【なかなか便利なツール】
【コテ先クリーナ】
これは従来型のコテ先クリーナです。
最近のものは少しだけバージョンアップしています。 真ん中に仕切りがあり、スポンジは2つに別れています。
汚れて来たら裏返して4回奇麗に使えるとか、まあ幾らか改良も見られますけれどウン10年も前からあんまり変わっていないよナア・・・。
ハンダ付けを始めるにあたってコテ先をコレに「ジュジュッ」とやるのは儀式のようなもので、やらないと何となく始まった気がしない?(笑)
今さらですが奇麗なハンダ付けにはコテ先の管理は必須です。温度を適切に保つのはもとより付着している酸化したハンダやフラックスの「コゲ」などを奇麗にぬぐってから始めなくてはなりません。 ハンダ付けした箇所も重要な「接続部品」の一つであり、しかも機器全体では沢山ありますからその出来具合が機器の信頼性を左右します。 「イモ」や「天ぷら」があるようではいつまでたっても初心者の域を脱することはできません。
【新種のコテ先クリーナ】
こちらは新種のコテ先クリーナです。
製品の包装箱にも書いてあるように、「水がいらない」のが最大の特徴です。
この種のコテ先クリーナはずいぶん前からあったと思いますが、優れモノだと感じたことはなありませんでした。 コテ先が何となく・・・満足行くほどには奇麗にならなかったからです。
少し前に「なかなか使い良い」と言うSNSの口コミがあったので買ってみることにしました。 右の黒いシリコーンゴム製(?)のホルダーに入ったのが使用状態で、左の包装箱の前にあるものは交換用スペアです。 金色のタワシはスペアとして単体でも売っています。最初にホルダー付きを買うと予備が一つ付いて来ます。秋葉原の工具店で630円でした。
【使ってみる】
では、さっそく使ってみましょう。
ぬぐうように擦り付けてはいけないと取説には書いてあります。 溶けて熱いハンダがタワシの弾力で弾けて飛散する可能性があるからです。 タワシ部分は弾力のある金属泊片のようなものでできています。
余分なハンダやフラックスのかすがついた先端を写真の様にストレートに突き刺してみます。 そのまま抜き出すと、それだけでピカピカの先端になってくれました。 これは便利そうです。
このようなコテ先クリーナが重宝される背景には「鉛フリーハンダ」が一般化したことにあるようです。 濡れスポンジでコテ先温度を下げてしまわぬためだそうです。 確かに、コテ先温度は共晶ハンダ(錫63%の一般のハンダ:融点180℃くらい)に比べ、鉛フリーハンダには更に60℃くらい高温が必要です。 水を含んだスポンジでぬぐったのでは温度はなかなか回復しないでしょう。 そのようなニーズから普及し改善された製品です。 共晶はんだでの作業でも便利なので☆4つくらいのお薦め品だと思いました。 なお、RoHS対応の作業現場ではコテ先クリーナと言えども共晶ハンダ用とは別に鉛フリーハンダ専用を用意しなくてはなりません。
【汚れて来たら】
ハンダが溜まって汚れて来たらこのように取り出してお掃除します。
もちろん、溶けた熱いハンダが残っていないのを確認してからでないと火傷します。 その点は十分注意を!
使っていてだんだん潰れて復帰しなくなったら交換時期です。 いまのところ使い始めなので快適その物ですが、そのうち様子もわかって来るでしょう。
なかなかなコテ先クリーナだとは思いますが、濡れたスポンジ式のクリーナも有った方が良さそうです。 使い勝手はそれぞれなので、コテ先の状態に応じて使い分けるのが最も良さそうだと言う結論になりました。
☆ ☆ ☆ ☆
【電線被覆剥がしゲージ】
Wire Stripping Gaugeと言うツールを頂きました。 この6月に発売されたばかりの新製品だそうで、これは嬉しいプレゼントです。(TNX! LVE)
写真を見ただけでは何にどう使うのか皆目わからないかも知れません。
これはブレッドボードで回路を製作する際にたくさん必要になる「ジャンパーワイヤ」を作るときに切断と曲げのために使うゲージ治具です。
「ああ、そんなものか」と思うのは、ブレッドボードを使った製作経験がないか、ごく簡単なものしか作っていないお方です。 定型寸法のジャンパー線を効率的に作成するために使います。 有難さは使った人でないとわからないと思いますが、ともかくかなり便利です。いつもジャンパー線作りは面倒だと思っていた人は買って損は無いと思います。(通販参考価格:$12-)
【セッティング】
ワイヤストリッパにこのようにセットします。
この例ではIDEAL社のT-7シリーズ45-417と言うワイヤーストリッパに装着しました。 他の物でももちろん良いですが、材料に使う線材に合わせた線径のストリッパが必要なのは言うまでもありません。
ゲージその物は樹脂製で軽いため作業性を損ないません。 使い方はリンク先(→ここ)のビデオでも見て頂くのが一番だと思いますが、道具一般に言えるように使って慣れるのが一番です。 最初は勝手が掴めず、ギクシャクして使いにくいモノに感じましたがそれもほんの束の間、非常に便利なことがわかりました。 これも☆4つくらいのお薦め品だと思います。
■参考までに私の作業手順ですが:
START→
(1)片側を所定の剥き代で被覆を剥がす.→
(2)剥がした部分を穴に差し込んで曲げ加工する.→
(3)曲げた部分をゲージ目盛に合わせて切断する.→
(4)いま切断した側の被覆を剥き代で剥がす.→
(5)いま剥がした部分を曲げ加工する.→完成.
・・・と言う手順がやり易いようです。
たくさん作る時は(3)まで行なった物を溜めておき、溜まったところで(4)以降を纏めて行なうのも悪くありませんでした。 各自が良い方法を見つけるべきでしょう。
【ジャンパーワイヤ】
写真はツールを使って製作したジャンパーワイヤです。
写真ではオレンジ色が2列飛ばし(4列間接続用)、黄色が3列飛ばし(5列間)、緑が4列飛ばし(6列間)のジャンパー線で、長さごとに色分けを統一しています。 何色を使っても良いですが、長さごとに色分けしておくと使い易いようです。
もともとは秋月電子通商で売っているジャンパー線セットの色分けを踏襲した配色です。一応、長さ順にカラーコードになっていますね。
こうした寸法精度が良い定寸のジャンパー線が正確かつ迅速に作れるメリットは大きいです。 始めたら面白くなってしまい一気にたくさん作ってしまいました。(笑)
まあ、道具の評価はそれぞれの使用感なので、便利に感じなくても責任は持てません。 私のブレッドボード製作に於いては作業効率にずいぶん差が出るように思います。
【ジャンパー線はこんな感じに】
既にお馴染みと思いますが、ジャンパー線はこんな感じに使います。
短いオレンジ色と黄色、そしてここでは使っていませんが赤の1列飛ばしのジャンパー線を一番たくさん使うので、既製のジャンパー線セットを買ってもすぐ不足してしまうでしょう。
もちろん、回路のテストが終われば解体してリサイクルしますからある程度あれば十分かも知れません。 しかし、作ってすぐに分解してしまうのは稀で、そのまま暫く様子を見ることも多いのです。 予備のブレッドボードと、ジャンバー線はいつも十分な量を用意しておくと試作が捗るように思っています。
(写真は余興で作ったスーパーリゼ)
☆ ☆ ☆ ☆
梅雨の季節、表で遊べないからコテ遊びやブレッドボードで電子工作はいかが? 道具ばかり揃えても、それだけで満足しては何の進歩もありません。 けれど、ちょっとした工夫や道具で効率アップすれば面白さや興味も続くでしょう。 ちょっと便利な小物を紹介してみました。 この種の小物が有効か否かは各自の作業内容次第なのでよく考えてから導入されて下さい。 作業に合わなければてんで使い物にならないのは勿論です。
TRIOのLPF、LF-30の改造も済んでいたのですが興味を持つのはごく僅かでしょう。 軽い話題と言うことで身近なツルールを話題にしてみました。 de JA9TTT/1
(おわり)
御注意:このBlogはアフィリエイトBlogではないので、特定商品をお薦めする意図はありません。自身のニーズを良く考え、無駄使いのないように。使うアテのないものにお金を使うのは勿体ないです。 以上全ての内容は単にこのBlogオーナーの個人的な感想です。
2014年6月15日日曜日
2014年6月1日日曜日
【測定】TRIO LPF LF-30 : Part 2
【TRIOのLow Pass Filter:LF-30 その2】
【LF-30を解析する】
TRIO/現KenwoodのTVI対策用ローパスフィルタの第2回です。前回(←リンク)はLF-30の電気的な特性を確かめ、更に開封して中身を眺めたところまででした。
写真は少しだけお掃除をした状態です。 ずいぶん長く眠っていたのでホコリだらけでした。 どこかにガムテープで貼付けて使っていたらしくテープの糊が残っていました。 その糊も粘着性をまったく失っており、除去するのは少々厄介した。 有機溶剤を幾つか試して除去に成功しましたが、塗装も幾分やられた感じです。 まあ、ある程度やむを得ません。
この先は、内部のコイルとコンデンサの値を調べ、シミュレーションと実測による特性の比較を行ないます。 解析してレプリカを作りたい訳ではありません。いずれ改造するにしても現況がどうなっているのかわからなくては方針も立てにくいからです。ここは一通りの調査をしておきます。 なお例によって自家用の記録なので記述の過不足は悪しからず。(笑)
【LF-30のLとC】
LF-30の電気的な構造は単純です。 写真のような数回巻きのコイル:Lと、右の方に見えるネジと銅の円盤、そして薄い樹脂製フィルムとで構成されたコンデンサ:Cからなっています。
コンデンサ部分は円盤の中心部に貫通穴があって、そこをネジが突き抜けており、両側からナットで円盤を締め付けています。 フィルムの厚みと円盤の面積でキャパシタンスの値が決まります。
見た所、コイルは両端のコネクタに繋がる2つが同じで、他に比べて巻き数は少ないです。途中の3つのコイルは両端よりも巻き数が多くなっています。 コンデンサ部分は円盤のサイズが同じなのでフィルム厚が同じならすべて同じ容量でしょう。
構造からT型のLPFを重ねたLPFの形式です。 そう考えると途中3つのコイルは同じインダクタンス、両端の2つはその半分のインダクタンスでしょう。 また途中のコンデンサはどれも同一の容量だと推測できます。
【コンデンサの測定】
各容量の測定は一旦分解しないとできません。 なるべく変形させないようにコイルのハンダ付けを外しました。 コンデンサはいずれもGND間に入っています。
測定には「小容量計」を使いました。 ここは例によってLCRメータのDE-5000でも良いです。 それほど微小な静電容量ではないし、テフロンを誘電体に使ったコンデンサは絶縁抵抗が高くHigh-Qです。従って測り易い対象です。 フィルムの耐熱性を確認したらほぼテフロンに間違いないようでした。
余談ですがテフロン・フィルムを誘電体に使った山七商店の「テフコン」と言うポリバリコンに良く似たバリコンがあったのを思い出します。 あれは安くて耐圧もあってなかなか良い物でしたが流行りませんでした。 商品としてやや詰めの甘い部分があったのが原因かも知れません。
【Cの値は良く揃っていた】
測定結果は後で出て来る回路図に記載しました。図中の(1)の回路の定数が実測値そのものです。 多少のばらつきは見られましたがコンデンサはどれも120pFを目標に設計しているようです。 4つの平均値は122.75pFでした。
なお、測定にあたっては接続線のストレー容量をキャンセルしています。 のちほど改めてDE-5000で測定し、比較しましたが測定値は良く合っています。
こうした構造のコンデンサも円盤面積を良く管理すれば数%以内の精度が保てるのでしょう。テフロン・フィルムの入手に問題はありますが、高耐圧のコンデンサが自分できそうです。
【久しぶりにGDM登場】
コンデンサとちがって小さなインダクタンスの測定にDE-5000はあまり向きません。測定周波数が100kHzまでなので精度が出ないのです。
ここは昔ながらのGDMで行くことにしました。 容量が確かなコンデンサと抱き合わせて共振周波数を測定し、インダクタンスは周波数とコンデンサの値から計算で求めます。
GDMの周波数測定精度はせいぜい頑張って3桁くらいでしょう。下手をすれば2桁ですが、その程度で支障ありません。無極のLPFではLCの値にシビアさは必要なかったと思います。
1968年ころ購入したGDMで、しかも暫く通電していなかったので、徐々に電源電圧を加えて支障ないことを確認してから使いました。 周波数カウンタがなかった時代には精度の良いデリカのGDMは重宝でした。 今回、あらためて目盛をチェックしたらまずまず合っています。流石にDELICAと言うべきでしょうか。hi
【一般的にはこれで良いが】
コイルの測定ですがこのように測定すれば良いです。
真空管式ですから、10分程度ウオームアップします。最初に発振強度の調整(注)をしたら、まずはコイルを近づけて高い周波数から下げて行き、良くディップする周波数を見つけます。
(注:発振強度の調整:DELICAのGDMではメーターの指針が中央部青く塗られたゾーン内またはそこまで振れぬ場合は最大まで振れる位置に発振強度調整のVRを加減します)
その後はGDMのコイルと被測定共振回路の結合がなるべく疎になるようにGDMを遠ざけて行きます。 慎重に周波数ダイヤルを回すと浅いディップが現れるので、その点が正しい共振周波数です。 ディップが浅くなり過ぎてわかりにくいようならGDMをやや近づけます。この写真の状態はコイルがまだまだ近過ぎます。
ディップがわかる範囲で、なるべく結合を疎にすると言うのが大切なポイントです。 このあたり、今ごろになって「憧れの」ディップメータを手に入れるお方もあるようですが、てんで使い方がなってないので書いておきました。 だれも教えてくれないので仕方ないのですが、道具はちゃんと使えなくては持ち腐れです。
【箱の中で測定】
上の方法でも良いとは思いましたが、箱に入れた状態で測定してみました。 金属の箱に入れるとインダクタンスは幾分変化(減少)します。
シールドされることまで気にしなくても良いのかも知れません。しかし気になります。 発泡スチロール片でLCを浮かせ所定の位置に近い所で測定してみました。LCは箱に触れないよう浮かせます。
共振周波数に多少の違いが見られたので、こちら測定値を採用することにします。 なおコイルに抱かせたコンデンサは100pFちょうどのマイカ・コンデンサです。あまり精度の良くない測定とは言ってもラフにやると訳が解らなくなります。
【回路検討してみる】
回路は3つ書いてあります。
一番上の回路(1)が、実測によるLCの値を記入したものです。 Cの値は120pFで設計してあるようです。 メーカーの設計値はわかりませんが現物はこのようになっていました。
(2)はL、Cともに50Ω用に設計変更したものです。 カットオフ周波数を30MHzにし終端インピーダンスも50Ωに変更します。当然LもCも全部変更しなくてはならないので結構面倒です。
(3)はコイルには手をつけずに、コンデンサにみ変更する(追加する)方法です。こうするとカットオフ周波数はかなり下がりますが(2)よりも手間は掛かりません。
どの方法を採用するかは思案どころですが、まずは(3)でやってみようと思います。
【そしてシミュレーション】
(1)(2)(3)ともう一つの4条件でシミュレーションしてみました。
緑色のカーブが実測から求めたオリジナルの定数で、75Ω終端の特性です。上図(1)の結果です。 前回(←リンク)の実測特性と良く合っています。
赤色のカーブは、実測結果から、計算上最適と思われる終端インピーダンスでシミュレーションした結果です。部品定数は(1)のままですが、終端インピーダンスを変えています。 実測のLC値から計算してみると最適インピーダンスは44.2Ωなのです。 75Ωよりもむしろ50Ωに向いていると言う結果は予想外でした。(だから50Ωで実測してもかなり良い特性だったのでしょう・笑)
青色のカーブは上図(2)のものです。 LCともに変更して50Ωに最適化した回路定数になっています。
紫色のカーブが上図の(3)によるものです。コイルに手をつけなかった関係で(2)よりもカットオフ周波数は下がっています。 ぎりぎり30MHzくらいなので10mバンドには適さない可能性があります。しかし改造はコンデンサを足すだけだからシンプルです。
☆ ☆ ☆
結局(3)で様子を見る方針です。 支障がありそうならコイルも加減すれば良いでしょう。 あるいは25MHzバンドまでと割り切って使うのも良いかも知れません。 このあたりは目的や用途も考えあわせて自由に決めれば良いわけです。
☆
かつて、こうしたフィルタと言えば素人には手が出せないブラックボックスでした。 しかし、「いまの素人」にとっては何でもない単純なLC回路です。 ハイパワー向きの構造と言ったノウハウは必要かも知れませんが、まったく手が出せない代物ではなくなっています。 次回は実際に改造し周波数特性を確認します。de JA9TTT/1
(つづく)←続きにリンク
【LF-30を解析する】
TRIO/現KenwoodのTVI対策用ローパスフィルタの第2回です。前回(←リンク)はLF-30の電気的な特性を確かめ、更に開封して中身を眺めたところまででした。
写真は少しだけお掃除をした状態です。 ずいぶん長く眠っていたのでホコリだらけでした。 どこかにガムテープで貼付けて使っていたらしくテープの糊が残っていました。 その糊も粘着性をまったく失っており、除去するのは少々厄介した。 有機溶剤を幾つか試して除去に成功しましたが、塗装も幾分やられた感じです。 まあ、ある程度やむを得ません。
この先は、内部のコイルとコンデンサの値を調べ、シミュレーションと実測による特性の比較を行ないます。 解析してレプリカを作りたい訳ではありません。いずれ改造するにしても現況がどうなっているのかわからなくては方針も立てにくいからです。ここは一通りの調査をしておきます。 なお例によって自家用の記録なので記述の過不足は悪しからず。(笑)
【LF-30のLとC】
LF-30の電気的な構造は単純です。 写真のような数回巻きのコイル:Lと、右の方に見えるネジと銅の円盤、そして薄い樹脂製フィルムとで構成されたコンデンサ:Cからなっています。
コンデンサ部分は円盤の中心部に貫通穴があって、そこをネジが突き抜けており、両側からナットで円盤を締め付けています。 フィルムの厚みと円盤の面積でキャパシタンスの値が決まります。
見た所、コイルは両端のコネクタに繋がる2つが同じで、他に比べて巻き数は少ないです。途中の3つのコイルは両端よりも巻き数が多くなっています。 コンデンサ部分は円盤のサイズが同じなのでフィルム厚が同じならすべて同じ容量でしょう。
構造からT型のLPFを重ねたLPFの形式です。 そう考えると途中3つのコイルは同じインダクタンス、両端の2つはその半分のインダクタンスでしょう。 また途中のコンデンサはどれも同一の容量だと推測できます。
【コンデンサの測定】
各容量の測定は一旦分解しないとできません。 なるべく変形させないようにコイルのハンダ付けを外しました。 コンデンサはいずれもGND間に入っています。
測定には「小容量計」を使いました。 ここは例によってLCRメータのDE-5000でも良いです。 それほど微小な静電容量ではないし、テフロンを誘電体に使ったコンデンサは絶縁抵抗が高くHigh-Qです。従って測り易い対象です。 フィルムの耐熱性を確認したらほぼテフロンに間違いないようでした。
余談ですがテフロン・フィルムを誘電体に使った山七商店の「テフコン」と言うポリバリコンに良く似たバリコンがあったのを思い出します。 あれは安くて耐圧もあってなかなか良い物でしたが流行りませんでした。 商品としてやや詰めの甘い部分があったのが原因かも知れません。
【Cの値は良く揃っていた】
測定結果は後で出て来る回路図に記載しました。図中の(1)の回路の定数が実測値そのものです。 多少のばらつきは見られましたがコンデンサはどれも120pFを目標に設計しているようです。 4つの平均値は122.75pFでした。
なお、測定にあたっては接続線のストレー容量をキャンセルしています。 のちほど改めてDE-5000で測定し、比較しましたが測定値は良く合っています。
こうした構造のコンデンサも円盤面積を良く管理すれば数%以内の精度が保てるのでしょう。テフロン・フィルムの入手に問題はありますが、高耐圧のコンデンサが自分できそうです。
【久しぶりにGDM登場】
コンデンサとちがって小さなインダクタンスの測定にDE-5000はあまり向きません。測定周波数が100kHzまでなので精度が出ないのです。
ここは昔ながらのGDMで行くことにしました。 容量が確かなコンデンサと抱き合わせて共振周波数を測定し、インダクタンスは周波数とコンデンサの値から計算で求めます。
GDMの周波数測定精度はせいぜい頑張って3桁くらいでしょう。下手をすれば2桁ですが、その程度で支障ありません。無極のLPFではLCの値にシビアさは必要なかったと思います。
1968年ころ購入したGDMで、しかも暫く通電していなかったので、徐々に電源電圧を加えて支障ないことを確認してから使いました。 周波数カウンタがなかった時代には精度の良いデリカのGDMは重宝でした。 今回、あらためて目盛をチェックしたらまずまず合っています。流石にDELICAと言うべきでしょうか。hi
【一般的にはこれで良いが】
コイルの測定ですがこのように測定すれば良いです。
真空管式ですから、10分程度ウオームアップします。最初に発振強度の調整(注)をしたら、まずはコイルを近づけて高い周波数から下げて行き、良くディップする周波数を見つけます。
(注:発振強度の調整:DELICAのGDMではメーターの指針が中央部青く塗られたゾーン内またはそこまで振れぬ場合は最大まで振れる位置に発振強度調整のVRを加減します)
その後はGDMのコイルと被測定共振回路の結合がなるべく疎になるようにGDMを遠ざけて行きます。 慎重に周波数ダイヤルを回すと浅いディップが現れるので、その点が正しい共振周波数です。 ディップが浅くなり過ぎてわかりにくいようならGDMをやや近づけます。この写真の状態はコイルがまだまだ近過ぎます。
ディップがわかる範囲で、なるべく結合を疎にすると言うのが大切なポイントです。 このあたり、今ごろになって「憧れの」ディップメータを手に入れるお方もあるようですが、てんで使い方がなってないので書いておきました。 だれも教えてくれないので仕方ないのですが、道具はちゃんと使えなくては持ち腐れです。
【箱の中で測定】
上の方法でも良いとは思いましたが、箱に入れた状態で測定してみました。 金属の箱に入れるとインダクタンスは幾分変化(減少)します。
シールドされることまで気にしなくても良いのかも知れません。しかし気になります。 発泡スチロール片でLCを浮かせ所定の位置に近い所で測定してみました。LCは箱に触れないよう浮かせます。
共振周波数に多少の違いが見られたので、こちら測定値を採用することにします。 なおコイルに抱かせたコンデンサは100pFちょうどのマイカ・コンデンサです。あまり精度の良くない測定とは言ってもラフにやると訳が解らなくなります。
【回路検討してみる】
回路は3つ書いてあります。
一番上の回路(1)が、実測によるLCの値を記入したものです。 Cの値は120pFで設計してあるようです。 メーカーの設計値はわかりませんが現物はこのようになっていました。
(2)はL、Cともに50Ω用に設計変更したものです。 カットオフ周波数を30MHzにし終端インピーダンスも50Ωに変更します。当然LもCも全部変更しなくてはならないので結構面倒です。
(3)はコイルには手をつけずに、コンデンサにみ変更する(追加する)方法です。こうするとカットオフ周波数はかなり下がりますが(2)よりも手間は掛かりません。
どの方法を採用するかは思案どころですが、まずは(3)でやってみようと思います。
【そしてシミュレーション】
(1)(2)(3)ともう一つの4条件でシミュレーションしてみました。
緑色のカーブが実測から求めたオリジナルの定数で、75Ω終端の特性です。上図(1)の結果です。 前回(←リンク)の実測特性と良く合っています。
赤色のカーブは、実測結果から、計算上最適と思われる終端インピーダンスでシミュレーションした結果です。部品定数は(1)のままですが、終端インピーダンスを変えています。 実測のLC値から計算してみると最適インピーダンスは44.2Ωなのです。 75Ωよりもむしろ50Ωに向いていると言う結果は予想外でした。(だから50Ωで実測してもかなり良い特性だったのでしょう・笑)
青色のカーブは上図(2)のものです。 LCともに変更して50Ωに最適化した回路定数になっています。
紫色のカーブが上図の(3)によるものです。コイルに手をつけなかった関係で(2)よりもカットオフ周波数は下がっています。 ぎりぎり30MHzくらいなので10mバンドには適さない可能性があります。しかし改造はコンデンサを足すだけだからシンプルです。
☆ ☆ ☆
結局(3)で様子を見る方針です。 支障がありそうならコイルも加減すれば良いでしょう。 あるいは25MHzバンドまでと割り切って使うのも良いかも知れません。 このあたりは目的や用途も考えあわせて自由に決めれば良いわけです。
☆
かつて、こうしたフィルタと言えば素人には手が出せないブラックボックスでした。 しかし、「いまの素人」にとっては何でもない単純なLC回路です。 ハイパワー向きの構造と言ったノウハウは必要かも知れませんが、まったく手が出せない代物ではなくなっています。 次回は実際に改造し周波数特性を確認します。de JA9TTT/1
(つづく)←続きにリンク
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