【HAM:ブレッドボードに作った2球送信機】
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ブレッドボードからオンエア】
ブレッドボードに作った受信機でHAMバンドを聞いてみるというのは何回かやっています。 実用品とは言いませんがもう少し工夫すれば交信に使うこともできそうです。
しかし、部分的な回路ならともかく、送信機全体をブレッドボード上に作ったことはありませんでした。 たぶん、QRP(小電力)な送信機ならブレッドボード上にすべて作れるでしょう。半導体を使って数Wの送信機なら十分な可能性があります。
色々な工作をしていて、いつかブレッドボードから波を出してQSO(無線交信)してみたいと思うようになりました。 半導体も候補ですが、しばらく前に紹介した
ブレッドボード用の真空管ソケット(←リンク)を使って「真空管の送信機」を作ってみましょう。 微弱電波のワイヤレスマイクではなくて、ごく普通にHAMの交信ができるような「ちゃんとした送信機」を目指します。 目標はズバリ「10局と交信すること」にします。 できたらスケジュールQSOではなくて任意の相手局との交信が目標です。
余談:いきなり余談ですが、大昔のHAMの自作送信機に木板の上に組み立てる『まな板セット』と言うのがありましたね。 米国流に言えば『ブレッドボード・セット』なのでしょう。 そちらがたぶん元祖の『ブレッドボード送信機』ですね。 ですから今風のBB送信機もアリでしょう。(笑)
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写真はそうして製作した7MHzのCW送信機です。(CW:無線電信のこと) 水晶発振に電力増幅を付加した2ステージのCOPA形式という本格派(?)です。 キーイングは「カソードキーイング式」にしました。
(COPA=Crystal Oscillator and Power Amplifier.OMさんはコッパ型と呼んでいたとか)
また、今どきですから縦振れの電鍵専用ではなく、Keyer(エレキー)が使えるようにします。 MOS-FETを使ったキーイング回路を設けました。 これで快適な交信ができます。キーヤーが使えるとごく普通にQSOを楽しめますね。
気になる出力パワーですが、Po=1.2Wくらいです。 これは電源の都合でプレート電圧が200V弱に抑えられたからです。 250V以上の電圧を掛けてやれば3Wくらい出るでしょう。 しかし、実際にオンエアしてみると1W少々でもずいぶん飛んでくれました。 経験から3Wになっても劇的な変化はないと思うのでそのまま1W少々で行くことにしました。
(注:電源は前のBlogで紹介したDC-DCコンバータではありません)
小電力とは言えワイヤレスマイクの範囲を外れています。 無免許でのオンエアはできません。 必要に応じて無線設備の変更も提出します。当局は「第5送信機」として製作しました。 4級局は「無線電信」にオンエアできないので、これを機会に3級アマ無線技師に挑戦されてはいかがでしょうか。 こんなシンプルな送信機でも国内局を相手にかなりQSOできます。じっくり取り組めばDXができるかも知れません。 「無線電信」はQRPに有利です。
真空管のことになるとやたらとウルサイお方がおられます。hi hi いろいろな薀蓄(うんちく)も結構ですが、まずは手を動かしてみませんか? QRPなプロジェクトならシャシ加工などせずブレッドボード上で実現できます。 実際に作った回路を前にしてこそわかる面白さがあります。 手作りの真空管送信機でQSOできたならHAMライフに新たな1ページが加わるでしょう。
もちろんQRPや真空管にご興味がなければ早々にお帰りが宜しいです。 何を試して結果はどうなったのかと言う自分用の製作メモのようなものです。この先はお勧めしません。どうぞ貴重な時間を無駄にされませんように。
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7MHz2球QRP送信機:回路図】
むかし手に入れておいたレア物の真空管と貴重な真空管用のパーツをたくさん投入して入念に作りました。
・・・と言うのではBlogで公開する意味はあまりないように思うのです。 貴重な部品を持っていなければ真似ることさえできません。 自慢話がしたい訳ではなくて、できたら同じように製作と交信を楽しんでいただきたいのです。手作り送信機で2-way交信ができたならとても素晴らしいです。 なるべくありふれたものを使い可能であれば代替手段も考えておきたいものです。 入手容易な部品を使って、できるだけ財布の負担にならないよう頑張ります。(笑)
まず、真空管ですが、オーディオの趣味と競合しないような球を使います。 彼らは「見てくれ」や「銘柄」にも拘りますが、HAMは「実利」の方に目を向ければ安く上がるわけです。 具体的には水晶発振が3AU6で、終段電力増幅は4M-P12です。 いずれもトランスレス式TV用に作られた真空管です。もちろんTV以外の用途に使っても何の支障もありません。 しかしヒータ電圧が中途半端な真空管は人気がありませんね。 どちらもオーディオ界では猫またぎな球ですから、あれば廉価で手に入ります。 言うまでもありませんが、6.3Vヒータの同等管でもOKです。 3AU6の代わりに6AU6や6BA6を使えば良く、4M-P12の方は6AR5や6AQ5ならそのまま同じ回路でOKです。 ヒータ回路の配線を少しだけ変更してやれば簡単に代替できます。
まだまだ選択肢はたくさんあって決めるのに困るほどでした。この程度の送信機なら使えそうな素材(真空管)はいくらでもあります。 なお、トランス付き用の球ならあるが、レス用の球は持っていないので同じものを手に入れよう・・・と言うのでは本末転倒です。 お手持ちのトランス付き用の球を使ってやってください。使われるのを待ってますよ。(笑)
9ピンのmt管にも候補はあるのですが、作りやすさの点から7ピンのmt管を選びました。 これはブレッドボードに作る都合です。 9ピンのソケットと変換基板はそれだけでブレッドボードをかなり占有して作りにくそうでした。 もちろんレイアウトなど旨く工夫すれば9ピンの球も使えると思います。 (参考:現在はピンを片側に引き出すタイプの9pin用変換基板も売られています。それを使うと作りやすくなります)
水晶発振子は7003kHzのHC-49/U型です。 7003kHzはJAのQRPerがよくオンエアしている周波数です。 この水晶発振子はJL1KRA中島さんに頒布して頂いたものです。 残念ながら、7003kHzの頒布は終了したようです。
7003kHzは例えば、
エヌエスアイ、
アロー電子や
三田電波などの水晶屋さんに特注する必要があります。 形状の選択が可能なら、HC-6/U型が良く、次善としてはHC-49/Uにします。なるべくなら小型のHC-49/USは避けるべきです。
海外への特注では
Hy-Q International(豪)、
QuartSLab(米)、
Andy Fleischer(独)などがあります。JAから注文の可否は各自で確認を。
既製品では「
ラジオ少年」に7005kHzほかCWバンド用があります。 7003kHzに拘らなければ良さそうです。 ほかにはAliexpressで検索すると7000kHzが安価に入手できるので試してください。 7000kHzならみなさんお馴染みの「
サトー電気」でも売っています。
7003kHzの水晶がベストですが、もし手に入らなければ7000kHzの水晶発振子で試せます。 トリマ・コンデンサ:C5の調整で7003kHz付近まで調整できると思います。(個体差あり・オフバンド要注意)
そのほか、送信機らしい部品もありますがキーパーツは後ほど写真入りで扱います。 いずれにしても入手できないような部品は使っていません。 真空管用の部品を持っていなくても球でオンエアするプロジェクトに仲間入りできます。(もし球の入手で行き詰まったなら連絡してください。使える物を差し上げます)
参考:プレート電圧250V以上で動作させるときの変更点
(1)発振部(V1):スクリーングリッドのR3:12kΩを33kΩ/3Wに変更。 電源回路のドロッパ抵抗のR13:1kΩを10kΩ/5Wに変更する。
(2)終段電力増幅部:スクリーン・グリッドのR6:10kΩ/3Wに変更する。
(3)コンデンサを電源電圧に見合ったものに交換する。
以上の変更で真空管を安全に使いながらパワーアップ(3〜5Wくらいか?)できます。
# ワット(W)数の大きな抵抗器は『酸化金属皮膜型』を使うと小型化され、配置・配線が容易です。ブレッドボード向きです。 ただし小型な分だけ高温化するので注意します。
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真空管選びも楽し!】
未使用・新品の真空管でも良いのですが、ジャンク箱に無造作に投げ込んであったトランスレス式TV用の球を使うことにします。半ば打ち捨てられていたような中古品ばかりです。
トランスレス式のTVはヒーター回路を直列に接続してちょうど100Vで点灯できるように考えられていました。 そのためヒータ電圧はトランス付き回路用とは異なっています。
トランス付き回路用の真空管はヒータ電圧が統一してあって6.3Vや12.6Vが標準的です。 トランスレス用ではヒータ電圧ではなく、ヒータ電流を合わせるためにヒータの電圧は3.15Vだったり4.7Vだったり様々です。 そのため、使いにくいことから管球オーディオの世界では敬遠されてしまい人気がありません。 商品価値もないのであまり出回っていないかも知れませんが、もしあれば持て余し気味でしょう。 しかしヒータ電圧/電流以外の性能は同じなので使わないのは勿体ないです。 ご近所の球好きOMさんからお安く譲って貰えるかも。たっぷり薀蓄を聞くはめになるかもしれませんが。(爆)
発振管に3AU6を使ったのは訳があります。 TV用でよく見かける3CB6の方が水晶発振回路には向いているのですがシールド付きソケットを使うべきです。 ブレッドボード用のソケットでシールドを施すのは少し厄介なので「管内シールド」が付いている球を選びました。 同じように管内シールド付きの3BA6や3BD6も候補なのですが、3AU6がいちばんたくさん見つかりました。 ほかに3DT6も数本あったのですが元々gmが小さいためイマイチでした。(3DT6も5極管ですがFMの検波管なのでそもそも適当でない)
シールド筒を付けて使いたいところですが、あとで交換してみたら(6)3CB6や(6)3BZ6でも取り敢えず(シールドなしでも)使えそうでした。 発振管を交換して遊ぶには2番ピンを直接GNDせず、7番ピンと結んでおきます。 サプレッサ・グリッドをカソードに結んでおきます。 そのようにすれば上記に挙げたどの球も差し替えて試せます。
終段管は4M-P12あるいは5AQ5を使います。 発振管に使った3AU6のヒータ電流は600mAです。 同じく600mAヒータのパワー管を使って電流値を合わせてやればヒーターを直列にして点灯できます。 4M-P12と5AQ5のいずれもヒータ電圧は4.7Vで600mAが規格です。 3AU6は3.15Vで600mAなので直列にして合計で7.85Vを与えます。(電圧は±10%くらいなら支障ありません) わずか2球の送信機です。 電圧可変型の(直流の)安定化電源で点灯すれば変則的なヒータ電圧も問題になりません。
4M-P12という球はことに人気がありません。 N社の真空管ハンドブックには歪みが多いのでハイファイ(Hi-Fi)には向かないと書いてあるそうです。 無線電信(CW)の終段電力増幅はそもそもC級増幅なので歪みなんか気にしません。 単一のキャリヤ信号の増幅ですからSSB波の増幅のようにIMDを意識する必要はありません。 あとは高調波対策をしっかり行なえば心配無用です。
いずれもお払い箱になったTV出身の「抜き球」ですから、一応チェックしてから使います。 何だか真空管選びだけで半日くらい遊べました。(笑)
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足ピン曲がりを直す】
「抜き球」は足ピンが曲がっていることが多いものです。 ひどく曲がったピンはある程度なおしてから、真空管試験機に付属の「ピンストレートナー:ピン矯正器」で曲がりを取ってやります。 そうしないと真空管ソケットを痛めてしまいます。
写真は4M-P12を挿入して矯正する様子です。 矯正してやるとソケットにスムーズに刺すことがきます。 真っすぐそうに見えても意外に曲がっているので、直してから刺すとすんなり行きます。
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TV-7/Uでチェック!】
3AU6はヒータ電圧のみ3Vの位置にして、あとは6AU6と同じ条件でテストできます。
しかし、4M-P12はJIS名称が付いた純粋に国産の球ですから米国製の真空管試験機に付属のテストデータ一覧表には載っていません。
そこで、4M-P12の規格を比較すると6AR5と類似であることがわかります。 足ピンの接続も同じです。 もともと6AR5の廉価版といった位置付けなのでしょう。 バイアス電圧も同じ条件なので、あとはヒータ電圧のみ5Vの位置にして6AR5の設定でテストすれば合否判定できます。(JIS名称の球とTV-7/Uに関しては
AJR林さんのサイトに詳しいです)
そのようにして3AU6を4本、4M-P12を4本、5AQ5を3本ほど測定したのですが、ややgmが落ちた3AU6が1本見つかっただけで他はいずれも十分な性能が残っていました。実際にはgm落ちの3AU6も使えました。 たぶんその辺に落ちていたような中古の球も十分使えます。 結果的に
真空管試験機なんか持ち出す必要はまったくなかったようです。 ゲッター(頭部の黒光りした部分:真空を維持するためのもの)が空気漏れで白くなっていなければ使えるでしょう。
【
こんな感じにできました】
製作途中の写真は撮り忘れました。 一気に完成状態です。 実際の製作工程では、まずは水晶発振回路から製作し単独でテストしました。 その後、終段回路を組み立てたのですが出力部分のタンク回路(LC共振回路)のところは2種類試しています。
単純な並列共振回路のコイルに結合リンクを巻いた形式(写真のもの)と本格的な送信機で多く見かけるπマッチ回路の2種類です。 いずれも負荷Q=12の設計で、比較してみると違いはなさそうでした。 そのため、部品数が少なくて済む写真のような「並列共振+リンクコイル」のタンク回路形式にまとめました。
トロイダルコアは一次側と二次側リンク巻線の結合がかなり密なので、概ね巻き数比(の二乗)でインピーダンス変換されると考えて良いようです。 昔のような空芯コイルにリンクでは結合が疎なので単純な巻き数比ではインピーダンス変換されません。 そのため最適なポイントを求めるためにリンクの巻き数だけでなく、位置を変えて結合状態を変えてみるなどの調整を要しました。 その点、トロイダルコアを使うと有利です。
ブレッドボードに作るのは大変そうに見える真空管回路ですが意外に簡単です。 こうした送信機の部品数はわずかです。 真空管回路はインピーダンスが高いので幾らか注意は必要です。 必要以上に配線を引き回さず、最短距離でバイパスコンデンサを付けるなどすれば自己発振など起こさず安定に動作します。
なお、このブレッドボードの底板(=黒い金属板)は回路のGND側と接続してあります。 底板を浮かせたままだと発振など不安定な現象に悩まされるでしょう。 高周波回路で使うためには必ずGNDしておきます。 底板のないブレッドボードは高周波回路には向かないので、適当な金属板を付けると良いです。
本格的(?)な真空管回路なので200V以上の電圧を扱います。 ブレッドボードにその程度の耐圧はありますので心配はいりません。 しかしうっかり触たらシビれる電圧なので感電には注意を。 発熱が多くなりそうな抵抗器は予めリード線を長めにしておきブレッドボードの表面より5〜10mmくらい浮かせます。 使用するコンデンサは耐圧に注意します。 ヒーター回路のバイパス用は50V耐圧で十分ですが、プレート回路やスクリーン・グリッド回路のバイパスコンデンサは耐圧が必要です。 ここでは0.0047μFで500V耐圧の円盤型セラミックコンデンサを多用しました。これは0.01μFでも良いです。 B+の電圧は200Vですから250V耐圧のコンデンサでも良いでしょう。 結合回路や同調回路など高周波電圧が掛かる部分にはディップド・マイカ(シルバード・マイカ)コンデンサを使用しています。
以下、各部分を詳しく見て行きます。
【
水晶発振段】
5極管の3AU6を使ったピアースPG型水晶発振回路です。 この発振回路では、水晶発振子に大きめの並列容量を入れてやらないと高めの周波数で発振するようです。 並列容量なしだと7003kHzの水晶で7010kHzあたりで発振しました。 並列に15〜20pF入れてちょうど7003kHzになりました。
使った水晶発振子に固有の現象かと思ったのですが、他の周波数の水晶片でも高めに発振します。 そのため、並列容量を加減すれば7000kHzの水晶発振子を使って7003kHzを得ることができます。 7003kHzの既製品はないので水晶メーカーに特注しなくてはなりませんが、7000kHzの水晶発振子なら市販の規格品が手に入ります。 しかし気分的には7003kHzの水晶を使いたいですね。hi 回路的に G-K間の容量不足かと思ったので試したのですが、そう言う訳でもないようです。水晶発振子と並列に容量を入れるのが効果的でした。
無調整型の発振回路なので1.9〜14MHzあたりまで支障なく発振します。(基本波の水晶発振子を使う) 従って、終段電力増幅回路の同調回路(タンク回路)をバンドごとに用意してやれば、マルチバンドの送信機にできます。
# シンプルな送信機には水晶発振式がピッタリです。 しかし水晶の入手性は悪くなってきました。 また周波数が固定されては不便なので本格的にオンエアするならVFOが欲しくなります。 半導体とのハイブリッドになりますが、PLLやDDSで作るとFBです。 このあたりはまた機会でもあればやりましょう。
【コラム】7003kHzという周波数:(QRP Wikiも参照を)
一般的に言えば7003kHzはDX用の周波数です。バンドがオープンしていないときならQRPで国内QSOも悪くないと思いますが、開けてきたら遠慮しておく方が良いでしょう。 DXerは微弱な波に耳を集中していてQRPでも邪魔になります。 なお、米国では7040kHzがQRPの周波数のようですが、JAでは使われていません。 Novice局用に7110kHzと言うのもあるそうです。
【
終段電力増幅とタンク回路】
5極管の4M-P12を使った電力増幅部です。 真空管を使った終段電力増幅回路では決まってエアーバリコンが使われています。 もちろん、それが理想なのですが大きくてブレッドボードには馴染まないことと、今となっては入手性も良くありません。
そのため、カップリング・コンデンサで直流分をカットした上で、並列共振回路と結合する回路形式にしてマイカ・トリマコンデンサで間に合わせています。
マイカ・トリマコンデンサの耐電圧は実力的に250V以上あって、QRP送信機ならまず心配なしに使えます。 構造上、接触不良が起こらず電流容量も十分ありQも高いので送信機に向いています。 エアーバリコンと違い今でも比較的安価に入手できます。 マイカ・トリマを使ったのでコンパクトなタンク回路が作れました。 写真のマイカ・トリマの最大容量は70pFです。 少し容量が足りなかったので47pFのマイカ・コンデンサを並列に抱かせています。 もし最大容量が100pFのマイカ・トリマがあれば並列容量は要りません。 もっと容量の大きなトリマしか無ければコンデンサを直列にして調整し易いように加減すればよいです。
プレート負荷インピーダンスは約4kΩで、負荷QはQ
L=12で設計しています。 それなりに高調波は減衰しますが、オンエアにあたっては7MHz用LPFをアンテナとの間に入れます。スプリアス輻射の規制は厳しくなっているので必ずLPFを付けて使います。
【
送受切替はリレーで】
送受信の切り替えはリレー式です。 2回路のトランスファー接点型(C接点型)を使います。 1回路でアンテナ回路の切り替えを行ない、もう1回路で受信機のスタンバイ・コントロールを行ないます。
小型のリレーなら大抵のものが使えます。 ヒーター電源を使っているので、駆動巻線の電圧が8〜9Vくらいの物が適します。 5Vのリレーが多く出回っているようなので約3V分を直列抵抗で落として使うと良いです。 ここでは12V用が取りあえず使えたのですが、明らかに電圧不足です。(笑)
【
半導体を使ったキーイング回路】
これはCW送信機なのでとりあえず関係ありませんが、AMの送信機では変調をどうするかと言うのが問題になります。 変調器の製作もなかなか大変だからです。 その点、電信の送信機は楽ですが今度はキーイングをどうするのかと言う課題があります。
QRPな送信機ですから大げさな方法は考えたくありません。 理想的にはブロッキング・バイアス・キーイングですが別にマイナス電圧の電源が必要です。 予めマイナス電圧が得られる電源があれば好都合なのですが、無ければわざわざ作るのも面倒です。 従っていちばん簡単なのは終段管のカソードキーイングになります。
カソードキーングは終段管のカソードを電鍵で断続するだけなのでシンプルです。 しかしキーをアップしている状態ではGND間に高い電圧が発生しています。 そのため一般的なキーヤー(エレキー)では耐圧オーバーの可能性があります。 そこで耐圧の高いPower MOS-FETを介してキーイングするようにしました。 最初の写真では大きなMOS-FETが写っています。 間に合わせに使ったまででかなりオーバースペックでした。 QRPな送信機ですからドレイン・ソース間耐圧さえあればこの写真のように小さなMOS-FETが使えます。小型ですが耐圧のある2SK4150に置き換えました。
前段のMOS-FET(Q1)には2SK422を使いましたが、手持ち都合なので入手が容易な2N7000に置き換えられます。 ただし2SK422と足の並びは異なるので規格表で確認して使ってください。 面倒なら2つとも2SK4150に統一しても良いでしょう。 なお、同じMOS-FETでも2SK241及びその同等品は代替に使えません。
写真に見える黒い円盤状のZNRという部品は「サージ・アブソーバ」です。 FETの保護素子として入れてあります。 ブレークダウン電圧が200〜300Vの物を使ってください。 なくても動作しますが、入れておくと安心です。 普通に手に入る部品です。
カソード・キーイングではあっても電子的なON/OFFですからスパークの発生はないため接点が原因のキークリックは生じません。 しかも一般的なキーヤー(エレキー)が使えるのでQSOも快適です。 バグキーや縦振れ電鍵でもOKです。
このカソード・キーイング回路は大きめのMOS-FETを使ってやればパワフルな送信機にも使えます。 807や6146がファイナルの送信機にも適当です。 懐かしい
TX-88A型送信機などに組み込むと扱いやすくなるでしょう。 +9V前後で10mAくらいのプラス電源を与えれば良いので簡単に組み込めます。 +9Vはヒータ用のAC6.3Vを整流して簡単に作れます。
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小さなMOS-FETでもOK】
手持ちがなかったのでちょっとオーバーだとは思ったのですが、初めは2SK1248(新電元)と言う500V耐圧で10Aの電流容量をもったPower MOS-FETを使っていました。(写真手前)
その後、調べていたら秋月電子で2SK4150と言うTO-92パッケージ(2SC1815と同じ形状)で耐圧の高いMOS-FETが見つかりました。 このFETはON/OFFスイッチとして動作します。 キーがアップされた状態では電流は流れず、ドレイン損失はほぼゼロです。 キーダウンすると導通して10Ω以下の抵抗を示します。キーイングする電流は35mAくらいなので、FETの発熱は高々12mWくらいです。 電流容量も0.4Aあって十分です。 従ってかなり小さなサイズですがまったく熱くもならず安全にキーイングできます。
4M-P12や5AQ5のようなQRPなパワー管のキーイングには2SK4150で十分ですが807や6146のようにやや大きめの真空管には2SK1248のような大きなMOS-FETの方が安心感があります。 送信管のサイズによってキーイング・トランジスタ(MOS-FET)を選らびます。 類似のPower MOS-FETなら何でも大丈夫です。
#参考:2SK4150TZ-Eは10個¥250ーで秋月電子にあります。
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コイルがキーパーツ】
真空管式の送信機と言うとステアタイトのボビンに巻いた大きな空芯コイルやエアーダックス・コイルが定番かもしれません。もちろんハイパワーなら相応の部品が必要です。
しかし、ここで作るような数Wの送信機には大げさでしょう。 空芯コイルを使っても良いのですが、どうしても大型化します。さらにリンクの結合度調整など厄介になってしまいます。 たぶんブレッドボード向きではないでしょう。 ここではタンクコイルにAmidonのトロイダルコアを使いました。
パワーが小さいのでT68サイズで十分使いものになります。コア材は#2(赤)です。 写真の左のように巻きます。 1次側はφ0.5mmのフォルマール線(PEW線)を28回巻きました。 2次側リンクコイルはテフロン被覆の単芯線(太さはAWG #32程度)を3回巻きます。 リンクの巻き位置はラフで大丈夫なので適当に1次側の中心付近に巻けば良いです。 作りっぱなしの無調整でかまいません。
写真の中央付近にあるPSと書いてあるのは「パラ止め」で終段管のプレート回路に入れるものです。 これは100Ω 1/4Wの抵抗器の上にφ0.4mm程度の電線を6回巻きして自作したものです。 市販品はないので抵抗器の上に巻いて自作してください。 芯になる100Ωはソリッド抵抗が最適ですが無ければカーボン抵抗でも良いです。
右上にあるのは2.2mHの高周波チョークコイル(RFC)で、ここでは透明なビニルチューブに入っているレトロなタイプを使いました。 しかし右側の青色のものでもまったく問題ありません。 QRPな送信機ですからせいぜい50mAくらいしか流れないので電流容量も問題になりません。 送信機のRFCと言うと分割巻きの空芯型をイメージする人も多いかもしれませんが今となっては入手しにくいし高価なのでお薦めしません。 QRP送信機には写真のようなもので十分です。 7MHzの送信機には470μHでも良いです。
真空管式の送信機と言うと何か特別なコイルやRFCが必要になると思うかもしれません。 確かに50年前の製作記事を参考に製作したのでしたら今ではあまり見かけないような部品が使ってあるでしょう。 しかし、それらの部品はその当時の標準部品だったから使っていたのであって、今なら別の部品で間に合わせて支障ないのです。 あまり「昔の真空管製作」にとらわれ過ぎずに身近な部品に置き換えて製作すると楽に部品集めできます。
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πマッチの実験とトリマ・コンデンサ】
写真左はT106-#6に巻いたタンクコイルです。 これはπマッチの実験に使ったものです。 πマッチ形式の方が効率が良くなるかもしれないと思ったので実験しました。 そのため少し大きなサイズを使い、コア材の損失が#2よりやや小さな#6材のコアで試しました。
結果から言えば同調回路+リンク形式のタンク回路と効率ほか違いは見られませんでした。 終段管のドライブ条件が同じでプレート電圧も同じならタンク回路の違いで大きな差は出ないのでしょう。
アンテナのインピーダンスが変化するような時はπマッチの方が幾らか有利です。多少の変化はあってもマッチングできるからです。 しかし昨今のアンテナは半導体が終段のリグに合わせて概略50Ωになっています。 従って負荷インピーダンスは概ね決まっていますのでそれに合わせたタンク回路を作れば十分です。 πマッチ形式でなくても十分行けることになります。 同調回路+リンク形式ならπマッチよりバリコンが一つ少なく済むのでリンク形式でまとめることにしました。 (必要に応じて外付けのアンテナチューナを使うのもお薦めです)
写真の右側はマイカ・トリマ・コンデンサの加工方法です。 そのままではブレッドボードに載りません。 右端のようなピンヘッダを端子にハンダ付けして中央にあるような形状に加工しておきます。 これでブレッドボードにうまく搭載できます。
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ネオン管を細工する】
タンク回路の同調指示用としてネオン管を付けました。 このネオン管は端子の片端のみタンク回路に接続します。 他端は遊ばせておきます。
ハイパワーな送信機ならタンクコイルのホットエンドは強電界になるので片端を触るだけでも点灯するのですがQRPな送信機ではうまく点灯しないことがあるようです。 写真のようにネオン管の周囲にGNDからの電線を数回からげてやればうまく点灯してくれます。 ちゃんと波が出ているか視覚的にわかった方が楽しいのでネオン管はFBです。 タンクコイルのホットエンドに触れただけでは点灯しないようなら写真の様に細工します。
参考)「小型ネオン球」はサトー電気などで販売されています。(単価100円くらい)
【
チューニングにも】
送信が始まり、タンク回路がきちんと同調しているとこのように綺麗に点灯します。
キーイングで明滅しますから電波が出ているのがビジュアルにわかって効果的でした。
固定した周波数の送信機ですし、固定シャックでしたらアンテナも決まっています。 終段管のグリッド電流やプレート電流は製作後の調整時に確認しておけば大丈夫です。 もちろんそれぞれ電流計を付けて常時監視すればベストですがQRPな本機には少々オーバーに感じます。 プレート電流は50〜100mA程度の豆電球を直列に入れて監視する方法もあるのでメーターよりも簡便な方法として使ってみるのも面白いでしょう。 このあたりは各局のお好みで。
☆
【VVVでテスト電波】(ムービー)
ダミーロードを負荷にして受信機でモニターしながらキーイングしている様子です。 幾らかチャープするようです。 都合で受信機を完全にミュートせずにオンエアしたかったので水晶発振段込みでキーイングするようにしました。 発振段はキーイングせず送信中は動作させたままにすればチャープは殆どわからならなくなります。 キーイングモニタを別途用意するなどの方法で対応すると良さそうですね。(
注:再生すると音が出ます)
ミニパワーなので期待はしていなかったのですが、コンディションに助けられたのかCQを出したら続けて数局からコールを頂きました。微弱な電波を拾っていただき有難うございました。 QSLカードは既にe-QSLで発行済みで紙のQSLカードもJARLビューローへ送ってあります。いずれお手元に届くでしょう。(普段はe-QSL専門。紙QSL発行は特例です)
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初めて作った送信機は6CB6で変形ピアース型水晶発振させて終段の12BY7Aをドライブする形式でした。水晶発振子はFT-243型でした。 もちろんアルミの箱型シャシに組み上げたものです。 まだ電信の免許はなかったので変調機を付けてAMでテスト電波を出しました。 しかし飛びませんでしたねえ・・・。 パワーは5Wも出ていなかったと思います。QRPなAMの波はアンテナがかなり良くないと飛ばないみたいでした。(笑)
もし、同じ送信機でCWにオンエアしていたなら違った印象を持ったかも知れません。 数Wもあれば国内くらいは十分行けるはずなのです。 そこそこ実用的だったでしょう。今さらながら電信の面白さを感じますね。
目標の10局交信はあっという間に達成できました。 少年のころとは違ってアンテナを含めて設備は良くなっています。 それでもQRPな1W少々ですから大したパワーではありません。 こんなもので楽しめるのですから面白いですね。 お相手いただいた各局の皆さんどうも有難うございました。 中には0.5Wや1WというQRPerも居られたようです。 目標達成ということで、ブレッドボードは元の更地に戻りました。第5送信機もバトンタッチです。 久しぶりに濃〜い真空管の話でした。 同じような構想を温めているHAMも多いと思います。 ブレッドボードを使うことで製作のハードルはずいぶん下がります。こんな方法でもオンエアできるので新たな目標としてチャレンジしてみてはいかが? ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)
nm