2018年12月26日水曜日

【祝】 over a million of visitors

1,000,000ビジターありがとうございます。
先ほど百万を突破しました。
これで何となく肩の荷がおりた気分です。
計数のあやしいカウンタですが1,000,000は区切りと思っています。

長いあいだ熱心にご覧いただきありがとうございます。
ブログはBloggerが続くかぎり維持されます。
あとはぼちぼち行きましょう。

2018.12.26 14:49JST
de JA9TTT/1

2018年12月23日日曜日

【部品】From my parts box , 2019

2019年の部品箱から
  師走ですから重たい製作モノはやめにして軽〜く部品の話で行きましょう。(笑)
2019年はもう目前です。 新年に向けて部品箱からパーツの幾つかを紹介したいと思います。 『新年に向けて』とは言っても新しく登場したという意味ではありません。 最近になって我部品箱のメンバーに加わった部品たちです。 既に使い始めたパーツもありますが、ほとんどは新しい年にじっくり向き合うつもりです。

 どれもポピューラーな部品ではありませんが、もしご存知なら「なーんだ、アレか」って思うでしょう。しかし意外に知られていないと思うのですが? それぞれ特徴的ですが、どれも用途は限定的ですからお薦めするようなものではありません。 パーツボックスの『肥やし』になる可能性も高いのです。 将来、高い値段で売れる可能性もないでしょう。 世間には『こんなパーツもあるんだ!』と思いながら暇つぶしにでもどうぞ。  もちろん、年末の行事がぜんぶ済んで落ち着いてからにして下さいね。 慌ただしい年の瀬にこんなBlogなんか眺めて『ひまそー』にしてると奥さんに叱られますよ。(爆)

                  ☆  ☆  ☆  

その1:2SK4150・高耐圧小型MOS-FET
 電流は必要ないけれど、高い電圧をON/OFFしたいことがあります。 従来は高耐圧なバイポーラ・トランジスタ・・・要するにNPNやPNPの高耐圧トランジスタを使ってきました。 以前からMOS-FETにも高耐圧品はあったのですが、どちらかというとパワーものがほとんどでした。 大電流や大き目の許容損失が必要ならPower MOS-FETも仕方ありませんが、どうしても形状は大きめです。 たいした電流は流さなくて耐圧だけが欲しい時にマッチする小型のデバイスは意外に少なかったように思います。

 2SK4150は既にNIXIE管クロックのBlogと前回の真空管式QRP送信機のBlogで紹介済みでした。 活用の方向も見えていますが2019年も注目しているデバイスです。  それにしても2SKも4000番台になっていたとはネ。hi hi

2SK4150:耐圧が高いのが特徴
 規格ではドレイン・ソース間耐電圧は250Vです。 多少のマージンはあると思いますが、バイポーラ・トランジスタに比べるとMOS-FETの規格値とのマージンは少なめのように感じます。 あまり無理はさせない程度に使いたいものです。
 パッケージが小さいので熱抵抗も大きく、0.75Wの許容損失はあってもあまり電流は流せません。 ドレイン・ソース間電圧が大きい時は控え目の電流で使いたいものです。 ON/OFFスイッチング用なら比較的安全ですが、増幅用に使おうとすればドレイン損失が大きくなるので規格オーバーには常に気を配りたいものです。

 増幅の用途ですが真空管と共存できそうです。 150V程度の電源でドレインに数mA流して使うとかなり大きめの信号が取り出せるでしょう。 帰還容量も小さめなので意外に周波数特性も伸びてくれるのではないでしょうか。 ハイブリッド形式の面白い回路が作れそうです。 本来の用途はスイッチング電源の一次側回路用ではないでしょうか。

参考)2SK4150は秋月電子通商にて10個250円で販売されています。(ここ←リンク)


その2:LND150・ディプレッション型FET
 引き続きFETが登場します。 LND150はSupertexと言うメーカーが開発した高耐圧の小信号用D-MOS FETです。 同社は現在マイクロチップ社の一部門になっているようです。

 ドレイン・ソース間の耐電圧が500Vと非常に高いことが特徴の一つですが、それに加えてディプレッション・モード特性であることに大きな意味があると思っています。多くのMOS-FETはスイッチング用なのでエンハンスメント・モード特性です。LND150のような特性はMOS-FETとしては珍しいのです。(もちろん2SK241や2SK544も忘れてはいけませんが・笑)

 これと言った用途はまだ考えていませんが、アンプに使ってIdssまでの範囲で動作させればバイアス回路は簡単になります。 規格によればIdssは1〜3mAと小さめですが面白い使い方ができそうです。 規格表にはノイズについての記述は見られないのでオーディオのプリアンプのようにローノイズが必要な用途には向かないのかもしれません。 それでも初段は無理でもそれ以降の部分なら使えるでしょう。  面白い回路が作れそうです。 なお、D-MOSはいわゆる『五極管特性』なので12AX7などの『三極管』と音色は異なるかもしれません。 また、FETの伝達特性は二乗特性ですから2次歪は大きめになります。 帰還容量もやや大きめなのでRF増幅には工夫が必要そうです。(2SK241のように内部でカスコード構造にはなっていない)

 メーカーが想定する典型的な用途はインスツルメンテーション・アンプなどの入力保護のようです。 装置外に引き出された配線に不用意な高電圧が加わった時に働く保護素子として使います。

参考)LND150は秋月電子通商にて単価40円、5個200円です。(ここ←リンク)

LND150の規格・概要
 ディプレッション・モードで高耐圧であることが特徴として挙げられます。 その特徴が有効な用途のために作られたのでしょう。

 ディプレッション・モードのFETはゲートをソースに結んで使うと「定電流ダイオード」として動作します。 ドレイン・ソース間の電圧が変化しても、流れる電流はほぼ一定に保たれます。
 差動アンプの定電流源に使うほか、様々な用途が考えられるでしょう。 耐電圧が500Vもあるので真空管回路での応用にも向いていそうです。 Idss=1〜3mAなので、それで足りない時には何本かパラにして使えば良いでしょう。

LND150は保護素子に
 半導体回路は不用意に高電圧が加わると破損しやすいものです。 機器内部の配線は製作する時に注意すれば良いのですが、外に引き出された端子の先では何が起こるかわからないので常に危険です。
 インピーダンスが低ければ静電気など比較的安心かもしれませんが、インスツルメンテーション・アンプのようにハイ・インピーダンスな回路は危険がいっぱいです。 保護抵抗を入れたり、サージ・アブソーバーを入れるなど対策しますが、それだけでは守り切れないことも多いものです。

 LND150は定電流特性を示すことから、図のように保護素子として使い、その定電流値まで許容できるようにアンプ側を設計しておくとかなり安全になります。 耐圧も500VあるのでAC電源などが共存するような環境で間違って配線が触れてしまっても破壊を免れるでしょう。 HAM的な用途は余りなさそうですが、他で代替の効かないなかなか興味深いデバイスなのです。


その3:HCPL-4562・高速リニアフォトカプラ
 HCPL-4562はかなり前から存在していたデバイスです。高価で入手しにくかったためか、あまり目にすることはありませんでした。 本来の用途は広帯域なビデオアンプなどのアイソレーションでしょう。

 一般的なフォトカプラの周波数特性はあまり良いものではありません。 せいぜい1MHzあたりの信号しか扱えないのです。 それに対してHCPL-4562は一桁以上高い約20MHzまでの信号が扱えます。 高速応答する発光ダイオードに高速なフォト・ダイオードとRF用のトランジスタを組み合わせてあるのでしょう。

 写真のものはAliexpressのお店で購入(10個)したものです。 比較的安価でしたが、半分は全く使えませんでした。どうやら表面の印刷と違って中身は異品のようです。 さらに残り5個のうち1個は特性が劣化している不良品です。
 結局、それらしく使えたのは4個だけでした。 怪しい中華なお店で買うよりも、少し高くても間違いのない部品商社から購入すべきだったと思ってます。(RSコンポ、Digi-Key、Mouserなど:少量の購入でも単価250〜350円くらいです)

HCPL-4562の取柄は高速性
 HCPL-4562の仕様の一部です。 もともとhp社の半導体部門で開発されたようです。 しかし同社の半導体部門は身売りされてしまいました。 Avagoと言う会社を経て現在はBroadcom社で生産されている模様です。

 製造メーカーは移っても継続して生産されているのはそれなりの用途が存在するからでしょう。 使用量は少ないのかもしれませんが根強いニーズがあるのでしょう。 HF帯まで信号を通せるフォトカプラなんてそうそうありませんから・・・。  従ってしばらくは安泰ではないでしょうか?

HCPL-4562を使った再生受信機
 図は1998年6月号のQST誌の記事からです。 HCPL-4562を再生式受信機に使っています。

 何もこのフォトカプラを使わなくても再生受信機くらい製作できます。 では何が特徴なのかと言うと、不要輻射を防げるところにあります。 再生式受信機でCWやSSBを受信している時には検波回路は発振状態になっています。
 アンテナからその発振勢力が飛び出さぬように必ず高周波増幅を設けて輻射防止すべきでしょう。 しかしいきなり検波している再生受信機もかなり多いものです。
 図のように光を介した結合でアンテナからの信号を検波回路に導けば発振成分の逆流は考えられないため不要輻射が防げるのです。 なかなか旨い使い方だと思いました。(実際にはストレー容量による結合がわずかに存在する) 他にこの受信機の発展形に『OCR II』というスーパー形式のものがあります。(QST誌・2000年9月号)

# もう少し工夫した使い方もできそうに思うので私なりに考えてみたいと思っています。
 
発振回路でテスト
 良品のように見えても、中身が本当にHCPL-4562なのか不安になったので発振回路を作ってみました。

 8MHzの水晶発振子を使ったコルピッツ型と等価の発振回路です。 ベース側にはバイアス回路を設けず、1次側のLEDに流す電流でトランジスタの動作点を変えています。
  LEDの電流がゼロならトランジスタには電流は流れず、当然発振も起こりません。徐々に LEDの電流を増やしてやるとコレクタ電流が増えてgmが上昇し発振がスタートします。 発振回路としてはオーソドックスなので図面は省きますがこんな実験で真贋を確かめました。 10MHz以上でも発振できたので、どうやら本物のようです。(笑)

 中華通販で購入した部品は今ひとつ信頼がおけないので、届いたらすぐに確認していますが煩わしいですね。hi hi


その4:BDシリーズ集合抵抗器
 アイエイエム電子(株)というメーカーの集合抵抗器です。 これは中華通販ではなく秋葉原の千石電商で購入しました。

 OP-Amp回路では集合抵抗器をうまく活用すると良い性能が得やすいと感じています。 精密な基準電圧の発生回路(←リンク)の試作でもその効果が認められました。

 写真の集合抵抗器は16ピンのパッケージに同じ値の抵抗器が8個集積されたものです。 その8個はすべて端子が独立しており使いやすくなっています。 お店に掲示してあった簡略なスペックによると抵抗値の精度は±2%(G)です。 単独の温度計数は±100ppm/℃となっていました。 これは一般的な金属皮膜抵抗器と同程度です。 色々な抵抗値が売られていましたが、1kΩと10kΩの2種類を買ってきました。

参考)BDシリーズ集合抵抗は千石電商で単価158円でした。(ここ←リンク)

相対精度はかなり優れる
 単に集合抵抗と言うだけなら幾らでも売っています。 また、たっぷりお金を出せば性能が保証されたものが買えます。

 この抵抗器は一つ150円と安価なので『まあ、プルアップ抵抗にでも使えれば・・・』と思って購入しました。 しかし実測してみると左図のようになかなか優秀でした。 抵抗値の相対誤差は0.1%もありません。 従ってこれをうまく使うと整数倍のゲインを持ったアンプが容易に製作できるのです。(OP-Ampを使います)
 相対的な温度特性までは確かめていませんが、たぶん100ppm/℃より悪くなることはないでしょう。 従ってゲインの温度安定性も単純に金属皮膜抵抗器を組み合わせて作ったアンプよりも優れているはずです。

 温度トラッキングを考えると、同一パッケージに入っている抵抗器を使うに限ります。使える抵抗器は8本ですから可能な回路は限られます。 それでも、例えば整数倍のアンプとして、±1倍、2倍、3倍・・・・・9倍、10倍のほかにも色々なゲインのアンプが作れそうです。 整数倍のアンプでゲインの安定度に優れたものを作るのは意外に難しいのでこうした集合抵抗器がうまく使えるなら有難いのです。 あとは温度特性のマッチングが気にはなるのですが・・・。

参考・1)集合抵抗器の活用として、同じ値の抵抗器の組み合わせで「精密でゲインの安定なアンプ」を作る方法について「続OPアンプ回路の設計」岡村迪夫・著(CQ出版社)に詳しく書かれています。本書は絶版なので図書館で閲覧してください。(該当ページ:pp130〜141参照)

参考・2)精度が5%という1kΩの集合抵抗がパーツボックスに見つかったので合わせて測定してみました。 比べてみてIAM電子の集合抵抗はなかなか優秀でした。誤差2%と言うこともあるでしょう。 精度向上のため抵抗値の測定はすべて四端子法で行ないました。

注意)表の数字は単品を実測した結果であってメーカーが保証しているものではありません。  お買い求めのものがこれと違ってもクレームなどされませんようお願いします。


その5:S042P・DBM-IC
 中華通販を使うとDBM-ICのSA612も比較的安価に手に入るようです。 しかし十分な手持ちがあったのでSA612に興味はありませんでした。 安いからと言ってむやみに買い溜めても使い切れませんからね。 それで他に入手しやすい適当なDBM-ICは無いだろうかと思って探したらS042Pが見つかりました。

 S042Pについては、その同等品について調べたBlogがあるので詳しくはそちら(←リンク)を参照してください。

 以前のBlogで扱ったのはソ連製の『K174ΠC1』と言う型番のものです。 写真のものはオリジナルメーカーのSiemens社製です。(たぶん・笑)

参考)中華通販で購入したのですが、印刷が不鮮明だったり足ピンの切断寸法の誤差が大きいと言った半ば不良品(外観不良)が届きました。 電気的な特性は正常だったのですが、購入はお薦めできない結果です。 もっとダメな品物が届く可能性だってあります。

典型的な応用回路?
 S042Pは基本的にギルバート・セル型のDBM-ICですから使い方も他と同様です。 バイアス抵抗が内蔵されているので外付け部品は少なくて済みます。 SN76514NやSN16913Pなどと類似の使い方をすれば良いでしょう。

 S042Pの特徴は自励式のコンバータ回路が構成できる点にあります。 SA612などでも同じことができるのですが、DBM回路のほかに発振回路が内蔵されているので可能なのです。
 しかしS042Pに特別な発振回路は内蔵されていません。 中身はDBM回路だけなのですが回路的な工夫がされています。 DBM回路の一部を発振回路として使うのです。 そのような工夫で自励コンバータが作れますが、左図のように局発コイルの構造はだいぶ複雑になってしまいます。 一度設計してしまえば良いのかも知れませんがあまりメリットはなさそうですね。(笑)

S042Pを試用中
 印刷不鮮明な不良品のようなS042Pが届いたので、中身に問題はないか確かめておきました。 バランスド・モジュレータ回路(バラモジ)として使ってみます。 回路のバランスが崩れているような不良品なら簡単にわかるでしょう。 正常ならDSB波が得られるはずです。

 写真のように綺麗なDSB波が得られています。消費電流や端子電圧などを確認しましたが、問題はなさそうでした。 外観や足ピンの状態に幾分問題はありますが取りあえず使う上では支障はないでしょう。悪くないDBM-ICだと思いますが、他にもDBM-ICはありますからそれほど積極的に使う理由が見当たらないのも事実です。珍しいものがお好きなお方向きでしょう。(笑)

                   ☆

 このS042Pや上述のHCPL-4562ほか一時期は色々な電子部品を矢継ぎ早に中華通販で発注しました。 稀に非常にお買い得な逸品に出会うこともありますが、まったくのニセモノが届くなど信頼感には乏しいと思います。 通常のルートでは手に入らないなら試してみるのも一つの方法かも知れませんが、できたら信頼のおけるお店から買うほうが良いと思っています。 なので、その後は暫く中華通販は控えているところなのです。(笑)



 どれか気にとまったデバイスはあったでしょうか? 電子部品ばかり幾ら集めても何かが出来上がるものではないのですが、ソレがなければ始まらないことも多いものです。 面白そうなアイディアを思いついたら、まずは必要な部材・部品の手配を考えます。 もちろん情報の収集も重要でしょう。

 手持ちがあるか、もし無くても代替手段になり得ないのか購入の前に検討します。 その上でダメそうなら発注になるのですが中華通販はやはり有難い存在です。 価格が安いのは勿論ですが、送料無料や非常に安価なので思いつきの小刻みな発注でも不経済にならないからです。 国内の通販も定形外郵便の積極的な活用で送料をなるべく抑えるようにしてもらえたら有難いのですが・・・。

 中華通販は届くまで数日から1ヶ月以上と様々ですが、平均して10数日くらいでしょうか? たいてい他の部品を集めているうちに届くので納期もあまり気になりません。 あとは品質がもうちょっとマトモになって安心して使えるなら嬉しいです。 現状では届いたらただちに確認しておく必要があります。できたらそんな確認をせずに使いたいものです。

 2018年も残りわずかです。 新しい年も何か面白い実験に取り組みたいと思っています。 回路を考えブレッドボードの部品配置を工夫しながら指先を動かすのは「認知症予防」にもピッタリではないかと思う今日この頃です。(爆) 良いお年をお迎えください。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2018年12月7日金曜日

【HAM】 Two Tube Transmitter on a Breadboard

HAM:ブレッドボードに作った2球送信機

ブレッドボードからオンエア
 ブレッドボードに作った受信機でHAMバンドを聞いてみるというのは何回かやっています。 実用品とは言いませんがもう少し工夫すれば交信に使うこともできそうです。

 しかし、部分的な回路ならともかく、送信機全体をブレッドボード上に作ったことはありませんでした。 たぶん、QRP(小電力)な送信機ならブレッドボード上にすべて作れるでしょう。半導体を使って数Wの送信機なら十分な可能性があります。

 色々な工作をしていて、いつかブレッドボードから波を出してQSO(無線交信)してみたいと思うようになりました。 半導体も候補ですが、しばらく前に紹介したブレッドボード用の真空管ソケット(←リンク)を使って「真空管の送信機」を作ってみましょう。 微弱電波のワイヤレスマイクではなくて、ごく普通にHAMの交信ができるような「ちゃんとした送信機」を目指します。 目標はズバリ「10局と交信すること」にします。 できたらスケジュールQSOではなくて任意の相手局との交信が目標です。

余談:いきなり余談ですが、大昔のHAMの自作送信機に木板の上に組み立てる『まな板セット』と言うのがありましたね。 米国流に言えば『ブレッドボード・セット』なのでしょう。 そちらがたぶん元祖の『ブレッドボード送信機』ですね。 ですから今風のBB送信機もアリでしょう。(笑)

                   ☆

 写真はそうして製作した7MHzのCW送信機です。(CW:無線電信のこと) 水晶発振に電力増幅を付加した2ステージのCOPA形式という本格派(?)です。 キーイングは「カソードキーイング式」にしました。
(COPA=Crystal Oscillator and Power Amplifier.OMさんはコッパ型と呼んでいたとか)

 また、今どきですから縦振れの電鍵専用ではなく、Keyer(エレキー)が使えるようにします。 MOS-FETを使ったキーイング回路を設けました。 これで快適な交信ができます。キーヤーが使えるとごく普通にQSOを楽しめますね。

 気になる出力パワーですが、Po=1.2Wくらいです。 これは電源の都合でプレート電圧が200V弱に抑えられたからです。 250V以上の電圧を掛けてやれば3Wくらい出るでしょう。 しかし、実際にオンエアしてみると1W少々でもずいぶん飛んでくれました。 経験から3Wになっても劇的な変化はないと思うのでそのまま1W少々で行くことにしました。
(注:電源は前のBlogで紹介したDC-DCコンバータではありません)

 小電力とは言えワイヤレスマイクの範囲を外れています。 無免許でのオンエアはできません。 必要に応じて無線設備の変更も提出します。当局は「第5送信機」として製作しました。 4級局は「無線電信」にオンエアできないので、これを機会に3級アマ無線技師に挑戦されてはいかがでしょうか。 こんなシンプルな送信機でも国内局を相手にかなりQSOできます。じっくり取り組めばDXができるかも知れません。 「無線電信」はQRPに有利です。

 真空管のことになるとやたらとウルサイお方がおられます。hi hi いろいろな薀蓄(うんちく)も結構ですが、まずは手を動かしてみませんか? QRPなプロジェクトならシャシ加工などせずブレッドボード上で実現できます。 実際に作った回路を前にしてこそわかる面白さがあります。 手作りの真空管送信機でQSOできたならHAMライフに新たな1ページが加わるでしょう。

 もちろんQRPや真空管にご興味がなければ早々にお帰りが宜しいです。  何を試して結果はどうなったのかと言う自分用の製作メモのようなものです。この先はお勧めしません。どうぞ貴重な時間を無駄にされませんように。

7MHz2球QRP送信機:回路図
 むかし手に入れておいたレア物の真空管と貴重な真空管用のパーツをたくさん投入して入念に作りました。

・・・と言うのではBlogで公開する意味はあまりないように思うのです。 貴重な部品を持っていなければ真似ることさえできません。 自慢話がしたい訳ではなくて、できたら同じように製作と交信を楽しんでいただきたいのです。手作り送信機で2-way交信ができたならとても素晴らしいです。 なるべくありふれたものを使い可能であれば代替手段も考えておきたいものです。 入手容易な部品を使って、できるだけ財布の負担にならないよう頑張ります。(笑)

 まず、真空管ですが、オーディオの趣味と競合しないような球を使います。 彼らは「見てくれ」や「銘柄」にも拘りますが、HAMは「実利」の方に目を向ければ安く上がるわけです。 具体的には水晶発振が3AU6で、終段電力増幅は4M-P12です。 いずれもトランスレス式TV用に作られた真空管です。もちろんTV以外の用途に使っても何の支障もありません。 しかしヒータ電圧が中途半端な真空管は人気がありませんね。 どちらもオーディオ界では猫またぎな球ですから、あれば廉価で手に入ります。 言うまでもありませんが、6.3Vヒータの同等管でもOKです。 3AU6の代わりに6AU6や6BA6を使えば良く、4M-P12の方は6AR5や6AQ5ならそのまま同じ回路でOKです。 ヒータ回路の配線を少しだけ変更してやれば簡単に代替できます。

 まだまだ選択肢はたくさんあって決めるのに困るほどでした。この程度の送信機なら使えそうな素材(真空管)はいくらでもあります。 なお、トランス付き用の球ならあるが、レス用の球は持っていないので同じものを手に入れよう・・・と言うのでは本末転倒です。 お手持ちのトランス付き用の球を使ってやってください。使われるのを待ってますよ。(笑)

 9ピンのmt管にも候補はあるのですが、作りやすさの点から7ピンのmt管を選びました。 これはブレッドボードに作る都合です。 9ピンのソケットと変換基板はそれだけでブレッドボードをかなり占有して作りにくそうでした。 もちろんレイアウトなど旨く工夫すれば9ピンの球も使えると思います。 (参考:現在はピンを片側に引き出すタイプの9pin用変換基板も売られています。それを使うと作りやすくなります)

 水晶発振子は7003kHzのHC-49/U型です。 7003kHzはJAのQRPerがよくオンエアしている周波数です。 この水晶発振子はJL1KRA中島さんに頒布して頂いたものです。 残念ながら、7003kHzの頒布は終了したようです。
 7003kHzは例えば、エヌエスアイアロー電子三田電波などの水晶屋さんに特注する必要があります。 形状の選択が可能なら、HC-6/U型が良く、次善としてはHC-49/Uにします。なるべくなら小型のHC-49/USは避けるべきです。
 海外への特注ではHy-Q International(豪)、QuartSLab(米)、Andy Fleischer(独)などがあります。JAから注文の可否は各自で確認を。
  既製品では「ラジオ少年」に7005kHzほかCWバンド用があります。 7003kHzに拘らなければ良さそうです。 ほかにはAliexpressで検索すると7000kHzが安価に入手できるので試してください。 7000kHzならみなさんお馴染みの「サトー電気」でも売っています。

 7003kHzの水晶がベストですが、もし手に入らなければ7000kHzの水晶発振子で試せます。 トリマ・コンデンサ:C5の調整で7003kHz付近まで調整できると思います。(個体差あり・オフバンド要注意)

 そのほか、送信機らしい部品もありますがキーパーツは後ほど写真入りで扱います。 いずれにしても入手できないような部品は使っていません。 真空管用の部品を持っていなくても球でオンエアするプロジェクトに仲間入りできます。(もし球の入手で行き詰まったなら連絡してください。使える物を差し上げます)

参考:プレート電圧250V以上で動作させるときの変更点
(1)発振部(V1):スクリーングリッドのR3:12kΩを33kΩ/3Wに変更。 電源回路のドロッパ抵抗のR13:1kΩを10kΩ/5Wに変更する。
(2)終段電力増幅部:スクリーン・グリッドのR6:10kΩ/3Wに変更する。
(3)コンデンサを電源電圧に見合ったものに交換する。
以上の変更で真空管を安全に使いながらパワーアップ(3〜5Wくらいか?)できます。

# ワット(W)数の大きな抵抗器は『酸化金属皮膜型』を使うと小型化され、配置・配線が容易です。ブレッドボード向きです。 ただし小型な分だけ高温化するので注意します。

真空管選びも楽し!
 未使用・新品の真空管でも良いのですが、ジャンク箱に無造作に投げ込んであったトランスレス式TV用の球を使うことにします。半ば打ち捨てられていたような中古品ばかりです。
 トランスレス式のTVはヒーター回路を直列に接続してちょうど100Vで点灯できるように考えられていました。 そのためヒータ電圧はトランス付き回路用とは異なっています。

 トランス付き回路用の真空管はヒータ電圧が統一してあって6.3Vや12.6Vが標準的です。 トランスレス用ではヒータ電圧ではなく、ヒータ電流を合わせるためにヒータの電圧は3.15Vだったり4.7Vだったり様々です。 そのため、使いにくいことから管球オーディオの世界では敬遠されてしまい人気がありません。 商品価値もないのであまり出回っていないかも知れませんが、もしあれば持て余し気味でしょう。 しかしヒータ電圧/電流以外の性能は同じなので使わないのは勿体ないです。 ご近所の球好きOMさんからお安く譲って貰えるかも。たっぷり薀蓄を聞くはめになるかもしれませんが。(爆)

 発振管に3AU6を使ったのは訳があります。 TV用でよく見かける3CB6の方が水晶発振回路には向いているのですがシールド付きソケットを使うべきです。 ブレッドボード用のソケットでシールドを施すのは少し厄介なので「管内シールド」が付いている球を選びました。 同じように管内シールド付きの3BA6や3BD6も候補なのですが、3AU6がいちばんたくさん見つかりました。 ほかに3DT6も数本あったのですが元々gmが小さいためイマイチでした。(3DT6も5極管ですがFMの検波管なのでそもそも適当でない)

 シールド筒を付けて使いたいところですが、あとで交換してみたら(6)3CB6や(6)3BZ6でも取り敢えず(シールドなしでも)使えそうでした。 発振管を交換して遊ぶには2番ピンを直接GNDせず、7番ピンと結んでおきます。 サプレッサ・グリッドをカソードに結んでおきます。 そのようにすれば上記に挙げたどの球も差し替えて試せます。

 終段管は4M-P12あるいは5AQ5を使います。 発振管に使った3AU6のヒータ電流は600mAです。 同じく600mAヒータのパワー管を使って電流値を合わせてやればヒーターを直列にして点灯できます。 4M-P12と5AQ5のいずれもヒータ電圧は4.7Vで600mAが規格です。 3AU6は3.15Vで600mAなので直列にして合計で7.85Vを与えます。(電圧は±10%くらいなら支障ありません) わずか2球の送信機です。 電圧可変型の(直流の)安定化電源で点灯すれば変則的なヒータ電圧も問題になりません。

 4M-P12という球はことに人気がありません。 N社の真空管ハンドブックには歪みが多いのでハイファイ(Hi-Fi)には向かないと書いてあるそうです。 無線電信(CW)の終段電力増幅はそもそもC級増幅なので歪みなんか気にしません。 単一のキャリヤ信号の増幅ですからSSB波の増幅のようにIMDを意識する必要はありません。 あとは高調波対策をしっかり行なえば心配無用です。

 いずれもお払い箱になったTV出身の「抜き球」ですから、一応チェックしてから使います。 何だか真空管選びだけで半日くらい遊べました。(笑)

足ピン曲がりを直す
 「抜き球」は足ピンが曲がっていることが多いものです。 ひどく曲がったピンはある程度なおしてから、真空管試験機に付属の「ピンストレートナー:ピン矯正器」で曲がりを取ってやります。 そうしないと真空管ソケットを痛めてしまいます。

 写真は4M-P12を挿入して矯正する様子です。 矯正してやるとソケットにスムーズに刺すことがきます。 真っすぐそうに見えても意外に曲がっているので、直してから刺すとすんなり行きます。

TV-7/Uでチェック!
 3AU6はヒータ電圧のみ3Vの位置にして、あとは6AU6と同じ条件でテストできます。

 しかし、4M-P12はJIS名称が付いた純粋に国産の球ですから米国製の真空管試験機に付属のテストデータ一覧表には載っていません。
  そこで、4M-P12の規格を比較すると6AR5と類似であることがわかります。 足ピンの接続も同じです。 もともと6AR5の廉価版といった位置付けなのでしょう。 バイアス電圧も同じ条件なので、あとはヒータ電圧のみ5Vの位置にして6AR5の設定でテストすれば合否判定できます。(JIS名称の球とTV-7/Uに関してはAJR林さんのサイトに詳しいです)

 そのようにして3AU6を4本、4M-P12を4本、5AQ5を3本ほど測定したのですが、ややgmが落ちた3AU6が1本見つかっただけで他はいずれも十分な性能が残っていました。実際にはgm落ちの3AU6も使えました。 たぶんその辺に落ちていたような中古の球も十分使えます。 結果的に真空管試験機なんか持ち出す必要はまったくなかったようです。 ゲッター(頭部の黒光りした部分:真空を維持するためのもの)が空気漏れで白くなっていなければ使えるでしょう。

こんな感じにできました
 製作途中の写真は撮り忘れました。 一気に完成状態です。 実際の製作工程では、まずは水晶発振回路から製作し単独でテストしました。 その後、終段回路を組み立てたのですが出力部分のタンク回路(LC共振回路)のところは2種類試しています。

 単純な並列共振回路のコイルに結合リンクを巻いた形式(写真のもの)と本格的な送信機で多く見かけるπマッチ回路の2種類です。 いずれも負荷Q=12の設計で、比較してみると違いはなさそうでした。 そのため、部品数が少なくて済む写真のような「並列共振+リンクコイル」のタンク回路形式にまとめました。

 トロイダルコアは一次側と二次側リンク巻線の結合がかなり密なので、概ね巻き数比(の二乗)でインピーダンス変換されると考えて良いようです。 昔のような空芯コイルにリンクでは結合が疎なので単純な巻き数比ではインピーダンス変換されません。 そのため最適なポイントを求めるためにリンクの巻き数だけでなく、位置を変えて結合状態を変えてみるなどの調整を要しました。 その点、トロイダルコアを使うと有利です。

 ブレッドボードに作るのは大変そうに見える真空管回路ですが意外に簡単です。 こうした送信機の部品数はわずかです。 真空管回路はインピーダンスが高いので幾らか注意は必要です。 必要以上に配線を引き回さず、最短距離でバイパスコンデンサを付けるなどすれば自己発振など起こさず安定に動作します。

 なお、このブレッドボードの底板(=黒い金属板)は回路のGND側と接続してあります。 底板を浮かせたままだと発振など不安定な現象に悩まされるでしょう。 高周波回路で使うためには必ずGNDしておきます。 底板のないブレッドボードは高周波回路には向かないので、適当な金属板を付けると良いです。

 本格的(?)な真空管回路なので200V以上の電圧を扱います。 ブレッドボードにその程度の耐圧はありますので心配はいりません。 しかしうっかり触たらシビれる電圧なので感電には注意を。 発熱が多くなりそうな抵抗器は予めリード線を長めにしておきブレッドボードの表面より5〜10mmくらい浮かせます。 使用するコンデンサは耐圧に注意します。 ヒーター回路のバイパス用は50V耐圧で十分ですが、プレート回路やスクリーン・グリッド回路のバイパスコンデンサは耐圧が必要です。 ここでは0.0047μFで500V耐圧の円盤型セラミックコンデンサを多用しました。これは0.01μFでも良いです。 B+の電圧は200Vですから250V耐圧のコンデンサでも良いでしょう。 結合回路や同調回路など高周波電圧が掛かる部分にはディップド・マイカ(シルバード・マイカ)コンデンサを使用しています。

以下、各部分を詳しく見て行きます。

水晶発振段
 5極管の3AU6を使ったピアースPG型水晶発振回路です。 この発振回路では、水晶発振子に大きめの並列容量を入れてやらないと高めの周波数で発振するようです。 並列容量なしだと7003kHzの水晶で7010kHzあたりで発振しました。 並列に15〜20pF入れてちょうど7003kHzになりました。

 使った水晶発振子に固有の現象かと思ったのですが、他の周波数の水晶片でも高めに発振します。 そのため、並列容量を加減すれば7000kHzの水晶発振子を使って7003kHzを得ることができます。 7003kHzの既製品はないので水晶メーカーに特注しなくてはなりませんが、7000kHzの水晶発振子なら市販の規格品が手に入ります。 しかし気分的には7003kHzの水晶を使いたいですね。hi  回路的に G-K間の容量不足かと思ったので試したのですが、そう言う訳でもないようです。水晶発振子と並列に容量を入れるのが効果的でした。

 無調整型の発振回路なので1.9〜14MHzあたりまで支障なく発振します。(基本波の水晶発振子を使う) 従って、終段電力増幅回路の同調回路(タンク回路)をバンドごとに用意してやれば、マルチバンドの送信機にできます。

# シンプルな送信機には水晶発振式がピッタリです。 しかし水晶の入手性は悪くなってきました。 また周波数が固定されては不便なので本格的にオンエアするならVFOが欲しくなります。 半導体とのハイブリッドになりますが、PLLやDDSで作るとFBです。 このあたりはまた機会でもあればやりましょう。
【コラム】7003kHzという周波数:(QRP Wikiも参照を)
一般的に言えば7003kHzはDX用の周波数です。バンドがオープンしていないときならQRPで国内QSOも悪くないと思いますが、開けてきたら遠慮しておく方が良いでしょう。 DXerは微弱な波に耳を集中していてQRPでも邪魔になります。 なお、米国では7040kHzがQRPの周波数のようですが、JAでは使われていません。 Novice局用に7110kHzと言うのもあるそうです。
終段電力増幅とタンク回路
 5極管の4M-P12を使った電力増幅部です。 真空管を使った終段電力増幅回路では決まってエアーバリコンが使われています。 もちろん、それが理想なのですが大きくてブレッドボードには馴染まないことと、今となっては入手性も良くありません。

 そのため、カップリング・コンデンサで直流分をカットした上で、並列共振回路と結合する回路形式にしてマイカ・トリマコンデンサで間に合わせています。

 マイカ・トリマコンデンサの耐電圧は実力的に250V以上あって、QRP送信機ならまず心配なしに使えます。 構造上、接触不良が起こらず電流容量も十分ありQも高いので送信機に向いています。 エアーバリコンと違い今でも比較的安価に入手できます。 マイカ・トリマを使ったのでコンパクトなタンク回路が作れました。 写真のマイカ・トリマの最大容量は70pFです。 少し容量が足りなかったので47pFのマイカ・コンデンサを並列に抱かせています。 もし最大容量が100pFのマイカ・トリマがあれば並列容量は要りません。  もっと容量の大きなトリマしか無ければコンデンサを直列にして調整し易いように加減すればよいです。

 プレート負荷インピーダンスは約4kΩで、負荷QはQL=12で設計しています。 それなりに高調波は減衰しますが、オンエアにあたっては7MHz用LPFをアンテナとの間に入れます。スプリアス輻射の規制は厳しくなっているので必ずLPFを付けて使います。

送受切替はリレーで
送受信の切り替えはリレー式です。 2回路のトランスファー接点型(C接点型)を使います。 1回路でアンテナ回路の切り替えを行ない、もう1回路で受信機のスタンバイ・コントロールを行ないます。

 小型のリレーなら大抵のものが使えます。 ヒーター電源を使っているので、駆動巻線の電圧が8〜9Vくらいの物が適します。 5Vのリレーが多く出回っているようなので約3V分を直列抵抗で落として使うと良いです。 ここでは12V用が取りあえず使えたのですが、明らかに電圧不足です。(笑)

半導体を使ったキーイング回路
 これはCW送信機なのでとりあえず関係ありませんが、AMの送信機では変調をどうするかと言うのが問題になります。 変調器の製作もなかなか大変だからです。 その点、電信の送信機は楽ですが今度はキーイングをどうするのかと言う課題があります。

 QRPな送信機ですから大げさな方法は考えたくありません。 理想的にはブロッキング・バイアス・キーイングですが別にマイナス電圧の電源が必要です。 予めマイナス電圧が得られる電源があれば好都合なのですが、無ければわざわざ作るのも面倒です。 従っていちばん簡単なのは終段管のカソードキーイングになります。

 カソードキーングは終段管のカソードを電鍵で断続するだけなのでシンプルです。 しかしキーをアップしている状態ではGND間に高い電圧が発生しています。 そのため一般的なキーヤー(エレキー)では耐圧オーバーの可能性があります。 そこで耐圧の高いPower MOS-FETを介してキーイングするようにしました。 最初の写真では大きなMOS-FETが写っています。 間に合わせに使ったまででかなりオーバースペックでした。 QRPな送信機ですからドレイン・ソース間耐圧さえあればこの写真のように小さなMOS-FETが使えます。小型ですが耐圧のある2SK4150に置き換えました。

 前段のMOS-FET(Q1)には2SK422を使いましたが、手持ち都合なので入手が容易な2N7000に置き換えられます。 ただし2SK422と足の並びは異なるので規格表で確認して使ってください。 面倒なら2つとも2SK4150に統一しても良いでしょう。 なお、同じMOS-FETでも2SK241及びその同等品は代替に使えません。

 写真に見える黒い円盤状のZNRという部品は「サージ・アブソーバ」です。 FETの保護素子として入れてあります。 ブレークダウン電圧が200〜300Vの物を使ってください。 なくても動作しますが、入れておくと安心です。 普通に手に入る部品です。

 カソード・キーイングではあっても電子的なON/OFFですからスパークの発生はないため接点が原因のキークリックは生じません。 しかも一般的なキーヤー(エレキー)が使えるのでQSOも快適です。 バグキーや縦振れ電鍵でもOKです。

 このカソード・キーイング回路は大きめのMOS-FETを使ってやればパワフルな送信機にも使えます。 807や6146がファイナルの送信機にも適当です。 懐かしいTX-88A型送信機などに組み込むと扱いやすくなるでしょう。 +9V前後で10mAくらいのプラス電源を与えれば良いので簡単に組み込めます。 +9Vはヒータ用のAC6.3Vを整流して簡単に作れます。

小さなMOS-FETでもOK
 手持ちがなかったのでちょっとオーバーだとは思ったのですが、初めは2SK1248(新電元)と言う500V耐圧で10Aの電流容量をもったPower MOS-FETを使っていました。(写真手前)

 その後、調べていたら秋月電子で2SK4150と言うTO-92パッケージ(2SC1815と同じ形状)で耐圧の高いMOS-FETが見つかりました。 このFETはON/OFFスイッチとして動作します。  キーがアップされた状態では電流は流れず、ドレイン損失はほぼゼロです。 キーダウンすると導通して10Ω以下の抵抗を示します。キーイングする電流は35mAくらいなので、FETの発熱は高々12mWくらいです。 電流容量も0.4Aあって十分です。 従ってかなり小さなサイズですがまったく熱くもならず安全にキーイングできます。

 4M-P12や5AQ5のようなQRPなパワー管のキーイングには2SK4150で十分ですが807や6146のようにやや大きめの真空管には2SK1248のような大きなMOS-FETの方が安心感があります。 送信管のサイズによってキーイング・トランジスタ(MOS-FET)を選らびます。 類似のPower MOS-FETなら何でも大丈夫です。

#参考:2SK4150TZ-Eは10個¥250ーで秋月電子にあります。

コイルがキーパーツ
 真空管式の送信機と言うとステアタイトのボビンに巻いた大きな空芯コイルやエアーダックス・コイルが定番かもしれません。もちろんハイパワーなら相応の部品が必要です。

 しかし、ここで作るような数Wの送信機には大げさでしょう。 空芯コイルを使っても良いのですが、どうしても大型化します。さらにリンクの結合度調整など厄介になってしまいます。 たぶんブレッドボード向きではないでしょう。 ここではタンクコイルにAmidonのトロイダルコアを使いました。

 パワーが小さいのでT68サイズで十分使いものになります。コア材は#2(赤)です。 写真の左のように巻きます。 1次側はφ0.5mmのフォルマール線(PEW線)を28回巻きました。 2次側リンクコイルはテフロン被覆の単芯線(太さはAWG #32程度)を3回巻きます。 リンクの巻き位置はラフで大丈夫なので適当に1次側の中心付近に巻けば良いです。 作りっぱなしの無調整でかまいません。

 写真の中央付近にあるPSと書いてあるのは「パラ止め」で終段管のプレート回路に入れるものです。 これは100Ω 1/4Wの抵抗器の上にφ0.4mm程度の電線を6回巻きして自作したものです。 市販品はないので抵抗器の上に巻いて自作してください。 芯になる100Ωはソリッド抵抗が最適ですが無ければカーボン抵抗でも良いです。

 右上にあるのは2.2mHの高周波チョークコイル(RFC)で、ここでは透明なビニルチューブに入っているレトロなタイプを使いました。 しかし右側の青色のものでもまったく問題ありません。 QRPな送信機ですからせいぜい50mAくらいしか流れないので電流容量も問題になりません。 送信機のRFCと言うと分割巻きの空芯型をイメージする人も多いかもしれませんが今となっては入手しにくいし高価なのでお薦めしません。 QRP送信機には写真のようなもので十分です。 7MHzの送信機には470μHでも良いです。

 真空管式の送信機と言うと何か特別なコイルやRFCが必要になると思うかもしれません。 確かに50年前の製作記事を参考に製作したのでしたら今ではあまり見かけないような部品が使ってあるでしょう。 しかし、それらの部品はその当時の標準部品だったから使っていたのであって、今なら別の部品で間に合わせて支障ないのです。 あまり「昔の真空管製作」にとらわれ過ぎずに身近な部品に置き換えて製作すると楽に部品集めできます。

πマッチの実験とトリマ・コンデンサ
 写真左はT106-#6に巻いたタンクコイルです。 これはπマッチの実験に使ったものです。 πマッチ形式の方が効率が良くなるかもしれないと思ったので実験しました。 そのため少し大きなサイズを使い、コア材の損失が#2よりやや小さな#6材のコアで試しました。

 結果から言えば同調回路+リンク形式のタンク回路と効率ほか違いは見られませんでした。 終段管のドライブ条件が同じでプレート電圧も同じならタンク回路の違いで大きな差は出ないのでしょう。

 アンテナのインピーダンスが変化するような時はπマッチの方が幾らか有利です。多少の変化はあってもマッチングできるからです。 しかし昨今のアンテナは半導体が終段のリグに合わせて概略50Ωになっています。 従って負荷インピーダンスは概ね決まっていますのでそれに合わせたタンク回路を作れば十分です。 πマッチ形式でなくても十分行けることになります。 同調回路+リンク形式ならπマッチよりバリコンが一つ少なく済むのでリンク形式でまとめることにしました。 (必要に応じて外付けのアンテナチューナを使うのもお薦めです)

 写真の右側はマイカ・トリマ・コンデンサの加工方法です。 そのままではブレッドボードに載りません。 右端のようなピンヘッダを端子にハンダ付けして中央にあるような形状に加工しておきます。 これでブレッドボードにうまく搭載できます。

ネオン管を細工する
 タンク回路の同調指示用としてネオン管を付けました。 このネオン管は端子の片端のみタンク回路に接続します。 他端は遊ばせておきます。

 ハイパワーな送信機ならタンクコイルのホットエンドは強電界になるので片端を触るだけでも点灯するのですがQRPな送信機ではうまく点灯しないことがあるようです。 写真のようにネオン管の周囲にGNDからの電線を数回からげてやればうまく点灯してくれます。 ちゃんと波が出ているか視覚的にわかった方が楽しいのでネオン管はFBです。 タンクコイルのホットエンドに触れただけでは点灯しないようなら写真の様に細工します。

参考)「小型ネオン球」はサトー電気などで販売されています。(単価100円くらい)

チューニングにも
 送信が始まり、タンク回路がきちんと同調しているとこのように綺麗に点灯します。
  キーイングで明滅しますから電波が出ているのがビジュアルにわかって効果的でした。

 固定した周波数の送信機ですし、固定シャックでしたらアンテナも決まっています。 終段管のグリッド電流やプレート電流は製作後の調整時に確認しておけば大丈夫です。 もちろんそれぞれ電流計を付けて常時監視すればベストですがQRPな本機には少々オーバーに感じます。 プレート電流は50〜100mA程度の豆電球を直列に入れて監視する方法もあるのでメーターよりも簡便な方法として使ってみるのも面白いでしょう。 このあたりは各局のお好みで。

                   ☆

VVVでテスト電波】(ムービー)
ダミーロードを負荷にして受信機でモニターしながらキーイングしている様子です。 幾らかチャープするようです。 都合で受信機を完全にミュートせずにオンエアしたかったので水晶発振段込みでキーイングするようにしました。 発振段はキーイングせず送信中は動作させたままにすればチャープは殆どわからならなくなります。 キーイングモニタを別途用意するなどの方法で対応すると良さそうですね。(:再生すると音が出ます)


ミニパワーなので期待はしていなかったのですが、コンディションに助けられたのかCQを出したら続けて数局からコールを頂きました。微弱な電波を拾っていただき有難うございました。 QSLカードは既にe-QSLで発行済みで紙のQSLカードもJARLビューローへ送ってあります。いずれお手元に届くでしょう。(普段はe-QSL専門。紙QSL発行は特例です)

                   ☆

 初めて作った送信機は6CB6で変形ピアース型水晶発振させて終段の12BY7Aをドライブする形式でした。水晶発振子はFT-243型でした。 もちろんアルミの箱型シャシに組み上げたものです。 まだ電信の免許はなかったので変調機を付けてAMでテスト電波を出しました。 しかし飛びませんでしたねえ・・・。 パワーは5Wも出ていなかったと思います。QRPなAMの波はアンテナがかなり良くないと飛ばないみたいでした。(笑)

 もし、同じ送信機でCWにオンエアしていたなら違った印象を持ったかも知れません。 数Wもあれば国内くらいは十分行けるはずなのです。 そこそこ実用的だったでしょう。今さらながら電信の面白さを感じますね。

目標の10局交信はあっという間に達成できました。 少年のころとは違ってアンテナを含めて設備は良くなっています。 それでもQRPな1W少々ですから大したパワーではありません。 こんなもので楽しめるのですから面白いですね。 お相手いただいた各局の皆さんどうも有難うございました。 中には0.5Wや1WというQRPerも居られたようです。  目標達成ということで、ブレッドボードは元の更地に戻りました。第5送信機もバトンタッチです。 久しぶりに濃〜い真空管の話でした。 同じような構想を温めているHAMも多いと思います。 ブレッドボードを使うことで製作のハードルはずいぶん下がります。こんな方法でもオンエアできるので新たな目標としてチャレンジしてみてはいかが? ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2018年11月23日金曜日

【回路】A PWM Voltage Generator

回路:PWM式高精度電圧発生器の試作
 【PWM式の電圧発生器とは
 このBlogでは、しばらく前に精密な電圧発生器(←リンク)の製作を扱いました。

 精度の良い電圧発生の大元となる「基準電圧源」(=10.000V)の作成にはかなり拘ったのですが、それを分圧して様々な電圧を得ようとする部分はだいぶ妥協しました。 簡単な方法で高精度な分圧回路を作るのは難しかったからです。 少々精度が悪いのは目をつむって10回転のヘリカル・ポテンショメータで分圧する方法で済ませたのでした。

 任意の電圧を細かく取り出すには精密な分圧回路が必要です。 抵抗器とスイッチを使って合理的に分圧回路を構成する手法としてはKelvin Varleyのデバイダ回路(←リンク)があります。 しかるべきスイッチと抵抗器が手に入れば自作も十分可能です。 しかし精度や安定度を追求すれば結局は良質のスイッチや高価な抵抗器を求めるしかありません。実用品を作るにはなかなかハードルが高いのです。

 PWM式は時分割のテクニックを使って基準電圧を分圧しようとするものです。 原理的に時間精度だけで決まるため、デジタル回路が進歩した現在においては抵抗器による分圧方式よりも高精度が得られやすいのです。 周期が一定のパルス波(矩形波)のデューティ比をデジタル的に細かく変えて平均電圧として取り出そうとするものです。 D/Aコンバータの一種とも言えるでしょう。 動作原理はパルス幅変調(PWM)そのものです。 デジタル設定で数値的にパルス波の幅を変えて細かく任意の電圧を作り出そうとするのがこれから試作するPWM式電圧発生器です。

 この方式の大きなメリットとして2つ挙げられると思います。 まずは部品代が掛からないと言うメリットがあります。高精度抵抗器のような高価な部品は必要としません。良質の多接点スイッチも不要です。 もう一つはICを使ったカウンタ回路でデジタル的に(数値的に)実現するため製作の再現性がとても良いことが挙げられるでしょう。 しかし、これらはいずれも原理的な話ですから実際に製作して検証してみたいと思います。
 ディメリットとしては、設定してから安定した出力電圧が得られるまでにかなり時間遅れがあることです。 PWM式の説明には必ず「精度は良いのだが、遅いのが・・・」と言う一文が付いて回ります。 これもどの程度のものなのか実体験してみました。(後ほどムービーあり)

                   ☆

 RF発振器とかRF電圧計のような高周波用測定器なら自作HAMの興味の対象でしょう。たぶん直流電圧の発生装置など関心外かも知れません。興味がないものを無理して見る必要はありません。時間が勿体無いので早めのお帰りがです。 自身では回路実験で有用性を感じているためコンパクトな1台が欲しいと思ってきました。 直接的ではありませんがRFデバイスの評価やRF機器の開発・研究にも役立ちます。 そう思って必要な基板ユニットを製作し収納ケースを用意し、あとは箱に入れるだけの段階にあります。 実はそのまま停滞しているのですが理由の一つとしてこのPWM式を試してから・・・と言う気持ちがあったからです。 実験してみてまだ最終製作の決断はできていません。 以下は自家用のメモのようなものですがご興味でもあればそのあたりに至る経過など含めてお付き合いください。

PWM式電圧発生器・回路図
 ICを10個以上使うのでそれほど簡単ではありませんが、配線ミスさえなければほぼ確実に動作するので恐れるようなものではないです。 クロック周波数は250kHzですから高周波でもないため部品レイアウトや配線はクリチカルではありません。(もちろん常識的な製作の注意は必要です)

 この電圧発生器の構成要素は以下の5つです。
(1)基準電圧発生部・・・・PWM回路は電圧を精密に分圧するための機能です。
   従って、分圧すべき基準となる安定した電圧源が必要です。
   ここでは機能試作なのでTL431Cを使って簡単に済ませています。
(2)PWM回路・・・・C-MOS ICのアップダウンカウンタ:HD14516BPを使って
   実現しています。  3個をアップカウンタに3個をダウンカウンタに使います。
(3)クロック発振器・・・・カウンタの基準になる250kHzのクロックを作ります。
   Timer555などを使った弛張発振器でも良いのですが、水晶発振なら確実です。
   水晶発振子に8MHzを使ったのでHC-MOSの74HC4060Aを使います。
(4)時間電圧変換・・・・C-MOS アナログスイッチ:TC4053BPを使います。
   このTC4053BPの電源だけは他のC-MOSの+5Vとは異なる+15Vを与えます。
   PWM波の平均電圧化は抵抗器とコンデンサを使ったシンプルな形式です。
(5)出力アンプ回路・・・・負荷に影響されないように出力電圧を取り出します。
   この部分はアナログ回路でOP-Ampを使います。OP-07CPを使いました。

 その他の回路としてC-MOS ICの電源用に+15Vから+5Vを作っています。 C-MOSは+5Vで働いているのでアナログスイッチ(TC4053BP)のドライブ用にインターフェース回路が設けてあります。 高速SW用トランジスタ:2SC1216を使いました。 以上で全てですが、各部の働きは以下で細かく見て行きます。

 C-MOS ICが主ですから+5V系の消費電流は10mAくらいです。 ±15V電源で動作していますが、マイナス側の電圧は-15Vも必要ないので、ICL7660で+5Vから-5Vを作っても良いでしょう。 そうすれば+15Vの単電源にできます。

 いずれの部品も東京・秋葉原、大阪・日本橋や通販で容易に入手可能なものです。ブレッドボード上の部品の合計で2,000円以下で調達できるでしょう。  言うまでもないですが、恒久的に使うにはブレッドボードのままではダメです。

 機能試作なので出力電圧の設定はジャンパー線で行なっていますが、わかり易く設定できるよう工夫すべきです。 このあたりは使い勝手の改善なので改めて考えたいと思います。

(備考)回路図78L005Aのピン番号の間違いを修正。 (Ver.1.0.2: 28XI2018)

 【基準電圧源と+5V電源
 デジタル回路のほとんどは+5Vで動作します。 +5Vの消費電流は約10mAとわずかなので100mAタイプの3端子レギュレータを使って+15Vから得ました。 写真では東芝のTA78L005APを使っていますが一般的な「78L05A」で十分です。

  基準電圧発生にはTL431Cを使いました。 この基準電圧が発生電圧の精度や安定度を決めます。 本来は手抜きはせずにもっと吟味すべきですが、機能試作と割り切って採用しています。 TL431C周辺の抵抗器もごく一般的な金属皮膜抵抗なので100ppm/℃くらいの温度係数が予想されます。
 実験としてはこれでも十分ですが本式の製作時にはもう少し吟味しましょう。 TL431Cはパーツボックスから無造作に取り出したものを使いましたが、電圧で選別するのも簡単に可能な改善策です。 基準をどうするかは求める精度如何とも言えますが・・・。(TL431の端子電圧の話←リンク)

 【PWMカウンタ
 HD14516Bを3個使った12ビットカウンタを2系統作っています。 写真の上段は12ビットのアップカウンタで250kHzのクロックを4096カウントして1周期分の時間を作っています。
 4096カウントごとにNANDゲート2回路(沖電気製MSM4011B使用)で構成されたR-S Flip-Flopをセットします。 これがPWMを行なうパルスの1周期分の16.384ミリ秒(約61.04Hz)になります。

 写真の下段は12ビットのダウンカンタです。 こちらは上段のカウンタの1周期ごと(16.384mSごと)に、入力データ値に従った値にプリセットされダウンカウントします。 カウントがゼロになると、先ほどのRS-Flop Flopをリセットします。 セットからリセットまでがアナログスイッチが閉じて基準電圧がONになる時間です。 また1周期の残り、すなわち再びセットされるまでの時間だけGND側へONになります。
 ここでは「4516B」に日立製のHD14516Bを使いましたが、他社製の「4516B」も同じように使えます。

 カウンタに与える1クロックの周期は4μSです。標準C-MOSではこれくらいが無難なところでしょう。 高速応答のためにはクロック周波数をアップするのが効果的ですが標準C-MOSのHD14516Bではせいぜい2倍の500kHz(2μS)くらいが限界です。  高速化を目指すなら74HC191などHC-MOSを使います。

 【PWMクロックジェネレータ
 クロックはPWMの一周期のあいだ安定していれば良く、極端にふらつかなければクロック周波数は出力電圧の精度に影響しません。 従って4069UBのようなインバータ回路を使った簡単なRC発振器で済ませることもできます。 NE555などを使っても良いかも知れません。

 しかし安定している方が良いのは間違いないのでここでは8MHzの水晶発振子を使いました。水晶発振なら極めて安定ですから余計な心配をせずに済みます。 CD74HC4060Aは発振回路のほかにバイナリカウンタ(2進カウンタ)が内臓されていて各種の周波数が取り出せます。 ここでは1/32分周出力(Q5)を使い250kHzを得ています。 高精度の必要はないので周波数調整は設けていません。 使っている8MHzの水晶発振子はHC-49/US型のごく一般的なものです。(aitendoで購入)

 【PWMクロックは250kHz
 アバウトでも十分ですが、確認のために測定しておきました。 250kHzに対して3.45Hzほど高いですが全く支障ありません。

  とんでもない周波数になっていないか確認しておく程度で十分です。 74HC4060Aにはたくさん出力端子があって、様々なクロック周波数に切り替えられるので実験に便利です。 試作簡略化のためにSPG8651Bも考えたのですが100kHzが上限なので旨くありませんでした。 74HC4060Aを使ったクロック発生回路は水晶発振子さえまともなら確実ですから愛用の回路です。

 【レベル変換とアナログスイッチ
 アナログスイッチにはTC4053BPを使いました。 このアナログスイッチの部分は10V以上の電圧を扱います。 そのため電源電圧は+15Vで使います。 従って4053Bのスイッチ開閉も0〜15Vのロジックレベルを持った信号で行なう必要があります。

 C-MOS カウンタなど他のロジック回路は+5V電源で動作していますのでロジックレベル(論理振幅)は5Vです。 これをインバータを使ったロジックレベルの変換回路で5V系から15V系へインターフェースします。 インバータはトランジスタを使った簡単な回路ですがスイッチング・スピードが遅いとPWMに時間誤差を生じます。ひいては出力電圧に誤差を生じます。 そのためこのインターフェース用には特に高速スイッチング用に作られたトランジスタ:2SC1216を使いました。 当実験室ではほかに2SC269(NEC)、2SC395A(東芝)や2SC641(日立)も見つかりましたが「なるべく新しいものを」と言うことで2SC1216(NEC)にしました。 通販でどれかが手に入るでしょう。いちばん安価なもので十分です。 カタログを見て高速スイッチング用となっていれば他のNPNトランジスタでも大丈夫です。

 なお、汎用品の2SC1815GRだとスイッチングの遅れで-200ppmくらいの電圧誤差が生じますので、高速スイッチング用トランジスタの存在意義はあるようです。(当たり前ですかね・笑)

(参考)高速SW用Trと2SC1815の違い:高速SW用のTrとの違いは主に蓄積時間(ts)にあり、tsが長いためoffが遅れます。高速SW用のTrはベースに金(Au)をドープしてキャリヤのライフタイムを短くすることでtsを小さくしてあります。構造的な違いがあり、その副作用があるので増幅用としては最適とは言えません。しかし実際は使えなくもありません。

 【アナログスイッチと出力アンプ部
 アナログスイッチには各種ありますが標準C-MOSの4051B、4052B、4053Bが入手容易です。 ON抵抗はやや大きめですが、この用途では問題になりません。
 専用のアナログスイッチ・・・たとえばDG201CJとか・・・より高速なのも好都合です。 ここでは手持ちの関係でTC4053BPを使っています。 多少配線変更すれば4051Bや4052Bも使えます。 ほかに4066Bとインバータの4069B等で構成する方法があります。

 アナログスイッチの出力はHighが+10.24Vで、Lowが0Vのパルス波(矩形波)です。 周期は一定ですがHighの長さ(時間)が設定データによって変化します。 そのパルス波を抵抗器とコンデンサを使った「平均化回路」で精密な電圧に変換します。 平均化回路などと言うとたいそうですが、RCを使った単なる平滑回路に過ぎません。

 平均化回路の出力インピーダンスは高いのでそのまま電圧を取り出すと誤差を生じます。 OP-Ampを使った入力インピーダンスの高いバッファアンプ(ボルテージ・フォロワ)を設けて取り出します。 このOP-Ampはオフセット電圧が誤差の原因になります。オフセット電圧が小さく、そのドリフトも小さな高精度OP-Ampが適当です。
 ここでは安価なOP-07CP(TI製:秋月電子通商で@70円)を使っていますが、この目的には十分な性能です。 TI製OP-07CPの初期オフセット電圧は、max ±150μVで、ドリフトはmax ±1.8μV/℃の性能です。 初期オフセット電圧の分は調整で除去できます。
このOP-07CPの出力が精密な「設定電圧出力」となります。

試作品の成績
 左表は試作回路の成績です。 まずまずといったところではないでしょうか。

 精密という多回転ポテンショメータではせいぜい0.2%程度の設定精度しか期待できませんでした。 それよりも20倍くらい良い性能です。

 精度の目標値は書きませんでしたが、期待値として0.1%くらいの設定精度が得られればまずまずだろうと思っていました。そのくらいの精度は十分得られているようです。 ただし1V以下を出力すると徐々に精度は悪くなって行きます。 例えば10mVの0.1%は10μVですが、10Vから見たら1ppmの誤差です。これは容易に得られない精度です。 従って低い電圧の精度を追求するならアナログ的な手段で10V出力を1/10に分圧してやると高精度が得やすくなります。 実際の製作ではそうした工夫を加えたい感じです。 しかし、なかなか良い精度が実現できていると思います。

 室温の変化から、ざっとした温度系数を計算してみました。 現状では-45ppm/℃くらいの温度係数を持つようです。 まずまずと言えますが、これは基準に使用したTL431Cの温度特性とその周辺の抵抗器の温度特性がそのまま現れているのでしょう。 機能試作なのでラフに済ませましたが、本番の製作ではもうすこし基準電圧発生部を吟味すると改善できそうです。 できたら±10ppm/℃以内の基準電圧源が欲しいところです。 これについては過去のBlog(←リンク)を参照してください。

 このPWM式電圧発生器は、1ビットあたりの分解能は2.5mVになっています。 12ビットですから、全体では4096段階の電圧を発生できます。 2.5mV刻みに0〜10.2375Vが発生できるわけです。 ただし、わかりやすさなどを考慮して、下位の2ビットは使わず10mVステップで使うのが良さそうです。 その場合は0〜10.230Vの範囲となります。実用上、10mVの分解能でも十分だと思います。

参考:表ではゼロV出力でマイナスのオフセットが見られます。 その後、改めてゼロ調整とフルスケール調整を実施した結果、ゼロの残存電圧は室温20℃付近で±10μV以下に収まりました。 しばらく通電しておき動作が安定したところで入念な調整を行なうのが秘訣のようです。

コラム:DVMのレンジ間誤差
PWM式電圧発生器をテストしていてDVM(デジタル電圧計)のレンジ間誤差に気付かされました。 オートレンジで測定していたところ、10Vから始めて設定電圧を下げて行き、下のレンジに切り替わったとたんに比例関係を外れて誤差が大きくなりました。 わずかではあるのですが何故かと思って調べたらこれは使ったDVMの測定レンジ間に誤差があるからでした。 レンジを固定したまま測定すると綺麗な数値が得られるのです。 このPWM式電圧発生器はDVMのレンジ間誤差を表面化させるほど良好な直線性があるのでした。

                 ー・・・ー

 以上で簡単な動作説明と成績の報告を終えます。 こうした装置に興味を持つのは、ある程度高度な実験をされるお方でしょう。 あまり初心者向けの製作とは言えないので、常識的な話は省きました。 もし不明な点があればコメントなどお願いします。

                   ☆

 【電圧切替時の応答特性】(ムービー)
 PWM式の電圧発生器は設定値への応答が遅いと言う欠点があります。そう言われていても、実際の感触はどうなのか気になるところです。 このムビーでは4.880Vのところから、10.000Vへ設定を変えた直後の様子を写しています。
 おおよそ15秒程度で目標値の99%以内に収束しますが完全な安定までには30秒くらい待つ必要があることがわかります。 これを重大な欠点と見るか、製作が容易と言うメリットの方を取るのかは利用目的次第でしょう。(注意:再生すると音が出ます)

  いかがでしょうか? この程度の時間なら何とか待てると感じました。これで温度係数が小さくて超精密な分圧抵抗器は要りません。 安価で容易に製作できるメリットの方を重視したいと思います。 遅いと言う欠点を補って余るメリットがあると思います。もちろんもっと早く落ち着く方が良いに決まっていますが・・・。
 なお、複雑化しますが回路的な工夫と高速デバイスにより高い周波数のクロックを使って高速化する方法があります。 このムービより少なくとも5倍くらい早くすることは可能です。その代わり製作はそれなりに難しくなりますけれど・・・。

                    ☆

PWM式電圧発生器・全景】(エピローグ)
 PWM式電圧発生器の基本的な動作と性能を見極める目的で試作してみました。

 初めて作る回路なので、まずは様子を見る意味からオーソドックスでシンプルな構成から試すことにしたのです。 基準電圧合わせとOP-Ampのオフセット調整を行なっただけで実用になりそうな性能が得られたのは予想外でした。 ポイントさえ押さえておけば、かなりラフに作っても高精度が期待できそうです。

 やはりこのままでは出力電圧の設定が直感的ではありません。 デジタルICを並べてハードウエア的に純2進へ変換する回路の製作は大変です。 しかし、いまはワンチップ・マイコンが手軽です。 出力電圧をデジタル表示するにもマイコンを使うと便利ですから活用すべきだと思います。 今さらながらマイコンとプログラムの助けを借りないと合理的な製作もままならない時代なのですね。(笑)

 具体的な回路は示しませんが、データの設定にはシリアルデータをパラレルに変換するIC・・・例えば:NJU3714Dなど・・・の利用が便利そうです。 ピン数の多いマイコンを使いポートから直接データ出力する方法も良いかもしれません・・・。 難しくはないので、いずれそうした回路部分もやりましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

関連情報:精密電圧発生関連のBlog記事
(1)10V基準器と電圧発生器の研究・・・(ここ←リンク)
(2)電圧発生器を製作する・・・・(ここ←リンク)
(3) PWM式高精度電圧発生器の試作・・・(いま見ているここです)

参考文献:
(1)「実用電子回路ハンドブック:No.3」、トランジスタ技術編集部編、
   1978年8月10日初版、pp107〜109、オンデマンド版あり:¥3,888ー
   動作原理と具体的な回路が掲載されています。かなり古い設計です。
   PWM式電圧発生回路としてはオーソドックスな回路構成です。
   この実験でも参照しましたが、アナログ周りを主に全体を再設計しました。
(2)「精選アナログ実用回路集」、稲葉 保 著、CQ出版社、1991年9月10日第3版、
   pp386、オンデマンド版あり:¥3.564ー
   8ビットのPWM型電圧発生器が紹介されています。10mVステップで2.55Vまで
   出力可能な回路になっています。比較的新しいデバイスで構成されています。
   部品数が少ないのでお薦め回路の一つです。
(3)「デジタル技術を活用した高精度直流電圧発生器」、執筆者不明(共著記事)、
   トランジスタ技術1983年9月号、pp294〜299、コピーサービスで入手可能.
   高速化へのアプローチ手法が解説されています。 ただし、そのまま作らず
   吟味した方が良さそうに思います。 40HシリーズのC-MOSロジックICは
   入手困難なのですべて74HC系へ置き換えて再設計すべきでしょう。

 いずれもかなり古いので現在の部品事情を反映していません。 動作原理などは参考になりますが製作資料には不向きです。 いずれも必読とも言えないので機会でもあったら図書館などでご覧ください。 見つけられませんでしたが、他にも類似の記事があったと思います。

2018年11月8日木曜日

【回路】NIXIE Tube Clock Design, Part-2

NIXIE管を使った置時計の設計・その2
時計の数字表示器は
 前回(←リンク)はNIXIE管(ニキシー管)時計の機能部分を試作しました。 時計回路としての面白みは時刻を計数する「計時機能」の部分にあるわけですが、表示部がなければ時計にはなりません。

 ここでは旧ソ連製のNIXIE管( NIXIE Tube:米国Burroughs社の登録商品名)を使って作ります。 国産や米国製のNIXIE管も存在したので、手に入れば同じように使えます。 ただし、西側世界(古い言い方ですね・笑)ではNIXIE管は早々に廃れたので今となっては旧ソ連製の方が入手容易なようです。 それも徐々に価格が上昇してきたようなのでNIXIE管はお薦めしにくくなっています。レトロな雰囲気を楽しむには良いのですが・・・。

 もし表示器は何でも良いからデジタル時計を作ってみたいのなら7セグメントのLED表示器を推奨します。コストや入手性だけでなく性能も優れています。 最近のLEDは発光色にバラエティがあるのでかなり自由な表示色が選べます。 また輝度も高いので明るい環境でも読み取り易いです。 デコーダ・ドライバにSN7447ANやCD4511Bなどを使えばOKです。 +5Vの電源だけで済むLED表示器を使うと製作は容易です。  表示デバイスはLEDになっても、同じく停電対策された置き時計が作れます。
 また蛍光表示管(VFD)も綺麗ですが、+30Vくらいの中圧電源と数Vのフィラメント電源が必要なので幾らか面倒臭く感じます。

数字表示部の可能性は色々あるわけですが予定通りニキシー管で行くことにします。

# 数字表示部分がないと時計にならないのでさっそく検討を進めましょう。

ニキシー管置時計・表示部回路図
 前回作った時計のメイン・カウンタユニットの出力は2進化10進コード(BCDコード)です。 それを解読して10進表示器に合うようにします。 さらにNIXIE管は高電圧を扱うのでそれに合わせた耐電圧を持った駆動用のIC(ドライバIC)が必要です。

 デバイス史を紐解くと、NIXIE管用として10進解読と高圧駆動の機能を持ったTTL-ICとしては初めにSN7441Nが作られました。 しかしいくつか欠点があったので程なく改良版のSN74141Nが登場します。 SN7441Nも使えなくはないのですが、やはりSN74141Nの方が良いです。 この回路図もSN74141Nを使う設計です。
 表示管にはソ連製のNIXIE管: ИН-12Бを使います。 図面はИН-12Бを使う前提でドライバICと表示管の配線が書かれています。 ほかのNIXIE管も配線を合わせれば同じように使えるはずです。 特に小型のNIXIE管を使う場合は、R1〜R4の値を33kΩよりも大きくして電流が流れすぎないよう加減します。

 10時台の表示にはSN74141Nは必要なく、耐圧の高いNPNトランジスタで直接ドライブして点灯させています。 F335-1868と言う型番のトランジスタはたまたま手持ちがあったものです。番号はどこかのメーカーのハウスナンバーでしょう。 Vcboが250VくらいあるNPNトランジスタなら何でも良いでしょう。新規に求めるなら、MOS-FETの2SK4150が適当そうでした。トランジスタのコレクタをドレイン、ベースをゲート、エミッタをソースに置き換えれば他はそのままで置き換えられます。(2SK4150TZ-Eは秋月電子で10個250円)
 10時台の「0」は表示しません。  また、10分台は0〜5までしか表示されませんから表示管の「6」〜「9」への配線は不要です。
 時の表示と10分の表示の間にネオン管を2つ並べて「秒」で点滅させています。 この部分はLEDでも良いのですが雰囲気的にはネオン管でしょうね。 秒点滅用の信号はRTCモジュールの1秒出力から配線を引き出します。 NANDゲートとインバータで構成した回路は停電時に表示部と切り離すためのものです。

 製作するときはNIXIE管用の+180Vがほかのいかなる配線にも接触しないよう十分注意します。 間違ってたとえ瞬間的にでも触ってしまうと該当部分のICやトランジスタが破損します。 特にデコーダ・ドライバのSN74141Nは貴重品ですから壊れたら泣きです。

ИН-12Б
 表示管のИН-12Бを横から見た写真です。 写真上の面には型番などが書かれています。 キリル文字でИН-12Бとありますが、西側のアルファベットで書くとIN-12Bになります。

 反対の面(写真下)には「CCCP」とあって、旧・ソビエト社会主義共和国連邦で製造されたことを示しています。 ロシア製ではなくて「ソ連製」なんですね。

 規格や使い方の情報は検索ワードを「ИН-12Б」でやるとたくさん得られました。 ただしロシア語なので読めないのが難点ですが・・・。 それでも絵や図から想像してかなりわかります。(笑)

ИН-12Бの規格
 検索で見つけたИН-12Бの規格です。 この表示管にはA型とB型があって、ピンへの引き出しが少し違います。 使用するИН-12Б(IN-12B)には小数点の表示があって12番ピンに引き出されています。 なお、小数点は文字の前方(左側)に表示されるので何となく使いにくいです。

 使用するソケットですが、球を上下逆さまにしても装着できてしまうので気を付ける必要がありました。 アノードの1番ピンが上側に来るように装着します。

 何が書いてあるか翻訳エンジンを使って真面目に訳したら面白いのですが、ざっと眺めただけでも使い方はわかったのでこれ以上の探求はしていません。 もしきちんと翻訳されたお方があれば情報提供よろしくお願いします。(笑)

オリジナルはコレか?
 どうやらBurroughs社のB-5991というNIXIE管がオリジナルのようです。 形状やピン接続はほとんど同じです。 外周器がガラスでできたNIXIE管は見ただけでわかりますから、そっくり真似て作ったのでしょうね。

 B-5991はピンが2本多く、上下逆にはソケットに挿入できないようになっています。 また、ИН-12Бでは数字の「5」に「2」の文字を上下逆にして流用していますが、B-5991ではきちんとした専用の「5」の文字になっているようです。

 ソ連時代のИН-12БはB-5991のピン数を減らしたり、構成部品の種類を減らすような「合理化」が行われていますが、あまり感心しない努力のように感じられますね。(笑)

NIXIE管用デコーダ・ドライバ
 Digitalとの付き合いも永いので昔のデバイスが結構眠っています。 NIXIE管用のデコーダ・ドライバなんて他に使い道がないので捨てても良いくらいです。 まさか今頃になって使うとは思いもよりませんでした。(笑)

  手持ちがあるのはNIXIE管を使ったことがあるからです。 デコーダ・ドライバのSN74141Nは故障率が高くて壊れ易いと言われていました。半導体としては異例の高電圧を扱いますからねえ・・・。 手持ちはもっぱら補修用のパーツでした。 但し壊れたことは一度もありませんでした。 予備として最初から数個準備していましたが、知り合いの会社がもう要らないと言うので引き取ってきたように思います。 そのためか思ったよりも手持ちがありました。
  右手前の2個がSN74141Nです。これらを使います。 中央のК155ИД1(西側表記ではK155ID1)というのはソ連製の74141互換品です。 サンプルとして頂きましたが、最近はNIXIE管のドライバと言えばこちらを使うようですね。

 左方にあるDM7441ANやF9315はSN74141Nではなく、SN7441Nの互換品です。 あえて使う意味はないですし、以前テストした経験ではTI製よりも故障率が高かったです。 NIXIE管のおかげでジャンクのTTL-ICが復活しているようですが、素性をよく確かめてから使うべきでしょう。 ソ連製も少し心配はありますが、使用例をかなり見掛けますからそこそこ使い物になっているのでしょう。

# 写真左端のμPB217Cは同じレールに保管されていたので74141/7441の互換品かと思ったのですが、SN7475N(4ビットラッチ)の互換品のようです。

NIXIE管置時計・電源部回路図
 電源部をまとめておきました。 +180Vを作るDC/DCコンバータとデコーダ・ドライバのTTL-ICを動かすための+5Vを作ります。 また、時計のメイン・カウンタ・ユニットの電源と、バックアップ電源回路をまとめておきました。 バックアップは乾電池をやめて電気2重層コンデンサを使うことにしました。 停電はめったに起こらないので乾電池の必要はなさそうです。また電池と違って交換の手間がありません。

 +180V電源はMC34063Pを使った昇圧型のスイッチング電源、+5Vは3端子レギュレータのμA7806ACを使いました。 それぞれの電源は、+12Vから作ることになっています。 +12Vは1A程度の電流容量を持ったACアダプアで間に合います。 電源トランスと整流器+平滑コンデンサで作っても良いのですが、ACアダプタを流用するのが簡単でしょう。 少々変動しても大丈夫なので十分な容量を持ったACアダプタなら何でも使えるはずです。

 停電が発生したり、アダプタが抜かれるとNIXIE管の時刻表示は休止します。 時計用のカウンタ回路部分は電気2重層コンデンサに蓄えられた電荷でしばらくのあいだ動作します。 数日間は十分動作すると思いますのでバックアップとしては十分でしょう。

                   ☆

 時計は回路を収納する「箱」がとても重要です。 デジタル時計の自作が流行った頃ならデザインの良い「箱」がたくさん売られていました。 いまはもうほとんど見掛けませんから、自作で工夫しなくてはなりません。 海外のサイトなど参照するとアクリル細工や木工加工で素晴らしいデザインの筐体に収納されているのを目にします。 置時計と言えばやはりインテリアですからデザインにも拘りたいものです。
 表示器の回路部分は筐体のデザインや構造と密接な関係があるので製作は未着手です。うまい構造が浮かんできたら製作を始めしましょう。 とりあえず、このテーマはこれで終了します。 あとは工夫して形にまとめましょう。 しかし、案外バラックのような構造のままで完了してしまうんですよね。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2018年10月31日水曜日

【その他】Update Information (1)

Blogの更新情報
 さきほどBlogを更新しました。
180VのDC-DCコンバータのBlogに「電流アップ」の実験結果を追記しています。良かったらリンクからご覧ください。

リンク==>こちら

写真はお知らせとは関係ありません。 季節がら秋らしく紅葉の写真です。10月29日に軽井沢の「雲場池」で撮影したものです。 ちょうど紅葉の見頃でした。天候にも恵まれました。 秋も深まって里の方へ紅葉も降りてくるのでしょうね。 朝晩はずいぶん寒くなってきました。 風邪など引かれませんように! de JA9TTT/1

(おわり)22nd

2018年10月25日木曜日

【回路】NIXIE Tube Clock Design, Part-1

NIXIE管を使った置時計の設計・その1
  前回(←リンク)はNIXIE管(ニキシー管)表示器の昇圧電源を試作しました。 思ったより簡単な回路で点灯に必要な電源が作れました。 ではNIXIE管で何を作るのか?・・・と迷ったのですがオーソドックスにデジタルクロック・・・置時計を作ることにします。 電圧計や周波数カウンタでも良いのですが、せっかくの表示器ですから誰にも手が出しやすそうな製作にしましょう。(笑)

 NIXIE管を使ったクロックはネット上でよく見かけます。製作キットも売られており人気があるようです。 しかし、ニキシー管は時計用の表示デバイスとしてあまり適当ではありません。 LEDや蛍光表示管に比べて点灯寿命はかなり短いのです。 これから使うソ連(ロシア)製のNIXIE管がどれくらいの時間使えるか未知数ですが、ここは遊びと割り切ってやってみることにしました。 さっそく改題して設計を始めます。

                   ☆

  今回はNIXIE管を使う表示部分は登場しません。 表示器ドライブは単純な回路ですが電源部と合わせて次回をお楽しみに。 まずは時計の機能を司る部分を設計・試作します。 時計の計数部はデジタル回路の基本のようなもので、過去にはたくさん製作例がありました。 ここで作るものも定番と言えますが水晶発振子(クオーツ)を基準にし停電しても時刻は保持される形式にしたいと思います。 しかし時計なんてデジタルの製作としては平凡でしょう。 何か少しでも特徴を持たせたいものですね。 あまり興味のないお方は早々にお立ち去りください。時間を無駄にされませんように。 以下、おもに自家用の設計メモです。

 【クロック本体部分の開発
 試作中の時計の主回路部分です。

 時刻の刻みの基準としては:
(1)AC電源の50/60Hzを使う方法
(2)水晶発振子(クオーツ)を使う方法
(3)GPSからの1pps信号を使う方法
(4)ルビジウム原子周波数基準を使う方法・・・など幾つか考えられます。

 それぞれ検討してみると、(1)のAC電源の方法は停電になるとまったくダメですし、場所を移動するたびに時刻合わせが必要になります。これでは不便なので適当ではないでしょう。 マイコンの助けを借りれば(3)も良いのですがやや大げさですし電波の入りが悪い所ではうまくありません。外付けにするとアンテナが紐付きになるのもイマイチです。(4)は原子時計ですから正確無比ですが、消費電力が大きいのでバックアップは困難です。手軽に遊ぶにはやり過ぎでしょう。 他にも今の時代ですからIoTの応用でインターネットを経由した自動的な時刻合わせもありそうです。  結局、(2)のクオーツ式はオーソドックスですが実用品として優れていると思います。 使うデバイスを選べば消費電力はごくわずかですみます。 AC電源が切れてもバックアップされるように作っておけば場所の移動や持ち運びも自由自在です。 時刻合わせも電池交換の時だけで済みます。 ここでは水晶発振を基準にしたクオーツ置時計を作ることにします。

                   ☆

 時計は停電時のバックアップが問題になります。 NIXIE管は消費電力が大きいので点灯させたままでバックアップするのはたいへんです。 商用電源・・要するに家庭のAC100V電源ですが・・が来ている時はNIXIE管が点灯して時刻を表示します。 滅多にありませんが、停電すると表示は消えますが時刻の歩みはそのまま継続されるような設計にしましょう。AC電源が復帰したら正しい時刻で再び点灯するわけです。 計数部分の電源は乾電池を使って少なくとも1年以上交換せずに使えるよう考えます。或いは電池での動作はバックアップ時のみと言う考え方もあります。 いずれにしても時計機能の低消費電流がポイントと言うわけです。 また、停電時における表示回路部と時計機能部の自動的な切り離しも重要な課題になりそうです。  それらを考慮して試作したのが写真のボードなんです。

クロック本体部分の回路図
 時刻の基準発振には秋月電子通商で売られているRTC基板モジュールというものを使うことにしました。 特徴などについては後ほど扱います。その部分の図は省いています。(注:図面の説明にミスがあったので更新しました。2018.10.27)

 時刻表示のうち秒の表示はやめました。 自室にある時計を見ても秒の表示はなくても良いと思います。 ただし秒毎にブリンクする表示は付けようと思います。 しかし秒の点滅はない方が好ましいかも知れません。 寝室では夜間に明滅する光はかなり目障りに感じるものです。 周囲が暗くなったら点灯を止めるのも良さそうです。 ここでは秒の表示器は設けませんでしたが、必要があれば追加も難しくありません。 装飾的な時計としては秒の表示があると良いかも知れません。秒の表示を追加するには、秒カウンタの部分:U1のところに分の桁と同じ配線を追加すればOKです。

 カウント部分はすべてC-MOS ICを使って低消費電流に努めます。 カウントする基準クロックの周波数は1Hzですから、静止状態とほぼ同じですからC-MOS ICの消費電流は非常に少ない筈です。 電源電圧は乾電池3本分の4.5Vで設計します。 電池ですから徐々に低下しますがC-MOS ICですからほとんど支障はないでしょう。 3V以下まで十分動作できます。 NIXIE管ドライバのTTL-ICがうまくドライブできなくなったら交換どきです。

 表示部分はC-MOS ICではなくTTL-ICで作ります。 次回のBlogで扱いますがNIXIE管用のデコーダ・ドライバであるSN74141Nを使います。 SN74141NのようなTTL-ICは消費電流が大きいので電池での動作には向きません。 従ってTTL-ICを使った回路部分はAC電源が途絶えたら休止するような設計にします。 意外に難しいのは、動作している回路(時計のメイン回路部分)と、休止する回路(数字表示の回路部分)との分離にあります。 両方が動作している時は良いのですが、休止部分との切り離しがうまくないと電池で動作している部分から意図しない電流の流出が起こり電池の消耗を早めます。

 ここでは配線が少し面倒ですがANDゲートを使った自動切り離し回路を設けました。 TTL-ICの電源系統の動作が止まると接続部のすべてのデータラインがローレベルに落ちて電流の流れ出しを防ぎます。 秒で点滅するLEDもドライブ回路には2N7000というエンハンスメント・モードのMOS-FETを使うことで切り離せます。 このような対策を行なうことで時計のメイン回路部分はAC電源が途切れても継続動作し、わずかな消費電流で計時を継続します。

 時計としての回路はオーソドックスなものです。 まず、RTCモジュールから来る1Hz(=1秒)パルスを60進カウンタでカウントします。 60進カウンタから1分ごとに桁上げのパルスが出ますので、再び60進カウンタで「分」のカウントを行ないます。 1時間ごとに桁上げのパルスが出ますが、12時間モードでは12進カウンタで、24時間モードでは24進カウンタで「時間」の計数を行ないます。 12時間モード、24時間モードはスイッチで切り換えます。 時刻合わせは最も単純な形式です。 時刻合わせスイッチを「セット」の位置にすると、分のカウンタのところに1Hzが供給されるので60倍の速度で時刻が進んで行きます。同時に秒のカウンタはリセットされます。 表示がセットすべき時刻のところに来たらノーマル状態に戻します。 最長ではセットに24分近く掛かってしまいますが滅多に合わせる必要はないので簡単に済ませました。 やってみると操作性はいま一つなので改良した方が良いと思います。

 # あとは特に難しい部分はなです。 時計の回路なんて単純ですからね。(笑)

 【仮設表示器でテスト
 正式な表示部はこのあとNIXIE管で作ります。 ただし回路の設計検討には高電圧を扱うNIXIE管は好ましくありません。 検討中にうっかり高電圧に触ったら感電しますし、低圧部の配線と触れれば部品が壊れます。 開発中は動作の様子がわかれば良いので簡易なBCD表示(2進化10進表示)のディスプレーを仮付けしておきました。

 写真の例では13時33分を表示しています。 デジタル回路がわかる人には簡単ですが知らないと読めないでしょう。 教えてもらえば誰でもすぐわかるとは思いますけれど。 昔、BCD表示式時計を作ったのを思い出します。 あれはちょっと読みにくかったですね。(笑)

 このような表示器を仮設して時計の機能を確認しました。 この時計は12時間表示のときには11時59分のあと0時00分を表示します。 24時間表示の場合は23時59分のあと0時00分になります。  本番の表示器(次回予定)ではそのままの数字が表示されますからたやすく読み取れます。

テスト用クオーツ信号源
 出来上がった回路を作るだけなら苦労はありません。 しかし時計回路の開発は意外に面倒くさいのです。 論理回路が正しく設計され、きちんと時刻になったら桁上げ動作が行なわれるか確認しなくてはなりません。

 まさか回路をいじるたびに1時間あるいは12時間とか24時間待つわけにも行きません。 最終的には1Hzが得られるRTC基板モジュールを使いますが、テスト段階では発振周波数が色々変えられるSPG8651BというICを使いました。 例えば1000Hzを出力すれば1000倍早く計数が進むので迅速な動作確認ができます。

 このSPG8651Bも正確な1Hz(=1秒)が取り出せます。 内部には100kHzの水晶発振子が入っており精度も良好です。 しかし電池でバックアップするような時計には消費電流が大きすぎます。 測定したら約90μAほど流れました。 90μAなどわずかだと思われそうですが「RTC基板モジュール」ならずっと消費電流は少ないです。 回路の開発や動作テストにSPG8651Bは便利ですが、そのまま時計に使うのは適当ではありません。

RTCモジュールに換装
 正常に動作することがわかったのでRTC基板モジュールに交換しました。 交換しても支障なく動作してくれます。

 なお、手前の青色LEDは秒信号の点滅表示です。 本番の製作ではこの場所に付けるわけではありませんが、試作時の動作モニタ用です。

 本製作の際にはLEDの色もオレンジ色か赤色を使いNIXIE管の発光色と合わせたいと思います。 まあ、この辺はお好みですけれど。 青色でも緑色でも構いませんし、どうせAC電源が切れたら消灯させるのですから、180Vの電源もあるのでネオン管を使う方が相応しかもしれませんね。

RTC基板モジュール
 EPSON製のリアルタイムクロック:RTC-4543SAは表面実装型のICです。 32.768kHzの水晶発振子と分周回路、それとリアルタイムクロック回路が内蔵されています。 それを基板に実装した扱いやすいモジュールが売られています。

 マイコンを使ったクロックを製作するのでしたら、そのリアルタイム・クロック機能を有効に使うのが良いでしょう。 このモジュールのみ電池でバックアップします。 内部には時計とカレンダーの機能が内蔵されており、マイコン経由で事前に設定しておけば、バックアップさえしておけば時刻は継続して計数され続けます。 AC電源が復帰したら読み出せば時刻も復帰すると言った便利な方式も可能です。 今の時代ですから、時計の回路をハードウエア的に製作するよりもマイコンを使う方が合理的かも知れません。 そのような時には機能をフルに使うとFBです。

 もちろん、相応の機能を持ったプログラムを書き込んだマイコンが必要です。 自分で開発することも可能ですが、誰でも作れる製作ではなくなってしまうでしょう。 ここではRTC基板モジュールの1秒出力機能だけを使うことにしました。 フログラムの話は忘れてOKです。(笑)

RTC基板モジュールの使い方
 秋月電子通商で売っている商品には詳しい説明書が付いています。 読めばわかりますが、左図のような配線で使います。

 基板に実装済みですし、2.54mmピッチの端子が引き出されているので実験だけでなく実用にも使いやすくなっています。 通販で購入した袋には450円のラベルが付いていましたが値下げされているようです。 入手価格は300円でした。(2018年9月現在)

 32.768kHzの水晶発振子の手持ちも有ったのですが、総合的に見て価格相応の価値があると思います。 実際に32.768kHzの発振子で作ってみたのですが発振回路と1Hzへの分周回路を非常に低消費電流に作るのはなかなか困難です。 このRTC基板モジュールは周波数の調整ができませんので、あとは精度がどのくらいかというのが気になりますね。

RTCモジュールの精度は
 1Hz出力について、さっそく実測してみました。 写真のように0.2049マイクロHzだけ高いようです。 これは+0.2049ppmの誤差ということになります。

 一年は31,536,000秒ですから、約+6.5秒の誤差が考えられます。 実際には年間を通じた気温の変化や水晶発振子自体のエージング特性による変動があるのでもっと誤差は大きくなるかも知れません。 一般的に水晶発振子はエージングによって周波数が低下する傾向があるようです。そのため誤差が少なくなる可能性もありますし、行きすぎてマイナスの時刻誤差になるかも知れませんね。 こればかりは連続動作させてみないとわかりません。 それにしてもなかなか良い初期精度だと思います。 もっとも、無調整なのですからこのくらいの精度になっていなくては困りますけれどね。(笑)

本体回路の消費電流は
 AC電源が途絶えたときの状態を作り出して消費電流を実測してみました。
 実際に製作した回路の全消費電流をICの規格表から推定するのは意外に難しいのです。 各ICの標準値の積み重ねでは実際と10倍以上も違うことがあります。 やはり実測してみるのが確実と言うことのようです。

  仮設の表示器や青色の秒点滅LEDはすべて消灯しておきます。 テスターの最小電流レンジ:100μAフルスケールレンジで読み取っていますが指針はほとんど振れません。 1目盛りは2μAですが、その半分くらいしか指示しないのです。 RTCモジュールの分も含まれるので、もう少し大きいかと思ったのですが驚くほどの低消費電流でした。 C-MOS ICのスタティックに近い動作はほとんど電流を消費しないことがわかりますね。 この状態で計時の動作はきちんと行なわれています。

 アナログなテスタではこれ以上読めませんので、電源回路に1kΩを直列に入れ、その抵抗の両端電圧を測定して電流に換算してみました。 電圧測定にはデジタル・マルチメータを使います。 電源回路に1kΩも入れたらさぞかし電圧降下が大きかろうと心配になるかも知れません。 しかし1kΩの両端にはわずか1.3mVしか発生しませんでした。 電源電圧4.5Vに対して1.3mVなど誤差のようなものです。 1kΩに1.3mVというのは、そこに流れている電流はたったの1.3μAです。(実際には計時状態による変化があり、約1.0μA〜1.3μAで変動しています) 1kΩでは測定しにくいようなら10kΩにすると良いでしょう。

 単3電池3本でバックアップ・・というよりも常時動作させるつもりですが、これなら間違いなく1年以上の電池寿命が期待できます。 むしろ電池の長期保存特性の方が問題になりそうです。 あるいはもっと小さな電池・・たとえばボタン型電池など・・を使い、電池はバックアップ専用にすると言った方法も検討中です。 バックアップ専用なら電池の代わりに電気2重層コンデンサ(EDLC:スーパーキャパシタとも呼ばれる)という手もありそうです。 例えば1F(1ファラド)の容量なら数十日間のバックアップも十分に可能そうですから普通の停電対策でしたら支障ないでしょう。 電気2重層コンデンサなら電池のように交換の手間が掛かりません。 これで停電しても時刻合わせのいらないNIXIE管式置時計が作れそうですね。

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 オーソドックスで平凡な時計回路ですが、実用になる時計が作れそうです。  過去に置時計は何回か製作しています。いずれも専用の時計用ICを使ったものでした。 有名な時計用のLSIとしては、ナショナル・セミコンダクタ社のP-MOS ICである、MM5311やMM5316がありました。 それらを使いLEDや蛍光表示管式の置時計を作ったものです。 これらのICはいずれも50/60Hzの電源ライン周波数を基準にしていました。 AC電源の周波数は日々監視されていて電力会社は前日の累積誤差を次日に補正しているそうです。 時計のように累積精度が問題になる機器では誤差が補正され続けるのはたいへん好都合です。
 瞬時的な安定度は水晶発振子に敵いませんが、累積精度ではAC電源を基準にした方が良いのかも知れません。現代の日本ではめったに停電も起こりません。 しかしここで使ったRTCモジュールも0.2ppmくらいの誤差なら十分実用的と言えます。 それにAC電源が途絶えても大丈夫なので停電対策だけでなく、場所の移動にも便利というメリットもあります。 この次は表示ドライバ回路とAC電源周りを扱いたいと思います。 ではまた。 de JA9TTT/1

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