2009年12月31日木曜日

【HAM】One hour Transmitters

一時間でできる送信機
 実際にはシャシ加工だけでも1時間では終わりそうにありません。 まあ、「One hour」とは「簡単にできる」と言った意味でしょう。 暮れの大掃除や年越しの準備も終わった大晦日、新春早々の自作プランなど如何でしょうか?(笑)

 この送信機の部品数は僅か50個に満たないのです。「One hour」と言うだけあって、とてもシンプルです。

 この程度の送信機でも日本国内局との交信するのは容易です。 Euでは真空管:ECL82(6BM8)を1本で作ったシンプルなQRP-TXの2-way QSOでG、PA、LA、DLやVEとできたとか楽しんでいるそうです。 これを扱うサイトはたくさんあって、こちらはその一例です。Euは遥かに遠いのですが、もしもJAから仲間入りできたら楽しそうですね。

 真空管には3極5極複合管を1本だけ使っています。 使えそうな候補は幾らでもあって、殆ど回路変更なしに製作できます。 ピン接続が同じ真空管を選んでおけば様々に差し替えて楽しむことができます。 アウトプット・パワーは使用する真空管により違ってきます。

 上記回路図は英RSGBの機関誌:RadComから転載しています。その関係で真空管の名称は欧州系になっています。 ECL80は米国名称では6AB8、ECL82が6BM8、ECL86が6GW8です。 このうちECL86/6GW8がもっともパワフルで5〜6Wは出せます。ECL80/6AB8は非力なので2〜3Wでしょう。しかしヒーターパワーが小さいのでQRP向きです。 一番ポピュラーなECL82/6BM8はその中間の3〜4W程度と言う所ですね。 TV用の6AB8を除きオーディオでよく使う球なので価格高騰気味ですがまだ驚くほどでもありません。

 なお、各バンドに最適化しプレート電圧をより高くすれば5割増しのパワーも可能そうです。 しかし、それくらいなら複合管はやめて終段にはEL84/6BQ5やEL86/6CW5、或は小型送信管の5763あたりを使う方が良いです。mt管ながら10W+が得られます。 UY-807、6L6、6JS6AなどではQRPの範疇を遥かに越えてしまい25〜50Wも出ますからDXingさえ可能です。 しかし、パワーの増大で電源を含めて一気に本格的な送信機になってしまうので、とても「One hour」とは行かないでしょう。QRPな範囲がお薦めです。

 回路構成はCrystal-Oscillator+Power Amplifier・・通称COPA(コッパ)と言われる最もシンプルな2ステージ形式です。 すこし改造したいところもあるのですが、まずはこのままやってみてはどうでしょう。 クリスタル(水晶発振子)は必ず基本波用を使います。 図の記述では14MHzのパワーは1W少々とありますが、7MHzの水晶を使いファイナル・ダブラー(終段2逓倍)しているからでしょう。 記事の時代には14MHzの基本波水晶発振子はポピュラーでなかったのです。 現在は問題なく14MHz帯の基本波が手に入ります。 従ってパワーもずっと出てくれます。(すこし改造したいところ:発振段の負荷を抵抗器ではなくRFCにしたい)

ECL80/6AB8】(写真)
 部品について説明しておきましょう。 

 まず真空管ですが、同じ電気的特性でヒータ電圧違いのトランスレス用を使うと安価です。トランスレス用の真空管をトランス付きで使ってもまったく構いません。

 例えば6BM8/ECL82(ヒータは6.3V/780mA)の代わりに8B8/XCL82(同8.2V/600mA)や16A8/PCL82(同16.0V/300mA)があります。これら3種類はヒーターの電圧電流が違うだけで、互換性がある訳です。以下の球も同様です。

 6GW8/ECL86(ヒータは6.3V/660mA)も14GW8/PCL86(同13.3V/300mA)があってだいぶ安価でしょう。何れにしてもそれぞれのヒータ電圧にトランスの電圧を合わせてやれば大丈夫です。トランスの電圧は±10%くらいに合わせて下さい。

 回路図にある他に3極5極複合管では6AW8A/6LF8/6JV8系やECL85/6GV8もお薦めできます。カラーTVにたくさん使ってあったPCL84/15DQ8(ヒータは15.0V/300mA)やPCL85/18GV8(同17.5V/300mA)も使ってみたいところです。

 しかし、オンエアにて使用Rigの交換の際にはポピュラーな球の方が通りが良いでしょう。結局のところJAでも6BM8あたりが無難だと思います。 9ピンmt管用ソケットも忘れずに手に入れておきます。

 次にバリコンですがプレートに近い側の200pFはある程度耐電圧が必要です。エヤーバリコンが良くて、1kV耐圧の送信機用が理想でしょう。 しかし300pF程度の受信機用単バリコン(並三用など)も使えます。昔はタイト絶縁の立派なバリコンが買えなかったのでそのようなバリコンで代用していました。

 アンテナ側のロードバリコン:1000pFは5球スーパ用2連VCをパラ(並列)にして使うのが常套手段でした。 いまは入手難でやむを得ないため大きめのポリバリコンで試したらどうでしょう? 50〜75Ωのフィーダーを専門に給電するなら耐電圧はまず問題ないはずです。 あとはRF電流が流せるかどうかなので物を見て判断します。 試してみる価値はあるでしょう。

 HT+用(米国式ならB+用)の電源トランスには100V対220Vのアイソレーショントランス(60VA程度のもの)を利用すると安価です。 ブリッジ整流で使うことになります。 あるいは100V:100Vのアイソレーショントランスを使って両波倍電圧整流します。 ヒータトランスは使用する真空管のヒータ電圧に合わせた小形トランスを使います。ACアダプタで代用する工夫をすると経済的でしょう。 秋葉原では五球スーパ用電源トランスがリバイバルしているのでそれも良さそうです。ただし結構なお値段なのが問題かも知れませんね。

 すこし厄介そうなのはブロッキング・バイアスの-150Vをどうするかです。これは-100Vくらいでも十分です。 整流回路の工夫でHT+のトランスから作ることもできるので研究して下さい。 電流は数mAしか必要としません。 トランス式ACアダプタを分解してトランスを逆向きに流用すると言う手もあります。リサイクルショップで探してみましょう。
 キーイングはエレキー向きに簡単に改造する方法があるので、それは(将来あるかもしれない)『製作編』の際にでも書きましょう。それまで感電に注意しつつ「ハンド・キーイング」で。(笑)

 他に難しい部品は無いと思います。真空管回路なのでコンデンサの耐圧と抵抗器のワット数に気を付けます。 回路図の「1n」とあるコンデンサは、1ナノ・ファラドのことで、0.001μFあるいは1000pFのことです。 0.003μFはポピュラーでないので0.0033μFあるいは0.0047μFで良いです。(=3,300pFおよび4,700pF)

 2.5mHのRFCも昔は分割ハネカム巻きを使ったのですが、形状が大きめのTr回路用2.2mHで代替できます。テスタで計って巻線の直流抵抗が10Ω以下なら問題なく使えます。
 終段タンクコイル:L1は先日のBlogのようなエヤーダックス・コイルでも、アミドンのトロイダルコアに巻いても良いです。 パワーから見てT-68-#2やT-68-#6などが適当でしょう。もっと大きなものならなお良いでしょう。 適宜タップを設けておきミノムシクリップで切り替えればマルチバンドにオンエアできます。 もちろん、水晶発振子は各バンドとも基本波のものを使います。

# 昨今は不要輻射に厳しくなっています。出力とANTの間にLPFもお忘れなく!

追記
 JAでは未だ包括免許制は実現していないので、新造送信機はTSSあるいはJARDの保証認定を受けてからのオンエアになります。 保証認定基準では単球で「発振段=終段」の送信機は認められていません。 この送信機は2ステージ構成であって純粋に終段電力増幅管のキーイングです。
 しかし見た目が単球ではたとえ複合管でもダメなようでしたら、例えば工事設計書は発振段:6C4+終段電力増幅:6AQ5,etcの2ステージ送信機にするのが良いでしょう。 いずれそのうち指定事項の変更を伴わない「軽微な設備の変更」が発生するでしょうから、それを楽しみながらオンエアすれば良いのです。 もちろん、最初から2球式で製作しても良いのですが・・・。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月20日日曜日

【HAM】4Tr-Regenny

4石再生式受信機】(実用的)
 前のBlogでは、2石式のごく簡単な再生式受信機(←リンク)を扱ってみました。

 流石に2石では心もとない所もあって、交信に使える最低限の受信機なのはやむを得なかったでしょう。 むしろ、2石再生式受信機で実際に交信したのなら、大したものと言えるくらいです。(笑)

 もう少し実用的な例を紹介しておくことにしました。 これは英国のHAM、Des Vance / GI3XZMが『少ない部品で使い物になる受信機』として考えたもので"blooper"の愛称で呼ばれているものです。*1 

 アンテナ同調回路は、左図(a)の様なLoop形式にすると便利が良いのですが、やや感度が低いのでBCL用(短波放送の受信用)になるようです。同じくBCL用でも比較的ハイバンド(9〜16MHz)の受信には(b)が向いています。 BCLの入門者が長さ10mくらいの適当なワイヤーアンテナでそこそこ楽しめるだけの感度があるそうです。(*1RSGBの機関誌RadComより)

 3.5MHz〜7MHzのHAMバンド受信用(SWL用)には外付けアンテナ形式の(c)が良いでしょう。アンテナと直列の30pFのトリマコンデンサは是非とも付けておくべきです。

 検波に適するレベルに加減できないと最高性能を発揮できないのは2石の例と同じです。 HAM用・SWL用なら(d)のようなローパス・フィルタ、あるいは(e)ようなCW用バンドパス・フィルタを図(a)の中央部分にある4.7μFと交換に入れると一段と実用的になります。(88mHの電話回線装荷用コイルはJAに於いては入手しにくいでしょう。しかしQの低いCoilで代用はNGです。フェライトのPot Coreに巻いて自作する手があります)

 なお、前のBlogの再生式受信機では、SSBの受信にかなり難点がありましたが、この回路形式はSSBに幾らか有利なようです。 これは、再生回路・・・と言うよりもQマルチのような正帰還(発振)回路を同調回路と別に置いて緩めに結合しているからでしょう。 もちろん、強い到来信号による引き込み(Pull-in)現象がありますが、検波も発振も同じトランジスタで行なう形式よりも幾らか緩和されます。 引き込まれるほど強い信号に遭遇したときは30pFのアンテナ結合度調整トリマで加減する訳です。

 この検波回路はJ-FETを使った「無限インピーダンス検波」(an infinite impedance detector)と言う形式です。 真空管時代にも稀に使われていました。(参考:だいぶ前に24Vで真空管12AT7/12AU7を使い、独立した再生管を設けたラジオの製作を紹介したことがありました。件のラジオでは「グリッド検波」を使ったのでこれとは異なった物でした)

検波用J-FETの例:2SK19GR
 使用デバイスのうち、検波回路のJ-FET:2N3819は、2SK19、2SK192A、2SK41、2SK241、BF256などの高周波小信号用なら大抵のものが使えます。

 回路を見るとソース抵抗:Rsが大きく選んであります。 カットオフ近くの動作点で使っているのでIdssランクはどれでも良いでしょう。

  もちろん昔懐かしいMK-10や2SK11などでも大丈夫です。 図(a)・J-FETの左下あたりに有って再生&発振に使っているNPNトランジスタ:BC109は2SC1815Yか同GRで十分ですが、高波用Trが使いたいのなら2SC1923Yや2SC2668Yあたりを推奨しておきます。

 回路図(a)右側2石の低周波増幅:BC109は2SC1815Y又は同GRで十分な性能を発揮します。 2SC183、2SC372、2SC458、2SC536、2SC828、2SC945や2SC2458でも良いでしょう。 小信号用NPN型シリコン・トランジスタなら何でも使えると思って良いです。

 図(a)の左上にある再生調整用:100kΩの可変抵抗器は10回転のヘリカル・ポテンショメータを使うように原著には書いてあります。 もちろんそれがあればベストですが、良質な可変抵抗器に大きめのツマミを付ける程度でも十分なはずです。調整容易な方が扱い易いのですが10回転のVRが必要なほどクリチカルではありません。(テスト済み)

 出力のトランスは、500Ω:8Ωのトランジスタ用アウトプット・トランスを使います。橋本電気(山水トランス)のST-82などが候補でしょう。 手持ちにあればポピュラーなST-32でも良いと思います。低周波回路をパワーアンプICのLM386にして強化するなどのバージョンアップは各自で研究されて下さい。

 あまり注意喚起されていないようですが、こうした形式の受信機は受信中に電波を発射する可能性があります。 CWやSSBの受信では間違いなく発射しているでしょう。 従って、可能であれば検波回路の前に高周波増幅を設けるべきです。 その場合、あまりゲインはいりませんからでFETのGG-Ampや、ICならμPC1651Gのような入・出力間のアイソレーションが良いものが適当です。

◎拙BlogのCW用BPFなど付けるとなかなか使える受信機になるように思います。お正月の遊びにでも如何ですか? de JA9TTT/1

あらためて再生式受信機を扱った特集があります。第一回のBlogは:=>こちらから。 

参考:アンテナ・コイルにバーアンテナを使った例が、7M3WVM箕輪さんのサイトに紹介されています。

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月13日日曜日

【HAM】Gennyちゃん

2石再生式受信機:0-T-1
 0-T-1(ゼロ・ティー・ワン)とは、高周波増幅ナシ(ゼロ)、トランジスタで検波(T)、そして低周波増幅1段と言う、受信機の形式を示しています。

 たったの2石でも上手に作ればかなり良く聞こえる短波受信機になります。 もちろん、最低限の構成なので0-T-2にしてスピーカを鳴らすとか、高周波増幅を追加して1-T-2にするなど、発展も楽しめるでしょう。

 中波帯の入門ラジオではレフレックス方式にして2石でスピーカを鳴らす形式も多いのですが、こうした再生式受信機とはまた異なるものでしょう。 HAM用再生式受信機では常に再生度を調整しながら受信します。 発振寸前の状態でAMを受信し、軽い発振状態まで再生を強めればCWのビートが聞こえます。 再生作用による選択度と利得の上昇が体感できる受信機なのです。

 受信にあたって、再生度の加減は言うまでもありませんが、アンテナとの結合具合の加減もとても大切です。 良好に受信するためには操作に感性やスキルが必要なので相応の訓練を要します。 簡単な回路なので、お子様向きのように見えますが、良く聞こえる所まで常に加減しつつ受信するのは難しいものです。 製作にあたっても回路図の裏まで見透かせないと本領を発揮し得ないですから、何とも「おとな」のRadioなのです。 尤も今どきの子供はラジオなんかに興味は示さないでしょうけれど。 ラジオなんか弄ってみたいのは大昔ラジオ少年だった爺さんだけでしょう。(笑)

 この「再生気味」、「発振気味」と言うのはアナログ回路をいじる者にはとても役立つ感性だと思います。 一度は体験して感性を磨いておくと大いに役立つのですが・・・アナログ回路そのものが衰退してしまいましたね。

 回路はJA1FG梶井OM(故人)によるものです。 作り易いよう原典に注釈などを加えておきました。 1960年代の設計ですからゲルマニウム・トランジスタが使われています。 もちろん現代的にシリコン・トランジスタ化しても良いのですがバイアス抵抗の加減を要するかもしれません。 ゲルトラを溜め込んでいるお方もあるようですから、こんな受信機でノスタルジックな製作を楽しまれては如何でしょうか?

参考:回路定数を検討してみましたが、そのままシリコンTrに置き換えても概ね大丈夫なようです。 Q1,Q2ともに少々古典的ですが2SA495や汎用品の2SA1015Yあたりでも良いかもしれません。もう少し高周波(RF)向きのトランジスタを探すのも面白いと思います。 あるいは電源とC7,C8,C10の極性を変更してSi-NPN-Trに置き換えるのも良いでしょう。Q1には2SC1923Yや2SC2668Yがお勧めです。Q2は2SC1815Yや2SC2458Yが良いでしょう。ゲルマニウム・トランジスタに比べてバラツキが少ないので製作の再現性は向上します。

 受信周波数範囲ですが、回路図通りのコイル(L=約3.8μH)で概略4.5MHz〜13MHzがカバーできます。 HAMバンドとしては7MHz帯と10MHz帯の受信が可能です。 BCL用としては6MHz帯、9MHz帯、11MHz帯の各放送バンドが受信できます。 もし受信範囲が広過ぎるようでしたら主バリコンをもっと小容量にし、固定コンデンサと組み合わせ受信範囲を狭めて下さい。

 短波帯の受信機にはバーニヤ・ダイヤルや糸掛け式のような減速ダイヤルメカが是非とも必要です。 そのうえで小容量のスプレッド・バリコンも設けます。 減速ダイヤルなしでは同調がシビア過ぎて、マトモな受信はできないでしょう。 回路は良く似ていても中波帯のラジオとは大きく異なる部分です。(どんな短波帯受信機でもダイヤル機構の部分には十分な手間を掛けるべきです。それがオモチャか実用品かの分かれ目になります)

【2SA70と2SA156】
 どちらも短波帯に使える代表的なゲルマニウム・トランジスタです。 再生検波のQ1のところに使うものですが、他にも同様に使えるものはたくさん存在します。

 トランジスタ規格表のfαbまたはftの項目を見て30MHz以上あれば十分使える可能性があると思って良いでしょう。 少々低いと思っても試してみる価値はあります。 古いトランジスタは同じ型番でもバラツキが大きいからです。

 もちろん、もっと高い周波数まで使えるトランジスタでも良いのですが、再生検波には向き・不向きがあるので差し替えてみると面白いでしょう。 最大コレクタ電流が小さくコレクタ損失も小さめのもの・・即ち、トランジスタ・チップのサイズが小さいものが良好と言う傾向があります。 良いものは再生の掛かり方がスムースです。 向かないものは、いきなり強い発振状態に移行してしまい再生の加減がしにくいのです。

 写真の2SA70は4本足です。これはメタル缶をGNDにアースするための「シールド」の引き出し線があるからです。 通常は回路のアースに接続して使用します。 多くのメタル缶入り高周波用トランジスタがシールド付きでした。 但しメタル缶トランジスタの「缶」は個別の引き出し線があるもののほかに、コレクタ、ベース、エミッタの何れかのリード線に接続されたもの、或はまったく無接続のものなど様々なので注意を要します。 シリコン・トランジスタに比べてゲルマニウム・トランジスタは電気的にも熱的にも遥かに脆弱ですから、製作時の扱いには注意を要します。

【Airdux Coil】
 いまならAmidonのトロイダルコアでも使う方が良いかも知れません。 オリジナルの回路では200816と言うエヤーダックス・コイルが使われていました。

 直径が20mmで、巻線径は0.8mm、そしてピッチが1.6mmと言うものです。 拙宅にも幾つか昔買ったものが残っていましたが、残念ながらオリジナルで指定のものはありませんでした。 ボビンに巻いたコイルでも十分なので、20mmの樹脂製のパイプに巻き線すれば代替できます。

 Airdux Coilというのは米国のBarker & Williamson社がオリジナルでしょう。 初期の頃は輸入品もあったようですが、高価だったので間もなく国産化されました。
 HAM用品の販売店:トヨムラが生産委託し永い間販売していたのですが、1970年代の終わりに生産中止になりました。 製造委託先は個人の会社だったそうで、ご高齢のために仕事をやめたと言うように聞いています。 エヤーダックス・コイルは真空管時代のコイルでした。大きくてトランジスタ時代にはマッチしなかったので需要も暫減していたのでしょう。 しかし生産中止はアンテナ関係やリニヤアンプの自作家にとってはかなり痛手でした。過去の多くの製作記事がそれを使う前提で書かれていたのですから。

Scout Regen Receiver
 海外では再生(Regeneration)式の受信機が(今でも)入門用として推奨されています。 写真はJG1EAD仙波さんが最近キットを輸入されたものです。(今年の忘年会@新宿で撮影:TNX! JG1EAD)

 コイル・ボビンはステアタイト製のように見えますが樹脂製だそうです。 フィードバック・コイルとの結合度の関係から、トロイダルコアよりも空芯コイルの方が向いているようです。 再生度の加減はVCによる方法です。 きちんとしたアンテナを付けるとHAMバンドも結構聞こえるそうです。

 ところで、標題の「Gennyちゃん」ですが、再生式受信機の愛称だそうです。 再生式受信機は米国でも古くからポピュラーで「ジェニーちゃん」の愛称で親しまれていたとか。 なお超再生受信機は「スーパー・ リゼ」と言います。「スーパー・ジェニーちゃん」じゃないのですね。hi hi (再生式、超再生式を区別せずにRegennyとかGenny Receiverと言うようです)

もう少し高級だが案外作り易い4石式再生式受信機のBlogは:=>こちらから。
再生式受信機の特集があります。第一回のBlogは:=>こちらから。

(おわり)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)

2009年12月1日火曜日

【部品】2SB54

ゲルマニウム・トランジスタ:2SB54
 東芝の低周波・小信号増幅用トランジスタです。
 その昔よく使ったトランジスタの一つです。ラジオの低周波(AF)アンプはもちろん、マイクアンプやサイドトーン発振器とかいろいろの使い道がありました。

 規格を調べると、2SB54を電流増幅率:hfeで選別しpush-pull回路用に揃えたのが2SB56のようです。従って下記の回路のように単独で使うならどちらも同じように使えます。

2SB54の実測静特性】(転載不可)
 規格表によれば、2SB54の最大コレクタ電流は-150mAと大きいのですが、小信号増幅回路ではせいぜい数mAのところで使います。

 製造から既に40年をゆうに経過していますが未だ正常そうに見えます。 測定したこの個体のhfeは200くらいあってゲルマニウム・トランジスタとしては大きいほうでしょう。その分だけコレクタ遮断電流:Icboは大きめでしょうか?

 今でもごく普通のトランジスタとして使えますが・・・あえてこれを使うこともなくシリコントランジスタの2SA1015や2SC1815で十分でしょう。

2SB54で1石ラジオを
 『これ1石で何かを』と真顔で問われても困ってしまいます。 しかしゲルトラらしく使ってみましょう。

 これがラジオとして最少の部品点数でしょう。 2SA1015のようなシリコントランジスタで代用するなら抵抗器を1つ追加してベースにバイアスを掛ける必要があります。 2SB54のようなゲルマニウム・トランジスタは、Icboが流れるお陰でバイアス抵抗を省いてもそれなりに増幅してくれるのです。

 2SB54は低周波用なのでトランジスタ検波には適さないのでゲルマニウム・ダイオード(1N60,1K60,1N34A,SD46,OA70,1S188,など)で検波しています。 もちろん順方向電圧:Vfの低いショットキー・ダイオード:SBDでも大丈夫でしょう。 半導体は2つなので、ある意味2石ラジオと言うべきでしょうか?

 “ゲルマ・ラジオが旨く鳴ったら来週はトランジスタを買いに行こう!” こんなラジオで初めてトランジスタに触れた少年も多かった筈です。

 コイルはバーアンテナでも良くて、タップはアース側から1/5くらいのところから引き出すしま。 バリコンはポリバリコンで十分です。 ローカル局が(ゲルマラジオよりも)ずいぶん大きな音で聞こえます。

# 何だか『初歩のラジオ』どころか『子供の科学』の世界に帰ってしまいましたね。

de JA9TTT/1

(おしまい)

(Bloggerの新仕様に対応済み。2017.04.03)