っていたころ購入したものです。 どんな物が届くかわかりませんがAliexpressでは今でも売られています。RCA以外のセカンドソースもあったので比較的手に入りやすいかも知れませんね。
トランジスタ・アレーのようなICなので外付け部品が多くなってしまい使い易くありません。それだけ工夫の余地があるとも言えますので考えてみるのも楽しいでしょう。 ラジオの高周波部をこれ一つで構成した例を見たことがあります。確かにトランジスタ5個と思えばラジオのコンバータ回路やIFアンプが十分に構成可能ですよね。
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以上、様々なプロダクト検波を見てきました。JAの雑誌、例えばCQ誌やHJ誌・・なども確認したのですが載っているのはほぼ外誌の引用あるいは焼き直しによるものです。ならば大元の資料の参照で・・・と言うことにしました。主に米QST誌やARRLの出版物を参照していますが悪しからずご理解ください。こうした基本的な回路技術は米国.etc,からもたらされることが多いのでしょう。 私は基本的に国産愛好家です。もちろん良いものがあるのならですが。(笑)
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◎最後にメーカー製無線機のプロダクト検波器を眺めてみましょう。
【Collins 75S-1のプロ検】
SSB受信機といえばCollinsのSライン受信機:75Sを外すわけにはゆきません。 しかしCollinsの機器のなかではHAM用の廉価なモデルですから簡潔なプロダクト検波器で済ませています。
三極管を1ユニットだけ使った回路でプレート検波と等価なものでしょう。類似の回路はYAESUのトランシーバ:FT-200にも採用されています。
凝った回路でなくとも実用的な性能が得られれば良い訳でシンプルさは推奨されるべきでしょう。 流石にこれから真空管で受信機を作る人は珍しいと思いますが、半導体で行くのでしたらトランジスタ1石のシンプルなプロダクト検波器も悪くなかったです。SSBやCWがちゃんと復調できます。もちろん欠点もあるのですが。
【DRAKE R4Cのプロ検】
DRAKEの受信機はCollinsの75S以上に廉価版ですからコストダウンの努力は随所に見られます。ただし要所には費用を掛けているので単なる手抜きリグではありません。(笑)
左図の回路はR4Cのプロダクト検波器で周波数は50kHz帯です。 検波回路のロスは少々増えますが低周波アンプで十分補えることから検波回路の方はダイオード2個に倹約しています。 ひずみ特性などは違わない訳でこれで十分なのでしょう。アメリカ的な合理設計と言えますね。
【YAESU FT-101のプロ検】
八重洲無線のFT-101はCollinsのKWM-2Aを意識したトランシーバです。輸出をメインに考えていたのでしょう。トランジスタの特性を良く活かしたRigでした。 プロダクト検波はゴールド・ボンド型のゲルマニウム・ダイオード:1S1007を4つ使ったオーソドックスで確実な回路です。
設計が古いことからICのDBMは使われていません。ただし、後に開発された通信型受信機のFR-101も同じ検波回路ですからこれで不満はなかったのでしょう。FR-101では第二ミキサーにMC1496が使われていますから、プロダクト検波に使う意味があるなら使ったはずです。まあ、それはなかったと言うことでしょうね。
同じ検波回路がFT-101の無印からFT-101Eまで使われました。回路は少し変わりましたがFT-101Z(←該当のBlogにリンク)も同じような検波回路になっています。
【YAESU FTDX-401のプロ検】
原型はFTDX-400型トランシーバにあるのですが、FT-400SやFT-401でも使われた回路です。双三極管を使ったプロダクト検波回路です。 上の方で見た三極管を3つ使った回路と類似です。BFOの注入に使うカソード・フォロワを省いて検波管のグリッドに直接注入しています。
回路定数を見るとわかるのですが、IF信号を相当絞って加えていることがわかります。実際に受信してみると静かで良い音で復調できます。やはりIFアンプの出力をかなり絞るのが秘訣のようです。
ならばIFアンプのゲインは程々で良いのかと言えばそうではありません。十分にAGCを効かせるためにはタップリ増幅する必要があります。 その上で検波回路の方にはかなり絞って与えるように設計するのです。この辺りは常識かも知れませんが、良い音の受信機のためのノウハウでもありましょう。(教えちゃマズかったか・笑)
同じ八重洲無線でもFRDX-400受信機(←該当Blogにリンク)では4ダイオード型の復調回路になってます。真空管機とは言えどもリング検波で済むならそれが合理的だったのかも知れませんね。
【TRIO TS-120Vのプロ検】
半導体機らしくコンパクトに纏められたトランシーバでした。TS-520のあたりからトリオのトランシーバの受信回路は定型化したように感じます。 IFアンプにDG-MOS FETを使いプロダクト検波は4ダイオード式が定着したようです。
ダイオードを使うプロダクト検波器は必ず信号ロスがあります。また歪みにくいとは言っても無闇に大きな信号を加えれば歪んでしまいます。そのためIF信号を絞り気味にすれば検波出力は小さめになるでしょう。あとから低周波増幅で補う方法が合理的です。TS-120Vの検波部もそのようになっています。
トリオはゲルマニウム・ダイオードの1N60が好きだったようです。八重洲無線は同じゲルマニウム・ダイオードでも1S1007(JRC製)を使っていました。私の経験では点接触型ゲルマニウム・ダイオードの1N60の方が故障率が高いように思います。今でしたら迷わずSBDを使うべきなのでしょう。
【TRIO TS-820Sのプロ検】
左図はTS-820のプロダクト検波回路です。4ダイオード式ですが、珍しく振幅と位相のバランスをとってIFアンプへのBFO漏洩を防ぐ設計になっています。 TS-820は登場した時代のフラグシップ機でしたから入念な設計を行なったのでしょう。丁寧さの現れと言えそうです。
それまでのトランシーバと違いIF周波数が8MHz帯にアップした関係で入念な設計になったのかもしれません。455kHzあたりでしたら位相調整の方は省いて支障ありませんが8MHzでは省けなかったのでしょうか。
【MIZUHO MX-6Sのプロ検】
メーカー製Rigの最後はミズホ通信機のハンディ・トランシーバ:MX-6Sからです。愛称のピコ6で有名ですね。同シリーズではもっとも人気のあった6m Bandモデルです。 受信部の回路からプロダクト検波部をピックアップしてみました。
小さなボディに収納するため受信部の回路設計は厳しかった筈です。 だからと言って簡略化すれば感度不足で実用性が損なわれます。従ってオーソドックスで真面目な設計になってます。 小さな筐体によく詰め込んだものだと感心します。
ご覧のようにシンプルな4ダイオード式のプロダクト検波になっています。 検波器ですから多少のバランスずれは支障ありません。無調整な回路で済ませています。基板はとっても窮屈ですからね!
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以上、メーカー製の受信機(部)も含めて様々なプロダクト検波回路を見てきました。 メーカー機では真空管機でも4ダイオード型が多数派のようでした。 TRIO/KENWOODは真空管機のTS-510の時代からすでに4ダイオード式でした。 メーカー機では意外にバラエティが無いように感じますね。 DBM-ICを使う例を見るのはICOMのトランシーバくらいのようです。
アマチュアの自作機ではSA612AのようなICのDBMも良く使われています。 少々ゲイン不足のIF-Amp.との組み合わせでも大きな音で鳴ってくれるのが好まれるのでしょう。 JA-HAMの自作機では東芝のTA7310PやTA7320Pも一時期好んで使われたのですがデバイスの枯渇で廃れたようです。 他のDBM-ICも次々姿を消していますから結局のところ昔のようなディスクリート構成に帰ることになるのかもしれません。
さて、どんなプロダクト検波器が良いでしょうか。 アマチュアの自作機では珍しいデバイスを使ってみたいと言うのも強力な動機になります。そのデバイスを使うと何らかの優位性が得られたならなお良いわけです。
しかしそうした動機はないのでしたらオーソドックスで確実性の高い回路が優れていると思って良いでしょう。 それじゃ面白くないよ・・・って言うのでしたら珍し系のデバイスでも何でもご自由にどうぞ! と言うことでしょうね。 自作品は基本的に一品料理ですから珍奇なデバイスであろうと一向に構わない訳です。それが自分で作る楽しさの一つでもあります。 さて、私はどれで作りますか!?
次回は実践編です。 ではまた。de JA9TTT/1
(つづく)←リンク nm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→いまここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ


