2025年1月29日水曜日

【電子管】Testing the Battery Tube I-F Amp. : 1AJ4 / DF96

【電池管のI-Fアンプを試す】

introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AJ4/DF96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AJ4/DF96 circuit's I-F Transformer is key. I've tested and made the Practical IFT for this tube. (2025.01.29 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【五極管:1AJ4/DF96】(電池管)
 変わりばえのしない先頭の写真ですが、これはI-Fアンプ:中間周波増幅管の1AJ4/DF96です。フィラメント電流が25mAという省電力な電池管を試用する第2回目です。

 RCAの電池管シリーズで言えば1T4に相当する球です。陰極がフィラメントになっている直熱型の五極管です。 そう言われてもたぶん電池管マニアでもなければ1AJ4/DF96はおろか1T4にさえ馴染みはないでしょう。 私もこれでラジオを作った経験はありませんし、これらを使っているラジオに触れた経験もありませんでした。

 電池管式のラジオといえば、私が小学・低学年のころ興味深く眺めた記憶があるだけです。 近所で電気とか鉄道模型にやけに詳しい中学のお兄さんがおりました。 当時、私は鉄道模型が好きでした。見せてもらいにお邪魔したときお兄さんは弁当箱サイズのラジオを聴いてました。 たぶんその時が現役の電池管ラジオを見た最初で最後だったように思います。
 中身を見たわけじゃありませんがトランジスタ・ラジオが一般的になる以前でしたし大きさから見ても電池管式のラジオだった筈です。

 その後数年で急速にトランジスタの時代が訪れたので電池管に接する機会はありませんでした。 トランンジスタの普及で、大柄で性能も良いとはいえず、しかも経済性(ランニングコスト)に劣った電池管を使う合理性はなくなったのでしょう。電池管は過去のデバイスとして葬り去られてしまい、もはや雑誌の製作記事に登場することはありませんでした。

 ラジオ工作の経験といえば、ゲルマ・ラジオの次は1石ラジオとか2石のレフレックスでした。 あと6BA6とか6BM8といった普通の真空管を使ったラジオやアンプ、ワイヤレス・マイクを作って遊ぶのが定番でしたね。 そうこうしているうちに免許を取ってHAMになってしまいました。 「HAM+電池管=3A5の6mトランシーバ」を連想しそうですが、もうそういう時代も終わってました。 TRIO TR-1000(トラ千)が誕生していたのです。

                   ☆

 電池管でラジオを作ってみてからシンプルなHF受信機の製作を目指します。 まずは電子デバイス・・ここでは電池管ですが・・を使うための基礎的な実験を進めています。 性能に劣るかなり古い電子部品ですからこれから手に入れる意味はないでしょう。 手にする機会があれば試すと楽しいですけれど積極的にお薦めするようなものではありません。 永く眠ったままだった手持ちを蘇らせてみるという私的なお遊びの一環です。もしチョット興味を覚えるようでしたらこの先を覗いてお楽しみください。 ご感想・コメントもどうぞ。

【I-F Amp.:テスト回路】
 さっそくテスト中の回路です。今回はコンバータ回路と中間周波増幅:I-F Amp.を合わせて検討します。

 スーパー形式で一番難しいコンバータ回路は既に検討したので、I-F Amp.を足しただけではちょっと面白味に欠けるかもしれません。 しかしコンバータ回路だけでラジオを試してみるのは無理があります。

 まあ、初段IFTのあとすぐにゲルマ・ダイオードで検波すればクリスタル・イヤフォンくらいなら鳴りますけれど・・・I-F Amp.ナシでは感度はだいぶ悪いです。w

 実用になる普通の電池管ラジオは4球式でした。 典型的な例としては前回のBlog(←リンク)のメーカー推奨回路があります。 その性能は大雑把に言って後世の6石トランジスタ・ラジオ並だったようです。(いや、良くできた6石スーパーには勝てないかも・笑)

 まずはI-F Amp.:中間周波増幅まで作ってゲインや感度を評価してみることにしました。 ただ、I-FAmp.の所で切ってしまうとラジオらしい評価はほとんどできません。 検波回路を加えることにします。 これでラジオ放送を受信し「音として復調」したり、AGC/AVC回路の働きを評価することができます。 コンバータ回路から検波回路までを作ってみることにしました。

 なお、本来は検波用の二極管を含む電池管・・・例えば1AH5/DAF96あるいは1U5-SFを検波に使うべきです。(1S5-SFでも良い) 使ったブレッドボードにスペースが無かったのでゲルマニウム・ダイオード(Ge-Di)で検波することにしました。 Ge-Diの方がだいぶ性能が良いのが気になりましたが、それを割り引いて評価すれば良いでしょう。

【BBで試作】
 例によってブレッドボードでテストします。 前回のコンバータ回路にI-Fアンプを加えました。二球分を載せるために作り替えています。

 IFT(中間周波トランス)にはトランジスタ・ラジオ用を使いますが、2個の2次側を突き合わせにして使い2つのIFT間はコンデンサ結合にしました。これを二組作ります。 かつては電池管に適したIFTも存在したようですが今さら手に入りません。代替としてトランジスタ・ラジオ用を使いました。

 電池管用のIFTは6BD6や6BA6と言った普通の真空管用とは設計が違います。 電池管の相互コンダクタンス:gmはかなり小さいため、十分なゲインを得るためにはIFTの共振インピーダンスを高くする必要があります。1AJ4/DF96のgmは6BD6と比べ1/3くらいです。

 その対策の一つとして負荷Q:QLを大きくする方法があります。 しかしこれには限界があってせいぜい30%アップが限度でしょう。 もう一つとしてはIFTの同調コンデンサの容量を小さくする方法です。 共振インピーダンス:ZL=ω・L・Qですから、Lを大きくしても良いわけです。
 それで、一般的なIFTでは150pFくらいのコンデンサを使うのに対して100pFあるいは75pFのように小さくしてLの方を大きくするわけです。もちろんこの方法は良いことばかりではなくて副作用もあります。

 このTr用IFTの同調容量は180pFでQu=80です。 そのため共振インピーダンスはそれほど上がりません。 しかしゲイン過剰にはならず、むしろ動作は安定します。 通信用としてI-Fアンプを2段にする可能性もあって、それなら1段あたりのゲインを欲張る必要はありません。 2段増幅にするときはIFTだけに頼らずI-Fフィルタの追加も考えるべきです。

【中間周波トランスの特性】
 このラジオに使った中間周波トランス:IFTの特性を示します。Trラジオ用のIFTを組み合わせています。

 Tr用IFT2個で作った「IFT」の特性を実測しています。 IFTのリンク側の巻線間を150pFで繋いだものです。 左図は縦軸の1目盛が5dBです。実際の回路ではこれを2組使います。 従って縦軸を2倍の10dB/divと読めばオーバーオールの選択度も予想できるでしょう。 測定には「IFTの特性評価治具」を使いました。

 2段目はダイオード負荷なので、負荷Qが低下してやや選択度は悪くなるでしょう。 しかし概ねこの程度の選択度になると思っています。 一般的なラジオの聴取には十分な選択度が得られました。 実際に大きなアンテナをつけて夜間にラジオ放送を受信しても混信はあまり問題になりません。 通信機用としては選択度不足ですが電池管で作る以上、高性能な受信機は目標にしないためこれで大丈夫そうです。 未検討ですが150pFの結合コンデンサの代わりにセラフィルを入れる方法がありそうです。

 なお、テストの結果によれば検波器の部分のIFTは結合容量:C10=150pFとするより、C10=470pFとした方が良好でした。検波器により負荷インピーダンスが低下するためです。選択度は幾らか悪くなりますがラジオ放送の受信用としては切れすぎるくらいです。 流用するTr用IFTによって結合容量の最適値は異なるので個々のケースで加減を要します。

【検波出力(低周波)】
 検波出力、復調された低周波信号を示します。今回はゲルマ・ダイオードで検波しました。

 1AH5のような検波管では二極管部の内部抵抗が大きいためもう少し小さな出力になると思います。 しかし十分高い負荷抵抗を選べば極端な違いはないでしょう。 案外大きな検波出力が得られます。(NHKラジオ東京第1放送・JOAKを受信)

 この低周波出力を実験用ステレオ・アンプ:PAF-303に加えてラジオ放送を聴いてみました。 選択度の関係でややハイが切れる感じはありますが音質は良好です。 意外に大きな出力が得られるので低いインピーダンスに変換した上でAMチューナのように使うという活用方法もありそうです。 大きなアンテナで試している関係もありますが、夜間ともなると遠距離のAM局がずいぶんたくさん聞こえてきます。(Quad-Band Inverted-V ANT使用)

 AC電源で使ったのではコードレスにできるという電池管のメリットを活かさないことになるのですが「電池管を使ってみたい」という目的にはマッチしています。(笑)

                   ☆

【トラッキング調整を振り返って】
 実際にラジオを受信して性能を確認するために一般的な手順に従ってトラッキング調整を行なってみました。 すこし苦労しましたが何とか設計通りに調整できました。

 苦労したのは局発のカバレッジの確保です。受信範囲は520kHz〜1620kHzなので、局発は975kHz〜2075kHzを発振する必要があります。 予想通り2次側のフィードバック・コイルをたくさん巻いた局発コイルはストレー容量が大きいのです。 そのためブレッドボード自体や配線等による追加のストレーをできるだけ減らさないと受信周波数の高い方が伸びません。 実際1450kHz以上が受信できない・・と言うようなことが起こります。

 ブレッドボードではなく実配線で製作する際もなるべくストレー容量を増やさぬよう部品配置の最適化と短い配線を心掛ける必要があります。局発コイルの各端子の扱い方によっても影響があります。
 そしてもし可能ならmax275pFではなくmax340pFくらいある2連バリコンで設計すると楽になります。前回のBlog(←リンク)にある局発コイルの設計を改めて参照を。

【1T4-SFを比較する】
 I-F増幅管を1AJ4/DF96から1T4-SFに交換してみました。1T4-SFは松下のDシリーズ管に対抗するために登場した球です。無印の1T4のフィラメント電流を半分にした省エネ管です。

 1AJ4/DF96と1T4-SFのピン接続はまったく同じです。従って差し替えて比較が可能です。(注:コンバータ管の1AB6/DK96と1R5-SFはピン接続が異なり、応用回路も違うので差し替えて試せません。配線の変更を要します)

 1T4-SFに交換して比較しましたが、殆ど同じでした。どちらも中古の球ですけれど。 感度・音量ともに違いは感じませんでしたので同等の性能であることがわかります。 詳しく測定するとAGC/AVCの特性に幾らか違いがあるのと、Ipがやや少なく済むので1AJ4が幾分か優れるようです。

 松下電器を除いた他社はフィラメント省エネ管として急遽-SF管を作ったわけですが十分対抗できるだけの性能に仕上がっていたようです。 コンバータ管は別としても、松下のDシリーズ管と-SF管を混ぜて使うことも十分可能そうです。少し手持ちがある-SF管も活かせるでしょう。

【1T4なら入手は容易】
 I-F増幅管:普通の1T4なら入手は容易です。1T4はI-FアンプやRFアンプに使える汎用性のあるRF用電池管です。 もちろんオートダイン検波にも使えます。シンプルなラジオに好適でしょう。 写真の1T4は米国から通販で購入しました。
 Pro/Commというのは販売商社のブランド名です。市場に残っていた古い電子部品を自社ブランドに書き換えて販売する会社です。おそらくこの1T4は欧州系で、元はどこかの古い在庫品でしょう。

 ヨーロッパにはPhilips製のDシリーズ管がまだ残っているようです。探す手間と費用を惜しまなければ十分入手可能だと思います。

 国産の松下製も一般的には用途の限られた「猫またぎ」な球なのですが、古くて珍しいというだけで価格高騰するようです。 頑張って製作しても得られる性能には限界がありますから法外なお値段の球に手を出したら詰まらんでしょう。明らかに性能が悪い真空管です。 そのあたり、よく吟味して入手されますよう希望します。 こうしてBlogで電子部品を扱うと認知されて価格上昇に繋がってしまわないか、いつも心苦しく思っています。(使い方がわかると人気が出るわけなのですが・・・笑)

 フィラメント電流が2倍になっても構わないなら写真の1T4など50mAのシリーズは比較的安価ですし入手も容易です。米AES,etcで普通の値段で買えます。(円安が恨めしいが) フィラメント電流が大きい分だけ性能も良くなるので汎用に使い易いでしょう。

 電池管をあまり好意的に書きませんでしたが、低性能ではあってもAMラジオくらいなら十分鳴ってくれます。間違って買っちゃった貴方も安心を。 あきらめずに活用を! 電池管はスイッチオンで即働くのでトランジスタのようで面白いです。(実際には1秒くらい遅れる)

                    ☆

 30年くらい前ですが、電池管を使ったポータブル機を計画したことがありました。 1T4-SFを使ったVXO回路で7MHzを発振しファイナルにパワー管の3A4を使う予定でした。 せいぜい1〜3Wの出力を狙ったQRP機です。電源はDC/DCコンバータを作りました。
 しかし確実なはずのVXOがぜんぜん発振してくれないのです。 VXO回路は単なる水晶発振器と違って、よりgmの大きな真空管が必要なのでした。 1T4-SFのように低性能な電池管ではVXOは無理だったのでしょう。 結局ここで断念してしまい計画中止になりました。

 今でしたら単純な水晶発振回路で行くか、電池管に向いた自励発振器(VFO)を作って実現する方法があったと思っています。 半導体の助けを借りてしまえば楽になるので、拘らずにハイブリッド構成でも良いのかもしれません。 そう考えるとDDSやPLLのチップを使ったVFOもアリなのかも知れませんが・・・。(それじゃ面白くないですかね・笑)

 米軍用機ではポータブルな機器を中心に電池管もかなり使われていました。 工夫すれば本格的なRigも可能でしょう。 しかし新規に買い足してまで製作するほどの魅力はないかも知れません。なるべく手持ちの電池管でやりくりしながら楽しむ範囲が適当そうです。 有るものを活かして楽しむという本来の趣旨にも添います。

 AMラジオでしたらあと2球足すと4球スーパが作れます。 もう少し高性能な「受信機」ならさらに2〜3球必要そうですね。 実際、米軍用HF帯フィールド・トランシーバであるGRC-9/RT-77の受信部は七本の電池管で実戦用の性能を実現しています。 どこまで楽しもうか思案している所です。ラジオ+αなら手元の電池管だけで間に合いそうです。 とりあえずは4球ラジオを鳴らして性能をお味見するのが先決でしょうか。 次回は低周波アンプ以降を予定しています。 この続きは部材準備の都合で暫く間があくかも知れません。 ではまた。 de JA9TTT/1

*何かわからないところがあればコメント欄を使ってください。

→私がわかってる範囲で返信いたします。

(つづく)←リンクnm

【乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→ここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→いまここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2025年1月14日火曜日

【電子管】Testing the Converter Tube : 1AB6 / DK96

【コンバータ管:1AB6/DK96を試す】

introduction
I'm testing a vacuum tube, 1AB6/DK96, designed for portable radios using dry batteries. Developed in the 1950s, these tubes are less efficient than those used in AC-powered radios. Ingenuity is required to use them well. The 1AB6/DK96 circuit's oscillator coil is key. I've tested and made the best coil for this tube. (2025.01.14 de JA9TTT/1 Takahiro Kato) 

【七極管:1AB6/DK96】(電池管)
 2025年が始まりました。今年はラジオ100年だそうです。

 1925年大正14年3月22日・東京放送局:JOAK・愛宕山からラジオ放送が始まったのでした。もちろん私は影も形もありません。母さえ未だ生まれてません。(笑) それから100年、情報伝達のメディアもずいぶん発展・変化しましたが、そのとき始まったAMラジオ放送は何とか今でも健在です。

 当時、真空管は存在しましたが非常に高価であって7割は鉱石ラジオだったという資料もあります。 JOAKもいまのように超ハイパワーではありませんからごく近距離の限られたエリアで聞こえただけだったのでしょう。(参考:800kHz、0.22kW UV204パラ自励)

 ラジオ放送が一般に認知されるや、ラジオとその部品は猛烈な勢いで発展し続けました。戦争の影響もあったでしょう。放送開始からたった14年後の1939年にはもうミニチュア管さえも登場したのでした。大戦前の日本は作れませんでしたがRCAのミニチュア電池管のおかげで昭和16年・1941年ころの米国では実用的なポータブルラジオが市販されていました。パーソナル・ラジオと称し製品としての完成度も高かったそうです。(電池管:電源として乾電池を使うことを前提に開発された省エネな真空管)

 これからテストするコンバータ管(変周管):1AB6/DK96は戦後に生まれた第2世代のミニチュア電池管です。 スーパー・ヘテロダイン式ラジオの周波数変換回路(コンバータ)に使うための7極管です。 1950年代はじめヨーロッパで登場したものです。

 米国RCA社の:1R5-1T4-1S5-3S4(1S4)といった50mAフィラメントの電池球を25mAに省エネ改良したものです。それでも乾電池にとっては電流が多いと感じますが半分になったのですからフィラメント用:A電池の持ちはずいぶん改善されたでしょう。(3倍もつそうです)

 この省エネ管は蘭フィリップス社が開発しました。日本では技術提携していたナショナル・松下電器で生産されました。私の手持ちも松下製です。 これに触発され、従来の50mA管を半分の25mAに改造した1R5-SFのような-SF管が国内各社から登場したのはご存知の通りです。(はっきり言ってこの改造で電気的性能はかなり悪くなった・笑)

                   ☆

 1AB6/DK96は70年も前の電子デバイスです。 でも私にとっては「新しい電子デバイス」なのです。 真空管規格表やラジオの回路図はそこそこ残っていますが使うための基本的な情報はほとんどわかっていません。 回路はごく簡単なのですが幾つかキーとなるパーツはもう一度ラジオ製作者自身で検討しなくてはならないようです。

【ナショナルDシリーズ管ラジオ】
 使い方を知るにはメーカーの提供する資料がたいへん役立ちます

 真空管規格表は正しく使うために重要ですが、それだけで活用するのは難しいと感じます。 具体的な回路例があって初めて安心して使えるのではないでしょうか。

 1950年代にもなると、真空管は完成されたデバイスの域に達していたようです。 活用法も整理され非常にシンプルな回路でラジオが作れることがわかります。 真空管はトランジスタほど小型ではありませんからポケットサイズは難しいでしょう。

 それでも十分ポータブルなラジオが可能なことがわかります。電池管はほとんど発熱もありませんから真空管をぎゅうぎゅう詰めにしたようなポータブルラジオが作れたのですね。

 ただし電池だけは無闇に小型化できませんでした。実用寿命を考えるとあまり小型化すると容量が激減して使い物にならないからです。 電池そのものの性能も今ほど優れてはいませんでした。 マンガン乾電池は大電流の放電特性が悪いためフィラメント用A電池は特に消耗が早かったでしょうね。

                   ☆

 ポータブルなAMラジオを真空管で作りたい訳ではありません。せめて7MHzのHAMバンドが受信できるような「受信機」を作ってみたいものだ・・・と。その第一歩が1AB6/DK96の検討です。今年もジャンクな球で遊ぶ最後のチャンスになりそうです。

【Dシリーズ管:1AB6/DK96テスト回路】
 最終目標は違いますが、まずはラジオ(受信機)をスーパー・ヘテロダインで作ります。 スーパーで最も重要な部分と言えば何と言っても周波数変換回路:コンバータ回路でしょう。

 この回路がうまく働かないとラジオの性能が出せません。 まずはここから検討を始めました。

 他の回路は言わば常識的な増幅回路に過ぎませんから難しさや未知数な部分は少ないと考えられるからです。

 何を検討するのかというと、局発回路(ローカル・オシレータ回路)です。 スーパー・ヘテロダインの原理を使って、受信信号を局発と混合して中間周波に変換します。 局発がうまく発振しなければ周波数変換がなされません。 従って全く受信できなくなってしまうからです。

 メーカーの回路図(前項)を見ると、2次巻線付きの発振コイルが使ってあります。グリッド同調型の反結合型発振回路です。 電池管の構造上6BE6のようなハートレー型発振回路は合理的でないからです。 実はこの発振回路のコイルこそがキーパーツでしょう。 デキが悪ければ発振せず、何とか発振はしても最適でなければ感度が上がりません。 電池管のラジオもここさえ決まればあとはそれほど未知の部分はないと言えそうです。

【Tr用局発コイル:SLV-C01の仕様】
 電池管のAMスーパーと言うと、巷ではNo.88コイルが局発用として使われることが多いようです。

 そのNo.88コイルは私が子供のころから存在していて、実はいま売っているのも電池管式ラジオのために開発されたコイルが原型だそうです。 秋葉や日本橋のパーツショップを探せば手に入りそうですが代替品を探ってみることにしました。

 フィードバック用(帰還用)の巻線を持った局発回路用のコイルといえばトランジスタ・ラジオ用が思い浮かびます。 市販品で容易に手に入るものに「SLV-C01」と言う型番のコイルがあります。 幸い手持ちがあったので検討してみました。

 左の仕様書を見ると同調側のインダクタンスは360μHです。140pF+82pFのトラッキングレス型ポリ・バリコンを使うのが前提でしょう。 巻き数は同調側が104回巻いてあります。 フィードバック・コイル・・・本来はトランジスタのコレクタ側に入る・・・は11回巻きです。

 フィードバック・コイルは同調側の約10%の巻き数です。 電池管(発振部)のgm:相互コンダクタンスは600μ℧くらいなので、ずいぶん小さいため10%ではちょっと心もとないと思うのです。しかし既製のコイルがうまく使えたなら手間が要らずFBです。 それで中波ラジオの受信テストができますから・・・取りあえず1AB6を使った感触をつかむには適当です。 まずは使ってみましょう。

【SLV-C01を使ってみる】
 ラッキーなことに発振してくれました

 なぜラッキーかと言うと3本あった1AB6のうち1本しか発振せず、しかも最初に使った1本目で発振したからです。(笑)

 結論から言うと「活きのいい」1AB6/DK96なら発振するかも知れないが、ダメな確率は2/3ということでしょう。もっとも3本とも中古品なので少々ボケた球の可能性はあります。 電池管はひ弱なのでちょっとボケただけでも性能がだいぶ落ちるようですから・・・。

 1本だけでも発振してくれたお陰で、基本的なテストができました。 発振状態を観測したり、信号を加えて簡易なコンバータ動作などテストができたからです。 しかし、明らかにフィードバック用コイルの巻き数は不足していると感じられます。(後に先人の情報など調べていてわかったのですが、発振が弱いと変換コンダクタンス:gcが上がらず、ラジオとしての感度はだいぶ悪くなるそうです)

【発振波形:SLV-C01のとき】
 約1MHzを発振しているときの波形です。 観測ポイントは局発コイルの同調側で、1AB6の第1グリッドに繋がる部分です。

 約2Vppの発振振幅があります。約700mVrmsですね。 しかしこれでは発振が弱過ぎて性能の良い周波数変換はできないようです。(後で調べてわかった)

 周波数を可変してみて、発振波形は良好でした。 また周波数安定度も良くて電源をONしてすぐ元の発振周波数に落ち着くのは消費電力の少ない電池管ならではのように感じました。

                    ☆

【局発コイルを設計】
 結局のところ自分で適当な局発コイルを設計して製作するのがベストであるという結論です。

 コイルを巻くためのボビンはaitendoで売っている「IFTきっと」を使います。 このキットのコア材は透磁率:μ(ミュー)が大きくて少なめの巻き数で必要なインダクタンスが得られます。 ストレー容量が減らせるので同調回路に使ったとき周波数の伸びがよくなります。

 コイルの仕様を決めるためには、使用するバリコンを決めなくてはなりません。 私の定番はmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンです。それを使う前提で左図のBで製作することにしました。(典型的なバリコンに合わせて幾つか設計しておきました。左図)

 同調側のインダクタンスは148μHで巻き数は68回です。 肝心のフィードバック・コイルの巻き数は19回でやってみます。 同調側の約28%の巻き数になっています。

 巻き数の根拠は何かと問われると困るのですが、電池管の1R5(同じくコンバータ管です)の局発コイルについて試作した資料があって、意外に広い範囲で発振することがわかっています。 ただし10%くらいでは明らかに不足で、グリッド同調側の25〜45%くらいの巻き数は必要そうでした。 それと1AB6/DK96は1R5よりも明らかにgmが低くて非力なのです。フィラメント電流は半分ですからねえ・・・。

 ただし参考資料のコイルはコア入りではあっても細いボビンにハネカム巻きになっており、ここで使うボビンよりも1次と2次の結合度は緩いものです。 従ってツボ形コアの「IFTきっと」で作るならやや少なめでも十分であろうと目処を付けた訳です。 もちろん上記でテストした既製品コイル:SLV-C01の評価も十分参考になってます。

 計画的に実験して最適解を求めるには最低でも3種類の巻き数比でコイルを製作し比較する必要があります。 それも大変なので既存の実験結果や参考データを参照して概ね良さそうなコイルを巻くことにしたわけです。無根拠ではありませんが推測や勘もあるのでやや科学的とは言えないかもしれません。それでも上手く行けば良しとするのが研究論文ではない気楽さです。ベースは娯楽なんですから。(笑)

【局発コイルを製作】
 さっそく巻いてみました。 いずれANTコイルも欲しくなるので同時に製作しました。 こちらもmin7.2pF〜max275pFの2連ポリバリコンを使う設計です。

 はじめ、同調側を70回巻きで作ったところ、コアの可変範囲の端の方で148μHになりました。 余裕がなさ過ぎたので2回減らして68回巻きに修正しました。 巻線はφ0.08mmのポリウレタン被覆電線(UEW線)を使います。φ0.1mmでは巻ききれないことがあります。

 コイルの再現性は良いと思います。 いまのところaitendoで売っている「IFTきっと」のボビンとコアを使って製作すれば同じ巻き数で概ね同一のコイルが作れると思って良いでしょう。 巻き方ですが整然と揃えて綺麗に巻く必要はありません。ガラ巻きで十分です。 なお、巻枠にあたるツヅミ型コアには同調側の巻線(68回)を先に巻きます。 フィードバック・コイル(19回)はそれに重ねる形で後から巻きました。

 コイルの巻線の1次側と2次側の絶縁耐圧に多少の心配はあるのですが、少なくとも50Vやそこらでは問題はないようです。実際にはせいぜい40Vくらいしか掛かりませんので心配ないでしょう。 なお、回路的な工夫でDC電圧が掛からないようにする方法もあります。

【作ったコイルでテスト】
 先のテストと同じようにブレッドボード用の変換基板に実装しました。

 さっそく交換してテストしてみたところ、こんどは3本ある1AB6/DK96のどれでもちゃんと発振しました。やはりフィードバック・コイルの巻き数は10%では不足だったようですね。 たぶんこのコイルなら少々ボケたような球でも発振してくれるのではないかと思っています。

 参考のためQメータを使って実測しておきました。 Quもだいたい100位あってSLV-C01よりも良好でした。 コアを調整してインダクタンスを合わせておいたので回路に入れた際の調整は最小限で済みました。

 自作コイルもSLV-C01と巻線の巻き方向を合わせてありますから、そのまま差し替えれば配線変更なしで直ちにテストできます。 巻線方向が合っていないと正帰還にならず発振しないので良く確認を。 コイルの製作図で⚫️黒丸のあるピンから巻き始めます!

【発振波形:自作コイルはどうか?】
 発振波形を観測しています。

 上の方の波形とたいした違いはないように感じるかも知れません。 この観測では縦軸の感度は2V/divで先の写真の4倍になっているので注意を!  従って、だいたい5倍くらいの発振振幅になっています。

 振幅は発振周波数によって変化します。 高い周波数で大きくなり低くなると小さくなります。 低い周波数で9Vpp、高い周波数で12 Vppくらい得られています。 フィリップス社の1AB6/DK96のデータ・シートを見ると変換コンダクタンス:gcは局発が4Vrms程度で最大になります。(4Vrmsは約11.3Vpp) 従って概ね最適値になっていると考えて良いでしょう。

 実測結果は上記のテスト回路図中にある表・1にまとめておきました。 3本あったいずれの1AB6/DK96ともに良好な発振特性が得られました。出所不明のジャンクな球ですが十分使いものになりそうです。

【回路電流】
 コンバータ回路のみの回路電流です。 どの球でもだいたい1.3mA程度流れるようです。 8割近くがスクリーン・グリッドg2(発振回路のプレートとして動作している)に流れているようです。

 真空管というと消費電力が大きいイメージがあります。 実際のところフィラメントやヒータ回路での消費電力が大きくて、次いでスピーカを鳴らすパワーアンプ部の消費電力が大きいです。 I-Fアンプや検波後の低周波小信号アンプのプレート電源(+B電源)はごく少ない電流しか流れていません。

 スーパー・ヘテロダインの自励コンバータ回路の場合、局部発振回路(ローカル・オシレータ)の消費電流が大きめになっているようです。 これは電池消耗やAC電源の電圧変動で発振プレート(g2)の電圧が低下しても確実に発振し、最後まで踏ん張るように考えられているからだと思います。 スーパーは局発が止まってしまうと万事休すですから。

 発振停止電圧も確かめておきました。 フィラメント電圧が1.4VならEp=12Vあたりまで発振は持続します。 またフィラメント電圧が0.9Vに低下したときでもEp=17.6Vまで発振は継続します。

 もちろん、Ep=12Vや18Vではラジオの低周波パワー管はうまく働かず音は出ません。ラジオとして実用になるのはもっと高い電圧まででしょう。何とか使えるのはEp=35Vあたり迄でしょうか。 コンバータ管の発振が止まる以前に他の回路が働かなくなるのでコンバータ回路としては合格です。

【テスト回路全景】
 いつものようにブレッドボードを使って実験しました。 電池管ラジオの電源電圧はあまり高くないので十分使えます。

 写真では1AB6/DK96のプレート回路にIFT(中間周波トランス)が入れてあります。これはトランジスタ回路用ですが十分使いものになるようです。
 続きが書けそうでしたら次回のBlogでもう少し詳しく扱いたいと思っています。

                    ☆

 性能の良い普通の真空管がまだまだ沢山あるのに、あえて性能の良くない電池管など試す価値はないと言われてしまいそうです。 でもそれを言い出すと真空管を使うことすらナンセンスになってしまいます。半導体でやる方が本質的でしょうからね。

 いずれ真空管ジャンクは処分するわけなので、それまでに幾らかでも試して遊んでみたいというのが今の心境です。 電池管はことに用途が限定的です。 それに実際に自らの手で触った経験のないデバイスは何となく新鮮で楽しいですし・・・。これは見てるだけではわからないかも。w 次回はI-Fアンプ以降に続きます。 ではまた。 de JA9TTT/1

(つづく)←リンクfm


【乾電池で働く真空管で通信型受信機を創る・バックナンバー】(リンク集)
この特集では主に欧州系の省エネ型ラジオ用電池管を使って実戦的な通信型受信機の製作を目指します。全7球で省エネ・高性能な管球式ダブル・スーパー受信機にまとめます。

第1回:(初回)欧州系コンバータ管:1AB6/DK96で周波数変換回路を試す→いまここ
第2回:欧州系バリミュー管:1AJ4/DF96でI-Fアンプを試す・含1T4-SF→ここ
第3回:日本独自の省エネコンバータ管:1R5-SFで周波数変換回路を試す→ここ
第4回:オーディオ・アンプ用複合電池管:1D8GT(豪州製)の紹介→ここ
第5回:複合電池管:1D8GTでまな板スタイルのオーディオ・アンプを作る→ここ
第6回:省エネコンバータ管:1R5-SFでプロダクト検波を詳細に検討→ここ
第7回:電池管で作る高性能受信機を構想してみる・含1AB6/Dk96のプロ検→ここ
第8回:欧州系コンバータ管:1AB6/DK96でクリスタル・コンバータを試す→ここ
第9回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その1)→ここ
第10回:ペンタ・グリッド管:1AB6/DK96で第2周波数変換を試す(その2)→ここ
第11回:(最終回)I-FアンプとマーカOSCの兼用回路と受信機まとめ→ここ

2024年12月31日火曜日

【Antenna】It's the Tri-Band Antenna ! Wow !!

【それってトライバンダー!】

Introduction:
I'm using a handmade mobile antenna that works on the 14 MHz and 18 MHz duo bands.
It works well, but the other day I had a brainwave. I thought that if I shortened the radiant element on top of the antenna, I could use it on 21 MHz.
I quickly tested it and it worked really well.
I had an antenna for a new band without having to do any complicated work.
Yes, the antenna went from dual-band to tri-band ! (2024.12.31 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【14,18MHzデュオバンドが・・】
 はじめステンレス製のエレメントを使ったお陰で使いモノにならず、泥縄式に何とか完成させたデュオ・バンド・アンテナをさらに拡張する話です。

 このアンテナは最初から2バンド用(デュオ・バンド用)を目指したものでした。 先端部は一本物のステンレス製ロッドを使いましたから伸縮はできません。 バンドの切り替えは中央部分の「ローディング・コイル」にあるタップの選択で行ないます。 共振周波数の微調整も不可欠なので、スライド式小型容量冠を使って行なう方式を採用したのです。

 きちんと共振できたので考え方そのものは悪くなかったと思うのですが、ステンレス材を使った上部エレメントがローディング・コイルに干渉して損失が発生したのです。その結果、輻射効率が相当悪くなってしまったのでした。

 このあたりの顛末は以前のBlog(←リンク)を参照してもらうとして、結果として上部エレメントをロッド・アンテナ(テレスコーピック・アンテナ)・・・真鍮でできています・・・に交換して旨く完成させたわけです。

 出来上がってから何回か使っているうちに「ひょっとしたら他のバンドも行けるのでは?」と思うようになりました。 上部エレメントが伸縮可能な形式になったからです。 縮めたらもう一つ上のバンドに共振できるかも?? 思いはじめてから少々時間は過ぎたのですが、いよいよ試すことにしました。

                  ☆

 HF帯モバイル・アンテナの話です。 たぶんここをご覧の99%のHAMには関係ないでしょうね。 それでもいつの機会にか・・・来年でしょうか?(笑)・・・そんなモバイル運用を計画されるかもしれません。 ちょっとだけ興味があったら大晦日の行事を済ませてから日本酒でも一杯やりながら楽しくご覧を。 もちろんワイン、酎ハイとかビールもオススメです。 大晦日がまだ忙しかったら新春の暇つぶしにでもされてください。(笑)

【トライバンダ・寸法図】
 さっそく実験結果ですが、これがなかなか「うまく行きました!」

 オリジナルのデュオ・バンド状態の寸法図と、21MHzに変身させるための寸法図を掲載しておきます。

 完全に同じような部材が準備できるとも思えませんからあくまでも参考程度かも知れません。 しかしだいたいこのような寸法形状で製作すれば14MHz、18MHz、21MHzにオンジエアできます。 部材は多少違っても類似サイズで旨く行くはずです。

 ローディング・コイルより下の部分は「一本釣り用グラスファイバ・ロッド」を切った細い先端部に同軸ケーブル:10D-2Vをむいた網線を被せています。 さらに銅の網線がサビるのを防ぐ目的で上から自己融着テープを巻いてあります。

 ローディング・コイルが上下輻射エレメントの中間に入るセンタ・ローディング形式です。 コイル部は次項で説明します。

 コイルより上の先端部は6段式のロッド・アンテナで伸ばした全長は1,015mm(ネジ部含む)、収縮時の長さは203mmです。元部分の太さは7mmあります。平均的な太さはφ6mm程度でしょう。

 14MHzと18MHzでは先端の1段分を完全に縮めた(挿入した)5段分の状態で使います。 さらに先端から2段目は完全には伸ばさす、3段目との間を20mmくらい伸縮させて共振周波数の微調整に使います。 なお、このアンテナではキャパシティ・ハットは設けませんでした。 14MHzと18MHzの長さは5段分マイナス「ちょっと」と言う訳です。

 上部輻射エレメントの長さを5段分のままにして長さをあまり変えず、コイルにタップを追加して21MHzに共振させる方法もあります。 おそらく、その方が幾らか輻射効率は良くなるでしょう。 しかし改めてタップの位置を見つける作業が必要になります。 これはけっこう面倒で時間も掛かるので腰が重かったというのもデュオ・バンドどまりでオシマイにしていた理由です。

 今回、コイルのタップは18MHz用そのままで21MHzにうまく共振できることが「発見」できたのは大成果でしたね。(笑)

 21MHzで使うためには:コイルより上のロッド・アンテナ・全6段のうち先端の3段分を縮めてしまい残り3段分の長さで使います。 それだけですとやや共振周波数が高くなりすぎたので、更に先端部を〜20mmくらい伸ばして共振周波数の微調整に用いました。(左図参照) 21MHzでは3段分プラス「ちょっと」と言うことです。

 全長で300mm短くなりますが、こうした構造のアンテナで輻射に最も寄与するのはコイルより下部であり、ここはずべて同じなのでアンテナの効率はそれほど低下しないはずです。

【ローディング・コイル】
 既出かもしれませんがローディング・コイルの部分です。

 ローディング・コイルはエヤーダックス・コイル:401016を25回分カットして使っています。 実際にコイルとして働いているのは、18MHzで12.5回分、14MHzで19.5回分です。 なお、21MHzは18MHzと同じ巻き数のまま使います。従って12.5回巻きということになります。

 エヤーダックスは既にいにしえの部品です。 太さφ1.0mmの錫メッキ線を直径40mmのボビンにピッチ1.6mmで巻けば同等品が作れます。 錫メッキ線は4mくらい用意すれば良いでしょう。 ボビン(巻枠)としては塩ビ管などが考えられます。

 必要なインダクタンスは、いずれも概略値ですが14MHzが12.7μH、18MHzは6.7μHです。 それぞれのバンド用にタップを引き出しますが、実際には共振周波数を測定しながら加減する必要があります。 なお21MHzは上部エレメントの長さを縮める形式なので18MHzと同じインダクタンス:6.7μHのまま使います。 コイルが良くないと・・・Qが低いと・・・効率が上がりません。良いコイルこそ良く飛ぶアンテナの秘訣です。

 コイルのサポート方法ですが、ケースの蓋(フタ)の部分に固定用の穴加工を行なったあと接着剤で止めています。

 コイルのケースは200mLのサンプル容器というもので、フタの部分(白)の中央にきつめの穴を開けて下部エレメントのグラスファイバ・ロッドへ圧入されています。 これだけだと回ってしまうので更に接着剤で固定します。 なお、容器はフタの部分が下になるよう上下逆にして使っています

 ケースの胴体部分(透明)はスチロール樹脂製で、回して白いフタの部分からフリーに取り外せるようになっています。 これはコイルのタップを替える都合からです。 従って隙間があって防滴・防水構造は難しいので雨天での使用は考えていません。 フタとのネジ部分からも雨水が侵入しそうなので晴天用アンテナと考えています。

【マウントしてテスト!】
 車体左後方のアンテナ基台にマウントしています。これで21MHzの状態です。 磁石アース板(←リンク)は2枚付けています。

 手前の144MHz/430MHzのアンテナよりも短そうに見えますが、実際はやや長くなっています。 全長は1,120mm前後になります。(21MHzのとき)

 21.074MHzの1/4波長は3,380mm(波長短縮率0.95を考慮済み)なので、67%短縮された・・・要するに33%分の長さに短縮されたホイップアンテナとなります。 フル・サイズ・ホイップアンテナの三分の一の長さしかありませんから、アンテナとしての輻射効率はだいぶ落ちてしまいます。

 ただし14MHzや18MHzより波長も短くなってくるので両バンドと同じようなものではないでしょうか。ηa=20〜25%ほどか?

【SWRも下がってOK!】
 nanoVNAで共振周波数とSWR特性を確認しています。 ボトムでSWR=1.13を示しているのでまずまず良好です。

 今回行なった実際の実験手順としては逆でして、エレメントを徐々に縮めながらnanoVNAを駆使して共振周波数を探す・・・と言った作業を繰り返しました。 その作業の最終結果を纏めたのが上に示した寸法図です。
 このアンテナは移動地に着くまで全体を縮めた状態で持ち運んでいます。次回の運用では図面のサイズから始めて先端を微調整しジャストに共振させてから使います。数回の移動運用に使用しましたがこの方法で問題ありませんでした。nanoVNAは持ち運んでいます。

 18MHz(18.100MHz)と比べて全長で約300mmの違いですから、だいぶ縮めることで21MHz(21.074MHz)に調整できたわけです。 さらに縮めて24MHzにもチャレンジすべきだったかも・・・。w (さらに300mmほど縮めれば何とか24MHzバンドに入りそう?)

【PSKRで飛びを見る】
 これは私自身が目標にしていることなのですが、送信に使うアンテナは飛ばなくては価値がないと思っています。いくら良く聞こえても飛びが悪かったらHAMの交信には使えないからです。 もちろん個人的な目標にすぎませんが・・・。
 飛び具合が自分で作ったアンテナの評価基準です。 21MHzにうまく共振したからと言って使い物になるか否かはまた別でしょう。 さっそく近所の公園へ出かけてPOTAを試みました。

 市内の総合運動公園からオンジエアです。ここは上武県立自然公園(JP-1150)に含まれています。やや高台なので無線には向いたロケーションのように感じます。 HF帯は電離層反射なので上空が良く開けた場所ならどこでも大丈夫だと思いますが・・・。 もちろんアンテナは写真のもので、送信パワーは50W、モードはFT-8でオンジエア開始です。

 写真は帰宅後にPSKRで飛び具合を確認している様子です。 日照のあるエリアによく飛んでいるのがわかります。 21MHzでの初POTAでしたが、JA局と交信するのに苦労しました。国内のような近距離はだいぶスキップするのです。 このアンテナの基本的な特性は接地型と同じで垂直偏波です。従って思っているより打ち上げ角は低いのかも知れません。 車載ホイップは指向性が出ることが知られています。当局の車載状況ではクルマの右前方向に弱い指向性が現れるはずです。

 JA局のみ相手にしていては、このままだと10交信に届かずアクティベーション失敗になりそうだったので画面に見えてくるCQ局を次々に呼んで交信局数を稼ぎました。w

 中には当局のCQに応答してくるDX局(イタリア局、インドネシア局、ウクライナ局)もあって流石にここはDX Bandであることが実感できました。 結局、約50分間の運用で16局ほど交信できました。うち4局だけがJAです。hi hi

 JA局のほかBG5、BG7、BI4など中国局が複数と、IW4、OH6、EA5、3W9、YC7、CX6、UX8、UG0など、DX局がずっと多くなりました。 中国やオセアニアのほか南米やヨーロッパへもかなり飛んでびっくりです。 帰宅後にPSKRを確認してなるほどと思ったしだい。 いまは太陽黒点数(SSN)のピークでHF帯ハイバンドのコンディションはかなり良好なのです。

 コンディションに大いに助けられた成果でしょうが、まずまず飛んでくれそうな21MHz用アンテナが手に入りました。合格と言えるでしょう。 これで7MHzから21MHzまで車載から5つのHF帯HAMバンドにオンジエアできるようになりました。 思い立ったら何でも試してみるものです。

                  ☆

 自宅から無線が楽しめないとお嘆きならRigと移動用ANTを持ってお出掛けされてはいかが? ロケーション良好な移動先からDXだって狙えるでしょう。 アンテナ製作に自信がないのでしたらFBな移動用ANTが頒布されています。 友人のJA6IRK/1岩永OM(←Webショップへリンク)の頒布品はお勧めの一つです。 改良を重ね良いアンテナを目指しておられます。 次回頒布のチャンスを狙ってぜひ手に入れてみてはいかが? これでアナタもPOTAデビューできるかも。(笑)

【私のPOTAまとめ】
 このBlogは21MHzのアンテナがテーマですが、モバイルからの運用を目的にしたものです。 POTAって初耳ならこちらの→リンクをどうぞ。

 一年とちょっと前の2023年11月末に初めてテスト運用を行ないました。 何も目標がないとメリハリがなくなってしまうので、新規の公園30ヶ所での移動運用を当面の目標にしました。 幸い、今年;2024年11月には30ヶ所目のACTに成功しました。

 POTA活動はアクティベータがメインなので公園移動局どうしの交信:パーク・ツゥー・パーク(P2P)も楽しみの一つです。こちらも今月12月には50交信に届きました。

 たまたま暇ができたらふらっと出かけてみなさんにお相手いただくと言ったスタイルでやってます。たかが遊びですから「無理はしない」が大原則です。たしか、POTAのサイトにも真っ先にそんなことが書いてありましたね。 それでも公園から1,000交信をだいぶ超えました。 いつもコールいただき有難うございます!

 2025年はぼちぼち足を伸ばして新規の公園50ヶ所を目指してPOTA活したいと思ってます。 運用実績のないV/UHF帯50MHz〜1200MHzでPOTAも新テーマです。 スローペースですが聞こえてましたら宜しく!

参考:災害発生など非常時に備えた車載AC電源の活用実績も積めたと思っています。

                  ☆

 2024年はモバイル・アンテナの話からスタートしました。 色々アンテナ製作を試してそれを活かしたPOTAを楽しむことができました。  Blogの方ではアンテナの話に続きジャンクな五極管にスポットして実験を楽しみました。 こちらは少々停滞気味ですがこの先も続く予定です。 さらにAudio関連ではBGMの低音改善とスピーカ修理も楽しめました。 そして今年最後のBlogは再びアンテナの話題に戻って締めくくりができたと思っています。 2024年よさようなら。 良いお年を! ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2024年12月15日日曜日

【Audio】Repair the FE-103Σ Speaker System.

【FE-103Σスピーカ・システムの修理】

Introduction:
I use speakers from a Japanese manufacturer called FOSTEX. Its loudspeakers were quite old and the adhesion between the cone and the edge had deteriorated.
I like these loudspeakers because they have a good sound. I decided to repair it and use it.
I use a rubber-based adhesive for repairs. The loudspeaker was repaired well and I can enjoy the same good sound as before.(2024.12.15 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【FE-103Σスピーカ・システム】
 もういちどスピーカを修理する話です。 何か目新しいことがあるかも知れません。

 グレーの箱・・・エンクロージャと言うのは一時期流行ったように思います。 たしかJBLのスタジオ・モニタ・シリーズがそんな色でした。でもコレはそう言った高級なもんじゃあ、ありません。w

 このスピーカ・システムはフォスター電機・・・いまのFOSTEXのスピーカ・ユニットをつかったものです。但し、エンクロージャは近所のホムセンで売られていた「いい加減なサイズ」のものを使っています。 内容積はだいたい3L弱と言う小さな箱です。

 友人のお薦めで手に入れたスピーカ・ユニット:FE-103Σをとりあえず鳴らしてみるための箱でした。 やや小さくて最適とは言えないサイズでしたが案外悪くなかったんですよね、これが。

 ずいぶん古いものです。 一時はベッドサイド・オーディオとして使っていた時期もありましたが、その後は仕舞い込んだまま年月だけが過ぎてしまいました。 いまどきお勧めするようなものではありませんが、実験用のスピーカとして復活させるつもりです。 そうです、シンプルな手作りオーディオ・アンプのお相手に使うつもりなんですが・・・。

 残念ながら経年劣化が見られました。ずいぶん長い年数が過ぎちゃいましたからねえ・・・やはり簡単な修理が必要でした。

                   ☆

 単なる備忘用の修理記録です。 見て何か役立つとも思えませんが・・・。 師走の貴重なお時間を費やすに値するほどの中身はありませんから、忙しかったら眺めるのはやめといた方が良いです。

【FE-103Σはどんなスピーカか?】
 FE-103Σというユニットはどんなものだったのでしょう。

 付いてきたデータシートが行方不明になっていてオリジナルのデータは探せませんでした。
 ネットのサーチで得られた情報など編集してとりあえず説明用のデータを作っています。

 口径わずか100mmのフルレンジ・スピーカです。 私が使ったものは8Ωのユニットです。 測定法によっても変わりますが規格上の最低共振周波数:f0は85Hzくらいです。 フルレンジなので高域までf特は伸びています。 おおよそ可聴域をカバーします。

 FE-103には2つあって、オリジナルの無印とΣタイプがありました。 たしかΣタイプは発売から10周年(?)だったかの記念モデルとして限定販売されたのが始まりです。 友人の薦めでその限定品をゲットした思い出があります。 お値段はちょっと高くなるものの、意外に人気があったのか、いつしか標準品に出世したようでした。 限定品だったころは化粧箱がなかったらしく白箱に入っていて品番がゴム印で押してありました。

 Σ(シグマ)タイプはノーマル品と何が違うのかと言えば、ダブル・マグネットになった部分です。 フェライト・マグネットを2枚がさねに使って磁気回路を強化したのがΣタイプでした。 フォスターのこのシリーズはフェライト・マグネットを使った近代的なユニットで、ハイ・コンプライアンスが特徴でした。
 もともと音響効率は悪くないユニットですが、ボイスコイル部・ギャップの磁束密度が高くなるため1〜2dBくらい効率アップします。 小出力アンプにとって高効率は有難いことです。 ダンピングも良くなるはずで締まった感じが強くなるでしょう。 まあ、この辺はドライブ側アンプのDF値にも左右されますが・・・。

 周波数特性ですが、類似後継品のデータを参考に示しています。 同じ10cmのスピーカなので傾向を見るには役立つでしょう。 左側はJIS標準箱(B)に付けた場合の音圧・周波数特性です。 JIS標準箱(B)というのは小型版のスピーカ用でそれでも約450Lもある大きな箱です。 したがって無限大バッフル板に近い素のままのユニットの特徴が得られやすいでしょう。 特性を見ると150Hzあたりから下の周波数はダラ下がりになっています。 実際に明るくて軽快な音で鳴りますが低域が伸びた感じがしないのは小径ユニットゆえ仕方ありません。

 右のグラフはバスレフ型のエンクロージャ(箱)に入れた特性です。 バスレフのポートは50Hzあたりに設計してあるようです。 音圧周波数特性もそれだけ低い方へ伸びているのがわかります。 指定のバスレフ箱は容積6Lでバスレフのポートはφ50mmでL=60mmくらいのものです。

                   ☆

 私が使った「いい加減なハコ」は容積が3L弱しかありません。 またバスレフ・ポートも単なる角穴があるだけで効果はあまりなさそうなものです。(笑)

 実際に鳴らしてみますと120Hzくらいから下があまり出ないような特性でした。 箱に入った状態における最低共振周波数:f0を実測すると180Hzくらいでしたので、まあ妥当と言える音圧特性でした。バスレフ・ポートの共振も観測されませんでした。 したがって低域は期待できませんからサブ・ウーファに任せて中音域以上を受け持つのが適当ですね。

【やはりフリーエッジが・・】
 年月が経過したスピーカ・ユニットのフリーエッジが劣化したり剥がれてくるのはもはや常識なのかも知れません。

 ご多聞に洩れず、このユニットのエッジも剥がれ始めていました。 写真のようにエッジとコーン紙の間に隙間ができていました。 ただし完全に剥がれるまでは至っておらず、かろうじて繋がっている状態です。 しかし時間の問題で脱落するでしょうね。

 エッジは布地を成形して樹脂を含浸した構造のようです。 前回のSW-P100(←リンク)のユニットのようにグズグズに崩壊する状態ではありません。 意外にしっかりしていて交換の必要はないように感じました。

 ただし塗ってあった制振剤はコーン紙の方へ拡散したようです。 コーン紙の周辺部分に滲みが見られました。 完全に接着できたら後ほど再塗布が必要になるかも知れません。 エッジの柔軟性も損なわれてきたように感じますし・・・

【接着用・当てモノを作る】
 エッジとコーン紙を押さえて上手に接着できるよう、「当てモノ」を作ってみました。

 単に薄手の段ボールを切り抜いて2枚重ねに貼っただけの円盤です。(笑)

 ちょうど良いサイズのビンの蓋のように円形の板があれば良かったのですが見つかりません。
 たった一回限りのお役目ですが作って使うことにしました。 コーン紙部分の接着用なので、あまり重さは加えませんから段ボール製で十分でしょう。

【程々の重石を掛けておく】
 前回のスピーカ修理では5kgもあるような重石をのせて接着しました。

 あれはガスケット部の接着でしたが、今回はコーン紙側です。 それほどの力は掛けられません。せいぜい数100gでしょう。

 上で作った「当てモノ」をラップに包んで載せました。 そのままでは溢れた接着剤がついて取れなくなる可能性があります。 ラップを巻いておけば大丈夫でしょう。

 数100gではなんとなく心もとない気もしましたが接着はうまくできました。

【FE-103Σ:エッジ修理完了】
 すこし接着剤がはみ出ていますが支障はないでしょう。まあまあだと思います。

 接着剤は前回同様にボンドGクリヤーを使っています。 紙と布の接着ですので接着剤に含まれる溶剤の影響もないようでした。

 エッジそのものの強度は問題ないようです。 交換する必要は感じられません。

 問題があるとすれば、経年変化で柔軟性が損なわれている可能性です。 カチカチのエッジではコーンの動きが制限されます。 その結果、最低共振周波数:f0が上昇してしまい低域が伸びなくなっている可能性はあるでしょう。

 ネット上でエッジの柔軟化を試みる例を見ますが、リスクは高いように思います。 まあ、廃棄寸前のような古いスピーカですから試してみるというのもアリでしょうね。 そのうち気が向いたらやってみたいと思っています。

【バスレフだが・・・】
 見たところはバスレフ形式の箱です。 ポートはこんな感じです。

 単に穴を開けてあるだけですから、共振周波数は相当高いはずです。 低域を伸ばすという効果はほとんどないでしょうね。(笑)

 箱の容積が小さすぎるのでポートをチューンしてもあまり意味はないかも知れません。 この10cmスピーカを本当に活かしたいと思うのなら、やはりメーカ指定のバスレフ箱に入れるのが間違いないでしょう。

 「バスレフはどうも・・・」というのでしたら、十分な容積を持った密閉箱が良いはずです。 そう思ったならスピーカ・ユニットも新しいものに交代した方が良いですね。 ここでは修理は問題ないようなのでそのまま様子を見ることにしました。

【スピーカ・ケーブル】
 使ってみたスピーカ・ケーブルの話です。 この話を始めると厄介なことになるかも知れません。 まったくの電気の素人でも交換して手軽に遊べますから。 それを当て込んで高額な「高級品」が売られています。(笑)

 それほどこだわっている訳ではないので程々のものにしました。 写真は通販で購入したスピーカ・ケーブルです。 銅線の径はφ1.3mmでAWG16相当のケーブルです。 以前使っていた時のケーブルも残っていましたが長さが不足するので交換しました。

 このところ銅製品が値上がりしていて、ケーブル類も高くなっています。 このケーブルは約1300円でした。長さは15m少々あります。 極上品とは思えませんがごく普通に使える実用的で無難なスピーカ・ケーブルだと思います。 ACコードと同じようなものなので、あえてお薦めは致しません。

 なお、スピーカ・ケーブルが大いに気になるのでしたら「太く短く」が基本です。 いくら良さそうなケーブルでも延々と長く引いたらダメです。後ろでとぐろを巻いているなんてもってのほか。 太い銅線にも電気抵抗はありますし配線間の静電容量(キャパシタンス)や配線長に起因するインダクタンス分も存在します。 アンプの出力端子からスピーカ・ユニットへ最短・直結するくらいの気持ちでできるだけ短かく配線するのが秘訣でしょうね。

 例えば、ダンピング・ファクター:DFが「100」(但し8Ωのスピーカに対して)と言うアンプがあったとします。 これはごく普通に市販されているようなパワー・アンプです。 このアンプの出力インピーダンス:Zo=8/100(Ω)です。 要するにZo=0.08Ωと言う訳です。

 いま、電線メーカーの資料によればAWG16サイズ、φ1.3mmの電線の電気抵抗は13Ω/km(20℃)くらいです。 スピーカ用として5mに切って使うと、往復で10mになります。従って、電気抵抗:R=13・(10/1000)=0.13(Ω)になる訳です。
 どうでしょうか? せっかくDF=100と言うスピーカのドライブ能力に優れたアンプを使っていても、実質的なDFは約38に低下してしまいます。 DFはスピーカから見た信号源抵抗:Zoと負荷インピーダンスの比ですから。 Zo=0.08+0.13=0.21(Ω)なのでDF'=8/0.21=38.17・・・となるのですね。

 φ1.3mmというのは結構太いスピーカ・ケーブルでしょう。 実際もっと細いケーブルを延々と伸ばしている例も多くて、実質的なDFが10だったと言ったようなケースもありえます。 これでは高性能なアンプの性能が十分に発揮できませんね。 音も変わってきます。 従って良いケーブル(低抵抗でロスの少ないもの)に交換したら「音が違った」という話もあながち嘘とも言えないわけです。

 かつてK社がモノラル・パワーアンプを2台セットにして販売していたのを思い出します。 コンセプトはアンプとスピーカの最短接続にありました。 スピーカ・システムの近傍にそれぞれパワーアンプを置き、入力信号の方は600Ω系に統一してプリアンプ側からの配線を長く延ばすという発想だったと思います。 ある意味で理想的な構成でしょう。

 要するにそのれくらいしないとアンプやスピーカシステムの性能がメーカーの意図どおりに発揮できないという意味でしょうね。 ケーブル云々の話をするくらいなら、まずはアンプをスピーカに寄せると言った方向の努力をするだけでもかなり効果的なのではありませんか。 もちろんこれは一私見に過ぎませんけれど。

(パワー・アンプを分散する方法は電源のON/OFFと言った基本的な機能の実現に課題がありましたが今ならワイヤレス・リモートで簡単に解決可能でしょう・・・ :-)

(参考:ごく稀にアンプのダンピング・ファクターを指定しているスピーカ・システムが存在します。それらは低いDF値を要求していて、その場合はオーバー・ダンピングにならぬよう低抵抗を直列に付加して調整すべきです。0.5〜1Ω付加で「快活な音」になることがあるのです。スピーカ・コーンは振動系なのでダンピング過剰は必ずしも好ましからず)

【サブ・ウーファの足】
 はなしの脱線ついでなのですが、例のサブ・ウーファ(←リンク)に緩衝材の足を付けました。

 床に直置きすると振動が伝わって旨くないため、ウレタン製の緩衝材を間に合わせに敷いていました。 ところが、サブ・ウーファの重量(約12kg)に負けて完全に潰れてしまいました。w
 やはり何らかのクッション材は必要なのでホムセンで使えそうなモノを調達してきました。

 断面が半円形のクッション材で焦げ茶色の発泡ゴム製(NBR)の部材です。幅50mm、厚み26mm、長さ400mmのもので、税別¥528ーでした。 それを切って長さ155mmのものを2つ作りました。 写真・右側にあるのは余った端材です。

 強力型と称する両面粘着シートでサブ・ウーファ:SW-P100の底部・前後に貼り付けておきました。 今度は十分な圧縮強度があって潰れてしまうようなことはなさそうです。
 ゴム色が移行することがあるそうなので淡色の床面に置く場合は何らかの敷物を挟んだ方が良いかもしれません。

 ごく一般的な発泡ゴム製ですからそれほどの寿命はないかもしれません。 たぶん5年やそこらなら十分使えるでしょう。

 緩衝材としての機能・性能は十分だと感じました。

【実験用スピーカ・システム配置】
 整備が済んだFE-103Σのスピーカシステムを配置しました。

 完全な実験用スピーカなのでケーブルは長めの4m長にしてあります。 実験卓にアンプを置いて試行的に鳴らすのに不自由のない程度に配線を延ばしておきました。

 アンプの自作は計画途上なのでこれからですが、既存のシステムに入れて試験的に鳴らしてみました。 低域がやや欠ける周波数特性ではありますが、軽快で明るい音色は維持されていると感じます。 ちょっとしたアンプの実験が目的でしたらもう暫くは使えるでしょう。

                   ☆

 こんな古いスピーカ・システムを引っ張りだして修理なんかする意味はないと言われそうです。 良さそうな物をリサイクル・ショップで調達すれば安上がりで、場合によって性能の方も向上します。
 捨てずに直すのは「できるだけ手持ちを活かして遊ぶ」というのが最近のコンセプトだからです。 費用の倹約はそれほど意図しませんがゴミ減の意味から方向性は間違っていないと思ってます。 もっとも、いずれ不燃ゴミになる運命なんですけれどね・・・。

                   ☆

 つまらないものの修理をお見せしてしまいました。捨てればゴミも直せば役立ちます。 とりあえずうまく行って、自作アンプのテスト環境もだんだん準備が進んできました。 今日のところはこれで一旦終わりにしましょう。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2024年12月1日日曜日

【回路】Audio Filter Design : Supplements

【シンプル・低周波フィルタの設計:補足編】

Introduction
This blog is a quick guide to electronic equipment using filter circuits.
First, I'll look at how we can protect electronic equipment from external stresses.
Even the best semiconductors, like ICs, can be damaged by unusual currents and electrostatic discharges caused by differences in potential between devices.
It's always important to have protection in place, and of course It don't affect the input and output signals.
The easiest way to do this is to put resistors in the input and output sections.
I'll show you this with some practical circuit examples. I'll also explain other power supply circuits. And I'll also look at some other uses for filter circuits.(2024.12.01 de JA9TTT/1 Takahiro Kato)

【フィルタの実用には・・】
 Blogの目的の第一は自身の備忘ですから忘れぬくらい良くわかってることを必要以上書く意味はないのです。 しかし時間の経過とともに忘れて行き何故そうしたのか初めの意図がわからなくなることがあります。 自分で設計した回路を眺めながら・・・ハテと思い出せないこともある訳なのです。w

 もちろん齢とともに物忘れが加速中と言うのもあるでしょう。しかし誰しも半年も過ぎたら細かい記憶が薄れてきて不思議ではありません。そのためになるべく細かくメモを取ってはいるのですが・・・。
 前回のBlog(←リンク)で設計した3D-Audio用のフィルタですが、わかって使えば支障はありません。しかし後からいくらか補足すべきだったことが思い浮かびました。 忘れないよう早めにメモっておくのが今回のBlogの目的と言ったところです。 なお、後ほどシンプルな電源回路が登場しますがこれは自分用と言うよりも読者サービスです(笑)

 写真はフィルタ用のICで、今回の話に直接の関係はありません。 始めの部分に何にも絵がないと寂しいので載せています。 FLT-U2(←リンク)とMF10CCN(←リンク)は扱い済みです。MAX7400はまだBlogで扱ったことがありません。

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 ことし(2024年・令和六年)もついに師走になってしまいました。光陰矢の如し、1年って早いものです。 あれほど酷暑だった今夏も既に過去のこと。  忙しい年末です。こんなBlogを眺めてウロウロしていても進みませんよ。w さっさと年越しの準備でも済ませておヒマができたら改めてお出かけください。冬至も近づき日も短くなってきました。諸事お早めのスタートが吉です。

【ローパス・フィルタ:その1】
 ローパス・フィルタの回路図です。

 フィルタとしてしては、前回のBlogで扱ったママです。 基本的にそのままで良いのですが、入力と出力の部分に保護抵抗を付けてあります。 #1と#2と付いている抵抗器がそれです。

 何かの回路の途中に「アクティブ・フィルタ」として挿入するのなら「保護抵抗」は必要ありません。

 3D-システム用のフィルタ装置のように独立した機器として製作し、オーディオ機器の間に入れて使う場合は保護を設けておくべきです。

 #1と付いた抵抗器が入力保護用です。 何もなしにOP-Ampの入力端子を外に引き出しておくと壊れる危険があるのです。 特にRCA型のフォノ端子を使っているとかなり危ないです。この端子は先端のピン部分が最初に接続される構造です。 シールド部分(GND側)が先ならまだ良いのですが・・・。 接続する機器の間で電位差があると繋いだ瞬間にやられる可能性があります。 また静電気のディスチャージも怖いのです。

 #2は出力側の保護抵抗です。 昨今のOP-Amp.は出力を瞬時短絡した程度で壊れることはまずありません。 しかし、機器間の電位差などにより数10mAも流れたら壊れます。 100Ωの抵抗で万全なのかと言われると困りますが何も入れないよりも随分強くなるのは間違いありません。入れてあれば壊れる危険は相当程度回避できるのです。 負荷の状況如何ですがもし可能なら1kΩくらい入れたいところです。

 真空管の時代はこうした心配はありませんでした。 グリッドに繋がっている入力端子を経由して球が破損することなどまず考えられません。
 しかしOP-Amp.のようなICは内部の構造が極めて微細です。 同じ半導体でもトランジスタなら大丈夫だったアクシデントもICは微細で脆弱ですからちょっとした電流や静電気で破損する危険性は高いのです。 本当はもっと本格的な保護回路を設けたいところなのです。
 しかし煩雑になるのと何がしかオーディオに影響が出ることを嫌って「最低限の保護」にしています。 まずは機器どうしのGND系を接続し、それから信号系の配線を繋ぐことを前提にしたいと思っています。

参考:-18dB/octの回路として(C)と(D)の2種類が載せてあります。 先に低次の-6dB/octを置く方がフィルタとしてのダイナミック・レンジが広くなります。 S/Nの点では(D)の方が幾らか有利という考えもあるので優劣は考え方次第だと思っています。 フィルタ特性は(C)と(D)で同等です。好みで選んでください。 私はどちらかと言えば(C)を選びます。

 これらの回路はいずれもフィルタ回路を±15Vの電源で働かせる例を示しています。

【ローパス・フィルタ:その2】
 同じくローパス・フィルタの回路図です。

 基本的に一つ前の回路と同じですが、この例では+24V〜30Vの単電源で製作する例を示しています。 電源トランスの事情や他の機器から電源を分けてもらう都合などにより、単電源で動作できたら有難い・・・と言った場合に適しています。

 前の回路でも設けてありますが、信号が入ってすぐの部分にOP-Amp.を使ったバッファ・アンプ(ボルテージ・フォロワ)が入れてあります。 これは必須のアンプです。

 いずれのフィルタ回路も前段回路の出力インピーダンスが低い(ほぼゼロΩ)ことを前提として設計されているからです。 そのため、きちんとした予定通りのフィルタ特性を得るためには前段にバッファ・アンプを設ける必要があります。

 単電源(片電源)で働かせるために電源電圧の半分に相当する直流的なバイアス電圧が掛かるようにしてあります。 アンプの入力部にある220kΩ(2本)がそのバイアス用抵抗器です。 入力インピーダンスは概略110kΩになります。

 電源電圧にはかなり自由度があります。+9V程度の単電源でも働きますが、それだけ扱える信号の大きさは小さくなります。+9Vでは3Vpp程度が上限でしょう。 それさえわかっていれば低い電源電圧でも支障はありません。 上限はOP-Amp.の耐圧で決まり、一般的に電源電圧はトータルで+30Vまでです。それで24Vpp(≒8Vrms)くらいまでの信号が扱えます。 稀に高耐圧が特徴のOP-Amp.もあって、より大きな信号を扱いたいならそれを使うと有利でしょう。

【ハイパス・フィルタ:その1】
 ハイパス・フィルタの回路図です。

 ±15V電源で作る場合を示しています。 ローパス・フィルタとほとんど同じ部品点数で製作可能です。 設計周波数:Fc=70Hzになっていますが、もちろんこれは一例であって、前回のBlog(←リンク)の設計式に従って他の周波数に変更できます。

 あとは取り立てて言うまでもないのですが、入・出力保護やバッファ・アンプの要件もローパス・フィルタと同じです。

 ハイパス・フィルタの使用例は意外に少なくて、世間ではローパス・フィルタの方が圧倒的に多用されていると思います。 これは回路や増幅素子の非直線性によって発生する高調波を除いて歪みや広帯域のノイズを減らしてS/Nを向上させると言った用途があるからでしょう。 またA/D変換の前にはローパス・フィルタが必須という事情もあります。

 ハイパス・フィルタは意外に理想通りではないことが多いものです。 これは、OP-Amp.で作ると高い周波数の特性がアンプ自身の周波数特性で制限されるためで、意外に低い周波数からゲインが下がってしまいバンドパス・フィルタのようになってしまうことがあります。 なるべく周波数特性の良いOP-Amp.を使う必要があります。 このハイパス・フィルタはSallen-Key形式なので同じOP-Amp.を使った他形式と比べて有利と言えます。

【ハイパス・フィルタ:その2】
 同じくハイパス・フィルタの回路図です。

 この例では、+24〜30Vの単電源(片電源)で設計しています。 機能的には±電源で設計したものと同等ですが、ご覧のようにだいぶ部品が増えてしまうことがわかるでしょう。 これはいずれもバイアス電圧を与えるためで、単電源で動作させるため止むを得ないのです。 こうした措置は真空管を使ったハイパス・フィルタでも同様にあったことですが、ローパス・フィルタと違ってどうもスッキリしません。

 電源の都合でどうしても単電源で作りたい場合は止むを得ませんが、新規に電源から作る(用意する)なら±電源を作った方がスッキリしますし、たぶん製作もしやすいでしょう。

 入・出力保護に対する考え方はここまでのフィルタと同様です。 独立した機器として製作する場合には設ける必要があります。

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【Power Supply:電源回路】
 Blogの記事では電源部を省略することが多いのですが、せっかくの製作も電源回路(電源部)の例示がないのは残念だと感じるお方もあるそうです。

 電源部は出力電圧と電流容量こそ様々ですが回路の共通性があって、毎回新規に設計する必要のない場合が多いものです。 半導体回路の場合はだいたい電源電圧は決まっており、電流容量もパワー・アンプを除けばごく小容量で済みます。 従って製作は難しくありません。

 回路例は±15Vの電源と、+24Vの単電源を作る2つの具体例です。 取り出せる電流の大きさはだいたい100mA程度を考えていて小規模の付加装置には十分でしょう。 今ですから特殊な用途を除き、三端子レギュレータを使って安定化電源を作るのがベストです。 その際ですが専用の放熱器は省いても良いのでシャシへ放熱する工夫は是非とも必要です。(放熱器を付ければなお良い) まったく放熱なしでは、たったの100mAでも熱的に厳しいことがあります。 レギュレータICを取り付ける際は放熱シートを挟むかシリコーン・グリースを塗布して熱抵抗を下げるように努めます。

 整流用のダイオード・ブリッジは、初めからブリッジ回路になっている専用品があります。 それを使うと便利ですが、手持ちがあれば逆耐電圧:100V以上、平均定格電流:1A以上の規格を持ったダイオードを4本使ってブリッジ回路を組む方法もあります。 例えば1N4007を4本使うとか・・・

 電源トランスの電流容量をアップしレギュレータICの放熱を十分行なえば1A程度まで同じ回路で製作できます。合わせて整流用ダイオードの放熱もお忘れなく。 なお、最近は電源トランスを含め電源部品のコストが高騰しています。 ある程度大き目の電流容量が必要なら超ローノイズなスイッチング電源も登場しているのでそれを購入する方が経済的かもしれません。 特に電源トランスが高くなったのには驚かされます。 さりとて中華モノは・・・。(笑)

【電源モジュールの写真】
 既に廃れていますが昔は写真のような電源モジュールが市販されていました。 これらはいずれもローノイズなシリーズ電源です。 AC100Vを加えれば±15Vと言ったDC電圧が得られる便利なパーツでした。

 上面から見るとハガキ半分くらいのサイズでせいぜい数ワットの容量です。 電源トランスを内蔵しているのでズシリと重いのが特徴です。 小規模なOP-Amp.回路を動作させるには便利だったのですが・・・。

 いまどき望んでも手に入りませんので、何らかの工夫をして既製品のSW電源使うか部品を集めて上記回路図のようなを電源装置を作る(組み込む)ことになります。 電源は簡単に作れそうに思っても意外に面倒な部分でもありますね。 電源の製作が目的なら別ですが、一般に造るハリアイもあまりありません。 モジュールがあったら使いたいという気持ち良くわかります。

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 さて、書き忘れていたこと、回路の保護について、電源の話しなど赴くままにメモっておきました。 これでオシマイなのですが、フィルタ関連の資料を見ていたら面白い実験回路を見つけました。 部品数が意外に多いと感じますが実用的に使えそうな感触が得られたので以下紹介しておくことにします。 「ユニバーサル・フィルタ」と称するものです。

【ユニバーサル・フィルタ回路図】
 ますは回路図をご覧ください。

 回路の基本は典型的なステート・バリアブル型フィルタ(状態変数型フィルタ)です。

 フィルタのQを可変しやすく工夫したところが面白い部分です。 回路そのものは状態変数型フィルタですね。

 この回路はフィルタとしてローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチの4種類のフィルタとして機能します。 同一回路が多様なフィルタとして使えるのが特徴です。 それぞれハイパスとローパス・フィルタは-12dB/octの傾斜です。OP-Amp.の数は多いですが特に傾斜が急峻でキレが良いわけではありません。基本的に-12dB/oct(=-40dB/dec)のフィルタです

 Qを変えると周波数特性の肩部分にできるピークの大きさを変えることができます。 もちろんバンドパス・フィルタのQも可変できるわけです。 カットオフ周波数:Fcにあまり影響を及ぼすことなくQを可変できるのがメリットです。 なお、先のLPFやHPFの設計で出てきたダンピング係数:ξは、ξ=2/Qの関係があります。 もちろんξ=0.7071に設定すれば-12dB/octの分波フィルタとして使うことができます。

 もう一つの特徴はスイッチの切り替えで簡単に「正弦波の発振器」に変身できることです。 スイッチひとつでフィルタがそく発振器になるのです。 振幅制限にダイオードの順方向特性を使ってクリップしている関係で超低歪みではありません。 またダイオードの温度特性が現れるため振幅の温度安定度もあまり良くはありません。 しかしAGCのような時定数を持った発振振幅の制御回路を使っていないので超低周波の正弦波発振が可能です。1Hzとか0.1Hz・・・0.01Hzの正弦波も発振できます。 たぶんそれ以下も・・・。

 発振周波数は:fo=1/(2・π・C・R)で計算できます。 CはC1とC2の大きさで、RはVR1a,bの大きさ+1kΩです。 VR1a,bはBカーブの2連型を使い周波数の可変に使います。 回路図の定数:C1=C2=0.01μFとし、VR1としては100kΩ(2連型)を使った場合、計算上では:fo=約158Hz〜約15.9kHzの周波数範囲を可変できます。実際にもそれに近い可変範囲が得られるでしょう。(フィルタとしての遮断周波数:Fcも同じ計算です)

 ノッチ・フィルタを使うことがなければ4回路入りのOP-Amp.一個で作れます。U2を省略します。 なお、発振回路にしたとき、Qを変えるVR2で発振の大きさ(振幅)を変えられます。 振幅を大きくしすぎると電源電圧による制限で正弦波の頭の部分が潰れます。 オシロで波形を見ながらVR2を加減します。

【フィルタの外観写真】
 試作の様子です

 4回路入りのOP-Amp.は回路図通りTL074CNを使いました。 2回路入り:U2は手近にあったTL062CPを使いましたが、もちろん回路図通りTL072CPでも大丈夫です。 良いOP-Amp.を使うことに異論はありませんので、どんどん使うべきですが、まずは手持ちで試してみて必要に応じグレードアップするのも良いでしょう。

 振幅制限のダイオードは1S2076Aを使いましたがシリコンの小信号用スイッチング・ダイオードなら何でも大丈夫です。 1S1588、1N4148、1N914、1SS53などのほか、最近になって流通している1SS178等たくさん代替品があります。

 周波数の高い方はだいたい20kHzくらいが限界です。より高い周波数で使いたい場合は高速OP-Amp.を選びます。 低い方の制限はおおよそコンデンサ:C1とC2の容量値で決まります。 やっていませんが0.01Hzといった正弦波も十分発振可能でしょう。
 C1=C2=10μFのフィルムコンデンサを選び、R1a=R1b=1.6MΩに選ぶとfo≒0.01Hzになります。 どんな用途があるのか私にはわかりませんけれども・・・。

【発振波形:1kHz】
 LPF Output端子:OSC2で観測した発振波形です。

 発振の大きさは27Vppでこれ以上では歪みます。 VR1a,bを加減して発振周波数が約1kHzになるよう合わせています。 波形を見る限りかなり綺麗な正弦波ですね。 VR1a,bで発振周波数を変えても発振の大きさはあまり影響を受けません。

 状態変数型フィルタを応用する発振器の多くは、OP-Amp. U1aの非反転入力端子:Pin 3へ正帰還する方法を使うことが多いようです。 上図のように一旦信号を反転してから反転入力:Pin 2の方へ帰還しても良いわけです。 但し信号が多段のアンプを通る関係であまり高い周波数の発振には向きません。低い方の制限はほとんど無いはずです。 目的によっては使い勝手の良い正弦波発振回路でしょう。

【歪み率測定】
 せっかくの機会なので歪率を測定してみました。

 発振周波数が約1kHzになるようVR1を合わせます。VR2で振幅が約27Vppになるよう調整しました。 Qの大きさで発振振幅を加減している関係から、なるべくHigh-Qになるよう・・・波形の頭がクリップしない範囲で振幅が大きくなるように調整した方が低歪になるようでした。 その状態で観測した歪率は約0.24%です。

 このBlogには超低歪み発振器(←リンク)があってそれは0.001%と言った値です。 それから比べたらずいぶん大きな歪に感じるかもしれません。 しかし一般に良く見かけるような「正弦波発振器」は1〜3%の歪み率なら良い方です。 比べて0.24%なら低歪みと言っても構わないくらいです。 なお、振幅の制御がダイオードによるクリップ式なのでOP-Amp.を換えてもそれほど低歪みは期待できないでしょう。 もし超低歪みを目指すなら別の形式の回路を検討すべきです。

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 低周波帯のフィルタ繋がりでBlogを追記しました。 フィルタ特性の設計部分は前回のBlogで済んでいますが装置として完成させるには幾らか考慮すべき事柄が残っていました。 少なくとも壊れないための対策は必須なわけです。 気になった部分でもあるためさっそく追記しておくことにしました。

 これはおまけの内容ですがアクティブ・フィルタの関連で資料を当たっていたら面白いフィルタ回路が目にとまりました。 Bi-Quad型と並んで状態変数型フィルタはアナログ回路技術としては十分ポピュラーな存在です。 一つの回路で様々なフィルタ特性が得られることも皆さん良くご存知でしょう。 それを独立した実験用補助装置として製作しおくと意外に役立つように感じます。 多機能なフィルタとして便利ですし、ちょっとした正弦波の発振器が「特殊部品なし、難しい調整なし」で作れますからなかなかオススメです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm