2013年11月15日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A with FT-747

【FT-747でJT-65Aにオンエア】
FT-747
 写真は1988年5月の雑誌から八重洲無線の新型HF帯トランシーバ登場の広告である。 FT-747は型番から言えばベストセラーのFT-757シリーズよりも前のイメージがある。しかしだいぶ後になってからの登場だった。それでも既に四半世紀前の無線機になってしまった。(参考:FT-757GX/SXは1983年秋に登場)

 FT-747は安いのが取り柄のようなトランシーバであった。 その当時のHF帯オールバンド・オールモード機は15〜25万円くらいである。だから少し高めのカートランシーバなみの89,800円で登場したのは驚きだった。 安くて「使える」マシンとして海外では好評で特に実利主義の米国では大いにもてはやされたと言う。 しかしJAのHAMは高級指向ゆえ売れたと言う話しはあまり聞かなかった。使い易く合理的で悪くないリグだと思う人は多いはずなんだが、安物を使ってると単なるビンボーHAMに見られそうだからね。hi hi

 全バンドRFアンプ無しでいきなりミキサーと言う思い切った設計であった。従って多信号特性は悪くない。感度も悪くないのは立派なものだと思う。 無闇に小型化していないので操作性は良好で、スピーカーも前面にあるなど車載には悪くないデザインだった。クリック付きダイヤル(25Hz Step)も車載用には扱い易い。 プラスチック・ボディー(裏面に金属メッキ)はチャチいが軽量なのでもっぱら車に載せていた。 その後、無線機の車載はやめたので遊休化してしまう。意外な名機、悪くないRigなので固定でサブ機にと思ったこともあったのだが・・・。

参考:FT-747(改)はFT-80Cの名称で業務機としてアジア・アフリカの発展途上国を中心に多数輸出され辺地との通信に活躍していたそうである。チープとは言え、それだけの実力を持ったリグだった訳だ。

                    ☆

 JT-65Aの性質上、周波数が不安定なリグは困るが、そこそこの安定度なら使い物になりそうに思う。そこでFT-747でどうか検討してみることにした。以下そのレポートである。

 JT-65Aは電波形式:F1Dが許容された範囲内ならHAMバンドのどこでオンエアしても良い。しかし実際には決まった周波数でのオンエアが殆どだ。 例えば14076や21076kHzと言った、XX076kHzと言う周波数が多い。ほとんど固定した周波数に出ていると言うことになる。 使うモードもUSBに固定であり周波数安定度さえ及第点ならどんなSSB機でも十分行けるだろう。これは他の同世代トランシーバ全般に当てはまると思う。オンエアするためのハードルはけして高くない。

FT-747対応のAFSKインターフェース
 一応、前のBlog(←リンク)からの続きである。 先に作ったインターフェースを八重洲無線:FT-747用に改造してみた。 送受の信号系はコネクタの付け替え程度で良く前のBlogとおなじで良かった。 しかしスタンバイ系はそのままでは旨くなかった。 IC-756よりもPTT回路の電流が大きいらしくフォトカプラ直結ではドライブしきれないのだ。中途半端なスタンバイ状態になってしまった。

 そこで2SC1815(Y)を追加してダーリントン接続で対処した。 これは最初からこうしておけば良かったようだ。 ダーリントンにすれば伝達効率の良くないフォトカプラでも使えるようになる。 IC-756で使う際にも支障はないのでいまからでも改造を推奨しておく。(今どき滅多にないと思うが、暗電流の大きなフォトカプラでは2SC1815のB-E間に数10〜100kΩを入れてバイパスする必要があるかも知れない。受信状態に戻らないなら対策を)

 受信信号はFT-747の背面パネルにあるAF OUT端子からもらう。この部分の回路変更はいらない。無線機側のコネクタを変更すればOKだ。VR1でレベル調整を行なってパソコンのマイク入力端子(ピンク)へ導けば良い。

 送信時、パソコンのイヤフォン端子(黄緑)から出るトーン信号はFT-747の正面パネル面にあるマイク端子へ加える。この部分も回路変更は不要だがコネクタの付け替えを必要とする。 FT-747にはAFSK用の低周波入力端子がないからだ。 8ピン・マイクコネクタの8番ピンにAFSK信号でGND側は同コネクタの7番ピンだ。 運用に当たってはインターフェース基板上のVR2をやや絞り気味にしておきFT-747のマイクゲインつまみでパワー 加減すれば良い。

 以上、スタンバイ系の小改造が必要だったが、他は同じ回路で良いので作業は簡単に済んだ。 八重洲無線の他の機種でも概ね同じ接続でJT-65Aに対応できることを確認済みだ。FT-757/GXなどをお持ちならお試しを。


キャリヤ周波数が飛ぶ
 JT-65Aモードを運用するにあたって周波数精度は良好に保ちたい。そこそこ古いリグなので経年変化も考えられるからテストに先立ち周波数校正を行なっておいた。 少なくとも誤差1ppm以内の精度を持つ良く校正されている周波数カウンタを用いる。

 大まかに言って調整は2箇所である。 FT-747は安価なリグなのでいわゆる「一発周波数管理」になっていない。 PLLで構成された局発系はすべて一つの基準水晶で周波数が決まるようにできているが、それとはまったく独立にキャリヤ発振器があるからだ。

参考:実際にはもう一つ38.640MHzの水晶発振器がある。ただし、この発振器の周波数ずれはPLL回路の内部で打ち消すように動作する。従って精度と安定度に影響は及ばない。そのためこの発振器は周波数調整の必要も無いため無調整になっている。甚だしくずれていないか周波数の確認をするだけで良い。

 写真のキャリヤ発振器の周波数は良く合わせないと精度が出ないのである。 本来であればSSBフィルタの特性に合わせたキャリヤポイントに調整するべきだろう。 しかし送受の周波数精度を確保するためにはフィルタ特性に合わせるのではダメで、規定の周波数にピッタリ合わせざるをえない。 キャリヤ周波数の誤差を吸収する術がないのだ。このあたりは廉価版のリグなのでやむを得ないだろう。 キャリヤポイントはSSB用としては最適化されないことになる。但しJT-65Aの要求を満たす周波特性が得られるなら何ら支障はない。

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 少しテストしたら実用にできる周波数安定度はあるようだ。 ところが、観察していたらUSBモードでキャリヤ発振器の「周波数飛び」が発生した。 突然1kHzくらい高い周波数へ跳躍してしまうのだ。 無視できない変動なのですぐに再調整したが少しするとまた周波数が飛んでしまう。 暫く使っていなかったリグに見られる症状なのでやがて落ち着くかと思ったが数回やっても良くならない。 どうやら写真の赤色トリマ・コンデンサが劣化したようだ。(容量は20pFのもの)

外したセラミック・トリマコンデンサ
 見た目は悪そうには見えないが・・・。

 セラミック板を調整ネジで被う構造のため、内部は見えないがローターのセラミック板にクラックがあるのかも知れない。 回してみて少し緩い感じもする。 頻繁に回したことはないので回し過ぎでユルユルに劣化させたとは考え難い。

 トリマ・コンデンサや半固定抵抗器のような可動電子部品の故障率は一桁も高いことが知られている。 この形式のトリマ・コンデンサ固有の問題と言うよりも一般的な故障なのであろう。

外したセラミック・トリマの裏面
 トリマ・コンデンサの裏面である。

 裏面中央のカシメが甘くなったのかも知れない。 メッキの酸化など特に見られないので環境原因で劣化したとは考え難いようだ。

 しばらく車載で使っていたので振動による可動部品の劣化が進行した可能性はあるかもしれない。 ただ、こうした軽量部品では稀なようにも思うのだが・・・。

 他所にも同じ形式のトリマ・コンデンサが使ってあるが、どれも回転トルクが小さくて心細い印象なので劣化し易かった部品かも知れない。そのつもりで今後も注意した方が良さそうだ。

代替品で交換
 同じ部品があれば修理も簡単だ。

 しかし側面から調整するタイプのセラミック・トリマは持ち合わせがなかった。ここは工夫で乗り切ることにする。

 メーカーの修理では許されないが、自家用の修理なら支障ないし特に信頼性が低いとも思えないので悪くなかろうと思う。 太めのメッキ線で支えたので調整時にグラつくこともなかった。一般的な形状のトリマ・コンデンサを横から調整できるように装着したわけだ。やってみたら具合は良かったので交換成功である。

ジャストの調整
 適度なトルクがあるので、こんどはスムースに調整できた。ずっとこれだけの桁が維持できる訳ではないが。(笑)

 USBのキャリヤ周波数はできるだけ8.2165MHzジャストに合わせるべきだ。測定は局発基板からメイン基板へ行く部分で行なう。 そのうえでPLL回路の 基準発振である5.4MHzを調整して初めて正確な周波数でオンエアできるようになる。

 5.4MHzの基準発振の方はUSBモードで15MHzのWWVを受信しながらゼロビートになるよう数Hz以内に合わせ込んでおいた。 周波数カウンタで旨く計測できるポイントがないからだ。発振回路にカウンタを直接接続すればそれだけで周波数が変わってしまう。

 なお、5.4MHzの基準も普通の発振回路であってTCXOではないから長く精度維持はできない。それほど不安定でもなかったので時おり校正すれば大丈夫そうである。本機には未実装だが5.4MHzのTCXOオプションは存在していた。もし手持ちがあるなら交換しておくと安心だ。 総合の周波数誤差は±50Hzくらいまでに維持することを目標にしたいと思っている。

 交換したトリマ・コンデンサはスムースでセッティングの安定性も良好だ。 写真の様にきちんと合わせることができるようになった。もちろん周波数飛びも解消した。これで安心してJT-65Aモードでオンエアできる。

FT-747でJT-65A
 FT-747はこの種のHF機としては受信時の消費電流が少ないので連続ワッチには好適だ。

 高級な機能は何もないがJT-65Aに使うのなら十分使えそうだ。 しばらくこの状態でワッチしてみたい。 JT-65AにはAGCの時定数がやや長い感じもするので様子を見て改造したいと思っている。

 インターフェースの接続はDINコネクタ一つと言う訳には行かないが、写真のマイクコネクタのほかリヤパネルのAF OUT端子とPTT端子への三カ所の接続だけだ。どれも一般的なコネクタなので入手も容易である。 8ピンのマイクコネクタならどこのハムショップでも置いてあるだろう。RCAピンジャックもオーディオでポピュラーなのでコネクタ付きケーブルが100均でも手に入る。

 受信調整は前のBlogと同じようにインターフェース基板の半固定抵抗:VR1で行なえば良い。IC-756よりやや小さめの出力だがVRの可変範囲にあるのでまったく問題ない。
 送信時のパワーは主にパネル右下のマイクゲインで加減する。基板上のVR2は1/3くらいの位置に固定しておけば良かった。 パソコンの音量にもよるので適度に加減して使い易く設定しよう。

 チャネルメモリにはJT-65AやWSPRの周波数などをインプットしてワンタッチ切換えで 各バンドがワッチできるよう備えておいた。 暫く使って性能に不満がなければJT-65Aの専用機にしようと思っている。

受信テスト
 ウオームアップが済んだので、あらためてワッチの仲間入りしてみた。

 あいにく時間帯が悪いのか、はたまたコンデイションが良くないのか、余り聞こえ(見え)なかった。 それでも取りあえずレポーターの仲間に入れた。

 DF周波数もだいたい平均的のようなので周波数の絶対精度も概ね目標範囲に入っているのではないかと思う。 S/Nのレポートもまずまずのようで交信に実用できそうだ。 無信号状態でウオーターフォール・ディスプレーを見ていると受信機低周波のフラットネスはいま一つのように感じられる。数dBのうねりがあるようで、クリスタルフィルタの特性が見えているのかも知れない。 しかしデコードは正常な範囲にあるようなので支障無さそうだ。 これで遊休化していたFT-747に活路が見出せそうである。

                ☆ ☆ ☆

 JT-65Aに古いトランシーバが使えるのか興味もあってテストを始めた。 途中周波数飛びと言うハプニングはあったが結果から言えば十分行けそうである。 故障が見つかれば修理は必須だとして、あとはそれなりのメンテナンス(周波数校正)だけで使える。 最新型リグは持ってないけれど・・・と諦めずとも十分チャンスはある。JT-65Aに挑戦してはどうだろうか。 TS-520やFT-101だってシンセサイザ式外部VFOの追加で行けそうな気がして来た。(笑)

 トランシーバの信号系がPLL化されたのはずいぶん前のことになる。 最初は自励発振のVFOも含んでいたが、やがて完全シンセサイザ式になった。 そうなれば送受周波数もおおむね水晶発振器の安定度と言うことになる。 そうなった時代のリグなら十分使える。 もちろん運用の便を考えるとなるべく読取り精度は上げておきたい。 周波数校正をしっかり行なってやれば大丈夫だろう。

 しかし昨今のリグのように周波数管理が一カ所では済まないのはちょっと面倒である。そこで外から与えたらと言うことにもなるのだが、OCXOなりを基準に必要な周波数を作ってやれば十分可能だ。それほど難しいことではない。さらにRb-OSCやGPS-DOに同期すれば周波数精度、安定度ともに抜群になる。 試みに5.400MHzを外部から与えたところ大幅に改善されるのでまずはそのあたりからだろうか? 果してそう言う情報のニーズはあるものやら・・・。 de JA9TTT/1

(おわり)

追記;
今月のCQ誌(2013年11月号)にもJT-65の記事が掲載されている。専用ソフトウエア・JT-65-HFを使った運用を主体とする内容だ。ソフトの扱いや交信手順など不安があるお方は参照されると良いだろう。このモード、これから流行ると思うので早速スタートされてはどうだろうか?
 無線局の指定事項に変更がない場合、即ち自局に免許されている一括コード(例えば3HAとか3VAのような)にF1Dモードが含まれていれば、付加装置に関する変更届を「遅滞なく」提出(送付または電子届け)するだけで良い。もちろん運用をしたいバンドごとに確認を。TSSの保証認定はいらないので費用は発生しない。(・・・と言う解釈で良かったハズ・笑)

2013年11月1日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 2

【JT-65Aでオンエア Part 2:製作・運用編】

完成したインターフェース
 前回(←リンク)の続きである。 JT65でオンエアするためには、パソコンと無線機の仲立ちをする「インターフェース」が必要だ。 写真は完成したインターフェースのテスト風景である。

 JT65用のインターフェースとは言っても、調べてみたら何も目新しいものではないようだ。 要するに昔からあったRTTY用などと同じAFSK形式のインターフェスにすぎない。

 パソコン側へはトランシーバ(受信機)から低周波出力を与える。 昔はTUでデジタル化してパソコンに送った。しかしいまの常識ではパソコンの処理能力が高いから受信機から低周波のまま与えればよい。あとはパソコン側でソフトウエア的に処理してしまうのだ。
 送信も同じである。 昔は周波数シフトキーヤーをON/OFFしたりAFトーン周波数を切り替えていたが、いまは直接トーンを作り出す。 もちろん、AFSKの問題点はさんざん議論があった通りであって、奇麗なトーンを送信機に与えたうえで、オーバードライブにならぬような注意を要する。このあたりは昔と何も変わっていない。
そのほか必要な接続は無線機のスタンバイ・コントロール(PTTの制御)くらいのものだ。(面倒ならVOXを使うと言う横着な手もある・笑)

                    ☆

 JT65(A)などと聞き慣れぬ通信モード名を耳にすると難しそうに感じるが、要するにそう言うことなのでインターフェースの設計は難しくない。 様子がわかった所でさっそく設計・製作してみよう。 設計〜部品集め〜テストオンエアまでがこのBlogの目標だ。

参考:ICOMのHF帯トランシーバ用に作ったが他社機用に容易に変更しうる。今はやりのFT-8にもそのまま使える。
注意:JT65AはHF帯用のJT65モードである。電波形式で言えば「F1D」である。

JT65用のインターフェース回路
 JT65と言うよりも、AFSKでトランシーバとPCを繋ぐためのインターフェースと言える。パソコン側からスタンバイコントロールも行なう。 従ってRTTY、PACKETなどを始めとする同種のインターフェースを要するデジタル系のモード全般に共通して使えるだろう。当然だがFT-8にも最適だ。

 設計に当たっては使用する無線機とパソコンの仕様を調査した。 まず無線機側だがマイク端子とスピーカー端子に接続することもできる。それが一番簡単な方法だが、SSBなど音声でオンエアする時にマイクコネクタの付け替えが要る。また受信も低周波のVRを通った後だと毎回レベル合わせをしなくてはならない。

 無線機に専用のインターフェース端子がないならやむを得ないが、いまのRigならたいてい通信用インターフェース端子が付いているはずだ。 そのインターフェースについて必要な信号レベルの調査を行なった。 ここではICOMのIC-756proを想定し直結できるように設計した。 仕様書による確認と、受信しながら実際の信号レベルを確認している。

 PC側はマイク端子とスピーカー端子、そしてシリアル通信ポートへの接続が必要なので、それぞれ必要条件を確認しておく。

 ICOMのリグなら統一性があるようなので他機でも同じで行けるだろう。 それにVRでレベル調整が可能なようにしておいたので多少の違いは吸収できる。 内容としては典型的な(古典的な?)AFSKのインターフェースである。

このインターフェース回路の使用実績については、Blogの文末を参照ください。

追記:【回路図改訂:V1.0.1】フォトカプラの後にトランジスタ及び抵抗(各1本)追加。(理由)PTT回路のドライブ能力向上のため。(2013.11.14)+【回路図改訂:V1.0.1a】回路図記入漏れ修正(2014.12.09)

部品集め
 揃わなければ秋葉原で調達するか通販でもと思っていた。 しかし探したら手持ちで全部揃った。 それだけ部品やジャンクを抱え込んでいるということで、こうしたチャンスに積極的に消化しないと勿体ない。 忙しいとついついお店で新たに買ってしまうので、面倒くさがらずに探す努力が必要だ。(自戒を込めて・笑)

 なお、初期の構想段階で集めた部品なので、使わなくなったものや、写真以外で追加になった部品もある。 上記の回路図通りではないので悪しからず。 但しコネクタやトランスと言った重要部品に変更はない。 実際に部分回路をバラックで組立ててテストし、最適化した上で作って行った。そうして纏めたのが上記の回路と言う訳だ。

低周波トランス
 無線機側とパソコン側はなるべくならGND系を分離した方が良い。 ノイズ源になり易いデジタル機器を、μVオーダーの信号を扱う通信機に繋ごうと言うのだから、なるべくアイソレーションしておくべきだ。

 こうした低周波トランスを介して受信の低周波信号をPCのマイク端子に与え、PCのスピーカー出力からの信号もトランスを介して無線機の低周波入力端子へ導く。

 使用したトランスはずいぶん前に入手したもので貰った物か何か部品ジャンクに入っていたのか記憶は定かでない。 低周波用の一般的なものであって古い電話モデムあたりで使っていた600Ω:600Ωのトランスのようだ。 なお代替としては山水のST-23が良いと思う。回路変更無しでそのまま使える。この製作で最も高価な部品だろう。(500円くらい)

 こうした低周波トランスはバンド・パス・フィルタ(BPF)的な効果も期待できる。不要な極低域をカットする働きがあるからだ。 ノイズ流入防止のアイソレーション用だけでなく復調信号のS/Nを改善する効果も見込める。

フォト・カプラ
 パソコンからリグのスタンバイをコントロールする必要がある。 単なるON/OFF信号で無線機のPTTを操作することになる。 パソコン側からシリアルポートに出ている通信制御信号を使って送受切換えを行なう。

 この信号もGNDを分離する必要がある。アナログ信号系は上の写真のトランスで分離したが、ON/OFF信号は直流的な信号なのでトランスは使えないからフォト・カプラを使った。高速切換えの必要は無いから機械的なリレーでも良いがフォト・カプラが簡単だ。

 東芝製のTLP-521-1と言う一般的なものを使った。同等に使える代替品は沢山あるが、なるべく伝達効率の高いものが良い。 Photo-MOS Relayでも良いが、PTT端子は極性が決まっているから出力側がトランジスタの普通のフォト・カプラで十分だ。(単価数10円)

追記:PTTドライブ回路の強化のためNPNトランジスタを追加しダーリントン回路に変更。フォトカプラはごく一般的なものなら何でも可能。回路図V1.0.1に変更(2013.11.14)

ケーブル類
 意外に面倒なのが接続ケーブル類である。 D-SUB 9pinのケーブルはHard OFFなどでジャンクケーブルを探すと安価だと思う。 そうしたものを途中で切って使えば十分だ。 ここでは以前何かに使った余りの半分があったのでそれを使った。

 PC側のマイクロフォンとスピーカ端子は3mmのステレオ・プラグでごく一般的なものだ。これもジャンクから容易に調達できそうだ。100均でイヤフォン・マイクを買って流用すればケーブル付きがコネクタ単独で買うよりリーズナブルに手に入る。

 その辺で売っていないのがRig側のDINコネクタだ。(写真で黒いもの) こうした大柄のDINコネクタは昨今あまり使われていない。 秋葉原でも限られたお店でしか扱っていない。どうしても入手難なら無線機メーカーに確認するのも良いだろう。
たまたま買い置きがあったので使用した。昔似たようなインターフェースを作った際の余りだろう。 秋葉原では千石電商の電子楽器パーツを扱うお店(2号店の脇階段を上った2F)に品揃えが豊富だった。あれば150円程度の安価なコネクタだ。通販で調達するのも良いと思う。

 インターフェース基板からDINコネクタまで、送信用の低周波信号が通るラインはシールド線を使っている。シールド線1本とバラ線が4本入った一括ケーブルを使った。カメラ・ケーブルとか言う名称だったと思う。秋葉原ならオヤイデ電線に置いてある。

ケース
 金属製のケースでも良いが、どうせアイソレーションするのだからプラスチックの箱にした。 金属の箱だとどちら側のGNDに箱を落とすのか迷うがプラ箱ならそうした悩みは生じない。(笑)

 手持ちを使ったがポリカーボネート樹脂製のようだ。 スチロール製より割れ難くくて扱い易い。 100均のおかず入れでも十分なので基板は何かに収納しておくべきだ。

 JT-65に限って言えばローパワー運用なので回り込みトラブルは考え難い。 RTTYなどリニヤ付きハイパワーでやりたいお方は各ラインにRFフィルタを入れ金属ケースに収納する方が良いかも知れない。 もっともその金属ケースにRFが乗るという笑えないトラブルもあるのだが・・・。

インターフェース基板
 部品数が少ないので配線はごく簡単だ。 手間がかかったのはトランスの部分で、ピン足のピッチが2.54mm刻みではないのだ。 やむなく穴を追加してそれらしく載せておいた。

 代替に推奨した山水トランス:ST-23はリード線タイプなのでそうした問題はない。 他の部品は見ての通りなので取り立てて説明は要しないだろう。

 なお、VR類は全て半固定VRにしてしまった。 一旦調整したら滅多にいじらないと思うからだ。 半固定VRでまず支障はないと思う。 (JT65以外のモードでは調整を要するかもしれない。万能インターフェースにするならツマミ付きのVRを使うのも良いと思う)

インターフェース基板の裏側
 例によってお見せするようなものでは無いが基板の裏側である。 絶縁耐圧は要しないが、PCと無線機をアイソレーション(絶縁分離)した意味が失われぬように、それぞれのGND系は切り離すことをお忘れなく。

 トランスは巻数比が1:1で、インピーダンス比も同じである。 信号に方向性はないと思うが送受で逆方向に使い同じ信号の流れになるようにしてある。(たぶん、あまり意味はない)

 秋月電子通商で売っている小型ユニバーサル基板に余裕をもって全部品を載せることができる。 配線は交叉していないのでプリントパターン化も容易だ。

完成
 箱に入れて完成させる。 事前に要素実験は済んでいるので、配線間違えさなければ組込んでただちに動くだろう。

 ケースに厚みがなかったので高さ方向がすこし窮屈であった。 基板裏面が下ケースに密着する構造だが絶縁物なので支障はない。

 なおインピーダンスの低い回路なのでプラケースだからと言ってハムなどの誘導は問題ないと思う。 どうしてもダメなら銅箔テープなどを貼付けてGNDに落とせば良い。 実際に使ってみたが特に支障はなかった。 送信電波も別のリグでモニタしてOKだった。 ケースの上蓋には半固定VRの調整穴がある。しかし調整後に蓋をすれば良いので穴は要らなかったのかも知れない。

通電テストと調整
 ケーブル配線に間違いがないか良く確認してから無線機とPCを接続する。 写真のように、パソコンを起動するとLEDが点灯すればスタンバイ系統の配線は活きている。

 このLEDは動作モニタを兼ねており、送信時に消灯するのが正常な動きだ。 もし旨く動作しないならcomポートの番号を確かめ、JT65-HFの設定を再確認する。ポート番号が合っていて、スタンバイにRTS信号を使う設定になっているだろうか? USB-シリアル変換ケーブルを使う場合も、仮想的なcomポートと考えれば方法はまったく同じである。

 まずは、受信調整から行なう。ソフトウエア:JT65-HFを起動し画面左上にあるレベルモニタのバーグラフに注目する。(Audio Input Levelと言うところ) トランシーバ(受信機)を何も信号が聞こえずバックグラウンドの「シャー」っと言うノイズだけが入感する周波数に合わせる。 基板上の受信レベル調整用のVR1を回し、バーグラフ右の数字がおおむね0dBになるように調整する。 あとはJT-65で各局が運用する周波数を受信しながら様子を見て加減すれば良い。 いつも誰かが出ていそうな周波数としては、14,076kHzや21,076kHz(いずれもUSBモード)が良いだろう。昨今は28MHz帯のコンデイションが良いらしく、28,076kHzも良く聞こえて(見えて)いるようだ。

 ちなみに、このBlogを書いた時点ではJA局はバンド使用区分の関係で7076kHzにオンエアはできなかった。その後の法改正により2016年現在では海外局との交信に限ってオンエア可能になっている。(JA局相手は7041kHz)また、10MHz帯は10138kHzもしくは10139kHzが使われている。どちらかと言えば10138kHzの方が多いように感じる。10138kHz/USBはWSPR(ビーコン局)と一部周波数が重なるので運用には注意が必要。 なお、ワッチすると1838kHzと3576kHzにもJT-65Aのオンエアが見えるが、JA局はオフバンドになるのでいっさい送信は出来ない。実際に捕まった局も出ている。注意されたし。(追記2016.2.24)

 続いて送信調整である。いきなりフルパワー送信にならぬように、まずはVR2を絞っておく。 送信機を終端型パワー計もしくは通過型電力計+ダミーロードに接続する。 何でも良いので、JT65-HFを適当な送信モードにする。 マウスのポインタを合わせCall CQボタンを押してからEnable TXを押すのが手っ取り早いだろう。偶数分か奇数分ちょうどになれば送信開始だ。 送信が始まったらパワー計を見ながら送信レベル調整のVR2を回してパワーを加減する。(パソコン側でスピーカの音量調整ができるので併用すると良い)
 最初は出力5〜10Wくらいが良いのではないかと思う。 奇麗な波を出すためQRP機の場合も最大出力の50%くらいまでで使うのが適当だ。 別途受信機があればトーンにノイズ混入や歪みによる濁りがないか聞いて判断する。 スペアナがあれば見ても良いがモニタで聞いておけば十分かと思う。 なんでも高級な手段が良い訳にはあらず。それにその辺にあるスペアナでは見ても良くわからんだろうし。

                    −・・・−

参考:このインターフェースはWSPR(ウイスパー:微弱電波伝搬報告プログラム)用ソフトウエアにも対応しておりそのまま使える。(専用ソフト:WSPR 2のダウンロードは→こちら) 但し、使用に当たっては受信と送信のレベルを再調整した方が良い。また、送信パワーは一般に5W以下なので出し過ぎぬようパワー計で確認しておくべきだ。初期設定の際にスタンバイはcomポートのRTSで行うようにセットする。(JT65-HFと同じ)WSPRのアクティビティに関してはWSPRnet.org(←リンク)を参照されたい。

オンエア・テスト
テスト電波を出してみよう。

 インターフェースができたなら、早速オンエアしてみたいのが人情だ。 しかし、諸先輩方の「注意」を良く読まず、みっともないテスト電波をさんざ垂れ流したあげく誰の応答もない初心者を目にする。 コールサインからさっするに相当のOMさん(たぶんご年配)と思うが、ここは初心に返ってきちんと注意書きを読んだ方が良い。 いい大人が恥を垂れ流すよりもよほど良いはずだ。 はやる気持ちを抑えてじっくり準備してほしい。

PCの時計はあってますか?
 「何を馬鹿なことを!」と言うなかれ。 初めてのオンエアでQSOに至らない原因の最たるはパソコンの時計の狂いにある。 説明書には±0.5秒以内と書かれているが、±0.2秒くらいに合わせておきたいものだ。 それはオンエアしている各局も幾分ずれているからだ。 これが良く合っていないと、いくら強い電波を出そうが誰からも応答は返ってこない。コールサイン付きの恥ずかしい波をお空に垂れ流すばかりだ。 だいたい、そんなにパワーは要らないのがJT-65HFなので、応答が無いからと言って無闇にパワーを出せば皆にすぐわかってしまう。おつむの程度が知れて恥の上塗りと言うものだ。(笑)
時計は手動で合わせても良いが、たぶん30分も精度が維持できれば良い方だ。 使っているPCが常時インターネットに接続されている環境にあるなら、自動時計合わせのアプリをインストールしておくのが一番良い。
・・・と言うよりも、それなしには安定したQSOは望めない。 ネット経由で時計合わせするアプリは沢山あるが、私は「NetTime」というのを使っている。インストールと設定の手順はリンク先にあるので、ダウンロードしたら必ず良く設定しておくこと。セッティングが済んだら電波時計と照合しておくのが良い。 これがオンエアの第1歩だ。

オンエアテストをする.
 14076kHz(あるいは21076kHzなど資格に応じて)を少なくとも5分以上ワッチする。 その上で、だれもオンエアしていなそうなDF周波数にセットし「TEST JA9TTT」とか、適当な文章を入れて送信してみる。なお、オンエア局からは150Hz以上離れるべきだ。いきなりCQでも良いが呼ばれた際の心の準備が必要だ。hi hi

 同時にモニタ受信すると良い。スムースに送信シーケンスが進めばインターフェースは順調だ。 まあこの画面の所まで辿り着いているなら、ほとんど問題はないだろう。

 実際にオンエアしながら受信時にはS/N比が良い状態で復調できるようボリウムを微調整し、常に送信時のパワーは抑制気味で行けば良いと思う。 100Wの無線機を100Wで使うのは連続送信による過負荷もあるが歪みも問題があるので感心しない。(むしろ禁止!) 100W機でもせいぜいmax20〜30Wでオンエアするのが合理的なようである。 ここではテストなので迷惑にならぬよう数Wに絞って行なってみた。 JT65ではなるべくローパワーでの運用が推奨されるとのこと。 なお、ハイパワー局でも常用は最大でも10Wが推奨されるパワーとのこと。それ以上の20~30Wは非常用との位置付けらしい。 くれぐれも必要最低限のパワーで!

QRP局は!
これらのことから考えてQRP局は大きくても1Wまでが暗黙の了解らしい。 他のモードのように5Wも出したらもはやQRP局とは言えない模様だ。 数mW〜数100mWでも想像以上に飛ぶこともあるようなので、相手のGLからマイル/Wを計算して競うのも興味深いと思う。

送信パワーの調整方法
 きれいな波を出すために、以下は必ず守る必要がある。(1)送信機(トランシーバ)のパワー調整ツマミは最大出力の位置にしておく。(2)マイクゲイン、もしくはインターフェース上のボリウムで運用するパワーまでしぼる。具体的には送信パワーが20〜30Wになるよう加減する。 最大出力10Wのリグなら半分の5W程度に、50Wのリグでは20Wくらいになるよう、「マイクゲイン」のツマミでパワーを加減する。
送信電力の加減はリグの「パワー調整つまみ」で行うのではないことに十分注意を!! (パワー調整ツマミでしぼるときれいな電波が出ないので、相手局に復調されにくくなるばかりか、同時にオンエアしている局の迷惑にもなる。しかもPoorなオペレータなのがコールサイン付きで皆に知れわたってしまう)

受信レポート
 さっそくテスト電波が各局に聞こえたか確認してみよう。このレポートサイトのURLは→こちら(2014年10月現在停止中)。 Topページが開いたらバンドごとのレポートを開くと左図のようになる。レポートは1分ごとにその時あったレポートに従いアップデートされる。自分でも受信レポートしたい場合はJT65-HFの画面右下にある「Enable RB」にチェックを入れておく。(レポートするには常時ネット接続が必要)

 どうやらJA局が殆どだが、ZLで聞こえた局もあったようだ。きっと耳の良い局なのだろう。 とんでもなく周波数がずれているとか、歪んでいるなど酷い波ではなかった模様だ。もしそうならレポートも帰ってこない。  コールサインが載ったので取りあえず一安心と言った感じだ。 運用形態がローパワーだからまず心配は無いが、アンテナ系のVSWRが高かったりすればRFの回り込みもあり得る。要注意だ。

 しばらくは受信をしながら復調S/Nなど見ておこう。DX局を受信した際のJA各局との数値比較が参考になる。 しばらくワッチしていると、JA4とJA1エリアに常に良いS/Nでレポートされるお方がおられた。ノイズのない環境で良いアンテナなのかも知れないが、ぜひとも良い耳の目標にしたいものだ。 送信は運用しながら適度なパワーに調整しよう。 パワーは受信とのバランスも関係するし、その局のアンテナやノイズ環境などの要素もある。 おのおの適した設定を見つけて行く必要がありそうだ。

参考:2014年10月1日現在、リバース・ビーコン:RBは停止中である。様子を見ているが、短期的な停止ではない模様である。RBはオンエア・テストに便利なので停止はとても残念である。PSKR(←リンク)の方は大丈夫なのでそちらで飛びや聞こえ方を確認するのも良い。)

                 ☆ ☆ ☆

 いまは便利な時代である。こうしたインターフェースも既製品が売っている。リグによっては、はなからデータ通信用にUSB-IFまで備えていて外付けのインターフェースなど不要なものさえある。 特にカムバック組のHAMはそうした最新リグをお持ちだと思う。 ぜひニューモードに挑戦をお勧めしたい。 SSBでオンエアするのとはまた別の面白さもある。どのモードでオンエアするにせよ、レポート交換とお天気紹介のワンパターンQSOではマンネリ化はすぐそこだ。 JT65のQSOも究極のラバースタンプ形式なのだが、レトロなモードのリバイバルより楽しむ余地はたっぷりありそうに感じる。

# 何か少しでも新しい要素を取り入れるのが趣味を長続きさせるコツだと思う。

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 USBケーブル一本でOKな最新リグは持ち合わせていないので簡単なインターフェースを作ってみた。 流石に周波数の安定度と読取り精度を要するのでアナログなリグには難しさがある。しかしそれ以外のDDSやPLLによるVFO機ならどれでも大丈夫だ。 各リグに合うようすこし回路を変更すれば同じに行ける。 見ればわかるようにAFSKのインターフェースなど、そんなものだ。 ではJT65でお会いしましょう。 de JA9TTT/1

参考:このインターフェースはJT65だけでなく、現在主流になっているFT-8でも十分な威力を発揮します。多数のDX局との交信に貢献してくれました。(追記:2021.04.30)

(おわり)
(追記改訂:2014.08.27)

参考:
八重洲無線FT-747/757でJT-65を運用する続編は:==>こちら(リンク)
八重洲無線FT-817NDでJT65を運用する続編は:
この続編ではUSBインターフェースに直結形式で製作している。==>こちら(リンク)

                    

参考:このインターフェース回路の実績について
 14.076MHzあるいは21.076MHzを常時受信し、リーバースビーコン(RB)のサイトへ受信レポートを送る形式で受信実績を評価してみた。(ごく稀に18.102MHzも使用した)

 レポートサイトへ受信レポートの送信を開始したのは2013年10月15日である。開始から272日経過した、2014年8月13日に累計で100万局の受信レポートを送ることができた。(左図はその時の画面キャプチャ)従って、約3,676レポート/日・・・1時間当たり153レポート以上・・・のペースであった。(備考:現在リバースビーコンのWebサイトは休止している)

 きわめて優秀などと言うつもりはないが、他のレポーターとの比較ではまずまずの成績と言えるようである。もちろん、インターフェースの性能だけでなく各局のロケーションやアンテナ、さらにはお空のコンディションや周辺のノイズ環境など様々な要素が受信成績を左右するだろう。

 しかし、たとえ良い環境やリグに恵まれていてもインターフェースの性能が悪いと復調能力は劣ってしまう。

 ここで作ったインターフェースは、より良い環境や良い設備を持った局の期待にも十分応えてくれるだけの性能を持っていると考えて良さそうだ。 使用実績から見て、お勧めできるインターフェース回路だと思う。(2014.8.14)