2013年11月15日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A with FT-747

【FT-747でJT-65Aにオンエア】
【FT-747】
 写真は1988年5月の雑誌から八重洲無線の新型HF帯トランシーバ登場の広告である。 FT-747は型番から言えばベストセラーのFT-757シリーズよりも前のイメージがある。しかしだいぶ後になってからの登場だった。それでも既に四半世紀前の無線機になってしまった。(参考:FT-757GX/SXは1983年秋に登場)

 FT-747は安いのが取り柄のようなトランシーバであった。 その当時のHF帯オールバンド・オールモード機は15〜25万円くらいである。だから少し高めのカートランシーバなみの89,800円で登場したのは驚きだった。 安くて「使える」マシンとして海外では好評で特に実利主義の米国では大いにもてはやされたと言う。 しかしJAのHAMは高級指向ゆえ売れたと言う話しはあまり聞かなかった。使い易く合理的で悪くないリグだと思う人は多いはずなんだが、安物を使ってると単なるビンボーHAMに見られそうだからね。hi hi

 全バンドRFアンプ無しでいきなりミキサーと言う思い切った設計であった。従って多信号特性は悪くない。感度も悪くないのは立派なものだと思う。 無闇に小型化していないので操作性は良好で、スピーカーも前面にあるなど車載には悪くないデザインだった。クリック付きダイヤル(25Hz Step)も車載用には扱い易い。 プラスチック・ボディー(裏面に金属メッキ)はチャチいが軽量なのでもっぱら車に載せていた。 その後、無線機の車載はやめたので遊休化してしまう。意外な名機、悪くないRigなので固定でサブ機にと思ったこともあったのだが・・・。

参考:FT-747(改)はFT-80Cの名称で業務機としてアジア・アフリカの発展途上国を中心に多数輸出され辺地との通信に活躍していたそうである。チープとは言え、それだけの実力を持ったリグだった訳だ。

                    ☆

 JT-65Aの性質上、周波数が不安定なリグは困るが、そこそこの安定度なら使い物になりそうに思う。そこでFT-747でどうか検討してみることにした。以下そのレポートである。

 JT-65Aは電波形式:F1Dが許容された範囲内ならHAMバンドのどこでオンエアしても良い。しかし実際には決まった周波数でのオンエアが殆どだ。 例えば14076や21076kHzと言った、XX076kHzと言う周波数が多い。ほとんど固定した周波数に出ていると言うことになる。 使うモードもUSBに固定であり周波数安定度さえ及第点ならどんなSSB機でも十分行けるだろう。これは他の同世代トランシーバ全般に当てはまると思う。オンエアするためのハードルはけして高くない。

【FT-747対応のAFSKインターフェース】
 一応、前のBlog(←リンク)からの続きである。 先に作ったインターフェースを八重洲無線:FT-747用に改造してみた。 送受の信号系はコネクタの付け替え程度で良く前のBlogとおなじで良かった。 しかしスタンバイ系はそのままでは旨くなかった。 IC-756よりもPTT回路の電流が大きいらしくフォトカプラ直結ではドライブしきれないのだ。中途半端なスタンバイ状態になってしまった。

 そこで2SC1815(Y)を追加してダーリントン接続で対処した。 これは最初からこうしておけば良かったようだ。 ダーリントンにすれば伝達効率の良くないフォトカプラでも使えるようになる。 IC-756で使う際にも支障はないのでいまからでも改造を推奨しておく。(今どき滅多にないと思うが、暗電流の大きなフォトカプラでは2SC1815のB-E間に数10〜100kΩを入れてバイパスする必要があるかも知れない。受信状態に戻らないなら対策を)

 受信信号はFT-747の背面パネルにあるAF OUT端子からもらう。この部分の回路変更はいらない。無線機側のコネクタを変更すればOKだ。VR1でレベル調整を行なってパソコンのマイク入力端子(ピンク)へ導けば良い。

 送信時、パソコンのイヤフォン端子(黄緑)から出るトーン信号はFT-747の正面パネル面にあるマイク端子へ加える。この部分も回路変更は不要だがコネクタの付け替えを必要とする。 FT-747にはAFSK用の低周波入力端子がないからだ。 8ピン・マイクコネクタの8番ピンにAFSK信号でGND側は同コネクタの7番ピンだ。 運用に当たってはインターフェース基板上のVR2をやや絞り気味にしておきFT-747のマイクゲインつまみでパワー 加減すれば良い。

 以上、スタンバイ系の小改造が必要だったが、他は同じ回路で良いので作業は簡単に済んだ。 八重洲無線の他の機種でも概ね同じ接続でJT-65Aに対応できることを確認済みだ。FT-757/GXなどをお持ちならお試しを。


【キャリヤ周波数が飛ぶ】
 JT-65Aモードを運用するにあたって周波数精度は良好に保ちたい。そこそこ古いリグなので経年変化も考えられるからテストに先立ち周波数校正を行なっておいた。 少なくとも誤差1ppm以内の精度を持つ良く校正されている周波数カウンタを用いる。

 大まかに言って調整は2箇所である。 FT-747は安価なリグなのでいわゆる「一発周波数管理」になっていない。 PLLで構成された局発系はすべて一つの基準水晶で周波数が決まるようにできているが、それとはまったく独立にキャリヤ発振器があるからだ。

参考:実際にはもう一つ38.640MHzの水晶発振器がある。ただし、この発振器の周波数ずれはPLL回路の内部で打ち消すように動作する。従って精度と安定度に影響は及ばない。そのためこの発振器は周波数調整の必要も無いため無調整になっている。甚だしくずれていないか周波数の確認をするだけで良い。

 写真のキャリヤ発振器の周波数は良く合わせないと精度が出ないのである。 本来であればSSBフィルタの特性に合わせたキャリヤポイントに調整するべきだろう。 しかし送受の周波数精度を確保するためにはフィルタ特性に合わせるのではダメで、規定の周波数にピッタリ合わせざるをえない。 キャリヤ周波数の誤差を吸収する術がないのだ。このあたりは廉価版のリグなのでやむを得ないだろう。 キャリヤポイントはSSB用としては最適化されないことになる。但しJT-65Aの要求を満たす周波特性が得られるなら何ら支障はない。

                   ☆ ☆

 少しテストしたら実用にできる周波数安定度はあるようだ。 ところが、観察していたらUSBモードでキャリヤ発振器の「周波数飛び」が発生した。 突然1kHzくらい高い周波数へ跳躍してしまうのだ。 無視できない変動なのですぐに再調整したが少しするとまた周波数が飛んでしまう。 暫く使っていなかったリグに見られる症状なのでやがて落ち着くかと思ったが数回やっても良くならない。 どうやら写真の赤色トリマ・コンデンサが劣化したようだ。(容量は20pFのもの)

【外したセラミック・トリマコンデンサ】
 見た目は悪そうには見えないが・・・。

 セラミック板を調整ネジで被う構造のため、内部は見えないがローターのセラミック板にクラックがあるのかも知れない。 回してみて少し緩い感じもする。 頻繁に回したことはないので回し過ぎでユルユルに劣化させたとは考え難い。

 トリマ・コンデンサや半固定抵抗器のような可動電子部品の故障率は一桁も高いことが知られている。 この形式のトリマ・コンデンサ固有の問題と言うよりも一般的な故障なのであろう。

【外したセラミック・トリマの裏面】
 トリマ・コンデンサの裏面である。

 裏面中央のカシメが甘くなったのかも知れない。 メッキの酸化など特に見られないので環境原因で劣化したとは考え難いようだ。

 しばらく車載で使っていたので振動による可動部品の劣化が進行した可能性はあるかもしれない。 ただ、こうした軽量部品では稀なようにも思うのだが・・・。

 他所にも同じ形式のトリマ・コンデンサが使ってあるが、どれも回転トルクが小さくて心細い印象なので劣化し易かった部品かも知れない。そのつもりで今後も注意した方が良さそうだ。

【代替品で交換】
 同じ部品があれば修理も簡単だ。

 しかし側面から調整するタイプのセラミック・トリマは持ち合わせがなかった。ここは工夫で乗り切ることにする。

 メーカーの修理では許されないが、自家用の修理なら支障ないし特に信頼性が低いとも思えないので悪くなかろうと思う。 太めのメッキ線で支えたので調整時にグラつくこともなかった。一般的な形状のトリマ・コンデンサを横から調整できるように装着したわけだ。やってみたら具合は良かったので交換成功である。

【ジャストの調整】
 適度なトルクがあるので、こんどはスムースに調整できた。ずっとこれだけの桁が維持できる訳ではないが。(笑)

 USBのキャリヤ周波数はできるだけ8.2165MHzジャストに合わせるべきだ。測定は局発基板からメイン基板へ行く部分で行なう。 そのうえでPLL回路の 基準発振である5.4MHzを調整して初めて正確な周波数でオンエアできるようになる。

 5.4MHzの基準発振の方はUSBモードで15MHzのWWVを受信しながらゼロビートになるよう数Hz以内に合わせ込んでおいた。 周波数カウンタで旨く計測できるポイントがないからだ。発振回路にカウンタを直接接続すればそれだけで周波数が変わってしまう。

 なお、5.4MHzの基準も普通の発振回路であってTCXOではないから長く精度維持はできない。それほど不安定でもなかったので時おり校正すれば大丈夫そうである。本機には未実装だが5.4MHzのTCXOオプションは存在していた。もし手持ちがあるなら交換しておくと安心だ。 総合の周波数誤差は±50Hzくらいまでに維持することを目標にしたいと思っている。

 交換したトリマ・コンデンサはスムースでセッティングの安定性も良好だ。 写真の様にきちんと合わせることができるようになった。もちろん周波数飛びも解消した。これで安心してJT-65Aモードでオンエアできる。

【FT-747でJT-65A】
 FT-747はこの種のHF機としては受信時の消費電流が少ないので連続ワッチには好適だ。

 高級な機能は何もないがJT-65Aに使うのなら十分使えそうだ。 しばらくこの状態でワッチしてみたい。 JT-65AにはAGCの時定数がやや長い感じもするので様子を見て改造したいと思っている。

 インターフェースの接続はDINコネクタ一つと言う訳には行かないが、写真のマイクコネクタのほかリヤパネルのAF OUT端子とPTT端子への三カ所の接続だけだ。どれも一般的なコネクタなので入手も容易である。 8ピンのマイクコネクタならどこのハムショップでも置いてあるだろう。RCAピンジャックもオーディオでポピュラーなのでコネクタ付きケーブルが100均でも手に入る。

 受信調整は前のBlogと同じようにインターフェース基板の半固定抵抗:VR1で行なえば良い。IC-756よりやや小さめの出力だがVRの可変範囲にあるのでまったく問題ない。
 送信時のパワーは主にパネル右下のマイクゲインで加減する。基板上のVR2は1/3くらいの位置に固定しておけば良かった。 パソコンの音量にもよるので適度に加減して使い易く設定しよう。

 チャネルメモリにはJT-65AやWSPRの周波数などをインプットしてワンタッチ切換えで 各バンドがワッチできるよう備えておいた。 暫く使って性能に不満がなければJT-65Aの専用機にしようと思っている。

【受信テスト】
 ウオームアップが済んだので、あらためてワッチの仲間入りしてみた。

 あいにく時間帯が悪いのか、はたまたコンデイションが良くないのか、余り聞こえ(見え)なかった。 それでも取りあえずレポーターの仲間に入れた。

 DF周波数もだいたい平均的のようなので周波数の絶対精度も概ね目標範囲に入っているのではないかと思う。 S/Nのレポートもまずまずのようで交信に実用できそうだ。 無信号状態でウオーターフォール・ディスプレーを見ていると受信機低周波のフラットネスはいま一つのように感じられる。数dBのうねりがあるようで、クリスタルフィルタの特性が見えているのかも知れない。 しかしデコードは正常な範囲にあるようなので支障無さそうだ。 これで遊休化していたFT-747に活路が見出せそうである。

                ☆ ☆ ☆

 JT-65Aに古いトランシーバが使えるのか興味もあってテストを始めた。 途中周波数飛びと言うハプニングはあったが結果から言えば十分行けそうである。 故障が見つかれば修理は必須だとして、あとはそれなりのメンテナンス(周波数校正)だけで使える。 最新型リグは持ってないけれど・・・と諦めずとも十分チャンスはある。JT-65Aに挑戦してはどうだろうか。 TS-520やFT-101だってシンセサイザ式外部VFOの追加で行けそうな気がして来た。(笑)

 トランシーバの信号系がPLL化されたのはずいぶん前のことになる。 最初は自励発振のVFOも含んでいたが、やがて完全シンセサイザ式になった。 そうなれば送受周波数もおおむね水晶発振器の安定度と言うことになる。 そうなった時代のリグなら十分使える。 もちろん運用の便を考えるとなるべく読取り精度は上げておきたい。 周波数校正をしっかり行なってやれば大丈夫だろう。

 しかし昨今のリグのように周波数管理が一カ所では済まないのはちょっと面倒である。そこで外から与えたらと言うことにもなるのだが、OCXOなりを基準に必要な周波数を作ってやれば十分可能だ。それほど難しいことではない。さらにRb-OSCやGPS-DOに同期すれば周波数精度、安定度ともに抜群になる。 試みに5.400MHzを外部から与えたところ大幅に改善されるのでまずはそのあたりからだろうか? 果してそう言う情報のニーズはあるものやら・・・。 de JA9TTT/1

(おわり)

追記;
今月のCQ誌(2013年11月号)にもJT-65の記事が掲載されている。専用ソフトウエア・JT-65-HFを使った運用を主体とする内容だ。ソフトの扱いや交信手順など不安があるお方は参照されると良いだろう。このモード、これから流行ると思うので早速スタートされてはどうだろうか?
 無線局の指定事項に変更がない場合、即ち自局に免許されている一括コード(例えば3HAとか3VAのような)にF1Dモードが含まれていれば、付加装置に関する変更届を「遅滞なく」提出(送付または電子届け)するだけで良い。もちろん運用をしたいバンドごとに確認を。TSSの保証認定はいらないので費用は発生しない。(・・・と言う解釈で良かったハズ・笑)

2013年11月1日金曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 2

【JT-65Aでオンエア Part 2:製作・運用編】

【完成したインターフェース】
 前回(←リンク)の続きである。 JT65でオンエアするためには、パソコンと無線機の仲立ちをする「インターフェース」が必要だ。 写真は完成したインターフェースのテスト風景である。

 JT65用のインターフェースとは言っても、調べてみたら何も目新しいものではないようだ。 要するに昔からあったRTTY用などと同じAFSK形式のインターフェスにすぎない。

 パソコン側へはトランシーバ(受信機)から低周波出力を与える。 昔はTUでデジタル化してパソコンに送った。しかしいまの常識ではパソコンの処理能力が高いから受信機から低周波のまま与えればよい。あとはパソコン側でソフトウエア的に処理してしまうのだ。
 送信も同じである。 昔は周波数シフトキーヤーをON/OFFしたりAFトーン周波数を切り替えていたが、いまは直接トーンを作り出す。 もちろん、AFSKの問題点はさんざん議論があった通りであって、奇麗なトーンを送信機に与えたうえで、オーバードライブにならぬような注意を要する。このあたりは昔と何も変わっていない。
そのほか必要な接続は無線機のスタンバイ・コントロール(PTTの制御)くらいのものだ。(面倒ならVOXを使うと言う横着な手もある・笑)

                    ☆

 JT65(A)などと聞き慣れぬ通信モード名を耳にすると難しそうに感じるが、要するにそう言うことなのでインターフェースの設計は難しくない。 様子がわかった所でさっそく設計・製作してみよう。 設計〜部品集め〜テストオンエアまでがこのBlogの目標だ。

参考:ICOMのHF帯トランシーバ用に作ったが他社機用に容易に変更しうる。今はやりのFT-8にもそのまま使える。
注意:JT65AはHF帯用のJT65モードである。電波形式で言えば「F1D」である。

【JT65用のインターフェース回路】
 JT65と言うよりも、AFSKでトランシーバとPCを繋ぐためのインターフェースと言える。パソコン側からスタンバイコントロールも行なう。 従ってRTTY、PACKETなどを始めとする同種のインターフェースを要するデジタル系のモード全般に共通して使えるだろう。当然だがFT-8にも最適だ。

 設計に当たっては使用する無線機とパソコンの仕様を調査した。 まず無線機側だがマイク端子とスピーカー端子に接続することもできる。それが一番簡単な方法だが、SSBなど音声でオンエアする時にマイクコネクタの付け替えが要る。また受信も低周波のVRを通った後だと毎回レベル合わせをしなくてはならない。

 無線機に専用のインターフェース端子がないならやむを得ないが、いまのRigならたいてい通信用インターフェース端子が付いているはずだ。 そのインターフェースについて必要な信号レベルの調査を行なった。 ここではICOMのIC-756proを想定し直結できるように設計した。 仕様書による確認と、受信しながら実際の信号レベルを確認している。

 PC側はマイク端子とスピーカー端子、そしてシリアル通信ポートへの接続が必要なので、それぞれ必要条件を確認しておく。

 ICOMのリグなら統一性があるようなので他機でも同じで行けるだろう。 それにVRでレベル調整が可能なようにしておいたので多少の違いは吸収できる。 内容としては典型的な(古典的な?)AFSKのインターフェースである。

☆このインターフェース回路の使用実績については、Blogの文末を参照ください。

追記:【回路図改訂:V1.0.1】フォトカプラの後にトランジスタ及び抵抗(各1本)追加。(理由)PTT回路のドライブ能力向上のため。(2013.11.14)+【回路図改訂:V1.0.1a】回路図記入漏れ修正(2014.12.09)

【部品集め】
 揃わなければ秋葉原で調達するか通販でもと思っていた。 しかし探したら手持ちで全部揃った。 それだけ部品やジャンクを抱え込んでいるということで、こうしたチャンスに積極的に消化しないと勿体ない。 忙しいとついついお店で新たに買ってしまうので、面倒くさがらずに探す努力が必要だ。(自戒を込めて・笑)

 なお、初期の構想段階で集めた部品なので、使わなくなったものや、写真以外で追加になった部品もある。 上記の回路図通りではないので悪しからず。 但しコネクタやトランスと言った重要部品に変更はない。 実際に部分回路をバラックで組立ててテストし、最適化した上で作って行った。そうして纏めたのが上記の回路と言う訳だ。

【低周波トランス】
 無線機側とパソコン側はなるべくならGND系を分離した方が良い。 ノイズ源になり易いデジタル機器を、μVオーダーの信号を扱う通信機に繋ごうと言うのだから、なるべくアイソレーションしておくべきだ。

 こうした低周波トランスを介して受信の低周波信号をPCのマイク端子に与え、PCのスピーカー出力からの信号もトランスを介して無線機の低周波入力端子へ導く。

 使用したトランスはずいぶん前に入手したもので貰った物か何か部品ジャンクに入っていたのか記憶は定かでない。 低周波用の一般的なものであって古い電話モデムあたりで使っていた600Ω:600Ωのトランスのようだ。 なお代替としては山水のST-23が良いと思う。回路変更無しでそのまま使える。この製作で最も高価な部品だろう。(500円くらい)

 こうした低周波トランスはバンド・パス・フィルタ(BPF)的な効果も期待できる。不要な極低域をカットする働きがあるからだ。 ノイズ流入防止のアイソレーション用だけでなく復調信号のS/Nを改善する効果も見込める。

【フォト・カプラ】
 パソコンからリグのスタンバイをコントロールする必要がある。 単なるON/OFF信号で無線機のPTTを操作することになる。 パソコン側からシリアルポートに出ている通信制御信号を使って送受切換えを行なう。

 この信号もGNDを分離する必要がある。アナログ信号系は上の写真のトランスで分離したが、ON/OFF信号は直流的な信号なのでトランスは使えないからフォト・カプラを使った。高速切換えの必要は無いから機械的なリレーでも良いがフォト・カプラが簡単だ。

 東芝製のTLP-521-1と言う一般的なものを使った。同等に使える代替品は沢山あるが、なるべく伝達効率の高いものが良い。 Photo-MOS Relayでも良いが、PTT端子は極性が決まっているから出力側がトランジスタの普通のフォト・カプラで十分だ。(単価数10円)

追記:PTTドライブ回路の強化のためNPNトランジスタを追加しダーリントン回路に変更。フォトカプラはごく一般的なものなら何でも可能。回路図V1.0.1に変更(2013.11.14)

【ケーブル類】
 意外に面倒なのが接続ケーブル類である。 D-SUB 9pinのケーブルはHard OFFなどでジャンクケーブルを探すと安価だと思う。 そうしたものを途中で切って使えば十分だ。 ここでは以前何かに使った余りの半分があったのでそれを使った。

 PC側のマイクロフォンとスピーカ端子は3mmのステレオ・プラグでごく一般的なものだ。これもジャンクから容易に調達できそうだ。100均でイヤフォン・マイクを買って流用すればケーブル付きがコネクタ単独で買うよりリーズナブルに手に入る。

 その辺で売っていないのがRig側のDINコネクタだ。(写真で黒いもの) こうした大柄のDINコネクタは昨今あまり使われていない。 秋葉原でも限られたお店でしか扱っていない。どうしても入手難なら無線機メーカーに確認するのも良いだろう。
たまたま買い置きがあったので使用した。昔似たようなインターフェースを作った際の余りだろう。 秋葉原では千石電商の電子楽器パーツを扱うお店(2号店の脇階段を上った2F)に品揃えが豊富だった。あれば150円程度の安価なコネクタだ。通販で調達するのも良いと思う。

 インターフェース基板からDINコネクタまで、送信用の低周波信号が通るラインはシールド線を使っている。シールド線1本とバラ線が4本入った一括ケーブルを使った。カメラ・ケーブルとか言う名称だったと思う。秋葉原ならオヤイデ電線に置いてある。

【ケース】
 金属製のケースでも良いが、どうせアイソレーションするのだからプラスチックの箱にした。 金属の箱だとどちら側のGNDに箱を落とすのか迷うがプラ箱ならそうした悩みは生じない。(笑)

 手持ちを使ったがポリカーボネート樹脂製のようだ。 スチロール製より割れ難くくて扱い易い。 100均のおかず入れでも十分なので基板は何かに収納しておくべきだ。

 JT-65に限って言えばローパワー運用なので回り込みトラブルは考え難い。 RTTYなどリニヤ付きハイパワーでやりたいお方は各ラインにRFフィルタを入れ金属ケースに収納する方が良いかも知れない。 もっともその金属ケースにRFが乗るという笑えないトラブルもあるのだが・・・。

【インターフェース基板】
 部品数が少ないので配線はごく簡単だ。 手間がかかったのはトランスの部分で、ピン足のピッチが2.54mm刻みではないのだ。 やむなく穴を追加してそれらしく載せておいた。

 代替に推奨した山水トランス:ST-23はリード線タイプなのでそうした問題はない。 他の部品は見ての通りなので取り立てて説明は要しないだろう。

 なお、VR類は全て半固定VRにしてしまった。 一旦調整したら滅多にいじらないと思うからだ。 半固定VRでまず支障はないと思う。 (JT65以外のモードでは調整を要するかもしれない。万能インターフェースにするならツマミ付きのVRを使うのも良いと思う)

【インターフェース基板の裏側】
 例によってお見せするようなものでは無いが基板の裏側である。 絶縁耐圧は要しないが、PCと無線機をアイソレーション(絶縁分離)した意味が失われぬように、それぞれのGND系は切り離すことをお忘れなく。

 トランスは巻数比が1:1で、インピーダンス比も同じである。 信号に方向性はないと思うが送受で逆方向に使い同じ信号の流れになるようにしてある。(たぶん、あまり意味はない)

 秋月電子通商で売っている小型ユニバーサル基板に余裕をもって全部品を載せることができる。 配線は交叉していないのでプリントパターン化も容易だ。

【完成】
 箱に入れて完成させる。 事前に要素実験は済んでいるので、配線間違えさなければ組込んでただちに動くだろう。

 ケースに厚みがなかったので高さ方向がすこし窮屈であった。 基板裏面が下ケースに密着する構造だが絶縁物なので支障はない。

 なおインピーダンスの低い回路なのでプラケースだからと言ってハムなどの誘導は問題ないと思う。 どうしてもダメなら銅箔テープなどを貼付けてGNDに落とせば良い。 実際に使ってみたが特に支障はなかった。 送信電波も別のリグでモニタしてOKだった。 ケースの上蓋には半固定VRの調整穴がある。しかし調整後に蓋をすれば良いので穴は要らなかったのかも知れない。

【通電テストと調整】
 ケーブル配線に間違いがないか良く確認してから無線機とPCを接続する。 写真のように、パソコンを起動するとLEDが点灯すればスタンバイ系統の配線は活きている。

 このLEDは動作モニタを兼ねており、送信時に消灯するのが正常な動きだ。 もし旨く動作しないならcomポートの番号を確かめ、JT65-HFの設定を再確認する。ポート番号が合っていて、スタンバイにRTS信号を使う設定になっているだろうか? USB-シリアル変換ケーブルを使う場合も、仮想的なcomポートと考えれば方法はまったく同じである。

 まずは、受信調整から行なう。ソフトウエア:JT65-HFを起動し画面左上にあるレベルモニタのバーグラフに注目する。(Audio Input Levelと言うところ) トランシーバ(受信機)を何も信号が聞こえずバックグラウンドの「シャー」っと言うノイズだけが入感する周波数に合わせる。 基板上の受信レベル調整用のVR1を回し、バーグラフ右の数字がおおむね0dBになるように調整する。 あとはJT-65で各局が運用する周波数を受信しながら様子を見て加減すれば良い。 いつも誰かが出ていそうな周波数としては、14,076kHzや21,076kHz(いずれもUSBモード)が良いだろう。昨今は28MHz帯のコンデイションが良いらしく、28,076kHzも良く聞こえて(見えて)いるようだ。

 ちなみに、このBlogを書いた時点ではJA局はバンド使用区分の関係で7076kHzにオンエアはできなかった。その後の法改正により2016年現在では海外局との交信に限ってオンエア可能になっている。(JA局相手は7041kHz)また、10MHz帯は10138kHzもしくは10139kHzが使われている。どちらかと言えば10138kHzの方が多いように感じる。10138kHz/USBはWSPR(ビーコン局)と一部周波数が重なるので運用には注意が必要。 なお、ワッチすると1838kHzと3576kHzにもJT-65Aのオンエアが見えるが、JA局はオフバンドになるのでいっさい送信は出来ない。実際に捕まった局も出ている。注意されたし。(追記2016.2.24)

 続いて送信調整である。いきなりフルパワー送信にならぬように、まずはVR2を絞っておく。 送信機を終端型パワー計もしくは通過型電力計+ダミーロードに接続する。 何でも良いので、JT65-HFを適当な送信モードにする。 マウスのポインタを合わせCall CQボタンを押してからEnable TXを押すのが手っ取り早いだろう。偶数分か奇数分ちょうどになれば送信開始だ。 送信が始まったらパワー計を見ながら送信レベル調整のVR2を回してパワーを加減する。(パソコン側でスピーカの音量調整ができるので併用すると良い)
 最初は出力5〜10Wくらいが良いのではないかと思う。 奇麗な波を出すためQRP機の場合も最大出力の50%くらいまでで使うのが適当だ。 別途受信機があればトーンにノイズ混入や歪みによる濁りがないか聞いて判断する。 スペアナがあれば見ても良いがモニタで聞いておけば十分かと思う。 なんでも高級な手段が良い訳にはあらず。それにその辺にあるスペアナでは見ても良くわからんだろうし。

                    −・・・−

参考:このインターフェースはWSPR(ウイスパー:微弱電波伝搬報告プログラム)用ソフトウエアにも対応しておりそのまま使える。(専用ソフト:WSPR 2のダウンロードは→こちら) 但し、使用に当たっては受信と送信のレベルを再調整した方が良い。また、送信パワーは一般に5W以下なので出し過ぎぬようパワー計で確認しておくべきだ。初期設定の際にスタンバイはcomポートのRTSで行うようにセットする。(JT65-HFと同じ)WSPRのアクティビティに関してはWSPRnet.org(←リンク)を参照されたい。

【オンエア・テスト】
テスト電波を出してみよう。

 インターフェースができたなら、早速オンエアしてみたいのが人情だ。 しかし、諸先輩方の「注意」を良く読まず、みっともないテスト電波をさんざ垂れ流したあげく誰の応答もない初心者を目にする。 コールサインからさっするに相当のOMさん(たぶんご年配)と思うが、ここは初心に返ってきちんと注意書きを読んだ方が良い。 いい大人が恥を垂れ流すよりもよほど良いはずだ。 はやる気持ちを抑えてじっくり準備してほしい。

☆PCの時計はあってますか?
 「何を馬鹿なことを!」と言うなかれ。 初めてのオンエアでQSOに至らない原因の最たるはパソコンの時計の狂いにある。 説明書には±0.5秒以内と書かれているが、±0.2秒くらいに合わせておきたいものだ。 それはオンエアしている各局も幾分ずれているからだ。 これが良く合っていないと、いくら強い電波を出そうが誰からも応答は返ってこない。コールサイン付きの恥ずかしい波をお空に垂れ流すばかりだ。 だいたい、そんなにパワーは要らないのがJT-65HFなので、応答が無いからと言って無闇にパワーを出せば皆にすぐわかってしまう。おつむの程度が知れて恥の上塗りと言うものだ。(笑)
時計は手動で合わせても良いが、たぶん30分も精度が維持できれば良い方だ。 使っているPCが常時インターネットに接続されている環境にあるなら、自動時計合わせのアプリをインストールしておくのが一番良い。
・・・と言うよりも、それなしには安定したQSOは望めない。 ネット経由で時計合わせするアプリは沢山あるが、私は「NetTime」というのを使っている。インストールと設定の手順はリンク先にあるので、ダウンロードしたら必ず良く設定しておくこと。セッティングが済んだら電波時計と照合しておくのが良い。 これがオンエアの第1歩だ。

☆オンエアテストをする.
 14076kHz(あるいは21076kHzなど資格に応じて)を少なくとも5分以上ワッチする。 その上で、だれもオンエアしていなそうなDF周波数にセットし「TEST JA9TTT」とか、適当な文章を入れて送信してみる。なお、オンエア局からは150Hz以上離れるべきだ。いきなりCQでも良いが呼ばれた際の心の準備が必要だ。hi hi

 同時にモニタ受信すると良い。スムースに送信シーケンスが進めばインターフェースは順調だ。 まあこの画面の所まで辿り着いているなら、ほとんど問題はないだろう。

 実際にオンエアしながら受信時にはS/N比が良い状態で復調できるようボリウムを微調整し、常に送信時のパワーは抑制気味で行けば良いと思う。 100Wの無線機を100Wで使うのは連続送信による過負荷もあるが歪みも問題があるので感心しない。(むしろ禁止!) 100W機でもせいぜいmax20〜30Wでオンエアするのが合理的なようである。 ここではテストなので迷惑にならぬよう数Wに絞って行なってみた。 JT65ではなるべくローパワーでの運用が推奨されるとのこと。 なお、ハイパワー局でも常用は最大でも10Wが推奨されるパワーとのこと。それ以上の20~30Wは非常用との位置付けらしい。 くれぐれも必要最低限のパワーで!

☆QRP局は!
これらのことから考えてQRP局は大きくても1Wまでが暗黙の了解らしい。 他のモードのように5Wも出したらもはやQRP局とは言えない模様だ。 数mW〜数100mWでも想像以上に飛ぶこともあるようなので、相手のGLからマイル/Wを計算して競うのも興味深いと思う。

☆送信パワーの調整方法
 きれいな波を出すために、以下は必ず守る必要がある。(1)送信機(トランシーバ)のパワー調整ツマミは最大出力の位置にしておく。(2)マイクゲイン、もしくはインターフェース上のボリウムで運用するパワーまでしぼる。具体的には送信パワーが20〜30Wになるよう加減する。 最大出力10Wのリグなら半分の5W程度に、50Wのリグでは20Wくらいになるよう、「マイクゲイン」のツマミでパワーを加減する。
送信電力の加減はリグの「パワー調整つまみ」で行うのではないことに十分注意を!! (パワー調整ツマミでしぼるときれいな電波が出ないので、相手局に復調されにくくなるばかりか、同時にオンエアしている局の迷惑にもなる。しかもPoorなオペレータなのがコールサイン付きで皆に知れわたってしまう)

【受信レポート】
 さっそくテスト電波が各局に聞こえたか確認してみよう。このレポートサイトのURLは→こちら(2014年10月現在停止中)。 Topページが開いたらバンドごとのレポートを開くと左図のようになる。レポートは1分ごとにその時あったレポートに従いアップデートされる。自分でも受信レポートしたい場合はJT65-HFの画面右下にある「Enable RB」にチェックを入れておく。(レポートするには常時ネット接続が必要)

 どうやらJA局が殆どだが、ZLで聞こえた局もあったようだ。きっと耳の良い局なのだろう。 とんでもなく周波数がずれているとか、歪んでいるなど酷い波ではなかった模様だ。もしそうならレポートも帰ってこない。  コールサインが載ったので取りあえず一安心と言った感じだ。 運用形態がローパワーだからまず心配は無いが、アンテナ系のVSWRが高かったりすればRFの回り込みもあり得る。要注意だ。

 しばらくは受信をしながら復調S/Nなど見ておこう。DX局を受信した際のJA各局との数値比較が参考になる。 しばらくワッチしていると、JA4とJA1エリアに常に良いS/Nでレポートされるお方がおられた。ノイズのない環境で良いアンテナなのかも知れないが、ぜひとも良い耳の目標にしたいものだ。 送信は運用しながら適度なパワーに調整しよう。 パワーは受信とのバランスも関係するし、その局のアンテナやノイズ環境などの要素もある。 おのおの適した設定を見つけて行く必要がありそうだ。

(参考:2014年10月1日現在、リバース・ビーコン:RBは停止中である。様子を見ているが、短期的な停止ではない模様である。RBはオンエア・テストに便利なので停止はとても残念である。PSKR(←リンク)の方は大丈夫なのでそちらで飛びや聞こえ方を確認するのも良い。)

                 ☆ ☆ ☆

 いまは便利な時代である。こうしたインターフェースも既製品が売っている。リグによっては、はなからデータ通信用にUSB-IFまで備えていて外付けのインターフェースなど不要なものさえある。 特にカムバック組のHAMはそうした最新リグをお持ちだと思う。 ぜひニューモードに挑戦をお勧めしたい。 SSBでオンエアするのとはまた別の面白さもある。どのモードでオンエアするにせよ、レポート交換とお天気紹介のワンパターンQSOではマンネリ化はすぐそこだ。 JT65のQSOも究極のラバースタンプ形式なのだが、レトロなモードのリバイバルより楽しむ余地はたっぷりありそうに感じる。

# 何か少しでも新しい要素を取り入れるのが趣味を長続きさせるコツだと思う。

                   ☆

 USBケーブル一本でOKな最新リグは持ち合わせていないので簡単なインターフェースを作ってみた。 流石に周波数の安定度と読取り精度を要するのでアナログなリグには難しさがある。しかしそれ以外のDDSやPLLによるVFO機ならどれでも大丈夫だ。 各リグに合うようすこし回路を変更すれば同じに行ける。 見ればわかるようにAFSKのインターフェースなど、そんなものだ。 ではJT65でお会いしましょう。 de JA9TTT/1

参考:このインターフェースはJT65だけでなく、現在主流になっているFT-8でも十分な威力を発揮します。多数のDX局との交信に貢献してくれました。(追記:2021.04.30)

(おわり)
(追記改訂:2014.08.27)

参考:
八重洲無線FT-747/757でJT-65を運用する続編は:==>こちら(リンク)
八重洲無線FT-817NDでJT65を運用する続編は:
この続編ではUSBインターフェースに直結形式で製作している。==>こちら(リンク)

                    ☆

参考:このインターフェース回路の実績について
 14.076MHzあるいは21.076MHzを常時受信し、リーバースビーコン(RB)のサイトへ受信レポートを送る形式で受信実績を評価してみた。(ごく稀に18.102MHzも使用した)

 レポートサイトへ受信レポートの送信を開始したのは2013年10月15日である。開始から272日経過した、2014年8月13日に累計で100万局の受信レポートを送ることができた。(左図はその時の画面キャプチャ)従って、約3,676レポート/日・・・1時間当たり153レポート以上・・・のペースであった。(備考:現在リバースビーコンのWebサイトは休止している)

 きわめて優秀などと言うつもりはないが、他のレポーターとの比較ではまずまずの成績と言えるようである。もちろん、インターフェースの性能だけでなく各局のロケーションやアンテナ、さらにはお空のコンディションや周辺のノイズ環境など様々な要素が受信成績を左右するだろう。

 しかし、たとえ良い環境やリグに恵まれていてもインターフェースの性能が悪いと復調能力は劣ってしまう。

 ここで作ったインターフェースは、より良い環境や良い設備を持った局の期待にも十分応えてくれるだけの性能を持っていると考えて良さそうだ。 使用実績から見て、お勧めできるインターフェース回路だと思う。(2014.8.14)

2013年10月15日火曜日

【HAM】 On the Air JT65A, Part 1

【JT65Aでオンエア・様子見編】
【最初はWSJT9で】
 SSBやCWと言った、人間と無線機、そしてマイクと電鍵があればOKと言うモードしかオンエアしない訳ではない。ただ、昨今はそちらに偏りがちだったかも。

 JT65と言うパソコンと一緒に遊ぶモードは面白そうだ。JT65は微弱信号通信方式とのこと。 定番のPC用ソフトが幾つかあるようだ。 まずは「WSJT9」から試してみた。 写真の様にマルチ・ウインドウ形式で開く。HF帯用のJT65AだけでなくVUHF帯用の設定もある。ダウンロードは作成者であるK1JTのWSJT Home Page (←リンク)から。

 もともとはHF用ではなく流星痕反射通信から発展しV/UHF帯のEME用だったそうだ。 非常にS/Nの悪い微弱な信号でも受信できるのが特徴だ。リアルタイムに文字が表示されるものでは無い。約50秒間の受信信号を解析して結果を表示する。1分おきの交互通信になるので手短な交信と言うものは有り得ないようだ。 PCの時計をUTCに良く同期させておかなくてはタイミングが合わず復調できない。

 JT65そのものと次項で扱うJT65-HFの扱いについては、各局の努力により作成されたPDF版の詳しい日本語の解説書が上がっている。(→リンク) 2011年頃のCQ誌に解説記事があったようだが、わからない部分はネットの散策でも何とかなる。インストールしたPCソフトの扱いと具体的な交信方法がまずはポイントであろう。暫くワッチしてみたい。

 WSJT9を起動したら取りあえず動いてくれたが少しバグっぽい感じ。 使っているPCとの相性によるものだろう。 このまま暫く動かして様子を見ようか。使い方を良く理解しないうちに何とも言えないが、まあ何とかなるだろう。 マニュアル片手に使いながらと言うのが理解も早いということ・・・。 こういうものは座学よりもやって見るのが一番だ。

【次はJT65-HFで】
 ソフトを渡り歩いてばかりでは使い方も身に付かないが、最近はこちら「JT65-HF」がHF帯でオンエアする局にはポピュラーとのこと。 さっそくこちらもPCにインストールしてみる。 結論から言えば、HF帯ならこちらが良さそう。

 シングル・ウインドウでHF帯のオンエアに特化しているので設定も簡単だ。 交信形態を考えた便利機能が搭載されているから実際にオンエアするならこちらが本命の模様だ。あとからできただけのことはあると思う。JT65-HFを妙な所を経由せずにダウンロードするにはIZ4CZLのサイト(←リンク)からのリンク先が良さそうだった。(検索すると見つかるダウンロード先はクレジットカード番号など無闇に個人情報を要求するのが心外なので・笑)

 写真はメイン・ストリートの14,076.00kHzをワッチしている状態。他に21,076.00kHzでも国内局を中心に良く聞こえていた。 トランシーバの受信モードはUSBである。受信周波数が不安定なモノは宜しくないのでシンセサイザVFOのリグが良い。古いアナログVFO式のリグでも良くウオームアップすれば大丈夫かも。

 実は非常に横着な状態でテストしている。 PCへはリグの低周波出力を送り込めば良い。 一般的にはPCのマイク端子へリグから低周波を入れるためのケーブルを使う。 ちょっと時間がなくて、たまたまPCに繋がっていたイヤフォン・マイクをリグのスピーカー直近に持って行って試してみた。 イヤフォン・マイクはSkype用に買った100均のもの。(なんと横着な・爆) 要するに送信のことはまったく考えない。まずは様子見のテストそのものである。

 それでも旨く復調するのですよ、これが。hi hi もちろん付近で大きな物音があると低周波帯で「QRM」とか「QRN」になってS/Nが劣化する。 どうぞ受信中はお静かに願いま〜す。

 強い局ならピポパポがスピーカーから聞こえる。しかしシャーシャー言うバックグラウンド・ノイズの奥から旨く復調するのでとても興味深い。明らかにS/N=0dB以下!

【受信レポートして比べる】
 JT65-HFの画面の右下にあるEnable RBとEnable PSKRにチェックを入れておくと、ネット経由で私が受信している状態が毎分集計サーバーに自動送信される。(PCは常時ネット接続が必要)

 各局から送られる受信レポートは毎分ごとに集計されて写真のような感じでバンド毎に表示される。 放っておけば1分ごとに画面が更新され、リアルタイムにオンエア局が受信各局でどう見えるのかがわかる仕組みだ。 どちらかと言えば自局の波が他局にどのように届いているのか確かめるのが主目的なのだろう。

 しかし皆さんと比べ実際に受信はどうなのか気になった。 いい加減なテストとは言え十分参考になった。 レポートにコールサインが見えて、どうやらレポーターの仲間に入れたみたい。まずまずのS/Nのようであった。(ホッ)

【どこが受信できたか?】
 こちらはPSKRの集計で自動的に作られるもの。 自局で受信できたものがマップにプロットされる。

 上記のいい加減な方法で動かし始めてから、しばらく放っておいた。(連続して受信していた訳では無い) 約1日くらいのワッチ結果がこれである。

 もちろん聞こえている局の全部と交信できる訳でもないとは思う。しかし聞こえないことには交信はできない道理なのでどのくらい受信できるのかは興味津々であった。 アンテナがビームなので偏りがあるようだ。概ね北向きの固定だったが意外にも全世界が聞こえてくる。HF帯のビームアンテナなんて結構ブロードだからねえ。(苦笑)

【受信エンティティ】
 これがウチで受信できたエンティティの一覧だ。わずか1日弱のいい加減実験でも40エンティティを越えたようだ。 中にはSSBやCWでは聞いたこともないような所も見える。w w

 ローカルさんとの会話が切っ掛けで突然実験を始めたがイケそうな感じのモードである。 こう言うのがいわゆる「交信」なのかと言うと疑問がない訳でもない。 だがコンピュータが完全自動的に手当たり次第勝手にデータ交換して「交信」している訳でもない。 キーボードの前にはたぶんオペレータが座って操作しているのだろうから、これも立派なQSOの一形態なのだろう。こりゃ時代ですな。(笑)

                  ☆

 意外かも知れないが特殊モードでのオンエアは昔々から興味を持っている。 CQ誌に連載のJA1DSI津田OMのRTTY特集を読んで、どうしてもやってみたくなり、テレタイプのModel 32ASRを買い込んだクチだ。(もちろん中古品・hi)1970年代の話しだ。大きくて重くてうるさくて専用の「通信小屋」でもなければ夜間はとても運用できない代物だった。 それなりのパワーで連続送信できるリグと良いアンテナが必要で、それ無しでは高品質の交信は難しいと悟ったものだった。 パソコン時代になり、AMTORはリンクするのが面白かった。どんなRigでも良い訳ではなく、条件があって初期には難しかったように思う。パケットはV/UHFオンリーでHFではやらなかった。SSTVは近所しか届かなそうだったからあまり興味を覚えなかった。NTTお下がりのmini FAXは面白かったが、やがてハードが枯渇して流行らなくなった。

 特殊モードはSSBやCWに比べて設備への要求が厳しいと感じた。それ以後あまり興味も無くなっていた。 しかしJT65Aは面白そう。 皆さん数Wからせいぜい2〜30Wらしい。 本質はパワーにはあらずとのことで、1Wに満たないQRPerも結構おられると聞く。ハイパワーやロケーションに恵まれずとも楽しめそうなのは良いことだ。耳の良さを競うようにも感じる。 秋の夜長を楽しむには面白そうだ。 新しいことは頭の体操にもなるし。(笑) さっそくきちんとしたインターフェースを製作したくなった。 たぶん近日デビューしますから。どうぞ初心者にお手柔らかで。 その前に宿題を済ませなくては。de JA9TTT/1

(つづく)←この続きへリンク(インターフェース製作編)

2013年10月1日火曜日

【回路】Simple Function Generator

【簡単なファンクション・ジェネレータを作る】

【ファンクション・ジェネレータとは?】
 Blogでファンクション・ジェネレータ用のICを扱ったことがあった。(→リンク)しかし、ファンクション・ジェネレータ(以下、FGと略)その物についてはあまり扱っていない。アマチュア無線の世界ではポピュラーではないし、用途もあまり無いと思うからだ。(実際そうだろう)

 FGは一種の発振器である。まずはメーカー製のパネル面を眺めてもらえば何となく機能もわかる。 左の大きなツマミと、その右上に横に7つ並んだレンジボタンで周波数を決める。ほか、各ボタンの機能は絵入りでも書いてあるから難しくないと思う。かなり旧式のアナログ式FGだが、基本的な機能は最新型も同じである。

 発振周波数は下限が1Hz以下の超低周波から上限は数MHz程度が一般的だ。 一つのレンジで10倍以上の可変幅を持つものが多い。 この例では約1000倍である。 また、上下限の周波数を決めてその間を連続的に自動で可変することができる。周波数スイープと言う機能だ。これは被測定系の周波数特性を観測するのに役立つ。

 FGは様々な波形が得られるのが一番の特徴だろう。矩形波、三角波、サイン波のほか、それらをある程度加工変形した波形も可能である。 各波形は振幅が細かく加減できるほか、直流的なオフセット電圧を加えることもできるようになっている。

 これらの機能が詰まった「発振器」がFGと言う訳だ。 他に外部から各機能を制御できるほか、高級機では任意波形の発生機能を持つものも多い。ただし任意波形の用途は限定的だ。自動制御系に与える疑似信号を作るには有用であろう。

 以上のように、広い周波数で色々な波形を発生でき、時間変化を伴う波形も発生できるなど便利な発振器と言える。 しかしアマチュア無線機器の開発では殆ど使うことはない。 私は回路の実験に使っているがそれも時々だ。 従ってお薦めするような測定器とは言い難い。やはり出力信号が正弦波のごく普通の発振器の方を一番頻繁に使っている。

 そんな訳で無線家には縁遠いと思うから、何となくFGが欲しくなって来たらまずは簡単なものの自作をしてみるのがお薦めだ。いきなり市販品に手を出しても使わない(使えない)のでは勿体ない。何か他に投資した方が良い。 そのあたりがこのBlogの目的である。 なお作ってみればすぐ感じるだろうがオシロスコープは必要だ。もし持っていなければそこから揃えなくてはなるまい。

                     ☆

【FG用のIC】
 FGは機能が複雑なので、汎用の部品を寄せ集めて作ろうとすれば面倒なものである。 そこで古くから専用のICが開発されてきた。

 FG用ICの発展史でも書きたい所だが、実は最初に登場したインターシル社が開発したICL8038(写真で一番上)の完成度があまりに高かったため、その後はその焼き直し程度しか登場しなかった。(グレードアップ版にはMAXIM社のMAX-038がある) 唯一独自の開発がなされたのはEXAR社のXR2206くらいであろう。ICL8038にはなかった振幅変調(AM変調)機能が付加されている。 サイン・シェーパも独自形式になっている。

 もし本格的なFGを自作するのなら、これらのICを使うのが最も良いと思う。但し、ICL8038は既にディスコン(廃番部品)であり流通在庫品は有るもののかなり高騰しているのでお勧めしない。 数年前から秋月電子通商が売り始めたXR2206の方をお勧めしたい。 なお、秋月にはマイコン式のキットもあるが少し性格の違うFGのように思う。良く確認して購入されると良い。(参考:XR2206は秋月電子通商でも品切れになった。再開の見込みはないだろうと思う。現在はIC8038の中国版セカンドソースが安価に流通しています。トラ技Jr誌No.35など参照を)

(参考)ICL8038を使った製作記事:歴史の長いICなので過去に幾多の製作記事が存在する。お薦めを一つ挙げるとすれば「トラ技ORIGINAL」誌・No.3の記事が良いと思う。松井邦彦さんのわかり易い解説と詳しい製作・評価記事がある。(P57〜90)絶版と思うが出版社のコピーサービスで入手可能なはず。(→出版社へリンク)
XR2206を使う製作記事:JE1UCI冨川さんがアイコム社提供のサイト・BEACONのエレクトロニクス工作室に公開された記事が丁寧でわかり易い。秋月電子のFGキットをアレンジして製作されている。(→リンク)

【FGのブロック図】(ICL8038の例)
 FGは正弦波発振器とはずいぶん異なった原理で波形を作っている。 コンデンサに電流を流すと電荷が溜まって端子電圧が上昇して行く。 その端子電圧を監視し、ある上限値を越えたところで、溜まった電荷を今度は放電して行く。 下限電圧も監視していて、コンデンサの端子電圧が下限に達したら今度は最初のように充電して行く。 この動作を繰り返すことで波形を発生する。

 コンデンサには一定した電流を流すようにするので、その端子電圧は直線的に上昇する。 放電も一定した電流で行なうので同じように直線的に下降する。 このコンデンサ両端の電圧を取り出すと奇麗な三角波が得られる。 また、端子電圧を監視している電圧比較器の出力はデジタル的に上下するから、この変化を取り出せば矩形波となる。

 正弦波は三角波から作る。 折れ線で近似する方法で振幅が正弦波状に変化するように加工する。 従って最初から歪みのない正弦波を発生させる発振器とは違い、どうしても歪み率は悪くなってしまう。(折れ線の段数にも限度があるので)

 こうして作られた、三角波、矩形波、正弦波は一定の振幅なので振幅を変えるには外付けのアンプやアッテネータが必要だ。 8038には発振周波数を外から電気的に制御する機能もあるのでスイープ発振器にすることも可能だが、それ用の外付けが必要だ。 しかしファンクションジェネレータの発振機能をワンチップに集積しているのでFGの製作はずいぶん容易になる。

参考:ICL8038では充放電を繰り返すのでは無く、充電は継続したまま充電の2倍の電流をを放電することで等価的に上記説明と同じ動作を繰り返している。

【ICL8038の等価回路】
 上記の発振原理をこれだけの回路で実現する。 開発されたのは1970年代も初頭だった筈で、こんな簡単そうな回路でも当時としては集積度の高いICだったように思う。モノリシックICの特性を活かし、非常に旨く考えられた回路である。 すべてバイポーラ・トランジスタで実現しているのも時代を物語っている。(参考:ICL8038の登場は1973年の夏ごろ。当時の単価は2,500円であった)

 こうした等価回路をディスクリート部品で構成しても良い性能はまず得られない。 アナログ集積回路の設計はそこに使ってあるトランジスタは限りなく相似になることを前提にしているからだ。 VbeやhFEが一致するのは当然で、たくさん並んだ部品は全て同じように動くことを前提にしている。 これはIC化したDBM、例えばMC1496などが周囲温度は変わっても良好なキャリヤ・サプレッションが維持できる理由にもなっている。

 ICL8038はレアパーツになってきたが、まさか2SC1815や2SA1015を並べる人もいないだろう。それをするくらいなら別の手を考えた方が建設的だ。無くなったICを個別Trで模しても労多くして・・・のクチになるだけだろう。これからは、マイコン+高性能D/Aコンバータで作るのが主流になって行くはず。

                   ☆ ☆

 ICL8038やXR2206を持っているなら、それを使うのが良い。 しかし8038は既に高騰しているし、XR2206も何時まで供給されるか安心はできない。

そこで、どこでも売っていそうなICで原始的なFGを作って遊ぶのは如何だろうか? 部品代は1,000円以下、組込むための箱も100均で調達すればちょうど良い。

【74HCU04でFGを?!】
 写真はごくありきたりの74HCシリーズのC-MOSロジックICだ。 HCUと言うのは内部のコンプリメンタリFETのアンプが1段だけのインバータだ。(HCとHCUの詳しいことはC-MOSの解説書など参照を)

 この50円にも満たない安価でポピュラーなIC一つでFGが作れるのだと言う。 古いトランジスタ技術誌を整理していて目に止まったので実験してみた。 1999年8月号のトランジスタ技術:225ページである。黒田 徹さんの執筆記事だ。 もしお手元にあればぜひご覧を。

【74HCU04を使ったFG】
 基本的にトラ技に掲載されていた回路そのままである。 多少実用的にしてみたつもりだが本格的に実用にするならサイン波と三角波の出力にはバッファアンプを付けたい。

 いまは性能の良い高速OPアンプが手に入るので、そうした物を使うのが一番確実だろう。 10倍くらい増幅して10Vpp以上得られるようにしておくと便利が良い。 DCオフセットを掛ける必要性は殆ど無いから、AC結合のままで良いだろう。

 振幅はAカーブのVRを使うと幅広く可変し易い。 本格的にはアッテネータとVRの組み合わせにしても良い。 但し本格的なFGなら、やはり専用のICを使う方が良いのでなるべく簡易な線で行くのがこの場合は適当だろう。

【部品実装状況】
 例によってブレッドボードで試作している。 これくらいの部品数の試作には適している。

 高くても数100kHz止まりなので、レイアウトや配線はあまりクリチカルでない。 信号の流れを考えつつスムースに行くようレイアウトすれば誰でも成功する。

 サイン波の波形調整はVR2で行なうが、ここは一旦調整すれば再調整の必要は無いので半固定VRを使う。 周波数可変のVRはCカーブが手に入ればベストだが、Bカーブでも使い物になる。その時は直列抵抗を1kΩ→10kΩにしてレンジ分けを細かくすると使い易くなる。Aカーブを逆向きに使うと言う手もある。

 サイン・シェーパの入口にあるコンデンサ:C2は無極性型の電解コンデンサだ。手に入らない時は倍容量のコンデンサを逆向き直列にしたものでも間に合う。 但しこの方法を製品に使うのは感心しないので、アマチュアの実験用と思った方が良い。 ちゃんとした製品には無極性型(両極性型)電解コンデンサの採用を。

【矩形波】
 市販のFGで発生する矩形波は、ゼロボルトを挟んでプラス・マイナスに上下する波形になっている。 このFGでは、0〜5Vの矩形波である。 ロジック回路に供給するならこの方が便利なのでそのまま加工しなくて良いと思う。 3V系のロジックで使うには電源電圧をそのまま3Vまで下げるだけで良かった。

 なお、ちょっと見ただけでDuty比が50%でないことがわかる。これは使った74HCU04の特性に起因するようだ。 トラ技の記事の試作例ではもっと50%に近い。 記事では東芝製の74HCU04を使っているので交換してみたら面白いと思う。 アナログな回路に使っている関係で、内部デバイスの微妙な違いが性能に現れる可能性がある。

【三角波】
 三角波は別名ランプ波とも言う。 直線性も良く、なかなか奇麗な三角波なのだがDutyが50%でないため、上りの傾斜と下りの傾斜が少々異なっている。

 この原因は、74HCU04の中点電圧(ロジック的に言えば閾値)が電源電圧のジャスト半分になっていないためのようである。 これは内部デバイスの特性で決まってしまうから如何ともし難い。複雑な回路の外付けもしたくはないし・・。

 74HCU04のバラツキかと思い、交換してみたが同じメーカーの同じロット品では顕著な差は見られなかった。 上にも書いたように記事と同じ東芝製でもやってみたい感じだ。

【正弦波】
 あまり奇麗とは言えない正弦波だが、ダイオードの順方向特性で一段の折れ線近似をしただけなのでやむを得ないだろう。 これでも5〜6%くらいの歪み率には収まっているから大したものである。(笑)

 はなから正弦波を目的とするなら、先のBlog(←リンク)のようにウイーン・ブリッジ発振器を作った方が良い。遥かに低歪みな正弦波が苦労なしに得られる。 このFGの正弦波はオマケだと思って使うのならまずまずだろう。 なお矩形波のDutyが50%になれば三角波の波形も良くなり、正弦波の二次高調波も減って2〜3%の歪率にできそうだ。

                ☆ ☆ ☆

 以上、簡単に実験してみた。部品さえ間違いなければ誰がやっても旨く行くだろう。 特殊な部品は一切ないので入手に困ることは無いと思う。 きちんとした基板にハンダ付けで組立て、箱にも入れてやればけっこう重宝するのではないだろうか。 消費電流も僅かなので、006P乾電池を使い三端子レギュレータで5Vを供給する。 超簡易型と言うことで、外付けアンプも省略で良いかも知れない。 週末の工作にでも如何だろうか?


【ほかのインバータではどうか?】
 74HCU04は入手し難いICではないが、誰でも手持ちがある訳でもないだろう。 より一般的な74HC04で行けるなら一層有難い。
 もちろん内部構造がまるで違うのでTTLの7404や74LS04ではぜんぜんダメである。念のため。

 そう思って手持ちにあった同じピン配置の各種C-MOSで実験してみた。 メーカーはバラバラで一貫性がない。(笑) TC40H004Pはやや珍しいかも知れないが、他はごく一般的なC-MOS ICである。さて如何なものであろうか?

【74HC04の三角波】
 内部が三段バッファ・タイプのインバータはゲイン過剰のために高い周波数の発振を伴って旨くなかった。それらしい動作はしていても、これでは使い物にならない。

 そのほか4069UBなら良さそうに思ったのだが、矩形波の過渡部分でインバータの閾値が跳躍する現象があって三角波と正弦波は旨くなかった。矩形波だけなら良さそうであった。

 試した中では40H004Pが多少マシだったが、やはり74HCU04がベストと言うのが結論である。 同じ74HCU04でもメーカーによる違いがありそうなので何社か試してみるとさらに面白そうだ。ほかにMM74C04と言うナショセミだけが作ったC-MOSファミリがあってこの用途に適しているそうだが入手は困難だろう。手持ちが有れば別だが、無理に探すほどの価値は無いはず。もしお持ちならお試しを。

                ー・・・ー

 発振器繋がりで、ウイーンブリッジ発振器の次はファンクション・ジェネレータを試してみた。 こちらも費用が掛からず手軽にできる発振器だが、性能は程々のようだ。しかし、目的・用途によっては意外に役立つこともあるので、何かの時には急場しのぎで製作してみると助かるだろう。 正弦波はオマケではあるが矩形波をそのまま使うよりもきれいな音がするので可変周波数の発振器として十分使い物になる。 ロジック回路のテストには矩形波出力は便利で、それを主に使う目的でインバータのパラで電流容量を倍化してあるようだ。この発振器はこのあたりに主目的があるのかも知れない。

                  ☆

 ファンクション・ジェネレータをテーマにしたのにはちょっとした訳がある。 暫く前になるが、最初の写真に登場したメーカー製:岩通FG-350が故障したからだ。しかも二台とも。 連携して使うケースがあるので同じFGを2台持っていた。それが時を経ずしてまったく同じように故障した。発振しないと言う現象であった。 同一症状なので片方を直せば両方直ったも同然だと思い修理を始めたのである。 しかしどうやっても故障箇所の切り分けができない。暫くつついて半ば諦めてしまった。 だが、有ったものが急に無くなると不便なもので、これは新しく買わなくてはと思った次第。

 しかし、誰しも欲が出るもので機能に目移りすると結構高額であった。 頻繁に使うものでもないので勿体ない。 いよいよの時には自作もやむなしか?と思い実験してみたのである。 まあ急場しのぎなら結構使えるのでは無いかと言うのがここでの結論だ。 ICL8038やXR2206も良いと思うが、これを使い始めるといささか本格化してしまうので簡易型とは行かない危険がある。何時までも完成しなくなるに違いないからだ。(笑)

 FGの修理記を書いても一般性はないから中身を書くのはやめておこう。結果として故障した2台とも同じように修理できた。 原因分離をしていたとき奇妙な現象に気付いていた。 湯船につかっていたとき思い返して、連想でアイディアが浮かんだのだ。「現象から推測し部分的に分離する実験」を試みたら旨く息を吹返したのである。 回路図どころかブロック図さえも無いので、本質的な不具合箇所の特定には至っていない。 しかし症状的に見て迂回できそうな患部をパスして辻褄が合うよう部分改造を施して復活させた。要するに普通の修理では無い。キツネにつままれたような話しで何が何だかわからないとは思うが一件落着して古いFGに舞い戻ってしまった。お風呂のアイディアで直ったのだ。 古い物でも十分とは言え、この際もっと新しいのが欲しかったよなあ。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)

2013年9月14日土曜日

【HAM】Repair the FRDX-400 Receiver

【FRDX-400型・受信機の整備】

【八重洲無線:FRDX-400】
 写真は八重洲無線のFRDX-400通信型受信機である。 数年前に、ご不要とのことでJO1LZX河内さんにお譲り頂いたものだ。 その後お蔵入りしていたが最近になって少々気になる事があったので引張り出してみた。 この機会にどんな受信機だったのか詳しく探ってみよう。

 写真は整備済みであるが、お譲り頂いた時点でかなり整備されていたから見た目は殆どそのままである。 河内さんがレストアをお楽しみになった後ではなかっただろうか。

 1967年に登場した受信機:FRDX-400と送信機:FLDX-400で構成される八重洲F-400ラインと言えば昔の憧れであったように思う。 八重洲からは既に先代のF-100Bラインが出ていたが、400ラインの垢抜けしたデザインには魅了された覚えがある。 しかしSSB受信機の性能を満たしたデラックス・グレードは高価であって学生の身分では遠い存在だった。 いま思えば基本構造は同等だからオプション無しの一番安いスタンダード・モデルを徐々にグレードアップして行く手もあったように思う。それでも高額ではあったのだが・・・。

参考:FRDX-400をはじめ、八重洲無線の旧型機の取扱説明書(回路図含む)はメーカーのサイト(←リンク)から無償でダウンロードできる。八重洲無線の取説は良くできており十分メンテナンスに活用できる。以下もメーカーの資料を参照して行なった。

【FRDX-400の内部】
 基本的に真空管式の受信機である。VFO部とマーカーオシレータ部を除けばあとはすべて真空管だ。 真空管は全部で9球である。オプションのFMユニット装着でもう1本増える。従ってオプション付き本機は10球だ。 チャチなシングルスーパーの9R59/Dでさえ8〜9球なのだから、意外に少ない球数である。中身を見ればわかるが、切り詰めた設計と複合管の採用でうまく実現している。

 回路構成は典型的なコリンズタイプ・ダブルスーパー・ヘテロダインである。 第1中間周波は5,955〜5,355kHz、第2中間周波は455kHzだ。 選択度を決めるフィルタは第2中間周波に入っており、全てメカニカル・フィルタである。
 対象とする電波形式はAM、SSB、CW、そしてオプション装着でFMが受信できる。 FMはFMラジオとは違うNBFM(狭帯域FM)である。

受信周波数は、1.9(160m)、3.5(80m)、7(40m)、14(20m)、21(15m)、28MHz(10m)の各HAMバンドのほか、WWV/JJYとして10MHz帯(30m)が、さらにCBとして27MHz帯(11m)がある。(一部はオプション) このように現在許可されているWARCバンドはない。(図はブロックダイヤグラム。赤字はオプションを示す)

 バンドスイッチに遊びのポジションはないから追加することもできない。 但し、10MHz帯だけはWWV/JJYのバンドで受信できる。 従って18MHz帯(17m)や24MHz帯(12m)を受信するにはどこかのバンドを犠牲にするか、外付けのコンバーターで対応する必要がある。 まあ、そこまでしてこの受信機を使うこともないだろうが・・・。 もしやるとすれば、あまり利用価値のないCBと10Dのポジションだろうか。

参考:オプションで6mと2mバンドのクリスタル・コンバータ(クリコン)が装着できる。10mバンドに周波数変換されるのでVHF帯はトリプル・スーパーとなる。
 
【FRDX-400の内部:底面】
 一部を除いて、ラグ板とワイヤ・ハーネスを使った、昔ながらの真空管機器の手法で作られている。
 オプションのFMユニットはプリント基板化されている。追加の容易さを考えたのであろう。この時代であるから基板はベークライトで片面だ。

 プリント配線を見慣れた目には配線の追跡し難くさを感じる。 部品番号も最低限シャシ表面に刻印されているだけだ。従って真空管のピン番号から追うしかない。 このあたりの感覚はすっかり忘れていた。こうした配線を見るのはCollinsのS-Line以来、ずいぶん久しぶりのように思う。

【FRDX-400:RF部分】
 受信信号は写真上方のマーカー基板裏あたりにあるM型接栓から入ってくる。 写真中央の6BZ6で高周波増幅される。 続いてその右下側、6U8の3極部で1回目の周波数変換が行なわれる。ここは三極管のカソード注入ミキサでローノイズを狙ったのであろう。 第1局発は同じ6U8の5極部を使った変形ピアース水晶発振回路である。プレートの同調回路を切り替えて、基本波を使う周波数と高調波を使う場合とがある。

 アンテナ・コイルとRFコイルは幾つかのバンドで共用が見られる。まず、160mと80mバンドはそれぞれ専用である。 40m、20m、WWVが共用、そして15m、10m、CBが共用だ。 従ってコイルは全部で4組あることになる。 写真の様にバリコンは、FM4連(max21pF)・AM2連(max330pF)を使っている。 そのうちAMセクションは160m、80m、40mのローバンドでのみ使用する。他のバンドはFMセクションだけを使う。

 このようにコイルを共用して多バンドをカバーすると周波数によって共振インピーダンスの変化が大きくなる。 共振インピーダンスが下がる下側のバンドではゲイン低下が起こって不利になる訳だ。 従って15mバンドの感度がやや低いのはやむを得ない。 40mも20mに比べたら不利なのだがゲインの余裕が十分あるようで感度低下は感じられない。

【FRDX-400:IF部】
 第1中間周波:5,955〜5,355kHzでは増幅を行なわない。 古いCollinsタイプでは第1中間周波で増幅する例も見られた。しかし選択性を持たない所でたくさん増幅すると多信号特性が劣化する。 従って必要なければ増幅などしない方が良い。

 FRDX-400の第1ミキサーは6U8の3極部なのでS/Nは良いが変換ゲインはあまりとれない。 しかしRFアンプ:6BZ6で十分増幅されており、ミキサーにもそれなりのゲインはあるので増幅段を省いたのであろう。第1中間周波の同調回路がVFOバリコンと連動するのもだいぶ有利だ。 VFOは2SC372を使った変形コルピッツ型で、5.5〜4.9MHzを発振する。続いて2SC372のエミッタ・フォロワでバッファされたあと、更に6BZ6でアンプされてから第2ミキサーに供給される。また、VFOはFLDX-400とトランシーブするために6BZ6のアンプから外部出力されている。

第2ミキサーはペンタ・グリッド管、即ち7極管の6BE6である。 6BE6はノイズが大きいとか、さんざんな言われ方だが、それは必ずしも正しくない。 6BE6に入る信号がすでに十分大きければ殆ど影響は無い。 むしろこの部分が6BE6なのは混変調特性の点でだいぶ有利だ。 ここに5極管や3極管のグリッド・インジェクション型ミキサを使うのは賢明でない。それらを第2ミキサーに使うと混変調の温床になってしまう。(左図面は本機・初期型で八重洲無線のサイトからはダウンロードできないもの。高解像度版は「コールサインと氏名」(必須)を明記の上でリクエストを。大人の常識を欠く失礼なメールには返信しません)

 このあたり、7360など適当かと思うが実は6BE6でもけっこう行ける。これはやって見ればわかる。 6BE6の混変調特性は悪くないし、第2ミキサーに使うのならS/Nでも有意差は見られない。IF周波数は離れているので、平衡型ミキサーである必要もない。 7360幻想を抱かれているお方には申し訳ないが実際はそんな所なのである。各メーカーがあえて高価な7360を受信部に使わなかった理由が良くわかる。プロの『良い設計』とはそう言うものなのであろう。 既にFT-50(HF帯のSSBトランシーバ)のころから7360を扱ってきた八重洲無線が受信部への活用を知らぬ筈もなく決定的な違いがあったなら当然採用していたと思う。もちろん幾つもの使用例が示すごとく送信用バラモジには有利なデバイスだった。だからと言って今どきそこだけ真空管と言う訳にも行かぬが・・・(笑)

 第2中間周波増幅では、まず初めにメカニカル・フィルタ(メカフィル)で帯域制限される。フィルタはオプションが多いが、CW用600Hz、SSB用2.4kHz、AM用4kHz、FM用が24kHzの各帯域幅である。(写真ではCW用は未装着) AM用は東光製の簡易型メカフィル2個なのでトリオ9R59D並の選択度である。但しもっと良いAMフィルタに交換し得る。 フィルタを出た後,12AT7(半分)のカソード・フォロワを通り、同じ12AT7の半分を使ったTノッチ(次項参照)を通ってから6BA6で2段増幅される。

 その後、各検波回路へ導かれる。 FMの場合はさらに6U8の5極部でリミッタされフォスターシーリー回路(変形)で検波される。SSBとCWの検波は1S1007を4つ使ったリング検波、AMは普通のゲルダイによる検波である。各復調信号はSi-Diを使ったANLを通ったあと6BM8で低周波増幅されスピーカー(外付け)を鳴らす。 なおSメーターは中間周波増幅の2段目:6BA6のプレート電流変化をブリッジで読む形式である。 AGCはRFアンプと2段の中間周波増幅に掛かっている。

 写真のようにCWフィルタは未装着であるが、中心周波数が455kHzの狭帯域フィルタ装着には問題がある。それを付けてしまうと約1.5kHzのビート音でCW受信することになってしまう。 BFOの発振周波数をCW用に切り替えられないのだ。 このあたりの欠陥があるのでSSBフィルタのままリジェクション・チューニングを駆使しながらCW受信すべきなのかも知れない。オーディオ帯のピークフィルタを付加するのも効果的だ。 もちろん、BFOを改造してCW用水晶を追加すると言う手はある。もっと単純にはCWの時だけBFOクリスタルを差換えてしまえばよい。キャビネットの上蓋を開ければ簡単に交換できる。追加クリスタル用の穴もあいているから、はなから改造を考慮していたようだ。

【リジェクション・チューニング】
 Tノッチとも言われるもので、鋭いディップ特性で、不要な混信を除去する働きをする。 主にCWの近接混信除去かAMのビート混信軽減用だろう。

 単純なTノッチではQが低くて主信号にも影響が及ぶので、12AT7(片側)を使って正帰還を掛けた一種のQマルチになっている。同様の回路はCollinsのHAM用受信機:75S-3にも採用されていたから、それを意識したのであろう。

 いま、CWを受信していて、少し離れた所に耳障りな混信があるとする。 パネル面のRejection Tuningと言うツマミを慎重に回して行くと、その混信を消去できるところがあるはずだ。 この機能は混信除去としてはなかなか優秀であり、後世の受信機にも採用例がある。

 なお一種のブリッジ回路を使ったアナログな装置なのでバランス調整がとても大切だ。 最良の除去性能を発揮させるためには写真のVRとコイルを良く調整しておく必要がある。 暫く使うとややずれて来るので、時おり再調整が必要だ。 うまく調整しておけば常に60dB以上のリジェクションが得られるだろう。かなり有効な機能なので使わない手は無い。 なおこの機能をOFFする方法は面白い。 OFFのポジションでバリコンの羽根どうしがショートするようになっている。 コイルの両端が短絡される形になってTノッチをパスすることができる。(このあたりも75S-3の真似っぽい)

【マーカー発振器】
 アナログダイヤルの受信機にとって、マーカー発振器は必需品だ。 頻繁に近傍の校正ポイントでダイヤルをキャリブレーションしないと周波数読取り精度が上がらない。 

 大きなクリスタルは100kHz:HC-13/U型である。 100kHzを発振させたあと自走マルチバイブレータに同期を掛け25kHzマーカーとしても機能するようになっている。 自走周波数が25kHzからずれるとうまく同期しなくなるので、その時は基板中央のVRを加減する。 なおWWVと校正するときは25kHzの状態でやると良い。 100kHzでやると25kHzに切り替えた時に少し周波数がずれるからだ。 従って25kHzの状態で良く合わせておくべきだと思う。

 マーカー発振器はトランジスタ化されている。2SC367と言う非常に古い東芝製のシリコン・トランジスタであり足は金メッキまでされている。hFEのランク分けも頭にカラードット表示である。 もしもこれらのトランジスタがダメになったら2SC1815等の汎用品で問題なく代替できる。

【AGC時定数のコンデンサ】
 ここから先は少しばかり修理と改造の話しになる。

 写真の大きな緑のコンデンサはAGC時定数用コンデンサである。 受信していてAGCのSlowがおかしかった。AGCの動きがSlowにならぬばかりか復調歪みも感じた。 Slowの時には1μFが追加され、放電時定数が長くなるようになっている。ごく単純な回路なのである。たぶんそのコンデンサが悪いのだ。AGC回路で電流リークがあればAGCの効きが悪くなってIFアンプで歪んでくるだろう・・・。

 1μFには小型の電解コンデンサが使ってあったがリークしているらしい。古いから絶縁低下もやむを得まい。 そこで今度は劣化し難いフィルムコンデンサに交換しておいた。 まあ良質な電解コンデンサでも十分なのだが、間違いない所と言うことで。ちょっと図体がデカイが。(笑) これでAGCのSlowも正常な動きになった。復調歪みも改善された。

 なお、FRDX-400のAGC回路は本格的に改造すべきだと思っている。 これは過去のFR-100B改造の経験からだ。 外観はともかくFRDX-400とFR-100Bの回路は瓜二つであり、当然AGC回路も似通っている。 FR-100Bでは増幅型AGCに改造し十分チューニングしたところまるで別の受信機のようになった。 FRDX-400も同じように改造すれば非常に良くなると思うので、いずれ実行したい。(なお両機の比較では、半導体化されたVFO部は明らかにFRDX-400の方が良い。それを除けば似たようなものだ)

【BFOのリプル対策】
 CWの受信音が何となく『ブザーチック』である。澄んでいなくて、オーバーに言えばブザー音のように聞こえる。

 どこかの発振部がハムっているのが原因だろう。取りあえず、疑わしい455kHzのBFOにフィルタ・コンデンサを追加してみた。 電源からのリプルを軽減する目的である。 これはけっこう効果があって、だいぶマシな感じになった。

 ここだけでは片手落ちかもしれないので、第1局発やVFOも見直した方が良さそうだ。そうすれば更に良くなるだろう。もちろんSSBの受信音にもかなり影響する。 何となくスッキリしないのはそのせいかも知れない。 このFRDX-400は初期型なので、VFOの安定化電源もツェナーDiオンリーの簡易型なのでそれも何とかすべきだ。

                 ☆ ☆ ☆

【調整】以上、補修などして各部が正常なことを確認してから全般的な調整に移った。 FRDX-400のようにHAM用として必要最少限の回路構成でできた受信機では調整が極めて重要だ。 同じ短波ラジオでもBCL用のごとく強力な放送局が相手ではないからだ。 時に空間ノイズぎりぎりの信号のお相手をすることにもなる。 受信機の各部が最良の感度で働かないとHAMの使い物にはならない。 僅か数dBが勝負になるので、きちんとした調整を行ないたい。
 しかも各コイルのコアやトリマコンデンサは過度の調整頻度には耐えられないから、適切な状態に最低限の調整回数で追い込む必要がある。 過剰な調整でコアやネジが「ゆるゆる」になってしまえば、今度は機械的に安定な動作が損なわれてしまう。(振動や環境変化で容易に調整が崩れる受信機になる) だから手順を良く読んで内容を理解するとともに適切な道具と環境を揃えてから調整を始めよう。

 調整は取扱説明書の手順がよい。 低周波段、すなわち後ろの方から始めて、RFアンプの方へ遡る方法だ。 検波及びIFアンプ部分は殆どずれていなかったので、僅かな再調整で済ませることができた。 しかしRFアンプ部のトラッキングは幾分ずれが大きかった。 コイルのコアを調整するバンドとトリマコンデンサの方を調整するバンドがあるので,順序に従わないとうまく調整を完了できない。 きちんと調整が済むとプリセレクタの効きがシビアになったのがわかるだろう。常に感度のピークになるようプリセレクタつまみを操作し最高感度で受信する。余分なゲインのない受信機では非常に重要な受信操作だ。

 ちなみに14MHz/CWでは0dBμ(SSGのEMFなので受信機入力では0.5μV)で十分なS/Nが得られ-20dBμまで実用的な感度があった。-30dBμあたりでセットノイズに埋もれてくるようである。 空間ノイズを考えればHF帯の受信機として感度は十分だと考えて良い。 ただしゲインに余裕がないからごく弱い信号を聞くにはAFのボリウムを上げてやる必要がある。このあたりは後世の機械のようにゲイン過剰でAGCがいつも深く掛かるようになっている受信機(受信部)とは違うところだ。 40dBμ(EMF)でS-9になるが、S目盛一つが6dBと言うのはこの受信機に限らず多分にマユツバだと思う。hi

【Your 59-Over!】
 今どきの黒っぽい受信機やトランシーバばかり見慣れていると、FRDX-400はずいぶん新鮮だ。レトロと言うよりモダンを感じるくらいである。

 このFRDX-400はかなり初期型らしくダイヤルの1回転は50kHzである。昔のダイヤルはこんなものだったのだ。それでも100kHzダイヤルの軍用受信機:R-390A等よりも扱い易い。 AMならまったく問題ない減速比で、むしろクイックで使い易いほどだ。 他の部分も初期型の特徴があって最初のオーナーは発売から間もない1967〜8年ころ購入したのではないか。 作られて40年をゆうに過ぎている。いやむしろ50年に近い。 だからこれは昭和モダンと言うべきか。(笑)

 十分減速されたダイヤルに慣らされた指先に、SSBはちょっとチューニングがつらい。 しかし昔のようにゆっくり慎重なダイヤル操作できちんと音になる。 そんな感触を思い出しながら操作を楽しむことができた。 周波数が細かく読めないのは何ともフラストレーションを感じるが、それとてじきに慣れてしまった。子供のころこんな受信機があったら楽しかっただろうなあ・・・と思いながら。“ やっぱ9R-59Dよりいいよなあ! ”(←あたりまえ・笑)

 いずれのRigも発売はわかっても生産終了の時期を知るのは難しいものだ。F-400ラインも同じである。 学生HAMが多く手狭なシャックが多かったJAではトランシーバが好まれた。だからF-400ラインが爆発的に売れた形跡はない。しかし、少ないながらもセパレート機には根強い人気があった。 実際に参照した最後期らしいF-400ラインの保証書には1972年6月の日付がある。ボールドライブ減速の100kHzダイヤルの最終型だ。発売から5年以上経過している。 確かなのはF-101ライン登場の1973年末頃までのようで7年に及ぶ息の長い製品だった。或はFTDX-401と同じように東芝の受信管製造が終了する1976年ころまで作られていた可能性もある。

                   ☆

 現在の視点で見たら様々な不満を感じるだろう。しかし本質的な部分は押さえてあるのできちんと整備すれば取りあえず実用範囲にある。 ただし便利機能満載の現代的RXがシャックに溢れている状況であえてこれを使うのかと言えば、やはり「ノー!」ではないか。 それでも良く調整したお陰だろうか、14MHzや21MHzあたりもなかなかFBに聞こえて来た。DXingのお供ができそうなのは、流石にコリンズタイプ・ダブルスーパーの威力と言えそうだ。周波数安定度も高一中二のような際どさは感じられない。

 僅か10本の球と数個のTr+Diで実用にしているのだから、今のリグって幾つ能動デバイスを使っているのだろうと考え込んでしまう。ICの中身まで考えたら気が遠くなるほどだ。 もちろんコストの問題もあるが、発熱するので無闇に球数は増やせなかったのだろう。少ない能動素子を活かせば通信型受信機くらい立派に作れますよと言う見本のようなものだ。もちろん、電気的な助けを多くは期待できないので機械的に実現している部分も多々あるのだが・・・。真空管機は『Boatanchoer』などと揶揄されもするが、FRDX-400はコンパクトだしアンカーにしては少々重さが足りない。取り回しは楽々だった。(笑)

 今どき真空管式の受信機なんて・・・と言う声も聞こえてきそうだ。回路屋なりの解釈なので、どこぞの雑誌記事とは色合いの違った解釈になったかも知れない。例によって、これは娯楽用の読み物Blogであって、何の役にも立たぬものだ。単なる個人の戯れ言なので、異論や反論は馴染みませぬ。どうぞ、そのおつもりで。 しかし昼休みのお暇を十分につぶせたのではありませんか? こんなお話でよかったらまた何時か。(笑) de JA9TTT/1

(おわり)