【ブレッドボードでSSBを:その後】
【ミキサー部を追加】
前回(←リンク)、ブレッドボード上にバラモジ(バランスド・モジュレータ:平衡変調器)を作って、さらにフィルタも通してSSBを作る所までを書いた。 SSBジェネレータと言う訳だ。 その後が気になる人などいないかも知れないが、このBlogはその続きだ。
予定通りIC-DBM:MC-1443を使った周波数変換部を追加した。 SSBフィルタの後に増幅段はない。 IC-DBM(=集積回路型二重平衡変調器・混合器)にとっては十分大きい信号が得られたからだ。 いや、むしろ制限しないと大き過ぎるほどだ。 このあたり、後々ALCを付けるなど必要かも知れない。 但し、いま想定しているモードはF1DやG1Bである。 その場合、ALCで制限されるほど大きなオーディオ信号を与えてはいけないので、ALCは異常時への対処と言った程度の話しかも知れない。
局発はDDS-IC:AD9850を使った「中華DDSモジュール」を使う予定だ。制御マイコンのプログラムは済んでいるのでBBの残りの一列に載せても良いが、取りあえず実験としてシグナルジェネレータ:SGから与えている。右上の方に見えるブレッドボード用BNCコネクタがその入り口だ。
【ミキサー部はIC-DBMで】
写真の様にミキサーにはMC-1443(NEC製)を使っている。ICの内部はギルバートセルをコアとし、バイアス回路を含む周辺回路のかなりが入っているので外付け部品は少なくて済む。他のIC-DBMでも良かったのだがこれを使った理由だ。
信号源インピーダンスと、IC-DBMの入力インピーダンスを考えてやればCR結合でも行けそうであったがトランス結合を信号と局発の両方の入力に使っている。 左側がフィルタからの信号をインピーダンス変換しながらDBMへ導くトランスだ。扱う周波数は20〜約23kHzである。 右側が局発用のトランスだ。こちらは約115kHzが通過する。写真にもコメントが入れてある。
極端な対比のトランスなら別だが、いずれもこうした小型トランスにとって支障ない周波数帯域だ。 山水(橋本電気)のSTシリーズも同じように使える物が多い。 これらのトランスのコア材はパーマロイである。秋葉原で見かけるST-XXのまがい物には硅素鋼板のヤスモノもあるようなのでご注意を。
ミキサー出力はPush-Pullに取り出しLC同調回路を負荷にしてみた。 40kHz離れたイメージ周波数及び20kHz離れた局発信号に対して、この同調回路ひとつだけではまったく不十分だがある程度の選択度は得られるから有利になる。
このあと同調回路を何段か重ねるか、良く切れるBPFを入れる予定だ。
この段階で目的である135kHz帯の信号が得られている。 良くフィルタしてやったらあとは必要な電力までひたすら増幅すれば良い。周波数は低いので増幅段数はいらない筈だ。 パワーは工事設計書通り50Wの予定だ。 D級あるいはE級のような高効率アンプは直線性が無いので不適当である。オールモード送信機の場合は信号をリニアに増幅する必要からA級またはAB級になる。終段は効率も考えねばならぬからAB級ということになる。
【MC-1443の使い方・メモ】
信号入力は下段の差動トランジスタの両ベースでインピーダンス600Ωのバランス型になっている。600Ωの終端抵抗がICに内蔵されている。 また局発入力は上段差動対のベースで、ここへは大きな振幅で局発が与えられることを前提にしているようだ。引き出されたトランジスタのベースにはベース電流を制限するよう直列に10kΩが入っている。これが比較的大きめの局発を要する理由だ。抵抗値がもう少し低ければ使い易いのだが、本来目的のために最適化されたICなので仕方あるまい。
また、局発側はバイアス回路が内蔵されていないので適当な動作点に来るよう外付けする。 おおよそ4〜6V程度のDCバイアス電圧を与えれば良い。 局発信号はそのDCバイアスに重畳させて与えることになる。 バランス調整もここで行なうべきだが左図では未検討である。比較的インピーダンスが高いので、トランス結合にしない方がやり易いかも知れない。 バイアス電圧の発生にはツェナーダイオード:RD6Eを使った回路で書いてあるが、実際には20kHzのバラモジ回路(←前回のBlogも参照)の所にDC6Vがあったのでそこから貰って来た。大した電流は流れないから貰っても支障はない。
こうしたギルバートセル型DBMはリニヤな動作範囲が狭いのが弱点である。 局発信号を十分に与えた上で、入力信号は良くレベルを管理する必要がある。 最大信号レベルは2トーンの3rd-IMDをどの程度まで許容するかによって変わって来る。 ここでは出力が4Vppあたりまでなら「使える範囲」だと判断している。(出力のIFT2次側開放電圧にて) 出力回路はシングルエンドのR負荷形式よりもずっと有利な回路形式にしている。局発は約0dBm/@600Ωである。 実測ではAF=1kHzの信号レベルが12mVppで上記出力が得られた。
本項目は自家用のメモである。 ダウンロードして役立つ人は稀な筈だ。 同じパーツが将来入手できる可能性は殆どゼロだろう。 但しはずし中古品がオークションに登場する可能性はあるかも知れない。 もちろん持っているお方は活用されたらFBだ。
【1kHzは136kHzへ】
正弦波の写真など見飽きているとは思うが、1kHzのシングルトーンを与えて出て来た136kHzがこれだ。
キャリヤ周波数20kHzのバラモジでDSBになり、20kHzのUSBフィルタを通った21kHzの信号を115kHzの局発で上側に周波数変換した結果だ。 これが目的信号と言うことになるが未だ濾過不足でスプリアスが沢山含まれている。 このあと十分なフィルタを行なってから増幅して行く。
思ったよりも大きめの信号が得られている。 飽和レベルはもっとずっと大きい所に有るが、IMDが悪化するのでそこそこの信号レベルまでに抑えて使うべきだ。 飽和ポイントは局発レベルの影響を受けるが、ある程度以上大きくなると影響の度合いは減少する。 リニヤな乗算特性から完全なスイッチング動作に移行するからだろう。その領域で使う方がIMDでは有利だ。
【シングルトーンのスペクトラム】
上記信号のスペクトラムを観測している。 一番大きな信号が目的信号だ。 他はすべてスプリアスと言うことになる。 検討途中の写真なので、スプリアスが多い感じがするが、実際にはもう少し低いレベルの所までで使うことにしている。 奇麗な正弦波に見えた所で、現実はこんなものなのである。(笑)
逆サイドの漏れが観測されているがこれはフィルタの遮断特性から見て正常なところだ。 主信号より60dB以上低いので特に支障はない。 キャリヤリークは、バランス調整した結果ノイズフロアに埋もれて殆ど見えなくなっている。 バランス状態はたいへん安定していて長期間維持できそうだ。周波数が低いので有利なのだろう。 ノイズフロアには低周波発振器の残留ノイズも含まれていて入力短絡で10dBくらい低下する。 回路は複雑そうに見えるが構成そのものはシンプルなのでノイズは少なめだ。
☆ ☆ ☆
日本の暮れは忙しいのが当たり前で、大掃除や年賀状書きが終われば、年越しの買物など一通り済まないことには新年が来ない。流石に子供のころのように餅つきはしなくなった。 いつも正月になってからゆっくりすると言うのがパターンだろう。 このお正月は急な用事が入ってしまい、実はあまりゆっくりしてもいられなかった。 正月早々バタバタしたが何とか用件も一段落した所でSSBジェネレータにミキサー部を追加実験したような訳だ。正月気分もすっかりどこかに行ってしまった。hi
やってみて、ここはやはりバラモジと同じ「理想スイッチング方式」(JA9TTT式DBMとも言う)で行けば良かったと思っている。ミキサーとバラモジは本質的に同じような働きをする。 今もギルバートセル型のIC-DBMを探すお方は多いのだが使い方はもう一度吟味した方が良い。 ここの例はまだマシな方だ。低い電源電圧用や省エネにできたDBMチップはちょっと入力オーバーするだけでかなり悲惨な結果を目にすることにもなる。 IC-DBMは安直に使えて便利だが基本性能はいま一つだとずっと思って来た。 バランスを良く取って小さめの入力信号レベルで使うと幾らかでもマシな結果が得られる。 IC-DBMの王者:SL6440(プレッシー社)のようなチップがお手軽に手に入るならギルバートセル型も面目躍如かも知れないが、すでに遠い過去のデバイスになってしまった。
・・・と言うことで,回路変更するかも知れない。 ただ、135kHzの送信機はダイナミックに変化する音声信号を扱うわけでは無い。デジタルモード用に実用性能が得られれば良いわけで、もう少し検討した上で判断したいと思っている。 この先もブレッドボードで行くのか、そろそろ纏まって来た部分はハンダ付けで行くか考える段階にありそうだ。 必要な検討が済んだら恒久化の方向へ進むのが本筋だろう。
低い周波数のこともあるが、ブレッドボードでのテストは思った以上に旨く行った。回路変更への柔軟さもあってなかなか便利であった。 HF帯ではそうも行かなくなってくるとは思うが、部分モジュール化などの方法も駆使すれば結構行けるのではないだろうか。 de JA9TTT/1
(つづく)←136kHzバドパス・フィルタの検討編にリンク
2014年1月11日土曜日
【回路】SSB on a Breadboard
【ブレッドボードでSSB】
【BBにSSBジェネレータを作ってみる】
あまり高周波向きとは言えないブレッドボードでの製作だが「SSBジェネレータ」を作ってみた。 ブレッドボードとしては少々大掛かりかも知れない。
写真のここまででSSBジェネレータにはなっているがまだ製作は途中段階だ。 ヘテロダイン・ミキサーを追加して目的の周波数帯に持ち上げる所までを搭載しようと考えている。
写真、下段の左側には12.8MHzのTCXOが載っている。 その右のTC9122Pで1/160に分周して80kHzを得る。 そのままでは細いパルス状の波形でありDuty比は50%になっていない。続いてその右のTC4013BAPでさらに1/4分周してDuty=50%の20kHzを得ている。TC9122PとTC4013BAPの間にある2SC395Aは5V系→12V系のロジックレベル変換用だ。
中段には右側にMic-Ampがありその左にバラモジ(次の写真参照)が配置されている。バラモジの左にある大きな金属の箱がSSB用フィルタだ。 下段に戻って、TCXOの左はμPD74HCU04Cで、12.8MHzのバッファ・アンプになっている。 安定度の良い12.8MHzを局発用DDS-ICモジュールに供給するのが目的だ。 写真にはデバイス名を入れておいた。 詳しく見学したいならクリックしてご覧あれ。
少々特殊な部品を使った関係で、だれでも作れるものではないので回路図は省略させてもらった。それにまだ試作途中なので完全には固まっていない部分もある。まあリクエストでもあれば考えてみましょ。hi
参考:このSSBジェネレータ製作では20kHzと言う特殊な周波数でSSB波を作っている。 短波帯(HF帯)の送信機にはそのままでは不適当である。 HF帯〜50MHz帯に向いた一般的なSSBジェネレータについては別途扱っているので参照を。(リンク→7.8MHzSSBジェネレータ)
【Balanced Modulator:バラモジ】
SN74HC4066NとLM6361Nを使った高性能バラモジ(平衡変調器)の部分だ。(正しくはその前のTL074CNの部分もバラモジに含む)ずいぶん昔になるがこのバラモジ単独の特性評価をWeb公開したことがあった。
搬送波(キャリヤ)周波数は20kHzである。搬送波だけでなく、音声信号もバランスして出力には出てこないダブル・バランス形式のバラモジだ。(DBMと云うもの) 今回、非常に低い周波数でSSBを発生させる都合からトランスやコイルを一切含まない形式のDBMを採用している。トランスやコイルがあると厄介な周波数だからだ。
この20kHzと言うのは何かの間違いではなく、キャリヤ周波数が20kHzの上側測帯波(USB)を発生させるのが目的だ。従って音声の300Hz〜3kHzは20.3〜23.0kHzにUSBとなって現れる。 非常に低い周波数でSSBを作っているが、これは135kHz帯の送信機用だからだ。将来的には475kHzの新HAMバンドにも対応予定だ。
(電話搬送用フィルタ愛好家の楽屋裏の話しかも知れないが、低い周波数のSSBフィルタをこの機会に消費するのも目的の一つだ。TC9122Pの分周数を変えてやれば16kHzのSSBフィルタも使える設計だ。さらに12kHzフィルタへは12.8MHz→15.36MHzの交換で対応可能だ。 ほか100kHzや128kHzのメカフィルにも対応できるが、今回の目的には周波数関係から旨くない。もちろん異なる用途へなら支障ない。 TC9122Pの分周数を切り替えて400kHzや800kHzのキャリヤ周波数でも試してみた。そう言う実験にブレッドボードはうってつけだ。かなり高い周波数までシビアなバラモジ回路が支障無く動作するので455kHzや500kHzのSSBフィルタも行ける。ここらで裏話は終わり)
このあと、ヘテロダインして135kHz帯でF1DやG1Bモードでオンエアするのが最終目標である。或はDC入力でキャリヤ周波数でA1Aを得る。(その場合、SSBフィルタはパスする)
135kHz帯は音声SSB(J3E)のオンエアは認められていないが、SSB送信機と同等な回路構成としてPCからトーン信号を与えてデジタル通信モードでオンエアする。
【バラモジのアウトプット】
バラモジの出力、すなわちLM6361Nのアウトプット波形である。 マイクアンプに1kHzのシングルトーンを与えている。
まだフィルタを通っていないので、バラモジの出力はDSBであって19kHzと21kHzのツートーン状波形になっている。 アナログスイッチ:74HC4066Nを使ったDBMであり、矩形波スイッチングしているので写真のような波形になる。 スペクトルを見ると多数の高調波が含まれるが、この後でSSBフィルタを通過するからそれらは除去される。
このバラモジは非常にダイナミックレンジが広く約8Vppの出力でも3次のIMDは-60dB以下である。また、半分の4Vppにおける3次のIMDは概略-80dB以下の高性能が得られる。 むしろ、後に続くフィルタ内部で起こるIMDの方が問題なくらいだ。
【20kHzのSSBフィルタ】
キャリヤ周波数が20kHzで、-3dB通過帯域幅は約3.4kHzと言うSSBフィルタである。少し広めだが音声では使わないのでまったく支障はない。
本来の使用目的は、電話回線の多重搬送用であった。 かつてアナログ電話の時代には、加入者の音声を多重化し1本のケーブルで多数の通話を伝送していた。 その多重化の過程でSSB(USB)を作っていたフィルタである。
写真のフィルタは、送話回路用のものでSSBの発生に使うものである。同等に使えるものとして受話回路用もあったがIn/Outインピーダンスの関係で送話回路用の方を使った。 内部はポットコアを使ったQの高いコイルと同じくHigh-Qなスチロール・コンデンサで構成されたLCフィルタである。(特性は次項)
【20kHzフィルタの周波数特性】
写真は最適インピーダンスで終端しフィルタ単独で測定した結果だ。 画面は中心周波数が20kHzでスパンは10kHzである。
このフィルタは20kHzのキャリヤ周波数に対してUSB側の側帯波(サイドバンド)を取り出すためのものだ。 従って、LSB側に相当する画面の左側が良く切れる特性になっている。 通過域に対して、LSB側は-60dB程度なので送信機用としてはまず十分であろう。
実験では、インピーダンス比の関係で入出力の方向を逆に使っている。 もちろん正しく終端した状態なら信号方向が逆でも特性の違いは見られない。
【ツートーン波形】
写真はマイク入力端子から約500Hzと約2kHzのツートーンを与えたときにフィルタの出力に現れる波形を示している。
バラモジの出力にキャリヤ漏れは感じられなかったが、更にSSBフィルタを通過することによって十分に減衰されるから完全なSSBになっている。
フィルタの出力で最大2Vppくらい得られるので十分な信号レベルだ。 続くヘテロダイン・ミキサーの前にアンプは必要ないだろう。ミキサーにIC-DBMを使うならアッテネータが必要なくらいだ。
参考:SSB送信機の2トーン試験に用いる低周波信号は1,000Hzと1,575Hzの2波が標準的。 ただし、必要に応じフィルタの周波数特性により変更すべきである。それぞれの高調波が重ならぬように留意のこと。
【ヘテロダイン・ミキサーはIC-DBM】
20kHzで発生したSSB信号を135.7〜137.8kHzのハムバンドに周波数変換する必要がある。
局発はCW(A1A)モードを考慮し115.7〜117.8kHzをDDSによって発生し、20kHzを上側へヘテロダインする。(逆ヘテロダインしてLSBに転換するのも可能。その場合は155.7〜157.8kHzとなる) 何分バンド幅が狭いのでオフバンドしないような配慮は必須である。特に変調を掛ける際にはトーン周波数を考慮しなくてはならない。 取りあえずDDSをコントロールするマイコン側でソフトウエア的な制限を設けてオフバンドを防止している。 CW(A1A)ならともかく、WSPRのような半ばオンエア周波数が決まったデジタルモードならオフバンドの危険はずっと少ない。
まだ製作過程にある。ブレッドボードにはヘテロダイン・ミキサー部まで載せる予定だ。ミキサーには写真のDBM-IC:MC-1443を使う方向で検討している。 ここは20kHzのバラモジと同じく74HC4066N+LM6361Nでも良いが、コンパクトに組めるIC-DBMで行こうと思っている。
MC-1443はハイブリッドICで心臓部は典型的なギルバートセル型DBMであり周辺のバイアス回路などが集積されているので外付け部品が少なくて便利なものだ。 ジャンクから採取した特殊なICなので入手は難しい。詳細は省かせてもらう。
外付け部品は増えるがMC1496G/Hなどで代替すれば同じようにできる。SN76514NやSN16913Pでも良いのだが、それらは既に太古のデバイスだ。型番を書く意味がなくなっている。 現行品のNJM2594Mを使うかTA7358P/APを工夫する手ならアリかも知れない。うまく低い周波に対応できるトランスが自作できるようならQuad-Diode-DBMでも良い。
☆ ☆ ☆
オモテがいつまでも年賀のままと言う訳にも行かない。予定日より少々前倒で暮れから正月あたりの実験テーマを紹介してみた。 ブレッドボードで「SSBジェネレータが作れます」と言ったところでキャリヤ周波数はたったの20kHzだし、ジェネレータから出たSSBがヘテロダインされる先も135kHz帯なのでは「高周波」じゃなくって、殆ど低周波のようなもの。 だから旨く行って当たり前だろうと影口が聞こえてきそうだ。(笑)
455kHz帯は言うに及ばず、さらにもっと高い周波数でSSBを作ることもできそうだ。その時には部品レイアウトやアースラインの引き方の工夫、さらにはシールドするなどの細工が必要だと思う。 それでも案外高性能なものまでブレッドボード上に作れると思うので、まずはやって見たら面白い。 あわよくば,ブレッドボードのままでSSBにオンエアだってできてしまいそうだ。 あとからブレッドボード・パターンのユニバーサル基板にそっくり移植すれば少々スペース効率は悪いかも知れないが立派な(恒久的な)作品になる。
☆ ☆
Blogでブレッドボードを扱ったら、昔のことを思い出したと言うメールを頂いた。学生時代に目にした「部品の足をカットしないモヤシ(カイワレ大根?)配線」を思い出したそうだ。 ここではご覧のように部品の足は必要最低限+α程度に切り詰めている。 ブレッドボードは仮設回路かもしれないが部品のリード線は最適寸法にカットし長いままにしないのが良い結果を得るコツだ。これはRF回路に限らない。「もったいない」などと『モヤシ』を栽培するとかえって旨く行かない。
パーツのリード線を短く切るのは勿体ないと感じるなら、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れを用意しておこう。 繰り返し使うようにすれば経済的だし再利用の際はリードカットの手間も省けて一石二鳥と言うものだ。 ブレッドボード用にリード線カットした部品はハンダ付け実装にはまだ長過ぎるくらいだ。恒久作品への再活用にも支障はない。
いまやDSPにより目的周波数で直接SSBが得られる時代だ。つまらんテーマで暇つぶし用コンテンツにはなったと思うが、見ているばかりでなくご自身でも何かやってみて欲しい。 今年はBlogとかサイトを徘徊するばかりの受け身姿勢は返上し積極的に手を動かしては如何か? ブレッドボードならハンダ付けが「へたくそ」でも何とでもなる。 自らも作ることで貴方自身で何かを発見して欲しい。 何にもやらないんじゃこのBlogなんか見に来る意味ぜんぜんなし。『見てるだけ』の人はどこかヨソにでも行って欲しいな!(爆笑) de JA9TTT/1
(つづく)←ミキサー部を載せる続編にリンク
【BBにSSBジェネレータを作ってみる】
あまり高周波向きとは言えないブレッドボードでの製作だが「SSBジェネレータ」を作ってみた。 ブレッドボードとしては少々大掛かりかも知れない。
写真のここまででSSBジェネレータにはなっているがまだ製作は途中段階だ。 ヘテロダイン・ミキサーを追加して目的の周波数帯に持ち上げる所までを搭載しようと考えている。
写真、下段の左側には12.8MHzのTCXOが載っている。 その右のTC9122Pで1/160に分周して80kHzを得る。 そのままでは細いパルス状の波形でありDuty比は50%になっていない。続いてその右のTC4013BAPでさらに1/4分周してDuty=50%の20kHzを得ている。TC9122PとTC4013BAPの間にある2SC395Aは5V系→12V系のロジックレベル変換用だ。
中段には右側にMic-Ampがありその左にバラモジ(次の写真参照)が配置されている。バラモジの左にある大きな金属の箱がSSB用フィルタだ。 下段に戻って、TCXOの左はμPD74HCU04Cで、12.8MHzのバッファ・アンプになっている。 安定度の良い12.8MHzを局発用DDS-ICモジュールに供給するのが目的だ。 写真にはデバイス名を入れておいた。 詳しく見学したいならクリックしてご覧あれ。
少々特殊な部品を使った関係で、だれでも作れるものではないので回路図は省略させてもらった。それにまだ試作途中なので完全には固まっていない部分もある。まあリクエストでもあれば考えてみましょ。hi
参考:このSSBジェネレータ製作では20kHzと言う特殊な周波数でSSB波を作っている。 短波帯(HF帯)の送信機にはそのままでは不適当である。 HF帯〜50MHz帯に向いた一般的なSSBジェネレータについては別途扱っているので参照を。(リンク→7.8MHzSSBジェネレータ)
【Balanced Modulator:バラモジ】
SN74HC4066NとLM6361Nを使った高性能バラモジ(平衡変調器)の部分だ。(正しくはその前のTL074CNの部分もバラモジに含む)ずいぶん昔になるがこのバラモジ単独の特性評価をWeb公開したことがあった。
搬送波(キャリヤ)周波数は20kHzである。搬送波だけでなく、音声信号もバランスして出力には出てこないダブル・バランス形式のバラモジだ。(DBMと云うもの) 今回、非常に低い周波数でSSBを発生させる都合からトランスやコイルを一切含まない形式のDBMを採用している。トランスやコイルがあると厄介な周波数だからだ。
この20kHzと言うのは何かの間違いではなく、キャリヤ周波数が20kHzの上側測帯波(USB)を発生させるのが目的だ。従って音声の300Hz〜3kHzは20.3〜23.0kHzにUSBとなって現れる。 非常に低い周波数でSSBを作っているが、これは135kHz帯の送信機用だからだ。将来的には475kHzの新HAMバンドにも対応予定だ。
(電話搬送用フィルタ愛好家の楽屋裏の話しかも知れないが、低い周波数のSSBフィルタをこの機会に消費するのも目的の一つだ。TC9122Pの分周数を変えてやれば16kHzのSSBフィルタも使える設計だ。さらに12kHzフィルタへは12.8MHz→15.36MHzの交換で対応可能だ。 ほか100kHzや128kHzのメカフィルにも対応できるが、今回の目的には周波数関係から旨くない。もちろん異なる用途へなら支障ない。 TC9122Pの分周数を切り替えて400kHzや800kHzのキャリヤ周波数でも試してみた。そう言う実験にブレッドボードはうってつけだ。かなり高い周波数までシビアなバラモジ回路が支障無く動作するので455kHzや500kHzのSSBフィルタも行ける。ここらで裏話は終わり)
このあと、ヘテロダインして135kHz帯でF1DやG1Bモードでオンエアするのが最終目標である。或はDC入力でキャリヤ周波数でA1Aを得る。(その場合、SSBフィルタはパスする)
135kHz帯は音声SSB(J3E)のオンエアは認められていないが、SSB送信機と同等な回路構成としてPCからトーン信号を与えてデジタル通信モードでオンエアする。
【バラモジのアウトプット】
バラモジの出力、すなわちLM6361Nのアウトプット波形である。 マイクアンプに1kHzのシングルトーンを与えている。
まだフィルタを通っていないので、バラモジの出力はDSBであって19kHzと21kHzのツートーン状波形になっている。 アナログスイッチ:74HC4066Nを使ったDBMであり、矩形波スイッチングしているので写真のような波形になる。 スペクトルを見ると多数の高調波が含まれるが、この後でSSBフィルタを通過するからそれらは除去される。
このバラモジは非常にダイナミックレンジが広く約8Vppの出力でも3次のIMDは-60dB以下である。また、半分の4Vppにおける3次のIMDは概略-80dB以下の高性能が得られる。 むしろ、後に続くフィルタ内部で起こるIMDの方が問題なくらいだ。
【20kHzのSSBフィルタ】
キャリヤ周波数が20kHzで、-3dB通過帯域幅は約3.4kHzと言うSSBフィルタである。少し広めだが音声では使わないのでまったく支障はない。
本来の使用目的は、電話回線の多重搬送用であった。 かつてアナログ電話の時代には、加入者の音声を多重化し1本のケーブルで多数の通話を伝送していた。 その多重化の過程でSSB(USB)を作っていたフィルタである。
写真のフィルタは、送話回路用のものでSSBの発生に使うものである。同等に使えるものとして受話回路用もあったがIn/Outインピーダンスの関係で送話回路用の方を使った。 内部はポットコアを使ったQの高いコイルと同じくHigh-Qなスチロール・コンデンサで構成されたLCフィルタである。(特性は次項)
【20kHzフィルタの周波数特性】
写真は最適インピーダンスで終端しフィルタ単独で測定した結果だ。 画面は中心周波数が20kHzでスパンは10kHzである。
このフィルタは20kHzのキャリヤ周波数に対してUSB側の側帯波(サイドバンド)を取り出すためのものだ。 従って、LSB側に相当する画面の左側が良く切れる特性になっている。 通過域に対して、LSB側は-60dB程度なので送信機用としてはまず十分であろう。
実験では、インピーダンス比の関係で入出力の方向を逆に使っている。 もちろん正しく終端した状態なら信号方向が逆でも特性の違いは見られない。
【ツートーン波形】
写真はマイク入力端子から約500Hzと約2kHzのツートーンを与えたときにフィルタの出力に現れる波形を示している。
バラモジの出力にキャリヤ漏れは感じられなかったが、更にSSBフィルタを通過することによって十分に減衰されるから完全なSSBになっている。
フィルタの出力で最大2Vppくらい得られるので十分な信号レベルだ。 続くヘテロダイン・ミキサーの前にアンプは必要ないだろう。ミキサーにIC-DBMを使うならアッテネータが必要なくらいだ。
参考:SSB送信機の2トーン試験に用いる低周波信号は1,000Hzと1,575Hzの2波が標準的。 ただし、必要に応じフィルタの周波数特性により変更すべきである。それぞれの高調波が重ならぬように留意のこと。
【ヘテロダイン・ミキサーはIC-DBM】
20kHzで発生したSSB信号を135.7〜137.8kHzのハムバンドに周波数変換する必要がある。
局発はCW(A1A)モードを考慮し115.7〜117.8kHzをDDSによって発生し、20kHzを上側へヘテロダインする。(逆ヘテロダインしてLSBに転換するのも可能。その場合は155.7〜157.8kHzとなる) 何分バンド幅が狭いのでオフバンドしないような配慮は必須である。特に変調を掛ける際にはトーン周波数を考慮しなくてはならない。 取りあえずDDSをコントロールするマイコン側でソフトウエア的な制限を設けてオフバンドを防止している。 CW(A1A)ならともかく、WSPRのような半ばオンエア周波数が決まったデジタルモードならオフバンドの危険はずっと少ない。
まだ製作過程にある。ブレッドボードにはヘテロダイン・ミキサー部まで載せる予定だ。ミキサーには写真のDBM-IC:MC-1443を使う方向で検討している。 ここは20kHzのバラモジと同じく74HC4066N+LM6361Nでも良いが、コンパクトに組めるIC-DBMで行こうと思っている。
MC-1443はハイブリッドICで心臓部は典型的なギルバートセル型DBMであり周辺のバイアス回路などが集積されているので外付け部品が少なくて便利なものだ。 ジャンクから採取した特殊なICなので入手は難しい。詳細は省かせてもらう。
外付け部品は増えるがMC1496G/Hなどで代替すれば同じようにできる。SN76514NやSN16913Pでも良いのだが、それらは既に太古のデバイスだ。型番を書く意味がなくなっている。 現行品のNJM2594Mを使うかTA7358P/APを工夫する手ならアリかも知れない。うまく低い周波に対応できるトランスが自作できるようならQuad-Diode-DBMでも良い。
☆ ☆ ☆
オモテがいつまでも年賀のままと言う訳にも行かない。予定日より少々前倒で暮れから正月あたりの実験テーマを紹介してみた。 ブレッドボードで「SSBジェネレータが作れます」と言ったところでキャリヤ周波数はたったの20kHzだし、ジェネレータから出たSSBがヘテロダインされる先も135kHz帯なのでは「高周波」じゃなくって、殆ど低周波のようなもの。 だから旨く行って当たり前だろうと影口が聞こえてきそうだ。(笑)
455kHz帯は言うに及ばず、さらにもっと高い周波数でSSBを作ることもできそうだ。その時には部品レイアウトやアースラインの引き方の工夫、さらにはシールドするなどの細工が必要だと思う。 それでも案外高性能なものまでブレッドボード上に作れると思うので、まずはやって見たら面白い。 あわよくば,ブレッドボードのままでSSBにオンエアだってできてしまいそうだ。 あとからブレッドボード・パターンのユニバーサル基板にそっくり移植すれば少々スペース効率は悪いかも知れないが立派な(恒久的な)作品になる。
☆ ☆
Blogでブレッドボードを扱ったら、昔のことを思い出したと言うメールを頂いた。学生時代に目にした「部品の足をカットしないモヤシ(カイワレ大根?)配線」を思い出したそうだ。 ここではご覧のように部品の足は必要最低限+α程度に切り詰めている。 ブレッドボードは仮設回路かもしれないが部品のリード線は最適寸法にカットし長いままにしないのが良い結果を得るコツだ。これはRF回路に限らない。「もったいない」などと『モヤシ』を栽培するとかえって旨く行かない。
パーツのリード線を短く切るのは勿体ないと感じるなら、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れを用意しておこう。 繰り返し使うようにすれば経済的だし再利用の際はリードカットの手間も省けて一石二鳥と言うものだ。 ブレッドボード用にリード線カットした部品はハンダ付け実装にはまだ長過ぎるくらいだ。恒久作品への再活用にも支障はない。
いまやDSPにより目的周波数で直接SSBが得られる時代だ。つまらんテーマで暇つぶし用コンテンツにはなったと思うが、見ているばかりでなくご自身でも何かやってみて欲しい。 今年はBlogとかサイトを徘徊するばかりの受け身姿勢は返上し積極的に手を動かしては如何か? ブレッドボードならハンダ付けが「へたくそ」でも何とでもなる。 自らも作ることで貴方自身で何かを発見して欲しい。 何にもやらないんじゃこのBlogなんか見に来る意味ぜんぜんなし。『見てるだけ』の人はどこかヨソにでも行って欲しいな!(爆笑) de JA9TTT/1
(つづく)←ミキサー部を載せる続編にリンク
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