【GPS受信モジュール:u-blox NEO-6M】
【NEO-6Mをテスト】
あらゆる製品やサービスがinternet接続される時代にあって、その対象になるモノの正確な位置情報を知る必要があるのでしょう。 様々なGPS受信モジュールが登場しています。(SNSに何でもかんでも情報アップしてると貴方の行動は筒抜けですよ・笑)
写真もそのGPS受信モジュールの一つです。 u-blox社製のモジュール:NEO-6Mを基板に実装しアンテナを付属したセットが販売されています。 ホビーストの実験・研究用を狙ったものと思われます。(→コレ)
GPS受信モジュールのみでは扱いにくいですが、基板実装済みなので使い易くなっています。 付属のアンテナはオマケ程度のものとも言えますが、この状態で手軽にテストができるのは便利でしょう。
このモジュールの特徴は「高感度」と、ある程度任意に設定できる「パルス出力」にあると思います。(参考:無改造ではパルスで緑LEDが点滅するのみ)
インターフェースはシリアルで、TTLレベルです。 レベル変換を行えば、RS-232Cインターフェースで接続することもできます。 この写真では、左のケーブルの先にUSB-シリアル変換基板があって、パソコンとはUSBで接続しています。 電源はUSB経由で供給可能です。
蛇足でしょうが、USB-シリアル変換器にはTTLレベルのシリアル出力をもったモジュールが必要です。そう言うものは例のarduino 等で使うためでしょうか安価に多数登場しています。(→コレとか) かつてのようにMAX-232等を使ってRS-232Cレベルに信号変換する必要も無くなっているのです。 それに、RS-232Cのようなレトロなインターフェースを持ったパソコンなどシーラカンスのようなものでしょう。 なお、TXDとRXDはクロス接続で使用します。
【専用アプリがある】
従来は汎用のアプリを使ってGPSの受信状態を把握していました。 取りあえずそれでも十分役立つのですが、このモジュールには専用のアプリが用意されています。「u-center」というアプリです。
上記リンクで直接ページが開かない場合は:「評価キット・ツール」→「サポート」→「評価ソフト」の順にページを辿るとダウンロードが見つかるでしょう。あるいは、米ダウンロードサイトのURL(←直接リンク)で。
その専用アプリを通して、モジュールの機能を再設定することができます。 例えば、パルス出力は購入初期のデフォルト状態では1pps(=1Hz)ですが、異なった周期に変更することが可能です。 もちろん、このパルス出力はGPSからの1ppsに同期しているので、平均化処理などを行なって電波伝搬に起因する揺らぎの除去を徹底的に行なえばGPS衛星搭載のRb-OSC(ルビジウム原子時計)と同等の周期精度(周波数精度)を得ることも不可能ではありません。このモジュールを活用するGPS周波数基準器の製作については「トランジスタ技術誌2016年2月号」P99〜P125に詳細な記事がありますから参照して下さい。(2016.1.10)
参考・1:NEO-6MとGPS周波数基準器のBlog内関連情報はこちら(←リンク)から。
☆
かつて、ロックウエル製のTU30-D140と言うGPS受信基板が流行ったことがありました。元々が何かの機器からの「外しジャンク品」だったらしく、やがて枯渇とともに忘れ去られました。
このu-blox製NEO-6Mを載せた基板はジャンク品ではありません。 ごく普通に販売されている商品です。 ヤフオク出品物のような価格不定品ではありません。 機能を考えた価格もリーズナブルな範囲と言えます。 活用はユーザにゆだねられてはいますが、面白い応用も可能だと思っています。
参考・2:NEO-6Mでパソコンの時計精度を向上してJT-65でオンエア。(ここ←リンク)
参考・3:このモジュールのバックアップ機能が旨く働かない時は。(ここ←リンク)
何よりも進歩していると感じるのはその「受信感度」でしょう。 最初の写真のように窓際に置いただけで、この画面コピーのように全天の沢山の衛星を簡単に捉えてくれました。ですから連続動作中に衛星をLostする心配もなくなっています。 de JA9TTT/1
(おわり)
2015年10月27日火曜日
2015年10月13日火曜日
【回路】Simple HAM Band Receiver 1968
【簡単なHAMバンド用受信機:1968スタイル】
【1968年式シンプル受信機】
ちょっとネタ切れなので、JARLアマチュア無線ハンドブックの第2版:1970年版から簡単な受信機回路をピックアップして題材にします。1970年版ですが実際には1968年2月の印刷物です。従って1968年式と言った方が適切でしょうか?
この受信機は米国はARRLハンドブックに毎年掲載されていた球数のごく少ないシンプルな受信機をお手本にしたものですが、日本人らしく細部まで高性能化が試みられています。 日本のHAMは大半が高級指向であり、そのニーズに応えたと言えるでしょう。 しかし、そもそもの良さである「シンプルさ」がかなり損なわれたように感じます。本来、たかが5球スーパのごときモノに高級を求めてはいけないのです。(笑)
高性能を目指すのであれば、無理に球数を絞らず高1中2形式に土台を置いた方が総合性能は良くなったのではないでしょうか。製作に要する費用も手間もさして違わないでしょう。それよりも、むしろ複合管の多用は配線が難しくなるだけではないでしょうか。各段を別個の球に分けて最適な配置にした方が製作は容易になるはずです。図の回路は見かけの球数は少なくても製作はかなり難しくなっています。真似て作るならそのあたりを考慮した方が良いでしょう。
☆
1968年と言えば、もうすぐ50年になりますが著作権は残っていますので残念ながら記事の全文は紹介できません。しかし、ざっと説明しますのでわかる人には十分な情報だと思います。
受信周波数帯は3.5MHzと7MHzに絞っています。ダイヤル機構に扇形のダイヤル面を持ったフリクション減速型を用いるからです。この形式のダイヤルはあまり減速比が取れないのでジェネカバのような受信範囲にしてしまうと実用的なHAM用受信機になりません。
既成のコイル・・・例えばトリオのSシリーズコイルなど・・は使わず、エアダックスコイルを使って2バンドカバーにしています。 アンテナ同調回路はボトムカップリングのBPF形式で、イメージ比を良くすることを目的とした回路です。同調バリコンに松下電器産業製(現パナソニック)のECV-2DX18と言う最大容量198pFの2連周波数直線型・・いわゆるF直バリコン・・・を使って短波受信機として最適化してあります。 局発(同調)バリコンとは連動しないので別のツマミでプリセレクタ形式の操作となります。
局発コイルもエアダックスです。周波数のカバー範囲が狭いので小容量の2連VC・・ECV-2RW20を使っています。これは通信機用で容量直線型max17.5pFの2連型です。周波数安定度に影響するためポリバリコンではなくて、エアーバリコンです。 バンド切換えは局発コイルのタップ切換えのみであり、アンテナ同調回路は切り替えません。 バンドを移るにはアンテナ同調のツマミを大きく回す必要があります。
いきなり同調回路の話しに入ってしまいまたが、改めて回路の話しをしましょう。真空管4本を使ったシングルスーパです。中間周波は定番の455kHzです。 この受信機のコンセプトは最少の球数で実用性能を持った受信機を作ることにあったはずです。 整流管は使っていないので球数だけで言えば家庭用スーパと同じです。 しかし、複合管や半導体を積極的に使って8〜9球分の高性能化を図っています。
まずはミキサーと局発です。6GJ7と言うTVのチューナ回路用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管を使っています。家庭用スーパでおなじみの6BE6より高いゲインを期待し、S/Nの改善も狙っています。 局発回路はハートレーではなくて、周波数安定度に優れたVackar回路を採用しているのも通信機の拘りでしょう。 ミキサは第1グリッド注入型です。 6GJ7のHigh-gmと相まって、低NFとハイゲインの両立を図っているフロントエンドです。
中間周波増幅(IF-Amp)はセミリモートカットオフ管の6EH7です。これもカラーTV用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管です。 ハイゲイン故に自己発振の懸念はありますが、1段増増幅なので何とかなるのでしょう。 IFフィルタにロスが大きめの国際電気のメカフィルを使っているのでゲイン不足の対策として6EH7を採用したものと思います。 なお、検波回路との関係もあってAGCは掛かっていません。カソード抵抗を可変する手動ゲイン調整が付いています。 受信中は手動ゲイン調整を頻繁に操作する必要がある筈です。
検波回路は6BL8の5極管部分を使ったグリッド検波型です。SSB/CWの受信時には同じ6BL8の3極部でBFOを発振させて注入します。 但し、管内容量によるBFO注入のようで意図的な注入はしていません。 ここにゲインのあるグリッド検波を使ったのは、ステージ数が少ないことによるゲイン不足を補うためでしょう。ダイオード検波だとゲインはマイナスになりますが、グリッド検波ならプラスのゲインが稼げます。 BFOは安定度の良いプレート同調型発振回路を採用しています。
低周波増幅は6AB8の3極部と5極部の2段構成です。低周波ゲインのボリウムのあとすぐにダイオードを使ったクリッパ回路が入っているのはAGCが無いための対策です。 プレート電圧が低いこともあって1.4Wとあまりパワーは出ませんが、受信音をスピーカの近傍で聞くHAM局には十分な電力です。入力部のクリッパが無いと突然強い局が出て来たとき耳をつんざく大音響の危険があります。
なお、カソードが共通になっていて使いにくい6AB8を使うメリットは少なさそうに思います。6AW8のような球にした方が良いのではないでしょうか。6AB8の採用はパワートランスのヒータ電流に余裕が無いことによる窮余の策なのかもしれません。
電源回路はシリコンダイオード2個を使った両波整流です。 大食いの低周波出力管をケチったので僅か50mAの容量で間に合わせています。 電源部が小さいと発熱も少なくなるので悪くない手法だと思いますが、外付けのアクセサリ類に供給する余力がないのが気になります。
感度としてS/N=10dBで0dBμ(=1μV)の感度があると言いますので、家庭用の5球スーパとは一線を画す高感度が得られています。 3.5MHzや7MHzと言ったローバンドには十分な受信感度です。 ハイバンドにはクリスタルコンバータ(クリコン)の付加で対応すれば良いでしょう。
非常な拘りを持って設計製作された受信機ですが、やはりAGCが無いのは欠陥だと思います。AGCはぜひとも付加すべきです。そうすればAGC電圧を読む形式で、Sメータも付加することができるので一段と通信型受信機の体裁が整います。AGCの付加は研究課題でしょう。
【コイル】
アンテナコイルにはエアダックスコイル:200509を使用しています。 左図はコイルの仕様です。もし持っていればカットして作ります。 200509は直径20mmで、巻線の線径は0.5mm、巻きピッチ0.9mmです。アンテナコイル(34回巻き)のインダクタンスは10.2μHです。 局発コイルの方は200816を使います。 同じく直径20mm、巻線の線径は0.8mm、巻きピッチは1.6mmです。 局発コイルのインダクタンスは3.5MHzの時(42回)が10μHで7MHz(24回)が5.3μHとなっています。
各エアーダックスコイルの入手はかなり難しいので、今となってはアンテナコイルはトロイダルコアに巻くのが良いでしょう。
局発コイルは周波数安定度が問題になるので良い物を使うべきです。 ボビンに巻線して自作する方法があるので何とかするしかありません。 タイトボビンも入手不可能ではありません。
左図にはないL4ですが、0.1μHのインダクタを使います。この受信機が設計された当時なら、TV用パーツとして市販品がたくさん売られていました。 いまならμ(ミュー)の小さなトロイダルコアに巻くか、空芯コイルを巻けば良いでしょう。同調コイルとの関係で最適値が変わるので2つのコイルがクリチカル・カップリング〜ややアンダーカップリングになるようインダクタンスを調整します。インダクタンスを大きくし過ぎると双峰特性になってしまうので旨くありません。少なければ選択性は良くなりますが通過損失が増えます。
他のコイルですが、受信選択度はメカフィルで決まってしまうので、IFTは何でも良いでしょう。High-C気味のIFTの方が自己発振を回避し易いです。どうしても発振する時は抵抗器をかませてQダンプするしかありません。 BFOコイルはIFTの改造で何とかなりそうです。 アウトプット・トランス、電源トランス、平滑チョークコイルは今でも市販品があるので支障はないでしょう。
【製作へのヒント】
まず、真空管ですが初段の6GJ7に多少問題はありそうです。 他の球は困難なく手に入るでしょう。ソケットを購入するのを忘れずに。全て9ピンのノーバー管用(9Pin−mt管用)です。周波数から見て、ステアタイトの必要は無くベークモールド型でも良いです。
後で触れますがDDS化などで局発は別途用意するつもりなら、初段は6EJ7の採用をお薦めします。 低周波アンプの6AB8は6AW8Aがお奨めです。同等管もたくさん存在します。 検波の6BL8も同等に使える類似管がたくさんあって、6U8系や6GH8系でも良いのであまり支障はないでしょう。IFアンプの6EH7は6BZ6や6GM6などで代替する手があるほか、ポピュラーな6BA6でも極端な違いは無いと思います。電源整流のシリコンDiはあまた存在するのでお好みで。1N4007などが手頃です。
選択度を決めるメカフィルの入手に困る可能性があります。中古のメカフィルは劣化している危険性があります。代替案として、いまならまだ手に入るCollins製にマッチングトランスを付加して使う方法が考えられます。もっと安価に行きたいなら、5素子の世羅多フィルタでも十分良い選択度が得られます。メカフィルにひけを取らないのでお薦めの一案です。IF周波数は455kHzより少し低くなりますが支障はないでしょう。
アンテナバリコンは指定の周波数直線型は入手困難です。 しかし、ここは等容量2連型の(ポリ)バリコンでも何とかなると思うので試してみる価値は十分あります。 局発回路のバリコンは何とか類似の市販品が手に入るようなので頑張って探すしかありません。指定の型番に囚われないで、FMラジオ用の2連バリコンを入手すれば代替できます。最大容量20〜30pFの物が多かったはずです。もちろん、エアーバリコンがベストです。
一番厄介なのはダイヤル機構の部分でしょう。 丸形の大型バーニヤダイヤルを工夫して代替する方法があります。 あとは糸掛けダイヤルくらいしか思いつきません。 ジャンク品やオークションの出物は運が良ければ手に入りますが、確実性が無いのが難点です。 最近見掛ける安易なギヤダイヤルではバックラッシュが多くて使いにくい受信機になってしまいます。
いっそのこと、局発は思い切って近代化を図ってしまってはどうでしょうか? DDSオシレータ+ロータリエンコーダ+デジタル周波数表示にすれば、ダイヤルの読み取り、操作性、周波数安定度のすべてが一挙に解決できます。ミキサー管のグリッドに4Vpp程度の局発を与えれば良いので簡単な回路で行けます。 DDS化はシャシ上の回路レイアウトにも自由度が生まれ製作しやすくなります。 DDSを使ってはいても信号系はすべて球ですかられっきとした真空管受信機です。(笑)
☆ ☆ ☆
FBな市販品が溢れていますし、中古の無線機でさえ紹介した回路よりもずっと高級だったりします。 受信することだけが最終目的なら購入してしまうのが一番手っ取り早いでしょう。 しかし、手作り受信機で自分だけのオリジナルな無線局を構成したいなら再び注目しても良いのかもしれません。 ダイヤルメカなど入手性に問題のある部分は近代的な技術でカバーしてしまえば、メインの部分に真空管を残したまま高性能で実用的な管球式通信型受信機を自作することは十分可能です。 いろいろ構想を膨らませながら昼休みのひと時の息抜きになったなら幸いです。de JA9TTT/1
(おわり)
【1968年式シンプル受信機】
ちょっとネタ切れなので、JARLアマチュア無線ハンドブックの第2版:1970年版から簡単な受信機回路をピックアップして題材にします。1970年版ですが実際には1968年2月の印刷物です。従って1968年式と言った方が適切でしょうか?
この受信機は米国はARRLハンドブックに毎年掲載されていた球数のごく少ないシンプルな受信機をお手本にしたものですが、日本人らしく細部まで高性能化が試みられています。 日本のHAMは大半が高級指向であり、そのニーズに応えたと言えるでしょう。 しかし、そもそもの良さである「シンプルさ」がかなり損なわれたように感じます。本来、たかが5球スーパのごときモノに高級を求めてはいけないのです。(笑)
高性能を目指すのであれば、無理に球数を絞らず高1中2形式に土台を置いた方が総合性能は良くなったのではないでしょうか。製作に要する費用も手間もさして違わないでしょう。それよりも、むしろ複合管の多用は配線が難しくなるだけではないでしょうか。各段を別個の球に分けて最適な配置にした方が製作は容易になるはずです。図の回路は見かけの球数は少なくても製作はかなり難しくなっています。真似て作るならそのあたりを考慮した方が良いでしょう。
☆
1968年と言えば、もうすぐ50年になりますが著作権は残っていますので残念ながら記事の全文は紹介できません。しかし、ざっと説明しますのでわかる人には十分な情報だと思います。
受信周波数帯は3.5MHzと7MHzに絞っています。ダイヤル機構に扇形のダイヤル面を持ったフリクション減速型を用いるからです。この形式のダイヤルはあまり減速比が取れないのでジェネカバのような受信範囲にしてしまうと実用的なHAM用受信機になりません。
既成のコイル・・・例えばトリオのSシリーズコイルなど・・は使わず、エアダックスコイルを使って2バンドカバーにしています。 アンテナ同調回路はボトムカップリングのBPF形式で、イメージ比を良くすることを目的とした回路です。同調バリコンに松下電器産業製(現パナソニック)のECV-2DX18と言う最大容量198pFの2連周波数直線型・・いわゆるF直バリコン・・・を使って短波受信機として最適化してあります。 局発(同調)バリコンとは連動しないので別のツマミでプリセレクタ形式の操作となります。
局発コイルもエアダックスです。周波数のカバー範囲が狭いので小容量の2連VC・・ECV-2RW20を使っています。これは通信機用で容量直線型max17.5pFの2連型です。周波数安定度に影響するためポリバリコンではなくて、エアーバリコンです。 バンド切換えは局発コイルのタップ切換えのみであり、アンテナ同調回路は切り替えません。 バンドを移るにはアンテナ同調のツマミを大きく回す必要があります。
いきなり同調回路の話しに入ってしまいまたが、改めて回路の話しをしましょう。真空管4本を使ったシングルスーパです。中間周波は定番の455kHzです。 この受信機のコンセプトは最少の球数で実用性能を持った受信機を作ることにあったはずです。 整流管は使っていないので球数だけで言えば家庭用スーパと同じです。 しかし、複合管や半導体を積極的に使って8〜9球分の高性能化を図っています。
まずはミキサーと局発です。6GJ7と言うTVのチューナ回路用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管を使っています。家庭用スーパでおなじみの6BE6より高いゲインを期待し、S/Nの改善も狙っています。 局発回路はハートレーではなくて、周波数安定度に優れたVackar回路を採用しているのも通信機の拘りでしょう。 ミキサは第1グリッド注入型です。 6GJ7のHigh-gmと相まって、低NFとハイゲインの両立を図っているフロントエンドです。
中間周波増幅(IF-Amp)はセミリモートカットオフ管の6EH7です。これもカラーTV用に開発されたフレーム・グリッドの高性能管です。 ハイゲイン故に自己発振の懸念はありますが、1段増増幅なので何とかなるのでしょう。 IFフィルタにロスが大きめの国際電気のメカフィルを使っているのでゲイン不足の対策として6EH7を採用したものと思います。 なお、検波回路との関係もあってAGCは掛かっていません。カソード抵抗を可変する手動ゲイン調整が付いています。 受信中は手動ゲイン調整を頻繁に操作する必要がある筈です。
検波回路は6BL8の5極管部分を使ったグリッド検波型です。SSB/CWの受信時には同じ6BL8の3極部でBFOを発振させて注入します。 但し、管内容量によるBFO注入のようで意図的な注入はしていません。 ここにゲインのあるグリッド検波を使ったのは、ステージ数が少ないことによるゲイン不足を補うためでしょう。ダイオード検波だとゲインはマイナスになりますが、グリッド検波ならプラスのゲインが稼げます。 BFOは安定度の良いプレート同調型発振回路を採用しています。
低周波増幅は6AB8の3極部と5極部の2段構成です。低周波ゲインのボリウムのあとすぐにダイオードを使ったクリッパ回路が入っているのはAGCが無いための対策です。 プレート電圧が低いこともあって1.4Wとあまりパワーは出ませんが、受信音をスピーカの近傍で聞くHAM局には十分な電力です。入力部のクリッパが無いと突然強い局が出て来たとき耳をつんざく大音響の危険があります。
なお、カソードが共通になっていて使いにくい6AB8を使うメリットは少なさそうに思います。6AW8のような球にした方が良いのではないでしょうか。6AB8の採用はパワートランスのヒータ電流に余裕が無いことによる窮余の策なのかもしれません。
電源回路はシリコンダイオード2個を使った両波整流です。 大食いの低周波出力管をケチったので僅か50mAの容量で間に合わせています。 電源部が小さいと発熱も少なくなるので悪くない手法だと思いますが、外付けのアクセサリ類に供給する余力がないのが気になります。
感度としてS/N=10dBで0dBμ(=1μV)の感度があると言いますので、家庭用の5球スーパとは一線を画す高感度が得られています。 3.5MHzや7MHzと言ったローバンドには十分な受信感度です。 ハイバンドにはクリスタルコンバータ(クリコン)の付加で対応すれば良いでしょう。
非常な拘りを持って設計製作された受信機ですが、やはりAGCが無いのは欠陥だと思います。AGCはぜひとも付加すべきです。そうすればAGC電圧を読む形式で、Sメータも付加することができるので一段と通信型受信機の体裁が整います。AGCの付加は研究課題でしょう。
【コイル】
アンテナコイルにはエアダックスコイル:200509を使用しています。 左図はコイルの仕様です。もし持っていればカットして作ります。 200509は直径20mmで、巻線の線径は0.5mm、巻きピッチ0.9mmです。アンテナコイル(34回巻き)のインダクタンスは10.2μHです。 局発コイルの方は200816を使います。 同じく直径20mm、巻線の線径は0.8mm、巻きピッチは1.6mmです。 局発コイルのインダクタンスは3.5MHzの時(42回)が10μHで7MHz(24回)が5.3μHとなっています。
各エアーダックスコイルの入手はかなり難しいので、今となってはアンテナコイルはトロイダルコアに巻くのが良いでしょう。
局発コイルは周波数安定度が問題になるので良い物を使うべきです。 ボビンに巻線して自作する方法があるので何とかするしかありません。 タイトボビンも入手不可能ではありません。
左図にはないL4ですが、0.1μHのインダクタを使います。この受信機が設計された当時なら、TV用パーツとして市販品がたくさん売られていました。 いまならμ(ミュー)の小さなトロイダルコアに巻くか、空芯コイルを巻けば良いでしょう。同調コイルとの関係で最適値が変わるので2つのコイルがクリチカル・カップリング〜ややアンダーカップリングになるようインダクタンスを調整します。インダクタンスを大きくし過ぎると双峰特性になってしまうので旨くありません。少なければ選択性は良くなりますが通過損失が増えます。
他のコイルですが、受信選択度はメカフィルで決まってしまうので、IFTは何でも良いでしょう。High-C気味のIFTの方が自己発振を回避し易いです。どうしても発振する時は抵抗器をかませてQダンプするしかありません。 BFOコイルはIFTの改造で何とかなりそうです。 アウトプット・トランス、電源トランス、平滑チョークコイルは今でも市販品があるので支障はないでしょう。
【製作へのヒント】
まず、真空管ですが初段の6GJ7に多少問題はありそうです。 他の球は困難なく手に入るでしょう。ソケットを購入するのを忘れずに。全て9ピンのノーバー管用(9Pin−mt管用)です。周波数から見て、ステアタイトの必要は無くベークモールド型でも良いです。
後で触れますがDDS化などで局発は別途用意するつもりなら、初段は6EJ7の採用をお薦めします。 低周波アンプの6AB8は6AW8Aがお奨めです。同等管もたくさん存在します。 検波の6BL8も同等に使える類似管がたくさんあって、6U8系や6GH8系でも良いのであまり支障はないでしょう。IFアンプの6EH7は6BZ6や6GM6などで代替する手があるほか、ポピュラーな6BA6でも極端な違いは無いと思います。電源整流のシリコンDiはあまた存在するのでお好みで。1N4007などが手頃です。
選択度を決めるメカフィルの入手に困る可能性があります。中古のメカフィルは劣化している危険性があります。代替案として、いまならまだ手に入るCollins製にマッチングトランスを付加して使う方法が考えられます。もっと安価に行きたいなら、5素子の世羅多フィルタでも十分良い選択度が得られます。メカフィルにひけを取らないのでお薦めの一案です。IF周波数は455kHzより少し低くなりますが支障はないでしょう。
アンテナバリコンは指定の周波数直線型は入手困難です。 しかし、ここは等容量2連型の(ポリ)バリコンでも何とかなると思うので試してみる価値は十分あります。 局発回路のバリコンは何とか類似の市販品が手に入るようなので頑張って探すしかありません。指定の型番に囚われないで、FMラジオ用の2連バリコンを入手すれば代替できます。最大容量20〜30pFの物が多かったはずです。もちろん、エアーバリコンがベストです。
一番厄介なのはダイヤル機構の部分でしょう。 丸形の大型バーニヤダイヤルを工夫して代替する方法があります。 あとは糸掛けダイヤルくらいしか思いつきません。 ジャンク品やオークションの出物は運が良ければ手に入りますが、確実性が無いのが難点です。 最近見掛ける安易なギヤダイヤルではバックラッシュが多くて使いにくい受信機になってしまいます。
いっそのこと、局発は思い切って近代化を図ってしまってはどうでしょうか? DDSオシレータ+ロータリエンコーダ+デジタル周波数表示にすれば、ダイヤルの読み取り、操作性、周波数安定度のすべてが一挙に解決できます。ミキサー管のグリッドに4Vpp程度の局発を与えれば良いので簡単な回路で行けます。 DDS化はシャシ上の回路レイアウトにも自由度が生まれ製作しやすくなります。 DDSを使ってはいても信号系はすべて球ですかられっきとした真空管受信機です。(笑)
☆ ☆ ☆
FBな市販品が溢れていますし、中古の無線機でさえ紹介した回路よりもずっと高級だったりします。 受信することだけが最終目的なら購入してしまうのが一番手っ取り早いでしょう。 しかし、手作り受信機で自分だけのオリジナルな無線局を構成したいなら再び注目しても良いのかもしれません。 ダイヤルメカなど入手性に問題のある部分は近代的な技術でカバーしてしまえば、メインの部分に真空管を残したまま高性能で実用的な管球式通信型受信機を自作することは十分可能です。 いろいろ構想を膨らませながら昼休みのひと時の息抜きになったなら幸いです。de JA9TTT/1
(おわり)
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