【コンバータ管:1R5/1R5-SFを試す】
introduction
I returned to the 1R5 on the battery tube to evaluate the converter tube again. This was because I had a few 1R5s on hand and was interested in the differences between 1AB6/DK96 and 1R5. The comparison was done in the same way as in the previous Blog. The results obtained were without difference. Converter tubes are not only suitable for frequency conversion purposes, but also for product detection. I believe that my comparison tests will be useful for the construction of communications receivers.(2025.02.12 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【七極管:1R5-SFと1R5】(電池管)
乾電池を電源とする真空管、すなわち電池管で受信機(ラジオ)を目指す第3回目です。 予定を変更して再びコンバータ管をテストします。対象は:1R5/1R5-SFで電池管のコンバータ管としてポピュラーな球です。 前回のI-F Amp.(←リンク)から一旦コンバータ回路に戻ります。
mt電池管のコンバータ管は1R5が原型です。 評価済みの1AB6/DK96や、その対抗管である1R5-SFはいずれも1R5が元になっています。 1R5系の手持ちが4本ありました。 受信機(ラジオ)の製作には1AB6/DK96だけでも足りそうですが、場合によっては1R5を使う可能性もあります。 周波数変換(コンバータ)の用途だけでなくプロダクト検波器への適性もあるはずです。 すべて中古の球なので良否の判定を兼ねてテストしておきました。 1AB6/DK96との違いにも興味があります。
ポータブルラジオでは1AB6/DK96よりも広く使われた1R5/1R5-SFです。 写真は左が1R5-SF(東芝・マツダ)、右はマーキングが消えてますが米国製(RCA or GE?)の1R5です。この1R5はたくさん放出されていた朝鮮戦争のトランシーバ:RT-66/67/68などの軍用無線機で働いていたものかもしれません。無線関係のOMさんが放出した中古の球です。
☆
真空管、ましてや電池管に興味がなければ退屈なだけ。 以下はお薦めしませんので楽しいサイトへジャンプされて下さい。 もし昔のポータブルラジオの残骸が残っていて、もう一度蘇らせて楽しみたいのでしたら幾らか参考になるかもしれません。その程度の話です。
【七極管:1R5の評価回路】(実測データ一覧)
1R5/1R5-SFのテスト回路です。 同じ5グリッドの七極管を使ったコンバータ回路ですから、ちょっと見では既出の1AB6/DK96(←第1回にリンク)と同じようです。
良く回路図を比較したらわかるのですがグリッドの扱いが異なっています。 これは後発の1AB6/DK96が単なる省エネ管ではなくて短波帯での問題点を改善する目的も持っていたからのようです。
中波帯(BCバンド)のラジオなら1R5で問題ありません。しかし2バンドラジオでは短波帯で局発が強い信号に引き込まれて受信しにくいことがあるそうです。(引き込み:Pull-in現象、または連動:Interloking現象ともいう)
短波(SW帯)でも数MHzまでなら大丈夫ではないかと思いますが、10MHz以上ともなると厳しいのかもしれません。この辺りは短波ラジオを作るなら検討を要するでしょう。
ここでは中波のコンバータとしてごく基本的な性能を確認しておきました。 1AB6/DK96と同じように局発コイルがキーパーツです。 同じ仕様の局発コイルが使えるか、興味があったのでそのまま使いました。
結論から言うと支障なく使えます。 非力な1AB6/DK96で発振できたのですから1R5の方がむしろ有利なはず。さらにフィラメント電流が半分で1R5よりも不利な筈の1R5-SFでも大丈夫でした。1R5-SFも意外に頑張ります。(笑)
なお、1R5-SFの最低動作電圧も確認しておきました。 局発の発振停止電圧はEp=11.7Vでした。(但しEf=1.4V、fo=1000kHz) これは1AB6/DK96とほぼ同じです。 もちろんこの電圧までラジオとして使用可能と言う意味ではありません。
図中に実測特性一覧があります。 内容については後の説明も参照してください。
【コンバータ+I-F Amp.で試作】(電池管スーパ)
I-F Amp.まで組んであります。 そのため、だいぶ雑然としています。(笑)
データを取っている途中、うっかりI-F Amp.が付いていることを忘れてしまいました。 測定データに影響が出て、あらためてやり直すと言ったミスがありました。独立したテストをやった方が楽だったかもしれません。
左が評価対象のコンバータ管:1R5です。 1R5が3本、1R5-SFが1本あったので差し替えてデータを採りました。 結果は1R5と1R5-SFで大差はなく意外にも1R5-SFが頑張る印象です。 従って1R5-SFの方がフィラメント電流が半分で済むのでお得です。残念ながら一本しかありませんが・・・。
第2グリッドの電流がコンバータ回路の全電流の7割近くあって大半を占めることは1AB6/DK96と同じでした。 発振停止がコンバータ管の機能停止につながる訳ですから要点は同じと言うことです。 回路図中の表・1に実測データがまとめてあります。1AB6/DK96との比較では大差ありませんでした。同じように使えます。
I-F Amp.も合わせて評価していたところ、稀にI-F Amp.が発振することがありました。 1AJ4/DF96や1T4/1T4-SFは意外にCpgが大きい(6BA6の3倍ある)ので負荷インピーダンスによっては発振の可能性があるようです。 I-F Amp.なので同調をずらせて逃げる訳にも行きません。 幾らか負荷インピーダンスを下げる対策をします。 対策は選択度にあまり影響の及ばない検波器側が良いでしょう。IFTに高抵抗を並列に入れシャントする方法にします。 ゲインと選択度を少し損しますが止むを得ません。 I-F Amp.の発振は配線方法や部品の配置にもよるので作り方次第で問題ないかも知れません。 I-F Amp.の件は一応参考まで。
【七極管:1R5のグリッド電流】(=発振強度)
1AB6/DK96の動作状態は発振電圧・・・第1グリッドのRF電圧で規定されていました。
それに対して1R5/1R5-SFでは第1グリッドの電流で動作が規定されています。 そのためこの評価ではグリッド電流:Ig1も測定しました。 Ig1の大きさが発振の強さを示します。 もちろん最適な範囲があります。
測定はマイクロ・アンメータがあれば簡単にできます。 グリッド・リーク抵抗:回路図ではR1のGND側を切ってそこへ電流計を挿入します。メータの極性はGND側が+です。
その際、必ずバイパスコンデンサを入れ、電流計にRF成分が流れないようにします。 バイパス・コンデンサは0.01μFで良いでしょう。 DC電流計にはRFを流してはいけないのですが、知らぬ人も多くて既に常識ではなくなっているかも知れません。(笑)
電流計にはアナログ・テスタ(回路計)の電流レンジが使えます。 写真では専用の電流計(YEW製)を使いました。 デジタル・マルチメータでもOKです。測定点にバイパス・コンデンサが必須なのはアナ・デジ共通です。
ここは初歩のラジオ教室ではないので余計なお世話でしたかね。(笑)
【七極管の動作説明】(RC-14より)
RCAのチューブ・マニュアルを眺めていると、コンバータ管の動作はTube Applicationの項を参照しろとあります。
左図はRCAの真空管データブック:RC-14からの引用です。 RC-14はスキャン・コピー版がネット上に出回っているので入手は容易です。 RC-14は1R5の登場当時の版ですが、1940年版と古いためもっと新しい版が良いかも知れません。 ネット上に幾つかの版があって必要に応じDLしておくと真空管の扱いについて有用な情報が見つかります。
内容はごく一般的な話があるだけでした。 おそらく5グリッド・コンバータ管にあまり馴染みがないユーザ向けの説明なのでしょう。 一言で言えばスーパ・ヘテロダインの周波数変換に必要な機能を一つの真空管にまとめたのがこうしたコンバータ管だとしています。
左図の回路は6A8・・原型は2A7と言う旧式の5グリッド管の説明になっています。 1R5は6SA7や6BE6と同じ次世代の5グリッド管です。 そのためグリッドの働きが異なっています。少し1R5のことを考察してみましょう。
まず、第1グリッドと第2グリッド・・ここはプレートとして働く・・とカソードで構成された三極管で局部発振器(Lo-OSC)を構成します。 この第2グリッドと第4グリッドは管内で結ばれています。第4グリッドは電子加速用のグリッドとして働きます。
じつは、ここに問題があるようです。 本来、発振部と分離されるべき第3グリッドが第2、第4グリッドに挟まれた形になるため、静電容量的に結合(C結合)して局発の引き込み現象が現れるのでしょう。このように1R5を自励発振のコンバータとして短波帯で使うと不利なのです。
では同じ構造の6SA7や6BE6で引き込み現象があまり問題にならないのは何故でしょうか? これは局発回路の形式が異なるからです。 それらは1R5のようなプレート帰還・グリッド同調の反結合形式ではなくてハートレー型の発振回路なので影響がほとんどないのです。第2・第4グリッドは高周波的にバイパスされGNDレベルなので純粋に加速とシールドの働きをしているためです。
!R5を短波帯で使うと局発の引き込み現象が目立ってくるのは回路形式が原因です。なお、1R5をハートレー回路で発振させることも不可能ではありません。対策できるはずです。
(残った第5グリッドは普通のサプレッサ・グリッドとして働き、フィラメントのマイナス側に結ばれています)
ちょっと脱線して引き込みの原因追及になってしまいましたが、1R5の問題点を考える切っ掛けになってくれました。 1AB6/DK96、1L6、1U6が構造を変えて引き込み対策したことがわかります。
【七極管:1R5の標準動作】
1R5のコンバータ回路の特性を示すグラフです。Tung-Sol社の資料を利用しました。RCAの資料にも同一のグラフがありましたがこちらの方が鮮明なので利用しています。
プレートと第2グリッドの電圧を幾つか変えて変換コンダクタンス(コンバージョン・コンダクタンス)をグラフ化してあります。 変換コンダクタンスとIFTの共振インピーダンスから、コンバータ回路のゲインが計算できます。(下記参照)
1R5の変換コンダクタンスはIg1が100〜200μAでピークとなります。 それを目標に動作させますが、電源電圧、第2グリッド電圧、そして局発コイルの巻き数比と一次・2次の結合度、さらに発振周波数などちょっと考えただけでも様々なパラメータがあります。
従ってあらゆる条件下での最適化は無理があります。 多少変動しても支障はないようですから確実な局発の発振が起こるようにすれば良いでしょう。 なお、Ig1のミニマムは20μAなので、悪条件が重なってもこれを下回らぬよう検討すべきです。 今回のテストではIg1が少なめでした。これはプレートと第2グリッドの電圧が低いためです。ただし十分実用の範囲にあると感じます。 実際にAMラジオを受信すると良く聞こえます。
【IFTの共振インピーダンスとゲインについて】
前回のBlogでも検討したようにLC共振回路の共振インピーダンス;ZはZ=ω・L・Qです。(Z=(1/(ω・C))・Qでも同じ) 言うまでもないですがω=2・π・fです。 IFTの場合、2次側の共振回路も同じ特性で臨界結合状態(k・Q=1)であるとすれれば真空管から見た負荷インピーダンス:Ztは、共振インピーダンス:Zの半分になります。 すなわち、Zt=(1/2)・Zです。
参考:kは結合係数で、2つのコイル間の相互インダクタンスをMとすれば、k=M/(√(L1・L2))です。Q=100とすれば、k=0.01のとき臨界結合状態となります。なお、k>0.01ではIFTは双峰特性となります。一般にAMラジオ用のIFTはk・Q≦1に設計してあります。 なお、相互インダクタンス:Mはインダクタンスメータ(LCRメータ等)があれば比較的精度よく実測から求められます。単層ソレノイドでは計算で概略求めることもできます。
いま、IFTは複同調形式で、Qが100、共振コンデンサが100pF、周波数は455kHzとしましょう。k・Q=1とします。 共振インピーダンス:ZはZ=(1/(ω・C))・Qですから、Z=(1/(2・π・455E10^3・100E10^-12))・100です。計算しますとZ≒350kΩになります。 従ってコンバータ管の負荷インピーダンス:Ztはその半分の約175kΩです。
このIFTを変換コンダクタンス:gcがgc=250μ℧の1R5で使うと変換ゲイン:GはG=175E10^3・250E10^-6≒44(倍)が得られる計算です。
実際にはストレー容量の影響など諸々の原因によるロスなどがあってだいぶ下回るかも知れませんが、20〜30倍の変換ゲインなら得られそうです。(デシベルで言えば:26〜30dB)
中間周波増幅一段の標準的な電池管スーパのばあい、I-F Amp.で30〜40dBのゲインがあります。 ほかにもアンテナコイルの昇圧利得が20dB(10倍)くらいあります。 従って合計で検波段までに76〜90dBのゲインになる計算です。(概算で6,300〜31,000倍)
計算を含むと「見る気がしない」お方が続出でしょうか? こうしたコンバータ回路の変換ゲインはどの程度なのか?・・・といった興味を満たすために簡単な計算を最低限で行ないました。 つらいものを辛抱してご覧いただきたいへんお疲れさまでした。(笑)
☆
以上、コンバータ管:1R5と1R5-SFに関連した話はおしまいです。 先に評価した1AB6/DK96との違いはあまり無いようでした。 差し替え可能という意味ではありませんが、少なくとも中波帯で使う上では機能は同等と考えて良いでしょう。さらに使う場所を考えてやれば高性能なラジオやもう少し高級な通信型受信機にもうまく使えると思います。 以下は、テスト中に気付いたことなど雑談です。
【275pFのポリバリコン】
写真は私の定番バリコンです。コンバータ回路の設計で使いました。
これはジャンクなお店でまとめ購入したものです。 AM/SW用:(max)275pFの等容量2連とFM用:(max)22.5pFの2連が一体になった4連バリコンです。 ほかTVチューニング用:100KΩの可変抵抗器が連動します。 背面に(max)9.5pFのトリマコンデンサが4つ付いてます。(日本製)
良い買い物でしたが残りを使い切れないので、いずれ頒布アイテムにするつもりです。
【足ピン矯正器:ピン・ストレートナー】
中古品のmt管は足ピンが曲がっていることが多いです。 そのままソケットへ刺すと感触が悪くてしっくりきません。
そこで写真のピン矯正器の登場です。これで足ピンを整えてやると挿入がずっとスムースになります。
TV-7/Uなど真空管試験機には矯正器が付属していて、テスト用ソケットの保護の意味からも矯正器の使用が推奨されていたと思います。
国内のショップやオークションで探すと高額です。 米国のお店や中華モノを探すか、eBayも良いかも知れません。使ってみたら有難さがわかります。mt管をたくさんお持ちのお方にお薦めです。(これは頒布の対象ではありません・Sorry)
☆
電池管の整理を兼ねて在庫確認していたら、1R5系のコンバータ管が意外にありました。 -SF管ならともかく、普通の1R5はフィラメント電流が大きいので積極的に使いたいとも思いません。 しかし乾電池の電源に拘らなければ支障にはなりません。 この機会に評価して活用に備えておくことにしました。 1AB6/DK96、1R5/-SFなどコンバータ管ばかり使い道がない感じですがI-F Amp.にも使えます。 シグナル・グリッド:g3 はリモートカットオフ特性なので工夫で活きます。 もう買い足すつもりはないのであとは工夫あるのみ。w
いずれ真空管ジャンクは処分される運命なので、それまでに少しでも通電して遊んでみるのが目標です。次回はAFアンプに続く予定です。 用途が限られ性能も芳しくない電池管ですが、徐々に用法が掴めて活用の目処がたつことで幾らか魅力的(?)に感じ始めています。 ではまた。 de JA9TTT/1
*何かご質問とかあればコメント欄を使ってください。
→わかっている範囲で対応いたします。
*突発的案件発生のため更新の間があくと思います。次回・気長にお待ちを!
(つづく)fm
2025年2月12日水曜日
2025年1月29日水曜日
【電子管】Testing the Battery Tube I-F Amp. : 1AJ4 / DF96
【電池管のI-Fアンプを試す】
introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AJ4/DF96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AJ4/DF96 circuit's I-F Transformer is key. I've tested and made the Practical IFT for this tube. (2025.01.29 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【五極管:1AJ4/DF96】(電池管)
変わりばえのしない先頭の写真ですが、これはI-Fアンプ:中間周波増幅管の1AJ4/DF96です。フィラメント電流が25mAという省電力な電池管を試用する第2回目です。
RCAの電池管シリーズで言えば1T4に相当する球です。 そう言われてもたぶん電池管マニアでもなければ1AJ4/DF96はおろか1T4にさえ馴染みはないでしょう。 私もこれでラジオを作った経験はありませんし、これらを使っているラジオに触れた経験もありませんでした。
電池管式のラジオといえば、私が小学・低学年のころ興味深く眺めた記憶があるだけです。 近所で電気とか鉄道模型にやけに詳しい中学のお兄さんがおりました。 当時、私は鉄道模型が好きでした。見せてもらいにお邪魔したときお兄さんは弁当箱サイズのラジオを聴いてました。 たぶんその時が現役の電池管ラジオを見た最初で最後だったように思います。
中身を見たわけじゃありませんがトランジスタ・ラジオが一般的になる以前でしたし大きさから見ても電池管式のラジオだった筈です。
その後数年で急速にトランジスタの時代が訪れたので電池管に接する機会はありませんでした。 トランンジスタの普及で、大柄で性能も良いとはいえず、しかも経済性(ランニングコスト)に劣った電池管を使う合理性はなくなったのでしょう。電池管は過去のデバイスとして葬り去られてしまい、もはや雑誌の製作記事に登場することはありませんでした。
ラジオ工作の経験といえば、ゲルマ・ラジオの次は1石ラジオとか2石のレフレックスでした。 あと6BA6とか6BM8といった普通の真空管を使ったラジオやアンプ、ワイヤレス・マイクを作って遊ぶのが定番でしたね。 そうこうしているうちに免許を取ってHAMになってしまいました。 「HAM+電池管=3A5の6mトランシーバ」を連想しそうですが、もうそういう時代も終わってました。 TRIO TR-1000(トラ千)が誕生していたのです。
☆
電池管でラジオを作ってみてからシンプルなHF受信機の製作を目指します。 まずは電子デバイス・・ここでは電池管ですが・・を使うための基礎的な実験を進めています。 性能に劣るかなり古い電子部品ですからこれから手に入れる意味はないでしょう。 手にする機会があれば試すと楽しいですけれど積極的にお薦めするようなものではありません。 永く眠ったままだった手持ちを蘇らせてみるという私的なお遊びの一環です。もしチョット興味を覚えるようでしたらこの先を覗いてお楽しみください。 ご感想・コメントもどうぞ。
【I-F Amp.:テスト回路】
さっそくテスト中の回路です。今回はコンバータ回路と中間周波増幅:I-F Amp.を合わせて検討します。
スーパー形式で一番難しいコンバータ回路は既に検討したので、I-F Amp.を足しただけではちょっと面白味に欠けるかもしれません。 しかしコンバータ回路だけでラジオを試してみるのは無理があります。
まあ、初段IFTのあとすぐにゲルマ・ダイオードで検波すればクリスタル・イヤフォンくらいなら鳴りますけれど・・・I-F Amp.ナシでは感度はだいぶ悪いです。w
実用になる普通の電池管ラジオは4球式でした。 典型的な例としては前回のBlog(←リンク)のメーカー推奨回路があります。 その性能は大雑把に言って後世の6石トランジスタ・ラジオ並だったようです。(いや、良くできた6石スーパーには勝てないかも・笑)
まずはI-F Amp.:中間周波増幅まで作ってゲインや感度を評価してみることにしました。 ただ、I-FAmp.の所で切ってしまうとラジオらしい評価はほとんどできません。 検波回路を加えることにします。 これでラジオ放送を受信し「音として復調」したり、AGC/AVC回路の働きを評価することができます。 コンバータ回路から検波回路までを作ってみることにしました。
なお、本来は検波用の二極管を含む電池管・・・例えば1AH5/DAF96あるいは1U5-SFを検波に使うべきです。 使ったブレッドボードにスペースが無かったのでゲルマニウム・ダイオード(Ge-Di)で検波することにしました。 Ge-Diの方がだいぶ性能が良いのが気になりましたが、それを割り引いて評価すれば良いでしょう。
【BBで試作】
例によってブレッドボードでテストします。 前回のコンバータ回路にI-Fアンプを加えました。二球分を載せるために作り替えています。
IFT(中間周波トランス)にはトランジスタ・ラジオ用を使いますが、2個の2次側を突き合わせにして使い2つのIFT間はコンデンサ結合にしました。これを二組作ります。 かつては電池管に適したIFTも存在したようですが今さら手に入りません。代替としてトランジスタ・ラジオ用を使いました。
電池管用のIFTは6BD6や6BA6と言った普通の真空管用とは設計が違います。 電池管の相互コンダクタンス:gmはかなり小さいため、十分なゲインを得るためにはIFTの共振インピーダンスを高くする必要があります。1AJ4/DF96のgmは6BD6と比べ1/3くらいです。
その対策の一つとして負荷Q:QLを大きくする方法があります。 しかしこれには限界があってせいぜい30%アップが限度でしょう。 もう一つとしてはIFTの同調コンデンサの容量を小さくする方法です。 共振インピーダンス:ZL=ω・L・Qですから、Lを大きくしても良いわけです。
それで、一般的なIFTでは150pFくらいのコンデンサを使うのに対して100pFあるいは75pFのように小さくしてLの方を大きくするわけです。もちろんこの方法は良いことばかりではなくて副作用もあります。
このTr用IFTの同調容量は180pFでQu=80です。 そのため共振インピーダンスはそれほど上がりません。 しかしゲイン過剰にはならず、むしろ動作は安定します。 通信用としてI-Fアンプを2段にする可能性もあって、それなら1段あたりのゲインを欲張る必要はありません。 2段増幅にするときはIFTだけに頼らずI-Fフィルタの追加も考えるべきです。
【中間周波トランスの特性】
このラジオに使った中間周波トランス:IFTの特性を示します。Trラジオ用のIFTを組み合わせています。
Tr用IFT2個で作った「IFT」の特性を実測しています。 IFTのリンク側の巻線間を150pFで繋いだものです。 左図は縦軸の1目盛が5dBです。実際の回路ではこれを2組使います。 従って縦軸を2倍の10dB/divと読めばオーバーオールの選択度も予想できるでしょう。 測定には「IFTの特性評価治具」を使いました。
2段目はダイオード負荷なので、負荷Qが低下してやや選択度は悪くなるでしょう。 しかし概ねこの程度の選択度になると思っています。 一般的なラジオの聴取には十分な選択度が得られました。 実際に大きなアンテナをつけて夜間にラジオ放送を受信しても混信はあまり問題になりません。 通信機用としては選択度不足ですが電池管で作る以上、高性能な受信機は目標にしないためこれで大丈夫そうです。 未検討ですが150pFの結合コンデンサの代わりにセラフィルを入れる方法がありそうです。
なお、テストの結果によれば検波器の部分のIFTは結合容量:C10=150pFとするより、C10=470pFとした方が良好でした。検波器により負荷インピーダンスが低下するためです。選択度は幾らか悪くなりますがラジオ放送の受信用としては切れすぎるくらいです。 流用するTr用IFTによって結合容量の最適値は異なるので個々のケースで加減を要します。
【検波出力(低周波)】
検波出力、復調された低周波信号を示します。今回はゲルマ・ダイオードで検波しました。
1AH5のような検波管では二極管部の内部抵抗が大きいためもう少し小さな出力になると思います。 しかし十分高い負荷抵抗を選べば極端な違いはないでしょう。 案外大きな検波出力が得られます。(NHKラジオ東京第1放送・JOAKを受信)
この低周波出力を実験用ステレオ・アンプ:PAF-303に加えてラジオ放送を聴いてみました。 選択度の関係でややハイが切れる感じはありますが音質は良好です。 意外に大きな出力が得られるので低いインピーダンスに変換した上でAMチューナのように使うという活用方法もありそうです。 大きなアンテナで試している関係もありますが、夜間ともなると遠距離のAM局がずいぶんたくさん聞こえてきます。(Quad-Band Inverted-V ANT使用)
AC電源で使ったのではコードレスにできるという電池管のメリットを活かさないことになるのですが「電池管を使ってみたい」という目的にはマッチしています。(笑)
☆
【トラッキング調整を振り返って】
実際にラジオを受信して性能を確認するために一般的な手順に従ってトラッキング調整を行なってみました。 すこし苦労しましたが何とか設計通りに調整できました。
苦労したのは局発のカバレッジの確保です。受信範囲は520kHz〜1620kHzなので、局発は975kHz〜2075kHzを発振する必要があります。 予想通り2次側のフィードバック・コイルをたくさん巻いた局発コイルはストレー容量が大きいのです。 そのためブレッドボード自体や配線等による追加のストレーをできるだけ減らさないと受信周波数の高い方が伸びません。 実際1450kHz以上が受信できない・・と言うようなことが起こります。
ブレッドボードではなく実配線で製作する際もなるべくストレー容量を増やさぬよう部品配置の最適化と短い配線を心掛ける必要があります。局発コイルの各端子の扱い方によっても影響があります。
そしてもし可能ならmax275pFではなくmax340pFくらいある2連バリコンで設計すると楽になります。前回のBlog(←リンク)にある局発コイルの設計を改めて参照を。
【1T4-SFを比較する】
I-F増幅管を1AJ4/DF96から1T4-SFに交換してみました。1T4-SFは松下のDシリーズ管に対抗するために登場した球です。無印の1T4のフィラメント電流を半分にした省エネ管です。
1AJ4/DF96と1T4-SFのピン接続はまったく同じです。従って差し替えて比較が可能です。(注:コンバータ管の1AB6/DK96と1R5-SFはピン接続が異なり、応用回路も違うので差し替えて試せません。配線の変更を要します)
1T4-SFに交換して比較しましたが、殆ど同じでした。どちらも中古の球ですけれど。 感度・音量ともに違いは感じませんでしたので同等の性能であることがわかります。 詳しく測定するとAGC/AVCの特性に幾らか違いがあるのと、Ipがやや少なく済むので1AJ4が幾分か優れるようです。
松下電器を除いた他社はフィラメント省エネ管として急遽-SF管を作ったわけですが十分対抗できるだけの性能に仕上がっていたようです。 コンバータ管は別としても、松下のDシリーズ管と-SF管を混ぜて使うことも十分可能そうです。少し手持ちがある-SF管も活かせるでしょう。
【1T4なら入手は容易】
I-F増幅管:普通の1T4なら入手は容易です。1T4はI-FアンプやRFアンプに使える汎用性のあるRF用電池管です。 もちろんオートダイン検波にも使えます。シンプルなラジオに好適でしょう。 写真の1T4は米国から通販で購入しました。
Pro/Commというのは販売商社のブランド名です。市場に残っていた古い電子部品を自社ブランドに書き換えて販売する会社です。おそらくこの1T4は欧州系で、元はどこかの古い在庫品でしょう。
ヨーロッパにはPhilips製のDシリーズ管がまだ残っているようです。探す手間と費用を惜しまなければ十分入手可能だと思います。
国産の松下製も一般的には用途の限られた「猫またぎ」な球なのですが、古くて珍しいというだけで価格高騰するようです。 頑張って製作しても得られる性能には限界がありますから法外なお値段の球に手を出したら詰まらんでしょう。明らかに性能が悪い真空管です。 そのあたり、よく吟味して入手されますよう希望します。 こうしてBlogで電子部品を扱うと認知されて価格上昇に繋がってしまわないか、いつも心苦しく思っています。(使い方がわかると人気が出るわけなのですが・・・笑)
フィラメント電流が2倍になっても構わないなら写真の1T4など50mAのシリーズは比較的安価ですし入手も容易です。米AES,etcで普通の値段で買えます。(円安が恨めしいが) フィラメント電流が大きい分だけ性能も良くなるので汎用に使い易いでしょう。
電池管をあまり好意的に書きませんでしたが、低性能ではあってもAMラジオくらいなら十分鳴ってくれます。間違って買っちゃった貴方も安心を。 あきらめずに活用を! 電池管はスイッチオンで即働くのでトランジスタのようで面白いです。(実際には1秒くらい遅れる)
☆
30年くらい前ですが、電池管を使ったポータブル機を計画したことがありました。 1T4-SFを使ったVXO回路で7MHzを発振しファイナルにパワー管の3A4を使う予定でした。 せいぜい1〜3Wの出力を狙ったQRP機です。電源はDC/DCコンバータを作りました。
しかし確実なはずのVXOがぜんぜん発振してくれないのです。 VXO回路は単なる水晶発振器と違って、よりgmの大きな真空管が必要なのでした。 1T4-SFのように低性能な電池管ではVXOは無理だったのでしょう。 結局ここで断念してしまい計画中止になりました。
今でしたら単純な水晶発振回路で行くか、電池管に向いた自励発振器(VFO)を作って実現する方法があったと思っています。 半導体の助けを借りてしまえば楽になるので、拘らずにハイブリッド構成でも良いのかもしれません。 そう考えるとDDSやPLLのチップを使ったVFOもアリなのかも知れませんが・・・。(それじゃ面白くないですかね・笑)
米軍用機ではポータブルな機器を中心に電池管もかなり使われていました。 工夫すれば本格的なRigも可能でしょう。 しかし新規に買い足してまで製作するほどの魅力はないかも知れません。なるべく手持ちの電池管でやりくりしながら楽しむ範囲が適当そうです。 有るものを活かして楽しむという本来の趣旨にも添います。
AMラジオでしたらあと2球足すと4球スーパが作れます。 もう少し高性能な「受信機」ならさらに2〜3球必要そうですね。 実際、米軍用HF帯フィールド・トランシーバであるGRC-9/RT-77の受信部は七本の電池管で実戦用の性能を実現しています。 どこまで楽しもうか思案している所です。ラジオ+αなら手元の電池管だけで間に合いそうです。 とりあえずは4球ラジオを鳴らして性能をお味見するのが先決でしょうか。 次回は低周波アンプ以降を予定しています。 この続きは部材準備の都合で暫く間があくかも知れません。 ではまた。 de JA9TTT/1
*何かわからないところがあればコメント欄を使ってください。
→私がわかってる範囲で返信いたします。
(つづく)←リンクnm
introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AJ4/DF96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AJ4/DF96 circuit's I-F Transformer is key. I've tested and made the Practical IFT for this tube. (2025.01.29 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【五極管:1AJ4/DF96】(電池管)
変わりばえのしない先頭の写真ですが、これはI-Fアンプ:中間周波増幅管の1AJ4/DF96です。フィラメント電流が25mAという省電力な電池管を試用する第2回目です。
RCAの電池管シリーズで言えば1T4に相当する球です。 そう言われてもたぶん電池管マニアでもなければ1AJ4/DF96はおろか1T4にさえ馴染みはないでしょう。 私もこれでラジオを作った経験はありませんし、これらを使っているラジオに触れた経験もありませんでした。
電池管式のラジオといえば、私が小学・低学年のころ興味深く眺めた記憶があるだけです。 近所で電気とか鉄道模型にやけに詳しい中学のお兄さんがおりました。 当時、私は鉄道模型が好きでした。見せてもらいにお邪魔したときお兄さんは弁当箱サイズのラジオを聴いてました。 たぶんその時が現役の電池管ラジオを見た最初で最後だったように思います。
中身を見たわけじゃありませんがトランジスタ・ラジオが一般的になる以前でしたし大きさから見ても電池管式のラジオだった筈です。
その後数年で急速にトランジスタの時代が訪れたので電池管に接する機会はありませんでした。 トランンジスタの普及で、大柄で性能も良いとはいえず、しかも経済性(ランニングコスト)に劣った電池管を使う合理性はなくなったのでしょう。電池管は過去のデバイスとして葬り去られてしまい、もはや雑誌の製作記事に登場することはありませんでした。
ラジオ工作の経験といえば、ゲルマ・ラジオの次は1石ラジオとか2石のレフレックスでした。 あと6BA6とか6BM8といった普通の真空管を使ったラジオやアンプ、ワイヤレス・マイクを作って遊ぶのが定番でしたね。 そうこうしているうちに免許を取ってHAMになってしまいました。 「HAM+電池管=3A5の6mトランシーバ」を連想しそうですが、もうそういう時代も終わってました。 TRIO TR-1000(トラ千)が誕生していたのです。
☆
電池管でラジオを作ってみてからシンプルなHF受信機の製作を目指します。 まずは電子デバイス・・ここでは電池管ですが・・を使うための基礎的な実験を進めています。 性能に劣るかなり古い電子部品ですからこれから手に入れる意味はないでしょう。 手にする機会があれば試すと楽しいですけれど積極的にお薦めするようなものではありません。 永く眠ったままだった手持ちを蘇らせてみるという私的なお遊びの一環です。もしチョット興味を覚えるようでしたらこの先を覗いてお楽しみください。 ご感想・コメントもどうぞ。
【I-F Amp.:テスト回路】
さっそくテスト中の回路です。今回はコンバータ回路と中間周波増幅:I-F Amp.を合わせて検討します。
スーパー形式で一番難しいコンバータ回路は既に検討したので、I-F Amp.を足しただけではちょっと面白味に欠けるかもしれません。 しかしコンバータ回路だけでラジオを試してみるのは無理があります。
まあ、初段IFTのあとすぐにゲルマ・ダイオードで検波すればクリスタル・イヤフォンくらいなら鳴りますけれど・・・I-F Amp.ナシでは感度はだいぶ悪いです。w
実用になる普通の電池管ラジオは4球式でした。 典型的な例としては前回のBlog(←リンク)のメーカー推奨回路があります。 その性能は大雑把に言って後世の6石トランジスタ・ラジオ並だったようです。(いや、良くできた6石スーパーには勝てないかも・笑)
まずはI-F Amp.:中間周波増幅まで作ってゲインや感度を評価してみることにしました。 ただ、I-FAmp.の所で切ってしまうとラジオらしい評価はほとんどできません。 検波回路を加えることにします。 これでラジオ放送を受信し「音として復調」したり、AGC/AVC回路の働きを評価することができます。 コンバータ回路から検波回路までを作ってみることにしました。
なお、本来は検波用の二極管を含む電池管・・・例えば1AH5/DAF96あるいは1U5-SFを検波に使うべきです。 使ったブレッドボードにスペースが無かったのでゲルマニウム・ダイオード(Ge-Di)で検波することにしました。 Ge-Diの方がだいぶ性能が良いのが気になりましたが、それを割り引いて評価すれば良いでしょう。
【BBで試作】
例によってブレッドボードでテストします。 前回のコンバータ回路にI-Fアンプを加えました。二球分を載せるために作り替えています。
IFT(中間周波トランス)にはトランジスタ・ラジオ用を使いますが、2個の2次側を突き合わせにして使い2つのIFT間はコンデンサ結合にしました。これを二組作ります。 かつては電池管に適したIFTも存在したようですが今さら手に入りません。代替としてトランジスタ・ラジオ用を使いました。
電池管用のIFTは6BD6や6BA6と言った普通の真空管用とは設計が違います。 電池管の相互コンダクタンス:gmはかなり小さいため、十分なゲインを得るためにはIFTの共振インピーダンスを高くする必要があります。1AJ4/DF96のgmは6BD6と比べ1/3くらいです。
その対策の一つとして負荷Q:QLを大きくする方法があります。 しかしこれには限界があってせいぜい30%アップが限度でしょう。 もう一つとしてはIFTの同調コンデンサの容量を小さくする方法です。 共振インピーダンス:ZL=ω・L・Qですから、Lを大きくしても良いわけです。
それで、一般的なIFTでは150pFくらいのコンデンサを使うのに対して100pFあるいは75pFのように小さくしてLの方を大きくするわけです。もちろんこの方法は良いことばかりではなくて副作用もあります。
このTr用IFTの同調容量は180pFでQu=80です。 そのため共振インピーダンスはそれほど上がりません。 しかしゲイン過剰にはならず、むしろ動作は安定します。 通信用としてI-Fアンプを2段にする可能性もあって、それなら1段あたりのゲインを欲張る必要はありません。 2段増幅にするときはIFTだけに頼らずI-Fフィルタの追加も考えるべきです。
【中間周波トランスの特性】
このラジオに使った中間周波トランス:IFTの特性を示します。Trラジオ用のIFTを組み合わせています。
Tr用IFT2個で作った「IFT」の特性を実測しています。 IFTのリンク側の巻線間を150pFで繋いだものです。 左図は縦軸の1目盛が5dBです。実際の回路ではこれを2組使います。 従って縦軸を2倍の10dB/divと読めばオーバーオールの選択度も予想できるでしょう。 測定には「IFTの特性評価治具」を使いました。
2段目はダイオード負荷なので、負荷Qが低下してやや選択度は悪くなるでしょう。 しかし概ねこの程度の選択度になると思っています。 一般的なラジオの聴取には十分な選択度が得られました。 実際に大きなアンテナをつけて夜間にラジオ放送を受信しても混信はあまり問題になりません。 通信機用としては選択度不足ですが電池管で作る以上、高性能な受信機は目標にしないためこれで大丈夫そうです。 未検討ですが150pFの結合コンデンサの代わりにセラフィルを入れる方法がありそうです。
なお、テストの結果によれば検波器の部分のIFTは結合容量:C10=150pFとするより、C10=470pFとした方が良好でした。検波器により負荷インピーダンスが低下するためです。選択度は幾らか悪くなりますがラジオ放送の受信用としては切れすぎるくらいです。 流用するTr用IFTによって結合容量の最適値は異なるので個々のケースで加減を要します。
【検波出力(低周波)】
検波出力、復調された低周波信号を示します。今回はゲルマ・ダイオードで検波しました。
1AH5のような検波管では二極管部の内部抵抗が大きいためもう少し小さな出力になると思います。 しかし十分高い負荷抵抗を選べば極端な違いはないでしょう。 案外大きな検波出力が得られます。(NHKラジオ東京第1放送・JOAKを受信)
この低周波出力を実験用ステレオ・アンプ:PAF-303に加えてラジオ放送を聴いてみました。 選択度の関係でややハイが切れる感じはありますが音質は良好です。 意外に大きな出力が得られるので低いインピーダンスに変換した上でAMチューナのように使うという活用方法もありそうです。 大きなアンテナで試している関係もありますが、夜間ともなると遠距離のAM局がずいぶんたくさん聞こえてきます。(Quad-Band Inverted-V ANT使用)
AC電源で使ったのではコードレスにできるという電池管のメリットを活かさないことになるのですが「電池管を使ってみたい」という目的にはマッチしています。(笑)
☆
【トラッキング調整を振り返って】
実際にラジオを受信して性能を確認するために一般的な手順に従ってトラッキング調整を行なってみました。 すこし苦労しましたが何とか設計通りに調整できました。
苦労したのは局発のカバレッジの確保です。受信範囲は520kHz〜1620kHzなので、局発は975kHz〜2075kHzを発振する必要があります。 予想通り2次側のフィードバック・コイルをたくさん巻いた局発コイルはストレー容量が大きいのです。 そのためブレッドボード自体や配線等による追加のストレーをできるだけ減らさないと受信周波数の高い方が伸びません。 実際1450kHz以上が受信できない・・と言うようなことが起こります。
ブレッドボードではなく実配線で製作する際もなるべくストレー容量を増やさぬよう部品配置の最適化と短い配線を心掛ける必要があります。局発コイルの各端子の扱い方によっても影響があります。
そしてもし可能ならmax275pFではなくmax340pFくらいある2連バリコンで設計すると楽になります。前回のBlog(←リンク)にある局発コイルの設計を改めて参照を。
【1T4-SFを比較する】
I-F増幅管を1AJ4/DF96から1T4-SFに交換してみました。1T4-SFは松下のDシリーズ管に対抗するために登場した球です。無印の1T4のフィラメント電流を半分にした省エネ管です。
1AJ4/DF96と1T4-SFのピン接続はまったく同じです。従って差し替えて比較が可能です。(注:コンバータ管の1AB6/DK96と1R5-SFはピン接続が異なり、応用回路も違うので差し替えて試せません。配線の変更を要します)
1T4-SFに交換して比較しましたが、殆ど同じでした。どちらも中古の球ですけれど。 感度・音量ともに違いは感じませんでしたので同等の性能であることがわかります。 詳しく測定するとAGC/AVCの特性に幾らか違いがあるのと、Ipがやや少なく済むので1AJ4が幾分か優れるようです。
松下電器を除いた他社はフィラメント省エネ管として急遽-SF管を作ったわけですが十分対抗できるだけの性能に仕上がっていたようです。 コンバータ管は別としても、松下のDシリーズ管と-SF管を混ぜて使うことも十分可能そうです。少し手持ちがある-SF管も活かせるでしょう。
【1T4なら入手は容易】
I-F増幅管:普通の1T4なら入手は容易です。1T4はI-FアンプやRFアンプに使える汎用性のあるRF用電池管です。 もちろんオートダイン検波にも使えます。シンプルなラジオに好適でしょう。 写真の1T4は米国から通販で購入しました。
Pro/Commというのは販売商社のブランド名です。市場に残っていた古い電子部品を自社ブランドに書き換えて販売する会社です。おそらくこの1T4は欧州系で、元はどこかの古い在庫品でしょう。
ヨーロッパにはPhilips製のDシリーズ管がまだ残っているようです。探す手間と費用を惜しまなければ十分入手可能だと思います。
国産の松下製も一般的には用途の限られた「猫またぎ」な球なのですが、古くて珍しいというだけで価格高騰するようです。 頑張って製作しても得られる性能には限界がありますから法外なお値段の球に手を出したら詰まらんでしょう。明らかに性能が悪い真空管です。 そのあたり、よく吟味して入手されますよう希望します。 こうしてBlogで電子部品を扱うと認知されて価格上昇に繋がってしまわないか、いつも心苦しく思っています。(使い方がわかると人気が出るわけなのですが・・・笑)
フィラメント電流が2倍になっても構わないなら写真の1T4など50mAのシリーズは比較的安価ですし入手も容易です。米AES,etcで普通の値段で買えます。(円安が恨めしいが) フィラメント電流が大きい分だけ性能も良くなるので汎用に使い易いでしょう。
電池管をあまり好意的に書きませんでしたが、低性能ではあってもAMラジオくらいなら十分鳴ってくれます。間違って買っちゃった貴方も安心を。 あきらめずに活用を! 電池管はスイッチオンで即働くのでトランジスタのようで面白いです。(実際には1秒くらい遅れる)
☆
30年くらい前ですが、電池管を使ったポータブル機を計画したことがありました。 1T4-SFを使ったVXO回路で7MHzを発振しファイナルにパワー管の3A4を使う予定でした。 せいぜい1〜3Wの出力を狙ったQRP機です。電源はDC/DCコンバータを作りました。
しかし確実なはずのVXOがぜんぜん発振してくれないのです。 VXO回路は単なる水晶発振器と違って、よりgmの大きな真空管が必要なのでした。 1T4-SFのように低性能な電池管ではVXOは無理だったのでしょう。 結局ここで断念してしまい計画中止になりました。
今でしたら単純な水晶発振回路で行くか、電池管に向いた自励発振器(VFO)を作って実現する方法があったと思っています。 半導体の助けを借りてしまえば楽になるので、拘らずにハイブリッド構成でも良いのかもしれません。 そう考えるとDDSやPLLのチップを使ったVFOもアリなのかも知れませんが・・・。(それじゃ面白くないですかね・笑)
米軍用機ではポータブルな機器を中心に電池管もかなり使われていました。 工夫すれば本格的なRigも可能でしょう。 しかし新規に買い足してまで製作するほどの魅力はないかも知れません。なるべく手持ちの電池管でやりくりしながら楽しむ範囲が適当そうです。 有るものを活かして楽しむという本来の趣旨にも添います。
AMラジオでしたらあと2球足すと4球スーパが作れます。 もう少し高性能な「受信機」ならさらに2〜3球必要そうですね。 実際、米軍用HF帯フィールド・トランシーバであるGRC-9/RT-77の受信部は七本の電池管で実戦用の性能を実現しています。 どこまで楽しもうか思案している所です。ラジオ+αなら手元の電池管だけで間に合いそうです。 とりあえずは4球ラジオを鳴らして性能をお味見するのが先決でしょうか。 次回は低周波アンプ以降を予定しています。 この続きは部材準備の都合で暫く間があくかも知れません。 ではまた。 de JA9TTT/1
*何かわからないところがあればコメント欄を使ってください。
→私がわかってる範囲で返信いたします。
(つづく)←リンクnm
2025年1月14日火曜日
【電子管】Testing the Converter Tube : 1AB6 / DK96
【コンバータ管:1AB6/DK96を試す】
introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AB6/DK96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AB6/DK96 circuit's oscillator coil is key. I've tested and made the best coil for this tube. (2025.01.14 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【七極管:1AB6/DK96】(電池管)
2025年が始まりました。今年はラジオ100年だそうです。
1925年大正14年3月22日・東京放送局:JOAK・愛宕山からラジオ放送が始まったのでした。もちろん私は影も形もありません。母さえ未だ生まれてません。(笑) それから100年、情報伝達のメディアもずいぶん発展・変化しましたが、そのとき始まったAMラジオ放送は何とか今でも健在です。
当時、真空管は存在しましたが非常に高価であって7割は鉱石ラジオだったという資料もあります。 JOAKもいまのように超ハイパワーではありませんからごく近距離の限られたエリアで聞こえただけだったのでしょう。(参考:800kHz、0.22kW UV204パラ自励)
ラジオ放送が一般に認知されるや、ラジオとその部品は猛烈な勢いで発展し続けました。戦争の影響もあったでしょう。放送開始からたった14年後の1939年にはもうミニチュア管さえも登場したのでした。大戦前の日本は作れませんでしたがRCAのミニチュア電池管のおかげで昭和16年・1941年ころの米国では実用的なポータブルラジオが市販されていました。パーソナル・ラジオと称し製品としての完成度も高かったそうです。
これからテストするコンバータ管(変周管):1AB6/DK96は戦後に生まれた第2世代のミニチュア電池管です。 スーパー・ヘテロダイン式ラジオの周波数変換回路(コンバータ)に使うための7極管です。 1950年代はじめヨーロッパで登場したものです。
RCAの:1R5-1T4-1S5-3S4(1S4)といった50mAフィラメントの球を25mAに省エネ改良したものです。それでも乾電池にとっては電流が多いと感じますが半分になったのですからフィラメント用:A電池の持ちはずいぶん改善されたでしょう。(3倍もつそうです)
この省エネ管は蘭フィリップス社が開発しました。日本では技術提携していたナショナル・松下電器で生産されました。私の手持ちも松下製です。 これに触発され、従来の50mA管を半分の25mAに改造した1R5-SFのような-SF管が国内各社から登場したのはご存知の通りです。(はっきり言ってこの改造で電気的性能はかなり悪くなった・笑)
☆
1AB6/DK96は70年も前の電子デバイスです。 でも私にとっては「新しい電子デバイス」なのです。 真空管規格表やラジオの回路図はそこそこ残っていますが使うための基本的な情報はほとんどわかっていません。 回路はごく簡単なのですが幾つかキーとなるパーツはもう一度ラジオ製作者自身で検討しなくてはならないようです。
【ナショナルDシリーズ管ラジオ】
使い方を知るにはメーカーの提供する資料がたいへん役立ちます
真空管規格表は正しく使うために重要ですが、それだけで活用するのは難しいと感じます。 具体的な回路例があって初めて安心して使えるのではないでしょうか。
1950年代にもなると、真空管は完成されたデバイスの域に達していたようです。 活用法も整理され非常にシンプルな回路でラジオが作れることがわかります。 真空管はトランジスタほど小型ではありませんからポケットサイズは難しいでしょう。
それでも十分ポータブルなラジオが可能なことがわかります。電池管はほとんど発熱もありませんから真空管をぎゅうぎゅう詰めにしたようなポータブルラジオが作れたのですね。
ただし電池だけは無闇に小型化できませんでした。実用寿命を考えるとあまり小型化すると容量が激減して使い物にならないからです。 電池そのものの性能も今ほど優れてはいませんでした。 マンガン乾電池は大電流の放電特性が悪いためフィラメント用A電池は特に消耗が早かったでしょうね。
☆
ポータブルなAMラジオを真空管で作りたい訳ではありません。せめて7MHzのHAMバンドが受信できるような「受信機」を作ってみたいものだ・・・と。その第一歩が1AB6/DK96の検討です。今年もジャンクな球で遊ぶ最後のチャンスになりそうです。
【Dシリーズ管:1AB6/DK96テスト回路】
最終目標は違いますが、まずはラジオ(受信機)をスーパー・ヘテロダインで作ります。 スーパーで最も重要な部分と言えば何と言っても周波数変換回路:コンバータ回路でしょう。
この回路がうまく働かないとラジオの性能が出せません。 まずはここから検討を始めました。
他の回路は言わば常識的な増幅回路に過ぎませんから難しさや未知数な部分は少ないと考えられるからです。
何を検討するのかというと、局発回路(ローカル・オシレータ回路)です。 スーパー・ヘテロダインの原理を使って、受信信号を局発と混合して中間周波に変換します。 局発がうまく発振しなければ周波数変換がなされません。 従って全く受信できなくなってしまうからです。
メーカーの回路図(前項)を見ると、2次巻線付きの発振コイルが使ってあります。グリッド同調型の反結合型発振回路です。 電池管の構造上6BE6のようなハートレー型発振回路は合理的でないからです。 実はこの発振回路のコイルこそがキーパーツでしょう。 デキが悪ければ発振せず、何とか発振はしても最適でなければ感度が上がりません。 電池管のラジオもここさえ決まればあとはそれほど未知の部分はないと言えそうです。
【Tr用局発コイル:SLV-C01の仕様】
電池管のAMスーパーと言うと、巷ではNo.88コイルが局発用として使われることが多いようです。
そのNo.88コイルは私が子供のころから存在していて、実はいま売っているのも電池管式ラジオのために開発されたコイルが原型だそうです。 秋葉や日本橋のパーツショップを探せば手に入りそうですが代替品を探ってみることにしました。
フィードバック用(帰還用)の巻線を持った局発回路用のコイルといえばトランジスタ・ラジオ用が思い浮かびます。 市販品で容易に手に入るものに「SLV-C01」と言う型番のコイルがあります。 幸い手持ちがあったので検討してみました。
左の仕様書を見ると同調側のインダクタンスは360μHです。140pF+82pFのトラッキングレス型ポリ・バリコンを使うのが前提でしょう。 巻き数は同調側が104回巻いてあります。 フィードバック・コイル・・・本来はトランジスタのコレクタ側に入る・・・は11回巻きです。
フィードバック・コイルは同調側の約10%の巻き数です。 電池管(発振部)のgm:相互コンダクタンスは600μ℧くらいなので、ずいぶん小さいため10%ではちょっと心もとないと思うのです。しかし既製のコイルがうまく使えたなら手間が要らずFBです。 それで中波ラジオの受信テストができますから・・・取りあえず1AB6を使った感触をつかむには適当です。 まずは使ってみましょう。
【SLV-C01を使ってみる】
ラッキーなことに発振してくれました
なぜラッキーかと言うと3本あった1AB6のうち1本しか発振せず、しかも最初に使った1本目で発振したからです。(笑)
結論から言うと「活きのいい」1AB6/DK96なら発振するかも知れないが、ダメな確率は2/3ということでしょう。もっとも3本とも中古品なので少々ボケた球の可能性はあります。 電池管はひ弱なのでちょっとボケただけでも性能がだいぶ落ちるようですから・・・。
1本だけでも発振してくれたお陰で、基本的なテストができました。 発振状態を観測したり、信号を加えて簡易なコンバータ動作などテストができたからです。 しかし、明らかにフィードバック用コイルの巻き数は不足していると感じられます。(後に先人の情報など調べていてわかったのですが、発振が弱いと変換コンダクタンス:gcが上がらず、ラジオとしての感度はだいぶ悪くなるそうです)
【発振波形:SLV-C01のとき】
約1MHzを発振しているときの波形です。 観測ポイントは局発コイルの同調側で、1AB6の第1グリッドに繋がる部分です。
約2Vppの発振振幅があります。約700mVrmsですね。 しかしこれでは発振が弱過ぎて性能の良い周波数変換はできないようです。(後で調べてわかった)
周波数を可変してみて、発振波形は良好でした。 また周波数安定度も良くて電源をONしてすぐ元の発振周波数に落ち着くのは消費電力の少ない電池管ならではのように感じました。
☆
【局発コイルを設計】
結局のところ自分で適当な局発コイルを設計して製作するのがベストであるという結論です。
コイルを巻くためのボビンはaitendoで売っている「IFTきっと」を使います。 このキットのコア材は透磁率:μ(ミュー)が大きくて少なめの巻き数で必要なインダクタンスが得られます。 ストレー容量が減らせるので同調回路に使ったとき周波数の伸びがよくなります。
コイルの仕様を決めるためには、使用するバリコンを決めなくてはなりません。 私の定番はmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンです。それを使う前提で左図のBで製作することにしました。(典型的なバリコンに合わせて幾つか設計しておきました。左図)
同調側のインダクタンスは148μHで巻き数は68回です。 肝心のフィードバック・コイルの巻き数は19回でやってみます。 同調側の約28%の巻き数になっています。
巻き数の根拠は何かと問われると困るのですが、電池管の1R5(同じくコンバータ管です)の局発コイルについて試作した資料があって、意外に広い範囲で発振することがわかっています。 ただし10%くらいでは明らかに不足で、グリッド同調側の25〜45%くらいの巻き数は必要そうでした。 それと1AB6/DK96は1R5よりも明らかにgmが低くて非力なのです。フィラメント電流は半分ですからねえ・・・。
ただし参考資料のコイルはコア入りではあっても細いボビンにハネカム巻きになっており、ここで使うボビンよりも1次と2次の結合度は緩いものです。 従ってツボ形コアの「IFTきっと」で作るならやや少なめでも十分であろうと目処を付けた訳です。 もちろん上記でテストした既製品コイル:SLV-C01の評価も十分参考になってます。
計画的に実験して最適解を求めるには最低でも3種類の巻き数比でコイルを製作し比較する必要があります。 それも大変なので既存の実験結果や参考データを参照して概ね良さそうなコイルを巻くことにしたわけです。無根拠ではありませんが推測や勘もあるのでやや科学的とは言えないかもしれません。それでも上手く行けば良しとするのが研究論文ではない気楽さです。ベースは娯楽なんですから。(笑)
【局発コイルを製作】
さっそく巻いてみました。 いずれANTコイルも欲しくなるので同時に製作しました。 こちらもmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンを使う設計です。
はじめ、同調側を70回巻きで作ったところ、コアの可変範囲の端の方で148μHになりました。 余裕がなさ過ぎたので2回減らして68回巻きに修正しました。 巻線はφ0.08mmのポリウレタン被覆電線(UEW線)を使います。φ0.1mmでは巻ききれないことがあります。
コイルの再現性は良いと思います。 いまのところaitendoで売っている「IFTきっと」のボビンとコアを使って製作すれば同じ巻き数で概ね同一のコイルが作れると思って良いでしょう。 巻き方ですが整然と揃えて綺麗に巻く必要はありません。ガラ巻きで十分です。 なお、巻枠にあたるツヅミ型コアには同調側の巻線(68回)を先に巻きます。 フィードバック・コイル(19回)はそれに重ねる形で後から巻きました。
コイルの巻線の1次側と2次側の絶縁耐圧に多少の心配はあるのですが、少なくとも50Vやそこらでは問題はないようです。実際にはせいぜい40Vくらいしか掛かりませんので心配ないでしょう。 なお、回路的な工夫でDC電圧が掛からないようにする方法もあります。
【作ったコイルでテスト】
先のテストと同じようにブレッドボード用の変換基板に実装しました。
さっそく交換してテストしてみたところ、こんどは3本ある1AB6/DK96のどれでもちゃんと発振しました。やはりフィードバック。コイルの巻き数は10%では不足だったようですね。 たぶんこのコイルなら少々ボケたような球でも発振してくれるのではないかと思っています。
参考のためQメータを使って実測しておきました。 Quもだいたい100位あってSLV-C01よりも良好でした。 コアを調整してインダクタンスを合わせておいたので回路に入れた際の調整は最小限で済みました。
自作コイルもSLV-C01と巻線の巻き方向を合わせてありますから、そのまま差し替えれば配線変更なしで直ちにテストできます。 巻線方向が合っていないと正帰還にならず発振しないので良く確認を。 コイルの製作図で⚫️黒丸のあるピンから巻き始めます!
【発振波形:自作コイルはどうか?】
発振波形を観測しています。
上の方の波形とたいした違いはないように感じるかも知れません。 この観測では縦軸の感度は2V/divで先の写真の4倍になっているので注意を! 従って、だいたい5倍くらいの発振振幅になっています。
振幅は発振周波数によって変化します。 高い周波数で大きくなり低くなると小さくなります。 低い周波数で9Vpp、高い周波数で12 Vppくらい得られています。 フィリップス社の1AB6/DK96のデータ・シートを見ると変換コンダクタンス:gcは局発が4Vrms程度で最大になります。(4Vrmsは約11.3Vpp) 従って概ね最適値になっていると考えて良いでしょう。
実測結果は上記のテスト回路図中にある表・1にまとめておきました。 3本あったいずれの1AB6/DK96ともに良好な発振特性が得られました。出所不明のジャンクな球ですが十分使いものになりそうです。
【回路電流】
コンバータ回路のみの回路電流です。 どの球でもだいたい1.3mA程度流れるようです。 8割近くがスクリーン・グリッドg2(発振回路のプレートとして動作している)に流れているようです。
真空管というと消費電力が大きいイメージがあります。 実際のところフィラメントやヒータ回路での消費電力が大きくて、次いでスピーカを鳴らすパワーアンプ部の消費電力が大きいです。 I-Fアンプや検波後の低周波小信号アンプのプレート電源(+B電源)はごく少ない電流しか流れていません。
スーパー・ヘテロダインの自励コンバータ回路の場合、局部発振回路(ローカル・オシレータ)の消費電流が大きめになっているようです。 これは電池消耗やAC電源の電圧変動で発振プレート(g2)の電圧が低下しても確実に発振し、最後まで踏ん張るように考えられているからだと思います。 スーパーは局発が止まってしまうと万事休すですから。
発振停止電圧も確かめておきました。 フィラメント電圧が1.4VならEp=12Vあたりまで発振は持続します。 またフィラメント電圧が0.9Vに低下したときでもEp=17.6Vまで発振は継続します。
もちろん、Ep=12Vや18Vではラジオの低周波パワー管はうまく働かず音は出ません。ラジオとして実用になるのはもっと高い電圧まででしょう。何とか使えるのはEp=35Vあたり迄でしょうか。 コンバータ管の発振が止まる以前に他の回路が働かなくなるのでコンバータ回路としては合格です。
【テスト回路全景】
いつものようにブレッドボードを使って実験しました。 電池管ラジオの電源電圧はあまり高くないので十分使えます。
写真では1AB6/DK96のプレート回路にIFT(中間周波トランス)が入れてあります。これはトランジスタ回路用ですが十分使いものになるようです。
続きが書けそうでしたら次回のBlogでもう少し詳しく扱いたいと思っています。
☆
性能の良い普通の真空管がまだまだ沢山あるのに、あえて性能の良くない電池管など試す価値はないと言われてしまいそうです。 でもそれを言い出すと真空管を使うことすらナンセンスになってしまいます。半導体でやる方が本質的でしょうからね。
いずれ真空管ジャンクは処分するわけなので、それまでに幾らかでも試して遊んでみたいというのが今の心境です。 電池管はことに用途が限定的です。 それに実際に自らの手で触った経験のないデバイスは何となく新鮮で楽しいですし・・・。これは見てるだけではわからないかも。w 次回はI-Fアンプ以降に続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)fm
introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AB6/DK96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AB6/DK96 circuit's oscillator coil is key. I've tested and made the best coil for this tube. (2025.01.14 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【七極管:1AB6/DK96】(電池管)
2025年が始まりました。今年はラジオ100年だそうです。
1925年大正14年3月22日・東京放送局:JOAK・愛宕山からラジオ放送が始まったのでした。もちろん私は影も形もありません。母さえ未だ生まれてません。(笑) それから100年、情報伝達のメディアもずいぶん発展・変化しましたが、そのとき始まったAMラジオ放送は何とか今でも健在です。
当時、真空管は存在しましたが非常に高価であって7割は鉱石ラジオだったという資料もあります。 JOAKもいまのように超ハイパワーではありませんからごく近距離の限られたエリアで聞こえただけだったのでしょう。(参考:800kHz、0.22kW UV204パラ自励)
ラジオ放送が一般に認知されるや、ラジオとその部品は猛烈な勢いで発展し続けました。戦争の影響もあったでしょう。放送開始からたった14年後の1939年にはもうミニチュア管さえも登場したのでした。大戦前の日本は作れませんでしたがRCAのミニチュア電池管のおかげで昭和16年・1941年ころの米国では実用的なポータブルラジオが市販されていました。パーソナル・ラジオと称し製品としての完成度も高かったそうです。
これからテストするコンバータ管(変周管):1AB6/DK96は戦後に生まれた第2世代のミニチュア電池管です。 スーパー・ヘテロダイン式ラジオの周波数変換回路(コンバータ)に使うための7極管です。 1950年代はじめヨーロッパで登場したものです。
RCAの:1R5-1T4-1S5-3S4(1S4)といった50mAフィラメントの球を25mAに省エネ改良したものです。それでも乾電池にとっては電流が多いと感じますが半分になったのですからフィラメント用:A電池の持ちはずいぶん改善されたでしょう。(3倍もつそうです)
この省エネ管は蘭フィリップス社が開発しました。日本では技術提携していたナショナル・松下電器で生産されました。私の手持ちも松下製です。 これに触発され、従来の50mA管を半分の25mAに改造した1R5-SFのような-SF管が国内各社から登場したのはご存知の通りです。(はっきり言ってこの改造で電気的性能はかなり悪くなった・笑)
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1AB6/DK96は70年も前の電子デバイスです。 でも私にとっては「新しい電子デバイス」なのです。 真空管規格表やラジオの回路図はそこそこ残っていますが使うための基本的な情報はほとんどわかっていません。 回路はごく簡単なのですが幾つかキーとなるパーツはもう一度ラジオ製作者自身で検討しなくてはならないようです。
【ナショナルDシリーズ管ラジオ】
使い方を知るにはメーカーの提供する資料がたいへん役立ちます
真空管規格表は正しく使うために重要ですが、それだけで活用するのは難しいと感じます。 具体的な回路例があって初めて安心して使えるのではないでしょうか。
1950年代にもなると、真空管は完成されたデバイスの域に達していたようです。 活用法も整理され非常にシンプルな回路でラジオが作れることがわかります。 真空管はトランジスタほど小型ではありませんからポケットサイズは難しいでしょう。
それでも十分ポータブルなラジオが可能なことがわかります。電池管はほとんど発熱もありませんから真空管をぎゅうぎゅう詰めにしたようなポータブルラジオが作れたのですね。
ただし電池だけは無闇に小型化できませんでした。実用寿命を考えるとあまり小型化すると容量が激減して使い物にならないからです。 電池そのものの性能も今ほど優れてはいませんでした。 マンガン乾電池は大電流の放電特性が悪いためフィラメント用A電池は特に消耗が早かったでしょうね。
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ポータブルなAMラジオを真空管で作りたい訳ではありません。せめて7MHzのHAMバンドが受信できるような「受信機」を作ってみたいものだ・・・と。その第一歩が1AB6/DK96の検討です。今年もジャンクな球で遊ぶ最後のチャンスになりそうです。
【Dシリーズ管:1AB6/DK96テスト回路】
最終目標は違いますが、まずはラジオ(受信機)をスーパー・ヘテロダインで作ります。 スーパーで最も重要な部分と言えば何と言っても周波数変換回路:コンバータ回路でしょう。
この回路がうまく働かないとラジオの性能が出せません。 まずはここから検討を始めました。
他の回路は言わば常識的な増幅回路に過ぎませんから難しさや未知数な部分は少ないと考えられるからです。
何を検討するのかというと、局発回路(ローカル・オシレータ回路)です。 スーパー・ヘテロダインの原理を使って、受信信号を局発と混合して中間周波に変換します。 局発がうまく発振しなければ周波数変換がなされません。 従って全く受信できなくなってしまうからです。
メーカーの回路図(前項)を見ると、2次巻線付きの発振コイルが使ってあります。グリッド同調型の反結合型発振回路です。 電池管の構造上6BE6のようなハートレー型発振回路は合理的でないからです。 実はこの発振回路のコイルこそがキーパーツでしょう。 デキが悪ければ発振せず、何とか発振はしても最適でなければ感度が上がりません。 電池管のラジオもここさえ決まればあとはそれほど未知の部分はないと言えそうです。
【Tr用局発コイル:SLV-C01の仕様】
電池管のAMスーパーと言うと、巷ではNo.88コイルが局発用として使われることが多いようです。
そのNo.88コイルは私が子供のころから存在していて、実はいま売っているのも電池管式ラジオのために開発されたコイルが原型だそうです。 秋葉や日本橋のパーツショップを探せば手に入りそうですが代替品を探ってみることにしました。
フィードバック用(帰還用)の巻線を持った局発回路用のコイルといえばトランジスタ・ラジオ用が思い浮かびます。 市販品で容易に手に入るものに「SLV-C01」と言う型番のコイルがあります。 幸い手持ちがあったので検討してみました。
左の仕様書を見ると同調側のインダクタンスは360μHです。140pF+82pFのトラッキングレス型ポリ・バリコンを使うのが前提でしょう。 巻き数は同調側が104回巻いてあります。 フィードバック・コイル・・・本来はトランジスタのコレクタ側に入る・・・は11回巻きです。
フィードバック・コイルは同調側の約10%の巻き数です。 電池管(発振部)のgm:相互コンダクタンスは600μ℧くらいなので、ずいぶん小さいため10%ではちょっと心もとないと思うのです。しかし既製のコイルがうまく使えたなら手間が要らずFBです。 それで中波ラジオの受信テストができますから・・・取りあえず1AB6を使った感触をつかむには適当です。 まずは使ってみましょう。
【SLV-C01を使ってみる】
ラッキーなことに発振してくれました
なぜラッキーかと言うと3本あった1AB6のうち1本しか発振せず、しかも最初に使った1本目で発振したからです。(笑)
結論から言うと「活きのいい」1AB6/DK96なら発振するかも知れないが、ダメな確率は2/3ということでしょう。もっとも3本とも中古品なので少々ボケた球の可能性はあります。 電池管はひ弱なのでちょっとボケただけでも性能がだいぶ落ちるようですから・・・。
1本だけでも発振してくれたお陰で、基本的なテストができました。 発振状態を観測したり、信号を加えて簡易なコンバータ動作などテストができたからです。 しかし、明らかにフィードバック用コイルの巻き数は不足していると感じられます。(後に先人の情報など調べていてわかったのですが、発振が弱いと変換コンダクタンス:gcが上がらず、ラジオとしての感度はだいぶ悪くなるそうです)
【発振波形:SLV-C01のとき】
約1MHzを発振しているときの波形です。 観測ポイントは局発コイルの同調側で、1AB6の第1グリッドに繋がる部分です。
約2Vppの発振振幅があります。約700mVrmsですね。 しかしこれでは発振が弱過ぎて性能の良い周波数変換はできないようです。(後で調べてわかった)
周波数を可変してみて、発振波形は良好でした。 また周波数安定度も良くて電源をONしてすぐ元の発振周波数に落ち着くのは消費電力の少ない電池管ならではのように感じました。
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【局発コイルを設計】
結局のところ自分で適当な局発コイルを設計して製作するのがベストであるという結論です。
コイルを巻くためのボビンはaitendoで売っている「IFTきっと」を使います。 このキットのコア材は透磁率:μ(ミュー)が大きくて少なめの巻き数で必要なインダクタンスが得られます。 ストレー容量が減らせるので同調回路に使ったとき周波数の伸びがよくなります。
コイルの仕様を決めるためには、使用するバリコンを決めなくてはなりません。 私の定番はmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンです。それを使う前提で左図のBで製作することにしました。(典型的なバリコンに合わせて幾つか設計しておきました。左図)
同調側のインダクタンスは148μHで巻き数は68回です。 肝心のフィードバック・コイルの巻き数は19回でやってみます。 同調側の約28%の巻き数になっています。
巻き数の根拠は何かと問われると困るのですが、電池管の1R5(同じくコンバータ管です)の局発コイルについて試作した資料があって、意外に広い範囲で発振することがわかっています。 ただし10%くらいでは明らかに不足で、グリッド同調側の25〜45%くらいの巻き数は必要そうでした。 それと1AB6/DK96は1R5よりも明らかにgmが低くて非力なのです。フィラメント電流は半分ですからねえ・・・。
ただし参考資料のコイルはコア入りではあっても細いボビンにハネカム巻きになっており、ここで使うボビンよりも1次と2次の結合度は緩いものです。 従ってツボ形コアの「IFTきっと」で作るならやや少なめでも十分であろうと目処を付けた訳です。 もちろん上記でテストした既製品コイル:SLV-C01の評価も十分参考になってます。
計画的に実験して最適解を求めるには最低でも3種類の巻き数比でコイルを製作し比較する必要があります。 それも大変なので既存の実験結果や参考データを参照して概ね良さそうなコイルを巻くことにしたわけです。無根拠ではありませんが推測や勘もあるのでやや科学的とは言えないかもしれません。それでも上手く行けば良しとするのが研究論文ではない気楽さです。ベースは娯楽なんですから。(笑)
【局発コイルを製作】
さっそく巻いてみました。 いずれANTコイルも欲しくなるので同時に製作しました。 こちらもmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンを使う設計です。
はじめ、同調側を70回巻きで作ったところ、コアの可変範囲の端の方で148μHになりました。 余裕がなさ過ぎたので2回減らして68回巻きに修正しました。 巻線はφ0.08mmのポリウレタン被覆電線(UEW線)を使います。φ0.1mmでは巻ききれないことがあります。
コイルの再現性は良いと思います。 いまのところaitendoで売っている「IFTきっと」のボビンとコアを使って製作すれば同じ巻き数で概ね同一のコイルが作れると思って良いでしょう。 巻き方ですが整然と揃えて綺麗に巻く必要はありません。ガラ巻きで十分です。 なお、巻枠にあたるツヅミ型コアには同調側の巻線(68回)を先に巻きます。 フィードバック・コイル(19回)はそれに重ねる形で後から巻きました。
コイルの巻線の1次側と2次側の絶縁耐圧に多少の心配はあるのですが、少なくとも50Vやそこらでは問題はないようです。実際にはせいぜい40Vくらいしか掛かりませんので心配ないでしょう。 なお、回路的な工夫でDC電圧が掛からないようにする方法もあります。
【作ったコイルでテスト】
先のテストと同じようにブレッドボード用の変換基板に実装しました。
さっそく交換してテストしてみたところ、こんどは3本ある1AB6/DK96のどれでもちゃんと発振しました。やはりフィードバック。コイルの巻き数は10%では不足だったようですね。 たぶんこのコイルなら少々ボケたような球でも発振してくれるのではないかと思っています。
参考のためQメータを使って実測しておきました。 Quもだいたい100位あってSLV-C01よりも良好でした。 コアを調整してインダクタンスを合わせておいたので回路に入れた際の調整は最小限で済みました。
自作コイルもSLV-C01と巻線の巻き方向を合わせてありますから、そのまま差し替えれば配線変更なしで直ちにテストできます。 巻線方向が合っていないと正帰還にならず発振しないので良く確認を。 コイルの製作図で⚫️黒丸のあるピンから巻き始めます!
【発振波形:自作コイルはどうか?】
発振波形を観測しています。
上の方の波形とたいした違いはないように感じるかも知れません。 この観測では縦軸の感度は2V/divで先の写真の4倍になっているので注意を! 従って、だいたい5倍くらいの発振振幅になっています。
振幅は発振周波数によって変化します。 高い周波数で大きくなり低くなると小さくなります。 低い周波数で9Vpp、高い周波数で12 Vppくらい得られています。 フィリップス社の1AB6/DK96のデータ・シートを見ると変換コンダクタンス:gcは局発が4Vrms程度で最大になります。(4Vrmsは約11.3Vpp) 従って概ね最適値になっていると考えて良いでしょう。
実測結果は上記のテスト回路図中にある表・1にまとめておきました。 3本あったいずれの1AB6/DK96ともに良好な発振特性が得られました。出所不明のジャンクな球ですが十分使いものになりそうです。
【回路電流】
コンバータ回路のみの回路電流です。 どの球でもだいたい1.3mA程度流れるようです。 8割近くがスクリーン・グリッドg2(発振回路のプレートとして動作している)に流れているようです。
真空管というと消費電力が大きいイメージがあります。 実際のところフィラメントやヒータ回路での消費電力が大きくて、次いでスピーカを鳴らすパワーアンプ部の消費電力が大きいです。 I-Fアンプや検波後の低周波小信号アンプのプレート電源(+B電源)はごく少ない電流しか流れていません。
スーパー・ヘテロダインの自励コンバータ回路の場合、局部発振回路(ローカル・オシレータ)の消費電流が大きめになっているようです。 これは電池消耗やAC電源の電圧変動で発振プレート(g2)の電圧が低下しても確実に発振し、最後まで踏ん張るように考えられているからだと思います。 スーパーは局発が止まってしまうと万事休すですから。
発振停止電圧も確かめておきました。 フィラメント電圧が1.4VならEp=12Vあたりまで発振は持続します。 またフィラメント電圧が0.9Vに低下したときでもEp=17.6Vまで発振は継続します。
もちろん、Ep=12Vや18Vではラジオの低周波パワー管はうまく働かず音は出ません。ラジオとして実用になるのはもっと高い電圧まででしょう。何とか使えるのはEp=35Vあたり迄でしょうか。 コンバータ管の発振が止まる以前に他の回路が働かなくなるのでコンバータ回路としては合格です。
【テスト回路全景】
いつものようにブレッドボードを使って実験しました。 電池管ラジオの電源電圧はあまり高くないので十分使えます。
写真では1AB6/DK96のプレート回路にIFT(中間周波トランス)が入れてあります。これはトランジスタ回路用ですが十分使いものになるようです。
続きが書けそうでしたら次回のBlogでもう少し詳しく扱いたいと思っています。
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性能の良い普通の真空管がまだまだ沢山あるのに、あえて性能の良くない電池管など試す価値はないと言われてしまいそうです。 でもそれを言い出すと真空管を使うことすらナンセンスになってしまいます。半導体でやる方が本質的でしょうからね。
いずれ真空管ジャンクは処分するわけなので、それまでに幾らかでも試して遊んでみたいというのが今の心境です。 電池管はことに用途が限定的です。 それに実際に自らの手で触った経験のないデバイスは何となく新鮮で楽しいですし・・・。これは見てるだけではわからないかも。w 次回はI-Fアンプ以降に続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1
(つづく)fm
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