【JRC:NRD-72型受信機の修理】
【NRD-72故障す】
まったく故障しない機械など存在しないでしょう。しかしJRC:日本無線製の通信型受信機:NRD-72が再び故障したのです。以下、簡単な修理記録として纏めておくことにしましよう。 コレをお持ちのお方でも同様の故障をするとは限りませんから参考にはならないでしょう。 以下、持ってないお方には単なる暇つぶしでしょう・・と言う訳で、もしお暇ならどうぞ。
この機体が製造されたのは1979年のようです。 既に35年が経過していますからどこか不調になっても不思議ではありません。前回の修理は5年以上前だったと思いますから、それ以降はノートラブルでした。 少し接触不良が出るのはやむを得ません。古いのに立派なものと言えそうです。
写真は正面パネルの左側部分です。 Sメータはこのように0〜10までの目盛になっているだけでアマチュア機のようにS目盛ではありません。プロの通信士は通信ができれば良いので、シグナルレポートの交換などしませんしアンテナが変われば指示値が変化するSメータなど飾りでしょう。
流石に、この時代の受信機ともなればSメータを頼りにチューニングして最良点に合わせるなどと言う受信操作はせず、あらかじめ決められた周波数に数字を合わせるだけで事足りたはずです。 Sを見ながらワッチなどBCLやアマチュア無線家の楽しみです。(笑)
【周波数は飛ぶ】
メインダイヤルの回転に対して周波数がスムースに変化せず飛ぶようになりました。 写真で100Hzの桁がおかしいのです。 0,1,2,・・・・9,0と順に変化しません。
この桁は1kHz/0.1kHzのステップ切換えスイッチでスルーにすることができます。 スルーにしてダイヤルを回すと1kHz単位の変化になります。 その状態では正常に周波数のアップダウンが可能です。従ってロータリ・エンコーダの問題ではありません。どうやら一番下の桁のカウンタ部分に異常があるようです。
前回の修理でもこの部分に異常が発生しました。 ダイヤルが一方向にしか変化しなくなったのです。 パネル面にあって、最初に外気に曝されるこの周波数表示ユニット:CDE-52は故障し易いようです。 このNRD-72も船舶に搭載されていたらしいので潮風が入ってくる環境に長年おかれたのでしょう。 NRD-72は密閉構造ではありませんから、スイッチや表示部の隙間から外気はお構いなく浸入したでしょう。
#どうも外気に曝された部分に故障が多発する印象があります。
【NRD-72の中身】
同社のアマチュア向け受信機やトランシーバにも採用されている構造です。 底部のマザーボードのソケットに各機能ブロックを搭載したプラグイン基板が差し込まれます。 Collinsの651S-1あたりから採用された構造でしょう。ボードエクステンダが必要なので、メンテナンス性は良くないと思いますが製造には有利だったのでしょう。
左から入力のLCフィルタ、RFアンプとミキサー、IFフィルター・・・・と言う順に並んでいます。 電源部は右の方にあります。 AC100VとDC24Vで動作します。 なお、故障が発生したユニットは正面パネル裏に搭載されています。 ダイヤルツマミを全て外し左右のラック・ハンドルを止めるネジを取ると前に倒れます。基板はフレームから取外さなくてもある程度のメンテナンスできます。
【周波数表示の裏側】
写真の左上に見えるのが周波数ダイヤルのロータリ・エンコーダーです。 光学式のロータリ・エンコーダーで、かなり大型のユニットです。 耐久性を考えて非接触形式にしたのでしょう。 しかし、意外に故障が多いのも事実で不具合になっている機体もかなりあるようです。
周波数表示ユニットは、このロータリ・エンコーダからのアップダウンパルスを拾って、周波数表示を行なうとともに、PLL回路にデータとして渡す役目を持っています。 一番下の桁が悪い場合に疑われるICは数個に限られていて、動作解析の結果からIC17:TC4510BPが最も怪しいことがわかりました。
写真では褐色のフレキシブル基板(FPC)が目に入るでしょう。 これは基板ユニット間を繋ぐ配線用です。束線のワイヤ・ハーネスではなくこうしたFPCを使ったのは配線の合理化と確実性を追求してのことと思います。しかし修理などメンテナンスの際には障害になるので一長一短です。
FPC上に見える細い青色の電線はLSBモードを追加した際の配線です。NRD-72はプロ用なのでSSBと言えばUSBモードです。しかし配線の追加でLSBも受信可能になります。デジタル周波数表示もキャリヤ・センターなのでLSBモードを追加しても支障はありません。
【IC17:TC4510BPの周辺回路】
TC4510BPは標準的な4000/14500シリーズC-MOS ICです。 一桁のアップダウン・カウンタで特殊なICではありません。手持ちにはありませんが、各社からセカンドソースが出ていたので交換部品の入手は少しも心配していませんでした。 回路に見える周辺のゲートICも同じで、4001や4049と言ったポピュラーなデバイスです。故障原因さえ究明できれば修理に困る筈はありません。
そう思っていたのですが苦労しました。 4000シリーズのC-MOSも市場から徐々に姿を消しつつあるのです。 4001、4011や4049と言ったポピュラーなゲート類ならまだ支障なく手に入ります。 しかしMSIの4510Bは入手困難でした。用途が限定されているからかも知れません。 もちろん秋葉原のお店を虱潰しに当たればどこかに在庫があったかも知れません。 しかし、若松、千石、鈴商ほかラジオデパートやセンターのメジャーな数軒を当たってもどこも在庫はありませんでした。通販のサトー電気にもありません。最後の手段で世界中から探して海外通販する手はありそうですがこれ一つと言うもの・・・。
はたと困ってしまったのでJE6LVE高橋さんに相談してみました。少々古いようですが、お手持ちがあったほか大阪・日本橋のお店にも当たって頂きました。 数軒回って発見できたそうで送って頂くことができたのです。 LVE高橋さん、どうも有難うございます。お陰でこうして立派に直りましたよ。
#原因はほぼ特定されているので部品さえあれば直ったも同然だったのですが・・・。
【4510Bを交換す】
両面スルーホール基板なので、良くハンダを除去しないと配線パターンを傷めてしまいます。 また、潮風と年数の経過とで基板は弱って来ているので丁寧な作業を心がけました。
写真中央が交換したIC17:4510Bです。 オリジナルは東芝のTC4510BPでしたが、交換品はTI・RCA系のCD4510BEです。モトローラ系のMC14510BPでも良いでしょう。 ロータリ・エンコーダと言う人間が相手のインターフェースですから、ICの動作速度など影響はないので「4510B」なら何でも大丈夫です。 交換したら正常に動作するようになりました。 めでたし、めでたし。
この写真の4510Bの右にあるTC4001BPは以前交換したものです。 聞くところによれば、前オーナーがそのほかにも交換しているとのことなので、やはりパネル面寄りの基板は故障率が高いようです。
☆
【NRD-72のRFアンプ】
せっかくNRD-72を開けたので、特徴的な部分を少しだけ紹介しておしまいにしましょう。
写真はRFアンプ基板:CAF-50を引き出した状態です。 裏返しになったトランジスタが目に入るでしょう。 これがNRD-72の高周波増幅です。 2SC1164-Oと言うトランジスタがPush-Pullになっています。 小さなヒートシンクが付いていますが、これはそこそこ電力を喰わせているからです。
それぞれ15mAくらい流れています。コレクタ電圧は15Vで、CE間には12Vほど掛かっています。200mWくらいの消費電力ですからそのままと言う訳には行かなかったようで、小型のヒートシンクが付いています。 なお、振動など考慮してヒートシンクを基板にネジ固定する関係で裏返して搭載したようです。足が長くなりますが30MHzまでの受信機ですから影響はありません。
【RFアンプの回路】
アマチュア無線では、RFアンプと言えば2SK241や2SK125などがポピュラーです。 こうしたバイポーラ・トランジスタ(BJT)を使ったRFアンプはあまり見ません。大昔の半導体受信機にはBJTのRFアンプもありましたがそれとはまったくの別物です。
実は、こうした形式のアンプはなかなか優秀です。使ってあるトランジスタはCATVの中継器用に向けて開発されたもので、直線性に優れています。CATVの中継器にあっては多重化された多チャンネルの信号を一括して広帯域増幅する関係で、混変調や相互変調を非常に嫌います。目は耳以上に鋭敏であり、僅かと言えども画質の低下は視覚的にすぐわかります。要するにIP3やIP2は十分大きくなくては使用に耐えないのです。 ですからそれ専用のデバイスが開発されました。 従ってデバイスの性能に依存しますから回路だけを真似ても真価は発揮できません。 ノイズ・フィギャもHF帯用としては十分低く、広いダイナミックレンジが得られるRFアンプです。 消費電力が大きい欠点の他に、デバイスのコストが掛かるのでアマチュア機で同様のデバイスを実際に使った例は杉山電機のF-850(但し簡易型)くらいしか見たことがありません。(稀な例として、トランシーバ・キットでも簡略型が見られました)
ずいぶん前に扱った、Collinsの651S-1A受信機ではいきなりJ-FETのppミキサーで周波数変換していました。 おそらく、感度的にはそれでも十分行けるのでしょう。 しかし局発の漏れによるスプリアス輻射ほか、妨害特性の点ではRFアンプがあった方が有利なはずです。 HF帯のハイバンドではなるべくNFを下げたくなって来ますのでやはりRFアンプは欲しくなります。 広いダイナミックレンジを確保しつつ、良好なNFを得る必要からJRCの受信機ではこうしたRFアンプが付加されているのでしょう。
ほか、ミキサーが2SK19BLなのはIdssが大きなJ-FETを使うと言う常套手段です。今ならJ310のような外国製J-FETの方が入手性は良いです。もちろん、2SK125があるならそれも良いでしょう。 しかし、昨今では高IPのミキサーはスイッチング・タイプに移行する傾向にあります。 これからはD-MOSを使う形式が台頭するはずです。 Bus-SW用ICも同様にD-MOSであって周辺回路が集積されていて使い易いものです。ミキサー話しはまたいずれ機会があれば。
【2SC1164の素性】
あまり入手し易いトランジスタではないので簡単にしておきます。 同様のデバイスとしては、NECの2SC1252の方が有名です。たぶんそれもディスコンですが、RF用パッケージに入った面実装タイプのCATV用トランジスタが今でも作られています。
コストが厳しく、そうでなくても昨今のアマチュア機は受信時の消費電力が過大な傾向にあります。 ですから無条件に採用するのは難しいかも知れませんが、一度検討してみる価値はあるでしょう。 バス・スイッチのDBMと同じで、ここでこう書いておくと何時の日にか良い性能のRFアンプがアマチュア機にも搭載される時が来るかも知れません。(笑) RFアンプのデバイスは2SK125/J310/SST310ばかりでありません。こうしたバイポーラ・トランジスタを使ったRFアンプなど如何でしょうか?
まあ、今ならノイズレス・フィードバックのノートン・アンプ・・・もちろんPush-Pullタイプを使ってゲインの平坦化と低歪みの追求を図るのがトレンドです。 その為にはもう少しゲインの取れる石がベストチョイスかも知れません。
そのほか、IFアンプなども面白い回路になっています。詳しく見て行ったら興味深いこともありますが、始めるとキリがないのでまた何時か機会でもあったらにします。
☆ ☆ ☆
JRCのNRD-72とかその上位の受信機は安定した性能なので使っていて安心感があります。だまって過不足なく受信できる安心・安定感はさすがです。 ところが操作していて何か楽しいかと言えば、あまりそう感じません。 当たり前に受信できる機械はプロにとっては頼りになる存在でしょう。 空気のような存在と言ったらわかり易いでしょうか。 なければ困りますが、普段は特に意識などしない存在なのかも知れません。 プロの通信士を惚れさせた小林無線とは対極にある受信機のようです。
今でもプロ用受信機・業務用受信機に憧れを持つ人がたくさん居られます。 堅牢で確実な動作をしてくれるのは流石だと感じさせてくれます。 しかし、こうした受信機で聞こえるときは今のアマチュア機ならどれでも立派に聞こえます。 昔のようにプロ用とアマ用の性能差は無くなっています。 プロの通信はチャネルが割り当てられていましたから普通は混信など滅多にありません。従って混信除去能力は限定的です。一方、アマチュア無線は大違いです。混信対策の機能を考えれば今どきのアマ用の受信機なりトランシーバはとても優れものです。もちろん製造技術の進歩で信頼性だって侮れません。 de JA9TTT/1
(おわり)
2014年4月15日火曜日
2014年4月1日火曜日
【電子管】Restoration of a tube radio SR-100K
【STAR SR-100K型ラジオを復活する】
【春の色】
やっと春になりました。 2月の2回の大雪でずいぶん足踏みをした春です。 スイセンや鮮やかな黄色のレンギョウもやっと開花したと思ったら桜がやってきました。 北国の春と一緒で一気に花の季節を迎えています。
春は出会いと新たなスタートの季節です。 学生時代は遠い昔のことになりましたが、なんとなくわくわくが4月とともに蘇ってきます。 もう一度初心に帰って・・・と言う訳でもありませんが、古いラジオのレストアでも辿りながらあのころを思い出しつつ書き綴ってみましょう。 何か新規性がある訳でもありませんし役立ちもしないとは思います。もしお暇ならお付き合いでも。もちろん自身のレストア記録が目的なので記述の過不足があっても悪しからず。
#真空管でノスタルジックな話しと言うより意外に近代的だったりします。(笑)
☆ ☆ ☆
【SR-100K発掘】
子供の頃から何回も引っ越ししています。運ぶ価値の無いものはその都度捨てられました。 ですから子供の頃の思い出と言えばアルバムくらいです。
このラジオキットが残っていたのはそれなりの思い入れがあったからです。捨ててしまう気持ちにはなれなかったのです。 数年前に古い家を取り壊した時にも再整理しました。このラジオはその際に持ち出して屋根裏の奥深くに仕舞われていました。
昨年の春頃から始めたシャックの整理で発掘されました。 STARの受信機キット・SR-100Kと言うものです。段ボール箱に入っていたから残ったと言えそうです。
【私のSR-100K】
取り出して久しぶりに灯を入れてやりたいと思いました。
ですが、確かめたらそうも行かないことがわかりました。 年数の経過だけが理由ではありません。 昔々、製作技術が稚拙だったころの作品です。 理屈も良くわからず行なった改良(改悪?)が随所に見られました。 ですから写真のように無事に通電できたのは全てのことが済んでからのことです。
パネル面の登場はここだけなので少しだけコメントします。 まず、ラジーケータのSメータはオリジナルにはありません。これは以前の改造で取り付けました。 ほかバリキャップを使ったスプレッドや意味不明のジャックが数個追加されていましたがすべて撤去しました。空いた穴は埋め戻しました。いろいろ改造して遊んだ痕跡があったわけです。
【SR-100kの回路図】
入っていた段ボール箱の文字を良く見ると、Communications Receiverとあります。要するに「通信型受信機」と言う意味です。 でも、回路を見れば一目瞭然、たんなる4球スーパーです。 整流管がダイオードに置き換わっていますが、トランス付きの「5球スーパー」と同じ回路構成です。 B電圧が低く回路電圧はトランスレスのラジオ並です。 ですからAFのパワーはあまり出ませんがそれで不足ではありません。十分うるさく鳴ります。
もちろん同じ5球スーパーのような受信機にはDELICAのCS-7やTRIOの6R4Sのような「通信型」と呼べるものもあります。STARならSR-40Kが同類です。 ですがSR-100Kは純然たる家庭用スーパ・ラジオのキットです。回路だけでなく部品からも伺えます。この先、明らかになって行くでしょう。
【こりゃ通電不可だな】
家庭用ラジオだって案外侮れません。中波放送くらいうるさいほど良く聞こえるのが普通です。 ですから、久しぶりに灯を入れてみたかったのです。
しかし、ちょっと待った!
上から見たら球も所定の位置に刺さっていて大丈夫そうですが、シャシの裏をみたらどうにも危なっかしいのです。 それにもう何10年も通電していないので、いきなり通電は危険過ぎるでしょう。
中身を見て駄目そうでしたから捨てようとも思いましたが音を出してみたい一心で修復することになったのです。 これは平成の大修理です。(笑) 途中の写真は省略しますが要するに「完全分解+再組立」です。部品も怪しいので確かめながら使いました。新品キットの倍以上の手間がタップリ掛かりました。
【IFTとIFアンプ】
手前の真空管は周波数変換の6BE6です。 IFTに挟まれたのが中間周波増幅の6BA6です。
使ってあるIFTはごく一般的な物のように思えます。要するに家庭用ラジオと同じです。
IF1段用のIFTでもTRIOのT-6型のような通信用とはだいぶ違います。これは通信機用の性能を追求したものでは無いでしょう。このIFTですがすこし怪しかった記憶もあるので確認してから再利用すべきです。
【IFTの確認】
たとえばバリコンや電源トランスと言った主要部品はそのまま使うしかありません。 IFTはどうしても駄目なら代替品に換える手もあります。 あるいはあっさりラジオと割り切った使い方でしのぐことも必要でしょう。
さっそく内部を確認しました。 同調コンデンサはディップド・マイカコンデンサです。 IFTテスト治具で特性確認したらIFT-Aは正常でした。 IFT-Bは2次側の同調がだいぶずれていて、正しく調整されていなかったようでした。 二次側コアを正しい方向へ回して行くと一旦信号レベルが下がるのです。コアを回す方向が逆だと勘違いする状態になっていました。 特性直視装置で観測しながら再調整したので間違いませんでしたが、放送を受信しつつ調整していたなら現象は良く理解できなかったでしょう。
#配線のストレー容量を見込んだ再調整を行なって再利用に備えることにします。
【ウエファ型ソケット】
真空管のソケットはウエファ型です。 しかも最初からシャシにリベット止めでした。 リベット止めは家庭用の量産ラジオでは常套手段です。
このソケット、何回も球の抜き差しをしました。 配線の付け替えもたびたび行なったので相当「へたって」います。 そのままでも何とか使えそうにも見えましたが、一旦外して超音波洗浄くらいしたいです。
配線を撤去した後はシャシの清掃も必要なので一旦ソケットは撤去しました。結局、外してみたら程度が良くないので新品に交換したくなりました。
【ステアタイト型に交換】
真空管ソケットは全部交換しました。 ラジオごときにステアタイトのソケットは贅沢でしょう。 しかし手持ちにウエファ型はないし、ベーク・モールド型もありません。
ステアタイトをこの際使いました。 たぶん、持っていてもこの先使う機会はないでしょう。 こうしたソケットも近ごろは中華モノが出回っています。 但しこれはずいぶん前に購入した国産品です。
タイトソケットはウエファ型とは取付けネジの間隔が異なります。 鉄シャシをヤスリで削って穴間隔を広げてやらないと止められません。その加工が修復作業の中で一番面倒でした。
新品のソケットを使うなら、いらない球で「足慣らし」を数回やってから使うと安心です。 もし中華ソケットを使うなら寸法精度に注意しましょう。 しっくり来ないソケットは使わぬ方が良いです。金メッキされてはいても寸法誤差が大きいのは困りものです。
【出力トランスも交換】
オリジナルとは違うアウトプット・トランスに交換されていました。使用中に断線したので手持ちで間に合わせたようです。出力管:6AR5にはミスマッチなので秋葉原の東栄変成器でT-600型を買って来ました。 T-600は小さな出力トランスですが、それでもオリジナルよりも大きくて取付け穴の追加が必要でした。
5極管:6AR5シングルの無帰還アンプです。トランスも小さいので低域再生は望むべくもありません。 むかしの真空管ラジオらしい歯切れが良く明瞭な音がします。 音質改善の目的で6AR5のプレートと6AV6のプレートを高抵抗で結び、局部負帰還を掛けていた痕跡もありましたがオリジナルを尊重してそのままにしました。 ラジオチックな音なのは当然です。もちろん低周波出力は大きいしスピーカも大きな分トランジスタラジオよりマシな音がします。
【AFゲインVRの交換】
音量調整は500kΩのスイッチ付き(S付き)VRが使ってあります。 電源スイッッチを兼ねた音量調整VRはラジオを使う都度回すことになるので損耗しやすいのです。 過去にも交換した記憶がありましたが、調べたらやはり使い物になりそうにありません。新しくすることにしました。
もっと良い物が欲しかったのですが、500kΩのAカーブでS付き、しかもローレットの短軸ともなると秋葉原でも売っている所は限られます。 使える物が見つかったのはむしろラッキーでした。 このVRはAカーブの具合がJISとは違うらしいのと、左に回し切ってスイッチOFF直前の所に残留抵抗があってあまり芳しくありません。しかし他には無いので仕方ありません。もちろん使えない程ではありませんが無名の品の寿命は短そうです。最近秋葉原に多い中華部品のようです。
【バンドスイッチは清掃で】
バンド・スイッチは4回路2接点のロータリ型です。 まだALPSほかで良い物を売っています。 しかし上のVRと同じようにローレットの短軸と言うものは近ごろ見かけません。 ツマミごと換えてしまえば良いのですが、それでは外観が別物になってしまいます。
状態を見たら,接触不良は酷いもののガタもなく接点の状態は悪くないようでした。 良く清掃・整備して再利用することにします。 コンタクトスプレーほかケミカル品で接点クリーニングをしたあと有機溶剤も使って超音波洗浄しました。 完全に脱脂されてしまったので、必要部分に潤滑しました。 まだいくぶん接触状態に不安定さも見られますが概ね良好になりました。
バンド切換えのロータリ・スイッチからは12本の配線が出ます。初心者にとって間違い易い部分です。キットの組立て説明書では拡大図で詳しく説明されています。 いまでは接点構造ほか回路も熟知しているのでこの程度ではまず間違いません。大人になって少し上手になりました。(笑)
【シャシ下面全景】
写真の下側が正面パネル側です。シャシの四角い切り欠き部分にバンドスイッチがあります。 2つ見えるマイカ・コンデンサはパッディング・コンデンサです。 容量を確認したら正常だったのでそのまま再利用しました。 シャシ中央付近に見える2つのコイルは「局発コイル」です。
そのほか、多くのCR部品は新しい物に交換しました。回路定数はオリジナルを尊重しつつ、もちろんE系列から近似値を採用します。 コンデンサは耐圧の必要な物とそうでない物を考慮して同一容量でも種類を変えています。これは耐圧の高いコンデンサの手持ちが限られるからです。 高周波部では卵ラグを随所に追加してニアバイアースに備えました。
配線は奇麗とは言えませんが、高周波回路を意識してバイパス・コンデンサは最短で落としています。 また、ヒーターや電源一次側など、ACが通る配線は良くよじってHUMが誘導しないようにしておきます。 オリジナルではヒータ配線はシャシを帰路とした片側配線になっていました。 あらたに2本引いて行く形式に変えました。 低周波出力管の部分で片側をシャシに落としました。ヒーターのバイパスコンデンサも随所に入れてあります。耐圧が低くて良い所には50V耐圧の積層セラコンを使いました。 青い円盤型コンデンサは電源一次側に追加したコンデンサ(Yコン)です。 ここは安全規格品を使います。
【シャシ下AF増幅部】
低周波回路部分です。 中間周波増幅(6BA6)で増幅された信号は、双二極三極管の6AV6の二極部で検波されます。 検波で得られたDC電圧分はAGC電圧となってコンバータ管:6BE6と中間周波増幅管:6BA6に加えられます。
6AV6の二極部で検波された音声信号は三極部で電圧増幅されます。 回路は高抵抗のグリッドリークを使った「リークバイアス方式」です。 リークバイアス式は大きな入力信号では歪みが増えますが、ラジオですからまあ使えます。 青い色のカップリング・コンデンサ(フィルム型)を通って電力増幅用五極管:6AR5で増幅されスピーカーを鳴らします。 ワット数の大きな抵抗器は酸化金属皮膜抵抗を使ったので従来のカーボン型と比較して、非常に小型化されました。(ただし高温化します)
写真下側に見える1,000μF/16Vの縦型ケミコンは後に説明するSメータアンプ用の電源部です。ヒーター用AC6.3Vをプラスとマイナスに半波整流して±約8Vを得ました。負荷電流を考えると1,000μFは大きすぎます。220μF程度で十分でしょう。
【電源部は大改造】
電源部のブロック・ケミコン(70+60μF/180V)も再利用したいと思いました。 入念な再化成を試みたのですがリーク電流が減少してくれないので使うと危険なため再利用は断念しました。 この時代のケミコンとしては珍しいことです。多くの場合、再化成で復活する筈です。
同じサイズのブロック・ケミコンはありませんから縦型とチューブラ型を組み合わせて平滑回路を構成しました。 ごく小容量の電源トランスなので許容リプル電流にはマージンがあります。 100μFと330μFを使ったので平滑容量はだいぶ大きめです。 整流回路もダイオード一つの半波整流から4ダイオードのブリッジ整流に変更しました。使用ダイオードはDS135C×4です。 その結果B電圧がやや上昇してオーディオはパワーアップしました。 リプルも減少したのでブーンと言うHUM音はまったく感じられません。 なお、電源部は部品が増えたのでラグ板を追加しました。
【シャシ上面全景】
シャシ上面では、4連のトリマ・コンデンサが交換になりました。 オリジナルはタイト基板のマイカトリマでした。
調べたら,タイト板にクラックが入っていて使用できません。 在庫からちょうど良い4連トリマコンデンサが見つかりました。寸法に合わせて穴加工を行ないスタッド・ボルトで浮かせて実装しました。ちょっと見ではオリジナルと違いません。
スピーカー・マグネットの左に見えるのがアンテナ・コイルです。 手前のパネル寄りがBCバンド、奥側がSWバンドです。 いずれもアンテナ側の巻線がたくさん巻いてあるハイ・インピーダンス型です。 STARのラジオ用コイルによく見られる形式で、長さ数m程度のごく短いアンテナでも良く聞こえるようになっています。家庭用のラジオには好都合なようにできています。
その代わりHAM局がよく使うダイポール型アンテナのようなローインピーダンス・アンテナを繋ぐには不適当です。 このあたりもSR-100Kが単なる家庭用ラジオの設計だと言うことを裏付けています。 HAM用受信機ならローインピーダンス型のアンテナコイルが良いのです。プリセレクタやクリコンと言った付加装置にマッチするからです。
【Sメータ・アンプ基板】
マジック・アイにしろラジケータにしろ、ラジオには何らかの同調指示器があった方が使い易いです。 SR-100Kにはどちらも付いていないのが不満でした。 マジックアイは通信機らしくないので500μA-FSのラジケータを付けました。
PNPトランジスタを使い、AGC回路に流れる電流を増幅する形式のメーター回路になっていました。 最初はゲルマニウム・トランジスタ:2SB185でしたがIcbo(コレクタ遮断電流)が機内温度の上昇で増加し零点がずれました。 その後、本質的にIcboの少ないシリコン・トランジスタ:2SA562に交換しました。 但しシリコン・トランジスタはVbeが大きいので振れ始めに不感帯を生じる欠点がありました。
同調指示程度ならそのままでも良いのですが、ここは近代化してC-MOS OPアンプを使ったバルボル形式のSメータ回路を追加しました。 圧縮型の振り切れ防止を付けるなどラジケータが相手では勿体ない回路です。動作は安定していてとても快適です。
【Sメータ回路図】
電源回路を含めてSメータ部分の回路を書いておきました。 メーターの照明は白色LEDを使います。 数mAで十分明るいので豆電球よりもずっと効率的です。 LEDなら切れる心配もありません。(そんなに使うこともないでしょううが・笑)
アンプ部はRCAのC-MOS OPアンプ:CA3130Sです。CA3130EやCA3130Tでも同じです。 ここはFET入力型のOPアンプなら何でも大丈夫です。 AGC電圧は6BA6の部分から引張って来ます。 たいへん強い信号が入って来たときAGCは-12Vくらいの電圧が出ます。 それを約10MΩのアッテネータでだいたい1/10に分圧してからOPアンプでアンプし、メーターを振らせます。 昔の本を参考にすると12AU7の差動型Sメータアンプなどを付けたくなります。しかし補助回路にこそ半導体が相応しいでしょう。消費電力も僅かなので高性能な回路が追加できます。迷わずハイブリッド構成にしました。
メータの振れ方はIF増幅管:6BA6のリモート・カットオフ特性に依存します。概ねLogリニヤに近い振れ方になります。 要するに一目盛りが何dBと言うSメータらしい目盛です。もちろん、メータースケールは自分で用意することになります。 いまならパソコンのグラフィック機能とカラープリンタで格好良い目盛板が作れますね。
参考:AGC回路には無信号時でも-0.3Vくらいの電圧が出ています。これは真空管の初速電子による電流が流れるからです。そのため大型のSメータを付けるとフルスケールの2〜3%程度指針が零点より浮くことになります。 これを回避するには幾つか方法があります。Sメータアンプに電気的にオフセットを掛けるのが本質的な対策ですが、メータースケールを書き換える、機械的な零点調整をマイナズ側にずらせるなどの方法もあります。 ここではもとがラジケータなので目立たないこともあって零点の浮きは無視しました。 初速電流は検波管の6AV6だけでなく、6BA6と6BE6からの電流もあります。 Sメータアンプの参照が多いようなので追記しました。(2014.04.06)
【調整と仕上げ】
全般的な清掃と再組立を実施したので快調な受信ができるようになりました。 もちろん、初めて作った時のようにテスターくらいしか測定器が無い状況ではありません。きちんとした調整ができました。
まずは、アンテナ端子から強めの455kHzを加えてIFTの調整を行ないます。変調は掛けても掛けなくても良いです。 Sメータ回路が付いていますから調整は容易です。 SメータがなくてもAGC電圧をテスタ(指針式が良い)で測定しながら同じようにできます。 その後は手順書に従いトラッキング調整を行なって終了です。 配線のストレー容量も設計想定の範囲に入っているようで、トリマ・コンデンサの可変範囲も中央あたりで調整終了できました。
きちんと調整した五球スーパはずいぶん高感度なことがわかります。 短波帯も昔作った頃よりも良く聞こえるように感じるのは全般的な調整がうまくできているからでしょう。 あまり測定器が無い状態ではやむを得なかったとは思いますが、キットの値段を遥かに越えるような測定器を要求するようでは困るし・・・と言った所が初心者向けキットの難しさ(悲しさ)でしょうか。
☆
まさか、もう一回真空管ラジオを作ることになるとは思いませんでした。 同じような経験は中古のトランシーバキット:QS-500の時にもあったのを思い出します。 結局、ごく簡単なキットとは言え、初心者が完全な形で仕上げるのはなかなか難しいのです。 しかしどんな形にしろ『鳴るラジオ』が作れたことはとても良い経験だったのです。 まがりなりにも鳴ったのですから良い教材だったに違いありません。そうやってみな電子回路の入門をしたものでした。 もう一回組立てて面白かったか?・・と問われれば、とても懐かしかったと言うのが感想です。
再製作でずっとマシな作りになりました。 これで何時の日にか電気に興味を持った孫が『じいちゃんの作ったラジオ』を開けてみたときに恥ずかしい思いをしなくて済むでしょう。良かった良かった。(爆)
バンドスプレッドが無い、ダイヤルが十分減速されていないなど、HAM用はおろかBCLでさえ厳しいラジオです。あくまでも家庭用ラジオのキットです。 木造家屋なら数mのビニール線を垂らしてやれば在京の民放局はたいへん良く聞こえます。 夜間ともなればびっしり民放局が並ぶので、目的の局がどれなのか見分けるのも難しいくらいでした。Sメータを見ればAGCも良く効いています。 短波もラジオ日経の各プログラムが快適に入ってきます。大陸方面からの国際放送も同様です。 選択度はラジオ聴取に程良いらしく十分快適です。短波帯でも少しウオームアップすれば局が逃げてしまうようなQRHは感じません。 但し無改造のままではHAMバンドは殆ど実用性が無いことがわかります。せめてバンド・スプレッドは必要です。 選択度やゲインの問題もありますが、やはりきちんとしたダイヤル機構の存在が「通信型受信機」の決め手だと再認識しました。de JA9TTT/1
(おわり)
【春の色】
やっと春になりました。 2月の2回の大雪でずいぶん足踏みをした春です。 スイセンや鮮やかな黄色のレンギョウもやっと開花したと思ったら桜がやってきました。 北国の春と一緒で一気に花の季節を迎えています。
春は出会いと新たなスタートの季節です。 学生時代は遠い昔のことになりましたが、なんとなくわくわくが4月とともに蘇ってきます。 もう一度初心に帰って・・・と言う訳でもありませんが、古いラジオのレストアでも辿りながらあのころを思い出しつつ書き綴ってみましょう。 何か新規性がある訳でもありませんし役立ちもしないとは思います。もしお暇ならお付き合いでも。もちろん自身のレストア記録が目的なので記述の過不足があっても悪しからず。
#真空管でノスタルジックな話しと言うより意外に近代的だったりします。(笑)
☆ ☆ ☆
【SR-100K発掘】
子供の頃から何回も引っ越ししています。運ぶ価値の無いものはその都度捨てられました。 ですから子供の頃の思い出と言えばアルバムくらいです。
このラジオキットが残っていたのはそれなりの思い入れがあったからです。捨ててしまう気持ちにはなれなかったのです。 数年前に古い家を取り壊した時にも再整理しました。このラジオはその際に持ち出して屋根裏の奥深くに仕舞われていました。
昨年の春頃から始めたシャックの整理で発掘されました。 STARの受信機キット・SR-100Kと言うものです。段ボール箱に入っていたから残ったと言えそうです。
【私のSR-100K】
取り出して久しぶりに灯を入れてやりたいと思いました。
ですが、確かめたらそうも行かないことがわかりました。 年数の経過だけが理由ではありません。 昔々、製作技術が稚拙だったころの作品です。 理屈も良くわからず行なった改良(改悪?)が随所に見られました。 ですから写真のように無事に通電できたのは全てのことが済んでからのことです。
パネル面の登場はここだけなので少しだけコメントします。 まず、ラジーケータのSメータはオリジナルにはありません。これは以前の改造で取り付けました。 ほかバリキャップを使ったスプレッドや意味不明のジャックが数個追加されていましたがすべて撤去しました。空いた穴は埋め戻しました。いろいろ改造して遊んだ痕跡があったわけです。
【SR-100kの回路図】
入っていた段ボール箱の文字を良く見ると、Communications Receiverとあります。要するに「通信型受信機」と言う意味です。 でも、回路を見れば一目瞭然、たんなる4球スーパーです。 整流管がダイオードに置き換わっていますが、トランス付きの「5球スーパー」と同じ回路構成です。 B電圧が低く回路電圧はトランスレスのラジオ並です。 ですからAFのパワーはあまり出ませんがそれで不足ではありません。十分うるさく鳴ります。
もちろん同じ5球スーパーのような受信機にはDELICAのCS-7やTRIOの6R4Sのような「通信型」と呼べるものもあります。STARならSR-40Kが同類です。 ですがSR-100Kは純然たる家庭用スーパ・ラジオのキットです。回路だけでなく部品からも伺えます。この先、明らかになって行くでしょう。
【こりゃ通電不可だな】
家庭用ラジオだって案外侮れません。中波放送くらいうるさいほど良く聞こえるのが普通です。 ですから、久しぶりに灯を入れてみたかったのです。
しかし、ちょっと待った!
上から見たら球も所定の位置に刺さっていて大丈夫そうですが、シャシの裏をみたらどうにも危なっかしいのです。 それにもう何10年も通電していないので、いきなり通電は危険過ぎるでしょう。
中身を見て駄目そうでしたから捨てようとも思いましたが音を出してみたい一心で修復することになったのです。 これは平成の大修理です。(笑) 途中の写真は省略しますが要するに「完全分解+再組立」です。部品も怪しいので確かめながら使いました。新品キットの倍以上の手間がタップリ掛かりました。
【IFTとIFアンプ】
手前の真空管は周波数変換の6BE6です。 IFTに挟まれたのが中間周波増幅の6BA6です。
使ってあるIFTはごく一般的な物のように思えます。要するに家庭用ラジオと同じです。
IF1段用のIFTでもTRIOのT-6型のような通信用とはだいぶ違います。これは通信機用の性能を追求したものでは無いでしょう。このIFTですがすこし怪しかった記憶もあるので確認してから再利用すべきです。
【IFTの確認】
たとえばバリコンや電源トランスと言った主要部品はそのまま使うしかありません。 IFTはどうしても駄目なら代替品に換える手もあります。 あるいはあっさりラジオと割り切った使い方でしのぐことも必要でしょう。
さっそく内部を確認しました。 同調コンデンサはディップド・マイカコンデンサです。 IFTテスト治具で特性確認したらIFT-Aは正常でした。 IFT-Bは2次側の同調がだいぶずれていて、正しく調整されていなかったようでした。 二次側コアを正しい方向へ回して行くと一旦信号レベルが下がるのです。コアを回す方向が逆だと勘違いする状態になっていました。 特性直視装置で観測しながら再調整したので間違いませんでしたが、放送を受信しつつ調整していたなら現象は良く理解できなかったでしょう。
#配線のストレー容量を見込んだ再調整を行なって再利用に備えることにします。
【ウエファ型ソケット】
真空管のソケットはウエファ型です。 しかも最初からシャシにリベット止めでした。 リベット止めは家庭用の量産ラジオでは常套手段です。
このソケット、何回も球の抜き差しをしました。 配線の付け替えもたびたび行なったので相当「へたって」います。 そのままでも何とか使えそうにも見えましたが、一旦外して超音波洗浄くらいしたいです。
配線を撤去した後はシャシの清掃も必要なので一旦ソケットは撤去しました。結局、外してみたら程度が良くないので新品に交換したくなりました。
【ステアタイト型に交換】
真空管ソケットは全部交換しました。 ラジオごときにステアタイトのソケットは贅沢でしょう。 しかし手持ちにウエファ型はないし、ベーク・モールド型もありません。
ステアタイトをこの際使いました。 たぶん、持っていてもこの先使う機会はないでしょう。 こうしたソケットも近ごろは中華モノが出回っています。 但しこれはずいぶん前に購入した国産品です。
タイトソケットはウエファ型とは取付けネジの間隔が異なります。 鉄シャシをヤスリで削って穴間隔を広げてやらないと止められません。その加工が修復作業の中で一番面倒でした。
新品のソケットを使うなら、いらない球で「足慣らし」を数回やってから使うと安心です。 もし中華ソケットを使うなら寸法精度に注意しましょう。 しっくり来ないソケットは使わぬ方が良いです。金メッキされてはいても寸法誤差が大きいのは困りものです。
【出力トランスも交換】
オリジナルとは違うアウトプット・トランスに交換されていました。使用中に断線したので手持ちで間に合わせたようです。出力管:6AR5にはミスマッチなので秋葉原の東栄変成器でT-600型を買って来ました。 T-600は小さな出力トランスですが、それでもオリジナルよりも大きくて取付け穴の追加が必要でした。
5極管:6AR5シングルの無帰還アンプです。トランスも小さいので低域再生は望むべくもありません。 むかしの真空管ラジオらしい歯切れが良く明瞭な音がします。 音質改善の目的で6AR5のプレートと6AV6のプレートを高抵抗で結び、局部負帰還を掛けていた痕跡もありましたがオリジナルを尊重してそのままにしました。 ラジオチックな音なのは当然です。もちろん低周波出力は大きいしスピーカも大きな分トランジスタラジオよりマシな音がします。
【AFゲインVRの交換】
音量調整は500kΩのスイッチ付き(S付き)VRが使ってあります。 電源スイッッチを兼ねた音量調整VRはラジオを使う都度回すことになるので損耗しやすいのです。 過去にも交換した記憶がありましたが、調べたらやはり使い物になりそうにありません。新しくすることにしました。
もっと良い物が欲しかったのですが、500kΩのAカーブでS付き、しかもローレットの短軸ともなると秋葉原でも売っている所は限られます。 使える物が見つかったのはむしろラッキーでした。 このVRはAカーブの具合がJISとは違うらしいのと、左に回し切ってスイッチOFF直前の所に残留抵抗があってあまり芳しくありません。しかし他には無いので仕方ありません。もちろん使えない程ではありませんが無名の品の寿命は短そうです。最近秋葉原に多い中華部品のようです。
【バンドスイッチは清掃で】
バンド・スイッチは4回路2接点のロータリ型です。 まだALPSほかで良い物を売っています。 しかし上のVRと同じようにローレットの短軸と言うものは近ごろ見かけません。 ツマミごと換えてしまえば良いのですが、それでは外観が別物になってしまいます。
状態を見たら,接触不良は酷いもののガタもなく接点の状態は悪くないようでした。 良く清掃・整備して再利用することにします。 コンタクトスプレーほかケミカル品で接点クリーニングをしたあと有機溶剤も使って超音波洗浄しました。 完全に脱脂されてしまったので、必要部分に潤滑しました。 まだいくぶん接触状態に不安定さも見られますが概ね良好になりました。
バンド切換えのロータリ・スイッチからは12本の配線が出ます。初心者にとって間違い易い部分です。キットの組立て説明書では拡大図で詳しく説明されています。 いまでは接点構造ほか回路も熟知しているのでこの程度ではまず間違いません。大人になって少し上手になりました。(笑)
【シャシ下面全景】
写真の下側が正面パネル側です。シャシの四角い切り欠き部分にバンドスイッチがあります。 2つ見えるマイカ・コンデンサはパッディング・コンデンサです。 容量を確認したら正常だったのでそのまま再利用しました。 シャシ中央付近に見える2つのコイルは「局発コイル」です。
そのほか、多くのCR部品は新しい物に交換しました。回路定数はオリジナルを尊重しつつ、もちろんE系列から近似値を採用します。 コンデンサは耐圧の必要な物とそうでない物を考慮して同一容量でも種類を変えています。これは耐圧の高いコンデンサの手持ちが限られるからです。 高周波部では卵ラグを随所に追加してニアバイアースに備えました。
配線は奇麗とは言えませんが、高周波回路を意識してバイパス・コンデンサは最短で落としています。 また、ヒーターや電源一次側など、ACが通る配線は良くよじってHUMが誘導しないようにしておきます。 オリジナルではヒータ配線はシャシを帰路とした片側配線になっていました。 あらたに2本引いて行く形式に変えました。 低周波出力管の部分で片側をシャシに落としました。ヒーターのバイパスコンデンサも随所に入れてあります。耐圧が低くて良い所には50V耐圧の積層セラコンを使いました。 青い円盤型コンデンサは電源一次側に追加したコンデンサ(Yコン)です。 ここは安全規格品を使います。
【シャシ下AF増幅部】
低周波回路部分です。 中間周波増幅(6BA6)で増幅された信号は、双二極三極管の6AV6の二極部で検波されます。 検波で得られたDC電圧分はAGC電圧となってコンバータ管:6BE6と中間周波増幅管:6BA6に加えられます。
6AV6の二極部で検波された音声信号は三極部で電圧増幅されます。 回路は高抵抗のグリッドリークを使った「リークバイアス方式」です。 リークバイアス式は大きな入力信号では歪みが増えますが、ラジオですからまあ使えます。 青い色のカップリング・コンデンサ(フィルム型)を通って電力増幅用五極管:6AR5で増幅されスピーカーを鳴らします。 ワット数の大きな抵抗器は酸化金属皮膜抵抗を使ったので従来のカーボン型と比較して、非常に小型化されました。(ただし高温化します)
写真下側に見える1,000μF/16Vの縦型ケミコンは後に説明するSメータアンプ用の電源部です。ヒーター用AC6.3Vをプラスとマイナスに半波整流して±約8Vを得ました。負荷電流を考えると1,000μFは大きすぎます。220μF程度で十分でしょう。
【電源部は大改造】
電源部のブロック・ケミコン(70+60μF/180V)も再利用したいと思いました。 入念な再化成を試みたのですがリーク電流が減少してくれないので使うと危険なため再利用は断念しました。 この時代のケミコンとしては珍しいことです。多くの場合、再化成で復活する筈です。
同じサイズのブロック・ケミコンはありませんから縦型とチューブラ型を組み合わせて平滑回路を構成しました。 ごく小容量の電源トランスなので許容リプル電流にはマージンがあります。 100μFと330μFを使ったので平滑容量はだいぶ大きめです。 整流回路もダイオード一つの半波整流から4ダイオードのブリッジ整流に変更しました。使用ダイオードはDS135C×4です。 その結果B電圧がやや上昇してオーディオはパワーアップしました。 リプルも減少したのでブーンと言うHUM音はまったく感じられません。 なお、電源部は部品が増えたのでラグ板を追加しました。
【シャシ上面全景】
シャシ上面では、4連のトリマ・コンデンサが交換になりました。 オリジナルはタイト基板のマイカトリマでした。
調べたら,タイト板にクラックが入っていて使用できません。 在庫からちょうど良い4連トリマコンデンサが見つかりました。寸法に合わせて穴加工を行ないスタッド・ボルトで浮かせて実装しました。ちょっと見ではオリジナルと違いません。
スピーカー・マグネットの左に見えるのがアンテナ・コイルです。 手前のパネル寄りがBCバンド、奥側がSWバンドです。 いずれもアンテナ側の巻線がたくさん巻いてあるハイ・インピーダンス型です。 STARのラジオ用コイルによく見られる形式で、長さ数m程度のごく短いアンテナでも良く聞こえるようになっています。家庭用のラジオには好都合なようにできています。
その代わりHAM局がよく使うダイポール型アンテナのようなローインピーダンス・アンテナを繋ぐには不適当です。 このあたりもSR-100Kが単なる家庭用ラジオの設計だと言うことを裏付けています。 HAM用受信機ならローインピーダンス型のアンテナコイルが良いのです。プリセレクタやクリコンと言った付加装置にマッチするからです。
【Sメータ・アンプ基板】
マジック・アイにしろラジケータにしろ、ラジオには何らかの同調指示器があった方が使い易いです。 SR-100Kにはどちらも付いていないのが不満でした。 マジックアイは通信機らしくないので500μA-FSのラジケータを付けました。
PNPトランジスタを使い、AGC回路に流れる電流を増幅する形式のメーター回路になっていました。 最初はゲルマニウム・トランジスタ:2SB185でしたがIcbo(コレクタ遮断電流)が機内温度の上昇で増加し零点がずれました。 その後、本質的にIcboの少ないシリコン・トランジスタ:2SA562に交換しました。 但しシリコン・トランジスタはVbeが大きいので振れ始めに不感帯を生じる欠点がありました。
同調指示程度ならそのままでも良いのですが、ここは近代化してC-MOS OPアンプを使ったバルボル形式のSメータ回路を追加しました。 圧縮型の振り切れ防止を付けるなどラジケータが相手では勿体ない回路です。動作は安定していてとても快適です。
【Sメータ回路図】
電源回路を含めてSメータ部分の回路を書いておきました。 メーターの照明は白色LEDを使います。 数mAで十分明るいので豆電球よりもずっと効率的です。 LEDなら切れる心配もありません。(そんなに使うこともないでしょううが・笑)
アンプ部はRCAのC-MOS OPアンプ:CA3130Sです。CA3130EやCA3130Tでも同じです。 ここはFET入力型のOPアンプなら何でも大丈夫です。 AGC電圧は6BA6の部分から引張って来ます。 たいへん強い信号が入って来たときAGCは-12Vくらいの電圧が出ます。 それを約10MΩのアッテネータでだいたい1/10に分圧してからOPアンプでアンプし、メーターを振らせます。 昔の本を参考にすると12AU7の差動型Sメータアンプなどを付けたくなります。しかし補助回路にこそ半導体が相応しいでしょう。消費電力も僅かなので高性能な回路が追加できます。迷わずハイブリッド構成にしました。
メータの振れ方はIF増幅管:6BA6のリモート・カットオフ特性に依存します。概ねLogリニヤに近い振れ方になります。 要するに一目盛りが何dBと言うSメータらしい目盛です。もちろん、メータースケールは自分で用意することになります。 いまならパソコンのグラフィック機能とカラープリンタで格好良い目盛板が作れますね。
参考:AGC回路には無信号時でも-0.3Vくらいの電圧が出ています。これは真空管の初速電子による電流が流れるからです。そのため大型のSメータを付けるとフルスケールの2〜3%程度指針が零点より浮くことになります。 これを回避するには幾つか方法があります。Sメータアンプに電気的にオフセットを掛けるのが本質的な対策ですが、メータースケールを書き換える、機械的な零点調整をマイナズ側にずらせるなどの方法もあります。 ここではもとがラジケータなので目立たないこともあって零点の浮きは無視しました。 初速電流は検波管の6AV6だけでなく、6BA6と6BE6からの電流もあります。 Sメータアンプの参照が多いようなので追記しました。(2014.04.06)
【調整と仕上げ】
全般的な清掃と再組立を実施したので快調な受信ができるようになりました。 もちろん、初めて作った時のようにテスターくらいしか測定器が無い状況ではありません。きちんとした調整ができました。
まずは、アンテナ端子から強めの455kHzを加えてIFTの調整を行ないます。変調は掛けても掛けなくても良いです。 Sメータ回路が付いていますから調整は容易です。 SメータがなくてもAGC電圧をテスタ(指針式が良い)で測定しながら同じようにできます。 その後は手順書に従いトラッキング調整を行なって終了です。 配線のストレー容量も設計想定の範囲に入っているようで、トリマ・コンデンサの可変範囲も中央あたりで調整終了できました。
きちんと調整した五球スーパはずいぶん高感度なことがわかります。 短波帯も昔作った頃よりも良く聞こえるように感じるのは全般的な調整がうまくできているからでしょう。 あまり測定器が無い状態ではやむを得なかったとは思いますが、キットの値段を遥かに越えるような測定器を要求するようでは困るし・・・と言った所が初心者向けキットの難しさ(悲しさ)でしょうか。
☆
まさか、もう一回真空管ラジオを作ることになるとは思いませんでした。 同じような経験は中古のトランシーバキット:QS-500の時にもあったのを思い出します。 結局、ごく簡単なキットとは言え、初心者が完全な形で仕上げるのはなかなか難しいのです。 しかしどんな形にしろ『鳴るラジオ』が作れたことはとても良い経験だったのです。 まがりなりにも鳴ったのですから良い教材だったに違いありません。そうやってみな電子回路の入門をしたものでした。 もう一回組立てて面白かったか?・・と問われれば、とても懐かしかったと言うのが感想です。
再製作でずっとマシな作りになりました。 これで何時の日にか電気に興味を持った孫が『じいちゃんの作ったラジオ』を開けてみたときに恥ずかしい思いをしなくて済むでしょう。良かった良かった。(爆)
バンドスプレッドが無い、ダイヤルが十分減速されていないなど、HAM用はおろかBCLでさえ厳しいラジオです。あくまでも家庭用ラジオのキットです。 木造家屋なら数mのビニール線を垂らしてやれば在京の民放局はたいへん良く聞こえます。 夜間ともなればびっしり民放局が並ぶので、目的の局がどれなのか見分けるのも難しいくらいでした。Sメータを見ればAGCも良く効いています。 短波もラジオ日経の各プログラムが快適に入ってきます。大陸方面からの国際放送も同様です。 選択度はラジオ聴取に程良いらしく十分快適です。短波帯でも少しウオームアップすれば局が逃げてしまうようなQRHは感じません。 但し無改造のままではHAMバンドは殆ど実用性が無いことがわかります。せめてバンド・スプレッドは必要です。 選択度やゲインの問題もありますが、やはりきちんとしたダイヤル機構の存在が「通信型受信機」の決め手だと再認識しました。de JA9TTT/1
(おわり)
2014年3月20日木曜日
【HAM】 136kHz Transmitter on a Breadboard
【ブレッドボードに136kHz送信機】
【全体を見る】
ブレッドボードで少々規模の大きな回路を試みるとして始めた製作もいよいよ最終回です。ブレッドボードの範囲はここまでになります。
ブレッドボードの製作は試作が目的です。状況を見ながら進めて来ました。載せられる回路にも限度があって高周波のパワーものはどちらかと言えば不適当でしょう。 この送信機の場合、ここまでをブレッドボードの範囲と考えています。この先は作り方を変えることになります。
☆
前回(←リンク)はヘテロダイン・ミキサまで載せたところまででした。その後、136kHzのバンドパス・フィルタ(←リンク)とフィルタの後に付けるポストアンプ(←リンク)を個別に扱いました。 それらの部分は過去に実績が無く新たに設計から検討する必要があったのです。 それぞれ旨く進んだので、再びブレッドボードに戻って先に進めます。 毎度書くのも気が引けますが個人のメモあるいは暇つぶし用コンテンツなのでそのおつもりでご覧ください。多分に過不足のある内容ですがご容赦を。技術的には書いてしかるべき内容でも誰が見るかわからないBlogには書けないこともあるのです。そのあたりがネットの限界です。
写真右の中段には既にお馴染みの中華DDSモジュールが載ってます。この部分も起動させる予定でした。マイコンは載りそうでも表示部は無理なのでここまでにしました。写真の中華DDSモジュールは搭載の125MHzクロックに問題があったので、外して外部より12.8MHzを供給します。 ブレッドボード左下の12.8MHz TCXOの所に74HCU04を使ったバッファ回路があります。そこから細い同軸でDDSまでクロックを引くつもりでした。本番でも同じ回路で行くことにします。
【136kHz BPFとポストアンプ】
前回はミキサーの試作まで進めました。写真はその後追加した部分のクローズアップです。
前回の簡易評価ではミキサの出力回路に簡単な同調回路を入れて様子を見ました。 その形式のまま同調回路を重ねる方法もありますが、しっかりしたバンドパス・フィルタができたので変更しました。
ミキサの両コレクタ負荷は約1kΩ程度になるよう最適化します。同時に回路の出力インピーダンスも600Ωにうまく整合するよう考えます。 これはバンドパス・フィルタの特性を生かすために重要です。 同じようにフィルタ後のアンプも入力インピーダンスが600Ωになるよう設計します。前々回の寄り道の通りです。
ミキサの出力回路については、幾つか候補がありました。シングルエンド形式で抵抗負荷で行く方法が一番簡単です。しかしダイナミックレンジを広くする為には抵抗負荷では不利です。 同調コイルに中点タップを設けるか非同調の整合トランスのL負荷が有利です。 ここでは後者の整合トランスを使う形式にしました。この部分での周波数選択性は無くなりますが135kHzのバンドパス・フィルタがしっかりしているので問題ないでしょう。
【ミキサ出力トランス】
ごく標準的なトリファイラ巻きのトランスです。製作に当たっては使用周波数に注意が必要です。135kHzは低周波ではありませんが、RFとしてはかなり低いからです。従ってトランスの各巻線は大きめのインダクタンスが必要です。要するにたくさん巻く必要があります。
後に続くフィルタを考えるとインピーダンス・マッチングは良くしたいと思います。従ってミキサの負荷インピーダンスは1.2kΩになります。 トランスの巻き線インピーダンスはその数倍以上が必要になります。 周波数を考えると大きなインダクタンスが要ります。
数mHでも行けるかと思って試作したらインピーダンス変換比が不正確で使い物になりませんでした。 結局、それぞれの巻線が13mHくらいになるよう再製作して概ね満足できました。 コアはTDKのH5A材のトロイダルです。巻線はφ0.15mmのUEW線を3本撚りにして53回巻きました。巻線長は約60cmです。 巻くのは大変そうに見えますが、巻線を用意してから15分もあれば作れます。むしろ十分注意すべきなのは結線の間違いでしょう。
探せば必要なインダクタンスを持った既成のトランスがあるかもしれません。しかし見つかったとしても納期と費用が掛かりそうなので自作しました。
【TDKのトロイダルコア】
米国アミドン社のコアの方がポピュラーですが国産ではTDKが各種作っています。 写真はTDKのH5A材のトロイダルコアです。 内径が5mm、外径が10mmで厚みが2.5mmです。(型番:H5A T5-10-2.5)
なるべく少ない巻き数で必要なインダクタンスが得られるように、コア材には透磁率:μが大きなものを選びます。たまたま手持ちがあったので使いました。しかし、このコアは特注品のようです。たぶん最少発注数量と納期の問題があるでしょう。 従って類似のトランスを作るにはアミドンのトロイダルコアから適当な物を選んで代替するのが良いでしょう。 H5A材は初透磁率μiac=3,300で500kHzあたりの周波数に適するフェライト材です。 アミドンなら#75材が適当そうです。FT-50-#75コアに60回×3本巻きすれば良いでしょう。
アミドンでは#43材がポピュラーですが、透磁率μiが800程度なので巻き数をかなり増やさないと必要なインダクタンスが得られません。もし#43材で行くならコアサイズをずっと大きくして対処します。
【修正版ミキサー回路】
前回既出のMC-1443を使ったミキサー回路ですが出力部分は上記のトランスに変更しました。 バンドパス・フィルタも含めて書き改めてあります。この部分のインピーダンスは600Ωです。
MC-1443に与えるDCバイアスはブレッドボード上の他所から貰っているので現況に合わせてあります。
レベルを変えながら試したら、局発としては少なくとも1Vpp程度欲しいことがわかりました。 それ以上大きくしても違いは僅かです。 1Vppよりレベルを下げると変換利得が急に下がりました。 また同じ歪みでみた最大出力レベルも下がるのでダイナミックレンジも抑制されます。従って局発は1Vppを基準にします。
【ポストアンプ部分】
前々回のBlogで寄り道したLM359N:ノートン・アンプを使った高周波増幅部です。 135kHzのフィルタを経た約60mVppの信号を3Vppまで増幅します。 ゲインは50倍(34dB)です。
ICを使ったので周辺部品も僅かで済みコンパクトに製作できました。 周波数特性、ノイズ特性ともに良好です。 ブレッドボードの製作は多少心配しましたが問題ありませんでした。 但し帰還抵抗に数pFがパラに入る関係で周波数特性は伸びていないでしょう。 もちろん136kHzの増幅には支障ありません。
【LM359Nのアンプ回路】
既出ですが、上記のアンプ部の回路図です。 実際の回路では多少省略を行ないましたが、本質は同じなので変化は感じませんでした。
フィルタに合わせ、600Ωの入力インピーダンスに設計しました。 性能がわかっている回路は安心感があります。
【出力波形】
入力に1kHzのシングルトーンを入れときの出力波形です。局発は115kHzなので周波数は136kHzです。 基準レベルは3Vppです。 写真では2.7Vpp程度ですが、もう少し大きい3Vppに合わせて各種の評価を行ないました。
オシロで見た範囲ではもっと大きな信号でもきれいな正弦波に見えます。もっと大きくても良さそうですが、スペクトラムを見ると3Vpp程度を上限にすれば信号の品質が維持できそうです。 飽和レベルはずっと大きくて6Vpp以上へ伸びています。
【BPFの効果確認】
まずは、136kHzバンドパス・フィルタの効果を検証します。 局発の115kHzの減衰と、変換逆側に発生するイメージ信号の減衰を見ましょう。
写真の様に115kHzの漏れは主信号に対して約-60dBでした。 スペアナで見てしまうと、すこし大きいように感じますが一般的には十分な減衰量です。 ミキサのバランス調整をすれば10dBくらい下げられます。ブレッドボードでの製作なのも不利なようです。
-40kHz離れた変換イメージ信号の方はノイズフロアに近いのでまったく問題ありません。 なお、局発に157kHzを与え「差のヘテロダイン」で136kHzを取り出してみました。むしろ良好なくらいで同じように使用できることがわかりました。
目的信号のやや上に見えるスプリアスはブレッドボード故に発生しているようです。ミキサの動作を止めても見える物で、GND系配線の引き回しを変えると状態が変化します。従って、20kHzのキャリヤを作る部分は良くシールドするなど対策が必要そうです。もちろん、写真のレベルなら何ら支障ありません。
【目的信号の近傍を見る】
気になるのはSSBフィルタの通過帯域幅で見えるノイズフロアの上昇でしょう。 もっと多段増幅している市販のRigではさらに目立つこともあるのでそれほど悪くも無いかもしれません。低周波入力端子をGNDにショートしても変化が無いので、初段アンプのノイズが大きめのようです。
主信号の2kHz下に逆サイドが見えるますがこれは先の評価の時と同じで、使用したSSBフィルタの特性によるものです。この程度であれば支障ありません。 ほか帯域外のスプリアスは上記のようにブレッドボードを使った製作に起因する模様でした。
【ノイズフロアを下げるには】
実用上の支障はないとは言ってももう少しノイズを低減したいところです。 入力部にあるアンプをパスしてバラモジに直行するようにしてテストしてみました。
見ての通り効果てきめんです。 ゲイン分だけノイズフロアが下がった感じもします。初段アンプを何とかした方が良さそうですね。 もっとノイズの少ないOPアンプに交代するとか、ローノイズTrやJ-FETを吟味してディスクリートで作れば良さそうです。 大した努力はせずに10dBくらい低減できるでしょう。
【DDS局発部はまだ】
制御用マイコンだけなら搭載可能ですがLCD表示器も一緒に載せるのは無理があります。 テストでは外部信号源に頼ることにしました。
最終的にはAD9850を使った中華DDSモジュールを使います。 信号純度に問題のあった125MHzクロック発振器は外しました。 この送信機に必要な周波数はせいぜい1MHzあたりなので12.8MHzのクロックでも十分すぎます。
12.8MHzのTCXOは周波数安定度も良くきれいな発振なので信号純度にも問題はないし、クロック周波数を低くするとDDS-ICの消費電流もかなり減ります。 この中華DDSモジュールに関しては右の「同じジャンルの話題を楽しむ」から「DDS」をクリックして関連Blogでご覧を。
発生周波数の刻みはクロック周波数を2^32で割った値なので12.8MHzにすれば周波数分解能もアップします。具体的には約0.0029802Hz刻みになります。例えば115kHzに対して近傍の周波数は約115000.000596Hzなので0.005ppmほどの誤差になる計算です。 まあ周波数分解能の心配よりもTCXOの周波数安定度の方が問題なると言うべきでしょうか。 WSJT-Xのように細かい周波数精度と安定度を必要とする超低速デジタルモードにも心配なく使える訳です。それ以上はTCXOではなくOCXOやRb-OSCの世界が待っています。
ところで、DDS発振器では連続的な発振周波数が得られないとして、クレームされたお方が居られました。確かに理屈はその通りですから否定はしません。しかし実用面で見たら0.003Hz以内の周波数の刻みで周波数設定できます。連続と比べて何らも違わないでしょう。(125MHzのクロックを使ったとしても約0.03Hz刻みです) バリコンのVFOなら完全な連続だと仰るかもしれませんが、ではDDSと同じ所まで細かくチューニングはできますか?・・・と言うことです。しかもその状態をずっと維持できますか?・・・と問われれば、無理ですと言う答えでしょう。DDS発振器は「連続でない」などとイチャモンの前に現実を良く見た方が良いです。実用性能で云々すべきでしょう。 理屈も必要ですがエレクトロニクスは実用の科学です。あとは理想と現実のギャップを掌握しておけば良いでしょう。(笑)
☆ ☆ ☆ ☆
大きなブレッドボードに規模の大きな回路を載せる試みで実験を始めました。 周波数が低い長波帯の送信機なのでトラブルにはならないでしょう。 そう思った通りなかなか旨く進みました。 いつまでもこの製作だけにブレッドボードを占有させる訳にも行かないので目標の範囲まで進捗して良かったです。 この先は基板化するなり、ユニバーサル基板に製作する必要がります。
ハンダ付けで製作する「本番」の様子が見えて来るまで比較用にもう少しブレッドボード版も残しておきましょう。 次の製作に使えないのは不便ですが仕方ないです。 もう一枚買えと言うことでしょうね。 実際、小型ブレッドボードをたくさん購入する人もいるそうで、一旦作ると分解するタイミングが難しいのでしょう。
実験的な要素が多く含まれる製作にブレッドボードは最適です。 概略の実験試作が済んだら次は基板CADでパターン化するのが今風かもしれません。 何枚も作らないとしても配線の手間やコンパクト化を狙うと基板化は不可避でしょうね。 ここで使ったあらかたのデバイスは面実装品が手に入ります。まあ、SSBフィルタとかBPFは外付けにでもしたら良さそうです。 恒久品に纏めるには別の努力が要るでしょうが、実験して遊ぶにはブレッドボード製作は手軽で面白いです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←「ブレッドボードでSSBを!」の初回へ
参考:Windows XP環境でブラウザがIE8の場合、掲載の写真・図面の色調が乱れることがあります。Firefoxなど他のブラザの使用を推奨します。
【全体を見る】
ブレッドボードで少々規模の大きな回路を試みるとして始めた製作もいよいよ最終回です。ブレッドボードの範囲はここまでになります。
ブレッドボードの製作は試作が目的です。状況を見ながら進めて来ました。載せられる回路にも限度があって高周波のパワーものはどちらかと言えば不適当でしょう。 この送信機の場合、ここまでをブレッドボードの範囲と考えています。この先は作り方を変えることになります。
☆
前回(←リンク)はヘテロダイン・ミキサまで載せたところまででした。その後、136kHzのバンドパス・フィルタ(←リンク)とフィルタの後に付けるポストアンプ(←リンク)を個別に扱いました。 それらの部分は過去に実績が無く新たに設計から検討する必要があったのです。 それぞれ旨く進んだので、再びブレッドボードに戻って先に進めます。 毎度書くのも気が引けますが個人のメモあるいは暇つぶし用コンテンツなのでそのおつもりでご覧ください。多分に過不足のある内容ですがご容赦を。技術的には書いてしかるべき内容でも誰が見るかわからないBlogには書けないこともあるのです。そのあたりがネットの限界です。
写真右の中段には既にお馴染みの中華DDSモジュールが載ってます。この部分も起動させる予定でした。マイコンは載りそうでも表示部は無理なのでここまでにしました。写真の中華DDSモジュールは搭載の125MHzクロックに問題があったので、外して外部より12.8MHzを供給します。 ブレッドボード左下の12.8MHz TCXOの所に74HCU04を使ったバッファ回路があります。そこから細い同軸でDDSまでクロックを引くつもりでした。本番でも同じ回路で行くことにします。
【136kHz BPFとポストアンプ】
前回はミキサーの試作まで進めました。写真はその後追加した部分のクローズアップです。
前回の簡易評価ではミキサの出力回路に簡単な同調回路を入れて様子を見ました。 その形式のまま同調回路を重ねる方法もありますが、しっかりしたバンドパス・フィルタができたので変更しました。
ミキサの両コレクタ負荷は約1kΩ程度になるよう最適化します。同時に回路の出力インピーダンスも600Ωにうまく整合するよう考えます。 これはバンドパス・フィルタの特性を生かすために重要です。 同じようにフィルタ後のアンプも入力インピーダンスが600Ωになるよう設計します。前々回の寄り道の通りです。
ミキサの出力回路については、幾つか候補がありました。シングルエンド形式で抵抗負荷で行く方法が一番簡単です。しかしダイナミックレンジを広くする為には抵抗負荷では不利です。 同調コイルに中点タップを設けるか非同調の整合トランスのL負荷が有利です。 ここでは後者の整合トランスを使う形式にしました。この部分での周波数選択性は無くなりますが135kHzのバンドパス・フィルタがしっかりしているので問題ないでしょう。
【ミキサ出力トランス】
ごく標準的なトリファイラ巻きのトランスです。製作に当たっては使用周波数に注意が必要です。135kHzは低周波ではありませんが、RFとしてはかなり低いからです。従ってトランスの各巻線は大きめのインダクタンスが必要です。要するにたくさん巻く必要があります。
後に続くフィルタを考えるとインピーダンス・マッチングは良くしたいと思います。従ってミキサの負荷インピーダンスは1.2kΩになります。 トランスの巻き線インピーダンスはその数倍以上が必要になります。 周波数を考えると大きなインダクタンスが要ります。
数mHでも行けるかと思って試作したらインピーダンス変換比が不正確で使い物になりませんでした。 結局、それぞれの巻線が13mHくらいになるよう再製作して概ね満足できました。 コアはTDKのH5A材のトロイダルです。巻線はφ0.15mmのUEW線を3本撚りにして53回巻きました。巻線長は約60cmです。 巻くのは大変そうに見えますが、巻線を用意してから15分もあれば作れます。むしろ十分注意すべきなのは結線の間違いでしょう。
探せば必要なインダクタンスを持った既成のトランスがあるかもしれません。しかし見つかったとしても納期と費用が掛かりそうなので自作しました。
【TDKのトロイダルコア】
米国アミドン社のコアの方がポピュラーですが国産ではTDKが各種作っています。 写真はTDKのH5A材のトロイダルコアです。 内径が5mm、外径が10mmで厚みが2.5mmです。(型番:H5A T5-10-2.5)
なるべく少ない巻き数で必要なインダクタンスが得られるように、コア材には透磁率:μが大きなものを選びます。たまたま手持ちがあったので使いました。しかし、このコアは特注品のようです。たぶん最少発注数量と納期の問題があるでしょう。 従って類似のトランスを作るにはアミドンのトロイダルコアから適当な物を選んで代替するのが良いでしょう。 H5A材は初透磁率μiac=3,300で500kHzあたりの周波数に適するフェライト材です。 アミドンなら#75材が適当そうです。FT-50-#75コアに60回×3本巻きすれば良いでしょう。
アミドンでは#43材がポピュラーですが、透磁率μiが800程度なので巻き数をかなり増やさないと必要なインダクタンスが得られません。もし#43材で行くならコアサイズをずっと大きくして対処します。
【修正版ミキサー回路】
前回既出のMC-1443を使ったミキサー回路ですが出力部分は上記のトランスに変更しました。 バンドパス・フィルタも含めて書き改めてあります。この部分のインピーダンスは600Ωです。
MC-1443に与えるDCバイアスはブレッドボード上の他所から貰っているので現況に合わせてあります。
レベルを変えながら試したら、局発としては少なくとも1Vpp程度欲しいことがわかりました。 それ以上大きくしても違いは僅かです。 1Vppよりレベルを下げると変換利得が急に下がりました。 また同じ歪みでみた最大出力レベルも下がるのでダイナミックレンジも抑制されます。従って局発は1Vppを基準にします。
【ポストアンプ部分】
前々回のBlogで寄り道したLM359N:ノートン・アンプを使った高周波増幅部です。 135kHzのフィルタを経た約60mVppの信号を3Vppまで増幅します。 ゲインは50倍(34dB)です。
ICを使ったので周辺部品も僅かで済みコンパクトに製作できました。 周波数特性、ノイズ特性ともに良好です。 ブレッドボードの製作は多少心配しましたが問題ありませんでした。 但し帰還抵抗に数pFがパラに入る関係で周波数特性は伸びていないでしょう。 もちろん136kHzの増幅には支障ありません。
【LM359Nのアンプ回路】
既出ですが、上記のアンプ部の回路図です。 実際の回路では多少省略を行ないましたが、本質は同じなので変化は感じませんでした。
フィルタに合わせ、600Ωの入力インピーダンスに設計しました。 性能がわかっている回路は安心感があります。
【出力波形】
入力に1kHzのシングルトーンを入れときの出力波形です。局発は115kHzなので周波数は136kHzです。 基準レベルは3Vppです。 写真では2.7Vpp程度ですが、もう少し大きい3Vppに合わせて各種の評価を行ないました。
オシロで見た範囲ではもっと大きな信号でもきれいな正弦波に見えます。もっと大きくても良さそうですが、スペクトラムを見ると3Vpp程度を上限にすれば信号の品質が維持できそうです。 飽和レベルはずっと大きくて6Vpp以上へ伸びています。
【BPFの効果確認】
まずは、136kHzバンドパス・フィルタの効果を検証します。 局発の115kHzの減衰と、変換逆側に発生するイメージ信号の減衰を見ましょう。
写真の様に115kHzの漏れは主信号に対して約-60dBでした。 スペアナで見てしまうと、すこし大きいように感じますが一般的には十分な減衰量です。 ミキサのバランス調整をすれば10dBくらい下げられます。ブレッドボードでの製作なのも不利なようです。
-40kHz離れた変換イメージ信号の方はノイズフロアに近いのでまったく問題ありません。 なお、局発に157kHzを与え「差のヘテロダイン」で136kHzを取り出してみました。むしろ良好なくらいで同じように使用できることがわかりました。
目的信号のやや上に見えるスプリアスはブレッドボード故に発生しているようです。ミキサの動作を止めても見える物で、GND系配線の引き回しを変えると状態が変化します。従って、20kHzのキャリヤを作る部分は良くシールドするなど対策が必要そうです。もちろん、写真のレベルなら何ら支障ありません。
【目的信号の近傍を見る】
気になるのはSSBフィルタの通過帯域幅で見えるノイズフロアの上昇でしょう。 もっと多段増幅している市販のRigではさらに目立つこともあるのでそれほど悪くも無いかもしれません。低周波入力端子をGNDにショートしても変化が無いので、初段アンプのノイズが大きめのようです。
主信号の2kHz下に逆サイドが見えるますがこれは先の評価の時と同じで、使用したSSBフィルタの特性によるものです。この程度であれば支障ありません。 ほか帯域外のスプリアスは上記のようにブレッドボードを使った製作に起因する模様でした。
【ノイズフロアを下げるには】
実用上の支障はないとは言ってももう少しノイズを低減したいところです。 入力部にあるアンプをパスしてバラモジに直行するようにしてテストしてみました。
見ての通り効果てきめんです。 ゲイン分だけノイズフロアが下がった感じもします。初段アンプを何とかした方が良さそうですね。 もっとノイズの少ないOPアンプに交代するとか、ローノイズTrやJ-FETを吟味してディスクリートで作れば良さそうです。 大した努力はせずに10dBくらい低減できるでしょう。
【DDS局発部はまだ】
制御用マイコンだけなら搭載可能ですがLCD表示器も一緒に載せるのは無理があります。 テストでは外部信号源に頼ることにしました。
最終的にはAD9850を使った中華DDSモジュールを使います。 信号純度に問題のあった125MHzクロック発振器は外しました。 この送信機に必要な周波数はせいぜい1MHzあたりなので12.8MHzのクロックでも十分すぎます。
12.8MHzのTCXOは周波数安定度も良くきれいな発振なので信号純度にも問題はないし、クロック周波数を低くするとDDS-ICの消費電流もかなり減ります。 この中華DDSモジュールに関しては右の「同じジャンルの話題を楽しむ」から「DDS」をクリックして関連Blogでご覧を。
発生周波数の刻みはクロック周波数を2^32で割った値なので12.8MHzにすれば周波数分解能もアップします。具体的には約0.0029802Hz刻みになります。例えば115kHzに対して近傍の周波数は約115000.000596Hzなので0.005ppmほどの誤差になる計算です。 まあ周波数分解能の心配よりもTCXOの周波数安定度の方が問題なると言うべきでしょうか。 WSJT-Xのように細かい周波数精度と安定度を必要とする超低速デジタルモードにも心配なく使える訳です。それ以上はTCXOではなくOCXOやRb-OSCの世界が待っています。
ところで、DDS発振器では連続的な発振周波数が得られないとして、クレームされたお方が居られました。確かに理屈はその通りですから否定はしません。しかし実用面で見たら0.003Hz以内の周波数の刻みで周波数設定できます。連続と比べて何らも違わないでしょう。(125MHzのクロックを使ったとしても約0.03Hz刻みです) バリコンのVFOなら完全な連続だと仰るかもしれませんが、ではDDSと同じ所まで細かくチューニングはできますか?・・・と言うことです。しかもその状態をずっと維持できますか?・・・と問われれば、無理ですと言う答えでしょう。DDS発振器は「連続でない」などとイチャモンの前に現実を良く見た方が良いです。実用性能で云々すべきでしょう。 理屈も必要ですがエレクトロニクスは実用の科学です。あとは理想と現実のギャップを掌握しておけば良いでしょう。(笑)
☆ ☆ ☆ ☆
大きなブレッドボードに規模の大きな回路を載せる試みで実験を始めました。 周波数が低い長波帯の送信機なのでトラブルにはならないでしょう。 そう思った通りなかなか旨く進みました。 いつまでもこの製作だけにブレッドボードを占有させる訳にも行かないので目標の範囲まで進捗して良かったです。 この先は基板化するなり、ユニバーサル基板に製作する必要がります。
ハンダ付けで製作する「本番」の様子が見えて来るまで比較用にもう少しブレッドボード版も残しておきましょう。 次の製作に使えないのは不便ですが仕方ないです。 もう一枚買えと言うことでしょうね。 実際、小型ブレッドボードをたくさん購入する人もいるそうで、一旦作ると分解するタイミングが難しいのでしょう。
実験的な要素が多く含まれる製作にブレッドボードは最適です。 概略の実験試作が済んだら次は基板CADでパターン化するのが今風かもしれません。 何枚も作らないとしても配線の手間やコンパクト化を狙うと基板化は不可避でしょうね。 ここで使ったあらかたのデバイスは面実装品が手に入ります。まあ、SSBフィルタとかBPFは外付けにでもしたら良さそうです。 恒久品に纏めるには別の努力が要るでしょうが、実験して遊ぶにはブレッドボード製作は手軽で面白いです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←「ブレッドボードでSSBを!」の初回へ
参考:Windows XP環境でブラウザがIE8の場合、掲載の写真・図面の色調が乱れることがあります。Firefoxなど他のブラザの使用を推奨します。
2014年3月10日月曜日
【回路】More Norton Amp.
【モア ノートン・アンプ:その活用事例から】
【Quad Norton Amp.】
前のBlogはLM359Nと言う高速ノートン・アンプの話しで寄り道しました。 寄り道ついでにポピュラーな(だった?)普通のノートン・アンプでもうちょっと寄り道して行きましょう。
またまたの寄り道なので、具体的な用途・目的は決まっていませんが、いつかどこかで使い道があるかもしれません。回路の素性を掴んでおけば持ち駒が増えたのと同じで、何かの時にきっと役立ってくれます。 ここではオーディオ・ピーク・フィルタ(CW用?)を題材にします。 電子回路の手作りに興味も持つ人には面白いしょう。お暇なら目を通されてはいかがですか?
写真はナショナル・セミコンダクタ社のLM3900Nとモトローラ社のMC3401Pです。引き出しの長期在庫品です。(笑)ここではどちらもまったく同じように使えます。LM2900NやMC3301Pでも良いでしょう。これらICの中身の話しは前のBlogに書いたので、そちらも参照して下さい。
LM3900Nは一時期かなりポピュラーなICでした。部品箱に眠っている確率は高そうです。持っている(いた?)人も多いでしょう。あまり着目もされない地味なデバイスですから、お店に残っていれば安価で手に入るでしょう。持ってなければ一つくらい仕入れておいたら調理法を考える楽しみが増えます。(調べてみたら若松やマルツにて@100円少々で買えます。他所でもまだ売っています)
【バンドパス・ノッチ・フィルタ】
唐突にフィルタを作ってみることにします。アクティブ・フィルタと言えばアナログ系ICの代表的なアプリケーションです。 LM3900系ノートン・アンプの周波数特性はあまり良くないのでオーディオ周波数帯が精一杯です。 従ってフィルタと言っても可聴域・低周波用です。
図の例では4回路入りのノートン・アンプを旨く使ってバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを構成しています。Biquad形式のアクティブ・フィルタです。(図はモトローラ社:MC2900/3900/3301/3401のデータシートより引用)
バンドパス・フィルタの仕様は、中心周波数:f0、選択度(バンド幅):Bw、そして中心周波数に於けるゲイン:G0です。 この簡単な単同調式のフィルタひとつでは高級な特性は無理ですが、設計はごく単純です。関数電卓がなくても、指数表示ができた方が便利ですが、四則演算ができる普通の電卓で設計できます。まあ、どのパソコンにも標準装備の仮想電卓があるのでまったく困りませんね。
まずは中心周波数:f0を決めましょう。続いてフィルタのQすなわち-3dBの帯域幅:Bwを決めます。Qの値は:Q=f0/Bwです。さらに中心周波数におけるゲイン:G0を決めたら計算スタートです。なお、フィルタにゲインを持たせるのは本質的ではないと思います。せいぜい数倍くらいにしておいた方が設計し易いです。このあたりはフィルタ作りのノウハウ部分でしょうか? また、コンデンサ:Cは事前に決めておいても良いのですが、周波数計算の式:f0=1/(2πCR)から仮に求めて、組み合わせる抵抗器:Rとの兼ね合いで決めるのが最善です。抵抗値が数kΩ〜1MΩ程度になるよう決めれば合理的です。E系列で得易い抵抗値に丸めると作り易いでしょう。
この例では組み合わせる抵抗器は62kΩで、4020pF±2%のスチコン(スチロール・コンデンサ)があったのでそれを使うことにします。*1 従って計算上の中心周波数は約639Hzになります。 抵抗器には金属皮膜型±1%を使いました。(*1:ここでは、なるべくオリジナルに近い数値でテストします)
CW用ピーク・フィルタとして検討したいなら3,600pFのコンデンサを使うと良いでしょう。中心周波数は約700Hzになります。また3,300pFで800Hz弱です。ピーク・フィルタとは言ってもQ=3くらいの設計が良いでしょう。
参考:図の回路はDCバイアスの掛け方がノートン・アンプ用になっているので、一般的なOPアンプでは正常に動作しません。注意して下さい。もちろんその部分を変更すれば一般化は可能です。具体的には各アンプの+In端子に電源電圧の中点電位(半分の電圧)を与えてバイアスします。
【ブレッドボードに製作】
簡単な回路なので、パーツボックスから部品をピックアップして1時間くらいで製作できるでしょう。 もちろん、配線接続に使うジャンパー線は各種用意しておきます。 このあたりの準備があればごく手軽な実験です。
スチコンはリード線が細くて何となく頼りないです。そのうえ図体も大きいので、ICのピンの所に直接持って行くと収まりが良くありません。 リード線を短めに詰めて近傍に実装してからジャンパー線でICまで持って行きます。 こうすると構造上安定するでしょう。 アナログ回路は外付けCR部品が多くなります。 ブレッドボードの面積を占有するのでゆとりを持ったサイズを使うと作り易いです。 余白には入出力端子を引き出します。
【波形観測・1】
まずは最適なバイアスポイントになっているか動作点を確かめる意味から波形観測しました。 もちろん信号を入れずにテスタで各部をあたりDCバイアスされていることは事前に確認しています。 なお、電源電圧12Vのとき回路電流は約7mAでした。(無信号・無負荷状態にて)
低周波発振器から中心周波数に相当する約638Hzを与えます。(638Hzで信号がピークになったので)画面の下段が入力で上段がバンドパス・フィルタの出力波形です。軽負荷なら最大で8Vppくらい取り出せました。 LM3900Nの出力段はドライブ能力が大きくないので、重い負荷(低い負荷抵抗)では振幅を抑える必要があります。
ゲインは0dB即ち,1倍の設計なので入力とほぼ同じ振幅です。但し位相は反転します。 取り出す箇所が反転アンプの後だからです。 きれいなサインウエーブを入力すると当然のように出力にもサインウエーブが現れます。
【波形観測・2】
上記と同じ周波数の信号を与えていいます。 但し、今度はサインウエーブではなく矩形波です。波形の上段がバンドパス・フィルタの出力です。
このようにバンドパス・フィルタの出力ではきれいなサインウエーブになります。 矩形波には基本波の他に奇数次の高調波が含まれます。 フィルタによってそれらが除去されたため、基本波成分だけが大きく残ります。 それほどQの高くないフィルタでも高調波を除去する効果があります。
【波形観測・3】
今度はノッチ・フィルタの出力を観測してみましょう。 ノッチ・フィルタとはある特定の周波数成分だけを除去するフィルタです。 この例ではバンドパス・フィルタと同じ638Hzの付近が除去されます。
上段の波形がノッチ・フィルタの出力です。 漏れが大きいように感じるかもしれませんが、上段と下段ではオシロスコープのレンジが異なっています。 実際には入力の2%以下の振幅です。 無調整なのでこの程度なのはやむを得ません。 回路図のAmp4、Pin11に接続された330kΩのうち入力側の2つのどちらを微調整することでノッチの深さ、即ち除去量が改善できます。
【波形観測・4】
矩形波を与えてノッチ・フィルタの出力を観測してみました。 上段の波形がフィルタの出力です。 基本波成分が除去された図のような波形が観測されます。
こうした機能を使って、ノッチ・フィルタは歪み率測定に使われます。その為には基本波の除去率が問題になるので入念に調整します。
【バンドパス・フィルタの周波数特性】
周波数特性を測定してみました。 フィルタ・アナリシスモードで観測しています。 それによれば、実測による中心周波数は636.7Hzです。(設計の計算値は638.6Hzなので誤差は-0.30%) またフィルタQは5.31です。(同じく計算値では5.32なので誤差は-0.19%) 部品精度を考えれば、おおむね設計通りでしょう。設計の再現性はなかなか良好です。
こうした単峰特性のフィルタはCWフィルタ用には少々使いにくいかも知れません。 もちろんお好みにもよりますが・・・。 ピークが鋭過ぎてすぐに相手局の信号が逃げてしまいます。 ある程度の通過帯域域を持ちながら、帯域外の減衰傾斜が急峻なフィルタが欲しくなるでしょう。 なおQが5程度なら過渡応答の影響はそれほどありません。比較的素直な応答を示します。
【ノッチ・フィルタの周波数特性】
ノッチ(谷)の部分の減衰が不十分なのは抵抗器に誤差があるからです。 先に書いたように、調整で改善することができます。 本格的なノッチフィルタとして使うならチューニングします。
このフィルタはAC結合なので、ごく低周波の部分ではダラ下がりの周波数特性です。 またアンプの周波数特性が効いて来るのでオーデイオ帯以上でも右肩下がりの周波数特性です。 単同調回路なので位相はフィルタの中心周波数で大きく回りますが、あとはだらだらと変化して行きます。
参考:測定しませんでしたたがAmp3の出力(Pin9)はローパス・フィルタ特性になっています。設計次第ですが、ユニバーサルなフィルタ・ブロックとして活用できます。
【まとめ】
ノートンアンプを使い、Biquad形式でバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを作ってみました。
この程度のフィルタならMFB形式のフィルタ回路ならOPアンプ一つで実現可能です。 ですからバンドパス・フィルタだけで3回路も使うのは何となく勿体なく感じます。 但し、中心周波数やフィルタのQは比較的単純な計算で設計できますし、再現性のよいフィルタ形式です。一段とHigh-Qなフィルタの実現ではたいへん有利です。 OPアンプの数を厭わないならとても良い回路です。 Biquad Filterはノートン・アンプ専用の回路ではありませんから小変更で普通のOPアンプでも同じように実現できます。
ブレッドボードで試作しましたが「フィルタ・ブロック」として有用性が感じられるので例の「ブレッドボード・パターン」のユニバーサル基板に移植して恒久化しておこうと思います。f0を決めるコンデンサとQを決める抵抗器はソケット式にしておいたら良いでしょう。
−・・・−
ノートン・アンプを使うと単電源で動作する回路が作り易いです。これはなかなかメリットです。 またLM3900(MC3401)の出力段はA級増幅なのでクロスオーバー歪みは発生しません。 マイクアンプのような小レベルの所から使える汎用増幅ICとして重宝でしょう。トランジスタ代わりに「ちょっとアンプを」と言うときに具合が良いです。 簡単な論理回路やタイミング回路にも向いているので、トランシーバの送受信コントロールとかVOX回路などにも向いています。守備範囲が広いICですね。
☆ ☆ ☆
実験していてノートン・アンプが登場したころを思い出しました。雑誌には新種のOPアンプとして(大々的に?)紹介されていました。 ただ、いま思うとそれは間違いだったようです。 事実、ナショセミ社のデータシートにはOPアンプと大書きされてはいません。 大々的にノートン「OPアンプ」と書いていたのはモトローラの方でした。これにはだいぶ惑わされた感じです。
ちょっと見るとOPアンプちっくに動作しますが+入力端子はどちらかと言えばバイアス設定用の端子です。(・・と考えるとわかり易い) バイアスさえ設定すれば、アンプは単なる反転型負帰還アンプです。 ノートン・アンプは非反転アンプではあまり使わないのです。(使いにくいから) ノートン・アンプをOPアンプ的に使う回路例はそれほど多くありません。
昔々、何となく使い難いと感じたのはそうした見極めができなかったからでしょう。ノートン・アンプをOPアンプの仲間だと思っているならいつまでも惑わされたに違いありません。これまで少々曖昧な理解だったノートン・アンプもだいぶスッキリしました。 扱うのはこれが最後と思いますが、わかって使えば意外に便利なアンプICです。ちょっと古臭いですが持ち駒の一つになってくれたようです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←136kHz送信機エキサイタ部の纏めにリンク
【Quad Norton Amp.】
前のBlogはLM359Nと言う高速ノートン・アンプの話しで寄り道しました。 寄り道ついでにポピュラーな(だった?)普通のノートン・アンプでもうちょっと寄り道して行きましょう。
またまたの寄り道なので、具体的な用途・目的は決まっていませんが、いつかどこかで使い道があるかもしれません。回路の素性を掴んでおけば持ち駒が増えたのと同じで、何かの時にきっと役立ってくれます。 ここではオーディオ・ピーク・フィルタ(CW用?)を題材にします。 電子回路の手作りに興味も持つ人には面白いしょう。お暇なら目を通されてはいかがですか?
写真はナショナル・セミコンダクタ社のLM3900Nとモトローラ社のMC3401Pです。引き出しの長期在庫品です。(笑)ここではどちらもまったく同じように使えます。LM2900NやMC3301Pでも良いでしょう。これらICの中身の話しは前のBlogに書いたので、そちらも参照して下さい。
LM3900Nは一時期かなりポピュラーなICでした。部品箱に眠っている確率は高そうです。持っている(いた?)人も多いでしょう。あまり着目もされない地味なデバイスですから、お店に残っていれば安価で手に入るでしょう。持ってなければ一つくらい仕入れておいたら調理法を考える楽しみが増えます。(調べてみたら若松やマルツにて@100円少々で買えます。他所でもまだ売っています)
【バンドパス・ノッチ・フィルタ】
唐突にフィルタを作ってみることにします。アクティブ・フィルタと言えばアナログ系ICの代表的なアプリケーションです。 LM3900系ノートン・アンプの周波数特性はあまり良くないのでオーディオ周波数帯が精一杯です。 従ってフィルタと言っても可聴域・低周波用です。
図の例では4回路入りのノートン・アンプを旨く使ってバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを構成しています。Biquad形式のアクティブ・フィルタです。(図はモトローラ社:MC2900/3900/3301/3401のデータシートより引用)
バンドパス・フィルタの仕様は、中心周波数:f0、選択度(バンド幅):Bw、そして中心周波数に於けるゲイン:G0です。 この簡単な単同調式のフィルタひとつでは高級な特性は無理ですが、設計はごく単純です。関数電卓がなくても、指数表示ができた方が便利ですが、四則演算ができる普通の電卓で設計できます。まあ、どのパソコンにも標準装備の仮想電卓があるのでまったく困りませんね。
まずは中心周波数:f0を決めましょう。続いてフィルタのQすなわち-3dBの帯域幅:Bwを決めます。Qの値は:Q=f0/Bwです。さらに中心周波数におけるゲイン:G0を決めたら計算スタートです。なお、フィルタにゲインを持たせるのは本質的ではないと思います。せいぜい数倍くらいにしておいた方が設計し易いです。このあたりはフィルタ作りのノウハウ部分でしょうか? また、コンデンサ:Cは事前に決めておいても良いのですが、周波数計算の式:f0=1/(2πCR)から仮に求めて、組み合わせる抵抗器:Rとの兼ね合いで決めるのが最善です。抵抗値が数kΩ〜1MΩ程度になるよう決めれば合理的です。E系列で得易い抵抗値に丸めると作り易いでしょう。
この例では組み合わせる抵抗器は62kΩで、4020pF±2%のスチコン(スチロール・コンデンサ)があったのでそれを使うことにします。*1 従って計算上の中心周波数は約639Hzになります。 抵抗器には金属皮膜型±1%を使いました。(*1:ここでは、なるべくオリジナルに近い数値でテストします)
CW用ピーク・フィルタとして検討したいなら3,600pFのコンデンサを使うと良いでしょう。中心周波数は約700Hzになります。また3,300pFで800Hz弱です。ピーク・フィルタとは言ってもQ=3くらいの設計が良いでしょう。
参考:図の回路はDCバイアスの掛け方がノートン・アンプ用になっているので、一般的なOPアンプでは正常に動作しません。注意して下さい。もちろんその部分を変更すれば一般化は可能です。具体的には各アンプの+In端子に電源電圧の中点電位(半分の電圧)を与えてバイアスします。
【ブレッドボードに製作】
簡単な回路なので、パーツボックスから部品をピックアップして1時間くらいで製作できるでしょう。 もちろん、配線接続に使うジャンパー線は各種用意しておきます。 このあたりの準備があればごく手軽な実験です。
スチコンはリード線が細くて何となく頼りないです。そのうえ図体も大きいので、ICのピンの所に直接持って行くと収まりが良くありません。 リード線を短めに詰めて近傍に実装してからジャンパー線でICまで持って行きます。 こうすると構造上安定するでしょう。 アナログ回路は外付けCR部品が多くなります。 ブレッドボードの面積を占有するのでゆとりを持ったサイズを使うと作り易いです。 余白には入出力端子を引き出します。
【波形観測・1】
まずは最適なバイアスポイントになっているか動作点を確かめる意味から波形観測しました。 もちろん信号を入れずにテスタで各部をあたりDCバイアスされていることは事前に確認しています。 なお、電源電圧12Vのとき回路電流は約7mAでした。(無信号・無負荷状態にて)
低周波発振器から中心周波数に相当する約638Hzを与えます。(638Hzで信号がピークになったので)画面の下段が入力で上段がバンドパス・フィルタの出力波形です。軽負荷なら最大で8Vppくらい取り出せました。 LM3900Nの出力段はドライブ能力が大きくないので、重い負荷(低い負荷抵抗)では振幅を抑える必要があります。
ゲインは0dB即ち,1倍の設計なので入力とほぼ同じ振幅です。但し位相は反転します。 取り出す箇所が反転アンプの後だからです。 きれいなサインウエーブを入力すると当然のように出力にもサインウエーブが現れます。
【波形観測・2】
上記と同じ周波数の信号を与えていいます。 但し、今度はサインウエーブではなく矩形波です。波形の上段がバンドパス・フィルタの出力です。
このようにバンドパス・フィルタの出力ではきれいなサインウエーブになります。 矩形波には基本波の他に奇数次の高調波が含まれます。 フィルタによってそれらが除去されたため、基本波成分だけが大きく残ります。 それほどQの高くないフィルタでも高調波を除去する効果があります。
【波形観測・3】
今度はノッチ・フィルタの出力を観測してみましょう。 ノッチ・フィルタとはある特定の周波数成分だけを除去するフィルタです。 この例ではバンドパス・フィルタと同じ638Hzの付近が除去されます。
上段の波形がノッチ・フィルタの出力です。 漏れが大きいように感じるかもしれませんが、上段と下段ではオシロスコープのレンジが異なっています。 実際には入力の2%以下の振幅です。 無調整なのでこの程度なのはやむを得ません。 回路図のAmp4、Pin11に接続された330kΩのうち入力側の2つのどちらを微調整することでノッチの深さ、即ち除去量が改善できます。
【波形観測・4】
矩形波を与えてノッチ・フィルタの出力を観測してみました。 上段の波形がフィルタの出力です。 基本波成分が除去された図のような波形が観測されます。
こうした機能を使って、ノッチ・フィルタは歪み率測定に使われます。その為には基本波の除去率が問題になるので入念に調整します。
【バンドパス・フィルタの周波数特性】
周波数特性を測定してみました。 フィルタ・アナリシスモードで観測しています。 それによれば、実測による中心周波数は636.7Hzです。(設計の計算値は638.6Hzなので誤差は-0.30%) またフィルタQは5.31です。(同じく計算値では5.32なので誤差は-0.19%) 部品精度を考えれば、おおむね設計通りでしょう。設計の再現性はなかなか良好です。
こうした単峰特性のフィルタはCWフィルタ用には少々使いにくいかも知れません。 もちろんお好みにもよりますが・・・。 ピークが鋭過ぎてすぐに相手局の信号が逃げてしまいます。 ある程度の通過帯域域を持ちながら、帯域外の減衰傾斜が急峻なフィルタが欲しくなるでしょう。 なおQが5程度なら過渡応答の影響はそれほどありません。比較的素直な応答を示します。
【ノッチ・フィルタの周波数特性】
ノッチ(谷)の部分の減衰が不十分なのは抵抗器に誤差があるからです。 先に書いたように、調整で改善することができます。 本格的なノッチフィルタとして使うならチューニングします。
このフィルタはAC結合なので、ごく低周波の部分ではダラ下がりの周波数特性です。 またアンプの周波数特性が効いて来るのでオーデイオ帯以上でも右肩下がりの周波数特性です。 単同調回路なので位相はフィルタの中心周波数で大きく回りますが、あとはだらだらと変化して行きます。
参考:測定しませんでしたたがAmp3の出力(Pin9)はローパス・フィルタ特性になっています。設計次第ですが、ユニバーサルなフィルタ・ブロックとして活用できます。
【まとめ】
ノートンアンプを使い、Biquad形式でバンドパス・フィルタとノッチ・フィルタを作ってみました。
この程度のフィルタならMFB形式のフィルタ回路ならOPアンプ一つで実現可能です。 ですからバンドパス・フィルタだけで3回路も使うのは何となく勿体なく感じます。 但し、中心周波数やフィルタのQは比較的単純な計算で設計できますし、再現性のよいフィルタ形式です。一段とHigh-Qなフィルタの実現ではたいへん有利です。 OPアンプの数を厭わないならとても良い回路です。 Biquad Filterはノートン・アンプ専用の回路ではありませんから小変更で普通のOPアンプでも同じように実現できます。
ブレッドボードで試作しましたが「フィルタ・ブロック」として有用性が感じられるので例の「ブレッドボード・パターン」のユニバーサル基板に移植して恒久化しておこうと思います。f0を決めるコンデンサとQを決める抵抗器はソケット式にしておいたら良いでしょう。
−・・・−
ノートン・アンプを使うと単電源で動作する回路が作り易いです。これはなかなかメリットです。 またLM3900(MC3401)の出力段はA級増幅なのでクロスオーバー歪みは発生しません。 マイクアンプのような小レベルの所から使える汎用増幅ICとして重宝でしょう。トランジスタ代わりに「ちょっとアンプを」と言うときに具合が良いです。 簡単な論理回路やタイミング回路にも向いているので、トランシーバの送受信コントロールとかVOX回路などにも向いています。守備範囲が広いICですね。
☆ ☆ ☆
実験していてノートン・アンプが登場したころを思い出しました。雑誌には新種のOPアンプとして(大々的に?)紹介されていました。 ただ、いま思うとそれは間違いだったようです。 事実、ナショセミ社のデータシートにはOPアンプと大書きされてはいません。 大々的にノートン「OPアンプ」と書いていたのはモトローラの方でした。これにはだいぶ惑わされた感じです。
ちょっと見るとOPアンプちっくに動作しますが+入力端子はどちらかと言えばバイアス設定用の端子です。(・・と考えるとわかり易い) バイアスさえ設定すれば、アンプは単なる反転型負帰還アンプです。 ノートン・アンプは非反転アンプではあまり使わないのです。(使いにくいから) ノートン・アンプをOPアンプ的に使う回路例はそれほど多くありません。
昔々、何となく使い難いと感じたのはそうした見極めができなかったからでしょう。ノートン・アンプをOPアンプの仲間だと思っているならいつまでも惑わされたに違いありません。これまで少々曖昧な理解だったノートン・アンプもだいぶスッキリしました。 扱うのはこれが最後と思いますが、わかって使えば意外に便利なアンプICです。ちょっと古臭いですが持ち駒の一つになってくれたようです。de JA9TTT/1
(おわり)
(参考リンク)←136kHz送信機エキサイタ部の纏めにリンク
登録:
投稿 (Atom)
