Photo : 2022.08.04 12:52 JST at Local Garden in Honjo City
2022年8月12日金曜日
2022年7月29日金曜日
Making a DDS-VFO
【DDS-VFOを作る:私だけの受信機設計】
【DDSで作る多用途VFO】
今さらですが通信型受信機の3要素(3S)といえば「感度」「選択度」「安定度」です。ただ、昔と今の受信機ではそれぞれのウエイトはかなり違っています。
例えば最重要視された「感度」は最近のデバイスを使い設計さえ誤らなければ容易に達成できます。まともな設計なら「感度不足」を心配する必要などないのです。
「選択度」も水晶振動子の進歩でVHF帯に及ぶ周波数範囲で最適なフィルタが製作できます。フィルタの自作に於いても測定器と設計ツールの発展で先人が想像さえできなかったような画期的な状況にあります。 さらに最近はデジタル処理で任意の特性のフィルタが数値演算的に可能になっておりかつての受信機のような課題も無くなってきました。
その一方で「周波数安定度」は一段と高度なものが求められています。音声(SSB/FM)や無線電信(CW)ならともかくデジタルモード(FT8など)では安定度の良いことが前提になっているからです。 従って簡易な無線機ならともかく様々な用途で普通に使える「通信型受信機」であるためには周波数安定度を「近代化」する必要があるでしょう。
「私だけの受信機設計」・第8回ではDDSを使ったVFO(可変周波発振器)を製作します。 DDS-VFOの出力を受信機の局発(Local-OSC)としてミキサ回路に加えます。 そのため受信機の周波数安定度に直結しますから周波数安定度に優れた発振器が製作目標です。スプリアスが少ないことも重要です。DDS-VFOで注意した点など製作の過程を辿ります。
☆
先日、HAMの仲間とアイボールしたとき「ブレッドボード以外でも作るんですねえ!」なんて言われてしまいました。 確かにハンダ付けで「本格的らしく」製作した作品を見るのは珍しいかも知れないです。(笑)
実験品ならともかく、やはりある程度実用的に使うものはきちんと製作しないとダメです。いくら上手に作ってもブレッドボードのままでは限界があるでしょう。
今回のDDS-VFOも実験用ではありますが汎用の発振器として様々な目的に使うつもりです。要所はきちんとハンダ付けして作り「箱」にも収めました。バラックのままでは使い難いですからね。(このDDS-VFOはバラックだったものを箱に入れて纏めたもの)
なるべく手間と費用を掛けず目的に合ったものを作るのが目標です。可能な範囲で手持ちの基板やユニットを活用します。自身の都合に合わせた設計になっていて、文字通り「私だけの受信機設計」です。ほかの人の役には立たない「プログラム・リスト」は省きました。(継ぎ接ぎだらけの『スパゲッティ状態』なのでお見せできません。笑)
このDDS-VFOはごく簡単な機能だけで出来ています。肝心のDDS-ICの制御方法はAD9833やAD9834を扱う以前のBlogページ(←リンク)に書きました。 マイコンや書き込みツールを扱えるのでしたらニーズにマッチしたVFOの製作は難しくないでしょう。
差し当たっての目的は受信機の局発(局部発振器:Local oscillator)です。 従って必要な周波数範囲がカバーされ、周波数が安定していればどんな発振器でも良いわけです。良質な部品の手持ちがあり板金工作のウデに覚えがあればLC発振のVFOを製作するのも面白いです。
デジタルで行くならPICマイコンやarduinoを使った周波数コントローラを作るなり、DDS-ICの代わりにSi5351Aのようなチップを使う方法もあります。
とりあえず製作中の「通信型受信機」の実験のために必要なのは7440kHz〜7640kHzの発振器です。50Ωの負荷に2Vppくらい(=10dBm)の出力があれば十分です。 もし局発を下側にとるのであれば発振周波数は6560kHz〜6760kHzでも構いません。
【DDS Controler:DDSコントローラ回路図】
図はマイコン:ATmega328P-Uを使って、DDSチップ:AD9833の発振周波数をコントロールするための回路です。LCD表示器に受信している周波数がデジタル表示されます。なお、送受信の制御機能があります。送信モードに切替えると「表示周波数=発振周波数」になります。この機能を使えばごく簡単にCWトランシーバが作れます。
図面左上部分にDDSチップ用のクロック発振器とDDSチップが載ったモジュールの部分回路が書いてあります。コントローラとの接続を明確化するためこの図面に置きました。
そのクロック発振器とDDSモジュールはコントローラ部とは別体の基板上に搭載されています。(後述)
マイコンを使ったDDSコントローラは過去のBlog(←一例にリンク)に何度となく登場しています。 DDSモジュール上のDDSチップ:AD9833に発生すべき周波数のデータを送るのが主な機能です。周波数の可変はロータリ・エンコーダを使いアナログチックに行ないます。 これは受信機の受信周波数を操作するとき最もやり易い方法だからです。 数値的にインプットする方法も可能ですが、バンドを隅からワッチして行くと言った扱いにはアナログチックにダイヤル操作する方法が優っているでしょう。テンキーで数字をインプットするなどと言うのではナンセンスです。
マイコンチップは何でも良いです。ここではAVRマイコンのATmega328P-Uを使っています。以前のBlogではmega8を使っていましたがチップを乗り換えました。 マイコン自身はチップに内蔵のクロックで動作しています。その方が周辺回路に及ぼすクロックの漏れは少なくて済みます。
表示器には青色のバックに白抜き文字のLCDを使いました。16文字2行のタイプです。制御はパラレルで4ビットのモードで使っています。 最近は同じAVRマイコンでもarduinoを使う人が多くなっています。その場合は同じようなLCD表示器でもシリアルインターフェースのものを使います。自身が使うコントローラに合わせた表示器を調達します。
なお、arduinoの互換品を作るわけではありませんが、製作には互換基板を自作するために販売されている部品未実装のプリント基板を「単なるマイコンボード」として流用しました。 この図面はマイコン周辺に接続するスイッチやボリウムなどへの配線を明確にするために書いたものです。互換基板の情報は次項に示します。
【arduino互換ボードを活用する】
秋月電子通商で安価に販売されているarduino互換ユニット製作用のプリント基板を流用しています。この基板は28ピンのATmegaX8シリーズのAVRマイコンならどれでも使えます。
たぶんarduinoの互換品を作るならATmega328P-Uが良いでしょう。しかしこのDDSコントローラに使うだけならATmega8やmega48、mega88、mega168でも支障ありません。これらのATmegaチップのピン配置は基本的に互換だからです。意外に幅広く活用できる基板です。(2022年7月現在、基板は単価150円で販売されています)
マイコン基板とは言っても、電源のレギュレータや幾つかの部品が実装されるだけです。しかしマイコンのI/Oポート(接続端子)は全て引き出されていますし、コネクタが実装できるようになっているので便利に使えます。ぜんぶ手配線するより楽なので流用しているわけです。LCD表示器やDDSチップとの接続にも基板周辺に装着されたコネクタを使います。
LCD表示基板やDDS発振モジュールとの接続には端部にピンヘッダが付いた既製品のワイヤを多用しています。従って配線替えも簡単にできます。
左図は以前のBlog(←リンク)で既出ですが一部をアップデートしてあります。この図には各I/Oポートの接続先が具体的に記載されていますのでモジュール/基板間の布線確認用に使いました。
【LCDは青色・白抜き文字型】
この写真も既出です。マイコン基板とLCD表示器の接続テストをしているところです。
DDS-VFOの筐体内部に収めたのも基本的にこれと同じものです。 表示器には写真のような青色バックに白抜き文字のLCD表示器を使っています。 先ほど登場したコントローラ部の回路図もこのLCD表示器を使うように書き換えてあります。
以前の定番にしていたLCD表示器はバックライトが暗いためたくさん電流を流す必要がありました。明るいところならバックライト無しでも視認できると言ったメリットはあるのですが既に旧式なので使うのはやめています。 最近は写真のような青色バックに白抜き文字のLCD表示器が安価に出回っています。バックライトの白色LEDの発光効率が良いため少ない電流で十分なコントラストが得られます。
残念ながら、ここで使ったLCDモジュールのバックライト用LED(白)は劣化が早いようです。連続点灯させると半年もせずに変色と輝度低下が見られます。 例えば時計のように連続して点灯させる機器にはもう少し良い表示器が欲しいでしょう。しかし安価なので止むを得ない感じですね。それに時々使うような機器ならほとんど支障は無いと思いますが。
【中国製のロータリ・エンコーダ】
DDS-VFOの操作性を決めるロータリ・エンコーダは中国製のNC制御用と称する物を使いました。
このエンコーダは1回転あたり100ステップです。以前から使っている1回転24ステップのエンコーダよりも早いダイヤル送りが可能なので受信機に使うと操作性が良くなります。 しかもパルスエッジ検出方式で使い1回転あたり400ステップとして使います。
1ステップあたりの回転角は360/400(度)なのでわずか0.9度になります。 操作がクリチカルにならないか心配しましたが、ツマミの直径がわりあい大きい(約47mm)ので支障はありませんでした。むしろクイックなダイヤル送りが可能になって使い易さがアップしています。(参考:かなり早めに回したとき幅2mS程度のパルス波が出力される。A/Bの2相を使った4倍速なのでマイコンのUP/DOWN処理は500μS以内に行なう必要がある)
従来使っていた安価なロータリ・エンコーダでは4倍速に改造しても1回転あたり96ステップにしかなりませんでした。そのため周波数を大幅に変えるにはダイヤル・ツマミをたくさん回す必要がありました。基本は10Hz/Stepなのですが、それを補うためダイヤルスピードを100Hz/Step、1kHz/Step、20kHz/Stepに切り替えるスイッチが設けてあります。
この中国製エンコーダを使ったことで100Hz/Stepの切り替えは不要になったくらいです。バンド幅が狭いHF帯ローバンドの受信機なら実用上スピード切替はなくてもあまり不便に感じません。 送料込みで単価¥1,000-〜¥1,500-ですから中華モノとしては多少高価な部品です。しかし作りもしっかりしているのでメリットは大きいと思っています。このロータリ・エンコーダには+5Vの電源を与えて使います。(6端子型と4端子型の2種類がありますが4端子型を選びました)
ー・・・ー
【クリックなし改造方法】
購入したままではクリック付きの100ステップ型です。このDDS-VFOに使うにはクリックを外す必要があります。改造方法は以下に示しますが、わかってやれば簡単にできます。
改造はダイヤル・ツマミの側から行ないます。(黒い裏面には手をつけません)
まず、突き出ている早送りノブを外します。続いてツマミの表面に接着されている薄いアルミの飾り板を曲げないよう上手にはがします。両面粘着テープで貼ってあるので少々やり難かったです。
飾り板を取り除くとネジの頭が3つ見えますのでそれを緩めて取ります。ネジでツマミの部分と目盛のある傘状の部品が一緒に止めてあります。ツマミと傘を除くと「クリック機構」を覆っている細い円弧状の薄い金属製のカバー板が見えてきます。
その薄い金属製カバー板は持ち上げるとわりと簡単に取り除けます。 その中にクリック感を作り出す「ピン」と押さえの「板バネ」が見えるでしょう。φ1.4mm長さ3.5mmくらいの小さな「ピン」をピンセットで引き抜いて取り除けばクリックなしへの改造は終了です。
板バネはそのまま残しておいて支障ありません。「ピン」を除くだけでOKです。また金属製カバー板は外したまま元に戻さなくても大丈夫でしょう。あとは逆の手順で組み立てれば完了です。
これでクリックなしのロータリ・エンコーダになりました。改造にあたってJA6IRK/1岩永さんにFBな情報をいただききました。有難うございます。
簡単な改造ですから失敗しないと思いますが自己責任で実行してください。もちろんそのままクリック付き100ステップのダイヤルとして使っても良いのでお好みで改造されてください。(クリック付きダイヤルのまま使うにはマイコン・アプリも関係しますが詳しいことは省きます)
このロータリ・エンコーダはパネル面にφ42mmの大きな穴を開ける必要があって少したいへんでしたが奥行きが浅いので厚みのないシャシに収容するには最適でした。
☆
【出力アンプ部回路図】
DDSチップ:AD9833の出力は-15dBmくらいです。これは50Ωに変換した後の大きさです。(50Ωの両端に110mVppくらい)
受信機のミキサ回路に与えるには小さいためパワーアップする必要があります。 汎用の発振器として使うにももう少し大きな出力が欲しいところです。 またAD9833の出力そのままでは折り返しスプリアスが含まれているので、必ずLPF(ローパスフィルタ)を補う必要があります。 ここで使用したAD9833:DDSモジュールとその具体的な使いかたについては以前のBlog(←リンク)に情報があります。
AD9833は基準となるクロック信号が不可欠です。このDDS-VFOでは81MHzの発振器によって得ています。AD9833に外付けでクロック信号を与える話はこちら(←リンク)にあります。
AD9833のようなDDS-ICでは実用的な上限周波数はおおよそクロック周波数の40%程度までです。 ここでは81MHzのクロックを与えていますから上限は32.4MHzくらいになります。 ローパスフィルタ(LPF)はその周波数に合わせて設計します。クロック周波数に依存するわけです。 実際にはやや内輪の、カットオフ周波数が30MHzのLPFを使いました。 単なるπ型のLPFでは遮断特性が悪いため有極型で帯域外減衰特性の良いフィルタを作ります。 手持ち部品の都合で設計値を幾らか丸めて作りましたが必要とする性能は十分に得られています。
LPFの後のアンプには「広帯域アンプ」を使います。 アンプ初段にはNECの広帯域アンプ用MMICであるμPC1651Gを使いました。既に旧式ですが手持ちの都合です。 ゲインは十分なのですが小さな入力でも出力に非対称歪みが見られるようです。 従って図の回路定数よりも*1の部分のアッテネータを大きくする方が好ましいでしょう。 現状は3dBのアッテネータですがこれを6〜8dBくらいにして入力を減衰させると良いです。もちろんその分だけ出力のパワーは低下します。
(参考:μPC1651Gの代替方法:現在はBGA2851/NXPセミコンダクタ製などがお薦めできます。秋月電子通商で単価20円で買えます。ゲインの違いはATTで加減できます)
μPC1651Gのままでは出力0dBmくらいが上限です。 さらにパワーアップのために2段目にはfTの高いトランジスタを使って広帯域アンプを作りました。使った2SC2407(NEC)は500MHzにおいて5mW入力で160mWが得られると言うパワフルな小電力用トランジスタです。 他にも適当なトランジスタはたくさんありますがこうした広帯域アンプにはfTの十分高いものを使うのが秘訣です。2SC1815の様な汎用品では目的に合ったものになりません。
この設計では放熱を考えてセーブした使い方になっています。 コレクタ電圧10Vでコレクタ電流は30mA流しています。これでだいたい出力電力:Po=50mWまでがリニアな動作範囲になっています。
ゲインはμPC1651Gで17dB、2SC2407のアンプが21dBです。途中には6dBのアッテネータが入っています。 他にLPFなどのロスもあってアンプ全体のゲインは31dBくらいになりました。(@10MHz)
DDS-VFOの出力は約+16dBmです。(16dBm≒40mW:50Ω負荷に4Vpp) これくらいパワーがあれば受信機のミキサ回路には十分です。 実際には数dBのアッテネータで減衰させてから受信機のDi-DBM:ADE-1に加えることになります。
この回路図には記載が漏れていますが+10Vの電圧を作るために3端子レギュレータを使っています。これはこのアンプ部に安定した+10Vを供給するためです。3端子レギュレータには500mAタイプの78M10を使っておりシャシ底面に放熱を兼ねてねじ止めしています。もちろん1Aタイプの「7810」でもOKです。 DDS-VFOのメイン電源には外付けのACアダプタを使っていてDC12〜15Vで300mA程度のものが必要です。通信機に使うことを考慮してスイッチング型ではなくトランス式のACアダブタを使いました。
【出力アンプ部で使うコイル】
製作を思い立って面倒に感じたのがコイル巻きです。嫌いではないのですがやはり手間に感じます。
最初は75MHzのクロック発振器を予定していました。写真の7mm角コイル①はその75MHz用に巻いてあります。(使いませんでした) その後、基本波が27MHzのクリスタル(水晶発振子)が見つかったので81MHzに周波数変更しました。(27MHzx3=81MHz)
写真にありませんが81MHzの発振器に使ったコイルはトロイダルコア:T25-#10に巻きました。1次側10回で2次側が1回巻きです。巻線はφ0.32mm/UEW線(ポリウレタン電線。ウレメット線とも言う。2UEWと称する物でOKです)を使いました。ちなみに1次側のインダクタンスは0.2μHです。 7mm角のコイルからトロイダルコアに変更したのは組み込みの都合です。基板上の部品の高さを抑えたかったからです。7mm角のコイルでは寝かせて実装せねばならず、そうすると調整が厄介です。
AD9833を使った小型DDSモジュールにローパスフィルタ:LPFは載っていません。必ず外付けして使います。 そのLPFの設計はDDS発振器に与えるクロック周波数が出発点になります。 出来るだけクロック周波数が活かせるような設計にするわけです。
上述の通りカットオフ周波数が30MHzのLPFを作ります。LPFに使うコイル(3つ)には適当な既製品がないのでトロイダルコアに巻いて自作します。 1.1μHと0.91μH (2つ)のコイルが必要です。 コア材はT25-#10でφ0.32mm/UEW線を巻きました。 L1用の1.1μHが23回巻き、L2、L3用の0.91μHが21回巻きです。 巻線が重ならぬようにして円周全体に均等に巻きます。使用したコア材の#10材は高い周波数向きでVHF帯まで使えるものです。
メガネコアに巻いてあるもの②は巻数比が2:1のRFトランスです。 BN-43-2402というコア材に1次側が6回で2次側は3回巻きます。φ0.16mm/UEW線を巻きました。フェライトの素材は#43材です。このメガネコアは秋葉原の東京ラジオデパート3F:斎藤電気商会で手に入ります。
RFトランスのインピーダンス比は巻き数比の2乗になります。従って負荷となる2次側が50Ωですから200Ω:50Ωとなります。DDSチップ(AD9833)の出力インピーダンスが200Ωなので50Ωへのインピーダンス変換に使います。 このトランスはおおよそ100kHz〜30MHzでフラットな周波数特性が得られるでしょう。巻き方はトリファイラ巻きではなく1次と2次が独立です。トリファイラ巻きが理想ですが配線の引き出しを考えて別個に巻きました。
もしメガネコアが手に入らなければフェライト・ビーズ:FB-801-#43にトリファイラ巻きしたトランスが同じように使えます。φ0.16mm/UEW線を3本よじったトリファイラで6回巻いて作れます。
【出力アンプ部は低背に作る】
このDDS-VFOは使用の便を考えてタカチのYM-200型薄型ボックスに組み込みました。平置きして使いやすいようにしたかったのです。
そのため配線基板を収納するのが厄介になってしまいました。 はじめにパネル面のデザインを考えてスイッチや表示器のレイアウトを決めたので回路基板の配置が難しくなったのです。
特にDDSモジュールとLPFなどを含むアナログ回路の組込が課題になりました。 検討の結果、シャシの底面側に直接取り付けてなるべく背丈(厚み)を抑えるようにすれば収納可能そうでした。
写真のように高さが10mmを超えないように作ります。 DDSモジュールはAD9850を使った物も候補でしたがなるべく薄型にということでAD9833を使った小型モジュールになった訳です。 このAD9833のモジュールは写真のように小型で薄くできています。 こうした組み込みにはうってつけでした。
ただしAD9833のDDSモジュールは購入したままだと25MHzのクロック発振器で動作します。 そのままでは発生周波数の上限は10MHzあたりになってしまいます。 とりあえず7MHzの受信機のテストには使えるのですがDDS-VFOとしての汎用性が損なわれます。なるべく高い周波数まで使えるよう外付けの発振器からクロックを与えることにします。(モジュールに実装済みの25MHzオシレータは除去します。詳細は以前のBlogで。←リンク) 外付けクロック発生用の27MHz水晶発振子(基本波)は寝かせて取り付けてあります。2SK19Yを使ってオーバートーン発振させ81MHzを得ています。
トランジスタも寝かせて実装をすればより薄く作れます。そこまでの必要はなさそうなので写真のようになっています。 出力部のトランジスタを銅箔に放熱すればより大きなパワーが取り出せますがDDS-VFOとして必要は感じません。この程度で十分でしょう。
【DDSクロックは81MHzで】
以前のBlog(←リンク)にも書いていますが専用の水晶発振子でなくてもオーバートーン発振は可能です。 ここで使用した発振子は27.000MHzのものです。なお、27MHzの水晶発振子には3次オーバートーンで27MHzを得る物があって、それは今回の目的には使えませんので注意が必要です。基本波が27MHzの水晶発振子が必要です。(参考:3次オーバートーンの27MHz水晶発振子は9次のオーバートーン発振が可能かもしれません。但し発振はだいぶ弱いでしょう) 27MHzの基本波水晶発振子が入手困難なら25MHzの発振子でも良いです。25MHzの方が入手し易いでしょう。その場合DDSのクロックは75MHzになります。
27.000MHzの3倍は81.000MHzですがオーバートーン発振させると発振周波数に誤差を生じます。オーバートーン用に作られた発振子ではないためで、写真のように約74kHzの誤差が出ました。(約0.1%の誤差) マイコンをコントローラとして使ったDDS-VFOの場合、周波数の誤差は演算によって数値的に補正してしまいます。従ってDDSクロックに発振周波数の誤差や端数があっても支障はありません。もちろん発振周波数の調整も必要ありません。要は実際の発振周波数がわかっていればOKです。
(参考:実際には初めにクロックに誤差なしとして所定の周波数を発生させます。その発生させた周波数を周波数カウンタで精密に読み取ってクロック発振器の誤差を推定する方法が合理的です。実際にそうしました。さらに周波数を微調整する機能も持っているので少しならアナログ的な補正もできます)
しかし周波数の変動があると補正するのは容易でないため気になりました。 周波数カウンタを接続してしばらく観察していたら変動は数ppmに収まりそうです。 ちなみに1ppmの変動は1MHzにおいて1Hz、10MHzなら10Hzです。
なお、このDDS-VFOの刻みは最小で約0.302Hzです。(0.302Hz ≒ 81.074MHz/ 2^28) 従って、最大でその半分の約0.151Hzの設定誤差が起こり得ます。しかし0.151Hzの誤差ならSSB/CWにおいてはまったく問題になりません。それにそんな僅かなズレなどわからないでしょう。更にデジタルモードでも支障はないと思います。(・・と言っても実際にはダイヤルは最小で10Hz/Stepの設定ですから条件によっては±5Hzの同調誤差が出ます・笑) むしろ周波数変動(ドリフト or QRH)の方が問題かも知れませんね。
DDS-VFOとして7MHzを発生させ観測していると15〜20Hz程度の初期変動がありました。電源ONの直後から30分経過後における変動量です。 その後は数Hz以内の漂動にとどまるようです。 DDS用のクロック発振器(81MHz)は単なる水晶発振器であり、TCXOやOCXOではないのでこの程度の変動はやむを得ません。それでもVFOとしてはLC-VFOや可変範囲を欲張ったVXOとは比較にならないくらい安定です。SSB/CW用通信型受信機の局発と考えれば満足できる周波数安定度でしょう。
WSPRやFT-8のようなデジタルモードの受信機には少々物足りなさもありますが一般的な発振器(VFO)としては問題ありません。この先実際に使って様子を見たいと思います。 もしもこれ以上を望むなら外部から安定な周波数基準を与えると言った方法があります。 あるいはTCXOやOCXOを内蔵しそれを逓倍してクロックにすると言った方法になります。 それはちょっと大げさで別の意味の製作になってしまいますね。
【DDSで作った汎用VFO完成】
一連の受信機の開発・試作では必要のつど既製品の発振器を使っていました。 しかしそれでは大げさですし、IF周波数分の表示オフセットを与えると言った操作はできません。 どうしても不便がありました。
しかしシャシ加工を行ない回路を組み込んでDDS-VFOを作るには相応の努力を要します。 特に板金加工は苦手です。なかなか腰は重かったのですが他の事情もあって製作に踏み切りました。
出来上がってみますとやはり便利です。 もともと受信機やトランシーバの局発回路を考えてありますから使いやすいのは当たり前でしょう。用途に応じてプログラムだけで変幻自在なのも便利です。書き込み用コネクタを設けたので「箱」を開けずに書き換えできます。 得られた信号のC/Nもまずまずで妙なスプリアス受信も感じません。今さらながら作って良かったと思います。
組込み用VFOとしての機能試験も兼ねています。自作の受信機やトランシーバにも適当そうなので次回の製作は違った構造で作ることになるでしょう。 製作例のように平べったく作るには少し工夫が必要でしたね。hi
以下はDDS-VFOの使い方メモ。
(1)前回Blog(I-F Amp.第3回←リンク)の簡易フロントエンドでの使用を想定。
(2)ミキサーのADE-1には8〜10dBのアッテネータで減衰させて与えること。
(3)受信モードにおいて出力信号の周波数はLCDに表示の周波数+中間周波数(440kHz)である。従って製作中の受信機ではLCD表示周波数=受信周波数。
(4)局発を上側に取った差のヘテロダインゆえSSBはサイドバンドが反転。
(5)送信モードでは「発振周波数=LCDの表示周波数」になる。RITの値=ゼロである。
(6)周波数範囲は100kHz〜30MHz。ソフトウエア的にリミット。Po=約16dBm/50Ω。
・・・以上、自身の備忘として。
☆
どなたかが「受信機はフロントエンドができれば完成のようなもの」と仰ったとか。 昔の話ですから、たぶんその受信機のフロントエンドというのはRF部だけでなく局発を含んだものでしょう。 確かに「そこ」が出来上がればあとはI-F Amp.以降になります。 周波数は固定していますし、ひたすら増幅すれば良いので完成も近づいたでしょう。
実は「私だけの受信機設計」ではフロントエンド部分の心配はあまりしていませんでした。もちろん、RFアンプなどに課題もあります。ですが少なくとも「局発」の部分はすでに確立しています。昔の受信機において(大いに)問題だった周波数安定度の心配はいりませんからね。
次回はもう少しVFO(局発用)の話になるかもしれません。RFアンプなど含むフロントエンド部も考えていますが・・・。AFフィルタ付きの低周波部もまだでした。 ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器→いまここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
【DDSで作る多用途VFO】
今さらですが通信型受信機の3要素(3S)といえば「感度」「選択度」「安定度」です。ただ、昔と今の受信機ではそれぞれのウエイトはかなり違っています。
例えば最重要視された「感度」は最近のデバイスを使い設計さえ誤らなければ容易に達成できます。まともな設計なら「感度不足」を心配する必要などないのです。
「選択度」も水晶振動子の進歩でVHF帯に及ぶ周波数範囲で最適なフィルタが製作できます。フィルタの自作に於いても測定器と設計ツールの発展で先人が想像さえできなかったような画期的な状況にあります。 さらに最近はデジタル処理で任意の特性のフィルタが数値演算的に可能になっておりかつての受信機のような課題も無くなってきました。
その一方で「周波数安定度」は一段と高度なものが求められています。音声(SSB/FM)や無線電信(CW)ならともかくデジタルモード(FT8など)では安定度の良いことが前提になっているからです。 従って簡易な無線機ならともかく様々な用途で普通に使える「通信型受信機」であるためには周波数安定度を「近代化」する必要があるでしょう。
「私だけの受信機設計」・第8回ではDDSを使ったVFO(可変周波発振器)を製作します。 DDS-VFOの出力を受信機の局発(Local-OSC)としてミキサ回路に加えます。 そのため受信機の周波数安定度に直結しますから周波数安定度に優れた発振器が製作目標です。スプリアスが少ないことも重要です。DDS-VFOで注意した点など製作の過程を辿ります。
☆
先日、HAMの仲間とアイボールしたとき「ブレッドボード以外でも作るんですねえ!」なんて言われてしまいました。 確かにハンダ付けで「本格的らしく」製作した作品を見るのは珍しいかも知れないです。(笑)
実験品ならともかく、やはりある程度実用的に使うものはきちんと製作しないとダメです。いくら上手に作ってもブレッドボードのままでは限界があるでしょう。
今回のDDS-VFOも実験用ではありますが汎用の発振器として様々な目的に使うつもりです。要所はきちんとハンダ付けして作り「箱」にも収めました。バラックのままでは使い難いですからね。(このDDS-VFOはバラックだったものを箱に入れて纏めたもの)
なるべく手間と費用を掛けず目的に合ったものを作るのが目標です。可能な範囲で手持ちの基板やユニットを活用します。自身の都合に合わせた設計になっていて、文字通り「私だけの受信機設計」です。ほかの人の役には立たない「プログラム・リスト」は省きました。(継ぎ接ぎだらけの『スパゲッティ状態』なのでお見せできません。笑)
このDDS-VFOはごく簡単な機能だけで出来ています。肝心のDDS-ICの制御方法はAD9833やAD9834を扱う以前のBlogページ(←リンク)に書きました。 マイコンや書き込みツールを扱えるのでしたらニーズにマッチしたVFOの製作は難しくないでしょう。
差し当たっての目的は受信機の局発(局部発振器:Local oscillator)です。 従って必要な周波数範囲がカバーされ、周波数が安定していればどんな発振器でも良いわけです。良質な部品の手持ちがあり板金工作のウデに覚えがあればLC発振のVFOを製作するのも面白いです。
デジタルで行くならPICマイコンやarduinoを使った周波数コントローラを作るなり、DDS-ICの代わりにSi5351Aのようなチップを使う方法もあります。
とりあえず製作中の「通信型受信機」の実験のために必要なのは7440kHz〜7640kHzの発振器です。50Ωの負荷に2Vppくらい(=10dBm)の出力があれば十分です。 もし局発を下側にとるのであれば発振周波数は6560kHz〜6760kHzでも構いません。
【DDS Controler:DDSコントローラ回路図】
図はマイコン:ATmega328P-Uを使って、DDSチップ:AD9833の発振周波数をコントロールするための回路です。LCD表示器に受信している周波数がデジタル表示されます。なお、送受信の制御機能があります。送信モードに切替えると「表示周波数=発振周波数」になります。この機能を使えばごく簡単にCWトランシーバが作れます。
図面左上部分にDDSチップ用のクロック発振器とDDSチップが載ったモジュールの部分回路が書いてあります。コントローラとの接続を明確化するためこの図面に置きました。
そのクロック発振器とDDSモジュールはコントローラ部とは別体の基板上に搭載されています。(後述)
マイコンを使ったDDSコントローラは過去のBlog(←一例にリンク)に何度となく登場しています。 DDSモジュール上のDDSチップ:AD9833に発生すべき周波数のデータを送るのが主な機能です。周波数の可変はロータリ・エンコーダを使いアナログチックに行ないます。 これは受信機の受信周波数を操作するとき最もやり易い方法だからです。 数値的にインプットする方法も可能ですが、バンドを隅からワッチして行くと言った扱いにはアナログチックにダイヤル操作する方法が優っているでしょう。テンキーで数字をインプットするなどと言うのではナンセンスです。
マイコンチップは何でも良いです。ここではAVRマイコンのATmega328P-Uを使っています。以前のBlogではmega8を使っていましたがチップを乗り換えました。 マイコン自身はチップに内蔵のクロックで動作しています。その方が周辺回路に及ぼすクロックの漏れは少なくて済みます。
表示器には青色のバックに白抜き文字のLCDを使いました。16文字2行のタイプです。制御はパラレルで4ビットのモードで使っています。 最近は同じAVRマイコンでもarduinoを使う人が多くなっています。その場合は同じようなLCD表示器でもシリアルインターフェースのものを使います。自身が使うコントローラに合わせた表示器を調達します。
なお、arduinoの互換品を作るわけではありませんが、製作には互換基板を自作するために販売されている部品未実装のプリント基板を「単なるマイコンボード」として流用しました。 この図面はマイコン周辺に接続するスイッチやボリウムなどへの配線を明確にするために書いたものです。互換基板の情報は次項に示します。
【arduino互換ボードを活用する】
秋月電子通商で安価に販売されているarduino互換ユニット製作用のプリント基板を流用しています。この基板は28ピンのATmegaX8シリーズのAVRマイコンならどれでも使えます。
たぶんarduinoの互換品を作るならATmega328P-Uが良いでしょう。しかしこのDDSコントローラに使うだけならATmega8や
マイコン基板とは言っても、電源のレギュレータや幾つかの部品が実装されるだけです。しかしマイコンのI/Oポート(接続端子)は全て引き出されていますし、コネクタが実装できるようになっているので便利に使えます。ぜんぶ手配線するより楽なので流用しているわけです。LCD表示器やDDSチップとの接続にも基板周辺に装着されたコネクタを使います。
LCD表示基板やDDS発振モジュールとの接続には端部にピンヘッダが付いた既製品のワイヤを多用しています。従って配線替えも簡単にできます。
左図は以前のBlog(←リンク)で既出ですが一部をアップデートしてあります。この図には各I/Oポートの接続先が具体的に記載されていますのでモジュール/基板間の布線確認用に使いました。
【LCDは青色・白抜き文字型】
この写真も既出です。マイコン基板とLCD表示器の接続テストをしているところです。
DDS-VFOの筐体内部に収めたのも基本的にこれと同じものです。 表示器には写真のような青色バックに白抜き文字のLCD表示器を使っています。 先ほど登場したコントローラ部の回路図もこのLCD表示器を使うように書き換えてあります。
以前の定番にしていたLCD表示器はバックライトが暗いためたくさん電流を流す必要がありました。明るいところならバックライト無しでも視認できると言ったメリットはあるのですが既に旧式なので使うのはやめています。 最近は写真のような青色バックに白抜き文字のLCD表示器が安価に出回っています。バックライトの白色LEDの発光効率が良いため少ない電流で十分なコントラストが得られます。
残念ながら、ここで使ったLCDモジュールのバックライト用LED(白)は劣化が早いようです。連続点灯させると半年もせずに変色と輝度低下が見られます。 例えば時計のように連続して点灯させる機器にはもう少し良い表示器が欲しいでしょう。しかし安価なので止むを得ない感じですね。それに時々使うような機器ならほとんど支障は無いと思いますが。
【中国製のロータリ・エンコーダ】
DDS-VFOの操作性を決めるロータリ・エンコーダは中国製のNC制御用と称する物を使いました。
このエンコーダは1回転あたり100ステップです。以前から使っている1回転24ステップのエンコーダよりも早いダイヤル送りが可能なので受信機に使うと操作性が良くなります。 しかもパルスエッジ検出方式で使い1回転あたり400ステップとして使います。
1ステップあたりの回転角は360/400(度)なのでわずか0.9度になります。 操作がクリチカルにならないか心配しましたが、ツマミの直径がわりあい大きい(約47mm)ので支障はありませんでした。むしろクイックなダイヤル送りが可能になって使い易さがアップしています。(参考:かなり早めに回したとき幅2mS程度のパルス波が出力される。A/Bの2相を使った4倍速なのでマイコンのUP/DOWN処理は500μS以内に行なう必要がある)
従来使っていた安価なロータリ・エンコーダでは4倍速に改造しても1回転あたり96ステップにしかなりませんでした。そのため周波数を大幅に変えるにはダイヤル・ツマミをたくさん回す必要がありました。基本は10Hz/Stepなのですが、それを補うためダイヤルスピードを100Hz/Step、1kHz/Step、20kHz/Stepに切り替えるスイッチが設けてあります。
この中国製エンコーダを使ったことで100Hz/Stepの切り替えは不要になったくらいです。バンド幅が狭いHF帯ローバンドの受信機なら実用上スピード切替はなくてもあまり不便に感じません。 送料込みで単価¥1,000-〜¥1,500-ですから中華モノとしては多少高価な部品です。しかし作りもしっかりしているのでメリットは大きいと思っています。このロータリ・エンコーダには+5Vの電源を与えて使います。(6端子型と4端子型の2種類がありますが4端子型を選びました)
ー・・・ー
【クリックなし改造方法】
購入したままではクリック付きの100ステップ型です。このDDS-VFOに使うにはクリックを外す必要があります。改造方法は以下に示しますが、わかってやれば簡単にできます。
改造はダイヤル・ツマミの側から行ないます。(黒い裏面には手をつけません)
まず、突き出ている早送りノブを外します。続いてツマミの表面に接着されている薄いアルミの飾り板を曲げないよう上手にはがします。両面粘着テープで貼ってあるので少々やり難かったです。
飾り板を取り除くとネジの頭が3つ見えますのでそれを緩めて取ります。ネジでツマミの部分と目盛のある傘状の部品が一緒に止めてあります。ツマミと傘を除くと「クリック機構」を覆っている細い円弧状の薄い金属製のカバー板が見えてきます。
その薄い金属製カバー板は持ち上げるとわりと簡単に取り除けます。 その中にクリック感を作り出す「ピン」と押さえの「板バネ」が見えるでしょう。φ1.4mm長さ3.5mmくらいの小さな「ピン」をピンセットで引き抜いて取り除けばクリックなしへの改造は終了です。
板バネはそのまま残しておいて支障ありません。「ピン」を除くだけでOKです。また金属製カバー板は外したまま元に戻さなくても大丈夫でしょう。あとは逆の手順で組み立てれば完了です。
これでクリックなしのロータリ・エンコーダになりました。改造にあたってJA6IRK/1岩永さんにFBな情報をいただききました。有難うございます。
簡単な改造ですから失敗しないと思いますが自己責任で実行してください。もちろんそのままクリック付き100ステップのダイヤルとして使っても良いのでお好みで改造されてください。(クリック付きダイヤルのまま使うにはマイコン・アプリも関係しますが詳しいことは省きます)
このロータリ・エンコーダはパネル面にφ42mmの大きな穴を開ける必要があって少したいへんでしたが奥行きが浅いので厚みのないシャシに収容するには最適でした。
☆
【出力アンプ部回路図】
DDSチップ:AD9833の出力は-15dBmくらいです。これは50Ωに変換した後の大きさです。(50Ωの両端に110mVppくらい)
受信機のミキサ回路に与えるには小さいためパワーアップする必要があります。 汎用の発振器として使うにももう少し大きな出力が欲しいところです。 またAD9833の出力そのままでは折り返しスプリアスが含まれているので、必ずLPF(ローパスフィルタ)を補う必要があります。 ここで使用したAD9833:DDSモジュールとその具体的な使いかたについては以前のBlog(←リンク)に情報があります。
AD9833は基準となるクロック信号が不可欠です。このDDS-VFOでは81MHzの発振器によって得ています。AD9833に外付けでクロック信号を与える話はこちら(←リンク)にあります。
AD9833のようなDDS-ICでは実用的な上限周波数はおおよそクロック周波数の40%程度までです。 ここでは81MHzのクロックを与えていますから上限は32.4MHzくらいになります。 ローパスフィルタ(LPF)はその周波数に合わせて設計します。クロック周波数に依存するわけです。 実際にはやや内輪の、カットオフ周波数が30MHzのLPFを使いました。 単なるπ型のLPFでは遮断特性が悪いため有極型で帯域外減衰特性の良いフィルタを作ります。 手持ち部品の都合で設計値を幾らか丸めて作りましたが必要とする性能は十分に得られています。
LPFの後のアンプには「広帯域アンプ」を使います。 アンプ初段にはNECの広帯域アンプ用MMICであるμPC1651Gを使いました。既に旧式ですが手持ちの都合です。 ゲインは十分なのですが小さな入力でも出力に非対称歪みが見られるようです。 従って図の回路定数よりも*1の部分のアッテネータを大きくする方が好ましいでしょう。 現状は3dBのアッテネータですがこれを6〜8dBくらいにして入力を減衰させると良いです。もちろんその分だけ出力のパワーは低下します。
(参考:μPC1651Gの代替方法:現在はBGA2851/NXPセミコンダクタ製などがお薦めできます。秋月電子通商で単価20円で買えます。ゲインの違いはATTで加減できます)
μPC1651Gのままでは出力0dBmくらいが上限です。 さらにパワーアップのために2段目にはfTの高いトランジスタを使って広帯域アンプを作りました。使った2SC2407(NEC)は500MHzにおいて5mW入力で160mWが得られると言うパワフルな小電力用トランジスタです。 他にも適当なトランジスタはたくさんありますがこうした広帯域アンプにはfTの十分高いものを使うのが秘訣です。2SC1815の様な汎用品では目的に合ったものになりません。
この設計では放熱を考えてセーブした使い方になっています。 コレクタ電圧10Vでコレクタ電流は30mA流しています。これでだいたい出力電力:Po=50mWまでがリニアな動作範囲になっています。
ゲインはμPC1651Gで17dB、2SC2407のアンプが21dBです。途中には6dBのアッテネータが入っています。 他にLPFなどのロスもあってアンプ全体のゲインは31dBくらいになりました。(@10MHz)
DDS-VFOの出力は約+16dBmです。(16dBm≒40mW:50Ω負荷に4Vpp) これくらいパワーがあれば受信機のミキサ回路には十分です。 実際には数dBのアッテネータで減衰させてから受信機のDi-DBM:ADE-1に加えることになります。
この回路図には記載が漏れていますが+10Vの電圧を作るために3端子レギュレータを使っています。これはこのアンプ部に安定した+10Vを供給するためです。3端子レギュレータには500mAタイプの78M10を使っておりシャシ底面に放熱を兼ねてねじ止めしています。もちろん1Aタイプの「7810」でもOKです。 DDS-VFOのメイン電源には外付けのACアダプタを使っていてDC12〜15Vで300mA程度のものが必要です。通信機に使うことを考慮してスイッチング型ではなくトランス式のACアダブタを使いました。
【出力アンプ部で使うコイル】
製作を思い立って面倒に感じたのがコイル巻きです。嫌いではないのですがやはり手間に感じます。
最初は75MHzのクロック発振器を予定していました。写真の7mm角コイル①はその75MHz用に巻いてあります。(使いませんでした) その後、基本波が27MHzのクリスタル(水晶発振子)が見つかったので81MHzに周波数変更しました。(27MHzx3=81MHz)
写真にありませんが81MHzの発振器に使ったコイルはトロイダルコア:T25-#10に巻きました。1次側10回で2次側が1回巻きです。巻線はφ0.32mm/UEW線(ポリウレタン電線。ウレメット線とも言う。2UEWと称する物でOKです)を使いました。ちなみに1次側のインダクタンスは0.2μHです。 7mm角のコイルからトロイダルコアに変更したのは組み込みの都合です。基板上の部品の高さを抑えたかったからです。7mm角のコイルでは寝かせて実装せねばならず、そうすると調整が厄介です。
AD9833を使った小型DDSモジュールにローパスフィルタ:LPFは載っていません。必ず外付けして使います。 そのLPFの設計はDDS発振器に与えるクロック周波数が出発点になります。 出来るだけクロック周波数が活かせるような設計にするわけです。
上述の通りカットオフ周波数が30MHzのLPFを作ります。LPFに使うコイル(3つ)には適当な既製品がないのでトロイダルコアに巻いて自作します。 1.1μHと0.91μH (2つ)のコイルが必要です。 コア材はT25-#10でφ0.32mm/UEW線を巻きました。 L1用の1.1μHが23回巻き、L2、L3用の0.91μHが21回巻きです。 巻線が重ならぬようにして円周全体に均等に巻きます。使用したコア材の#10材は高い周波数向きでVHF帯まで使えるものです。
メガネコアに巻いてあるもの②は巻数比が2:1のRFトランスです。 BN-43-2402というコア材に1次側が6回で2次側は3回巻きます。φ0.16mm/UEW線を巻きました。フェライトの素材は#43材です。このメガネコアは秋葉原の東京ラジオデパート3F:斎藤電気商会で手に入ります。
RFトランスのインピーダンス比は巻き数比の2乗になります。従って負荷となる2次側が50Ωですから200Ω:50Ωとなります。DDSチップ(AD9833)の出力インピーダンスが200Ωなので50Ωへのインピーダンス変換に使います。 このトランスはおおよそ100kHz〜30MHzでフラットな周波数特性が得られるでしょう。巻き方はトリファイラ巻きではなく1次と2次が独立です。トリファイラ巻きが理想ですが配線の引き出しを考えて別個に巻きました。
もしメガネコアが手に入らなければフェライト・ビーズ:FB-801-#43にトリファイラ巻きしたトランスが同じように使えます。φ0.16mm/UEW線を3本よじったトリファイラで6回巻いて作れます。
【出力アンプ部は低背に作る】
このDDS-VFOは使用の便を考えてタカチのYM-200型薄型ボックスに組み込みました。平置きして使いやすいようにしたかったのです。
そのため配線基板を収納するのが厄介になってしまいました。 はじめにパネル面のデザインを考えてスイッチや表示器のレイアウトを決めたので回路基板の配置が難しくなったのです。
特にDDSモジュールとLPFなどを含むアナログ回路の組込が課題になりました。 検討の結果、シャシの底面側に直接取り付けてなるべく背丈(厚み)を抑えるようにすれば収納可能そうでした。
写真のように高さが10mmを超えないように作ります。 DDSモジュールはAD9850を使った物も候補でしたがなるべく薄型にということでAD9833を使った小型モジュールになった訳です。 このAD9833のモジュールは写真のように小型で薄くできています。 こうした組み込みにはうってつけでした。
ただしAD9833のDDSモジュールは購入したままだと25MHzのクロック発振器で動作します。 そのままでは発生周波数の上限は10MHzあたりになってしまいます。 とりあえず7MHzの受信機のテストには使えるのですがDDS-VFOとしての汎用性が損なわれます。なるべく高い周波数まで使えるよう外付けの発振器からクロックを与えることにします。(モジュールに実装済みの25MHzオシレータは除去します。詳細は以前のBlogで。←リンク) 外付けクロック発生用の27MHz水晶発振子(基本波)は寝かせて取り付けてあります。2SK19Yを使ってオーバートーン発振させ81MHzを得ています。
トランジスタも寝かせて実装をすればより薄く作れます。そこまでの必要はなさそうなので写真のようになっています。 出力部のトランジスタを銅箔に放熱すればより大きなパワーが取り出せますがDDS-VFOとして必要は感じません。この程度で十分でしょう。
【DDSクロックは81MHzで】
以前のBlog(←リンク)にも書いていますが専用の水晶発振子でなくてもオーバートーン発振は可能です。 ここで使用した発振子は27.000MHzのものです。なお、27MHzの水晶発振子には3次オーバートーンで27MHzを得る物があって、それは今回の目的には使えませんので注意が必要です。基本波が27MHzの水晶発振子が必要です。(参考:3次オーバートーンの27MHz水晶発振子は9次のオーバートーン発振が可能かもしれません。但し発振はだいぶ弱いでしょう) 27MHzの基本波水晶発振子が入手困難なら25MHzの発振子でも良いです。25MHzの方が入手し易いでしょう。その場合DDSのクロックは75MHzになります。
27.000MHzの3倍は81.000MHzですがオーバートーン発振させると発振周波数に誤差を生じます。オーバートーン用に作られた発振子ではないためで、写真のように約74kHzの誤差が出ました。(約0.1%の誤差) マイコンをコントローラとして使ったDDS-VFOの場合、周波数の誤差は演算によって数値的に補正してしまいます。従ってDDSクロックに発振周波数の誤差や端数があっても支障はありません。もちろん発振周波数の調整も必要ありません。要は実際の発振周波数がわかっていればOKです。
(参考:実際には初めにクロックに誤差なしとして所定の周波数を発生させます。その発生させた周波数を周波数カウンタで精密に読み取ってクロック発振器の誤差を推定する方法が合理的です。実際にそうしました。さらに周波数を微調整する機能も持っているので少しならアナログ的な補正もできます)
しかし周波数の変動があると補正するのは容易でないため気になりました。 周波数カウンタを接続してしばらく観察していたら変動は数ppmに収まりそうです。 ちなみに1ppmの変動は1MHzにおいて1Hz、10MHzなら10Hzです。
なお、このDDS-VFOの刻みは最小で約0.302Hzです。(0.302Hz ≒ 81.074MHz/ 2^28) 従って、最大でその半分の約0.151Hzの設定誤差が起こり得ます。しかし0.151Hzの誤差ならSSB/CWにおいてはまったく問題になりません。それにそんな僅かなズレなどわからないでしょう。更にデジタルモードでも支障はないと思います。(・・と言っても実際にはダイヤルは最小で10Hz/Stepの設定ですから条件によっては±5Hzの同調誤差が出ます・笑) むしろ周波数変動(ドリフト or QRH)の方が問題かも知れませんね。
DDS-VFOとして7MHzを発生させ観測していると15〜20Hz程度の初期変動がありました。電源ONの直後から30分経過後における変動量です。 その後は数Hz以内の漂動にとどまるようです。 DDS用のクロック発振器(81MHz)は単なる水晶発振器であり、TCXOやOCXOではないのでこの程度の変動はやむを得ません。それでもVFOとしてはLC-VFOや可変範囲を欲張ったVXOとは比較にならないくらい安定です。SSB/CW用通信型受信機の局発と考えれば満足できる周波数安定度でしょう。
WSPRやFT-8のようなデジタルモードの受信機には少々物足りなさもありますが一般的な発振器(VFO)としては問題ありません。この先実際に使って様子を見たいと思います。 もしもこれ以上を望むなら外部から安定な周波数基準を与えると言った方法があります。 あるいはTCXOやOCXOを内蔵しそれを逓倍してクロックにすると言った方法になります。 それはちょっと大げさで別の意味の製作になってしまいますね。
【DDSで作った汎用VFO完成】
一連の受信機の開発・試作では必要のつど既製品の発振器を使っていました。 しかしそれでは大げさですし、IF周波数分の表示オフセットを与えると言った操作はできません。 どうしても不便がありました。
しかしシャシ加工を行ない回路を組み込んでDDS-VFOを作るには相応の努力を要します。 特に板金加工は苦手です。なかなか腰は重かったのですが他の事情もあって製作に踏み切りました。
出来上がってみますとやはり便利です。 もともと受信機やトランシーバの局発回路を考えてありますから使いやすいのは当たり前でしょう。用途に応じてプログラムだけで変幻自在なのも便利です。書き込み用コネクタを設けたので「箱」を開けずに書き換えできます。 得られた信号のC/Nもまずまずで妙なスプリアス受信も感じません。今さらながら作って良かったと思います。
組込み用VFOとしての機能試験も兼ねています。自作の受信機やトランシーバにも適当そうなので次回の製作は違った構造で作ることになるでしょう。 製作例のように平べったく作るには少し工夫が必要でしたね。hi
以下はDDS-VFOの使い方メモ。
(1)前回Blog(I-F Amp.第3回←リンク)の簡易フロントエンドでの使用を想定。
(2)ミキサーのADE-1には8〜10dBのアッテネータで減衰させて与えること。
(3)受信モードにおいて出力信号の周波数はLCDに表示の周波数+中間周波数(440kHz)である。従って製作中の受信機ではLCD表示周波数=受信周波数。
(4)局発を上側に取った差のヘテロダインゆえSSBはサイドバンドが反転。
(5)送信モードでは「発振周波数=LCDの表示周波数」になる。RITの値=ゼロである。
(6)周波数範囲は100kHz〜30MHz。ソフトウエア的にリミット。Po=約16dBm/50Ω。
・・・以上、自身の備忘として。
☆
どなたかが「受信機はフロントエンドができれば完成のようなもの」と仰ったとか。 昔の話ですから、たぶんその受信機のフロントエンドというのはRF部だけでなく局発を含んだものでしょう。 確かに「そこ」が出来上がればあとはI-F Amp.以降になります。 周波数は固定していますし、ひたすら増幅すれば良いので完成も近づいたでしょう。
実は「私だけの受信機設計」ではフロントエンド部分の心配はあまりしていませんでした。もちろん、RFアンプなどに課題もあります。ですが少なくとも「局発」の部分はすでに確立しています。昔の受信機において(大いに)問題だった周波数安定度の心配はいりませんからね。
次回はもう少しVFO(局発用)の話になるかもしれません。RFアンプなど含むフロントエンド部も考えていますが・・・。AFフィルタ付きの低周波部もまだでした。 ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器→いまここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
2022年7月14日木曜日
2022年6月29日水曜日
Intermediate Frequency Amplifiers (3)
【中間周波増幅器(3)・周辺回路とその部品】
【改造版・中間周波増幅器】
「私だけの受信機設計・第7回」です。 前回(←リンク)はPIN-DiodeをAGC回路に応用した「中間周波増幅器」を作りました。 まずまずの性能が得られたのですが「大きな入力」が加わった時の特性が気になりました。実用上の支障はほとんどないのですが、測定器で調べたらわかります。 さっそく改良を試みました。
写真は改造済みの「I-F Amp.」です。 改造の前でさえ実験ボードは窮屈でしたから改造部分を搭載するのはなかなか大変でした。しかし何とか収容できたのでさっそくテストできました。
☆
このI-F Amp.の3回目では:
(1)まずはPIN-Diodeをもう少し詳しく扱います。 I-F Amp.の改造がメインテーマですが、アッテネータやRFスイッチへの応用にも少しだけ触れます。
(2)前回の宿題だった簡易版のフロントエンドについて簡単な評価結果を報告しておきます。 簡易版とは言っても、そのままでも結構使えそうなことがわかるでしょう。
(3)I-F Amp.にはよく切れるフィルタが欠かせません。ここで使った「世羅多フィルタ」についておさらいしておきます。少し懐かしい話題になってしまいました。
(4)今回は使いませんでしたが、最近販売されるようになった中国製のセラミックフィルタの特性をごく簡単に評価しました。結果をビジュアルに報告したいと思います。
☆
こうした「通信型受信機の設計」ではI-F Amp.はもちろんですが、各部の回路図を示し簡単な調整方法と説明でも付け加えるだけで十分なのかも知れません。だいたいそう言ったお話が大勢です。 ただ、それだと「作りました・動きました」式のBlogになってしまいます。まあ、雑誌記事なんかでもそう言った類が多いんですけどネ。 しかしそれじゃどうも面白くありません。もっとも、これは私の個人的な考えに過ぎないんですが・・・。(笑)
そこで、寄り道をして関連した回路やその部品についてもうちょっと掘り下げることにしました。 この際評価しておけば後々自身で役に立つ情報が蓄えられます。 例によってアナログな通信型受信機やそのパーツなんかに興味を覚えないのでしたら、今回もスルーされるのがオススメです。大して役には立たんでしょう。 もっと楽しいサイトの方へお出掛けになってください。
【改造版・中間周波増幅器の回路】
I-Fフィルタの直後・・・I-F Amp.の最前部にPIN-Diodeを使った可変アッテネータを付加したものです。I-F Amp.本体の部分はそのままですが、AGC回路には可変アッテネータを駆動する回路を追加しています。
PIN-Diを使ったアッテネータは、Rohde氏の受信機記事を参考にして、このI-F Amp.にマッチするようにアレンジ(適合化)しています。 減衰量は最大でも10dB少々しか取れませんがその分だけ大きな入力に対して強くなります。
PIN-Diを使ったアッテネータとしては最もシンプルなもので、後ほど登場の回路よりも部品数が少なくなっています。 あまり部品が多いとボードに載らないからですが、最大減衰量の点では幾分物足りません。 しかし実用上はこの程度でも十分でしょう。 何しろ無くてもあまり支障はないと感じるくらいですから。
使用部品は殆どが前回と同じですから特に書くこともなさそうです。 PIN-DiはXB15A204Aあるいは1N5767を想定していますが後ほど紹介する1SV157でも良いと思います。
PIN-Di ATTの場所で特殊そうなパーツは入力部のトランスでしょうか? MCL:ミニ・サーキッツ・ラボ社のTT1-6と言う広帯域トランスを使いました。インピーダンス比は1:1で、50Ω:50Ωです。このトランスは低い周波数向きのもので455kHzで支障なく使えます。
もちろん自分で作ることもできます。455kHzと周波数が低いことから巻線のインダクタンスは200μHくらい必要です。 フェライト・ビーズ(例:FB-801-#43など)には巻き切れませんから、しかるべきサイズ・材質のトロイダルコアを用意して巻線する必要があります。 一例として、フェライト・トロイダルコア:FT37-#43を使います。巻線はφ0.16mmくらいの細いもので十分です。良くよじった2本の巻線をバイファイラ巻きで25回巻きます。透磁率;μiの大きなフェライト材のコアを使うと巻き数を減らせますが、ひずみ特性の良くない材質もあるので#43材のコアが安心です。#43材は実績があります。
ATT回路のドライブはトランジスタを使う方式にしましたが、この部分のトランジスタは直流電流増幅率:hFEの大きなものが適するので2SC1815のGRランク品を使います。
◎アッテネータ部以外の回路やパーツについては前回のBlog(←リンク)に書きました。
【PIN-Di ATT部】
PIN-Diodeを使った電圧可変型のアッテネータ回路部分です。入出力インピーダンスは50Ωで、最大減衰量は10dB少々と言った所です。
この回路はQST誌1992年11月号の記事「Recent Advances in Shortwave Receiver Design」(注・1)にあった回路をモデファイしたものです。AEG TELEFUNKEN社のE1800と言う受信機の回路だそうです。
E1800の回路ではPIN-Di ATTは42MHzのルーフィング・フィルタの後に置かれています。使用するPINダイオードは2種類が使い分けられていますが、ここでは同じもので済ませました。上記の回路図で、D10は「可変抵抗特性」の良いものを使い、D11の方にはON時の抵抗値が小さいRFスイッチ用が向いているように思います。ここでは「可変抵抗特性」の方を優先した部品選定にしました。(注・1:HAM Journal誌No.86に邦訳記事あり)
このアッテネータは中くらいの信号レベル、具体的にはI-F Amp.の入力で〜65dBμあたりまではスルー状態でそれ以上で効いてくるように設定されています。AGC電圧との関係で動作開始のポイントを決めますが、回路を簡略に済ますためZenner Diode(D12)を選ぶことで設定しました。TP-VSM-Out.が5Vを超えると動作が始まるようになっています。ここは多少のカット&トライを要する部分です。D12を選ぶとともにR43も加減します。 動作開始後のATTの効き方は無信号の時にTP-VATTが2V(DC)になるようVR4で調整します。
設定・調整は各部の動作が完全になってからでないとうまく行きません。はじめはATTをパスした状態で調整するのも良い方法です。I-F Amp.の動作が完全になってからATTの調整を行ないます。
I-F Amp.ユニットの特性を掲載すれば良いのですが前回のカーブとほとんど違いません。前回グラフの*3の領域が10dB少々だけ右方向(信号が大きくなる方向)にズレただけです。 作図が間に合わなかったので省略しました。いずれグラフに落としたいと思うので興味でもあれば暫く間をおいてまたお出かけください。この場所に追加予定です。
【良く見かけるPIN-Di ATT回路】
左図は様々な雑誌記事で見かけるPIN-Diを使った電子式アッテネータ回路です。
PIN-Diを5本も使っていますが、これはアッテネータの可変範囲を広くするためです。上記の回路のようにPIN-Diが2つの回路では10dB少々の減衰しか得られません。左図のようにT型のアッテネータを2段カスケードにすることで大きな減衰量が得られるようにしています。
部品定数はHF帯に向くようになっています。使用するダイオードは1N5767あるいはhp5082-3081を使いますが、これらは同系のダイオードです。もちろんXB15A204Aでも同じように使えるはずです。 ほかにも国産のPIN-DiはありますがVHF用と称するものはHF帯に向かないものがほとんどです。(要するにこの回路には向かないものが大半です。それらしく動作しても、低い周波数に向かないものでは通過する信号に歪が現れます)
駆動回路には2N2222が多用されてていますが、このトランジスタに拘る理由はなく、国産の2SC1815Y又はGR等で十分です。電源電圧12Vの設計なので9Vにすると言った場合は各Trのバイアス抵抗を変える必要があります。所定の電流、I1、I2が確保できれば良いでしょう。
製作したI-F Amp.の前段に置くATTもこうした回路にすれば良いのですが、部品数が多いので簡略化した回路で済ませました。 図の回路は減衰量の可変範囲が広く取れますのでアッテネータ型のAGC回路に使うことも可能でしょう。1段では最大減衰量が足りないので2段以上必要になると思います。この回路はATTをスルーにした時のLossが多めなので予め考慮しておきます。
(参考)この回路についてEMRFD(pp6・18)に実験レポートがありました。PIN-Diとして1N4006(電源用。詳細は後ほどあり)を使って試作したものは最大50dBの減衰量が得られたそうです。スルーの損失は2dBでした。(@5MHz)左図の回路そのままではなく類似回路での評価です。(注・左図の回路そのままではPIN-Diのドライブ回路に問題があるように思います) こうした電子ATT回路はやや複雑ですがI-F Amp.のAGC用として使えそうです。入力部とAmp.途中の2カ所で使うのが適当です。RF用のPIN-Diならなお良いでしょうね。
【PIN-Diの高周波抵抗vs順方向電流特性】
前回の再掲載ですが、PIN-Diode:XB15A204Aの特性図です。このPIN-Diはアッテネータ用に作られているらしく、順方向電流と等価高周波抵抗が綺麗な直線になっています。 hpの1N5767も殆ど同じような特性です。
PNI-Diodeの作り方を書いても仕方がないかも知れませんが。 まず、N型のウエファー(サブストレート)の上に不純物のない(ノンドープの)シリコンをエピタキシャル成長させます。これがI層になります。
このエピタキシャル層の厚みで、キャリヤのライフタイムが変わります。低い周波数で使うためにはライフタイムが長くなくてはいけません。低い周波数まで整流作用が起こらないようにしたいからです。 そのため、1N5767のような低い周波数まで使用可能なPIN-Diでは不純物のないI層を厚く作ってあります。厚くするにはそれだけ長い気相成長時間が掛かるためコストが掛かって割高になるのかもしれません。(半導体の価格は需要との関係が支配的なのかもしれませんが)
気相成長させたI層の上にP型の不純物を拡散すればPIN構造が完成します。あとは電極を蒸着しダイスに切り分けてリード線を付けダイオードに組み立てればPIN-Diodeの完成です。半導体の製造技術的には難しくはないんですけれどね・・・。
厚いI層の必要がないVHF・UHF用のPIN-Diがほとんどと言う理由はこの辺りにあるように思うのです。
【PIN-Diode SWの優位性】
PIN-Diの用途の大半はRF用のスイッチだろうと思います。アッテネータに使う例はむしろ稀ではないでしょうか?
PIN-DiをRFスイッチに使う優位性は「低ひずみ」にあります。 ダイオードスイッチ(Di-SW)は我々が使っている無線機にも多用されています。多くの場合、一般的な高速スイッチング用のダイオード・・・例えば1S1588や1S2076A,etcのようなダイオードを使っていると思います。これはメーカー製の無線機でも同様です。 ですから何の疑いもなく、これらのダイオードを使う人が殆どです。
しかし、だいぶ大きめの順方向電流(直流的なバイアス電流で、Di-SWをONするために流す)を流しても通過する信号にIMD歪が発生するのです。それがPIN-Diならずいぶん抑えられます。
図はQST誌1994年12月号(pp25〜pp27)から引用・編集したものです。PIN-Diと一般的なダイオードを使ったRFスイッチの比較レポートです。詳細は記事をご覧いただくとして、概要を書いておきましょう。(参考:QST誌のバックナンバーは大塚駅前のJARL資料室に揃っています。但し以下を読めば参照の必要はないと思う)
記事で、1N4153と言うのは一般的な高速スイッチング用のダイオードです。シリコンの小信号用と言うものはほとんどがこれに属します。1S1588や1S2076Aはこれらの代表例です。 1N4153について表・1と表・3を見るとOFF時のアイソレーション(分離)は良好ですが、ON時の通過損失が0.5〜2dBと多めで、3次のIMDもIP3が20〜37dBと小さいので小さな信号で歪んでしまいます。順方向電流を増やすと改善されますがそれもわずかです。 一般的なスイッチング用ダイオードはこうした用途・・・高周波用のスイッチにはベストな選択ではないことがわかります。
MPN3700、BAR17、1N4007はいずれもPIN-Diodeです。これらはON時の通過損失も0.1〜0.3dBとごく少なく、また大きな信号でも歪みにくいことがわかるでしょう。(IP3がずっと大きいです) なお、いずれもIP3の数値が>50dBとなっていますが、これは記事で使っている評価測定系の測定限界からくるもので実際はもっと良いはずです。表・1と表・3を見てPIN-DiのRFスイッチは少ない順方向電流でも通過損失が少なく歪みも起こりにくいことがわかります。
これらのPIN-Diの中にあって1N4007は異色でしょう。ご存知のように電源整流用のパワー・ダイオードです。1N4007のような高圧整流用ダイオードでは逆耐電圧の確保と耐破壊強度を向上させるためにPIN構造になっているものがあります。(かなり多い) 目的は違いますが、PIN-Diには違いないためRFスイッチに使っても良好な特性が得られるのです。 実際に無線機のアンテナリレー回路に使われている例も見ます。無接点化はフルブレークインに最適です。少ない順方向電流でも大きなRF電圧(電力)をON/OFFできるのも好まれる理由でしょう。
ただし、表・1のようにOFF時のアイソレーション(分離)が35dB(@10MHz)しかとれないのが欠点です。これは大きな電流を流すためにシリコンチップの面積が大きく作られていて接合部の静電容量(キャパシタンス)も大きくなってしまうからです。まあ電源用であってRF-SW用ではないので当然ですが。 アイソレーション対策さえ行なえば1N4007,etcはアンテナスイッチ用ダイオードとして十分使えます。
以上、RFの小信号とは言えどもダイオードスイッチを構成するなら是非ともPIN-Diを使うべきです。QST誌など外誌では問題視され比較レポートも見掛けるのですがJAではあまり話題に登りません。球とかレトロな回路で懐かしい自作をする人はあっても、本質探求をしている自作HAMは少ないからかもしれません。JA-HAMとHAM誌ももうちょっと頑張らないとなあ・・・(笑)
参考:1N4007をI-F Amp.のAGC用にと言うアイディアは誰しも思い浮かびます。そもそもこのBlogはI-F Amp.の第3回なのですから。hi
早速テストしてみました。結論から言うとある程度使えるが「旨くない」です。 端子間のキャパシティが大きいのである程度以上ゲインを絞れません。AGCによるゲインの制御範囲が狭くなってしまいます。 どうしても使いたいならAGCを効かせるI-F Amp.を3段以上にして1段あたりのAGC制御量を少なく設計します。例えば1段あたり20dBで設計し3段で60dB制御すると言うような方法です。歪み特性は優れているので意外に有望かもしれません。
【PIN-Diodeいろいろ】
手持ちにあったPIN-Diを集めてみました。
今回のI-F Amp.のように455kHzと言った低い周波数まで使えるものはむしろ少ないようです。1N5767とXB15A204Aはそうしたものです。 1SV34、1S2186-GR、1SV157はいずれもV・UHF帯用となっています。従ってHF帯や455kHzのIF帯には不適当と思われます。
しかし、I-F Amp.のAGC回路と可変アッテネータに試用してみたところ1SV157と1SV34は低い周波数(1〜30MHzと言ったHF帯)への適性がありました。455kHzのI-F Amp.にも十分使えそうです。(注:VHF帯以上で使えるのは勿論です) いずれもNEC製ですが同社製ならすべてがそうなのかはわかりません。
1N5767ほどではありませんがXB15A204Aと概ね同等に使えそうでした。 一般的な高速スイッチング用ダイオード、1S2076Aや1SS178、1N914A,etcよりずっと良好なのはもちろんです。言うまでもありませんがSiトランジスタのB-Eジャンクションより優れるのは当然です。
1SV157(NEC)は比較的最近になって秋月電子通商で扱いが始まったPINダイオードです。 かなり安価ですから入手しておくとRF-SWやATTに活用できるでしょう。 可変アッテネータに向く特性のようです。 但し電力をON/OFFするアンテナスイッチにはON時のロスがやや多めです。 三菱のMI-101やMI-301の代用は難しそうでした。 もちろん小信号用のRFスイッチには使えるので有効活用したいものです。
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【簡易版フロントエンド】
I-F Amp.ボードだけでは受信機になりません。実際に受信して感触など試すこともできないので簡易版のフロントエンドを作ってみました。
写真は7MHzの高周波増幅回路です。7MHz帯の受信機としてテストします。 まず、アンテナから入った信号はトロイダルコアを使ったHigh-Qな同調回路2段で選択されます。 High-Qとは言っても同調回路が1段だけでは十分なイメージ比が得られません。20dBにも届かないくらいでした。 そこで2段にしてイメージ比を改善しました。 FETのゲート側もリンク結合とすることで選択度がよくなりました。
高周波増幅器にはRF用MOS-FETの2SK544E(2個パラ)を使いました。2SK241Yあるいは2SK439Eも同じように使えます。2SK192A、BF256BのようなシンプルなFETは帰還容量:Crssが大きいため不適当です。Dual-Gate-MOS-FETを使うのも良い選択ですが、第2ゲートに与えるバイアス回路の部品が増えるので簡易版にはやめておきました。
FETは1個使いでも良いのですが負荷インピーダンスなど考慮して2個使った方がゲインや最大出力の点で有利になります。 これで20dB弱のゲインになります。 負荷インピーダンスが最適に近付くので意外に大きな信号まで低歪みです。簡易型のRFアンプとしては十分なものですし本格的な製作用としても悪くないと思っています。 7MHzのHAM Band全体をカバーするには2連のバリコンを使って可変同調形式にします。電子同調式も良い方法です。
【ミキサーはDi-DBMで】
局部発振器(Local Oscillator)はシンセサイザで外部から与えますので、高周波増幅器とミキサー回路があればフロントエンドが構成できます。
ミキサーには既製品のDi-DBM:ADE-1(MCL社製)を使っています。これは小型で扱い易いからで性能本位の選択ではありません。しかし十分な性能が得られているように感じます。 局発としては7dBm与えるのが適当です。10dBmにしてもさしたる改善効果はないので増やす意味はありません。ADE-1は7dBmに最適化されているのでしょう。 局発に7dBm加えた状態で、IIP3は+15dBmくらいです。これはマズマズの値であって悪い数字ではありません。(ADE-1のみ単体での性能です) 局発の出力インピーダンスは概ね50Ωである必要があります。局発のポートに-3dBのアッテネータを入れるのも良い方法です。その場合は局発に10dBm(=10mW)が必要です。
ミキサー(ADE-1)の出力側には-3dBのアッテネータを入れてミキサーから見た負荷インピーダンス特性を改善しています。 使用した世羅多フィルタのインピーダンスは50Ωです。そのため特にインピーダンス変換回路は設けませんでした。一般的にミキサーの後にはDiplexer回路を入れ、さらにインピーダンス変換も必要になるでしょう。ここでは50Ωに統一して簡略化を試みました。 さらにはDiplexerを入れて上側へ変換された信号など不要信号も50Ωで終端するのが望ましいです。本格的にはそうすべきでしょうね。
【簡易版フロントエンド・回路図】
回路図が後になってしまいました。 見ての通り大変シンプルなものです。
入力同調回路の結合コンデンサが1pFとなっています。小さすぎるように感じるかも知れません。これより大きくすると双峰特性になって選択度が甘く(悪く)なってしまいます。 同調コイルのQとも関係しますが、1〜2pF程度が良いでしょう。 ゲイン不足を感じたからと言って大きな値に変えてはうまくありません。ゲイン不足は別の所に原因があります。
使用部品は言うまでもないものが殆どだと思います。 FETは既述のように2SK544Eのほか、2SK241Yあるいは2SK439E(足の並びに注意)が指定の部品です。Idssは2.5〜6.0mAのランクを使いました。もう少し大きなIdssランク品でも良いでしょう。
RF-Amp.の負荷トランス:ADT4-1WTはフェライトコアにトリファイラ巻きした自作品で代用できます。一例としてフェライトビーズ:FB-801-#43にトリファイラで6回巻きしたトランスを作ります。自作するときは結線を間違わぬよう十分な注意を。
ダイオードDBMにはMCL社のADE-1を使いました。小型で使い易いためです。ここも自作したDi-DBMが活用できます。Di-DBMの各ポートはRFポートを除き概ね整合するように考えてあります。
I-Fフィルタには自作のセラミック・ラダー型フィルタ「世羅多フィルタ」を使いました。これについてはこのあと詳しく扱います。
【RF-Amp.の周波数選択特性】
RF-Amp.の選択度特性です。 入力の同調回路を7015kHzに調整して測定しました。
写真で、イメージ周波数における減衰量が示してあります。このように約52dBが得られています。
高性能な通信型受信機としてイメージ比は60dBくらい欲しいところです。 I-F周波数を455kHz(440kHz)とすれば、7MHzでは入力部のRF同調回路は3段同調くらい必要になります。ここは簡易版なので2段で済ませましたが本格的には3段同調にすべきでしょう。
しかし、要はイメージ周波数に超強力な混信源が存在しなければ良いのでこの程度でもテスト受信にはまったく支障ありませんでした。 ちなみにI-F周波数が455kHzの代表的な受信機である9R59や9R59Dでは7MHzにおけるイメージ比は40dBに届かなないくらいです。従って50dB程度が得られていればまずまずなのかも知れません。
写真の周波数特性はRF-AmpのFETが1個だけの状態で測定しました。 2個にすると6dBくらいゲインがアップします。2個パラの16dB〜20dBくらいのゲインが丁度良いと思います。それ以上のゲインは不要です。
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【世羅多フィルタのおさらい】
世羅多フィルタ(せらだフィルタ)というのは私の造語です。セラミック振動子をラダー型に並べて作った狭帯域フィルタの愛称です。 セラミックのラダーフィルタという訳です。hi
455kHz帯で切れ味の良い狭帯域のフィルタを作るのが目的です。 市販品にもメカニカル・フィルタやクリスタル・フィルタがあってとても優れた性能です。ただしどちらも高価なのが欠点でした。それにアナログなフィルタですから既に生産中止になっていて入手性も良いとは言えません。下手をすればプレミアムまで付いています。(笑)
クリスタル(水晶発振子)と同じように同一周波数のセラミック発振子(セラロック®︎=村田製作所の登録商標)を並べることで狭帯域のCW用ラダー型フィルタが作れます。セラミック発振子は何と言っても安価なのが取り柄です。特に写真の中華モノ:CRB455Eは極めて安価です。
セラミック発振子は周波数のばらつきが大きくて、また共振の良さを示す無負荷Q、即ち「Qu」が低いのが欠点です。 そのため多めに入手して周波数の揃った物を選別する必要があります。 Quが低いので非常に急峻なフィルタは作れません。どうしてもなだらかな傾斜のフィルタになります。
様々な検討の結果、発振子を5個使ったものが切れ味と挿入損失のバランスが良好でした。
ここでは主にCW用として800Hz程度の帯域幅を持った「世羅多フィルタ」を作りました。 セラミック振動子の内部定数は次項ようになっていますので、Cohn minimum loss型で設計すると振動子段間の結合容量(途中のコンデンサの値)は0.02μFになります。終端部分はその半分の0.01μFです。マイラー・フィルムコンデンサを使いました。写真は組立てる前に部品を並べてみた様子です。
【セラミック発振子の等価回路】
過去に既出ですが、村田製作所製と中国製のセラミック発振子の等価的な内部回路を示します。
水晶発振子と比べると、モーショナル・インダクタンス:Lmが小さく、モーショナル・キャパシタンス:Cmが大きめです。そのため共振インピーダンスが上がらず無負荷Qが小さくなります。
Quは1500〜2000程度しかないのがわかるでしょう。水晶発振子なら10万近くあるのが普通なのですから、ずいぶん低いQuですね。損失抵抗:rsが10Ω程度なのは好ましくフィルタを作った時の通過損失が少なくて済みます。
455kHz付近のLC共振器(IFT)はQuが100前後ですからずっとHigh-Qな訳です。数個並べてやれば急峻なフィルタが可能そうなことがわかるでしょう。
村田製作所のCSB455Eに比べ中国製のCRB455EはややQuが低くなっています。また共振周波数のバラツキも大きめでした。しかし村田製は入手難なので中国製を使いましょう。それで十分良い性能のフィルタが作れるはずです。それはこのあと登場する製作例を見ればわかりますね。
【5素子世羅多フィルタ】
組立完了した世羅多フィルタです。 このように基板モジュール化すると測定には便利ですが、回路への組み込みには不便かもしれません。
あらかじめブレッドボード上に作って目的の性能が得られたようならそのまま回路基板へハンダ付けすると言った組立方法もあります。 周波数が低いのでブレッドボードに作っても特性への影響はわずかです。 ハンダ付け前の事前特性確認ができます。発振子を幾つか交換して様子を見ると言った加減も可能です。
計算上の終端インピーダンスは36Ωくらいです。ただしセラミック発振子の損失抵抗:rsの影響があるらしく、50Ωくらいで終端すると特性良好でした。 使いやすいCWフィルタができたと思います。
素子選別と組立ての手間賃は別として材料費は300円も掛かっていません。これで切れ味良好なCWフィルタが手に入るのですから「世羅多フィルタ」はやっぱりFBです。
【5素子世羅多フィルタの特性】
フィルタとしては最も重要な通過帯域特性を調べました。管面の横幅は全体で5kHzなのでかなり拡大して見ています。
まず、-6dBの帯域幅は825Hzです。また-60dBでは約3kHzです。シェープ・ファクタ:SFは3.64なのであまり急峻とは言えません。実際に7MHzのCWで使ってみると幾らか混信するようでした。 ただし混信は激しいものではなくて選択度としては丁度良いくらいだと感じます。
・・・と言うのは、CQを出して呼んでくる局の周波数を見ていると(聴いていると)ゼロインで呼んでくる局はむしろ少数派なことがわかります。 自局の上か下に200〜500Hz(!)くらいずれて呼んでくる局はザラです。 従ってあまりに急峻なフィルタだと帯域外になって聞き取れず取りこぼします。 「JA9TTTはいくら呼んでも応答がない!」なんて言われかねませんからネ。w
この程度の帯域幅となだらかなスロープなら少々ズレて呼ぶ局も結構わかります。
コンテストの様に過密にオンエアされると混信が厳しいかもしれません。コンテスターでしたらもっと良いフィルタをお勧めしますが、普段使いの手作り受信機としては不満はないと思いますね。 なだらかなおかげで信号のリンギングも感じず余韻もほとんど引きません。信号がネバった感じがないので、なかなか良い受信音です。
【BFOとの周波数関係など】
好みのトーン・ピッチとも関係しますが、800HzとしてBFOの位置を示します。 意外に大きく減衰した位置に来ることがわかるでしょう。
従って、こんな特性のCWフィルタではあっても「シングルシグナル」な受信が実現できます。 低周波のCWフィルタでも補えば一段と良い筈でBFOの逆側混信などまったく感じられなくなります。 その意味でオーデイオCWフィルタは効果的でしょうね。 低周波部に追加したいと思いました。
山型の周波数特性なので何となく切れ味の悪いフィルタをイメージされたかもしれません。 ピンクのラインで示したのは、帯域幅が2.8kHzのSSB用フィルタの特性です。 シェープ・ファクタ:SF=2と言うずいぶん良い特性のSSBフィルタです。それと比べてもこのCWフィルタの良さがわかります。SSBフィルタしか持ってない受信機でCWを聞くよりもずっとマシなわけです。 LCのIFTなど問題外ですね。実際に使ってみても思った以上に良好でした。
SSBの受信には狭すぎるため良い音とは言えませんがキャリアポイントを選んでやると了解度5で受信できます。 CW用と割り切った方が良いのですがSSBが全くダメなわけではありません。お試しを。
SSB用フィルタも同じセラミック発振子で作ると概ね近い中心周波数になります。SSB/CW両用受信機の可能性もあるので試すのも面白いです。 CW用と同じように5素子あるいはそれ以上で作るのが良いです。3素子程度ではハイゲインなI-F Amp.にそぐわない特性になってしまいます。
(参考:セラロックで作るラダー型フィルタ「世羅多フィルタ」の詳細はこちら←リンク)
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【中国製セラミックフィルタの評価】
最近になって秋月電子通商が中国製のセラミックフィルタを扱うようになりました。 中心周波数が455kHzのものと450kHzのものがあります。
製作したI-F Amp.は455kHzを中心に周波数を数10kHzなら移動可能です。 従ってどちらの系統のフィルタでも使うことが可能です。販売されているものは帯域幅や帯域外減衰特性などの違いから数種類があります。残念ながら、一番狭いものを選んでも、ここで設計している通信型受信機のI-Fフィルタとしては選択度不足です。CWはもちろんですがSSB用としても通過帯域幅は広過ぎます。通信機用ではなくてラジオ用と思われますのでやむを得ないでしょう。
写真は455kHzのシリーズでは最も良い選択度のLTM455IWです。 CWやSSBの受信はあまり目的とせずAMの受信機として作るなら十分使い物になります。 短波帯のBCL受信機としても十分な選択度です。 使い方は前回のBlog(I-F Amp.の2回目)の通りで1st-IF Amp.と2nd I-F Amp.の間に挿入します。これ一つでトリオの往年の名機:9R-59に負けないくらいの選択度が得られるでしょう。
【セラミック・フィルタ:LTM455IWの特性】
カタログ上で最も選択度に優れるLTM455IWの通過帯域特性を実測してみました。 観測画面の横軸スパン(幅)は先ほどのCWフィルタの10倍です。10倍の50kHz幅で見ているので注意してください。 -6dBの通過帯域幅は約10kHzあります。 残念なことに帯域外減衰量が60dBに届きません。従ってシェープ・ファクタを60dB/6dBで計算できませんが傾斜は意外に急峻です。 AM波が対象の受信機には選択度十分なことがわかりました。
やはり残念なのは帯域外減衰量があまり取れていないことです。ラジオなら十分かもしれませんが、通信型受信機には不足でしょう。 同じ型番のフィルタをI-F Amp.の途中に2個使うか、同じ周波数で内部素子数が少ない簡易型の方をもう一つ補うと良さそうです。 そうすれば80dBくらいの帯域外減衰量が容易に得られます。高性能なラジオ用として遜色ないものになります。
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簡易フロントエンドと世羅多フィルタを組み合わせて7MHzの受信機としてテストしています。I-F Amp.がローノイズ・ハイゲインなのでメーカー機で聞くよりも静かです。ゲインが過剰でないことも理由だと思いますが、ワッチしていて疲れないのはFBです。
本格的なフロントエンドの製作にあたってもこうした特徴は引き継ぎたいと思います。 もう10dB余分のゲインがあったら・・・と思うことがあるかも知れませんが、実際のところ7MHzのようなHF帯ローバンドではその必要はないのが普通です。静かさを優先した方が良いでしょう。
I-F Amp.の続編として幾つかの付随するテーマを扱いました。 テーマ数がやや多すぎたようです。それぞれの記述が簡素になってしまいました。目的はI-F Amp.の第2回を補なうものなのでこれでも十分だと思っています。 詳しくやろうとすればキリがありません。例えばI-Fフィルタにしても本格的に扱うなら数回のテーマになってしまうでしょう。RFフロントエンド部もANT入力フィルタの特性やIMD特性に優れる増幅素子と応用回路の研究などテーマは多岐に渡るはずです。 どうやら最高性能の「通信型受信機設計」をご期待されたならちょっと物足りなかったかも知れません。何かご希望でもあれば参考にさせて頂きたいと思います。
一応、I-F Amp.部はこれで終了にします。残りは:本格的なRF-Frontendの検討、局発用にVFOの検討、そして低周波増幅部もありましたね。まだまだディープな回路の世界が待っていそうです。 さて次回はどちらへ進みましょうか。 ではまた。de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド→いまここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
【改造版・中間周波増幅器】
「私だけの受信機設計・第7回」です。 前回(←リンク)はPIN-DiodeをAGC回路に応用した「中間周波増幅器」を作りました。 まずまずの性能が得られたのですが「大きな入力」が加わった時の特性が気になりました。実用上の支障はほとんどないのですが、測定器で調べたらわかります。 さっそく改良を試みました。
写真は改造済みの「I-F Amp.」です。 改造の前でさえ実験ボードは窮屈でしたから改造部分を搭載するのはなかなか大変でした。しかし何とか収容できたのでさっそくテストできました。
☆
このI-F Amp.の3回目では:
(1)まずはPIN-Diodeをもう少し詳しく扱います。 I-F Amp.の改造がメインテーマですが、アッテネータやRFスイッチへの応用にも少しだけ触れます。
(2)前回の宿題だった簡易版のフロントエンドについて簡単な評価結果を報告しておきます。 簡易版とは言っても、そのままでも結構使えそうなことがわかるでしょう。
(3)I-F Amp.にはよく切れるフィルタが欠かせません。ここで使った「世羅多フィルタ」についておさらいしておきます。少し懐かしい話題になってしまいました。
(4)今回は使いませんでしたが、最近販売されるようになった中国製のセラミックフィルタの特性をごく簡単に評価しました。結果をビジュアルに報告したいと思います。
☆
こうした「通信型受信機の設計」ではI-F Amp.はもちろんですが、各部の回路図を示し簡単な調整方法と説明でも付け加えるだけで十分なのかも知れません。だいたいそう言ったお話が大勢です。 ただ、それだと「作りました・動きました」式のBlogになってしまいます。まあ、雑誌記事なんかでもそう言った類が多いんですけどネ。 しかしそれじゃどうも面白くありません。もっとも、これは私の個人的な考えに過ぎないんですが・・・。(笑)
そこで、寄り道をして関連した回路やその部品についてもうちょっと掘り下げることにしました。 この際評価しておけば後々自身で役に立つ情報が蓄えられます。 例によってアナログな通信型受信機やそのパーツなんかに興味を覚えないのでしたら、今回もスルーされるのがオススメです。大して役には立たんでしょう。 もっと楽しいサイトの方へお出掛けになってください。
【改造版・中間周波増幅器の回路】
I-Fフィルタの直後・・・I-F Amp.の最前部にPIN-Diodeを使った可変アッテネータを付加したものです。I-F Amp.本体の部分はそのままですが、AGC回路には可変アッテネータを駆動する回路を追加しています。
PIN-Diを使ったアッテネータは、Rohde氏の受信機記事を参考にして、このI-F Amp.にマッチするようにアレンジ(適合化)しています。 減衰量は最大でも10dB少々しか取れませんがその分だけ大きな入力に対して強くなります。
PIN-Diを使ったアッテネータとしては最もシンプルなもので、後ほど登場の回路よりも部品数が少なくなっています。 あまり部品が多いとボードに載らないからですが、最大減衰量の点では幾分物足りません。 しかし実用上はこの程度でも十分でしょう。 何しろ無くてもあまり支障はないと感じるくらいですから。
使用部品は殆どが前回と同じですから特に書くこともなさそうです。 PIN-DiはXB15A204Aあるいは1N5767を想定していますが後ほど紹介する1SV157でも良いと思います。
PIN-Di ATTの場所で特殊そうなパーツは入力部のトランスでしょうか? MCL:ミニ・サーキッツ・ラボ社のTT1-6と言う広帯域トランスを使いました。インピーダンス比は1:1で、50Ω:50Ωです。このトランスは低い周波数向きのもので455kHzで支障なく使えます。
もちろん自分で作ることもできます。455kHzと周波数が低いことから巻線のインダクタンスは200μHくらい必要です。 フェライト・ビーズ(例:FB-801-#43など)には巻き切れませんから、しかるべきサイズ・材質のトロイダルコアを用意して巻線する必要があります。 一例として、フェライト・トロイダルコア:FT37-#43を使います。巻線はφ0.16mmくらいの細いもので十分です。良くよじった2本の巻線をバイファイラ巻きで25回巻きます。透磁率;μiの大きなフェライト材のコアを使うと巻き数を減らせますが、ひずみ特性の良くない材質もあるので#43材のコアが安心です。#43材は実績があります。
ATT回路のドライブはトランジスタを使う方式にしましたが、この部分のトランジスタは直流電流増幅率:hFEの大きなものが適するので2SC1815のGRランク品を使います。
◎アッテネータ部以外の回路やパーツについては前回のBlog(←リンク)に書きました。
【PIN-Di ATT部】
PIN-Diodeを使った電圧可変型のアッテネータ回路部分です。入出力インピーダンスは50Ωで、最大減衰量は10dB少々と言った所です。
この回路はQST誌1992年11月号の記事「Recent Advances in Shortwave Receiver Design」(注・1)にあった回路をモデファイしたものです。AEG TELEFUNKEN社のE1800と言う受信機の回路だそうです。
E1800の回路ではPIN-Di ATTは42MHzのルーフィング・フィルタの後に置かれています。使用するPINダイオードは2種類が使い分けられていますが、ここでは同じもので済ませました。上記の回路図で、D10は「可変抵抗特性」の良いものを使い、D11の方にはON時の抵抗値が小さいRFスイッチ用が向いているように思います。ここでは「可変抵抗特性」の方を優先した部品選定にしました。(注・1:HAM Journal誌No.86に邦訳記事あり)
このアッテネータは中くらいの信号レベル、具体的にはI-F Amp.の入力で〜65dBμあたりまではスルー状態でそれ以上で効いてくるように設定されています。AGC電圧との関係で動作開始のポイントを決めますが、回路を簡略に済ますためZenner Diode(D12)を選ぶことで設定しました。TP-VSM-Out.が5Vを超えると動作が始まるようになっています。ここは多少のカット&トライを要する部分です。D12を選ぶとともにR43も加減します。 動作開始後のATTの効き方は無信号の時にTP-VATTが2V(DC)になるようVR4で調整します。
設定・調整は各部の動作が完全になってからでないとうまく行きません。はじめはATTをパスした状態で調整するのも良い方法です。I-F Amp.の動作が完全になってからATTの調整を行ないます。
I-F Amp.ユニットの特性を掲載すれば良いのですが前回のカーブとほとんど違いません。前回グラフの*3の領域が10dB少々だけ右方向(信号が大きくなる方向)にズレただけです。 作図が間に合わなかったので省略しました。いずれグラフに落としたいと思うので興味でもあれば暫く間をおいてまたお出かけください。この場所に追加予定です。
【良く見かけるPIN-Di ATT回路】
左図は様々な雑誌記事で見かけるPIN-Diを使った電子式アッテネータ回路です。
PIN-Diを5本も使っていますが、これはアッテネータの可変範囲を広くするためです。上記の回路のようにPIN-Diが2つの回路では10dB少々の減衰しか得られません。左図のようにT型のアッテネータを2段カスケードにすることで大きな減衰量が得られるようにしています。
部品定数はHF帯に向くようになっています。使用するダイオードは1N5767あるいはhp5082-3081を使いますが、これらは同系のダイオードです。もちろんXB15A204Aでも同じように使えるはずです。 ほかにも国産のPIN-DiはありますがVHF用と称するものはHF帯に向かないものがほとんどです。(要するにこの回路には向かないものが大半です。それらしく動作しても、低い周波数に向かないものでは通過する信号に歪が現れます)
駆動回路には2N2222が多用されてていますが、このトランジスタに拘る理由はなく、国産の2SC1815Y又はGR等で十分です。電源電圧12Vの設計なので9Vにすると言った場合は各Trのバイアス抵抗を変える必要があります。所定の電流、I1、I2が確保できれば良いでしょう。
製作したI-F Amp.の前段に置くATTもこうした回路にすれば良いのですが、部品数が多いので簡略化した回路で済ませました。 図の回路は減衰量の可変範囲が広く取れますのでアッテネータ型のAGC回路に使うことも可能でしょう。1段では最大減衰量が足りないので2段以上必要になると思います。この回路はATTをスルーにした時のLossが多めなので予め考慮しておきます。
(参考)この回路についてEMRFD(pp6・18)に実験レポートがありました。PIN-Diとして1N4006(電源用。詳細は後ほどあり)を使って試作したものは最大50dBの減衰量が得られたそうです。スルーの損失は2dBでした。(@5MHz)左図の回路そのままではなく類似回路での評価です。(注・左図の回路そのままではPIN-Diのドライブ回路に問題があるように思います) こうした電子ATT回路はやや複雑ですがI-F Amp.のAGC用として使えそうです。入力部とAmp.途中の2カ所で使うのが適当です。RF用のPIN-Diならなお良いでしょうね。
【PIN-Diの高周波抵抗vs順方向電流特性】
前回の再掲載ですが、PIN-Diode:XB15A204Aの特性図です。このPIN-Diはアッテネータ用に作られているらしく、順方向電流と等価高周波抵抗が綺麗な直線になっています。 hpの1N5767も殆ど同じような特性です。
PNI-Diodeの作り方を書いても仕方がないかも知れませんが。 まず、N型のウエファー(サブストレート)の上に不純物のない(ノンドープの)シリコンをエピタキシャル成長させます。これがI層になります。
このエピタキシャル層の厚みで、キャリヤのライフタイムが変わります。低い周波数で使うためにはライフタイムが長くなくてはいけません。低い周波数まで整流作用が起こらないようにしたいからです。 そのため、1N5767のような低い周波数まで使用可能なPIN-Diでは不純物のないI層を厚く作ってあります。厚くするにはそれだけ長い気相成長時間が掛かるためコストが掛かって割高になるのかもしれません。(半導体の価格は需要との関係が支配的なのかもしれませんが)
気相成長させたI層の上にP型の不純物を拡散すればPIN構造が完成します。あとは電極を蒸着しダイスに切り分けてリード線を付けダイオードに組み立てればPIN-Diodeの完成です。半導体の製造技術的には難しくはないんですけれどね・・・。
厚いI層の必要がないVHF・UHF用のPIN-Diがほとんどと言う理由はこの辺りにあるように思うのです。
【PIN-Diode SWの優位性】
PIN-Diの用途の大半はRF用のスイッチだろうと思います。アッテネータに使う例はむしろ稀ではないでしょうか?
PIN-DiをRFスイッチに使う優位性は「低ひずみ」にあります。 ダイオードスイッチ(Di-SW)は我々が使っている無線機にも多用されています。多くの場合、一般的な高速スイッチング用のダイオード・・・例えば1S1588や1S2076A,etcのようなダイオードを使っていると思います。これはメーカー製の無線機でも同様です。 ですから何の疑いもなく、これらのダイオードを使う人が殆どです。
しかし、だいぶ大きめの順方向電流(直流的なバイアス電流で、Di-SWをONするために流す)を流しても通過する信号にIMD歪が発生するのです。それがPIN-Diならずいぶん抑えられます。
図はQST誌1994年12月号(pp25〜pp27)から引用・編集したものです。PIN-Diと一般的なダイオードを使ったRFスイッチの比較レポートです。詳細は記事をご覧いただくとして、概要を書いておきましょう。(参考:QST誌のバックナンバーは大塚駅前のJARL資料室に揃っています。但し以下を読めば参照の必要はないと思う)
記事で、1N4153と言うのは一般的な高速スイッチング用のダイオードです。シリコンの小信号用と言うものはほとんどがこれに属します。1S1588や1S2076Aはこれらの代表例です。 1N4153について表・1と表・3を見るとOFF時のアイソレーション(分離)は良好ですが、ON時の通過損失が0.5〜2dBと多めで、3次のIMDもIP3が20〜37dBと小さいので小さな信号で歪んでしまいます。順方向電流を増やすと改善されますがそれもわずかです。 一般的なスイッチング用ダイオードはこうした用途・・・高周波用のスイッチにはベストな選択ではないことがわかります。
MPN3700、BAR17、1N4007はいずれもPIN-Diodeです。これらはON時の通過損失も0.1〜0.3dBとごく少なく、また大きな信号でも歪みにくいことがわかるでしょう。(IP3がずっと大きいです) なお、いずれもIP3の数値が>50dBとなっていますが、これは記事で使っている評価測定系の測定限界からくるもので実際はもっと良いはずです。表・1と表・3を見てPIN-DiのRFスイッチは少ない順方向電流でも通過損失が少なく歪みも起こりにくいことがわかります。
これらのPIN-Diの中にあって1N4007は異色でしょう。ご存知のように電源整流用のパワー・ダイオードです。1N4007のような高圧整流用ダイオードでは逆耐電圧の確保と耐破壊強度を向上させるためにPIN構造になっているものがあります。(かなり多い) 目的は違いますが、PIN-Diには違いないためRFスイッチに使っても良好な特性が得られるのです。 実際に無線機のアンテナリレー回路に使われている例も見ます。無接点化はフルブレークインに最適です。少ない順方向電流でも大きなRF電圧(電力)をON/OFFできるのも好まれる理由でしょう。
ただし、表・1のようにOFF時のアイソレーション(分離)が35dB(@10MHz)しかとれないのが欠点です。これは大きな電流を流すためにシリコンチップの面積が大きく作られていて接合部の静電容量(キャパシタンス)も大きくなってしまうからです。まあ電源用であってRF-SW用ではないので当然ですが。 アイソレーション対策さえ行なえば1N4007,etcはアンテナスイッチ用ダイオードとして十分使えます。
以上、RFの小信号とは言えどもダイオードスイッチを構成するなら是非ともPIN-Diを使うべきです。QST誌など外誌では問題視され比較レポートも見掛けるのですがJAではあまり話題に登りません。球とかレトロな回路で懐かしい自作をする人はあっても、本質探求をしている自作HAMは少ないからかもしれません。JA-HAMとHAM誌ももうちょっと頑張らないとなあ・・・(笑)
参考:1N4007をI-F Amp.のAGC用にと言うアイディアは誰しも思い浮かびます。そもそもこのBlogはI-F Amp.の第3回なのですから。hi
早速テストしてみました。結論から言うとある程度使えるが「旨くない」です。 端子間のキャパシティが大きいのである程度以上ゲインを絞れません。AGCによるゲインの制御範囲が狭くなってしまいます。 どうしても使いたいならAGCを効かせるI-F Amp.を3段以上にして1段あたりのAGC制御量を少なく設計します。例えば1段あたり20dBで設計し3段で60dB制御すると言うような方法です。歪み特性は優れているので意外に有望かもしれません。
【PIN-Diodeいろいろ】
手持ちにあったPIN-Diを集めてみました。
今回のI-F Amp.のように455kHzと言った低い周波数まで使えるものはむしろ少ないようです。1N5767とXB15A204Aはそうしたものです。 1SV34、1S2186-GR、1SV157はいずれもV・UHF帯用となっています。従ってHF帯や455kHzのIF帯には不適当と思われます。
しかし、I-F Amp.のAGC回路と可変アッテネータに試用してみたところ1SV157と1SV34は低い周波数(1〜30MHzと言ったHF帯)への適性がありました。455kHzのI-F Amp.にも十分使えそうです。(注:VHF帯以上で使えるのは勿論です) いずれもNEC製ですが同社製ならすべてがそうなのかはわかりません。
1N5767ほどではありませんがXB15A204Aと概ね同等に使えそうでした。 一般的な高速スイッチング用ダイオード、1S2076Aや1SS178、1N914A,etcよりずっと良好なのはもちろんです。言うまでもありませんがSiトランジスタのB-Eジャンクションより優れるのは当然です。
1SV157(NEC)は比較的最近になって秋月電子通商で扱いが始まったPINダイオードです。 かなり安価ですから入手しておくとRF-SWやATTに活用できるでしょう。 可変アッテネータに向く特性のようです。 但し電力をON/OFFするアンテナスイッチにはON時のロスがやや多めです。 三菱のMI-101やMI-301の代用は難しそうでした。 もちろん小信号用のRFスイッチには使えるので有効活用したいものです。
☆
【簡易版フロントエンド】
I-F Amp.ボードだけでは受信機になりません。実際に受信して感触など試すこともできないので簡易版のフロントエンドを作ってみました。
写真は7MHzの高周波増幅回路です。7MHz帯の受信機としてテストします。 まず、アンテナから入った信号はトロイダルコアを使ったHigh-Qな同調回路2段で選択されます。 High-Qとは言っても同調回路が1段だけでは十分なイメージ比が得られません。20dBにも届かないくらいでした。 そこで2段にしてイメージ比を改善しました。 FETのゲート側もリンク結合とすることで選択度がよくなりました。
高周波増幅器にはRF用MOS-FETの2SK544E(2個パラ)を使いました。2SK241Yあるいは2SK439Eも同じように使えます。2SK192A、BF256BのようなシンプルなFETは帰還容量:Crssが大きいため不適当です。Dual-Gate-MOS-FETを使うのも良い選択ですが、第2ゲートに与えるバイアス回路の部品が増えるので簡易版にはやめておきました。
FETは1個使いでも良いのですが負荷インピーダンスなど考慮して2個使った方がゲインや最大出力の点で有利になります。 これで20dB弱のゲインになります。 負荷インピーダンスが最適に近付くので意外に大きな信号まで低歪みです。簡易型のRFアンプとしては十分なものですし本格的な製作用としても悪くないと思っています。 7MHzのHAM Band全体をカバーするには2連のバリコンを使って可変同調形式にします。電子同調式も良い方法です。
【ミキサーはDi-DBMで】
局部発振器(Local Oscillator)はシンセサイザで外部から与えますので、高周波増幅器とミキサー回路があればフロントエンドが構成できます。
ミキサーには既製品のDi-DBM:ADE-1(MCL社製)を使っています。これは小型で扱い易いからで性能本位の選択ではありません。しかし十分な性能が得られているように感じます。 局発としては7dBm与えるのが適当です。10dBmにしてもさしたる改善効果はないので増やす意味はありません。ADE-1は7dBmに最適化されているのでしょう。 局発に7dBm加えた状態で、IIP3は+15dBmくらいです。これはマズマズの値であって悪い数字ではありません。(ADE-1のみ単体での性能です) 局発の出力インピーダンスは概ね50Ωである必要があります。局発のポートに-3dBのアッテネータを入れるのも良い方法です。その場合は局発に10dBm(=10mW)が必要です。
ミキサー(ADE-1)の出力側には-3dBのアッテネータを入れてミキサーから見た負荷インピーダンス特性を改善しています。 使用した世羅多フィルタのインピーダンスは50Ωです。そのため特にインピーダンス変換回路は設けませんでした。一般的にミキサーの後にはDiplexer回路を入れ、さらにインピーダンス変換も必要になるでしょう。ここでは50Ωに統一して簡略化を試みました。 さらにはDiplexerを入れて上側へ変換された信号など不要信号も50Ωで終端するのが望ましいです。本格的にはそうすべきでしょうね。
【簡易版フロントエンド・回路図】
回路図が後になってしまいました。 見ての通り大変シンプルなものです。
入力同調回路の結合コンデンサが1pFとなっています。小さすぎるように感じるかも知れません。これより大きくすると双峰特性になって選択度が甘く(悪く)なってしまいます。 同調コイルのQとも関係しますが、1〜2pF程度が良いでしょう。 ゲイン不足を感じたからと言って大きな値に変えてはうまくありません。ゲイン不足は別の所に原因があります。
使用部品は言うまでもないものが殆どだと思います。 FETは既述のように2SK544Eのほか、2SK241Yあるいは2SK439E(足の並びに注意)が指定の部品です。Idssは2.5〜6.0mAのランクを使いました。もう少し大きなIdssランク品でも良いでしょう。
RF-Amp.の負荷トランス:ADT4-1WTはフェライトコアにトリファイラ巻きした自作品で代用できます。一例としてフェライトビーズ:FB-801-#43にトリファイラで6回巻きしたトランスを作ります。自作するときは結線を間違わぬよう十分な注意を。
ダイオードDBMにはMCL社のADE-1を使いました。小型で使い易いためです。ここも自作したDi-DBMが活用できます。Di-DBMの各ポートはRFポートを除き概ね整合するように考えてあります。
I-Fフィルタには自作のセラミック・ラダー型フィルタ「世羅多フィルタ」を使いました。これについてはこのあと詳しく扱います。
【RF-Amp.の周波数選択特性】
RF-Amp.の選択度特性です。 入力の同調回路を7015kHzに調整して測定しました。
写真で、イメージ周波数における減衰量が示してあります。このように約52dBが得られています。
高性能な通信型受信機としてイメージ比は60dBくらい欲しいところです。 I-F周波数を455kHz(440kHz)とすれば、7MHzでは入力部のRF同調回路は3段同調くらい必要になります。ここは簡易版なので2段で済ませましたが本格的には3段同調にすべきでしょう。
しかし、要はイメージ周波数に超強力な混信源が存在しなければ良いのでこの程度でもテスト受信にはまったく支障ありませんでした。 ちなみにI-F周波数が455kHzの代表的な受信機である9R59や9R59Dでは7MHzにおけるイメージ比は40dBに届かなないくらいです。従って50dB程度が得られていればまずまずなのかも知れません。
写真の周波数特性はRF-AmpのFETが1個だけの状態で測定しました。 2個にすると6dBくらいゲインがアップします。2個パラの16dB〜20dBくらいのゲインが丁度良いと思います。それ以上のゲインは不要です。
☆
【世羅多フィルタのおさらい】
世羅多フィルタ(せらだフィルタ)というのは私の造語です。セラミック振動子をラダー型に並べて作った狭帯域フィルタの愛称です。 セラミックのラダーフィルタという訳です。hi
455kHz帯で切れ味の良い狭帯域のフィルタを作るのが目的です。 市販品にもメカニカル・フィルタやクリスタル・フィルタがあってとても優れた性能です。ただしどちらも高価なのが欠点でした。それにアナログなフィルタですから既に生産中止になっていて入手性も良いとは言えません。下手をすればプレミアムまで付いています。(笑)
クリスタル(水晶発振子)と同じように同一周波数のセラミック発振子(セラロック®︎=村田製作所の登録商標)を並べることで狭帯域のCW用ラダー型フィルタが作れます。セラミック発振子は何と言っても安価なのが取り柄です。特に写真の中華モノ:CRB455Eは極めて安価です。
セラミック発振子は周波数のばらつきが大きくて、また共振の良さを示す無負荷Q、即ち「Qu」が低いのが欠点です。 そのため多めに入手して周波数の揃った物を選別する必要があります。 Quが低いので非常に急峻なフィルタは作れません。どうしてもなだらかな傾斜のフィルタになります。
様々な検討の結果、発振子を5個使ったものが切れ味と挿入損失のバランスが良好でした。
ここでは主にCW用として800Hz程度の帯域幅を持った「世羅多フィルタ」を作りました。 セラミック振動子の内部定数は次項ようになっていますので、Cohn minimum loss型で設計すると振動子段間の結合容量(途中のコンデンサの値)は0.02μFになります。終端部分はその半分の0.01μFです。マイラー・フィルムコンデンサを使いました。写真は組立てる前に部品を並べてみた様子です。
【セラミック発振子の等価回路】
過去に既出ですが、村田製作所製と中国製のセラミック発振子の等価的な内部回路を示します。
水晶発振子と比べると、モーショナル・インダクタンス:Lmが小さく、モーショナル・キャパシタンス:Cmが大きめです。そのため共振インピーダンスが上がらず無負荷Qが小さくなります。
Quは1500〜2000程度しかないのがわかるでしょう。水晶発振子なら10万近くあるのが普通なのですから、ずいぶん低いQuですね。損失抵抗:rsが10Ω程度なのは好ましくフィルタを作った時の通過損失が少なくて済みます。
455kHz付近のLC共振器(IFT)はQuが100前後ですからずっとHigh-Qな訳です。数個並べてやれば急峻なフィルタが可能そうなことがわかるでしょう。
村田製作所のCSB455Eに比べ中国製のCRB455EはややQuが低くなっています。また共振周波数のバラツキも大きめでした。しかし村田製は入手難なので中国製を使いましょう。それで十分良い性能のフィルタが作れるはずです。それはこのあと登場する製作例を見ればわかりますね。
【5素子世羅多フィルタ】
組立完了した世羅多フィルタです。 このように基板モジュール化すると測定には便利ですが、回路への組み込みには不便かもしれません。
あらかじめブレッドボード上に作って目的の性能が得られたようならそのまま回路基板へハンダ付けすると言った組立方法もあります。 周波数が低いのでブレッドボードに作っても特性への影響はわずかです。 ハンダ付け前の事前特性確認ができます。発振子を幾つか交換して様子を見ると言った加減も可能です。
計算上の終端インピーダンスは36Ωくらいです。ただしセラミック発振子の損失抵抗:rsの影響があるらしく、50Ωくらいで終端すると特性良好でした。 使いやすいCWフィルタができたと思います。
素子選別と組立ての手間賃は別として材料費は300円も掛かっていません。これで切れ味良好なCWフィルタが手に入るのですから「世羅多フィルタ」はやっぱりFBです。
【5素子世羅多フィルタの特性】
フィルタとしては最も重要な通過帯域特性を調べました。管面の横幅は全体で5kHzなのでかなり拡大して見ています。
まず、-6dBの帯域幅は825Hzです。また-60dBでは約3kHzです。シェープ・ファクタ:SFは3.64なのであまり急峻とは言えません。実際に7MHzのCWで使ってみると幾らか混信するようでした。 ただし混信は激しいものではなくて選択度としては丁度良いくらいだと感じます。
・・・と言うのは、CQを出して呼んでくる局の周波数を見ていると(聴いていると)ゼロインで呼んでくる局はむしろ少数派なことがわかります。 自局の上か下に200〜500Hz(!)くらいずれて呼んでくる局はザラです。 従ってあまりに急峻なフィルタだと帯域外になって聞き取れず取りこぼします。 「JA9TTTはいくら呼んでも応答がない!」なんて言われかねませんからネ。w
この程度の帯域幅となだらかなスロープなら少々ズレて呼ぶ局も結構わかります。
コンテストの様に過密にオンエアされると混信が厳しいかもしれません。コンテスターでしたらもっと良いフィルタをお勧めしますが、普段使いの手作り受信機としては不満はないと思いますね。 なだらかなおかげで信号のリンギングも感じず余韻もほとんど引きません。信号がネバった感じがないので、なかなか良い受信音です。
【BFOとの周波数関係など】
好みのトーン・ピッチとも関係しますが、800HzとしてBFOの位置を示します。 意外に大きく減衰した位置に来ることがわかるでしょう。
従って、こんな特性のCWフィルタではあっても「シングルシグナル」な受信が実現できます。 低周波のCWフィルタでも補えば一段と良い筈でBFOの逆側混信などまったく感じられなくなります。 その意味でオーデイオCWフィルタは効果的でしょうね。 低周波部に追加したいと思いました。
山型の周波数特性なので何となく切れ味の悪いフィルタをイメージされたかもしれません。 ピンクのラインで示したのは、帯域幅が2.8kHzのSSB用フィルタの特性です。 シェープ・ファクタ:SF=2と言うずいぶん良い特性のSSBフィルタです。それと比べてもこのCWフィルタの良さがわかります。SSBフィルタしか持ってない受信機でCWを聞くよりもずっとマシなわけです。 LCのIFTなど問題外ですね。実際に使ってみても思った以上に良好でした。
SSBの受信には狭すぎるため良い音とは言えませんがキャリアポイントを選んでやると了解度5で受信できます。 CW用と割り切った方が良いのですがSSBが全くダメなわけではありません。お試しを。
SSB用フィルタも同じセラミック発振子で作ると概ね近い中心周波数になります。SSB/CW両用受信機の可能性もあるので試すのも面白いです。 CW用と同じように5素子あるいはそれ以上で作るのが良いです。3素子程度ではハイゲインなI-F Amp.にそぐわない特性になってしまいます。
(参考:セラロックで作るラダー型フィルタ「世羅多フィルタ」の詳細はこちら←リンク)
☆
【中国製セラミックフィルタの評価】
最近になって秋月電子通商が中国製のセラミックフィルタを扱うようになりました。 中心周波数が455kHzのものと450kHzのものがあります。
製作したI-F Amp.は455kHzを中心に周波数を数10kHzなら移動可能です。 従ってどちらの系統のフィルタでも使うことが可能です。販売されているものは帯域幅や帯域外減衰特性などの違いから数種類があります。残念ながら、一番狭いものを選んでも、ここで設計している通信型受信機のI-Fフィルタとしては選択度不足です。CWはもちろんですがSSB用としても通過帯域幅は広過ぎます。通信機用ではなくてラジオ用と思われますのでやむを得ないでしょう。
写真は455kHzのシリーズでは最も良い選択度のLTM455IWです。 CWやSSBの受信はあまり目的とせずAMの受信機として作るなら十分使い物になります。 短波帯のBCL受信機としても十分な選択度です。 使い方は前回のBlog(I-F Amp.の2回目)の通りで1st-IF Amp.と2nd I-F Amp.の間に挿入します。これ一つでトリオの往年の名機:9R-59に負けないくらいの選択度が得られるでしょう。
【セラミック・フィルタ:LTM455IWの特性】
カタログ上で最も選択度に優れるLTM455IWの通過帯域特性を実測してみました。 観測画面の横軸スパン(幅)は先ほどのCWフィルタの10倍です。10倍の50kHz幅で見ているので注意してください。 -6dBの通過帯域幅は約10kHzあります。 残念なことに帯域外減衰量が60dBに届きません。従ってシェープ・ファクタを60dB/6dBで計算できませんが傾斜は意外に急峻です。 AM波が対象の受信機には選択度十分なことがわかりました。
やはり残念なのは帯域外減衰量があまり取れていないことです。ラジオなら十分かもしれませんが、通信型受信機には不足でしょう。 同じ型番のフィルタをI-F Amp.の途中に2個使うか、同じ周波数で内部素子数が少ない簡易型の方をもう一つ補うと良さそうです。 そうすれば80dBくらいの帯域外減衰量が容易に得られます。高性能なラジオ用として遜色ないものになります。
☆
簡易フロントエンドと世羅多フィルタを組み合わせて7MHzの受信機としてテストしています。I-F Amp.がローノイズ・ハイゲインなのでメーカー機で聞くよりも静かです。ゲインが過剰でないことも理由だと思いますが、ワッチしていて疲れないのはFBです。
本格的なフロントエンドの製作にあたってもこうした特徴は引き継ぎたいと思います。 もう10dB余分のゲインがあったら・・・と思うことがあるかも知れませんが、実際のところ7MHzのようなHF帯ローバンドではその必要はないのが普通です。静かさを優先した方が良いでしょう。
I-F Amp.の続編として幾つかの付随するテーマを扱いました。 テーマ数がやや多すぎたようです。それぞれの記述が簡素になってしまいました。目的はI-F Amp.の第2回を補なうものなのでこれでも十分だと思っています。 詳しくやろうとすればキリがありません。例えばI-Fフィルタにしても本格的に扱うなら数回のテーマになってしまうでしょう。RFフロントエンド部もANT入力フィルタの特性やIMD特性に優れる増幅素子と応用回路の研究などテーマは多岐に渡るはずです。 どうやら最高性能の「通信型受信機設計」をご期待されたならちょっと物足りなかったかも知れません。何かご希望でもあれば参考にさせて頂きたいと思います。
一応、I-F Amp.部はこれで終了にします。残りは:本格的なRF-Frontendの検討、局発用にVFOの検討、そして低周波増幅部もありましたね。まだまだディープな回路の世界が待っていそうです。 さて次回はどちらへ進みましょうか。 ではまた。de JA9TTT/1
(つづく)←リンクnm
【私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)
第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→ここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド→いまここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ
2022年6月14日火曜日
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