【低ひずみ正弦波発振:Part 1】
【低ひずみをめざす】
低周波発振器の話です。 去年の9月ころ、ウイーン・ブリッジ発振回路(←リンク)というBlogを書きました。 発振回路にはウイーン・ブリッジ型を使い、発振振幅の自動制御には「まめ電球」の加熱による抵抗変化特性を利用しました。
うまく発振してくれて、そこそこ良い性能が得られたので振幅の安定に「まめ電球」式もなかなかだと思いました。 まあ、教科書通りと言うことかもしれません。 ただし、ひずみ率は0.01〜0.02%程度なので昨今のオーディオアンプの性能評価には物足りません。 真空管式パワーアンプのテスト用信号源ならまあまあ使えるレベルと言った感じでしょうか。
やはりもう一桁くらい低ひずみの発振回路が欲しくなります。 ウイーン・ブリッジ回路と電球による振幅制限では限界があるので、別の方法でやってみました。 この手の低歪低周波発振回路は色々あってそれぞれポピュラーです。ここでは状態変数型:State-Variable型で試しました。(参考:Bi-Quad型のフィルタ回路も類似であり、発振回路を構成できます) バンドパス・フィルタに正帰還を掛ける形式です。 写真はその試作風景です。
【0.0014%くらい】
途中経過ですが、ひずみ率は0.0014%くらいが得られます。(上のブレッドボード) 目標性能なので、まずまずと言ったところでしょうか。 これ以上改善するには全体的な見直しが必要でしょう。
その前に測定環境を改善しないと測るのが難しいレベルに来ています。 AC電源50Hzハムやラジオ電波の飛び込みはカットしていますがLED電球や電球型蛍光灯などのインバータ機器によるノイズほか、電気的なノイズは身の回りにあふれています。 ガラス入りダイオードをレベル検波に使うと照明の明滅周期でノイズが乗るとか・・笑えないことも起こります。(SBDで起き易い傾向あり)
-100dBあたりの歪み率を扱います。 発振振幅は数Vpp程度ですからひずみ成分はマイクロ・ボルトのオーダーです。容易に環境ノイズの影響を受けてしまいます。 このあたりも考えて評価しないと何をやっているんだか・・・の世界なのです。(笑)
☆ ☆ ☆
イントロ編ということでサワリだけになりました。 諸事が重なって、Blogネタに窮したので実験の途中経過をちょっとだけ報告しました。
最終目的は低ひずみ発振回路の製作にありますが、実はその回路に使う振幅制御素子の検討から始めています。 低ひずみを狙って今度は「まめ電球」ではなく、電圧可変抵抗素子を使います。 そのような素子は種々ありますが、FETでやってみようと思い何種類か交換してデータを採取しています。
巷ではレトロな2SK30Aの使用例が多いようです。古い回路の引用だから仕方ないと言う理由もあるでしょう。しかし回路は引用していてももっと良いFETがあるなら交換しているはずです。 いつまでも製造中止のFETに頼るのも如何なものでしょうし・・・。 使い続けるからには、何かノウハウのような理由(ワケ)があるに違いない・・・と思いながら専用測定回路を作って各種FETのデータを採ってみました。 そのあたりのこともさらっとやろうかと思いますが、どうも浮気タネばかり多くて進みそうにありません。(笑) de JA9TTT/1
(つづく)←一応、このつづきのBlogへリンクします。
8 件のコメント:
加藤さん、こんにちは。
今日は雨の予報なのですが良い天気で相変わらず酷暑です。
お盆休みですが雑用に追われて何も出来ません。Hi
低ひずみ低周波発振器ですね。
ブレッドボードでどこまで低ひずみが得られるのかも興味があります。
>測定環境を改善しないとだんだん測るのが難しいレベルに
先日、パナソニックのVP-7722A オーディオアナライザを入手しました。
内蔵発振器が歪率:0.0002%(50Hz~10kHz)というスペックなのですが発振器の出力とひずみ率計の入力と直結しても0.0006%と3倍ほど悪い値が出ます。
もちろんジャン測なのでどちらかがおかしい可能性も高いですが、考えると0.0002%などという歪みを測定するのはアマチュアレベルには無理なんじゃ無いかと思って気にしないことにしました。Hi
JE6LVE/3 高橋さん、こんにちは。 こちら猛暑で注意報が出ています。 これから法事なのですが・・・。
早速のコメント有り難うございます。
> ブレッドボードでどこまで低ひずみが・・・
0.0012%あたりのようでした。 歪み成分の解析もしないとわかりませんが、この程度までなら行くようですよ。
> 気にしないことにしました。Hi
FBな測定器を入手しましたね。 十分すぎる性能だと思いますので、あとは測定器の性能が生きるよう十分活用されてください。(笑)
さて、暑いけどお寺に行ってきます。
加藤さん、こんばんは。
暑い中法事お疲れ様でした。
関西は晴れて暑かったかとおもえば急に土砂降りになったりと天気予報で良く聞く不安定な天気です。Hi
>0.0012%あたりのようでした。
そのあたりぐらいまでなら回路やパーツを選べばあまり実装などに気を遣わなくても実現できると考えて良いのでしょうか?
>十分活用されてください。(笑)
あまりに安かったので入手したのですが、オーディオアナライザーってあまり使い道が無いんですよね^^;
自作オーディオアンプの特性を測るのは怖いですし(爆)
こんばんは。
ウィーンブリッジは、私もやったことがあります。オーディオの発振器を持っていなかったので、欲しかったからです。豆電球でやったのですが、うまく行かなかった記憶があります。発振しなかったか、方形波になってしまったような気がします。
ずうっと後になって、2SK30Aでやったら、簡単に発振したのですが、歪を低くすると、波形が収斂するまでに時間がかかりました。特に2連VRで周波数を可変できるようにすると、振幅が安定するまでにかなり時間がかかった記憶があります。
簡単な発振器にするのも難しいですね。歪率もわからないので、この時は波形を見ただけでした。
0.001%ということは0dBmの基本波だと、-100dBmの高調波を捉えないとダメですね。PCの汎用音源ボードを使ったアナライザーだと苦しいレベルでしょうか。
非常に興味のあるネタなので、続編を楽しみにしています。
JE6LVE/3 高橋さん、こんばんは。 冷房の効いていないお寺の法事は暑かったですねえ。いまはどこへ行っても冷房があるのが当たり前になってますので。(笑)
再度のコメント有り難うございます。
> 気を遣わなくても実現できると考えて・・・・
ブレッドボードでもできる範囲のようですが、部品の接触状態により歪みが変化するのでやはりハンダ付けしないと本物にはならないように思います。 あくまでも様子見と言った感じです。
> あまり使い道が無いんですよね^^;
人気の真空管アンプなど、歪み特性の公表がはばかられるようなものも多いはずですからね。 あげく音と歪み率は別物だ・・・という議論になってしまいますから。(笑)
高性能な歪率計はオーディオアンプメーカーが深いNFBの掛かった半導体アンプを売るためのカタログ数字を作るのに必要だったという側面もあると思います。音楽再生との関連はそれほどないかも知れませんね。
スペアナでの観測がしやすいオーディオ帯の2トーン発振器を作るのが目的です。 ただし、マイク端子から入力するのでは殆ど意味がないと思います。 マイクアンプの歪み率はそんなに良くないのですからネ。(爆)
JK1LSE 本田さん、こんばんは。 お盆休みでしょうか? 暑いですねえ・・・。
コメント有り難うございます。
> うまく行かなかった記憶があります。
ウイーンブリッジの方もご覧いただいたかと思いますが、まめ電球式は電球の選定がポイントです。適切なもを選ぶのが難しいようですね。 あと、2連VRの連動誤差があって連続周波数可変式は難しさがありました。
> 波形が収斂するまでに時間がかかりました。
振幅安定回路のループゲインと時定数の問題があって連続可変式で超低歪み発振器は難しそうです。低歪みと相反する要素があるので・・・。 オーディオ用では100Hz、1kHz、10kHzのスポット式を作るようです。それぞれ追い込む形式でないと0.001%台の歪みを確実に維持するのは困難だと思います。
> 汎用音源ボードを使ったアナライザーだと・・・
音源ボードを選べば良い結果が得られるように聞いております。 そういう意味では簡単ではないという事かも知れませんね。hi hi
> 続編を楽しみにしています。
頑張りたいと思います。 調整にPC用のFFTアナライザアプリが使えないか・・・と思っています。フリーウエアもありますので。 歪率計は誰でも買えるものではないですからね。
TTT 加藤さんおはようございます。
低歪発振器ですか。昔、歪率系の製作記事ではバイクワッド型の発振器が使われていたのを思い出します。精度の高い部品を集めないとだめだったような?!
Panaのアナライザが出てから測定が楽になりましたね。GPIBでの自動測定もできるようになりました。
確かこれの後発品だったと思いますが、確かシバソクの同様品のジャン測が秋葉原で5万円の3割引で売りに出ていました。
一時、オーディオアンプは歪競争になったことがあり、0.0008%など0が3つないと売れないと言われていました。
大量のNFBで実現しているところが大きかったようですが。
音質的には、数字よりも歪の質だと思います。0.1%台の歪を持つ(場合によっては1,2%)真空管式高級アンプが完全にリバイバルしているこのご時勢ですから。
しかし、性能を測るためにはそれなりの性能の基準になるものが必要ですね(笑)
この記事が完結したら、オーディオ帯域の基準器として製作することを検討したいと思います。
宜しくお願いいたします。
JN3XBY/1 岩永さん、おはようございます。湿度は高いですが北関東の今朝は涼しいですよ。27℃でエアコン要らずです。
コメント有り難うございます。
> バイクワッド型の発振器が使われていた・・・
元々がバンドパスフィルタなので良い特性が得られやすいからだと思います。
> 精度の高い部品を・・・
High-Qに設計すると有利なのですが、部品感度が高くなりますね。
> オーディオアンプは歪競争になったことがあり・・・
そうでした、そうでした。 岩永さんも巻き込まれたのではないですか?(笑) あまり意味のない数字の一人歩きでしたね。
> 真空管式高級アンプが完全にリバイバル・・・
偶数次、奇数次という話もあるし、高調波のどこが強く出るのか・・・というのもあるので歪率だけでは論じられないと思います。 無帰還の球アンプなど、%オーダーの歪みなのに・・・ですからね。
> 0.0008%など0が3つないと売れないと・・・
そのあたりの歪みになると、残留ノイズの影響の方が大きくなるのでローノイズ設計に重点が移りますね。FFTでアベレージング測定しノイズを低減してから高調波の二乗和をとって・・・という演算処理でもしないと数字が出せません。(笑)
> 基準器として製作することを検討したい・・・
基準ともなると、低歪みが持続できる必要があるので難しくなりますね。 やはり何らかの検証手段がないと難しいと思っています。旨く行くと良いのですが。
昔々の話ですが歪率計を作った事がありました。 性能は悪くなかったのですが、基本波除去のブリッジバランスの維持が課題でした。 結局、自動バランスの機能を付けないと実用性は低いという結論でした。 まあ、0.1%程度の歪み測定なら苦労もなかったのですが・・・0.001%ともなるとシビアすぎて。低歪み信号源も問題でした。(笑)
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