2022年1月18日火曜日

Chimonanthus praecox(蠟梅・ロウバイ)

Photo : 2022.01.10 12:39 JST at Jyoshinin Temple "Sazae-do" Honjo-City.

2022年1月3日月曜日

Beat Frequency Oscillator , BFO (1)

 【通信型受信機の必需品:BFO回路・1

BFOを探る
 写真はPLLを使って作った455kHz帯のBFO(うなり周波発振器)です。これは既に投稿済み(←リンク)です。BFOなんて単純な発振器ですが意外に奥が深いのです。このあといろいろなBFOを追ってみたいと思います。

 HAM用の受信機では標準的な付属回路です。ところが意外に面倒なものだと思ってきました。 SSBやCWの受信には不可欠ですが、中間周波と同じ周波数を発振させている関係で様々なトラブルが起こります。

 BFOがあるがために感度抑圧やノイズの増加が起こってなかなか厄介な存在です。 回路形式にもよるのですが、受信機内での配置によっても多大な影響があり意外に難しいと感じたものです。 逆にBFOが影響を受けることもあり、受信信号に発振周波数が引っ張られると言ったトラブルは典型的なものでしょう。

                    ☆

 このあとBFOに絞った話を2回もやろうとしています。たぶん目新しいことは何もないでしょう。 前々から自作受信機のBFOにはいくつか課題があってその対策をしたいと思ってきました。以下そう言った方向で話を進めます。
 その前に、そもそも受信機なんか作るより買った方が正解だし、それに「今どきデジタルでしょ!」とお考えのあなたは正しい。この先を眺めても貴重なお時間が勿体ない。暇つぶしがせいぜいの中身ですから。 オミクロン株がちょっと怪しくなってきましたがコロナ禍もあらかたカタがつくであろう輝かしき2022年のお正月です。部屋でくすぶってないで初詣にでも行ってみませんか? ココを眺めていてもご利益なんてありませんし運気も上がりません!(笑)

BFOは通信型受信機には必須
 図は通信型受信機のブロック図です。受信機回路でBFOの位置を示しています。

 まあ、ここをご覧になるようなお方でしたら百も承知でしょうか。

ハートレー+ECOが標準的
 昔の高一中二受信機では三極管を使う例をよく見かけます。しかし物の本によれば五極管のECO(電子結合型発振器)が標準的なのだとか。発振回路の形式としてはハートレー型です。

 五極管のプレート側から取り出せば受信信号によるBFOの引っ張りは軽減されます。 しかしプレートに於ける波形を見たらぞっとするでしょうね。

プレート同調も好まれた
 プレート同調発振回路の方が周波数安定度は良いと言われます。455kHzですから上記のようなハートレー型でも十分安定ですが。

 しかしカソードがGNDから浮いているハートレーよりも直接落とせるこちら方が発振の濁りは少ない可能性があります。 あいにく作って比べたことはありませんけれども。
高級機のBFO回路
 プロ用の高級受信機では「たかがBFO」にずいぶん凝った回路が使われていました。ただしSSB全盛以前の受信機だから自励発振の周波数可変型なのでしょう。いずれ水晶発振に置き換わります。

◎ 余裕があればバッファ・アンプを置く方が良いのは間違いありません。
セラロック式も選択肢
 LC回路を使った自励発振式BFOは高一中二などではよく使われました。やがてSSB時代になると水晶発振式が好まれるようになります。水晶発振なら周波数精度と安定度の心配は簡単に解決します。

 注意すべきは水晶発振子の周波数です。注文する前によく考えておく必要があります。 455kHzの水晶はHF帯の水晶と違って周波数の調整範囲はとても狭いのです。

 写真は455kHzのセラロック®️(村田製作所の商品名)を使ったBFOの試作例です。基礎的なデータを採るために作りました。 セラロックは水晶発振子よりも安定度では劣りますが周波数の調整範囲が広いのは有利です。普通は455kHz丁度のセラロックしか手に入りませんが、上手にやればSSBの復調用に453.5kHzや456.5kHzへ調整できるかもしれません。もちろん455±0.8kHzなら確実ですからCW用には旨い選択です。 いくら安定度が悪いとは言ってもLC発振器より十倍くらい安定しているように感じますね。

☆ 続いて半導体を使ったBFOの例を見て行きます。

コレクタ同調型ベース帰還型
 この例はBFOを内蔵しない真空管式受信機・・・五球スーパでしょうか?・・・に付加するのに便利です。 消費電流はせいぜい1〜2mAですから低周波出力管のカソードバイアス電圧を頂いて電源にします。 ヒータのAC6.3Vを整流平滑するよりも手軽でしょう。

 本格的な受信機なら最初からBFOが付いてます。こうしたBFOは手元の受信機にオマケ的に付けるのですからお手軽が一番です。トランスレス式のラジオにも付けられますね。

コレクタ同調エミッタ帰還型
 エミッタへ正帰還する発振回路はトランジスタラジオでよく使われます。ハートレー型発振回路の一種です。 この回路は帰還量を加減すると「綺麗な正弦波」で発振してくれます。

 発振コイルは既成のトランジスタ用IFT(IFT=中間周波トランス)が使えます。IFTによってタップ位置が違うためエミッタへの帰還量の加減を要します。 それさえやれば誰が作ってもうまく行く良い回路です。このBlogでも類似回路を何回も採用しています。 例えばココ(←リンク)とか。

 調整はオシロスコープを使うのが確実です。波形の観測手段がないときはRfとして50kΩの可変抵抗器(VR)を入れます。VRを抵抗値最大の方から徐々に下げて行きます。受信しているとBFOの発振が始まるのがわかるでしょう。BFOスイッチをON/OFFして確実に発振が起こるところを探します。VRの抵抗値をはかって近似で小さめの値の抵抗器に交換します。
 こう書くといかにも簡単そうですが「勘」に頼るところがあってそれほど易しくないです。やはり適切な道具(オシロスコープ)を使うのが間違いないですしずっと容易です。

コレクタ同調型・バリキャップ同調式
 コレクタの同調回路にバリコンの代わりに、バリキャップ(可変容量ダイオード)を付加して電気的に周波数調整できるBFOです。

 LC発振器の周波数を変えるのならバリコンを使うのが常識的です。周波数安定度も良好です。しかしバリコンをパネル面に付けると配線を引き回すことになります。その配線からBFOの発振勢力が漏れてIFアンプに回り込むと言った影響が出るのが問題でした。 バリコンをなるべくBFOコイルの近傍に置き絶縁された延長シャフトで回すと言った方法があります。 しかしバリキャップ式ならDC的(直流的)に電圧を変えるだけで周波数を加減できます。従ってBFO回路の配置は自由ですしツマミも好きな場所に付けられます。

2SB型でも発振できる
 2SB型のゲルトラで発振できるからと言って(今どき)意味もないですが死蔵品が活用されるならFBです。
 類似の回路でやってみると2SB77とか2SB111のような低周波の石でも十分発振しますね。455kHzなんて低周波みたいなものですから。(笑) 周波数安定度も問題はなさそうです。 一般的にPNPトランジスタは持て余し気味でしょうから使ってみるのも面白いかも。Ic=1mAくらいになるようバイアス抵抗を加減します。

エミッタ帰還型・バリキャップ同調式
 これも周波数の可変にバリキャップを使う例です。 ふつう後から付ける付加回路は受信機内で理想的な配置はできません。

 周波数調整のツマミだけでも自由に配置できたら有利ですから、バリキャップを使った電子同調が採用されるのでしょう。 ただ、先の回路でもそうですがバリコンの代わりにバリキャップをそのまま付けたのでは問題もあるのです。 この辺りの詳しくは次回にでも。

FETを使ったクラップ型
 各種BFO回路を扱ってきましたが実際には検波回路が切り離せません。いずれのBFO回路も相方になる検波回路がある筈で、その検波回路に合った設計になっています。 検波回路の話はいずれいつかと言うことで、ここではやめておきますけれど。

 左図ではその検波回路も含めてありますがミスプリか勘違いがあるようで、このまま作ると歪んでうまくないようです。 BFO回路はFETを使ったクラップ型発振回路になっています。 バッファアンプも置いてあり、これならFBでしょうね。バッファ付きは真空管回路だと大げさになってしまいますが、半導体ならコンパクトに組めます。

                 ☆

 所詮は「たかがBFO」なんですからどれも簡単な回路です。手元の資料や古い書籍を繰りながらどんな回路が使われてきたのか振り返ってみました。使ってみたいBFOはありましたでしょうか? BFOなんてどれを使っても大差はないと思ってきました。実際そう言ったケースも多いものです。しかしこれから作るならどれが適当かとなると迷います。 PLLやセラロックも良いのですがCWの受信をメインにするなら周波数可変型のBFOが向いているようです。

 IFフィルタやIFアンプと言った受信機構成上の「私の事情」があるにしても「今どき何をしているんだろうね」とつぶやきながら幾つかBFOを試行しています。 「されどBFO」と言った所でしょうか。 ではまた。de JA9TTT/1

#BFOなんて言う『とんでもない切り口』から始めちゃいましたが『私だけの受信機設計』シリーズとでもしておきましょう。 w

つづく)←リンクnm


私だけの受信機設計・バックナンバー】(リンク集)

第1回:(初回)BFO/ビート発振器の回路を検討する→いまここ
第2回:BFO/ビート発振器の実際と製作・評価→ここ
第3回:プロダクト検波器の最適デバイスと回路を研究する→ここ
第4回:プロダクト検波器の実際と製作・評価→ここ
第5回:I-F Amp.中間周波増幅器のデバイスと回路の検討→ここ
第6回:エミッタ負帰還型AGCで高性能I-F Amp.を作る→ここ
第7回:I-F Amp.増強とPIN-Di詳細/(含)簡易フロントエンド・IF-フィルタ→ここ
第8回:DDS-IC・AD9833で周波数安定で便利な局発用発振器を作る→ここ
第9回:高性能フロントエンドで活きる最適デバイスとその活用の実際→ここ
第10回:フロントエンド・Bus-SWとハイレベルDiミキサを比較する→ここ
第11回:古いAM/FMチューナが高性能なプリミクスVFOに大変身→ここ
第12回:音色が良いAF-CWフィルタと低周波アンプを作る(最終回)→ここ