【磁石アース板の製作】
abstract
The "Magnet Earth ground Plate" is made of a thin rubber plate magnet and a thin metal plate.
It has the effect of improving the radiation efficiency of the mobile radio station's on-board antenna.
It can be made from inexpensive materials available at $1- stores. (2024.01.26 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【クルマの貼り薬?】
付けたとき最初に思ったのは「クルマのサロンパスみたい」でした。サロンパスはトクホンって言い換えても良いです。(笑)
今回はモバイル・ステーションの飛びに良く効く「クルマのサロンパス」の話です。
まだ正式名称は確定していないかも知れませんがここでは『磁石アース板・Magnet Earth ground Plate』って呼ぶことにします。やはり「クルマのサロンパス」じゃまずいですから。 商品名をつけるとしたら「Mag-GND」とでもしましょうか。w
構造は単純そのもの。 よく見かける板状のゴム磁石に金属の薄板を貼り付け、その金属板から導線を引き出してあるだけ。 「な〜んだ。そんなものが効くんかい?」と疑われそうですがとても良く効きます。もちろん条件にもよりますが。
☆
今回のBlogではその「磁石アース板」の効用をざっと説明したあと、私が試した作り方と評価結果などを纏めます。 そもそもモバイルからオンジエアされないのならこの先を見ても意味がありませんし、作ったところで役立つこともないでしょう。 例によって早々のお帰りがオススメです。お時間を浪費させては申し訳ないですから。
【接地型アンテナの構造】
図は模式的に書いた接地型アンテナの構造です。 左側は固定局が架設するときの様子です。 垂直のエレメントと必要に応じてローディング・コイルや容量冠(キャパシティ・ハット)などが付いた構造です。 そうした輻射エレメントの構造も重要ではありますが、こうした接地型アンテナでは「大地アース」がたいへん重要であることはご存知の通りです。
電波の飛びにはアンテナの打ち上げ角の影響もありますが、輻射効率が何よりも重要だと思っています。 例えば1/4・λ(=波長の1/4)の垂直アンテナの場合、アース抵抗がゼロと考えれば給電点のインピーダンスは約36Ωになります。ただし、現実にはアースの抵抗はゼロでないためもっと高くなるのが普通です。アース抵抗が10Ω(これはかなり優秀なアースと言える)なら給電点のインピーダンスは46Ωになるでしょう。そして輻射効率は36/46≒0.78となります。約22%のパワーは大地を温めることになる訳です。 接地抵抗がとても重要であることがわかります。仮に接地抵抗が30Ω(良くある値)なら輻射効率は55%になるんですから!
また、今回は触れませんがローディング・コイルのQの値も輻射効率を大きく左右します。詳しいことは短縮アンテナの話のときに致しましょう。
☆
さて、車載アンテナの話です。まさか大地アースを引きずって走ることはできませんから、アンテナの接地側はクルマのボディーになる訳です。(図の右側) クルマのボディーは地球ほどのサイズはありませんのでアースとして大して機能しないように感じるかも知れません。 しかし実際にはかなり大きな金属製の物体であって意外に良好なアースとして働きます。(もちろん車体と大地の間の静電容量も効いてきますが。停車してる場所の影響も受けます)
オンジエアする周波数とも関係しますが輻射エレメントを出た電気力線の終端面積として車のボディーはあんがい大きいと言えます。 経験的な話ですが、アンテナ系の実測からセダンタイプの乗用車で等価的に10Ω前後の接地抵抗を得ました。 さらに大きなボディーの車ならもっと低いアース抵抗として働いてくれるようです。もちろん車のどの場所に接地するかによっても違いはあります。それでも車のボディーが良好なアースになるのは間違いありません。
ですから、アンテナのアース側をどのように接地するか(接続するのか)によっても輻射効率は大きく変わります。理想はアンテナを車体中央に載せ給電点直近のボディーに太い電線でガッチリ接地することです。 しかし通信が目的の軍用車両ならいざ知らずアンテナ基台の直近で愛車の塗装を剥がして太い電線を直接つなぐなどと言った思い切ったことはなかなか出来ないでしょう。(笑)
磁石アース板はアンテナの接地側に取付けてクルマのボディーとの間を静電的に結合させ良好なボディーアースと同等の効果を実現するためのものです。 ですから既に良好なアースができている車載アンテナには効果はありません。 しかし、そうではないアンテナでしたら「たいへん良く」効きます。 電波の飛びだけでなく、リグにRFが回り込んでマイクが痺れるとか何となく動作が不安定だと言った現象にも効果があります。
このような考察から、磁石アース板とボディー間の静電容量は大きいほど有利と言えます。 それには面積を増やすか金属薄板とボディーとの間隔を狭くするしかありません。 必要な静電容量は周波数が低いほど大きくなります。HF帯でも1.9MHzや3.5MHzなら0.01μFくらいあったらFBです。50MHzのように高い周波数なら1000pFもあればマズマズでしょう。 この辺りの感覚は回路屋さんがバイパス・コンデンサの大きさ(容量値)を周波数に応じて使い分けるのと同じです。
【市販の磁石アース板】
今は便利な時代ですから市販品があります。写真のものはその一例で、商品ですから体裁よく綺麗に作られています。
ただ、それだけに相応のお値段になっています。これは商品である以上やむを得ませんね。 それでもこうした磁石アース板が車載アンテナの飛びを改善することが体験として感じられるらしく使ってみたらFBだったと言うレポートもかなり見かけました。 逆に効いているのか良くわからないと言うレポートもあって、おそらく既にボディーアースが良く効いていたのではないかと思います。
ひょっとしたらいかなる場合にも効果的だと勘違いされそうです。 書いたように既に給電点の直近で最短距離という良好なボディー・アースになっているなら効果はありません。 またノンラジアル・タイプと称するアンテナでは理屈上効果は限定的なはずです。ノンラジアル型はV/UHF帯のアンテナに多くて、そうしたものに磁石アース板は必要ないでしょう。
磁石アース板の効果が期待できるのはHF帯から50MHzあたりまでのHAM Bandに接地型アンテナでオンエアするモバイル局です。しかも給電点の直近で車のボディーに十分なアースができていないならかなり効果的ということになります。 以下は製作例ですが面倒なら市販品を付けてみては如何ですか?? 効果が予想できるなら試す価値があります。
【事前に試したいなら】
クッキング用アルミ・フォイルをボディーに仮止めし基台アース側に仮配線して試せます。
【部材集め】
既に構造の説明でわかるように、ごく単純なものですから部品も限られます。 以下のような材料を集めます。
(1)ゴム磁石の薄板
(2)薄い金属板
(3)引き出し用の導線
(4)接続コネクタ・オス・メス
(5)補助材料:防錆用の塗料、ハンダ、熱収縮チューブなど
簡単に説明します。(1)のゴム磁石板ですが、おもて面が粘着シートになったものが売られています。そうした物を選べば(2)の薄板をカットしてそのまま貼り付けられるので便利です。もし、そういうものが無ければ両面テープなどで薄い金属板を貼り付けます。写真のように¥100均ショップのセリアで大きさの違う2種類が売られていました。A4サイズの大きなものと、磁力が強いというA4の半分くらいのサイズのものがありました。 どちらも100円です。
実際に使っているのは強力磁石タイプの方で2枚作って使っています。 A4サイズの方を半分に切って2つ作っても良いでしょう。 2枚に分けるのはクルマに貼る際に大きいままの1枚よりも扱いやすいからです。 なお、強力磁石の方(小さい方)を1枚だけでは静電容量的にやや不足するので2枚作ります。
(2)の薄い金属板はホームセンタで0.1mm厚の銅板を購入しました。銅製品が高騰している影響かだいぶ高価でした。 電気が良く通る金属板ならなんでも良いのでアルミ板も候補です。ただしハンダ付けが難しいので電線の引き出しが厄介かも知れません。 真鍮の薄板もFBですが、チープに行くならブリキやトタン板でも使えるので各自のフトコロしだいです。(笑) 金属板で手を切らないよう気をつけます。
(3)の引き出し線は太めで柔軟性のある電線ならなんでも良いでしょう。わたしは不要になった古い同軸ケーブルの網線側を使いました。
(4)の接続コネクタは着脱式に作る場合に必要です。好みのものを使えば良いでしょう。わたしはカー用品のギボシ端子を使いました。
(5)補助材料は必要に応じて用意します。 銅板を使った場合、少ししたら10円玉のように錆びるでしょう。それでも機能的には支障ないので表面の塗装は不要かも知れません。
これでなくてはいけないと言った部材はゴム磁石の薄板くらいのものです。これはほかの¥100均にもたくさん置いてあったので容易に見つけられます。あとの部材は各自の好み次第ですし手持ちがあれば十分活用できると思います。
【銅の輝きをいつまでも・笑】
クリヤー・ラッカーが余っていたので使い切るために吹き付けておきました。 こうしておけば銅板が綺麗なまま使えます。
別にクリヤーでなくても良いのですが、クリヤーラッカーは金属板への密着性が良く剥離しにくいためFBだと思います。 クルマのボディーカラーに塗装するのもFBだと思いますが、一度薄くクリヤーを吹いてから好きな色に塗装するとカラーペイントが剥がれにくくなります。
【引き出し線は太く短く】
引き出し線です。 太く短くが理想ですが、あまり短いと扱いにくいので適当な長さが必要です。 アンテナ基台の設置場所によっても違ってきます。 不要になった同軸ケーブルの網線側を剥いて使いました。
ギボシ端子を片端にハンダ付けしました。 網線には熱収縮チューブを被せておきます。
磁石アース板の側は直接ハンダ付けします。 表面のラッカー塗料を必要なだけ剥がしてやればハンダが良く乗ってくれます。
【磁石アース板が完成】
薄い銅板がやや高価だったので¥3k-くらい掛かりましたが、メーカー製の実売価格もそれくらいです。 ただし1枚ですから追加でもう一枚買えば倍になります。 十分な容量を持った磁石アース板ができましたから自作にメリットがあったと思いました。
HAMのコダワリ(笑)で銅板にしましたが、アルミとか真鍮板で間に合わせればずっと安く上がります。 安く作っても効果は違わないはずですから各自工夫するとコスパが良くなるでしょう。
【静電容量はどれくらいか?】
写真は強力磁石タイプで作った小型版の方をLCRメータで測定している様子です。 マグネットを鉄板に貼り付けて測定しました。
約800pFありました。 実際に使ってみますと、6m Bandなら1枚でも十分そうです。 7MHz〜14MHzともなると不足するようですから2枚使うことにしました。
A4サイズの磁石アース板の静電容量は約5,000pFあります。 これは磁力がやや弱い代わりにゴム磁石が薄いため有利なのでしょう。電極間隔が狭くなる訳です。 A4版を半分に切って2,500pFなら1枚でもかなり効くはずです。 ただし磁力はだいぶ弱くなるので付けたままの走行は風圧で剥がれる可能性があります。 半固定局で着脱しながらの運用なら悪くないと思います。
【全部貼っても・・】
ある程度以上の静電容量(キャパシタンス)があれば十分なのでたくさん貼っても効果は比例しません。(笑)
いくつかの実験によれば、7MHzあたりまでなら800pFの磁石アース板を2枚使えば十分なようでした。
このように3枚目を追加してもわずかな違いしか認められません。 最初の写真のように2枚使えば十分ということになります。 この先のアンテナ実験では強力磁石のアース板(小型の方)を2枚だけ使うことにしました。 電気的な性能から考えると板厚の薄いA4版の方を半切りにしたアース板1枚でも十分かもしれませんが・・・。
☆
磁石アース板なんて言うつまらん物の製作話は固定局でオンエアするHAMには興味はなかったでしょう。 しかしモバイルからのオンジエアならかなり重要なアイテムです。
今回は輻射効率の良いアンテナを実現するために欠かせないアースの対策を考えました。 モバイルからのオンジエアでは他にも考えておくべきテーマがいくつかあります。
例えば:
(1)アンテナ取付:目的に合ったアンテナ基台の設置場所を探し取り付け方法を検討する必要がある。(前回Blog)
(2)アンテナ本体:電波の出入り口はアンテナ。輻射効率が良く扱いやすくて振動で壊れない堅牢さも必要になる。
(3)ケーブル引込:アンテナの付いた場所から無線機へどのようにケーブルを引込み接続するのか?
(4)電源供給方法:無線機を動作させるには必ず電源が必要。どう供給するのか? 電池ならどう補給するのか?
(5)無線機の設置:移動中もオンエアするのか、半固定で運用するのか。機器の設置場所や方法も変わってくる。
(6)オンエア環境:快適な移動運用の用意。事前情報、食料、飲料水、冷暖房、虫除け、日除け,etc
・・・など。
☆ ☆ ☆
移動運用のヒントを一つ。近くに車体があれば良好なアースになります。カウンタ・ポイズを引回す前にボディ・アースを試してみてはいかが? またこれは非常通信に限られると思いますが、路肩のガードレールに貼付けてアース代用とすることも可能です。 製作した磁石アース板も使い方次第で新たな効果を発揮できます。
昔の話になりますが、3.5MHzのモバイルでオンエアしていたころ、アンテナのアース側は車のボディーに(もちろん見えない所に)直接ハンダ付けしてました。だから磁石アース板なんて不要でした。
これはアンテナが長大なので牽引フックの先を延長したリア・バンパーのあたりに給電点があったからです。そこから太い網線でボディーへガッチリアースしていたのでした。 あっ、つまんない昔話でしたね。え!kwskやれって?(またいつかね・笑) 次回はアースじゃなくってアンテナの話にしましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)fm
2024年1月26日金曜日
2024年1月11日木曜日
【Antenna】Automobile Radio and Antennas
【自動車無線と車載アンテナの話】
abstract
Modern vehicles are more aerodynamic in character. It has become more difficult to mount HAM antennas in such vehicles. This Blog explains how to find and mount the antenna where it can be installed. Modern cars can also be used to enjoy amateur radio. (2024.01.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【アンテナが付くクルマ】
『今どきのクルマにアンテナなんて付かないよ』アキバのHAMショップで店員に冷たくそう言われてしまいました。
最近の車に向いた(付けられる)アンテナ基台にどんなものがあるのか知りたかっただけなのですが・・・。しかし「そんなものなんて無い」ってあっさり言われてしまいました。車種やどんなアンテナを付けたいのか聞くでもなしに・・・。
『無線やりたい人は始めにクルマを選ぶんですよ』とも言われました。 まあ「そうかも知れないな」とは思ったものの、何とかする術(すべ)はないものかここは一旦引き下がって考えてみることにしたのです。
☆
左の写真を見てしまったら『な〜んだ、もうちゃんと付いてるじゃん』と思うでしょう。 そうなんです、結果として問題なく付けられたのです。ただ、取付場所は限られるしアンテナ基台も選ばないと付けられません。 HAMショップの店員さんにはその辺りの情報が欲しかったのですが、たぶんご自身で付けたことがなければ無理な話だったのかも知れませんね。(今どきの店員さんの不勉強とも言えますけど・・・)
もちろん車種にかなり依存しますから一般性のある話は難しいでしょう。しかし「今ふうのクルマにもアンテナは付く」のです。旨く付けられそうな場所さえ見つかればあとは選択と工夫でカバーできます。
以下、今ふうの自動車にアンテナ基台を取り付けてテスト・オンエアすると言った単純なお話です。モバイルでのアマ無線の運用に興味がなければつまらないでしょう。ここらでお帰りになることをお薦めします。
【古いアンテナ基台】
まず始めに取付可能な方法を検討したいと思ったのです。それには何か見本になるアンテナ基台があったほうが検討し易いでしょう。 それで物置を探していたら以前の車で使っていたアンテナとその基台が出てきました。
25年くらい前はセダン型乗用車(いすゞ・ジェミニ)に乗ってました。V/UHF帯のアンテナをトランクリッド(トランクの蓋部分)に付けていたのです。そのときのアンテナ基台とV/Uアンテナは車を替えた時に取り外したまま残してありました。
写真は取り付けを検討するために整備を済ませたアンテナ基台とケーブルです。物置で見つけた時はかなりひどい状態に見えました。取り付けたまま何年も屋外に晒していたのでサビが出ていて樹脂製パーツもずいぶん劣化していました。ただ、劣化は致命的ではなかったため一般的な部品(ボルト類など)に交換して整備できたのです。
この基台は小型・軽量なアンテナを目的としたものでしょう。コンパクトですから狭い隙間でも取り付けられます。 それで現用車で付けられそうな場所を探したところリア・ハッチのコーナー部分が良さそうでした。コーナーの部分は強度が持たせてありペコペコする感じもありません。意外にリジットな(強固な)構造になっているようでした。重いハッチを支えているヒンジ部分に隣接する場所だからでしょう。
【細芯同軸を交換】
ケーブルを隙間から引き込み易くする目的で基台を出た部分は細い同軸ケーブルになっています。その細い同軸をドアなどのパッキン材のゴム帯(ウェザーストリップ)の隙間から強引に(笑)車内へ引き込む訳です。
ただ、どうしても同軸が潰れ気味になります。この基台に付いていた同軸も潰れていました。導通はありましたがインピーダンス不整合や切れかかりでロスが出たら面白くありません。この際、新しいケーブルに交換しておきました。
写真は太いケーブルとの接続部分です。両面プリント基板を使った簡素な構造になっていました。まあ430MHzくらいまでならコンパクトに繋げばそれほどロスにもならないのでしょう。新しい細芯同軸ケーブルに交換して補修しておきました。(茶色のケーブルが交換した新しいもの)写真のように簡易な耐水のために高周波ワニスを塗っておきました。アンテナ・コートなどを塗っておくのも良さそうです。
☆
なるべく手持ち機材を活用する方針でやっています。買ってしまえば手っ取り早いですが、手持ちの「保存品」はいずれゴミになってしまうでしょう。このさき車載アンテナはなるべく手持ちの部材で検討し工夫でカバーできないときだけは購入する方針で進めます。
【リア・ハッチのコーナーに取付】
写真のように取り付けてみました。 台座をクランプするためにはある程度面積のある平坦部分が必要です。 最近の車は曲面が基調でそうした場所がほとんどないので基台を(アンテナを)付けにくいのでしょう。
車種は2023年2月に納車されたトヨタ・シエンタです。 リアのドアはスライド式ですからルーフサイドにマウントするのは難しそうです。 また今どきの乗用車には「雨どい」のように台座を固定できる構造物はありません。セダンのようなトランクもありませんからあとはエンジンフードのエッジくらいしか付けられそうな場所はなさそうだと思いました。(もちろんルーフキャリヤを付けてそこにと言った手段もありますがアンテナのためだけにキャリヤを付けたくはないのです)
もう一度よく観察したところ、リア・ハッチのエッジ部分なら開閉時にもボディーと干渉せずにアンテナの取り付けが可能そうです。 台座をクランプするために必要な平坦部分もある程度得られそうでした。台座金具を挟み込む隙間もそこそこあります。 裏側に細い同軸ケーブルを通せるだけのスペースもありました。 さっそく台座を仮止めしたところケーブルの車内引き込みも可能そうです。
探し出した古い基台でもアンテナ取付の検討には十分役立ってくれました。
【ボディーと干渉せず】
アンテナを付けたことでリア・ハッチの開閉に支障が出ると不便になってしまいます。 うまいことにリア・ハッチを跳ね上げると基台を付けたエッジ部分がもち上がります。
そのため取り付けたアンテナがボディーと干渉することもありませんでした。 この場所はなかなか都合の良い位置だったようです。
【クランプとケーブル引き込み】
やや見にくい写真ですが、台座をクランプしている様子です。 取り付け部分の塗装面に傷をつけないようクランプ部分は板ゴムとアルミ板で挟み込む構造になっています。最近のアンテナ基台ならほぼすべてがそうなっているでしょう。
ケーブルの車内引き込みについて簡単に説明します。 閉めたときリア・ハッチが当たるボディー側の部分にはゴム製のウェザーストリップが巡らせてあります。 ゴム製のウェザーストリップには十分な厚みがあって細い同軸ケーブルを挟んでも問題なさそうです。 しか単に挟み込んだのではどうしても隙間ができます。雨水の侵入を完全に防ぐことはできないかも知れません。
そこではめ込まれているウェザーストリップを浮かせその下を通すことにしました。 ウェザーストリップ下のボディー部分の鉄板端部を少しだけ削ります。細い同軸ケーブルを通すためです。 幅5mm、深さ7mmくらいのU字型のくぼみを設けました。 鉄板は薄いため丸ヤスリでごく簡単に加工できます。
そのU字の部分を通してあまり無理せずに同軸ケーブルを引き込めました。 ウェザーストリップの下を通過する部分の同軸ケーブルには自己融着テープを数回厚めに巻きその上からアセテート布テープを巻いてケーブルの潰れと隙間からの雨水浸透を防ぐように対策しておきました。 なお鉄板をヤスリで削った部分(U字断面)にはエナメル塗料を塗って簡単に防錆しておきました。
【アンテナにはnanoVNAが重宝する】
写真は少し前から流行っているnanoVNAというハンディな測定器でアンテナのSWR特性を観測している様子です。 黄色のトレースがSWRを示しており145MHzを中心に上下25MHzの幅で観測しています。最下端の罫線がSWR=1のラインで縦目盛り1つが「1」です。
このように145MHzを中心にまずまずのSWR値を示しており、物置からサルベージした古いアンテナとアンテナ基台(ケーブル付き)が十分役立つことがわかりました。 もっともケーブルの方は潰れていた細芯同軸ケーブルを交換してありますけれど・・・。
nanoVNAの効用はいまさら言うまでもないかも知れません。 この写真のようにアンテナの共振状態がビジュアルに観測できます。 きちんと設置できているのか、あるいは幾らか長さの調整が必要なのか画面から一目瞭然です。
もう昔のようにハンディ・トランシーバとSWR計を使い周波数を変えながら様子を見るといった手間はありません。 こうした「便利なツール」が数千円で手に入るのですから有効活用しなかったら何だか損した気分になりそうですね。
nanoVNAの使い方は様々な雑誌で幾度となくしつこいほど(笑)特集されています。そちらをご覧ください。 アンテナ製作で必要な最低限の使い方については、そのつどBlogでも扱うつもりです。 流行りだからと言って意味もわからずに買うのは馬鹿げていますが、もしアンテナをやるなら持っていて損のない道具です。 一般的なHAM局の場合、nanoVNAはアンテナの調整や確認に使うだけでしょう。たぶんそれ以外の用途はありません。ハヤリだからと言って流されませんように!
【V/UHFは高さに勝るものなし】
自宅の駐車場でテストしていても「飛び具合」はよくわかりませんでした。 近所の小高い丘へ移動してテストしてみました。
ここは小高く見晴らしが良いのでずいぶん良く聞こえます。ちょっとレポートをもらってみたのですがホイップ・アンテナとしては普通に飛んでいるように感じました。
たぶん車からV/UHF帯にオンジエアすることは稀です。 誰かと出掛ける時にはあった方が便利かもしれませんが走りながらオンジエアするつもりはあまりないのです。
どこか見晴らしの良いロケーションで半固定してオンジエアすると面白そうだなあ・・と。 車で寄れる見晴らしの良い所はたくさんありますので・・・。
【テストに使ったRig】
IC-9700を使いました。電源はクルマのDC12Vを供給しても良かったのですが、テストを兼ねて新車購入時にオプションで付けておいたAC100V/1,500Wの車載電源を試してみます。
まず電圧を実測したら荷室側アウトレットの所で102.5Vあって周波数はほぼ正確に50Hzでした。(簡易測定ですが49.98Hzでした) このAC100VからDC12Vを作るためにはスイッチング電源ユニットを使います。ここで使ったSW電源ユニットの電流容量は25Aくらいありますから最大50Wのリグには十分でしょう。
ここで気になるのは車載AC100V電源から出るインバータ・ノイズです。 私が使ったTDK製のスイッチング電源は固定シャックで使ってもノイズが問題になったことはありません。従ってクルマ(トヨタ・シエンタHV)に搭載のAC100V電源(たぶん擬似正弦波のDC/ACインバータ)のノイズはどうなのかと言うことになります。
結論から言うとノイズはまったく気になりませんでした。まあV/UHF帯までインバータ・ノイズの高調波が及んでいることもないのでしょう。 かなり静かな場所でワッチしても大丈夫そうです。 むしろ周辺環境から受ける正体不明のノイズが気になったくらいでした。
聞くところによれば、最近のハイブリッド車ではハイブリッドシステムの遮蔽(シールド)はかなり厳重なのだそうです。自身がノイズを出さないばかりか、外部からの強電界でも誤動作しないよう十分なシールドが施されているようです。車載のAC100V電源もそのシステムの一部な訳です。昨今はEMIの発生やEMCの耐性が問題になっており車とは言えども他の電子機器と同様の電磁波対策が行われているのでしょう。 むしろ誤動作は人命に関わるだけにより一段と厳しいのかもしれません。
☆ ☆ ☆
【左側用の基台】
V/UHF帯のモービル運用が最終目標ではないのです。 もちろんあったら便利ですから右側後方に付けた144MHz/430MHzのアンテナと基台はそのままにしておきましょう。
このテストで付けたアンテナ基台はTNC型という同軸コネクタが使われていました。それとセットになるアンテナもあったので好都合だったのですが、昨今の市販アンテナではTNCコネクタはほとんど見かけません。 市販のモービル・ホイップ・アンテナはM型コネクタが多いようですし、小ぶりのアンテナではBNC型あるいはSMA型も多くなっています。
この先、いくつか車載アンテナを実験したいと思っています。そのために左側にもアンテナ基台を付けましょう。 物置から50MHz用らしい未調整のホイップ・アンテナも出てきました。これはM型コネクタです。先々を考えてM型コネクタが付けられるようなアンテナ基台を購入することにしました。 これから実験するアンテナはM型コネクタで統一すれば良い訳です。
今度はどんなサイズと構造のアンテナ基台なら支障なく取り付けられるのか目星が付いています。メーカーのサイトを見てK416型というトランク・ハッチバック用と称するアンテナ基台を発注しました。 これは問題なく取り付け可能でした。 ケーブルの引き込みも右側と同じようにやれば良い訳ですから迷いもありません。 なるべく手持ちを活用する方針ですが無いものは潔くスパッと購入します。(笑) 必要となるM型の座が付いたケーブルセットは手持ちに新品がありました。
次回は違うHAMバンドのアンテナにチャレンジしたいと思います。 まだその前に幾つかやるべき課題もあったかな?? ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)nm
abstract
Modern vehicles are more aerodynamic in character. It has become more difficult to mount HAM antennas in such vehicles. This Blog explains how to find and mount the antenna where it can be installed. Modern cars can also be used to enjoy amateur radio. (2024.01.11 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【アンテナが付くクルマ】
『今どきのクルマにアンテナなんて付かないよ』アキバのHAMショップで店員に冷たくそう言われてしまいました。
最近の車に向いた(付けられる)アンテナ基台にどんなものがあるのか知りたかっただけなのですが・・・。しかし「そんなものなんて無い」ってあっさり言われてしまいました。車種やどんなアンテナを付けたいのか聞くでもなしに・・・。
『無線やりたい人は始めにクルマを選ぶんですよ』とも言われました。 まあ「そうかも知れないな」とは思ったものの、何とかする術(すべ)はないものかここは一旦引き下がって考えてみることにしたのです。
☆
左の写真を見てしまったら『な〜んだ、もうちゃんと付いてるじゃん』と思うでしょう。 そうなんです、結果として問題なく付けられたのです。ただ、取付場所は限られるしアンテナ基台も選ばないと付けられません。 HAMショップの店員さんにはその辺りの情報が欲しかったのですが、たぶんご自身で付けたことがなければ無理な話だったのかも知れませんね。(今どきの店員さんの不勉強とも言えますけど・・・)
もちろん車種にかなり依存しますから一般性のある話は難しいでしょう。しかし「今ふうのクルマにもアンテナは付く」のです。旨く付けられそうな場所さえ見つかればあとは選択と工夫でカバーできます。
以下、今ふうの自動車にアンテナ基台を取り付けてテスト・オンエアすると言った単純なお話です。モバイルでのアマ無線の運用に興味がなければつまらないでしょう。ここらでお帰りになることをお薦めします。
【古いアンテナ基台】
まず始めに取付可能な方法を検討したいと思ったのです。それには何か見本になるアンテナ基台があったほうが検討し易いでしょう。 それで物置を探していたら以前の車で使っていたアンテナとその基台が出てきました。
25年くらい前はセダン型乗用車(いすゞ・ジェミニ)に乗ってました。V/UHF帯のアンテナをトランクリッド(トランクの蓋部分)に付けていたのです。そのときのアンテナ基台とV/Uアンテナは車を替えた時に取り外したまま残してありました。
写真は取り付けを検討するために整備を済ませたアンテナ基台とケーブルです。物置で見つけた時はかなりひどい状態に見えました。取り付けたまま何年も屋外に晒していたのでサビが出ていて樹脂製パーツもずいぶん劣化していました。ただ、劣化は致命的ではなかったため一般的な部品(ボルト類など)に交換して整備できたのです。
この基台は小型・軽量なアンテナを目的としたものでしょう。コンパクトですから狭い隙間でも取り付けられます。 それで現用車で付けられそうな場所を探したところリア・ハッチのコーナー部分が良さそうでした。コーナーの部分は強度が持たせてありペコペコする感じもありません。意外にリジットな(強固な)構造になっているようでした。重いハッチを支えているヒンジ部分に隣接する場所だからでしょう。
【細芯同軸を交換】
ケーブルを隙間から引き込み易くする目的で基台を出た部分は細い同軸ケーブルになっています。その細い同軸をドアなどのパッキン材のゴム帯(ウェザーストリップ)の隙間から強引に(笑)車内へ引き込む訳です。
ただ、どうしても同軸が潰れ気味になります。この基台に付いていた同軸も潰れていました。導通はありましたがインピーダンス不整合や切れかかりでロスが出たら面白くありません。この際、新しいケーブルに交換しておきました。
写真は太いケーブルとの接続部分です。両面プリント基板を使った簡素な構造になっていました。まあ430MHzくらいまでならコンパクトに繋げばそれほどロスにもならないのでしょう。新しい細芯同軸ケーブルに交換して補修しておきました。(茶色のケーブルが交換した新しいもの)写真のように簡易な耐水のために高周波ワニスを塗っておきました。アンテナ・コートなどを塗っておくのも良さそうです。
☆
なるべく手持ち機材を活用する方針でやっています。買ってしまえば手っ取り早いですが、手持ちの「保存品」はいずれゴミになってしまうでしょう。このさき車載アンテナはなるべく手持ちの部材で検討し工夫でカバーできないときだけは購入する方針で進めます。
【リア・ハッチのコーナーに取付】
写真のように取り付けてみました。 台座をクランプするためにはある程度面積のある平坦部分が必要です。 最近の車は曲面が基調でそうした場所がほとんどないので基台を(アンテナを)付けにくいのでしょう。
車種は2023年2月に納車されたトヨタ・シエンタです。 リアのドアはスライド式ですからルーフサイドにマウントするのは難しそうです。 また今どきの乗用車には「雨どい」のように台座を固定できる構造物はありません。セダンのようなトランクもありませんからあとはエンジンフードのエッジくらいしか付けられそうな場所はなさそうだと思いました。(もちろんルーフキャリヤを付けてそこにと言った手段もありますがアンテナのためだけにキャリヤを付けたくはないのです)
もう一度よく観察したところ、リア・ハッチのエッジ部分なら開閉時にもボディーと干渉せずにアンテナの取り付けが可能そうです。 台座をクランプするために必要な平坦部分もある程度得られそうでした。台座金具を挟み込む隙間もそこそこあります。 裏側に細い同軸ケーブルを通せるだけのスペースもありました。 さっそく台座を仮止めしたところケーブルの車内引き込みも可能そうです。
探し出した古い基台でもアンテナ取付の検討には十分役立ってくれました。
【ボディーと干渉せず】
アンテナを付けたことでリア・ハッチの開閉に支障が出ると不便になってしまいます。 うまいことにリア・ハッチを跳ね上げると基台を付けたエッジ部分がもち上がります。
そのため取り付けたアンテナがボディーと干渉することもありませんでした。 この場所はなかなか都合の良い位置だったようです。
【クランプとケーブル引き込み】
やや見にくい写真ですが、台座をクランプしている様子です。 取り付け部分の塗装面に傷をつけないようクランプ部分は板ゴムとアルミ板で挟み込む構造になっています。最近のアンテナ基台ならほぼすべてがそうなっているでしょう。
ケーブルの車内引き込みについて簡単に説明します。 閉めたときリア・ハッチが当たるボディー側の部分にはゴム製のウェザーストリップが巡らせてあります。 ゴム製のウェザーストリップには十分な厚みがあって細い同軸ケーブルを挟んでも問題なさそうです。 しか単に挟み込んだのではどうしても隙間ができます。雨水の侵入を完全に防ぐことはできないかも知れません。
そこではめ込まれているウェザーストリップを浮かせその下を通すことにしました。 ウェザーストリップ下のボディー部分の鉄板端部を少しだけ削ります。細い同軸ケーブルを通すためです。 幅5mm、深さ7mmくらいのU字型のくぼみを設けました。 鉄板は薄いため丸ヤスリでごく簡単に加工できます。
そのU字の部分を通してあまり無理せずに同軸ケーブルを引き込めました。 ウェザーストリップの下を通過する部分の同軸ケーブルには自己融着テープを数回厚めに巻きその上からアセテート布テープを巻いてケーブルの潰れと隙間からの雨水浸透を防ぐように対策しておきました。 なお鉄板をヤスリで削った部分(U字断面)にはエナメル塗料を塗って簡単に防錆しておきました。
【アンテナにはnanoVNAが重宝する】
写真は少し前から流行っているnanoVNAというハンディな測定器でアンテナのSWR特性を観測している様子です。 黄色のトレースがSWRを示しており145MHzを中心に上下25MHzの幅で観測しています。最下端の罫線がSWR=1のラインで縦目盛り1つが「1」です。
このように145MHzを中心にまずまずのSWR値を示しており、物置からサルベージした古いアンテナとアンテナ基台(ケーブル付き)が十分役立つことがわかりました。 もっともケーブルの方は潰れていた細芯同軸ケーブルを交換してありますけれど・・・。
nanoVNAの効用はいまさら言うまでもないかも知れません。 この写真のようにアンテナの共振状態がビジュアルに観測できます。 きちんと設置できているのか、あるいは幾らか長さの調整が必要なのか画面から一目瞭然です。
もう昔のようにハンディ・トランシーバとSWR計を使い周波数を変えながら様子を見るといった手間はありません。 こうした「便利なツール」が数千円で手に入るのですから有効活用しなかったら何だか損した気分になりそうですね。
nanoVNAの使い方は様々な雑誌で幾度となくしつこいほど(笑)特集されています。そちらをご覧ください。 アンテナ製作で必要な最低限の使い方については、そのつどBlogでも扱うつもりです。 流行りだからと言って意味もわからずに買うのは馬鹿げていますが、もしアンテナをやるなら持っていて損のない道具です。 一般的なHAM局の場合、nanoVNAはアンテナの調整や確認に使うだけでしょう。たぶんそれ以外の用途はありません。ハヤリだからと言って流されませんように!
【V/UHFは高さに勝るものなし】
自宅の駐車場でテストしていても「飛び具合」はよくわかりませんでした。 近所の小高い丘へ移動してテストしてみました。
ここは小高く見晴らしが良いのでずいぶん良く聞こえます。ちょっとレポートをもらってみたのですがホイップ・アンテナとしては普通に飛んでいるように感じました。
たぶん車からV/UHF帯にオンジエアすることは稀です。 誰かと出掛ける時にはあった方が便利かもしれませんが走りながらオンジエアするつもりはあまりないのです。
どこか見晴らしの良いロケーションで半固定してオンジエアすると面白そうだなあ・・と。 車で寄れる見晴らしの良い所はたくさんありますので・・・。
【テストに使ったRig】
IC-9700を使いました。電源はクルマのDC12Vを供給しても良かったのですが、テストを兼ねて新車購入時にオプションで付けておいたAC100V/1,500Wの車載電源を試してみます。
まず電圧を実測したら荷室側アウトレットの所で102.5Vあって周波数はほぼ正確に50Hzでした。(簡易測定ですが49.98Hzでした) このAC100VからDC12Vを作るためにはスイッチング電源ユニットを使います。ここで使ったSW電源ユニットの電流容量は25Aくらいありますから最大50Wのリグには十分でしょう。
ここで気になるのは車載AC100V電源から出るインバータ・ノイズです。 私が使ったTDK製のスイッチング電源は固定シャックで使ってもノイズが問題になったことはありません。従ってクルマ(トヨタ・シエンタHV)に搭載のAC100V電源(たぶん擬似正弦波のDC/ACインバータ)のノイズはどうなのかと言うことになります。
結論から言うとノイズはまったく気になりませんでした。まあV/UHF帯までインバータ・ノイズの高調波が及んでいることもないのでしょう。 かなり静かな場所でワッチしても大丈夫そうです。 むしろ周辺環境から受ける正体不明のノイズが気になったくらいでした。
聞くところによれば、最近のハイブリッド車ではハイブリッドシステムの遮蔽(シールド)はかなり厳重なのだそうです。自身がノイズを出さないばかりか、外部からの強電界でも誤動作しないよう十分なシールドが施されているようです。車載のAC100V電源もそのシステムの一部な訳です。昨今はEMIの発生やEMCの耐性が問題になっており車とは言えども他の電子機器と同様の電磁波対策が行われているのでしょう。 むしろ誤動作は人命に関わるだけにより一段と厳しいのかもしれません。
☆ ☆ ☆
【左側用の基台】
V/UHF帯のモービル運用が最終目標ではないのです。 もちろんあったら便利ですから右側後方に付けた144MHz/430MHzのアンテナと基台はそのままにしておきましょう。
このテストで付けたアンテナ基台はTNC型という同軸コネクタが使われていました。それとセットになるアンテナもあったので好都合だったのですが、昨今の市販アンテナではTNCコネクタはほとんど見かけません。 市販のモービル・ホイップ・アンテナはM型コネクタが多いようですし、小ぶりのアンテナではBNC型あるいはSMA型も多くなっています。
この先、いくつか車載アンテナを実験したいと思っています。そのために左側にもアンテナ基台を付けましょう。 物置から50MHz用らしい未調整のホイップ・アンテナも出てきました。これはM型コネクタです。先々を考えてM型コネクタが付けられるようなアンテナ基台を購入することにしました。 これから実験するアンテナはM型コネクタで統一すれば良い訳です。
今度はどんなサイズと構造のアンテナ基台なら支障なく取り付けられるのか目星が付いています。メーカーのサイトを見てK416型というトランク・ハッチバック用と称するアンテナ基台を発注しました。 これは問題なく取り付け可能でした。 ケーブルの引き込みも右側と同じようにやれば良い訳ですから迷いもありません。 なるべく手持ちを活用する方針ですが無いものは潔くスパッと購入します。(笑) 必要となるM型の座が付いたケーブルセットは手持ちに新品がありました。
次回は違うHAMバンドのアンテナにチャレンジしたいと思います。 まだその前に幾つかやるべき課題もあったかな?? ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)nm
2023年12月27日水曜日
2022年12月8日木曜日
Kumano Pilgrimage :熊野詣で
【熊野三山を巡る旅】 (Link : 熊野三山)
Photo : 2022.11.15 12:10 JST : JL215
Photo : 2022.11.15 12:11 JST : JL215 Wing
Photo : 2022.11.16 09:31 JST : Kumano Hongu Taisya / 熊野本宮大社
Photo : 2022.11.16 11:01 JST : Kumano Hayatama Taisya / 熊野速玉大社
Photo : 2022.11.16 13:36 JST : Kumano-Kodo / 熊野古道・大門坂
Photo : 2022.11.16 14:27 JST : Kumano Nachi Taisya / 熊野那智大社
Photo : 2022.11.16 14:36 JST : Nachi Waterfall / 那智の瀧
Photo : 2022.11.17 13:52 JST : JL214
皆さまにとって令和五年が良いお年でありますように.
2022年11月24日木曜日
Audio CW Filter and AF-Power Amp.
【オーディオCWフィルタとパワーアンプ】
【フィルタ付き低周波アンプを作る】
「私だけの受信機設計」の第12回です。今回は低周波アンプ部を製作します。
ここまでのテストでは低周波アンプにLM380Nと言う低周波パワーアンプ用のICを使ったものを使ってきました。 電圧利得で50倍だけ増幅するシンプルなパワーアンプでした。8Ωのスピーカを負荷にしたときの無歪最大出力は250mWくらいです。
まずまず使い物になるのでそのまま低周波アンプとしても良かったのですが、通信型受信機にマッチした「低周波アンプユニット」をあらためて作ることにしました。 3kHzのローパスフィルタと聴感の良いオーディオCWフィルタを組み合わせた低周波アンプ部を作ります。
☆
受信機の低周波アンプなんて必要なゲインがあれば「適当なもので良い」と思うかも知れません。 しかし意外に重要な部分なのです。 低周波アンプ回路のひずみ特性や周波数特性が良くないと特有の音色を持ちます。ワッチしていて疲れる受信機になってしまうかも知れません。受信了解度にも影響がでるでしょう。 プロの受信機を見ると思った以上に凝った回路になっていて勉強させられます。
メーカー製のアマチュア機ではシンプルに低周波アンプ用のICを使う例がほとんどです。コストの問題もあるのでしょう。しかし、小音量で聞くことが多いシャックではクロスオーバー歪が気になることがあります。 特に大きな音量が出せる固定機ではその傾向があります。パワーの大きなカーオーディオ用のICを使っているのが原因でしょう。
合わせて無線機内蔵のスピーカーもチープなものがほとんどです。それで良い音は無理です。外付けスピーカを使いましょう。無線機のオプション品も良いですがミニコンポ用(リサイクルショップで購入)がオススメです。たった数百円〜で音質良好になります。
ここでもパワーアンプ用のICを使いました。AB級アンプなのでちょっと心配したのですが小出力でワッチしていてもまずまずでした。それで気になって来たらグレードアップも可能です。
高周波部に比べて低周波アンプ部は受信機の本質的な部分ではないと思われがちです。たしかに高周波部に比べて重要度や難易度がやや低いのはその通りです。 ここでは意外に凝った低周波アンプ部になりました。 単純なオーディオアンプで十分と思っているのでしたら複雑過ぎると感じるでしょう。しかしやさしいところで手を抜くと良い結果は得られないかも知れません。w
【アナログで作るオーディオCWフィルタ】
だいぶ前のBlogで扱った「音の良いCWフィルタ」を使います。 過去のBlog(←リンク)では同じ回路で様々な特性のフィルタが作れることに面白さを感じたことが出発点でした。シミュレーションを主体にした内容です。
もちろん良い性能が得られるので作り甲斐があります。 実際に自作受信機やCWフィルタの帯域外減衰が不十分なFR-101受信機に内蔵させてとても良い結果が得られています。
図の回路はOP-Ampを使った2次のアクティブ・フィルタを4段重ねて様々な特徴を持ったフィルタが作れるという設計になっています。
通信型受信機のCW受信用としては図中の表で2段目の「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と称するフィルタがお奨めです。 -6dBより内側が過渡応答に優れるガウシャン特性で、その外側は遮断特性の良いバターワース型になったフィルタです。 名前の通り-6dBの所で特性が切り替わるという「良いとこ取り」のようなCWフィルタです。
一覧表の赤で囲った部品定数を選びます。 この特性のフィルタはCWのような断続波において、CWトーンの立ち上がり部分でオーバーシュートせず滑らかに立ち上がります。また信号が切れた後に余韻を引かないため粘らないので了解度に影響を及ぼしません。従って200Hzといった狭帯域でも聴感はナチュラルで感触良好です。
図の部品定数表は実際に製作するためのものです。コンデンサや抵抗器は少なくとも1%精度の物を使う必要があります。その上で4つある各セクションをそれぞれ表中の周波数でピークになるよう同調させます。結構シビアな調整が必要なので周波数がHz単位までわかる低周波発振器あるいは周波数カウンタの併用を要します。
E24系列で1%精度の抵抗器は入手容易なので問題はないとして0.039μFで誤差1%のコンデンサが厄介かも知れません。良質なフィルムコンデンサを余分に手に入れてLCRメータで選別する必要があるでしょう。10%や20%の誤差のまま使ったのでは所望の特性が得られないのです。 なお、「0.039μF」という数値に拘るのではなく8個がなるべく同じ容量値になるようにします。例えば8個を0.038μFに揃えても良い訳です。 もちろん容量差の分だけ僅かに中心周波数はズレますがフィルタの特性カーブは保たれます。
【作るCWフィルタの周波数特性】
フィルタと言うとどんな周波数特性なのか気になります。中心周波数が700Hzで-3dBの帯域幅が300Hzの設計です。
ここで選択したフィルタはグラフの緑色のカーブのようになるはずです。 これは誤差のない部品を使ってシミュレーションした結果です。 現実の部品には何がしかの誤差があるので厳密にこのようにはならないかも知れません。
しかし、各段を構成する2次のアクティブ・フィルタはあまりQが高くなく、ゲインも低い設計なので大きく崩れることはないはずです。 配線・組立の後に表中に記された周波数でそれぞれピークが出るように各可変抵抗を調整すればシミュレーションと良く一致した特性が得られます。
もし異なる特性のフィルタを作りたいのなら回路図の表に戻って作ればうまくゆきます。 しかしCWの受信には「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」特性のフィルタをお薦めしたいです。(注:やや特性が甘くなりますがベッセル特性も良い選択です)
【OP-Amp.で作ると】
どんな感じになるのか実際の製作例を示します。 写真は昔作った自作受信機における製作例です。
コンパクトに製作する目的でコンデンサには積層セラコンを使っています。温度補償系のセラコンならマズマズですがフィルム・コンデンサの方が優れます。 できたらマイラ・フィルムのような低周波に向いたコンデンサを使いたいところです。
この写真の製作例では部品を高精度に選ぶことで無調整にしています。そのために部品集めが大変でしたから回路図のように調整式にした方が作りやすいです。
OP-Amp.は4回路入りのTL074CNを使って小型化しています。 他のOP-Amp.でも良いのですがこうしたフィルタ回路にはオーディオ特性(正確に言えばAC特性)の良いOP-Amp.が向いています。 周波数は1kHz以下ですから大抵のものが使えます。
汎用品のLM324NやLM358N系はお手軽なので好きなOP-Amp.ですがこの用途にはやめておいた方が良いです。出力段がC級アンプなのでどうも音が良くありません。 オーディオ用と称するOP-Amp.はFBですがHAMの用途にはちょっと勿体無いかも知れません。お手軽なOP-Amp.としては4558系などが良いのではないでしょうか。あとはお好みです。
以上、周波数は700Hz固定で良い、やっぱり純アナログが一番だ。・・・と言うのでしたらOP-Amp.を使ったCWフィルタが最適です。 部品の選別が必要なので少し作るのは面倒ですが、使用感はなかなか素晴らしいので手間を掛けるだけの価値を感じられます。
参考:フィルタ部のコンデンサ(C1〜C8)のすべてを0.039μF±1%から0.047μF±1%に変更すると約600Hzのフィルタになります。また、0.039μFから減らして0.033μF±1%にすれば約800Hzのフィルタにできます。なお各調整周波数は変更した容量比の逆数分だけ変えます。例えば0.039μF→0.047μなら容量比は47/39≒1.205ですから、各調整周波数は1/1.205を掛けたものになります。(≒0.83倍) この件、あやふやな部分とかもし良くわからなければ聞いてください。わかる範囲でなるべく詳しくご返事します。
上図の回路はCWフィルタ部分だけです。低周波のパワーアンプ部分などは、このあと説明のある回路と同じで大丈夫です。後述の回路図のCWフィルタ部分を上図の回路に置き換えてやれば全く同じように製作できます。 電源電圧も9Vで支障ありません。
☆ ☆
【オーディオCWフィルタ・もう一つの方法】
写真はブレッド・ボードに作ったオーディオCWフィルタと低周波アンプ部です。 SSB用に3kHzのローパス・フィルタも含んでいます。
CWフィルタの部分は始めに紹介したフィルタとまったく同じ特性を持っています。すなわち「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と称する特性のフィルタです。 従って後ほど特性の測定例が出てきますが実測でもシミュレーションそのままです。
ただしCWフィルタの部分にOP-Amp.は使っておらず「スイッチド・キャパシタ・フィルタ」(以下略してSCF)と言うやや特殊なフィルタ専用のICを使って作りました。 SCF-ICはナショナル・セミコンダクタ社(現TI社)のMF10CCNを使いました。写真の上の方に2つある20ピンの大きめのICです。 MF10CCN一つで2次のフィルタが2回路作れます。従って2個使うことで2次のフィルタを4セクション使う最初の説明のような「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」がそっくり同じように作れる訳です。
基板手前左には2回路入りのOP-Amp:TL072CPを使ったプリアンプとローパスフィルタ(LPF)があります。LPFのカットオフ周波数は3kHzで遮断特性は12dB/octです。あまり急峻とは言えませんがもともとI-Fフィルタで帯域制限されていますから、この程度で十分効果的です。 それと、その可能性はほとんど無いのですがSCFのクロック周波数とビートになる周波数で信号通過が起こるのを防ぐ意味があります。(ビートが起こるのは数10kHz〜100kHzと言う可聴域外の周波数なのでそもそも受信機の低周波アンプでは問題にならないのですが・・・)なお、SCFのクロックの話は後ほど出てきます。
右下に見える低周波パワー・アンプ部にはNJM386BDを使いました。 これはナショセミ社のLM386Nと同等のものです。 テスト受信に使っていたLM380Nよりも低い電源電圧向きなので使うことにしました。 オーソドックスすぎますがまずまずの性能です。8Ωのスピーカで最大300mWくらいしか出ませんがシャックに置く受信機には適当なパワーです。 電源電圧を9Vに統一していますので「386」のパワーアンプは無難な選択です。
【スイッチド・キャパシタ・フィルタで作る】
低周波プリアンプ、3kHz-LPF、CWフィルタ、低周波パワーアンプ部の回路図を示します。このユニットへの入力信号はBFO&プロダクト検波ユニット(←この特集第4回へリンク)の出力です。
回路図の上の方の抵抗器がたくさん使ってある部分がCWフィルタです。所定のフィルタ特性を得るためには計算通りの抵抗値が必要です。 キリの良い抵抗値にならないのでE24系列の抵抗器(←リンク)を2本直列で必要な抵抗値を得ている箇所があります。そのため抵抗器の本数が多くなっています。 面倒だからと言って近い値の標準抵抗値に丸めてしまうと所定の特性が得られません。(参考:抵抗器の誤差を±1%とすれば一部に抵抗器の本数を減らして簡略化できる箇所があります)
たくさん抵抗器を使うので複雑であまりメリットはなさそうに思うかも知れません。その代わり0.039μFと言ったコンデンサは不要なのでたくさん買って選別する手間はありません。これは一つ目のメリットです。E24系列で1%精度の抵抗器は普通に売っていますから選別など必要ありません。
ご存知のようにSCFを使ったフィルタにはそれ以上の非常に大きなメリットがあります。 SCF-ICには必ずクロック・パルスを与える必要があるのですが、そのクロックの周波数を可変してやるとフィルタの周波数を自由に変えることができるのです。 OP-Amp.で作った純粋なアナログ式フィルタではもし700Hzで作ると後からフィルタの周波数を変えることはかなり厄介です。8つもあるコンデンサを切り替えるのは大変でしょう。 しかしSCFを使うとクロック・パルスの周波数を変えてやればフィルタの中心周波数を自由自在にできるのです。回路図の例では200Hz以下から8kHzあたりまで変えられます。(CW用なのでそんなに変えられる必要はないのですが・笑)
ここではフィルタの中心周波数は700Hzで-3dBの通過帯域幅は300Hzで設計しています。 その時のクロック周波数は100倍の70kHzを与える設計です。これが設計の出発点です。 しかし後からクロック周波数を変えてやれば700Hz以外のフィルタにもなります。 即ち40kHzのクロック信号を与えれば400Hzの、あるいは100kHzなら1kHzの所にピークが来るCWフィルタになる訳です。もちろん周辺部品を交換する必要は何もありません。 このように中心周波数可変型のCWフィルタを実現するためにSCF-IC:MF10CCNを使いました。
これで「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と言う優れた特性のままで中心周波数を自由に可変できるCWフィルタを作ると言う長年の課題に答えが出せました。(前々から可能なことはわかっていたのですが面倒に感じて手をつけなかっただけなのですが・笑)
クロック発振器にはタイマーICのNE555Pを使いました。可変抵抗器:VR一つで発振周波数が幅広く変えられる矩形波発振器です。 このNE555PとMF10CCNは電源電圧:+9Vの他にその半分の電圧(+4.5V)が必要です。
その+4.5Vの生成にシャント・レギュレータ:TL431Cを使いました。 また、既に書いたように低周波パワー・アンプはNJM386BDです。 この低周波ユニットは+9Vの単電源で動作し無信号時に約34mA流れます。音量のピークでは140mAくらいでした。(8Ωのスピーカ負荷で)
【フィルタの中身はどうなっているか?】
フィルタの設計を詳しく扱うとBlog一回では終わらないので、かいつまんだ話をしましょう。 それと計算式を羅列されても大半のお方にとっては退屈で眠くなるだけでしょう。以下深みにハマらぬ程度でやめておきます。従って数式は登場しません。
まず、仕様を決めるのがスタートになります。CWフィルタですから、中心周波数は800Hz付近に選びます。これは経験的に800Hz付近が聴きやすい周波数だと考えられているからです。もちろん各人の好みで変えても構いません。私はやや低めが好みなので700Hzにしました。 また、通過帯域幅ですが無闇に狭いと使いにくいだけなので200〜300Hzの幅を持たせるのが実用的です。それでもダイヤルの減速が十分でない受信機(トランシーバ)では同調がクリチカルになるのでやや広めが望ましいと思っています。既にI-Fアンプの所に数100Hz幅のCWフィルタが装着済みなら300Hzくらいでも十分ですし、SSBフィルタしか持たない受信機でもそれくらいで不満はないでしょう。
フィルタは「共振器(共振回路)」の数がモノを言います。従ってセクションの数が多いほど急峻になりますが回路はそれだけ複雑になります。過去に6セクションのタイプを製作しましたが過剰だと感じました。複雑さと性能を天秤にかけると2次フィルタの4セクションで十分です。 このようにしてフィルタの概要が決まりますが、CWはバースト波なので過渡応答性を考慮してフィルタ形式を決めます。私の場合は「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」を選ぶことにします。これはベッセル特性でも構いません。過渡応答をそれほど重視しなければ他の形式でも良いです。あとは目的次第です。
その上で、フィルタ形式とセクション数:n=4に従ったポールロケーションと言うものを求めます。これはフィルタ関係のデータブックなどから得ることができます。フィルタ設計のソフトウエアを使っても構いません。 それで得られる設計データは一般に「正規化」されているため所用の周波数へスケーリングの計算を行ないます。その計算を経て4つある2次フィルタの各セクションについてそれぞれ(1)中心周波数、(2)フィルタのQ、(3)ゲインが導かれます。
OP-Amp.を使うアナログ形式で作る場合、適切な形式の2次のバンドパスフィルタ回路を選択し、(1)〜(3)の特性が得られるようにコンデンサ:Cや抵抗器:Rの値を決めて行くことになります。回路例では「多重帰還型」という形式の2次のBPF回路を採用しています。 4つのセクションについて計算が済めば設計完了です。アナログ形式では都合の良いコンデンサの値を事前に決めておく必要があるでしょう。このコンデンサ:Cの値はある程度任意に決められます。最初の例ではそれが0.039μFだった訳です。(0.039μFにしたのは手持ちの都合) 計算は少し面倒くさいですが決して難しいものではありません。
SCFの場合もまったく同じ手順ですが、MF10CCNの設計資料を参照して4つある各セクションについて(1)〜(3)を満たすように設計します。回路例はMF10CCNの「モード3」と称する動作モードで設計しています。 それでMF10CCNに外付けすべき抵抗の値が求められます。 その際、計算の基準とする抵抗値を一つだけ決めておく必要があって私の設計では20kΩに選びました。これは例えば5kΩや10kΩに選んでも良いはずです。もちろん基準の抵抗値を変更しても同じ特性が得られます。クロック周波数は100倍あるいは50倍で選択します。(どちらかを選択してピン接続を決める)これはSCF-IC:MF10CCNの仕様によります。製作例では100倍を選択しています。
設計された4つのセクションの周波数特性は図のようになっていて、図に見るように2次のセクション4段の合計で最終的に目的のフィルタ特性になります。この特性はOP-Amp.を使ったアナログ形式でもSCFを使った形式でもまったく同じです。
現在では入力信号をA/D変換し数値演算によってまったく同じ様な特性を得ると言うDSPによるデジタル・フィルタ形式がトレンドになりつつあります。 しかしアナログ式やSCFによる方法は演算処理に要する信号の遅延がほぼ無いという特徴があってDSPより優れる部分もあると思っています。しかもわずかな消費電力で目的の性能が得られます。
多分、これだけの説明ではチンプンカンプンかもしれません。説明力不足で申し訳ないですがまだまだ勉強中です。 もうちょっと理解するには入門くらいでも良いのでフィルタの理論を知っていると良いです。フィルタの専門書はどれも難しいと感じられますが興味があれば手に取ってみてください。 HAMの自作にとってフィルタは切り離せないものです。ある程度思うような設計ができると自作の世界も広がります。もちろんデジタル・フィルタであってもフィルタ理論の根本は同じです。フィルタについて知ることは決して無駄にはならないと思っています。
【SCF-ICのMF10CCNが主役】
ICの写真を見せても仕方がないのですが、中華通販などで購入されるなら参考に見ておいてください。
MF10には表面実装型もありました。残念ながら写真のDIPタイプだけでなく表面実装型もディスコンになったようです。おそらくだんだんニーズが減ってきたからでしょう。 デジタルなように見えてもアナログなICですし設計の自由度があり過ぎるため、あまり素人向きとは言えないように感じていました。
それに単純なピーク型の単峰特性のフィルタや簡単なLPFくらいならOP-Amp.と数個のCRで作れますからね。 MF10CCNを上手に活用するとたいへん面白いフィルタが作れるのですが、それが実感できるためにはフィルタの理論を知らねばなりません。結局、美味しくても調理が難しい素材はシェフから敬遠されてしまうのでしょう。(笑)
MF10CCNは歴史のあるICですからまだまだ流通在庫が残っています。やや価格上昇気味かもしれませんが何とか手に入るでしょう。 もともとあまり安いICではなかったので一つ1,000円くらいなら買って損はないと思われます。中華通販やオクション品はニセモノに注意を! もし可変周波型の「音の良いCWフィルタ」に興味があるなら有るうちに手に入れておくのも良いかも知れません。 いつか作りたいと思ったとき手遅れにならないように・・・。(もちろん、購入の際はご自身の判断と責任でお願いします)
【代替品情報】(2024年1月現在)
MF10CCNは生産終了品(ディスコン品)ですがいくつか代替品があります。
そのまま置き換え可能なものとしてMF10BN(オリジナルはMaxim社)があって、Rochester Electronicsと言う互換品メーカーの製品が出ています。Digi-Keyのような部品商社経由で入手できます。 さらに型番は異なりますがリニアテクノロジー社(現・ADI社)のLTC1060CNも同じように使えるはずです。こちらも商社経由で購入可能でしょう。
完全互換ではありませんが、機能的に互換可能なチップもあります。 MAXIM社(現・ADI社)のMAX7490がほぼ同等の機能を持っています。ほかにもリニアテクノロジー社(現・ADI社)のLTC1067(-50)も同じようなチップです。 いずれも部分的な設計変更で同じように使えます。 どちらかと言えば電源電圧範囲の広いLTC1067の方が有利かも知れません。どちらも生産中です。部品商社から少量の購入が可能で単価は$15-くらいです。
【脇役デバイスにも重要な役目あり】
低周波アンプのユニットですから低周波パワーアンプのIC「386」が主役なのかも知れません。(笑) LM386やNJM386は秋葉原や日本橋のパーツショップほか通販でも普通に手に入るオーディオ用パワーアンプICです。
NE555P(NE555Vも同じ)はSCF-ICに必要なクロックの発生に使います。 各社から同等品が出ていますのでどれでも良いでしょう。最近はC-MOSタイプもポピュラーになりました。C-MOSタイプの"555"も同じように使えます。
MF10CCNはプラス5Vとマイナス5Vの2電源で使うのが標準ですが、+10Vだけの単電源でも使えます。その代わり+5Vの中点電圧が必要になります。 またここでの製作例のように+9Vの単電源でも支障なく使えますが電源電圧の中点電位である+4.5Vの電源が必要になります。その+4.5Vは可変電圧型シャントレギュレータ:TL431Cで作っています。 +4.5Vの消費電流は12mAくらいですからブースタ・トランジスタは必要ありません。この12mAのうち大半はNE555Pが消費しています。
いずれのICもポピュラーで安価なものです。通販でも容易に入手できるので困ることはないでしょう。
【SCFで作ったCWフィルタ・拡大】
MF10CCNの周りを拡大しています。
1セクションあたり抵抗器が4本・・・実際には複数で抵抗値を合成していますので7本くらいあります。そのためブレッドボードでの試作では配線の取り回しが難しくてどうもスッキリしません。 基板化する場合は抵抗器の下へ配線を通すなど工夫すれば配置しやすいと思います。 MF10CCNのピン配置も配線を考慮してうまく考えられていると感じます。
回路のインピーダンスは低めですし低周波ですから配線は少々長くなっても大丈夫です。 電源端子など要所に0.1μFくらいのバイパスコンデンサを入れておけば安定した動作が期待できます。
原理的にはフィルタ部の全段をDC的に直結可能なのですが、いくらかオフセット電圧が発生します。オフセット電圧が累積するとダイナミックレンジが縮小するので途中をコンデンサでDC的に切ってやります。
あまり小容量のコンデンサで切ると周波数特性に影響が出ますから1μFのフィルムコンデンサで切りました。コンデンサの両端でDC的な電位差はほとんど生じないためかえって電解コンデンサは不適当です。 もし電解コンデンサを使いたいならBP型(バイポーラ型、無極性型:ノンポーラ型とも言う)を使います。 特に難しいところはないので容易に作れると思います。もちろん配線間違えは致命的ですけれど。hi
MF10CCNはC-MOS構造のICです。このCWフィルタの製作では空きピンは発生しませんが、ユニットの片側のみ使うと言った場合には使わない側の空きピン処理が必要です。使い方のすべては書き切れませんので詳しくはメーカーの資料を参照します。 もちろん自身で新たに回路設計しないのでしたら何も悩まず上述の回路図通り作ればOKです。
【入力プリアンプと3kHzのLPF】
この低周波ユニット全体で約32dB(40倍くらい)のゲインになるようプリアンプを置いています。プリアンプのゲインは2倍弱で入力インピーダンスは47kΩです。このBlogで製作したSSB/CW検波ユニットを繋ぐ場合は入力部の可変抵抗:VR3はなくても良いでしょう。(音量調整はVR4:10kΩ・Aカーブの方で行ないます)
OP-Amp.:TL072CPの片側でフラットに約2倍増幅したあと、もう半分で3kHzのローパスフィルタ(LPF)を構成します。そのあとCWの時はMF10CCNのバンドパスフィルタへ行きます。 SSBの時はそのままNJM386Bの低周波パワーアンプへ行くようにします。
LPFは-3dBの周波数が3kHzで、その上の周波数で-12dB/octの傾斜を持つシンプルなものです。なお、-12dB/octと言う意味は周波数が2倍(オクターブ)になると12dB減衰する特性のことです。 3kHzのLPF回路はなるべく精度の良い部品を使うべきですが神経質になるほどではありません。回路図のコンデンサ:C10はC9のちょうど半分なので、C10と同じ容量のコンデンサを2個使って直列にすれば目的の容量になります。あるいはC9 = 0.01μF、C10 = 0.0047μFでも十分かも知れません。 いくらか遮断特性は変わりますが支障はないはずです。 カップリング・コンデンサ:C6は1μFのフィルム・コンデンサを使いました。BP型の電解コンデンサでも良いです。
【SCFクロックGENと低周波パワーアンプ】
SCFのMF10CCNには矩形波のクロック信号が必要です。
フィルタ中心周波数の100倍の周波数のクロック信号を与えます。 クロックの振幅はGND〜+4.5Vの矩形波です。ピン接続を変えれば波高値が0〜+9Vの矩形波も使えます。詳しいことはMF10CCNのデータシートを参照します。
クロック信号の発生にはタイマーICのNE555Pを使って矩形波発振器を作りました。 周波数の可変範囲が広くて、Duty比がほぼ50%の矩形波が得られる回路になっています。 配線が済んだらNE555PのPin7にて出力波形をオシロスコープで観測し、まずはじめにVR1を調整してHighとLowの割合が半々になるようDuty比を調整します。波高値が0〜+4.5Vであることも確認しておきます。発振周波数調整用のVR2:100kΩは受信機のパネルに取り付けて目盛りを記入しておくと便利です。周波数の可変範囲は広すぎるくらいになっていますのでコンデンサ:C3(470pF)を変えたり、抵抗器R22(1kΩ)を大きくするなど実用的な発振周波数範囲に狭めておくのも良いでしょう。
話が前後しますが、TL431Cを使った+4.5V電源の電圧を確認しておきます。+4.3〜4.7Vくらいなら良いでしょう。それを大きく外れているならまずは配線を確認します。その上で抵抗器:R18とR19の値を確認します。
LM386N(=NJM386BD)を使った低周波パワーアンプはアプリケーション・マニュアル通りのオーソドックスな回路になっています。ゲインは20倍で使います。
LM386Nはゲイン200倍で使うこともできますが発振しやすくなります。ここではその必要もなかったので20倍にしていますが動作はずっと安定していて発振などのトラブルは起こりにくいようです。 LM386Nはできるだけ20倍のゲインで使うのがコツのようです。このAFアンプユニットでもプリアンプにゲインを持たせることで「386」のゲインは20倍で使いました。
【SCFにはクロックが要る】
NE555Pの発振周波数を確認しています。Pin7の所で測定しました。これがMF10CCNに与えるクロックの周波数になります。
これから中心周波数が700Hzの時のフィルタ特性を観測したいと思います。 クロックは100倍の周波数が必要ですから周波数調整用のVR2で70kHzになるようにしておきます。(±1%くらいで十分です)
フィルタの中心周波数が400Hzなら40kHzに、中心周波数が1kHzなら100kHzに調整して測定します。 NE555Pを使った矩形波発振器の周波数安定度はあまり良いとは言えませんが神経質にならなくても大丈夫です。 1kHz変わってもフィルタの中心周波数は10Hz変わるだけです。もしその程度の変動があっても使っていてわかりません。それに安定度が良くないとは言ってもそんなにたくさん変動しません。(C3:470pFの温度係数が大きいと周波数変動が大きくなります。スチコンあるいはマイカコン、またセラコンならCH特性品を使うべきです)
どうしても気になるのでしたら水晶発振器を基準にして分周するとか高精度が得られる方法でクロック発振器を作ります。しかし実用上その必要はまったく感じられない筈です。従ってNE555Pの発振器で十分です。
【クロック70kHzで700Hzのフィルタ】
写真は中心周波数が700Hzの実測フィルタ特性です。 黄色のトレースが振幅特性で緑色が位相特性です。
回路シミュレーションで計算した特性とよく一致した周波数特性が得られています。 なお、14dBほどゲインがありますが、これはVNA(低周波まで観測可能なもの)の出力を50Ωで終端しなかったことと、TL072CPによるプリアンプのゲインが加わっているためです。
山形のさえない周波数特性に感じるかもしれませんが使ってみますとCWフィルタとして良い感触です。 音色はまろやかで心地良いものです。 無信号時のノイズも不自然さがなく耳に付きません。 あえて欠点を挙げるとすればどんなCW局もそれなりに美しく感じてしまうことでしょうか。これこそが「フィルタ」の効果なのかも知れません。 まあ、このあたりは私見ですのであなたご自身で確かめて頂く必要があります。(笑)
【クロック40kHzで400Hzのフィルタ】
クロックを40kHzに調整して400Hzの特性を観測しています。
たぶん400HzでCWを聞くお方は少ないと思いますがあえて低い周波数で試しています。 もちろん500Hzとか600Hzも自在に可能ですから完成したらぜひ試してください。
700Hzと言った固定した周波数に縛られず好みに調整できるのは大きなメリットです。 また近接した周波数で混信が出てきたらフィルタの周波数を加減すると言った方法で逃れることもできるわけです。
【クロック100kHzで1kHzのフィルタ】
周波数特性観測の最後はクロックを100kHzにして中心周波数1kHzの状態で測定します。
中心周波数が700Hzのとき-3dBの通過帯域幅は300Hzになります。 クロック周波数を変えて中心を変えると帯域幅が変化します。ただし中心周波数に対する帯域幅の割合は変化しません。
従って中心周波数が1kHzのとき帯域幅は1000/700の割合だけ広くなります。計算すると-3dBの帯域幅は430Hzくらいになります。 中心周波数が400Hzなら逆に狭くなって-3dBの帯域幅は170Hzくらいです。 中心周波数が変わっても「フィルタの"Q"」は変化しないように動作するからです。
通過帯域幅が変化しては困るように思うかも知れません。しかし測定器で観測のように横軸対数で見たとき特性変化がなければ人間の感覚上でも違和感はないようです。 実際に中心周波数を変えると帯域幅は変化するのですが何らの問題も感じませんでした。扱い易さにも変化はありせん。 それに設計周波数の700Hzから大幅に変化させて使うものではないでしょう。実用上の支障は何もないわけです。
【フィルタ付き低周波アンプを作る】
「私だけの受信機設計」の第12回です。今回は低周波アンプ部を製作します。
ここまでのテストでは低周波アンプにLM380Nと言う低周波パワーアンプ用のICを使ったものを使ってきました。 電圧利得で50倍だけ増幅するシンプルなパワーアンプでした。8Ωのスピーカを負荷にしたときの無歪最大出力は250mWくらいです。
まずまず使い物になるのでそのまま低周波アンプとしても良かったのですが、通信型受信機にマッチした「低周波アンプユニット」をあらためて作ることにしました。 3kHzのローパスフィルタと聴感の良いオーディオCWフィルタを組み合わせた低周波アンプ部を作ります。
☆
受信機の低周波アンプなんて必要なゲインがあれば「適当なもので良い」と思うかも知れません。 しかし意外に重要な部分なのです。 低周波アンプ回路のひずみ特性や周波数特性が良くないと特有の音色を持ちます。ワッチしていて疲れる受信機になってしまうかも知れません。受信了解度にも影響がでるでしょう。 プロの受信機を見ると思った以上に凝った回路になっていて勉強させられます。
メーカー製のアマチュア機ではシンプルに低周波アンプ用のICを使う例がほとんどです。コストの問題もあるのでしょう。しかし、小音量で聞くことが多いシャックではクロスオーバー歪が気になることがあります。 特に大きな音量が出せる固定機ではその傾向があります。パワーの大きなカーオーディオ用のICを使っているのが原因でしょう。
合わせて無線機内蔵のスピーカーもチープなものがほとんどです。それで良い音は無理です。外付けスピーカを使いましょう。無線機のオプション品も良いですがミニコンポ用(リサイクルショップで購入)がオススメです。たった数百円〜で音質良好になります。
ここでもパワーアンプ用のICを使いました。AB級アンプなのでちょっと心配したのですが小出力でワッチしていてもまずまずでした。それで気になって来たらグレードアップも可能です。
高周波部に比べて低周波アンプ部は受信機の本質的な部分ではないと思われがちです。たしかに高周波部に比べて重要度や難易度がやや低いのはその通りです。 ここでは意外に凝った低周波アンプ部になりました。 単純なオーディオアンプで十分と思っているのでしたら複雑過ぎると感じるでしょう。しかしやさしいところで手を抜くと良い結果は得られないかも知れません。w
【アナログで作るオーディオCWフィルタ】
だいぶ前のBlogで扱った「音の良いCWフィルタ」を使います。 過去のBlog(←リンク)では同じ回路で様々な特性のフィルタが作れることに面白さを感じたことが出発点でした。シミュレーションを主体にした内容です。
もちろん良い性能が得られるので作り甲斐があります。 実際に自作受信機やCWフィルタの帯域外減衰が不十分なFR-101受信機に内蔵させてとても良い結果が得られています。
図の回路はOP-Ampを使った2次のアクティブ・フィルタを4段重ねて様々な特徴を持ったフィルタが作れるという設計になっています。
通信型受信機のCW受信用としては図中の表で2段目の「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と称するフィルタがお奨めです。 -6dBより内側が過渡応答に優れるガウシャン特性で、その外側は遮断特性の良いバターワース型になったフィルタです。 名前の通り-6dBの所で特性が切り替わるという「良いとこ取り」のようなCWフィルタです。
一覧表の赤で囲った部品定数を選びます。 この特性のフィルタはCWのような断続波において、CWトーンの立ち上がり部分でオーバーシュートせず滑らかに立ち上がります。また信号が切れた後に余韻を引かないため粘らないので了解度に影響を及ぼしません。従って200Hzといった狭帯域でも聴感はナチュラルで感触良好です。
図の部品定数表は実際に製作するためのものです。コンデンサや抵抗器は少なくとも1%精度の物を使う必要があります。その上で4つある各セクションをそれぞれ表中の周波数でピークになるよう同調させます。結構シビアな調整が必要なので周波数がHz単位までわかる低周波発振器あるいは周波数カウンタの併用を要します。
E24系列で1%精度の抵抗器は入手容易なので問題はないとして0.039μFで誤差1%のコンデンサが厄介かも知れません。良質なフィルムコンデンサを余分に手に入れてLCRメータで選別する必要があるでしょう。10%や20%の誤差のまま使ったのでは所望の特性が得られないのです。 なお、「0.039μF」という数値に拘るのではなく8個がなるべく同じ容量値になるようにします。例えば8個を0.038μFに揃えても良い訳です。 もちろん容量差の分だけ僅かに中心周波数はズレますがフィルタの特性カーブは保たれます。
【作るCWフィルタの周波数特性】
フィルタと言うとどんな周波数特性なのか気になります。中心周波数が700Hzで-3dBの帯域幅が300Hzの設計です。
ここで選択したフィルタはグラフの緑色のカーブのようになるはずです。 これは誤差のない部品を使ってシミュレーションした結果です。 現実の部品には何がしかの誤差があるので厳密にこのようにはならないかも知れません。
しかし、各段を構成する2次のアクティブ・フィルタはあまりQが高くなく、ゲインも低い設計なので大きく崩れることはないはずです。 配線・組立の後に表中に記された周波数でそれぞれピークが出るように各可変抵抗を調整すればシミュレーションと良く一致した特性が得られます。
もし異なる特性のフィルタを作りたいのなら回路図の表に戻って作ればうまくゆきます。 しかしCWの受信には「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」特性のフィルタをお薦めしたいです。(注:やや特性が甘くなりますがベッセル特性も良い選択です)
【OP-Amp.で作ると】
どんな感じになるのか実際の製作例を示します。 写真は昔作った自作受信機における製作例です。
コンパクトに製作する目的でコンデンサには積層セラコンを使っています。温度補償系のセラコンならマズマズですがフィルム・コンデンサの方が優れます。 できたらマイラ・フィルムのような低周波に向いたコンデンサを使いたいところです。
この写真の製作例では部品を高精度に選ぶことで無調整にしています。そのために部品集めが大変でしたから回路図のように調整式にした方が作りやすいです。
OP-Amp.は4回路入りのTL074CNを使って小型化しています。 他のOP-Amp.でも良いのですがこうしたフィルタ回路にはオーディオ特性(正確に言えばAC特性)の良いOP-Amp.が向いています。 周波数は1kHz以下ですから大抵のものが使えます。
汎用品のLM324NやLM358N系はお手軽なので好きなOP-Amp.ですがこの用途にはやめておいた方が良いです。出力段がC級アンプなのでどうも音が良くありません。 オーディオ用と称するOP-Amp.はFBですがHAMの用途にはちょっと勿体無いかも知れません。お手軽なOP-Amp.としては4558系などが良いのではないでしょうか。あとはお好みです。
以上、周波数は700Hz固定で良い、やっぱり純アナログが一番だ。・・・と言うのでしたらOP-Amp.を使ったCWフィルタが最適です。 部品の選別が必要なので少し作るのは面倒ですが、使用感はなかなか素晴らしいので手間を掛けるだけの価値を感じられます。
参考:フィルタ部のコンデンサ(C1〜C8)のすべてを0.039μF±1%から0.047μF±1%に変更すると約600Hzのフィルタになります。また、0.039μFから減らして0.033μF±1%にすれば約800Hzのフィルタにできます。なお各調整周波数は変更した容量比の逆数分だけ変えます。例えば0.039μF→0.047μなら容量比は47/39≒1.205ですから、各調整周波数は1/1.205を掛けたものになります。(≒0.83倍) この件、あやふやな部分とかもし良くわからなければ聞いてください。わかる範囲でなるべく詳しくご返事します。
上図の回路はCWフィルタ部分だけです。低周波のパワーアンプ部分などは、このあと説明のある回路と同じで大丈夫です。後述の回路図のCWフィルタ部分を上図の回路に置き換えてやれば全く同じように製作できます。 電源電圧も9Vで支障ありません。
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【オーディオCWフィルタ・もう一つの方法】
写真はブレッド・ボードに作ったオーディオCWフィルタと低周波アンプ部です。 SSB用に3kHzのローパス・フィルタも含んでいます。
CWフィルタの部分は始めに紹介したフィルタとまったく同じ特性を持っています。すなわち「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と称する特性のフィルタです。 従って後ほど特性の測定例が出てきますが実測でもシミュレーションそのままです。
ただしCWフィルタの部分にOP-Amp.は使っておらず「スイッチド・キャパシタ・フィルタ」(以下略してSCF)と言うやや特殊なフィルタ専用のICを使って作りました。 SCF-ICはナショナル・セミコンダクタ社(現TI社)のMF10CCNを使いました。写真の上の方に2つある20ピンの大きめのICです。 MF10CCN一つで2次のフィルタが2回路作れます。従って2個使うことで2次のフィルタを4セクション使う最初の説明のような「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」がそっくり同じように作れる訳です。
基板手前左には2回路入りのOP-Amp:TL072CPを使ったプリアンプとローパスフィルタ(LPF)があります。LPFのカットオフ周波数は3kHzで遮断特性は12dB/octです。あまり急峻とは言えませんがもともとI-Fフィルタで帯域制限されていますから、この程度で十分効果的です。 それと、その可能性はほとんど無いのですがSCFのクロック周波数とビートになる周波数で信号通過が起こるのを防ぐ意味があります。(ビートが起こるのは数10kHz〜100kHzと言う可聴域外の周波数なのでそもそも受信機の低周波アンプでは問題にならないのですが・・・)なお、SCFのクロックの話は後ほど出てきます。
右下に見える低周波パワー・アンプ部にはNJM386BDを使いました。 これはナショセミ社のLM386Nと同等のものです。 テスト受信に使っていたLM380Nよりも低い電源電圧向きなので使うことにしました。 オーソドックスすぎますがまずまずの性能です。8Ωのスピーカで最大300mWくらいしか出ませんがシャックに置く受信機には適当なパワーです。 電源電圧を9Vに統一していますので「386」のパワーアンプは無難な選択です。
【スイッチド・キャパシタ・フィルタで作る】
低周波プリアンプ、3kHz-LPF、CWフィルタ、低周波パワーアンプ部の回路図を示します。このユニットへの入力信号はBFO&プロダクト検波ユニット(←この特集第4回へリンク)の出力です。
回路図の上の方の抵抗器がたくさん使ってある部分がCWフィルタです。所定のフィルタ特性を得るためには計算通りの抵抗値が必要です。 キリの良い抵抗値にならないのでE24系列の抵抗器(←リンク)を2本直列で必要な抵抗値を得ている箇所があります。そのため抵抗器の本数が多くなっています。 面倒だからと言って近い値の標準抵抗値に丸めてしまうと所定の特性が得られません。(参考:抵抗器の誤差を±1%とすれば一部に抵抗器の本数を減らして簡略化できる箇所があります)
たくさん抵抗器を使うので複雑であまりメリットはなさそうに思うかも知れません。その代わり0.039μFと言ったコンデンサは不要なのでたくさん買って選別する手間はありません。これは一つ目のメリットです。E24系列で1%精度の抵抗器は普通に売っていますから選別など必要ありません。
ご存知のようにSCFを使ったフィルタにはそれ以上の非常に大きなメリットがあります。 SCF-ICには必ずクロック・パルスを与える必要があるのですが、そのクロックの周波数を可変してやるとフィルタの周波数を自由に変えることができるのです。 OP-Amp.で作った純粋なアナログ式フィルタではもし700Hzで作ると後からフィルタの周波数を変えることはかなり厄介です。8つもあるコンデンサを切り替えるのは大変でしょう。 しかしSCFを使うとクロック・パルスの周波数を変えてやればフィルタの中心周波数を自由自在にできるのです。回路図の例では200Hz以下から8kHzあたりまで変えられます。(CW用なのでそんなに変えられる必要はないのですが・笑)
ここではフィルタの中心周波数は700Hzで-3dBの通過帯域幅は300Hzで設計しています。 その時のクロック周波数は100倍の70kHzを与える設計です。これが設計の出発点です。 しかし後からクロック周波数を変えてやれば700Hz以外のフィルタにもなります。 即ち40kHzのクロック信号を与えれば400Hzの、あるいは100kHzなら1kHzの所にピークが来るCWフィルタになる訳です。もちろん周辺部品を交換する必要は何もありません。 このように中心周波数可変型のCWフィルタを実現するためにSCF-IC:MF10CCNを使いました。
これで「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」と言う優れた特性のままで中心周波数を自由に可変できるCWフィルタを作ると言う長年の課題に答えが出せました。(前々から可能なことはわかっていたのですが面倒に感じて手をつけなかっただけなのですが・笑)
クロック発振器にはタイマーICのNE555Pを使いました。可変抵抗器:VR一つで発振周波数が幅広く変えられる矩形波発振器です。 このNE555PとMF10CCNは電源電圧:+9Vの他にその半分の電圧(+4.5V)が必要です。
その+4.5Vの生成にシャント・レギュレータ:TL431Cを使いました。 また、既に書いたように低周波パワー・アンプはNJM386BDです。 この低周波ユニットは+9Vの単電源で動作し無信号時に約34mA流れます。音量のピークでは140mAくらいでした。(8Ωのスピーカ負荷で)
【フィルタの中身はどうなっているか?】
フィルタの設計を詳しく扱うとBlog一回では終わらないので、かいつまんだ話をしましょう。 それと計算式を羅列されても大半のお方にとっては退屈で眠くなるだけでしょう。以下深みにハマらぬ程度でやめておきます。従って数式は登場しません。
まず、仕様を決めるのがスタートになります。CWフィルタですから、中心周波数は800Hz付近に選びます。これは経験的に800Hz付近が聴きやすい周波数だと考えられているからです。もちろん各人の好みで変えても構いません。私はやや低めが好みなので700Hzにしました。 また、通過帯域幅ですが無闇に狭いと使いにくいだけなので200〜300Hzの幅を持たせるのが実用的です。それでもダイヤルの減速が十分でない受信機(トランシーバ)では同調がクリチカルになるのでやや広めが望ましいと思っています。既にI-Fアンプの所に数100Hz幅のCWフィルタが装着済みなら300Hzくらいでも十分ですし、SSBフィルタしか持たない受信機でもそれくらいで不満はないでしょう。
フィルタは「共振器(共振回路)」の数がモノを言います。従ってセクションの数が多いほど急峻になりますが回路はそれだけ複雑になります。過去に6セクションのタイプを製作しましたが過剰だと感じました。複雑さと性能を天秤にかけると2次フィルタの4セクションで十分です。 このようにしてフィルタの概要が決まりますが、CWはバースト波なので過渡応答性を考慮してフィルタ形式を決めます。私の場合は「トランジショナル・ガウシャン トゥ 6dB」を選ぶことにします。これはベッセル特性でも構いません。過渡応答をそれほど重視しなければ他の形式でも良いです。あとは目的次第です。
その上で、フィルタ形式とセクション数:n=4に従ったポールロケーションと言うものを求めます。これはフィルタ関係のデータブックなどから得ることができます。フィルタ設計のソフトウエアを使っても構いません。 それで得られる設計データは一般に「正規化」されているため所用の周波数へスケーリングの計算を行ないます。その計算を経て4つある2次フィルタの各セクションについてそれぞれ(1)中心周波数、(2)フィルタのQ、(3)ゲインが導かれます。
OP-Amp.を使うアナログ形式で作る場合、適切な形式の2次のバンドパスフィルタ回路を選択し、(1)〜(3)の特性が得られるようにコンデンサ:Cや抵抗器:Rの値を決めて行くことになります。回路例では「多重帰還型」という形式の2次のBPF回路を採用しています。 4つのセクションについて計算が済めば設計完了です。アナログ形式では都合の良いコンデンサの値を事前に決めておく必要があるでしょう。このコンデンサ:Cの値はある程度任意に決められます。最初の例ではそれが0.039μFだった訳です。(0.039μFにしたのは手持ちの都合) 計算は少し面倒くさいですが決して難しいものではありません。
SCFの場合もまったく同じ手順ですが、MF10CCNの設計資料を参照して4つある各セクションについて(1)〜(3)を満たすように設計します。回路例はMF10CCNの「モード3」と称する動作モードで設計しています。 それでMF10CCNに外付けすべき抵抗の値が求められます。 その際、計算の基準とする抵抗値を一つだけ決めておく必要があって私の設計では20kΩに選びました。これは例えば5kΩや10kΩに選んでも良いはずです。もちろん基準の抵抗値を変更しても同じ特性が得られます。クロック周波数は100倍あるいは50倍で選択します。(どちらかを選択してピン接続を決める)これはSCF-IC:MF10CCNの仕様によります。製作例では100倍を選択しています。
設計された4つのセクションの周波数特性は図のようになっていて、図に見るように2次のセクション4段の合計で最終的に目的のフィルタ特性になります。この特性はOP-Amp.を使ったアナログ形式でもSCFを使った形式でもまったく同じです。
現在では入力信号をA/D変換し数値演算によってまったく同じ様な特性を得ると言うDSPによるデジタル・フィルタ形式がトレンドになりつつあります。 しかしアナログ式やSCFによる方法は演算処理に要する信号の遅延がほぼ無いという特徴があってDSPより優れる部分もあると思っています。しかもわずかな消費電力で目的の性能が得られます。
多分、これだけの説明ではチンプンカンプンかもしれません。説明力不足で申し訳ないですがまだまだ勉強中です。 もうちょっと理解するには入門くらいでも良いのでフィルタの理論を知っていると良いです。フィルタの専門書はどれも難しいと感じられますが興味があれば手に取ってみてください。 HAMの自作にとってフィルタは切り離せないものです。ある程度思うような設計ができると自作の世界も広がります。もちろんデジタル・フィルタであってもフィルタ理論の根本は同じです。フィルタについて知ることは決して無駄にはならないと思っています。
【SCF-ICのMF10CCNが主役】
ICの写真を見せても仕方がないのですが、中華通販などで購入されるなら参考に見ておいてください。
MF10には表面実装型もありました。残念ながら写真のDIPタイプだけでなく表面実装型もディスコンになったようです。おそらくだんだんニーズが減ってきたからでしょう。 デジタルなように見えてもアナログなICですし設計の自由度があり過ぎるため、あまり素人向きとは言えないように感じていました。
それに単純なピーク型の単峰特性のフィルタや簡単なLPFくらいならOP-Amp.と数個のCRで作れますからね。 MF10CCNを上手に活用するとたいへん面白いフィルタが作れるのですが、それが実感できるためにはフィルタの理論を知らねばなりません。結局、美味しくても調理が難しい素材はシェフから敬遠されてしまうのでしょう。(笑)
MF10CCNは歴史のあるICですからまだまだ流通在庫が残っています。やや価格上昇気味かもしれませんが何とか手に入るでしょう。 もともとあまり安いICではなかったので一つ1,000円くらいなら買って損はないと思われます。中華通販やオクション品はニセモノに注意を! もし可変周波型の「音の良いCWフィルタ」に興味があるなら有るうちに手に入れておくのも良いかも知れません。 いつか作りたいと思ったとき手遅れにならないように・・・。(もちろん、購入の際はご自身の判断と責任でお願いします)
【代替品情報】(2024年1月現在)
MF10CCNは生産終了品(ディスコン品)ですがいくつか代替品があります。
そのまま置き換え可能なものとしてMF10BN(オリジナルはMaxim社)があって、Rochester Electronicsと言う互換品メーカーの製品が出ています。Digi-Keyのような部品商社経由で入手できます。 さらに型番は異なりますがリニアテクノロジー社(現・ADI社)のLTC1060CNも同じように使えるはずです。こちらも商社経由で購入可能でしょう。
完全互換ではありませんが、機能的に互換可能なチップもあります。 MAXIM社(現・ADI社)のMAX7490がほぼ同等の機能を持っています。ほかにもリニアテクノロジー社(現・ADI社)のLTC1067(-50)も同じようなチップです。 いずれも部分的な設計変更で同じように使えます。 どちらかと言えば電源電圧範囲の広いLTC1067の方が有利かも知れません。どちらも生産中です。部品商社から少量の購入が可能で単価は$15-くらいです。
【脇役デバイスにも重要な役目あり】
低周波アンプのユニットですから低周波パワーアンプのIC「386」が主役なのかも知れません。(笑) LM386やNJM386は秋葉原や日本橋のパーツショップほか通販でも普通に手に入るオーディオ用パワーアンプICです。
NE555P(NE555Vも同じ)はSCF-ICに必要なクロックの発生に使います。 各社から同等品が出ていますのでどれでも良いでしょう。最近はC-MOSタイプもポピュラーになりました。C-MOSタイプの"555"も同じように使えます。
MF10CCNはプラス5Vとマイナス5Vの2電源で使うのが標準ですが、+10Vだけの単電源でも使えます。その代わり+5Vの中点電圧が必要になります。 またここでの製作例のように+9Vの単電源でも支障なく使えますが電源電圧の中点電位である+4.5Vの電源が必要になります。その+4.5Vは可変電圧型シャントレギュレータ:TL431Cで作っています。 +4.5Vの消費電流は12mAくらいですからブースタ・トランジスタは必要ありません。この12mAのうち大半はNE555Pが消費しています。
いずれのICもポピュラーで安価なものです。通販でも容易に入手できるので困ることはないでしょう。
【SCFで作ったCWフィルタ・拡大】
MF10CCNの周りを拡大しています。
1セクションあたり抵抗器が4本・・・実際には複数で抵抗値を合成していますので7本くらいあります。そのためブレッドボードでの試作では配線の取り回しが難しくてどうもスッキリしません。 基板化する場合は抵抗器の下へ配線を通すなど工夫すれば配置しやすいと思います。 MF10CCNのピン配置も配線を考慮してうまく考えられていると感じます。
回路のインピーダンスは低めですし低周波ですから配線は少々長くなっても大丈夫です。 電源端子など要所に0.1μFくらいのバイパスコンデンサを入れておけば安定した動作が期待できます。
原理的にはフィルタ部の全段をDC的に直結可能なのですが、いくらかオフセット電圧が発生します。オフセット電圧が累積するとダイナミックレンジが縮小するので途中をコンデンサでDC的に切ってやります。
あまり小容量のコンデンサで切ると周波数特性に影響が出ますから1μFのフィルムコンデンサで切りました。コンデンサの両端でDC的な電位差はほとんど生じないためかえって電解コンデンサは不適当です。 もし電解コンデンサを使いたいならBP型(バイポーラ型、無極性型:ノンポーラ型とも言う)を使います。 特に難しいところはないので容易に作れると思います。もちろん配線間違えは致命的ですけれど。hi
MF10CCNはC-MOS構造のICです。このCWフィルタの製作では空きピンは発生しませんが、ユニットの片側のみ使うと言った場合には使わない側の空きピン処理が必要です。使い方のすべては書き切れませんので詳しくはメーカーの資料を参照します。 もちろん自身で新たに回路設計しないのでしたら何も悩まず上述の回路図通り作ればOKです。
【入力プリアンプと3kHzのLPF】
この低周波ユニット全体で約32dB(40倍くらい)のゲインになるようプリアンプを置いています。プリアンプのゲインは2倍弱で入力インピーダンスは47kΩです。このBlogで製作したSSB/CW検波ユニットを繋ぐ場合は入力部の可変抵抗:VR3はなくても良いでしょう。(音量調整はVR4:10kΩ・Aカーブの方で行ないます)
OP-Amp.:TL072CPの片側でフラットに約2倍増幅したあと、もう半分で3kHzのローパスフィルタ(LPF)を構成します。そのあとCWの時はMF10CCNのバンドパスフィルタへ行きます。 SSBの時はそのままNJM386Bの低周波パワーアンプへ行くようにします。
LPFは-3dBの周波数が3kHzで、その上の周波数で-12dB/octの傾斜を持つシンプルなものです。なお、-12dB/octと言う意味は周波数が2倍(オクターブ)になると12dB減衰する特性のことです。 3kHzのLPF回路はなるべく精度の良い部品を使うべきですが神経質になるほどではありません。回路図のコンデンサ:C10はC9のちょうど半分なので、C10と同じ容量のコンデンサを2個使って直列にすれば目的の容量になります。あるいはC9 = 0.01μF、C10 = 0.0047μFでも十分かも知れません。 いくらか遮断特性は変わりますが支障はないはずです。 カップリング・コンデンサ:C6は1μFのフィルム・コンデンサを使いました。BP型の電解コンデンサでも良いです。
【SCFクロックGENと低周波パワーアンプ】
SCFのMF10CCNには矩形波のクロック信号が必要です。
フィルタ中心周波数の100倍の周波数のクロック信号を与えます。 クロックの振幅はGND〜+4.5Vの矩形波です。ピン接続を変えれば波高値が0〜+9Vの矩形波も使えます。詳しいことはMF10CCNのデータシートを参照します。
クロック信号の発生にはタイマーICのNE555Pを使って矩形波発振器を作りました。 周波数の可変範囲が広くて、Duty比がほぼ50%の矩形波が得られる回路になっています。 配線が済んだらNE555PのPin7にて出力波形をオシロスコープで観測し、まずはじめにVR1を調整してHighとLowの割合が半々になるようDuty比を調整します。波高値が0〜+4.5Vであることも確認しておきます。発振周波数調整用のVR2:100kΩは受信機のパネルに取り付けて目盛りを記入しておくと便利です。周波数の可変範囲は広すぎるくらいになっていますのでコンデンサ:C3(470pF)を変えたり、抵抗器R22(1kΩ)を大きくするなど実用的な発振周波数範囲に狭めておくのも良いでしょう。
話が前後しますが、TL431Cを使った+4.5V電源の電圧を確認しておきます。+4.3〜4.7Vくらいなら良いでしょう。それを大きく外れているならまずは配線を確認します。その上で抵抗器:R18とR19の値を確認します。
LM386N(=NJM386BD)を使った低周波パワーアンプはアプリケーション・マニュアル通りのオーソドックスな回路になっています。ゲインは20倍で使います。
LM386Nはゲイン200倍で使うこともできますが発振しやすくなります。ここではその必要もなかったので20倍にしていますが動作はずっと安定していて発振などのトラブルは起こりにくいようです。 LM386Nはできるだけ20倍のゲインで使うのがコツのようです。このAFアンプユニットでもプリアンプにゲインを持たせることで「386」のゲインは20倍で使いました。
【SCFにはクロックが要る】
NE555Pの発振周波数を確認しています。Pin7の所で測定しました。これがMF10CCNに与えるクロックの周波数になります。
これから中心周波数が700Hzの時のフィルタ特性を観測したいと思います。 クロックは100倍の周波数が必要ですから周波数調整用のVR2で70kHzになるようにしておきます。(±1%くらいで十分です)
フィルタの中心周波数が400Hzなら40kHzに、中心周波数が1kHzなら100kHzに調整して測定します。 NE555Pを使った矩形波発振器の周波数安定度はあまり良いとは言えませんが神経質にならなくても大丈夫です。 1kHz変わってもフィルタの中心周波数は10Hz変わるだけです。もしその程度の変動があっても使っていてわかりません。それに安定度が良くないとは言ってもそんなにたくさん変動しません。(C3:470pFの温度係数が大きいと周波数変動が大きくなります。スチコンあるいはマイカコン、またセラコンならCH特性品を使うべきです)
どうしても気になるのでしたら水晶発振器を基準にして分周するとか高精度が得られる方法でクロック発振器を作ります。しかし実用上その必要はまったく感じられない筈です。従ってNE555Pの発振器で十分です。
【クロック70kHzで700Hzのフィルタ】
写真は中心周波数が700Hzの実測フィルタ特性です。 黄色のトレースが振幅特性で緑色が位相特性です。
回路シミュレーションで計算した特性とよく一致した周波数特性が得られています。 なお、14dBほどゲインがありますが、これはVNA(低周波まで観測可能なもの)の出力を50Ωで終端しなかったことと、TL072CPによるプリアンプのゲインが加わっているためです。
山形のさえない周波数特性に感じるかもしれませんが使ってみますとCWフィルタとして良い感触です。 音色はまろやかで心地良いものです。 無信号時のノイズも不自然さがなく耳に付きません。 あえて欠点を挙げるとすればどんなCW局もそれなりに美しく感じてしまうことでしょうか。これこそが「フィルタ」の効果なのかも知れません。 まあ、このあたりは私見ですのであなたご自身で確かめて頂く必要があります。(笑)
【クロック40kHzで400Hzのフィルタ】
クロックを40kHzに調整して400Hzの特性を観測しています。
たぶん400HzでCWを聞くお方は少ないと思いますがあえて低い周波数で試しています。 もちろん500Hzとか600Hzも自在に可能ですから完成したらぜひ試してください。
700Hzと言った固定した周波数に縛られず好みに調整できるのは大きなメリットです。 また近接した周波数で混信が出てきたらフィルタの周波数を加減すると言った方法で逃れることもできるわけです。
【クロック100kHzで1kHzのフィルタ】
周波数特性観測の最後はクロックを100kHzにして中心周波数1kHzの状態で測定します。
中心周波数が700Hzのとき-3dBの通過帯域幅は300Hzになります。 クロック周波数を変えて中心を変えると帯域幅が変化します。ただし中心周波数に対する帯域幅の割合は変化しません。
従って中心周波数が1kHzのとき帯域幅は1000/700の割合だけ広くなります。計算すると-3dBの帯域幅は430Hzくらいになります。 中心周波数が400Hzなら逆に狭くなって-3dBの帯域幅は170Hzくらいです。 中心周波数が変わっても「フィルタの"Q"」は変化しないように動作するからです。
通過帯域幅が変化しては困るように思うかも知れません。しかし測定器で観測のように横軸対数で見たとき特性変化がなければ人間の感覚上でも違和感はないようです。 実際に中心周波数を変えると帯域幅は変化するのですが何らの問題も感じませんでした。扱い易さにも変化はありせん。 それに設計周波数の700Hzから大幅に変化させて使うものではないでしょう。実用上の支障は何もないわけです。
☆ ☆ ☆
【7MHzのCWをワッチしてみました】
(再生すると音が出ます)
(再生すると音が出ます)
7MHzのCWバンドを下の周波数から上に向かって受信して行きます。初めの写真にあるような構成でDDS-VFOを使いました。オーディオCWフィルタは約700Hzの設定です。 ワッチしたとき7MHzのコンディションはあまり良くなかったようです。全般にSメータの振れも良くありません。 それでも各局の信号が次々に浮かび上がってくるのが感じられたでしょうか? あいも変わらず7041kHzにFT-8でオンエアの局が群がってますね。hi Sメータの動きなどを観察しながら擬似ワッチをお試しください。 ダイヤルが7050kHzあたりまでアップしたら下の方へ戻って来ます。
☆
これで低周波アンプユニットの特集はおしまいです。 オーディオCWフィルタの製作がメインになってしまいました。 もしオーディオ帯のCWフィルタに興味がなければ作る必要はありません。スイッチの部分を直結してしまえばOKです。 LM386Nの部分に20倍よりも大きめのゲインを持たせればTL072CPのプリアンプとLPFも省略可能でしょう。各自のニーズと好みに応じて変更すれば良いわけです。
約1年続けた「私だけの受信機設計」はこれで最終回になります。長いあいだお付き合いいただきありがとうございました。
HAMが通信に使う受信機と言ってもたいへん幅広いものが使われています。わずか数石・数球のシンプルなものから非常に高級なものまで、さらに最近はSDR式も一般化しました。 アナログな通信型受信機について1年に渡って続けましたが興味のあったごく限られた範囲をかいつまんだだけのようにも思います。各編から何か少しでも自作受信機のヒントを発見して頂けたなら幸いです。 もっとも、はなから作るつもりなんてサラサラなくって単に暇つぶし程度の読み物だったのかも知れません。あなたもその一人の筈です。そのお役に立ちましたでしょうか?(笑)
検討・製作してきた各ユニットは信号のレベルとインピーダンスが考慮してあるので、そのまま接続して行けば支障なく動作するようになっています。 電源もすべて+9Vだけで済むようにしてあります。(除VFO部分) 電源部の製作は省きましたが+9V/1Aの3端子レギュレータを使った簡単なものを作れば十分でしょう。 +12Vの電源から+9Vに落としても良いでしょう。
同調回路はどれも電子同調式になっていますので受信機のパネルレイアウトには自由度があります。 VFO部もDDS式で作ればこの部分もレイアウトは自在にできます。 AM/FMチューナ活用のプリミクスVFOもお薦めです。 単独の受信機として製作するだけでなく送信部と組み合わせてトランシーバに発展させるのも面白いでしょう。10MHz以下のHAMバンド用ならこのままのシングルスーパで大丈夫です。
あえて追加すべきようなテーマがなければこれで「私だけの受信機設計」は完了にしたいと思います。 de JA9TTT/1
(おわり)nm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・I-Fフィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→いまここ
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