【ヨーロッパ系の2ゲートMOS-FETを使う】
<Abstract>
BF998 is a dual gate MOS-FET of European origin. It is a very small electronic component. It's hard to test it as it is. First, let's put it on a conversion board and try it out.
In this experiment I made 7MHz & 50MHz RF-Amps and measured the gain and frequency response. The performance is better than old Japanese dual gate MOS-FETs. This is probably because the BF998 is a new FET. (2019.12.26 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)
【BF998と言うFET】
BF998はヨーロッパ系のデュアル・ゲート・MOS FETです。 BF998という型番は、ヨーロッパ式のもので、最初のBはシリコンを使ったデバイスを意味し、続くFは高周波小信号用デバイスを示します。998はたぶん登録順の連番でしょう。 なお、Eu式の型番にはFETとバイポーラ・トランジスタ(普通のトランジスタ)の区別はありません。 BF998は姿形こそ違いますが国産の3SK59や3SK73と同じような特性を持った高周波用のFETです。
デュアル・ゲートとは、ゲート電極が2つあると言う意味です。 MOSとは金属酸化物半導体の意味で、ゲート部分の構造を示します。 FETはご存知のように電界効果トランジスタのことです。 従って、金属酸化物半導体2ゲート型電界効果トランジスタと言うわけですが、やたら長ったらしいですね。以下、DG-MOS-FETと略します。 それぞれの用語の意味や詳しい構造などは省きますので半導体工学の専門書を見てください。 このBlogはDG-MOS-FETを使ったRFアンプデザイン(←リンク)の続きです。
☆
DG-MOS-FETと言えば、米国製と日本製がほとんどすべてだと思ってきました。 Euにも類似デバイスはあるものの使用上の互換性のないものばかりだったからです。
このBF998は以下のような特徴から入手して確認してみようと思いました。
(1)安価である・・・・中華系のお店や中華通販で一つ10セントくらいで買える。
(2)互換特性である・・国産の3SK59や3SK73などと同じディプレッション特性。
(3)電極配置が互換・・国産の缶タイプDG-MOS-FETと互換できる足配置。
(4)近代的で高性能・・gmが高く、電極間容量が小さいので高性能が期待できる。
(5)入手性が良い・・・現行品種らしく、中華通販を中心に出回っている。
高周波回路の設計をしていてDG-MOS-FETがどうしても必要と言うシーンは少なくなってますが、過去に設計された機器の再現や旧型無線機の保守・再生などには未だ欠かせないデバイスのようです。探している人も良く見かけます。 特に、かなり前に廃品種となった3SK59や生産終了で価格高騰した3SK73を置き換えられるデバイスが待たれていたように思います。 しかし最近登場するDG-MOS-FETは近代化設計に適したエンハンスメント特性のもので旧型の直接的な置き換えには向いていませんでした。
☆
舶来信仰ではないので、特にEu系だからと言って着目もしません。 しかし上述のような特徴からこの機会に評価しておくことにします。 あいにく秋葉原のお店は品切れでしたが、中華通販でたやすく手に入りました。 特に中華通販を使うと価格もお手頃なので代替の目的ばかりでなく新規設計への採用も悪くありません。
昔懐かしい「熊本シティスタンダード」の再現にも適当でしょう。 そう言われてもピンとこない世代も多くなったでしょうか。 もう35年も前の話ですからね。hi 参考に回路図を添付しておきます。どんな物だったか図面から読み取ってください。 以下は手を動かして何かを作る方に向けて書いてますが、気負わずご覧ください。でも、見てるだけじゃ詰まらないかもしれませんね。 師走の貴重な時間を無駄にされませんように!(笑)
【安価な変換基板】
BF998は最初の写真のような表面実装型です。 3SK35や3SK59あるいは、そのほかの金属缶タイプのDG-MOS-FETを互換するには変換基板に実装する必要があります。 新規設計なら直接基板に実装すれば本来の性能を発揮させやすいでしょう。
まず始めに互換品のように扱える形状にしてから評価したいと思います。 写真は秋月電子通商で販売されているSOT-23型パッケージ用の変換基板です。 BF998はSOT-143型のパッケージですが、この変換基板に載せることができます。 他にも同様の変換基板が売られていますが写真のタイプが最安価でした。せっかくFETが安いのでローコストな路線で行こうと思います。この変換基板を使うのは初めてです。
写真の変換基板はハサミやカッターナイフで簡単に切断できて便利です。 その代わり、あまり強度がないのでソケットやブレッドボードに着脱の際は無理な力を加えないように扱います。 裏面パターンもないため無用なストレー容量は付加されにくいでしょう。 28枚で150円ですから一つあたりのコストは五円少々と言ったところです。
【BF998の実装例】
ブレッドボードでテストする都合で、写真のようなピンヘッダーをはんだ付けしました。 缶タイプのDG-MOS-FET:例えば3SK59を代替するにはフレキシブルなリード線を付けるのも良さそうです。
変換基板のピンピッチは2.54mm、ピン列間は7.62mmなので、ユニバーサル基板やブレッドボードにうまく載せることができます。 ピンをハンダ付けする部分は両面パターンでスルーホールになっておりハンダ付けの強度も十分あります。
BF998は4ピンのデバイスなのでハンダ付けは容易でした。 先の細いハンダ鏝と細いヤニ入りハンダを使います。 ハンダ付けが済んだら無水アルコールなどでフラックスを除去してやると綺麗に仕上がります。 足の並びがわかり易いように一番ピンの位置(ソース電極)に番号を記入しておきました。
【BF998でHF帯のRFアンプ】
少し前のBlog(←リンク)でテストしたDG-MOS-FETを使ったRFアンプと同じ設計になっています。以下、必要に応じて前回も参照しながらご覧を。
今回は金属CANタイプのDG-MOS-FETとピン配置が互換になることから、3SK35GR,etc.と差し替えて比較することができます。
比較が容易なよう、前回の例に合わせて調整はドレイン電流:Id=10mAになるよう、バイアス電圧で加減します。 FETのソースとGND間の電圧:Vsを測定しながら、Vs=1Vになるよう可変抵抗:VR2 (10kΩ)を調整します。(回路図を参照)これでドレイン電流:Id=10mAになります。 そのあと受信機あるいはネットアナなどに接続し、ゲート側の同調回路:T1を調整して目的の7MHzでゲインが最大になるようにします。 なお、このRFアンプはあくまでも小信号用です。従ってオーバードライブにならぬよう、特にネットアナを使うときには注意します。ここでは被測定アンプへの入力をマイナス30dBm(0.001mW)に絞って調整しました。ネットアナの方も入力オーバーで飽和させないように注意を!
回路図中の表・1に各種DG-MOS-FETをVs=1V、すなわちId=10mAに調整したときの第1ゲートの電圧:VG1Sとそのとき得られた最大ゲインをまとめておきました。 ゲインの測定は7MHzです。 BF998は近代的でHigh-gmな高性能FETなので28dB前後(約25倍)という高いゲインが得られました。 同じ回路での比較で旧式な3SK35GRでは21dB前後(約11倍)でした。 BF998は6〜7dBくらい大きなゲインが得られます。 さらに3SK35GRより新しい世代のFET(例えば3SK59GRなど)と比べても2〜4dBほど大きなゲインです。 BF998の高性能ぶりがわかります。
受信機のRFアンプを3SK59などから置き換えるとやや過剰なゲインになるでしょう。 入力部のコイルをタップダウンしたり、ドレイン電流を加減してやや抑え気味に使うと良い結果が得られそうです。 受信機を始め電子回路は各部のバランスで成り立っています。 一部分だけゲインが高くなったら不都合が起こることもあるわけです。 BF998の性能が活かせるように上手く使いたいものです。
参考:BF998の入手について
国内ではaitendoに置いてありましたが、2019年12月現在品切れです。なお、同店には変換基板に実装済みのものが置いてあります。細かい作業が苦手な人には良いかもしれません。 国際通販ではAliexpressで購入できます。 サイトに入ったら「BF998」で検索すると扱うお店がたくさんヒットします。 購入単位や価格と送料、さらには信用スコアなどを参考に選びます。注文して10日から3週間くらいで手に入るでしょう。
なお「BF998R」と言う、「R付き」のデバイスも売っていますが、こちらは電気的特性はまったく同じですがピン配置が裏返しになったものです。この裏返しのもの・・・R付きは国産の面実装型DG-MOS-FET、3SK294や3SK144などと同じピン配置です。
3SK35や3SK59、さらに3SK73のような配置にピンが並ぶのは「Rナシ」の方です。 ここでは目的からRナシの方を入手しました。 購入する際は十分に確認します。
BF998はNXPセミコンダクタ製とインフィニオン・テクノロジーズ製が出回っています。 入手できたものはインフィニオン製でした。表面の印字が「MO s」となっています。NXP製は「MO p」の印字です。 どちらのメーカーのものも同じように使えます。
【BF998を試用する】
前のBlog(←リンク)で評価した3SK294となるべく違わぬように作って比較しています。 コイルや出力部のRFトランスは同じものを使いました。
電極の並び方が異なるので、完全に同じ条件にはできませんが7MHzと言う低い周波数帯ですから影響があってもごくわずかでしょう。 いずれにしても十分安定に増幅してくれます。
なお、写真のBF998は上記で紹介とは異なる種類の変換基板に載っています。 特性的には薄手の基板と同じようなものです。 ただし板が厚くてしっかりしているためブレッドボードにはこちらの方が扱い易いように感じられました。 薄手の変換基板は着脱時に無理な力が加わらないように注意しないと基板が割れてしまいます。 無造作に扱ったら1枚ヒビを入れてしまいました。ご注意を。
【7MHz RF-Ampの周波数特性】
BF998で作ったRF-Amp.(7MHz用)の周波数特性です。 画面の中央少し上を横切る赤いラインがゲイン0dBです。縦軸のひと目盛りは10dBです。 横軸は左端が1MHzで右端は20MHzのLog目盛りになっています。 マーカーの位置がゲイン最大のポイントで、この例では28.1dB(約25.4倍)のゲインが得られています。
回路図中の表・1のようにFETによってゲインに数dBの違いがあります。 これはドレイン電流:Id=10mAにおけるトランスコンダクタンス:gfsの違いによるものです。(昔風に言うと相互コンダクタンス:gmの違い) なお、BF998が優秀だとは言っても、他の近代的なDG-MOS-FETと比べて1〜3dB程度の差異ですから、差し替えて劇的な違いが体感できるほどではありません。 アンテナを繋いでの比較なら、ゲインがアップした分だけ空間ノイズによるノイズフロアの上昇が感じられるかもしれませんが・・・。
BF998で他のFETを代替する際は、もしゲインが過剰気味なら入力部のコイルをタップダウンすると言った方法で加減します。幾らかドレイン電流を減らしても良いでしょう。 Id=10mAというのは総合的に見たときに良い特性が得られやすい動作点ですが、絶対というわけではありません。必要に応じて加減してももちろんOKです。 出力側にアッテネータを入れる形式では、出力側のインターセプトポイント(OIP)を劣化させるため望ましくないでしょう。 出力へのアッテネータの付加はせいぜい3dBまでにとどめたいところです。
同調回路が一つですから写真に見るような特性カーブから選択度が良いとは言えません。 必要以上の増幅帯域幅を持つことは多信号特性を考えれば不利です。 目的に応じて良い性能のバンドパスフィルタを前置するのが望ましいと思います。 上手に使えばローノイズで高感度な受信に貢献するでしょう。
【3SK35GRで比較測定】
写真は3SK35GRに差し替えてテストしている様子です。 高周波増幅器としての周波数特性などに違いはありませんが、ゲインのピークは6〜7dB低くなります。(ゲインとしては、21dBくらい。約11倍)
これは3SK35の性能が良くないためです。 3SK35は1970年代のデバイスです。DG-MOS-FETとしては初期のものです。そのため当時の製造上の限界からBF998のような高性能が得られないのでしょう。
MOS-FETのgmはゲート部分の電界の効き方に影響されます。電界効果トランジスタって言うくらいですからね。 電界の効き方はゲート電極とチャネルの電極間距離、すなわちゲート絶縁層の厚みの二乗に反比例します。 簡単に言えばゲート絶縁層が薄いほどgmは高くなります。 しかし3SK35を開発した当時、ゲート部分の絶縁層を薄く作る技術は未熟だったのでしょう。 その代わりとしてゲート幅を広くしますが、幅の拡大はgmに対して比例関係でしか効きませんから二乗で効く厚みの埋め合わせはできなかったのでしょう。 それがあまりgmが高くない理由でしょう。
さらに、ゲート幅を広く設計した副作用でゲートの入力容量:Cisが大きくなっています。 3SK35に交換すると入力同調回路の同調点が移動するのがわかります。 新旧のDG-MOS-FETのゲインの違いなどからデバイスの進歩が読み取れました。
# テストしつつデバイスの進歩を感じました。高周波デバイスは新しい方が良いです。hi
☆
【BF998で50MHzのRFアンプ】
今度はBF998を50MHzの高周波増幅に使ってみましょう。 7MHzの例と基本的に同じですが、入力回路をLマッチの組み合わせ形式に変更しました。
これは、50MHzでは一段とローノイズな性能が求められるからです。 FETから見た信号源インピーダンスが2kΩ程度になるように設計しています。 ほとんどのDG-MOS-FETはそのあたりにノイズフィギャ:NFのミニマムがあります。 50MHzでは空間ノイズも減って来るので、7MHzよりローノイズなアンプになるよう設計します。
7MHzのテストと同じような、1次と2次側があるような同調コイルを使い、ゲート側をタップダウンして最適な信号源インピーダンスにマッチングする方法もあります。 そのためには同調コイルの無負荷Qを知る必要があり、Lマッチ形式より面倒でしょう。 図のような入力回路の形式が設計・製作しやすいと思います。(注・1)
配線が済んだらソースとGND間の電圧:Vsを測定して1VになるようVR2を調整します。 もし、NF計があればNFがミニマムになるよう調整するのも良いでしょう。 しかし、50MHzではまだまだ空間ノイズのレベルが高いため、Vs=1V、すなわちドレイン電流:Id=10mAに調整して終了でも良いと思います。 Id=10mAとすることで多信号特性も良くなっています。
続いて、入力部のコイル:L1あるいはコンデンサ: C2を調整します。 まずは目的の周波数でゲインが最大になるよう調整します。 その後でNF計があればNFがミニマムになるポイントに修正する方法が良いでしょう。 NF計がない時はゲイン最大のポイントに同調しただけでも十分使えます。 NF≦3dBくらいになるので、50MHz帯の耳としてはまずまずな性能と言えます。(極度の田舎で外来ノイズがものすごく小さいなら別なのですけれども・笑)
入力回路のコイルは空芯コイルでも良いですが、ここではコア入りの「RFコイル」と称する物を使ってみました。 コアの調整でインダクタンスが変えられ便利です。
(注・1:「Solid State Design」ARRL、W7ZOI、W. HayWard 著. 「トロイダル・コア活用百科」CQ出版社、JF1DMQ 山村英穂 著 など参照を)
【既製のRF用コイル・米国製】
手持ちのRF用コイルを並べてみました。 これらはもう10年以上も前に米国のDan's small parts and kitsと言うお店から通販で購入したものです。
コイルの詰め合わせを買ったのですが、大して役に立ちそうにないコイルばかりでした。 しかし今回のようなVHF帯の製作でしたら使えそうです。やっと日の目を見ることができました。(笑) 写真の上左のものを使います。
# なお、送料がかさむことから同ショップは海外からの注文はお断りになってしまいました。 面白いパーツも多かったのでちょっと残念ですが仕方ないでしょうね。
【参考資料:東光のRFコイル】
左図はコイルメーカの東光が一般市販向けとして販売していたRFコイルの規格一覧です。(1970〜80年代あたり) 言うまでもないことですが、東光のRFコイルはすでに販売されていないでしょう。
あまり流通しなかったようなので地方では入手が難しかったと思います。 しかし、一時期は自作にも良く使われたようで、古い製作記事に使用例を見ることがあります。 記事にはRFコイルの「M○○-T」を使います・・と言うように書かれていることが多く、インダクタンスなど規格がわからないため代替品の作成は難しかったのです。 今さらですが規格一覧をアップしておきます。なお、転載はご遠慮ください。
# このBlogではなるべくコイルの巻き方だけでなく、インダクタンス値や必要に応じて無負荷Q:Quの大きさも書くようにしています。
改めて一覧表を見ると残念ながら今回の50MHzアンプにはどのRFコイルもインダクタンス不足のようです。 従って定番の10K型のコイルボビンに巻いても良いでしょう。 あるいは空芯コイルに巻いてトリマ・コンデンサで同調を取る方法もあります。 その場合、L2=0.48μHの固定したコイルにしてC2の方をmax20pFくらいのトリマコンデンサにします。C2の可変で同調を取るようにします。
もちろん、コイルはアミドンのトロイダル・コアに巻いても良いです。 その場合は、なるべく高いQが得られるよう周波数帯に見合ったコア材を使います。 一例として、コア材にT-25-#10を使い15回巻きます。巻線は直径:φ0.32mm程度が巻き易いでしょう。なるべく円周全体に均等になるよう巻きます。
空芯コイルで作る場合、直径:φ1.0mmのメッキ線を使い、内径:Id=10mmに9回巻きます。 なお、コイルの長さが:w=15mmになるよう伸び縮みさせて加減します。 これで約0.48μHになります。 銀メッキ線など使うと最高でしょう。
【BF998を使った50MHzアンプ】
さっそくBF998を使って50MHzのRFアンプを作ってみました。 BF998は写真のように薄手の変換基板に載せています。
入力部分はLマッチ形式になっており、写真のようなコア入りのRFコイルを使います。 RFコイルにシールドはありませんが、出力トランスが閉磁型なので結合する心配はありません。 このRFアンプ単体で使うのならこのままの状態でもトラブルは起こりません。 但し他の回路と同居して組み込む際は、ほかのコイルとの結合に注意します。 そのような意味からいうと10Kボビンに巻いたりトロイダルコアを使うと無用な結合が防げるので扱い易いはずです。
# RFコイルのコアは樹脂製の六角ドライバで調整します。 金属製のドライバではうまく調整できません。
【BF998・50MHzアンプの周波数特性】
50MHzのRFアンプのゲイン・周波数特性です。
ピークで26.5dB(約21.1倍)のゲインが得られました。 7MHzと比べて少し低いのですが、これは回路設計による違いもあります。 デバイス自身の周波数特性もあるのですが、主に入力部の形式を変更したためです。 もちろん悪くない数字です。高いゲインよりもローノイズを優先したわけです。 バラツキの確認のために4個ほど交換してみましたが、いずれも25dB以上のゲインが得られました。 BF998はなかなか優秀だと思いました。
回路形式上、入力がC結合になる関係から周波数の高い側の選択度がやや甘くなります。 このRFアンプも良質のバンドパスフィルタ(BPF)を前置して使うと実用的でしょう。 50MHzのHAMバンドはバンド幅が4MHzもあるため、固定同調回路ではフルカバーしきれません。 もし4MHzをフルにカバーしたいなら、コンデンサ:C2(=10pF)にバリコン等を使い可変します。 しかし、普通はCW用ならバンド下端の50.1MHzに、SSBなら50.25MHz、AM局は50.6MHz(?)あたりに調整しておけば実用上支障ないと思います。
【3SK35GRを使った50MHzアンプ・比較用】
比較のために3SK35GRに差し替えてテストしてみましょう。
3SK35は初期のDG-MOS-FETなので、すでに考察したように性能はいま一歩です。やむを得ないでしょうね。
特に入力容量:CisはBF998(標準2.5pF)の2倍以上の5.5pFもあります。 そのため、7MHz帯ではそれほど目立たなかった同調ズレも50MHzでは顕著になります。さらに高い周波数では入力容量が大きすぎて回路の最適設計が難しくなってきます。100MHzくらい迄が適当なのでしょう。 実際にBF998で50.7MHzに合わせた状態で3SK35GRに差し替えるとゲインのピークは47MHzあたりまで移動(低下)しました。 3SK35GRを置き換えると逆の現象が起こる可能性があります。VHF帯での置き換えでは必要に応じ同調容量を補うと言った対応も必要でしょう。
3SK35GRは今の水準で見ると少々劣ったデバイスと言えますが、その性能で十分な用途も多いものです。手持ちがあるなら廃棄したりせず活用をお薦めします。 HF帯/VHF帯で十分なゲインが得られますしNFの値も悪くありません。 もちろん新規に買うなら近代的なデバイスがお薦めですけれど。
【3SK35GR・50MHzアンプの周波数特性】
3SK35GRに置き換え、Id=10mAに調整した時のゲイン周波数特性です。 なお、入力部のコイルはゲインのピークが50MHz帯に入るよう再調整しています。
3SK35GRに交換すると、ゲインは18〜20dB(8〜10倍)と言ったところになります。 BF998に比べると6〜7dB低い値です。 この辺りが1970年代のデバイスと21世紀のデバイスの違いと言ったところでしょうか。 年月の経過を感じさせてくれる測定結果でした。 もちろん6〜7dB低いゲインとは言っても使えない訳ではありません。念のため。
# 20dB前後のゲインがあれば十分な場合がほとんどでしょう。
☆
今回のBlogはBF998と言う2ゲートMOS-FETを扱いました。 (手に入り易い)ディプレッション特性の2ゲートMOS-FETを探していたらBF998と言う見慣れぬFETが目に止まったからです。 Eu製なので「どうせ国産品と互換性のないFETだろう」と思ったのですが、どうやらそうではありませんでした。 面実装型なので3SK59や3SK73をそのまま代替する訳にも行きませんが、足の並びが類似なら工夫の余地もあるでしょう。 そのような目論見でテストを始めました。
7MHz帯はもちろんですが、50MHzと言ったVHFでも高性能です。 メーカーによれば900MHz帯でも使えるそうです。 表面実装で使えばUHF帯でも良い性能が得られるのでしょう。 電気的な特性から見て3SK45、3SK59GRや3SK73GRの置き換え候補にできそうでした。 あとは実装方法を工夫すれば古いMOS-FETの代替問題も解消でしょうか?
今回はRFアンプで試しました。 他のRFデバイスと同様にDG-MOS-FETの用途も様々あって、アンプ以外にミキサー回路、検波回路、発振回路など色々な活用が可能です。 機会を見つけてこれらの応用も扱いたいと思っています。 続編に乞うご期待。(笑) すでにこのBlogで扱った自励式のクリスタル・コンバータ回路や再生検波器への活用ならすぐにでもできそうです。 ではまた。 de JA9TTT/1
# この1年・・・と言っても五ヶ月サボったので半年余りですが、ご覧いただき有難うございました。 ネット上に初めてホームページを作ったのは1996年でした。 それから20有余年、齢を重ねつつこんな事もだんだん億劫になってきましたが、2020年も細々と続けられたらいいなと思っております。 どうぞ良いお年をお迎えください。 有難うございました。
# お年玉企画のBF998は発送済みです。 近日お手元に届くでしょう。2020.01.01
(おわり)nm
2019年12月26日木曜日
2019年12月12日木曜日
【回路】SA612A test at 455kHz
【回路テスト:SA612Aを455kHzで使ってみる】
【SA612Aとは】
SA612Aは二重平衡型ミキサあるいは二重平衡型モジュレータ(DBM)のICです。使われる(回路の)場所によって呼び名はミキサ、あるいはモジュレータと変わりますが部品としては同じものです。 SA612Aはかつて存在した米Signetics社が開発したNE602が原型でその改良型にあたります。
ユニークなICを開発することで有名であったSignetics社は暫く米Corning社(世界最大のガラスメーカ)の子会社でした。 その時代に登場したIC TimerのNE555Vや高性能なAudio OP-AmpであるNE5532は数多くのセカンドソースが登場し今でもアナログ界のスタンダードデバイスです。
そのSignetics社は1975年に蘭Philips社に買収されます。 さらに2006年にはPhilips社も半導体部門の一部を投資会社に売却しました。 そうして誕生したのが現存するNXP Semiconductors社でSigneticsの直系と言えるでしょう。SA612Aは現在も同社からの供給が続いています。
Philips社の傘下になって暫くはそのままでしたが、NE602、NE612は同社の型番付与規則に従いSA602およびSA612へと型番変更されます。しかし中身の変更はありませんでした。 従って古い雑誌記事などで見かけるNE602やNE612で設計された回路はそのままSA602とSA612で置き換えできます。 さらにNE602で設計された古い回路のほとんどは事実上の上位互換品であるSA612Aで代替できるはずです。 SA612AはSA612の改良型ですが、これら(NE602を含め)はピン接続をはじめ、性能・機能にほとんど違いはありません。(参考:NEとSAは動作保証温度範囲で使い分けていたようです。SAが広い)
☆
写真のSA612ANはまだPhilips社だったころ購入したものです。 型番末尾のNは8ピンのDIP型を示す記号です。現在は8pin DIP型(ピンピッチ2.54mm)の生産は終了しており、NXP社によって面実装型(SA612AD)のみ生産が継続しています。 さらに互換品(セカンドソース)なのかも知れませんが、現在は中華通販で8pin DIP型も安価に出回っていてだいぶお手軽になっています。(5個で3ドル程度)
SA612A(NE602などを含む)は、過去に評価したことがあります。 外付け部品が少なく低消費電力で使い易いIC-DBMです。 ただし、あまり大きな信号が扱えず歪み易いと言う欠点があるため積極的に使うことはありませんでした。 今でもこの状況に違いはないでしょう。
しかし、近頃は他のIC-DBMが次々に廃止され姿を消しています。 価格もこなれてきたSA612Aをうまく活用すべき時が来たようです。 今回は455kHzでSSB/CW検波器に使う想定で評価します。 これは自身のニーズがあったことと、この周波数でSA612A(NE602等を含む)を使う例をあまり見ないためでもあります。 自身で評価して使う感触をつかんでおきます。 他の周波数でも概ね類似の性能が得られるはずですが、このBlogの情報は参考程度に留めて実際にテストしてから使うと間違いがありません。
【SA612Aの内部ブロック図】
SA612A(NE602、NE612、SA602、SA612も)はトランジスタの差動対(さどうつい:差動形式に接続された「つい」のトランジスタ)を三組使った乗算回路(じょうざんかいろ:マルチプライヤ)を中心とするICです。 二重平衡型ミキサ、二重平衡型モジュレータなどが主用途で何れにしてもDBMと略されます。
特徴的なのは必要なバイアス回路を全て内蔵したことにあります。回路的な工夫でバイパス・コンデンサも最低限で済むよう考えられているようです。従って外付け部品は非常に少なく済みます。 もちろん、電源ピン(8番ピン)のバイパスは入念に行なう必要があります。
また、発振回路を内蔵するので受信機の周波数変換回路(コンバータ回路)がこれ一つで作れるのもメリットでしょう。 発振回路はVHF帯でも動作するためFMラジオや種々のワイヤレス機器にも適しています。 発振回路の部分は外部から局発を注入する際にはバッファ・アンプとして機能します。
電源安定化回路も内蔵するため扱いが容易です。 一般にICは消費電流を小さく設計すると高周波特性は悪くなるものです。 しかしSA612Aは3mA以下という低消費電流でもVHF帯まで十分に使えます。 ローノイズでゲインも高めの設計なので省部品な無線機器の構成が可能になります。 ただしその副作用で小さめの信号入力でも入力オーバーになって歪みが発生してしまいます。
そのため、SA612Aをミキサに使うとあまり高性能な受信機にはなりません。使い方に少し工夫が必要でしょう。 例えばスーパーヘテロダイン型受信機の「SSB/CW検波回路部」なら心配ないでしょう。この部分はAGCによって加わる信号の大きさが管理されているからです。 差動出力になっているのでうまく設計すれば2倍の信号が得られます。 差動出力をうまく活かすと2次歪みに対しても有利です。
# ピン接続は8pinのDIP型と表面実装型ともに図の通りです。 (図は上面図です)
【SA612Aの中心部・等価回路】
主要回路は有名な「ギルバートセル型」のDBMになっています。 下側の差動対(Pin1とPin2)に信号を加えて使うのが基本です。 受信機のミキサではアンテナからの信号が入ります。検波器なら復調対象の信号ということになります。
平衡変調器(バラモジ)に使うこともできます。Pin1またはPin2に音声信号を加えます。 差動入力になっていますが片側への入力でも大丈夫です。 そのときは信号を加えない側は扱う周波数に応じた十分なバイパスをしておきます。 両入力へ変調信号を加えたいときは一方へは位相反転したものを加えます。両入力に同相で加えては変調は掛かりません。 DBMとしての平衡度は良好ですがバラモジの場合はさらにキャリヤバランスを調整したくなるかも知れません。 その場合はいずれかの入力ピンに外部からDCバイアスを少しだけ与えて加減する方法で可能なはず。(今回は未確認)
発振回路はコルピッツ等価のLC発振器が構成できるよう考えられています。 もちろん水晶発振も可能です。オーバートーン発振させるには基本波周波数をバイパスするようなインダクタをエミッタとGND間に挿入します。詳しくはメーカのアプリケーションノートに情報があります。
# 実験目的の一つは455kHzでうまく水晶発振させるための部品定数を求めることにあります。 周波数が低い、具体的には数100kHzの水晶発振子はHF帯の水晶発振子と「水晶定数」の違いが大きいため、確実・安定に発振させるためには回路定数の選び方に注意したいところです。
【SA612Aを455kHzでテスト】
写真は455kHzでSSB/CW検波回路の特性を調べている様子です。 まずはじめに455kHzと周波数が低いことから、発振回路の帰還容量:C1とC2(次項の回路参照)はかなり大きな容量が必要であろうと予想して実験を始めました。 うまく(確実に)発振できる条件を探るのが目的です。
過去に実験したセラミック発振子の条件などを参考に始めましたが、それではまったく発振してくれません。 使った水晶発振子はだいぶ古いため、それが問題なのかと思いましたがそうではありませんでした。 1MHz以下の水晶発振子は内部の損失抵抗が周波数に反比例して大きくなる傾向があります。 数MHzの発振子なら数10Ωから大きくても数100Ω程度ですが、455kHzにもなると数kΩ以上の値を示します。 そのため、損失抵抗を考慮して部品定数を選ぶ必要がありました。
# 安定な発振が得られれば検波回路としての動作は確実です。 SA612Aは周波数特性が良いことから、HF帯でも数100kHzのMF帯でも同等の性能です。
【SA612Aを使ったSSB/CW検波器・回路図】
テスト回路を示します。 オーソドックスな回路になっています。 肝心の発振回路の部品定数ですが、C1=220pF、C2=470pFくらいが適当なようです。 それ以上大きな容量では発振が起動しないことがありました。
発振波形を観測すると正帰還量はやや過剰な印象もあります。しかし正弦波に近づけようとすると確実な発振が維持できなくなります。455kHzで使うには現状のような部品定数が適当なようです。
確実な発振が可能な状態で検波特性を測定してみました。 ミキサー回路に使った場合の入出力特性ならデータシートに載っています。 しかし検波器としてのグラフはないので実測してみようと言う訳です。後ほどその結果がありますので興味があれば参考にしてください。 検波回路として約17dB(≒7.54倍)のゲインがあることがわかります。 これはミキサー回路として使った際の変換ゲインに同じでした。 回路の動作が同じなので当然と言えますが自身で確認しておいくと安心感があります。 この種の回路としてはかなり大きめのゲインを持っています。 回路設計の際には注目しておくべきでしょう。
回路図は455kHzの例ですが、水晶発振子を交換し帰還容量:C1とC2を適切に選べば他の周波数への変更は容易です。 数MHzのHF帯でしたらC1=C2=100pFあたりから実験を始めます。 発振周波数の微調整は水晶発振子に直列 or 並列に入れた小容量のコンデンサで可能です。 なお、455kHz帯では小容量の付加ではさして周波数調整できないので図のような無調整式になっています。
精密な測定では、453.50432kHzで発振しています。 約4.32Hzほど高いのですがSSB(USB)の復調に支障はありません。 SA612Aを455kHz帯のSSB/CW検波回路に使うなら水晶発振子を切り替える形式にします。 HF帯のようにVXOで周波数を動かす・・・といった手は使えないので必要な水晶発振子を揃えることになるでしょう。 あるいは以前のBlogのようにPLL(←リンク)を使って必要な周波数を得るといった方法になります。もちろん、チャネル式のDDS発振器(←リンク)でも構いません。
【復調波形:@-20dBm Input】
入力に-20dBm(50Ω系)を与えた時の出力波形です。 水晶発振の周波数:453.50432kHzのちょうど1kHz上の454.50432kHzを入力しています。
ピン1への入力信号を電圧で言えば22.4mV(rms)ということになります。 その状態で169mV(rms)の出力が得られます。写真のように管面から読むと約480mVppとなります。
周波数差が1kHzですから、復調信号として写真のようなちょうど1kHzの正弦波が得られます。 SA612Aへの入力はこのあたりまでならまずまず綺麗な復調が行なえます。 入力はpp値でいうと63mVくらいです。 大きくてもこの倍くらいまでに抑えたほうが良い音の復調ができます。
スーパ形式の受信機回路でSSB/CW検波器に使うのなら、SA612Aを使った検波器の入力は大きくても100mVppまでに抑えるような設計で行きたいと思います。 他のDBM-IC(例えばSN76514N、SN16913P、TA7310Pなど)と比べると半分から1/3の入力で使うことになります。 入力を減らした分だけ出力も小さくなりますが、SA612Aのゲインは大きめなので案外大きな出力電圧が得られます。
【SA612Aの検波器:入出力特性】
繰り返しになりますが、水晶発振が453.50432kHz、入力信号の周波数が454.50432kHzの条件で測定した入出力特性です。
だいたい-20dBmあたりまでがリニアな範囲です。0dBmではかなり直線から外れてしまいます。 上にも書きましたが「おおよそ-20dBmまで」で使うと考えればまずまずの音でSSBの復調ができるでしょう。
グラフを見ると入力信号が-60dBm以下のところで直線から外れてきます。これは測定環境の問題です。 ここは復調された信号が1mV(rms)以下とずいぶん小さなところです。 そのため測定の配線にハムなど外来ノイズの誘導があってS/Nが悪くなっているのです。 受信機に組み込む際はノイズの誘導などがないよう良くシールドします。
SA612Aから発生するノイズ(変換ノイズ)もありますが数10μV以下のようです。 チップそのもののS/Nは悪くありませんからノイジーと感じることはありません。 もちろん、必要以上に周波数特性を伸ばすのは得策ではなく、適当なカットオフ周波数のLPFを入れるとS/Nの良い受信ができます。 また入力が過剰だとノイズフロアが高くなってノイジーに感じることもあります。ピーク値を考え、絞り気味の入力で使うとS/Nの点でも有効です。
【三次歪み・インターセプト】
これはメーカー資料の転載です。 ミキサー回路に使った時の3次IMD特性を示しています。 図によると入力側で見たインターセプトポイント(IIP3)は-12dBmくらいです。
インターセプトポイントについては既に周知でしょうから詳しいことは省きますが、もちろん-12dBmの入力まで使えるという意味ではありません。 グラフから3次IMDの立ち上がり方を見ると、少々のひずみを許容するとしても-30dBmがやっとと言ったところでしょうか? 3次のIMDは-40dBが辛うじてですから・・・。 「-20dBmまで」と言う前言は撤回して、3次のIMDが見え始める手前の-40dBm以下で使いたい気もしますね。(わずか2.24mVですか・溜息)
SA612Aの欠点というよりも、高感度寄りに設計されたDBMと考えて、それにマッチした使い方をすれば性能を十分に発揮させることができるわけです。
# あらためてSA612A系のDBMはあまり大きな入力信号は扱えないことに留意しておく必要があるようです。(まあ、これは以前からわかっていた通りなのですが、数値で示された訳です・笑)
【発振部・発振波形を観測】
写真はPin6において水晶発振の発振波形を観測している様子です。 波形を観測しながら適切な発振条件を探りました。
453.5kHzの水晶発振子はHC-6/U型です。 ずいぶん大きく感じますがこれでも昔はコンパクトな発振子と思ったものでした。 ピンが太いのでブレッドボードには刺さりませんからHC-6/U用水晶ソケットを介して使います。
この水晶発振子ですが、実験に際しあまりにも古くて汚かったため「写真うつり」を気にしました。 研磨剤のピカールで磨いたところピカピカになりました。 見かけは光ってますが、中身は50年モノですからアクティビティが低下しているかも知れません。(笑)
# 気になったのでもう少し新しい物と比較したら活きの良さにさしたる違いは見られませんでした。
参考:近ごろ455kHz帯では水晶発振子ではなく、セラミック発振子(セラロック®️)の方がポピュラーになっています。 同じような発振子ですが、セラミック発振子の等価的な内部定数は水晶発振子とだいぶ違います。 したがって帰還容量:C1とC2は修正が必要です。 セラミック発振子として、CSB455E(村田製作所)を使ったテストでは、C1=C2=470pFとするのが適当でした。 また、発振周波数の調整用としてセラミック発振子のGND側に100pFのトリマ・コンデンサと33pFを並列にしたものを追加します。これで455kHz±700Hzくらいの周波数調整ができます。 中国製セラミック発振子、CRB455Eも同じように使えます。
【453.5kHzの発振波形】
453.5kHzの発振波形です。 見た通り、下側が潰れて歪んだ波形になっています。
水晶発振の高調波が受信のビート妨害になる可能性があります。 できるだけ正弦波が好ましいのですが、帰還回路の定数を変えて正弦波に近づけようとすると確実な発振が難しくなってしまいます。 この程度の発振波形でもあまり実害はないようなのでこれで済ませることにしました。
発振レベルは1.6Vppくらいあれば良いようです。 SA612Aで発振させず外部から与える際も1.5Vpp前後を目処にしておきます。(注:ピン6のBase端子で見たとき) 小さ過ぎると変換ゲインが低下します。あまり大きくするとスプリアス特性の劣化が考えられます。
☆
SA612Aを455kHz帯のSSB/CW検波器に使ったときの特性に興味があったので実測してみました。 あえて自身で評価するまでもなく、メーカーのデータシートにあるミキサー回路の特性を参照しても良かったようです。 しかしいちど自分で調べておけば安心感は違います。 使う上での感触を掴むことも出来ました。
SA612Aは消費電力が少なく、周囲の部品も少なくて済みとても使い易いのですが、入力信号は抑え気味で使うべきです。 こうしたことは私自身としては再確認のようになってしまいましたが、このBlogにはSA612Aを扱った情報が何もなかったので経過を含めて紹介してみました。 既に使いこなしている人にはどうでも良い話だったのかも知れませんね。hi
SA612Aは安くないチップだったのでそれほどたくさん引き出しには入っていないかも知れません。 しかし、ちかごろは中華製(?)の登場で価格もこなれて来たようです。 温存せず積極活用する時期が来たように感じます。 通信型受信機への活用はもちろんですが、家庭用短波ラジオや昔風の高1中2に付加するSSB/CW検波器としても重宝なIC-DBMです。 入力信号が過大にならぬよう注意すればなかなか良い音がします。機会を見つけてぜひお試しを。 ではまた。 de JA9TTT/1
☆
リンク集:このBlogにはIC-DBMを扱った以下の記事があります。
(1)MC1496P・・・IC-DBMの元祖のようなチップです。
(2)TA7310P・・・CB無線機のPLL回路用IC-DBMですが汎用に使えます。
(3)TA7358P/AP・・FMラジオのフロントエンド用IC-DBMです。
(4)K174ΠC1・・・旧ソ連製のIC-DBMで独製S042Pのセカンドソース。
(5)S042P・・・・独Siemens社が開発したヨーロッパ系IC-DBMです。
(6)μPA101G・・・新世代のIC-DBMで1GHz帯までカバーします。
(7)MC-1443・・・搬送多重電話装置の周波数変換用に作られたIC-DBMです。
(8)MC-1451・・・搬送多重電話装置の音声復調用に作られたIC-DBMです。
(9)SN16913P・・・ 外付け部品が少ないIC-DBM。CB無線機用がルーツ。
そのほかに、個別半導体を使ったDBM/SBMの記事があります。
(1)Di-DBM・・・オーソドックスだが確実性の高い4ダイオード型のDBM。
(2)トランジスタ式SBM・・・バイポーラ・トランジスタを使ったSBM研究。
(3)FET式SBM・・・FET;電界効果トランジスタを使ったSBM研究。
(4)高IP Di-DBM・・・4ダイオードを使ったハイレベルDBMの検討。
・・・・など。 ほかにも記事中でDBM/SBMに触れた箇所は多数あります。
(おわり)fm
【SA612Aとは】
SA612Aは二重平衡型ミキサあるいは二重平衡型モジュレータ(DBM)のICです。使われる(回路の)場所によって呼び名はミキサ、あるいはモジュレータと変わりますが部品としては同じものです。 SA612Aはかつて存在した米Signetics社が開発したNE602が原型でその改良型にあたります。
ユニークなICを開発することで有名であったSignetics社は暫く米Corning社(世界最大のガラスメーカ)の子会社でした。 その時代に登場したIC TimerのNE555Vや高性能なAudio OP-AmpであるNE5532は数多くのセカンドソースが登場し今でもアナログ界のスタンダードデバイスです。
そのSignetics社は1975年に蘭Philips社に買収されます。 さらに2006年にはPhilips社も半導体部門の一部を投資会社に売却しました。 そうして誕生したのが現存するNXP Semiconductors社でSigneticsの直系と言えるでしょう。SA612Aは現在も同社からの供給が続いています。
Philips社の傘下になって暫くはそのままでしたが、NE602、NE612は同社の型番付与規則に従いSA602およびSA612へと型番変更されます。しかし中身の変更はありませんでした。 従って古い雑誌記事などで見かけるNE602やNE612で設計された回路はそのままSA602とSA612で置き換えできます。 さらにNE602で設計された古い回路のほとんどは事実上の上位互換品であるSA612Aで代替できるはずです。 SA612AはSA612の改良型ですが、これら(NE602を含め)はピン接続をはじめ、性能・機能にほとんど違いはありません。(参考:NEとSAは動作保証温度範囲で使い分けていたようです。SAが広い)
☆
写真のSA612ANはまだPhilips社だったころ購入したものです。 型番末尾のNは8ピンのDIP型を示す記号です。現在は8pin DIP型(ピンピッチ2.54mm)の生産は終了しており、NXP社によって面実装型(SA612AD)のみ生産が継続しています。 さらに互換品(セカンドソース)なのかも知れませんが、現在は中華通販で8pin DIP型も安価に出回っていてだいぶお手軽になっています。(5個で3ドル程度)
SA612A(NE602などを含む)は、過去に評価したことがあります。 外付け部品が少なく低消費電力で使い易いIC-DBMです。 ただし、あまり大きな信号が扱えず歪み易いと言う欠点があるため積極的に使うことはありませんでした。 今でもこの状況に違いはないでしょう。
しかし、近頃は他のIC-DBMが次々に廃止され姿を消しています。 価格もこなれてきたSA612Aをうまく活用すべき時が来たようです。 今回は455kHzでSSB/CW検波器に使う想定で評価します。 これは自身のニーズがあったことと、この周波数でSA612A(NE602等を含む)を使う例をあまり見ないためでもあります。 自身で評価して使う感触をつかんでおきます。 他の周波数でも概ね類似の性能が得られるはずですが、このBlogの情報は参考程度に留めて実際にテストしてから使うと間違いがありません。
【SA612Aの内部ブロック図】
SA612A(NE602、NE612、SA602、SA612も)はトランジスタの差動対(さどうつい:差動形式に接続された「つい」のトランジスタ)を三組使った乗算回路(じょうざんかいろ:マルチプライヤ)を中心とするICです。 二重平衡型ミキサ、二重平衡型モジュレータなどが主用途で何れにしてもDBMと略されます。
特徴的なのは必要なバイアス回路を全て内蔵したことにあります。回路的な工夫でバイパス・コンデンサも最低限で済むよう考えられているようです。従って外付け部品は非常に少なく済みます。 もちろん、電源ピン(8番ピン)のバイパスは入念に行なう必要があります。
また、発振回路を内蔵するので受信機の周波数変換回路(コンバータ回路)がこれ一つで作れるのもメリットでしょう。 発振回路はVHF帯でも動作するためFMラジオや種々のワイヤレス機器にも適しています。 発振回路の部分は外部から局発を注入する際にはバッファ・アンプとして機能します。
電源安定化回路も内蔵するため扱いが容易です。 一般にICは消費電流を小さく設計すると高周波特性は悪くなるものです。 しかしSA612Aは3mA以下という低消費電流でもVHF帯まで十分に使えます。 ローノイズでゲインも高めの設計なので省部品な無線機器の構成が可能になります。 ただしその副作用で小さめの信号入力でも入力オーバーになって歪みが発生してしまいます。
そのため、SA612Aをミキサに使うとあまり高性能な受信機にはなりません。使い方に少し工夫が必要でしょう。 例えばスーパーヘテロダイン型受信機の「SSB/CW検波回路部」なら心配ないでしょう。この部分はAGCによって加わる信号の大きさが管理されているからです。 差動出力になっているのでうまく設計すれば2倍の信号が得られます。 差動出力をうまく活かすと2次歪みに対しても有利です。
# ピン接続は8pinのDIP型と表面実装型ともに図の通りです。 (図は上面図です)
【SA612Aの中心部・等価回路】
主要回路は有名な「ギルバートセル型」のDBMになっています。 下側の差動対(Pin1とPin2)に信号を加えて使うのが基本です。 受信機のミキサではアンテナからの信号が入ります。検波器なら復調対象の信号ということになります。
平衡変調器(バラモジ)に使うこともできます。Pin1またはPin2に音声信号を加えます。 差動入力になっていますが片側への入力でも大丈夫です。 そのときは信号を加えない側は扱う周波数に応じた十分なバイパスをしておきます。 両入力へ変調信号を加えたいときは一方へは位相反転したものを加えます。両入力に同相で加えては変調は掛かりません。 DBMとしての平衡度は良好ですがバラモジの場合はさらにキャリヤバランスを調整したくなるかも知れません。 その場合はいずれかの入力ピンに外部からDCバイアスを少しだけ与えて加減する方法で可能なはず。(今回は未確認)
発振回路はコルピッツ等価のLC発振器が構成できるよう考えられています。 もちろん水晶発振も可能です。オーバートーン発振させるには基本波周波数をバイパスするようなインダクタをエミッタとGND間に挿入します。詳しくはメーカのアプリケーションノートに情報があります。
# 実験目的の一つは455kHzでうまく水晶発振させるための部品定数を求めることにあります。 周波数が低い、具体的には数100kHzの水晶発振子はHF帯の水晶発振子と「水晶定数」の違いが大きいため、確実・安定に発振させるためには回路定数の選び方に注意したいところです。
【SA612Aを455kHzでテスト】
写真は455kHzでSSB/CW検波回路の特性を調べている様子です。 まずはじめに455kHzと周波数が低いことから、発振回路の帰還容量:C1とC2(次項の回路参照)はかなり大きな容量が必要であろうと予想して実験を始めました。 うまく(確実に)発振できる条件を探るのが目的です。
過去に実験したセラミック発振子の条件などを参考に始めましたが、それではまったく発振してくれません。 使った水晶発振子はだいぶ古いため、それが問題なのかと思いましたがそうではありませんでした。 1MHz以下の水晶発振子は内部の損失抵抗が周波数に反比例して大きくなる傾向があります。 数MHzの発振子なら数10Ωから大きくても数100Ω程度ですが、455kHzにもなると数kΩ以上の値を示します。 そのため、損失抵抗を考慮して部品定数を選ぶ必要がありました。
# 安定な発振が得られれば検波回路としての動作は確実です。 SA612Aは周波数特性が良いことから、HF帯でも数100kHzのMF帯でも同等の性能です。
【SA612Aを使ったSSB/CW検波器・回路図】
テスト回路を示します。 オーソドックスな回路になっています。 肝心の発振回路の部品定数ですが、C1=220pF、C2=470pFくらいが適当なようです。 それ以上大きな容量では発振が起動しないことがありました。
発振波形を観測すると正帰還量はやや過剰な印象もあります。しかし正弦波に近づけようとすると確実な発振が維持できなくなります。455kHzで使うには現状のような部品定数が適当なようです。
確実な発振が可能な状態で検波特性を測定してみました。 ミキサー回路に使った場合の入出力特性ならデータシートに載っています。 しかし検波器としてのグラフはないので実測してみようと言う訳です。後ほどその結果がありますので興味があれば参考にしてください。 検波回路として約17dB(≒7.54倍)のゲインがあることがわかります。 これはミキサー回路として使った際の変換ゲインに同じでした。 回路の動作が同じなので当然と言えますが自身で確認しておいくと安心感があります。 この種の回路としてはかなり大きめのゲインを持っています。 回路設計の際には注目しておくべきでしょう。
回路図は455kHzの例ですが、水晶発振子を交換し帰還容量:C1とC2を適切に選べば他の周波数への変更は容易です。 数MHzのHF帯でしたらC1=C2=100pFあたりから実験を始めます。 発振周波数の微調整は水晶発振子に直列 or 並列に入れた小容量のコンデンサで可能です。 なお、455kHz帯では小容量の付加ではさして周波数調整できないので図のような無調整式になっています。
精密な測定では、453.50432kHzで発振しています。 約4.32Hzほど高いのですがSSB(USB)の復調に支障はありません。 SA612Aを455kHz帯のSSB/CW検波回路に使うなら水晶発振子を切り替える形式にします。 HF帯のようにVXOで周波数を動かす・・・といった手は使えないので必要な水晶発振子を揃えることになるでしょう。 あるいは以前のBlogのようにPLL(←リンク)を使って必要な周波数を得るといった方法になります。もちろん、チャネル式のDDS発振器(←リンク)でも構いません。
【復調波形:@-20dBm Input】
入力に-20dBm(50Ω系)を与えた時の出力波形です。 水晶発振の周波数:453.50432kHzのちょうど1kHz上の454.50432kHzを入力しています。
ピン1への入力信号を電圧で言えば22.4mV(rms)ということになります。 その状態で169mV(rms)の出力が得られます。写真のように管面から読むと約480mVppとなります。
周波数差が1kHzですから、復調信号として写真のようなちょうど1kHzの正弦波が得られます。 SA612Aへの入力はこのあたりまでならまずまず綺麗な復調が行なえます。 入力はpp値でいうと63mVくらいです。 大きくてもこの倍くらいまでに抑えたほうが良い音の復調ができます。
スーパ形式の受信機回路でSSB/CW検波器に使うのなら、SA612Aを使った検波器の入力は大きくても100mVppまでに抑えるような設計で行きたいと思います。 他のDBM-IC(例えばSN76514N、SN16913P、TA7310Pなど)と比べると半分から1/3の入力で使うことになります。 入力を減らした分だけ出力も小さくなりますが、SA612Aのゲインは大きめなので案外大きな出力電圧が得られます。
【SA612Aの検波器:入出力特性】
繰り返しになりますが、水晶発振が453.50432kHz、入力信号の周波数が454.50432kHzの条件で測定した入出力特性です。
だいたい-20dBmあたりまでがリニアな範囲です。0dBmではかなり直線から外れてしまいます。 上にも書きましたが「おおよそ-20dBmまで」で使うと考えればまずまずの音でSSBの復調ができるでしょう。
グラフを見ると入力信号が-60dBm以下のところで直線から外れてきます。これは測定環境の問題です。 ここは復調された信号が1mV(rms)以下とずいぶん小さなところです。 そのため測定の配線にハムなど外来ノイズの誘導があってS/Nが悪くなっているのです。 受信機に組み込む際はノイズの誘導などがないよう良くシールドします。
SA612Aから発生するノイズ(変換ノイズ)もありますが数10μV以下のようです。 チップそのもののS/Nは悪くありませんからノイジーと感じることはありません。 もちろん、必要以上に周波数特性を伸ばすのは得策ではなく、適当なカットオフ周波数のLPFを入れるとS/Nの良い受信ができます。 また入力が過剰だとノイズフロアが高くなってノイジーに感じることもあります。ピーク値を考え、絞り気味の入力で使うとS/Nの点でも有効です。
【三次歪み・インターセプト】
これはメーカー資料の転載です。 ミキサー回路に使った時の3次IMD特性を示しています。 図によると入力側で見たインターセプトポイント(IIP3)は-12dBmくらいです。
インターセプトポイントについては既に周知でしょうから詳しいことは省きますが、もちろん-12dBmの入力まで使えるという意味ではありません。 グラフから3次IMDの立ち上がり方を見ると、少々のひずみを許容するとしても-30dBmがやっとと言ったところでしょうか? 3次のIMDは-40dBが辛うじてですから・・・。 「-20dBmまで」と言う前言は撤回して、3次のIMDが見え始める手前の-40dBm以下で使いたい気もしますね。(わずか2.24mVですか・溜息)
SA612Aの欠点というよりも、高感度寄りに設計されたDBMと考えて、それにマッチした使い方をすれば性能を十分に発揮させることができるわけです。
# あらためてSA612A系のDBMはあまり大きな入力信号は扱えないことに留意しておく必要があるようです。(まあ、これは以前からわかっていた通りなのですが、数値で示された訳です・笑)
【発振部・発振波形を観測】
写真はPin6において水晶発振の発振波形を観測している様子です。 波形を観測しながら適切な発振条件を探りました。
453.5kHzの水晶発振子はHC-6/U型です。 ずいぶん大きく感じますがこれでも昔はコンパクトな発振子と思ったものでした。 ピンが太いのでブレッドボードには刺さりませんからHC-6/U用水晶ソケットを介して使います。
この水晶発振子ですが、実験に際しあまりにも古くて汚かったため「写真うつり」を気にしました。 研磨剤のピカールで磨いたところピカピカになりました。 見かけは光ってますが、中身は50年モノですからアクティビティが低下しているかも知れません。(笑)
# 気になったのでもう少し新しい物と比較したら活きの良さにさしたる違いは見られませんでした。
参考:近ごろ455kHz帯では水晶発振子ではなく、セラミック発振子(セラロック®️)の方がポピュラーになっています。 同じような発振子ですが、セラミック発振子の等価的な内部定数は水晶発振子とだいぶ違います。 したがって帰還容量:C1とC2は修正が必要です。 セラミック発振子として、CSB455E(村田製作所)を使ったテストでは、C1=C2=470pFとするのが適当でした。 また、発振周波数の調整用としてセラミック発振子のGND側に100pFのトリマ・コンデンサと33pFを並列にしたものを追加します。これで455kHz±700Hzくらいの周波数調整ができます。 中国製セラミック発振子、CRB455Eも同じように使えます。
【453.5kHzの発振波形】
453.5kHzの発振波形です。 見た通り、下側が潰れて歪んだ波形になっています。
水晶発振の高調波が受信のビート妨害になる可能性があります。 できるだけ正弦波が好ましいのですが、帰還回路の定数を変えて正弦波に近づけようとすると確実な発振が難しくなってしまいます。 この程度の発振波形でもあまり実害はないようなのでこれで済ませることにしました。
発振レベルは1.6Vppくらいあれば良いようです。 SA612Aで発振させず外部から与える際も1.5Vpp前後を目処にしておきます。(注:ピン6のBase端子で見たとき) 小さ過ぎると変換ゲインが低下します。あまり大きくするとスプリアス特性の劣化が考えられます。
☆
SA612Aを455kHz帯のSSB/CW検波器に使ったときの特性に興味があったので実測してみました。 あえて自身で評価するまでもなく、メーカーのデータシートにあるミキサー回路の特性を参照しても良かったようです。 しかしいちど自分で調べておけば安心感は違います。 使う上での感触を掴むことも出来ました。
SA612Aは消費電力が少なく、周囲の部品も少なくて済みとても使い易いのですが、入力信号は抑え気味で使うべきです。 こうしたことは私自身としては再確認のようになってしまいましたが、このBlogにはSA612Aを扱った情報が何もなかったので経過を含めて紹介してみました。 既に使いこなしている人にはどうでも良い話だったのかも知れませんね。hi
SA612Aは安くないチップだったのでそれほどたくさん引き出しには入っていないかも知れません。 しかし、ちかごろは中華製(?)の登場で価格もこなれて来たようです。 温存せず積極活用する時期が来たように感じます。 通信型受信機への活用はもちろんですが、家庭用短波ラジオや昔風の高1中2に付加するSSB/CW検波器としても重宝なIC-DBMです。 入力信号が過大にならぬよう注意すればなかなか良い音がします。機会を見つけてぜひお試しを。 ではまた。 de JA9TTT/1
☆
リンク集:このBlogにはIC-DBMを扱った以下の記事があります。
(1)MC1496P・・・IC-DBMの元祖のようなチップです。
(2)TA7310P・・・CB無線機のPLL回路用IC-DBMですが汎用に使えます。
(3)TA7358P/AP・・FMラジオのフロントエンド用IC-DBMです。
(4)K174ΠC1・・・旧ソ連製のIC-DBMで独製S042Pのセカンドソース。
(5)S042P・・・・独Siemens社が開発したヨーロッパ系IC-DBMです。
(6)μPA101G・・・新世代のIC-DBMで1GHz帯までカバーします。
(7)MC-1443・・・搬送多重電話装置の周波数変換用に作られたIC-DBMです。
(8)MC-1451・・・搬送多重電話装置の音声復調用に作られたIC-DBMです。
(9)SN16913P・・・ 外付け部品が少ないIC-DBM。CB無線機用がルーツ。
そのほかに、個別半導体を使ったDBM/SBMの記事があります。
(1)Di-DBM・・・オーソドックスだが確実性の高い4ダイオード型のDBM。
(2)トランジスタ式SBM・・・バイポーラ・トランジスタを使ったSBM研究。
(3)FET式SBM・・・FET;電界効果トランジスタを使ったSBM研究。
(4)高IP Di-DBM・・・4ダイオードを使ったハイレベルDBMの検討。
・・・・など。 ほかにも記事中でDBM/SBMに触れた箇所は多数あります。
(おわり)fm
登録:
投稿 (Atom)