【2017買い物レポート:Low price Soldering kit】
【安価なハンダ付けキット】
中国製はんだ付けキットの購入レポートです。
最近のamazonを見ていると、安価な中華製グッズが多数販売されています。 品目は従来からあったようなIT機器や家電品に限らず、半導体やCRのような電子パーツまで、さらに工作用ツールなど非常に幅広くなってきました。
かなり怪しそうな商品を販売する業者もあって、悪い評価が重なるとアカウントを閉じて新たに別の名で商売を始めていると言ったウワサも耳にします。
amazonですから変な商品に引っ掛かっても最終的にお金は取り戻せるのかも知れませんが掛かった手間や時間は取り返せないので慎重さも必要でしょう。 しかし非常に安価なら「ダメもと」で試してみるのもスリルがあって楽しいものです。 もし使い物にならなかったら深追いはせず半ば「あきらめる」つもりで怪しげなお買い物を楽しんでいます。(笑)
写真は1,599円で販売されていた「ハンダ付けキット」です。 これに限らずACコード途中にスイッチが付いたタイプや、付属品の種類や数が違うキットなどたくさんの出品があります。 ただし良く見るとはんだコテ本体はどれも類似なので、あとは付属品やお値段で選んでみるのも良いでしょう。
この1,599円のキットは(1)温度調節付きはんだコテ本体、(2)交換用コテ先チップ5個、(3)やに入りハンダ少量、(4)簡易こて台・・・・がセットになっています。 この(3)のヤニ入りハンダは錫60%-鉛40%なので「鉛フリー」ではありません。 しかし一般の電子工作にはその方が好都合だと思います。 メーカーは規制があるのでやむなく使っていますが鉛フリーは確実なはんだ付けが難しいため趣味の電子工作には不適当です。なお(3)の「はんだ」はお試し用ですし(4)のコテ台は昔の蚊取り線香立てのような構造の完全なオマケの品なので期待しない方が良いです。要するにはんだコテと交換用コテ先チップのセット販売なのです。w
はんだコテだけでもきちんとした日本メーカー製なら5,000円以上する筈です。 それが色々付いて1,599円なのですから本当に使い物になるのか怪しそうです。 以下、評価結果を交えてご紹介したいと思います。 最初からBlogの「ネタ」の為に買ってみたのではありませんが、はんだコテに困ってもいないので半分は「ネタ」みたいなものです。 以下、もし良かったらご覧下さい。
【温度調節付き】
分解してみれば仕組みもわかるので、調子でも悪くなったらバラしてみましょう。 しかし、評価前に分解するのも何ですから、そのままテストしてみましょう。
ダイヤルは200℃〜450℃の目盛りがあります。 ツマミを回してみますと単なるVRではないようです。 感触からステップ状に設定できるようです。
温度調節できると言うのがこのはんだコテのポイントでしょう。 従来型の無制御のはんだコテは連続して作業している時は良いのですが暫く手を休めて放置すると過熱してしまいました。 そのため焼け過ぎてこて先チップの酸化が進んで付きが悪くなる、更には細いコテ先なら熱で曲がってくるなどの問題があったのです。 そうかと言ってワット数の小さなコテでは少し熱容量の大きな部品にハンダ付けしようとすれば温度が下がってハンダが溶けてくれませんでした。 その点、温度調節付きのコテなら焼け過ぎが防げるほか、大きな部品のハンダ付けで温度が下がれば加熱量が増えてコテ先の温度を維持しようとするため使い勝手は優れています。
#安価なコレは本当に広範囲の温度調節ができるのでしょうか?
【予備のコテ先チップ】
元から付いているコテ先チップは、鉄メッキされた耐腐食型の耐久コテ先です。 従って、大昔のように付きが悪くなったらヤスリで表面を削って磨く・・・と言うような作業は必要ありません。 むしろヤスリ掛けなどしたらコテ先を一発でダメにしてしまいます。 はんだコテ用の濡れたスポンジなどきちんとしたコテ先クリーナを使ってきれいに保てば常に快適なハンダ付けが続けられます。
しかし、しばらく使っていると少しずつ酸化してハンダの乗りが悪くなってきます。減りにくいとは言え幾らか摩耗もあるのでいずれ交換が必要になります。 良くハンダ付け作業をするのなら予備のコテ先チップは用意しておきたいものです。
このキットには5種類の交換用チップが付いていました。 このうち、普通の電子回路のハンダ付けで使えそうなコテ先形状は2〜3種類のように思います。 それでも予備があるのは良いことで、はんだの溶けが悪くなった時に慌てずに済みます。
amazonで売っているハンダ付けキットには交換用コテ先チップが10個も付いてたものまであって様々です。 使い易いコテ先形状の替えが1〜2個あれば十分なので沢山はいらないと思います。 良さそうな形状の交換用コテ先が数個付いていれば十分でしょう。
交換は簡単に出来ます。 冷えている時にヒーター部分を覆っている金属スリーブ部分の手元側にあるリングを回すとコテ先が外れます。内部のセラミックヒータを損傷しないように気をつけてコテ先チップを交換します。 なお、このキットには付属しませんが交換用ヒータも安価に売っていました。 しかしヒータが切れるほど使えば丸ごと新品を買った方が良いかも知れません。
【コテ先温度の実測特性】
怪しいと思っているだけでは非科学的ですから、実際に測定してみましょう。 コテ先に温度センサの「熱電対(ねつでんつい)」を取り付けて温度を測定してみました。 左図はその実測結果です。 横軸が時間で縦軸が温度になっていて、こて本体のダイヤルで温度設定してから安定するまでの時間を追った経過がわかるようになっています。
できるだけ小型の熱電対ということでSUS保護管入りでφ1.4mmのK型熱電対(=クロメル-アルメル:CA型)を使いました。 コテの先端部分に錫メッキ銅線を数回巻いて固定しています。 幾らか誤差はありそうですが熱容量はそれほど変化しません。極端に温度がずれることもないでしょう。 温度表示器にはadvantest製のデジタルマルチメータ:R6341Bを使いました。
200℃の設定から実験を始めました。 通電から約2分で200℃を超えるのでそろそろハンダ付け可能になります。 その後もゆっくり上昇して10分ほどで安定状態になりました。 コテ先温度は80℃くらい設定よりも高くなりました。 誤差が大きすぎますが、実際のところコテ先が200℃ではハンダ付け作業には低すぎます。 はんだが溶けないようでは困るので意図的に高くなるようにしてあるのかも知れません。
さらに300℃に設定してみました。設定よりも30℃くらい高くなりましたが、200℃の時よりも誤差は少なくなっています。 その後250℃に設定温度を下げてみました。 まだ20℃程度高いところで安定しますが、まあまあと言った感じでしょうか? 再び200℃の設定にしてみましたが最初の設定のように約270℃あたりで安定しました。取りあえず温度設定の再現性はあるようです。
参考:温度の「自動制御」は行なっていない可能性があります。 要するにダイヤルで通電電流の加減が出来るだけで、コテの温度をフィードバックする温度の自動制御などしてはいない可能性があるのです。 安価ですから単なる「可変電力型のはんだコテ」なのかも知れません。(その可能性は否定できません・笑)
==>自身で検証はしていませんが、他の評価者によれば温度が収束するに伴い消費電流が減少する特性を示すそうです。そうであれば温度の自動制御が働いていることになるでしょう。(温度が高くなるとセラミックヒータの抵抗値が大きくなるので、そのように見えているだけかも・・・)
左のグラフにはありませんが、450℃に設定したところ448℃前後で安定しました。設定温度が高い方で誤差が小さくなる傾向にありました。(注1) 逆に、200℃と言うのは目盛りに数字はあっても設定はできないようでした。 だいたい250℃以上でないと温度設定は効かないようです。
以上、時間対温度の関係を見ると、どこかの温度に収束するのでコテ先の温度は制御されているように見えます。 少々誤差の大きな温度制御ですが、それなりに機能しているような感じです。 まずは「温度調節機能付き」のはんだコテと言えるでしょう。
注1:450℃の設定で使うのはお奨めできません。 測定の為のごく短時間でさえ何となくコゲ臭くなってきました。 そのまま通電しているとゴムや樹脂の部分が変形しそうです。どうやら300℃以下の設定で使う方が良さそうでした。
☆
はんだが溶けなければクレームにもなるでしょう。 しかし温度を測ってみる人はまずいません。 ですから製品個々に温度調整などしていないでしょうし簡単な検査さえも省いているかも知れません。 何しろ通電した痕跡さえもありませんから・・・。
正常な品でもコテ先の温度には個体差(ばらつき)がずいぶんありそうです。 ここで示したグラフは私が購入した品の特性です。購入したどれもが同じになるとは限りません。取りあえず参考程度に見ておいてください。
他の購入者のコメントによれば熱でプラスチック部分が変形したとか、中から火花が散ったと言うような物騒な事例までありました。逆に200℃の設定では温度が低くてはんだが溶けないと言うレポートもあります。 ただ、そうした異常さえなければ実用性は十分あります。耐久性などは未知数ですが「アマチュア用」として使えそうです。
安心感を求めたり高級な性能を望むなら国産品に相応の費用を払うべきでしょうね。 チープな1,599円ハンダ付けキットを同列に並べてダメ出しをしても意味はありません。 初めから満足できそうもないならこうしたヤスモノに手は出さないことです。 しかし価格からみたらコレはこれで十分使えます。私は250℃の所にダイヤルをセットして使おうと思います。 下手な温調ナシのはんだコテよりずっとマシですからね。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1
(おわり)nm
ご注意:このBlogはアフェリエイトBlogではありません。電子工作を楽しむための情報を提供していますが特定の商品やショップをお奨めする意図はありません。公開している商品情報は単なる参考です。お買い物は貴方ご自身の判断と責任でお願いします。
2017年1月28日土曜日
2017年1月12日木曜日
【回路】An OP-Amp Electronic Keyer
【回路:OP-Ampを使ったキーヤー】
【年末はここまでで】
2017年も明けて、もう10日以上が過ぎてしまいました。そろそろお正月気分も抜けて何時もの毎日が帰ってきました。
年末はいつもと違う行事も多く、じっくり落ち着いて何かに取り組むことも出来ません。 何となく気ぜわしくて暮れに手がけたものは途中まででオシマイになりました。 見ていた回路図がわかり難くて手が進まなくなったことも停滞の原因です。
12月始めにはDTL-ICを使ったキーヤー(=エレキー)のリベンジも果たせたし、古い古いロジックICを蘇らせることもできました。 私はキーヤー・マニアではないのですが、前々から気になっていたテストを進めて行き、残すテーマは僅かになってきました。
同じく気になっていたキーヤーの一つにOP-Ampを使ったものがあります。 JA-CQ誌で見掛けたはずです。 ロジックICではない所に面白みを感じたのでしょう、妙に印象に残りました。 今回はアナログICを使う珍しいキーヤーを扱うことにします。
☆ 写真はブレッドボードと、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れ、それとジャンパー線セットです。 写真の他にフレキシブル・ワイヤのジャンパー線セットがあって、効率的なブレッドボード試作に役立っています。思い立ったらすぐに実験開始できます。
☆
記憶を辿って行くと様々なことが思い浮かんでくるものです。 前回Blogのキーヤー繋がりで、前々から気になっていたOP-Amp Keyerをテストします。 キーヤーとして特にこれと言ったメリットはないのですがもしも興味を感じたようならお付合いください。 それらしく動作することに新鮮さを感じるかもしれません。(テスト動画付き)
【OP-Ampでキーヤーを】
このキーヤーを知ったのはJA-CQ誌の『技術展望』だったと思います。 インターネット以前の時代にあって『技術展望』はHAMにまつわる海外情報の貴重な情報源でした。 但し簡単なコラム記事なので要約と一部の回路図のみが載っているだけでした。
珍しいキーヤーなので興味を覚えたものの、要約から詳細はわからずそのままになりました。 その記事の切り抜きを保管していた筈ですが、この機会に探してみたのですが見付けることが出来ませんでした。
暫く後に古いQST誌のコピーが手に入って詳細を知ることが出来ました。 DTL-ICのキーヤーも済んだことから、この際気になっていたOP-Ampを使うキーヤーにも着手してみました。
キーヤーと言えば論理回路で実現するのが当たり前のようになっています。 そう考えればTTLやC-MOSと言ったデジタルICを使うのが自然です。 マイコンもデジタルICの一種ですし。
OP-Ampを使うこの記事(QST誌1972年10月号pp40~44)にはコスト的なメリットが謳われています。 デジタルICは既に登場していましたが、アマチュアにとって案外高価だったのかも知れません。 OP-Ampだってまだそんなに安価だったとも思えません。 しかしMC1437Lと言うモトローラ製のDual OP-Amp一つで作れます。 意外にお手軽だったのかもしれません。 そんな時代を感じさせる記事です。 なお、筆者はオーストラリアの人(VK5NO)なのでVKの事情を反映していたのでしょうか。
【OAKEYのオリジナル回路図】
主要部分の回路図です。 JA-CQ誌に掲載されていた回路もこれと同じだったように思うのですが、切り抜いて保存しておいた筈の『技術展望』の記事は見付けられませんでした。
簡単な説明です。 図左側のOP-AmpでDuty比が50%の矩形波発振を行ないます。 その出力を取出すことで短点が連続します。 パドルによる制御回路があって複雑ですが、回路その物はOP-Ampを使った弛張発振回路です。
長点を発生させるには、その短点出力で図右側のOP-Ampで構成された双安定回路・・・Flip-Flop回路をトリガします。RS Flip-Flopと等価で、CRによる微分回路でトリガを掛けます。 この長点用の双安定回路は短点の二倍の長さの矩形波を出力します。 その二倍の長さの出力と短点一つ分をダイオードを使った出力部のORゲート回路で合成することで長点を生成します。長点はちょうど短点3つ分の長さになる訳です。 同時に短点と同じ長さのスペースもできます。
OP-Ampは論理回路専用の素子ではありません。 そのため双安定回路の実現には苦心の跡が見られます。 またこの図のままでは、キーイング出力としては不完全なのでリレードライバなどの出力回路を付加する必要があります。
【OP-Ampキーヤーの製作回路図】
キーヤーとして完全な回路になるよう出力のリレードライバまで含めて書いてあります。記事にある回路例よりもこちらの方が確実だと思います。 また、上記の回路図では負論理出力でしたが、ドライバ回路の都合から正論理の出力になるようにしています。 回路の動作そのものは上記の回路図と同じです。
記事にあるMC1437Lと言うOP-Ampはポピュラーではありません。今どき入手は困難でしょうから迷わず置き換えを行ないます。 黎明期のOP-Ampと言えばFairchild社が開発した709型がたいへん有名です。 MC1437Lはその709型を2個集積したものと等価です。 従って、709型のOP-Ampを2個使えばまったく同じです。 ここではTI社のSN72709Nと言う709型の互換品(セカンドソース)を使いました。
709型OP-AmpにはCanおよびDIPパッケージ品があって何れも8ピンが普通です。 14ピン型は未使用ピンが多くて合理的とは言えませんが、今さら709型OP-Ampなど購入したくもないので手持ちを活用しました。 8ピン型を使うなら回路図のピン番号を振り替える必要があります。まあ、真似て作る人などいないとは思いますが。w
リレードライバは2SC1815GRのようなNPN型の汎用トランジスタを使います。 ダイオードはシリコンの小信号用なら何でも良いです。例えば1S2076Aのほか1S1588や1N4148などがあります。 リレーは前のBlogのようなリードリレーでも良いしPhoto-MOS Relayなどお好みで。 ドライバのトランジスタでリグを直接キーイングすることも出来ます。
参考:709型OP-Ampは現在でも入手可能です。同等品やセカンドソースもたくさん存在しました。但し生産中止から時間が経過したため珍しい存在になりつつあって価格は上昇しています。 従って他の形式のキーヤーの製作をお奨めします。
【歴史に残る"709型"OP-Amp】
既に709型OP-Ampの現物など見たこともない人が多いでしょう。 まして14ピン型など・・・。 この14ピンのパッケージにOP-Amp回路がたった一つだけ入っています。
デート・コードを見ると1970年11月製のようですから非常に古いものでした。 その当時購入した訳ではなく、ずっと後に何かのジャンク部品と一緒に手に入れたものでしょう。 2017年の今から数えて46年も前のOP-Ampが正常に動作するのか少々怪しく思いましたが杞憂だったようです。 工業用の標準的なパーツとして確立していたのですから、その当時から十分な信頼性を有していたのでしょう。 劣化も見られずきちんと働いてくれました。
【OP-Amp keyerの全景】
最初の写真とは異なる部品配置になっています。 回路図を書き直した関係もあり、わかり易いように部品配置を整理してみました。 解体して最初から組み立て直しています。
以前、RTL-ICを使ったMicro TO-Keyer(←リンク)を作りました。 そのとき、マイクロではないオリジナルのTO-Keyerの動作についてに触れたことがありました。 このOP-Amp KeyerはそのTO-Keyerの動作に類似しています。
真空管回路ではありませんから回路形式はまるで違いますが、動作の様子には類似性があります。 半導体版のTO-KeyerとしてはRTL-ICを使ったものよりも、こちらの方がMicro TO-Keyerを名乗るのに相応しいように感じます。
【短点&スペース生成回路】
こちらが短点とスペースを発生させる弛張発振回路の部分です。この部分で短点発生とクロックを兼ねるので、クロック発振回路は必要ありません。
Duty比=ほぼ50%の矩形波を発生します。 50%が崩れると長短点とスペースの比が奇麗な1:1や1:3になった符号の発生ができなくなります。
出力を正帰還してヒステリシスを持たせ矩形波を発振する回路です。 OP-Ampを使ってはいますが、増幅回路ではなくてコンパレータ回路(電圧比較器)として使います。 709型OP-Ampは位相補償を内蔵しないので図のようなコンパレータとして使うと結構高速です。 奇麗な矩形波が得られています。 もっとも、数10Hzの矩形波ではどんなOP-Ampでも同じようかもしれませんけれど。
【長点発生フリップ・フロップ】
長点を作るためには短点の二倍の周期の矩形波を作る必要があります。 そのため、OP-Ampを使った双安定回路(Flip-Flop)を構成し、短点信号で旨く交互にトリガが掛かるようにして二分周器を実現しています。
この『旨くトリガを掛ける』という部分に苦労があったようです。 普通のOP-Ampには/Q出力(反転出力)はありません。 709型OP-Ampの出力側位相補償端子から正規の出力端子と反対の『反転出力』が取出せることを利用して旨くトリガを掛けているのです。 従って、このOP-Amp Keyerは709型もしくは等価な回路構成になったOP-Ampでないと旨く行きません。 幾らか回路を追加すれば他のOP-Ampでも可能そうですがもう時間切れです。 今さら真剣に置き換えを検討するほどの価値もないでしょう。
【電源回路例】
片電源動作にすることもできます。 しかし、小さな電源トランスと左図のような整流平滑回路を作って済ませるのが良いでしょう。電源電圧は安定化しなくても大丈夫です。
乾電池でも良いのですが、リレーを使うと006P型乾電池では動作時間が短くて不経済です。 ちなみに、±8Vで動作させた場合の回路電流は以下の通りです。 +8V側が待機時に約6.9mA、キーイング時が約7.8mAです。 -8V側は待機時が約16.5mA、キーイング時では少し減って約14.5mAでした。
Relayは動作させていませんので、動作させた時はその分だけ+8V側の電流が増えます。 乾電池では動作時間が短いので6〜9V程度の小型電源トランスを入手し図のような電源を組み込んで使います。
電源回路はオマケとして追記しておきました。おそらくこんなKeyerを作る人もいないでしょう。 それに興味から製作してみるようなお方なら電源の手当くらい百も承知でしょう。いささか蛇足だったかもしれませんね。hi
☆
続き:もう一つあったOP-Amp Keyerへ(←リンク)
(おわり)fm
【年末はここまでで】
2017年も明けて、もう10日以上が過ぎてしまいました。そろそろお正月気分も抜けて何時もの毎日が帰ってきました。
年末はいつもと違う行事も多く、じっくり落ち着いて何かに取り組むことも出来ません。 何となく気ぜわしくて暮れに手がけたものは途中まででオシマイになりました。 見ていた回路図がわかり難くて手が進まなくなったことも停滞の原因です。
12月始めにはDTL-ICを使ったキーヤー(=エレキー)のリベンジも果たせたし、古い古いロジックICを蘇らせることもできました。 私はキーヤー・マニアではないのですが、前々から気になっていたテストを進めて行き、残すテーマは僅かになってきました。
同じく気になっていたキーヤーの一つにOP-Ampを使ったものがあります。 JA-CQ誌で見掛けたはずです。 ロジックICではない所に面白みを感じたのでしょう、妙に印象に残りました。 今回はアナログICを使う珍しいキーヤーを扱うことにします。
☆ 写真はブレッドボードと、ブレッドボード専用のリサイクル部品入れ、それとジャンパー線セットです。 写真の他にフレキシブル・ワイヤのジャンパー線セットがあって、効率的なブレッドボード試作に役立っています。思い立ったらすぐに実験開始できます。
☆
記憶を辿って行くと様々なことが思い浮かんでくるものです。 前回Blogのキーヤー繋がりで、前々から気になっていたOP-Amp Keyerをテストします。 キーヤーとして特にこれと言ったメリットはないのですがもしも興味を感じたようならお付合いください。 それらしく動作することに新鮮さを感じるかもしれません。(テスト動画付き)
【OP-Ampでキーヤーを】
このキーヤーを知ったのはJA-CQ誌の『技術展望』だったと思います。 インターネット以前の時代にあって『技術展望』はHAMにまつわる海外情報の貴重な情報源でした。 但し簡単なコラム記事なので要約と一部の回路図のみが載っているだけでした。
珍しいキーヤーなので興味を覚えたものの、要約から詳細はわからずそのままになりました。 その記事の切り抜きを保管していた筈ですが、この機会に探してみたのですが見付けることが出来ませんでした。
暫く後に古いQST誌のコピーが手に入って詳細を知ることが出来ました。 DTL-ICのキーヤーも済んだことから、この際気になっていたOP-Ampを使うキーヤーにも着手してみました。
キーヤーと言えば論理回路で実現するのが当たり前のようになっています。 そう考えればTTLやC-MOSと言ったデジタルICを使うのが自然です。 マイコンもデジタルICの一種ですし。
OP-Ampを使うこの記事(QST誌1972年10月号pp40~44)にはコスト的なメリットが謳われています。 デジタルICは既に登場していましたが、アマチュアにとって案外高価だったのかも知れません。 OP-Ampだってまだそんなに安価だったとも思えません。 しかしMC1437Lと言うモトローラ製のDual OP-Amp一つで作れます。 意外にお手軽だったのかもしれません。 そんな時代を感じさせる記事です。 なお、筆者はオーストラリアの人(VK5NO)なのでVKの事情を反映していたのでしょうか。
コラム: 『米国におけるICのお値段』
同時期・1972年頃のQST誌によればTTL-ICのSN7400が$0.21-、709型OP-Ampは$0.39-でセールスされています。 どのICも米国ではもう十分こなれた価格になっていたようです。 実際にはOP-AmpでKeyerを作っても価格的な優位性はなかったでしょう。 追試記事が存在しないのもこれと言ったメリットがなかったからかもしれません。その頃は$1-=¥360-とあって、当時のJAではICはまだ高価でした。国産のICは出回り始めたばかりでした。
【OAKEYのオリジナル回路図】
主要部分の回路図です。 JA-CQ誌に掲載されていた回路もこれと同じだったように思うのですが、切り抜いて保存しておいた筈の『技術展望』の記事は見付けられませんでした。
簡単な説明です。 図左側のOP-AmpでDuty比が50%の矩形波発振を行ないます。 その出力を取出すことで短点が連続します。 パドルによる制御回路があって複雑ですが、回路その物はOP-Ampを使った弛張発振回路です。
長点を発生させるには、その短点出力で図右側のOP-Ampで構成された双安定回路・・・Flip-Flop回路をトリガします。RS Flip-Flopと等価で、CRによる微分回路でトリガを掛けます。 この長点用の双安定回路は短点の二倍の長さの矩形波を出力します。 その二倍の長さの出力と短点一つ分をダイオードを使った出力部のORゲート回路で合成することで長点を生成します。長点はちょうど短点3つ分の長さになる訳です。 同時に短点と同じ長さのスペースもできます。
OP-Ampは論理回路専用の素子ではありません。 そのため双安定回路の実現には苦心の跡が見られます。 またこの図のままでは、キーイング出力としては不完全なのでリレードライバなどの出力回路を付加する必要があります。
【OP-Ampキーヤーの製作回路図】
キーヤーとして完全な回路になるよう出力のリレードライバまで含めて書いてあります。記事にある回路例よりもこちらの方が確実だと思います。 また、上記の回路図では負論理出力でしたが、ドライバ回路の都合から正論理の出力になるようにしています。 回路の動作そのものは上記の回路図と同じです。
記事にあるMC1437Lと言うOP-Ampはポピュラーではありません。今どき入手は困難でしょうから迷わず置き換えを行ないます。 黎明期のOP-Ampと言えばFairchild社が開発した709型がたいへん有名です。 MC1437Lはその709型を2個集積したものと等価です。 従って、709型のOP-Ampを2個使えばまったく同じです。 ここではTI社のSN72709Nと言う709型の互換品(セカンドソース)を使いました。
709型OP-AmpにはCanおよびDIPパッケージ品があって何れも8ピンが普通です。 14ピン型は未使用ピンが多くて合理的とは言えませんが、今さら709型OP-Ampなど購入したくもないので手持ちを活用しました。 8ピン型を使うなら回路図のピン番号を振り替える必要があります。まあ、真似て作る人などいないとは思いますが。w
リレードライバは2SC1815GRのようなNPN型の汎用トランジスタを使います。 ダイオードはシリコンの小信号用なら何でも良いです。例えば1S2076Aのほか1S1588や1N4148などがあります。 リレーは前のBlogのようなリードリレーでも良いしPhoto-MOS Relayなどお好みで。 ドライバのトランジスタでリグを直接キーイングすることも出来ます。
参考:709型OP-Ampは現在でも入手可能です。同等品やセカンドソースもたくさん存在しました。但し生産中止から時間が経過したため珍しい存在になりつつあって価格は上昇しています。 従って他の形式のキーヤーの製作をお奨めします。
【歴史に残る"709型"OP-Amp】
既に709型OP-Ampの現物など見たこともない人が多いでしょう。 まして14ピン型など・・・。 この14ピンのパッケージにOP-Amp回路がたった一つだけ入っています。
デート・コードを見ると1970年11月製のようですから非常に古いものでした。 その当時購入した訳ではなく、ずっと後に何かのジャンク部品と一緒に手に入れたものでしょう。 2017年の今から数えて46年も前のOP-Ampが正常に動作するのか少々怪しく思いましたが杞憂だったようです。 工業用の標準的なパーツとして確立していたのですから、その当時から十分な信頼性を有していたのでしょう。 劣化も見られずきちんと働いてくれました。
【OP-Amp keyerの全景】
最初の写真とは異なる部品配置になっています。 回路図を書き直した関係もあり、わかり易いように部品配置を整理してみました。 解体して最初から組み立て直しています。
以前、RTL-ICを使ったMicro TO-Keyer(←リンク)を作りました。 そのとき、マイクロではないオリジナルのTO-Keyerの動作についてに触れたことがありました。 このOP-Amp KeyerはそのTO-Keyerの動作に類似しています。
真空管回路ではありませんから回路形式はまるで違いますが、動作の様子には類似性があります。 半導体版のTO-KeyerとしてはRTL-ICを使ったものよりも、こちらの方がMicro TO-Keyerを名乗るのに相応しいように感じます。
【短点&スペース生成回路】
こちらが短点とスペースを発生させる弛張発振回路の部分です。この部分で短点発生とクロックを兼ねるので、クロック発振回路は必要ありません。
Duty比=ほぼ50%の矩形波を発生します。 50%が崩れると長短点とスペースの比が奇麗な1:1や1:3になった符号の発生ができなくなります。
出力を正帰還してヒステリシスを持たせ矩形波を発振する回路です。 OP-Ampを使ってはいますが、増幅回路ではなくてコンパレータ回路(電圧比較器)として使います。 709型OP-Ampは位相補償を内蔵しないので図のようなコンパレータとして使うと結構高速です。 奇麗な矩形波が得られています。 もっとも、数10Hzの矩形波ではどんなOP-Ampでも同じようかもしれませんけれど。
【長点発生フリップ・フロップ】
長点を作るためには短点の二倍の周期の矩形波を作る必要があります。 そのため、OP-Ampを使った双安定回路(Flip-Flop)を構成し、短点信号で旨く交互にトリガが掛かるようにして二分周器を実現しています。
この『旨くトリガを掛ける』という部分に苦労があったようです。 普通のOP-Ampには/Q出力(反転出力)はありません。 709型OP-Ampの出力側位相補償端子から正規の出力端子と反対の『反転出力』が取出せることを利用して旨くトリガを掛けているのです。 従って、このOP-Amp Keyerは709型もしくは等価な回路構成になったOP-Ampでないと旨く行きません。 幾らか回路を追加すれば他のOP-Ampでも可能そうですがもう時間切れです。 今さら真剣に置き換えを検討するほどの価値もないでしょう。
【電源回路例】
片電源動作にすることもできます。 しかし、小さな電源トランスと左図のような整流平滑回路を作って済ませるのが良いでしょう。電源電圧は安定化しなくても大丈夫です。
乾電池でも良いのですが、リレーを使うと006P型乾電池では動作時間が短くて不経済です。 ちなみに、±8Vで動作させた場合の回路電流は以下の通りです。 +8V側が待機時に約6.9mA、キーイング時が約7.8mAです。 -8V側は待機時が約16.5mA、キーイング時では少し減って約14.5mAでした。
Relayは動作させていませんので、動作させた時はその分だけ+8V側の電流が増えます。 乾電池では動作時間が短いので6〜9V程度の小型電源トランスを入手し図のような電源を組み込んで使います。
電源回路はオマケとして追記しておきました。おそらくこんなKeyerを作る人もいないでしょう。 それに興味から製作してみるようなお方なら電源の手当くらい百も承知でしょう。いささか蛇足だったかもしれませんね。hi
☆
【OP-Amp Keyerのテストムービー】
(注意:音が出ます)
キーヤー恒例のムービーです。(笑) 今回は圧電ブザーのキーイングではなく、実際にRigでキーイングしてみました。 キーヤー側とリグ側のGNDが分離されなくても良ければ、リレーなどを使わなくてもキーイングできます。
最近のRigのキーイング端子は電圧+10V程度で数mAの電流をON/OFFできれば良いように出来ています。 そのような場合はリレードライバのトランジスタで直接キーイングできます。 ドライバ・トランジスタを『オープン・コレクタ出力』にして取出しておけばOKです。 またブロッキング・バイアス・キーイングの場合はコレクタ耐圧:Vceが-100VくらいあるPNPトランジスタを使う方法があります。 但しそのようなニーズがあるのは非常に古いトランシーバ・・・例えばTS-510/511やTS-530/830あたりとFTDX-400/401やFT-101〜101Eのような真空管が使ってあるような年代もの・・・くらいでしょうね。(調べてみたら意外に多い)
☆ ☆ ☆
この所ずっと以前から興味があったキーヤー回路を試しています。 古いものばかりですが、面白い例が多かったように思います。今のように『定番』が確立する以前の時代だったからでしょう。 OP-Ampを使うKeyerなど「ゲテモノ」かも知れませんが回路動作そのものを見ればKeyerの基本に則った動きになっていることがわかります。 回路形式や部品に物珍しさを感じますが、エレクロニック・キーヤーの動きそのものは十分に確立されていたと考えて良いでしょう。 あとはその実現手段の違いだったに過ぎないのです。
昔々から目についた回路をメモったり、記事をスクラップしてきました。 いずれも何となく気になる回路ばかりですが試す機会もないまま深く埋もれています。 『部品の発掘』と同じように少しずつでも発掘して試してみたいものです。 では。 de JA9TTT/1
備考:日本語の「エレキー」は現在ではElectric Keyerの省略形と考えられます。 但し原典のOAKEY記事ではElectronic Keyerとなっており、(当時は)その呼び方が普通であったようです。それに伴い、この回のBlogに限ってElectronic Keyer / エレクトロニック・キーヤーと呼ぶことにしました。エレクトリックあるいはエレクトロニックのどちらも使われており、いずれでも誤りではないようです。以上は私見であって普遍的なものではありません。
(おわり)fm
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