2013年12月15日日曜日

【部品】Solderless Breadboard (1)

ハンダ付けのいらないブレッドボード

ブレッドボードを新調
 簡単な回路の場合、最近ではブレッドボードで試作することが多くなった。

 元々のブレッドボードは昔風に言えば「まな板セット」のことである。平らな木板上に部品にソケットや端子などをネジ止めし、立体的な配線で組立てた回路のことであった。米国ではブレッドボード・セットと言っていた。要するにパン切り用のまな板(のような木板)を土台にした電子機器・回路のことだ。

 ここで言うブレッドボードはソルダーレス・ブレッドボードと言うものだ。昔の「まな板セット」とは大きな隔たりがある。 基本的にハンダ付けはせずに、ピン挿入式の端子板に回路を構築して行くものを言う。 その用途は実際に作って試作回路の様子を確かめてみたい、しかし恒久的に使う予定はない・・・と言った目的の製作に向いている。 その時の「土台」になるボードがここで言うブレッドボードだ。 広く使われており既にお馴染みだろうと思うので説明は無用だったかも知れない。

 もちろん高周波回路のように僅かのストレー容量が問題になったり、配線どうしの結合が問題になるような製作には向いていない。 ハイ・インピーダンスでローノイズを要求されるような試作も、静電誘導の可能性が高いのでブレッドボードでは難しいと思う。

 しかし、ごく一般的な低周波回路や高性能(高感度やハイゲインなど)を目的としない中波帯あたりまでの高周波回路も製作の範疇に入るのではないかと思っている。

大きなブレッドボード
 大きめのブレッドボードを購入してみた。 従来の約3倍くらいの回路規模まで搭載できるものである。実際には搭載効率も上がるので5倍くらい可能だと思う。

 そもそも余り規模の大きな試作には向いていないと思うのだが、アナデジ混在回路の試作では意外に場所を取るケースがあって旨く載せるのに四苦八苦するケースも多くなっていた。

 また、回路ブロックごとに分けておき、最後に各部を結合して纏めると言った使い方も可能だろうと思い大きなものを購入してみた。 敷地が広い方が土地の形状・寸法に縛られずに自在なデザインの建物を建設できると言った感覚であろうか。(笑)

愛用のブレッドボード
 これは従来使っていたもので、頂き物だったと思う。 その前に単独のボード部分だけを購入して持っていた。しかし何となく使い難くて活用する機会はごく少なかった。

 このような台座に載っていて電源端子やゴム足と言った付属物が付いたブレッドボードに使い勝手の良さを感じるようになってから徐々に使うようになった。

このブレッドボードには既製のジャンパー線一式がセットになっていたのも便利さを高めてくれたように思う。(次項参照)

ジャンパ−線セット
 ブレッドボードを使い始めるとすぐにわかるが、こうした接続用のジャンパー線のセットは必需品と感じるだろう。

 φ0.6mm程度の錫メッキ線(被覆線が良い)を適宜カットしながら配線を進めると言う方法も有る。 しかしあらかじめピッチに合わせてカットされたジャンパー線のセットがあると組立て効率は非常にアップする。

 写真のものは単芯の被覆電線の両端を曲げて作られた形式のジャンーパー線である。ほかに柔らかな撚り線の両端に挿入端子を付けた形式の物も配線に良く使う。 それぞれある程度の手持ちを用意しておきたい。

参考書
 既に使っている人は自己流で使いこなしていると思うので参考書など不要かも知れない。

 写真の書籍は2007年頃に発売されたものだ。 今ではほかにもたくさんのブレッドボード本が登場している。 これをお勧めするのはある程度の高周波回路までブレッドボードの範疇として工夫して取込んでいるのがHAM向きだと思ったからだ。もっとも、中身はラジオの製作が殆どなので他の電子工作を期待するなら別の本が良い。ラジオ好きには持って来いで、昔のラジオ少年が若かりし頃に思いをはせつつ、ラジオ再入門するには最適かも知れないね。(無線機の製作は無いけど・笑)

 一般的な(常識的な)使い方は、秋月電子通商のサイトにある「ブレッドボードの達人」と言う、使い方のポイントを簡潔に纏めたパンフが良くできている。ブレッドボードを使い始めたらまず最初に参考にすると良いだろう。(直リンク→ここ


参考書の中身
 写真のようなごく小規模のブレッドボードで遊べる範囲の製作を扱っている。これから電子回路に挑んでみようと言う初心者にも難しくないと思う。

 回路図とブレッドボード上の部品レイアウト、そしてジャンパー配線の入れ方まで図で示してあるので、教材にも向いているようだ。ブレッドボードの扱いも習熟できる。(最初から教育分野も出版意図にあるのかも知れない)

 ボードサイズが小さいのでかなり工夫しても部品の多い高級な回路は難しい。ノウハウを身につけたらもっと大規模なものに挑むのが良いと思う。 ただ、そうなるとその「作品」は恒久的に残したくなるものだ。 そんな時にはブレッドボードではなく蛇の目基板にハンダ付けで作るなり、更に一歩進めてプリント基板化も考える次の進歩の段階だと思う。恒久的に安定な製作物に纏めるべき時が訪れたわけだ。

小道具が大切
 ブレッドボードを使った製作と言えば、いきなり部品の足を差し込んで行くと言ったイメージが強い。 私の製作方法もそれに近いものがある。 あくまでも仮設だからだ。

 しかし、製作物に多少なりとも安定な動作や操作の容易さを求めるなら、写真にあるような「小道具」をこしらえておくと始末が良い。
 このあたり、グッドアイディアだと思うので真似させてもらおうと思っている。 もう一歩進めたアイディアも考えてみたのでこれから取込んで行くつもりだ。 かなり小さめのブレッドボードで様々な製作をこなしているのもこうした小道具を用意しているからだ。 これは大きめのボードを使う際にも役立ってくれるだろう。

                 ☆ ☆ ☆

 ブレッドボードと言えば、ソルダーレスではなかった時代から簡易工法のイメージが強かった。 金属シャシの上に回路を構築すると言った構造が一般的になる以前のイメージもあって、まな板セットは超古臭いイメージであった。
 時代は移り変わり、半導体回路の簡易実験に電子ブロック以上に高度な製作を、而もハンダ付け無しに実現するならブレッドボードは最適だと言えるようだ。
 接触不良の危険などもあって多少難しい面もあるとは思っているが、使ってみればなるほど便利なのでちょっと試すと言った用途にはお薦めできる。 大きなブレッドボードとジャンパー線のセットは3,000円以下で手に入る。お炬燵で楽しむお正月の電子工作にもピッタリかな?

2013年も後わずか、良いお年をお迎え下さい。御愛読感謝。de JA9TTT/1

(おわり)

2013年12月1日日曜日

【測定】GPS-RX and OCXO : Part 1

【GPS受信機】
GPS受信機・基板
 写真はGPS受信機基板:TU30-D140 "Jupiter"(仕様書←リンク)である。 暫く前に世界中で出回ったが既に過去のGPSモジュールになった。このテーマ、こんな古いものを持ち出すより新しいものでやる方が望ましいが、手持ちの機材を有意義に活用する為の一環だ。そうでもしないとますます陳腐化が進んでしまう。

 以下,旬を過ぎた部品(基板)を扱っている。努力すれば入手も可能とは思うが、無理に求めるのはお勧めしない。稀にオークションに出るかも知れないが皆で取り合れば高騰して面白くもないだろう。

 これは何でもそうだが、同じことの手段は他にもありうる。 真似るは学ぶに通じるから良いとしても、まるまるのコピーではではなく各自アイディアと工夫で乗り切ることをお勧めしたい。 もっとも金メッキに拘るとか霊験あたらかと云う「お宝部品」に置き換えると言った「ご工夫」ではコメントに窮してしまうが・・・。(笑)

                  −・・・−

 この基板は、ロックウエル社製である。写真の白い同軸ケーブルの先には一般的なGPSアンテナを接続する。昨今はGPSアンテナとこうした受信機が一体化したモジュールが多くなったので独立したGPSアンテナと言うものを見かけなくなってきた。

 グレーのフラットケーブルが付くコネクタ部には電源ほかシリアル・データ出力が引き出されている。 レベル変換してやればRS-232Cインターフェース経由でアンテナ位置の緯度・経度・海抜の情報が得られる。得られたデータを地図上にプロットすればGPSナビゲータのようにもなり得る。

GPS受信機・基板裏面
 TU30-D140基板の裏面である。
ロックウエル社のLSIが見える。 このチップは1990年代半ばの設計だろうから、この分野ではすでに過去の遺物になってしまったようだ。非常に進歩の速い世界だ。

 この基板からは位置情報とともに衛星搭載の原子時計に時刻同期した1pps、即ち1Hzの信号と、さらにその1Hzに同期した10kHz信号が得られる。

 即ちこれらの信号の精度はGPS衛星上の原子時計と一致する。1pps信号は周期の平均化処理によって電波伝搬などに由来する揺らぎを除去する操作を行なえば非常に高精度の「基準時間・基準周波数」が得られる可能性を秘めている。

 どんなGPS受信機でもこうしたタイムシグナルが得られる訳ではない。 このGPS受信機が「ある時期」もてはやされたのは1pps/1Hzと共に10kHzが得られたからであった。 10kHz信号があるのは便利だが本質的なものではない。 10kHzにロックするPLLなら簡単なのだが、肝心の10kHzが揺らいでいるのだ。 普通のPLL設計のようにref=10kHzでループフィルタの設計をしたのではアウトプットに1pps/1Hzの揺らぎが殆どそのまま残ってしまう。 結局、その揺らぎを考慮すれば1pps信号から始めるのと違わない。

 仕組みからGPS受信機から「基準」として得られるのは1pps信号のみだ。他の信号があるとしても1ppsから作られたものだろう。 従って1ppsこそが最も重要である。 同じような1pps出力が得られる受信機モジュールは他にも存在している。 リーズナブルな価格で入手可能かどうかは調査を必要とするとして、もし得られるなら新しい世代のもので代替すべきだ。可能ならスペックに1ppsがタイミング同期しているとあるものを選びたい。 TU30-D140は消費電流も大きいし衛星の捕捉能力などを考えればやはり一時代以上前のGPS受信機だ。

TU30-D140のインターフェース
 動作確認とこの先の活用の為に、インターフェース基板を製作した。

 TU30-D140とデータをやり取りするシリアル信号は0〜5VのTTLレベルである。 パソコンと接続するためにはRS-232Cインターフェースの標準電圧に変換する必要がある。 なお、USBとインターフェースするにはUSBシリアル変換ケーブルを使うことになる。(一般に市販されているもので可)

 そのほか、GPS受信基板に必要な5V/約220mAと1pps及び10kHz信号のバッファ回路も載せてある。 必ずしもこうしたインターフェースを作る必要性は無いのだが、取りあえず動作テストの実施には有用だ。

インターフェース基板の様子
 ユニバーサル基板上にインターフェース回路を搭載し、その上にGPS受信機:TU30-D140を載せるように実装した。

 LED(青)は1pps信号で点滅するが、実際の使用時には消灯できるようにしておくべきだと思った。点滅状態が常に見えるのは確認には良いとしても煩わしい感じがする。 視野内に存在する点滅光は非常に目に付くからだ。

 +5Vの3端子レギュレータを搭載している。 やや放熱器が小さいので10Vくらいまでの入力電圧で使うべきだ。 12Vでは過熱してしまう。 RS-232Cのコネクタは写真に見えないが3線式で9pinのD-SUBコネクタに引き出されている。 GPSアンテナはTU30-D140から引き出されたケーブルのSMAコネクタに接続する。 GPSアンテナへのパワー供給はジャンパーピンでON/OFFする形式だ。たいていのアンテナは電源を供給してやらないと受信できない。

GPS-Antenna
 アンテナは古いカーナビに良く使用されていたアクティブタイプが向いている。多くはパッチ・アンテナと言う形式だ。 アンテナは電源電圧が5Vのタイプが向いている。 3Vのものもあるので要注意だ。 もし5Vタイプがなくても3Vに落としてやれば大丈夫なので入手できたものを使えば良い。

 なお、実験程度だとは思うが、ダイポールアンテナでもそこそこ受信できるそうだ。ダブル・ヘリックス・アンテナなどを自作しても面白い。なかなか高性能だそうである。(こちら←リンク) 或は20cm角程度のグランド・プレーン上(金属板)に立てた約4.5cm長のモノポールとその根元にMMICのRFアンプを付けた自作アクティブ・アンテナでも十分いけるという。

 写真は既製品のアンテナを使った仮設のテスト風景である。本格的に連続運転するならしっかりした耐候性のケースに収納しておくと安心できる。 また、こうしたパッチ・アンテナの底面には接地面が有った方が良いので写真のような金属板に密着させて使う。 なるべく全天が見渡せる場所に置くのはもちろんだ。 この状態での衛星受信状況は次項のようになった。 衛星が家影の方位(この例では南東方向)に来ると旨くないが全般になかなか良好に受信できている。

NMEAモニタで受信確認
 GPS受信機からはNMEA-0183フォーマット(説明→リンク)で測位情報が出力されている。これは各種GPSモジュールに採用されている標準的なデータフォーマットである。

 NMEAモニタと言うソフトウエアをパソコンにインストールして受信状態の確認を行なってみた。 このBlogの右の下方にあるGPSリンク集先からダウンロードできる。(直接リンク→ここ)インストールしたらcomポートの選定と、ボーレート、パリティの設定を行なう。写真のような画面が現れればOKだ。(注:画面のような状態になるには受信開始から数10分〜数時間かかる)

 チャート上の赤丸は測位に(時刻同期にも)使用している衛星で、白丸は見えているが使用していないもの。高度が低く地平線の近くを飛行する衛星は精度が出難いので使用しない。観察していると地平の彼方から昇り、地平に沈んで行く様子など少しずつ移動する様子がわかる。
 下段中央のバーグラフは信号強度を示している。黒いバーが測位に使用している衛星で白いバーは使用していないもの。バーの無いものは準備中もしくは受信状態の良くない衛星を示している。各衛星の詳細情報は右の欄に表示されている。
 そのほか、GPS受信基板から出力される文字列をそのまま表示する機能などもある。なお、余りにも詳細な緯度経度はピンポイントでミサイルが撃ち込まれると困るのでモザイクにさせてもらった。(笑)

 他にもGPS受信機からNMEA-0183データを受け取って加工表示するソフトウエアは多数存在している。 GPS-DOとしてではなく他の目的に使うのも面白いかも知れない。 得られた緯度経度情報をGoogle Mapで表示すると拙宅の庭先を表示するので数mの誤差もなかった。 但し、近傍の水準点のデータと照合すると海抜の数値は誤差も変動も大きくてあまりアテにならない感じだ。ジオイドの補正が必要なのかも知れない。

                   ☆

 TU30-D140では少なくとも4個以上の衛星を安定して受信している必要がある。 そうでないと測位精度のみならず1pps、ひいては10kHzの同期性が失われてしまうそうだ。 そうなると高精度の周波数基準器の大元として利用できない。 実際にどのような受信状況になるのか暫くそのまま放置して観測してみた。

 数日間継続して動作させ随時状況の観察を行なった。 起動直後こそ捕捉する衛星数が少なくて、ぎりぎり4個程度の状態が続く。(数10分程度) やがて安定して来て少なくとも6個くらい、さらには写真のように8個以上を継続して捕捉するようになる。 昔テストした時よりもだいぶ衛星数が増えた感じもする。 継続して4個以上の捕捉は難しくなさそうだった。 時間を掛けて統計的に見るべきだと思うが、4個以下の状況になる確率はかなり低そうだ。(ゼロではない)

 こうした状況から見てGPS-DO用の受信基板として旨く使えるものと結論する。 実際のアンテナ架設にあたっては極力視界の良い場所を選ばぶべきだろう。 過去に良い結果が得られなかった事例はそうしたアンテナの影響があったのかも知れない。

以上、あらためて実施したGPS受信機の動作テストは上々であった。 安定した1ppsが得られれば残るキーパーツは良質のOCXOである。もちろんシステム設計もポイントとなる。

ここまではこのBlogで2008年春ころ扱った内容と概ね同じなので過去を知る人には目新しくなかったかも知れない。僅かとは思うが知る人は古参のBlog読者と言うことになる。hi

                   ☆


OCXO各種
 GPS受信機の再評価が済んだら今度はオーブン入り水晶発振器の話しだ。この2つはGPS周波数基準器:GPS-DOのキーパーツとして強く結び付いている。良い性能のOCXO無しには実現できないからだ。(Rb-OSCでも良いのだが)

 少し前に良さそうなオーブン入り水晶発振器(OCXO)が手に入った。 それがGPS受信機の再評価を始めた切っ掛けであった。 その切っ掛けは写真のようなものからである。 5MHzと10MHzの各種OCXOだ。ジャンク屋ではなくオークションに頻繁に出ているのでモノを良く見て狙うと良い物が手に入る。 YAHOO!ではなく米e-Bayなどに良い物を見かける。

 このうち、右下のトヨコム製のTCO-646-A1だけはVC-OCXOの機能がなかったが、ほかはいずれも外部電圧によって周波数をコントロールするVC機能がある。

 暫く前のBlogでは周波数カウンタの基準用として作られたかなり旧式のOCXOを評価したことがあった。 今回評価してこの分野も確実に進歩していることを感じる。 写真のうち小型の3個は明らかに新世代のOCXOだ。 水晶発振子も旧来のATカットからSCカットへと移行しているものが多い。伴って位相雑音も少なくなっている。

 新世代は何が大きく違うのかと言えば、起動時間が短いことだ。 昔のタイプではある程度の精度(誤差0.1ppm程度)に落ち着くまでには数10分以上、数時間も要していた。さらに真の安定状態までには24時間くらい掛かった。 新タイプのOCXOは数分の一の時間で「安定」に達するようだ。 内部の熱容量が小さくなるよう製作されており、温度安定に達するまでの時間が短いからであろう。

 消費電流を観察すればごく短時間で温度平衡状態に到達するのがわかる。 伴って発振周波数の精度も短時間で得られる。 もちろんGPS-DOに要求されるような超高精度・高安定度までにはさらに相応の時間を見るべきである。

 但し上記は放出されたジャンク品の話しである。現在の最先端は更に小型で低消費電力で安定度も一段と良い方向へ進歩している筈だ。

まずは国産愛用から?
 後から評価してみて、CEPE(仏)とOFC(米)のOCXOの方が優秀な印象を受けている。 しかし、最初は大きくて立派で(見た目が・笑)奇麗なトヨコム製から始めてみた。

 これは電圧制御・周波数可変機能:VC機能はないのでそれについては例によって調査の上、改造で対応するつもりだ。まずはOCXOとしての基本的な特性を把握しよう。

 電源電圧は9Vである。 起動時には比較的大きな300mA近い電流が流れるが数10分すると概ね安定な状態になる。 なお、そのとき外箱に触れるとかなり暖かい。 本格的にGPS-DO用として使う際には外気との熱遮蔽を十分行なうか、更に一歩進めてダブルオーブン化も検討べきなようだ。(その場合も熱遮蔽は有効)

周波数精度・安定度
 流石にOCXOである。 数時間の通電でこのような周波数精度が安定して得られる。(周波数校正は行なっている) 写真撮影に使ったユニバーサル・カウンタには既設のGPS周波数基準器(GPS-DO)からリファレンスの10MHzを供給している。

 この状態で1/50,000,000の精度と言う訳だ。(0.02ppm) 一般的にはたいへん高精度と言える。数日観察してみたが、この状態が継続維持できたので安定度も良好だ。 このくらいの周波数安定度・精度があるなら最近注目のQRSSなどの周波数高安定度を要する通信モードにも最適ではないかと思う。 これを周波数基準器として使い必要な周波数を作ってリグに供給するのも面白いだろう。無線機にオプションのTCXOよりも2〜3桁ほど良い安定度が得られる。 高純度な基準信号でもあるからPureなAudioのクロックソースとしてもなかなか魅力的と言えるようだ。

周波数調整穴
 TCO-646-A1は外部から機械的に周波数校正が可能なようにできている。 従って単体で微細な調節が可能である。もちろん、校正手段が問題にはなるのだが・・・mHz(ミリHz=1/1000Hz)のオーダーまで合わせ込もうとするとテクニックを必要とする。

 写真はその調整穴で、どうやら周波数調整は多回転のボリウムになっているようである。 ・・・と言うことは、内部には周波数を電圧で可変する仕組みがあるはずだ。 もっと具体的に言えばバリキャップのような、電圧でリアクタンスが変わる素子が使ってあるのだろう。

VC-OCXOへ改造
 VC-OCXO即ち、電圧制御・周波数可変機能付きオーブン入り水晶発振器に改造する訳だ。

 写真はケースを外した様子である。 ハーメチックシールでは無く、単なるネジ止め構造なので簡単に内部にアクセスすることができた。

 写真中央に大きく見える箱型の物体は水晶発振子である。 そのほか発振回路と水晶発振子を恒温化する機能などを内蔵する。 水晶発振子には発熱線(ニクロム線とかマンガニン線?)が巻いてあるほか、制御トランジスタのフィンも熱結合する形式になっている。 それほど高級な構造にも見えない。 むしろ、高級なTCXOの方が技術を感じるのは気のせいでは無いと思う。オーブン式は言わば腕力で周波数を安定させるようなものだ。もちろん、オーブン用に適した水晶発振子を製作する高い技術は必要だろうが。(笑)

VC-OCXO化の評価
 図はVC化改造後の特性だ。 改造で設けたVC端子へ加えるDC電圧と周波数の関係を示している。 電圧可変リアクタンス素子はバリキャップが使われていた。 そのため加えるDC電圧と静電容量の関係はリニヤでない。 結果として周波数制御電圧対周波数の関係も図の様にノンリニヤになる。

 このことは、PLL回路の設計のときに幾分影響がある。 一巡系のループゲインが状態により変動することになるからだ。 しかし、中央付近を使うことにして設計すれば何とかなるであろう。 改造後の周波数安定度も見たが、特に改造前と変わらなかったのでVC-OCXO化は成功したようだ。 十分なウオームアップ時間をとれば周波数は良く安定しているからGPS-DOに使える性能がありそうだ。

                     ☆

  何気なく表とグラフをご覧だと思う。しかし1mHz(=0.001Hz)のオーダーまで周波数を読もうとするのはそれほど容易では無い。(特に迅速に行なうのは) 単に測定器があれば済むと言った問題でないことは実際にやってみた人だけがわかる。 1mHzの桁には不確かさが含まれている。

CEPEのOCXO
 写真はフランスはCEPE社製の10MHz・OCXOである。

 小型軽量であり、何となくTOYOCOM製よりも安っぽく感じて頼りなく思ってしまった。 そのため評価が後回しになってしまったが、実はこちらの方が性能は良い。

 規定の周波数精度に落ち着くまでの時間はずっと短いのである。 OCXOの弱点、ウオームアップの過程ではむしろ「低精度」と言う部分が短時間で済むわけだ。 また、安定してからの消費電流も少ないので、OCXOとしてはかなり優れている。

周波数調整方法
 トヨコム製は可変抵抗器を内蔵していたので周波数調整は外付け部品無しの単独で行うことができた。

 CEPEほか外国製のOCXOはいずれも外付けの電圧可変式周波数調整になっている。 図は標準的な周波数調整とVC化して使うための方法である。 可変範囲を狭くする方が調整は容易になるが、何らかの原因で大きくずれた時には合わせきれない。 各メーカーともに初期周波数精度はバラツキが大きいと言う書き方のスペックなので、実際に必要な以上の可変範囲幅で回路設計することなってしまう。 さらなるマージンを見込むと可変範囲が過大になって調整で追い込むのが困難になるから必要な範囲でなるべく狭めの調整幅に設計するのが良いと思う。

CEPE製10MHz-OCXOのVC特性
 制御電圧と周波数の関係を測定してみた。 PLL回路で言えばVCO感度の測定と言うことになる。

 外付け抵抗の値でVCO感度を変えることができる。ここでは10kΩと100kΩでやってみた。

 高安定で、ジッターの少ないPLL発振回路とするには電圧可変範囲はなるべく狭くすべきだ。 しかし経年変化が大きいとやがてロックレンジを外れてしまいPLLはロックできなくなるかもしれない。 頃合いと言うものがあるので、目的や用途、更には校正(調整)の周期なども考慮に入れて最適化したい。 また、あまりVCO感度が低いとPLL回路に入れた際にループゲイン不足になるので旨くない。 C/Nを良くしようとすれば、どうもその傾向が強くなってループフィルタの設計が難しくなる感じである。

                 ☆ ☆ ☆

 このBlogテーマ、既にルビジウム原子周波数基準器(Rb-OSC)が普及してきたので時代遅れかも知れない。 アンテナと言うヒモ付きではない方が何かと便利だし常時運転を要するGPS-DOはいま一つに違いない。 しかしGPS衛星を受信している限り常に周波数校正され続けていて時間経過に伴う精度低下が生じないと言うのは非常に大きなメリットだ。 従ってRb-OSCがあっても比較校正用としての有用性はまだまだ高いのでは無いかと考えている。 GPS-DOを「自家の」一次基準としてRb-OSCを校正し、それを二次基準として機動的に用いる行き方である。利便性を持たせつつ周波数(時間)の高い精度や安定度が維持できるだろう。

 なお、GPS周波数基準器の製作の具体例については「トランジスタ技術誌2016年2月号」P99〜P125の参照を。新世代のGPS受信機の入手から基準器の製作、製作後の周波数精度の評価まで詳細に解説した。(2016.1.10)

参考:新世代のGPS受信機:NEO-6Mとそれを使ったGPS周波数基準器の製作に関するBlog内関連情報はこちら(←リンク)から。

 GPS受信機の復習と新しい世代のOCXOにまつわる話題、例によって昼の憩いになっただろうか? 暇つぶしとは言え先端的なModeでOn the Airを目指すHAM局に何かの一助にでもなってくれれば幸いである。優れた周波数精度と高い安定度はデジタル通信時代のニーズなのだから。

 2002年8月に運転開始以来、既に10年以上経過したがhp製のGPS受信機:Z3801Aとそれを活かす自作の周波数基準システムは健在である。 今のところ代替システムの必要性は低いのだが、良さそうなOCXOが手に入ったことで技術的な興味が湧いて再び検討してみた。de JA9TTT/1

つづく)←リンク

2013年11月15日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A with FT-747

【FT-747でJT-65Aにオンエア】
FT-747
 写真は1988年5月の雑誌から八重洲無線の新型HF帯トランシーバ登場の広告である。 FT-747は型番から言えばベストセラーのFT-757シリーズよりも前のイメージがある。しかしだいぶ後になってからの登場だった。それでも既に四半世紀前の無線機になってしまった。(参考:FT-757GX/SXは1983年秋に登場)

 FT-747は安いのが取り柄のようなトランシーバであった。 その当時のHF帯オールバンド・オールモード機は15〜25万円くらいである。だから少し高めのカートランシーバなみの89,800円で登場したのは驚きだった。 安くて「使える」マシンとして海外では好評で特に実利主義の米国では大いにもてはやされたと言う。 しかしJAのHAMは高級指向ゆえ売れたと言う話しはあまり聞かなかった。使い易く合理的で悪くないリグだと思う人は多いはずなんだが、安物を使ってると単なるビンボーHAMに見られそうだからね。hi hi

 全バンドRFアンプ無しでいきなりミキサーと言う思い切った設計であった。従って多信号特性は悪くない。感度も悪くないのは立派なものだと思う。 無闇に小型化していないので操作性は良好で、スピーカーも前面にあるなど車載には悪くないデザインだった。クリック付きダイヤル(25Hz Step)も車載用には扱い易い。 プラスチック・ボディー(裏面に金属メッキ)はチャチいが軽量なのでもっぱら車に載せていた。 その後、無線機の車載はやめたので遊休化してしまう。意外な名機、悪くないRigなので固定でサブ機にと思ったこともあったのだが・・・。

参考:FT-747(改)はFT-80Cの名称で業務機としてアジア・アフリカの発展途上国を中心に多数輸出され辺地との通信に活躍していたそうである。チープとは言え、それだけの実力を持ったリグだった訳だ。

                    ☆

 JT-65Aの性質上、周波数が不安定なリグは困るが、そこそこの安定度なら使い物になりそうに思う。そこでFT-747でどうか検討してみることにした。以下そのレポートである。

 JT-65Aは電波形式:F1Dが許容された範囲内ならHAMバンドのどこでオンエアしても良い。しかし実際には決まった周波数でのオンエアが殆どだ。 例えば14076や21076kHzと言った、XX076kHzと言う周波数が多い。ほとんど固定した周波数に出ていると言うことになる。 使うモードもUSBに固定であり周波数安定度さえ及第点ならどんなSSB機でも十分行けるだろう。これは他の同世代トランシーバ全般に当てはまると思う。オンエアするためのハードルはけして高くない。

FT-747対応のAFSKインターフェース
 一応、前のBlog(←リンク)からの続きである。 先に作ったインターフェースを八重洲無線:FT-747用に改造してみた。 送受の信号系はコネクタの付け替え程度で良く前のBlogとおなじで良かった。 しかしスタンバイ系はそのままでは旨くなかった。 IC-756よりもPTT回路の電流が大きいらしくフォトカプラ直結ではドライブしきれないのだ。中途半端なスタンバイ状態になってしまった。

 そこで2SC1815(Y)を追加してダーリントン接続で対処した。 これは最初からこうしておけば良かったようだ。 ダーリントンにすれば伝達効率の良くないフォトカプラでも使えるようになる。 IC-756で使う際にも支障はないのでいまからでも改造を推奨しておく。(今どき滅多にないと思うが、暗電流の大きなフォトカプラでは2SC1815のB-E間に数10〜100kΩを入れてバイパスする必要があるかも知れない。受信状態に戻らないなら対策を)

 受信信号はFT-747の背面パネルにあるAF OUT端子からもらう。この部分の回路変更はいらない。無線機側のコネクタを変更すればOKだ。VR1でレベル調整を行なってパソコンのマイク入力端子(ピンク)へ導けば良い。

 送信時、パソコンのイヤフォン端子(黄緑)から出るトーン信号はFT-747の正面パネル面にあるマイク端子へ加える。この部分も回路変更は不要だがコネクタの付け替えを必要とする。 FT-747にはAFSK用の低周波入力端子がないからだ。 8ピン・マイクコネクタの8番ピンにAFSK信号でGND側は同コネクタの7番ピンだ。 運用に当たってはインターフェース基板上のVR2をやや絞り気味にしておきFT-747のマイクゲインつまみでパワー 加減すれば良い。

 以上、スタンバイ系の小改造が必要だったが、他は同じ回路で良いので作業は簡単に済んだ。 八重洲無線の他の機種でも概ね同じ接続でJT-65Aに対応できることを確認済みだ。FT-757/GXなどをお持ちならお試しを。


キャリヤ周波数が飛ぶ
 JT-65Aモードを運用するにあたって周波数精度は良好に保ちたい。そこそこ古いリグなので経年変化も考えられるからテストに先立ち周波数校正を行なっておいた。 少なくとも誤差1ppm以内の精度を持つ良く校正されている周波数カウンタを用いる。

 大まかに言って調整は2箇所である。 FT-747は安価なリグなのでいわゆる「一発周波数管理」になっていない。 PLLで構成された局発系はすべて一つの基準水晶で周波数が決まるようにできているが、それとはまったく独立にキャリヤ発振器があるからだ。

参考:実際にはもう一つ38.640MHzの水晶発振器がある。ただし、この発振器の周波数ずれはPLL回路の内部で打ち消すように動作する。従って精度と安定度に影響は及ばない。そのためこの発振器は周波数調整の必要も無いため無調整になっている。甚だしくずれていないか周波数の確認をするだけで良い。

 写真のキャリヤ発振器の周波数は良く合わせないと精度が出ないのである。 本来であればSSBフィルタの特性に合わせたキャリヤポイントに調整するべきだろう。 しかし送受の周波数精度を確保するためにはフィルタ特性に合わせるのではダメで、規定の周波数にピッタリ合わせざるをえない。 キャリヤ周波数の誤差を吸収する術がないのだ。このあたりは廉価版のリグなのでやむを得ないだろう。 キャリヤポイントはSSB用としては最適化されないことになる。但しJT-65Aの要求を満たす周波特性が得られるなら何ら支障はない。

                   ☆ ☆

 少しテストしたら実用にできる周波数安定度はあるようだ。 ところが、観察していたらUSBモードでキャリヤ発振器の「周波数飛び」が発生した。 突然1kHzくらい高い周波数へ跳躍してしまうのだ。 無視できない変動なのですぐに再調整したが少しするとまた周波数が飛んでしまう。 暫く使っていなかったリグに見られる症状なのでやがて落ち着くかと思ったが数回やっても良くならない。 どうやら写真の赤色トリマ・コンデンサが劣化したようだ。(容量は20pFのもの)

外したセラミック・トリマコンデンサ
 見た目は悪そうには見えないが・・・。

 セラミック板を調整ネジで被う構造のため、内部は見えないがローターのセラミック板にクラックがあるのかも知れない。 回してみて少し緩い感じもする。 頻繁に回したことはないので回し過ぎでユルユルに劣化させたとは考え難い。

 トリマ・コンデンサや半固定抵抗器のような可動電子部品の故障率は一桁も高いことが知られている。 この形式のトリマ・コンデンサ固有の問題と言うよりも一般的な故障なのであろう。

外したセラミック・トリマの裏面
 トリマ・コンデンサの裏面である。

 裏面中央のカシメが甘くなったのかも知れない。 メッキの酸化など特に見られないので環境原因で劣化したとは考え難いようだ。

 しばらく車載で使っていたので振動による可動部品の劣化が進行した可能性はあるかもしれない。 ただ、こうした軽量部品では稀なようにも思うのだが・・・。

 他所にも同じ形式のトリマ・コンデンサが使ってあるが、どれも回転トルクが小さくて心細い印象なので劣化し易かった部品かも知れない。そのつもりで今後も注意した方が良さそうだ。

代替品で交換
 同じ部品があれば修理も簡単だ。

 しかし側面から調整するタイプのセラミック・トリマは持ち合わせがなかった。ここは工夫で乗り切ることにする。

 メーカーの修理では許されないが、自家用の修理なら支障ないし特に信頼性が低いとも思えないので悪くなかろうと思う。 太めのメッキ線で支えたので調整時にグラつくこともなかった。一般的な形状のトリマ・コンデンサを横から調整できるように装着したわけだ。やってみたら具合は良かったので交換成功である。

ジャストの調整
 適度なトルクがあるので、こんどはスムースに調整できた。ずっとこれだけの桁が維持できる訳ではないが。(笑)

 USBのキャリヤ周波数はできるだけ8.2165MHzジャストに合わせるべきだ。測定は局発基板からメイン基板へ行く部分で行なう。 そのうえでPLL回路の 基準発振である5.4MHzを調整して初めて正確な周波数でオンエアできるようになる。

 5.4MHzの基準発振の方はUSBモードで15MHzのWWVを受信しながらゼロビートになるよう数Hz以内に合わせ込んでおいた。 周波数カウンタで旨く計測できるポイントがないからだ。発振回路にカウンタを直接接続すればそれだけで周波数が変わってしまう。

 なお、5.4MHzの基準も普通の発振回路であってTCXOではないから長く精度維持はできない。それほど不安定でもなかったので時おり校正すれば大丈夫そうである。本機には未実装だが5.4MHzのTCXOオプションは存在していた。もし手持ちがあるなら交換しておくと安心だ。 総合の周波数誤差は±50Hzくらいまでに維持することを目標にしたいと思っている。

 交換したトリマ・コンデンサはスムースでセッティングの安定性も良好だ。 写真の様にきちんと合わせることができるようになった。もちろん周波数飛びも解消した。これで安心してJT-65Aモードでオンエアできる。

FT-747でJT-65A
 FT-747はこの種のHF機としては受信時の消費電流が少ないので連続ワッチには好適だ。

 高級な機能は何もないがJT-65Aに使うのなら十分使えそうだ。 しばらくこの状態でワッチしてみたい。 JT-65AにはAGCの時定数がやや長い感じもするので様子を見て改造したいと思っている。

 インターフェースの接続はDINコネクタ一つと言う訳には行かないが、写真のマイクコネクタのほかリヤパネルのAF OUT端子とPTT端子への三カ所の接続だけだ。どれも一般的なコネクタなので入手も容易である。 8ピンのマイクコネクタならどこのハムショップでも置いてあるだろう。RCAピンジャックもオーディオでポピュラーなのでコネクタ付きケーブルが100均でも手に入る。

 受信調整は前のBlogと同じようにインターフェース基板の半固定抵抗:VR1で行なえば良い。IC-756よりやや小さめの出力だがVRの可変範囲にあるのでまったく問題ない。
 送信時のパワーは主にパネル右下のマイクゲインで加減する。基板上のVR2は1/3くらいの位置に固定しておけば良かった。 パソコンの音量にもよるので適度に加減して使い易く設定しよう。

 チャネルメモリにはJT-65AやWSPRの周波数などをインプットしてワンタッチ切換えで 各バンドがワッチできるよう備えておいた。 暫く使って性能に不満がなければJT-65Aの専用機にしようと思っている。

受信テスト
 ウオームアップが済んだので、あらためてワッチの仲間入りしてみた。

 あいにく時間帯が悪いのか、はたまたコンデイションが良くないのか、余り聞こえ(見え)なかった。 それでも取りあえずレポーターの仲間に入れた。

 DF周波数もだいたい平均的のようなので周波数の絶対精度も概ね目標範囲に入っているのではないかと思う。 S/Nのレポートもまずまずのようで交信に実用できそうだ。 無信号状態でウオーターフォール・ディスプレーを見ていると受信機低周波のフラットネスはいま一つのように感じられる。数dBのうねりがあるようで、クリスタルフィルタの特性が見えているのかも知れない。 しかしデコードは正常な範囲にあるようなので支障無さそうだ。 これで遊休化していたFT-747に活路が見出せそうである。

                ☆ ☆ ☆

 JT-65Aに古いトランシーバが使えるのか興味もあってテストを始めた。 途中周波数飛びと言うハプニングはあったが結果から言えば十分行けそうである。 故障が見つかれば修理は必須だとして、あとはそれなりのメンテナンス(周波数校正)だけで使える。 最新型リグは持ってないけれど・・・と諦めずとも十分チャンスはある。JT-65Aに挑戦してはどうだろうか。 TS-520やFT-101だってシンセサイザ式外部VFOの追加で行けそうな気がして来た。(笑)

 トランシーバの信号系がPLL化されたのはずいぶん前のことになる。 最初は自励発振のVFOも含んでいたが、やがて完全シンセサイザ式になった。 そうなれば送受周波数もおおむね水晶発振器の安定度と言うことになる。 そうなった時代のリグなら十分使える。 もちろん運用の便を考えるとなるべく読取り精度は上げておきたい。 周波数校正をしっかり行なってやれば大丈夫だろう。

 しかし昨今のリグのように周波数管理が一カ所では済まないのはちょっと面倒である。そこで外から与えたらと言うことにもなるのだが、OCXOなりを基準に必要な周波数を作ってやれば十分可能だ。それほど難しいことではない。さらにRb-OSCやGPS-DOに同期すれば周波数精度、安定度ともに抜群になる。 試みに5.400MHzを外部から与えたところ大幅に改善されるのでまずはそのあたりからだろうか? 果してそう言う情報のニーズはあるものやら・・・。 de JA9TTT/1

(おわり)

追記;
今月のCQ誌(2013年11月号)にもJT-65の記事が掲載されている。専用ソフトウエア・JT-65-HFを使った運用を主体とする内容だ。ソフトの扱いや交信手順など不安があるお方は参照されると良いだろう。このモード、これから流行ると思うので早速スタートされてはどうだろうか?
 無線局の指定事項に変更がない場合、即ち自局に免許されている一括コード(例えば3HAとか3VAのような)にF1Dモードが含まれていれば、付加装置に関する変更届を「遅滞なく」提出(送付または電子届け)するだけで良い。もちろん運用をしたいバンドごとに確認を。TSSの保証認定はいらないので費用は発生しない。(・・・と言う解釈で良かったハズ・笑)

2013年11月1日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 2

【JT-65Aでオンエア Part 2:製作・運用編】

完成したインターフェース
 前回(←リンク)の続きである。 JT65でオンエアするためには、パソコンと無線機の仲立ちをする「インターフェース」が必要だ。 写真は完成したインターフェースのテスト風景である。

 JT65用のインターフェースとは言っても、調べてみたら何も目新しいものではないようだ。 要するに昔からあったRTTY用などと同じAFSK形式のインターフェスにすぎない。

 パソコン側へはトランシーバ(受信機)から低周波出力を与える。 昔はTUでデジタル化してパソコンに送った。しかしいまの常識ではパソコンの処理能力が高いから受信機から低周波のまま与えればよい。あとはパソコン側でソフトウエア的に処理してしまうのだ。
 送信も同じである。 昔は周波数シフトキーヤーをON/OFFしたりAFトーン周波数を切り替えていたが、いまは直接トーンを作り出す。 もちろん、AFSKの問題点はさんざん議論があった通りであって、奇麗なトーンを送信機に与えたうえで、オーバードライブにならぬような注意を要する。このあたりは昔と何も変わっていない。
そのほか必要な接続は無線機のスタンバイ・コントロール(PTTの制御)くらいのものだ。(面倒ならVOXを使うと言う横着な手もある・笑)

                    ☆

 JT65(A)などと聞き慣れぬ通信モード名を耳にすると難しそうに感じるが、要するにそう言うことなのでインターフェースの設計は難しくない。 様子がわかった所でさっそく設計・製作してみよう。 設計〜部品集め〜テストオンエアまでがこのBlogの目標だ。

参考:ICOMのHF帯トランシーバ用に作ったが他社機用に容易に変更しうる。今はやりのFT-8にもそのまま使える。
注意:JT65AはHF帯用のJT65モードである。電波形式で言えば「F1D」である。

JT65用のインターフェース回路
 JT65と言うよりも、AFSKでトランシーバとPCを繋ぐためのインターフェースと言える。パソコン側からスタンバイコントロールも行なう。 従ってRTTY、PACKETなどを始めとする同種のインターフェースを要するデジタル系のモード全般に共通して使えるだろう。当然だがFT-8にも最適だ。

 設計に当たっては使用する無線機とパソコンの仕様を調査した。 まず無線機側だがマイク端子とスピーカー端子に接続することもできる。それが一番簡単な方法だが、SSBなど音声でオンエアする時にマイクコネクタの付け替えが要る。また受信も低周波のVRを通った後だと毎回レベル合わせをしなくてはならない。

 無線機に専用のインターフェース端子がないならやむを得ないが、いまのRigならたいてい通信用インターフェース端子が付いているはずだ。 そのインターフェースについて必要な信号レベルの調査を行なった。 ここではICOMのIC-756proを想定し直結できるように設計した。 仕様書による確認と、受信しながら実際の信号レベルを確認している。

 PC側はマイク端子とスピーカー端子、そしてシリアル通信ポートへの接続が必要なので、それぞれ必要条件を確認しておく。

 ICOMのリグなら統一性があるようなので他機でも同じで行けるだろう。 それにVRでレベル調整が可能なようにしておいたので多少の違いは吸収できる。 内容としては典型的な(古典的な?)AFSKのインターフェースである。

このインターフェース回路の使用実績については、Blogの文末を参照ください。

追記:【回路図改訂:V1.0.1】フォトカプラの後にトランジスタ及び抵抗(各1本)追加。(理由)PTT回路のドライブ能力向上のため。(2013.11.14)+【回路図改訂:V1.0.1a】回路図記入漏れ修正(2014.12.09)

部品集め
 揃わなければ秋葉原で調達するか通販でもと思っていた。 しかし探したら手持ちで全部揃った。 それだけ部品やジャンクを抱え込んでいるということで、こうしたチャンスに積極的に消化しないと勿体ない。 忙しいとついついお店で新たに買ってしまうので、面倒くさがらずに探す努力が必要だ。(自戒を込めて・笑)

 なお、初期の構想段階で集めた部品なので、使わなくなったものや、写真以外で追加になった部品もある。 上記の回路図通りではないので悪しからず。 但しコネクタやトランスと言った重要部品に変更はない。 実際に部分回路をバラックで組立ててテストし、最適化した上で作って行った。そうして纏めたのが上記の回路と言う訳だ。

低周波トランス
 無線機側とパソコン側はなるべくならGND系を分離した方が良い。 ノイズ源になり易いデジタル機器を、μVオーダーの信号を扱う通信機に繋ごうと言うのだから、なるべくアイソレーションしておくべきだ。

 こうした低周波トランスを介して受信の低周波信号をPCのマイク端子に与え、PCのスピーカー出力からの信号もトランスを介して無線機の低周波入力端子へ導く。

 使用したトランスはずいぶん前に入手したもので貰った物か何か部品ジャンクに入っていたのか記憶は定かでない。 低周波用の一般的なものであって古い電話モデムあたりで使っていた600Ω:600Ωのトランスのようだ。 なお代替としては山水のST-23が良いと思う。回路変更無しでそのまま使える。この製作で最も高価な部品だろう。(500円くらい)

 こうした低周波トランスはバンド・パス・フィルタ(BPF)的な効果も期待できる。不要な極低域をカットする働きがあるからだ。 ノイズ流入防止のアイソレーション用だけでなく復調信号のS/Nを改善する効果も見込める。

フォト・カプラ
 パソコンからリグのスタンバイをコントロールする必要がある。 単なるON/OFF信号で無線機のPTTを操作することになる。 パソコン側からシリアルポートに出ている通信制御信号を使って送受切換えを行なう。

 この信号もGNDを分離する必要がある。アナログ信号系は上の写真のトランスで分離したが、ON/OFF信号は直流的な信号なのでトランスは使えないからフォト・カプラを使った。高速切換えの必要は無いから機械的なリレーでも良いがフォト・カプラが簡単だ。

 東芝製のTLP-521-1と言う一般的なものを使った。同等に使える代替品は沢山あるが、なるべく伝達効率の高いものが良い。 Photo-MOS Relayでも良いが、PTT端子は極性が決まっているから出力側がトランジスタの普通のフォト・カプラで十分だ。(単価数10円)

追記:PTTドライブ回路の強化のためNPNトランジスタを追加しダーリントン回路に変更。フォトカプラはごく一般的なものなら何でも可能。回路図V1.0.1に変更(2013.11.14)

ケーブル類
 意外に面倒なのが接続ケーブル類である。 D-SUB 9pinのケーブルはHard OFFなどでジャンクケーブルを探すと安価だと思う。 そうしたものを途中で切って使えば十分だ。 ここでは以前何かに使った余りの半分があったのでそれを使った。

 PC側のマイクロフォンとスピーカ端子は3mmのステレオ・プラグでごく一般的なものだ。これもジャンクから容易に調達できそうだ。100均でイヤフォン・マイクを買って流用すればケーブル付きがコネクタ単独で買うよりリーズナブルに手に入る。

 その辺で売っていないのがRig側のDINコネクタだ。(写真で黒いもの) こうした大柄のDINコネクタは昨今あまり使われていない。 秋葉原でも限られたお店でしか扱っていない。どうしても入手難なら無線機メーカーに確認するのも良いだろう。
たまたま買い置きがあったので使用した。昔似たようなインターフェースを作った際の余りだろう。 秋葉原では千石電商の電子楽器パーツを扱うお店(2号店の脇階段を上った2F)に品揃えが豊富だった。あれば150円程度の安価なコネクタだ。通販で調達するのも良いと思う。

 インターフェース基板からDINコネクタまで、送信用の低周波信号が通るラインはシールド線を使っている。シールド線1本とバラ線が4本入った一括ケーブルを使った。カメラ・ケーブルとか言う名称だったと思う。秋葉原ならオヤイデ電線に置いてある。

ケース
 金属製のケースでも良いが、どうせアイソレーションするのだからプラスチックの箱にした。 金属の箱だとどちら側のGNDに箱を落とすのか迷うがプラ箱ならそうした悩みは生じない。(笑)

 手持ちを使ったがポリカーボネート樹脂製のようだ。 スチロール製より割れ難くくて扱い易い。 100均のおかず入れでも十分なので基板は何かに収納しておくべきだ。

 JT-65に限って言えばローパワー運用なので回り込みトラブルは考え難い。 RTTYなどリニヤ付きハイパワーでやりたいお方は各ラインにRFフィルタを入れ金属ケースに収納する方が良いかも知れない。 もっともその金属ケースにRFが乗るという笑えないトラブルもあるのだが・・・。

インターフェース基板
 部品数が少ないので配線はごく簡単だ。 手間がかかったのはトランスの部分で、ピン足のピッチが2.54mm刻みではないのだ。 やむなく穴を追加してそれらしく載せておいた。

 代替に推奨した山水トランス:ST-23はリード線タイプなのでそうした問題はない。 他の部品は見ての通りなので取り立てて説明は要しないだろう。

 なお、VR類は全て半固定VRにしてしまった。 一旦調整したら滅多にいじらないと思うからだ。 半固定VRでまず支障はないと思う。 (JT65以外のモードでは調整を要するかもしれない。万能インターフェースにするならツマミ付きのVRを使うのも良いと思う)

インターフェース基板の裏側
 例によってお見せするようなものでは無いが基板の裏側である。 絶縁耐圧は要しないが、PCと無線機をアイソレーション(絶縁分離)した意味が失われぬように、それぞれのGND系は切り離すことをお忘れなく。

 トランスは巻数比が1:1で、インピーダンス比も同じである。 信号に方向性はないと思うが送受で逆方向に使い同じ信号の流れになるようにしてある。(たぶん、あまり意味はない)

 秋月電子通商で売っている小型ユニバーサル基板に余裕をもって全部品を載せることができる。 配線は交叉していないのでプリントパターン化も容易だ。

完成
 箱に入れて完成させる。 事前に要素実験は済んでいるので、配線間違えさなければ組込んでただちに動くだろう。

 ケースに厚みがなかったので高さ方向がすこし窮屈であった。 基板裏面が下ケースに密着する構造だが絶縁物なので支障はない。

 なおインピーダンスの低い回路なのでプラケースだからと言ってハムなどの誘導は問題ないと思う。 どうしてもダメなら銅箔テープなどを貼付けてGNDに落とせば良い。 実際に使ってみたが特に支障はなかった。 送信電波も別のリグでモニタしてOKだった。 ケースの上蓋には半固定VRの調整穴がある。しかし調整後に蓋をすれば良いので穴は要らなかったのかも知れない。

通電テストと調整
 ケーブル配線に間違いがないか良く確認してから無線機とPCを接続する。 写真のように、パソコンを起動するとLEDが点灯すればスタンバイ系統の配線は活きている。

 このLEDは動作モニタを兼ねており、送信時に消灯するのが正常な動きだ。 もし旨く動作しないならcomポートの番号を確かめ、JT65-HFの設定を再確認する。ポート番号が合っていて、スタンバイにRTS信号を使う設定になっているだろうか? USB-シリアル変換ケーブルを使う場合も、仮想的なcomポートと考えれば方法はまったく同じである。

 まずは、受信調整から行なう。ソフトウエア:JT65-HFを起動し画面左上にあるレベルモニタのバーグラフに注目する。(Audio Input Levelと言うところ) トランシーバ(受信機)を何も信号が聞こえずバックグラウンドの「シャー」っと言うノイズだけが入感する周波数に合わせる。 基板上の受信レベル調整用のVR1を回し、バーグラフ右の数字がおおむね0dBになるように調整する。 あとはJT-65で各局が運用する周波数を受信しながら様子を見て加減すれば良い。 いつも誰かが出ていそうな周波数としては、14,076kHzや21,076kHz(いずれもUSBモード)が良いだろう。昨今は28MHz帯のコンデイションが良いらしく、28,076kHzも良く聞こえて(見えて)いるようだ。

 ちなみに、このBlogを書いた時点ではJA局はバンド使用区分の関係で7076kHzにオンエアはできなかった。その後の法改正により2016年現在では海外局との交信に限ってオンエア可能になっている。(JA局相手は7041kHz)また、10MHz帯は10138kHzもしくは10139kHzが使われている。どちらかと言えば10138kHzの方が多いように感じる。10138kHz/USBはWSPR(ビーコン局)と一部周波数が重なるので運用には注意が必要。 なお、ワッチすると1838kHzと3576kHzにもJT-65Aのオンエアが見えるが、JA局はオフバンドになるのでいっさい送信は出来ない。実際に捕まった局も出ている。注意されたし。(追記2016.2.24)

 続いて送信調整である。いきなりフルパワー送信にならぬように、まずはVR2を絞っておく。 送信機を終端型パワー計もしくは通過型電力計+ダミーロードに接続する。 何でも良いので、JT65-HFを適当な送信モードにする。 マウスのポインタを合わせCall CQボタンを押してからEnable TXを押すのが手っ取り早いだろう。偶数分か奇数分ちょうどになれば送信開始だ。 送信が始まったらパワー計を見ながら送信レベル調整のVR2を回してパワーを加減する。(パソコン側でスピーカの音量調整ができるので併用すると良い)
 最初は出力5〜10Wくらいが良いのではないかと思う。 奇麗な波を出すためQRP機の場合も最大出力の50%くらいまでで使うのが適当だ。 別途受信機があればトーンにノイズ混入や歪みによる濁りがないか聞いて判断する。 スペアナがあれば見ても良いがモニタで聞いておけば十分かと思う。 なんでも高級な手段が良い訳にはあらず。それにその辺にあるスペアナでは見ても良くわからんだろうし。

                    −・・・−

参考:このインターフェースはWSPR(ウイスパー:微弱電波伝搬報告プログラム)用ソフトウエアにも対応しておりそのまま使える。(専用ソフト:WSPR 2のダウンロードは→こちら) 但し、使用に当たっては受信と送信のレベルを再調整した方が良い。また、送信パワーは一般に5W以下なので出し過ぎぬようパワー計で確認しておくべきだ。初期設定の際にスタンバイはcomポートのRTSで行うようにセットする。(JT65-HFと同じ)WSPRのアクティビティに関してはWSPRnet.org(←リンク)を参照されたい。

オンエア・テスト
テスト電波を出してみよう。

 インターフェースができたなら、早速オンエアしてみたいのが人情だ。 しかし、諸先輩方の「注意」を良く読まず、みっともないテスト電波をさんざ垂れ流したあげく誰の応答もない初心者を目にする。 コールサインからさっするに相当のOMさん(たぶんご年配)と思うが、ここは初心に返ってきちんと注意書きを読んだ方が良い。 いい大人が恥を垂れ流すよりもよほど良いはずだ。 はやる気持ちを抑えてじっくり準備してほしい。

PCの時計はあってますか?
 「何を馬鹿なことを!」と言うなかれ。 初めてのオンエアでQSOに至らない原因の最たるはパソコンの時計の狂いにある。 説明書には±0.5秒以内と書かれているが、±0.2秒くらいに合わせておきたいものだ。 それはオンエアしている各局も幾分ずれているからだ。 これが良く合っていないと、いくら強い電波を出そうが誰からも応答は返ってこない。コールサイン付きの恥ずかしい波をお空に垂れ流すばかりだ。 だいたい、そんなにパワーは要らないのがJT-65HFなので、応答が無いからと言って無闇にパワーを出せば皆にすぐわかってしまう。おつむの程度が知れて恥の上塗りと言うものだ。(笑)
時計は手動で合わせても良いが、たぶん30分も精度が維持できれば良い方だ。 使っているPCが常時インターネットに接続されている環境にあるなら、自動時計合わせのアプリをインストールしておくのが一番良い。
・・・と言うよりも、それなしには安定したQSOは望めない。 ネット経由で時計合わせするアプリは沢山あるが、私は「NetTime」というのを使っている。インストールと設定の手順はリンク先にあるので、ダウンロードしたら必ず良く設定しておくこと。セッティングが済んだら電波時計と照合しておくのが良い。 これがオンエアの第1歩だ。

オンエアテストをする.
 14076kHz(あるいは21076kHzなど資格に応じて)を少なくとも5分以上ワッチする。 その上で、だれもオンエアしていなそうなDF周波数にセットし「TEST JA9TTT」とか、適当な文章を入れて送信してみる。なお、オンエア局からは150Hz以上離れるべきだ。いきなりCQでも良いが呼ばれた際の心の準備が必要だ。hi hi

 同時にモニタ受信すると良い。スムースに送信シーケンスが進めばインターフェースは順調だ。 まあこの画面の所まで辿り着いているなら、ほとんど問題はないだろう。

 実際にオンエアしながら受信時にはS/N比が良い状態で復調できるようボリウムを微調整し、常に送信時のパワーは抑制気味で行けば良いと思う。 100Wの無線機を100Wで使うのは連続送信による過負荷もあるが歪みも問題があるので感心しない。(むしろ禁止!) 100W機でもせいぜいmax20〜30Wでオンエアするのが合理的なようである。 ここではテストなので迷惑にならぬよう数Wに絞って行なってみた。 JT65ではなるべくローパワーでの運用が推奨されるとのこと。 なお、ハイパワー局でも常用は最大でも10Wが推奨されるパワーとのこと。それ以上の20~30Wは非常用との位置付けらしい。 くれぐれも必要最低限のパワーで!

QRP局は!
これらのことから考えてQRP局は大きくても1Wまでが暗黙の了解らしい。 他のモードのように5Wも出したらもはやQRP局とは言えない模様だ。 数mW〜数100mWでも想像以上に飛ぶこともあるようなので、相手のGLからマイル/Wを計算して競うのも興味深いと思う。

送信パワーの調整方法
 きれいな波を出すために、以下は必ず守る必要がある。(1)送信機(トランシーバ)のパワー調整ツマミは最大出力の位置にしておく。(2)マイクゲイン、もしくはインターフェース上のボリウムで運用するパワーまでしぼる。具体的には送信パワーが20〜30Wになるよう加減する。 最大出力10Wのリグなら半分の5W程度に、50Wのリグでは20Wくらいになるよう、「マイクゲイン」のツマミでパワーを加減する。
送信電力の加減はリグの「パワー調整つまみ」で行うのではないことに十分注意を!! (パワー調整ツマミでしぼるときれいな電波が出ないので、相手局に復調されにくくなるばかりか、同時にオンエアしている局の迷惑にもなる。しかもPoorなオペレータなのがコールサイン付きで皆に知れわたってしまう)

受信レポート
 さっそくテスト電波が各局に聞こえたか確認してみよう。このレポートサイトのURLは→こちら(2014年10月現在停止中)。 Topページが開いたらバンドごとのレポートを開くと左図のようになる。レポートは1分ごとにその時あったレポートに従いアップデートされる。自分でも受信レポートしたい場合はJT65-HFの画面右下にある「Enable RB」にチェックを入れておく。(レポートするには常時ネット接続が必要)

 どうやらJA局が殆どだが、ZLで聞こえた局もあったようだ。きっと耳の良い局なのだろう。 とんでもなく周波数がずれているとか、歪んでいるなど酷い波ではなかった模様だ。もしそうならレポートも帰ってこない。  コールサインが載ったので取りあえず一安心と言った感じだ。 運用形態がローパワーだからまず心配は無いが、アンテナ系のVSWRが高かったりすればRFの回り込みもあり得る。要注意だ。

 しばらくは受信をしながら復調S/Nなど見ておこう。DX局を受信した際のJA各局との数値比較が参考になる。 しばらくワッチしていると、JA4とJA1エリアに常に良いS/Nでレポートされるお方がおられた。ノイズのない環境で良いアンテナなのかも知れないが、ぜひとも良い耳の目標にしたいものだ。 送信は運用しながら適度なパワーに調整しよう。 パワーは受信とのバランスも関係するし、その局のアンテナやノイズ環境などの要素もある。 おのおの適した設定を見つけて行く必要がありそうだ。

参考:2014年10月1日現在、リバース・ビーコン:RBは停止中である。様子を見ているが、短期的な停止ではない模様である。RBはオンエア・テストに便利なので停止はとても残念である。PSKR(←リンク)の方は大丈夫なのでそちらで飛びや聞こえ方を確認するのも良い。)

                 ☆ ☆ ☆

 いまは便利な時代である。こうしたインターフェースも既製品が売っている。リグによっては、はなからデータ通信用にUSB-IFまで備えていて外付けのインターフェースなど不要なものさえある。 特にカムバック組のHAMはそうした最新リグをお持ちだと思う。 ぜひニューモードに挑戦をお勧めしたい。 SSBでオンエアするのとはまた別の面白さもある。どのモードでオンエアするにせよ、レポート交換とお天気紹介のワンパターンQSOではマンネリ化はすぐそこだ。 JT65のQSOも究極のラバースタンプ形式なのだが、レトロなモードのリバイバルより楽しむ余地はたっぷりありそうに感じる。

# 何か少しでも新しい要素を取り入れるのが趣味を長続きさせるコツだと思う。

                   ☆

 USBケーブル一本でOKな最新リグは持ち合わせていないので簡単なインターフェースを作ってみた。 流石に周波数の安定度と読取り精度を要するのでアナログなリグには難しさがある。しかしそれ以外のDDSやPLLによるVFO機ならどれでも大丈夫だ。 各リグに合うようすこし回路を変更すれば同じに行ける。 見ればわかるようにAFSKのインターフェースなど、そんなものだ。 ではJT65でお会いしましょう。 de JA9TTT/1

参考:このインターフェースはJT65だけでなく、現在主流になっているFT-8でも十分な威力を発揮します。多数のDX局との交信に貢献してくれました。(追記:2021.04.30)

(おわり)
(追記改訂:2014.08.27)

参考:
八重洲無線FT-747/757でJT-65を運用する続編は:==>こちら(リンク)
八重洲無線FT-817NDでJT65を運用する続編は:
この続編ではUSBインターフェースに直結形式で製作している。==>こちら(リンク)

                    

参考:このインターフェース回路の実績について
 14.076MHzあるいは21.076MHzを常時受信し、リーバースビーコン(RB)のサイトへ受信レポートを送る形式で受信実績を評価してみた。(ごく稀に18.102MHzも使用した)

 レポートサイトへ受信レポートの送信を開始したのは2013年10月15日である。開始から272日経過した、2014年8月13日に累計で100万局の受信レポートを送ることができた。(左図はその時の画面キャプチャ)従って、約3,676レポート/日・・・1時間当たり153レポート以上・・・のペースであった。(備考:現在リバースビーコンのWebサイトは休止している)

 きわめて優秀などと言うつもりはないが、他のレポーターとの比較ではまずまずの成績と言えるようである。もちろん、インターフェースの性能だけでなく各局のロケーションやアンテナ、さらにはお空のコンディションや周辺のノイズ環境など様々な要素が受信成績を左右するだろう。

 しかし、たとえ良い環境やリグに恵まれていてもインターフェースの性能が悪いと復調能力は劣ってしまう。

 ここで作ったインターフェースは、より良い環境や良い設備を持った局の期待にも十分応えてくれるだけの性能を持っていると考えて良さそうだ。 使用実績から見て、お勧めできるインターフェース回路だと思う。(2014.8.14)

2013年10月15日火曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 1

【JT65Aでオンエア・様子見編】
最初はWSJT9で
 SSBやCWと言った、人間と無線機、そしてマイクと電鍵があればOKと言うモードしかオンエアしない訳ではない。ただ、昨今はそちらに偏りがちだったかも。

 JT65と言うパソコンと一緒に遊ぶモードは面白そうだ。JT65は微弱信号通信方式とのこと。 定番のPC用ソフトが幾つかあるようだ。 まずは「WSJT9」から試してみた。 写真の様にマルチ・ウインドウ形式で開く。HF帯用のJT65AだけでなくVUHF帯用の設定もある。ダウンロードは作成者であるK1JTのWSJT Home Page (←リンク)から。

 もともとはHF用ではなく流星痕反射通信から発展しV/UHF帯のEME用だったそうだ。 非常にS/Nの悪い微弱な信号でも受信できるのが特徴だ。リアルタイムに文字が表示されるものでは無い。約50秒間の受信信号を解析して結果を表示する。1分おきの交互通信になるので手短な交信と言うものは有り得ないようだ。 PCの時計をUTCに良く同期させておかなくてはタイミングが合わず復調できない。

 JT65そのものと次項で扱うJT65-HFの扱いについては、各局の努力により作成されたPDF版の詳しい日本語の解説書が上がっている。(→リンク) 2011年頃のCQ誌に解説記事があったようだが、わからない部分はネットの散策でも何とかなる。インストールしたPCソフトの扱いと具体的な交信方法がまずはポイントであろう。暫くワッチしてみたい。

 WSJT9を起動したら取りあえず動いてくれたが少しバグっぽい感じ。 使っているPCとの相性によるものだろう。 このまま暫く動かして様子を見ようか。使い方を良く理解しないうちに何とも言えないが、まあ何とかなるだろう。 マニュアル片手に使いながらと言うのが理解も早いということ・・・。 こういうものは座学よりもやって見るのが一番だ。

次はJT65-HFで
 ソフトを渡り歩いてばかりでは使い方も身に付かないが、最近はこちら「JT65-HF」がHF帯でオンエアする局にはポピュラーとのこと。 さっそくこちらもPCにインストールしてみる。 結論から言えば、HF帯ならこちらが良さそう。

 シングル・ウインドウでHF帯のオンエアに特化しているので設定も簡単だ。 交信形態を考えた便利機能が搭載されているから実際にオンエアするならこちらが本命の模様だ。あとからできただけのことはあると思う。JT65-HFを妙な所を経由せずにダウンロードするにはIZ4CZLのサイト(←リンク)からのリンク先が良さそうだった。(検索すると見つかるダウンロード先はクレジットカード番号など無闇に個人情報を要求するのが心外なので・笑)

 写真はメイン・ストリートの14,076.00kHzをワッチしている状態。他に21,076.00kHzでも国内局を中心に良く聞こえていた。 トランシーバの受信モードはUSBである。受信周波数が不安定なモノは宜しくないのでシンセサイザVFOのリグが良い。古いアナログVFO式のリグでも良くウオームアップすれば大丈夫かも。

 実は非常に横着な状態でテストしている。 PCへはリグの低周波出力を送り込めば良い。 一般的にはPCのマイク端子へリグから低周波を入れるためのケーブルを使う。 ちょっと時間がなくて、たまたまPCに繋がっていたイヤフォン・マイクをリグのスピーカー直近に持って行って試してみた。 イヤフォン・マイクはSkype用に買った100均のもの。(なんと横着な・爆) 要するに送信のことはまったく考えない。まずは様子見のテストそのものである。

 それでも旨く復調するのですよ、これが。hi hi もちろん付近で大きな物音があると低周波帯で「QRM」とか「QRN」になってS/Nが劣化する。 どうぞ受信中はお静かに願いま〜す。

 強い局ならピポパポがスピーカーから聞こえる。しかしシャーシャー言うバックグラウンド・ノイズの奥から旨く復調するのでとても興味深い。明らかにS/N=0dB以下!

受信レポートして比べる
 JT65-HFの画面の右下にあるEnable RBとEnable PSKRにチェックを入れておくと、ネット経由で私が受信している状態が毎分集計サーバーに自動送信される。(PCは常時ネット接続が必要)

 各局から送られる受信レポートは毎分ごとに集計されて写真のような感じでバンド毎に表示される。 放っておけば1分ごとに画面が更新され、リアルタイムにオンエア局が受信各局でどう見えるのかがわかる仕組みだ。 どちらかと言えば自局の波が他局にどのように届いているのか確かめるのが主目的なのだろう。

 しかし皆さんと比べ実際に受信はどうなのか気になった。 いい加減なテストとは言え十分参考になった。 レポートにコールサインが見えて、どうやらレポーターの仲間に入れたみたい。まずまずのS/Nのようであった。(ホッ)

どこが受信できたか?
 こちらはPSKRの集計で自動的に作られるもの。 自局で受信できたものがマップにプロットされる。

 上記のいい加減な方法で動かし始めてから、しばらく放っておいた。(連続して受信していた訳では無い) 約1日くらいのワッチ結果がこれである。

 もちろん聞こえている局の全部と交信できる訳でもないとは思う。しかし聞こえないことには交信はできない道理なのでどのくらい受信できるのかは興味津々であった。 アンテナがビームなので偏りがあるようだ。概ね北向きの固定だったが意外にも全世界が聞こえてくる。HF帯のビームアンテナなんて結構ブロードだからねえ。(苦笑)

受信エンティティ
 これがウチで受信できたエンティティの一覧だ。わずか1日弱のいい加減実験でも40エンティティを越えたようだ。 中にはSSBやCWでは聞いたこともないような所も見える。w w

 ローカルさんとの会話が切っ掛けで突然実験を始めたがイケそうな感じのモードである。 こう言うのがいわゆる「交信」なのかと言うと疑問がない訳でもない。 だがコンピュータが完全自動的に手当たり次第勝手にデータ交換して「交信」している訳でもない。 キーボードの前にはたぶんオペレータが座って操作しているのだろうから、これも立派なQSOの一形態なのだろう。こりゃ時代ですな。(笑)

                  ☆

 意外かも知れないが特殊モードでのオンエアは昔々から興味を持っている。 CQ誌に連載のJA1DSI津田OMのRTTY特集を読んで、どうしてもやってみたくなり、テレタイプのModel 32ASRを買い込んだクチだ。(もちろん中古品・hi)1970年代の話しだ。大きくて重くてうるさくて専用の「通信小屋」でもなければ夜間はとても運用できない代物だった。 それなりのパワーで連続送信できるリグと良いアンテナが必要で、それ無しでは高品質の交信は難しいと悟ったものだった。 パソコン時代になり、AMTORはリンクするのが面白かった。どんなRigでも良い訳ではなく、条件があって初期には難しかったように思う。パケットはV/UHFオンリーでHFではやらなかった。SSTVは近所しか届かなそうだったからあまり興味を覚えなかった。NTTお下がりのmini FAXは面白かったが、やがてハードが枯渇して流行らなくなった。

 特殊モードはSSBやCWに比べて設備への要求が厳しいと感じた。それ以後あまり興味も無くなっていた。 しかしJT65Aは面白そう。 皆さん数Wからせいぜい2〜30Wらしい。 本質はパワーにはあらずとのことで、1Wに満たないQRPerも結構おられると聞く。ハイパワーやロケーションに恵まれずとも楽しめそうなのは良いことだ。耳の良さを競うようにも感じる。 秋の夜長を楽しむには面白そうだ。 新しいことは頭の体操にもなるし。(笑) さっそくきちんとしたインターフェースを製作したくなった。 たぶん近日デビューしますから。どうぞ初心者にお手柔らかで。 その前に宿題を済ませなくては。de JA9TTT/1

つづく)←この続きへリンク(インターフェース製作編)