【フィルタの反響現象とは】
狭い部屋、あるいはトンネルの様な場所で、会話が反響して聞き難かった経験をお持ちではないでしょうか? 普通は厄介な現象なのですが、日光の『鳴き龍』はこの現象をポジティブに利用した例でしょう。(笑)
反響音が減衰せず、長く余韻を引くと会話はたいへん聞き取りにくくなります。 実は、これと同じ現象がフィルタでも(程度の差はあっても)起こっているのです。 フィルタとはCWフィルタとかSSBフィルタのような電気回路のフィルタです。
狭帯域のフィルタでは、良く共振する(=Qが高い)LC回路や共鳴する物体(水晶やセラミックス振動子)を並べ電気信号で「たたいて」振動させているのと同じ現象が起こっています。 鐘をつけば余韻が残るのは経験からおわかりでしょう。 しかし、この現象が過度に存在すると明瞭度が損なわれるのでフィルタとしては好ましいものではないのです。そのフィルタの音色を決める一因であるとも言えます。
フィルタの特性について、詳しく始めると一冊の本にも成るのでやめておきましょう。 しかし信号が余韻を引くようなフィルタの条件ははっきりしているのです。 ごく簡単に言うと「Qが高くて切れるフィルタ」です。 CWフィルタで言えば、通過帯域幅がごく狭く肩部分の立ち上がりが急峻なフィルタで顕著に見られます。
さらに、過度に余韻を引くようなフィルタは信号の立ち上がりにおける過渡的な応答特性も悪いのも普通です。 信号の立上がり部分がリンギングしてワウワウと言うような過渡的な聴感を伴うようになるのです。
必要以上に狭帯域のフィルタが好ましくないのはもちろんでしょう。 フィルタは周波数軸上の特性ばかり示されることが多いのですが、実際はそれは一面を見ているだけに過ぎなくて、時間軸上の特性もたいへん重要なのです。
さらに、過度に余韻を引くようなフィルタは信号の立ち上がりにおける過渡的な応答特性も悪いのも普通です。 信号の立上がり部分がリンギングしてワウワウと言うような過渡的な聴感を伴うようになるのです。
必要以上に狭帯域のフィルタが好ましくないのはもちろんでしょう。 フィルタは周波数軸上の特性ばかり示されることが多いのですが、実際はそれは一面を見ているだけに過ぎなくて、時間軸上の特性もたいへん重要なのです。
さて、今年(2009年)のHAMフェアの自作品コンテストのテーマは「7MHz DC受信機」だそうです。 DC受信機は少ない部品で済ませる簡易型と、その対極にある高級型に二分されるように思います。 簡易型も面白いのですが快適なオンエアにはしっかりしたDC受信機が欲しものです。 それには良いオーディオ・CWフィルタが欲しくなるでしょう。 DC受信機の受信のフィ−リングを決めるのはオーディオ・CWフィルタなのですから。(オーディオ、またはオージオ・フィルタとは復調されて低周波になってから信号を選り分けるフィルタのことです。AFフィルタとも言います)
折角なら、少しでも良いDC受信機を作ってもらいたいと思います。 やや複雑なので簡易型には向かないかも知れませんが、高級指向ならピッタリのフィルタがあります。 使ってみれば良さがわかるTransitional Gaussian型フィルタを採り上げてみましょう。
良好な選択度を持ちながら、時間軸上の応答特性にも配慮したフィルタ形式です。 特性云々は勿論ですがコイルを使わずに高性能が得られるフィルタとしても重宝でしょう。 複雑ではあっても大きなコイル:Lがないので思ったよりもコンパクトに作れます。 この例は雑誌に掲載されていたものです。 但し原典の回路定数を再計算して修正しています。(なお、私は自作品コンテストに参加するつもりはまったくありません・笑)
良好な選択度を持ちながら、時間軸上の応答特性にも配慮したフィルタ形式です。 特性云々は勿論ですがコイルを使わずに高性能が得られるフィルタとしても重宝でしょう。 複雑ではあっても大きなコイル:Lがないので思ったよりもコンパクトに作れます。 この例は雑誌に掲載されていたものです。 但し原典の回路定数を再計算して修正しています。(なお、私は自作品コンテストに参加するつもりはまったくありません・笑)
上の図面は特性シミュレーション用として書いた回路図です。 実際の回路に組み立てるには『製作用の設計』に修正すべきでしょう。 今回のBlogではその部分は端折っているので、具体的な事例が書いてあって製作に役立つ続編を計画しています。
いま、まさしく700HzのCW短点もしくは長点が来た瞬間の様子を示すものです。 信号は少し遅れてフィルタの出力に現れるのがわかります。 しかし、「オーバーシュート」(行き過ぎ)や「リンギング」(過渡振動)のない奇麗な応答なのがわかります。 実際の聴感もとても良い感触が得られます。(悪い例と合わせて紹介すれば一目瞭然でしたね・・・)
【周波数特性】
こちらが周波数特性です。 中心周波数は700Hzで、-3dBバンド幅は140Hzの設計です。 フィルタの特性を周波数軸で拡大して見ているので、あまり冴えない特性に見えるかも知れません。
頂点から-6dBより上の部分の通過帯域の特性が、過渡応答特性に優れるガウシャン(Gaussian)特性になっています。 よく見るフィルタのように平坦域のない特性なので冴えない特性に見えますが、とても良く切れるフィルタです。 絵で見て納得して頂くのも良いのですが、実際に使ってみるとその良さがはっきり体感できるでしょう。(切れの良さと過渡特性の2つを両立させたのがこのフィルタの特徴です)
こちらが周波数特性です。 中心周波数は700Hzで、-3dBバンド幅は140Hzの設計です。 フィルタの特性を周波数軸で拡大して見ているので、あまり冴えない特性に見えるかも知れません。
頂点から-6dBより上の部分の通過帯域の特性が、過渡応答特性に優れるガウシャン(Gaussian)特性になっています。 よく見るフィルタのように平坦域のない特性なので冴えない特性に見えますが、とても良く切れるフィルタです。 絵で見て納得して頂くのも良いのですが、実際に使ってみるとその良さがはっきり体感できるでしょう。(切れの良さと過渡特性の2つを両立させたのがこのフィルタの特徴です)
FR-101型受信機に内蔵してみたのが初めての使用経験でした。 使ってみた感想は申し分ないものです。 狭帯域フィルタにありがちな信号の粘りのようなものは感じません。 良く切れるのですが、少々狭く作り過ぎたので通過帯域幅はもっと広げた方が良いようでした。 この例の約3倍の±150Hzで設計するくらいで良いかも知れません。 このままでは周波数安定度が悪い受信機やダイヤルの減速が不十分な簡易受信機では同調操作に難しさを感じるでしょう。 ともかく良く切れるCWフィルタです。しかも良い音がします。
中心周波数、通過帯域幅、フィルタゲインなどある程度任意に設計変更できますが、Blogにすべてを書くのは困難です。 結果だけが欲しいなら詳しい話しはすぐに飽きてしまうでしょう。 強く興味を覚えたようでしたらフィルタ関係の書籍を見て頂くのが最良だと思います。 但しフィルタの本ではCW受信機用のフィルタとして紹介されてはいません。 狭帯域なバンドパスフィルタとして解説がある筈です。 メーカー製の受信機(トランシーバ)でも、何れこうした特性のCWフィルタがDSPによって実現されて当たり前の装備になるでしょう。
【Communications Quarterlyの記事】
左はこの形式のオーディオCWフィルタについて扱った雑誌記事の例です。 Blog公開初期にご希望のお方に限ってコピーを差し上げていたのですが著作物のため現在は行なっていません。ご了承下さい。
ARRL(米国アマチュア無線連盟)の出版物なので有料のコピーサービスが得られると思います。 ご自身でお問い合わせになって下さい。 Communications Quarterly誌・1994年Winter号p20からp24の全5ページです。
これはアマチュア無線家向けの製作記事なので内容は難しくありません。 筆者は実際にTRIOのTS-520に内蔵して愛用しているそうです。 回路図、調整方法も載っており製作に役立つ資料です。 残念ながら設計についてはあまり詳しいことは書かれていません。 また誤植と思われる数値間違いや、回路図の接続ミスもあるので参照する際は注意して下さい。 回路図と詳しい周波数特性については拙Blogの続編でも紹介しています。この記事を参照しなくてもフィルタは作れると思います。 de JA9TTT/1
【関連のBlog案内】
☆ ここで扱った形式のフィルタのさらに詳しいBlog記事は:→こちら。
☆ CWフィルタを含めた回路シミュレーションについては:→こちら。
(おわり)
(Bloggerの新仕様対策済み・改訂:2017.03.29)
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