【7MHzのPLL発振器(2)】
PLLの活用を目指したBlogの第2回です。 前回(←リンク)は7MHzのPLL発振器を題材に評価しました。 できたものがどんな性能か見えてきました。 第2回ではPLL発振器の概要をおさらいしたあと、PLLの回路要素を順に辿って行きます。
写真は7MHzのPLL式発振器です。 今回はMC145163Pを使わず、汎用のHC-MOSとポピュラーなプログラマブル・カウンタ:TC9122P(東芝)を使いました。
MC145163Pは持っていないけれど、TC9122Pならあるんだけれど・・・と言うのでしたら同じように7MHzのPLL発振器が作れます。 TC9122Pの代わりにTC9198P/Fでも大丈夫です。 少し部品数は増えますが使うICがスリムなのでコンパクトに作れます。 PLLとしての性能もさした違いはありませんでした。
第2回のおもな目的は、この回路を作ることではないのですが典型的なPLL回路として載せています。 説明用の例題とも言えます。 だからと言って単なる見本ではなく使い物になります。 上記写真を具体的な回路図にまとめておきました。 MC145163Pがなくても作れる回路例と言うわけです。
興味を持っていただけたようでしたらPLL回路を作りながら進んでいただければVY-FBだと思います。 前回の製作ではMC145163Pの機能をフルに使ったのでスッキリしていました。 使わないと部品は増えますがなるべくシンプルになるよう選んだので複雑にはなっていません。同じように簡単に作れます。
10.240MHzのVXO出力から比較基準の10kHzを作る部分には、分周器としてHC-MOSのTC74HC4060APを使いました。 他のHC-MOSカウンタを並べて作ることもできますが、74HC4060なら一つで1/1024の分周ができて便利です。 74HC4060は水晶発振回路も内蔵していますが使わずに外部から与えることになります。 その発振回路の部分はインターフェース回路として利用します。 10.240MHzのVXO回路は前回とまったく同じです。 なお、扱う周波数が10.24MHzと高いためスタンダードC-MOSのCD4060Bは使えません。高速C-MOSの74HCタイプを使います。
プログラマブル・カウンタにはだいぶ古臭いのですがTC9122Pを使いました。既にディスコンですが持っている人は意外に多いのではないでしょうか? 新規に買おうとすればだいぶ値上がりしていますがまだ何とか手に入ります。 持っているなら貴重品扱いなどせず積極的に使うべきでしょう。そのうち陳腐化して価値も無くなりますので。 ここはTC9198P/Fでも大丈夫ですがこちらもディスコンでしょうね。 ほかに74HCシリーズのカウンタ用ICで構成することもできるのですがICの数がずいぶん増えます。例えば74HC192などを並べて作れます。 しかし、なるべくPLL用に作られているTC9122やTC9198を使うのが良いです。
ここで使用したTC9122PはMC145163Pに内蔵されているプログラマブル・カウンタほど周波数特性は伸びていません。 電源電圧5Vでは21MHz帯までが良いところです。 電源電圧を7Vまでアップして30MHzあたりまででしょう。 電源電圧をアップしても50MHz帯は無理ですからVHF帯が必要なら周波数変換する形式にします。 TC9198P/Fもほぼ同様です。 ここでは触れませんがTC9198と可変分周プリスケーラで高速カウンタを実現する方法もあります。(注:TC9122Pには3種類くらい世代の異った物があります。古い世代は周波数特性が伸びません。10MHz以下で使うのがせいぜいです)
位相比較器はCD74HC4046AEに内蔵のもの(タイプⅡ)を使いました。 TC9122Pといえば同じ東芝のTC5081APが相棒の位相比較器かも知れません。 しかし入手は難しいでしょう。それに74HC4046の位相比較器の方が高性能ですからTC5081APを探すまでもないです。 74HC4046なら入手は容易です。 なお、74HC4046は電圧制御発振器:VCMを内蔵していますがここでは使いません。必ず遊び入力ピンの処理をしておきます。(回路図のようにしておけばOKです)
ループ・フィルタとバッファ・アンプ、及び補助のフィルタは前回の回路と同じ考え方です。回路定数は低インピーダンス型になっています。上記の写真は普通に設計したループフィルタになっていますが、この回路図のように低インピーダンス型の方が良好でした。 OP-Amp.にはナショセミのLMC6482AINを使いました。 インターシルのICL7621DCPAも使えますがいくらかノイジーなようです。 やはり設計の新しいLMC6482AINの方が優れています。
VCOは前回同様にモトローラのMC1648Pを使っています。これは比較の意味で前回と同じにしただけです。ほかの形式でも良いでしょう。 なお、VCO部分については次回のBlogで詳しく扱いたいと思っています。
スペクトラムの写真は示しませんが、完成した7MHz PLL発振器の性能はMC145163Pを使ったものと同等です。 位相比較器の方式やVCOの部分が同じなのでほとんど違いはないと言えます。
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【PLL回路のブロック図】
図は典型的なPLL発振器のブロック図です。 上記の7MHz PLL発振器もこれにならっています。
回路の構成要素は、(1)位相比較器、(2)ループ・フィルタ、(3)電圧制御発振器、(4)プログラマブル・カウンタ(主分周器及びプリスケーラ)、(5)基準発振器及び分周器・・ から成っています。 他の形式のPLL発振器も基本はこれと同じであり、付属回路の有無くらいのものです。
PLLの設計はパート・1でも書いたように、ひとことで言うとループフィルタの部品定数を決めることに集約されます。 要求された仕様からPLL発振器としての仕様を決めます。 具体的には周波数ステップや周波数切り替えの応答速度などです。 さらに回路の構成要素ごとに、必要な特性が得られるよう細部設計を行ないます。 また、項目によっては事前に試作を行なって実測から特性を求めておく作業も必要でしょう。
このように要求仕様から決定した項目と、各構成要素の特性から具体的にループフィルタの部品定数を計算します。
そのようにして作ったPLL回路は確実にロックします。 ただし確実にロックしただけでは不十分なこともあります。そんな時はさらに信号の品質が満足できるよう細部をチューニングして完成させます。
ループフィルタの設計は文章にすると難しそうに感じますが、実際の作業は意外に単純です。 よほど特殊なPLLでもない限り定型の計算式に数値を当てはめれば容易に算出できます。 ただし見慣れぬ単位を持つ数値も多いためいきなり計算式が出てきたら難解でしょう。 まずは構成要素を辿りながら準備運動から始めたいと思います。 回路の構成要素はほとんどがIC化されていますから主にICの説明になります。
【位相比較器のIC】
PLL発振器は位相同期ループ発振器と言うくらいですから、位相比較器がシステムの「かなめ」になると言えるでしょう。 写真は市販されている位相比較器の例です。
位相比較器は汎用ロジックICを組み合わせて構成することも可能ですが、いまでは専用のICを使うと便利でしょう。 右下のMC4044Pは初期のIC化された位相比較器です。 内部はTTL構造で、比較的高速で動作するため今でも稀に特殊な用途で使われることがあります。 しかし、使いにくいのであえて選択する意味はないと思います。すでに廃れているとも言えるでしょう。
位相比較器の重要な特性は、位相比較器ゲインでKpの記号で表されます。 2つの信号の位相差がどれくらいの電圧として取り出されるのかというのが位相比較器ゲイン:Kpになります。 従ってKpの単位は出力電圧/位相差となります。 もちろんこのタイプの位相比較器の出力はパルス波形ですので、ループフィルタを通って平滑化された後の電圧と位相差の関係になります。
MC4044PのKpは:Kp=(2・Vbe)/4π≒1.4/12.57≒0.111(Volt/radian)です。
なおVbeというにはシリコン・トランジスタのベースエミッタ間順方向電圧です。約0.7Vと言うことになります。 いまどきMC4044Pを使うケースはまず無いためこの数字は忘れても構いません。 しかし万一使う必要が生じた時のために書いておきました。 なぜこのような数字になるのかはMC4044Pのデータシートに詳しく書いてあります。
ほかのIC、CD4046BE、CD74HC4046AE、TC5081AP、 SC371004の位相比較器は基本的に同じ特性ですがMC4044Pとはかなり違います。 次項で詳しく見てみましょう。
参考:CD4046BEには2種類、CD74HC4046AEには3種類の位相比較器が内蔵されています。詳しくはそれぞれのデータシートを見てください。 このBlogで扱っているPLL発振器(周波数シンセサイザ)の用途ではそのうちタイプⅡという位相比較器を使うことがほとんどです。 ここではその前提で話を進めます。 なお、タイプの異なる位相比較器ではKpの値も異なります。 TC5081APやSC371004、さらにはMC145163Pほか多くのPLL-ICに内臓の位相比較器もこの「タイプII型」と等価なものです。
【タイプⅡ型・位相比較器の動作について】
出力周波数の範囲が広いPLL発振器には左図のような位相比較器が使われています。 周波数範囲が「狭い」あるいは「広い」の定義は漠然としていますが、例えば可変周波型水晶発振器:VCXOにロックを掛けるようなPLL発振器は狭い方の例です。せいぜい数kHz以内の範囲でロックさせようと言うものです。
ここで製作している発振器は7〜8MHzと約1MHzの範囲を10kHzおきに広範囲に発振させようとするものです。 広い方の例といえるでしょう。 左図のタイプの位相比較器は、図右下にあるように2つの入力端子間の位相差に従った出力電圧が得られるだけでなく、周波数の高低も比較することができます。 そのため、広範な周波数可変範囲を持った電圧制御発振器:VCOと組み合わせても必ずロックできるPLLが作くれます。
CD4046Bには他にイクスクルーシブ・ORゲートを使った位相比較器(Type Ⅰ)があり、さらに74HC4046AにはR-Sフリップ・フロップを使った位相比較器(Type Ⅲ)も内蔵されています。しかしこれらはどちらかと言えば特殊な用途で効果を発揮するものです。 ここではType Ⅱを使う前提で話を進めたいと思っています。 三つの中でType Ⅱがいちばん汎用性があります。(欠点もあるのですが・・・)
4046Bや74HC4046のType Ⅱ型位相比較器の位相比較器ゲイン:Kpは
Kp=(Vdd-Vss)/4π≒5/12.57≒0.398(Volt/radian)です。
なおVddは位相比較器の電源ピンの電圧でVssはGNDピンの電圧です。 従って電源電圧が異なる時は再計算します。 例えばVdd=7Vとすれば:Kp≒0.557(Volt/radian)となります。
電源電圧Vdd=5Vで使うケースがほとんどなので、位相比較器ゲイン:Kp≒0.4 (Volt/radian)は覚えておいて損のない数字かもしれません。 しかし意味さえわかっていれば簡単に計算はできますけれど。(笑)
# 上記のことは、C-MOS構造のPLL用ICであるMC145163Pなど多くのPLL用LSIに内蔵されている位相比較器に於いても同様です。 もちろんTC5081APでも同じです。 すなわち、Vdd=5Vで使えば: Kp=0.398 (V/rad) です。
参考:PLL回路では弧度法で。
PLL回路における角度の表記は基本的にラジアン(Radian)を使います。 ラジアンと言う単位は電気関係のお方にはお馴染みだと思います。 しかし生活では馴染みのない単位ですから一般にはピンとこないかも知れません。
簡単に言うと円の360度が2πラジアンです。 πはお馴染みの円周率:3.1415926・・・ですから、1ラジアンは:1(radian)≒57.3度となります。 なぜこうした単位を使うのかと言う話しは冗長になるので省きますが、もし興味があれば「弧度法」(←リンク)を検索ワードに研究されてださい。
【プログラマブル・カウンタのIC】
PLL発振器の出力周波数は、位相比較器の比較周波数とプログラマブル・カウンタ(可変分周比カウンタ)によって決定されます。 出力周波数をfo、比較周波数をfr、分周数をNとすれば: fo=fr×Nとなります。 Nは一般に正の整数ですが、フラクショナルN型という分数Nが可能なPLLの方式もあります。(フラクショナル=分数という意味)
いま、比較周波数fr=10kHzとします。 N=700とすれば、出力周波数foは:fo=10×700=7,000(kHz)となります。 Nを700から順次大きくしてゆけば、発振周波数は10kHzずつ増加して行きます。
プログラマブル・カウンタは汎用ロジックICのうち、プリセット可能なダウンカウンタがあれば構成できます。 マイコン以前の時代は10進数でプリセットできるカウンタがよく使われました。 写真のMC4016Pはその一つですが、高価なICだったので実際に使用例を見た覚えはありません。 一般には標準TTL-ICの74192がよく使われていました。 マイコンで設定する場合はバイナリ・カウンタの方が便利でしょう。 その場合は74191の方が良いのですが、いまどきTTLの時代でもないので高速C-MOSの74HC191あたりを使うことになるでしょうか。 アップカウンタの74HC161を使う方法もありますが、数値の設定が直感的でないためマイコンを併用しないとわかりにくいです。
分周数が少ないうちは良いのですが、多くなると汎用ICでは必要なチップの数が増えてしまいます。 配線も面倒になることから、PLL発振器に向いた専用のプログラマブル・カウンタが作られました。 写真のTC9122PやTC9198FはそうしたICです。 これらのICも入手難になってきたことから、再び汎用のロジックICで構成する必要が出てきたのかも知れませんね。 プログラマブル・カウンタの設定や周波数の表示にマイコンの助けも借りればスマートにできると思います。今の時代ですからハードで何でも解決するのではなく、ソフトの助けも借りる方が製作はずっと容易です。
【電圧制御発振器・VCO/VCMのIC】
写真は電圧制御発振器のICです。 電圧で何を制御するのかと言えば「発振周波数」です。
電圧制御発振器の形式としては大きく分けて2つがあります。 LC共振回路の共振周波数を電圧によって変える方法と、CR回路の充放電を電圧で制御して発振周期・・・逆数を取れば周波数ですが・・・を変える方法です。 前者を一般にVCO(Voltage Controlled Oscillator)と言い、後者もVCOの一種に違いはありませんが、発振方式の違いを区別する意味からVCM(Voltage Controlled Multivibrator)と呼ばれます。
MC1648Pは多くのVCO回路例で見かけますが、それ自体は単なる発振回路のICです。 発振周波数は外付けするコイル:Lとコンデンサ:Cの共振周波数で決まります。 そのうちコンデンサ:Cの方に可変容量ダイオード(通称:バリキャップ:Vari-Cap)を使うことで電圧により発振周波数をコントロールできる発振器になります。 蛇足とは思いますが、可変容量ダイオードとは端子間に加わる逆方向電圧によって端子間の静電容量(キャパシタンス)が変化するダイオードです。電気的に容量を変えられるバリコンのような半導体です。
CD4046BEとCD74HC4046AEは位相比較器のところで既出ですが、これらのICには位相比較器のほかにVCMが内蔵さています。 内蔵VCMの周波数範囲はスタンダードC-MOSの4046Bは1MHzくらいまで、高速C-MOSの74HC4046では20MHzあたりまで発振させることができます。 しかし、その出力はお世辞にも綺麗なスペクトラムとは言えず、少なくとも無線通信のように信号の品質を要求される用途には使うことができません。
過去に実験したことがあったので初めからVCMには期待していませんでした。 しかし74HC4046のVCMなら7MHz帯のPLL発振器が簡単に作れるので、工夫でカバーできないかと新たな期待を込めてやってみました。 もちろん周波数はうまくロックしてくれます。 しかし期待は見事に打ち砕かれました。 スペクトラムを見るまでもなく、受信機(CWモード)で聞いてみれば実用にならないことがはすぐわかります。ジッターが酷いためずいぶん濁ったトーンです。 スペアナの画面とにらめっこで種々設計を変えて試したところで解決には至りません。やはり通信系の信号源としては不適当という結論が妥当でしょう。 発振させたあとでたくさん分周するといった工夫でもすればそこそこ使えるようにはなります。しかしそれでは高いの周波数の発生はできません。 従って、ここでは4046B/HC4046系のICに内蔵されたVCMは使いません(使えません)。
IC化されたVCMはまだ他にもあって、例えばモトローラのMC4024P(写真)や74シリーズTTL-ICの74124(74S124や74LS124もある)があります。 試してみると大同小異でいずれも無線通信関係に使うのは不適当でした。 高級な測定器の中にはVCMを信号源に使った例も見たことがあって、良い信号品質を得ているようなのでVCMが本質的にダメな訳ではないと思います。VCMなら磁気的な誘導を拾いやすいコイルを使わずに作れると言ったメリットもあります。 しかしLC回路のような共振器を使ったVCOより不利なことは否めないようでした。
電圧制御発振器:VCOの特性は非常に重要です。 PLL発振器の出力信号の品質をほとんど決めるることになります。 どのような回路形式が最適なのか十分吟味したくなります。 ここでは一旦おしまいにしてあらためて扱うことにします。
【複合機能のPLL用LSI】
機能説明の都合もあって、PLL発振器を構成する各部分をそれぞれ個々に扱ってきました。 しかし、特定の用途には機能の幾つかを纏めたICの方が使い易いです。
PLLが高級な通信機や測定器などに使われていたころなら、モトローラ社の特殊なPLL用ICをたくさん並べた設計でもよかったのでしょう。 しかしコスト低減や小型化には向きません。 そこでより集積度を高めた専用のICが求められるようになりました。
ちょうど、C-MOS ICが普及しはじめたころ車載CBトランシーバの輸出ブームが起こりました。 最初のころは水晶発振子を並べて多チャンネル化していました。 高価な水晶発振子は少しでも減らしたいところです。 そこでC-MOSを使ったPLL用のICが作られるようになりました。 C-MOSは消費電力が少なく高集積度の実現が容易だったからです。専用のC-MOS ICも量産効果でコストダウンできたのでしょう。 先に紹介したTC9122PやTC5081Pはそうした目的のICだった筈です。(これらは後に汎用に使われるようになりました)
さらに集積化して基準発振器や基準分周器のほか、プログラマブル・カウンタ、そして位相比較器まで内蔵するようになります。 写真のNDC40013やLC7110はCBトランシーバを目的に作られたPLL用のLSIです。写真にはありませんが沖電気のMSM5807もジャンクのPLLユニットに使われていたので有名なPLL用LSIでした。 これらはVCO回路を除きPLL発振器に必要な機能のほとんどが集積されています。 性能はだいぶ違いますがMC145163Pも類似の目的ではないでしょうか。 また、CATVの発達やFM/AMラジオのデジタル選局などの目的でPLL方式の専用LSIが登場しています。 MB1504P、NJW1508、そしてTC9256Pはそのような用途のPLL用LSIです。
こうした特定用途向けのPLL用も汎用に使えることがあります。 ただしCB用に作られた初期のC-MOS ICはプログラマブル・カウンタの上限周波数が低いのが欠点です。 せいぜい2MHzあたりまでしか扱えません。 7MHzのPLL発振器を作るのでさえプリスケーラや周波数変換が必要です。 死蔵しては勿体ないのですが回路を煩雑化させてまで使うメリットは少なそうなので見切りをつけても良いかも知れません。 逆に、MB1504やNJW1508はそれ単体でVHF〜UHFまで扱えるプリスケーラが内蔵されています。 上手に使えばマイクロ帯の機器にも活用できそうです。 何れにしてもPLL発振器の基本は同じですから設計法は押さえておきたいところです。
# まだまだ続きますが一区切りがついたところでコーヒーブレークにでも致しましょう。 今日はこのあたりにしておきたいと思います。
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PLL回路を要素に分けて見てきました。 この中で位相比較器の定数、位相比較器ゲイン:Kpはこの先の設計で必ず使います。 ほかに、VCOの定数、VCO感度:Kvも重要な数字ですが、これは次回のテーマでもあります。 回路構成を要素ごとに詳しく扱っているとなかなか先に進みませんが出来上がった設計例を並べただけではあまり応用は利きません。 「周波数を変えたかったのでカットアンドトライで何とかでっち上げた」と言うような話も聞きます。 やはり基本的なことはきちんと理解しておきたいものです。 わかって設計すればトラブルが起こった際の対処も容易になるでしょう。
以前はPLLを使って色々な発振器を作りました。 DDSモジュールが安価になったことから価値は薄れた感じもします。 しかしDDSを持ち出すほど細かい周波数ステップは必要なければPLL発振器の出番もありえます。 手持ちの部品を活用する意味からも見直したいと思っています。 DDSとコラボするような設計だってあります。 まだまだ使える技術でしょう。 次回は電圧制御発振器:VCOを集中的に扱います。 ではまた。 de JA9TTT/1
関連情報:7MHz PLL Oscillator関連のリンク
(1)イントロ編:(Part 1:こちら←リンク)
(2)PLLの機能分析編:(Part 2:いま見ているここです)
(3)PLLに向いたVCOの研究編:(Part 3:こちら←リンク)
(4)ループフィルタの設計編(最終回):(Part 4:こちら←リンク)
(つづく)←リンクfm